(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144165
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】フィルム剥離装置およびフィルム剥離方法
(51)【国際特許分類】
B65H 41/00 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
B65H41/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024026626
(22)【出願日】2024-02-26
(31)【優先権主張番号】18/127557
(32)【優先日】2023-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154380
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100081972
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 豊
(72)【発明者】
【氏名】石川 泰己
(72)【発明者】
【氏名】山岸 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 智秀
(72)【発明者】
【氏名】瀧川 晋作
【テーマコード(参考)】
3F108
【Fターム(参考)】
3F108JA02
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で、ワークに密着されたフィルムを容易に剥離する。
【解決手段】フィルム剥離装置100は、ワークが載置されるトレイ300の上方において、第1位置と第1位置よりも上方の第2位置との間を、上下方向に移動可能に配置された支持プレート20と、支持プレート20からトレイ300に向けて下方に延在し、支持プレート20が第1位置に位置するとき、フィルムの上面に当接する吸着パッドを下端部に有する吸着ロッドと、支持プレート20からトレイ300に向けて下方に延在し、支持プレート20が第1位置に位置するとき、フィルムの上面に当接する第1押さえパッドを下端部に有する第1押さえロッドと、支持プレート20が第1位置から第2位置まで移動するとき、吸着ロッドが上昇を開始した後、第1押さえロッドが上昇を開始するように吸着ロッドおよび第1押さえロッドを支持する支持部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムが密着されたワークから前記フィルムを剥離するフィルム剥離装置であって、
前記ワークが載置される載置部の上方において、第1位置と前記第1位置よりも上方の第2位置との間を、上下方向に移動可能に配置された移動体と、
前記移動体から前記載置部に向けて下方に延在し、前記移動体が前記第1位置に位置するとき、前記フィルムの上面に当接する第1当接部を下端部に有する第1ロッドと、
前記移動体から前記載置部に向けて下方に延在し、前記移動体が前記第1位置に位置するとき、前記フィルムの上面に当接する第2当接部を下端部に有する第2ロッドと、
前記移動体の上下方向の移動に伴い前記第1ロッドおよび前記第2ロッドが上下方向に移動するように前記第1ロッドおよび前記第2ロッドを前記移動体から支持する支持部と、を備え、
前記第1当接部は、前記フィルムを吸着する吸着部を有し、
前記第2当接部は、前記フィルムが前記第2ロッドにより押圧されたまま、前記フィルムが水平方向に移動可能となるように滑り部を有し、
前記支持部は、前記移動体が前記第1位置から前記第2位置まで移動するとき、前記第1ロッドが上昇を開始した後、前記第2ロッドが上昇を開始するように前記第1ロッドおよび前記第2ロッドを支持することを特徴とするフィルム剥離装置。
【請求項2】
請求項1に記載のフィルム剥離装置において、
前記滑り部は、回転可能なボールまたはローラを有することを特徴とするフィルム剥離装置。
【請求項3】
請求項1に記載のフィルム剥離装置において、
前記支持部は、前記第1ロッドを前記移動体に固定する固定部と、前記第2ロッドを前記移動体に対し上下動可能に支持する可動支持部と、を有し、
前記可動支持部は、前記移動体から下方に突出する前記第2ロッドの突出量の減少に伴い、前記第2ロッドの下方への付勢力が増加するようにばねを介して前記第2ロッドを支持することを特徴とするフィルム剥離装置。
【請求項4】
請求項1に記載のフィルム剥離装置において、
前記第1ロッドおよび前記第2ロッドは、前記移動体が前記第1位置に位置するとき、前記第2当接部が前記第1当接部と前記フィルムの縁部との間に位置するように設けられることを特徴とするフィルム剥離装置。
【請求項5】
請求項1に記載のフィルム剥離装置において、
前記移動体から前記載置部に向けて下方に延在し、前記移動体が前記第1位置に位置するとき、前記フィルムの上面に当接する第3当接部を下端部に有する第3ロッドをさらに備え、
前記第3当接部は、前記フィルムが前記第3ロッドにより押圧されたまま、前記フィルムが変位可能となるように弾性体を有し、
前記支持部は、前記移動体が前記第1位置から前記第2位置まで移動するとき、前記第1ロッドが上昇を開始した後、前記第2ロッドが上昇を開始する前に前記第3ロッドが上昇を開始するようにさらに前記第3ロッドを支持することを特徴とするフィルム剥離装置。
【請求項6】
請求項5に記載のフィルム剥離装置において、
前記支持部は、前記第1ロッドを前記移動体に固定する固定部と、前記第2ロッドを前記移動体に対し上下動可能に支持する第1可動支持部と、前記第3ロッドを前記移動体に対し上下動可能に支持する第2可動支持部と、を有し、
前記第1可動支持部は、前記移動体から下方に突出する前記第2ロッドの突出量の減少に伴い、前記第2ロッドの下方への付勢力が増加するように第1ばねを介して前記第2ロッドを支持し、
前記第2可動支持部は、前記移動体から下方に突出する前記第3ロッドの突出量の減少に伴い、前記第3ロッドの下方への付勢力が増加するように第2ばねを介して前記第3ロッドを支持し、
前記第2ロッドの付勢力が0となる下方への突出量は、前記第3ロッドの付勢力が0となる下方への突出量よりも大きいことを特徴とするフィルム剥離装置。
【請求項7】
請求項5に記載のフィルム剥離装置において、
前記第3ロッドの両側に一対の前記第1ロッドを備え、
前記一対の前記第1ロッドと前記第3ロッドとは、前記移動体が前記第1位置に位置するとき、前記一対の前記第1当接部の一方と前記第3当接部とが隣り合って位置するとともに、前記第3当接部が前記一対の前記第1当接部を結ぶ仮想線と前記フィルムの縁部との間に位置するように設けられることを特徴とするフィルム剥離装置。
【請求項8】
請求項7に記載のフィルム剥離装置において、
前記フィルムは平面視略矩形状を呈し、
前記一対の前記第1ロッドと前記第2ロッドと前記第3ロッドとは、前記移動体が前記第1位置に位置するとき、前記一対の前記第1当接部の前記一方と前記第3当接部とが前記フィルムの前記縁部に沿って並んで位置し、前記第2当接部が前記フィルムの角部に位置し、さらに前記一対の前記第1当接部の他方が前記第2当接部に並んで前記角部の反対側に位置するように設けられることを特徴とするフィルム剥離装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のフィルム剥離装置において、
前記ワークは、燃料電池の膜電極接合体を構成する樹脂製のフレームであることを特徴とするフィルム剥離装置。
【請求項10】
フィルムが密着されたワークから前記フィルムを剥離するフィルム剥離方法であって、
前記ワークが載置された載置部に向けて下方に延在し、下端部に第1当接部を有する第1ロッドと、前記載置部に向けて下方に延在し、下端部に第2当接部を有する第2ロッドとを支持する移動体を、前記載置部の上方に配置する第1工程と、
前記第1当接部と前記第2当接部とが前記フィルムの上面に当接する第1位置まで前記移動体を下降する第2工程と、
前記第1当接部により前記フィルムを吸着しながら、前記移動体を上昇する第3工程と、を含み、
前記第2当接部は、前記フィルムが前記第2ロッドにより押圧されたまま、前記フィルムが水平方向に移動可能となるように滑り部を有し、
前記第3工程では、前記第1ロッドが所定量上昇するまで、前記第2ロッドが上昇しないことを特徴とするフィルム剥離方法。
【請求項11】
請求項10に記載のフィルム剥離方法において、
前記第1工程では、前記載置部に向けて下方に延在し、下端部に第3当接部を有する第3ロッドをさらに支持する前記移動体を、前記載置部の上方に配置し、
前記所定量は第1所定量であり、
前記第3当接部は、前記フィルムが前記第3ロッドにより押圧されたまま、前記フィルムが変位可能となるように弾性体を有し、
前記第3工程では、前記第1ロッドが前記第1所定量よりも小さい第2所定量上昇するまで、前記第3ロッドが上昇しないことを特徴とするフィルム剥離方法。
【請求項12】
請求項10または11に記載のフィルム剥離方法において、
前記ワークは、燃料電池の膜電極接合体を構成する樹脂製のフレームであることを特徴とするフィルム剥離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークに密着されたフィルムを剥離するフィルム剥離装置およびフィルム剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、従来、保護シートが貼り付けられたプリプレグシートから保護シートを剥離するようにした装置が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1記載の装置では、プリプレグシートの端面にエアを噴射して、プリプレグシートから保護シートを剥離する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の装置のように、エアを噴射する構成では、ワークに密着されたフィルムを剥離することが難しい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、フィルムが密着されたワークからフィルムを剥離するフィルム剥離装置であって、ワークが載置される載置部の上方において、第1位置と第1位置よりも上方の第2位置との間を、上下方向に移動可能に配置された移動体と、移動体から載置部に向けて下方に延在し、移動体が第1位置に位置するとき、フィルムの上面に当接する第1当接部を下端部に有する第1ロッドと、移動体から載置部に向けて下方に延在し、移動体が第1位置に位置するとき、フィルムの上面に当接する第2当接部を下端部に有する第2ロッドと、移動体の上下方向の移動に伴い第1ロッドおよび第2ロッドが上下方向に移動するように第1ロッドおよび第2ロッドを移動体から支持する支持部と、を備える。第1当接部は、フィルムを吸着する吸着部を有し、第2当接部は、フィルムが第2ロッドにより押圧されたまま、フィルムが水平方向に移動可能となるように滑り部を有する。支持部は、移動体が第1位置から第2位置まで移動するとき、第1ロッドが上昇を開始した後、第2ロッドが上昇を開始するように第1ロッドおよび第2ロッドを支持する。
【0006】
本発明の他の態様は、フィルムが密着されたワークからフィルムを剥離するフィルム剥離方法であって、ワークが載置された載置部に向けて下方に延在し、下端部に第1当接部を有する第1ロッドと、載置部に向けて下方に延在し、下端部に第2当接部を有する第2ロッドとを支持する移動体を、載置部の上方に配置する第1工程と、第1当接部と第2当接部とがフィルムの上面に当接する第1位置まで移動体を下降する第2工程と、第1当接部によりフィルムを吸着しながら、移動体を上昇する第3工程と、を含む。第2当接部は、フィルムが第2ロッドにより押圧されたまま、フィルムが水平方向に移動可能となるように滑り部を有する。第3工程では、第1ロッドが所定量上昇するまで、第2ロッドが上昇しない。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、簡易な構成で、ワークに密着されたフィルムを容易に剥離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係るフィルム剥離装置の全体構成を概略的に示す図。
【
図3】
図1のフィルム剥離装置に含まれる複数のパッドの配置を示す平面図。
【
図4A】
図1のフィルム剥離装置に含まれる吸着ロッドおよび第1押さえロッドの概略構成を示す図であり、吸着ロッドおよび第1押さえロッドの動作の一例を示す図。
【
図5A】
図1のフィルム剥離装置に含まれる吸着ロッドおよび第2押さえロッドの概略構成を示す図であり、吸着ロッドおよび第2押さえロッドの動作の一例を示す図。
【
図6】
図5Cに対応する動作を保護フィルム上で示す平面図。
【
図7】本発明の実施形態に係るフィルム剥離方法による、上昇工程における時間経過に伴うパッドの移動量を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、
図1~
図7を参照して本発明の実施形態について説明する。本発明の実施形態に係るフィルム剥離装置は、予め保護フィルムが装着されたワークの表面から保護フィルムを剥離し、除去するように構成される。ワークは、例えば燃料電池の構成要素である燃料電池スタックに組み込まれる樹脂製のフレームである。
【0010】
このフレームは、電解質膜と電解質膜の両側に配置されたアノード用およびカソード用の電極との接合体、すなわち膜電極接合体(MEA)を支持するものであり、サブガスケットとも呼ばれる。このような接合体と一体化されたフレームと、金属製のセパレータとを、所定枚数だけ交互に積層することで、複数の発電セルを含む燃料電池スタックが構成される。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係るフィルム剥離装置100の全体構成を概略的に示す図である。
図1に示すように、フィルム剥離装置100は、多関節型のアーム11,12とアーム12の先端部に設けられたハンド13とを有する産業用のロボット10と、ハンド13に取り付けられた支持プレート20と、支持プレート20に支持された複数のロッド30とを有する。
【0012】
アーム11とアーム12とは回動軸10aを介して回動可能に連結され、アーム12とハンド13とは回動軸10bを介して回動可能に連結される。なお、ロボット10の構成(アームの個数など)は図示したものに限らない。アーム11,12とハンド13とは、例えば回動軸10a,10bに設けられたサーボモータなどのアクチュエータ14の駆動により回動し、これによりハンド13の位置および姿勢が変化する。アクチュエータ14はECU15により制御される。ECU15は、CPU,ROM,RAMおよびその他の周辺回路を有するコンピュータを含んで構成される電子制御ユニットである。
【0013】
支持プレート20は、ハンド13の先端部のプレート13aに、スペーサ13bを介して固定される。したがって、支持プレート20は、プレート13aから所定距離だけ離間してプレート13aと略平行に設けられ、ハンド13と一体に移動する。このため、ECU15により、支持プレート20の位置および姿勢を制御できる。具体的には、支持プレート20を
図1の水平姿勢に保持したまま、支持プレート20を矢印Z方向に移動、すなわち上下方向に昇降できる。
【0014】
ロッド30は、支持プレート20に対し略垂直方向に、換言すると、水平姿勢の支持プレート20に対し上下方向に延在する。ロッド30の下端部にはパッド40が設けられる。パッド40は、ワーク201や保護フィルム202などの対象物200を吸着する吸着パッドを含む。吸着パッドのロッド30は筒状に構成されて内部通路が真空発生器に接続され、真空発生器を介して吸着パッドに負圧(真空圧)を発生させることで、対象物200を吸着することができる。
図1には、保護フィルム202が吸着された水平姿勢の支持プレート20が示される。
【0015】
支持プレート20は、上面が開放されたトレイ300の上方で昇降する。トレイ300には、ワーク201が積層状態で格納され、トレイ300はワーク201の載置台を構成する。ワーク201の間には保護フィルム202が装着され、ワーク201と保護フィルム202とは交互に積層される。保護フィルム202は、ポリエチレンナフタレートなどの可撓性を有する屈曲可能な薄膜状の樹脂フィルムである。トレイ300内では、保護フィルム202がワーク201の表面に密着している。
【0016】
図2Aは、保護フィルム202をワーク201の表面から分離した後の、トレイ内の様子を示す平面図(
図1の矢視IIA図)である。
図2Aに示すように、トレイ300の最上部にはワーク201が配置される。ワーク201は上述したように燃料電池の膜電極接合体を支持する略矩形状の樹脂製フレームである。ワーク201の中央部には、略矩形状の開口部204が設けられる。ワーク201がトレイ300から取り出された後、開口部204を覆うように膜電極接合体が形成される。なお、ワーク201には、燃料ガス、酸化剤ガスおよび冷却媒体の供給用および排出用の流路を構成する複数の貫通孔205も設けられる。
【0017】
このようにワーク201には開口部204や貫通孔205が設けられる。このため、ワーク201がトレイ300の最上部に位置するとき(
図2A)、開口部204や貫通孔205を介して押さえパッド(不図示)によりワーク201の下方の保護フィルム202を上方から押さえることができる。そして、押さえパッドにより保護フィルム202を押圧しながら吸着パッドによりワーク201を吸着すれば、ワーク201と保護フィルム202の界面で真空破壊させることができ、ワーク201と保護フィルム202とを分離することが可能である。なお、ワーク201がトレイ300に配置されている段階では、ワーク201に貫通孔205が設けられなくてもよい。
【0018】
これに対し、保護フィルム202がトレイ300の最上部に位置するとき(
図2B)、保護フィルム202には貫通孔がないため、押さえパッドにより保護フィルム202の下方のワーク201を上方から押さえることができない。このため、密着状態の保護フィルム202をワーク201から剥離することが困難であり、吸着パッドを介して保護フィルム202を上昇させると、ワーク201も一体に上昇するおそれがある。そこで、
図2Bに示すような場合であっても保護フィルム202を容易に剥離することができるよう、本実施形態は以下のようにフィルム剥離装置100を構成する。
【0019】
本実施形態に係るフィルム剥離装置100は、互いに動作の異なる3種類のロッドおよびパッドを有する。以下では、3種類のロッドを、便宜上、吸着ロッド、第1押さえロッドおよび第2押さえロッドと呼び、これら吸着ロッド、第1押さえロッドおよび第2押さえロッドの先端に設けられるパッドを、それぞれ吸着パッド、第1押さえパッドおよび第2押さえパッドと呼ぶ。
【0020】
図3は、保護フィルム202の上面に当接されるパッド40(吸着パッド41、第1押さえパッド42、第2押さえパッド43)の位置を示す図である。図中、吸着パッド41を丸で、第1押さえパッド42を二重丸で、第2押さえパッド43を三重丸で、それぞれ示す。
【0021】
まず、吸着ロッド31と第1押さえロッド32との関係について説明する。
図3に示すように、保護フィルム202は4つの角部202aと4つの辺(縁部202b)とを有する。4つの角部202aの内側には、それぞれ第1押さえパッド42が配置される。より詳しくは、角部202a、202a同士を結ぶ対角線(不図示)上に、かつ、保護フィルム202の縁部202bに近接して第1押さえパッド42が配置される。第1押さえパッド42の内側(角部202aの反対側)には、それぞれ第1押さえパッド42に隣り合って吸着パッド41が配置される。
【0022】
図4Aは、吸着ロッド31と第1押さえロッド32の構成を概略的に示す図、すなわち
図3の領域IVを側方から見た図である。
図4Aは、支持プレート20の下降動作の途中を示す図であり、第1押さえパッド42が保護フィルム202に接触を開始した時点を示す。
【0023】
図4Aに示すように、吸着ロッド31は、支持プレート20を貫通して上下方向に延在し、支持部21を介して支持プレート20に支持される。支持部21は、吸着ロッド31を支持プレート20に固定的に支持する固定部であり、例えば吸着ロッド31の外周面から水平方向に延在するフランジ部を、ボルトを介して支持プレート20の上面に固定するように構成される。支持部21を溶接等の接合手段により構成し、接合手段を介して吸着ロッド31を支持プレート20に固定するようにしてもよい。吸着ロッド31は筒状に形成され、上下方向に延在する内部通路を有する。内部通路は、不図示の真空発生器に連通する。
【0024】
吸着パッド41は、ゴムや樹脂などの弾力性を有する部材によって構成される。吸着パッド41には、上端面から下端面にかけて貫通孔が設けられ、貫通孔が吸着ロッド31の内部通路を介して真空発生器に連通する。吸着パッド41の下端面は、ワーク201や保護フィルム202などの対象物200を吸着する吸着面であり、真空発生器がオンして貫通孔の内部が真空状態になると、対象物200に対して吸着力が作用し、対象物200を吸着することができる。真空発生器がオフすると、吸着力が除去され、吸着面から対象物200を離脱することができる。真空発生器のオンオフは、真空発生器と吸着ロッド31の内部通路とを接続する流路の途中に設けられた電磁弁の開閉を含む。真空発生器のオンオフ(例えば電磁弁の開閉)は、ECU15(
図1)により制御される。
【0025】
第1押さえロッド32は、支持プレート20を貫通して上下方向に延在し、支持部22を介して支持プレート20に支持される。支持部22は、ばね221を有し、ばね221を介して第1押さえロッド32を、支持プレート20に対して上下方向に相対移動可能に支持する。ばね221は例えば、支持プレート20の上方において第1押さえロッド32の周囲に配置された引張コイルばねである。ばね221の上端部は第1押さえロッド32の上端部に連結され、下端部は支持プレート20の上面に連結される。
図4Aは、ばね221に付勢力が作用していない初期状態であり、ばね221の長さは自由長である。
【0026】
第1押さえパッド42は、保護フィルム202が第1押さえロッド32により押圧されたまま、保護フィルム202がワーク201の上面に沿って水平方向に移動可能(摺動可能)となるように滑り部421を有する。滑り部421は、第1押さえパッド42の先端のケース部420に、水平方向に延在する回転軸を介して回転可能に支持された、ボールまたはローラにより構成される。
図4Aの初期状態では、第1押さえパッド42(滑り部421)の下端は、吸着パッド41の下端よりも所定長さZ1だけ下方に位置する。
【0027】
図4A~
図4Dを参照して、吸着ロッド31と第1押さえロッド32とを介したフィルム剥離装置100の動作を説明する。支持プレート20は、
図4Aに示す初期状態から下降される。このとき、第1押さえロッド32の下端は保護フィルム202の上面に既に当接しているため、第1押さえロッド32の位置は一定のまま、吸着ロッド31が支持プレート20とともに下降する。
【0028】
図4Aの状態から支持プレート20が所定長さZ1だけ下降されると、
図4Bに示すように、吸着パッド41が保護フィルム202の上面に当接する。このとき、ばね221は、所定長さZ1だけ引っ張られるため、第1押さえロッド32にはばね221を介して下方への押し付け力が作用する。このため、保護フィルム202は第1押さえパッド42を介して下方に押圧される。この状態で真空発生器がオンされ、吸着パッド41を介した保護フィルム202の吸着が開始される。
【0029】
支持プレート20が
図4Bの状態から上昇されると、吸着パッド41が上昇する。支持プレート20が所定長さZ1上昇するまでは、第1押さえパッド42は、ばね221の付勢力により保護フィルム202に当接したままである。これにより、
図4Cに示すように、保護フィルム202の端部(角部202a)が第1押さえパッド42により押圧された状態で、保護フィルム202の一部(角部202aの反対側)が吸着パッド41により吸着されて上昇する。保護フィルム202の端部は第1押さえパッド42により押圧されるため、ワーク201が保護フィルム202に吸着されて保護フィルム202と一体に上昇することを阻止できる。
【0030】
このとき、保護フィルム202には吸着パッド41から引張力が作用するため、保護フィルム202は、滑り部421の下方でワーク201の上面に沿って摺動しながら、水平方向(吸着パッド側)に移動する。この場合、滑り部421のボールまたはローラが回転するため、第1押さえパッド42により保護フィルム202が押圧されながらの保護フィルム202の移動が容易である。支持プレート20が所定長さZ1上昇した状態では、保護フィルム202の端部(角部202a)が第1押さえパッド42の下方に位置する。
【0031】
図4Cの状態からさらに支持プレート20が上昇されると、
図4Dに示すように、第1押さえロッド32が支持プレート20とともに上昇し、第1押さえパッド42が保護フィルム202から離れる。これにより第1押さえパッド42の下方の保護フィルム202が、ワーク201の上面から剥離される。
【0032】
次に、吸着ロッド31と第2押さえロッド33との関係について説明する。
図3に示すように、保護フィルム202の4つの辺(縁部202b)の中間部における内側には、縁部202bに沿って吸着パッド41と第2押さえパッド43とが並んで配置される。このため、領域Vに示すように、第2押さえパッド43の両側に一対の吸着パッド41が配置されるようになり、第2押さえパッド43は、一対の吸着パッド41を結んだ仮想線L1よりも外側(保護フィルム202の縁側)に位置する。
【0033】
図5Aは、吸着ロッド31と第2押さえロッド33の構成を概略的に示す図、すなわち
図3の領域Vを側方から見た図である。
図5Aは、
図4Aと同様、 支持プレート20の下降動作の途中を示す図であり、第2押さえパッド43が保護フィルム202に接触を開始した時点を示す。なお、
図3では、第2押さえパッド43が一対の吸着パッド41の一方に寄っているが、
図5Aは、便宜上、第2押さえパッド43が一対の吸着パッド41の中間地点に位置するものとして示す。
【0034】
図5Aに示すように、第2押さえロッド33は、支持プレート20を貫通して上下方向に延在し、支持部23を介して支持プレート20に支持される。支持部23は、ばね231を有し、ばね231を介して第2押さえロッド33を、支持プレート20に対して上下方向に相対移動可能に支持する。ばね231は例えば、支持プレート20の上方において第2押さえロッド33の周囲に配置された引張コイルばねである。ばね231の上端部は第2押さえロッド33の上端部に連結され、下端部は支持プレート20の上面に連結される。
図5Aは、ばね231に付勢力が作用していない初期状態であり、ばね231の長さは自由長である。
【0035】
第2押さえパッド43は、保護フィルム202が第2押さえロッド33により押圧されたまま、保護フィルム202が変位可能となるように弾性体431を有する。弾性体431は、ゴムや樹脂などにより構成される。
図5Aの状態では、第2押さえパッド43の下端は、吸着パッド41の下端よりも所定長さZ2だけ下方に位置する。所定長さZ2は、所定長さZ1(
図4A)よりも短い。なお、Z2がZ1と等しくてもよい。
【0036】
図5A~
図5Cを参照して、吸着ロッド31と第2押さえロッド33とを介したフィルム剥離装置100の動作を説明する。支持プレート20は、
図5Aに示す初期状態から下降される。このとき、第2押さえロッド33の下端は保護フィルム202の上面に既に当接しているため、第2押さえロッド33の位置は一定のまま、吸着ロッド31が支持プレート20とともに下降する。
【0037】
図5Aの状態から支持プレート20が所定量(所定長さZ2)だけ下降されると、
図5Bに示すように、吸着パッド41が保護フィルム202の上面に当接する。このとき、ばね231は、所定長さZ2だけ引っ張られるため、第2押さえロッド33にはばね231を介して下方への押し付け力が作用する。このため、保護フィルム202は第2押さえパッド43を介して下方に押圧される。
【0038】
支持プレート20が
図5Bの状態から上昇されると、吸着パッド41が上昇する。支持プレート20が所定長さZ2上昇するまでは、第2押さえパッド43は、ばね231の付勢力により保護フィルム202に当接したままである。このとき、第2押さえパッド43の弾性体431が弾性変形しながら、保護フィルム202に引張力が作用することにより、ワーク201と保護フィルム202との界面で真空破壊が生じ、界面に空気が入り込む。
【0039】
この場合、
図6の矢印Aに示すように、第2押さえパッド43と吸着パッド41とを結ぶ領域AR1に、外側から空気が浸入し、領域AR1にしわが生じる。これにより保護フィルム202の剥離が促進され、吸着パッド41により保護フィルム202を上方に引っ張り上げた際に、保護フィルム202をワーク201から容易に剥離することができる。
【0040】
本実施形態に係るフィルム剥離装置100による動作をまとめると以下のようになる。なお、以下の動作は、本実施形態に係るフィルム剥離方法による保護フィルム202の剥離の工程を表す。まず、ECU15からの指令によりロボット10を駆動し、支持プレート20を水平姿勢としてトレイ300の上方の初期位置に移動する(初期移動工程)。次いで、吸着パッド41と第1押さえパッド42と第2押さえパッド43とがそれぞれ保護フィルム202の上面に当接するまで、ロボット10の駆動によって支持プレート20を下降する(下降工程)。このとき、第1押さえパッド42が保護フィルム202に最初に当接し、次に、第2押さえパッド43が当接し、最後に吸着パッド41が当接する。
【0041】
なお、全てのパッド41~43が保護フィルム202に当接した状態における支持プレート20の位置(
図4B,
図5B)を、第1位置と呼ぶことがある。また、支持プレート20の下降前の初期位置を第2位置と呼ぶことがある。支持プレート20は、第1位置と第2位置との間を移動可能に設けられる。
【0042】
次いで、ECU15からの指令により真空発生器をオンし、吸着パッドによる保護フィルム202の吸着を開始する。さらに、ロボット10の駆動によって支持プレート20を所定速度で上昇させる(上昇工程)。
図7は、上昇工程の開始時点からの時間経過に伴うパッド40の移動量を示す図である。図中、特性f0は、吸着パッド41の移動量を、特性f1は、第1押さえパッド42の移動量を、特性f2は、第2押さえパッド43の移動量に相当する。
【0043】
図7に示すように、時点t1に至るまでは、第1押さえパッド42と第2押さえパッド43とがばね221,231の付勢力により保護フィルム202を押圧したまま、吸着パッド41のみが上昇する。第1押さえパッド42の上昇開始の時点が吸着パッド41の上昇開始の時点よりも遅れることで、第1押さえパッド42によりワーク201の上昇が阻止される。一方、保護フィルム202は、滑り部421を介して第1押さえパッド42に対し相対移動可能であるため、保護フィルム202の上昇は可能である。
【0044】
このとき、保護フィルム202は第2押さえパッド43により押圧されながら上昇するため、吸着パッド41と第2押さえパッド43との間の領域AR1で真空破壊が生じ、領域AR1に空気が浸入する(
図6)。時点t1で、吸着パッド41の移動量が所定値(所定長さZ2)に達すると、第2押さえパッド43が上昇を開始する(
図5C)。その後、時点t2に至るまでは、第1押さえパッド42がばね221の付勢力により保護フィルム202を押圧したまま、吸着パッド41と第2押さえパッド43とが上昇する。時点t2で、吸着パッド41の移動量が所定値(所定長さZ1)になると、第1押さえパッド42が上昇を開始する(
図4C)。以上によりワーク201から保護フィルム202を容易に剥離することができる。
【0045】
本実施形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)フィルム剥離装置100は、保護フィルム202が密着されたワーク201から保護フィルム202を剥離するものであり、ワーク201が載置されるトレイ300の上方において、第1位置と第1位置よりも上方の第2位置との間を、上下方向に移動可能に配置された支持プレート20と、支持プレート20からトレイ300に向けて下方に延在し、支持プレート20が第1位置に位置するとき、保護フィルム202の上面に当接する吸着パッド41を下端部に有する吸着ロッド31と、支持プレート20からトレイ300に向けて下方に延在し、支持プレート20が第1位置に位置するとき、保護フィルム202の上面に当接する第1押さえパッド42を下端部に有する第1押さえロッド32と、支持プレート20の上下方向の移動に伴い吸着ロッド31および第1押さえロッド32が上下方向に移動するように吸着ロッド31および第1押さえロッド32を支持プレート20から支持する支持部21,22と、を備える(
図1,
図4A)。吸着パッド41は、保護フィルム202を吸着する吸着部として機能する。第1押さえパッド42は、保護フィルム202が第1押さえロッド32により押圧されたまま、保護フィルム202が水平方向に移動可能となるように滑り部421を有する(
図4A)。支持部21,22は、支持プレート20が第1位置から第2位置まで移動するとき、吸着ロッド31が上昇を開始した後、第1押さえロッド32が上昇を開始するように吸着ロッド31および第1押さえロッド32を支持する(
図4A~
図4D,
図7)。
【0046】
この構成により、第1押さえパッド42の上昇開始の時点が吸着パッド41の上昇開始の時点よりも遅れるため、吸着パッド41で保護フィルム202が吸着した際にワーク201が保護フィルム202とともに上昇することが、第1押さえパッド42により阻止される。また、保護フィルム202は、滑り部421を介して第1押さえパッド42に対し相対移動可能であるため、保護フィルム202がワーク201の上面を摺動しながら上昇することが可能である。これにより、ワーク201に密着された保護フィルム202を容易に剥離することができる。
(2)滑り部421は、回転可能なボールまたはローラを有する(
図4A)。これにより、保護フィルム202は第1押さえパッド42により押圧されながら、第1押さえパッド42に対し容易に水平方向に移動可能である。
(3)支持部21は、吸着ロッド31を支持プレート20に固定する固定部であり、支持部22は、第1押さえロッド32を支持プレート20に対し上下動可能に支持する可動支持部である。可動支持部は、支持プレート20から下方に突出する第1押さえロッド32の突出量の減少に伴い、第1押さえロッド32の下方への付勢力が増加するようにばね231を介して第1押さえロッド32を支持する(
図4A)。これにより、簡易な構成で、第1押さえパッド42により保護フィルム202を押圧しながら吸着パッド41を上昇させることができる。
(4)吸着ロッド31および第1押さえロッド32は、支持プレート20が第1位置に位置するとき、第1押さえパッド42が吸着パッド41と保護フィルム202の縁部202bとの間に位置するように設けられる(
図3)。これにより、保護フィルム202が水平方向内側に引っ張られ、保護フィルム202をワーク201から容易に剥離することができる。
(5)フィルム剥離装置100は、支持プレート20からトレイ300に向けて下方に延在し、支持プレート20が第1位置に位置するとき、保護フィルム202の上面に当接する第2押さえパッド43を下端部に有する第2押さえロッド33をさらに備える(
図5A)。第2押さえパッド43は、保護フィルム202が第2押さえロッド33により押圧されたまま、保護フィルム202が変位可能となるように弾性体431を有する(
図5A)。支持部21~23は、支持プレート20が第1位置から第2位置まで移動するとき、吸着ロッド31が上昇を開始した後、第1押さえロッド32が上昇を開始する前に第2押さえロッド33が上昇を開始するようにさらに第2押さえロッド33をさらに支持する(
図5A~
図5C、
図7)。これにより、ワーク201と保護フィルム202との界面での真空破壊を生じさせやすく、保護フィルム202の剥離を促進することができる。
(6)支持部23は、第2押さえロッド33を支持プレート20に対し上下動可能に支持する可動支持部であり、支持プレート20から下方に突出する第2押さえロッド33の突出量の減少に伴い、第2押さえロッド33の下方への付勢力が増加するようにばね231を介して第2押さえロッド33を支持するように構成される(
図5A)。第1押さえロッド32の付勢力が0となる下方への突出量(長さZ1)は、第2押さえロッド33の付勢力が0となる下方への突出量(長さZ2)よりも大きい(
図4A,
図5A)。これにより、簡易な構成で、第2押さえパッド43により保護フィルム202を押圧しながら吸着パッド41を上昇させることができる。また、長さZ1とZ2との関係は、Z1>Z2であるので、第2押さえパッド43が保護フィルム202から離間した後に第1押さえパッド42が保護フィルム202から離間するようになる。すなわち、第2押さえパッド43と吸着パッド41とを結ぶ領域AR1(
図6)に空気を浸入させて保護フィルム202の剥離を促進した状態で、第1押さえパッド42によりワーク201を押圧しながら保護フィルム202を剥離するようになる。これにより保護フィルム202の剥離が一層容易になる。
(7)フィルム剥離装置100は、第2押さえロッド33の両側に一対の吸着ロッド31を備える(
図5A)。一対の吸着ロッド31と第2押さえロッド33とは、支持プレート20が第1位置に位置するとき、一対の吸着パッド41の一方と第2押さえパッド43とが隣り合って位置するとともに、第2押さえパッド43が一対の吸着パッド41を結ぶ仮想線L1と保護フィルム202の縁部22bとの間に位置するように設けられる(
図3)。これにより、第2押さえパッド43の両側の領域AR1に空気を浸入させることができ、保護フィルム202の剥離が容易になる。
(8)保護フィルム202は平面視略矩形状を呈する(
図3)。一対の吸着ロッド31と第1押さえロッド32と第2押さえロッド33とは、支持プレート20が第1位置に位置するとき、一対の吸着パッド41の一方と第2押さえパッド43とが保護フィルム202の縁部202bに沿って並んで位置し、第1押さえパッド42が保護フィルム202の角部202aに位置し、さらに一対の吸着パッド41の他方が第1押さえパッド42に並んで角部202aの反対側に位置するように設けられる(
図3)。これにより第1押さえパッド42と第2押さえパッド43とを相互に有効に作用させることができ、保護フィルム202全体を容易に剥離することができる。
(9)保護フィルム202が密着されたワーク201から保護フィルム202を剥離するフィルム剥離方法としては、ワーク201が載置されたトレイ300に向けて下方に延在し、下端部に吸着パッド41を有する吸着ロッド31と、トレイ300に向けて下方に延在し、下端部に第1押さえパッド42を有する第1押さえロッド32とを支持する支持プレート20を、トレイ300の上方に配置する初期移動工程(第1工程)と、吸着パッド41と第1押さえパッド42とが保護フィルム202の上面に当接する第1位置まで支持プレート20を下降する下降工程(第2工程)と、吸着パッド41により保護フィルム202を吸着しながら、支持プレート20を上昇する上昇工程(第3工程)と、を含む(
図4A~
図4D)。第1押さえパッド42は、保護フィルム202が第1押さえロッド32により押圧されたまま、保護フィルム202が水平方向に移動可能となるように滑り部421を有する(
図4A)。上昇工程では、吸着ロッド31が所定量(長さZ1)上昇するまで、第1押さえロッド32が上昇しない(
図4A~
図4D)。これによりワーク201に密着された保護フィルム202を、ワーク表面から容易に剥離することができる。
(10)初期移動工程では、トレイ300に向けて下方に延在し、下端部に第2押さえパッド43を有する第2押さえロッド33をさらに支持する支持プレート20を、トレイ300の上方に配置する(
図5A)。第2押さえパッド43は、保護フィルム202が第2押さえロッド33により押圧されたまま、保護フィルム202が変位可能となるように弾性体431を有する(
図5A)。上昇工程では、吸着ロッド31が所定量(長さZ1より小さい長さZ2)上昇するまで、第2押さえロッド33が上昇しない(
図5A~
図5C)。第2押さえパッド43の作用により、ワーク201と保護フィルム202との界面での真空破壊が促進され、保護フィルム202の剥離が一層容易になる。
【0047】
なお、上記実施形態では、多関節型のロボット10を用いて支持プレート20(移動体)をトレイ300(載置部)の上方で昇降するようにしたが、ロボット以外を用いて移動体を上下動可能に支持するようにしてもよい。例えば移動体が、鉛直方向に立設された枠体に沿って上下動可能に支持されるようにしてもよい。上記実施形態では、移動体を支持プレート20により構成したが、移動体はプレート以外であってもよい。吸着パッド41(第1当接部)を下端部に有する吸着ロッド31(第1ロッド)と、第1押さえパッド42(第2当接部)を下端部に有する第1押さえロッド32(第2ロッド)と、第2押さえパッド43(第3当接部)を下端部に有する第2押さえロッド33(第3ロッド)と、をフィルム剥離装置100に設けるようにしたが、第3ロッドを省略することもできる。
【0048】
上記実施形態では、吸着パッド41に真空発生器を接続して保護フィルム202を吸着するようにしたが、吸着部の構成は上述したものに限らない。上記実施形態では、回転可能なボールまたはローラにより第1押さえパッド42の滑り部421を構成したが、滑り部の構成は上述したものに限らない。滑り部に導電性の高いローラやイオナイザーを用いることで、静電気の除去機能を得るようにしてもよい。上記実施形態では、支持部22がばね221(第1ばね)を介して第1押さえロッド32を支持プレート20に上下動可能に支持するようにしたが、可動支持部(第1可動支持部)の構成は上述したものに限らない。上記実施形態では、支持部23がばね231(第2ばね)を介して第2押さえロッド33を支持プレート20に上下動可能に支持するようにしたが、第2可動支持部の構成は上述したものに限らない。
【0049】
上記実施形態では、燃料電池の膜電極接合体を構成する樹脂製のフレームをワーク201として、ワーク201の表面に密着された保護フィルム202を剥離する例を説明したが、本発明は、フィルムが密着された他のワークからフィルムを剥離する場合にも同様に適用することができる。
【0050】
以上、本発明をその好適な実施形態に関連して説明したが、後述する特許請求の範囲の開示範囲から逸脱することなく様々な修正及び変更をなしうることは、当業者に理解されよう。
【符号の説明】
【0051】
20 支持プレート、21,22 支持部、31 吸着ロッド、32 第1押さえロッド、33 第2押さえロッド、41 吸着パッド、42 第1押さえパッド、43 第2押さえパッド、100 フィルム剥離装置、300 トレイ、421 滑り部