(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144190
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】ガイドワイヤ、カテーテル
(51)【国際特許分類】
A61M 25/09 20060101AFI20241003BHJP
A61M 25/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A61M25/09 510
A61M25/00 624
A61M25/00 550
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024033836
(22)【出願日】2024-03-06
(31)【優先権主張番号】P 2023051294
(32)【優先日】2023-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000200035
【氏名又は名称】SBカワスミ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】藤田 康弘
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA28
4C267BB07
4C267BB26
4C267BB39
4C267BB40
4C267BB52
4C267CC04
4C267HH08
4C267HH17
(57)【要約】
【課題】曲げ剛性を大きくするにあたり、外径が大径になることが抑制されるガイドワイヤを提供する。
【解決手段】本体部10は複数のセグメント11と線状部材20とを含む。複数のセグメント11は、本体部10の長手方向に連なって前記長手方向において互いに離間または近接可能である。線状部材20は、複数のセグメント11の少なくとも一部に挿通される。線状部材20は一端において操作部30に接続する。また、線状部材20は一端と反対の他端において一のセグメント11である接続セグメント11aに接続している。接続セグメント11aと操作部30との間に渡る線状部材20の張力を増大させることにより、接続セグメント11aより基端側に配置されて隣り合う二つのセグメント11間の距離が小さくなる、または二つのセグメント11が互いに与え合う圧接力が大きくなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺で体内腔に挿入される本体部と前記本体部の基端に形成された操作部とを有するガイドワイヤであって、
前記本体部は、前記本体部の長手方向に連なって前記長手方向において互いに離間または近接可能な複数のセグメントと、前記複数のセグメントの少なくとも一部に挿通される線状部材と、を含み、
前記線状部材は、一端において前記操作部に接続し、他端において一の前記セグメントである接続セグメントに接続しており、
前記接続セグメントと前記操作部との間に渡る前記線状部材の張力を増大させることにより、前記接続セグメントより基端側に配置されて隣り合う二つの前記セグメント間の距離が小さくなる、または前記二つのセグメントが互いに与え合う圧接力が大きくなる、ガイドワイヤ。
【請求項2】
一の前記セグメントは、隣り合う他の前記セグメントと互いに係合する凹凸係合部を有する、請求項1に記載のガイドワイヤ。
【請求項3】
前記一の前記セグメントは基端部に前記凹凸係合部として凹部を有し、
前記一の前記セグメントの基端側で前記一の前記セグメントと隣り合う他の前記セグメントは先端部に前記凹凸係合部として突出部を有し、
前記一の前記セグメントと前記他の前記セグメントとは、前記突出部と前記凹部とが前記本体部の周方向にみて重複するように互いに係合している、請求項2に記載のガイドワイヤ。
【請求項4】
前記突出部の幅および前記凹部の幅は、前記本体部の先端に向けて幅狭となっている、請求項3に記載のガイドワイヤ。
【請求項5】
第一の前記セグメントに設けられた前記突出部または前記凹部の前記幅は、第一の前記セグメントよりも基端側に配置された第二の前記セグメントに設けられた前記突出部または前記凹部の前記幅よりも大きい、請求項4に記載のガイドワイヤ。
【請求項6】
前記長手方向における第一の前記セグメントの前記突出部または前記凹部の寸法は、前記長手方向における寸法であって第一の前記セグメントよりも基端側に配置された第二の前記セグメントの前記突出部または前記凹部の寸法よりも小さい、請求項4または5に記載のガイドワイヤ。
【請求項7】
前記長手方向における第一の前記セグメントの寸法は、前記長手方向に直交する方向における第一の前記セグメントの寸法よりも小さい、請求項6に記載のガイドワイヤ。
【請求項8】
前記長手方向における第一の前記セグメントの寸法は、前記長手方向における第二の前記セグメントの寸法よりも小さい、請求項7に記載のガイドワイヤ。
【請求項9】
一端が前記本体部の先端部に配置された前記セグメントに連結され、他端が前記操作部に連結された少なくとも一つの屈曲操作用の第二線状部材を有し、
前記第二線状部材は、前記長手方向にみた前記セグメントの外縁部に設けられた挿通孔に挿通されており、
前記長手方向にみて前記挿通孔と前記凹凸係合部とは、前記本体部の周方向にずれて配置されている、請求項2から5のいずれか一項に記載のガイドワイヤ。
【請求項10】
長尺で体内腔に挿入されて管腔を有する本体部と前記本体部の基端に形成された操作部とを有するカテーテルであって、
前記本体部は、前記本体部の長手方向に連なって前記長手方向において互いに離間または近接可能な複数のセグメントと、前記複数のセグメントの少なくとも一部に挿通される線状部材と、を含み、
前記線状部材は、一端において前記操作部に接続し、他端において一の前記セグメントである接続セグメントに接続しており、
前記接続セグメントと前記操作部との間に渡る前記線状部材の張力を増大させることにより、前記接続セグメントより基端側に配置されて隣り合う二つの前記セグメント間の距離が小さくなる、または前記二つのセグメントが互いに与え合う圧接力が大きくなる、カテーテル。
【請求項11】
前記カテーテルは、
各セグメントの外径側を覆う外層および、各セグメントの内径側を覆う内層をさらに有し、
前記外層および前記内層は、前記セグメントに非固定であって前記セグメントの表面上を軸方向に相対的に摺動可能であり、
前記外層および前記内層のそれぞれは、第一層、および前記セグメントに接触可能であって前記第一層上よりも前記セグメントが滑らかに摺動可能である第二層を含む、請求項10に記載のカテーテル。
【請求項12】
前記カテーテルは、
各セグメントの外径側を覆う外層および、各セグメントの内径側を覆う内層をさらに有し、
前記外層および前記内層は、前記セグメントの周方向に沿う折り目を有する、請求項10に記載のカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイドワイヤおよびカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
ガイドワイヤまたはカテーテルには、操作により曲げ剛性を変えることができるものがある。この種の技術に関し、下記特許文献1には、操作部材(4)を介してコイル(5,6)を回転させることにより曲げ剛性を変化させるガイドワイヤが開示されている。具体的には、所定の方向に操作部材(4)を回転操作すると、基端側のコイル(6)が捻られて外径が縮径して剛直となる。また、先端側のコイル(5)は基端側のコイル(6)によって軸方向に押されて軸方向に収縮し、剛直となる。結果、ガイドワイヤは全体として剛直となる。なお、基端側のコイル(6)が収縮したことにより外径は拡径する。
他方、先ほどの所定の方向と反対の方向に操作部材(4)を回転操作すると、基端側のコイル(6)の外径は拡径しながら軸方向に収縮し、基端側のコイル(6)の曲げ剛性が減少する。また、先端側のコイル(5)は、基端側のコイル(6)によって軸方向に伸張し、曲げ剛性が減少する。すなわち、ガイドワイヤは全体として曲げ剛性が減少する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したように特許文献1のガイドワイヤにおいては曲げ剛性を変化させたときにコイル(5,6)の外径が大きくなることでガイドワイヤの一部の外径が大きくなってしまう。ガイドワイヤが大径となれば、当該ガイドワイヤが血管等の体内腔を通るときに管壁に干渉して血管等を傷つけやすくなる他、ガイドワイヤを管壁内に進入させることが困難となるという問題が生じる。他にもガイドワイヤの外表面に沿わせてカテーテルを体内腔に挿通させる場合にカテーテルを挿通させることが困難となるという問題が生じる。
【0005】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものであり、曲げ剛性を大きくするにあたり、外径が大径になることが抑制されるガイドワイヤまたはカテーテルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のガイドワイヤは、長尺で体内腔に挿入される本体部と前記本体部の基端に形成された操作部とを有するガイドワイヤであって、前記本体部は、前記本体部の長手方向に連なって前記長手方向において互いに離間または近接可能な複数のセグメントと、前記複数のセグメントの少なくとも一部に挿通される線状部材と、を含み、前記線状部材は、一端において前記操作部に接続し、他端において一の前記セグメントである接続セグメントに接続しており、前記接続セグメントと前記操作部との間に渡る前記線状部材の張力を増大させることにより、前記接続セグメントより基端側に配置されて隣り合う二つの前記セグメント間の距離が小さくなる、または前記二つのセグメントが互いに与え合う圧接力が大きくなることを特徴とする。
【0007】
本発明のカテーテルは、長尺で体内腔に挿入されて管腔を有する本体部と前記本体部の基端に形成された操作部とを有するカテーテルであって、前記本体部は、前記本体部の長手方向に連なって前記長手方向において互いに離間または近接可能な複数のセグメントと、前記複数のセグメントの少なくとも一部に挿通される線状部材と、を含み、前記線状部材は、一端において前記操作部に接続し、他端において一の前記セグメントである接続セグメントに接続しており、前記接続セグメントと前記操作部との間に渡る前記線状部材の張力を増大させることにより、前記接続セグメントより基端側に配置されて隣り合う二つの前記セグメント間の距離が小さくなる、または前記二つのセグメントが互いに与え合う圧接力が大きくなることを特徴とする。
【0008】
セグメント間の距離を小さくする、またはセグメント間の圧接力を大きくすることによって二つのセグメント間が曲がりにくく剛直となる。これによってガイドワイヤまたはカテーテルの少なくとも一部長さ領域の曲げ剛性を大きくすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のガイドワイヤまたはカテーテルによれば、当該ガイドワイヤまたは当該カテーテルの曲げ剛性はセグメント間の距離が小さくなる、またはセグメント間の圧接力が大きくなることによって大きくなる。そのため、曲げ剛性を大きくするためにガイドワイヤまたはカテーテルの外径が拡径されることが少ない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1(a)は本発明の第一実施形態にかかるガイドワイヤの一例を示す模式図である。
図1(b)は第一実施形態にかかるガイドワイヤの模式図であり、本体部の内部に配置される線状部材を図示したものである。
図1(c)は第一実施形態にかかるガイドワイヤにおいてセグメント間に所定の距離が設けられているときの模式図である。
【
図2】
図2(a)は第一実施形態にかかるガイドワイヤにおけるセグメントの斜視図である。
図2(b)は第一実施形態にかかるセグメントを先端側から見たときの平面図である。
【
図3】
図3(a)は第一実施形態にかかるガイドワイヤの第一セグメントを含む複数のセグメントを示す模式図である。
図3(b)は
図3(a)に示す複数のセグメントの屈曲を説明するための模式図である。
図3(c)は第一実施形態にかかるガイドワイヤの第二セグメントを含む複数のセグメントを示す模式図である。
図3(d)は
図3(c)に示す複数のセグメントの屈曲を説明するための模式図である。
図3(a)から
図3(d)において第二線状部材の図示は省略している。
【
図4】
図4(a)は、操作部を示す模式図である。本体部の一部は図示省略している。
図4(b)は操作部の分解図である。
【
図5】
図5(a)から
図5(c)は変形例にかかる本体部の一部を示す模式図である。
【
図6】
図6(a)は本発明の第二実施形態にかかるカテーテルの一例を示す模式図である。
図6(b)はカテーテルの模式図であり、本体部の内部に配置される線状部材を図示したものである。
図6(c)はカテーテルにおいてセグメント間に所定の距離が設けられているときの模式図である。
【
図7】第二実施形態にかかるカテーテルの先端部をカテーテルの軸方向に沿って切断したときの模式的な断面図である。
【
図8】
図8(a)は、第二実施形態にかかるカテーテルの一例の拡大断面図である。
図8(b)は、牽引機構を説明するためのカテーテルの模式的な断面図である。
【
図9】
図9(a)および
図9(b)は、第二実施形態にかかるカテーテルの他の例の拡大断面図である。
【
図10】
図10(a)は、第二実施形態にかかるセグメントを先端側から見たときの平面図である。
図10(b)は、カテーテルが操作線を有する場合においてセグメントを先端側から見たときの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のガイドワイヤまたはカテーテルの各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
また、本発明のガイドワイヤまたはカテーテルの使用方法を、順番に記載された複数の工程を用いて説明する場合があるが、その記載の順番は複数の工程を実行する順番やタイミングを限定するものではない。このため、本発明のガイドワイヤまたはカテーテルの使用方法を実施するときには、その複数の工程の順番は内容的に支障のない範囲で変更することができ、また複数の工程の実行タイミングの一部または全部が互いに重複していてもよい。
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、各図面において、対応する構成要素には共通の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
また、本発明でいう平面とは、平面を目標として物理的に形成した形状を意味しており、当然ながら幾何学的に完全な平面であることは要しない。
【0013】
<第一実施形態>
(ガイドワイヤ)
図1(a)は、本発明の第一の実施形態にかかるガイドワイヤ1の一例を示す模式図である。
【0014】
はじめに、本実施形態のガイドワイヤの概要について説明する。
ガイドワイヤ1は、本体部10と操作部30とを有する。本体部10は、長尺で体内腔に挿入される。操作部30は本体部10の基端に形成されている。本体部10は複数のセグメント11と線状部材(テンションワイヤ20)とを含む。複数のセグメント11は、本体部10の長手方向に連なっている。また、複数のセグメント11は本体部10の長手方向において互いに離間または近接可能である。テンションワイヤ20は、複数のセグメント11の少なくとも一部に挿通される。テンションワイヤ20は一端において操作部30に接続する。また、テンションワイヤ20は一端と反対の他端において一のセグメント11である接続セグメント11aに接続している。
【0015】
次に、本実施形態のガイドワイヤ1について詳細に説明する。
ガイドワイヤ1は、生体における体内腔に挿通される部材であって全体が長尺の部材であり、いわゆるスタイレットを含む。ガイドワイヤ1はカテーテルとともに用いられることがあり、特にカテーテルの先端を患部まで進入させるために、カテーテルの進入に先行してガイドワイヤ1は血管等に挿通される。具体的には、血管が複数の分岐先に枝分かれする分岐箇所においては所望の分岐先へガイドワイヤ1は挿通される。
以下において、ガイドワイヤ1、ならびに後述する本体部10、テンションワイヤ20および操作部30については、ガイドワイヤ1を体内腔に挿通するときに先んじて体内腔に入る側の一端を先端、またその一端側を先端側と呼ぶ。また、ガイドワイヤ1、本体部10、テンションワイヤ20および操作部30において、先端と反対側の一端を基端、当該一端側を基端側と呼ぶ。
【0016】
本体部10は血管等の体内腔に挿通される部分である。本体部10の全部が体内腔に挿通される必要はなく、本体部10の先端側の少なくとも一部が体内腔に挿通される。本体部10の外径は体内腔の内径よりも小さい。また、本体部10の外径は、オーバーザワイヤと呼ばれる手技でガイドワイヤ1の外表面に沿わせて体内腔に挿通されるカテーテル(図示しない)の内径よりも小さい。本実施形態における本体部10の先端側の一部長さ領域における外径は、当該一部長さ領域よりも基端側の一部長さ領域における外径より小さい。
本体部10の表面を構成する外套は、本体部10の長手方向において複数に分割されている。換言すると、本体部10の外套は、当該長手方向に互いに重複するように並んでいる複数のセグメント11によって構成される。特に、本体部10のうち体内腔に挿通される先端側の少なくとも一部の外套が、複数のセグメント11によって構成される。以下において本体部10の長手方向を単に長手方向、または軸方向ということがある。
【0017】
図2(a)に図示されるように、セグメント11の形状はおおよそ円筒状である。セグメント11の形状は後述する貫通孔114が形成された角柱形状でもよい。また、セグメント11の形状は全体として先端に向けて先細りになった形状であってもよい。
セグメント11には本体部10の軸方向に沿って貫通する貫通孔114が設けられている。貫通孔114の貫通方向をセグメント11の軸方向、または単に軸方向と呼ぶことがある。貫通孔114には後述するテンションワイヤ20(
図1(b)参照)が挿通される。好ましくは、貫通孔114にはテンションワイヤ20が遊挿される。すなわち、貫通孔114はテンションワイヤ20の横断面の形状および寸法よりも大きな形状および寸法を有する。
図2(a)に図示するように、後述する接続セグメント11aは貫通孔114を有していても有していなくてもよい。接続セグメント11aは中実の部材であってもよく、内部に中空を有して先端が閉じた部材であってもよく、他のセグメント11と同様に貫通孔114が設けられた円筒状の部材であってもよい。
複数のセグメント11が本体部10の長手方向に互いに離間または近接可能であるとは、当該長手方向に隣り合う二つのセグメント11同士が、当該長手方向における当該二つのセグメント11間の距離を小さくするまたは大きくすることが可能であることをいう。具体的に本実施形態においては、セグメント11が本体部10の長手方向にテンションワイヤ20上を移動または摺動する。これにより、本体部10の長手方向における隣り合うセグメント11同士の距離が変化しうる。
好ましくは、隣り合う二つのセグメント11は互いに分離している。より好ましくは複数のセグメント11は互いに分離している。ここで二つ以上のセグメント11同士が互いに分離しているとは、互いに独立してテンションワイヤ20上を移動または摺動することをいう。すなわち、後述するようにセグメント11同士がヒンジ等の他の部材を介して間接的に接続していることを含まない。
本実施形態に代えて、セグメント11同士が、セグメント11間の距離または圧接力が変化することを許容するヒンジ等の部材によって接続されていてもよい。または、セグメント11同士が糸状の部材で互いに繋げられていてもよい。
【0018】
テンションワイヤ20は、セグメント11に挿通される線状の部材であり、本体部10の曲げ剛性を調整するための部材である。具体的には、テンションワイヤ20は接続セグメント11aを基端側に牽引するための部材である。本実施形態におけるテンションワイヤ20は金属製のワイヤである。本実施形態に代えて、テンションワイヤ20は樹脂等その他の材料で形成されていてもよい。テンションワイヤ20を樹脂製のワイヤとする場合は、高張力の樹脂が用いられることが好ましい。テンションワイヤ20は軸線方向における伸縮性が小さい部材であることが好ましい。テンションワイヤ20は少なくとも二以上のセグメント11の貫通孔114に挿通される。テンションワイヤ20は後述する接続セグメント11aを除く他の全てのセグメント11に挿通されていることが好ましい。テンションワイヤ20が挿通されたセグメント11は、テンションワイヤ20上を軸方向に移動または摺動することができる。
【0019】
図4(b)に図示されるように、テンションワイヤ20は基端部が操作部30に接続している。具体的には、テンションワイヤ20は後述する捩り部31に固定される。テンションワイヤ20と操作部30との接続は埋込み、接着、ろう接、溶接またはその他の任意の方法によって行われる。また、テンションワイヤ20と操作部30との接続は他の部材を介して行われていてもよい。
図1(b)に図示されるように、テンションワイヤ20の先端部はセグメント11の一つである接続セグメント11aに接続する。テンションワイヤ20と接続セグメント11aとの接続は埋込、接着、ろう接、溶接またはその他の任意の方法によって行われる。本実施形態において接続セグメント11aとは、複数のセグメント11のうち本体部10における最先端の位置に配置されるセグメント11である。換言すると、接続セグメント11aは本体部10の最先端部を構成するセグメント11である。本実施形態に代えて、長手方向における本体部10の中途に配置されるセグメント11を接続セグメント11aとしてもよく、または基端側に配置されるセグメント11を接続セグメント11aとしてもよい。
【0020】
操作部30は、テンションワイヤ20の張力を調整するためのガイドワイヤ1における一部である。また、本体部10の屈曲操作が後述する操作線40を介して操作部30により行われてもよい。
図4(a)に図示されるように、本実施形態における操作部30は捩り部31と雌ねじ部32とを含む。
図4(b)に図示されるように捩り部31は先端側に雄ねじ31aが設けられ、雌ねじ部32は基端側に雌ねじ32aが設けられている。雌ねじ32aは雄ねじ31aに対応した形状および寸法を有する。雌ねじ部32と捩り部31とは、雌ねじ32aに雄ねじ31aを締めることによって接続する。
雌ねじ部32と捩り部31との締め具合を調整することにより、テンションワイヤ20にかかる張力は増減する。具体的には、
図4(a)中に示す矢印のいずれかの方向に捩り部31を回転操作すると、捩り部31が基端側へ移動して雌ねじ部32から離間する。これにより、テンションワイヤ20が基端側に牽引され、後述する渡り部21にかかる張力が大きくなる。テンションワイヤ20が牽引されることにより、後述する渡り部21の長さが小さくなる場合もある。雌ねじ32aと雄ねじ31aを締めることでテンションワイヤ20が捻られてもよい。または、雄ねじ31aと雌ねじ32aとが締められた場合にテンションワイヤ20の捩りが解消されるようにテンションワイヤ20と捩り部31とは接続していてもよい。
一方、
図4(a)に示す矢印の方向のうち前記の方向と反対の方向に捩り部31を回転操作すると、捩り部31は雌ねじ部32に近接する。これにより、テンションワイヤ20は緩んで渡り部21にかかる張力は小さくなる。テンションワイヤ20が緩むことにより渡り部21の長さが大きくなってもよい。
操作部30は本実施形態の形状に限られず、テンションワイヤ20の張力を調整する機構を有していればどのような形状であってもよい。例えば、操作部30はテンションワイヤ20の一部を牽引し、牽引状態を係止等により維持するための固定部を有していてもよい。より具体的には、操作部30はテンションワイヤ20を巻き取る機構を有していてもよい。
また、本実施形態の操作部30は、捩り部31と雌ねじ部32との締め具合を維持するためにラッチ構造を有していてもよい。例えば、雄ねじ31aと雌ねじ32aとが互いに係止する構造を有しており、捻られ、または高い張力がかかったテンションワイヤ20によって雄ねじ31aが雌ねじ32aに対して意図せぬ回転をすることが係止されても良い。
【0021】
図1(a)から
図1(c)を用いて、本体部10の曲げ剛性の調整について説明する。
接続セグメント11aと操作部30との間に渡るテンションワイヤ20の張力を増大させることにより、接続セグメント11aより基端側に配置されて隣り合う二つのセグメント11間の距離が小さくなる、または二つのセグメント11が互いに与え合う圧接力が大きくなる。これにより、本体部10の曲げ剛性が調整されて大きくなる。
具体的には、上述したように操作部30を操作することによって、
図1(b)に図示されるテンションワイヤ20が基端側に牽引される。テンションワイヤ20が基端側に牽引されると、テンションワイヤ20にかかる張力が増大する。より具体的には、テンションワイヤ20において複数のセグメント11に挿通されている一部長さ領域(渡り部21)の張力が増大する。渡り部21は最も基端側のセグメント(基端セグメント11d)から接続セグメント11aまでにわたっているテンションワイヤ20の一部長さ領域である。
操作前の状態(初期状態ともいう)において、
図1(c)に図示されるように隣り合うセグメント11間に所定の距離がある場合がある。換言すると、渡り部21の長さが、軸方向に互いに当接させて並べた場合の複数のセグメント11全体の長さよりも大きい場合である。この場合、テンションワイヤ20を基端側に牽引してテンションワイヤ20に張力を与えると、渡り部21の長さが小さくなる。初期状態において渡り部21であった一部長さ領域のうち基端側の一部が、基端側に牽引されて基端セグメント11dよりも基端側に配置されるためである。渡り部21が小さくなると、渡り部21が挿通されている複数のセグメント11(以下、当該複数のセグメント11をまとめて、または当該複数のセグメント11が配置される一部長さ領域を可撓部12という)において、隣り合う二つのセグメント11同士の間の距離(以下、セグメント間距離ともいう)が小さくなる。これにより、一のセグメント11が、当該一のセグメント11に隣り合う他のセグメント11(隣接セグメント)の軸方向に対して当該一のセグメント11の軸方向が交差するように移動することが制限される。以下において、一のセグメント11が隣接セグメントに対してこのように移動することを、一のセグメント11が隣接セグメントに対して屈曲するということがある。具体的には、セグメント間距離が小さい場合、一のセグメント11が隣接セグメントに対して屈曲しようとすると当該一のセグメント11の一部が隣接セグメントに当接することで当該一のセグメント11の屈曲が隣接セグメントにより係止される。すなわち、セグメント間距離が小さい場合、隣接セグメントに対する一のセグメント11の後述する屈曲角度は小さくなる。隣り合うセグメント11同士の屈曲角度が小さいことにより、可撓部12全体の可撓性は小さくなる。換言すると、可撓部12全体はより曲げ剛性が大きくなる。
一方、
図1(a)で図示されるように、初期状態において隣り合うセグメント11同士が当接または圧接している場合がある。換言すると、渡り部21の長さが、軸方向に互いに当接させて並べた場合の複数のセグメント11全体の長さよりも小さい場合である。この場合、テンションワイヤ20を基端側に牽引してテンションワイヤ20に張力を与えると、セグメント11間が互いに与え合う圧接力が増大する。ここでいう圧接力とは、隣り合うセグメント11の側端面同士が互いに直接に、または間接に与え合う軸方向の応力である。隣り合うセグメント11の側端面同士は、互いに直接に接触しており、一方のセグメント11の側端面が他方のセグメント11の側端面に圧接していてもよい。または、隣り合うセグメント11の側端面の間には他の部材(例えば後述する第二実施形態における外層50または内層60)が挟まれており、一方のセグメント11は、当該他の部材に圧接することで間接に他方のセグメント11に圧接していてもよい。セグメント11間の圧接力が増大することで、可撓部12は全体として軸方向に収縮し、曲げ剛性が大きくなる。
【0022】
また、上述の操作とは逆に、接続セグメント11aと操作部30との間に渡るテンションワイヤ20の張力を減少させることにより、接続セグメント11aより基端側に配置されて隣り合う二つのセグメント11間の距離が大きくなる、または二つのセグメント11が互いに与え合う圧接力が小さくなるようにしてもよい。これにより、本体部10の曲げ剛性が調整されて小さくなる。すなわち、本体部10の可撓性が大きくなる。
このように、本体部10を所望の曲げ剛性に調整することで、本体部10の先端を体内腔における所望の位置まで容易に到達させることができる。例えば、血管の径の大きさによってガイドワイヤ1に求められる曲げ剛性が異なる場合がある。具体的には挿入の始めは曲げ剛性が高いガイドワイヤ1を用いる必要があるが、末梢の血管に侵入させるときには曲げ剛性が低く可撓性が高いガイドワイヤ1を用いる必要がある場合がある。このように血管の太さ等の特性に応じてガイドワイヤ1の曲げ剛性を変化させてもよい。
また、例えば、血管の分岐箇所においてガイドワイヤ1を所望の分岐先へ侵入させるためにガイドワイヤ1の曲げ剛性を変化させることもできる。具体的には、血管の分岐箇所までガイドワイヤ1の先端を侵入させたあと、所望の分岐先へガイドワイヤ1の先端を侵入させるために本体部10の先端を屈曲させたい場合がある。この場合には本体部10の曲げ剛性を低くして可撓性を高め、屈曲操作によって本体部10の先端を分岐箇所の形状に応じた所望の角度に屈曲させることができる。さらに、所望の角度の屈曲状態を維持し、かつガイドワイヤ1のプッシャビリティを担保するために、屈曲操作後に本体部10の曲げ剛性が高められてもよい。
【0023】
以上で説明したように、本実施形態のガイドワイヤ1においては、セグメント11間の距離を小さくする、またはセグメント11間の圧接力を大きくすることによって二つのセグメント11間が曲がりにくく剛直となる。これによってガイドワイヤ1の少なくとも一部長さ領域の曲げ剛性を大きくすることができる。ガイドワイヤ1の曲げ剛性はセグメント11間の距離が小さくなる、またはセグメント11間の圧接力が大きくなることによって大きくなる。そのため、曲げ剛性を大きくするためにガイドワイヤ1の外径が拡径されることが少ない。
【0024】
図1(c)に図示されるように、本実施形態における一のセグメント11は、凹凸係合部を有する。具体的には、可撓部12を構成するセグメント11のうち少なくとも一のセグメント11は凹凸係合部を有する。好ましくは可撓部12を構成する全てのセグメント11が凹凸係合部を有する。凹凸係合部は、隣り合う他のセグメント11と互いに係合する。
具体的には、
図3(a)に図示されるように、一のセグメント11は基端部に凹凸係合部として凹部111を有する。一のセグメント11とは可撓部12における任意のセグメント11をいうが、ここでは説明の便宜のために一のセグメント11が
図3(a)中に示されて後述される第一セグメント11bであるものとして説明する。第一セグメント11bに隣り合う他のセグメント11(
図3(a)中に示す隣接セグメント11e)は先端部に凹凸係合部として突出部112を有する。
図3(a)中の隣接セグメント11eは第一セグメント11bの基端側(紙面右側)で第一セグメント11bと隣り合っている。
本実施形態における凹部111はセグメント11を構成する円筒状の壁部が軸方向に窪んで形成されている。同様に突出部112はセグメント11を構成する円筒状の壁部が軸方向に突出して形成されている。第一セグメント11bにおける凹部111の形状と隣接セグメント11eにおける突出部112の形状とは、対応していることが好ましいが、当該凹部111の形状と当該突出部112の形状が厳密に同一であることに限られない。互いに幅寸法が異なる等、当該凹部111と当該突出部112とは若干形状が異なっていてもよい。例えば、当該凹部111の幅が当該突出部112の幅よりも大きくてもよい。
第一セグメント11bと隣接セグメント11eとは、第一セグメント11bの凹部111と隣接セグメント11eの突出部112とが本体部10の周方向にみて重複するように互いに係合している。これにより、第一セグメント11bの隣接セグメント11eに対する周方向における回転が係止される。換言すると、これにより、本体部10のねじり剛性を高めることができ、トルク操作性を向上させることができる。本体部10の周方向とは、本体部10の軸心の周りを周回する方向である。以下、本体部10の周方向を単に周方向と呼ぶことがある。
本実施形態において、セグメント11は二つの凹部111および二つの突出部112を有している。具体的には、
図2(b)に図示されるように、凹凸係合部(凹部111(
図2(a)参照)または突出部112)は貫通孔114を挟んで180度対向するように配置されている。セグメント11は一つの凹凸係合部(凹部111または突出部112)のみを有していてもよく、二つ以上の複数の凹凸係合部を有していてもよい。
【0025】
凹部111または突出部112は軸方向のいずれか一方に向けて窪んでまたは突出して形成されている。本実施形態においては
図3(a)に図示されるように、凹部111または突出部112は先端に向けて窪んでまたは突出して形成されている。凹凸係合部が先端に向けて窪んでまたは突出して形成されることは、凹凸係合部が基端向きに窪んでまたは突出して形成される場合に比べて本体部10の可撓性の観点で好ましい。また、
図2(a)に図示されるように、二つの凹部111または二つの突出部112は互いに同一方向に向けて窪んでまたは突出して形成されている。本実施形態に代えて凹部111または突出部112が基端に向けて窪んでまたは突出して形成されていてもよい。
【0026】
本実施形態において、突出部112の幅および凹部111の幅は、本体部10の先端に向けて幅狭となっている。突出部112または凹部111の幅とは、本体部10の周方向における突出部112または凹部111の寸法である。換言すると、突出部112または凹部111の幅は、突出部112または凹部111におけるセグメント11の周面に沿った寸法である。
具体的には、
図2(a)に図示されるように、凹部111は一対の壁部(凹部壁部111aという)を有する。一対の凹部壁部111aのそれぞれは、軸方向に対して斜めに配置されている。突出部112もまた、一対の壁部(突出壁部112aという)を有する。一対の突出壁部112aのそれぞれもまた、軸方向に対して斜めに配置されている。軸方向と凹部壁部111aまたは突出壁部112aとが為す角度のうち小さい角度を凹部壁部111aまたは突出壁部112aの傾斜角度という。
図3(a)から
図3(d)に図示されるように、第一セグメント11bにおける凹部壁部111a(
図2(a)参照)と隣接セグメント11eにおける突出壁部112a(
図2(a)参照)とは互いに対向するように配置される。すなわち、第一セグメント11bにおける凹部壁部111aと隣接セグメント11eにおける突出壁部112aとは互いに沿っている。互いに係合する凹部111の凹部壁部111aと突出部112の突出壁部112aとが互いに沿うことで、隣り合うセグメント11同士の屈曲が適切に制御される。例えば、
図3(b)または
図3(d)に図示されるように、隣り合うセグメント11同士が屈曲しようとすると、凹部壁部111aと突出壁部112aとが当接することで、所定の位置で屈曲が係止される。具体的には、
図3(b)に図示されるように、セグメント11の側端面(凹凸係合部が形成されていない側端面)においてセグメント11同士が当接することがある。または、
図3(d)に図示されるように、セグメント11の凹部111と隣接するセグメント11の突出部112とが当接することがある。
本実施形態における突出部112および凹部111の形状は、先端に向けて尖った形状である。本実施形態に代えて、突出部112における突出端が平坦であってもよく、または凹部111における底部が平坦であってもよい。
【0027】
図2(a)に図示されるように、本実施形態における凹部111および突出部112はセグメント11の肉厚全体に形成されているが、これに限られない。例えば、
図5(c)に図示されるように、凹部111および突出部112はセグメント11の肉厚方向における内径側に形成されて、外径側に非形成であってもよい。突出部112は隣り合うセグメント11の凹部111に嵌合するとセグメント11の内部(セグメント11の周壁よりも内径側)に収容される。このような凹凸係合部を有するセグメント11においては、隣り合うセグメント11同士が屈曲したときに突出部112がセグメント11の外表面よりも外側に突出することがなく、カテーテルまたは血管壁と干渉することが防止される。または、このような凹凸係合部を有するセグメント11においては、凹凸係合部が設けられた一部におけるセグメント11の肉厚方向(
図1(a)または
図5(c)における紙面前後方向)について隣り合うセグメント11同士の屈曲が制限される。突出部112が隣り合うセグメント11の周壁に干渉するためである。このため、本体部10を所望の揺動方向(
図1(a)または
図5(c)における図中の上下方向)に専ら動かすことができる。なお、
図5(c)では便宜上、セグメント11同士を離間させて図示している。
【0028】
本実施形態において、第一のセグメント(第一セグメント11b)に設けられた突出部112または凹部111の幅は、第二のセグメント(第二セグメント11c)に設けられた突出部112または凹部111の幅よりも大きい。すなわち、第一セグメント11bの凹部111の幅(
図3(a)における寸法L1)は第二セグメント11cの凹部111の幅(
図3(c)における寸法L5)よりも大きい。または第一セグメント11bの突出部112の幅(
図3(a)における寸法L2)は第二セグメント11cの突出部112の幅(
図3(c)における寸法L6)よりも大きい。ここで比較される突出部112の幅、または凹部111の幅とは、突出部112または凹部111の基端側における幅寸法のことである。
第一セグメント11bとは可撓部12を構成するセグメント11のうち任意のセグメント11である。または、第一セグメント11bは接続セグメント11aであってもよい。第二セグメント11cは、第一セグメント11bよりも基端側に配置されたセグメント11である。第二セグメント11cは第一セグメント11bの基端側に隣接するセグメント11であってもよく、第一セグメント11bに隣接せずに第一セグメント11bよりも基端側に配置されるセグメント11であってもよい。
セグメント11における凹凸係合部(凹部111または突出部112)の幅は、先端側に配置されるセグメント11から基端側に配置されるセグメント11にかけて徐々に小さくなっていてもよい。または、先端側に配置される複数のセグメント11群が略同一の幅の凹凸係合部を有しており、当該セグメント11群よりも基端側に配置される複数のセグメント11群がより小さい幅の凹凸係合部を有していてもよい。
【0029】
凹部111または突出部112の幅が大きい場合は、当該幅が小さい場合に比べて隣接する二つのセグメント11について大きな屈曲を許容することができる。換言すると、凹部111または突出部112の幅が小さい場合は、当該幅が大きい場合に比べて隣接する二つのセグメント11の屈曲における屈曲角度は小さく制限される。
これについて、
図3(a)および
図3(c)を用いて説明する。凹部111の深さ寸法または突出部112の突出寸法が等しい場合においては、凹部111または突出部112の幅が大きいと、当該幅が小さい場合に比べて隣接する凹部111および突出部112同士の周方向における離間距離が大きくなる。当該幅が大きいと、当該幅が小さい場合に比べて凹部壁部111aまたは突出壁部112aの傾斜角度が大きくなるためである。すなわち、
図3(a)における凹部壁部111aまたは突出壁部112aの傾斜角度は
図3(c)における凹部壁部111aまたは突出壁部112aの傾斜角度よりも大きく、
図3(a)に示す離間距離L9は、
図3(c)に示す離間距離L10よりも大きい。セグメント間の周方向における離間距離が異なるため、隣接する二つのセグメント11が屈曲しようとした場合に当該二つのセグメントの凹部111と突出部112とが当接するまでの距離が異なり、屈曲角度の最大値が異なる。また、凹部壁部111aまたは突出壁部112aの傾斜角度が小さいほど、隣り合うセグメント11同士は当該傾斜角度以上に屈曲することが制限される。
図3(d)に図示されるように、当該傾斜角度以上に屈曲しようとしても凹部壁部111a(
図2(a)参照)と突出壁部112a(
図2(a)参照)とが当接してしまい、屈曲が係止されるためである。
ここで屈曲角度とは、隣接する二つのセグメント11が屈曲した場合における当該二つのセグメント11の互いの軸方向が為す角度である。具体的には、屈曲角度とは
図3(b)および
図3(d)においてθで表す角度である。
このように先端側に配置されるセグメント11と基端側に配置されるセグメント11とにおいて凹部111または突出部112の幅を変更することにより、本体部10の先端部の可撓性を大きくし、本体部10の基端部の可撓性を制限して曲げ剛性を高めることができる。
【0030】
本実施形態において、第一セグメント11bにおける突出部112の突出寸法または凹部111の深さ寸法は、第二セグメント11cにおける突出部112の突出寸法または凹部111の深さ寸法よりも小さい。すなわち、第一セグメント11bにおける凹部111の深さ寸法(
図3(a)における寸法L3)は、第二セグメント11cにおける凹部111の深さ寸法(
図3(c)における寸法L7)よりも小さい。また、第一セグメント11bにおける突出部112の突出寸法(
図3(a)における寸法L4)は第二セグメント11cにおける突出部112の突出寸法(
図3(c)における寸法L8)よりも小さい。突出部112の突出寸法または凹部111の深さ寸法は本体部10の長手方向における凹部111または突出部112の寸法である。
凹部111または突出部112の幅が等しい場合において、凹部111の深さ寸法または突出部112の突出寸法が小さい場合は、当該寸法が大きい場合に比べて隣接する凹部111および突出部112同士の周方向における離間距離が大きくなる。また、当該寸法が小さい場合は、当該寸法が大きい場合に比べて凹部壁部111aまたは突出壁部112aの傾斜角度が大きくなる。このため、当該寸法が小さい場合は、当該寸法が大きい場合に比べて隣り合うセグメント11同士の屈曲角度の最大値が大きくなる。すなわち、先端側のセグメント11において当該寸法を小さくし、基端側のセグメント11において当該寸法を大きくすることで、本体部10の先端部の可撓性を大きくし、本体部10の基端部の可撓性を制限して曲げ剛性を高めることができる。
セグメント11における凹部111の深さ寸法または突出部112の突出寸法は、先端側に配置されるセグメント11から基端側に配置されるセグメント11にかけて徐々に大きくなっていてもよい。または、先端側に配置される複数のセグメント11群における凹凸係合部の当該寸法が略同一の当該寸法を有しており、当該セグメント11群よりも基端側に配置される複数のセグメント11群における凹凸係合部の当該寸法がより大きい当該寸法を有していてもよい。
【0031】
本実施形態において、
図3(a)から
図3(d)に図示されるように、長手方向(軸方向)におけるセグメント11(例えば第一セグメント11b)の寸法は、長手方向に直交する方向における当該セグメント(第一セグメント11b)の幅寸法よりも小さい。ここで長手方向におけるセグメント11の寸法とは、突出部112がある場合には突出部112の突出寸法を含まない寸法である。すなわち、セグメント11は、円筒状の壁部と、当該円筒状の壁部から軸方向に突出する突出部112を含んで形成されるが、長手方向におけるセグメント11の寸法は、当該円筒状の壁部のみの寸法をいう。また、セグメント11の幅寸法とは、本体部10を本体部10の側面側から見たとき(例えば、
図1または
図3(a)から
図3(d)のように本体部10を見たとき)の軸方向に直交する方向におけるセグメント11の寸法である。セグメント11の横断面が円形の場合、セグメント11の幅寸法とはセグメント11の外径でもある。すなわち、本実施形態における本体部10は軸方向に細かく分割されている。本体部10が軸方向に細かく分割されていることで、本体部10は当該分割された箇所において曲がることができる。このため、軸方向におけるセグメント11の寸法がセグメント11の幅寸法よりも大きい場合に比べて、本体部10はしなやかに屈曲することができ、大きな可撓性を得ることができる。
好ましくは、第一セグメント11bに限られずに可撓部12を構成する少なくとも先端側の複数のセグメント11において、軸方向における寸法が幅寸法より小さい。より好ましくは可撓部12を構成する全てのセグメント11において、軸方向における寸法が幅寸法よりも小さい。
【0032】
長手方向(軸方向)における第一セグメント11bの寸法は、長手方向(軸方向)における第二セグメント11cの寸法よりも小さい。可撓部12において、先端側に配置されるセグメント11ほど軸方向における寸法が徐々に大きくなっていてもよい。または、先端側に配置される複数のセグメント11の一群における軸方向の寸法が、当該一群よりも基端側に配置される複数のセグメント11の他の一群における軸方向の寸法よりも小さくなっていてもよい。
これにより、本体部10の先端側の一部の可撓性を高くするとともに、基端側の一部の曲げ剛性を高くすることができる。
【0033】
図1(b)に図示されるように、本実施形態におけるガイドワイヤ1は、少なくとも一つの第二線状部材(操作線40)を有する。操作線40は屈曲操作用に用いられる。本実施形態においてガイドワイヤ1は二本の操作線40を有する。
図2(b)に図示されるように当該二本の操作線40は、貫通孔114を挟んで180度対向するように配置されている。ガイドワイヤ1は一または三以上の操作線40を有していても良い。
図1(b)に図示されるように操作線40の一端は本体部10の先端部に配置されたセグメント11に連結される。本実施形態において操作線40は接続セグメント11aに連結されている。本実施形態に代えて、操作線40は接続セグメント11aよりも基端側に配置されるセグメント11と連結していてもよい。操作線40とセグメント11との連結は、埋込み、接着、ろう接、溶接またはその他の方法等どのような方法によって行われていてもよい。操作線40の他端は操作部30に連結される。
図2(a)または
図2(b)に図示されるように、操作線40はセグメント11における挿通孔113に挿通されている。挿通孔113は長手方向にみたセグメント11の外縁部に設けられている。具体的には、挿通孔113はセグメント11の肉厚内に形成されている。一または複数の操作線40を基端側に牽引することで、本体部10を所望の方向および所望の角度に屈曲操作することができる。
図2(b)に図示されるように、軸方向にみて挿通孔113と凹凸係合部(凹部111または突出部112)とは、本体部10の周方向にずれて配置されている。好ましくは、軸方向にみて挿通孔113と凹凸係合部とは本体部10の周方向に90度ずれて配置されている。挿通孔113が複数設けられている場合には、軸方向にみて一部の挿通孔113が凹凸係合部と周方向にずれて配置されていればよい。例えば、四つの挿通孔113が90度ずつ互いにずれて配置されていた場合、二つの挿通孔113が軸方向にみて凹凸係合部と周方向にずれて配置されていればよい。残りの二つの挿通孔113は軸方向にみて凹凸係合部と周方向にずれずに配置されていてもよい。すなわち、当該残りの二つの挿通孔113は本体部10の径方向にみて凹凸係合部と重複するように配置されていてもよい。ここで本体部10の径方向とは、本体部10の軸心から本体部10の周面に向かう方向である。以下において本体部10の径方向を単に径方向と呼ぶ場合がある。
180度対向するよう配置された二本の操作線40により、操作線40が並ぶ方向(
図1(b)における紙面上下方向)に本体部10が撓むことができる。これにより、上述したように凹凸係合部によって隣接するセグメント11同士の屈曲角度を所望の範囲に調整しつつ、本体部10の屈曲を操作することができる。
本実施形態に代えて、ガイドワイヤ1は操作線40を有していなくてもよい。また、ガイドワイヤ1は操作線40を有して当該操作線40と凹凸係合部とは径方向に重複するように形成されていてもよい。
【0034】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成される限りにおける種々の変形、改良等の態様も含む。
以下の変形例は適宜組み合わせることができる。
【0035】
本実施形態においてセグメント11は凹凸係合部を有していたが、これに限られない。セグメント11は凹凸係合部を有しないで、隣り合うセグメント11同士は互いに係合していなくてもよい。
【0036】
本実施形態においてテンションワイヤ20は、セグメント11の軸方向にみてセグメント11の中央を貫通しているが、これに限られない。例えば、テンションワイヤ20はセグメント11の軸方向にみてセグメント11の周縁部を貫通していてもよい。テンションワイヤ20はセグメント11の周壁部の肉厚内で貫通していてもよい。または、テンションワイヤ20はセグメント11(本体部10)の外表面に沿うように配置されていてもよい。
【0037】
凹凸係合部の形状は上記で示したものに限られない。
例えば、
図5(a)に図示されるように、突出部112と対応する凹部111とが径方向に重複してもよい。具体的には、突出部112は軸方向に突出した円筒形状であってもよい。また凹部111は貫通孔114(
図2(a)参照)の基端側の一部と共通した部分であってもよい。このような凹部111および突出部112においても、幅寸法が軸方向のいずれかの方向に小さくなっていることが好ましい。この場合の凹部111または突出部112の幅とは、軸方向に直交するいずれかの方向における寸法である。また、先端側のセグメント11における突出部112または凹部111の幅は、基端側のセグメント11における突出部112または凹部111の幅よりも大きいことが好ましい。また、先端側のセグメント11における突出部112の突出寸法または凹部111の深さ寸法は、基端側のセグメント11における突出部112の突出寸法または凹部111の深さ寸法よりも小さいことが好ましい。
他にも
図5(b)に図示されるように、180度対向する凹凸係合部は互いに軸方向の反対向きに突出または窪んで形成されていてもよい。このように凹凸係合部を形成することで、本体部10の所望の方向における可撓性を大きくすることができる。具体的には、
図5(b)における本体部10の先端は紙面上向きに屈曲させやすい。
【0038】
本実施形態において、ガイドワイヤ1は一つのテンションワイヤ20のみを有しているが、これに限られない。ガイドワイヤ1は二以上の複数のテンションワイヤ20を有していてもよい。例えば、一のテンションワイヤ20(先端側テンションワイヤ20)は本実施形態のように最先端のセグメント11に接続されており、他のテンションワイヤ20(基端側テンションワイヤ20)は軸方向における中途のセグメント11に接続されていてもよい。先端側テンションワイヤ20および基端側テンションワイヤ20は操作部30によりそれぞれ別に張力を調整できることが好ましい。これにより、可撓部12における一部長さ領域および他の一部長さ領域の可撓性を別個に調整することができる。具体的には先端側テンションワイヤ20により可撓部12全体の可撓性を高くした上で、基端側テンションワイヤ20により可撓部12の基端側の一部長さ領域の曲げ剛性を大きくすることができる。
【0039】
<第二実施形態>
(カテーテル)
本実施形態にかかるカテーテル1xの概要について説明する。
図6(a)から
図6(c)は本実施形態のカテーテル1xを側面から見たときの模式図である。
図6(a)に図示されるように、カテーテル1xは、本体部10および操作部30を有する。同図においては後述する外層50の図示を省略している。本体部10は、長尺で体内腔に挿入される部材であり、管腔13を有する。
図6(a)においては管腔13を点線で示している。操作部30は、本体部10の基端に形成されている。
図6(b)に図示されるように、本体部10は、複数のセグメント11と、線状部材20と、を含む。複数のセグメント11は、本体部10の長手方向に連なっており、長手方向において互いに離間または近接可能である。線状部材20は、複数のセグメント11の少なくとも一部に挿通されている。線状部材20は、一端において操作部30に接続し、他端において一のセグメント11である接続セグメント11aに接続している。接続セグメント11aと操作部30との間に渡る線状部材20の張力を増大させることにより、接続セグメント11aより基端側に配置されて隣り合う二つのセグメント11間の距離が小さくなる、または二つのセグメント11が互いに与え合う圧接力が大きくなる。
【0040】
カテーテル1xについて詳細を説明する。
カテーテル1xとは、血管等の体内腔に挿通されて、体内腔における所望の箇所に薬剤等の液体を注入する器具であり、いわゆるカニューレを含む。カテーテル1xの内部には、カテーテル1xの中央をとおり、カテーテル1xの軸方向に延在する管腔13が形成されている。管腔13はカテーテル1xの先端において開口している。管腔13を通じて薬剤は所望の箇所に注入される。
【0041】
本実施形態において、
図10(a)に図示されるように、セグメント11の壁部には、軸方向に延在する貫通孔114が設けられている。貫通孔114はセグメント11の軸方向の端面にてそれぞれ開口する。テンションワイヤ20は当該貫通孔114に挿通されている。本実施形態では、一対の凹部111または一対の突出部112が対向する方向(図中上下方向)に直交する方向(図中左右方向)に管腔13を挟んで並ぶように二つの貫通孔114が設けられている。二つの貫通孔114には第一テンションワイヤ22および第二テンションワイヤ24のそれぞれが挿通されている。
本実施形態に代えて、二つの貫通孔114は一対の凹部111または一対の突出部112が対向する方向(図中上下方向)に管腔13を挟んで並ぶように形成されていてもよい。
また、本実施形態に代えて、テンションワイヤ20は1本のみがセグメント11に挿通されていてもよく、三本以上の複数のテンションワイヤ20がセグメント11に挿通されていてもよい。
【0042】
本実施形態における二以上の複数のテンションワイヤ20は、一つの操作部30によって同時に張力が調整される。これにより、複数のテンションワイヤ20の張力をまとめて操作することができ、一のテンションワイヤ20の張力が不測に小さくまたは大きくなることでカテーテル1xが不測に屈曲することが発生しにくい。
これに代えて、二以上の複数のテンションワイヤ20は、複数の操作部30のそれぞれに接続しており、当該複数の操作部30のそれぞれによって別個に張力が調整されてもよい。これによって、テンションワイヤ20が後述する操作線40として用いられることができる。例えば、第一テンションワイヤ22を強く牽引し、第二テンションワイヤ24を弱く牽引するまたは牽引しないことによって、カテーテル1xの先端部は所定の方向に屈曲することができる。
【0043】
図7に図示されるように、本実施形態におけるカテーテル1xは外層50および内層60により被覆されている。外層50および内層60は樹脂材であることが好ましい。外層50は内層60と同種の樹脂材であってもよく、異種の樹脂材であってもよい。外層50はナイロン系、ウレタン系、またはその他の強度に優れたプラスチックであるエンジニアリングプラスチック、あるいはこれらに強度等の性質が類似するエラストマーであることが好ましい。内層60はPTFEであることが好ましい。
本実施形態において外層50とは、カテーテル1xの最外層である。外層50は、少なくとも可撓部12においてセグメント11の外径側を覆っている。また、外層50は隣り合う二つのセグメント11の間を渡るように配置されている。本実施形態において内層60とは、カテーテル1xの最内層である。内層60は可撓部12においてセグメント11の内径側を覆っており、隣り合う二つのセグメント11の間を渡るように配置されている。
【0044】
本実施形態において、外層50および内層60のそれぞれは、接続セグメント11aに融着または接着等により固定されている。一方、接続セグメント11aよりも基端側に配置される他のセグメント11には、外層50および内層60のそれぞれは非固定であってもよい。換言すれば、接続セグメント11aよりも基端側に配置されるセグメント11は、外層50または内層60上を摺動することが可能であることが好ましい。これに代えて、接続セグメント11aよりも基端側に配置される他のセグメント11に、外層50および内層60のそれぞれが固定されていてもよい。この場合、後述するように内層60および外層50を軸方向に伸縮可能な樹脂材(軸方向における延伸性を有する樹脂材)で構成してもよい。外層50および内層60が軸方向に伸縮可能であることにより、後段で説明するように、テンションワイヤ20を基端側に牽引する前後で外層50および内層60が延伸されるまたは圧縮されることで外層50または内層60の軸方向の寸法を変化させることができる。結果、テンションワイヤ20を基端側に牽引したときに外層50および内層60が蛇腹状に折畳まれにくい。そのため、蛇腹状に折畳まれた外層50および内層60によって管腔13の一部が塞がれること、または蛇腹状に折畳まれた外層50および内層60によってカテーテル1xの外径が大きくなることが抑制される。
【0045】
操作部30によってテンションワイヤ20を牽引してテンションワイヤ20に張力を与えると、テンションワイヤ20の先端と接続する接続セグメント11aが基端側に牽引される。
外層50および内層60のそれぞれが接続セグメント11aよりも基端側に配置される他のセグメント11に非固定である場合において、セグメント11は外層50および内層60上を相対的に軸方向に摺動することができる。そのため、基端側に接続セグメント11aが牽引されると、接続セグメント11aの基端側に隣り合うセグメント11の周面または内周面を外層50または内層60が基端向きに摺動し、接続セグメント11aと接続セグメント11aの基端側に隣り合うセグメント11とは近づくことができる。さらには、接続セグメント11aの端面と、接続セグメント11aの基端側に隣り合うセグメント11の端面とが、当接し、さらに圧接することができる。このように、接続セグメント11aが基端側に牽引されることに伴って、外層50および内層60に挟まれた空間においてセグメント11が摺動することでセグメント11同士の距離が近づき、セグメント11同士の圧接力が大きくなることができる。
なお、このとき、一のセグメント11は、隣り合うセグメント11に接触して当該隣り合うセグメント11に直接に圧接していてもよいが、隣り合うセグメント11との間に外層50または内層60の一部を挟んで、当該隣り合うセグメント11に対して間接に圧接していてもよい。
反対に、操作部30によってテンションワイヤ20が緩められた場合には、外層50および内層60に挟まれた空間においてセグメント11が摺動することで隣り合うセグメント11同士の圧接力が小さくなる。
【0046】
外層50および内層60のそれぞれが、接続セグメント11aよりも基端側の各セグメントのそれぞれに固定されている場合は、セグメント11同士が近づくと外層50および内層60が軸方向に圧縮され、セグメント11同士が遠ざかると外層50および内層60は軸方向に伸びる。例えば、操作部30を操作してテンションワイヤ20を牽引すると、接続セグメント11aが基端側に牽引され、接続セグメント11aは当該接続セグメント11aの基端側に隣り合うセグメント11に近づく。このとき、外層50および内層60は、当該セグメント11および接続セグメント11aに固定されているため、当該セグメント11および接続セグメント11aの間を渡る外層50および内層60は両者の距離が小さくなると、軸方向に圧縮される。具体的には外層50または内層60が蛇腹形状等に折畳まれることによって、外層50または内層60の軸方向の寸法は小さくなる。または、外層50または内層60が折畳まれることなく、外層50および内層60が軸方向に圧縮されている状態が維持されることで外層50および内層60の軸方向における寸法が小さくなってもよい。この場合、外層50または内層60は軸方向に圧縮されたとき当該圧縮に耐えることができる性質(耐圧性)を有し、当該圧縮によって容易に変形して軸方向の寸法が変化する性質を有することが好ましい。あるいは、軸方向に延伸性を有する外層50および内層60が軸方向に圧縮された結果、内層60および外層50の張力が緩和されてもよい。具体的には、操作部30によってテンションワイヤ20を基端側に牽引する前の状態において外層50および内層60が軸方向に延伸されており、テンションワイヤ20が牽引されて外層50および内層60が軸方向に圧縮されると、外層50および内層60にかかる張力が緩和されて外層50および内層60の軸方向における寸法が小さくなってもよい。
なお、このとき、一のセグメント11は、隣り合うセグメント11に接触して当該隣り合うセグメント11に直接に圧接していてもよい。また、当該一のセグメント11は、隣り合うセグメント11との間に外層50または内層60の一部を挟んで、当該隣り合うセグメント11に対して間接に圧接していてもよい。
反対に、操作部30を操作してテンションワイヤ20の張力を緩めれば、セグメント11同士の軸方向における距離は大きくなる。そのため、上述の蛇腹形状等が解消されてセグメント11同士の間に渡る外層50または内層60の軸方向における寸法は大きくなる。
【0047】
本実施形態では、隣り合う二つのセグメント11の間において、外層50と内層60との間の空間(外層50、内層60および隣り合う二つのセグメント11の端面に画成された空間)の略全体は中空部58となっている。当該中空部58には、軸方向にテンションワイヤ20が通っている。
本実施形態に代えて、二つのセグメント11の間は樹脂等の部材で埋められていてもよい。隣り合う二つのセグメント11の間において、外層50と内層60との間の空間は、樹脂等の部材で略中実に形成されていてもよい。これにより、可撓部12の剛性を所望の値以上にすることができる。
例えば、セグメント11と同形状の筒型の樹脂部材が配置されていてもよい。当該樹脂部材には軸方向に貫通する穴が設けられて当該穴にテンションワイヤ20が挿通されている。樹脂部材は、セグメント11よりも弾性率(ヤング率)が小さい材料で形成されていることが好ましい。樹脂部材が軟質であることにより、可撓部12は一定の可撓性を有することができる。テンションワイヤ20の張力を大きくしたときには、一のセグメント11は、樹脂部材を介して隣り合うセグメント11に対して圧接力を与える。当該樹脂部材とセグメント11とは接着されていてもよく、接着されていなくてもよい。
【0048】
上述したように、カテーテル1xは、各セグメント11の外径側を覆う外層50、および各セグメント11の内径側を覆う内層60をさらに有する。また、外層50および内層60は、セグメント11に非固定であってセグメント11の表面上を軸方向に相対的に摺動可能であってもよい。ここで、外層50および内層60がセグメント11に非固定であるとは、特に接続セグメント11aよりも基端側のセグメントに外層50および内層60が非固定であることをいう。外層50および内層60は接続セグメント11aに固定されていてもよい。この場合において、
図8(a)に図示されるように、外層50および内層60のそれぞれは、第一層53、63および第二層54、64を含む。第二層54、64は、セグメント11に接触可能であることが好ましい。また、第一層53、63上よりもセグメント11は第二層54、64上を滑らかに摺動可能であることが好ましい。
第一層53、63及び第二層54、64は、軸方向およびセグメント11の周方向に延在する。第一層53、63は、内層60と外層50とが対向する方向(対向方向と呼ぶ)において、第二層54、64よりも外側に配置された層である。対向方向とは、
図8(a)中の上下方向と一致する。対向方向における内側とは、外層50と内層60とに挟まれた空間を向く方向であり、対向方向における外側とは、当該内側と反対の方向である。つまり、第二層54、64は、セグメント11と接触可能に配置されており、第一層53、63は、第二層54、64を挟んでセグメント11とは離間している。言い換えると、外層50における第一層53は、外層50における第二層54よりもカテーテル1xの径方向における外側に配置されている。一方、内層60における第一層63とは、内層60における第二層64よりもカテーテル1xの径方向における内側に配置されている。
第一層53、63上よりもセグメント11は第二層54、64上を滑らかに摺動可能であることにより、セグメント11が外層50と内層60との間の空間において移動するとき、セグメント11は外層50または内層60に引っかかりにくい。
【0049】
第二層54、64がセグメント11に接触可能であるとは、操作部30の操作によってセグメント11が軸方向に移動したときのいずれかのタイミングで第二層54、64がセグメント11に接触可能であればよい。
セグメント11が、第一層53、63上よりも第二層54、64上を滑らかに摺動可能であるとは、第一層53、63上に載置されたセグメント11を押して所定の距離を移動させるために必要な力よりも、第二層54、64上に載置されたセグメント11を押して所定の距離を移動させる為に必要な力の方が小さいことをいう。
セグメント11が第一層53、63上よりも第二層54、64上を滑らかに摺動可能であることは、例えば、第二層54、64が、第一層53、63を形成する材料よりも摩擦係数の小さい材料で形成されることで実現されていてもよい。例えば、第二層54、64は第一層53、63と異なる材質で形成されていることにより、または、第二層54、64の表面粗さが第一層53、63の表面粗さよりも大きいまたは小さいことにより、当該摩擦係数の差が生じていてもよい。他に、第二層54、64がメッシュ材等によって形成されていることにより、セグメント11が第一層53、63上よりも第二層54、64上でより滑らかに摺動可能であってもよい。
【0050】
外層50および内層60は、セグメント11に非固定であってセグメント11の表面上を軸方向に相対的に摺動可能である場合には、カテーテル1xは、外層50および内層60を基端側に牽引するための牽引機構70を備えていてもよい。テンションワイヤ20の張力を大きくした際に、牽引機構70によって外層50および内層60を基端側にたぐり寄せることで、外層50または内層60が隣り合う二つのセグメント11の間で不定形に折畳まれることが発生しにくい。これにより、不定形に折畳まれた外層50または内層60により管腔13の一部が不測に塞がれることや、カテーテル1xの外径が不測に大きくなることが抑制される。
牽引機構70は、操作部30(
図6(a)参照)における操作によって、外層50および内層60を基端側へたぐり寄せることができる機構である。例えば、
図8(b)に図示されるように、可撓部12よりも基端側に配置される外層50の一部および内層60の一部に牽引線72の一端が接続されており、牽引線72の他端が操作部30(
図6(a)参照)に接続されている。操作部30を操作することで、外層50および内層60の基端部を基端側に牽引すると、外層50および内層60は全体的に基端側に摺動することができる。
【0051】
外層50および内層60は、隣り合う二つのセグメント11が近づいたときにより定形に再現性よく折畳まれるようになっていてもよい。外層50および内層60が軸方向に圧縮されて不定形状となった場合に管腔13が塞がれること、またはカテーテル1xの外形が大きくなることが発生し得るが、上述のように外層50または内層60が定形に再現性よく折畳まれることによって、当該事象の発生が抑制される。
例えば、
図9(a)に図示されるように、外層50または内層60は、セグメント11の周方向に沿う折り目56,66を有していてもよい。より具体的には、外層50および内層60は自然状態で、当該折り目56,66を有するように賦形されていてもよい。
図9(a)における折り目は、外層50または内層60が軸方向に山折りまたは谷折りされることを繰り返すことによって、外層50または内層60は蛇腹形状を有している。これにより、
図9(a)における左に示すテンションワイヤ20に張力が加わって右に示す状態となった場合も、外層50および内層60は、山折りおよび谷折りを繰返す蛇腹形状に折畳まれることができる。
または、
図9(b)に図示されるように、外層50または内層60にスリット52,62を設けてもよい。スリット52,62は、セグメント11(カテーテル1x)の周方向に延在している。
図9(b)においては、外層50の両面のそれぞれに、スリット(外側スリット52a、62aおよび内側スリット52b、62b)が設けられている。
図9(b)の左に示すテンションワイヤ20に張力を与えて隣り合う二つのセグメント11が近づくと、
図9(b)の右側に示すように、各スリット52,62が開口して外層50または内層60が当該スリット52,62を起点として折れ曲がりやすくなる。これによって、外層50または内層が定形に折畳まれることができる。
【0052】
可撓部12を覆う外層50または内層60における基端側の一部の曲げ剛性は、可撓部12を覆う外層50または内層60における先端側の一部の曲げ剛性よりも大きくてもよい。これにより、可撓部12における先端部ほど可撓性を高め、可撓部12における基端部ほど曲げ剛性を高めることができる。この段において、可撓部12を覆う外層50または内層60における基端側の一部、または先端側の一部のことを、外層50または内層60における基端部、または先端部という。
例えば、外層50または内層60の基端部の厚さは、外層50または内層60の先端部の厚さよりも大きくてもよい。または、
図9(a)に図示されるように、上述の折り目56,66が設けられている場合は、外層50または内層60の基端部における隣り合う折り目56,66の軸方向の離間距離が、外層50または内層60の先端部における当該離間距離よりも大きくてもよい。
図9(b)に図示されるように、上述のスリット52,62が設けられている場合は、外層50または内層60の基端部における隣り合うスリット52,62の軸方向の離間距離が、外層50または内層60の先端部における当該離間距離よりも大きくてもよい。
あるいは、テンションワイヤ20を基端側に牽引したとき、基端側のセグメント11間距離よりも、先端側のセグメント11間距離の方がより小さくなるように内層60または外層50の延伸性または耐圧性を変化させてもよい。具体的には、上述したように内層60および外層50にセグメント11が固定されており、かつ内層60および外層50が軸方向の延伸性を有する場合には、先端側の内層60および外層50は大きな当該延伸性を有し、基端側の内層60および外層50は先端側の内層60および外層50が有する延伸性よりも小さな延伸性を有していてもよい。または、上述したように内層60および外層50にセグメント11が固定されており、かつ内層60および外層50が軸方向の圧縮によって容易に変形可能な性質を有している場合には、軸方向における同等の圧縮をかけた場合における先端側の内層60および外層の軸方向の変形量が、基端側の内層60および外層の軸方向の変形量よりも大きくなるようにしてもよい。この場合、軸方向における同等の圧縮をかけた場合、先端側の内層60および外層50の軸方向の寸法は、基端側の内層60および外層50の軸方向の寸法よりも小さくなる。
【0053】
図10(b)に図示されるように、本実施形態のカテーテル1xは操作線40を有していてもよい。この場合、操作線40は、第一実施形態同様、セグメント11に設けられた挿通孔113に挿通されている。カテーテル1xの長手方向にみて、挿通孔113と凹凸係合部とは、本体部の周方向にずれて配置されていることが好ましい。より具体的には、本実施形態において一対の凹凸係合部(突出部112)は、図中上下方向に対向している。挿通孔113は、一対の凹凸係合部が対向する方向(図中上下方向)に直交する方向(図中左右方向)において管腔13を挟んで並んで配置されていることが好ましい。また、このとき、テンションワイヤ20が挿通される貫通孔114は凹凸係合部(突出部112)を通るように形成されていてもよい。
【0054】
本実施形態におけるカテーテル1xは第一実施形態におけるガイドワイヤ1と同様に、凹凸係合部を有していてもよい。より具体的には、本実施形態において、一のセグメント11と他のセグメント11とは、突出部112と凹部111とが本体部10の周方向にみて重複するように互いに係合している。
また、突出部112の幅および凹部111の幅は、本体部10の先端に向けて幅狭となっている。
第一セグメント11bに設けられた突出部112または凹部111の幅は、第二セグメント11cに設けられた突出部112または凹部111の幅よりも大きい。
また、カテーテル1xの長手方向における第一セグメント11bの突出部112または凹部111の寸法は、当該方向における第二セグメント11cの突出部112または凹部111の寸法よりも小さい。
さらに、カテーテル1xの長手方向における第一セグメント11bの寸法は、幅方向における第一セグメント11bの寸法よりも小さい。
また、カテーテル1xの長手方向における第一セグメント11bの寸法は、当該長手方向における第二セグメント11cの寸法よりも小さい。
このような構成により、可撓部の先端側の一部が基端側の一部よりも、より大きな可撓性を有することができる。
【0055】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1) 長尺で体内腔に挿入される本体部と前記本体部の基端に形成された操作部とを有するガイドワイヤであって、
前記本体部は、前記本体部の長手方向に連なって前記長手方向において互いに離間または近接可能な複数のセグメントと、前記複数のセグメントの少なくとも一部に挿通される線状部材と、を含み、
前記線状部材は、一端において前記操作部に接続し、他端において一の前記セグメントである接続セグメントに接続しており、
前記接続セグメントと前記操作部との間に渡る前記線状部材の張力を増大させることにより、前記接続セグメントより基端側に配置されて隣り合う二つの前記セグメント間の距離が小さくなる、または前記二つのセグメントが互いに与え合う圧接力が大きくなる、ガイドワイヤ。
(2) 一の前記セグメントは、隣り合う他の前記セグメントと互いに係合する凹凸係合部を有する、(1)に記載のガイドワイヤ。
(3) 前記一の前記セグメントは基端部に前記凹凸係合部として凹部を有し、
前記一の前記セグメントの基端側で前記一の前記セグメントと隣り合う他の前記セグメントは先端部に前記凹凸係合部として突出部を有し、
前記一の前記セグメントと前記他の前記セグメントとは、前記突出部と前記凹部とが前記本体部の周方向にみて重複するように互いに係合している、(2)に記載のガイドワイヤ。
(4) 前記突出部の幅および前記凹部の幅は、前記本体部の先端に向けて幅狭となっている、(3)に記載のガイドワイヤ。
(5) 第一の前記セグメントに設けられた前記突出部または前記凹部の前記幅は、第一の前記セグメントよりも基端側に配置された第二の前記セグメントに設けられた前記突出部または前記凹部の前記幅よりも大きい、(4)に記載のガイドワイヤ。
(6) 前記長手方向における第一の前記セグメントの前記突出部または前記凹部の寸法は、前記長手方向における寸法であって第一の前記セグメントよりも基端側に配置された第二の前記セグメントの前記突出部または前記凹部の寸法よりも小さい、(4)または(5)に記載のガイドワイヤ。
(7) 前記長手方向における第一の前記セグメントの寸法は、前記長手方向に直交する方向における第一の前記セグメントの寸法よりも小さい、(6)に記載のガイドワイヤ。
(8) 前記長手方向における第一の前記セグメントの寸法は、前記長手方向における第二の前記セグメントの寸法よりも小さい、(7)に記載のガイドワイヤ。
(9) 一端が前記本体部の先端部に配置された前記セグメントに連結され、他端が前記操作部に連結された少なくとも一つの屈曲操作用の第二線状部材を有し、
前記第二線状部材は、前記長手方向にみた前記セグメントの外縁部に設けられた挿通孔に挿通されており、
前記長手方向にみて前記挿通孔と前記凹凸係合部とは、前記本体部の周方向にずれて配置されている、(2)から(5)のいずれか一項に記載のガイドワイヤ。
(10)長尺で体内腔に挿入されて管腔を有する本体部と前記本体部の基端に形成された操作部とを有するカテーテルであって、
前記本体部は、前記本体部の長手方向に連なって前記長手方向において互いに離間または近接可能な複数のセグメントと、前記複数のセグメントの少なくとも一部に挿通される線状部材と、を含み、
前記線状部材は、一端において前記操作部に接続し、他端において一の前記セグメントである接続セグメントに接続しており、
前記接続セグメントと前記操作部との間に渡る前記線状部材の張力を増大させることにより、前記接続セグメントより基端側に配置されて隣り合う二つの前記セグメント間の距離が小さくなる、または前記二つのセグメントが互いに与え合う圧接力が大きくなる、カテーテル。
(11)前記カテーテルは、
各セグメントの外径側を覆う外層および、各セグメントの内径側を覆う内層をさらに有し、
前記外層および前記内層は、前記セグメントに非固定であって前記セグメントの表面上を軸方向に相対的に摺動可能であり、
前記外層および前記内層のそれぞれは、第一層、および前記セグメントに接触可能であって前記第一層上よりも前記セグメントが滑らかに摺動可能である第二層を含む、(10)に記載のカテーテル。
(12)前記カテーテルは、
各セグメントの外径側を覆う外層および、各セグメントの内径側を覆う内層をさらに有し、
前記外層および前記内層は、前記セグメントの周方向に沿う折り目を有する、(10)に記載のカテーテル。
【符号の説明】
【0056】
1 ガイドワイヤ
1x カテーテル
10 本体部
11 セグメント
11a 接続セグメント
11b 第一セグメント
11c 第二セグメント
11d 基端セグメント
11e 隣接セグメント
111 凹部
111a 凹部壁部
112 突出部
112a 突出壁部
113 挿通孔
114 貫通孔
12 可撓部
13 管腔
20 テンションワイヤ、先端側テンションワイヤ、基端側テンションワイヤ、線状部材
21 渡り部
22 第一テンションワイヤ
24 第二テンションワイヤ
30 操作部
31 捩り部
31a 雄ねじ
32 雌ねじ部
32a 雌ねじ
40 操作線、第二線状部材
50 外層
52 スリット
52a 外側スリット
52b 内側スリット
53 第一層
54 第二層
56 折り目
58 中空部
60 内層
62 スリット
62a 外側スリット
62b 内側スリット
63 第一層
64 第二層
66 折り目
70 牽引機構
72 牽引線