(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144214
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】カートリッジフィルタ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B01D 39/14 20060101AFI20241003BHJP
D01F 6/04 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B01D39/14 D
B01D39/14 C
D01F6/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024039941
(22)【出願日】2024-03-14
(31)【優先権主張番号】P 2023053494
(32)【優先日】2023-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000120010
【氏名又は名称】宇部エクシモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003753
【氏名又は名称】弁理士法人シエル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木暮 勇
(72)【発明者】
【氏名】松田 篤典
【テーマコード(参考)】
4D019
4L035
【Fターム(参考)】
4D019AA01
4D019AA03
4D019BA03
4D019BA04
4D019BA12
4D019BA13
4D019BB20
4D019BD02
4D019CA03
4D019CB06
4D019DA02
4D019DA03
4L035FF01
(57)【要約】
【課題】高濾過効率で、かつ、通気抵抗や通液抵抗が低いフィラメントワインド型カートリッジフィルタ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】有孔芯材1と、有孔芯材1上にフィラメントを巻回して形成された濾過層2とを有するカートリッジフィルタについて、濾過層2を、有孔芯材1上に形成された第1濾過層21と、第1濾過層21上に形成された第2濾過層22と、第2濾過層22上に形成された第3濾過層23と備える構成にし、第2濾過層22の糸密度を第1濾過層21及び第3濾過層23の糸密度よりも高くする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有孔芯材と、
前記有孔芯材上にフィラメントを巻回して形成された濾過層と、
を有し、
前記濾過層は、前記有孔芯材上に形成された第1濾過層と、該第1濾過層上に形成された第2濾過層と、該第2濾過層上に形成された第3濾過層と、を備え、
前記第2濾過層は、前記第1濾過層及び前記第3濾過層よりも糸密度が高い
カートリッジフィルタ。
【請求項2】
前記第2濾過層の糸密度をd(g/cm3)としたとき、前記第1濾過層及び前記第3濾過層の糸密度は0.9d(g/cm3)以下である
請求項1に記載のカートリッジフィルタ。
【請求項3】
前記第2濾過層の糸密度をd(g/cm3)としたとき、前記第1濾過層及び前記第3濾過層の糸密度は0.7d(g/cm3)以下である
請求項2に記載のカートリッジフィルタ。
【請求項4】
前記第1濾過層の糸密度は0.1~0.4g/cm3であり、
前記第2濾過層の糸密度は0.2~0.7g/cm3であり、
前記第3濾過層の糸密度は0.1~0.4g/cm3である
請求項1~3のいずれか1項に記載のカートリッジフィルタ。
【請求項5】
有孔芯材上にフィラメントを巻回して濾過層を形成する濾過層形成工程を有し、
前記濾過層形成工程では、前記有孔芯材上にフィラメントを巻きつけて第1濾過層を形成し、前記第1濾過層上に該第1濾過層よりも糸密度が高くなるようフィラメントを巻きつけて第2濾過層を形成し、更に前記第2濾過層上に該第2濾過層よりも糸密度が低くなるようフィラメントを巻きつけて第3濾過層を形成するカートリッジフィルタの製造方法。
【請求項6】
前記濾過層形成工程では、前記第2濾過層を構成するフィラメントの繊度を、前記第1濾過層及び前記第3濾過層を構成するフィラメントの繊度よりも大きくする請求項5に記載のカートリッジフィルタの製造方法。
【請求項7】
前記第2濾過層の糸密度をd(g/cm3)としたとき、前記第1濾過層及び前記第3濾過層の糸密度を0.7d(g/cm3)以下にする請求項6に記載のカートリッジフィルタの製造方法。
【請求項8】
前記濾過層形成工程では、前記第1~3濾過層を繊度が同じであるフィラメントで構成し、巻き取り条件を変更することにより前記第2濾過層の糸密度を前記第1濾過層及び第3濾過層の糸密度よりも高くする請求項5に記載のカートリッジフィルタの製造方法。
【請求項9】
前記第2濾過層の糸密度をd(g/cm3)としたとき、前記第1濾過層及び前記第3濾過層の糸密度を0.9d(g/cm3)以下にする請求項8に記載のカートリッジフィルタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有孔芯材にフィラメントを巻きつけた構造のフィラメントワインド型カートリッジフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
液体や気体の濾過に用いられるカートリッジフィルタには、筒状の有孔芯材に紡績糸やマルチフィラメントを巻きつけたもの、シート状又は糸状の不織布を筒状の有孔芯材に巻きつけもの、芯材を用いずに不織布シート自体を筒状に加工したものなどがある。また、融点の異なる2成分からなる熱接着性複合繊維ウェブを円筒状に成形した筒状濾過材の外周に、スライバー又はマルチフィラメントを巻回して、筒状濾過材よりも繊維密度が粗な濾過層を形成したカートリッジフィルタも提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
これらのカートリッジフィルタは、用途や要求される性能に応じて適宜選択して使用されているが、特に、フィラメントワインド型カートリッジフィルタは、大掛かりな設備を必要とせず、低コストで製造できることから、幅広い用途に使用されている。例えば、従来、ポリオレフィン製であって、繊維油剤が実質上付着しておらず、かつ流体による捲縮が付与されたマルチフィラメントを用いて製造されたフィラメントワインド型カートリッジフィルタが提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平3-32917号公報
【特許文献2】特開2002-138335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のフィラメントワインド型カートリッジフィルタは、濾過効率(粒子除去効率)を向上させるためにフィラメントを密に巻きつけると、通気抵抗や通液抵抗が高くなり、一度に処理できる量が限られたり、フィルタの寿命が短くなったりするという問題点がある。
【0006】
そこで、本発明は、高濾過効率で、かつ、通気抵抗や通液抵抗が低いフィラメントワインド型カートリッジフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るカートリッジフィルタは、有孔芯材と、前記有孔芯材上にフィラメントを巻回して形成された濾過層とを有し、前記濾過層は、前記有孔芯材上に形成された第1濾過層と、該第1濾過層上に形成された第2濾過層と、該第2濾過層上に形成された第3濾過層とを備え、前記第2濾過層は、前記第1濾過層及び前記第3濾過層よりも糸密度が高い。
本発明のカートリッジフィルタでは、前記第2濾過層の糸密度をd(g/cm3)としたとき、前記第1濾過層及び前記第3濾過層の糸密度は、例えば0.9d(g/cm3)以下とすればよく、また、0.7d(g/cm3)以下にしてもよい。
また、本発明のカートリッジフィルタは、例えば、前記第1濾過層の糸密度を0.1~0.4g/cm3とし、前記第2濾過層の糸密度を0.2~0.7g/cm3とし、前記第3濾過層の糸密度を0.1~0.4g/cm3とすることができる。
【0008】
本発明に係るカートリッジフィルタの製造方法は、有孔芯材上にフィラメントを巻回して濾過層を形成する濾過層形成工程を有し、前記濾過層形成工程では、前記有孔芯材上にフィラメントを巻きつけて第1濾過層を形成し、前記第1濾過層上に該第1濾過層よりも糸密度が高くなるようフィラメントを巻きつけて第2濾過層を形成し、更に前記第2濾過層上に該第2濾過層よりも糸密度が低くなるようフィラメントを巻きつけて第3濾過層を形成する。
前記濾過層形成工程では、前記第2濾過層を構成するフィラメントの繊度を、前記第1濾過層及び前記第3濾過層を構成するフィラメントの繊度よりも大きくしてもよい。その場合、前記第2濾過層の糸密度をd(g/cm3)としたとき、前記第1濾過層及び前記第3濾過層の糸密度は、例えば0.7d(g/cm3)以下にすることができる。
又は、前記濾過層形成工程では、前記第1~3濾過層を繊度が同じであるフィラメントで構成し、巻き取り条件を変更することにより前記第2濾過層の糸密度を前記第1濾過層及び第3濾過層の糸密度よりも高くすることもできる。その場合は、前記第2濾過層の糸密度をd(g/cm3)としたとき、前記第1濾過層及び前記第3濾過層の糸密度は、例えば0.9d(g/cm3)以下にすればよい。
また、前記第1濾過層の糸密度を0.1~0.4g/cm3、前記第2濾過層の糸密度を0.2~0.7g/cm3、前記第3濾過層の糸密度を0.1~0.4g/cm3にすることもできる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、フィラメントワインド型カートリッジフィルタについて、高濾過効率を維持しつつ、通気抵抗や通液抵抗を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係るカートリッジフィルタの構成を模式的に示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について、添付の図面を参照して、詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0012】
図1は本発明の実施形態に係るカートリッジフィルタの構成を模式的に示す横断面図である。本実施形態のカートリッジフィルタは、芯材に濾材となる紡績糸(フィラメント)を巻きつけたフィラメントワインド(糸巻き)型のカートリッジフィルタであって、
図1に示すように、有孔芯材1と、濾過層2とを有する。
【0013】
[有孔芯材1]
有孔芯材1は、側面に多数の孔が形成された筒状部材であり、孔の大きさ、形状、数及び位置は特に限定されず、カートリッジフィルタの用途や要求される性能に応じて適宜選択することができる。また、有孔芯材1の材質も特に限定されるものではなく、例えば、ステンレスなどの金属材料、ポリプロピレン(PP)やポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂材料により形成することができる。
【0014】
[濾過層2]
濾過層2は、有孔芯材1上にフィラメントを巻回することにより形成されている。濾過層2を構成するフィラメントには、例えば、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維及びナイロン繊維などの合成繊維、綿(コットン)繊維などの天然繊維、炭素繊維、ガラス繊維などを用いることができるが、性能やコストの面から、ポリオレフィン繊維が好ましい。
【0015】
濾過層2を構成するフィラメントには、例えばエチレン、プロピレン、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテンなどのα-オレフィンの単独重合体やこれらの共重合体、又は、これらと他の共重合可能な不飽和単量体との共重合体などを用いることができる。これらの中でも、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン及び低密度ポリエチレンや直鎖状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体などのポリエチレン類、プロピレン単独重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体やランダム共重合体、プロピレン-エチレン-ジエン化合物共重合体などのポリプロピレン類、ポリ1-ブテン、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)などが好ましい。
【0016】
特に、耐化学薬品性、機械特性及び紡糸性などの観点から、ポリプロピレン類が好ましく、結晶性ポリプロピレン系樹脂がより好ましい。ここで、結晶性ポリプロピレン系樹脂としては、例えば結晶性を有するアイソタクチックプロピレン単独重合体、エチレン単位の含有量の少ないエチレン-プロピレンランダム共重合体、プロピレン単独重合体からなるホモ部とエチレン単位の含有量の比較的多いエチレン-プロピレンランダム共重合体からなる共重合部とから構成されたプロピレンブロック共重合体、そのプロピレンブロック共重合体における各ホモ部又は共重合部が1-ブテンなどのα-オレフィンを共重合したものからなる結晶性のプロピレン-エチレン-α-オレフィン共重合体などが挙げられる。
【0017】
また、本実施形態のカートリッジフィルタの濾過層2は、有孔芯材1上に、第1濾過層21、第2濾過層22及び第3濾過層23がこの順に積層された3層構造となっており、中間層である第2濾過層22の糸密度が、他の層(第1濾過層21及び第3濾過層23)よりも高くなっている。このように、濾過層2の糸密度を粗/密/粗とすることにより、通気抵抗や通液抵抗を低く抑えつつ、濾過効率(粒子除去効率)を高めることができる。
【0018】
具体的には、第2濾過層22の糸密度をd(g/cm3)としたとき、第1濾過層21及び前記第3濾過層23の糸密度を0.9(g/cm3)以下にすることが好ましく、0.7d(g/cm3)以下にすることがより好ましい。これにより、各層で捕集する粒子径の役割分担がより明確になり、通気抵抗や通液抵抗を低く抑えつつ濾過効率(粒子除去効率)をさらに高めることができる。
【0019】
各層の糸密度の値は、用途や要求される濾過性能に応じて適宜選択することができ、例えば、飲料、工業薬品類及び工業用水などに用いられるカートリッジフィルタの場合は、第1濾過層の糸密度を0.1~0.4g/cm3、第2濾過層の糸密度を0.2~0.7g/cm3、第3濾過層の糸密度を0.1~0.4g/cm3とすればよい。なお、各層の糸密度は、第1濾過層を0.15~0.35g/cm3、第2濾過層を0.25~0.65g/cm3、第3濾過層を0.15~0.35g/cm3とすることが好ましく、第1濾過層を0.2~0.3g/cm3、第2濾過層を0.3~0.6g/cm3、第3濾過層を0.2~0.3g/cm3とすることがより好ましい。
【0020】
なお、第1濾過層及び第3濾過層の糸密度は、第2濾過層よりも低ければ、同じにしてもよく、異なっていてもよい。また、第1~第3濾過層の厚さも、特に限定されるものではなく、要求される濾過性能に応じて適宜選択することができる。更に、本実施形態のカートリッジフィルタは、濾過層2が3層構造のものに限定されるものではなく、隣接する層の糸密度が相互に異なり、かつ、中間に位置する層の糸密度が、最内層及び最外層の糸密度よりも高くなっていれば、4層以上で構成されていてもよい。
【0021】
[製造方法]
次に、前述したカートリッジフィルタの製造方法について説明する。本実施形態のカートリッジフィルタは、有孔芯材1上に、糸密度が粗になるようフィラメントを巻きつけて第1濾過層21を形成し、その上に第1濾過層21よりも糸密度が高くなるようフィラメントを巻きつけて第2濾過層22を形成し、更にその上に第2濾過層22よりも糸密度が低くなるようフィラメントを巻きつけて第3濾過層23を形成すればよい。
【0022】
第1~第3濾過層の糸密度は、例えばフィラメントを構成する繊維の太さを変更することで調整してもよく、また、同一フィラメントを使用して巻取り条件を変更することにより調整してもよい。具体的には、第2濾過層22を構成するフィラメントの繊度を、第1濾過層21及び第3濾過層23を構成するフィラメントの繊度よりも大きくすることで、第2濾過層22の糸密度を第1濾過層21及び第3濾過層23の糸密度よりも高くすることができる。その場合、第2濾過層22の糸密度をd(g/cm3)としたとき、第1濾過層21及び第3濾過層23の糸密度を0.7d(g/cm3)以下にすることができる。
【0023】
また、例えば、第1~3濾過層21~23を同繊度のフィラメントで構成し、巻き取り条件を変更することにより、第2濾過層22の糸密度を第1濾過層21及び第3濾過層23の糸密度よりも高くしてもよい。その場合、第2濾過層22の糸密度をd(g/cm3)としたとき、第1濾過層21及び第3濾過層23の糸密度を0.9d(g/cm3)以下にすることができる。
【0024】
以上詳述したように、本実施形態のカートリッジフィルタは、濾過層を少なくとも3層構造とし、糸密度が高い第2濾過層を、糸密度が低い第1濾過層と第3濾過層で挟む構成にしているため、第2濾過層により濾過効率を高めつつ、第1濾過層及び第3濾過層により通気抵抗や通液抵抗を低減することができる。その結果、高濾過効率で、かつ、通気抵抗や通液抵抗が低いフィラメントワインド型カートリッジフィルタを実現できる。
【実施例0025】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明の効果について具体的に説明する。
【0026】
<第1実施例>
本発明の第1実施例として、下記の方法・条件で実施例及び比較例のカートリッジフィルタを作製し、その性能を評価した。
【0027】
〔実施例1〕
先ず、内径30mm、長さ250mmのポリプロピレン(PP)製多孔管に、単糸繊度が11.1dTexのポリプロピレン(PP)繊維を480本束ねたフィラメントを、糸密度が0.27g/cm3になるように長さ124mに亘って巻きつけて、第1濾過層を形成した。次に、第1濾過層上に、単糸繊度が0.2dTexで、鞘材がポリエチレン(PE)、芯材がポリプロピレン(PP)である鞘芯複合繊維(鞘:芯=50:50)を42,400本束ねたフィラメントを、糸密度が0.53g/cm3になるように長さ10mに亘って巻きつけて、第2濾過層を形成した。
【0028】
引き続き、第2濾過層上に、単糸繊度が11.1dTexのポリプロピレン(PP)繊維を480本束ねたフィラメントを、糸密度が0.27g/cm3になるように長さ171mに亘って巻きつけて、第3濾過層を形成し、実施例1のカートリッジフィルタを得た。この実施例1のカートリッジフィルタは、粒径7.5μmの粒子の捕集効率(濾過効率)は50%、粒径10μmの粒子の捕集効率(濾過効率)は100%であり、通気抵抗は340mmAqであった。
【0029】
〔比較例1〕
実施例1で用いたものと同じ多孔管に、単糸繊度が11.1dTexのポリプロピレン(PP)繊維を240本束ねたフィラメントを、糸密度が0.313g/cm3になるように長さ619mに亘って巻きつけて、濾過層が単層構造の比較例1のカートリッジフィルタを得た。この比較例1のカートリッジフィルタは、粒径7.5μmの粒子の捕集効率(濾過効率)は60%、粒径10μmの粒子の捕集効率(濾過効率)は100%であり、通気抵抗は640mmAqであった。
【0030】
〔比較例2〕
実施例1で用いたものと同じ多孔管に、単糸繊度が11.1dTexのポリプロピレン(PP)繊維を480本束ねたフィラメントを、糸密度が0.294g/cm3になるように長さ291mに亘って巻きつけて、濾過層が単層構造の比較例2のカートリッジフィルタを得た。この比較例2のカートリッジフィルタは、粒径7.5μmの粒子の捕集効率(濾過効率)は10%、粒径10μmの粒子の捕集効率(濾過効率)は30%であり、通気抵抗は220mmAqであった。
【0031】
以上の結果を、下記表1にまとめて示す。なお、下記表1に示す実施例1及び比較例1,2の各カートリッジフィルタの捕集効率は、リオン株式会社製 微粒子計測器 KS-42Dにより測定した。また、通気抵抗は、U字管マノメータ法により測定した。
【0032】
【0033】
上記表1に示すように、濾過層を3層構造にし、その中間層の糸密度を他の層よりも高くした実施例1のカートリッジフィルタは、濾過効率(捕集効率)が高く、通気抵抗も低かった。これに対して、濾過層を比較的糸密度が高い単層構造にした比較例1のカートリッジフィルタは、粒径7.5μmの粒子の濾過効率(捕集効率)は向上したが、通気抵抗が実施例1の2倍近くまで大幅に増加した。一方、濾過層を比較的糸密度が低い単層構造にした比較例2のカートリッジフィルタは、通気抵抗は低下したが、粒子の濾過効率(捕集効率)が著しく低下した。
【0034】
<第2実施例>
本発明の第2実施例として、下記の方法・条件で実施例及び比較例のカートリッジフィルタを作製し、その性能を評価した。
【0035】
〔実施例2〕
実施例1で用いたものと同じ多孔管に、単糸繊度が11.1dTexのポリプロピレン(PP)繊維を480本束ねたフィラメントを、糸密度が0.26g/cm3になるように長さ23mに亘って巻きつけて、第1濾過層を形成した。次に、第1濾過層上に、単糸繊度が11.1dTexのポリプロピレン(PP)繊維を480本束ねたフィラメントを、糸密度が0.31g/cm3になるように長さ268mに亘って巻きつけて、第2濾過層を形成した。
【0036】
引き続き、第2濾過層上に、単糸繊度が11.1dTexのポリプロピレン(PP)繊維を480本束ねたフィラメントを、糸密度が0.26g/cm3になるように長さ44mに亘って巻きつけて、第3濾過層を形成し、実施例2のカートリッジフィルタを得た。この実施例2のカートリッジフィルタは、粒径7μmの粒子の捕集効率(濾過効率)は62%、粒径10μmの粒子の捕集効率(濾過効率)は92%であり、通気抵抗は542mmAqであった。
【0037】
〔比較例3〕
実施例1で用いたものと同じ多孔管に、単糸繊度が11.1dTexのポリプロピレン(PP)繊維を480本束ねたフィラメントを、糸密度が0.31g/cm3になるように長さ340mに亘って巻きつけて、濾過層が単層構造の比較例3のカートリッジフィルタを得た。この比較例3のカートリッジフィルタは、粒径7μmの粒子の捕集効率(濾過効率)は45%、粒径10μmの粒子の捕集効率(濾過効率)は85%であり、通気抵抗は576mmAqであった。
【0038】
以上の結果を、下記表2にまとめて示す。なお、下記表2に示す実施例2及び比較例3のカートリッジフィルタの捕集効率は、リオン株式会社製 微粒子計測器 KS-42Dにより測定した。また、通気抵抗は、U字管マノメータ法により測定した。
【0039】
【0040】
上記表2に示すように、濾過層を3層構造にし、その中間層の糸密度を他の層よりも高くした実施例2のカートリッジフィルタは、濾過効率(捕集効率)が比較的高く、通気抵抗も低かった。これに対して、濾過層を糸密度が高い単層構造にした比較例3のカートリッジフィルタは、粒子の濾過効率(捕集効率)が低下した上、通気抵抗が実施例2よりも増加した。
【0041】
以上の結果から、本発明によれば、高濾過効率で、かつ、通気抵抗や通液抵抗が低いフィラメントワインド型カートリッジフィルタを実現できることが確認された。