(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144167
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】導管予熱制御
(51)【国際特許分類】
F01D 25/00 20060101AFI20241003BHJP
F01D 25/10 20060101ALI20241003BHJP
F17D 1/06 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
F01D25/00 H
F01D25/10 Z
F01D25/00 N
F01D25/00 G
F01D25/00 V
F17D1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024028103
(22)【出願日】2024-02-28
(31)【優先権主張番号】18/191,510
(32)【優先日】2023-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVA
(71)【出願人】
【識別番号】515322297
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】General Electric Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 8, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パティニオ ロドリゲス、ホアン マヌエル
【テーマコード(参考)】
3J071
【Fターム(参考)】
3J071AA03
3J071BB14
3J071CC12
3J071DD04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】導管予熱制御方法を提供する。
【解決手段】導管の蒸気ドレーンバルブは排出できるように開き、導管の制御バルブは蒸気が下流に流れることを防止するために閉じて、導管が蒸気で予熱される。気体は下流のガス源から導管を逆流して更に予熱する場合があり、気体を排出するためにガスドレーンバルブを設けることができる。それぞれのドレーンバルブの蒸気又は気体の予測出口温度は、蒸気の初期温度及び初期圧力並びにそれぞれのドレーンバルブにおける蒸気又は気体のジュール-トムソン冷却効果に基づく線形回帰モデルを使用して計算される。1つの予測出口温度又は予測出口温度の組合せが、それぞれのドレーンバルブにおける蒸気又は気体のそれぞれの要求される出口温度以上である場合、導管のそれぞれの部分に対して予熱は停止される。方法及びシステムは、導管の複数の部分を順に確実に適切に予熱することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導管(104)の予熱を制御する方法であって、前記方法は、
前記導管(104)に蒸気を流して前記導管(104)を予熱することであって、蒸気が下流に流れることが防止されるように少なくとも1つの制御バルブ(CV1-CV2)を閉じるとともに、少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブ(DV1-DV2)を開いた状態で、前記導管(104)を予熱すること、
前記少なくとも1つの制御バルブ(CV1-CV2)及び前記少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブ(DV1-DV2)の上流の蒸気の初期温度(Ti)及び初期圧力(Pi)を決定すること、
前記初期温度(Ti)、前記初期圧力(Pi)、及び前記少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブ(DV1-DV2)における蒸気のジュール・トムソン冷却効果分析に基づいた線形回帰モデルを使用して、前記少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブ(DV1-DV2)の下流の蒸気の予測出口温度(TE)を計算すること、
前記少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブ(DV1-DV2)の下流の蒸気の前記予測出口温度(TE)が、前記少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブ(DV1-DV2)における蒸気の要求される出口温度以上であることに応答して、前記少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブ(DV1-DV2)を閉じるとともに、前記少なくとも1つの制御バルブ(CV1-CV2)を開いて、蒸気が前記導管(104)を下流に流れるようにすること、及び
前記予測出口温度(TE)が、前記少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブ(DV1-DV2)における蒸気の要求される出口温度よりも低いことに応答して、前記予熱を継続すること
を含む、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの制御バルブ(CV1-CV2)は、前記導管(104)に、第1の制御バルブ(CV1)と、前記第1の制御バルブから間隔を空けて配置された第2の制御バルブ(CV2)とを含み、前記少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブ(DV1-DV2)は、前記第1の制御バルブ(CV1)の上流に位置する第1の蒸気ドレーンバルブ(DV1)と、前記第2の制御バルブ(CV2)の上流に位置する第2の蒸気ドレーンバルブ(DV2)とを含み、
前記少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブ(DV1-DV2)を閉じること、及び前記少なくとも1つの制御バルブ(CV1-CV2)を開くことは、前記第1の蒸気ドレーンバルブ(DV1)の下流の蒸気の前記予測出口温度(TE)が前記第1の蒸気ドレーンバルブ(DV1)における蒸気の要求される出口温度以上であることに応答して、前記第1のドレーンバルブ(DV1)を閉じること、及び前記第1の制御バルブ(CV1)を開くことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の制御バルブ(CV2)はストップバルブを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の制御バルブ(CV2)の下流に少なくとも1つのガスドレーンバルブ(DV3~DV4)を更に含み、前記予熱の間に、気体が、下流のガス源から前記第2の制御バルブ(CV2)まで前記導管(104)を逆流し、前記少なくとも1つのガスドレーンバルブ(DV3~DV4)から排出され、
前記初期温度(Ti)、前記初期圧力(Pi)、及び前記少なくとも1つのガスドレーンバルブ(DV3-DV4)における気体のジュール-トムソン冷却効果分析に基づいた線形回帰モデルを使用して、前記少なくとも1つのガスドレーンバルブ(DV3-DV4)の下流の気体の予測出口温度(TE)を計算することを更に含み、
前記第2の蒸気ドレーンバルブ(DV2)の下流の蒸気の前記予測出口温度が、前記第2の蒸気ドレーンバルブ(DV2)における蒸気の要求される出口温度よりも高いこと、及び
前記少なくとも1つのガスドレーンバルブ(DV3-DV4)の下流の気体の前記予測出口温度が、前記少なくとも1つのガスドレーンバルブ(DV3-DV4)における気体の要求される出口温度よりも高いこと
に応答して、前記第2の蒸気ドレーンバルブ(DV2)及び前記少なくとも1つのガスドレーンバルブ(DV3-DV4)を閉じるとともに、前記第2の制御バルブ(CV2)を開くことによって、前記予熱を停止することを更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つのガスドレーンバルブ(DV3-DV4)は、第1のガスドレーンバルブ(DV3)及び第2のガスドレーンバルブ(DV4)を含み、前記予熱を停止することは、
前記第1のガスドレーンバルブ(DV3)の下流の気体の前記予測出口温度が、前記第1のガスドレーンバルブ(DV3)における気体の要求される出口温度よりも高いこと、及び
前記第2のガスドレーンバルブ(DV4)の下流の気体の前記予測出口温度が、前記第2のガスドレーンバルブ(DV4)における気体の要求される出口温度よりも高いこと
に応答して、実行される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブ(DV1-DV2)の下流の蒸気の実際の出口温度が、前記少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブ(DV1-DV2)における蒸気の要求される出口温度よりも低いことに応答して、前記少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブ(DV1-DV2)を開くとともに前記少なくとも1つの制御バルブ(CV1-CV2)を閉じて、蒸気が前記導管(104)を下流に流れることを防止することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
導管(104)の予熱を制御するためのシステム(100)であって、前記システム(100)は、
前記導管(104)に流体的に結合された蒸気供給部(102)、
前記導管(104)の少なくとも1つの制御バルブ(CV1-CV2)、
前記少なくとも1つの制御バルブ(CV1-CV2)の上流で前記導管(104)から蒸気を排出するように構成された少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブ(DV1-DV2)、
前記少なくとも1つの制御バルブ(CV1-CV2)及び前記少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブ(DV1-DV2)の上流にある少なくとも1つの熱電対(TC1-TC4)、及び
コントローラ(200)であって、
蒸気が下流に流れることを防止するために前記少なくとも1つの制御バルブ(CV1-CV2)が閉じられ、前記少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブ(DV1-DV2)が開いた状態で、蒸気が前記導管(104)を流れることによって前記導管(104)を予熱すること、
前記少なくとも1つの熱電対(TC1-TC4)を使用して、前記少なくとも1つの制御バルブ(CV1-CV2)及び前記少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブ(DV1-DV2)の上流の蒸気の初期温度(Ti)及び初期圧力(Pi)を決定すること、
前記初期温度(Ti)、前記初期圧力(Pi)、及び前記少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブ(DV1-DV2)における蒸気のジュール・トムソン冷却効果分析に基づいた線形回帰モデルを使用して、前記少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブ(DV1-DV2)の下流の蒸気の予測出口温度(TE)を計算すること、
前記少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブ(DV1-DV2)の下流の蒸気の前記予測出口温度(TE)が、前記少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブ(DV1-DV2)における蒸気の要求される出口温度以上であることに応答して、前記少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブ(DV1-DV2)を閉じるとともに、前記少なくとも1つの制御バルブ(CV1-CV2)を開いて、蒸気が前記導管(104)を下流に流れるようにすること、及び
前記予測出口温度(TE)が、前記少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブ(DV1-DV2)における蒸気の要求される出口温度よりも低いことに応答して、前記予熱を継続すること
が実行されるように構成されるコントローラ
を含む、システム。
【請求項8】
前記少なくとも1つの制御バルブ(CV1-CV2)は、前記導管(104)に、第1の制御バルブ(CV1)と、前記第1の制御バルブ(CV1)から間隔を空けて配置された第2の制御バルブ(CV2)とを含み、前記少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブ(DV1-DV2)は、第1の制御バルブ(CV1)の上流に位置する第1の蒸気ドレーンバルブ(DV1)と、前記第2の制御バルブ(CV2)の上流に位置する第2の蒸気ドレーンバルブ(DV2)とを含み、
前記コントローラ(200)は、前記第1の蒸気ドレーンバルブ(DV1)の下流の蒸気の前記予測出口温度(TE)が前記第1の蒸気ドレーンバルブ(DV1)における蒸気の要求される出口温度以上であることに応答して、前記第1のドレーンバルブ(DV1)を閉じるとともに、前記第1の制御バルブ(CV1)を開く、請求項7に記載のシステム(100)。
【請求項9】
前記第2の制御バルブ(CV2)はストップバルブを含む、請求項8に記載のシステム(100)。
【請求項10】
前記第2の制御バルブ(CV2)の下流に少なくとも1つのガスドレーンバルブ(DV3~DV4)を更に含み、前記予熱の間に、気体が、下流のガス源から前記第2の制御バルブ(CV2)まで前記導管(104)を逆流し、前記少なくとも1つのガスドレーンバルブ(DV3~DV4)から排出され、
前記コントローラ(200)は、
前記初期温度(Ti)、前記初期圧力(Pi)、及び前記少なくとも1つのガスドレーンバルブ(DV3-DV4)における気体のジュール-トムソン冷却効果分析に基づいた線形回帰モデルを使用して、前記少なくとも1つのガスドレーンバルブ(DV3-DV4)の下流の気体の予測出口温度(TE)を計算すること、並びに
前記第2の蒸気ドレーンバルブ(DV2)の下流の蒸気の前記予測出口温度(TE)が、前記第2の蒸気ドレーンバルブ(DV2)における蒸気の要求される出口温度よりも高いこと、及び
前記少なくとも1つのガスドレーンバルブ(DV3-DV4)の下流の気体の前記予測出口温度(TE)が、前記少なくとも1つのガスドレーンバルブ(DV3-DV4)における気体の要求される出口温度よりも高いこと
に応答して、前記第2の蒸気ドレーンバルブ(DV2)及び前記少なくとも1つのガスドレーンバルブ(DV3-DV4)を閉じるとともに、前記第2の制御バルブ(CV2)を開くことによって、前記予熱を停止すること
を実行する、請求項8に記載のシステム(100)。
【請求項11】
前記少なくとも1つのガスドレーンバルブ(DV3~DV4)は、第1のガスドレーンバルブ(DV3)及び第2のガスドレーンバルブ(DV4)を含み、前記コントローラ(200)は、
前記第1のガスドレーンバルブ(DV3)の下流の気体の前記予測出口温度(TE)が、前記第1のガスドレーンバルブ(DV3)における気体の要求される出口温度よりも高いこと、及び
前記第2のガスドレーンバルブ(DV4)の下流の気体の前記予測出口温度(TE)が、前記第2のガスドレーンバルブ(DV4)における気体の要求される出口温度よりも高いこと
に応答して、前記予熱を停止する、請求項10に記載のシステム(100)。
【請求項12】
前記少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブ(DV1-DV2)の下流に熱電対(TC1-TC4)を更に含み、前記コントローラ(200)は、前記熱電対(TC1-TC4)によって測定された前記少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブ(DV1-DV2)の下流の蒸気の実際の出口温度が、前記少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブ(DV1-DV2)における蒸気の要求される出口温度よりも低いことに応答して、前記少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブ(DV1-DV2)を開くとともに前記少なくとも1つの制御バルブ(CV1-CV2)を閉じて、蒸気が前記導管(104)の下流に流れることを防止することを更に含む、請求項8に記載のシステム(100)。
【請求項13】
導管(104)の予熱を制御するためのシステム(100)であって、前記システム(100)は、
前記導管(104)に流体的に結合された蒸気供給部(102)であって、下流のガス源から前記導管(104)に気体が逆流する、蒸気供給部(102)、
前記導管(104)の第1の制御バルブ(CV1)、
前記第1の制御バルブ(CV1)の上流で前記導管(104)から蒸気を排出するように構成された第1の蒸気ドレーンバルブ(DV1)、
前記導管(104)の第2の制御バルブ(CV2)、
前記第2の制御バルブ(CV2)の上流で前記導管(104)から蒸気を排出するように構成された第2の蒸気ドレーンバルブ(DV2)、
前記導管(104)において、前記第2の制御バルブ(CV2)の下流に位置する少なくとも1つのガスドレーンバルブ(DV3-DV4)、
前記第1及び第2の制御バルブ(CV1-CV2)並びに前記第1及び第2の蒸気ドレーンバルブ(DV1-DV2)の上流に位置する少なくとも1つのセンサ(RTD)であって、前記導管(104)に流入する蒸気の初期温度(Ti)及び初期圧力(Pi)を提供する少なくとも1つのセンサ(RTD)、及び
コントローラ(200)であって、
蒸気が下流に流れることを防止するために前記第1の制御バルブ(CV1)が閉じられ、前記第1の蒸気ドレーンバルブ(DV1)が開いた状態で、前記導管(104)に蒸気を流すことによって前記導管(104)を予熱すること、
前記第1の蒸気ドレーンバルブ(DV1)の下流の蒸気の予測出口温度(TE)が、前記第1のドレーンバルブ(DV1)における蒸気の要求される出口温度より低いことに応答して、前記予熱を継続すること、
前記第1の蒸気ドレーンバルブ(DV1)の下流の蒸気の予測出口温度(TE)が、前記第1の蒸気ドレーンバルブ(DV1)における蒸気の要求される出口温度以上であることに応答して、前記第1の蒸気ドレーンバルブ(DV1)を閉じるとともに前記第1の制御バルブ(CV1)を開いて、蒸気が前記導管(104)を下流に流れるようにすること、及び
その後に、
前記第2の蒸気ドレーンバルブ(DV2)の下流の蒸気の予測出口温度が、前記第2の蒸気ドレーンバルブ(DV2)における蒸気の要求される出口温度よりも高く、前記少なくとも1つのガスドレーンバルブ(DV3-DV4)の下流の気体の予測出口温度(TE)が、前記少なくとも1つのガスドレーンバルブ(DV3-DV4)における気体の要求される出口温度よりも高いことに応答して、前記第2の蒸気ドレーンバルブ(DV2)を閉じるとともに前記第2の制御バルブ(CV2)を開くことによって、前記予熱を停止すること
を実行するように構成されるコントローラ
を含み、
それぞれのドレーンバルブの下流の蒸気又は気体の各予測出口温度(TE)は、初期温度(Ti)、初期圧力(Pi)、及びそれぞれのドレーンバルブにおける蒸気又は気体のジュール-トムソン冷却効果分析に基づく線形回帰モデルを使用して計算される、システム(100)。
【請求項14】
前記第2の制御バルブ(CV2)はストップバルブを含む、請求項13に記載のシステム(100)。
【請求項15】
前記少なくとも1つのガスドレーンバルブ(DV3-DV4)は、第1のガスドレーンバルブ(DV3)及び第2のガスドレーンバルブ(DV4)を含み、前記コントローラ(200)は、
前記第1のガスドレーンバルブ(DV3)の下流の気体の予測出口温度(TE)が、前記第1のガスドレーンバルブ(DV3)における気体の要求される出口温度よりも高いこと、及び
前記第2のガスドレーンバルブ(DV4)の下流の気体の予測出口温度(TE)が、前記第2のガスドレーンバルブ(DV4)における気体の要求される出口温度よりも高いこと
に応答して、前記予熱を停止する、請求項13に記載のシステム(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、蒸気を使用する設備(燃焼器など)の上流にあるマルチバルブシステムを含む導管の予熱を制御するための方法及びシステムに関する。特に、本開示は、それぞれのドレーンバルブの下流の流体の出口温度予測を使用して導管の予熱を制御するための方法及びシステムに関し、予測は、それぞれのドレーンバルブを通って流れる流体によって生じるジュール-トムソン冷却効果を考慮した線形回帰モデルを活用する。
【背景技術】
【0002】
発電に使用されるガスタービンエンジンの中には、蒸気マニホールドを通じて燃焼器の燃焼缶に蒸気を噴射して、亜酸化窒素(NOx)の排出を低減する及び/又は発電を補うものがある。蒸気供給部から蒸気マニホールドまでの導管(すなわち配管)は、ガスタービンエンジンを取り囲む筐体に到達するまで、通常、環境条件(例えば、屋外環境)に曝される。蒸気供給部と蒸気マニホールドとの間の導管の長さ、及び過熱蒸気と周囲温度との間の温度差のために、エンジンの始動前に導管に凝縮水が発生する恐れがあることが理解される。このようなシステムでは、導管には、凝縮水を排出するドレーンバルブと、主供給導管内に1つ又は複数の制御バルブが設けられており、これらのバルブが全体として蒸気マニホールドへの蒸気の流れを制御する。
【0003】
導管を予熱することで、蒸気が確実に意図される使用に適した温度になるようにすることができる。予熱を制御するために、導管には各ドレーンバルブの下流に熱電対が備えられており、そこを流れる流体の実際の出口温度を検出する。制御システムは、ドレーンバルブの出口温度が予熱に要求される所定の出口温度より高いことに基づいて、燃焼器に向かって更に下流に蒸気を送るように制御バルブを開く、即ち、ゴー/ノーゴー方式で導管を予熱する。適切な熱電対が、要求される出口温度を満たしたことを示した場合にのみ、制御バルブは開かれる。制御システムは、測定された出口温度の精度に影響する変数を考慮していない。更に、一部のシステムは、要求される流体温度の基準を決定する際に「安全対策(safeguard)」を含む場合がある。変数が十分に考慮されなかったり、安全対策が含まれている場合、このような厳格な制御解析によって、システムは、実際に必要なエネルギーと時間よりも多くのエネルギーと時間を予熱プロセスに費やすことになるという点で過剰に保護してしまうことになり、ガスタービンエンジンの不要なダウンタイムにつながる恐れがある。変数を考慮し、制御システムを更新するように、制御システム及び方法を適応させることによって、導管予熱プロセスの制御を向上させることができる。
【0004】
以下に述べる全ての態様、例、特徴は、技術的に可能なあらゆる方法で組み合わせることができる。
【発明の概要】
【0005】
本開示の一態様は、導管の予熱を制御する方法を表しており、前記方法は、前記導管に蒸気を流して前記導管を予熱することであって、下流への蒸気の流れが防止されるように少なくとも1つの制御バルブを閉じるとともに、少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブを開いた状態で、前記導管を予熱すること、前記少なくとも1つの制御バルブ及び前記少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブの上流の蒸気の初期温度及び初期圧力を決定すること、前記初期温度、前記初期圧力、及び前記少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブにおける蒸気のジュール-トムソン冷却効果分析に基づいた線形回帰モデルを使用して、前記少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブの下流の蒸気の予測出口温度を計算すること、前記少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブの下流の蒸気の前記予測出口温度が、前記少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブにおける蒸気の要求される出口温度以上であることに応答して、前記少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブを閉じるとともに、前記少なくとも1つの制御バルブを開いて、蒸気が前記導管を下流に流れるようにすること、及び前記予測出口温度が、前記少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブにおける蒸気の要求される出口温度よりも低いことに応答して、前記予熱を継続することを含む。
【0006】
本開示の別の態様は、先行する態様のいずれかの態様を含み、前記少なくとも1つの制御バルブは、前記導管に、第1の制御バルブと、前記第1の制御バルブから間隔を空けて配置された第2の制御バルブとを含み、前記少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブは、前記第1の制御バルブの上流に位置する第1の蒸気ドレーンバルブと、前記第1の制御バルブの下流且つ前記第2の制御バルブの上流に位置する第2の蒸気ドレーンバルブとを含み、前記少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブを閉じること、及び前記少なくとも1つの制御バルブを開くことは、前記第1の蒸気ドレーンバルブの下流の蒸気の前記予測出口温度が前記第1の蒸気ドレーンバルブにおける蒸気の要求される出口温度以上であることに応答して、前記第1の蒸気ドレーンバルブを閉じること、及び前記第1の制御バルブを開くことを含む。
【0007】
本開示の別の態様は、先行する態様のいずれかの態様を含み、前記第2の制御バルブはストップバルブを含む。
【0008】
本開示の別の態様は、先行する態様のいずれかの態様を含み、前記第2の制御バルブの下流に少なくとも1つのガスドレーンバルブを更に含み、前記予熱の間に、気体が、下流のガス源から前記第2の制御バルブまで前記導管を逆流し、前記少なくとも1つのガスドレーンバルブから排出され、前記初期温度、前記初期圧力、及び前記少なくとも1つのガスドレーンバルブにおける気体のジュール-トムソン冷却効果分析に基づいた線形回帰モデルを使用して、前記少なくとも1つのガスドレーンバルブの下流の気体の予測出口温度を計算することを更に含み、前記第2の蒸気ドレーンバルブの下流の蒸気の前記予測出口温度が、前記第2の蒸気ドレーンバルブにおける蒸気の要求される出口温度よりも高いこと、及び前記少なくとも1つのガスドレーンバルブの下流の気体の前記予測出口温度が、前記少なくとも1つのガスドレーンバルブにおける気体の要求される出口温度よりも高いことに応答して、前記第2の蒸気ドレーンバルブ及び前記少なくとも1つのガスドレーンバルブを閉じるとともに、前記第2の制御バルブを開くことによって、前記予熱を停止することを更に含む。
【0009】
本開示の別の態様は、先行する態様のいずれかの態様を含み、前記少なくとも1つのガスドレーンバルブは、第1のガスドレーンバルブ及び第2のガスドレーンバルブを含み、前記予熱を停止することは、前記第1のガスドレーンバルブの下流の気体の前記予測出口温度が、前記第1のガスドレーンバルブにおける気体の要求される出口温度よりも高いこと、及び前記第2のガスドレーンバルブの下流の気体の前記予測出口温度が、前記第2のガスドレーンバルブにおける気体の要求される出口温度よりも高いことに応答して、実行される。
【0010】
本開示の別の態様は、先行する態様のいずれかの態様を含み、前記少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブの下流の蒸気の実際の出口温度が、前記少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブにおける蒸気の要求される出口温度よりも低いことに応答して、前記少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブを開くとともに前記少なくとも1つの制御バルブを閉じて、蒸気が前記導管を下流に流れることを防止することを更に含む。
【0011】
本開示の別の態様は、導管の予熱を制御するためのシステムであって、前記システムは、前記導管に流体的に結合された蒸気供給部、前記導管の少なくとも1つの制御バルブ、前記少なくとも1つの制御バルブの上流で前記導管から蒸気を排出するように構成された少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブ、前記少なくとも1つの制御バルブ及び前記少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブの上流に配置された少なくとも1つの上流熱電対、及びコントローラであって、蒸気が下流に流れることを防止するために前記少なくとも1つの制御バルブが閉じられ、前記少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブが開いた状態で、前記蒸気供給部からの蒸気が前記導管を流れることによって前記導管を予熱すること、前記少なくとも1つの熱電対を使用して、前記少なくとも1つの制御バルブ及び前記少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブの上流の蒸気の初期温度及び初期圧力を決定すること、前記初期温度、前記初期圧力、及び前記少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブにおける蒸気のジュール・トムソン冷却効果分析に基づいた線形回帰モデルを使用して、前記少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブの下流の蒸気の予測出口温度を計算すること、前記少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブの下流の蒸気の前記予測出口温度が、前記少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブにおける蒸気の要求される出口温度以上であることに応答して、前記少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブを閉じるとともに、前記少なくとも1つの制御バルブを開いて、蒸気が前記導管を下流に流れるようにすること、及び前記予測出口温度が、前記少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブにおける蒸気の要求される出口温度よりも低いことに応答して、前記予熱を継続することが実行されるように構成されるコントローラを含む。
【0012】
本開示の別の態様は、先行する態様のいずれかの態様を含み、前記少なくとも1つの制御バルブは、前記導管に、第1の制御バルブと、前記第1の制御バルブから間隔を空けて配置された第2の制御バルブとを含み、前記少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブは、第1の制御バルブの上流に位置する第1の蒸気ドレーンバルブと、前記第1の制御バルブの下流且つ前記第2の制御バルブの上流に位置する第2の蒸気ドレーンバルブとを含み、前記コントローラは、前記第1の蒸気ドレーンバルブの下流の蒸気の前記予測出口温度が前記第1の蒸気ドレーンバルブにおける蒸気の要求される出口温度以上であることに応答して、前記第1のドレーンバルブを閉じるとともに、前記第1の制御バルブを開く。
【0013】
本開示の別の態様は、先行する態様のいずれかの態様を含み、前記第2の制御バルブ(CV2)はストップバルブを含む。
【0014】
本開示の別の態様は、先行する態様のいずれかの態様を含み、前記第2の制御バルブの下流に少なくとも1つのガスドレーンバルブを更に含み、前記予熱の間に、気体が、下流のガス源から前記第2の制御バルブまで前記導管を逆流し、前記少なくとも1つのガスドレーンバルブから排出され、前記コントローラは、前記初期温度、前記初期圧力、及び前記少なくとも1つのガスドレーンバルブにおける気体のジュール-トムソン冷却効果分析に基づいた線形回帰モデルを使用して、前記少なくとも1つのガスドレーンバルブの下流の気体の予測出口温度を計算すること、並びに前記第2の蒸気ドレーンバルブの下流の蒸気の前記予測出口温度が、前記第2の蒸気ドレーンバルブにおける蒸気の要求される出口温度よりも高いこと、及び前記少なくとも1つのガスドレーンバルブの下流の気体の前記予測出口温度が、前記少なくとも1つのガスドレーンバルブにおける気体の要求される出口温度よりも高いことに応答して、前記第2の蒸気ドレーンバルブ及び前記少なくとも1つのガスドレーンバルブを閉じるとともに、前記第2の制御バルブを開くことによって、前記予熱を停止することを実行する。
【0015】
本開示の別の態様は、先行する態様のいずれかの態様を含み、前記少なくとも1つのガスドレーンバルブは、第1のガスドレーンバルブ及び第2のガスドレーンバルブを含み、前記コントローラは、前記第1のガスドレーンバルブの下流の気体の前記予測出口温度が、前記第1のガスドレーンバルブにおける気体の要求される出口温度よりも高いこと、及び前記第2のガスドレーンバルブの下流の気体の前記予測出口温度が、前記第2のガスドレーンバルブにおける気体の要求される出口温度よりも高いことに応答して、前記予熱を停止する。
【0016】
本開示の別の態様は、先行する態様のいずれかの態様を含み、前記少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブの下流に配置された下流熱電対を更に含み、前記コントローラは、前記下流熱電対によって測定された前記少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブの下流の蒸気の実際の出口温度が、前記少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブにおける蒸気の要求される出口温度よりも低いことに応答して、前記少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブを開くとともに前記少なくとも1つの制御バルブを閉じて、蒸気が前記導管の下流に流れることを防止することを更に含む。
【0017】
本開示の別の態様は、導管の予熱を制御するためのシステムに関し、前記システムは、前記導管に流体的に結合された蒸気供給部であって、下流のガス源から前記導管に気体が逆流する、蒸気供給部、前記導管の第1の制御バルブ、前記第1の制御バルブの上流で前記導管から蒸気を排出するように構成された第1の蒸気ドレーンバルブ、前記導管において、前記第1の制御バルブの下流に位置する第2の制御バルブ、前記第1の制御バルブの下流且つ前記第2の制御バルブの上流で前記導管から蒸気を排出するように構成された第2の蒸気ドレーンバルブ、前記導管において、前記第2の制御バルブの下流に位置する少なくとも1つのガスドレーンバルブ、前記第1及び第2の制御バルブ並びに前記第1及び第2の蒸気ドレーンバルブの上流に位置する少なくとも1つのセンサであって、前記導管に流入する蒸気の初期温度及び初期圧力を提供する少なくとも1つのセンサ、及びコントローラであって、蒸気が下流に流れることを防止するために前記第1の制御バルブが閉じられ、前記第1の蒸気ドレーンバルブが開いた状態で、前記導管に蒸気を流すことによって前記導管を予熱すること、前記第1の蒸気ドレーンバルブの下流の蒸気の予測出口温度が、前記第1のドレーンバルブにおける蒸気の要求される出口温度より低いことに応答して、前記予熱を継続すること、前記第1の蒸気ドレーンバルブの下流の蒸気の予測出口温度が、前記第1の蒸気ドレーンバルブにおける蒸気の要求される出口温度以上であることに応答して、前記第1の蒸気ドレーンバルブを閉じるとともに前記第1の制御バルブを開いて、蒸気が前記導管を下流に流れるようにすること、及び、その後に、前記第2の蒸気ドレーンバルブの下流の蒸気の予測出口温度が、前記第2の蒸気ドレーンバルブにおける蒸気の要求される出口温度よりも高く、前記少なくとも1つのガスドレーンバルブの下流の気体の予測出口温度が、前記少なくとも1つのガスドレーンバルブにおける気体の要求される出口温度よりも高いことに応答して、前記第2の蒸気ドレーンバルブを閉じるとともに前記第2の制御バルブを開くことによって、前記予熱を停止することを実行するように構成されるコントローラを含み、それぞれのドレーンバルブの下流の蒸気又は気体の各予測出口温度は、初期温度、初期圧力、及びそれぞれのドレーンバルブにおける蒸気又は気体のジュール-トムソン冷却効果分析に基づく線形回帰モデルを使用して計算される。
【0018】
本開示の別の態様は、先行する態様のいずれかの態様を含み、前記第2の制御バルブは、ストップバルブを含む。
【0019】
本開示の別の態様は、先行する態様のいずれかの態様を含み、前記少なくとも1つのガスドレーンバルブは、第1のガスドレーンバルブ及び第2のガスドレーンバルブを含み、前記コントローラは、前記第1のガスドレーンバルブの下流の気体の予測出口温度が、前記第1のガスドレーンバルブにおける気体の要求される出口温度よりも高いこと、及び前記第2のガスドレーンバルブの下流の気体の予測出口温度が、前記第2のガスドレーンバルブにおける気体の要求される出口温度よりも高いこと
に応答して、前記予熱を停止する。
【0020】
本開示に記載されている2つ以上の態様(発明の概要に記載されているものを含む)を組み合わせて、本明細書に特には記載されていない実装態様を形成することができる。
【0021】
1つ又は複数の実装態様の詳細は、添付の図面及び以下の発明を実施するための形態に記載されている。他の特徴、目的及び利点は、発明を実施するための形態及び図面、並びに特許請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本開示のこれらの特徴及び他の特徴は、本開示の様々な実施形態を示す添付の図面とともに本開示の様々な態様の以下の詳細な記載から更に容易に理解することができる。
【
図1】本開示の実施形態による、導管を予熱するシステムを採用した蒸気供給システムの概略図を示す。
【
図2】本開示の実施形態による、
図1のシステムの一部の拡大概略図を示す。
【
図3A】本開示の様々な実施形態による制御方法のフロー図を示す。
【
図3B】本開示の様々な実施形態による制御方法のフロー図を示す。
【
図3C】本開示の様々な実施形態による制御方法のフロー図を示す。
【
図4】本開示の他の実施形態による、導管を予熱するシステムを採用した蒸気供給システムの概略図を示す。
【0023】
本開示の図面は必ずしも一定の縮尺で示されていないことに留意されたい。図面は、本開示の典型的な態様のみを示すことを意図しており、したがって、本開示の範囲を限定するものとみなされるべきではない。図面において、同様の番号は、図面の全体に渡って同様の要素を表す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
先ず初めに、本開示を明確に説明するためには、ターボ機械の例証的な用途において関連する機械の構成要素に言及し説明するときに、特定の用語を選択することが必要になる。用語の選択をする場合、可能な限り、一般的な業界用語が、その業界で受け入れられている意味と一致する態様で使用され、採用される。特に明記しない限り、上記の用語は、本出願の文脈及び特許請求の範囲と一致する広い解釈が与えられるべきである。当業者は、多くの場合、特定の構成要素がいくつかの異なる用語又は重複する用語を使用して言及される場合があることを理解することができる。本明細書において単一の部品として説明されているものは、別の文脈では、複数の構成要素を含むことがあり、また、複数の構成要素を含むものとして言及されることがある。あるいは、本明細書において複数の構成要素を含むものとして説明されているものは、他の箇所では単一の部品として言及されることがある。
【0025】
更に、本明細書では、いくつかの記述用語が規則的に使用される場合があり、発明を実施するための形態の始めにこれらの用語を定義しておくことが有益である。これらの用語と用語の定義は、特に明記しない限り、以下の通りである。本明細書において、「下流」及び「上流」は、導管を流れる流体(例えば、蒸気又は他の気体(空気など))の流れの相対的な方向、又は、例えば、燃焼器を流れる空気の流れ若しくはタービンの複数の構成要素システムのうちの1つを流れる冷却媒体の流れの相対的な方向を示す用語である。「下流」という用語は流体の流れの方向に対応し、「上流」という用語は、その流体の流れとは反対の方向を表す。「前方」及び「後方」という用語は、他に特別なことがない限り、方向を表し、「前方」はターボ機械の前部側又は圧縮機端側を表し、「後方」はターボ機械の後部側又はタービン端側を表す。
【0026】
更に、本明細書では、以下に記載されるように、いくつかの記述用語が規則的に使用される場合がある。「第1」、「第2」、及び「第3」という用語は、ある構成要素を別の構成要素と区別するために、互いに交換可能に使用することができ、個々の構成要素の位置及び重要度を意味することを意図するものではない。
【0027】
明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明することを目的としており、本開示を限定することを意図するものではない。本明細書において、単数形「1つ(a)」、「1つ(an)」、及び「この(the)」は、文脈が明らかに複数形を含むことを示していない限り、複数形を含むことも意図している。「含む、有する、備える(comprises)」及び/又は「含んでいる、有している、備えている(comprising)」という用語は、本明細書で使用される場合、言及された特徴、整数、工程、動作、要素、及び/又は構成要素が存在していることを特定しているが、1つ又は複数の他の特徴、整数、工程、動作、要素、構成要素、及び/又はそれらのグループの存在及び追加を排除しないことが更に理解される。「任意選択の」又は「任意選択で」は、その後に記述される事象が発生しても発生しなくてもよいこと、又はその後に記述される特徴が存在しても存在しなくてもよいこと、並びにその記述が、その事象が発生する又はその特徴が存在する例と、その事象が発生ない又はその特徴が存在しない例とを含むことを意味する。
【0028】
ある要素又は層が、別の要素又は層「に接触する」、「に係合されている」、「に接続されている」、「に結合されている」、又は「に取り付けられている」ものとして言及されている場合、ある要素又は層は、他の要素又は層に、直接的に接触する、係合する、接続する、結合する、又は取り付けられるものであってもよいし、介在する要素又は層が存在していてもよい。対照的に、ある要素が、別の要素又は層「に直接的に接触」、「に直接的に結合」、「に直接的に接続」、又は「に直接的に結合」しているものとして言及されている場合、介在する要素又は層は存在していない。要素間の関係を説明するために使用される他の言葉は、同じように解釈されるべきである(例えば、「間に」と「直接的に間に」、「隣接する」と「直接的に隣接する」など)。本明細書において、「及び/又は」という用語は、列挙された関連する複数の項目のうちの1つ以上の項目のあらゆる組合せを含む。本明細書では、「結合する」及び「取り付ける」という動詞形は、互いに交換して使用することができる。
【0029】
本開示によって具体化されるように、例えば蒸気供給システムの導管の予熱を制御するシステム及び方法が提供される。導管は、導管の蒸気ドレーンバルブを開いて排出できるようにし、導管の制御バルブを閉じて蒸気が下流に流れることを防止して、蒸気で予熱される。下流のガス供給源から気体が導管に逆流して更に予熱し、気体を排出するためにガスドレーンバルブを設けることができる。それぞれのドレーンバルブに対する蒸気又は気体の予測出口温度は、蒸気の初期温度及び圧力と、それぞれのドレーンバルブにおける蒸気又は気体のジュール-トムソン冷却効果とに基づいて、線形回帰モデルを使用して計算される。予測される1つの出口温度又は出口温度の組み合わせが、それぞれのドレーンバルブにおける蒸気又は気体のそれぞれの要求される出口温度以上である場合、予熱は、導管のそれぞれの部分に対して停止する。本方法及びシステムは、導管のそれぞれの部分を適切に予熱することが確実に行われるようにすることができる。
【0030】
図1及び
図2は、本開示の実施形態によるシステム100を概略的に示す。説明の目的のために、システム100は、ターボ機械(より詳細には、ガスタービンエンジン(図示せず)の燃焼器101の複数の燃焼缶(図示せず))に過熱蒸気を供給するための蒸気供給システムと共に使用するように図示されている。しかしながら、システム100は、本明細書に記載されたものとは異なる設定で使用できることが強調される。
【0031】
システム100は、蒸気供給部102と、導管104と、導管104から分岐する複数のドレーン導管114、124、134(及び任意選択でドレーン導管144)とを含んでいる。図示の設置例では、システム100は、燃焼器101の個々の燃焼缶に蒸気を供給するために、ガスタービン(GT)の筐体110内に配置された蒸気マニホールド106に結合されている。本出願で使用する「導管」という用語には、流体の流れを制限し導く既知の又は今後開発されるパイプ、ダクト、通路、及び他の輸送手段が含まれる。本明細書において、「導管」104は、主蒸気導管105と、蒸気の温度に影響を与えることができる主蒸気導管の分岐路(ドレーン導管114、124、134、及び任意選択でドレーン導管144など)とを含むことができる。前述のように、蒸気供給部102から蒸気マニホールド106までの導管104(すなわち配管)は、導管がガスタービンエンジン(図示せず)を取り囲むガスタービン筐体110に到達するまで、通常は周囲条件(すなわち、屋外の要素)に晒されている。蒸気供給部102と蒸気マニホールド106との間の導管104の長さや、過熱蒸気と周囲温度との間の温度差が原因で、ガスタービン始動前に導管104に凝縮物が発生することが理解される。
【0032】
導管104は、特に復水を排出する少なくとも1つのドレーンバルブDV1~DV4と、導管104の蒸気の下流への流れ(例えば、蒸気マニホールド106への流れ)を全体的に制御する少なくとも1つの制御バルブCV1~CV2とを含んでいる。より詳細には、システム100は、導管104に少なくとも1つの制御バルブを含むことができる。例えば、システム100は、導管104に第1の制御バルブCV1を含み、導管104に第2の制御バルブCV2を含むことができる。第1の制御バルブCV1は、第2の制御バルブCV2よりも(蒸気供給部102から蒸気マニホールド106及び燃焼器101に向かう蒸気の流れ「F」の方向に対して)上流に配置される。制御バルブCV1、CV2などは、蒸気が導管104内を流れるかどうかを制御する。
【0033】
また、システム100は、少なくとも1つのドレーンバルブDV1~DV3、及び任意でドレーンバルブDV4を含むことができる。より詳細には、ドレーン導管114、124、134(及び、存在する場合にはドレーン導管144)の各ドレーン導管は、それぞれのドレーンバルブ(DV1、DV2、DV3、DV4)及びそれぞれの熱電対(TC1、TC2、TC3、TC4)を含んでいる。
図2に示すように、各ドレーン導管114、124、134、及び任意選択でドレーン導管144は、主蒸気導管105とそれぞれのバルブDV1、DV2、DV3、DV4との間に延在する上流部分116、126、136と、それぞれの弁DV1、DV2、DV3、DV4とそれぞれの流出部(出口部)との間に延在する下流部分118、128、138とを含んでいる。ドレーン導管144及びドレーンバルブDV4は
図2には示されていないが、ドレーン導管144及びドレーンバルブDV4は、ドレーン導管114、124、134及びドレーンバルブDV1~DV3と同様の構造を有することが理解できる。
【0034】
ドレーンバルブDV1、DV2は、主蒸気導管105からの蒸気の排出を制御し、本明細書では「蒸気ドレーンバルブ」と呼ぶことができる。排出する「蒸気」には、あらゆる状態の蒸気及び/又は蒸気の凝縮物(すなわち、水)が含まれることが認識できる。同様に、ガスドレーンバルブDV3及び任意選択でガスドレーンバルブDV4は、下流のガス源(例えば、燃焼器101に結合された圧縮機)から主蒸気導管105を逆流する気体の出口を管理する。本明細書では、「逆流する(backfill)」又は「逆流している(backfilling)」は、気体が、導管104の蒸気(例えば、蒸気マニホールド106に向かう蒸気)とは反対の上流方向に移動していることを示す。気体には、例えば、圧縮空気(場合によっては、汚染物質及び/又は蒸気を含む圧縮空気)が含まれる。いずれにせよ、気体は導管104を加熱するのに十分な高温を有している。排出する「気体」には、例えば、圧縮空気、空気中の汚染物質(燃焼器101からの燃料又は排ガスなど)、及び任意の状態の蒸気及び/又は蒸気の凝縮物(すなわち、水)が含まれることが認識される。ドレーンバルブDV3及びDV4は、本明細書では「ガスドレーンバルブ」として言及される場合がある。本明細書で説明する導管内の蒸気及び/又は気体は、集合的に又は別々に、流体と呼ぶこともできる。
【0035】
熱電対TC1~TC4は、ドレーン導管114、124、134及び任意選択でドレーン導管144の下流部分に配置され、それぞれのドレーンバルブDV1~DV4の下流に流れる流体(例えば、蒸気又は他の気体)の実際の温度を測定する。図面では、任意選択されるドレーン導管144、熱電対TC4、及びガスドレーンバルブDV4には、任意で選択されることを示すアスタリスク「*」が付されている。
【0036】
第1の制御バルブCV1及び第2の制御バルブCV2は、主蒸気導管105に配置されており、コントローラ200が制御バルブCV1及びCV2を開く又は閉じる命令を与えることに応答して、主蒸気導管105の流れFを制御する。同様に、ドレーンバルブDV1~DV4は、それぞれのドレーン導管114、124、134、144に配置されており、コントローラ200がドレーンバルブDV1~DV4を開く又は閉じる命令を与えることに応答して、ドレーン導管114、124、134、144の流体の流れを制御する。
図2に示すように、各ドレーンバルブDV1~DV4は、アクチュエータ160とバルブ本体164とを含んでいる。バルブ本体164はバルブシート及びバルブプラグ(図示せず)を含むことができる。制御バルブCV1、CV2及びドレーンバルブDV1~DV4としては、本開示によって具体化されるように、ソレノイドバルブ、ボールバルブ、バタフライバルブ、ダイヤフラムバルブ、ゲートバルブ、ピンチバルブ、ピストンバルブ、及びプラグバルブ、又は現在既知の又は今後開発される他の適切なバルブ構造が挙げられる。特定の実施形態では、制御バルブCV1及びCV2は、蒸気流を調節する(すなわち、開位置、閉位置、及び完全な開位置と完全な閉位置との間の任意の位置で調節する)ことができる。他の実施形態では、第2の制御バルブCV2は、主導管ライン105の最も下流の制御バルブとすることができ、完全な開位置と完全な閉位置のみを有するストップバルブとして具現化することができる。
【0037】
システム100は、導管104に流入する蒸気の様々なセンサを含むことができる。システム100は、主蒸気導管105に、内部オリフィスと1つ以上の圧力センサ(総称で「RTD」が付されている)とを有する流量計140を含むことができ、点線で表されるように、コントローラ200と通信している。1つ又は複数の温度センサ(主熱電対150など)を、流量計140と第1の制御バルブCV1との間において、主蒸気導管105の表面に又は主蒸気導管105の内部に配置することもできる。図示された実施形態では、主熱電対150は、流量計140と第1のドレーン導管114との間に配置されており、第1の制御バルブCV1の上流である。主熱電対150は、主蒸気導管105に沿った様々な位置における温度測定値をコントローラ200に提供する。
【0038】
コントローラ200は、本明細書に記載される機能を提供するコードを記憶する非一時的コンピュータ可読記憶媒体として構成することができる及び/又は非一時的コンピュータ可読記憶媒体を有することができる任意のコンピュータ制御システムを含んでいる。一般に、コントローラ200は、主蒸気導管105及び関連するドレーン導管114、124、134、及び144の予熱が完了したか、更に予熱が必要であるかを判断する目的で、(例えば、ドレーン導管114、124、134、及び任意選択でドレーン導管144の)それぞれのドレーンバルブDV1~DV4の下流の流体の出口温度を予測して、導管(すなわち、主蒸気導管105、及び場合によっては本明細書に列挙される他の導管)の予熱を制御するプロセスが可能である。
【0039】
コントローラ200は、熱電対150を使用して、所定のバルブ(例えば、第1の制御バルブCV2又は蒸気ドレーンバルブDV1)の上流の流体Fの初期温度値Ti及び初期圧力値Piを様々なセンサから読み取る方法を実現可能にする。コントローラ200は、流体Fの初期温度Ti及び初期圧力Piを受け取り、受け取った初期温度Ti及び初期圧力Piを線形回帰モデル又は分析に適用する。コントローラ200は、少なくとも1つの線形回帰モデルを適用することによって、それぞれのドレーンバルブの位置に依存する流体(例えば、蒸気又は気体)の予測出口温度を計算する。少なくとも1つの線形回帰モデルは、本開示によって具体化されるように、初期温度Ti、初期圧力Pi、及びジュール-トムソン冷却効果分析(「ジュール-トムソン効果」)に基づいて出口温度を予測する。ジュール-トムソン冷却効果(Joule-Thompson cooling effect)とは、ある条件下で気体の圧力が低下すると、気体の温度が低下することである。
【0040】
システム100では、蒸気ドレーンバルブDV1若しくはDV2を出る蒸気、又はドレーンバルブDV3若しくはDV4を出る気体は、圧力が低下し、蒸気又は他の気体の出口温度が影響を受け、導管104の予熱に悪影響を与える恐れがある。これから説明するように、システム100によるジュール-トムソン冷却効果を考慮することにより、予熱の時間が延長され、予熱に対する温度低下の影響に対処することができ、ガスタービンのダウンタイムを短縮することができる。更に以下に説明されるように、ジュール-トムソン冷却効果を考慮した線形回帰モデルを適用して、蒸気が蒸気ドレーンバルブDV1又はDV2から出る及び/又は気体がドレーンバルブDV3又はDV4から出ることによって生じる圧力低下に基づいて出口温度を予測することができる。
【0041】
実施形態の特定の態様において、少なくとも1つの線形回帰モデルは、以下の式によって定義される。
【数1】
ここで、T
Eはそれぞれのバルブの出口(例えば、蒸気ドレーンバルブDV1の出口)における流体の予測された出口温度、P
iは第1の制御バルブCV1及び/又は蒸気ドレーンバルブDV1の上流の初期圧力値、T
iは第1の制御バルブCV1及び/又は蒸気ドレーンバルブDV1の上流の初期温度値、a
0、a
1、及びa
2は定数である。
【0042】
実施形態の特定の態様において、少なくとも1つの線形回帰モデルは、コントローラ200によって利用される多変数線形回帰モデルを含んでいる。更に、コントローラ200の一態様では、ジュール-トムソン効果の分析を適用する多変数線形回帰モデルを採用することができる。蒸気/空気の表による熱力学計算を使用して、上流の蒸気/気体の圧力と温度に基づいて、定数a0、a1、及びa2が計算される。
【0043】
コントローラ200は、特に、予測出口温度TEが、それぞれのドレーンバルブDV1~DV4の下流の特定の流体(例えば、蒸気又は他の気体)の要求される出口温度TRより高いかどうか、及び/又は予測出口温度TEが、それぞれのドレーンバルブDV1~DV4の下流の特定の流体の(熱電対TC1~TC4によって測定される)実際の出口温度より高いかどうかに基づいて、線形回帰モデルを更新することができる。更新には、熱電対150からの読取り値に基づいて定数a0、a1、a2を変更し、予測出口温度TEと比較することを含むこともでき、それによって線形回帰モデルの精度を向上させることができる。
【0044】
これから説明するように、コントローラ200は、それぞれのドレーンバルブにおける出口温度が、それぞれのドレーンバルブにおいて要求される出口温度以上であるかどうかを判断することができる。本明細書において、「要求される出口温度」は、導管104においてドレーンバルブの上流の部分が十分に予熱されている特定のドレーンバルブの出口における流体(すなわち、蒸気又は他の気体)の温度である。要求される出口温度は、例えば、(特に、導管の材料、サイズ、長さ、及び流体のタイプに基づいて)特定の場所における導管104の凝縮を十分に低減又は防止することが知られている温度に基づいた値とすることができる。別の例では、要求される出口温度は、蒸気マニホールド106の蒸気の所望の温度に基づいた値とすることができる。要求される出口温度は、特に、経験的データ及び/又は熱モデリングに基づいて求めることもできる。要求される出口温度は、ドレーンバルブDV1~DV4ごとに異なっていてもよい、すなわち、各ドレーンバルブは、当該ドレーンバルブ自体に要求される出口温度を有していてもよい。
【0045】
本明細書における温度の表示に関して、予測出口温度は一般的にTEと表記され、蒸気に対する予測出口温度はTESと表記され、気体に対する予測出口温度はTEGと表記される。更に説明されるように、要求される出口温度は一般的にTRと表記され、蒸気に対して要求される出口温度はTRSと表記され、気体に対して要求される出口温度はTRGと表記される。測定された出口温度はTTCと表記され、蒸気又は気体の流れに対して使用される。
【0046】
測定された出口温度T
TCは、ドレーン導管114の下流部分118に配置された熱電対TC1によって(同様に、ドレーン導管124の下流部分128に配置されたTC2によって、及びドレーン導管134の下流部分138に配置されたTC3によって)得ることができる。同様の構造は、ドレーン導管144(
図1)が設けられた場合には、ドレーン導管144にも設けられる。各熱電対(例えば、TC1)で測定された実際の出口温度T
TCは、コントローラ200に供給される。説明されるように、測定された出口温度を使用して、流体の実際の出口温度が、それぞれのドレーンバルブにおいて要求される出口温度T
Rより高いことを確認することができる。
【0047】
例示的な用途では、蒸気供給システム用の予熱システムは、ターボ機械に適用され、流体は、ターボ機械によって生成される又はターボ機械に適用される蒸気を含むことができる。例えば、ターボ機械は、第1の制御バルブCV1及び第2の制御バルブCV2が開き、ドレーンバルブD1~D4が閉じると、主蒸気導管105に接続することができる。このような動作は、コントローラ200が、過熱された蒸気流Fが適切な温度であると判断した場合(すなわち、以下に説明するように、ドレーンバルブDV1~DV4の予測出口温度T
Eが、それぞれのドレーンバルブにおいて要求される出口温度T
Rよりも大きい場合)に生じる。
図1の例示的実施形態では、主蒸気導管105は、燃焼器101の複数の燃焼缶に蒸気を供給して出力を増強するために、ガスタービン筐体110内の蒸気噴射マニホールド106に蒸気を供給する。他の態様では、蒸気は、様々な他の下流の装置(複合サイクル発電所の別の部分、排出コントローラ、及び熱回収蒸気発生器のうちの少なくとも1つなど)に適用することが可能である。システム100は、システムが備えつけられるターボ機械に適用することができる。
【0048】
次に、
図3A~
図3Cを参照して、導管(例えば、システム100の導管の中で主蒸気導管105)の予熱を制御するための方法の実施形態のフロー図を説明する。システム100のコントローラ200は、本明細書に記載される方法を実行するためのコードを含むことができる。コードは、本明細書に記載されるステップ/プロセスを実行するように構成され、コントローラ200の少なくとも1つの線形回帰モデルの変数を更新することができる。
【0049】
図3Aを参照すると、工程P12において、コントローラ200は導管104の予熱を開始し、少なくとも1つの制御バルブCV1は、蒸気が下流に(例えば、蒸気マニホールド106及び/又は燃焼器101に)流れることを防止するために閉じられ、少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブ(例えば、蒸気ドレーンバルブDV1)が開いている状態で、導管104に蒸気(流れF)を流すことによって導管104を予熱する。一例では、蒸気ドレーンバルブDV1は開いており、蒸気ドレーンバルブDV2は閉じており、ガスドレーンバルブDV3(及び設けられていればDV4)の一方は開いており、制御バルブCV1、CV2は両方とも閉じている。この場合、蒸気からの凝縮水は第1の蒸気ドレーンバルブDV1を流れて排出され、燃焼器101から導管104を逆流する気体又は凝縮水はガスドレーンバルブDV3(及びガスドレーンバルブDV4が設けられている場合は、場合によってはガスドレーンバルブDV4)から排出される。いずれにしても、蒸気及び(高温の)気体の流れによって、導管104において蒸気及び気体の流れる部分が加熱される。
【0050】
工程P14では、コントローラ200は、少なくとも1つの制御バルブ(例えば、制御バルブCV1)及び少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブ(例えば、蒸気ドレーンバルブDV1)の上流の蒸気の初期温度T
i及び初期圧力P
iを決定する。
図1に示すように、初期温度T
iは複数の熱電対150のうちのいずれか1つの熱電対から得ることができ、初期圧力Piは1つ又は複数の圧力センサRTDから得ることができる。
【0051】
工程P16では、コントローラ200は、初期温度Ti及び初期圧力Piの入力を用いた線形回帰モデルを適用する。線形回帰モデルは、初期温度Ti、初期圧力Pi、及び少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブ(例えば、蒸気ドレーンバルブDV1)における蒸気のジュール-トムソン冷却効果分析を使用して、蒸気ドレーンバルブDV1(及び、場合によっては蒸気ドレーンバルブDV2)における出口温度を予測する。ジュール・トムソン冷却効果とは、加圧された気体がある条件下で減圧されると、その気体の温度が低下することである。システム100では、蒸気ドレーンバルブDV1若しくはDV2から出る蒸気、又はドレーンバルブDV3若しくはDV4から出る気体は、蒸気(又は他の気体)の出口温度に影響を及ぼしてしまう圧力低下を受け、導管104の予熱に悪影響を与えてしまう恐れがある。例えば、予熱は、必要とされる時間よりも長い時間に渡って発生し、したがって、必要以上の多くのエネルギーを消費することがある。これから説明するように、システム100によるジュール-トムソン冷却効果を考慮することにより、適切な時間の予熱が可能になり、温度低下による予熱の影響に対処することができ、ガスタービンの停止時間を短縮することができる。更に説明するように、ジュール-トムソン冷却効果を考慮した線形回帰モデルは、蒸気が蒸気ドレーンバルブDV1又はDV2から出ることによって、及び/又は気体がドレーンバルブDV3又はDV4から出ることによって圧力低下が生じたときの出口温度を予測するために適用することができる。
【0052】
工程P18では、コントローラ200は、少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブ(例えば、蒸気ドレーンバルブDV1)における予測出口温度を、初期温度Tiと、初期圧力Piと、少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブ(例えば、DV1)における蒸気のジュール-トムソン冷却効果分析とに基づいた線形回帰モデルを使用して計算する。また、コントローラ200は、複数の蒸気ドレーンバルブ(例えば、蒸気ドレーンバルブDV1、DV2など)における予測出口温度を、初期温度Tiと、初期圧力Piと、それぞれの蒸気ドレーンバルブ(例えば、DV1、DV2など)における蒸気のジュール-トムソン冷却効果分析とに基づいた線形回帰モデルを使用して計算してもよい。
【0053】
工程P20では、コントローラ200は、少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブ(例えば、蒸気ドレーンバルブDV1)の下流の蒸気の予測出口温度TESが、少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブ(例えば、蒸気ドレーンバルブDV1)における蒸気の要求される出口温度TRS以上(≧)であるかどうかを判断する。
【0054】
工程P22では、予測出口温度TEが、少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブ(例えば、蒸気ドレーンバルブDV1)における蒸気の要求される出口温度TESよりも小さいことに応答して、すなわち工程P20においてNOである場合、コントローラ200は、様々なバルブを同じ位置に維持することによって予熱を継続し、蒸気が、導管104の第1の制御バルブCV1及び第1の蒸気ドレーンバルブDV1の上流の部分を加熱し続けることができるようにする。
【0055】
対照的に、少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブ(例えば、蒸気ドレーンバルブDV1)の下流の蒸気の予測出口温度TESが、少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブにおける蒸気の要求される出口温度TRS以上であることに応答して、すなわち、工程P20でYESである場合、コントローラ200は、工程P24で、少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブ(例えば、第1の蒸気ドレーンバルブDV1)を閉じ、少なくとも1つの制御バルブ(例えば、第1の制御バルブCV1)を開き、したがって、蒸気は導管104の下流に(例えば、蒸気マニホールド106及び/又は燃焼器101に向かって)流れることができる。第2の制御バルブCV2及び第2の蒸気ドレーンバルブDV2は閉じられ、ガスドレーンバルブDV3(設けられている場合はガスドレーンバルブDV4)の1つは開いている。したがって、少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブを閉じ、少なくとも1つの制御バルブを開くことは、第1の蒸気ドレーンバルブDV1の下流の蒸気の予測出口温度TESが、第1の蒸気ドレーンバルブDV1における蒸気の要求される出口温度TRS以上であることに応答して、第1のドレーンバルブDV1を閉じ、第1の制御バルブCV1を開くことを含むことができる。この場合、導管104は、第1の制御バルブCV1及び第1の蒸気ドレーンバルブDV1の上流では、十分に予熱されたと考えられる。その結果、導管の、第1の制御バルブCV1の下流に位置する別の部分は、当該別の部分に蒸気が流れ始めると予熱することができる。
【0056】
次に、導管104の次の下流部分が十分に予熱されることを以下に検討する。導管104の連続的に続く複数の部分が蒸気によって適切に予熱されているかを確認する、すなわち、制御バルブ、蒸気ドレーンバルブ、及びドレーン導管の各セットに対してステップP20~P24を繰り返すことができるように、任意の数の制御バルブ及び蒸気ドレーンバルブ(及びドレーン導管)の組合せ(第1の制御バルブCV1、蒸気ドレーンバルブDV1、及び対応するドレーン導管114のような組合せ)を導管104に順に設けることができることが認識される。
図4は、今説明したのと同様の方法で動作することができる、制御バルブ、蒸気ドレーンバルブ、(及びドレーン導管)の1つ又は複数の追加のセットを含む簡略化されたシステム100を示す。(留意点として、
図4では、分かりやすくするために、気体が導管104を逆流したときの
図1のようなガスドレーンバルブDV3、DV4などが、破線のボックス202として図示されているが、この構成では、任意の数のガスドレーンバルブを含むこともできる)。
【0057】
再び
図1を参照し、
図3Bも参照すると、先に説明したように、導管104は、燃焼器101からの気体(例えば、圧縮空気)が逆流し、導管104を予熱することもでき、ガスドレーンバルブDV3及び任意選択でガスドレーンバルブDV4を通じて排出される領域を含むことができる。また、気体が導管104を逆流する場合、システム100の少なくとも1つの制御バルブは、導管104において、第1の制御バルブCV1と、第1の制御バルブCV1から間隔を置いて配置された第2の制御バルブCV2とを含むことができる。第2の制御バルブCV2は、燃焼器101に流れる蒸気流を制御する最下流のバルブである。
図4に示すように、最下流制御バルブ(「CVX」)の上流側では、制御バルブ/ドレーンバルブの任意の数の上流側セットを使用することができる。前述のように、第2の制御バルブCV2は、調節バルブ又はオン/オフバルブとすることができる。また、システム100の少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブは、第1の制御バルブCV1の上流に第1の蒸気ドレーンバルブDV1を含むことができ、また、第2の制御バルブCV2(
図4では最下流の制御バルブCVXとして示されている)の上流に第2の蒸気ドレーンバルブDV2(例えば、「DVX」)を含むことができる。
図3A及び工程P20~P24に関連して説明したように、少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブを閉じ、少なくとも1つの制御バルブを開くことは、第1の蒸気ドレーンバルブDV1の下流の蒸気の予測出口温度が第1の蒸気ドレーンバルブDV1における蒸気の要求される出口温度以上であることに応答して、第1のドレーンバルブDV1を閉じ、第1の制御バルブCV1を開くことを含む。
【0058】
気体が下流のガス源から第2の制御バルブCV2まで導管104を逆流し、少なくとも1つのガスドレーンバルブ(例えば、ガスドレーンバルブDV3(及び場合によってはガスドレーンバルブDV4))から排出される場合、予熱を制御する工程は、
図3Bに示す工程を更に含むことができる。より詳細には、工程P30において、コントローラ200は、初期温度T
i、初期圧力P
i、及び第2の蒸気ドレーンバルブDV2における蒸気のジュール-トムソン冷却効果分析に基づく線形回帰モデルを使用して、第2の蒸気ドレーンバルブDV2における予測出口温度T
ESを計算する。更に、工程P32では、コントローラ200は、初期温度T
i、初期圧力P
i、及び第1のガスドレーンバルブDV3における気体のジュール-トムソン冷却効果分析に基づく線形回帰モデルを使用して、第1のガスドレーンバルブDV3の下流の気体の予測出口温度T
EGを計算する。
【0059】
工程P34では、コントローラ200は、第2の蒸気ドレーンバルブDV2の下流の蒸気の予測出口温度TESが、第2の蒸気ドレーンバルブDV2における蒸気の要求される出口温度TRS以上(≧)であるかどうかを判断し、少なくとも1つのガスドレーンバルブ(例えば、第1のガスドレーンバルブDV3)の下流の気体の予測出口温度TEGが、少なくとも1つのガスドレーンバルブ(例えば、ガスドレーンバルブDV3)における気体の要求される出口温度TRGよりも高いかどうかを判断する。
【0060】
工程P36では、第2の蒸気ドレーンバルブDV2の下流の蒸気の予測出口温度TESが、第2の蒸気ドレーンバルブDV2における蒸気の要求される出口温度TRSよりも小さい、又は、第1のガスドレーンバルブDV3の下流の気体の予測出口温度TEGが、第1のガスドレーンバルブDV3における気体の要求される出口温度TRGよりも小さいことに応答して、すなわち工程P34においてNOである場合、コントローラ200は、様々な弁を同じ位置に維持することによって予熱を継続する。この配置により、蒸気は、導管104の、第2の制御バルブCV2と第2の蒸気ドレーンバルブDV2の上流の部分を加熱し続け、気体は、導管104の、燃焼器と第1のガスドレーンバルブDV3との間の部分を加熱し続けることができる。
【0061】
対照的に、第2の蒸気ドレーンバルブDV2の下流の蒸気の予測出口温度TESが、第2の蒸気ドレーンバルブDV2における蒸気の要求される出口温度TRSよりも高く、第1のガスドレーンバルブ(例えば、ガスドレーンバルブDV3)の下流の気体の予測出口温度TEGが、第1のガスドレーンバルブ(例えば、ガスドレーンバルブDV3)における気体の要求される出口温度TRGよりも高いことに応答して、すなわち工程P34においてYESの場合、コントローラ200は、工程P38において予熱を停止する。予熱を停止するために、コントローラ200は、第2の蒸気ドレーンバルブDV2及び第1のガスドレーンバルブ(例えば、ガスドレーンバルブDV3)を閉じ、第2の制御バルブCV2を開く。第1の制御バルブCV1は開き、第1の蒸気ドレーンバルブDV1は閉じる。このようにして、蒸気及び気体の流れは、もはやドレーンバルブDV1~DV3を流れることができず、蒸気は、主蒸気導管105を通って、例えば蒸気マニホールド106及び/又は燃焼器101にのみ流れ、あらゆる予熱を停止し、導管104は、蒸気を意図された目的地に供給する動作状態になる。
【0062】
また、工程P38では、コントローラ200は、本明細書で説明するように、線形回帰モデルを更新することができる。
【0063】
工程P39では、コントローラ200は、少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブDV1、DV2の下流の蒸気の実際の出口温度が十分に高いかどうかを判断することによって、予熱が完了すべきであることを任意選択で確認することができる。例えば、コントローラ200は、少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブDV1、DV2の下流の蒸気の実際の出口温度が、それぞれの蒸気ドレーンバルブDV1又はDV2における蒸気の要求される出口温度TESよりも低いかどうかを判断し、いずれかが当てはまる場合に導管104に追加の熱を供給することができる。実際の出口温度TTCは、熱電対TC1-TC3及び任意選択で熱電対TC4から得ることができる。コントローラ200は、導管104に追加の熱が必要であると判断した場合、様々な手段を講じることができる。例えば、コントローラ200は、少なくとも1つの制御バルブCV1及び/又はCV2を閉じたまま、少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブDV1及び/又はDV2を開いて、蒸気を蒸気ドレーンバルブDV1、DV2から排出し、導管104の1つ又は複数の部分に追加の熱を供給することができる。このプロセスの持続時間は、タイマーによって制御することができる。更に加熱をする他の選択肢(例えば、ハードウェアの保全性及び/又は他の動作制限の範囲内で蒸気温度を増加させること)も可能である。
【0064】
前述のように、任意の実施形態では、システム100は、2つ以上のガスドレーンバルブ(第1のガスドレーンバルブDV3及び第2のガスドレーンバルブDV4など)を含むことができる。
図3Cは、本方法の一実施形態を示し、この方法は
図3Bと同様であるが、確実に予熱が十分になるように、第2のガスドレーンバルブDV4における気体の予測出口温度T
EGも使用する。工程P40及びP42は、
図3Bの工程P30及びP32と同一である。工程P44では、コントローラ200は、初期温度T
i、初期圧力P
i、及び第2のガスドレーンバルブDV4における気体のジュール-トムソン冷却効果分析に基づく線形回帰モデルを使用して、第2のガスドレーンバルブDV4の下流の気体の予測出口温度T
EGを計算する。
【0065】
工程P46では、コントローラ200は、a)第2の蒸気ドレーンバルブDV2の下流の蒸気の予測出口温度TESが、第2の蒸気ドレーンバルブDV2における蒸気の要求される出口温度TRS以上(≧)である、b)第1のガスドレーンバルブDV3の下流の気体の予測出口温度TEGが、第1のガスドレーンバルブDV3における気体の要求される出口温度TRGよりも高い、及びc)第2のガスドレーンバルブDV4の下流の気体の予測出口温度TEGが、第2のガスドレーンバルブDV4における気体の要求される出口温度TRGよりも高い、かどうかを判断する。
【0066】
工程P48では、a)第2の蒸気ドレーンバルブDV2の下流の蒸気の予測出口温度TESが、第2の蒸気ドレーンバルブDV2における蒸気の要求される出口温度TRSよりも低い、b)第1のガスドレーンバルブDV3の下流の気体の予測出口温度TEGが、第1のガスドレーンバルブにおける気体の要求される出口温度TRGよりも低い、又はc)第2のガスドレーンバルブDV4の下流の気体の予測出口温度TEGが、第2のガスドレーンバルブDV4における気体の要求される出口温度TRGよりも低い、ことに応答して、すなわち、工程P46でNOの場合、コントローラ200は、様々な弁を同じ位置に維持することによって予熱を継続する。この配置により、蒸気は、導管104の、第2の制御バルブCV2と第2の蒸気ドレーンバルブDV2の上流側の部分を加熱し続け、気体は、導管104の、燃焼器101と第2の制御バルブCV2との間の部分を加熱し続けることができる。
【0067】
対照的にa)第2の蒸気ドレーンバルブDV2の下流の蒸気の予測出口温度TESが、第2の蒸気ドレーンバルブDV2における蒸気の要求される出口温度TRSよりも高い、b)第1のガスドレーンバルブDV3の下流の気体の予測出口温度TEGが、第1のガスドレーンバルブDV3における気体の要求される出口温度TRGよりも高い、c)第2のガスドレーンバルブDV4の下流の気体の予測出口温度TEGが、第2のガスドレーンバルブDV4における気体の要求される出口温度TRGよりも高い、ことに応答して、すなわち、工程P46でYESの場合、コントローラ200は、工程P50で予熱を停止する。予熱を停止するために、コントローラ200は、第2の蒸気ドレーンバルブDV2及び両方のガスドレーンバルブDV3,DV4を閉じ、第2の制御バルブCV2を開く。第1の制御バルブCV1は開き、第1の蒸気ドレーンバルブDV1は閉じる。このようにして、蒸気及び気体の流れは、もはやドレーンバルブDV1~DV4を流れて流出することができず、蒸気は、主蒸気導管105を下流に流れ、例えば蒸気マニホールド106及び/又は燃焼器101にのみ流入し、あらゆる予熱が停止し、導管104は、蒸気が目的地(例えば、燃焼器101又は他の機器)に送られる動作状態になる。
【0068】
また、工程P50では、コントローラ200は、本明細書で説明するように、線形回帰モデルを更新することができる。
【0069】
工程P52では、コントローラ200は、少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブDV1、DV2の下流の蒸気の実際の出口温度が、それぞれの蒸気ドレーンバルブDV1又はDV2における蒸気の要求される出口温度TRSよりも低いことを確認することによって、予熱が完了すべきであることを任意選択で確認することができる。実際の出口温度TTCは、熱電対TC1-TC3、及び任意選択で熱電対TC4から得ることができる。コントローラ200は、予熱を再開すべきと判断した場合、様々な手段を講じることができる。例えば、コントローラ200は、少なくとも1つの蒸気ドレーンバルブDV1及び/若しくはDV2を開き、並びに/又は少なくとも1つの制御バルブCV1及び/若しくはCV2を閉じて、蒸気が導管104を燃焼器101に向かって下流に流れることを防止し、したがって導管104の1つ又は複数の部分に追加の熱を供給することができる。
【0070】
本開示の実施形態によって、様々な技術的及び商業的利点を得ることができ、その例は本明細書で説明される。本開示によって具体化されるように、本システムは、単に測定された出口温度に頼るのではなく、ジュール-トムソン効果に基づいてドレーンバルブにおける出口温度を予測することによって、導管の予熱を更に正確に制御することを実現する。この方法では、システムは、予熱に影響を与える様々な変数を考慮し、システムが予熱プロセスで実際に必要とされる以上のエネルギーと時間を費やすような過度の保護をすることはない。したがって、このシステムは、システムの不必要なダウンタイムを削減し、有利なこととして、ガスタービンの出力を増強するために蒸気を使用する。本システム及び本方法は、システムを備えたあらゆるターボ機械に適用することができる。
【0071】
当業者には理解されるように、本開示の教示は、システム、方法、又はコンピュータプログラム製品として具体化することができる。したがって、本開示は、完全にハードウェアの実施形態、完全にソフトウェアの実施形態(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどを含む)、又はソフトウェア及びハードウェアの態様を組み合わせた実施形態の形態をとることができ、これらは全て、本明細書では一般に、「回路」、「モジュール」、又は「システム」と呼ばれる。更に、本開示は、コンピュータ使用可能プログラムコードが具現化された任意の有形表現媒体に具現化されたコンピュータプログラム製品の形態をとることができる。
【0072】
1つ又は複数のコンピュータ使用可能媒体又はコンピュータ読取可能媒体の任意の組み合わせを利用することができる。コンピュータ使用可能媒体又はコンピュータ読取可能媒体は、例えば、電子的、磁気的、光学的、電磁的、赤外線、又は半導体のシステム、装置、デバイス、又は伝搬媒体とすることができるが、これらに限定されることはない。コンピュータ可読媒体のより具体的な例(考えられる全てのものが含まれているわけではない)としては、1本又は複数本のワイヤを有する電気接続体、ポータブルコンピュータディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリーメモリ(EPROM又はフラッシュメモリ)、光ファイバ、ポータブルコンパクトディスク・リードオンリーメモリ(CD-ROM)、光学記憶装置、伝送媒体(インターネット若しくはイントラネットを支えるものなど)、又は磁気記憶装置が挙げられる。コンピュータ使用可能媒体又はコンピュータ読取可能媒体は、プログラムが印刷された紙又は他の適切な媒体もあり得ることに留意されたい。これは、プログラムを、例えば、紙又は他の媒体を光学的にスキャニングすることによって電子的に取り込み、その後、コンパイルし、翻訳し、必要に応じて、適切な方法で他の処理が行われ、コンピュータのメモリに格納することができるからである。本開示では、コンピュータ使用可能媒体又はコンピュータ読取可能媒体は、命令実行システム、装置、又はデバイスによって使用されるプログラム、又は命令実行システム、装置、又はデバイスとともに使用されるプログラムを含む、記憶する、通信する、伝播する、又は運ぶことができる任意の媒体とすることができる。コンピュータ使用可能媒体は、ベースバンド又は搬送波の一部として、コンピュータ使用可能プログラムコードが具現化された伝搬データ信号を含むことができる。コンピュータ使用可能プログラムコードは、任意の適切な媒体(無線、有線、光ファイバケーブル、RFなどを含むがこれらに限定されることはない)を使用して伝送することができる。
【0073】
本開示の動作を実行するためのコンピュータプログラムコードは、オブジェクト指向プログラミング言語(Java、Smalltalk、C++など)及び従来の手続き型プログラミング言語(「C」プログラミング言語又は同様のプログラミング言語など)を含む1つ又は複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述することができる。プログラムコードは、スタンドアロンソフトウェアパッケージとして、全てがユーザのコンピュータ上で実行されてもよいし、ユーザのコンピュータ上で部分的に実行されてもよいし、ユーザのコンピュータ上で部分的に実行されるとともにリモートコンピュータ上で部分的に実行されてもよいし、全てがリモートコンピュータ又はサーバ上で実行されてもよい。後者のシナリオでは、リモートコンピュータは、任意のタイプのネットワーク(ローカルエリアネットワーク(LAN)又はワイドエリアネットワーク(WAN)を含む)を通じてユーザのコンピュータに接続することができ、(例えば、インターネットサービスプロバイダを使用してインターネットを通じて)外部のコンピュータに接続することもできる。
【0074】
本明細書において、本開示は、本開示の実施形態による方法、装置(システム)及びコンピュータプログラム製品のフローチャート及び/又はブロック図を参照して説明されている。フローチャート及び/又はブロック図の各ブロック、並びにフローチャート及び/又はブロック図のブロックの組合せは、コンピュータプログラム命令によって実施できることが理解される。これらのコンピュータプログラム命令は、汎用コンピュータ、特殊用途コンピュータ、又は他のプログラマブルデータ処理装置のプロセッサに提供され、この命令は、コンピュータ又は他のプログラマブルデータ処理装置のプロセッサによって実行され、フローチャート及び/又はブロック図の1つのブロック又は複数のブロックで指定された機能/動作を実施するための手段を作成するような機械を生成することができる。
【0075】
これらのコンピュータプログラム命令は、コンピュータ可読媒体に記憶することもでき、コンピュータ又は他のプログラム可能なデータ処理装置に特定の方法で機能するように命令することができ、コンピュータ可読媒体に記憶された命令によって、製品(フローチャート及び/又はブロック図の1つのブロック又は複数のブロックで指定された機能/動作を実施する命令手段を含む)が生成される。
【0076】
また、コンピュータプログラム命令は、コンピュータ又は他のプログラム可能なデータ処理装置にロードすることもでき、一連の動作ステップがコンピュータ又は他のプログラム可能な装置で実行されてコンピュータで実施されるプロセスが生成され、コンピュータ又は他のプログラム可能な装置で実行される命令が、フロー図及び/又はブロック図の1つのブロック又は複数のブロックに指定された機能/動作を実施するためのプロセスを提供する。
【0077】
図面には、本開示の様々な実施形態によるシステム、方法、及びコンピュータプログラム製品の可能な実装についてのアーキテクチャ、機能、及び動作が示されている。これに関して、フローチャート又はブロック図の各ブロックは、指定された論理機能を実装するための1つ又は複数の実行可能命令を構成する、モジュール、セグメント、又はコードの部分を表すことができる。また、一部の代替的な実装形態では、ブロックに記載された機能は、図に記載された順序とは異なる順序で実行されてもよいことに留意すべきである。例えば、連続するように示されている2つのブロックは、実際には、実質的に同時に実行されてもよいし、ブロックは、関係する機能に応じて、時には逆の順序で実行されてもよい。また、ブロック図及び/又はフローチャートの各ブロック、ならびにブロック図及び/又はフローチャートのブロックの組合せは、指定された機能又は動作を実行する特別な目的のハードウェアベースのシステム、又は特別な目的のハードウェアとコンピュータ命令との組合せによって実装できることに留意されたい。
【0078】
本明細書及び特許請求の範囲を通じて使用される近似を表す文言は、関連する基本的機能に変化をもたらすことなく、差し支えない程度に変動し得る任意の量的表現を修飾するために適用することができる。したがって、1つの又は複数の用語(「およそ」、「約」、及び「実質的に」など)によって修飾された値は、明記された厳密な値に限定されるものではない。少なくとも一部の例では、近似を表す文言は、値を測定するための機器の精度に対応する場合がある。ここに記載されたこと並びに本明細書及び特許請求の範囲を通して、範囲の限定を組み合わせること及び/又は置き換えることが可能である。文脈又は文言が特に指示しない限り、このような範囲は識別され、それに包含される全ての部分範囲を含む。範囲の特定の値に適用される「約」は、当該範囲の両端の値に適用され、値を測定する機器の精度に特に依存しない限り、言及された値の+/-10%を示すことができる
【0079】
特許請求の範囲におけるミーンズプラスファンクション又はステッププラスファンクションの要素すべての、対応する構造、材料、動作、及び均等物は、具体的に請求された他の請求要素と組み合わせてその機能を実施するための、一切の構造、材料、又は動作を包含することを意図している。本開示の記載は、例示及び説明の目的で提示されており、可能な全てのものを含んでいることも、開示された形態で本開示に限定することも意図するものではない。当業者には、本開示の範囲及び趣旨から逸脱することなく多くの修正及び変形が明らかである。本開示の原理及び実際の用途を最適に説明し、他の当業者が本開示を理解し、様々な実施形態に対して特定の使用に適するような様々な修正を考えることができるように、本実施形態が選択され、かつ記載された。
【符号の説明】
【0080】
100 システム
101 燃焼器
102 蒸気供給部
104 導管
105 主蒸気導管
106 蒸気マニホールド
110 筐体
114 ドレーン導管
116 上流部分
118 下流部分
124 ドレーン導管
128 下流部分
134 ドレーン導管
138 下流部分
144 ドレーン導管
150 主熱電対
160 アクチュエータ
164 バルブ本体
200 コントローラ
【外国語明細書】