(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144221
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】微生物防除剤、工業製品用添加剤、および微生物の防除方法
(51)【国際特許分類】
A01N 35/02 20060101AFI20241003BHJP
A01N 29/10 20060101ALI20241003BHJP
A01N 37/10 20060101ALI20241003BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20241003BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20241003BHJP
A01N 25/02 20060101ALN20241003BHJP
【FI】
A01N35/02
A01N29/10
A01N37/10
A01P1/00
A01P3/00
A01N25/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024041453
(22)【出願日】2024-03-15
(31)【優先権主張番号】P 2023053198
(32)【優先日】2023-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591147694
【氏名又は名称】大阪ガスケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003812
【氏名又は名称】弁理士法人いくみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野村 健太
(72)【発明者】
【氏名】二ツ亀 雅文
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AA02
4H011AA03
4H011DA13
4H011DD07
4H011DE17
(57)【要約】 (修正有)
【課題】微生物防除剤、工業製品用添加剤、および微生物の防除方法を提供する。
【解決手段】本発明の微生物防除剤は、一般式(1)で示される化合物を含む。本発明の工業製品用添加剤は、上記微生物防除剤を含む。本発明の微生物の防除方法は、上記微生物防除剤を用いる。
(式中、X
1~X
3は、同一または相異なって、ハロゲン原子を示す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で示される化合物を含有する、微生物防除剤。
【化1】
(式中、X1~X3は、同一または相異なって、ハロゲン原子を示す。)
【請求項2】
一般式(2)で示される化合物を含有する、微生物防除剤。
【化2】
(式中、X4は、ハロゲン原子を示す。)
【請求項3】
一般式(3)で示される化合物を含有する、微生物防除剤。
【化3】
(式中、X5は、ハロゲン原子を示す。)
【請求項4】
一般式(4)で示される化合物を含有する、微生物防除剤。
【化4】
(式中、X6は、ハロゲン原子を示す。)
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の微生物防除剤を含む、工業製品用添加剤。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載の微生物防除剤を用いる、微生物の防除方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物防除剤、工業製品用添加剤、および微生物の防除方法、詳しくは、細菌、カビ(かび、黴)、酵母、および藻の防除剤として用いられる微生物防除剤、その微生物防除剤を含む工業製品用添加剤、およびその微生物防除剤を用いる微生物の防除方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種の工業製品には、細菌、カビ、酵母、藻などの有害な微生物が繁殖しやすく、生産性や品質の低下、悪臭の発生などの原因となっている。そのため、このような有害微生物の繁殖を防除すべく、工業製品には、抗菌、防カビ、防腐、および防藻効果を発現する種々の微生物防除剤を添加することが広く知られている。
【0003】
このような微生物防除剤として、例えば、ビス四級アンモニウム塩化合物が、広い抗菌スペクトルを有し、優れた防除効果を発現することが報告されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の微生物防除剤以外に、新規な微生物防除剤が望まれている。
【0006】
本発明は、新規な微生物防除剤、新規な微生物防除剤を含む工業製品用添加剤、および新規な微生物防除剤を用いる微生物の防除方法である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明[1]は、一般式(1)で示される化合物を含有する、微生物防除剤を含んでいる。
【0008】
【化1】
(式中、X1~X3は、同一または相異なって、ハロゲン原子を示す。)
【0009】
本発明[2]は、一般式(2)で示される化合物を含有する、微生物防除剤を含んでいる。
【0010】
【0011】
本発明[3]は、一般式(3)で示される化合物を含有する、微生物防除剤を含んでいる。
【0012】
【0013】
本発明[4]は、一般式(4)で示される化合物を含有する、微生物防除剤を含んでいる。
【0014】
【0015】
本発明[5]は、上記[1]~[4]のいずれかに記載の微生物防除剤を含む、工業製品用添加剤を含んでいる。
【0016】
本発明[6]は、上記[1]~[4]のいずれかに記載の微生物防除剤を用いる、微生物の防除方法を含んでいる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の微生物防除剤は、新規な微生物防除剤である。そのため、このような微生物防除剤によれば、優れた防除効果を発現することができる。
【0018】
また、本発明の工業製品用添加剤は、上記微生物防除剤を含んでいる。そのため、このような工業製品用添加剤によれば、優れた微生物防除効果を発現することができる。
【0019】
本発明の微生物の防除方法は、上記微生物防除剤を用いている。そのため、このような微生物の防除方法によれば、上記微生物防除剤が、優れた防除効果を発現することができるため、微生物の防除をすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の微生物防除剤は、有効成分として、一般式(1)で示される化合物を含んでいる。
【0021】
【化1】
(式中、X1~X3は、同一または相異なって、ハロゲン原子を示す。)
【0022】
一般式(1)中、X1~X3で示されるハロゲン原子としては、例えば、塩素、フッ素、臭素およびヨウ素が挙げられる。
【0023】
X1~X3で示されるハロゲン原子として、好ましくは、塩素であり、より好ましくは、X1~X3のすべてが同一のハロゲン原子であり、さらに好ましくは、X1~X3のすべてが塩素である。
【0024】
一般式(1)で示される化合物として、好ましくは、2,3’,4’-Trichloroacetophenone(CAS No.42981-08-8)である。
【0025】
本発明の微生物防除剤は、有効成分として、一般式(2)で示される化合物を含んでいる。
【0026】
【0027】
一般式(2)中、X4で示されるハロゲン原子としては、例えば、塩素、フッ素、臭素およびヨウ素が挙げられる。
【0028】
X4で示されるハロゲン原子として、好ましくは、臭素である。
【0029】
一般式(2)で示される化合物として、好ましくは、2-(Bromoacetyl)-6-methoxynaphthalene(CAS No.10262-65-4)である。
【0030】
本発明の微生物防除剤は、有効成分として、一般式(3)で示される化合物を含んでいる。
【0031】
【0032】
一般式(3)中、X5で示されるハロゲン原子としては、例えば、塩素、フッ素、臭素およびヨウ素が挙げられる。
【0033】
X5で示されるハロゲン原子として、好ましくは、臭素である。
【0034】
一般式(3)で示される化合物として、好ましくは、4-Butylbenzyl Bromide(CAS No.10531-16-5)である。
【0035】
本発明の微生物防除剤は、有効成分として、一般式(4)で示される化合物を含んでいる。
【0036】
【0037】
一般式(4)中、X6で示されるハロゲン原子としては、例えば、塩素、フッ素、臭素およびヨウ素が挙げられる。
【0038】
X6で示されるハロゲン原子として、好ましくは、臭素である。
【0039】
一般式(4)で示される化合物として、好ましくは、3’-Bromo-3-biphenylcarboxylic Acid(CAS No.854237-06-2)である。
【0040】
本発明の微生物防除剤は、例えば、細菌、カビ、酵母、および藻の防除剤であり、好ましくは、細菌、カビ、および酵母の防除剤である。
【0041】
細菌としては、例えば、バシラス属(Bacillus属)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus属)、ストレプトコッカス属(Streptococcus属)、クロストリジウム属(Clostridium属)、エンテロコッカス属(Enterococcus属)、リステリア属(Listeria属)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium属)、エスケリキア属(Escherichia属)、シュードモナス属(Pseudomonas属)、およびセラチア属(Serratia属)、バークホルデリア属(Burkholderia属)、クレブシエラ属(Klebsiella属)、レジオネラ属(Legionella属)、サルモネラ属(Salmonella属)、エンテロバクター属(Enterobacter属)、プロテウス属(Proteus属)、ブランハメラ属(Branhamella属)、およびモラクセラ属(Moraxella属)等であり、好ましくは、バシラス属(Bacillus属)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus属)、エスケリキア属(Escherichia属)、シュードモナス属(Pseudomonas属)、およびセラチア属(Serratia属)であり、より好ましくは、Bacillus subtilis、Staphylococcus aureus、Escherichia coli、Pseudomonas aeruginosa、およびSerratia marcescensである。
【0042】
カビとしては、例えば、アスペルギルス属(Aspergillus属)、ペニシリウム属(Penicillium属)、クラドスポリウム属(Cladosporium属)、アルタナリア属(Alternaria属)、アウレオバシジウム属(Aureobasidium属)、ムコール属(Mucor属)、グリオクラディウム属(Gliocladium属)、トリコデルマ属(Trichoderma属)、リゾプス属(Rhyzopus属)、フザリウム属(Fusarium属)、ケトミウム属(Chaetomium属)、ミロテシウム属(Myrothecium属)、およびユーロチウム属(Eurotium属)等であり、好ましくは、アスペルギルス属(Aspergillus属)、ペニシリウム属(Penicillium属)、クラドスポリウム属(Cladosporium属)、アルタナリア属(Alternaria属)、アウレオバシジウム属(Aureobasidium属)、ムコール属(Mucor属)、およびグリオクラディウム属(Gliocladium属)であり、より好ましくは、Aspergillus niger、Penicillium citrinum、Cladosporium cladosporioides、Alternaria sp.、Aureobasidium pullulans、Mucor spinescens、およびGliocladium virensである。
【0043】
酵母としては、例えば、ロドトルラ属(Rhodotorula属)、サッカロマイセス属(Saccharomyces属)、およびカンジダ属(Candida属)等であり、好ましくは、ロドトルラ属(Rhodotorula属)、サッカロマイセス属(Saccharomyces属)であり、より好ましくは、Rhodotorula rubra、およびSaccharomyces cerevisiaeである。
【0044】
一般式(1)で示される化合物を含有する微生物防除剤は、より好ましくは、バシラス属(Bacillus属)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus属)、エスケリキア属(Escherichia属)、シュードモナス属(Pseudomonas属)、セラチア属(Serratia属)、アスペルギルス属(Aspergillus属)、ペニシリウム属(Penicillium属)、クラドスポリウム属(Cladosporium属)、アルタナリア属(Alternaria属)、アウレオバシジウム属(Aureobasidium属)、ムコール属(Mucor属)、グリオクラディウム属(Gliocladium属)、ロドトルラ属(Rhodotorula属)、およびサッカロマイセス属(Saccharomyces属)の防除剤として用いられる微生物防除剤であり、さらに好ましくは、バシラス属(Bacillus属)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus属)、エスケリキア属(Escherichia属)、セラチア属(Serratia属)、アスペルギルス属(Aspergillus属)、ペニシリウム属(Penicillium属)、クラドスポリウム属(Cladosporium属)、アルタナリア属(Alternaria属)、アウレオバシジウム属(Aureobasidium属)、ムコール属(Mucor属)、グリオクラディウム属(Gliocladium属)、ロドトルラ属(Rhodotorula属)、およびサッカロマイセス属(Saccharomyces属)の防除剤として用いられる微生物防除剤であり、特に好ましくは、Bacillus subtilis、Staphylococcus aureus、Escherichia coli、Pseudomonas aeruginosa、Serratia marcescens、Aspergillus niger、Penicillium citrinum、Cladosporium cladosporioides、Alternaria sp.、Aureobasidium pullulans、Mucor spinescens、Gliocladium virens、Rhodotorula rubra、およびSaccharomyces cerevisiaeの防除剤として用いられる微生物防除剤であり、最も好ましくは、Bacillus subtilis、Staphylococcus aureus、Escherichia coli、Serratia marcescens、Aspergillus niger、Penicillium citrinum、Cladosporium cladosporioides、Alternaria sp.、Aureobasidium pullulans、Mucor spinescens、Gliocladium virens、Rhodotorula rubra、およびSaccharomyces cerevisiaeの防除剤として用いられる微生物防除剤である。
【0045】
一般式(1)で示される化合物を含有する微生物防除剤は、カビの防除剤として用いられる場合、より好ましくは、アスペルギルス属(Aspergillus属)、ペニシリウム属(Penicillium属)、クラドスポリウム属(Cladosporium属)、アルタナリア属(Alternaria属)、アウレオバシジウム属(Aureobasidium属)、およびグリオクラディウム属(Gliocladium属)の防除剤として用いられる微生物防除剤であり、さらに好ましくは、アルタナリア属(Alternaria属)の防除剤として用いられる微生物防除剤である。
【0046】
一般式(1)で示される化合物を含有する微生物防除剤は、細菌、カビ、酵母、および藻の防除剤として好適に使用でき、好ましくは細菌およびカビの防除剤として好適に使用でき、より好ましくは細菌の防除剤として好適に使用できる。
【0047】
一般式(1)で示される化合物を含有する微生物防除剤は、細菌の防除剤として用いられる場合、より好ましくは、バシラス属(Bacillus属)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus属)、エスケリキア属(Escherichia属)、シュードモナス属(Pseudomonas属)、セラチア属(Serratia属)の防除剤として用いられる微生物防除剤であり、さらに好ましくは、バシラス属(Bacillus属)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus属)、エスケリキア属(Escherichia属)、およびセラチア属(Serratia属)の防除剤として用いられる微生物防除剤である。
【0048】
一般式(2)で示される化合物を含有する微生物防除剤は、より好ましくは、バシラス属(Bacillus属)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus属)、アスペルギルス属(Aspergillus属)、ペニシリウム属(Penicillium属)、クラドスポリウム属(Cladosporium属)、アルタナリア属(Alternaria属)、アウレオバシジウム属(Aureobasidium属)、ムコール属(Mucor属)、グリオクラディウム属(Gliocladium属)、ロドトルラ属(Rhodotorula属)、およびサッカロマイセス属(Saccharomyces属)の防除剤として用いられる微生物防除剤であり、さらに好ましくは、バシラス属(Bacillus属)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus属)、ペニシリウム属(Penicillium属)、クラドスポリウム属(Cladosporium属)、アルタナリア属(Alternaria属)、アウレオバシジウム属(Aureobasidium属)、ムコール属(Mucor属)、グリオクラディウム属(Gliocladium属)、およびサッカロマイセス属(Saccharomyces属)の防除剤として用いられる微生物防除剤であり、特に好ましくは、Bacillus subtilis、Staphylococcus aureus、Aspergillus niger、Penicillium citrinum、Cladosporium cladosporioides、Alternaria sp.、Aureobasidium pullulans、Mucor spinescens、Gliocladium virens、Rhodotorula rubra、およびSaccharomyces cerevisiaeの防除剤として用いられる微生物防除剤であり、最も好ましくは、Bacillus subtilis、Staphylococcus aureus、Penicillium citrinum、Cladosporium cladosporioides、Alternaria sp.、Aureobasidium pullulans、Mucor spinescens、Gliocladium virens、およびSaccharomyces cerevisiaeの防除剤として用いられる微生物防除剤である。
【0049】
一般式(2)で示される化合物を含有する微生物防除剤は、カビの防除剤として用いられる場合、より好ましくは、ペニシリウム属(Penicillium属)、クラドスポリウム属(Cladosporium属)、アルタナリア属(Alternaria属)、アウレオバシジウム属(Aureobasidium属)、ムコール属(Mucor属)、およびグリオクラディウム属(Gliocladium属)の防除剤として用いられる微生物防除剤であり、さらに好ましくは、ペニシリウム属(Penicillium属)、クラドスポリウム属(Cladosporium属)、アルタナリア属(Alternaria属)、およびアウレオバシジウム属(Aureobasidium属)の防除剤として用いられる微生物防除剤であり、特に好ましくは、アルタナリア属(Alternaria属)の防除剤として用いられる微生物防除剤である。
【0050】
一般式(3)で示される化合物を含有する微生物防除剤は、より好ましくは、バシラス属(Bacillus属)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus属)、アスペルギルス属(Aspergillus属)、ペニシリウム属(Penicillium属)、クラドスポリウム属(Cladosporium属)、アルタナリア属(Alternaria属)、アウレオバシジウム属(Aureobasidium属)、ムコール属(Mucor属)、グリオクラディウム属(Gliocladium属)、ロドトルラ属(Rhodotorula属)、およびサッカロマイセス属(Saccharomyces属)の防除剤として用いられる微生物防除剤であり、さらに好ましくは、グリオクラディウム属(Gliocladium属)の防除剤として用いられる微生物防除剤であり、特に好ましくは、Bacillus subtilis、Staphylococcus aureus、Aspergillus niger、Penicillium citrinum、Cladosporium cladosporioides、Alternaria sp.、Aureobasidium pullulans、Mucor spinescens、Gliocladium virens、Rhodotorula rubra、およびSaccharomyces cerevisiaeの防除剤として用いられる微生物防除剤であり、最も好ましくは、Gliocladium virensの防除剤として用いられる微生物防除剤である。
【0051】
一般式(3)で示される化合物を含有する微生物防除剤は、カビの防除剤として用いられる場合、より好ましくは、アスペルギルス属(Aspergillus属)、クラドスポリウム属(Cladosporium属)、アルタナリア属(Alternaria属)、アウレオバシジウム属(Aureobasidium属)、およびグリオクラディウム属(Gliocladium属)の防除剤として用いられる微生物防除剤であり、さらに好ましくは、アウレオバシジウム属(Aureobasidium属)、およびグリオクラディウム属(Gliocladium属)の防除剤として用いられる微生物防除剤であり、特に好ましくは、グリオクラディウム属(Gliocladium属)の防除剤として用いられる微生物防除剤である。
【0052】
一般式(4)で示される化合物を含有する微生物防除剤は、より好ましくは、バシラス属(Bacillus属)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus属)、アスペルギルス属(Aspergillus属)、ペニシリウム属(Penicillium属)、クラドスポリウム属(Cladosporium属)、アルタナリア属(Alternaria属)、アウレオバシジウム属(Aureobasidium属)、ムコール属(Mucor属)、グリオクラディウム属(Gliocladium属)、およびサッカロマイセス属(Saccharomyces属)の防除剤として用いられる微生物防除剤であり、さらに好ましくは、バシラス属(Bacillus属)、およびスタフィロコッカス属(Staphylococcus属)の防除剤として用いられる微生物防除剤であり、特に好ましくは、Bacillus subtilis、Staphylococcus aureus、Aspergillus niger、Penicillium citrinum、Cladosporium cladosporioides、Alternaria sp.、Aureobasidium pullulans、Mucor spinescens、Gliocladium virens、およびSaccharomyces cerevisiaeの防除剤として用いられる微生物防除剤であり、最も好ましくは、Bacillus subtilis、およびStaphylococcus aureusの防除剤として用いられる微生物防除剤である。
【0053】
一般式(4)で示される化合物を含有する微生物防除剤は、カビの防除剤として用いられる場合、より好ましくは、クラドスポリウム属(Cladosporium属)、アルタナリア属(Alternaria属)、およびグリオクラディウム属(Gliocladium属)の防除剤として用いられる微生物防除剤であり、さらに好ましくは、アルタナリア属(Alternaria属)の防除剤として用いられる微生物防除剤である。
【0054】
本発明の微生物防除剤は、例えば、液剤として調製できる。
【0055】
このような溶剤としては、水、アルコール系溶剤、グリコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、および極性溶剤が挙げられる。アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、およびtert-ブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノールが挙げられる。グリコール系溶剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、およびトリプロピレングリコールモノメチルエーテルが挙げられる。ケトン系溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、およびプロピレンカーボネートが挙げられる。
エーテル系溶剤としては、例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン、およびエチルエーテルが挙げられる。エステル系溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、γ-ブチロラクトン、アジピン酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、およびコハク酸ジメチルが挙げられる。極性溶剤としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、およびN-メチルピロリドンが挙げられる。
【0056】
これら溶剤は、単独または2種以上併用してもよい。
【0057】
溶剤として、好ましくは、水が挙げられる。
【0058】
液剤として製剤化する場合には、例えば、一般式(1)~(4)で示される化合物を上記した溶剤に溶解または分散すればよい。より具体的には、液剤中に、一般式(1)~(4)で示される化合物が、例えば、0.01重量%以上、好ましくは、0.1重量%以上、より好ましくは、0.5重量%以上であり、また、80重量%以下、好ましくは、50重量%以下、より好ましくは、30重量%以下となる割合で配合し、溶解または分散させればよい。
【0059】
また、本発明の微生物防除剤は、特に液剤に限定されることなく、公知の剤型に製剤化することができる。そのような剤型として、例えば、分散剤、ペースト剤、粉剤、粒剤、およびマイクロカプセルが挙げられる。
【0060】
本発明の微生物防除剤は、その目的および用途によって、公知の添加剤、例えば、界面活性剤、他の微生物防除剤、酸化防止剤、および光安定剤を含有してもよい。
【0061】
界面活性剤としては、例えば、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、およびアニオン性界面活性剤が挙げられる。界面活性剤として好ましくは、ノニオン性界面活性剤およびアニオン性活性剤が挙げられる。ノニオン性界面活性剤としては、例えば、エーテル型非イオン性界面活性剤が挙げられる。なお、本発明の微生物防除剤をより細かく水分散させる目的としては、アニオン性界面活性剤も好適に使用できる。
【0062】
これら界面活性剤は、単独または2種以上併用してもよい。
【0063】
これら界面活性剤は、市販品として入手可能であり、より具体的には、ノニオン性界面活性剤として、例えば、Tween 80(BioVision社製)が挙げられる。
【0064】
界面活性剤の含有割合は、微生物防除剤に対して、例えば、0.005質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは、0.02質量%以上、さらに好ましくは、0.03質量%以上、特に好ましくは、0.04質量%以上であり、また、例えば、40質量%以下、好ましくは、20質量%以下、より好ましくは、10質量%以下、さらに好ましくは、5質量%以下である。
【0065】
界面活性剤の含有割合は、一般式(1)~(4)で示される化合物100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、2.5質量部以上、より好ましくは、5.0質量部以上、さらに好ましくは、10質量部以上、特に好ましくは、25質量部以上であり、また、例えば、100質量部以下、好ましくは、80質量部以下、より好ましくは、70質量部以下、さらに好ましくは、60質量部以下、特に好ましくは、55質量部以下である。
【0066】
本発明の微生物防除剤は、優れた、抗菌、防カビ、防腐、防藻作用を発現し、細菌、カビ、酵母、および藻の防除剤として用いることができる。本発明の微生物防除剤は、抗菌剤、防カビ剤、防腐剤、および防藻剤が含まれる。
【0067】
本発明の微生物防除剤は、各種工業製品に対する添加剤として、好適に用いられる。すなわち、工業製品用添加剤は、微生物防除剤を含む。工業製品用添加剤中の微生物防除剤(一般式(1)~(4)で示される化合物)の濃度は、例えば1質量%以上であり、好ましくは5質量%以上であり、更に好ましくは10質量%以上であり、また、100質量%以下、好ましくは90質量%、更に好ましくは80質量%である。
【0068】
また、本発明の工業製品用添加剤が添加される工業製品としては、例えば、カゼイン、澱粉糊、にかわ、塗工紙、紙用塗工液、表面サイズ剤、接着剤、合成ゴムラテックス、インキ、ポリビニルアルコールフィルム、塩化ビニルフィルム、セメント混和剤、シーリング剤、目地剤、樹脂エマルション、バインダー、パルプ、木質材料、木質製品、木材保護剤、木材保存剤、紙製品、プラスチック製品、フィルム、フィルター、塗料、化粧品、紙おむつ、サニタリー製品(除菌剤、カビ取り剤、抗菌付与剤、抗カビ付与剤)、キッチン製品(除菌剤、カビ取り剤、抗菌付与剤、抗カビ付与剤)、洗剤・仕上げ剤(柔軟剤)、および芳香剤・脱臭剤・消臭剤(置き型・スプレー型・噴霧型)などが挙げられる。なかでも、木材保護塗料および木材保存剤に対して好適に添加される。
【0069】
なお、本発明の微生物防除剤または工業製品用添加剤は、その適用対象に応じて添加量を適宜決定すればよい。本発明の微生物防除剤または工業製品用添加剤は、工業製品に添加する微生物防除剤として用いる場合、例えば、1mg(全有効成分)/kg(製品)(1質量ppm)以上、好ましくは、5mg(全有効成分)/kg(製品)(5質量ppm)以上であり、また、例えば、100000mg(全有効成分)/kg(製品)(10質量%)以下、好ましくは、50000mg(全有効成分)/kg(製品)(5質量%)以下の濃度として用いることができる。微生物防除剤または工業製品用添加剤が、高濃度(5質量%以上)の場合、適宜希釈して用いることができる。
【0070】
本発明の微生物の防除方法は、上記微生物防除剤を用いる。
【0071】
本発明の微生物の防除方法では、その適用対象に応じて、上記微生物防除剤の添加量を適宜決定すればよい。本発明の微生物防除の方法では、上記微生物防除剤を用いる場合、製品に対する、全有効成分の割合((全有効成分)/kg(製品))は、例えば、上記した割合で用いることができる。
【実施例0072】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、それらに限定されない。以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。
【0073】
[実施例A:微生物防除剤の微生物防除性評価]
以下の要領で、微生物防除剤の微生物防除性を評価した。
【0074】
<試験検体>
2,3’,4’-Trichloroacetophenone(東京化成工業社製)、2-(Bromoacetyl)-6-methoxynaphthalene(東京化成工業社製)、4-Butylbenzyl Bromide(東京化成工業社製)、および3’-Bromo-3-biphenylcarboxylic Acid(富士フイルム和光純薬社製)を、それぞれ100mg秤量した。各化合物に、Tween 80 10%水溶液(BioVision社製)を50mg添加し、滅菌水10mLを添加し10000μg/mL溶液を調製し、液剤の防除剤試験検体を得た。
【0075】
<細菌、カビ、および酵母に対する評価>
上記の試験検体を、有効成分が100μg/mL、1000μg/mLの濃度となるように、グルコースブイヨン培地(pH6.0)に添加し、各表に記載の細菌、カビ、および酵母を接種して、33℃で18時間、続いて28℃で2日間培養した。その後、培養後の細菌、カビ、および酵母の生育を観察して、最小発育阻止濃度(MIC:μg/mL)をそれぞれ算出し、100μg/mL以下(MIC≦100)、および、100μg/mL超過1000μg/mL以下(100<MIC≦1000)のカテゴリーに分類した結果を表1~12に示す。
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
<カビに対する詳細な評価>
上記試験検体について、有効成分が0.8~1000μg/mLの範囲の濃度となるように、グルコースブイヨン培地(pH6.0)にそれぞれ添加した。その後、ミクロプランター(佐久間製作所社製)を用いて、表13に記載のカビを含有するカビ懸濁液を接種して、33℃で18時間、続いて28℃で2日間培養した。その後、培養後の各菌の生育を観察して、最小発育阻止濃度(MIC:μg/mL)をそれぞれ算出した。最小発育阻止濃度(μg/mL)の結果を表13に示す。
【0089】
【0090】
[実施例B:工業製品用添加剤としての微生物防除性の評価]
以下の要領で、工業製品用添加剤としての一例である木材保護塗料の微生物防除性を評価した。
【0091】
<有効成分>
木材保護塗料の有効成分は、2,3’,4’-Trichloroacetophenoneとした。
【0092】
<木材保護塗料の製造>
実施例
下記原料をディスパー撹拌機で混合して木材保護塗料を調製した。
ALUKIDIR EL-8001(アルキド樹脂、DIC社製)
20.0質量部
ミネラルスピリットA(エネオス社製) 72.2質量部
8%ヘキソエートコバルト(ニッカオクチックス(登録商標)コバルト、日本化学産業社製) 0.1質量部
分散剤(DISPERBYK(登録商標)-162、BYK社製)
0.2質量部
顔料(LL-XLO、酸化鉄、チタン工業社製) 2.5質量部
2,3’,4’-Trichloroacetophenone(試薬、東京化成工業社製) 5.0質量部
【0093】
比較例
下記原料をディスパー撹拌機で混合して木材保護塗料を調製した。
ALUKIDIR EL-8001(アルキド樹脂、DIC社製)
20.0質量部
ミネラルスピリットA(エネオス社製) 77.2質量部
8%ヘキソエートコバルト(ニッカオクチックス(登録商標)コバルト、日本化学産業社製) 0.1質量部
分散剤(DISPERBYK(登録商標)-162、BYK社製)
0.2質量部
顔料(LL-XLO、酸化鉄、チタン工業社製) 2.5質量部
【0094】
<試験片の作成>
木口面を封止した複数のスギ辺材(20mm×20mm×5mm)のそれぞれに塗布量(2回塗り後)が120g/m2となるように実施例または比較例で調製した木材保護塗料を塗装し、温度25℃、相対湿度50%で1週間乾燥した。乾燥した試験片を、200mlのイオン交換水に18時間浸漬させた。浸漬後、試験片を取り出し、2時間室温で乾燥し、その後、パーフェクトオーブンPH-202(エスペック株式会社製)で、80℃で2時間乾燥させた。乾燥後、室温で放冷した試験片を防カビ試験に使用した。また、複数の上記スギ辺材を実施例および比較例で調製した木材保護塗料を塗装すること以外は上記と同じ処理をした試験片を、ブランクとして、防カビ試験に使用した。
【0095】
<カビの吹き付け>
オートクレーブで滅菌した無機寒天培地を、複数の直径9cmのペトリ皿中に注いで、凝固させた寒天平板の中央に、実施例、比較例、またはブランクの試験片をそれぞれ貼付した。それぞれの試験片に供試カビ液を噴霧した後、28℃で2週間培養した。供試カビ液として、アウレオバシジウム・プルランス(Aureobasidium pullulans)、クラドスポリウム・クラドスポリオイデス(Cladosporium cladosporioides)、およびケトミウム・グロボスム(Chaetomium globosum)の混合液を用いた。
【0096】
<観察>
上記培養後、試験片上におけるカビの生育程度を判定した。なお、判定基準 は以下のとおりとした。
判定基準 0:試験片上にカビの生育が全く認められなかった
1:試験片上にカビの生育がごくわずかに認められた
2:試験片上の1/3以上にカビの生育が認められた
【0097】
<結果>
【0098】