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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014414
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】流体殺菌装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/10 20060101AFI20240125BHJP
   C02F 1/32 20230101ALI20240125BHJP
【FI】
A61L2/10
C02F1/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117223
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】田中 英明
(72)【発明者】
【氏名】加藤 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】新野 和久
(72)【発明者】
【氏名】川崎 和亮
(72)【発明者】
【氏名】佐野 諒
【テーマコード(参考)】
4C058
4D037
【Fターム(参考)】
4C058AA20
4C058BB06
4C058KK02
4C058KK14
4C058KK22
4C058KK28
4C058KK46
4D037AA02
4D037AB03
4D037BA18
4D037BB04
(57)【要約】
【課題】被殺菌流体に因る腐食という問題に対処しつつ、光源装置を効率的に冷却する流体殺菌装置を提供する。
【解決手段】筐体本体12は、軸方向の一端側の円筒部122と、他端側の拡径部124とを有している。直管18は、円筒部122内に収納され、軸方向の一端側から他端側に被殺菌流体を導く。光源装置19は、裏面側に放熱部としての樹脂製シール材31を有し、表面側から直管18内へUVを照射するように、拡径部124内に収納されている。導出流路35は、切欠き181から直管18の外に出て来た被殺菌流体を、樹脂製シール材31に導くように、拡径部124内に形成されている。
【選択図】図5A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を殺菌する流体殺菌装置であって、
直線である軸の同軸上に一端側と他端側を有する筐体と、
前記筐体は、前記一端側に第1筒部と、前記第1筒部より大きい内径を有する前記他端側の第2筒部とを含み、
被殺菌流体が前記一端側から前記他端側へ一方向に流れるように、前記筐体の前記第1筒部内に収納されている流路管と、
前記筐体の前記第2筒部内に収納され、基板と、該基板の表面側に実装されて前記流路管内に紫外線を出射する光源と、内面側を前記基板の裏面に接触させて該裏面の全体を覆っている非金属シール部材とを有している光源装置と、
前記流路管の前記第2筒部側の端部から前記流路管の外に導出された前記被殺菌流体が前記非金属シール部材の外面側に接触して流れるように前記筐体内に形成されている導出通路と、
を備えていることを特徴とする流体殺菌装置。
【請求項2】
請求項1記載の流体殺菌装置において、
前記筐体、前記流路管及び前記光源装置は、中心軸を揃えて配設され、
前記導出通路は、前記流路管の前記他端側の外周側から前記筐体と前記光源装置との間の環状包囲部を経て前記非金属シール部材の外面の中心部に延在し、さらに、前記中心部から前記流路管の前記中心軸に沿って前記光源装置から離れる方向に延在するように、形成されていることを特徴とする流体殺菌装置。
【請求項3】
請求項2記載の流体殺菌装置において、
前記光源装置は、前記光源から出射した紫外線を反射する反射面を内周側に有し、外周側が径方向に張出して、前記筐体との間に前記導出通路を画成するリフレクタを備えていることを特徴とする流体殺菌装置。
【請求項4】
請求項3記載の流体殺菌装置において、
前記非金属シール部材は、周縁において前記リフレクタの裏面側に形成された環状段部に嵌挿されていることを特徴とする流体殺菌装置。
【請求項5】
請求項3記載の流体殺菌装置において、
前記非金属シール部材は、セラミックの材料から成り、前記基板を兼ねていることを特徴とする流体殺菌装置。
【請求項6】
請求項3~5のいずれか1項に記載の流体殺菌装置において、
さらに、
前記非金属シール部材の裏面側の前記導出通路の部分を前記光源装置の前記裏面との間の間隙として形成している封鎖部と、前記封鎖部の中心部から前記筐体の外へ突出して前記間隙内の前記被殺菌流体を前記筐体の外へ導くアウトレットとを有している筐体封鎖部材を備え、
前記筐体は、軸方向の前記一端側において前記一端側への前記筐体内の収納部品の移動を阻止するストッパ部と、前記筐体封鎖部材の前記封鎖部を介して前記収納部品を前記ストッパ部の方へ締め付ける締付け部とを有し、
前記流路管と前記光源装置とが前記収納部品として前記筐体内に収納されているとともに、
前記流路管、前記光源装置、及び前記筐体封鎖部材が、中心軸を揃えて、前記軸方向に前記一端側から順番に一列に配列されていることを特徴とする流体殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線を使って流体を殺菌する流体殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線を使って流体を殺菌する流体殺菌装置が知られている(例:特許文献1)。この場合、紫外線を出射する光源は、発熱するので、冷却対策が必要になる。
【0003】
特許文献1は、前面開口がUV(紫外線)透過窓で封鎖されたカップ状の金属ケース内に、光源を実装した基板が配設されている光源装置を備える流体殺菌装置を開示する。この流体殺菌装置では、金属ケースの背面に、UVによる殺菌処理後の流体が接触するように導出流路が形成され、導出流路の流体が光源を冷却するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開2019/032943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の流体殺菌装置では、光源の冷却のために、光源を内封している金属ケースに被殺菌流体が直接接触するので、冷却効率は高まるものの、被殺菌流体による金属ケースの腐食が問題になる。例えば流体殺菌装置の洗浄を行う際、塩素系の液体である被殺菌流体が用いられたとき金属ケースは特に腐食しやすい。この対策のために、導出流路に対する金属ケースの外面を耐腐食性部材で被覆したり、覆ったりすることは、耐腐食性部材が流されないように固定する構造が複雑化したり、耐腐食性部材が厚くなってしまう。
【0006】
本発明の目的は、被殺菌流体に因る腐食、固定構造の複雑化及び厚み増大という問題に対処しつつ、流れる被殺菌流体を利用して、光源を有効に冷却できるようにした流体殺菌装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、液体を殺菌する流体殺菌装置であって、
直線である軸の同軸上に一端側と他端側を有する筐体と、
前記筐体は、前記一端側に第1筒部と、前記第1筒部より大きい内径を有する前記他端側の第2筒部とを含み、
被殺菌流体が前記一端側から前記他端側へ一方向に流れるように、前記筐体の前記第1筒部内に収納されている流路管と、
前記筐体の前記第2筒部内に収納され、基板と、該基板の表面側に実装されて前記流路管内に紫外線を出射する光源と、内面側を前記基板の裏面に接触させて該裏面の全体を覆っている非金属シール部材とを有している光源装置と、
前記流路管の前記第2筒部側の端部から前記流路管の外に導出された前記被殺菌流体が前記非金属シール部材の外面側に接触して流れるように前記筐体内に形成されている導出通路と、
を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光源装置において、非金属シール部材は、光源を実装した基板の裏面の全体を覆って、筐体内の導出流路の被殺菌流体に接触する。筐体内の導出流路の被殺菌流体は、十分な圧力を有し、この圧力は非金属シール部材を基板の裏面に押し付けるように作用する。したがって、非金属シール部材は基板の裏面を確実に覆ってさえしていればよく、非金属シール部材を光源装置の厚さ方向に固定する構造を簡単化できるとともに、非金属シール部材を薄くすることができる。さらに、非金属シール部材を薄くでき、非金属シール部材の外面側を、導出通路を流れている被殺菌流体で冷却するので、非金属シール部材は、金属でなくても、支障なく光源の冷却を行うことができるとともに、被殺菌流体による基板の裏面の腐食の問題も解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】流体殺菌装置の縦断面図である。
図2】筐体本体の円筒部内に収納される収納部品を流体殺菌装置の軸方向に分解して示す分解斜視図である。
図3】光源装置及び筐体封鎖部材を軸方向に分解して軸方向一端側から見た分解斜視図である。
図4】光源装置及び筐体封鎖部材を軸方向に分解してそれぞれ軸方向他端側から見た分解斜視図である。
図5A図1において軸方向に拡径部及びアウタカバーを含む範囲の拡大図である。
図5B図5Aの拡径部の中心軸Rxより上側半部の拡大図である。
図6】セラミック製シールを備える光源装置及び筐体封鎖部材の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明は、実施形態に限定されないことは言うまでもない。なお、複数の実施形態間で共通する構成要素については、全図を通して同一の符号を使用する。
【0011】
(構成)
図1は、流体殺菌装置10の縦断面図である。流体殺菌装置10は、円筒状の筐体本体12と、キャップ形状のアウタカバー14とを有している。筐体本体12及びアウタカバー14は、流体殺菌装置10の筐体を構成し、中心軸Rxを揃えてそれぞれの雄ねじ部121及び雌ねじ部141において螺合している。雄ねじ部121及び雌ねじ部141の螺合は、筐体内の収納部品を軸方向に締め付けることにより、収納部品の組付構造を簡単化している。
【0012】
筐体本体12は、円筒部122、インレット123、拡径部124及びストッパ部125を有している。インレット123は、円筒部122の軸方向一端側から中心軸Rxに沿って一端側の方へ所定長さ突出している。ストッパ部125は、円筒部122の軸方向の一端側の内面として形成されており、中心部においてインレット123のインレット通路が開口している。ストッパ部125は、円筒部122内の収納部品が軸方向の一端側への移動を阻止する役割を有している。拡径部124は、一端側において円筒部122から径方向に張り出し、他端側において開口している。
【0013】
アウタカバー14は、カバー部の中心に開口142を有している。アウタカバー14は、カバー部により筐体本体12からの収納部品の離脱を阻止し、かつ筐体本体12との螺合後は、収納部品をストッパ部125の方へ押し付ける役割を有している。
【0014】
図2は、筐体本体12の円筒部122内に収納される収納部品を流体殺菌装置10の軸方向に分解して示す分解斜視図である。収納部品には、遮蔽体15、整流板16及び直管18が含まれ、それらの中心軸を中心軸Rxに揃えて、その順番で軸方向に一端側から他端側へ配列されて、筐体本体12の他端側の開口から内挿されている。
【0015】
遮蔽体15は、整流板16及び直管18と共に、紫外線耐性を有する材料によって構成される。遮蔽体15は、ストッパ部125に当てられて、UV(紫外線)に対してストッパ部125を遮蔽して、ストッパ部125をUVから保護している。遮蔽体15は、また、内周側にテーパ部151を有している。テーパ部151は、一端側及び他端側においてそれぞれインレット123及び直管18の内径に等しい径を有し、インレット123及び直管18とを相互に連通させる。テーパ部151を有する事によって、テーパ部151で反射したUVが整流板16の方向へ反射されることによって、UVの利用効率が上がる。
【0016】
整流板16は、中央部161を包囲する周辺部に複数の整流孔162を有している。中央部161は、不図示の圧送ポンプからインレット123及び遮蔽体15を経て整流板16に流入して来る被殺菌流体(例:水)に対し、堰止めの機能を果たしている。すなわち、テーパ部151において径方向中央部を流れる被殺菌流体は、中央部161に当たって、減速され、径方向外側に流れた後、整流孔162から直管18内に流入する。これにより、殺菌室182における被殺菌流体の流速が径方向の中央部と周辺部とで均一化する。また、中心軸Rx軸上に、遮蔽体15の流入口(テーパ部151の最小径部)と、整流板16の中央部161を有することによって、直管18から整流板方向へ出射されるUVが、流体殺菌装置10から漏出することを防いでいる。ここで、中央部161の面積は、遮蔽体15の流入口の面積以上である。
【0017】
直管18は、殺菌室182を内周側に画成している。複数の切欠き181は、軸方向他端側の直管18の周壁に周方向に等角度間隔で形成され、直管18の他端から一端側の方へ所定長さ延在している。Oリング183は、直管18の外周部の環状溝に嵌着して、外周部における被殺菌流体の漏れを阻止している。
【0018】
図3及び図4は、光源装置19及び筐体封鎖部材32を軸方向に分解してそれぞれ軸方向一端側及び他端側から見た分解斜視図である。図5Aは、図1において軸方向に拡径部124及びアウタカバー14を含む範囲の拡大図、図5Bは、図5Aの拡径部124の中心軸Rxより上側半部の拡大図である。
【0019】
図3図4図5A及び図5Bにおいて、光源装置19及び筐体封鎖部材32は、拡径部124内にそれぞれ一端側及び他端側の配置関係でそれらの中心軸を中心軸Rxに揃えて、収納されている。光源装置19は、軸方向に一端側から他端側へ順番に、遮蔽リング20、Oリング191、石英ガラス22、リフレクタ24、UV-LED26、基板28及び樹脂製シール材31に分解される。
【0020】
光源装置19において、UVを出射する側及びその反対側を適宜、それぞれ表面側及び裏面側ということにする。光源装置19は、表面側及び裏面側をそれぞれ流体殺菌装置10の軸方向の一端側及び他端側に向けている。Oリング191は、石英ガラス22の周部とリフレクタ24の表面側の環状段部との間に嵌着され、シールを行っている。これにより、直管18の他端側の開口は、石英ガラス22とOリング191とから構成される開口封鎖部材により封鎖されている。
【0021】
リフレクタ24は、反射面241、張出し面242、周面243及び凹所244を有している。反射面241は、リフレクタ24の内周側において裏面側から表面側に向かって径を漸増するテーパに形成されている。張出し面242は、リフレクタ24の表面側において反射面241の開口から径方向外側に張出している。周面243は、リフレクタ24の外周面として円柱側面に形成されている。凹所244は、リフレクタ24の裏面の周辺部に開口して形成されている。
【0022】
リフレクタ24は、遮蔽リング20と共に、紫外線耐性を有する材料によって構成される。リフレクタ24は、裏面側(図4)において、円周端面247、及び円周端面247の内周に沿って径方向内側に所定幅で張り出す環状段部248を有している。
【0023】
複数(図示の例では2個)のUV-LED26と、UV-LED26の通電回路を構成する複数の電気部品27は、それぞれ基板28の表面側の中心部及び周辺部に実装されている。UV-LED26は、リフレクタ24の裏面側からテーパ形状の反射面241内に露出し、電気部品27は、リフレクタ24の裏面の凹所244に収納されている。円形の基板28の周縁には、対向する1対の凹所281と1対の凹所282とが形成されている。
【0024】
電気部品27を収納した後の凹所244は、良好な熱伝導性(少なくとも空気より高い熱伝導性)を有する樹脂が封入されている。樹脂の封入構造は、例えば(a)リフレクタ24の裏面に基板28の表面を当てる前に高温で液状の樹脂を充填して、充填後、常温で固化させるか、(b)筐体本体12に光源装置19を収納する前に、リフレクタ24と基板28とをあらかじめ接合した後、リフレクタ24の表面側から凹所244に連通する直線の細孔(図示せず)を介して凹所244内に高温の液状の樹脂を注入し、その後、常温で固化させることにより作ることができる。樹脂の封入は、電気部品27の発熱を基板28に伝導し易くする。
【0025】
UV-LED26が出射するUVは、流体の殺菌に効力の高い深紫外線に属し、波長域が例えば100~400nmの範囲となっている。特に、紫外線波長領域のうち、波長が100~280nmのUVCは特に殺菌効果が高いのでより好ましい。
【0026】
樹脂製シール材31は、樹脂製であり、軸方向に貫通するハーネス孔311を有している。樹脂製シール材31は、基板28の裏面に当てられているとともに、Oリング192を挿通し、リフレクタ24の環状段部248に当てられている。樹脂製シール材31は、裏面側において、平板部310、平板部310に円周縁に沿って隆起する環状隆起部313、及び環状隆起部313の内周側に形成された1対の位置決め孔312を有している。平板部310は、樹脂製シール材31を掘りこむことによって形成されている。すなわち、平板部310は環状隆起部313よりも薄い。これにより、環状隆起部313によって剛性を保持しつつ、基板28の裏面と被殺菌流体の距離を短くでき、放熱性が向上する。ここで、樹脂製シール材31に代えて、基板28の裏面にセラミック溶射を行って、基板28の裏面をセラミックで被覆することもできる。
【0027】
筐体封鎖部材32は、内面側に、周方向に等角度間隔で形成されている複数の隆起としてのスペーサ320と、周方向に180°離れた関係にあるスペーサ320の隆起頂面に形成されている凸部321とを有している。円弧状突出縁324は、リフレクタ24の周面243の外側に嵌合している。
【0028】
ハーネス孔322を内周側に画成している円筒は、Oリング193を挿通してから、ハーネス孔311内に圧入されている。
【0029】
筐体封鎖部材32は、裏面側に、封鎖部325と、封鎖部325から中心軸Rxに沿って軸方向の他端側に突出するアウトレット326とを有している。アウトレット326は、アウタカバー14の開口142の内周側を通過して、突出端においてアウタカバー14の外側に達している。
【0030】
図5A及び図5Bにおいて、遮蔽リング20は、軸方向の一端側の環状端面を拡径部124の内周に、Oリング196を用いて嵌着されている。遮蔽リング20は、軸方向一端側及び他端側の内周側にそれぞれ円柱側面部202及びテーパ部201を有している。軸方向において、遮蔽リング20の一端側の端の位置P1、テーパ部201の小径側の端の位置P2、テーパ部201の大径側の端の位置P3、切欠き181の終端の位置(軸方向の一端の位置)Q1、及び切欠き181の始端位置(軸方向の他端の位置)、すなわち直管18の他端位置Q2について、図示の例では、軸方向に一端側から他端側の方へ順番に、P1、Q1、P2、P3(=Q2)の配置となっている。しかしながら、P1とQ1とは軸方向の同一位置(P1=Q1)であることが好ましい。なぜなら、切欠き181の全体がテーパ部201に露出して、切欠き181の有効面積が増大するとともに、テーパ部201の一端側と直管18の外周面との間に横断面が三角形の空間が形成されて、当該三角形の空間に被殺菌流体が滞留することを防止できるからである。
【0031】
図5A及び図5Bにおいて、Fnは流体殺菌装置10における被殺菌流体の流れを示している。導出流路35は、直管18の切欠き181から径方向の外側に導出されてくる被殺菌流体を流体殺菌装置10の外に導出する通路として、流体殺菌装置10内の光源装置19と、遮蔽リング20のテーパ部201、拡径部124、又は筐体封鎖部材32の封鎖部325の内面との間の空間に形成されている。導出流路35は、被殺菌流体の流れ方向に順番に第1流路部351、第2流路部352、第3流路部353、第4流路部354及び第5流路部355を有している。第1流路部351、第2流路部352及び第3流路部353は、軸方向視でいずれも環状の形状を有している。第4流路部354及び第5流路部355は、軸方向視で円形の形状を有している。
【0032】
第1流路部351は、軸方向にテーパ部201と張出し面242との間に挟まれた空間に形成され、導出流路35の最上流部分として切欠き181から導出した直後の被殺菌流体を下流側に導く。第2流路部352は、張出し面242と周面243との境界のコーナ部とテーパ部201との間の通過部として形成されている。第3流路部353は、拡径部124と周面243との間に環状に形成されている。第4流路部354は、光源装置19の裏面と筐体封鎖部材32の内面との間に軸方向の間隙として形成されている。
【0033】
(材料)
以下は、流体殺菌装置10を構成している各部品の材料の一例である。
(a)筐体(筐体本体12及びアウタカバー14):PC(ポリカーボネート)やPOM(ポリアセタール)等のエンジニアリングプラスチック
(b)遮蔽体15、整流板16、直管18、遮蔽リング20、リフレクタ24及び樹脂製シール材31:PTFE(ポリテトラフルオロエチレン4フッ化エチレン樹脂)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)、又はPVF(ポリフッ化ビニル)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)等の被殺菌流体及びフッ素樹脂、セラミック
【0034】
上記(b)の材料は、上記(a)の材料より紫外線耐性及びUVに対する反射率が高い材料として選択されている。なお、(a)の材料は、金属よりも被殺菌流体に対する耐腐食性の高い材料である。遮蔽体15及び遮蔽リング20について上記(a)の材料を選択した理由は、遮蔽体15及び遮蔽リング20がPTFEに軽度の加工を施した部材で構成されているため、簡便な加工で製造することのできる材料とするためである。
【0035】
(作用)
被殺菌流体は、不図示の圧送ポンプから流体殺菌装置10に圧送され、筐体本体12のインレット123、遮蔽体15のテーパ部151及び整流板16の整流孔162を経て直管18の殺菌室182内に導入される。整流板16が通孔無しの中央部161を有している理由は、被殺菌流体を整流板16の整流孔162に伴って整流化するとともに、殺菌室182における流速を、殺菌室182の径方向位置での流速を均一化させるためである。
【0036】
UV-LED26は、UVを、光源装置19の軸方向に石英ガラス22に向けて出射する。UV-LED26から出射した紫外線のうち、径方向に広がって反射面241に照射された紫外線は、反射面241で反射して中心軸Rxの方に反射される。紫外線は、石英ガラス22を通過して、殺菌室182内の被殺菌流体に照射される。これにより、被殺菌流体は、殺菌される。
【0037】
被殺菌流体は、石英ガラス22の表面に衝突することにより、向きを直管18の軸方向から径方向に変化し、切欠き181から直管18の外へ出る。複数の切欠き181の合計の流通断面積は、殺菌室182の流通断面積より小さいので、被殺菌流体の流速は、切欠き181において増大する。そして、被殺菌流体の流速は、テーパ部201によって更に増大する。
【0038】
図1では、流体殺菌装置10は、横置き(長手方向を水平方向に揃える置き方)になっているが、例えば、インレット123及びアウトレット326をそれぞれ下及び上にした縦置き(長手方向を鉛直方向に揃える置き方)で使用することが可能である。この場合、流体殺菌装置10を装備するウォータサーバ等の装備機器が停止するのに伴い、圧送ポンプの作動も停止し、直管18の上側部分に空気が残る。この残存空気は、次に圧送ポンプが作動開始した時、速やかに外に排出されることが好ましい。なぜなら、空気は、UVの強度を弱める原因になるからである。
【0039】
前述したように、被殺菌流体の流速は、切欠き181において増大するので、縦置きの流体殺菌装置10において、直管18の上部、すなわち切欠き181の高さに残存していた空気は、長く残存することなく、増速した被殺菌流体により速やかかつ円滑に直管18の外へ排出される。
【0040】
一方、石英ガラス22から殺菌室182に出射したUVのうち、径方向の外側に大きく広がったものは、切欠き181から直管18の外に出射する。以下、切欠き181に進入したUVを「外漏れUV」ともいう。
【0041】
前述したように、軸方向において、遮蔽リング20の一端側の端の位置P1、テーパ部201の小径側の端の位置P2、テーパ部201の大径側の端の位置P3、切欠き181の終端の位置Q1、切欠き181の始端の位置、すなわち直管18の他端位置Q2について、軸方向の位置関係が前述のように規定されている結果、外漏れUVは、流体殺菌装置10により遮断されて、筐体本体12の内面への照射が阻止される。すなわち、外漏れUVは、全量が遮蔽リング20のテーパ部201に照射して、径方向内側に反射するか、切欠き181の一端側を介して円柱側面部202へ反射して、直ちに直管18内に戻り、残りは、遮蔽リング20のテーパ部201に照射して、反射する。
【0042】
被殺菌流体は、第2流路部352を通過した後、リフレクタ24の周面243と拡径部124の内周面との間の環状の第3流路部353を軸方向に流れ、さらに、その後、封鎖部325の内面に当たって、進行方向を径方向の内側に変える。そして、光源装置19の背面側の第4流路部354に回り込んで、封鎖部325の内面に沿って径方向の中心部としてのアウトレット326の一端側の開口に集合する。第4流路部354は、軸方向に光源装置19の背面と筐体封鎖部材32の封鎖部325との間に挟まれる間隙として形成されている。ここで、切欠き181及びテーパ部201によって、被殺菌流体の流速が増大する事によって、放熱カバー30の冷却性を向上している。
【0043】
被殺菌流体は、第4流路部354において光源装置19の樹脂製シール材31の平板部310に接触して、樹脂製シール材31を冷却する。樹脂製シール材31は、第4流路部354の被殺菌流体の流体圧により基板28の背面に押圧される。したがって、樹脂製シール材31は、基板28の背面を完全に覆っていれば、強固な固定を必要とすることなく、基板28の背面からの剥離や、被殺菌流体の連行による流れ去りが防止される。
【0044】
樹脂製シール材31が基板28と共にリフレクタ24の円周端面247の内周側の環状段部248に当てられているときは、円周端面247が基板28の剥離や流れ去りを阻止するので、樹脂製シール材31の厚さを一層薄くして、熱伝導性を高めることができる。なお、樹脂製シール材31は、周縁において円周端面247に当たるのみで、円周端面247の内周側の環状段部248に当てられなくてもよい。この場合、筐体封鎖部材32の凸部321が樹脂製シール材31の位置決め孔312に嵌入して、スペーサ320が位置決め孔312の周壁の端部を軸方向の一端側に押圧して、樹脂製シール材31の剥離が阻止される。
【0045】
UV-LED26の発熱は、基板28に伝導する。なお、基板28は、金属基板とも呼ばれるもので、放熱を必要とする部品の実装領域は金属とされ、熱が裏面側へ伝導し易くなっている。
【0046】
基板28の裏面に伝導したUV-LED26からの伝導熱は、樹脂製シール材31の平板部310を伝導して、第4流路部354を流れている被殺菌流体に放出される。この樹脂製シール材31は、樹脂から構成されており、金属に比して低い熱伝導性を有している。しかしながら、樹脂製シール材31の冷却には、第4流路部354における十分な流速の被殺菌流体に放熱されるので、冷却効率は高く、UV-LED26の冷却には支障がない。
【0047】
また、第4流路部354における被殺菌流体の流れは、平板部310の周辺から中心部に集まり、次の第5流路部355に流れるようになっている。したがって、第4流路部354における被殺菌流体の流量は、径方向の内側程、増大する一方、UV-LED26からの伝導熱は、平板部310の中心部程、高い。したがって、平板部310において中心部に高温部が集中するのを回避することができる。
【0048】
被殺菌流体は、その後、第5流路部355を経て流体殺菌装置10の外に流出する。
【0049】
(セラミック製シール)
図6は、セラミック製シール37を備える光源装置19b及び筐体封鎖部材32の分解斜視図である。光源装置19bについて光源装置19との相違点について述べる。光源装置19は、光源装置19の樹脂製シール材31に代えてセラミック製シール37を備えている。1対の位置決め孔377は、樹脂製シール材31の1対の位置決め孔312と同様に、裏面に形成されて、組付け時では筐体封鎖部材32の凸部321を嵌入されている。突出筒375は、セラミック製シール37の裏面側に突出しているとともに、ハーネスを通す通孔を有している。筐体封鎖部材32のハーネス孔322(図3)は、Oリング193を挿通した状態で、突出筒375内に圧入されている。
【0050】
セラミック製シール37は、また、基板として利用することも可能である。すなわち、UV-LED26及び電気部品27をセラミック製シール37の表面側に実装して、基板28は省略することも可能である。
【0051】
(変形例)
流体殺菌装置10では、被殺菌流体として水が使用されている。しかしながら、本発明では、被殺菌流体は、水以外の液体であってもよい。
【0052】
流体殺菌装置10は、UV-LED26を2個、備えている。本発明の流体殺菌装置は、UVを出射する光源は、1個でもよいし、3個以上であってもよい。
【0053】
流体殺菌装置10が殺菌対象とする被殺菌流体の例として、製氷機の貯水タンクの貯水、送水管や給湯器における送水、ウォータサーバの飲料水、循環装置(チラー)の冷却水、及びドリンクサーバにおける飲料液がある。
【符号の説明】
【0054】
10・・・流体殺菌装置、18・・・直管、19・・・光源装置、20・・・遮蔽リング、22・・・石英ガラス、24・・・リフレクタ、26・・・UV-LED、28・・・基板、31・・・樹脂製シール材、32・・・筐体封鎖部材、35・・・導出流路、24・・・拡径部、112・・・筐体本体、114・・・アウタカバー、125・・・ストッパ部、142・・・開口、181・・・切欠き、201・・・テーパ部、202・・・円柱側面部、241・・・反射面、242・・・張出し面、243・・・周面、245・・・溝、325・・・封鎖部、326・・・アウトレット、351・・・第1流路部、352・・・第2流路部、353・・・第3流路部、354・・・第4流路部、355・・・第5流路部。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6