(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144205
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】ヒーターエレメント組立物
(51)【国際特許分類】
H05B 3/14 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
H05B3/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024037400
(22)【出願日】2024-03-11
(31)【優先権主張番号】P 2023056760
(32)【優先日】2023-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】宮入 由紀夫
(72)【発明者】
【氏名】昆野 由規
【テーマコード(参考)】
3K092
【Fターム(参考)】
3K092PP15
3K092QA08
3K092QB05
3K092QB21
3K092QB37
3K092VV31
3K092VV34
(57)【要約】
【課題】PTC特性をもつハニカム構造部を備えるヒーターエレメント及び枠体を備えるヒーターエレメント組立物であって、当該ヒーターエレメントに対する保護性能に優れ、且つ、熱損低減にも寄与するヒーターエレメント組立物を提供する。
【解決手段】ヒーターエレメント、緩衝材及び枠体を備えるヒーターエレメント組立物であって、前記ヒーターエレメントは、外周壁と、前記外周壁の内周側に配設され、第一端面から第二端面まで延びる流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁であって、PTC特性を有する材料を含有する隔壁とを有し、通電発熱可能なハニカム構造部を備え;前記枠体は、前記ハニカム構造部の前記外周壁の外周面に、前記緩衝材を介して嵌合する内周面をもつ樹脂製の第一枠部を有する、ヒーターエレメント組立物。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒーターエレメント、緩衝材及び枠体を備えるヒーターエレメント組立物であって、
前記ヒーターエレメントは、
外周壁と、前記外周壁の内周側に配設され、第一端面から第二端面まで延びる流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁であって、PTC特性を有する材料を含有する隔壁とを有し、通電発熱可能なハニカム構造部;
前記第一端面を形成する隔壁の表面の一部又は全部を被覆する第一電極層;
前記第二端面を形成する隔壁の表面の一部又は全部を被覆する第二電極層;
前記第一電極層の外表面に接続されている第一端子;及び
前記第二電極層の外表面に接続されている第二端子;
を有し、
前記枠体は、
前記ハニカム構造部の前記外周壁の外周面に、前記緩衝材を介して嵌合する内周面をもつ樹脂製の第一枠部を有する、
ヒーターエレメント組立物。
【請求項2】
前記第一枠部を構成する樹脂は、ASTM D785-2008 R15に準拠して測定されるロックウェル硬さが150HRR以下であるか、及び/又は、120HRM以下である請求項1に記載のヒーターエレメント組立物。
【請求項3】
前記第一枠部を構成する樹脂は、JIS K7191-1:2015に準拠して測定される荷重たわみ温度が145℃以上である請求項1又は2に記載のヒーターエレメント組立物。
【請求項4】
前記第一枠部を構成する樹脂は、融点が250℃以上である請求項1又は2に記載のヒーターエレメント組立物。
【請求項5】
前記第一枠部を構成する樹脂は、JIS R1611:2010に準拠して測定される25℃における熱伝導率が0.5W/m/K以下である請求項1又は2に記載のヒーターエレメント組立物。
【請求項6】
前記第一枠部を構成する樹脂は、JIS C2139:2008に準拠して測定される25℃における体積抵抗率が1.0×1016Ω・cm以上である請求項1又は2に記載のヒーターエレメント組立物。
【請求項7】
前記第一枠部を構成する樹脂は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)及びポリブチレンテレフタレート(PBT)から選択される一種又は二種を含有する請求項1又は2に記載のヒーターエレメント組立物。
【請求項8】
前記緩衝材のヤング率が0.05~0.3MPaである請求項1又は2に記載のヒーターエレメント組立物。
【請求項9】
前記緩衝材がシリコンゴムスポンジ製である請求項1又は2に記載のヒーターエレメント組立物。
【請求項10】
前記緩衝材の圧縮方向の厚みが0.5~5.0mmである請求項1又は2に記載のヒーターエレメント組立物。
【請求項11】
前記第一端面及び前記第二端面の面積が50~150cm2である請求項1又は2に記載のヒーターエレメント組立物。
【請求項12】
前記第一端面の外周輪郭よりも内周側に向かって延設され、前記第一端面の外周部の少なくとも一部を囲う樹脂製の第二枠部と、
前記第二端面の外周輪郭よりも内周側に向かって配設され、前記第二端面の外周部の少なくとも一部を囲う樹脂製の第三枠部と、
を有する請求項1又は2に記載のヒーターエレメント組立物。
【請求項13】
前記第二枠部が前記第一端面を囲う領域の幅は、前記第一端面の外周輪郭から前記第一端面の重心に向かう方向の長さで表して10mm以下である、及び/又は
前記第三枠部が前記第二端面を囲う領域の幅は、前記第二端面の外周輪郭から前記第二端面の重心に向かう方向の長さで表して10mm以下である、
請求項12に記載のヒーターエレメント組立物。
【請求項14】
前記枠体は、一対の半割れ部材が、前記ハニカム構造部の前記流路の延びる方向に対して垂直な方向から連結することによって形成されている請求項1又は2に記載のヒーターエレメント組立物。
【請求項15】
前記一対の半割れ部材は、嵌合構造によって連結されている請求項14に記載のヒーターエレメント組立物。
【請求項16】
前記枠体は、前記第一枠部を有する樹脂製の第一管状分割部と、前記第一管状分割部の内周面に嵌合可能な外周面を有する樹脂製の第二管状分割部とが、前記ハニカム構造部の前記流路の延びる方向に対して平行な方向から連結することによって形成されている請求項1又は2に記載のヒーターエレメント組立物。
【請求項17】
前記第一管状分割部の内周面は、前記ハニカム構造部の前記外周壁の外周面に前記緩衝材を介して嵌合する第一内周面と、前記第一内周面の一端に連結し、前記第一内周面の一端から遠ざかるにつれて拡径する第二内周面と、前記第二内周面の一端に連結し、前記第二内周面の一端から遠ざかるにつれて縮径する第三内周面とを有し、
前記第二管状分割部の外周面は、前記第二内周面に嵌合する第一外周面と、前記第三内周面に嵌合する第二外周面を有する、
請求項16に記載のヒーターエレメント組立物。
【請求項18】
前記ハニカム構造部の前記隔壁の少なくとも一部並びに前記第一電極層及び第二電極層の少なくとも一部が、水、二酸化炭素、及び有機ガス成分から選択される一種又は二種以上を吸着可能な吸着剤で被覆されている請求項1又は2に記載のヒーターエレメント組立物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒーターエレメント及び枠体を備えるヒーターエレメント組立物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の各種車両において、車室環境の改善に対する要求が高まっている。具体的な要求としては、車室内のCO2を低減して運転者の眠気を抑制すること、車室内を調湿すること、及び、車室内のにおい成分やアレルギー誘因成分等の有害な揮発成分を除去すること等が挙げられる。このような要求に有効な対策として換気が挙げられるが、換気は、冬場のヒーターエネルギーを大きくロスする要因となり、冬場のエネルギー効率の悪化を招く。特に電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)では、そのエネルギーロスにより、航続距離が大幅に減少するという問題がある。
【0003】
そこで、特許文献1及び特許文献2には、車室の空気中の水蒸気及びCO2等の除去対象成分を吸着材等の機能材に捕捉した後、加熱によって除去対象成分を反応又は離脱させて車外に放出し、機能材を再生する車室浄化システムが開示されている。このような車室浄化システムでは、除去対象成分の捕捉性能を確保するために空気と機能材との接触ができるだけ多いこと、及び機能材の再生を促進するために機能材を所定の温度に加熱できることが求められる。再生は、例えば、機能材に吸着した物質を酸化反応により除去する方法、及び、機能材に吸着した物質を脱離させて排出する方法等により行われるが、何れにしても吸着物質に応じて機能材を適切な温度に加熱することが必要である。
【0004】
加熱手段としては、熱効率の観点から蒸気圧縮ヒートポンプが優れているが、蒸気圧縮ヒートポンプは外気が極低温の時に作動が困難であること、及び車両始動時に急速に車室を温めることが困難であるといった問題がある。そこで、蒸気圧縮ヒートポンプを主たる加熱装置として使用しつつ、車両始動時の急速加熱が必要なときや外気温が非常に低い時に、ジュール熱を利用したヒーターエレメントを補助的に活用することは実用的であると考えられる。
【0005】
しかしながら、ジュール熱を利用したヒーターエレメントは、大型化し易く、車内スペースを圧迫するという問題がある。このため、よりコンパクトなヒーターエレメントが提供されることが望ましい。この点、PTC特性をもつハニカム構造部を備えるヒーターエレメントは、単位体積当たりの熱伝達面積を大きくすることができ、また、過剰発熱を防止できるため有利であることが知られている(特許文献3)。
【0006】
特許文献3には、外周側壁と、外周側壁の内側に配設され、第1の底面から第2の底面まで流路を形成する複数のセルを区画形成するPTC特性をもつ隔壁と、を有する柱状ハニカム構造部を備えるヒーターエレメントが記載されている。特許文献3には、一対の電極をヒーターエレメントに接合した上で、一対の電極間に電圧を印加することで発熱させることも記載されている。
【0007】
また、特許文献4には、多数の貫通孔を有する正特性磁器により発熱体の全部または一部を構成し、その貫通孔に気体又は液体を対流させる手段を備えたことを特徴とする発熱装置が記載されている。そして、正特性磁器(PTCR)とファンを円筒状の枠の中に対置させ、PTCRを耐熱性の絶縁性支持体で枠に固定したことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2020-104774号公報
【特許文献2】特開2020-111282号公報
【特許文献3】国際公開第2020/036067号
【特許文献4】特開昭49-114130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
PTC特性をもつハニカム構造部を備えるヒーターエレメントを車両に設置する場合は、車両の空調システムであるHVAC内の通風路内に設置されることが想定される。この場合、ヒーターエレメントを枠体で保護した状態で設置することが好ましいと考えられる。この点、特許文献4にはPTCRを耐熱性の絶縁性支持体で枠に固定したことが記載されているものの、PTCRの保護及び熱損低減の観点では検討が不十分である。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みて創作されたものであり、一実施形態において、PTC特性をもつハニカム構造部を備えるヒーターエレメント及び枠体を備えるヒーターエレメント組立物であって、当該ヒーターエレメントに対する保護性能に優れ、且つ、熱損低減及び熱応力低減にも寄与するヒーターエレメント組立物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、PTC特性をもつハニカム構造部を備えるヒーターエレメントを、外周面側から緩衝材を介して樹脂製の枠体で保護することが有利であることを見出した。当該知見に基づき完成した本発明は以下のように例示される。
【0012】
[1]
ヒーターエレメント、緩衝材及び枠体を備えるヒーターエレメント組立物であって、
前記ヒーターエレメントは、
外周壁と、前記外周壁の内周側に配設され、第一端面から第二端面まで延びる流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁であって、PTC特性を有する材料を含有する隔壁とを有し、通電発熱可能なハニカム構造部;
前記第一端面を形成する隔壁の表面の一部又は全部を被覆する第一電極層;
前記第二端面を形成する隔壁の表面の一部又は全部を被覆する第二電極層;
前記第一電極層の外表面に接続されている第一端子;及び
前記第二電極層の外表面に接続されている第二端子;
を有し、
前記枠体は、
前記ハニカム構造部の前記外周壁の外周面に、前記緩衝材を介して嵌合する内周面をもつ樹脂製の第一枠部を有する、
ヒーターエレメント組立物。
[2]
前記第一枠部を構成する樹脂は、ASTM D785-2008 R15に準拠して測定されるロックウェル硬さが150HRR以下であるか、及び/又は、120HRM以下である[1]に記載のヒーターエレメント組立物。
[3]
前記第一枠部を構成する樹脂は、JIS K7191-1:2015に準拠して測定される荷重たわみ温度が145℃以上である[1]又は[2]に記載のヒーターエレメント組立物。
[4]
前記第一枠部を構成する樹脂は、融点が250℃以上である[1]~[3]の何れか一項に記載のヒーターエレメント組立物。
[5]
前記第一枠部を構成する樹脂は、JIS R1611:2010に準拠して測定される25℃における熱伝導率が0.5W/m/K以下である[1]~[4]の何れか一項に記載のヒーターエレメント組立物。
[6]
前記第一枠部を構成する樹脂は、JIS C2139:2008に準拠して測定される25℃における体積抵抗率が1.0×1016Ω・cm以上である[1]~[5]の何れか一項に記載のヒーターエレメント組立物。
[7]
前記第一枠部を構成する樹脂は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)及びポリブチレンテレフタレート(PBT)から選択される一種又は二種を含有する[1]~[6]の何れか一項に記載のヒーターエレメント組立物。
[8]
前記緩衝材のヤング率が0.05~0.3MPaである[1]~[7]の何れか一項に記載のヒーターエレメント組立物。
[9]
前記緩衝材がシリコンゴムスポンジ製である[1]~[8]の何れか一項に記載のヒーターエレメント組立物。
[10]
前記緩衝材の圧縮方向の厚みが0.5~5.0mmである[1]~[9]の何れか一項に記載のヒーターエレメント組立物。
[11]
前記第一端面及び前記第二端面の面積が50~150cm2である[1]~[10]の何れか一項に記載のヒーターエレメント組立物。
[12]
前記第一端面の外周輪郭よりも内周側に向かって延設され、前記第一端面の外周部の少なくとも一部を囲う樹脂製の第二枠部と、
前記第二端面の外周輪郭よりも内周側に向かって配設され、前記第二端面の外周部の少なくとも一部を囲う樹脂製の第三枠部と、
を有する[1]~[11]の何れか一項に記載のヒーターエレメント組立物。
[13]
前記第二枠部が前記第一端面を囲う領域の幅は、前記第一端面の外周輪郭から前記第一端面の重心に向かう方向の長さで表して10mm以下である、及び/又は
前記第三枠部が前記第二端面を囲う領域の幅は、前記第二端面の外周輪郭から前記第二端面の重心に向かう方向の長さで表して10mm以下である、
[12]に記載のヒーターエレメント組立物。
[14]
前記枠体は、一対の半割れ部材が、前記ハニカム構造部の前記流路の延びる方向に対して垂直な方向から連結することによって形成されている[1]~[13]の何れか一項に記載のヒーターエレメント組立物。
[15]
前記一対の半割れ部材は、嵌合構造によって連結されている[14]に記載のヒーターエレメント組立物。
[16]
前記枠体は、前記第一枠部を有する樹脂製の第一管状分割部と、前記第一管状分割部の内周面に嵌合可能な外周面を有する樹脂製の第二管状分割部とが、前記ハニカム構造部の前記流路の延びる方向に対して平行な方向から連結することによって形成されている[1]~[15]の何れか一項に記載のヒーターエレメント組立物。
[17]
前記第一管状分割部の内周面は、前記ハニカム構造部の前記外周壁の外周面に前記緩衝材を介して嵌合する第一内周面と、前記第一内周面の一端に連結し、前記第一内周面の一端から遠ざかるにつれて拡径する第二内周面と、前記第二内周面の一端に連結し、前記第二内周面の一端から遠ざかるにつれて縮径する第三内周面とを有し、
前記第二管状分割部の外周面は、前記第二内周面に嵌合する第一外周面と、前記第三内周面に嵌合する第二外周面を有する、
[16]に記載のヒーターエレメント組立物。
[18]
前記ハニカム構造部の前記隔壁の少なくとも一部並びに前記第一電極層及び第二電極層の少なくとも一部が、水、二酸化炭素、及び有機ガス成分から選択される一種又は二種以上を吸着可能な吸着剤で被覆されている[1]~[17]の何れか一項に記載のヒーターエレメント組立物。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一実施形態に係るヒーターエレメント組立物よれば、樹脂製の枠体が、PTC特性をもつハニカム構造部を備えるヒーターエレメントを、外周面側から緩衝材を介して保護する。このことにより、例えば以下のような効果が得られる。
(1)枠体が金属に比べて柔らかい樹脂製であり、且つ、緩衝材が介在することで、ヒーターエレメントに破損が生じに難くなる。
(2)緩衝材が介在することでヒーターエレメントが熱変形しやすく、熱応力が低減される。
(3)樹脂は金属に比べて一般に熱伝導率が低いので、枠体を樹脂製としたことで、熱損が低減される。
(4)枠体は外周面側からヒーターエレメントを保護しているので、ヒーターエレメントを保護するために枠体によってセルの開口を塞ぐ必要はない。枠体がヒーターエレメントの端面側を補助的に保護する場合でも、セルの開口を塞ぐ面積は最小限にすることができる。このため、ヒーターエレメントの性能(加熱性能、浄化性能等)を十分に発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1A】本発明の一実施形態に係るヒーターエレメントを第一端面側から見たときの模式図である。
【
図1C】本発明の別の実施形態に係るヒーターエレメントを第一端面側から見たときの模式図である。
【
図2A】ヒーターエレメントを外周壁の外周面側から保持する枠体を備えるヒーターエレメント組立物の例を第一端面側から見たときの模式図である。
【
図2C】一対の半割れ部材が、ヒーターエレメントを挟んで、ハニカム構造部の流路の延びる方向に対して垂直な方向から近づく様子を模式的に示す図である。
【
図3A】ヒーターエレメントを外周壁の外周面側から保持する枠体を備えるヒーターエレメント組立物の別の例を第一端面側から見たときの模式図である。
【
図4A】ヒーターエレメントを外周壁の外周面側からから保持する枠体を備えるヒーターエレメント組立物の更に別の例を第一端面側から見たときの模式図である。
【
図4C】第一管状分割部及び第二管状分割部が、ヒーターエレメントを挟んで、ハニカム構造部の流路の延びる方向に対して平行な方向から近づく様子を模式的に示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る空調システムの構成例を示す模式図である。
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施形態に対し変更、改良等が適宜加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0016】
(1.ヒーターエレメント)
本発明の実施形態に係るヒーターエレメントは、自動車等の各種車両における室内環境の改善のために好適に使用できる。車両としては、特に限定されないが、自動車及び電車が挙げられる。自動車としては、特に限定されないが、ガソリン車、ディーゼル車、CNG(圧縮天然ガス)やLNG(液化天然ガス)等を用いるガス燃料車、燃料電池自動車、電気自動車及びプラグインハイブリッド自動車が挙げられる。本発明の実施形態に係るヒーターエレメントは、特に電気自動車及び電車のような内燃機関を持たない車両に好適に利用可能である。
【0017】
また、本発明の実施形態に係るヒーターエレメントは、車両以外にも、住宅、オフィス、工場、店舗、倉庫、冷凍庫のような建築物、及び、船舶、飛行機のような乗り物の室内空間の改善のために使用できる。
【0018】
本発明の実施形態に係るヒーターエレメントは、暖房目的に使用できるのはもちろん、空気中の除去対象成分を除去する機能を付加することができ、室内環境の改善に寄与することが可能となる。例えば、当該ヒーターエレメントのセル内部の流路を形成する隔壁の表面に水蒸気、二酸化炭素、及びにおい成分といった空気中の除去対象成分を吸着する機能等を有する機能材含有層を設けることで、当該機能を付加可能である。
【0019】
図1Aには、本発明の一実施形態に係るヒーターエレメント100を第一端面側から見たときの模式図が示されている。
図1Bには、
図1Aの模式的なX-X線断面図が示されている。
図1Cには、本発明の別の実施形態に係るヒーターエレメント100を第一端面側から見たときの模式図が示されている。
図1Dには、
図1Cの模式的なX-X線断面図が示されている。
【0020】
ヒーターエレメント100は、外周壁103と、外周壁103の内周側に配設され、第一端面101aから第二端面101bまで延びる流路を形成する複数のセル104を区画形成する隔壁106とを有するハニカム構造部を備える。
ヒーターエレメント100は、第一端面101aを形成する隔壁106の表面の一部又は全部を被覆する第一電極層102aと、第二端面101bを形成する隔壁106の表面の一部又は全部を被覆する第二電極層102bとを備える。
ヒーターエレメント100は、第一電極層102aの外表面の一部を被覆する(これにより、第一端面101aを間接的に被覆する)第一機能材含有層107aと、第二電極層102bの外表面の一部を被覆する(これにより、第二端面101bを間接的に被覆する)第二機能材含有層107bとを備える。
ヒーターエレメント100は、第一電極層102aの外表面(第一機能材含有層107aが設けられている場合は、第一電極層102aの外表面のうち、第一機能材含有層107aによって被覆されていない部分であることが好ましい。)に接続されている第一端子109aと、第二電極層102bの外表面(第二機能材含有層107bが設けられている場合は、第二電極層102bの外表面のうち、第二機能材含有層107bによって被覆されていない部分であることが好ましい。)に接続されている第二端子109bとを備える。
ヒーターエレメント100は、第一端子109aの外表面の一部を被覆する第三機能材含有層111aと、第二端子109bの外表面の一部を被覆する第四機能材含有層111bとを備える。
ヒーターエレメント100は、セル104内部の流路を形成する隔壁106の表面の一部又は全部を被覆する第五機能材含有層113を備える。
以下、ヒーターエレメント100の構成について詳細に説明する。
【0021】
(1-1.ハニカム構造部)
ハニカム構造部の形状は、特に限定されない。例えば、ハニカム構造部の流路の延びる方向(セル104の延びる方向)に直交する断面の外形を、多角形(四角形(長方形、正方形)、五角形、六角形、七角形、八角形等)、ラウンド形状(円形、楕円形、オーバル形、卵形、長円形、丸みのある四角形(各辺及び各角が曲線で構成され、各辺の曲率半径が各角の曲率半径よりも大きい、全体的に曲線で構成された四角形)等)等にすることができる。また、当該断面の外形が多角形の場合、角部は面取りしてもよい。ハニカム構造部の破損防止、及び、外周面に緩衝材を巻き付けやすいという理由により、角部は特にR面取りされた形状とすることが好ましく、曲率半径が5mm以下の角部を有しないことがより好ましく、角部の曲率半径が10mm以上であることが更により好ましく、20mm以上であることが更により好ましい。角部の曲率半径の上限は、限定的ではないが、40mm以下とすることができ、30mm以下とすることが典型的である。ヒーターエレメント100の角部の曲率半径が小さい場合等には角部の緩衝材を省いてもよいが、緩衝材を省いた箇所にガスのバイパス流れが発生しないように、枠体が当該箇所を被覆するバッフルを有することが好ましい。
なお、端面(第一端面101a及び第二端面101b)は、当該断面と同一の形状である。
図1A及び
図1Bに示すヒーターエレメント100は、ハニカム構造部の当該断面の外形が円形であり、ハニカム構造部の外形は全体として円柱状である。
図1C及び
図1Dに示すヒーターエレメント100は、ハニカム構造部の当該断面の外形がR面取りされた長方形であり、ハニカム構造部の外形は全体としてR面取りされた四角柱状である。
【0022】
セル104の開口形状は、特に限定されないが、ハニカム構造部の流路の延びる方向に直交する断面において、多角形(四角形(長方形、正方形)、五角形、六角形、七角形、八角形等)、ラウンド形状(円形、楕円形、オーバル形、卵形、長円形等)等にすることができる。これらの形状は、単一であってもよいし、又は二種以上を組み合わせてもよい。また、これらの形状の中でも四角形又は六角形が好ましい。このような形状のセル104を設けることにより、空気が流通する際の圧力損失を小さくすることができる。セル104の開口形状が多角形の場合、角部はR面取りしてもよい。なお、図示のヒーターエレメント100は、セル104の開口形状が正方形である。
【0023】
ハニカム構造部は、複数のハニカムセグメントと、複数のハニカムセグメントの外周面同士間を接合する接合層とを有するハニカム接合体であってもよい。ハニカム接合体を用いることにより、クラックの発生を抑えながら空気の流量確保に重要なセル104の総断面積を増やすことが可能となる。接合層は、接合材を用いて形成することができる。接合材としては、特に限定されないが、セラミックス材料に、水等の溶媒を加えてペースト状にしたものを用いることができる。接合材は、PTC特性を有する材料を含有してもよく、外周壁103及び隔壁106と同一の材料を含有してもよい。接合材は、ハニカムセグメント同士を接合する役割に加えて、ハニカムセグメントを接合した後の外周コート材として用いることも可能である。
【0024】
ハニカム構造部の強度確保、空気がセル104を通過する際の圧力損失の低減、機能材の担持量確保、及び、セル104内を流れる空気との接触面積の確保、端面間の電気抵抗等の観点から、隔壁106の厚さ、セル密度、及びセルピッチ(又はセルの開口率)を好適に組み合わせることが望ましい。
本明細書において隔壁106の厚さとは、流路の延びる方向に直交する断面において、隣接するセル104の重心同士を線分で結んだときに当該線分が隔壁106を横切る長さを指す。隔壁106の厚さは、全ての隔壁106の厚さの平均値を指す。
本明細書においてセル密度とは、ハニカム構造部の一方の端面の面積(外周壁103を除く隔壁106及びセル104の合計面積)でセル数を除して得られる値である。
本明細書においてセルピッチとは、以下の計算によって求められる値を指す。まず、セル数で、ハニカム構造部の一方の端面の面積(外周壁103を除く隔壁106及びセル104の合計面積)を除して1セル当たりの面積を算出する。次いで、1セル当たりの面積の平方根を算出し、これをセルピッチとする。
本明細書においてセル104の開口率とは、ハニカム構造部の流路の延びる方向に直交する断面において、隔壁106によって区画されるセル104の合計面積を、一方の端面の面積(外周壁103を除く隔壁106及びセル104の合計面積)で除して得られた値である。なお、セル104の開口率を算出するに当たり、電極層及び機能材含有層のような隔壁106上に設けられる層は考慮しない。
【0025】
十分な量の機能材を担持する観点で有利な実施形態においては、隔壁の厚さが0.180mm以下、セル密度が100セル/cm2以下、且つ、セルピッチが1.0mm以上である。好ましい実施形態においては、隔壁の厚さが0.130mm以下、セル密度が70セル/cm2以下、且つ、セルピッチが1.2mm以上である。より好ましい実施形態においては、隔壁の厚さが0.100mm以下、セル密度が65セル/cm2以下、且つ、セルピッチが1.3mm以上である。
【0026】
上記の各実施形態において、ハニカム構造部の強度を確保すること、及び電気抵抗を低く保つ観点から、隔壁の厚さの下限は、0.010mm以上であることが好ましく、0.020mm以上であることがより好ましく、0.030mm以上であることが更により好ましい。
上記の各実施形態において、ハニカム構造部の強度を確保すること、電気抵抗を低く保つこと、及び表面積を増やして機能材による反応、吸着、離脱を促進する観点から、セル密度の下限は、30セル/cm2以上であることが好ましく、35セル/cm2以上であることがより好ましく、40セル/cm2以上であることが更により好ましい。
上記の各実施形態において、ハニカム構造部の強度を確保すること、電気抵抗を低く保つこと、及び表面積を増やして機能材による反応、吸着、離脱を促進する観点から、セルピッチの上限は、2.0mm以下であることが好ましく、1.8mm以下であることがより好ましく、1.6mm以下であることが更により好ましい。
【0027】
圧力損失の低減と強度の維持とを両立する観点で有利な実施形態においては、隔壁の厚さが0.08mm以上0.36mm以下、セル密度が2.54セル/cm2以上140セル/cm2以下、セルの開口率が0.70以上である。好ましい実施形態においては、隔壁の厚さが0.09mm以上0.35mm以下、セル密度が15セル/cm2以上100セル/cm2以下、セルの開口率が0.75以上である。より好ましい実施形態においては、隔壁の厚さが0.10mm以上0.30mm以下、セル密度が20セル/cm2以上90セル/cm2以下、セルの開口率が0.77以上である。
【0028】
上記の各実施形態において、ハニカム構造部の強度を確保する観点から、セルの開口率の上限は、0.94以下であることが好ましく、0.92以下であることがより好ましく、0.90以下であることが更により好ましい。
【0029】
外周壁103の厚さは、特に限定されないが、次の観点に基づいて決定することが好ましい。まず、ハニカム構造部を補強するという観点から、外周壁103の厚さは、好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.06mm以上、更に好ましくは0.08mm以上である。一方、電気抵抗を大きくして初期電流を抑える観点、及び空気が流通する際の圧力損失を低減する観点から、外周壁103の厚さは、好ましくは1.0mm以下、より好ましくは0.5mm以下、更に好ましくは0.4mm以下、更により好ましくは0.3mm以下である。
本明細書において外周壁103の厚さとは、流路の延びる方向に直交する断面において、外周壁103と最も外周側のセル104又は隔壁106との境界からハニカム構造部の外周面までの、当該外周面の法線方向の長さを指す。
【0030】
ハニカム構造部の流路の延びる方向の長さ及び流路の延びる方向に直交する断面積は、要求されるヒーターエレメントのサイズに合わせて調整すればよく、特に限定されない。例えば、所定の機能を確保しつつコンパクトなヒーターエレメントに用いられる場合、ハニカム構造部は、流路の延びる方向の長さを2~50mm、典型的には5~50mm、流路の延びる方向に直交する断面積を30~400cm2、典型的には50~150cm2とすることができる。
【0031】
ハニカム構造部を構成する隔壁106は、通電によって発熱可能な材料で構成されており、具体的にはPTC(Positive Temperature Coefficient)特性を有する材料で構成される。必要に応じて外周壁103も隔壁106と同様にPTC特性を有する材料で構成されていてもよい。
【0032】
隔壁106上に機能材含有層を設ける場合、発熱する隔壁106(及び必要に応じて外周壁103)からの伝熱によって機能材含有層を加熱することが可能である。また、PTC特性を有する材料は、温度が上昇してキュリー点を超えると、急激に抵抗値が上昇して電気が流れ難くなるという特性を有する。そのため、隔壁106(及び必要に応じて外周壁103)は、ヒーターエレメント100が高温になったときに、これらに流れる電流が制限されるので、ヒーターエレメント100の過剰な発熱が抑制される。したがって、過剰な発熱に起因する機能材含有層の熱劣化を抑制することも可能である。
【0033】
PTC特性を有する材料の25℃における体積抵抗率の下限は、適度な発熱を得る観点からは、0.5Ω・cm以上であることが好ましく、1Ω・cm以上であることがより好ましく、5Ω・cm以上であることが更に好ましく、10Ω・cm以上であることが更により好ましい。PTC特性を有する材料の25℃における体積抵抗率の上限は、低い駆動電圧で発熱させるという観点からは、30Ω・cm以下であることが好ましく、20Ω・cm以下であることが好ましく、18Ω・cm以下であることがより好ましく、16Ω・cm以下であることが更に好ましい。従って、PTC特性を有する材料の25℃における体積抵抗率の範囲は、例えば10Ω・cm以上30Ω・cm以下とすることができる。本明細書において、PTC特性を有する材料の25℃における体積抵抗率はJIS K6271:2008に従って測定される。
【0034】
通電発熱可能であり、且つ、PTC特性を有するという観点から、外周壁103及び隔壁106は、チタン酸バリウム(BaTiO3)を主成分とする材料であることが好ましく、Baの一部が希土類元素で置換されたチタン酸バリウム(BaTiO3)系結晶粒子を主成分とする材料で構成されるセラミックスであることがより好ましい。なお、本明細書において「主成分」とは、成分全体に占める割合が50質量%を超える成分のことを意味する。BaTiO3系結晶粒子の含有量は、蛍光X線分析により求めることができる。その他の結晶粒子についても、この方法と同様にして測定することができる。
【0035】
Baの一部が希土類元素で置換されたBaTiO3系結晶粒子の組成式は、(Ba1-xAx)TiO3で表すことができる。組成式中、Aは一種以上の希土類元素を表し、0.0001≦x≦0.010である。
Aは、希土類元素であれば特に限定されないが、好ましくはLa、Ce、Pr、Nd、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Y及びYbからなる群から選択される一種以上であり、より好ましくはLaである。xは、室温における電気抵抗が高くなり過ぎることを抑制する観点から、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.0015以上である。一方、xは、焼結不足となって室温における電気抵抗が高くなりすぎることを抑制する観点から、好ましくは0.009以下である。
【0036】
Baの一部が希土類元素で置換されたBaTiO3系結晶粒子のセラミックスにおける含有量は、主成分となる量であれば特に限定されないが、好ましくは90質量%以上、より好ましくは92質量%以上、更により好ましくは94質量%以上である。なお、BaTiO3系結晶粒子の含有量の上限値は、特に限定されないが、一般的に99質量%以下、好ましくは98質量%以下である。
【0037】
外周壁103及び隔壁106に用いられる材料は、環境負荷を軽減するという観点から、鉛(Pb)を実質的に含まないことが望ましい。具体的には、外周壁103及び隔壁106は、Pb含有量が、好ましくは0.01質量%以下、より好ましくは0.001質量%以下、更に好ましくは0質量%である。Pb含有量が少ないことにより、例えば、発熱中の隔壁106に接触させることで加温された空気をヒト等の生物に安全に当てることができる。なお、外周壁103及び隔壁106において、Pb含有量は、PbOに換算すると、好ましくは0.03質量%未満、より好ましくは0.01質量%未満、更に好ましくは0質量%である。鉛の含有量は、ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析)により求めることができる。
【0038】
外周壁103及び隔壁106を構成する材料のキュリー点の下限は、空気を効率良く加熱する観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上、更に好ましくは125℃以上である。また、キュリー点の上限については、室内、特に車室又は車室近傍に置かれる部品としての安全性の観点から、好ましくは250℃以下であり、より好ましくは225℃以下であり、更に好ましくは200℃以下であり、更により好ましくは150℃以下であり、更により好ましくは130℃以下である。従って、外周壁103及び隔壁106を構成する材料のキュリー点の範囲は、例えば100℃以上130℃以下とすることができる。
【0039】
外周壁103及び隔壁106を構成する材料のキュリー点は、シフターの種類及び添加量によって調整可能である。例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)のキュリー点は約120℃であるが、Ba及びTiの一部をSr、Sn及びZrの一種以上で置換することにより、キュリー点を低温側にシフトさせることができる。
【0040】
本明細書において、キュリー点は以下の方法により測定される。試料を測定用の試料ホルダーに取りつけ、測定槽(例:MINI-SUBZERO MC-810P エスペック株式会社製)内に装着して、10℃から昇温したときの温度変化に対する試料の電気抵抗の変化を、直流抵抗計(例:マルチメーター3478A YOKOGAWA HEWLETT PACKARD,LTD製)を用いて測定する。測定により得られた電気抵抗-温度プロットにより、抵抗値が室温(20℃)における抵抗値の2倍になるときの温度をキュリー点とする。
【0041】
(1-2.電極層)
第一電極層102aは第一端面101a上に設けられ、第二電極層102bは、第二端面101b上に設けられる。第一電極層102a及び第二電極層102bの間に電圧を印加することで、ジュール熱によりハニカム構造部を発熱させることが可能となる。
【0042】
具体的には、第一電極層102aは、第一端面101aを形成する隔壁106の表面の一部又は全部を被覆する。第二電極層102bは、第二端面101bを形成する隔壁106の表面の一部又は全部を被覆する。電流を第一端面101aの全体に広げやすくするため、第一電極層102aは、第一端面101aにおけるセル104の開口部を除く部分(隔壁部分及び外周壁部分)の面積のうち、80%以上を被覆することが好ましく、90%以上を被覆することがより好ましく、99%以上を被覆することが更により好ましい。同様に、電流を第二端面101bの全体に広げやすくするため、第二電極層102bは、第二端面101bにおけるセル104の開口部を除く部分(隔壁部分及び外周壁部分)の面積のうち、80%以上を被覆することが好ましく、90%以上を被覆することがより好ましく、99%以上を被覆することが更により好ましい。
【0043】
第一電極層102a及び第二電極層102bとしては、特に限定されないが、例えば、Cu、Ag、Al、Ni及びSiから選択される少なくとも一種を含有する金属又は合金を使用することができる。好ましい実施形態において、第一電極層102a及び第二電極層102bは、純アルミニウム及び/又はアルミニウム合金を含有する。また、PTC特性を有する外周壁103及び/又は隔壁106とオーミック接触が可能なオーミック電極を使用することもできる。オーミック電極は、例えば、ベース金属としてAl、Au、Ag及びInから選択される少なくとも一種を含有し、ドーパントとしてn型半導体用のNi、Si、Zn、Ge、Sn、Se及びTeから選択される少なくとも一種を含有するオーミック電極を使用することができる。また、第一電極層102a及び第二電極層102bは、1層構造としてもよいし、2層以上の積層構造としてもよい。第一電極層102a及び第二電極層102bが2層以上の積層構造を有する場合、各層の材質は、同じ種類であってもよいし、異なる種類であってもよい。好ましい実施形態において、第一電極層102a及び第二電極層102bは、純アルミニウムの単層、Al-Ni合金層と純銀層の二層構造、又は、Al-Ni合金層と純アルミニウム層の二層構造を有する。
【0044】
第一電極層102a及び第二電極層102bの厚みは、特に限定されず、第一電極層102a及び第二電極層102bの形成方法に応じて適宜設定することができる。第一電極層102a及び第二電極層102bの形成方法としては、スパッタリング、蒸着、電解析出、化学析出のような金属析出法が挙げられる。また、電極ペーストを塗布した後、焼き付ける方法や、溶射によっても電極層を形成することもできる。さらに、セルの開口部に対応する箇所に貫通穴を有するパンチングメタルのような金属板又は合金板を接合することによって電極層としてもよい。
【0045】
第一電極層102a及び第二電極層102bの平均厚みは、限定的ではないが、例えば5μm以上100μm以下とすることができる。第一電極層102a及び第二電極層102bの平均厚みの下限が5μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上であることによって、電極層での異常発熱が回避できるという利点が得られる。第一電極層102a及び第二電極層102bの平均厚みの上限が100μm以下、好ましくは80μm以下、より好ましくは60μm以下であることによって、電極層の剛性を抑制でき、ハニカム構造部の端面からはがれにくいという利点が得られる。
【0046】
第一電極層102aの平均厚みは、以下の手順で測定される。まず、走査型電子顕微鏡等で50倍程度の第一電極層の断面画像を取得する。断面としては、ハニカム構造部の流路の延びる方向に平行な断面である。断面画像においては、
図1Bの部分拡大図に例示されるように、隔壁毎に第一電極層が視認されるので、それぞれの第一電極層について、当該第一電極層によって被覆される第一端面を形成する隔壁の流路の延びる方向に垂直な方向の長さの中央位置における厚みT
1を一つの断面画像につき2箇所測定する。厚みの方向は、流路の延びる方向に平行な方向である。このようにして、第一電極層の多数の断面画像をヒーターエレメントの第一端面近傍から偏りなく取得し、全体で10箇所以上の第一電極層の厚みT
1を測定する。測定されたすべての厚みT
1の平均値を第一電極層の平均厚みとする。第二電極層102bの平均厚みについても同様の手順で測定する。
【0047】
端子は外周部に配置されることが好ましい。このため、外周部及び端子との接続箇所における電極層の厚みは大きい方が、接合時に電極層の材料が溶融し、端子との接合面積を十分に確保することが可能となり、端子との接合強度を高めることが可能となる。更に、端子との接合面積を十分に確保できることから電極層と端子の間の導通性能を高めることが可能となる。よって、ヒーターエレメント100は、以下の(1)及び(2)の少なくとも一方の条件を満足することが好ましく、両方の条件を満足することがより好ましい。
(1)第一端面101aの外周部及び第一端子109aとの接続箇所における第一電極層102aの厚みの平均値が、それ以外の部分における第一電極層102aの厚みの平均値よりも大きい。
(2)第二端面101bの外周部及び第二端子109bとの接続箇所における第二電極層102bの厚みの平均値が、それ以外の部分における第二電極層102bの厚みの平均値よりも大きい。
【0048】
第一端面101a(第二端面101b)の外周部及び第一端子109a(第二端子109b)との接続箇所における第一電極層102a(第二電極層102b)の厚みの平均値は、それ以外の部分における第一電極層102a(第二電極層102b)の厚みの平均値に対して、1.1~2.0倍であることが好ましく、1.5~1.6倍であることがより好ましい。
【0049】
第一端面101a(第二端面101b)の外周部及び第一端子109a(第二端子109b)との接続箇所における第一電極層102a(第二電極層102b)の厚みの平均値は、限定的ではないが、例えば5.5μm以上200μm以下とすることができる。当該平均値の下限が5.5μm以上、好ましくは11μm以上、より好ましくは22μm以上であることによって、良好な導通性能を確保できるという利点が得られる。当該平均値の上限が200μm以下、好ましくは160μm以下、より好ましくは120μm以下であることによって、セル104の開口を確保することにより、送風時の圧損を低減できるという利点が得られる。
【0050】
第一端面101aの外周部及び第一端子109aとの接続箇所における第一電極層102aの厚みの平均値は、以下の手順で測定される。まず、走査型電子顕微鏡等で第一端面の外周部及び第一端子との接続箇所における50倍程度の第一電極層の断面画像を取得する。断面としては、ハニカム構造部の流路の延びる方向に平行な断面である。断面画像においては、
図1Bの部分拡大図に例示されるように、隔壁毎に第一電極層が視認されるので、第一端面の外周部及び第一端子との接続箇所におけるそれぞれの第一電極層について、当該第一電極層によって被覆される第一端面を形成する隔壁の流路の延びる方向に垂直な方向の長さの中央位置における厚みT
1を一つの断面画像につき2箇所測定する。厚みの方向は、流路の延びる方向に平行な方向である。このようにして、第一端面の外周部及び第一端子との接続箇所における第一電極層の多数の断面画像をヒーターエレメントの第一端面近傍から偏りなく取得し、全体で10箇所以上の第一電極層の厚みT
1を測定する。測定されたすべての厚みT
1の平均値を第一端面101aの外周部及び第一端子109aとの接続箇所における第一電極層102aの平均厚みとする。第二端面101bの外周部及び第二端子109bとの接続箇所における第二電極層102bの平均厚みについても同様の手順で測定する。なお、外周部の定義については後述する。
【0051】
第一端面101aの外周部及び第一端子109aとの接続箇所以外の部分における第一電極層102aの厚みの平均値は、以下の手順で測定される。まず、走査型電子顕微鏡等で第一端面の外周部及び第一端子との接続箇所以外の部分における50倍程度の第一電極層の断面画像を取得する。断面としては、ハニカム構造部の流路の延びる方向に平行な断面である。断面画像においては、
図1Bの部分拡大図に例示されるように、隔壁毎に第一電極層が視認されるので、第一端面の外周部及び第一端子との接続箇所以外の部分におけるそれぞれの第一電極層について、当該第一電極層によって被覆される第一端面を形成する隔壁の流路の延びる方向に垂直な方向の長さの中央位置における厚みT
1を一つの断面画像につき2箇所測定する。厚みの方向は、流路の延びる方向に平行な方向である。このようにして、第一端面の外周部及び第一端子との接続箇所以外の部分における第一電極層の多数の断面画像をヒーターエレメントの第一端面近傍から偏りなく取得し、全体で10箇所以上の第一電極層の厚みT
1を測定する。測定されたすべての厚みT
1の平均値を第一端面101aの外周部及び第一端子109aとの接続箇所以外の部分における第一電極層102aの平均厚みとする。第二端面101bの外周部及び第二端子109bとの接続箇所以外の部分における第二電極層102bの平均厚みについても同様の手順で測定する。なお、外周部の定義については後述する。
【0052】
上述したように、外周部及び端子との接続箇所における電極層の厚みは大きい方が、端子を電極層に強固に接続され、電極層と端子の間の導通性能を高めることが可能となる。一方で、端子が接続される領域の自由度を高めるためには、外周部全体の電極層の厚みを大きくしておくことが好ましい。よって、ヒーターエレメント100は、以下の(3)及び(4)の少なくとも一方の条件を満足することが好ましく、両方の条件を満足することがより好ましい。
(3)第一端面101aの外周部全体における第一電極層102aの厚みの平均値が、それ以外の部分における第一電極層102aの厚みの平均値よりも大きい。
(4)第二端面101bの外周部全体における第二電極層102bの厚みの平均値が、それ以外の部分における第二電極層102bの厚みの平均値よりも大きい。
【0053】
第一端面101aの外周部全体における第一電極層102aの厚みの平均値は、以下の手順で測定される。まず、走査型電子顕微鏡等で第一端面の外周部の任意の箇所における50倍程度の第一電極層の断面画像を取得する。断面としては、ハニカム構造部の流路の延びる方向に平行な断面である。断面画像においては、
図1Bの部分拡大図に例示されるように、隔壁毎に第一電極層が視認されるので、第一端面の外周部におけるそれぞれの第一電極層について、当該第一電極層によって被覆される第一端面を形成する隔壁の流路の延びる方向に垂直な方向の長さの中央位置における厚みT
1を一つの断面画像につき2箇所測定する。厚みの方向は、流路の延びる方向に平行な方向である。このようにして、第一端面の外周部における第一電極層の断面画像をヒーターエレメントの第一端面近傍から周方向に等間隔に取得し、全体で10箇所以上の第一電極層の厚みT
1を測定する。測定されたすべての厚みT
1の平均値を第一端面101aの外周部全体における第一電極層102aの平均厚みとする。第二端面101bの外周部全体における第二電極層102bの平均厚みについても同様の手順で測定する。なお、外周部の定義については後述する。
【0054】
第一端面101aの外周部以外の部分における第一電極層102aの厚みの平均値は、以下の手順で測定される。まず、走査型電子顕微鏡等で第一端面の外周部以外の部分における50倍程度の第一電極層の断面画像を取得する。断面としては、ハニカム構造部の流路の延びる方向に平行な断面である。断面画像においては、
図1Bの部分拡大図に例示されるように、隔壁毎に第一電極層が視認されるので、第一端面の外周部以外の部分におけるそれぞれの第一電極層について、当該第一電極層によって被覆される第一端面を形成する隔壁の流路の延びる方向に垂直な方向の長さの中央位置における厚みT
1を一つの断面画像につき2箇所測定する。厚みの方向は、流路の延びる方向に平行な方向である。このようにして、第一端面の外周部以外の部分における第一電極層の多数の断面画像をヒーターエレメントの第一端面近傍から偏りなく取得し、全体で10箇所以上の第一電極層の厚みT
1を測定する。測定されたすべての厚みT
1の平均値を第一端面101aの外周部以外の部分における第一電極層102aの平均厚みとする。第二端面101bの外周部以外の部分における第二電極層102bの平均厚みについても同様の手順で測定する。なお、外周部の定義については後述する。
【0055】
第一電極層102a及び第二電極層102bの25℃における体積抵抗率の下限は、特に制限は無いが、通常実現可能な範囲は1.0×10-7Ω・cm以上である。第一電極層102a及び第二電極層102bの25℃における体積抵抗率の上限は、面内に十分電流が行き渡り温度分布を均一にする観点からは、1.0×10-5Ω・cm以下であることが好ましく、1.0×10-6Ω・cm以下であることが好ましく、5.0×10-7Ω・cm以下であることがより好ましく、3.0×10-7Ω・cm以下であることが更に好ましい。従って、第一電極層102a及び第二電極層102bの25℃における体積抵抗率の範囲は、例えば1.0×10-7Ω・cm以上1.0×10-5Ω・cm以下とすることができる。本明細書において、第一電極層102a及び第二電極層102bの25℃における体積抵抗率はJIS K6271:2008に従って測定される。
【0056】
(1-3.第一及び第二機能材含有層)
第一機能材含有層107aによって、第一電極層102aの外表面の一部を被覆し、第二機能材含有層107bは第二電極層102bの外表面の一部を被覆してもよい。機能材含有層がヒーターエレメントの端面側に存在することで、機能材がもたらす機能をヒーターエレメントに付与することができる。例えば、第一機能材含有層107a及び第二機能材含有層107bが吸湿材を含有する場合は、電極層中の金属成分がマイグレーションを起こして電極層間で短絡するのを抑制可能である。第一電極層102aの外表面とは、第一電極層102aが第一端面101aと接する面の反対側の面を指す。第二電極層102bの外表面とは、第二電極層102bが第二端面101bと接する面の反対側の面を指す。
【0057】
第一機能材含有層107aが第一電極層102aの外表面の“一部”を被覆することとしたのは、第一電極層102aの外表面のうち、第一端子109aが接続される部分は、第一機能材含有層107aによって被覆されるべきではなく、このため全部を被覆するものではないからである。同様に、第二機能材含有層107bが第二電極層102bの外表面の“一部”を被覆することとしたのは、第二電極層102bの外表面のうち、第二端子109bが接続される部分は、第二機能材含有層107bによって被覆されるべきではなく、このため全部を被覆するものではないからである。
【0058】
機能材による性能を高めるためには、第一機能材含有層107aは第一電極層102aの外表面のうち、第一端子109aが接続されていない部分の面積の80%以上を被覆することが好ましく、90%以上を被覆することがより好ましく、99%以上を被覆することが更により好ましい。同様に、第二機能材含有層107bは第二電極層102bの外表面のうち、第二端子109bが接続されていない部分の面積の80%以上を被覆することが好ましく、90%以上を被覆することがより好ましく、99%以上を被覆することが更により好ましい。
【0059】
第一機能材含有層107a及び第二機能材含有層107bは、絶縁性であることが好ましい。第一端面101a付近及び第二端面101b付近は外来の飛来物が付着しやすいところ、飛来物が導電性を有していると短絡の原因となる。第一機能材含有層107a及び第二機能材含有層107bが絶縁性であることで、飛来物による短絡を予防することができる。本明細書において第一機能材含有層107a及び第二機能材含有層107bが絶縁性であるとは、第一機能材含有層107a及び第二機能材含有層107bがそれぞれ以下の電気抵抗に関する条件を満たすことをいう。
【0060】
第一端面101a(第二端面101b)の重心Oの座標値を0とし、重心Oから第一端面101a(第二端面101b)の外周輪郭Cに向かう方向に座標軸を取り、外周輪郭Cにおける座標値を1.00Rとする。そして、重心Oと、座標値0.90Rの任意の点Dを結ぶ線分の間で最も距離が離れている第一機能材含有層107a(第二機能材含有層107b)の外表面の二点間の25℃における電気抵抗をシャント法により測定する(
図1A参照)。第一機能材含有層107a(第二機能材含有層107b)の外表面とは、第一機能材含有層107a(第二機能材含有層107b)が第一電極層102a(第二電極層102b)と接する面の反対側の面を指す。次いで、重心Oを回転の中心として点Dを30°回転移動させて、同様に電気抵抗を測定する。このようにして点Dを30°ずつ回転移動させながら、重心Oと点Dの間の電気抵抗を一周分測定(12箇所)する。得られた12箇所の電気抵抗の下限が1.0×10
4Ω以上であるときに、第一機能材含有層107a(第二機能材含有層107b)が絶縁性であると定義する。
なお、点Dを回転移動させた箇所の点Dと重心Oを結ぶ線分の間に第一端子109a(第二端子109b)が存在する場合は、第一端子109a(第二端子109b)が存在しない位置まで点Dを更に回転移動させてから測定する。
【0061】
第一機能材含有層107a及び第二機能材含有層107bは、上記の手順で電気抵抗測定を行ったときの電気抵抗の下限が1.0×105Ω以上であることが好ましく、5.0×105Ω以上であることがより好ましい。第一機能材含有層107a及び第二機能材含有層107bには、電気抵抗の上限は特に設定されないが、上記の手順で電気抵抗測定を行ったときの電気抵抗の範囲が1.0×105Ω~1.0×107Ωであるのが通常であり、2.0×105Ω~1.0×106Ωであるのが典型である。
【0062】
第一機能材含有層107a及び第二機能材含有層107bは吸湿材を含有することが好ましい。本明細書において、吸湿材とは、室温(25℃)、相対湿度50%の環境下に一時間放置したときに、自身の乾燥質量1g当たり吸着できる水の質量(g)が5g/g以上である性質を有する物質を指す。吸湿材は、水分を-20~40℃で吸着し、60℃以上、好ましくは70~180℃の高温で離脱することが可能な機能を有することが好ましい。このように吸湿材が水分を低温で吸着し、高温で脱離する機能を有する場合、通電、非通電を繰り返すことで吸湿材を何度も使用可能である。
【0063】
吸湿材の種類には特に制限はないが、シリカゲル、セピオライト、酸化カルシウム、ケイソウ土、活性炭、活性白土、ゼオライト、ホワイトカーボン、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸カリウム、第二リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、吸水性ポリマー、結晶質ケイ酸アルミニウム、非晶質ケイ酸アルミニウム等が挙げられる。これらの中でも、比較的低温域で放湿可能であるという理由により、ゼオライト、非晶質ケイ酸アルミニウムが好ましく、非晶質ケイ酸アルミニウムがより好ましい。吸湿材は一種類を単独使用してもよく、二種類以上を組み合わせて使用してもよい。上記の吸湿材は例示であり、これらに限られない。
【0064】
第一機能材含有層107a及び第二機能材含有層107bは、バインダを含有してもよい。バインダとしては有機バインダ及び無機バインダの両者が挙げられるが、無機バインダが好ましい。無機バインダの種類には特に制限はないが、アルミナゾル、シリカゾル、モンモリロナイト、ベーマイト、ガンマアルミナ、アタパルジャイトが挙げられる。これらは一種類を単独使用してもよく、二種類以上を組み合わせて使用してもよい。中でも、接着力を確保しやすいという理由により、アルミナゾル、シリカゾルが好ましく、シリカゾルがより好ましい。
【0065】
第一機能材含有層107a及び第二機能材含有層107bは、吸湿材に加えて、又は、吸湿材に代えて、二酸化炭素及び/又は有機ガス成分等の空気中の除去対象成分を吸着する機能を有する機能材を含有してもよい。とりわけ、二酸化炭素及び/又は有機ガス成分を-20~40℃で吸着し、60℃以上、好ましくは70~180℃の高温で離脱することが可能な機能を有する機能材を含有することが好ましい。このように機能材が空気中の除去対象成分を低温で吸着し、高温で脱離する機能を有する場合、通電、非通電を繰り返すことで機能材を何度も使用可能である。
【0066】
除去対象となり得る空気中に含まれる有機ガス成分は、例えば、揮発性有機化合物(VOC)やにおい成分等である。有害な揮発成分の具体例としては、アンモニア、酢酸、イソ吉草酸、ノネナール、ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、パラジクロロベンゼン、エチルベンゼン、スチレン、クロルピリホス、フタル酸ジ-n-ブチル、テトラデカン、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル、ダイアジノン、アセトアルデヒド、N-メチルカルバミン酸-2-(1-メチルプロピル)フェニル等が挙げられる。
【0067】
上述した吸湿材にはこのような機能を兼備するものもあり、記載が一部重複するが、機能材の種類としては、例えば、ゼオライト、シリカゲル、活性炭、アルミナ、シリカ、低結晶性粘土、非晶質ケイ酸アルミニウム塩複合体等が挙げられる。機能材の種類は、除去対象成分の種類に応じて適宜選択すればよい。機能材は一種類を単独使用してもよく、二種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0068】
第一機能材含有層107a及び第二機能材含有層107bは、更に、除去対象成分を浄化する、又は、機能材(吸湿材を含む)による除去対象成分の捕捉機能を高める等の目的で、触媒を含有してもよい。触媒としては、酸化還元反応を促進させることが可能な機能を有することが好ましい。このような機能を有する触媒としては、Pt、Pd、Ag等の金属触媒、CeO2、ZrO2等の酸化物触媒等が挙げられる。触媒は一種を単独使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0069】
第一機能材含有層107a及び第二機能材含有層107bの少なくとも一方、望ましくは両方の平均厚みは、限定的ではないが、例えば10μm以上500μm以下とすることができる。第一機能材含有層107a及び第二機能材含有層107bの少なくとも一方、望ましくは両方の平均厚みの下限が10μm以上、好ましくは30μm以上、より好ましくは50μm以上であることによって、絶縁性が確保できるとともに機能材による機能を発揮しやすいという利点が得られる。第一機能材含有層107a及び第二機能材含有層107bの平均厚みの上限が500μm以下、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下であることによって、機能材含有層の剛性を小さくでき剥がれにくくできるという利点が得られる。
【0070】
第一機能材含有層107aの平均厚みは、以下の手順で測定される。まず、走査型電子顕微鏡等で50倍程度の第一機能材含有層の断面画像を取得する。断面としては、ハニカム構造部の流路の延びる方向に平行な断面である。断面画像においては、
図1Bの部分拡大図に例示されるように、隔壁毎に第一機能材含有層が視認されるので、それぞれの第一機能材含有層について、当該第一機能材含有層によって間接的に被覆される第一端面を形成する隔壁の流路の延びる方向に垂直な方向の長さの中央位置における厚みT
2を一つの断面画像につき2箇所測定する。厚み方向は流路の延びる方向に平行な方向である。そして、第一機能材含有層の多数の断面画像をヒーターエレメントの第一端面近傍から偏りなく取得し、10箇所以上の第一機能材含有層の厚みT
2を測定する。測定されたすべての厚みT
2の平均値を第一機能材含有層の平均厚みとする。第二機能材含有層107bの平均厚みについても同様の手順で測定する。
【0071】
第一機能材含有層107aは、第一電極層102aの外表面のみならず、第一電極層102aの他の露出面(例えば第一電極層102aの厚み方向に平行な面)の一部又は全部を被覆することが好ましく、全部を被覆することがより好ましい。同様に、第二機能材含有層107bは、第二電極層102bの外表面のみならず、第二電極層102bの他の露出面(例えば第二電極層102bの厚み方向に平行な面)の一部又は全部を被覆することが好ましく、全部を被覆することがより好ましい。
【0072】
(1-4.端子)
第一端子109aは、第一電極層102aの外表面(第一機能材含有層107aが設けられている場合は、第一電極層102aの外表面のうち、第一機能材含有層107aによって被覆されていない部分であることが好ましい。)に接続される。第二端子109bは、第二電極層102bの外表面(第二機能材含有層107bが設けられている場合は、第二電極層102bの外表面のうち、第二機能材含有層107bによって被覆されていない部分であることが好ましい。)に接続される。第一端子109a(第二端子109b)は、少なくとも一部が第一端面101a(第二端面101b)の外周部に配置されることが好ましく、全部が外周部に配置されることがより好ましい。
【0073】
第一電極層102aと第一端子109aの間、及び、第二電極層102bと第二端子109bの間の接続方法は、両者が導通していれば特に限定されず、例えば、溶接、ろう付け又は機械的接触等によって接続することができる。第一端子109a及び第二端子109bの材質としては、特に限定されないが、例えば、金属とすることができる。金属としては、単体金属及び合金等を採用することもできるが、湿度の高い環境で酸化しにくく、湿潤条件でもマイグレーションや電蝕を起こしにくく、電極との接合が容易である材料を選択するという観点から、純アルミニウム、アルミニウム合金及びステンレスから選択される1種又は2種以上を含有することが好ましく、例えば、純アルミニウム製、アルミニウム合金製又はステンレス製とすることができる。その他、Cr、Fe、Co、Ni、Cu及びTiよりなる群から選択される少なくとも一種を含む合金を用いることもでき、中でもFe-Ni合金及びリン青銅は好適に使用できる。端子は、端面上の電極層に近い材質であることが電蝕回避の観点から好ましい。例示的には、電極層及び端子が共に純アルミニウム及び/又はアルミニウム合金であることが好ましい。
【0074】
第一端子109a及び第二端子109bの形状は、限定的ではないが、例えば、平板状とすることができる。その場合の端子の板厚は、限定的ではないが、例えば、0.1~4mmとすることができ、0.3~2mmとすることが好ましい。
【0075】
第一端子109aが第一電極層102aに接続されていることにより、第一端子109aによって(間接的に)被覆される第一端面101aの部分の面積には特に制限はないが、第一端子109aが小さ過ぎると第一端子109aに通電部品を接続するのが難しくなる。逆に、第一端子109aが大き過ぎるとセル104の開口部を塞ぐ面積が大きくなり、ヒーターエレメント100に流すことのできる空気の流量が低下する。そこで、第一端面101aの面積に対して、第一端子109aが第一端面101aを被覆する面積の割合の下限は、0.5%以上であることが好ましく、1%以上であることがより好ましく、2%以上であることが更により好ましい。また、第一端面101aの面積に対して、第一端子109aが第一端面101aを被覆する面積の割合の上限は、10%以下であることが好ましく、8%以下であることがより好ましく、5%以下であることが更により好ましい。従って、第一端面101aの面積に対して、第一端子109aが第一端面101aを被覆する面積の割合の範囲は、例えば0.5%以上10%以下とすることができる。第二端面101bの面積に対して、第二端子109bが第二端面101bを被覆する面積の割合についても同様である。
【0076】
第一端子109a及び第二端子109bの25℃における体積抵抗率の下限は、特に制限は無いが、通常実現可能な範囲は1.0×10-7Ω・cm以上である。第一端子109a及び第二端子109bの25℃における体積抵抗率の上限は、端子での発熱・エネルギーロス低減観点からは、1.0×10-6Ω・cm以下であることが好ましく、5.0×10-7Ω・cm以下であることが好ましく、3.0×10-7Ω・cm以下であることがより好ましく、2.0×10-7Ω・cm以下であることが更に好ましい。従って、第一端子109a及び第二端子109bの25℃における体積抵抗率の範囲は、例えば1.0×10-7Ω・cm以上1.0×10-6Ω・cm以下とすることができる。本明細書において、第一端子109a及び第二端子109bの25℃における体積抵抗率はJIS K6271:2008に従って測定される。
【0077】
(1-5.第三及び第四機能材含有層)
第三機能材含有層111aは、第一端子109aの外表面の一部を被覆し、第四機能材含有層111bは第二端子109bの外表面の一部を被覆してもよい。機能材含有層が端子の外表面に存在することで、機能材がもたらす機能をヒーターエレメントに付与することができる。例えば、第三機能材含有層111a及び第四機能材含有層111bが吸湿材を含有する場合は、端子中の金属成分がマイグレーションを起こして短絡するのを抑制可能である。第一端子109aの外表面とは、第一端子109aが第一電極層102aと接する面の反対側の面を指す。第二端子109bの外表面とは、第二端子109bが第二電極層102bと接する面の反対側の面を指す。
【0078】
第三機能材含有層111aが第一端子109aの外表面の“一部”を被覆することとしたのは、第一端子109aの外表面のうち、通電部品105aが接続される部分は、第三機能材含有層111aによって被覆されるべきではなく、このため全部を被覆するものではないからである。同様に、第四機能材含有層111bが第二端子109bの外表面の“一部”を被覆することとしたのは、第二端子109bの外表面のうち、通電部品105bが接続される部分は、第四機能材含有層111bによって被覆されるべきではなく、このため全部を被覆するものではないからである。
【0079】
機能材による性能を高めるためには、第三機能材含有層111aは第一端子109aの外表面のうち、通電部品105aが接続されていない部分の面積の80%以上を被覆することが好ましく、90%以上を被覆することがより好ましく、99%以上を被覆することが更により好ましい。同様に、第四機能材含有層111bは第二端子109bの外表面のうち、通電部品105bが接続されていない部分の面積の80%以上を被覆することが好ましく、90%以上を被覆することがより好ましく、99%以上を被覆することが更により好ましい。
【0080】
第三機能材含有層111a及び第四機能材含有層111bは、第一機能材含有層107a及び第二機能材含有層107bと同様の理由により、絶縁性であることが好ましい。第三機能材含有層111a及び第四機能材含有層111bが絶縁性であるとは、第三機能材含有層111a及び第四機能材含有層111bがそれぞれ以下の電気抵抗に関する条件を満たすことをいう。
【0081】
第三機能材含有層111a(第四機能材含有層111b)の外表面において距離が3mm離れた任意の二点間の25℃における電気抵抗をシャント法により測定する。但し、二点間を結ぶ線分の間に通電部品105aが存在しないように二点間を選択する。測定点をずらして3箇所測定したとき、得られた電気抵抗の下限が1.0×104Ω以上であるときに、第三機能材含有層111a(第四機能材含有層111b)が絶縁性であると定義する。
【0082】
第三機能材含有層111a及び第四機能材含有層111bは、上記の手順で電気抵抗測定を行ったときの電気抵抗の下限が1.0×105Ω以上であることが好ましく、5.0×105Ω以上であることがより好ましい。第三機能材含有層111a及び第四機能材含有層111bには、電気抵抗の上限は特に設定されないが、上記の手順で電気抵抗測定を行ったときの電気抵抗の範囲が5.0×105Ω~1.0×107Ωであるのが通常であり、1.0×106Ω~5.0×106Ωであるのが典型である。
【0083】
第三機能材含有層111a及び第四機能材含有層111bが含有する機能材については、好ましい実施態様を含め、第一機能材含有層107a及び第二機能材含有層107bの説明で述べた通りである。
【0084】
第三機能材含有層111a及び第四機能材含有層111bは、バインダを含有してもよい。バインダについては、好ましい実施態様を含め、第一機能材含有層107a及び第二機能材含有層107bの説明で述べた通りである。
【0085】
第三機能材含有層111a及び第四機能材含有層111bは、更に、除去対象成分を浄化する、又は、機能材(吸湿材を含む)による除去対象成分の捕捉機能を高める等の目的で、触媒を含有してもよい。触媒については、好ましい実施態様を含め、第一機能材含有層107a及び第二機能材含有層107bの説明で述べた通りである。
【0086】
第三機能材含有層111a及び第四機能材含有層111bの平均厚みは、限定的ではないが、例えば10μm以上500μm以下とすることができる。第三機能材含有層111a及び第四機能材含有層111bの平均厚みの下限が10μm以上、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上であることによって、絶縁性を確保できるとともに機能材による機能が発揮されやすいという利点が得られる。第三機能材含有層111a及び第四機能材含有層111bの平均厚みの上限が500μm以下、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下であることによって、機能材含有層の剛性を小さくでき、剥がれ難くできるという利点が得られる。
【0087】
第三機能材含有層111aの平均厚みは、JIS K5600-1-7:2014に準拠する断面法を用いて任意の5箇所以上の第三機能材含有層の厚みを測定したときの平均値を第三機能材含有層の平均厚みとする。第四機能材含有層111bの平均厚みについても同様の手順で測定する。
【0088】
第三機能材含有層111aは、第一端子109aの外表面のみならず、第一端子109aの他の露出面(例えば第一端子109aが平板状の場合の板厚方向に平行な面)の一部又は全部を被覆することが好ましく、全部を被覆することがより好ましい。同様に、第四機能材含有層111bは、第二端子109bの外表面のみならず、第二端子109bの他の露出面(例えば第二端子109bが平板状の場合の板厚方向に平行な面)の一部又は全部を被覆することが好ましく、全部を被覆することがより好ましい。
【0089】
(1-6.第五機能材含有層)
セル104内部の流路を形成する隔壁106の表面の一部又は全部を被覆する第五機能材含有層113を有することが好ましい。セル104内部の流路を除去対象成分を含む空気が通過するため、流路を形成する隔壁106の表面を機能材で被覆することにより、ヒーターエレメント100の全体として機能材による性能を高めることが可能となる。
【0090】
機能材による性能を高めるためには、第五機能材含有層113はセル104内部の流路を形成する隔壁106の表面の面積の80%以上を被覆することが好ましく、90%以上を被覆することがより好ましく、99%以上を被覆することが更により好ましい。セル104内部の流路を形成する隔壁106の表面の面積のうち、第五機能材含有層113によって被覆される面積の割合は、以下の手順で測定する。
(1)ヒーターエレメント100から、第一端面101a(第二端面101b)の重心Oを通り、セル104の延びる方向に平行な断面を切り出す。
(2)得られた断面を画像化し、画像解析により、各セル104について、セル104内部の流路を形成する隔壁106の表面のセルの延びる方向の長さのうち、第五機能材含有層113によって被覆されている部分の長さの割合を求める。当該断面におけるすべてのセル104について測定した当該割合の平均値を、セル104内部の流路を形成する隔壁106の表面の面積のうち、第五機能材含有層113によって被覆される面積の割合とみなす。画像解析としては、光学顕微鏡(倍率50倍)で撮影することで得た画像上で、第五機能材含有層と隔壁を構成する各画素の輝度を測定し、その平均値を閾値として2値化処理を行い、第五機能材含有層と隔壁の領域を区別する方法が採用できる。両者を区別した後、隔壁が第五機能材含有層によって被覆されている部分の長さを特定し、セルの長さ(ハニカム構造体の長さ)で除することで、第五機能材含有層によって被覆されている部分の長さの割合を求めることができる。
【0091】
第五機能材含有層113は、第一機能材含有層107a及び第二機能材含有層107bと同様の理由により、絶縁性であることが好ましい。第五機能材含有層113が絶縁性であるとは、第五機能材含有層113が以下の条件を満たすことをいう。
ヒーターエレメント100から、ハニカム構造部の流路の延びる方向に平行な断面を切り出し、隔壁106の表面を被覆する第五機能材含有層113を露出する。任意の一つのセル104を被覆する第五機能材含有層113の表面について、セル104の延伸方向に距離が3mm離れた任意の5箇所の二点間の25℃における電気抵抗をシャント法により測定する。得られた電気抵抗が1.0×104Ω以上であるときに、当該セルを被覆する第五機能材含有層113は絶縁性を有すると定義する。他のセルを被覆する第五機能材含有層113についても同様に測定することができるが、第五機能材含有層113を形成する材質が実質的に同じであることが明らかであれば結果は同じであるので測定を省略してもよい。
【0092】
第五機能材含有層113は、上記の手順で電気抵抗測定を行ったときの電気抵抗の下限が1.0×105Ω以上であることが好ましく、5.0×105Ω以上であることがより好ましい。第五機能材含有層113には、電気抵抗の上限は特に設定されないが、上記の手順で電気抵抗測定を行ったときの電気抵抗の範囲が5.0×105Ω~1.0×107Ωであるのが通常であり、1.0×106Ω~5.0×106Ωであるのが典型である。
【0093】
第五機能材含有層113が含有する機能材については、好ましい実施態様を含め、第一機能材含有層107a及び第二機能材含有層107bの説明で述べた通りである。
【0094】
第五機能材含有層113は、バインダを含有してもよい。バインダについては、好ましい実施態様を含め、第一機能材含有層107a及び第二機能材含有層107bの説明で述べた通りである。
【0095】
第五機能材含有層113は、更に、除去対象成分を浄化する、又は、機能材(吸湿材を含む)による除去対象成分の捕捉機能を高める等の目的で、触媒を含有してもよい。触媒については、好ましい実施態様を含め、第一機能材含有層107a及び第二機能材含有層107bの説明で述べた通りである。
【0096】
第五機能材含有層113の平均厚みは、限定的ではないが、例えば10μm以上500μm以下とすることができる。第五機能材含有層113の平均厚みの下限が10μm以上、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上であることによって、機能材による機能を発揮しやすいという利点が得られる。第五機能材含有層113の平均厚みの上限が500μm以下、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下であることによって、セルの開口面積を大きく保てるので、通気抵抗を低く抑えられるという利点が得られる。
【0097】
第五機能材含有層113の平均厚みは、以下の手順で測定される。まず、走査型電子顕微鏡等で50倍程度の第五機能材含有層113の断面画像を取得する。断面としては、ハニカム構造部の流路の延びる方向に平行な断面である。断面画像においては、
図1Bの部分拡大図に例示されるように、隔壁毎に隔壁を挟む二箇所の第五機能材含有層113が視認されるので、それぞれの第五機能材含有層113の第一端面101aから第二端面101bまでの全体の断面積を、当該第五機能材含有層によって被覆されている隔壁の第一端面101aから第二端面101bまでの長さで除することでそれぞれの第五機能材含有層113の厚みを算出する。そして、第五機能材含有層113の多数の断面画像をヒーターエレメントから偏りなく取得して、5箇所以上の第五機能材含有層113の厚みを測定する。測定されたすべての第五機能材含有層113の厚みの平均値を第五機能材含有層の平均厚みとする。
【0098】
なお、上述した第一から第五までの各種の機能材含有層の分類は便宜上のものである。従って、それぞれ独立した層が形成されることを要するものではなく、異なる分類の機能材含有層が連続していることは何ら妨げられず、単一工程で異なる分類の機能材含有層が同時に形成されることも何ら妨げられない。
【0099】
(1-7.通電部品)
第一端子109a及び第二端子109bはそれぞれ通電部品105a、105bを接続可能である。通電部品105a、105bを構成する導通材料としては、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金、銅合金、銅が挙げられる。第一端子109aと通電部品105aの間、及び、第二端子109bと通電部品105bの間の接続方法は、両者が導通していれば特に限定されず、例えば、溶接、ろう付け又は機械的接触等によって接続することができる。通電部品105a、105bは一実施形態において、電源と第一端子109a(第二端子109b)の間の電線自体、すなわち銅線、銅合金線、アルミニウム線、アルミニウム合金線、ステンレス線であってもよい。通電部品105a、105bは別の一実施形態において、電線と第一端子109a(第二端子109b)を接続する仲介部品であってもよい。仲介部品は、例えば溶接、ハンダ付け、ろう付け、加締め、及びボルト締めの何れか、その他の方法で電線に接続することができる。
【0100】
(2.外周面保持型の枠体を備えるヒーターエレメント組立物)
本発明の一実施形態に係るヒーターエレメントは、枠体に保持されたヒーターエレメント組立物として提供される。枠体による保護作用によって、ヒーターエレメントを通風路内に設置するときにヒーターエレメントが損傷を受けにくくなり、また、周囲部品との電気絶縁性を確保しつつ、空調システム内へ装着しやすい形状とすることができる。
【0101】
図2A及び
図2Bには、ヒーターエレメント100を外周壁103の外周面側から保持する枠体140を備えるヒーターエレメント組立物の例が示されている。枠体140は、ハニカム構造部の外周壁103の外周面103eに、緩衝材150を介して嵌合する内周面141iをもつ樹脂製の第一枠部141を有する。当該構成により、枠体140はハニカム構造部に対する損傷を抑制しながらヒーターエレメント100を保持することが可能である。また、緩衝材150はヒーターエレメント100の熱変形に追随して変形し、熱応力を緩和することもできる。これによりヒーターエレメント100におけるクラックの発生を抑制可能である。
【0102】
ヒーターエレメント100を安定して保持し、且つ、ヒーターエレメント100に対する保護性能を高めるという観点から、枠体140は、ハニカム構造部の外周壁103の外周面103eの全面に対して、緩衝材150を介して嵌合する内周面141iをもつ樹脂製の第一枠部141を有することが好ましい。
【0103】
一実施形態において、
図2A及び
図2Bに示す枠体140は、筒状の一体品として提供することができる。代替的には、枠体140は、互いに分割されている二部品を連結することで形成してもよい。枠体140が互いに分割されている場合に両者を結合する方法としては、限定的ではないが、例えば、締結具によって連結する方法、嵌合構造によって連結する方法、及び接着剤によって連結する方法が挙げられる。
【0104】
図2A及び
図2Bに示す枠体140は、一対の半割れ部材140a、140bが、ハニカム構造部の流路の延びる方向に対して垂直な方向から連結することによって形成されてもよい。
図2Cには、一対の半割れ部材140a、140bが、ヒーターエレメント100を挟んで、ハニカム構造部の流路の延びる方向に対して垂直な方向から近づく様子が示されている。
【0105】
図2Aの模式的な部分拡大断面図には、一対の半割れ部材140a、140bが嵌合構造を有する連結部144によって連結されている様子が示されている。図示の連結部144は、プレスフィット方式の凸部144a及び凹部144bを有する。凸部144aを凹部144bに弾性変形させながら押し込むと、連結状態が凸部144a及び凹部144bの復元力によって維持される。連結部144は、プレスフィット方式以外にもスナップフィット方式その他の嵌合構造を有することができる。一対の半割れ部材140a、140bの間には、緩衝材145を挟み込むことが好ましい。両者間に挟み込まれることで圧縮された緩衝材145は弾性変形によりスプリングの役割を果たし、一対の半割れ部材140a、140bの間の連結状態の緩みを防止できる。
【0106】
図3A及び
図3Bには、ヒーターエレメント100を外周壁103の外周面側から保持する枠体140を備えるヒーターエレメント組立物の別の例が示されている。
図3A及び
図3Bに示す枠体140は、第一枠部141に加えて、第一端面101aの外周輪郭Cよりも内周側に向かって配設され、第一端面101aの外周部の少なくとも一部を囲う第二枠部142と、第二端面101bの外周輪郭Cよりも内周側に向かって配設され、第二端面101bの外周部の少なくとも一部を囲う第三枠部143とを更に有する点で、
図2A及び
図2Bに示す枠体140と異なる。第二枠部142及び第三枠部143は、第一枠部141から延設させることができる。第一枠部141から延設された第二枠部142及び第三枠部143であって、第二枠部142及び第三枠部143は、ヒーターエレメント100に角部が存在する等によって部分的に緩衝材150が省かれた場合、緩衝材150を省いた箇所にガスのバイパス流れが発生するのを防止するバッフルの役割を果たすこともできる。
【0107】
本明細書において、第一端面101a(第二端面101b)の重心Oの座標値を0とし、重心Oから第一端面101a(第二端面101b)の外周輪郭Cに向かう方向に座標軸を取り、外周輪郭Cにおける座標値を1.00Rとすると、0.90R~1.00Rに位置する点の集合を、第一端面101a(第二端面101b)の外周部とする。
【0108】
枠体140が第二枠部142及び第三枠部143を有することで、ヒーターエレメント100が枠体140から流路の延びる方向に動いて脱離するのを予防する効果が得られる。第二枠部142(第三枠部143)は、ヒーターエレメント100の第一端面101a(第二端面101b)側の表面に接触しなくてもよいが、第一端子109a(第二端子109b)を第一端面101a(第二端面101b)に向かって押し付ける部分を有することが好ましい。その場合は、第二枠部142(第三枠部143)は、緩衝材129を介して、第一端子109a(第二端子109b)を第一端面101a(第二端面101b)に向かって押し付けるように構成してもよい。
【0109】
第二枠部142(第三枠部143)は、
図3Aに示すように一箇所又は複数箇所が局所的に内周側に突出するようにして第一端面101a(第二端面101b)の外周部を部分的に囲ってもよい。第二枠部142(第三枠部143)が局所的に内周側に突出するようにして複数箇所に設置される場合は、ヒーターエレメント組立物を第一端面101a(第二端面101b)側から見たときの第一端面101a(第二端面101b)の周方向に等間隔に、及び/又は、重心Oを対称中心として点対称に4~8箇所設置することが好ましい(
図3A参照)。別法として、第二枠部142(第三枠部143)は、
図4Aに示すように第一端面101a(第二端面101b)の外周部を全周にわたって囲っても良い。
【0110】
第一端子109a(第二端子109b)の外表面のうち、第二枠部142(第三枠部143)によって第一端面101a(第二端面101b)に向かって押し付けられる部分の面積の割合は、大きい方が第一端面101a(第二端面101b)の脱落予防効果が高まる。このことから、当該面積の割合の下限は、10%以上であることが好ましく、15%以上であることがより好ましく、20%以上であることが更により好ましい。一方で、当該面積の割合は小さい方が通電部品のスペースが確保されやすく、通電部品105a(105b)を接合しやすい。このことから、当該面積の割合の上限は、80%以下であることが好ましく、75%以下であることがより好ましく、70%以下であることが更により好ましい。従って、当該面積の割合の範囲は例えば10~80%とすることができる。
【0111】
第二枠部142(第三枠部143)が第一端面101a(第二端面101b)を囲う領域の幅Yの上限は、ヒーターエレメント100内に出入りするガスの流れを妨げないという観点から、10mm以下であることが好ましく、7mm以下であることがより好ましく、5mm以下であることが更により好ましい。また、第二枠部142(第三枠部143)が第一端面101a(第二端面101b)を囲う領域の幅Yの下限は、ヒーターエレメント100に対する保持性能を高めるという観点から、1mm以上であることが好ましく、2mm以上であることがより好ましく、3mm以上であることが更により好ましい。従って第二枠部142(第三枠部143)が第一端面101a(第二端面101b)を囲う領域の幅Yの範囲は、例えば1mm以上10mm以下とすることができる。ここで、第二枠部142(第三枠部143)が第一端面101a(第二端面101b)を囲う領域の幅Yは、第一端面101a(第二端面101b)の外周輪郭Cから第一端面101a(第二端面101b)の重心Oに向かう方向の第二枠部142(第三枠部143)の長さを意味する。
【0112】
第二枠部142(第三枠部143)を、第一端面101a(第二端面101b)側から観察したときに(
図3A参照)、第二枠部142(第三枠部143)の面積(第二枠部142(第三枠部143)が複数ある場合はそれらの合計面積を指す。)が、第一端面101a(第二端面101b)の面積に対して占める割合の上限は、ヒーターエレメント100内に出入りするガスの流れを妨げないという観点から、10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、3%以下であることが更により好ましい。一方、ヒーターエレメント100に対する保持性能を高めるという観点から、第二枠部142(第三枠部143)の面積が、第一端面101a(第二端面101b)の面積に対して占める割合の下限は、0.5%以上であることが好ましく、1%以上であることがより好ましく、2%以上であることが更により好ましい。従って、第二枠部142(第三枠部143)の面積が、第一端面101a(第二端面101b)の面積に対して占める割合の範囲は、例えば0.5%以上10%以下とすることができる。
【0113】
図3A及び
図3Bに示す枠体140は、互いに分割されている二部品を連結することで形成するのが好ましい。枠体140が第二枠部142及び第三枠部143を有する関係で、ヒーターエレメント100を枠体140に収容する作業を容易にするためである。枠体140が互いに分割されている場合に両者を結合する方法としては、限定的ではないが、例えば、締結具によって連結する方法、嵌合構造によって連結する方法、及び接着剤によって連結する方法が挙げられる。
図3A及び
図3Bに示す枠体140は、一対の半割れ部材140a、140bが、ハニカム構造部の流路の延びる方向に対して垂直な方向から連結することによって形成される。嵌合構造の具体例は
図2Aに示した通りである。
【0114】
第一枠部141、好ましくは第一枠部141に加えて第二枠部142及び第三枠部143を構成する樹脂は、ヒーターエレメント100が損傷し難いようにある程度の柔らかさを有していることが望ましい。従って、一実施形態において、第一枠部141、好ましくは第一枠部141に加えて第二枠部142及び第三枠部143を構成する樹脂は、ASTM D785-2008 R15に準拠して測定されるロックウェル硬さの上限が150HRR以下であることが好ましく、130HRR以下であることがより好ましく、120HRR以下であることが更により好ましい。別の一実施形態において、第一枠部141、好ましくは第一枠部141に加えて第二枠部142及び第三枠部143を構成する樹脂は、ASTM D785-2008 R15に準拠して測定されるロックウェル硬さの上限が120HRM以下であることが好ましく、100HRM以下であることがより好ましく、90HRM以下であることが更により好ましい。第一枠部141、好ましくは第一枠部141に加えて第二枠部142及び第三枠部143を構成する樹脂は、上述したロックウェル硬さHRR及びHRMの何れか一方の上限値に関する条件を満たすことができ、両方の条件を満たすことが望ましい。
【0115】
一方、ヒーターエレメント100に対する保持性能を高めるという観点からは、第一枠部141、好ましくは第一枠部141に加えて第二枠部142及び第三枠部143を構成する樹脂は、ある程度の硬さを有していることが望ましい。従って、一実施形態において、第一枠部141、好ましくは第一枠部141に加えて第二枠部142及び第三枠部143を構成する樹脂は、ASTM D785-2008 R15に準拠して測定されるロックウェル硬さの下限が70HRR以上であることが好ましく、80HRR以上であることがより好ましく、90HRR以上であることが更により好ましい。別の一実施形態において、第一枠部141、好ましくは第一枠部141に加えて第二枠部142及び第三枠部143を構成する樹脂は、ASTM D785-2008 R15に準拠して測定されるロックウェル硬さの下限が40HRM以上であることが好ましく、50HRM以上であることがより好ましく、70HRM以上であることが更により好ましい。第一枠部141、好ましくは第一枠部141に加えて第二枠部142及び第三枠部143を構成する樹脂は、上述したロックウェル硬さHRR及びHRMの何れか一方の下限値に関する条件を満たすことができ、両方の条件を満たすことが望ましい。
【0116】
従って、一実施形態において、第一枠部141、好ましくは第一枠部141に加えて第二枠部142及び第三枠部143を構成する樹脂は、ASTM D785-2008 R15に準拠して測定されるロックウェル硬さの範囲が、例えば70HRR以上150HRR以下である。別の一実施形態において、第一枠部141、好ましくは第一枠部141に加えて第二枠部142及び第三枠部143を構成する樹脂は、ASTM D785-2008 R15に準拠して測定されるロックウェル硬さの範囲が、例えば40HRM以上120HRM以下である。
【0117】
第一枠部141、第二枠部142及び第三枠部143を構成する樹脂の種類には特段の制限はないが、耐熱性、耐食性の観点からは、第一枠部141、好ましくは第一枠部141に加えて第二枠部142及び第三枠部143は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)及びポリブチレンテレフタレート(PBT)の一方又は両方を含有することが好ましく、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)及びポリブチレンテレフタレート(PBT)を合計で80質量%以上含有することがより好ましく、90質量%以上含有することが更により好ましく、100質量%含有してもよい。
【0118】
第一枠部141、好ましくは第一枠部141に加えて第二枠部142及び第三枠部143を構成する樹脂は、耐熱性を有することが望ましい。従って、第一枠部141、好ましくは第一枠部141に加えて第二枠部142及び第三枠部143は、JIS K7191-1:2015に準拠して測定される荷重たわみ温度の下限が145℃以上であることが好ましく、160℃以上であることがより好ましく、180℃以上であることが更により好ましい。荷重たわみ温度の上限は特に設定されないが、入手容易性の観点からは、通常は300℃以下であり、典型的には250℃以下である。従って、第一枠部141及び第二枠部142の少なくとも一方、好ましくは両方を構成する樹脂は、当該荷重たわみ温度の範囲が、例えば145℃以上300℃以下である。
【0119】
第一枠部141、好ましくは第一枠部141に加えて第二枠部142及び第三枠部143を構成する樹脂は、加熱時に融解しないような高い融点を有することが望ましい。従って、第一枠部141、好ましくは第一枠部141に加えて第二枠部142及び第三枠部143は、融点の下限が250℃以上であることが好ましく、280℃以上であることがより好ましく、300℃以上であることが更により好ましい。融点の上限は特に設定されないが、入手容易性の観点からは、通常は400℃以下であり、典型的には350℃以下である。従って、第一枠部141、好ましくは第一枠部141に加えて第二枠部142及び第三枠部143を構成する樹脂は、融点の範囲が、例えば250℃以上400℃以下である。
【0120】
本明細書において、樹脂の融点は、TG-DTA( thermogravimetry - differential thermal analysis)測定を行ったときに、融解による吸熱ピークが見られる温度のうちの最低温度を指す。
【0121】
第一枠部141、好ましくは第一枠部141に加えて第二枠部142及び第三枠部143を構成する樹脂は、熱損失を低減するために熱伝導率が低いことが望ましい。従って、第一枠部141、好ましくは第一枠部141に加えて第二枠部142及び第三枠部143は、JIS R1611:2010に準拠して測定される25℃における熱伝導率の上限が0.5W/m/K以下であることが好ましく、0.3W/m/K以下であることがより好ましく、0.2W/m/K以下であることが更により好ましい。熱伝導率の下限は特に設定されないが、入手容易性の観点からは、通常は0.1W/m/K以上であり、典型的には0.15W/m/K以上である。従って、第一枠部141、好ましくは第一枠部141に加えて第二枠部142及び第三枠部143を構成する樹脂は、当該熱伝導率の範囲が、例えば0.1W/m/K以上0.5W/m/K以下である。
【0122】
第一枠部141、好ましくは第一枠部141に加えて第二枠部142及び第三枠部143を構成する樹脂は、短絡を抑制するために、絶縁性であることが好ましい。従って、第一枠部141、好ましくは第一枠部141に加えて第二枠部142及び第三枠部143は、JIS C 2139:2008のブリッジ法に準拠して測定される25℃における体積抵抗率の下限が1.0×1016Ω・cm以上であることが好ましく、2.0×1016Ω・cm以上であることが好ましく、5.0×1016Ω・cm以上であることがより好ましい。体積抵抗率の上限は特に設定されないが、入手容易性の観点からは、通常は1.0×1018Ω・cm以下であり、典型的には1.0×1017Ω・cm以下である。従って、第一枠部141、好ましくは第一枠部141に加えて第二枠部142及び第三枠部143を構成する樹脂は、当該体積抵抗率の範囲が、例えば1.0×1016Ω・cm以上1.0×1018Ω・cm以下である。
【0123】
第一枠部141の内周面141iと、ハニカム構造部の外周壁103の外周面103eの間に挟まれて圧力を受けることで圧縮された緩衝材150の圧縮方向の厚みは、十分な緩衝効果が得られる変形代を確保する観点から、下限が0.5mm以上であることが好ましく、1.0mm以上であることがより好ましく、2.0mm以上であることが更により好ましい。第一枠部141の内周面141iと、ハニカム構造部の外周壁103の外周面103eの間に挟まれて圧力を受けることで圧縮された緩衝材150の圧縮方向の厚みは、コンパクト化して搭載に必要なスペースを小さくする観点から、上限が7.0mm以下であることが好ましく、5.0mm以下であることがより好ましく、4.0mm以下であることが更により好ましい。従って、第一枠部141の内周面141iと、ハニカム構造部の外周壁103の外周面103eの間に挟まれて圧力を受けることで圧縮された緩衝材150の圧縮方向の厚みの範囲は、例えば0.5mm以上7.0mm以下とすることができる。
【0124】
第二枠部142(第三枠部143)によって圧力を受けることで圧縮された緩衝材129の圧縮方向の厚みは、十分な緩衝効果が得られる変形代を確保する観点から、下限が0.5mm以上であることが好ましく、1.0mm以上であることがより好ましく、2.0mm以上であることが更により好ましい。第二枠部142(第三枠部143)によって圧力を受けることで圧縮された緩衝材129の圧縮方向の厚みは、コンパクト化して搭載に必要なスペースを小さくする観点から、上限が7.0mm以下であることが好ましく、5.0mm以下であることがより好ましく、4.0mm以下であることが更により好ましい。従って、第二枠部142(第三枠部143)によって圧力を受けることで圧縮された緩衝材129の厚みの圧縮方向の範囲は、例えば0.5mm以上7.0mm以下とすることができる。
【0125】
緩衝材129が第二枠部142(第三枠部143)から受ける圧力の下限は、0.002MPa以上であることが好ましく、0.005MPa以上であることがより好ましい。緩衝材129が第二枠部142(第三枠部143)から受ける圧力の上限は、0.2MPa以下であることが好ましく、0.1MPa以下であることがより好ましい。従って、緩衝材129が第二枠部142(第三枠部143)から受ける圧力は、例えば0.002MPa~0.2MPaであることが好ましく、0.005MPa~0.1MPaであることがより好ましい。緩衝材129が第二枠部142(第三枠部143)から受ける圧力は、緩衝材129のヤング率と変位量から求められる。
【0126】
緩衝材150及び緩衝材129のヤング率は、ハニカムヒーターエレメントに対する保持力を確保する観点から、下限が0.05MPa以上であることが好ましく、0.06MPa以上であることがより好ましく、0.1MPa以上であることが更により好ましい。緩衝材150及び緩衝材129のヤング率は、緩衝効果を発揮するための変形代を確保する観点から、上限が0.3MPa以下であることが好ましく、0.25MPa以下であることがより好ましく、0.2MPa以下であることが更により好ましい。従って、緩衝材150及び緩衝材129のヤング率の範囲は、例えば0.05MPa以上0.3MPa以下とすることができる。
【0127】
緩衝材150及び緩衝材129のヤング率は、シート状の緩衝材に面圧を徐々にかけて圧縮したときの、面圧と厚さ変化(変位量)の関係から求める。
【0128】
緩衝材150及び緩衝材129を構成する材料の種類には特段の制限はないが、十分な変形代を確保する観点からは、ゴム製であることが好ましく、ゴムスポンジ製であることがより好ましい。ゴム及びゴムスポンジは、天然ゴム、スチレン・ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン・プロピレンゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、シリコーンゴム、イソプレンゴム、ウレタンゴム、クロロスルフォン化ポリエチレン、水素化ニトリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、アクリルゴム、エチレンアクリルゴム、ノルボルネンゴム等の種々のゴムを含有することができ、これらを1種単独で含有してもよく、2種以上混合して含有してもよい。これらの中でも、緩衝材150は、シリコーンゴムを主成分(好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上)とするシリコンゴムスポンジ製であることがより好ましい。
【0129】
緩衝材145のヤング率は、凸部144aと凹部144bに対する保持面圧を確保する観点から、下限が0.05MPa以上であることが好ましく、0.06MPa以上であることがより好ましく、0.1MPa以上であることが更により好ましい。緩衝材145のヤング率は、十分な緩衝効果を得るための変形代を確保する観点から、上限が0.3MPa以下であることが好ましく、0.25MPa以下であることがより好ましく、0.2MPa以下であることが更により好ましい。従って、緩衝材145のヤング率の範囲は、例えば0.05MPa以上0.3MPa以下とすることができる。
【0130】
緩衝材145のヤング率の測定方法は、緩衝材150の説明で述べた通りである。
【0131】
緩衝材145を構成する材料は、好ましい実施形態を含め、緩衝材150の説明で述べた通りである。
【0132】
互いに分割されている二部品を連結することで枠体140を形成する方法としては、二部品をハニカム構造部の流路の延びる方向に対して平行な方向から連結する方法も考えられる。
図4A及び
図4Bには、ヒーターエレメント100を外周壁103の外周面側から保持する枠体140を備えるヒーターエレメント組立物の更に別の例が示されている。
図4A及び
図4Bに示す枠体140においても、ハニカム構造部の外周壁103の外周面103eに、緩衝材150を介して嵌合する内周面141iをもつ樹脂製の第一枠部141を有する。また、
図4A及び
図4Bに示す枠体140は、第一枠部141に加えて、第一端面101aの外周輪郭Cよりも内周側に向かって延設され、第一端面101aの外周部の少なくとも一部を囲う第二枠部142と、第二端面101bの外周輪郭Cよりも内周側に向かって配設され、第二端面101bの外周部の少なくとも一部を囲う第三枠部143とを更に有してもよい。
【0133】
図4A及び
図4Bに示す枠体140は、第一枠部141を有する樹脂製の第一管状分割部140cと、第一管状分割部140cの内周面に嵌合可能な外周面を有する樹脂製の第二管状分割部140dとが、ハニカム構造部の流路の延びる方向に対して平行な方向から連結することによって形成可能である。
図4Cには、第一管状分割部140c及び第二管状分割部140dが、ヒーターエレメント100を挟んで、ハニカム構造部の流路の延びる方向に対して平行な方向から近づく様子が示されている。
図4A及び
図4Bに示す枠体140においては、第一管状分割部140cは第一枠部141に加えて第二枠部142を有しており、第二管状分割部140dは第三枠部143を有する。
【0134】
図4A及び
図4Bに示す枠体140においては、第一管状分割部140cの内周面は、ハニカム構造部の外周壁103の外周面103eに緩衝材150を介して嵌合する第一内周面141iと、第一内周面141iの一端に連結し、第一内周面141iの一端から遠ざかるにつれて拡径する(逆テーパー状の)第二内周面141jと、第二内周面141jの一端に連結し、第二内周面141jの一端から遠ざかるにつれて縮径する(テーパー状の)第三内周面141kとをこの順に有する。また、第二管状分割部140dの外周面は、第二内周面141jに嵌合する第一外周面141eと、第三内周面141kに嵌合する第二外周面141fを有する。第一外周面141eは、ヒーターエレメント100の第二端面101bから遠ざかるにつれて拡径する。第二外周面141fは、第一外周面141eの一端に連結しており、第一外周面141eの一端から遠ざかるにつれて縮径する。
【0135】
図4Cを参照すると、ハニカム構造部の流路の延びる方向に対して第二内周面141jがなす角度θ
1は、例えば0.5°~2.0°とすることができ、0.8°~1.3°とすることが好ましく、0.9°~1.2°とすることがより好ましい。また、ハニカム構造部の流路の延びる方向に対して第三内周面141kがなす角度θ
2は、例えば1.0°~3.0°とすることができ、1.6°~2.5°とすることが好ましく、1.7°~2.4°とすることがより好ましい。
【0136】
第一管状分割部140cが逆テーパー状の第二内周面141jを有することで、外周壁103が緩衝材150によって被覆された状態のヒーターエレメント100を第一管状分割部140cに嵌め込む際、徐々に緩衝材150を圧縮させることができ、円滑な嵌め込み操作が実現できる。また、第一管状分割部140cが逆テーパー状の第二内周面141jを有することで、弾性変形によって第二管状分割部140dを第一管状分割部140cに嵌め込む操作を円滑に行うことができる。更に、第一管状分割部140cがテーパー状の第三内周面141kを有し、第二管状分割部140dが第三内周面141kに嵌合する第二外周面141fを有することによって、第一管状分割部140cと第一管状分割部140cを強固に連結することが可能である。
【0137】
図4A及び
図4Bに示す枠体140における第一枠部141、第二枠部142、第三枠部143、緩衝材150、緩衝材129等の既出の構成要素については、好ましい実施形態を含め、特段の説明のない限り、
図2A及び
図2Bに示す枠体140、及び
図3A及び
図3Bに示す枠体140に関して述べた通りであるので、重複する説明を省略する。
【0138】
上記何れの実施形態に係るヒーターエレメント組立物においても、第一枠部141の内周面141iは、ヒーターエレメント100をしっかりと固定するため、ハニカム構造部の外周壁103の外周面103eと緩衝材150を介して強い摩擦力で嵌合していることが好ましい。具体的には、第一枠部141に保持されているヒーターエレメント100に対して、ハニカム構造部の流路の延びる方向に平行な方向に荷重をかけることで、第一枠部141からヒーターエレメント100を押し抜くのに必要な荷重(「押し抜き荷重」という。)の下限が15N以上であることが好ましく、20N以上であることがより好ましく、25N以上であることが更により好ましい。押し抜き荷重の上限は特に設定されないが、押し抜き荷重を高めようとしてヒーターエレメント100を過度に締め付けるとヒーターエレメントが破損するリスクが生じる。そこで、押し抜き荷重の上限は80N以下であることが好ましく、70N以下であることがより好ましく、60N以下であることが更により好ましい。押し抜き荷重は、例えば、緩衝材150の材質、第一枠部141の内径、摩擦係数等によって調整可能である。
【0139】
押し抜き荷重の測定は、以下の手順で行う。ヒーターエレメント組立物をセルの延びる方向が鉛直方向となるようにして、第一枠部のセルの延びる方向の両端を挟み、ヒーターエレメント組立物の一方の端面の中央部に荷重の影響が無視可能な剛性を有する円形薄板(SUS材等)を設置し、万能試験(例:Instron社製68FM-30)のロードセルで押し抜き荷重を付加することで、ヒーターエレメントを第一枠部から押し抜く。この際の荷重-変位のグラフから、荷重の最高値を読み取り、測定値とする。
なお、第二枠部及び第三枠部が存在する場合、上記押し抜き荷重の測定は、押し抜き方向前方に存在する第二枠部及び第三枠部を除去してから行う。
【0140】
(3.ヒーターエレメントの製造方法)
次に、本発明に係るヒーターエレメントを製造する方法について例示的に説明する。
ヒーターエレメントを構成するハニカム構造部の製造方法は、成形工程及び焼成工程を含む。
成形工程では、BaCO3粉末、TiO2粉末、及び希土類の硝酸塩又は水酸化物の粉末を含むセラミックス原料を含有する坏土を成形し、相対密度が60%以上のハニカム成形体を作製する。
セラミックス原料は、所望する組成となるように各粉末を乾式混合することによって得ることができる。
坏土は、セラミックス原料に、分散媒、バインダ、可塑剤及び分散剤を添加して混練することによって得ることができる。坏土には、シフター、金属酸化物、特性改善剤、導電体粉末等の添加剤を必要に応じて含有させてもよい。
セラミックス原料以外の成分の配合量は、ハニカム成形体の相対密度が60%以上となるような量であれば特に限定されない。
【0141】
ここで、本明細書において「ハニカム成形体の相対密度」とは、セラミックス原料全体の真密度に対するハニカム成形体の密度の割合のことを意味する。具体的には、以下の式によって求めることができる。
ハニカム成形体の相対密度(%)=ハニカム成形体の密度(g/cm3)/セラミックス原料全体の真密度(g/cm3)×100
ハニカム成形体の密度は、純水を媒体とするアルキメデス法により測定することができる。また、セラミックス原料全体の真密度は、各原料の質量を合計した値(g)を、各原料の実の体積を合計した値(cm3)で除することによって求めることができる。
【0142】
分散媒としては、水、又は水とアルコール等の有機溶媒との混合溶媒等を挙げることができるが、特に水を好適に用いることができる。
【0143】
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等の有機バインダを例示することができる。特に、メチルセルロース及びヒドロキシプロポキシルセルロースを併用することが好適である。バインダは一種を単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよいが、アルカリ金属元素を含有していないことが好ましい。
【0144】
可塑剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリカルボン酸系高分子、アルキルリン酸エステル等を例示することができる。
【0145】
分散剤には、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等の界面活性剤を用いることができる。分散剤は、一種を単独で使用するものであっても、二種以上を組み合わせて使用するものであってもよい。
【0146】
ハニカム成形体は、坏土を押出成形することによって作製することができる。押出成形に際しては、所望の全体形状、セル形状、隔壁厚み、セル密度等を有する口金を用いることができる。
【0147】
押出成形によって得られるハニカム成形体の相対密度の下限は、好ましくは60%以上であり、より好ましくは65%以上である。このような範囲にハニカム成形体の相対密度を制御することにより、ハニカム成形体を緻密化し、室温における電気抵抗を低下させることが可能となる。なお、ハニカム成形体の相対密度の上限は、特に限定されないが、一般に80%以下であり、好ましくは75%以下である。
【0148】
ハニカム成形体は、焼成工程の前に乾燥させることができる。乾燥方法としては、特に限定されないが、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等の従来公知の乾燥方法を用いることができる。これらの中でも、成形体全体を迅速かつ均一に乾燥することができる点で、熱風乾燥と、マイクロ波乾燥又は誘電乾燥とを組み合わせた乾燥方法が好ましい。
【0149】
焼成工程は、1150~1250℃で保持した後、20~600℃/時の昇温速度で1360~1430℃の最高温度に昇温させて0.5~10時間保持することを含む。
ハニカム成形体を1360~1430℃の最高温度で0.5~10時間保持することにより、Baの一部が希土類元素で置換されたBaTiO3系結晶粒子を主成分とするハニカム構造部を得ることができる。
また、1150~1250℃で保持することにより、焼成過程で生成するBa2TiO4結晶粒子が除去され易くなるため、ハニカム構造部を緻密化させることができる。
さらに、1150~1250℃から1360~1430℃の最高温度までの昇温速度を20~600℃/時とすることにより、1.0~10.0質量%のBa6Ti17O40結晶粒子をハニカム構造部に生成させることができる。
【0150】
1150~1250℃での保持時間は、特に限定されないが、好ましくは0.5~10時間である。このような保持時間とすることにより、焼成過程で生成するBa2TiO4結晶粒子が安定して除去され易くなる。
【0151】
焼成工程は、昇温時に900~950℃で0.5~5時間保持することを含むことが好ましい。900~950℃で0.5~5時間保持することにより、BaCO3が効率良く分解し、所定の組成を有するハニカム構造部が得られ易くなる。
【0152】
なお、焼成工程の前には、バインダを除去するための脱脂工程を行ってもよい。脱脂工程の雰囲気は、有機成分を完全に分解するために大気雰囲気とすることが好ましい。
また、焼成工程の雰囲気も、電気特性の制御と製造コストの観点から大気雰囲気とすることが好ましい。
焼成工程や脱脂工程に用いられる焼成炉としては、特に限定されないが、電気炉、ガス炉等を用いることができる。
【0153】
このようにして得られたハニカム構造部に、一対の電極層(第一電極層102a及び第二電極層102b)を接合することで、ヒーターエレメントを製造することができる。第一電極層102a及び第二電極層102bは、ハニカム構造部の第一端面101a及び第二端面101bに、スパッタリング、蒸着、電解析出、化学析出のような金属析出法によって形成することができる。また、第一電極層102a及び第二電極層102bは、ハニカム構造部の第一端面101a及び第二端面101bに、電極ペーストを塗布した後、焼き付けることによって形成することもできる。更には溶射によって形成することもできる。第一電極層102a及び第二電極層102bは単層で構成してもよいが、組成の異なる複数の電極層で構成することもできる。上記の方法で第一電極層102a及び第二電極層102bを端面上に形成するとき、電極層の厚みを過度に大きくならないように設定すれば、セルを塞がないようにすることができる。
【0154】
第一電極層102a及び第二電極層102bの形成方法は、限定的ではないが、電極ペーストの焼付け、スパッタリング及び蒸着のような乾式めっき、電解析出及び化学析出のような湿式めっき、金属板又は合金板の接合が挙げられる。それぞれの方法において好適な厚み範囲がある。電極ペーストの焼付けでは5~30μm程度、スパッタリング及び蒸着のような乾式めっきでは100~1000nm程度、溶射では10~100μm程度、電解析出及び化学析出のような湿式めっきでは5~30μm程度とすることができる。また、金属板又は合金板の接合では電極層の厚みを5~100μm程度とすることができる。
【0155】
次いで、第一電極層102aの外表面に第一端子109aを、第二電極層102bの外表面に第二端子109bを接続する。両者の接続方法としては、先述したように、溶接、ろう付け又は機械的接触等の方法が挙げられる。また、第一電極層102a(第二電極層102b)を形成するための電極ペーストの焼付け時に、第一端子109a(第二端子109b)を同時に焼き付けすることで接続してもよい。
【0156】
次いで、必要に応じて、第一端子109a及び第二端子109bに通電部品105a、105bをそれぞれ接続する。両者の接続方法としては、先述したように、溶接、ろう付け又は機械的接触等の方法が挙げられる。
【0157】
次いで、第一電極層102aの外表面の一部を被覆する第一機能材含有層107a、及び、第二電極層102bの外表面の一部を被覆する第二機能材含有層107bを形成する。好ましい実施形態においては、第一端子109aの外表面の一部を被覆する第三機能材含有層111a、及び、第二端子109bの外表面の一部を被覆する第四機能材含有層111bを更に形成する。より好ましい実施形態においては、セル104内部の流路を形成する隔壁106の表面の一部又は全部を被覆する第五機能材含有層113を更に形成する。
【0158】
第一機能材含有層107a、第二機能材含有層107b、第三機能材含有層111a、第四機能材含有層111b及び第五機能材含有層113は、個別に形成してもよいし、同時に形成することもできる。これらの機能材含有層は、例えば、以下の工程により同時に形成可能である。吸湿材等の機能材、バインダ及び分散媒を含むスラリーに機能材含有層を形成前のヒーターエレメントを所定時間浸漬し、ハニカム構造部の外周面の余分なスラリーをブロー及び拭き取りによって除去する。その後、スラリーを乾燥させることによってこれらの機能材含有層を形成することができる。乾燥は、例えば120~600℃程度の温度にヒーターエレメントを加熱しながら行うことができる。浸漬、スラリー除去、及び乾燥の一連の工程は1回のみ実施してもよいが、複数回繰り返すことによって所望の厚さの機能材含有層を電極層等の表面に設けることができる。
【0159】
バインダとしては有機バインダを使用してもよいが、熱によって発煙し、煙中の成分が車室へ流れ込んで車室環境を悪化する懸念があるという理由により、無機バインダを使用することが好ましい。無機バインダの好適な種類は先述した通りである。
【0160】
分散媒は、水、有機溶媒(例:トルエン、キシレン、エタノール、n-ブタノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、テルピネオール、ジヒドロテルピネオール、テキサノール、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル)又はこれらの混合液とすることができる。
【0161】
(4.空調システム)
本発明の一実施形態によれば、上述したヒーターエレメントを備える空調システムが提供される。当該空調システムは、自動車等の各種車両の他、住宅、オフィス、工場、店舗、倉庫、冷凍庫のような建築物、船舶、飛行機のような乗り物の室内空間の改善のために使用できる。
【0162】
(4-1.第一空調システム1000)
図5は、本発明の一実施形態に係る第一空調システム1000の構成を示す模式図である。
第一空調システム1000は、
少なくとも一つのヒーターエレメント100と、
ヒーターエレメント100に電圧を印加するためのバッテリー等の電源200と、
車室等の室内とヒーターエレメント100の入口端面とを連通する流入配管400と、
ヒーターエレメント100の出口端面と室内とを連通する第一経路500aを有する流出配管500と、
室内からの空気を流入配管400を介してヒーターエレメント100の入口端面に流入させるための通風機600と、
を備える。
【0163】
図5に示す空調システムにおいて、ヒーターエレメント100は、入口端面が第一端面101aであり、出口端面が第二端面101bであるように配置されている。しかしながら、ヒーターエレメント100は、入口端面が第二端面101bであり、出口端面が第一端面101aであるように配置することも可能である。ヒーターエレメント100は一つでもよいが、直列又は並列に複数配置してもよい。
【0164】
流出配管500は、第一経路500aに加えて、ヒーターエレメント100の出口端面と車外等の室外とを連通する第二経路500bを有することができる。また、流出配管500は、流出配管500を流通する空気の流れを第一経路500aと第二経路500bの間で切替え可能な切替えバルブ300を有することができる。
【0165】
第一空調システム1000は、
電源200からの印加電圧をオフとし、流出配管500を流通する空気が第一経路500aを通るように切替えバルブ300を切替え、通風機600をオンとする第1のモードと、
電源200からの印加電圧をオンとし、流出配管500を流通する空気が第二経路500bを通るように切替えバルブ300を切替え、通風機600をオンとする第2のモードと、
の運転モードを有することができる。
【0166】
第一空調システム1000は、第1のモードと第2のモードの間の切り替えを実行可能な制御部900を備えることができる。制御部900は、例えば、第1のモードと第2のモードを交互に実行することができるように構成してもよい。第1のモードと第2のモードの切替えを一定サイクルで繰り返すことにより、室内の水蒸気等の除去対象成分を安定的に車外に排出することが可能となる。
【0167】
第1のモードでは、空気中の除去対象成分が除去される。具体的には、室内からの空気は、流入配管400を通ってヒーターエレメント100の入口端面から流入し、ヒーターエレメント100内を通過した後、ヒーターエレメント100の出口端面から流出する。室内からの空気の除去対象成分はヒーターエレメント100を通過する間に除湿材等の機能材に捕捉等されることにより除去される。ヒーターエレメント100の出口端面から流出する除去対象が除去された空気は、流出配管500の第一経路500aを通って室内へと返送される。当該空気は、他の空調システム(例:車両のHVAC)に供給してもよい。
【0168】
第2のモードでは、除湿材等の機能材の再生が行われる。具体的には、室内からの空気は、流入配管400を通ってヒーターエレメント100の入口端面から流入し、ヒーターエレメント100内を通過した後、ヒーターエレメント100の出口端面から流出する。ヒーターエレメント100は通電により発熱し、これによりヒーターエレメント100に担持されている機能材が加熱されるため、機能材に捕捉等された除去対象成分は機能材から離脱、又は反応する。
【0169】
機能材に捕捉等された除去対象成分の離脱を促進するため、機能材の種類に応じて離脱温度以上に機能材を加熱することが好ましい。機能材として吸湿材を使用する場合は吸湿材の少なくとも一部、好ましくは全部を70~150℃に加熱することが好ましく、80~140℃に加熱することがより好ましく、90~130℃に加熱することが更により好ましい。また、第2のモードは、機能材の再生が十分に行われるまでの時間行うことが望ましい。機能材の種類にもよるが、例えば、機能材として吸湿材を使用する場合、第2のモードでは機能材は上記温度範囲に1~10分間加熱されることが好ましく、2~8分間加熱されることがより好ましく、3~6分間加熱されることが更により好ましい。
【0170】
第2のモードでは、室内からの空気は、ヒーターエレメント100を通過する間に機能材から離脱した除去対象成分を同伴しながらヒーターエレメント100の出口端面から流出する。ヒーターエレメント100の出口端面から流出する除去対象成分を含む空気は、流出配管500の第二経路500bを通って室外へと排出される。
【0171】
ヒーターエレメント100に対する印加電圧のオン及びオフの切り替えは、例えば、電源200とヒーターエレメント100の一対の端子109a、109bとを電線810で電気的に接続し、その途中に設けた電源スイッチ910を操作することで可能である。電源スイッチ910の操作は制御部900が実行可能である。
【0172】
通風機600のオン及びオフの切り替えは、例えば、制御部900と通風機600を電線820又は無線で電気的に接続し、通風機600のスイッチ(図示せず)を制御部900によって操作することで可能である。通風機600は、通風量を制御部900によって変化させることができるように構成することもできる。
【0173】
切替えバルブ300の切り替えは、例えば、制御部900と切替えバルブ300を電線830又は無線で電気的に接続し、切替えバルブ300のスイッチ(図示せず)を制御部900によって操作することで可能である。
【0174】
切替えバルブ300としては、電気で駆動し、流路を切換える機能を有するバルブであれば特に制限はないが、電磁弁及び電動弁が挙げられる。一実施形態において、切替えバルブ300は、回転軸310に支持された開閉ドア312と、回転軸310を回動操作するモータ等のアクチュエータ314を備える。アクチュエータ314は制御部900によって制御可能に構成される。
【0175】
第一空調システム1000は、上記の機能を安定して確保する観点から、ヒーターエレメント100が室内に近い位置に配置されることが望ましい。よって、感電防止等の観点から、駆動電圧が60V以下であることが好ましい。ヒーターエレメント100に用いられているハニカム構造部は、室温における電気抵抗が低いため、この低い駆動電圧でのハニカム構造部の加熱が可能である。なお、駆動電圧の下限は、特に限定されないが、10V以上であることが好ましい。駆動電圧が10V未満であると、ハニカム構造部の加熱時の電流が大きくなるため、電線810を太くする必要がある。従って、第一空調システム1000の駆動電圧は、例えば10V以上60V以下とすることができる。
【0176】
図5に示す実施形態において、通風機600は、ヒーターエレメント100の上流側に設置されている。より詳細には、通風機600は、ヒーターエレメント100と室内とを連通する流入配管400の途中に設置されており、通風機600を通過した空気がヒーターエレメント100に対して押し込まれるように流入する。別法として、通風機600は、ヒーターエレメント100の下流側に設置してもよい。この場合、通風機600は例えば流出配管500の途中に設置することができ、流入配管400を通過した空気はヒーターエレメント100に吸い込まれるように流入する。
【実施例0177】
[1.ハニカム構造部の仕様]
以下の仕様のハニカム構造部を用意した。
・流路の延びる方向に直交するハニカム構造部の断面及び端面の形状:四角(曲率半径6mm以上)
・流路の延びる方向に直交するセルの開口形状:角部がR面取りされた正方形
・隔壁の厚さ:0.100mm
・外周壁の厚さ:0.3mm
・セル密度:80セル/cm2
・セルピッチ:1.11mm
・セルの開口率:0.797
・ハニカム構造部の流路の延びる方向に直交する断面のサイズ:90mm×90mm
・ハニカム構造部の流路の延びる方向の長さ:12mm
・外周壁及び隔壁を構成する材料の25℃における体積抵抗率:15Ω・cm
・外周壁及び隔壁を構成する材料のキュリー点:120℃
・外周壁及び隔壁を構成する材料:チタン酸バリウム
・外周壁及び隔壁を構成する材料の密度:5750kg/m3
・外周壁及び隔壁を構成する材料の比熱:550J/kg/K
【0178】
[2.使用した機能材(吸湿材)の特性]
吸湿材として市販の非晶質ケイ酸アルミニウムを用意した。180℃で2時間以上乾燥後の非晶質ケイ酸アルミニウム5gを、室温(25℃)、相対湿度50%の恒温恒湿器内に一時間放置した。恒温恒湿器から取り出した非晶質ケイ酸アルミニウムの増加質量から、乾燥質量1g当たり吸着できる水の質量(g)を求めたところ、15g/gであった。
【0179】
180℃で2時間以上乾燥後の非晶質ケイ酸アルミニウム5gを、相対湿度50%の恒温恒湿器内に入れ、種々の温度で一時間放置したときの質量変化を調査した。これにより、乾燥質量1g当たり吸着できる水の質量(g)が5g/g以上である温度範囲を求めたところ、10℃~25℃であった。
【0180】
180℃で2時間以上乾燥後の非晶質ケイ酸アルミニウム5gを、室温(25℃)、相対湿度50%の恒温恒湿器内に一時間放置することで水分吸着させた。水分吸着後の非晶質ケイ酸アルミニウムを、相対湿度50%の恒温恒湿器内に入れ、種々の温度で0.1時間放置したときの質量変化を調査した。水分吸着後の非晶質ケイ酸アルミニウムに対する質量の減少割合が、30%となる最低温度を水分離脱温度としたところ、70℃であった。
【0181】
[3.ヒーターエレメント組立物の製造]
以下の実施例及び比較例に係るヒーターエレメントをそれぞれ、各種分析及び試験に必要なだけ製造した。
【0182】
<実施例1>
上記ハニカム構造部の両端面(第一端面101a及び第二端面101b)に、アルミニウム粉末をバインダー樹脂と混合したペーストを塗布し、焼き付けし、一対の電極層(第一電極層102a及び第二電極層102b)を、それぞれ焼成による焼き付けより接合した(25℃における体積抵抗率:2.0×10-7Ω・cm)。
第一端面101a(第二端面101b)におけるセル104の開口部を除く部分(隔壁部分及び外周壁部分)の面積のうち、第一電極層102a(第二電極層102b)によって第一端面101a(第二端面101b)が被覆された面積の割合(被覆率)を、両者の面積に基づき算出したところ、99%であった。
また、第一電極層102a(第二電極層102b)の厚み全体の平均値、外周部以外の部分における厚みの平均値及び外周部における厚みの平均値を先述した測定方法により測定した。結果を表1に示す。
なお、第一電極層102a及び第二電極層102bの条件は同一である。
【0183】
次いで、純アルミニウム製(A1050)(25℃における体積抵抗率:2.0×10-7Ω・cm)の平面寸法が100mm×4mm、厚みが1mmの矩形板状の第一端子109a及び第二端子109bを、第一電極層102a及び第二電極層102bの外表面であって、第一端面101a及び第二端面101bの外周部のみにそれぞれはんだ付けにより接続した。
【0184】
第一端面101a(第二端面101b)の面積に対して、第一端子109a(第二端子109b)が第一端面101a(第二端面101b)を被覆する面積の割合(被覆率)を両者の面積に基づいて算出したところ、3%であった。
なお、第一端子109a及び第二端子109bの条件は同一である。
【0185】
次いで、非晶質ケイ酸アルミニウム粉末、シリカ粉末、溶媒(水)を質量比で非晶質ケイ酸アルミニウム:シリカ:溶媒=95:5:100となるように混合し、攪拌することで吸湿材スラリーを作製した。得られた吸湿材スラリーを第一電極層102aの外表面及び第二電極層102bの外表面に刷毛塗りの方法で塗布した後、乾燥機内で190℃で2時間乾燥することで、第一機能材含有層107a及び第二機能材含有層107bを形成し、ヒーターエレメントを作製した。
なお、第一機能材含有層107a及び第二機能材含有層107bの作製条件は同一である。
【0186】
第一電極層102a(第二電極層102b)の外表面のうち、第一端子109a(第二端子109b)が接続されていない部分の面積に対して、第一機能材含有層107a(第二機能材含有層107b)が第一電極層102a(第二電極層102b)の外表面を被覆する面積の割合(被覆率)を両者の面積に基づいて算出したところ、95%以上であった。また、第一機能材含有層107a(第二機能材含有層107b)の平均厚みを先述した測定方法により測定したところ、200μmであった。
【0187】
先述した手順により、第一機能材含有層107a及び第二機能材含有層107bに対して、電気抵抗測定をそれぞれ12箇所行った。このときの電気抵抗の範囲(最小値~最大値)は何れも3.0×106~4.0×106Ωであった。
【0188】
上記の手順で得られたヒーターエレメントのハニカム構造部の外周壁103の外周面103eに対応する断面略四角形状の内周面141iをもつ樹脂製の第一枠部141を有する筒状の枠体140を射出成形又は母材からの切削加工により成形した。この枠体140は、第二枠部142及び第三枠部143を何れも有しない。当該ヒーターエレメントのハニカム構造部の外周壁103の外周面103eに環状の緩衝材150を嵌め込んだ。次いで、ハニカム構造部の外周壁103の外周面103eに、緩衝材150を介して第一枠部141の内周面141iに嵌合するように、枠体140を当該ヒーターエレメントに嵌め込むことで、ヒーターエレメント組立物を組み立てた。
【0189】
表1に、第一枠部141に使用した市販の樹脂について以下の条件を示す。
R1:種類
R2:ASTM D785-2008 R15に準拠して測定されるロックウェル硬さ(HRR及びHRM)
R3:JIS R1611:2010に準拠して測定される25℃における熱伝導率
R4:JIS K7191-1:2015に規定される荷重たわみ温度
R5:融点
R6:JIS C2139:2008に準拠して測定される25℃における体積抵抗率
【0190】
表1に、ハニカム構造部の外周壁103の外周面103eと、第一枠部141の内周面141iの間に配置された緩衝材150について、材料、ヤング率、圧縮方向の厚み変位率、及び、緩衝材が受ける圧力を示す。表中、圧縮された緩衝材の圧縮方向の厚み変位率は、次式により求めた。変位率(%)=(1-圧縮後の緩衝材の厚み/圧縮前の緩衝材の厚み)×100
【0191】
<実施例2、3>
第一枠部141に使用した樹脂のロックウェル硬さを表1に記載の条件に変更した他は、実施例1と同様の条件でヒーターエレメント組立物を組み立てた。なお、使用した樹脂は市販のものである。
【0192】
<実施例4~7>
表1に記載の種類及びヤング率を有する市販の緩衝材150を使用し、ハニカム構造部の外周壁103の外周面103eと、第一枠部141の内周面141iの間に、緩衝材150を表1に記載の条件で配置した他は、実施例1と同様の条件でヒーターエレメント組立物を組み立てた。
【0193】
<実施例8>
実施例1と同じ製造条件でヒーターエレメント組立物を組み立てた後、第一枠部141から第一端面101aの外周輪郭Cよりも内周側に向かって延設され、第一端面101aの外周部の一部を囲う第二枠部142と、第一枠部141から第二端面101bの外周輪郭Cよりも内周側に向かって延設され、第二端面101bの外周部の一部を囲う第三枠部143を、接着剤により、第一端面101a及び第二端面101bの周方向に等間隔にそれぞれ1個取り付けた。この際、第二枠部142(第三枠部143)は、緩衝材129を介して、第一端子109a(第二端子109b)を第一端面101a(第二端面101b)に向かって押し付けるように固定した。緩衝材129について、材料、ヤング率、圧縮方向の厚み変位率、及び、緩衝材が受ける圧力は表1に示す。
【0194】
第二枠部142及び第三枠部143の材質は第一枠部141と同じである。
第二枠部142(第三枠部143)が第一端面101a(第二端面101b)を囲う領域の幅Yは、5mmとした。
第二枠部142(第三枠部143)を、第一端面101a(第二端面101b)側から観察したときに、第二枠部142(第三枠部143)の面積(第二枠部142(第三枠部143)が複数ある場合はそれらの合計面積を指す。)が、第一端面101a(第二端面101b)の面積に対して占める割合は5%とした。
【0195】
<実施例9>
ハンディーローラーを用いて、第一電極層102a及び第二電極層102bの外周部における平均厚みを表1に記載の値に変更した以外は、実施例1と同様の条件でヒーターエレメント組立物を組み立てた。
【0196】
<実施例10(径方向分割タイプの枠体)>
実施例1と同じ手順で得られたヒーターエレメントのハニカム構造部の外周壁103の外周面103eに環状の緩衝材150を嵌め込んだ。次いで、
図2Cに示すような一対の半割れ部材140a、140b(但し、ヒーターエレメントの外周面に対応する断面略コ字状の内周面をもつ。)を、ハニカム構造部の流路の延びる方向に対して垂直な方向から、緩衝材150付きのヒーターエレメントを挟むようにして、連結部144によって連結することで枠体140を構築し、ヒーターエレメント組立物を組み立てた。なお、一対の半割れ部材140a、140bは射出成形又は母材からの切削加工により成形した。
【0197】
連結部144は、プレスフィット方式の凸部144a及び凹部144bを有しており、一方の半割れ部材140aが有する凸部144aを他方の半割れ部材140bが有する凹部144bに弾性変形させながら押し込むと、連結状態が凸部144a及び凹部144bの復元力によって維持される。この際、一対の半割れ部材140a、140bの間には、表1に記載の材料、圧縮方向の厚み変位率及びヤング率を有する緩衝材145を挟み込んだ。その他、特段の断りのない条件は、実施例1と同じである。
【0198】
<実施例11(軸方向分割タイプの枠体)>
実施例1と同じ手順で得られたヒーターエレメントのハニカム構造部の外周壁103の外周面103eに環状の緩衝材150を嵌め込んだ。次いで、
図4Cに示すような、第一枠部141及び第二枠部142を有する第一管状分割部140cと、第三枠部143を有する第二管状分割部140dとを、緩衝材150付きのヒーターエレメントを挟むようにして、ハニカム構造部の流路の延びる方向に対して平行な方向から連結することで枠体140を構築し、ヒーターエレメント組立物を組み立てた。この際、第二枠部142とハニカム構造部の第一端面101aの外周部の間、及び、第三枠部143とハニカム構造部の第二端面101bの外周部の間にそれぞれ緩衝材129を挟み込んだ。なお、第一管状分割部140c及び第二管状分割部140dは、射出成形又は母材からの切削加工により成形した。
【0199】
第一管状分割部140cは、ハニカム構造部の外周壁103の外周面103eに対応する断面略四角形状の内周面であって、この外周面103eに緩衝材150を介して嵌合する第一内周面141iと、第一内周面141iの一端に連結し、第一内周面141iの一端から遠ざかるにつれて拡径する(逆テーパー状の)第二内周面141jと、第二内周面141jの一端に連結し、第二内周面141jの一端から遠ざかるにつれて縮径する(テーパー状の)第三内周面141kとをこの順に有する。また、第二管状分割部140dの外周面は、第二内周面141jに嵌合する第一外周面141eと、第三内周面141kに嵌合する第二外周面141fを有する。第一外周面141eは、ヒーターエレメント100の第二端面101bから遠ざかるにつれて拡径する。第二外周面141fは、第一外周面141eの一端に連結しており、第一外周面141eの一端から遠ざかるにつれて縮径する。
【0200】
ハニカム構造部の流路の延びる方向に対して第二内周面141jがなす角度θ1は、2.0°とした。
ハニカム構造部の流路の延びる方向に対して第三内周面141kがなす角度θ2は、2.0°とした。
【0201】
枠体を構成する第一枠部141、第二枠部142及び第三枠部143の材質は表1に記載の通りである。緩衝材150及び緩衝材129の条件は表1に記載の通りである。その他、特段の断りのない条件は、実施例1と同じである。
【0202】
<比較例1>
第一枠部の内径を3%縮め、緩衝材150を使用しなかった他は、実施例1と同じ製造条件でヒーターエレメント組立物を組み立てた。
【0203】
[4.ヒーターエレメント組立物の特性]
<押し抜き荷重>
先述した測定方法に従い、万能試験機(Instron社製68FM-30)を用いて第一枠部141からヒーターエレメント100を押し抜くのに必要な荷重(押し抜き荷重)を測定した。結果を表1に示す。
【0204】
<ヒーターエレメントの保持性>
上記の手順で得られた各実施例及び比較例に係るヒーターエレメント組立物の第一端子及び第二端子の間に13Vの電圧を印加することで通電しながら、流量40L/minで空気(25℃)をヒーターエレメント組立物の流路に流すことで、3分間加熱し、ヒーターエレメントが平均120℃以上に到達することを確認した。通電を停止後、25℃の空気を3分間750L/min流通させ、ヒーターエレメントを平均25℃以下に冷却した。その後、再度13Vの電圧を印加し、流量40L/minで空気(25℃)をヒーターエレメント組立物の流路に流すことで、3分間加熱したときに、ヒーターエレメントが破損又は枠体から脱落せずに、平均120℃以上に到達可能か否かを調査した。ヒーターエレメントの枠体への保持性を以下の基準に基づき評価した。
〇:再加熱時にヒーターエレメントが破損又は枠体から脱落せずに、平均120℃以上に到達した。
×:再加熱時にヒーターエレメントが破損又は枠体から脱落した。
【0205】
<圧力損失>
上記の手順で得られた各実施例及び比較例に係るヒーターエレメント組立物の流路に、一方の端面側から流量750L/minで空気(25℃)を流したときの両端面間の圧力損失を測定した。評価は以下の基準に基づいて行った。
×:ヒーターエレメントが保持できないため、圧力損失を測定できなかった。
〇:圧力損失が58.2Pa超、60Pa未満
【0206】
上記の冷熱試験の結果から、緩衝材を介して樹脂製の枠体でヒーターエレメントを保護することで、金属枠に比べてヒーターエレメントに対する保持性能が高い、すなわちヒーターエレメントに対する保護性能が高いヒーターエレメント組立物が得られることが理解できる。また、上記の圧力損失の測定結果から、実施例に係る枠体はガスを流す際に圧力損失を最小限に抑えることが可能である。これは、実施例に係る枠体はセルの開口を塞ぐ必要はなく、また、ヒーターエレメントの端面側を補助的に保護する場合でもセルの開口を塞ぐ面積を最小限にすることができるからである。
【0207】
【0208】