(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144171
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】米粉パンの製造方法
(51)【国際特許分類】
A21D 13/047 20170101AFI20241003BHJP
A23L 5/10 20160101ALI20241003BHJP
A23L 5/30 20160101ALI20241003BHJP
【FI】
A21D13/047
A23L5/10 Z
A23L5/30
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024028524
(22)【出願日】2024-02-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-08-08
(31)【優先権主張番号】P 2023053028
(32)【優先日】2023-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 公開日: 令和5年2月13日 公開場所: 東北日本ハム株式会社(山形県酒田市広栄町三丁目1番地) 公開者名: 日本ハム株式会社
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ウェブサイトのアドレス:https://www.nipponham.co.jp/shokutaku/p_bread.html ウェブサイトの掲載日: 令和5年3月1日 公開者名: 日本ハム株式会社
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ウェブサイトのアドレス:https://www.nipponham.co.jp/products/food_allergy/23433/ ウェブサイトの掲載日: 令和5年3月1日 公開者名: 日本ハム株式会社
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ウェブサイトのアドレス:https://www.nipponham.co.jp/products/food_allergy/22850/ ウェブサイトの掲載日: 令和5年3月1日 公開者名: 日本ハム株式会社
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ウェブサイトのアドレス:https://www.nipponham.co.jp/products/food_allergy/19630/ ウェブサイトの掲載日: 令和5年3月1日 公開者名: 日本ハム株式会社
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ウェブサイトのアドレス:https://www.nipponham.co.jp/products/food_allergy/20293/ ウェブサイトの掲載日: 令和5年3月1日 公開者名: 日本ハム株式会社
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ウェブサイトのアドレス:https://www.food-allergy.jp/view/item/000000000115 ウェブサイトの掲載日: 令和5年3月29日 公開者名: 日本ハム株式会社
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ウェブサイトのアドレス:https://www.food-allergy.jp/view/item/000000000123 ウェブサイトの掲載日: 令和5年3月29日 公開者名: 日本ハム株式会社
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ウェブサイトのアドレス:https://www.food-allergy.jp/view/item/000000000114 ウェブサイトの掲載日: 令和5年3月29日 公開者名: 日本ハム株式会社
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ウェブサイトのアドレス:https://www.food-allergy.jp/view/item/000000000126 ウェブサイトの掲載日: 令和5年3月29日 公開者名: 日本ハム株式会社
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ウェブサイトのアドレス:https://www.food-allergy.jp/view/item/000000000124 ウェブサイトの掲載日: 令和5年3月29日 公開者名: 日本ハム株式会社
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ウェブサイトのアドレス:https://www.food-allergy.jp/view/item/000000000122 ウェブサイトの掲載日: 令和5年3月29日 公開者名: 日本ハム株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000229519
【氏名又は名称】日本ハム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(72)【発明者】
【氏名】冨田 大海
(72)【発明者】
【氏名】大畠 健介
(72)【発明者】
【氏名】後藤 清太郎
【テーマコード(参考)】
4B032
4B035
【Fターム(参考)】
4B032DB01
4B032DG08
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4B035LC03
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4B035LG35
4B035LG50
4B035LP16
4B035LT01
(57)【要約】
【課題】小麦パンと同等の膨らみを有し、軽い食感となり(密度が小さく)、膨らみの均一さ、外観および形状のきれいさも良好であり、またパン耳も柔らかい米粉パンを、短時間で製造することのできる製造方法を提供する。
【解決手段】(A)米粉、(B)アルギン酸エステル、(C)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、および(D)加工澱粉を含む米粉パン生地を、ジュール加熱により焼成する工程を含む、米粉パンの製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)米粉、
(B)アルギン酸エステル、
(C)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、および
(D)加工澱粉
を含む米粉パン生地を、ジュール加熱により焼成する工程を含む、米粉パンの製造方法。
【請求項2】
前記加工澱粉(D)がリン酸架橋澱粉を含む、請求項1に記載の米粉パンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米粉パンの製造方法、より具体的には、ジュール加熱を用いた米粉パンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パンは主要食品の一つであるが、一般的な小麦粉を用いて製造されるパンを、小麦アレルギー保有者は生命の危機に関わるために食することができない。また、セリアック病患者の食事療法としてもグルテンフリーは広く認知されている。このような背景より、グルテンを含まない米粉を使用したグルテンフリー米粉パンが望まれている。
【0003】
従来の米粉パンの製造方法に関する発明として、例えば次のようなものが知られている。
【0004】
特許文献1には、米粉と、水溶液が特定の粘度を示す(高粘度の)ヒドロキシプロピルメチルセルロースと、必要に応じてさらに増粘多糖類とを、特定の比率で配合した原料粉を用いることを特徴とする、パン類の製造方法が記載されている。特許文献1には、穀粉原料として主として米粉を使用していながら、グルテンを配合しなくてもボリュームが大きく、保形性も良好で、かつ老化しにくい、ソフトでしっとりとした食感のパン類が得られる旨が記載されている。
【0005】
特許文献2には、特定の比率で、米粉と、製菓用起泡性乳化油脂または製菓用起泡剤と、卵白粉と、増粘多糖類とを含み、必要に応じてさらに加工でんぷんを含んでもよい、米粉食パン用生地や、それを常法どおり発酵焼成する米粉食パンの製造方法が記載されている。特許文献2には、製菓用起泡性乳化油脂または製菓用起泡剤と、さらに卵白粉とを使用することで、発酵時に形成される気泡膜の安定化、均一化、保形性効果が発揮され、さらに米粉独自の風味、食感を備え、しっとりとした内相を備える米粉食パンが得られる旨が記載されている。
【0006】
特許文献3には、澱粉を主成分とし小麦グルテンを含まない(例えば25重量%以上の米粉を含む)イースト発酵生地を調製し、この生地をジュール加熱により焼成することを含み、焼成物はβ澱粉の混在する多孔質組織で形成されたものからなる、ベーカリー食品(パン等)の製造方法が記載されている。なお、ジュール加熱とは、高周波での通電加熱により発生するジュール熱を利用して、短時間で内部まで加熱する方法である。特許文献3には、小麦グルテンを含まないイースト発酵生地をジュール加熱により焼成するので、均一で迅速な加熱によって食感がよくなったベーカリー食品を効率よく製造できる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-126311号公報
【特許文献2】特開2019-083719号公報
【特許文献3】特開2010-246500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
オーブン加熱により製造する米粉パンは、小麦パンと同等の体積まで膨らませることが可能であるが、加熱時間が長く、パン耳が硬くなる傾向にある。例えば、特許文献1に記載されているような特定の原料粉を用いて、一般的なオーブン加熱により食パンを製造した場合、当該文献に記載された特定の効果は奏されるかもしれないが、従来の形状の(やや角の尖った四角形の)を有する、耳の部分が厚く硬い食パンとなり、外観や耳の食感の点で改善の余地があった。
【0009】
特許文献2に記載されている米粉食パンでは、当該文献に記載された特定の効果を奏するために特定の原料を使用する必要があり、特に保形性に関係する卵白粉は卵アレルギーの原因ともなり得るから、食物アレルギーを有する人にも広く食される米粉パンとする上では改善の余地があった。
【0010】
一方、特許文献3に記載されているようなジュール加熱を利用した製造方法によれば、米粉パンの表面から内部中央まで均一な温度で極めて短時間に効率よく加熱することができるが、米粉パンは小麦パンほど大きく膨らまず、また膨らんだ形を維持することが難しい。そのため、米粉パンの密度が大きくなり、食感が重くなるといった点で、ジュール加熱を利用した製造方法には改善の余地があった。
【0011】
本発明は、小麦パンと同等の膨らみを有し、軽い食感となり(密度が小さく)、膨らみの均一さ、外観および形状のきれいさも良好であり、またパン耳も柔らかい米粉パンを、短時間で製造することのできる製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、特定の原料が配合された米粉パン生地を、ジュール加熱により焼成することにより、上記課題を解決した米粉パンの製造方法となることを見出し、本発明を完成させるに至った。ジュール加熱は、特許文献3に記載されているように短時間に効率よく米粉パンを製造できるという利点を有しながらも、米粉パンの密度が大きくなり、食感が重くなるなどの課題を解決することが困難であり、これまではあまり実用化されていなかった。本発明者らは、米粉パンのパン生地の配合は無数に考えられるところ、特定の種類の原料を組み合わせて用いることで、驚くべきことに上記の課題を解決しつつ、ジュール加熱により短時間で米粉パンを製造できる、実用的な製造方法とすることに成功した。
【0013】
すなわち、本発明は少なくとも下記の事項を包含する。
[項1]
(A)米粉、
(B)アルギン酸エステル、
(C)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、および
(D)加工澱粉
を含む米粉パン生地を、ジュール加熱により焼成する工程を含む、米粉パンの製造方法。
[項2]
前記加工澱粉(D)がリン酸架橋澱粉を含む、項1に記載の米粉パンの製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の製造方法により、小麦パンと同等の膨らみを有し、軽い食感となり、しかもパン耳も柔らかい米粉パンを、短時間で製造することができる。また、本発明の製造方法では、食物アレルゲンとなる小麦、大豆、乳、卵などを使用することなく、上記の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、実施例(2,5)および比較例(1,2,3)により作製された米粉パンの焼き上がりを示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
-米粉パンの製造方法-
本発明の米粉パンの製造方法は、(A)米粉、(B)アルギン酸エステル、(C)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、および(D)加工澱粉を含む米粉パン生地を、ジュール加熱により焼成する工程(本明細書において「焼成工程」と呼ぶ。)を含む。
【0017】
(A)米粉
本発明における米粉(A)としては、従来の米粉パンに用いられているものを同様に用いることができる。米粉の原料となる米は、うるち米であってもよいし、もち米であってもよいが、うるち米が好ましく、適切な品種を選ぶことができる。米粉は、精白米粉、玄米粉、およびこれらの混合物のいずれであってもよいが、精白米粉が好ましい。
【0018】
本発明の米粉パン生地中の米粉(A)の配合量は、当該成分による本発明の効果などを考慮しながら適宜調節することができるが、例えば、米粉パン生地全量に対して25~45質量%とすることができ、30~40質量%とすることが好ましい。米粉(A)の配合量をこのような範囲内とすることは、加熱中の膨らみが良好となり、食感が軽い米粉パンを得られる等の観点から好適である。
【0019】
(B)アルギン酸エステル
本発明におけるアルギン酸エステル(アルギン酸プロピレングリコールエステル)(B)としては、食品一般において増粘剤等として用いられているものを同様に用いることができる。アルギン酸エステルには、水溶液にしたときに様々な粘度を与えるもの(グレード)があるが、適切なものを選ぶことができる。例えば、1質量%水溶液の20℃における粘度(B型粘度計使用)が150~250mPa・sであるアルギン酸エステル(B)が好ましい。
【0020】
本発明の米粉パン生地中のアルギン酸エステル(B)の配合量は、当該成分による本発明の効果などを考慮しながら適宜調節することができるが、例えば、米粉パン生地全量に対して0.1~1.0質量%とすることができ、0.1~0.5質量%とすることが好ましい。アルギン酸エステル(B)の配合量をこのような範囲内とすることは、加熱中の膨らみが良好となり、食感が軽い米粉パンが得られる等の観点から好適である。
【0021】
(C)ヒドロキシプロピルメチルセルロース
本発明におけるヒドロキシプロピルメチルセルロース(本明細書において「HPMC」と表記することもある。)(C)としては、食品一般において増粘剤等として用いられているものを同様に用いることができる。HPMCには重量平均重合度などにおいて様々なグレードがあるが、適切なものを選ぶことができる。例えば、重量平均重合度が1400~1900であるHPMC(C)が好ましい。
【0022】
本発明の米粉パン生地中のHPMC(C)の配合量は、当該成分による本発明の効果などを考慮しながら適宜調節することができるが、例えば、米粉パン生地全量に対して0.1~1.0質量%とすることができ、0.1~0.5質量%とすることが好ましい。HPMC(C)の配合量をこのような範囲内とすることは、加熱中の膨らみが良好となり、食感が軽い米粉パンが得られる等の観点から好適である。
【0023】
(D)加工澱粉
本発明における加工澱粉(D)としては、食品一般において食感改良剤等として用いられているものを同様に用いることができる。加工澱粉としては、一般的には、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、アセチル化酸化澱粉、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム、酢酸澱粉、酸化澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、ヒドロキシプロピルリン酸架橋澱粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉、リン酸化澱粉、リン酸架橋澱粉などが挙げられるが、本発明においては、例えば、リン酸架橋澱粉、酢酸澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉などが適している。例えば、食感の軽さの観点からは、リン酸架橋澱粉が好ましく、食感のしっとりさの観点からは、酢酸澱粉が好ましい。
【0024】
加工澱粉の原料となる生澱粉(未加工澱粉)としては、一般的には、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、コーンスターチ、甘藷澱粉、タピオカ澱粉、キャッサバ澱粉、サゴ澱粉、葛澱粉、エンドウ豆澱粉など、穀類、芋類、豆類などから得られる各種の澱粉が挙げられるが、本発明においては、例えば、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、エンドウ豆澱粉などが適している。例えば、食感の軽さの観点からは、馬鈴薯澱粉およびコーンスターチが好ましい。
【0025】
本発明の米粉パン生地中の加工澱粉(D)の配合量は、当該成分による本発明の効果などを考慮しながら適宜調節することができるが、例えば、米粉パン生地全量に対して3.0~10.0質量%とすることができ、5.0~8.0質量%とすることが好ましい。加工澱粉(D)の配合量をこのような範囲内とすることは、加熱中の膨らみが良好となり、食感が軽い米粉パンが得られる等の観点から好適である。
【0026】
(生地の水分量)
本発明の米粉パン生地の水分量は適宜調節することができるが、例えば、米粉パン生地全量に対して30~55質量%とすることができ、30~45質量%とすることが好ましい。米粉パン生地の水分量をこのような範囲内とすることは、加熱中の膨らみが良好となる等の観点から好適である。なお、焼成後の米粉パン製品の水分量は、米粉パン生地の水分量の8割程度(例えば、24~44質量%、好ましくは24~36質量%)となる。水分以外の原料(A)~(D)およびその他の任意の原料については、基本的に、米粉パン生地中の配合量と、焼成後の米粉パン製品中の配合量は同じとみなすことができる。
【0027】
(任意原料)
本発明の米粉パン生地は、必要に応じて、(A)~(D)以外の原料をさらに含むことができる。そのような任意原料としては、例えば、油(例:ナタネ油、米油)、イースト(例:生イースト、ドライイースト)または発酵種、砂糖またはその他の糖類(例:トレハロース、麦芽糖、ブドウ糖、果糖、グラニュー糖)、塩、増粘剤(アルギン酸エステルおよびHPMCを除く。例:グアガム、キサンタンガム、アラビアガム、ジェランガム)、酵素(例:アミラーゼ)などが挙げられる。これらの任意原料(種類、配合量等)としては、従来の米粉パンまたは食品一般において用いられているものを同様に用いることができる。
【0028】
(生地の調製)
本発明の米粉パン生地は、従来の米粉パンと同様に、各種の原料をミキシング(混合)することにより調製することができる。例えば、上記の原料(A)~(D)および必要に応じて用いられる任意原料のうち、液体資材(水および油)を先に、それ以外の資材をその後で、ミキサーに投入し、混合することにより、米粉パン生地が得られる。ミキシングのための各種の条件は、従来の米粉パンの製造方法における条件に基づき、本発明にあわせて適切に設定することができる。例えば、投入時の水温は、2~10℃が好適である。練り上がり温度は、20~30℃が好適である。ミキシングの時間は、10~30分が好適である。
【0029】
ミキシングにより得られた米粉パン生地は、従来の米粉パンと同様に、発酵させることが適切である。発酵は、型に生地を充填して発酵を行うように一段階で行ってもよいし、一次発酵を行った後に型に生地を充填して二次発酵を行うように二段階で行ってもよい。発酵のための各種の条件は、従来の米粉パンの製造方法における条件に基づき、本発明にあわせて適切に設定することができる。例えば、発酵時間は、20~50分間が好適である。温度は、40~60℃が好適である。湿度は、90~100%が好適である。
【0030】
(ジュール加熱)
本発明では、ジュール加熱により、米粉パン生地を焼成する。ジュール加熱では、型に充填された米粉パン生地を電気抵抗体とし、これを挟むようにして金属製電極を接触させて、金属製電極に連結された電源から1~50kHz程度の高周波電流を流すことで、米粉パン生地に電圧かけ、発熱させて、焼成する。ジュール加熱のための各種の条件は、従来の米粉パンの製造方法(例えば、前掲特許文献3に記載の製造方法)における条件に基づき、本発明にあわせて適切に設定することができる。例えば、電圧は160~190Vが好適である。時間は、1~5分間が好適である。
【0031】
なお、本発明の米粉パンの種類は、典型的には食パン、パンケーキであるが、ジュール加熱により焼成を行うことができるのであれば、その他の種類の米粉パンとすることも可能である。
【0032】
(任意工程)
本発明の米粉パンの製造方法は、上述したような焼成工程や、その前工程としての米粉パン生地の調製工程以外に、必要に応じてその他の工程を含むことができる。
【0033】
例えば、本発明の米粉パンの製造方法は、焼成工程により得られた米粉パンを、焼き目を付ける目的で、オーブン加熱する工程(本明細書において「オーブン加熱工程」と呼ぶ。)をさらに含むことができる。オーブン加熱のための各種の条件は、従来の米粉パンの製造方法における条件に基づき、本発明にあわせて(特に、ジュール加熱による焼成工程により奏される効果に悪影響を与えないよう)適切に設定することができる。例えば、上火の温度は、200~230℃が好適であり、下火の温度は、170~190℃が好適である。時間は、5~15分間が好適である。
【0034】
また、本発明の米粉パンの製造方法は、焼成工程、またはその後に任意で行われるオーブン加熱工程により得られた米粉パンを、冷凍する工程(本明細書において「冷凍工程」と呼ぶ。)をさらに含むことができる。冷凍工程のための各種の条件(例えば、冷凍方法、温度、時間)は、従来の米粉パンの製造方法における条件に基づき、本発明にあわせて適切に設定することができる。
【0035】
本明細書に特に明記されていない技術的事項については、当業者であれば、米粉パンに関する技術分野における、一般的な技術的事項、または公知の技術的事項を適宜適用することができ、それによって本発明を実施することが可能である。
【実施例0036】
1.米粉パンの作製
表1に示す配合量(比)となるように原料を計量し、表2に示す条件により、各実施例および比較例の米粉パンを作製した。実施例2および5、ならびに比較例1、2および3の焼き上がりの写真(断面)を
図1に示す。
【0037】
2.米粉パンの評価
作製した各実施例および比較例の米粉パンを対象として、以下の項目について測定および評価を行った。
<密度>
焼成後の体積(cm3)と、質量(g)の比(g/cm3)で表す。なお、密度が小さいほど軽い食感になり、0.01g/cm3の違いであっても食感の軽さはかなり異なると感じられる。
<外観>
以下の基準にしたがって、4人のパネラーが評価した。
◎ パンが均一によく膨らんでおり、外観・形状がきれいで非常に良好
○ パンがある程度均一に膨らんでおり、外観・形状がきれいで良好
△ パンがやや均一に膨らんでおり、外観・形状がほぼ良好
× パンが均一に膨らんでおらず、外観・形状が不良
<パン耳の硬さ>
○:パン耳が薄くやわらかい
×:パン耳が厚く硬い
【0038】
結果を表1にあわせて示す。様々な加工澱粉(リン酸架橋澱粉)が配合された米粉パン生地を用いて、ジュール加熱により焼成した実施例1~4は、加工澱粉が配合されていない、または同量の未加工澱粉が配合された米粉パン生地を用いて同様にジュール加熱により焼成した比較例1および2よりも密度が小さく、外観および耳の硬さの評価に優れることが分かる。また、加工澱粉として、リン酸架橋澱粉を用いた実施例2と、同量の酢酸澱粉を用いた実施例5を喫食すると、前者は軽い食感という評価(密度は0.33g/cm3)、後者はしっとり、もちもちしている(密度は0.35g/cm3、比較例1~3よりは小さい)という評価が得られた。一方、加工澱粉(リン酸架橋澱粉)が配合された米粉パン生地を用いて、オーブン加熱により焼成した比較例3は、比較例1および2よりは密度が低いが、外観および耳の硬さの評価は実施例には及ばないものとなった。
【0039】
【0040】