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  • 特開-転写装置及び画像形成装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144141
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】転写装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/16 20060101AFI20241003BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20241003BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20241003BHJP
   C08L 83/12 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G03G15/16
C08L79/08
C08K3/04
C08L83/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024020409
(22)【出願日】2024-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2023052431
(32)【優先日】2023-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 聡哉
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏晃
(72)【発明者】
【氏名】小野 雅人
(72)【発明者】
【氏名】久保 陽祐
(72)【発明者】
【氏名】西村 伊織
(72)【発明者】
【氏名】福田 茂
(72)【発明者】
【氏名】種村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】瀬古 真路
(72)【発明者】
【氏名】松本 晃一
(72)【発明者】
【氏名】古川 雅士
【テーマコード(参考)】
2H200
4J002
【Fターム(参考)】
2H200FA03
2H200FA16
2H200GA12
2H200GA23
2H200GA34
2H200GA47
2H200GB22
2H200JA02
2H200JA25
2H200JB10
2H200JC04
2H200JC15
2H200JC16
2H200LC04
2H200LC09
2H200MA01
2H200MA04
2H200MA06
2H200MA11
2H200MA14
2H200MA17
2H200MA20
2H200MB04
4J002CH052
4J002CM021
4J002CM041
4J002CP182
4J002DA036
4J002FB016
4J002FD096
4J002FD116
4J002FD202
4J002GF00
4J002GS00
4J002GT00
(57)【要約】
【課題】ゴースト現象が抑制される転写装置の提供。
【解決手段】ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、芳香族ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、及びポリエーテルイミド樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含む樹脂と導電性カーボン粒子とジメチルポリシロキサン及びジメチルポリシロキサンの有機基置換体からなる群より選択される少なくとも1種を含むシリコーンオイルとを含有し、外周面の6.3μm×4.2μmの評価領域に存在する導電性カーボン粒子の空間分布において粒子間距離rが0.05μm以上0.30μm以下における下記式(1)で表される統計量L(r)の積分値が0以上0.1以下である無端ベルトからなる中間転写体と、金属製の一次転写ロールを有する一次転写装置と、二次転写装置と、を備える転写装置。ただし、式(1)中K(r)はRipleyのK関数K(r)を示す。
【数1】


【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、芳香族ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、及びポリエーテルイミド樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含む樹脂と、導電性カーボン粒子と、ジメチルポリシロキサン及びジメチルポリシロキサンの有機基置換体からなる群より選択される少なくとも1種を含むシリコーンオイルと、を含有する層からなる又は前記層を最外層として有する無端ベルトであって、前記無端ベルトの外周面における6.3μm×4.2μmの評価領域に存在する前記導電性カーボン粒子の空間分布において、粒子間距離rが0.05μm以上0.30μm以下における下記式(1)で表される統計量L(r)の積分値が0以上0.1以下である無端ベルトからなる中間転写体と、
前記中間転写体の内周面に接し前記中間転写体に電界を印加する金属製の一次転写ロールを有し、像保持体の表面に形成されたトナー像を前記中間転写体の外周面に一次転写する一次転写装置と、
前記中間転写体の外周面に転写された前記トナー像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写装置と、
を備える転写装置。
【数1】


[前記式(1)中、rは前記粒子間距離を示し、K(r)は下記式(2)で表されるRipleyのK関数K(r)を示す。]
【数2】


[前記式(2)中、1(|X-X|≦r)は指示関数を示し、X及びXはそれぞれ点i及び点jの座標を示し、|X-X|は座標Xと座標Xとのユークリッド距離を示し、rは前記粒子間距離を示し、s(|X-X|)は下記式(3)で表される評価領域のエッジ補正係数s(x)を示し、x=|X-X|であり、Nは評価領域内における粒子の総数を示し、λは評価領域内における粒子の数密度を示す。]
【数3】


[前記式(3)中、L及びLはそれぞれ評価領域のx軸方向及びy軸方向における辺の長さ(μm)を示し、x=|X-X|であり、X及びXはそれぞれ点i及び点jの座標を示し、|X-X|は座標Xと座標Xとのユークリッド距離を示す。]
【請求項2】
前記シリコーンオイルは、前記ジメチルポリシロキサンの有機基置換体として、ポリエーテル構造を有する有機基及びアラルキル基からなる群より選択される少なくとも1種を有する変性シリコーンオイルを含む、請求項1に記載の転写装置。
【請求項3】
前記シリコーンオイルは、前記ジメチルポリシロキサンの有機基置換体としてポリエーテル変性シリコーンオイル及びアラルキル変性シリコーンオイルからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の転写装置。
【請求項4】
前記シリコーンオイルは、前記ジメチルポリシロキサンの有機基置換体としてポリエーテル変性シリコーンオイルを含む、請求項1に記載の転写装置。
【請求項5】
前記シリコーンオイルは、前記ジメチルポリシロキサンの有機基置換体としてアラルキル変性シリコーンオイルを含む、請求項1に記載の転写装置。
【請求項6】
前記シリコーンオイルの含有量は、前記層全体に対し、0.5質量%以上7質量%以下である、請求項1に記載の転写装置。
【請求項7】
前記シリコーンオイルの含有量は、前記層全体に対し、0.5質量%以上6質量%以下である、請求項6に記載の転写装置。
【請求項8】
前記シリコーンオイルの含有量は、前記層全体に対し、1質量%以上3質量%以下である、請求項6に記載の転写装置。
【請求項9】
前記樹脂は、イミド系樹脂を含む、請求項1に記載の転写装置。
【請求項10】
前記イミド系樹脂は、ポリイミド樹脂を含む、請求項9に記載の転写装置。
【請求項11】
前記シリコーンオイルは前記ジメチルポリシロキサンの有機基置換体としてポリエーテル変性シリコーンオイル及びアラルキル変性シリコーンオイルからなる群より選択される少なくとも1種を含み、かつ、前記樹脂はイミド系樹脂を含む、請求項1に記載の転写装置。
【請求項12】
前記イミド系樹脂は、ポリイミド樹脂を含む、請求項11に記載の転写装置。
【請求項13】
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電装置と、
帯電した前記像保持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、
トナーを含む現像剤を収容し、前記現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記トナー像を記録媒体の表面に転写する請求項1~請求項12のいずれか1項に記載の転写装置と、
を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた画像形成装置(複写機、ファクシミリ、プリンタ等)では、像保持体の表面に形成されたトナー像を記録媒体の表面に転写し、記録媒体上に定着して画像が形成される。なお、こうしたトナー像の記録媒体への転写には、例えば、中間転写ベルトのような導電性の無端ベルトを備える転写装置が用いられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、像担持体と現像装置と中間転写体と2次転写器とを備え、上記中間転写体は、基材と表面層とを有する複数層の構成からなり、基材は導電剤を分散された樹脂材料で構成され、表面層は、導電剤と平均粒子径1μm以下の疎水性無機材料が分散された樹脂材料で構成され、かつ、その体積抵抗率が109.5Ωcmから1013Ωcmの範囲であることを特徴とする画像形成装置が開示されている。
【0004】
特許文献2には、像担持体と中間転写ベルトと2次転写ロールとを具備し、前記2次転写ロールと前記中間転写ベルトとを圧接配置させ、前記中間転写ベルトの外周面が前記2次転写ロールの外形に沿って接触していることを特徴とする画像形成装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-202648号公報
【特許文献2】特開2006-243031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、低コストの希求から、像保持体の表面に形成されたトナー像を無端ベルトからなる中間転写体に一次転写する一次転写部材として、無端ベルトの内周面に接して無端ベルトに電界を印加する金属製の一次転写ロールを用いることが求められている。
しかしながら、無端ベルトからなる中間転写体と金属製の一次転写ロールを有する一次転写装置と二次転写装置とを有する転写装置では、金属製の一次転写ロールが、剛体であり、かつ高い導電性を有する。そのため、無端ベルトの外周面において電荷が一次転写ロールの軸方向に沿面伝導しやすく、無端ベルトと像保持体との間の電場が斜めに印加され、トナー像が転写位置からずれることによるトナーの飛び散りに起因して、本来画像が形成されない領域に残像として現れる現象(以下「ゴースト現象」ともいう)が発生しやすくなる。
【0007】
本発明の課題は、無端ベルトからなる中間転写体と金属製の一次転写ロールを有する一次転写装置と二次転写装置とを有し、無端ベルトが樹脂及び導電性カーボン粒子を含有する層からなる又は前記層を最外層として有する転写装置において、前記層がシリコーンオイルを含有しない場合、前記層がシリコーンオイルとしてフッ素変性シリコーンオイルのみを含有する場合、又は無端ベルトの外周面における6.3μm×4.2μmの評価領域に存在する前記導電性カーボン粒子の空間分布において、粒子間距離rが0.05μm以上0.30μm以下における下記式(1)で表される統計量L(r)の積分値が0.1超えである場合に比べ、無端ベルトの外周面における電荷の沿面伝導に起因するゴースト現象が抑制される転写装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、以下の手段により解決される。
<1>
ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、芳香族ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、及びポリエーテルイミド樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含む樹脂と、導電性カーボン粒子と、ジメチルポリシロキサン及びジメチルポリシロキサンの有機基置換体からなる群より選択される少なくとも1種を含むシリコーンオイルと、を含有する層からなる又は前記層を最外層として有する無端ベルトであって、前記無端ベルトの外周面における6.3μm×4.2μmの評価領域に存在する前記導電性カーボン粒子の空間分布において、粒子間距離rが0.05μm以上0.30μm以下における下記式(1)で表される統計量L(r)の積分値が0以上0.1以下である無端ベルトからなる中間転写体と、
前記中間転写体の内周面に接し前記中間転写体に電界を印加する金属製の一次転写ロールを有し、像保持体の表面に形成されたトナー像を前記中間転写体の外周面に一次転写する一次転写装置と、
前記中間転写体の外周面に転写された前記トナー像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写装置と、
を備える転写装置。
【0009】
【数1】
【0010】
[前記式(1)中、rは前記粒子間距離を示し、K(r)は下記式(2)で表されるRipleyのK関数K(r)を示す。]
【0011】
【数2】
【0012】
[前記式(2)中、1(|X-X|≦r)は指示関数を示し、X及びXはそれぞれ点i及び点jの座標を示し、|X-X|は座標Xと座標Xとのユークリッド距離を示し、rは前記粒子間距離を示し、s(|X-X|)は下記式(3)で表される評価領域のエッジ補正係数s(x)を示し、x=|X-X|であり、Nは評価領域内における粒子の総数を示し、λは評価領域内における粒子の数密度を示す。]
【0013】
【数3】
【0014】
[前記式(3)中、L及びLはそれぞれ評価領域のx軸方向及びy軸方向における辺の長さ(μm)を示し、x=|X-X|であり、X及びXはそれぞれ点i及び点jの座標を示し、|X-X|は座標Xと座標Xとのユークリッド距離を示す。]
【0015】
<2>
前記シリコーンオイルは、前記ジメチルポリシロキサンの有機基置換体として、ポリエーテル構造を有する有機基及びアラルキル基からなる群より選択される少なくとも1種を有する変性シリコーンオイルを含む、<1>に記載の転写装置。
<3>
前記シリコーンオイルは、前記ジメチルポリシロキサンの有機基置換体としてポリエーテル変性シリコーンオイル及びアラルキル変性シリコーンオイルからなる群より選択される少なくとも1種を含む、<1>又は<2>に記載の転写装置。
<4>
前記シリコーンオイルは、前記ジメチルポリシロキサンの有機基置換体としてポリエーテル変性シリコーンオイルを含む、<1>~<3>のいずれか1つに記載の転写装置。
<5>
前記シリコーンオイルは、前記ジメチルポリシロキサンの有機基置換体としてアラルキル変性シリコーンオイルを含む、<1>~<3>のいずれか1つに記載の転写装置。
<6>
前記シリコーンオイルの含有量は、前記層全体に対し、0.5質量%以上7質量%以下である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の転写装置。
<7>
前記シリコーンオイルの含有量は、前記層全体に対し、0.5質量%以上6質量%以下である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の転写装置。
<8>
前記シリコーンオイルの含有量は、前記層全体に対し、1質量%以上3質量%以下である、<1>~<7>のいずれか1つに記載の転写装置。
<9>
前記樹脂は、イミド系樹脂を含む、<1>~<8>のいずれか1つに記載の転写装置。<10>
前記イミド系樹脂は、ポリイミド樹脂を含む、<9>に記載の転写装置。
【0016】
<11>
前記シリコーンオイルは前記ジメチルポリシロキサンの有機基置換体としてポリエーテル変性シリコーンオイル及びアラルキル変性シリコーンオイルからなる群より選択される少なくとも1種を含み、かつ、前記樹脂はイミド系樹脂を含む、<1>に記載の転写装置。
<12>
前記イミド系樹脂は、ポリイミド樹脂を含む、<11>に記載の転写装置。
【0017】
<13>
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電装置と、
帯電した前記像保持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、
トナーを含む現像剤を収容し、前記現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記トナー像を記録媒体の表面に転写する<1>~<12>のいずれか1つに記載の転写装置と、
を備える画像形成装置。
【発明の効果】
【0018】
<1>に係る発明によれば、無端ベルトからなる中間転写体と金属製の一次転写ロールを有する一次転写装置と二次転写装置とを有し、無端ベルトが樹脂及び導電性カーボン粒子を含有する層からなる又は前記層を最外層として有する転写装置において、前記層がシリコーンオイルを含有しない場合、前記層がシリコーンオイルとしてフッ素変性シリコーンオイルのみを含有する場合、又は無端ベルトの外周面における6.3μm×4.2μmの評価領域に存在する前記導電性カーボン粒子の空間分布において、粒子間距離rが0.05μm以上0.30μm以下における下記式(1)で表される統計量L(r)の積分値が0.1超えである場合に比べ、無端ベルトの外周面における電荷の沿面伝導に起因するゴースト現象が抑制される転写装置が提供される。
【0019】
<2>、<3>、<4>、又は<5>に係る発明によれば、シリコーンオイルがジメチルポリシロキサンからなる場合に比べ、ゴースト現象が抑制される状態が維持される転写装置が提供される。
<6>又は<7>に係る発明によれば、シリコーンオイルの含有量が0.5質量%未満である場合に比べ、ゴースト現象が抑制される転写装置が提供される。
<8>に係る発明によれば、シリコーンオイルの含有量が1質量%未満である場合に比べ、ゴースト現象が抑制される転写装置が提供される。
<9>又は<10>に係る発明によれば、樹脂が芳香族ポリエーテルエーテルケトン樹脂からなる場合に比べ、ゴースト現象が抑制される状態が維持される転写装置が提供される。
【0020】
<11>又は<12>に係る発明によれば、シリコーンオイルがジメチルポリシロキサンからなる場合、又は樹脂が芳香族ポリエーテルエーテルケトン樹脂からなる場合に比べ、ゴースト現象が抑制される状態が維持される転写装置が提供される。
【0021】
<13>に係る発明によれば、無端ベルトからなる中間転写体と金属製の一次転写ロールを有する一次転写装置と二次転写装置とを有し、無端ベルトが樹脂及び導電性カーボン粒子を含有する層からなる又は前記層を最外層として有する転写装置において、前記層がシリコーンオイルを含有しない転写装置、前記層がシリコーンオイルとしてフッ素変性シリコーンオイルのみを含有する転写装置、又は無端ベルトの外周面における6.3μm×4.2μmの評価領域に存在する前記導電性カーボン粒子の空間分布において、粒子間距離rが0.05μm以上0.30μm以下における下記式(1)で表される統計量L(r)の積分値が0.1超えである転写装置を備える場合に比べ、無端ベルトの外周面における電荷の沿面伝導に起因するゴースト現象が抑制される画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本実施形態について説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、実施形態の範囲を制限するものではない。
【0024】
本実施形態中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本実施形態中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本実施形態において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本実施形態において実施形態を図面を参照して説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
本実施形態において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。本実施形態において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0025】
[転写装置]
本実施形態に係る転写装置は、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、芳香族ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、及びポリエーテルイミド樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含む樹脂と、導電性カーボン粒子と、ジメチルポリシロキサン及びジメチルポリシロキサンの有機基置換体からなる群より選択される少なくとも1種を含むシリコーンオイルと、を含有する層からなる又は前記層を最外層として有する無端ベルトであって、前記無端ベルトの外周面における6.3μm×4.2μmの評価領域に存在する前記導電性カーボン粒子の空間分布において、粒子間距離rが0.05μm以上0.30μm以下における下記式(1)で表される統計量L(r)の積分値が0以上0.1以下である無端ベルトからなる中間転写体と、前記中間転写体の内周面に接し前記中間転写体に電界を印加する金属製の一次転写ロールを有し、像保持体の表面に形成されたトナー像を前記中間転写体の外周面に一次転写する一次転写装置と、前記中間転写体の外周面に転写された前記トナー像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写装置と、を備える。
【0026】
【数4】
【0027】
[前記式(1)中、rは前記粒子間距離を示し、K(r)は下記式(2)で表されるRipleyのK関数K(r)を示す。]
【0028】
【数5】
【0029】
[前記式(2)中、1(|X-X|≦r)は指示関数を示し、X及びXはそれぞれ点i及び点jの座標を示し、|X-X|は座標Xと座標Xとのユークリッド距離を示し、rは前記粒子間距離を示し、s(|X-X|)は下記式(3)で表される評価領域のエッジ補正係数s(x)を示し、x=|X-X|であり、Nは評価領域内における粒子の総数を示し、λは評価領域内における粒子の数密度を示す。]
【0030】
【数6】
【0031】
[前記式(3)中、L及びLはそれぞれ評価領域のx軸方向及びy軸方向における辺の長さ(μm)を示し、x=|X-X|であり、X及びXはそれぞれ点i及び点jの座標を示し、|X-X|は座標Xと座標Xとのユークリッド距離を示す。]
【0032】
以下、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、芳香族ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、及びポリエーテルイミド樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含む樹脂を「第1の樹脂」ともいう。
また、ジメチルポリシロキサン及びジメチルポリシロキサンの有機基置換体からなる群より選択される少なくとも1種を「特定シリコーンオイル」ともいう。
また、無端ベルトの外周面を構成する層を「外周層」ともいう。
また、無端ベルトの外周面における6.3μm×4.2μmの評価領域に存在する導電性カーボン粒子の空間分布において、粒子間距離rが0.05μm以上0.30μm以下における式(1)で表される統計量L(r)の積分値を「L(r)積分値」ともいう。
なお、「導電性」とは、20℃における体積抵抗率が1×1013Ωcm未満であることを意味する。
【0033】
無端ベルトからなる中間転写体と金属製の一次転写ロールを有する一次転写装置と二次転写装置とを有する転写装置では、前記の通り、金属製の一次転写ロールが剛体であり、かつ高い導電性を有するため、ゴースト現象が発生しやすくなる。
具体的には、金属製の一次転写ロールが剛体であることにより、像保持体と一次転写ロールとで中間転写体が挟み込まれる領域(以下「ニップ領域」ともいう)の周方向幅が狭くなる。そして、無端ベルトが、周方向幅の狭いニップ領域において導電性の高い一次転写ロールに接触することで、無端ベルトの外周面において電荷が一次転写ロールの軸方向に沿面伝導しやすくなる。電荷の沿面伝導が起こると、無端ベルトと像保持体との間の電場が斜めに印加されることで、トナー像が転写位置からずれることがある。このとき、ニップ領域の周方向幅が狭いと、無端ベルトがニップ領域を通過する時間が短くなり、トナーの飛び散りが起こりやすく、トナーの飛び散りに起因するゴースト現象が発生しやすくなる。
特に、無端ベルトの外周面に一次転写された第1のトナー像の上に、第2の像保持体上に形成された第2のトナー像を重ねて一次転写する場合、無端ベルト上の第1のトナー像が保持する電荷の影響を受け、無端ベルトと第2の像保持体との間の電場がさらに斜めに印加されやすく、ゴースト現象が顕著となることがある。
【0034】
これに対して、本実施形態では、外周層が特定シリコーンオイルを含有し、かつ、外周層におけるL(r)積分値が0以上0.1以下であることにより、ゴースト現象が抑制される。その理由は定かではないが、以下のように推測される。
外周層におけるL(r)積分値が0以上0.1以下であることは、無端ベルトの外周面において、導電性カーボン粒子が細かく分散していることを意味する。そのため、無端ベルトの外周面において細かく分散された導電性カーボン粒子により電流が分散されることで、金属製の一次転写ロールが無端ベルトの内周面に接触しても、一次転写ロールの軸方向における沿面伝導が抑制される。加えて、特定シリコーンオイルが無端ベルトの外周層に含有されることで、外周面における非静電的付着力が低減され、トナーが飛び散って本来画像が形成されない領域に付着しても剥離しやすく、ゴースト現象が抑制されるものと推測される。
【0035】
〔中間転写体〕
中間転写体は、無端ベルトからなる。
無端ベルトは、単層体であってもよく、積層体であってもよい。
無端ベルトが単層体である場合、前記単層体が、第1の樹脂と導電性カーボン粒子と特定シリコーンオイルとを含有し、L(r)積分値が0以上0.1以下の外周層である。以下、外周層に含有される導電性カーボン粒子を「第1の導電性カーボン粒子」ともいい、外周層である単層体を「単層」ともいう。
無端ベルトが積層体である場合、前記積層体は、例えば、基材層と、基材層に設けられ最外層である表面層と、を有する。積層体は、基材層と表面層との間に他の層を有してもよい。無端ベルトが基材層と表面層とを有する積層体である場合、前記表面層が、第1の樹脂と第1の導電性カーボン粒子と特定シリコーンオイルとを含有し、L(r)積分値が0以上0.1以下の外周層である。以下、外周層である表面層を「第1の層」ともいう。
なお、無端ベルトが基材層と表面層とを有する積層体である場合、前記基材層は特に限定されるものではなく、例えば、後述する第2の樹脂と後述する第2の導電性カーボン粒子とを含有する層が挙げられる。以下、基材層を「第2の層」ともいう。
【0036】
<樹脂>
外周層に含まれる第1の樹脂は、ポリイミド樹脂(PI樹脂)、ポリアミドイミド樹脂(PAI樹脂)、芳香族ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK樹脂)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS樹脂)、及びポリエーテルイミド樹脂(PEI樹脂)からなる群より選択される少なくとも1種を含む。第1の樹脂は、1種の樹脂からなるものであってもよく、2種以上の樹脂の混合物であってもよい。
第1の樹脂は、他の樹脂を含んでもよい。第1の樹脂全体に対するポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、芳香族ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、及びポリエーテルイミド樹脂の合計含有率は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましい。他の樹脂としては、PEEK樹脂以外の芳香族ポリエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
【0037】
第1の樹脂は、ゴースト現象が抑制される状態を維持する観点から、イミド系樹脂を含むことが好ましい。第1の樹脂がイミド系樹脂を含むことでゴースト現象が抑制される状態が維持される理由は定かではないが、イミド系樹脂が剛直であることにより、特定シリコーンオイルが無端ベルトの外周面に近い領域に存在した状態が維持されやすいためと推測される。第1の樹脂がイミド系樹脂を含む場合、第1の樹脂全体に対するイミド系樹脂の合計含有率は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましい。
イミド系樹脂としては、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂等が挙げられる。第1の樹脂は、ゴースト現象が抑制される状態を維持する観点から、イミド系樹脂のなかでも、ポリイミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、ポリイミド樹脂を含むことがさらに好ましい。
【0038】
なお、基材層に含有される第2の樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、芳香族ポリエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。第2の樹脂は、1種の樹脂からなるものであってもよく、2種以上の樹脂の混合物であってもよい。
なお、無端ベルトが第1の層と第2の層とを有する場合、第1の樹脂と第2の樹脂とは、同じ樹脂であってもよく、異なる樹脂であってもよく、同種の樹脂である(例えば第1の樹脂及び第2の樹脂がいずれもポリイミド樹脂である)ことが好ましい。
【0039】
(ポリイミド樹脂)
ポリイミド樹脂としては、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との重合体であるポリアミック酸(ポリイミド樹脂の前駆体)のイミド化物が挙げられる。
ポリイミド樹脂としては、例えば、下記一般式(I)で示される構成単位を有する樹脂が挙げられる。
【0040】
【化1】
【0041】
一般式(I)中、Rは4価の有機基を表し、Rは2価の有機基を表す。
で表される4価の有機基としては、芳香族基、脂肪族基、環状脂肪族基、芳香族基と脂肪族基とを組み合わせた基、又はそれらが置換された基が挙げられる。4価の有機基として具体的には、例えば、後述するテトラカルボン酸二無水物の残基が挙げられる。
で表される2価の有機基としては、芳香族基、脂肪族基、環状脂肪族基、芳香族基と脂肪族基とを組み合わせた基、又はそれらが置換された基が挙げられる。2価の有機基として具体的には、例えば、後述するジアミン化合物の残基が挙げられる。
【0042】
ポリイミド樹脂の原料として用いるテトラカルボン酸二無水物として具体的には、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン酸二無水物、ペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0043】
ポリイミド樹脂の原料として用いるジアミン化合物の具体例としては、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジクロロベンジジン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、1,5-ジアミノナフタレン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、3,3’-ジメチル4,4’-ビフェニルジアミン、ベンジジン、3,3’-ジメチルベンジジン、3,3’-ジメトキシベンジジン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、2,4-ビス(β-アミノ第三ブチル)トルエン、ビス(p-β-アミノ-第三ブチルフェニル)エーテル、ビス(p-β-メチル-δ-アミノフェニル)ベンゼン、ビス-p-(1,1-ジメチル-5-アミノ-ペンチル)ベンゼン、1-イソプロピル-2,4-m-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、ジ(p-アミノシクロヘキシル)メタン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ジアミノプロピルテトラジアミン、3-メチルヘプタメチレンジアミン、4,4-ジメチルヘプタメチレンジアミン、2,11-ジアミノドデカン、1,2-ビス-3-アミノプロポキシエタン、2,2-ジメチルプロピレンジアミン、3-メトキシヘキサメチレンジアミン、2,5-ジメチルヘプタメチレンジアミン、3-メチルヘプタメチレンジアミン、5-メチルノナメチレンジアミン、2,17-ジアミノエイコサデカン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,10-ジアミノ-1,10-ジメチルデカン、12-ジアミノオクタデカン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、ピペラジン、HN(CHO(CHO(CH)NH、HN(CHS(CHNH、HN(CHN(CH(CHNH等が挙げられる。
【0044】
(ポリアミドイミド樹脂)
ポリアミドイミド樹脂としては、繰り返し単位にイミド結合とアミド結合とを有する樹脂が挙げられる。
より具体的には、ポリアミドイミド樹脂は、酸無水物基を有する3価のカルボン酸化合物(トリカルボン酸ともいう)と、ジイソシアネート化合物又はジアミン化合物と、の重合体が挙げられる。
【0045】
トリカルボン酸としては、トリメリット酸無水物及びその誘導体が好ましい。トリカルボン酸の他に、テトラカルボン酸二無水物、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸などを併用してもよい。
【0046】
ジイソシアネート化合物としては、3,3’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、2,2’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、ビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、ビフェニル-3,3’-ジイソシアネート、ビフェニル-3,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジエチルビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、2,2’-ジエチルビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメトキシビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、2,2’-ジメトキシビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、ナフタレン-2,6-ジイソシアネート等が挙げられる。
ジアミン化合物としては、上記のイソシアネートと同様の構造を有し、イソシアナト基の代わりにアミノ基を有する化合物が挙げられる。
【0047】
(芳香族ポリエーテルエーテルケトン樹脂)
芳香族ポリエーテルエーテルケトン樹脂としては、例えば、ベンゼン環等の芳香環がエーテル結合及びケトン結合により直鎖状に結合した樹脂のうち、エーテル結合、エーテル結合、ケトン結合の順に結合を配置した樹脂が挙げられる。
【0048】
(ポリフェニレンサルファイド樹脂)
ポリフェニレンサルファイド樹脂としては、例えば、ベンゼン環を有する基と硫黄原子とが交互に結合した樹脂が挙げられる。
ベンゼン環を有する基としては、例えば、p-フェニレン、m-フェニレン、o-フェニレン、アルキル置換フェニレン、フェニル置換フェニレン、ハロゲン置換フェニレン、アミノ置換フェニレン、アミド置換フェニレン等が挙げられる。
【0049】
(ポリエーテルイミド樹脂)
ポリエーテルイミド樹脂としては、例えば、芳香族ビス(エーテルジカルボン)酸とジアミンとの重合体が挙げられる。
芳香族ビス(エーテルジカルボン)酸としては、2,2-ビス[4-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン等が挙げられる。
ジアミンとしては、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、メタフェニレンジアミン等が挙げられる。
【0050】
単層体である無端ベルトにおいて、外周層である単層全体に対する第1の樹脂の含有量は、機械的強度及び体積抵抗率調整等の観点から、48質量%以上91質量%以下であることが好ましく、55質量%以上89質量%以下であることがより好ましく、65質量%以上84質量%以下であることが更に好ましい。
積層体である無端ベルトにおいて、外周層である第1の層全体に対する第1の樹脂の含有量は、機械的強度及び体積抵抗率調整等の観点から、48質量%以上91質量%以下であることが好ましく、55質量%以上89質量%以下であることがより好ましく、65質量%以上84質量%以下であることが更に好ましい。
積層体である無端ベルトにおいて、第2の層全体に対する第2の樹脂の含有量は、機械的強度及び体積抵抗率調整等の観点から、60質量%以上95質量%以下であることが好ましく、70質量%以上90質量%以下であることがより好ましく、70質量%以上80質量%であることが更に好ましい。
【0051】
<導電性カーボン粒子>
外周層に含有される第1の導電性カーボン粒子としては、例えばカーボンブラックが挙げられる。
カーボンブラックとしては、例えば、ケッチェンブラック、オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、等が挙げられる。カーボンブラックとしては、表面が処理されたカーボンブラック(以下、「表面処理カーボンブラック」ともいう)を用いてもよい。
表面処理カーボンブラックは、その表面に、例えば、カルボキシ基、キノン基、ラクトン基、ヒドロキシ基等を付与して得られる。表面処理の方法としては、例えば、高温雰囲気下で空気と接触して反応させる空気酸化法、常温(例えば、22℃)下で窒素酸化物又はオゾンと反応させる方法、高温雰囲気下での空気酸化後、低温でオゾンにより酸化する方法等を挙げられる。
【0052】
第1の導電性カーボン粒子の個数平均一次粒径としては、例えば20nm以下の範囲が挙げられ、L(r)積分値を前記範囲に調整する観点から、18nm以下の範囲が好ましく、15nm以下の範囲がより好ましく、13nm以下の範囲がさらに好ましい。また、第1の導電性カーボン粒子の個数平均一次粒径としては、例えば2nm以上の範囲が挙げられ、L(r)積分値を前記範囲に調整する観点から、5nm以上の範囲が好ましく、10nm以上の範囲がより好ましい。
【0053】
導電性カーボン粒子の個数平均一次粒径は、次の方法により測定される。
まず、得られたベルトの各層から、ミクロトームにより、100nmの厚さの測定サンプルを採取し、本測定サンプルをTEM(透過型電子顕微鏡)により観察する。そして、導電性カーボン粒子50個の各々の投影面積に等しい円の直径(すなわち円相当径)を粒子径として、その平均値を個数平均一次粒径とする。
【0054】
第1の樹脂がポリイミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むものであり、後述する第1の塗布液を用いて外周層を形成する場合、第1の導電性カーボン粒子は、L(r)積分値を前記範囲に調整する観点から、これらの中でも、チャンネルブラックが好ましく、表面が処理されたチャンネルブラックがより好ましい。
第1の塗布液を用いて外周層を形成する場合、第1の導電性カーボン粒子のpHとしては、例えば1.0以上5.5以下の範囲が挙げられ、L(r)積分値を前記範囲に調整する観点から、1.0以上3.0以下の範囲が好ましい。
【0055】
前記第1の樹脂がポリエーテルイミド樹脂、芳香族ポリエーテルエーテルケトン樹脂、及びポリフェニレンサルファイド樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むものであり、後述する溶融押出により外周層を形成する場合、第1の導電性カーボン粒子は、L(r)積分値を前記範囲に調整する観点から、これらの中でも、チャンネルブラック、ファーネスブラックが好ましく、その中でも表面が処理されていないものがより好ましい。
【0056】
第1の導電性カーボン粒子は、1種の導電性カーボン粒子からなるものであってもよく、2種以上の導電性カーボン粒子の混合物であってもよい。
【0057】
単層体である無端ベルトにおいて、外周層である単層全体に対する第1の導電性カーボン粒子の含有量は、L(r)積分値を小さくする観点、及び強度確保の観点から、8質量%以上45質量%以下であることが好ましく、10質量%以上38質量%以下であることがより好ましく、13質量%以上30質量%以下であることが更に好ましい。
積層体である無端ベルトにおいて、外周層である第1の層全体に対する第1の導電性カーボン粒子の含有量は、L(r)積分値を小さくする観点、強度確保の観点から、8質量%以上45質量%以下であることが好ましく、10質量%以上38質量%以下であることがより好ましく、13質量%以上30質量%以下であることが更に好ましい。
【0058】
積層体である無端ベルトにおいて、第2の層に含有される第2の導電性カーボン粒子の具体例は、第1の導電性カーボン粒子の具体例と同様のものが挙げられる。
第2の導電性カーボン粒子の個数平均一次粒径としては、例えば2nm以上40nm以下の範囲が挙げられ、分散性、機械的強度、体積抵抗率、成膜性等の観点から、20nm以上40nm以下の範囲が好ましく、20nm以上35nm以下の範囲がより好ましく、20nm以上28nm以下の範囲がさらに好ましい。
【0059】
無端ベルトが第1の層及び第2の層を有する場合、第1の導電性カーボン粒子の個数平均一次粒径は、第2の導電性カーボン粒子の個数平均一次粒径よりも小さいことが好ましい。第1の導電性カーボン粒子の個数平均一次粒径は、第2の導電性カーボン粒子の個数平均一次粒径の0.5倍以上1.0倍未満であることが好ましく、0.5倍以上0.8倍以下であることがより好ましく、0.5倍以上0.7倍以下であることがさらに好ましい。
【0060】
積層体である無端ベルトにおいて、後述する第2の塗布液を用いて基材層を形成する場合、第2の導電性カーボン粒子のpHとしては、例えば1.0以上5.5以下の範囲が挙げられ、L(r)積分値を前記範囲に調整する観点から、1.0以上3.0以下の範囲が好ましい。
なお、無端ベルトが第1の塗布液を用いて形成された第1の層及び第2の塗布液を用いて形成された第2の層を有する場合、第1の導電性カーボン粒子のpHは、第2の導電性カーボン粒子のpHよりも小さいことが好ましい。
【0061】
積層体である無端ベルトにおいて、基材層全体に対する第2の導電性カーボン粒子の含有量は、分散性、機械的強度、体積抵抗率調整の観点から、5質量%以上40質量%以下であることが好ましく、10質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以上30質量%以下であることが更に好ましい。
【0062】
<シリコーンオイル>
外周層に含有されるシリコーンオイルは、特定シリコーンオイル、すなわち、ジメチルポリシロキサン及びジメチルポリシロキサンの有機基置換体からなる群より選択される少なくとも1種を含む。
ここで、「ジメチルポリシロキサンの有機基置換体」とは、ジメチルポリシロキサンにおける少なくとも一部のメチル基が有機基により置換された化合物を意味する。
【0063】
有機基は、炭素原子を有する基であれば特に限定されるものではない。有機基としては、例えば、アルキル基、アミノ基、エポキシ基、脂環式エポキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、メルカプト基、フェニル基、ビニル基、アルキレン基、カルボニル基、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、アミド結合、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1種を有する基のうち1以上の炭素原子を有する基が挙げられる。
【0064】
ジメチルポリシロキサンの有機基置換体は、ジメチルポリシロキサンの側鎖として有機基が結合した側鎖型変性シリコーンオイルでもよく、ジメチルポリシロキサンの片末端に有機基が結合した片末端型変性シリコーンオイルでもよく、ジメチルポリシロキサンの両末端にそれぞれ有機基が結合した両末端型変性シリコーンオイルでもよく、ジメチルポリシロキサンの側鎖及び両末端にそれぞれ有機基が結合した側鎖両末端変性シリコーンオイルでもよい。ジメチルポリシロキサンの有機基置換体は、ゴースト現象を抑制する観点から、側鎖型変性シリコーンオイル、両末端型変性シリコーンオイル、側鎖両末端型シリコーンオイルが好ましく、両末端型変性シリコーンオイルがより好ましい。
【0065】
ジメチルポリシロキサンの有機基置換体としては、有機基として、ポリエーテル構造を有する基、アラルキル基、フロロアルキル基、長鎖アルキル基、フェニル基、エステル結合を含有する基、アミド結合を含有する基、エポキシ基を含有する基、アミノ基を含有する基、カルボキシ基を含有する基、ヒドロキシ基を含有する基、及びメルカプト基を含有する基からなる群より選択される少なくとも1種を有するシリコーンオイルが挙げられる。ジメチルポリシロキサンの有機基置換体は、上記有機基を1種のみ有してもよく、2種以上有してもよい。
ジメチルポリシロキサンの有機基置換体は、ゴースト現象が抑制される状態を維持する観点から、有機基として、ポリエーテル構造を有する基、アラルキル基、フロロアルキル基、長鎖アルキル基、フェニル基、エステル結合を含有する基、及びアミド結合を含有する基からなる群より選択される少なくとも1種を有するシリコーンオイルが好ましく、ポリエーテル結合を有する基、アラルキル基、及び長鎖アルキル基からなる群より選択される少なくとも1種を有するシリコーンオイルがより好ましく、ポリエーテル結合を有する基及びアラルキル基からなる群より選択される少なくとも1種を有するシリコーンオイルがさらに好ましい。
【0066】
ジメチルポリシロキサンの有機基置換体としては、ポリエーテル変性シリコーンオイル、長鎖アルキル変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、アクリル変性シリコーンオイル、カルボン酸無水物変性シリコーンオイル、アラルキル変性シリコーンオイル、フロロアルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸アミド変性シリコーンオイル、フェニル変性シリコーンオイル、ポリエーテル・長鎖アルキル・アラルキル変性シリコーンオイル、長鎖アルキル・アラルキル変性シリコーンオイル、アミノ・ポリエーテル変性シリコーンオイル、エポキシ・ポリエーテル変性シリコーンオイル、エポキシ・アラルキル変性シリコーンオイル等が挙げられる。
【0067】
ジメチルポリシロキサンの有機基置換体は、ゴースト現象が抑制される状態を維持する観点から、ポリエーテル変性シリコーンオイル(有機基がポリエーテル構造を有する基であるシリコーンオイル)、アラルキル変性シリコーンオイル(有機基がアラルキル基であるシリコーンオイル)、ポリエーテル・長鎖アルキル・アラルキル変性シリコーンオイル(有機基がポリエーテル構造を有する基、長鎖アルキル基、及びアラルキル基であるシリコーンオイル)、及び長鎖アルキル・アラルキル変性シリコーンオイル(有機基が長鎖アルキル基及びアラルキル基であるシリコーンオイル)が好ましく、ポリエーテル変性シリコーンオイル及びアラルキル変性シリコーンオイルがより好ましく、アラルキル変性シリコーンオイルがさらに好ましい。
ジメチルポリシロキサンの有機基置換体としてポリエーテル変性シリコーンオイルを用いることでゴースト現象が抑制される状態が維持される理由は定かではないが、ポリエーテル基の存在によりシリコーンオイルが無端ベルトの外周面側に配向した状態を維持しやすくなるためと推測される。また、ジメチルポリシロキサンの有機基置換体としてアラルキル変性シリコーンオイルを用いることでゴースト現象が抑制される状態がより維持される理由は定かではないが、ベンゼン環を有し安定性に優れるためと推測される。
【0068】
ジメチルポリシロキサンの有機基置換体は、ゴースト現象をさらに抑制する観点から、環状シロキサン構造を有さない化合物が好ましい。環状シロキサン構造は、無端ベルト外周面側における化合物の配向状態に影響を与えると考えられる。そのため、ジメチルポリシロキサンの有機基置換体として環状シロキサン構造を有さない化合物を用いることで、環状シロキサン構造を有する化合物を用いた場合に比べて、ゴースト現象がさらに抑制されると推測される。
【0069】
外周層に含有される樹脂とシリコーンオイルとの組み合わせは、ゴースト現象が抑制される状態を維持する観点から、イミド系樹脂を含む第1の樹脂とポリエーテル変性シリコーンオイル及びアラルキル変性シリコーンオイルからなる群より選択される少なくとも1種を含むシリコーンオイルとの組み合わせであることが好ましく、その中でも、ポリイミド樹脂を含む第1の樹脂とポリエーテル変性シリコーンオイル及びアラルキル変性シリコーンオイルからなる群より選択される少なくとも1種を含むシリコーンオイルとの組み合わせであることがより好ましく、ポリイミド樹脂を含む第1の樹脂と環状シロキサン構造を有さないポリエーテル変性シリコーンオイル及び環状シロキサン構造を有さないアラルキル変性シリコーンオイルからなる群より選択される少なくとも1種を含むシリコーンオイルとの組み合わせであることがさらに好ましい。イミド系樹脂とポリエーテル変性シリコーンオイルとを組み合わせることでゴースト現象が抑制される状態が維持される理由は定かではないが、シリコーンオイルのポリエーテル基とイミド系樹脂との立体障害により、シリコーンオイルが無端ベルトの外周面側に配向した状態がさらに維持されやすくなるためと推測される。また、イミド系樹脂とアラルキル変性シリコーンオイルとを組み合わせることでゴースト現象が抑制される状態が維持される理由は定かではないが、ベンゼン環を有しより立体障害が生じやすくなるためと推測される。
【0070】
特定シリコーンオイルの数平均分子量は、特に限定されず、例えば50以上2000以下が挙げられ、ゴースト現象を抑制する観点から、100以上1500以下が好ましく、200以上1200以下がより好ましい。
シリコーンオイルの数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定される。GPCによる分子量測定は、測定装置として東ソー製GPC・HLC-8120GPCを用い、東ソー製カラム・TSKgel SuperHM-M(15cm)を使用し、テトラヒドロフラン(THF)溶媒で行う。数平均分子量は、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出する。
特定シリコーンオイルの20℃における粘度は、特に限定されず、例えば0.1mPa・s以上100mPa・s以下が挙げられ、ゴースト現象を抑制する観点から、0.1mPa・s以上50mPa・s以下が好ましく、0.1mPa・s以上20mPa・s以下がより好ましい。
シリコーンオイルの粘度は、東京計器製B-8L型粘度計を用いて測定する。
【0071】
シリコーンオイルは、少なくとも特定シリコーンオイルを含み、特定シリコーンオイル以外のシリコーンオイルを含んでもよく、含まなくてもよい。シリコーンオイル全体に対する特定シリコーンオイルの割合は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましい。
特定シリコーンオイル以外のシリコーンオイルとしては、例えば、フッ素変性シリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、シラノール変性シリコーンオイル等が挙げられる。
【0072】
単層体である無端ベルトにおいて、外周層である単層全体に対するシリコーンオイルの含有量は、ゴースト現象を抑制する観点から、0.5質量%以上7質量%以下が好ましく、0.5質量%以上6質量%以下がより好ましく、1質量%以上3質量%以下がさらに好ましい。
積層体である無端ベルトにおいて、外周層である第1の層全体に対するシリコーンオイルの含有量は、ゴースト現象を抑制する観点から、0.5質量%以上7質量%以下が好ましく、0.5質量%以上6質量%以下がより好ましく、1質量%以上3質量%以下がさらに好ましい。
外周層全体に対するシリコーンオイルの含有量が上記範囲であることにより、上記範囲より低い場合に比べて、シリコーンオイルによる無端ベルト外周面の非静電的付着力低減効果が得られやすく、ゴースト現象がより抑制される。また、外周層全体に対するシリコーンオイルの含有量が上記範囲であることにより、上記範囲より多い場合に比べて、シリコーンオイルの凝集に起因する非静電的付着力低減効果の低下が起こりにくく、ゴースト現象がより抑制される。
【0073】
<その他の成分>
外周層は、第1の樹脂、第1の導電性カーボン粒子、及びシリコーンオイルのほかに、その他の成分を含んでもよい。また、積層体である無端ベルトにおける第2の層は、第2の樹脂及び第2の導電性カーボン粒子のほかに、その他の成分を含んでもよい。
単層体である無端ベルトにおいて、外周層である単層全体に対する第1の樹脂、第1の導電性カーボン粒子、及びシリコーンオイルの合計含有率は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましい。また、積層体である無端ベルトにおいて、外周層である第1の層全体に対する第1の樹脂、第1の導電性カーボン粒子、及びシリコーンオイルの合計含有率は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましい。また、積層体である無端ベルトにおいて、第2の層全体に対する第2の樹脂及び第2の導電性カーボン粒子の合計含有率は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましい。
なお、その他の成分としては、例えば、導電性カーボン粒子以外の導電剤、ベルトの強度向上のためのフィラー、ベルトの熱劣化を防止するための酸化防止剤、流動性を向上させるための界面活性剤、耐熱老化防止剤等が挙げられる。
【0074】
<無端ベルトの特性>
(L(r)積分値)
無端ベルトの外周面におけるL(r)積分値は、0以上0.1以下であり、ゴースト現象抑制の観点から、0以上0.08以下が好ましく、0以上0.06以下がより好ましい。
【0075】
ここで、上記導電性カーボン粒子の空間分布は、無端ベルトの外周面を走査型電子顕微鏡(例えば、日立ハイテクノロジーズ社製、型番:SU8010)にて2万倍の倍率で観察し、得られた256階調画像を、必要に応じて解析ソフト(例えば、フリーソフトの「ImageJ」)を用いて閾値128にて二値化処理することで得る。そして、粒子間距離rが0.05μm以上0.30μm以下における統計量L(r)値を上記式に基づいて0.05μm毎に算出し、0.05μm以上0.30μm以下の範囲の積分値を得て、その値を「L(r)積分値」とする。
【0076】
L(r)積分値を上記範囲とする方法は、特に限定されるものではなく、例えば、導電性カーボン粒子として個数平均一次粒径の小さな粒子を用いる方法、用いる導電性カーボン粒子の種類を選択する方法、無端ベルトの製造過程における条件(例えば乾燥条件等)を調整する方法、などが挙げられる。
【0077】
(無端ベルトの厚み)
単層体である無端ベルトにおいて、単層の厚みは、ベルトの機械的強度の観点から、60μm以上120μm以下であることが好ましく、80μm以上120μm以下であることがより好ましい。
積層体である無端ベルトにおいて、第1の層の厚みは、製造適性の観点、及びゴースト現象を抑制する観点から、1μm以上60μm以下であることが好ましく、3μm以上60μm以下であることがより好ましい。
積層体である無端ベルトにおいて、第2の層の厚みは、ベルトの機械的強度の観点から、10μm以上80μm以下であることが好ましく、20μm以上40μm以下であることがより好ましい。
無端ベルトが第1の層及び第2の層を有する場合、ゴースト現象を抑制する観点から、総厚みに対する外周層の割合が3%以上90%以下であることが好ましく、5%以上80%以下であることがより好ましい。
なお、各層の膜厚は、以下のようにして測定する。
即ち、無端ベルトの厚み方向の断面を光学顕微鏡又は走査型電子顕微鏡により観察して、測定対象の層の厚みを10箇所測定し、この平均値を厚みとする。
【0078】
(無端ベルトの体積抵抗率)
無端ベルトに500Vの電圧を10秒間印加した際の体積抵抗率の常用対数値は、転写性向上の観点から、9.0(logΩ・cm)以上13.5(logΩ・cm)以下であることが好ましく、9.5(logΩ・cm)以上13.2(logΩ・cm)以下であることがより好ましく、10.0(logΩ・cm)以上12.5(logΩ・cm)以下であることが特に好ましい。
無端ベルトにおける500Vの電圧を10秒間印加した際の体積抵抗率の測定は、以下の方法により行う。
抵抗測定機として、微小電流計(Advantest社製R8430A)を用い、プローブとしてURプローブ(三菱ケミカルアナリテック(株)製)を使用し、体積抵抗率(logΩ・cm)について、無端ベルトを周方向に等間隔で6点、幅方向の中央部及び両端部について3点の計18点、電圧500V、印加時間10秒間、加圧1kgfで測定し、平均値を算出する。また、温度22℃、湿度55%RHの環境下で測定を行うものとする。
【0079】
(無端ベルトの表面抵抗率)
無端ベルトの外周面に500Vの電圧を10秒間印加した際の表面抵抗率の常用対数値は、転写性向上の観点から、9.5(logΩ/suq.)以上15.0(logΩ/suq.)以下であることが好ましく、10.0(logΩ/suq.)以上14.0(logΩ/suq.)以下であることがより好ましく、11.0(logΩ/suq.)以上13.5(logΩ/suq.)以下であることが特に好ましい。
なお、前記表面抵抗率の単位logΩ/suq.は、表面抵抗率を単位面積当たりの抵抗値の対数値で表すものあり、log(Ω/suq.)、logΩ/suquare、logΩ/□等とも表記する。
前記無端ベルトの外周面における500Vの電圧を10秒間印加した際の表面抵抗率の測定は、以下の方法により行う。
抵抗測定機として、微小電流計(Advantest社製R8430A)を用い、プローブとしてURプローブ(三菱ケミカルアナリテック(株)製)を使用し、無端ベルトの外周面の表面抵抗率(logΩ/suq.)について、無端ベルトの外周面を周方向に等間隔で6点、幅方向の中央部及び両端部について3点の計18点、電圧500V、印加時間10秒間、加圧1kgfで測定し、平均値を算出する。また、温度22℃、湿度55%RHの環境下で測定を行うものとする。
【0080】
<無端ベルトの製造方法>
本実施形態に係る無端ベルトの製造方法は、特に限定されるものではない。
無端ベルトの製造方法の一例では、例えば、第1の樹脂又はその前駆体と第1の導電性カーボン粒子と特定シリコーンオイルと第1の溶媒とを含有する第1の塗布液を調製する第1の塗布液調製工程と、被塗布材の外周上に前記第1の塗布液を塗布して第1の塗布膜を形成する第1の塗布膜形成工程と、前記被塗布材の温度を上昇させながら前記第1の塗布膜を乾燥させる第1の乾燥工程と、を経る。上記無端ベルトの製造方法は、第1の塗布液調製工程、第1の塗布膜形成工程、及び第1の乾燥工程の他に、他の工程を経てもよい。他の工程としては、例えば第1の樹脂の前駆体を用いる場合、第1の乾燥工程によって乾燥された第1の塗布膜を焼成する第1の焼成工程等が挙げられる。
【0081】
単層体である無端ベルトを製造する場合、上記第1の塗布液調製工程、第1の塗布膜形成工程、及び第1の乾燥工程を経ることで、被塗布材の外周面に、第1の樹脂と第1の導電性カーボン粒子と特定シリコーンオイルとを含む外周層である単層が形成される。なお、単層は、例えば、第1の樹脂と第1の導電性カーボン粒子と特定シリコーンオイルとを含むペレットを作製し、このペレットを溶融押出することで形成されたものであってもよい。
【0082】
積層体である無端ベルトを製造する場合、例えば、前記第1の塗布液調製工程、第1の塗布膜形成工程、及び第1の乾燥工程を経ることで、被塗布材上に形成された第2の層の外周面に、第1の樹脂と第1の導電性カーボン粒子と特定シリコーンオイルとを含む外周層である第1の層が形成される。
積層体である無端ベルトを製造する場合、第2の層は、例えば、第2の樹脂又はその前駆体と第2の導電性カーボン粒子と第2の溶媒とを含有する第2の塗布液を調製する第2の塗布液調製工程と、被塗布材の外周上に前記第2の塗布液を塗布して第2の塗布膜を形成する第2の塗布膜形成工程と、第2の塗布膜を乾燥させる第2の乾燥工程と、を経ることで、被塗布材の外周面に形成される。なお、第2の層は、例えば、第2の樹脂と第2の導電性カーボン粒子とを含むペレットを作製し、このペレットを溶融押出することで形成されたものであってもよい。
【0083】
(塗布液調製工程)
第1の塗布液調製工程では、第1の樹脂又はその前駆体と第1の導電性カーボン粒子と特定シリコーンオイルと第1の溶媒とを含有する第1の塗布液を調製する。例えば、第1の樹脂がポリイミド樹脂であり、第1の導電性カーボン粒子がカーボンブラックである場合、第1の塗布液として、例えば、カーボンブラックが分散し、かつ、ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミック酸及び特定シリコーンオイルが第1の溶媒に溶解した溶液を調整する。また、例えば、第1の樹脂がポリアミドイミド樹脂であり、第1の導電性カーボン粒子がカーボンブラックである場合、第1の塗布液として、例えば、カーボンブラックが分散し、かつ、ポリアミドイミド樹脂及び特定シリコーンオイルが第1の溶媒に溶解した溶液を調整する。
【0084】
第1の塗布液を調製する方法としては、第1の導電性カーボン粒子の凝集体を粉砕する観点から、また、第1の導電性カーボン粒子の分散性を高める観点から、ボールミル、ジェットミル等の粉砕機を用いて、分散処理を行うことが好ましい。
また、第1の塗布液調製工程では、第1の導電性カーボン粒子の分散性を高める観点から、第1の導電性カーボン粒子の分散処理を行った後に、第1の導電性カーボン粒子が分散した第1の溶媒中に特定シリコーンオイルを添加することが好ましい。
第1の溶媒は、特に制限はなく、第1の樹脂として用いる樹脂の種類等に応じて適宜決定すればよい。例えば、第1の樹脂としてポリイミド樹脂又はポリアミドイミド樹脂である場合、第1の溶媒として、後述する極性溶剤が好ましく用いられる。
【0085】
極性溶剤として、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド(DEAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチレンホスホルアミド(HMPA)、N-メチルカプロラクタム、N-アセチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(N,N-ジメチルイミダゾリジノン、DMI)等が挙げられ、これらは1種単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0086】
なお、第2の塗布液調製工程を経る場合、第2の塗布液調製工程において、第2の樹脂と第2の導電性カーボン粒子と第2の溶媒とを含有する第2の塗布液を調製する。第2の樹脂及び第2の導電性カーボン粒子は前述のとおりであり、第2の塗布液の調製方法及び第2の溶媒は前記第1の塗布液の調製方法及び第1の溶媒とそれぞれ同様である。
【0087】
(塗布膜形成工程)
第1の塗布膜形成工程では、被塗布材の外周上に前記第1の塗布液を塗布して第1の塗布膜を形成する。
被塗布材としては、例えば、円筒状又は円柱状の金型等が挙げられる。被塗布材は、前記金型の外周面を離型剤処理したものであってもよい。単層体である無端ベルトを製造する場合、第1の塗布膜形成工程では、例えば、上記被塗布材又は離型剤処理した被塗布材の外周面に直接第1の塗布液を塗布する。積層体である無端ベルトを製造する場合、第1の塗布膜形成工程では、例えば、第2の層又は第2の塗布膜が形成された被塗布材の外周面に第1の塗布液を塗布する。
【0088】
第1の塗布液の塗布方法としては、例えば、スプレー塗布法、らせん塗布(フローコート)法、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の公知の方法が挙げられる。
なお、第2の塗布膜形成工程を経る場合、第2の塗布膜形成工程において、被塗布材の外周上に第2の塗布液を塗布して第2の塗布膜を形成する。第2の塗布液の塗布方法も、第1の塗布液の塗布方法と同様である。
【0089】
(乾燥工程)
第1の乾燥工程では、第1の塗布膜形成工程において形成された第1の塗布膜を乾燥させる。第1の乾燥工程によって、第1の塗布膜中に含まれる第1の溶媒が除去され、単層又は第1の層が得られる。
第1の塗布膜を乾燥させる方法としては、例えば、第1の塗布膜に熱風を供給する方法、被塗布材を加熱する方法等が挙げられる。
【0090】
第1の乾燥工程では、乾燥工程における被塗布材の温度の積分平均値をA℃、乾燥を開始してから被塗布材の温度が積分平均値A℃となるまでの時間をBminとしたとき、積分平均昇温速度A/B(℃/min)が5.74℃/min以上であることが好ましい。上記積分平均昇温速度A/B(℃/min)が5.74℃/min以上であることにより、第1の塗布膜がはやく乾燥するため、第1の塗布膜内において第1の導電性カーボン粒子の凝集が起こる前に固定化されることで、第1の導電性カーボン粒子の良好な分散状態が保たれた層が得られる。そして、得られた層内において第1の導電性カーボン粒子が細かく分散されることにより、L(r)積分値が0以上0.1以下の範囲となりやすくなると推測される。
【0091】
ここで、上記積分平均昇温速度A/Bは、まず、乾燥工程における被塗布材の温度の時間変化を温度計(例えば、グラフテック社K熱電対、型番:JBS-7115-5M-K)をグラフテック社データレコーダー(型番:GL240)に接続することにより測定する。そして、乾燥開始からの被塗布材の温度の積分値(面積)が、乾燥開始から乾燥終了までにおける被塗布材の温度の積分値(面積)の半分になるときの温度を「積分平均値(A℃)」とし、乾燥を開始してから被塗布材の温度が積分平均値A℃となるまでの時間(Bmin)を求め、積分平均昇温速度A/B(℃/min)を算出する。
【0092】
積分平均昇温速度A/B(℃/min)は、5.74℃/min以上であることがより好ましく、8.0℃/min以上であることがさらに好ましい。
積分平均昇温速度A/Bを上記範囲に制御する方法は、特に限定されるものではなく、例えば第1の塗布膜の表面に熱風を供給することで第1の塗布膜を乾燥させる場合、第1の塗布膜表面における熱風の速度を調整する方法、熱風の温度を調整する方法等が挙げられる。
【0093】
第1の塗布膜表面における熱風の速度としては、例えば0.1m/s以上50m/s以下の範囲が挙げられ、1m/s以上40m/s以下の範囲が好ましく、1m/s以上20m/s以下の範囲がより好ましい。
ここで、第1の塗布膜表面における熱風の速度は、以下のようにして測定される。具体的には、風速計(TM350、TASCO社製)を用いて、プローブを塗膜表面に設置し、測定をする。
【0094】
第1の塗布膜表面における熱風の温度としては、例えば100℃以上280℃以下の範囲が挙げられ、100℃以上250℃以下の範囲が好ましく、110℃以上235℃以下の範囲がより好ましい。
第1の塗布膜表面における熱風の温度は、温度計(例えば、グラフテック社K熱電対、型番:JBS-7115-5M-K)をグラフテック社データレコーダー、型番:GL240に接続すること)により測定される。
第1の塗布膜の表面に熱風を供給する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、乾燥炉の熱風をスリットノズルから第1の塗布膜の表面に向かって吹き出す方法、乾燥炉の熱風を第1の塗布膜に直接供給する方法等が挙げられる。その中でも、第1の塗布膜表面における熱風の速度を制御しやすくなる観点から、スリットノズルを用いる方法が好ましい。
【0095】
なお、第2の乾燥工程を経る場合、第2の乾燥工程において、第2の塗布膜形成工程で形成された第2の塗布膜を乾燥させる。第2の塗布膜を乾燥させる方法は、第1の塗布膜を乾燥させる方法と同様である。第2の乾燥工程は、第1の塗布膜形成工程が行われる前に完了していてもよく、第2の乾燥工程が完了する前に第1の塗布膜形成工程が行われ、第1の乾燥工程が第2の乾燥工程の一部を兼ねていてもよい。
【0096】
(焼成工程)
前記のように、無端ベルトの製造方法は、第1の焼成工程を経るものであってもよい。第1の焼成工程では、第1の乾燥工程によって乾燥された第1の塗布膜を加熱することで焼成する。例えば第1の樹脂がポリイミド樹脂である場合、第1の焼成工程によって第1の塗布膜に含まれるポリアミック酸がイミド化され、ポリイミドが得られる。
第1の焼成工程における加熱温度は、例えば150℃以上450℃以下の範囲が挙げられ、200℃以上430℃以下の範囲が好ましい。また、第1の焼成工程における加熱時間は、例えば20分間以上180分間以下の範囲が挙げられ、60分間以上150分以下の範囲が好ましい。
なお、積層体である無端ベルトを製造する場合において、第2の塗布液調製工程、第2の塗布膜形成工程、及び第2の乾燥工程を経て第2の層を形成する場合、第2の乾燥工程によって乾燥された第2の塗布膜を焼成する第2の焼成工程を経てもよい。第2の焼成工程は、第1の焼成工程を兼ねたものであってもよい。
【0097】
〔一次転写装置〕
一次転写装置は、中間転写体の内周面に接して中間転写体に電界を印加する金属製の一次転写ロールを有し、像保持体の表面に形成されたトナー像を中間転写体の外周面に一次転写する装置である。
金属製の一次転写ロールは、無端ベルトである中間転写体を挟んで像保持体に対向して配置される。一次転写装置では、上記金属製の一次転写ロールにより中間転写体に対しトナーの帯電極性と逆極性の電圧を付与することで、トナー像が中間転写体の外周面に一次転写される。
一次転写ロールとしては、鉄、銅、真鍮、ステンレス(SUS)、硫黄複合鋼材(SUM)、アルミニウム、ニッケル等の金属部材が挙げられる。一次転写ロールは、金属製の中空ロールであってもよく、金属製の中実ロールであってもよい。
一次転写ロールの外径としては、例えば4mm以上28mm以下の範囲が挙げられる。
一次転写ロールと像保持体とで中間転写体が挟み込まれるニップ領域の周方向幅としては、例えば0.5mm以上5mm以下の範囲が挙げられる。
【0098】
〔二次転写装置〕
二次転写装置は、中間転写体の外周面に転写されたトナー像を記録媒体の表面に二次転写する装置である。
二次転写装置は、例えば、中間転写体の外周面側、つまりトナー像が保持される側に配置される二次転写ロールと、中間転写体の内周面側、つまりトナー像が保持される側と反対側に配置される背面ロールと、を備える。二次転写装置においては、中間転写体及び記録媒体を二次転写ロールと背面ロールとで挟み込み転写電界を形成することで、中間転写体上のトナー像が記録媒体に二次転写される。
【0099】
[画像形成装置]
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、前記像保持体の表面を帯電する帯電装置と、帯電した前記像保持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、トナーを含む現像剤を収容し、前記現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置と、前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写装置と、を備え、転写装置として前述の転写装置を用いる。
【0100】
本実施形態に係る画像形成装置は、記録媒体の表面に転写されたトナー像を定着する定着手段を備える装置;トナー像の転写後、帯電前の像保持体の表面をクリーニングするクリーニング手段を備えた装置;トナー像の転写後、帯電前に像保持体の表面に除電光を照射して除電する除電手段を備える装置;像保持体の温度を上昇させ、相対温度を低減させるための像保持体加熱部材を備える装置等の周知の画像形成装置が適用される。
【0101】
なお、本実施形態に係る画像形成装置において、例えば、像保持体を備える部分が、画像形成装置に対して着脱されるカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。
【0102】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例について図面を参照しつつ説明する。ただし、本実施形態に係る画像形成装置は、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0103】
図1は、本実施形態に係る画像形成装置の構成を示した概略構成図である。
【0104】
本実施形態に係る画像形成装置100は、図1に示すように、例えば、一般にタンデム型と呼ばれる中間転写方式の画像形成装置であって、電子写真方式により各色成分のトナー像が形成される複数の画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kと、各画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kにより形成された各色成分トナー像を中間転写ベルト15(中間転写体の一例)に順次転写(一次転写)させる一次転写部10(一次転写装置の一例)と、中間転写ベルト15上に転写された重畳トナー像を記録媒体である用紙Kに一括転写(二次転写)させる二次転写部20(二次転写装置の一例)と、二次転写された画像を用紙K(記録媒体の一例)上に定着させる定着装置60と、を備えている。また、画像形成装置100は、各装置(各部)の動作を制御する制御部40を有している。
【0105】
画像形成装置100の各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、表面に形成されるトナー像を保持する像保持体の一例として、矢印A方向に回転する感光体11を備えている。
【0106】
感光体11の周囲には、帯電装置の一例として、感光体11を帯電させる帯電器12が設けられ、静電潜像形成装置の一例として、感光体11上に静電潜像を書込むレーザ露光器13(図中露光ビームを符号Bmで示す)が設けられている。
【0107】
また、感光体11の周囲には、現像装置の一例として、各色成分トナーが収容されて感光体11上の静電潜像をトナーにより可視像化する現像器14が設けられ、感光体11上に形成された各色成分トナー像を一次転写部10にて中間転写ベルト15に転写する金属製の一次転写ロール16が設けられている。
トナーとしては、例えば体積平均粒径が2μm以上5μm以下のトナーが挙げられる。トナーの体積平均粒径は、3.5μm以上4.8μm以下の範囲がより好ましい。
トナーの体積平均粒径は、コールターマルチサイザーII(ベックマン・コールター社製)を用い、電解液はISOTON-II(ベックマン・コールター社製)を使用して測定される。測定に際しては、分散剤として、界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい)の5%水溶液2ml中に測定試料を0.5mg以上50mg以下加える。これを電解液100ml以上150ml以下中に添加する。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で1分間分散処理を行い、コールターマルチサイザーIIにより、アパーチャー径として100μmのアパーチャーを用いて2μm以上60μm以下の範囲の粒径の粒子の粒度分布を測定する。なお、サンプリングする粒子数は50000個である。測定される粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャンネル)に対して体積を小径側から累積分布を描いて、累積50%となる粒径を体積平均粒径と定義する。
【0108】
更に、感光体11の周囲には、感光体11上の残留トナーが除去される感光体クリーナ17が設けられ、帯電器12、レーザ露光器13、現像器14、一次転写ロール16及び感光体クリーナ17の電子写真用デバイスが感光体11の回転方向に沿って順次配設されている。これらの画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、中間転写ベルト15の上流側から、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の順に、略直線状に配置されている。
【0109】
中間転写ベルト15は、各種ロールによって図1に示すB方向に目的に合わせた速度で循環駆動(回転)されている。この各種ロールとして、定速性に優れたモータ(不図示)により駆動されて中間転写ベルト15を回転させる駆動ロール31、各感光体11の配列方向に沿って略直線状に延びる中間転写ベルト15を支持する支持ロール32、中間転写ベルト15に対して張力を与えると共に中間転写ベルト15の蛇行を防止する補正ロールとして機能する張力付与ロール33、二次転写部20に設けられる背面ロール25、中間転写ベルト15上の残留トナーを掻き取るクリーニング部に設けられるクリーニング背面ロール34を有している。
【0110】
一次転写部10は、中間転写ベルト15を挟んで感光体11に対向して配置される一次転写ロール16で構成されている。そして、一次転写ロール16は中間転写ベルト15を挟んで感光体11に圧接配置され、更に一次転写ロール16にはトナーの帯電極性(マイナス極性とする。以下同様。)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が印加されるようになっている。これにより、各々の感光体11上のトナー像が中間転写ベルト15に順次、静電吸引され、中間転写ベルト15上において重畳されたトナー像が形成されるようになっている。
【0111】
二次転写部20は、背面ロール25と、中間転写ベルト15のトナー像保持面側に配置される二次転写ロール22と、を備えて構成されている。
【0112】
背面ロール25は、表面抵抗率が1×10Ω/□以上1×1010Ω/□以下となるように形成され、硬度は、例えば、70°(アスカーC:高分子計器社製、以下同様。)に設定される。この背面ロール25は、中間転写ベルト15の裏面側に配置されて二次転写ロール22の対向電極を構成し、二次転写バイアスが安定的に印加される金属製の給電ロール26が接触配置されている。
【0113】
一方、二次転写ロール22は、体積抵抗率が107.5Ωcm以上108.5Ωcm以下の円筒ロールである。そして、二次転写ロール22は中間転写ベルト15を挟んで背面ロール25に圧接配置され、更に二次転写ロール22は接地されて背面ロール25との間に二次転写バイアスが形成され、二次転写部20に搬送される用紙K上にトナー像を二次転写する。
なお、二次転写部20における用紙Kの搬送速度としては、例えば50mm/s以上600mm/s以下の範囲が挙げられる。
【0114】
また、中間転写ベルト15の二次転写部20の下流側には、二次転写後の中間転写ベルト15上の残留トナーや紙粉を除去し、中間転写ベルト15の表面をクリーニングする中間転写ベルトクリーナ35が接離自在に設けられている。
【0115】
なお、中間転写ベルト15、一次転写部10(一次転写ロール16)、及び二次転写部20(二次転写ロール22)が、転写装置の一例に該当する。
ここで、画像形成装置100は、二次転写ロール22に代えて、二次転写ベルトを備える構成であってもよい。
【0116】
一方、イエローの画像形成ユニット1Yの上流側には、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kにおける画像形成タイミングをとるための基準となる基準信号を発生する基準センサ(ホームポジションセンサ)42が配設されている。また、黒の画像形成ユニット1Kの下流側には、画質調整を行うための画像濃度センサ43が配設されている。この基準センサ42は、中間転写ベルト15の裏側に設けられたマークを認識して基準信号を発生しており、この基準信号の認識に基づく制御部40からの指示により、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは画像形成を開始するように構成されている。
【0117】
更に、本実施形態に係る画像形成装置では、用紙Kを搬送する搬送手段として、用紙Kを収容する用紙収容部50、この用紙収容部50に集積された用紙Kを予め定められたタイミングで取り出して搬送する給紙ロール51、給紙ロール51により繰り出された用紙Kを搬送する搬送ロール52、搬送ロール52により搬送された用紙Kを二次転写部20へと送り込む搬送ガイド53、二次転写ロール22により二次転写された後に搬送される用紙Kを定着装置60へと搬送する搬送ベルト55、用紙Kを定着装置60に導く定着入口ガイド56を備えている。
【0118】
次に、本実施形態に係る画像形成装置の基本的な作像プロセスについて説明する。
【0119】
本実施形態に係る画像形成装置では、図示しない画像読取装置や図示しないパーソナルコンピュータ(PC)等から出力される画像データは、図示しない画像処理装置により画像処理が施された後、画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kによって作像作業が実行される。
【0120】
画像処理装置では、入力された画像データに対して、シェーディング補正、位置ズレ補正、明度/色空間変換、ガンマ補正、枠消しや色編集、移動編集等の各種画像編集等の画像処理が施される。画像処理が施された画像データは、Y、M、C、Kの4色の色材階調データに変換され、レーザ露光器13に出力される。
【0121】
レーザ露光器13では、入力された色材階調データに応じて、例えば半導体レーザから出射された露光ビームBmを画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの各々の感光体11に照射している。画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの各感光体11では、帯電器12によって表面が帯電された後、このレーザ露光器13によって表面が走査露光され、静電潜像が形成される。形成された静電潜像は、各々の画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kによって、Y、M、C、Kの各色のトナー像として現像される。
【0122】
画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの感光体11上に形成されたトナー像は、各感光体11と中間転写ベルト15とが接触する一次転写部10において、中間転写ベルト15上に転写される。より具体的には、一次転写部10において、一次転写ロール16により中間転写ベルト15の基材に対しトナーの帯電極性(マイナス極性)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が付加され、トナー像を中間転写ベルト15の表面に順次重ね合わせて一次転写が行われる。
【0123】
トナー像が中間転写ベルト15の表面に順次一次転写された後、中間転写ベルト15は移動してトナー像が二次転写部20に搬送される。トナー像が二次転写部20に搬送されると、搬送手段では、トナー像が二次転写部20に搬送されるタイミングに合わせて給紙ロール51が回転し、用紙収容部50から目的とするサイズの用紙Kが供給される。給紙ロール51により供給された用紙Kは、搬送ロール52により搬送され、搬送ガイド53を経て二次転写部20に到達する。この二次転写部20に到達する前に、用紙Kは一旦停止され、トナー像が保持された中間転写ベルト15の移動タイミングに合わせて位置合わせロール(不図示)が回転することで、用紙Kの位置とトナー像の位置との位置合わせがなされる。
【0124】
二次転写部20では、中間転写ベルト15を介して、二次転写ロール22が背面ロール25に加圧される。このとき、タイミングを合わせて搬送された用紙Kは、中間転写ベルト15と二次転写ロール22との間に挟み込まれる。その際に、給電ロール26からトナーの帯電極性(マイナス極性)と同極性の電圧(二次転写バイアス)が印加されると、二次転写ロール22と背面ロール25との間に転写電界が形成される。そして、中間転写ベルト15上に保持された未定着トナー像は、二次転写ロール22と背面ロール25とによって加圧される二次転写部20において、用紙K上に一括して静電転写される。
【0125】
その後、トナー像が静電転写された用紙Kは、二次転写ロール22によって中間転写ベルト15から剥離された状態でそのまま搬送され、二次転写ロール22の用紙搬送方向下流側に設けられた搬送ベルト55へと搬送される。搬送ベルト55では、定着装置60における最適な搬送速度に合わせて、用紙Kを定着装置60まで搬送する。定着装置60に搬送された用紙K上の未定着トナー像は、定着装置60によって熱及び圧力で定着処理を受けることで用紙K上に定着される。そして定着画像が形成された用紙Kは、画像形成装置の排出部に設けられた排紙収容部(不図示)に搬送される。
【0126】
一方、用紙Kへの転写が終了した後、中間転写ベルト15上に残った残留トナーは、中間転写ベルト15の回転に伴ってクリーニング部まで搬送され、クリーニング背面ロール34及び中間転写ベルトクリーナ35によって中間転写ベルト15上から除去される。
【0127】
以上、本実施形態について説明したが、上記実施の形態に限定的に解釈されるものではなく、種々の変形、変更、改良が可能である。
【実施例0128】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」はすべて質量基準である。
【0129】
[実施例A1]
<塗布液A1の作製>
全芳香族系ポリイミドワニス(固形分率:18質量%、ユニチカ製、ユーイミドKX、溶剤:NMP)1000gに、第1の導電性カーボン粒子として酸化処理ガスブラック(チャンネルブラック、オリオンエンジニアドカーボンズ製、FW200、個数平均一次粒径:13nm)を39.6g(22phr)添加したものを、高圧衝突型分散機(ジーナス製)により200MPaの圧力にてφ0.1mmのオリフィスを通過させるとともに、2分割したスラリーを衝突させることを20回行うことで分散し、分散液を得た。得られた分散液に、ポリエーテル変性シリコーンオイル(両末端型ポリエーテル変性シリコーンオイル、信越化学工業製、品名:KF-600x、有機基が有する炭素原子の数:6、数平均分子量:900、20℃における粘度:2mPa・s)を6.8g添加して攪拌することで、第1の塗布液である塗布液A1を得た。
【0130】
<ベルトA1の作製>
得られた塗布液A1を、フローコート法にてφ366(外径366mm)のSUS製パイプ外面に所定の膜厚が得られるように塗布し、150℃で30分回転乾燥後、320℃のオーブンに4時間入れた後取り出すことで、無端ベルトA1が外面に形成されたSUS製パイプを得た。無端ベルトA1の全体膜厚(すなわち、単層の膜厚)は80μmであった。なお、乾燥工程における積分平均昇温速度A/Bは8.0℃/minであった。
【0131】
外面にコートされた無端ベルトA1をSUS製パイプより取り外し、幅369mmになるようにカットし、ベルト状中間転写体であるベルトA1を得た。なお、ベルトA1全体に対する導電性カーボン粒子の含有量は17.5質量%であり、ベルトA1全体に対するシリコーンオイルの含有量は3質量%である。
また、ベルトA1について前述の方法で体積抵抗率及び外周面の表面抵抗率を測定したところ、体積抵抗率の常用対数値は9.8(logΩ・cm)、表面抵抗率の常用対数値は9.6(logΩ/suq.)であった。
【0132】
[実施例A2]
第1の導電性カーボン粒子としての酸化処理ガスブラックの添加量を39.6gから32.9g(18.3phr)に変更した以外は、塗布液A1と同様にして、塗布液A2を得た。
塗布液A1の代わりに塗布液A2を用いた以外は、ベルトA1と同様にして、ベルトA2を得た。
なお、ベルトA2の全体膜厚(すなわち、単層の膜厚)は80μmであり、ベルトA2全体に対する導電性カーボン粒子の含有量は15.0質量%であり、ベルトA2全体に対するシリコーンオイルの含有量は3質量%である。
また、ベルトA2について前述の方法で体積抵抗率及び外周面の表面抵抗率を測定したところ、体積抵抗率の常用対数値は11.0(logΩ・cm)、表面抵抗率の常用対数値は10.8(logΩ/suq.)であった。
【0133】
[実施例A3]
ポリエーテル変性シリコーンオイルの添加量を6.8gから11.6gに変更した以外は、塗布液A1と同様にして、塗布液A3を得た。
塗布液A1の代わりに塗布液A3を用いた以外は、ベルトA1と同様にして、ベルトA3を得た。
なお、ベルトA3の全体膜厚(すなわち、単層の膜厚)は80μmであり、ベルトA3全体に対する導電性カーボン粒子の含有量は17.1質量%であり、ベルトA3全体に対するシリコーンオイルの含有量は5質量%である。
また、ベルトA3について前述の方法で体積抵抗率及び外周面の表面抵抗率を測定したところ、体積抵抗率の常用対数値は9.8(logΩ・cm)、表面抵抗率の常用対数値は9.8(logΩ/suq.)であった。
【0134】
[実施例A4]
ポリエーテル変性シリコーンオイルの添加量を6.8gから16.6gに変更した以外は、塗布液A1と同様にして、塗布液A4を得た。
塗布液A1の代わりに塗布液A4を用いた以外は、ベルトA1と同様にして、ベルトA4を得た。
なお、ベルトA4の全体膜厚(すなわち、単層の膜厚)は80μmであり、ベルトA4全体に対する導電性カーボン粒子の含有量は16.8質量%であり、ベルトA4全体に対するシリコーンオイルの含有量は7質量%である。
また、ベルトA4について前述の方法で体積抵抗率及び外周面の表面抵抗率を測定したところ、体積抵抗率の常用対数値は9.8(logΩ・cm)、表面抵抗率の常用対数値は9.5(logΩ/suq.)であった。
【0135】
[実施例A5]
ポリエーテル変性シリコーンオイルの添加量を6.8gから55gに変更した以外は、塗布液A1と同様にして、塗布液A5を得た。
塗布液A1の代わりに塗布液A5を用いた以外は、ベルトA1と同様にして、ベルトA5を得た。
なお、ベルトA5の全体膜厚(すなわち、単層の膜厚)は80μmであり、ベルトA5全体に対する導電性カーボン粒子の含有量は14.4質量%であり、ベルトA5全体に対するシリコーンオイルの含有量は20質量%である。
また、ベルトA5について前述の方法で体積抵抗率及び外周面の表面抵抗率を測定したところ、体積抵抗率の常用対数値は12.0(logΩ・cm)、表面抵抗率の常用対数値は11.6(logΩ/suq.)であった。
【0136】
[実施例A6]
ポリエーテル変性シリコーンオイルの添加量を6.8gから2.3gに変更した以外は、塗布液A1と同様にして、塗布液A6を得た。
塗布液A1の代わりに塗布液A6を用いた以外は、ベルトA1と同様にして、ベルトA6を得た。
なお、ベルトA6の全体膜厚(すなわち、単層の膜厚)は80μmであり、ベルトA6全体に対する導電性カーボン粒子の含有量は17.9質量%であり、ベルトA6全体に対するシリコーンオイルの含有量は1質量%である。
また、ベルトA6について前述の方法で体積抵抗率及び外周面の表面抵抗率を測定したところ、体積抵抗率の常用対数値は10.0(logΩ・cm)、表面抵抗率の常用対数値は11.2(logΩ/suq.)であった。
【0137】
[実施例A7]
ポリエーテル変性シリコーンオイルの代わりに、長鎖アルキル変性シリコーンオイル(側鎖型長鎖アルキル変性シリコーンオイル、信越化学工業製、品名:KF-41x、有機基が有する炭素原子の数:10、数平均分子量:1100、20℃における粘度:4mPa・s)を用いた以外は、塗布液A1と同様にして、塗布液A7を得た。
塗布液A1の代わりに塗布液A7を用いた以外は、ベルトA1と同様にして、ベルトA7を得た。
なお、ベルトA7の全体膜厚(すなわち、単層の膜厚)は80μmであり、ベルトA7全体に対する導電性カーボン粒子の含有量は17.5質量%であり、ベルトA7全体に対するシリコーンオイルの含有量は3質量%である。
また、ベルトA7について前述の方法で体積抵抗率及び外周面の表面抵抗率を測定したところ、体積抵抗率の常用対数値は9.8(logΩ・cm)、表面抵抗率の常用対数値は9.6(logΩ/suq.)であった。
【0138】
[実施例A8]
ポリエーテル変性シリコーンオイルの代わりに、エポキシ変性シリコーンオイル(側鎖両末端型エポキシ変性シリコーンオイル、信越化学工業製、品名:X-22-900x、有機基が有する炭素原子の数:9、数平均分子量:1100、20℃における粘度:4mPa・s)を用いた以外は、塗布液A1と同様にして、塗布液A8を得た。
塗布液A1の代わりに塗布液A8を用いた以外は、ベルトA1と同様にして、ベルトA8を得た。
なお、ベルトA8の全体膜厚(すなわち、単層の膜厚)は80μmであり、ベルトA8全体に対する導電性カーボン粒子の含有量は17.5質量%であり、ベルトA8全体に対するシリコーンオイルの含有量は3質量%である。
また、ベルトA8について前述の方法で体積抵抗率及び外周面の表面抵抗率を測定したところ、体積抵抗率の常用対数値は9.8(logΩ・cm)、表面抵抗率の常用対数値は9.6(logΩ/suq.)であった。
【0139】
[実施例A9]
ポリエーテル変性シリコーンオイルの代わりに、ジメチルシリコーンオイル(ジメチルポリシロキサン、共栄化学工業製、品名:KL400、数平均分子量:200、20℃における粘度:0.5mPa・s)を用いた以外は、塗布液A1と同様にして、塗布液A9を得た。
塗布液A1の代わりに塗布液A9を用いた以外は、ベルトA1と同様にして、ベルトA9を得た。
なお、ベルトA9の全体膜厚(すなわち、単層の膜厚)は80μmであり、ベルトA9全体に対する導電性カーボン粒子の含有量は17.5質量%であり、ベルトA9全体に対するシリコーンオイルの含有量は3質量%である。
また、ベルトA9について前述の方法で体積抵抗率及び外周面の表面抵抗率を測定したところ、体積抵抗率の常用対数値は9.8(logΩ・cm)、表面抵抗率の常用対数値は11.0(logΩ/suq.)であった。
【0140】
[実施例A10]
第1の導電性カーボン粒子として酸化処理ガスブラック(チャンネルブラック、オリオンエンジニアドカーボンズ製、SB6、個数平均一次粒径:17nm)を43.2g(24phr)用いた以外は、塗布液A1と同様にして、塗布液A10を得た。
塗布液A1の代わりに塗布液A10を用いた以外は、ベルトA1と同様にして、ベルトA10を得た。
なお、ベルトA10の全体膜厚(すなわち、単層の膜厚)は80μmであり、ベルトA10全体に対する導電性カーボン粒子の含有量は18.8質量%であり、ベルトA10全体に対するシリコーンオイルの含有量は3質量%である。
また、ベルトA10について前述の方法で体積抵抗率及び外周面の表面抵抗率を測定したところ、体積抵抗率の常用対数値は9.5(logΩ・cm)、表面抵抗率の常用対数値は9.5(logΩ/suq.)であった。
【0141】
[実施例A11]
ポリエーテル変性シリコーンオイルの代わりに、アラルキル変性シリコーンオイル(側鎖型アラルキル変性シリコーンオイル、信越化学工業製、品名:KF-410、20℃における粘度:1000mm/s)を用いた以外は、塗布液A1と同様にして、塗布液A11を得た。
塗布液A1の代わりに塗布液A11を用いた以外は、ベルトA1と同様にして、ベルトA11を得た。
なお、ベルトA11の全体膜厚(すなわち、単層の膜厚)は80μmであり、ベルトA11全体に対する導電性カーボン粒子の含有量は18.5質量%であり、ベルトA11全体に対するシリコーンオイルの含有量は1.5質量%である。
また、ベルトA11について前述の方法で体積抵抗率及び外周面の表面抵抗率を測定したところ、体積抵抗率の常用対数値は9.7(logΩ・cm)、表面抵抗率の常用対数値は9.7(logΩ/suq.)であった。
【0142】
[実施例B1]
<塗布液B1の作製>
芳香族系ポリアミドイミドワニス(固形分率18質量% 株式会社レゾナック製HPC―9000 溶剤:NMP)1000gに、第1の導電性カーボン粒子として酸化処理ガスブラック(チャンネルブラック、オリオンエンジニアドカーボンズ製、FW200、個数平均一次粒径:13nm)を37.8g(22phr)添加したものを、高圧衝突型分散機(ジーナス製)により200MPaの圧力にてφ0.1mmのオリフィスを通過させるとともに、2分割したスラリーを衝突させることを10回行うことで分散し、分散液を得た。得られた分散液に、ポリエーテル変性シリコーンオイル(両末端型ポリエーテル変性シリコーンオイル、信越化学工業製、品名:KF-600x、有機基が有する炭素原子の数:6、数平均分子量:900、20℃における粘度:2mPa・s)を6.8g添加して攪拌することで、第1の塗布液である塗布液B1を得た。
【0143】
<ベルトB1の作製>
-被塗布材の離型剤処理-
被塗布材として、外径366mm、長さ400mmのSUS材料製円筒型金型を用意し、その外表面にシリコーン系離型剤(信越化学工業社製、品名:セパコートSP)を塗布し、乾燥処理(離型剤処理)を行った。
【0144】
-第1の塗布膜の形成-
離型剤処理を施した円筒型金型を周方向に10rpmの速度で回転させながら、円筒型金型端部より、上記塗布液B1を口径1.0mmディスペンサーより吐出し、金型上に設置した金属ブレードにて一様の圧力で押し付けて塗布を行った。ディスペンサーユニットを円筒型金型の軸方向に100mm/分の速度で移動させることによって塗布液B1を円筒型金型上に螺旋状に塗布し、第1の塗布膜を形成した。
【0145】
-第1の塗布膜の乾燥-
その後、金型及び第1の塗布膜を乾燥炉中で150℃空気雰囲気下、10rpmで回転させながら15分乾燥処理を行った。なお、第1の塗布膜の乾燥工程における積分平均昇温速度A/Bは6.0℃/minであった。
【0146】
-焼成-
次に、到達温度290℃としたオーブンに4時間入れ、無端ベルトB1を得た。無端ベルトB1の全体膜厚(すなわち、単層の膜厚)は80μmであった。
金型から無端ベルトB1を取り外し、抜き取った無端ベルトB1を保持具に張架し、挿入角を調整したカッターにて切断し、φ366mm、幅369.5mmの環状体を得た。このようにして作製した中間転写ベルトをベルトB1とした。
なお、ベルトB1全体に対する導電性カーボン粒子の含有量は16.8質量%であり、ベルトB1全体に対するシリコーンオイルの含有量は3質量%である。
また、ベルトB1について前述の方法で体積抵抗率及び外周面の表面抵抗率を測定したところ、体積抵抗率の常用対数値は9.9(logΩ・cm)、表面抵抗率の常用対数値は9.5(logΩ/suq.)であった。
【0147】
[実施例C1]
<ベルトC1の作製>
PEEK樹脂(Victrex製 450G)ペレットとファーネスブラック(第1の導電性カーボン粒子、オリオンエンジニアドカーボンズ製、FW171、個数平均一次粒径:11nm)をPEEK樹脂 180g、ファーネスブラック27g(15phr)の比になるようにヘンシェルミキサー(日本コークス製 FM10C)に投入し、混合した。混合された組成物に、ポリエーテル変性シリコーンオイル(両末端型ポリエーテル変性シリコーンオイル、信越化学工業製、品名:KF-600x、有機基が有する炭素原子の数:6、数平均分子量:900、20℃における粘度:2mPa・s)を6.6g添加して攪拌した。シリコーンオイルが添加された混合物を二軸押出溶融混練機(L/D60(パーカーコーポレーション社製))で溶融混練したものを、φ5(内径5mm)の孔より紐状に押出し、押出されたものを水槽中に入れて冷却固化後カットし、ファーネスブラックの配合された混合樹脂ペレットを得た。
【0148】
得られた混合樹脂ペレットを、所定の温度(380℃)に設定した一軸溶融押出機(L/D24、溶融押出装置(三葉製作所社製))に投入し、溶融しながら環状ダイとニップルの間隙から円筒状に押出した。押出された円筒状フィルムを引きとりながらフィルムの円筒形状と径を固定化するために、所定の温度(50℃)に設定したサイジングダイ(冷却用金型)へ円筒状フィルム内周面を接触させて冷却し、無端ベルトC1を得た。
冷却用金型から無端ベルトC1を取り外し、抜き取った無端ベルトC1を保持具に張架し、挿入角を調整したカッターにて切断し、φ366mm、幅369mmの環状体を得た。このようにして作製した中間転写ベルトをベルトC1とした。ベルトC1の全体膜厚(すなわち、単層の膜厚)は80μmであった。
なお、ベルトC1全体に対する導電性カーボン粒子の含有量は12.6質量%であり、ベルトC1全体に対するシリコーンオイルの含有量は3質量%である。
また、ベルトC1について前述の方法で体積抵抗率及び外周面の表面抵抗率を測定したところ、体積抵抗率の常用対数値は11.1(logΩ・cm)、表面抵抗率の常用対数値は10.5(logΩ/suq.)であった。
【0149】
[実施例D1]
<ベルトD1の作製>
PPS樹脂(東レ製トレリナT1881)粉末とガスブラック(第1の導電性カーボン粒子、チャンネルブラック、オリオンエンジニアドカーボンズ製、FW1、個数平均一次粒径:13nm)をPPS樹脂 180g、ガスブラック(すなわちチャンネルブラック)27g(15phr)の比になるようにヘンシェルミキサー(日本コークス製 FM10C)に投入し、混合した。混合された組成物に、ポリエーテル変性シリコーンオイル(両末端型ポリエーテル変性シリコーンオイル、信越化学工業製、品名:KF-600x、有機基が有する炭素原子の数:6、数平均分子量:900、20℃における粘度:2mPa・s)を6.6g添加して攪拌した。シリコーンオイルが添加された混合物を二軸押出溶融混練機(L/D60(パーカーコーポレーション社製))で溶融混練したものを、φ5(内径5mm)の孔より紐状に押出し、押出されたものを水槽中に入れて冷却固化後カットし、ガスブラック(すなわちチャンネルブラック)の配合された混合樹脂ペレットを得た。
【0150】
得られた混合樹脂ペレットを、所定の温度(350℃)に設定した一軸溶融押出機(L/D24、溶融押出装置(三葉製作所社製))に投入し、溶融しながら環状ダイとニップルの間隙から円筒状に押出した。押出された円筒状フィルムを引きとりながらフィルムの円筒形状と径を固定化するために、所定の温度(50℃)に設定したサイジングダイ(冷却用金型)へ円筒状フィルム内周面を接触させて冷却し、無端ベルトD1を得た。
冷却用金型から無端ベルトD1を取り外し、抜き取った無端ベルトD1を保持具に張架し、挿入角を調整したカッターにて切断し、φ366mm、幅369mmの環状体を得た。このようにして作製した中間転写ベルトをベルトD1とした。ベルトD1の全体膜厚(すなわち、単層の膜厚)は80μmであった。
なお、ベルトD1全体に対する導電性カーボン粒子の含有量は12.6質量%であり、ベルトD1全体に対するシリコーンオイルの含有量は3質量%である。
また、ベルトD1について前述の方法で体積抵抗率及び外周面の表面抵抗率を測定したところ、体積抵抗率の常用対数値は11.1(logΩ・cm)、表面抵抗率の常用対数値は10.5(logΩ/suq.)であった。
【0151】
[実施例E1]
<ベルトE1の作製>
PEI樹脂(サビック社製、品名:ULTEM)粉末とガスブラック(第1の導電性カーボン粒子、チャンネルブラック、オリオンエンジニアドカーボンズ製、FW1、個数平均一次粒径:13nm)をPPS樹脂 180g、ガスブラック(すなわちチャンネルブラック)27g(15phr)の比になるようにヘンシェルミキサー(日本コークス製 FM10C)に投入し、混合した。混合された組成物に、ポリエーテル変性シリコーンオイル(両末端型ポリエーテル変性シリコーンオイル、信越化学工業製、品名:KF-600x、有機基が有する炭素原子の数:6、数平均分子量:900、20℃における粘度:2mPa・s)を6.6g添加して攪拌した。シリコーンオイルが添加された混合物を二軸押出溶融混練機(L/D60(パーカーコーポレーション社製))で溶融混練したものを、φ5(内径5mm)の孔より紐状に押出し、押出されたものを水槽中に入れて冷却固化後カットし、ガスブラック(すなわちチャンネルブラック)の配合された混合樹脂ペレットを得た。
【0152】
得られた混合樹脂ペレットを、所定の温度(350℃)に設定した一軸溶融押出機(L/D24、溶融押出装置(三葉製作所社製))に投入し、溶融しながら環状ダイとニップルの間隙から円筒状に押出した。押出された円筒状フィルムを引きとりながらフィルムの円筒形状と径を固定化するために、所定の温度(50℃)に設定したサイジングダイ(冷却用金型)へ円筒状フィルム内周面を接触させて冷却し、無端ベルトE1を得た。
冷却用金型から無端ベルトE1を取り外し、抜き取った無端ベルトE1を保持具に張架し、挿入角を調整したカッターにて切断し、φ366mm、幅369mmの環状体を得た。このようにして作製した中間転写ベルトをベルトE1とした。ベルトE1の全体膜厚(すなわち、単層の膜厚)は80μmであった。
なお、ベルトE1全体に対する導電性カーボン粒子の含有量は12.6質量%であり、ベルトE1全体に対するシリコーンオイルの含有量は3質量%である。
また、ベルトE1について前述の方法で体積抵抗率及び外周面の表面抵抗率を測定したところ、体積抵抗率の常用対数値は11.1(logΩ・cm)、表面抵抗率の常用対数値は10.0(logΩ/suq.)であった。
【0153】
[実施例F1]
<ポリアミック酸の合成>
分子鎖の両末端がアミノ基であるポリアミック酸として、ポリアミック酸DA-A1と、分子鎖の両末端がカルボキシ基であるポリアミック酸として、ポリアミック酸DC-A1とを下記の方法によって合成した。
【0154】
-ポリアミック酸溶液DA-A1の調製-
N-メチル-2-ピロリドン(以下「NMP」と略す)800g中に、ジアミン化合物として、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(以下「ODA」と略す)83.48g(416.9ミリモル)を加え、常温(25℃)で攪拌させながら溶解した。
次いで、テトラカルボン酸二無水物として、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下「BPDA」と略す)116.52g(396.0ミリモル)を徐々に添加した。テトラカルボン酸二無水物の添加、溶解後、反応液の温度を60℃まで加熱して、その後反応液温度を保持したまま20時間重合反応を行い、ポリアミック酸DA-A1及びNMPを含む反応液を得た。
【0155】
得られた反応液を、#800のステンレスメッシュを用いてろ過して室温(25℃)まで冷却をして25℃における溶液粘度2.0Pa・sのポリアミック酸溶液DA-A1を得た。
なお、ポリアミック酸溶液の溶液粘度は、東機産業社製、E型回転粘度計、TV-20Hを用い、標準ローター(1°34“×R24)で、測定温度:25℃、回転数:0.5rpm(100Pa・s以上)、1rpm(100Pa・s未満)の条件にて測定を行った値である。
以下の合成例で得られたポリアミック酸溶液の溶液粘度も同様に測定した値である。
【0156】
-ポリアミック酸溶液DC-A1の調製-
ODAを79.57g(397.4ミリモル)、BPDAを120.43g(409.3ミリモル)とした以外は、合成例1と同様にして、ポリアミック酸DC-A1及びNMPを含む溶液粘度6.0Pa・sのポリアミック酸溶液DC-A1を得た。
【0157】
<塗布液の調製>
-塗布液F2(第2の塗布液)の調製-
・ポリアミック酸溶液DA-A1(固形分濃度:45質量%) 70質量部
・ポリアミック酸溶液DC-A1(固形分濃度:15質量%) 30質量部
・酸性カーボンブラック(乾燥状態;導電性カーボン粒子)
〔SPECIAL BLACK4 :オリオンエンジニアドカーボンズ社製、pH4.5、揮発分:18.0%、ガスブラック(すなわちチャンネルブラック)、個数平均一次粒径:25nm(以下「SB-4」と略する)〕 26質量部
上記組成のポリアミック酸溶液DA-A1及びポリアミック酸溶液DC-A1を混合し、SB-4を添加してボールミルにて30℃にて12時間分散処理することによりポリアミック酸溶液の混合液に分散した。その後、SB-4が分散した混合液を、#400ステンレスメッシュでろ過して、第2の塗布液である塗布液F2を得た。
【0158】
-塗布液F1(第1の塗布液)の調製-
・ポリアミック酸溶液DA-A1(固形分濃度:45質量%) 70質量部
・ポリアミック酸溶液DC-A1(固形分濃度:15質量%) 30質量部
・酸性カーボンブラック(乾燥状態;導電性カーボン粒子)
〔Color Black FW200、オリオンエンジニアドカーボンズ社製、ガスブラック(すなわちチャンネルブラック)、個数平均一次粒径:13nm、pH:3.0(以下「FW200」と略する)〕 18質量部
・ポリエーテル変性シリコーンオイル(両末端型ポリエーテル変性シリコーンオイル、信越化学工業製、品名:KF-600x、有機基が有する炭素原子の数:6、数平均分子量:900、20℃における粘度:2mPa・s)6.8質量部
上記組成のポリアミック酸溶液DA-A1及びポリアミック酸溶液DC-A1を混合し、FW200を添加してボールミルにて30℃にて12時間分散処理することによりポリアミック酸溶液の混合液に分散し、分散液を得た。得られた分散液に、ポリエーテル変性シリコーンオイルを添加して10分間の攪拌することで、混合液を得た。その後、シリコーンオイルが添加された混合液を、#800ステンレスメッシュでろ過して、第1の塗布液である塗布液F1を得た。
【0159】
<ベルトF1の作製>
-被塗布材の離型剤処理-
被塗布材として、外径366mm、長さ400mmのSUS材料製円筒型金型を用意し、その外表面にシリコーン系離型剤(信越化学工業社製、品名:セパコートSP)を塗布し、乾燥処理(離型剤処理)を行った。
【0160】
-第2の塗布膜の形成-
離型剤処理を施した円筒型金型を周方向に10rpmの速度で回転させながら、円筒型金型端部より、上記塗布液F2を口径1.0mmディスペンサーより吐出し、金型上に設置した金属ブレードにて一様の圧力で押し付けて塗布を行った。ディスペンサーユニットを円筒型金型の軸方向に100mm/分の速度で移動させることによって塗布液F2を円筒型金型上に螺旋状に塗布し、第2の塗布膜を形成した。
【0161】
-第2の塗布膜の乾燥-
その後、金型及び第2の塗布膜を乾燥炉中で140℃空気雰囲気下、10rpmで回転させながら15分乾燥処理を行った。
乾燥後、第2の塗布膜より溶媒が揮発することで、第2の塗布膜は自己支持性を有するポリアミック酸樹脂成形品(基材1)と変化した。
【0162】
-第1の塗布膜の形成及び乾燥-
塗布液F1を、塗布液F2の塗布と同様の回転塗布法により基材1の外周面に塗布して第1の塗布膜を形成した後、乾燥炉中で第1の塗布膜を140℃空気雰囲気下、10rpmで回転させながら15分乾燥処理を行った。なお、第1の塗布膜の乾燥工程における積分平均昇温速度A/Bは6.00℃/minであった。
【0163】
-焼成-
次に、到達温度320℃としたオーブンに4時間入れ、無端ベルトF1を得た。無端ベルトF1の全体膜厚(基材層と表面層との合計膜厚)は80μmであり、そのうち基材層の膜厚は26.7μm、表面層の膜厚は53.3μmであった。
金型から無端ベルトF1を取り外し、抜き取った無端ベルトF1を保持具に張架し、挿入角を調整したカッターにて切断し、φ366mm、幅369mmの環状体を得た。このようにして作製した中間転写ベルトをベルトF1とした。
なお、ベルトF1における基材層全体に対する導電性カーボン粒子の含有量は22質量%であり、表面層全体に対する導電性カーボン粒子の含有量は29質量%であり、表面層全体に対するシリコーンオイルの含有量は3質量%である。
また、ベルトF1について前述の方法で体積抵抗率及び外周面の表面抵抗率を測定したところ、体積抵抗率の常用対数値は11.0(logΩ・cm)、表面抵抗率の常用対数値は9.5(logΩ/suq.)であった。
【0164】
[比較例G1]
DocuCentre C2000(富士フイルムビジネスイノベーション社製)の中間転写ベルトをそのまま用いてベルトG1とした。
なお、ベルトG1の全体膜厚(すなわち、単層の膜厚)は75μmであり、ベルトG1全体に対する導電性カーボン粒子の含有量は13質量%であり、ベルトG1にはシリコーンオイルが含まれていない。
また、ベルトG1について前述の方法で体積抵抗率及び外周面の表面抵抗率を測定したところ、体積抵抗率の常用対数値は10.0(logΩ・cm)、表面抵抗率の常用対数値は9.8(logΩ/suq.)であった。
【0165】
[比較例G2]
Apeos C8180(富士フイルムビジネスイノベーション社製)の中間転写ベルトを所望のサイズに(つまり、幅369mmになるように)切り出して用いてベルトG2とした。
なお、ベルトG2の全体膜厚(すなわち、単層の膜厚)は80μmであり、ベルトG2全体に対する導電性カーボン粒子の含有量は16質量%であり、ベルトG2にはシリコーンオイルが含まれていない。
また、ベルトG2について前述の方法で体積抵抗率及び外周面の表面抵抗率を測定したところ、体積抵抗率の常用対数値は11.0(logΩ・cm)、表面抵抗率の常用対数値は10.8(logΩ/suq.)であった。
【0166】
[比較例G3]
第1の導電性カーボン粒子として酸化処理ガスブラック(デグザ製、Special Black SB4、個数平均一次粒径:25nm)を16質量%用いた以外は、塗布液A1と同様にして、塗布液G3を得た。
塗布液A1の代わりに塗布液G3を用いた以外は、ベルトA1と同様にして、ベルトG3を得た。
なお、ベルトG3の全体膜厚(すなわち、単層の膜厚)は80μmであり、ベルトG3全体に対する導電性カーボン粒子の含有量は16質量%であり、ベルトG3全体に対するシリコーンオイルの含有量は3質量%である。
また、ベルトG3について前述の方法で体積抵抗率及び外周面の表面抵抗率を測定したところ、体積抵抗率の常用対数値は10.5(logΩ・cm)、表面抵抗率の常用対数値は9.5(logΩ/suq.)であった。
【0167】
[比較例G4]
ポリエーテル変性シリコーンオイルの代わりに、フッ素変性シリコーンオイル(信越化学工業製、品名:KF400)を用いた以外は、塗布液A1と同様にして、塗布液G4を得た。
塗布液A1の代わりに塗布液G4を用いた以外は、ベルトA1と同様にして、ベルトG4を得た。
なお、ベルトG4の全体膜厚(すなわち、単層の膜厚)は80μmであり、ベルトG4全体に対する導電性カーボン粒子の含有量は17.5質量%であり、ベルトG4全体に対するシリコーンオイルの含有量は3質量%である。
また、ベルトG4について前述の方法で体積抵抗率及び外周面の表面抵抗率を測定したところ、体積抵抗率の常用対数値は9.8(logΩ・cm)、表面抵抗率の常用対数値は9.6(logΩ/suq.)であった。
【0168】
[比較例G5]
ポリエーテル変性シリコーンオイルの代わりに、界面活性剤(メチル基を持つシリコーン構造を有するオリゴマー、シロキサンの繰り返し数500、信越化学工業製、品名:KP126)を用いた以外は、塗布液A1と同様にして、塗布液G5を得た。
塗布液A1の代わりに塗布液G5を用いた以外は、ベルトA1と同様にして、ベルトG5を得た。
なお、ベルトG5の全体膜厚(すなわち、単層の膜厚)は80μmであり、ベルトG5全体に対する導電性カーボン粒子の含有量は17.5質量%であり、ベルトG5全体に対する界面活性剤の含有量は3質量%であり、ベルトG5には特定シリコーンオイルが含まれていない。
また、ベルトG5について前述の方法で体積抵抗率及び外周面の表面抵抗率を測定したところ、体積抵抗率の常用対数値は9.8(logΩ・cm)、表面抵抗率の常用対数値は9.6(logΩ/suq.)であった。
【0169】
[無端ベルトの測定]
得られた無端ベルトについて、それぞれ、前述の方法でL(r)積分値を求めた。結果を表1に示す。
また、無端ベルトの層構成、単層又は第1の層に含まれる樹脂の種類を併せて表1に示す。
【0170】
[転写装置、画像形成装置の製造]
金属製の一次転写ロールとして、φ12(外径12mm)、軸方向長さ334mmのSUS304からなる金属ロールを用いた。
得られたベルト及び上記一次転写ロールを、Apeos C2360(富士フイルムビジネスイノベーション社)に取り付けることで、転写装置を備えた画像形成装置を得た。
なお、一次転写ロールと像保持体とで中間転写体が挟み込まれるニップ領域の周方向幅は4mmであった。
【0171】
[評価]
体積平均粒径5.8μmのトナーを用い、得られた画像形成装置により、10℃15%RHの周辺環境下で、A3サイズのコート紙にフルカラーにて全速モード(搬送速度:308mm/s)及び半速モード(搬送速度:154mm/s)で、プロセスブラックの全面ハーフトーン濃度20%上に、45度に傾けた50mm角の格子を重ねた画像を100000枚出力し、格子外の画像濃度変化をゴーストと定義した。
2枚目の画像(初期画像)におけるゴースト発生の有無を確認し、下記基準で初期のゴースト現象抑制評価を行った。
また、2000枚目の画像(連続使用後画像)におけるゴースト発生の有無を確認し、下記基準でゴースト現象抑制の維持性評価を行った(表中の「維持性1」)。
さらに、100000枚目の画像(連続使用後画像)におけるゴースト発生の有無を確認し、下記基準でゴースト現象抑制の維持性評価を行った(表中の「維持性2」)。
【0172】
-初期及び維持性1の基準-
A: 全速モード、半速モードともにゴーストが未発生。
B: 全速モードでゴーストが未発生。
C: 全速モード、半速モードともにゴーストが発生。
-維持性2の基準-
A :全速モード、半速モードともにゴーストが未発生。
B+:全速モードでゴーストが未発生。半速モードのゴーストは2000枚目と同等。
B-:全速モードでゴーストが未発生。半速モードのゴーストは2000枚目より悪化。
C :全速モード、半速モードともにゴーストが発生。
【0173】
【表1】
【0174】
表1に示す結果から、本実施例の転写装置では、金属製の一次転写ロールを用いていても、比較例の転写装置に比べ、ゴースト現象が抑制されることがわかる。
【0175】
本開示には、下記の態様が含まれる。
【0176】
(((1)))
ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、芳香族ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、及びポリエーテルイミド樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含む樹脂と、導電性カーボン粒子と、ジメチルポリシロキサン及びジメチルポリシロキサンの有機基置換体からなる群より選択される少なくとも1種を含むシリコーンオイルと、を含有する層からなる又は前記層を最外層として有する無端ベルトであって、前記無端ベルトの外周面における6.3μm×4.2μmの評価領域に存在する前記導電性カーボン粒子の空間分布において、粒子間距離rが0.05μm以上0.30μm以下における下記式(1)で表される統計量L(r)の積分値が0以上0.1以下である無端ベルトからなる中間転写体と、
前記中間転写体の内周面に接し前記中間転写体に電界を印加する金属製の一次転写ロールを有し、像保持体の表面に形成されたトナー像を前記中間転写体の外周面に一次転写する一次転写装置と、
前記中間転写体の外周面に転写された前記トナー像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写装置と、
を備える転写装置。
【0177】
【数7】
【0178】
[前記式(1)中、rは前記粒子間距離を示し、K(r)は下記式(2)で表されるRipleyのK関数K(r)を示す。]
【0179】
【数8】
【0180】
[前記式(2)中、1(|X-X|≦r)は指示関数を示し、X及びXはそれぞれ点i及び点jの座標を示し、|X-X|は座標Xと座標Xとのユークリッド距離を示し、rは前記粒子間距離を示し、s(|X-X|)は下記式(3)で表される評価領域のエッジ補正係数s(x)を示し、x=|X-X|であり、Nは評価領域内における粒子の総数を示し、λは評価領域内における粒子の数密度を示す。]
【0181】
【数9】
【0182】
[前記式(3)中、L及びLはそれぞれ評価領域のx軸方向及びy軸方向における辺の長さ(μm)を示し、x=|X-X|であり、X及びXはそれぞれ点i及び点jの座標を示し、|X-X|は座標Xと座標Xとのユークリッド距離を示す。]
【0183】
(((2)))
前記シリコーンオイルは、前記ジメチルポリシロキサンの有機基置換体として、ポリエーテル構造を有する有機基及びアラルキル基からなる群より選択される少なくとも1種を有する変性シリコーンオイルを含む、(((1)))に記載の転写装置。
(((3)))
前記シリコーンオイルは、前記ジメチルポリシロキサンの有機基置換体としてポリエーテル変性シリコーンオイル及びアラルキル変性シリコーンオイルからなる群より選択される少なくとも1種を含む、(((1)))又は(((2)))に記載の転写装置。
(((4)))
前記シリコーンオイルは、前記ジメチルポリシロキサンの有機基置換体としてポリエーテル変性シリコーンオイルを含む、(((1)))~(((3)))のいずれか1つに記載の転写装置。
(((5)))
前記シリコーンオイルは、前記ジメチルポリシロキサンの有機基置換体としてアラルキル変性シリコーンオイルを含む、(((1)))~(((3)))のいずれか1つに記載の転写装置。
(((6)))
前記シリコーンオイルの含有量は、前記層全体に対し、0.5質量%以上7質量%以下である、(((1)))~(((5)))のいずれか1つに記載の転写装置。
(((7)))
前記シリコーンオイルの含有量は、前記層全体に対し、0.5質量%以上6質量%以下である、(((1)))~(((6)))のいずれか1つに記載の転写装置。
(((8)))
前記シリコーンオイルの含有量は、前記層全体に対し、1質量%以上3質量%以下である、(((1)))~(((7)))のいずれか1つに記載の転写装置。
(((9)))
前記樹脂は、イミド系樹脂を含む、(((1)))~(((8)))のいずれか1つに記載の転写装置。
(((10)))
前記イミド系樹脂は、ポリイミド樹脂を含む、(((9)))に記載の転写装置。
【0184】
(((11)))
前記シリコーンオイルは前記ジメチルポリシロキサンの有機基置換体としてポリエーテル変性シリコーンオイル及びアラルキル変性シリコーンオイルからなる群より選択される少なくとも1種を含み、かつ、前記樹脂はイミド系樹脂を含む、(((1)))に記載の転写装置。
(((12)))
前記イミド系樹脂は、ポリイミド樹脂を含む、(((11)))に記載の転写装置。
【0185】
(((13)))
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電装置と、
帯電した前記像保持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、
トナーを含む現像剤を収容し、前記現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記トナー像を記録媒体の表面に転写する(((1)))~(((12)))のいずれか1つに記載の転写装置と、
を備える画像形成装置。
【0186】
(((1)))に係る発明によれば、無端ベルトからなる中間転写体と金属製の一次転写ロールを有する一次転写装置と二次転写装置とを有し、無端ベルトが樹脂及び導電性カーボン粒子を含有する層からなる又は前記層を最外層として有する転写装置において、前記層がシリコーンオイルを含有しない場合、前記層がシリコーンオイルとしてフッ素変性シリコーンオイルのみを含有する場合、又は無端ベルトの外周面における6.3μm×4.2μmの評価領域に存在する前記導電性カーボン粒子の空間分布において、粒子間距離rが0.05μm以上0.30μm以下における下記式(1)で表される統計量L(r)の積分値が0.1超えである場合に比べ、無端ベルトの外周面における電荷の沿面伝導に起因するゴースト現象が抑制される転写装置が提供される。
【0187】
(((2)))、(((3)))、(((4)))、又は(((5)))に係る発明によれば、シリコーンオイルがジメチルポリシロキサンからなる場合に比べ、ゴースト現象が抑制される状態が維持される転写装置が提供される。
(((6)))又は(((7)))に係る発明によれば、シリコーンオイルの含有量が0.5質量%未満である場合に比べ、ゴースト現象が抑制される転写装置が提供される。
(((8)))に係る発明によれば、シリコーンオイルの含有量が1質量%未満である場合に比べ、ゴースト現象が抑制される転写装置が提供される。
(((9)))又は(((10)))に係る発明によれば、樹脂が芳香族ポリエーテルエーテルケトン樹脂からなる場合に比べ、ゴースト現象が抑制される状態が維持される転写装置が提供される。
【0188】
(((11)))又は(((12)))に係る発明によれば、シリコーンオイルがジメチルポリシロキサンからなる場合、又は樹脂が芳香族ポリエーテルエーテルケトン樹脂からなる場合に比べ、ゴースト現象が抑制される状態が維持される転写装置が提供される。
【0189】
(((13)))に係る発明によれば、無端ベルトからなる中間転写体と金属製の一次転写ロールを有する一次転写装置と二次転写装置とを有し、無端ベルトが樹脂及び導電性カーボン粒子を含有する層からなる又は前記層を最外層として有する転写装置において、前記層がシリコーンオイルを含有しない転写装置、前記層がシリコーンオイルとしてフッ素変性シリコーンオイルのみを含有する転写装置、又は無端ベルトの外周面における6.3μm×4.2μmの評価領域に存在する前記導電性カーボン粒子の空間分布において、粒子間距離rが0.05μm以上0.30μm以下における下記式(1)で表される統計量L(r)の積分値が0.1超えである転写装置を備える場合に比べ、無端ベルトの外周面における電荷の沿面伝導に起因するゴースト現象が抑制される画像形成装置が提供される。
【符号の説明】
【0190】
1Y,1M,1C,1K 画像形成ユニット
10 一次転写部
11 感光体
12 帯電器
13 レーザ露光器
14 現像器
15 中間転写ベルト
16 一次転写ロール
17 感光体クリーナ
20 二次転写部
22 二次転写ロール
25 背面ロール
26 給電ロール
31 駆動ロール
32 支持ロール
33 張力付与ロール
34 クリーニング背面ロール
35 中間転写ベルトクリーナ
40 制御部
42 基準センサ
43 画像濃度センサ
50 用紙収容部
51 給紙ロール
52 搬送ロール
53 搬送ガイド
55 搬送ベルト
56 定着入口ガイド
60 定着装置
100 画像形成装置
K 用紙
図1