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特開2024-144235研磨パッドの製造方法及び光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法
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  • 特開-研磨パッドの製造方法及び光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144235
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】研磨パッドの製造方法及び光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/24 20120101AFI20241003BHJP
   C08J 5/14 20060101ALI20241003BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B24B37/24 C
B24B37/24 Z
C08J5/14 CFF
H01L21/304 622F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024043092
(22)【出願日】2024-03-19
(31)【優先権主張番号】P 2023052668
(32)【優先日】2023-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005359
【氏名又は名称】富士紡ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196597
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】立野 哲平
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼見沢 大和
(72)【発明者】
【氏名】越智 恵介
(72)【発明者】
【氏名】川崎 哲明
【テーマコード(参考)】
3C158
4F071
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158AC04
3C158BA02
3C158BA04
3C158BA05
3C158BA08
3C158BA09
3C158CB01
3C158CB10
3C158DA17
3C158EA11
3C158EB01
3C158EB10
3C158EB19
3C158EB20
3C158EB22
3C158EB28
3C158EB29
4F071AA53X
4F071DA20
5F057AA24
5F057DA02
5F057EB03
5F057EB07
(57)【要約】
【課題】本発明は、微細かつ均一な研磨パッドの製造方法、及び当該研磨パッドを使用した光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
研磨層を有する研磨パッドの製造方法であって、
(1)複数の微小球体を含む組成物を準備する工程、
(2)前記組成物を分級して粗粒子を除去し、加熱膨張性微小球体を含む分級処理後の微小球体を得る工程、
(3)前記分級処理後の微小球体を、イソシアネート末端ウレタンプレポリマー及び硬化剤と混合して、硬化性樹脂組成物を形成する工程、
(4)前記硬化性樹脂組成物を硬化させて前記研磨層を形成する工程であって、前記加熱膨張性微小球体を1.5~3倍に膨張させる、前記工程を含む、前記研磨パッドの製造方法。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨層を有する研磨パッドの製造方法であって、
(1)複数の微小球体を含む組成物を準備する工程、
(2)前記組成物を分級して粗粒子を除去し、加熱膨張性微小球体を含む分級処理後の微小球体を得る工程、
(3)前記分級処理後の微小球体を、イソシアネート末端ウレタンプレポリマー及び硬化剤と混合して、硬化性樹脂組成物を形成する工程、並びに
(4)前記硬化性樹脂組成物を硬化させて前記研磨層を形成する工程であって、前記加熱膨張性微小球体を1.5~3倍に膨張させる、前記工程
を含む、前記研磨パッドの製造方法。
【請求項2】
前記工程(1)と前記工程(2)との間に、(A)前記組成物に含まれる前記複数の微小球体の間の凝集力を緩和する工程を更に含む、請求項1に記載の研磨パッドの製造方法。
【請求項3】
前記工程(A)が、(A’)前記組成物を乾燥する工程を含む、請求項2に記載の研磨パッドの製造方法。
【請求項4】
前記工程(A’)が、(A’’)前記組成物を、-50℃以下の露点を有するガスの雰囲気下に置く工程を含む、請求項3に記載の研磨パッドの製造方法。
【請求項5】
前記-50℃以下の露点を有するガスが不活性ガスを含む、請求項4に記載の研磨パッドの製造方法。
【請求項6】
前記工程(2)における分級が遠心分級である、請求項1又は2に記載の研磨パッドの製造方法。
【請求項7】
光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法であって、請求項1又は2に記載の方法により得られる研磨パッドを使用して光学材料又は半導体材料の表面を研磨する工程を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨パッドの製造方法及び光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法に関する。本発明の製造方法により得られる研磨パッドは、光学材料、半導体ウエハ、半導体デバイス、ハードディスク用基板等の研磨に用いられ、特に半導体ウエハの上に酸化物層、金属層等が形成されたデバイスを研磨するのに好適に用いられる。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス等の研磨に用いられる研磨パッドは、ポリウレタン等の合成樹脂から形成された研磨層を有しており、当該研磨層の内部には空隙が形成されている。当該空隙は研磨層の表面で開孔しており、研磨時に、研磨スラリーに含まれる砥粒が研磨層表面の開孔内に保持されることで、研磨対象物の研磨が進行する。研磨層の内部に空隙を形成する方法の1つとして、樹脂中に微小球体を混在させる方法が公知であり、近年、より精密な研磨を実現するために空隙(開孔)の小径化や均一化の検討がなされている。
微小球体のような粉体から同じ大きさの粒子を得る方法としては分級が知られている。また、より精密な分級を可能にするために、アルコールやグリコール、水などの液体を分散助剤として添加する方法が知られている。
【0003】
特許文献1には、遠心分離風力分級により微粉および粗粒子を取り除いた微小球を用いた研磨パッドの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第7048395号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1においては、分級後の密度800~1500g/Lの微小球を密度10~100g/Lになるまで膨張させており、膨張倍率が8~150倍となっている。このような高い倍率の膨張を経て製造された研磨層における開孔は、大きな径を有しており、微細な開孔ではない。
以上のように、微細かつ均一な開孔を有する研磨パッドが望まれている。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、微細かつ均一な開孔を有する研磨パッドの製造方法及び当該研磨パッドを使用した光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意研究し、分級工程と特定の膨張倍率の膨張工程とを組み合わせて相乗的に作用させることにより、上記課題を解決できることを知見し、本発明を完成するに至った。本発明の具体的態様は以下のとおりである。
【0008】
[1] 研磨層を有する研磨パッドの製造方法であって、
(1)複数の微小球体を含む組成物を準備する工程、
(2)前記組成物を分級して粗粒子を除去し、加熱膨張性微小球体を含む分級処理後の微小球体を得る工程、
(3)前記分級処理後の微小球体を、イソシアネート末端ウレタンプレポリマー及び硬化剤と混合して、硬化性樹脂組成物を形成する工程、並びに
(4)前記硬化性樹脂組成物を硬化させて前記研磨層を形成する工程であって、前記加熱膨張性微小球体を1.5~3倍に膨張させる、前記工程
を含む、前記研磨パッドの製造方法。
[2] 前記工程(1)と前記工程(2)との間に、(A)前記組成物に含まれる前記複数の微小球体の間の凝集力を緩和する工程を更に含む、[1]に記載の研磨パッドの製造方法。
[3] 前記工程(A)が、(A’)前記組成物を乾燥する工程を含む、[2]に記載の研磨パッドの製造方法。
[4] 前記工程(A’)が、(A’’)前記組成物を、-50℃以下の露点を有するガスの雰囲気下に置く工程を含む、[3]に記載の研磨パッドの製造方法。
[5] 前記-50℃以下の露点を有するガスが不活性ガスを含む、[4]に記載の研磨パッドの製造方法。
[6] 前記工程(2)における分級が遠心分級である、[1]~[5]のいずれか1つに記載の研磨パッドの製造方法。
[7] 光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法であって、[1]~[6]のいずれか1つに記載の方法により得られる研磨パッドを使用して光学材料又は半導体材料の表面を研磨する工程を含む、前記方法。
【0009】
(定義)
本明細書において、「X~Y」を用いて数値範囲を表す際は、その範囲は両端の数値であるX及びYを含むものとする。
本明細書において、「分級」は、粉体(細かい粒の集まりとなっている状態)を、その大きさによって複数のグループの粒子群に分けることを意味する。
本明細書において、「粗粒子」は、分級前における微小球体を含む組成物において、粒径10μm以上の粒子又は粉体の割合が、30体積%以上である粒子又は粉体を意味する。
本明細書において、「微粉」は、分級前における微小球体を含む組成物において、粒径10μm以上の粒子又は粉体の割合が、10体積%以下である粒子又は粉体を意味する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の研磨パッドの製造方法により、微細かつ均一な開孔を有する研磨パッドが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の研磨パッドの製造方法に適用可能な微小球体の製造装置の模式図である。
図2図2は、自由渦型遠心分級装置の概略図である。
図3図3は、実施例1の研磨パッドの断面写真である。
図4図4は、実施例2の研磨パッドの断面写真である。
図5図5は、実施例3の研磨パッドの断面写真である。
図6図6は、実施例4の研磨パッドの断面写真である。
図7図7は、比較例1の研磨パッドの断面写真である。
図8図8は、比較例2の研磨パッドの断面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(作用)
本発明者らは、鋭意研究した結果、予想外にも、分級工程と特定の膨張倍率の膨張工程とを組み合わせて相乗的に作用させることにより、微細かつ均一な開孔を有する研磨パッドを製造できることを見出した。このような特性が得られる理由の詳細は明らかではないが、以下のように推察される。
【0013】
微小球体を含む組成物の分級を行うことにより、粗粒子を除去でき比較的小さいサイズの微小球体を得ることができる。しかし、このようにして得られた分級後の微小球体について、微小球体の膨張倍率を大きいものとすると、分級による微細化の効果が十分に生かされないと推察する。これに対して、分級後の微小球体について、微小球体の膨張倍率を小さいものとすることにより、分級による微細化と低い膨張倍率による微細化とが相乗的に作用し、微細かつ均一な開孔が得られると考えられる。
【0014】
以下、本発明の研磨パッドの製造方法及び光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法について、説明する。
【0015】
1.研磨パッドの製造方法
本発明の研磨層を有する研磨パッドの製造方法は、
(1)複数の微小球体を含む組成物を準備する工程、
(2)前記組成物を分級して粗粒子を除去し、加熱膨張性微小球体を含む分級処理後の微小球体を得る工程、
(3)前記分級処理後の微小球体を、イソシアネート末端ウレタンプレポリマー及び硬化剤と混合して、硬化性樹脂組成物を形成する工程、並びに
(4)前記硬化性樹脂組成物を硬化させて前記研磨層を形成する工程であって、前記加熱膨張性微小球体を1.5~3倍に膨張させる、前記工程
を含む。
本発明の研磨パッドの製造方法により、微細かつ均一な開孔を有する研磨パッドが得られる。また、場合によっては、本実施形態の製造方法により得られた研磨パッドは、微細かつ均一な開孔に由来する微細な凹凸が研磨点として作用することで、高い研磨性能を示すことができる。
【0016】
<工程(1)>
(組成物)
組成物に含まれる複数の微小球体は、特に限定されないが、単一の微小球体の状態、複数の微小球体から形成された凝集体の状態、又はこれらの混合物を含む又はからなることができる。上記の複数の微小球体から形成された凝集体は、特に限定されないが、比較的サイズが大きく後述の粗粒子に分類される凝集体、比較的サイズが小さく粗粒子に分類されない凝集体、又はこれらの混合物を含む又はからなることができる。
組成物は、特に限定されないが、上記複数の微小球体以外にも、微粉、粗粒子、又はこれらの混合物を更に含むことができる。
微粉は、微小球体が砕けることによって生じた破片を含む又はからなることができる。
粗粒子は、上述の複数の微小球体から形成され比較的サイズが大きい凝集体、微小球体と微小球体の破片とから形成された凝集体、又はこれらのうちの2種以上の混合物を含む又はからなることができる。
工程(1)における(工程(2)を行う前の又は後述の工程(A)を行う前の)微小球体を含む組成物の水分率(含水率)は、特に限定されないが、1~7重量%、1~5重量%、又は1~3重量%とすることができる。上記組成物の水分率は、後述の[実施例]に記載されているように、乾燥減量法に基づいて測定することができる。
【0017】
(微小球体)
微小球体としては、特に限定されないが、熱可塑性樹脂からなる外殻(ポリマー殻)と当該外殻に内包される低沸点炭化水素とからなる未膨張の加熱膨張性微小球体が挙げられる。
【0018】
工程(1)における(分級前の)微小球体(未膨張の状態の上記加熱膨張性微小球体等)を含む組成物の平均粒径(D50、メディアン径)は、特に限定されないが、1~20μmが好ましく、3~15μmがより好ましく、6~12μmが最も好ましい。平均粒径(D50)が上記数値範囲であることで、上記加熱膨張性微小球体を膨張させても、研磨層の表面の平均開孔径が20μm以下となり、被研磨物をより精密に研磨することができる。上記平均粒径(D50、メディアン径)は、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えばスペクトリス(株)製、マスターサイザー2000)を使用して測定することができる。
【0019】
上記未膨張の加熱膨張性微小球体の膨張開始温度は、特に限定されないが、プレポリマーの重合反応による反応熱等の観点から、50~200℃が好ましく、80~170℃がより好ましく、90~140℃が最も好ましい。
上記未膨張の加熱膨張性微小球体の最大膨張温度は、特に限定されないが、プレポリマーの重合反応による反応熱等の観点から、90~200℃が好ましく、110~170℃がより好ましく、120~170℃が最も好ましい。
【0020】
上記ポリマー殻を形成するポリマーとしては、熱可塑性樹脂、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシエーテルアクリライト、マレイン酸共重合体、ポリエチレンオキシド、ポリウレタン、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル及び有機シリコーン系樹脂、並びにそれらの樹脂を構成する単量体を2種以上組み合わせた共重合体(例えば、アクリロニトリル-塩化ビニリデン共重合体、アクリロニトリル-メチルメタクリレート共重合体、塩化ビニル-エチレン共重合体等)を用いることができる。
また、ポリマー殻に内包される低沸点炭化水素としては、例えば、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、石油エーテル、又はこれらのうちの2種以上の組み合わせを用いることができる。
【0021】
<工程(2)>
工程(2)における分級の種類は、特に限定されないが、遠心分級、重力分級、慣性分級、又はこれらのうちの2種以上の組み合わせが挙げられる。これらのうちでも、遠心分級が好ましい。遠心分級を使用することにより、微小球体同士の衝突、または、微小球体と分級装置内壁との衝突による微小球体の劣化を抑制でき、その結果、微小球体の予期せぬ発泡不良を抑制できるため、研磨層における開孔の微細さ及び均一性が向上する。また、遠心分級を使用することにより、遠心力の作用により微小球体同士の凝集力が更に緩和された状態で分級できる。
【0022】
工程(2)により得られる分級処理後の微小球体(上記未膨張の状態の加熱膨張性微小球体等)の平均粒径(D50、メディアン径)は、特に限定されないが、0.5~15μmが好ましく、1~10μmがより好ましく、4~8μmが最も好ましい。上記数値範囲であることで、上記加熱膨張性微小球体を膨張させても、研磨層の表面の平均開孔径が20μm以下となり、被研磨物をより精密に研磨することができる。上記平均粒径(D50、メディアン径)は、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えばスペクトリス(株)製、マスターサイザー2000)を使用して測定することができる。
【0023】
<工程(3)>
工程(3)により形成される硬化性樹脂組成物は、例えば、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーを含むA液と、硬化剤成分を含むB液とを混合して調製する2液型の組成物とすることもできる。それ以外の成分はA液に入れても、B液に入れてもよいが、不具合が生じる場合はさらに複数の液に分割して3液以上の液を混合して構成される組成物とすることができる。
工程(3)において、上記分級処理後の微小球体を、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーと混合してA液とし、当該A液を、硬化剤を含むB液と更に混合して、硬化性樹脂組成物を形成することもできる。
【0024】
(イソシアネート末端ウレタンプレポリマー)
上記イソシアネート末端ウレタンプレポリマーは、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを反応させることにより得られる生成物とすることができる。
【0025】
(ポリオール成分)
ポリオール成分としては、低分子量ポリオール、高分子量ポリオール、又はこれらの組み合わせを使用することができる。本明細書において、低分子量ポリオールとは数平均分子量が30~300であるポリオールであり、高分子量ポリオールとは数平均分子量が300を超えるポリオールである。
上記高分子量ポリオール及び上記低分子量ポリオールの数平均分子量は、以下の条件にてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)に基づいてポリエチレングリコール/ポリエチレンオキシド(PEG/PEO)換算の分子量として測定することができる。
<測定条件>
カラム:Ohpak SB-802.5HQ(排除限界10000)+SB-803HQ (排除限界 100000)
移動相:5mM LiBr/DMF
流速:0.3ml/min (26kg/cm
オーブン:60℃
検出器:RI 40℃
試料量:20μl
【0026】
上記低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、又はこれらのうちの2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0027】
上記高分子量ポリオールとしては、例えば、
ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリエーテルポリオール;
エチレングリコールとアジピン酸との反応物やブチレングリコールとアジピン酸との反応物等のポリエステルポリオール;
ポリカーボネートポリオール;
ポリカプロラクトンポリオール;又はそれらのうちの2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0028】
(ポリイソシアネート成分)
ポリイソシアネート成分としては、例えば、
m-フェニレンジイソシアネート、
p-フェニレンジイソシアネート、
2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI)、
2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、
ナフタレン-1,4-ジイソシアネート、
ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)、
4,4’-メチレン-ビス(シクロヘキシルイソシアネート)(水添MDI)、
3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニルジイソシアネート、
3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、
キシリレン-1,4-ジイソシアネート、
4,4’-ジフェニルプロパンジイソシアネート、
トリメチレンジイソシアネート、
ヘキサメチレンジイソシアネート、
プロピレン-1,2-ジイソシアネート、
ブチレン-1,2-ジイソシアネート、
シクロヘキシレン-1,2-ジイソシアネート、
シクロヘキシレン-1,4-ジイソシアネート、
p-フェニレンジイソチオシアネート、
キシリレン-1,4-ジイソチオシアネート、
エチリジンジイソチオシアネート、又はそれらのうちの2種以上の組み合わせが挙げられる。
この中でも、研磨特性の観点から、2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI)、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)等のトリレンジイソシアネートを使用することが好ましい。
【0029】
イソシアネート末端ウレタンプレポリマーのNCO当量(g/eq)としては、600未満が好ましく、350~550がより好ましく、400~500が最も好ましい。NCO当量(g/eq)が上記数値範囲内であることにより、研磨層が適切な硬度を示すことができる。なお、NCO当量(g/eq)とは、“(ポリイソシアネート化合物の質量部+ポリオール化合物の質量部)/[(ポリイソシアネート化合物1分子当たりの官能基数×ポリイソシアネート化合物の質量部/ポリイソシアネート化合物の分子量)-(ポリオール化合物1分子当たりの官能基数×ポリオール化合物の質量部/ポリオール化合物の分子量)]”で求められ、NCO基1個当たりのプレポリマーの分子量を示す数値である。
【0030】
(硬化剤)
硬化性樹脂組成物に含まれる硬化剤としては、例えば、以下に説明するアミン系硬化剤が挙げられる。
アミン系硬化剤を構成するポリアミンとしては、例えば、ジアミンが挙げられ、これには、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのアルキレンジアミン;イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミンなどの脂肪族環を有するジアミン;3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(別名:メチレンビス-o-クロロアニリン)(以下、MOCAと略記する。)などの芳香族環を有するジアミン;2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等の水酸基を有するジアミン、特にヒドロキシアルキルアルキレンジアミン;又はこれらのうちの2種以上の組み合わせが挙げられる。また、3官能のトリアミン化合物、4官能以上のポリアミン化合物も使用可能である。
【0031】
特に好ましいアミン系硬化剤は、上述したMOCAであり、このMOCAの化学構造は、以下のとおりである。
【0032】
【化1】
【0033】
硬化剤全体の量は、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーのNCOのモル数に対する、硬化剤の活性水素基(NHなど)のモル数の比率(活性水素基のモル数/NCOのモル数)が、好ましくは0.70~1.10、より好ましくは0.80~1.00、最も好ましくは0.85~0.95となる量を用いる。
【0034】
(その他の成分)
その他に当業界で一般的に使用される触媒などを硬化性樹脂組成物に添加しても良い。
また、上述したポリイソシアネート成分を硬化性樹脂組成物に後から追加で添加することもでき、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーと追加のポリイソシアネート成分との合計重量に対する追加のポリイソシアネート成分の重量割合は、0.1~10.0重量%が好ましく、0.5~8.0重量%がより好ましく、1.0~5.0重量%が特に好ましい。
ポリウレタン樹脂硬化性組成物に追加で添加するポリイソシアネート成分としては、上述のポリイソシアネート成分を特に限定なく使用することができるが、4,4’-メチレン-ビス(シクロヘキシルイソシアネート)(水添MDI)が好ましい。
【0035】
<工程(4)>
工程(4)における加熱膨張性微小球体の膨張倍率は、1.5~3倍であり、1.5~2.5倍が好ましく、1.5~2.0倍がより好ましい。膨張倍率が上記1.5~3倍の小さな倍率であると、工程(2)の分級による微小球体の微細化と相乗的に作用し、極めて微細かつ均一な開孔を有する研磨層を形成できる。
上記の加熱膨張性微小球体の膨張倍率は、後述の[実施例]の(評価方法)の項目(4)に記載の手順・条件に基づいて測定することができる。
【0036】
工程(4)は型の内部で行うことができる。この場合、研磨パッドの製造方法は、工程(3)と工程(4)との間に、工程(3)で得られた硬化性樹脂組成物を型に流し込む工程(注型工程)をさらに含むことができる。注型する前に硬化性樹脂組成物が硬化することを防ぐために、注型工程の際の型の温度は、140℃以下、120℃以下、100℃以下又は90℃以下とすることが好ましい。
【0037】
工程(4)の開始時(又は注型終了時)の硬化性樹脂組成物の温度(又は型の温度)は、特に限定されないが、加熱膨張性微小球体の過度な膨張を抑制するために、75~140℃が好ましく、また、75~130℃又は75~120℃とすることもできる。
【0038】
工程(4)における昇温は、工程(4)の開始又は注型終了の時点を0分とした場合に、0~20分、0~15分、又は0~10分の期間にわたって実施することができる。
工程(4)における硬化性樹脂組成物の昇温後の温度は、100~160℃、100~140℃、110~135℃、又は120~130℃とすることができる。当該昇温後の温度は、工程(4)の開始又は注型終了の時点を0分とした場合に、5~60分、5~40分、10~30分、又は10~20分の期間にわたって維持することができる。
【0039】
後述する[実施例]に示すように、工程(4)を型の内部で行う一次硬化の工程とすることができ、また、当該一次硬化の工程の後、形成した樹脂発泡体を型から抜き出し、当該樹脂発泡体を二次硬化させることもできる。この場合でも、得られる研磨パッドの開孔は工程(4)(一次硬化)において形成されるため、工程(4)における条件により研磨パッドの開孔の特徴が主に決まる。
上記二次硬化の温度は、100~140℃、110~135℃、又は120~130℃とすることができる。上記二次硬化の時間は、1~6時間、1~5時間、又は1~4時間とすることができる。
【0040】
研磨パッドは、研磨層を有する。研磨層は被研磨物に直接接する位置に配置され、研磨パッドのその他の部分は、研磨パッドを支持するための材料、例えば、ゴムなどの弾性に富む材料で構成されてもよい。研磨パッドの剛性によっては、研磨層を研磨パッドとすることができる。
【0041】
研磨パッドは、微細かつ均一な開孔を有することを除けば、一般的な研磨パッドと形状に大きな差異は無く、一般的な研磨パッドと同様に使用することができ、例えば、研磨パッドを回転させながら研磨層を被研磨物に押し当てて研磨することもできるし、被研磨物を回転させながら研磨層に押し当てて研磨することもできる。
【0042】
研磨パッドは、一般に知られたモールド成形、スラブ成形等の製造法より作製できる。まずは、それら製造法によりポリウレタン樹脂等のブロックを形成し、ブロックをスライス等によりシート状として研磨層を成形し、支持体などに貼り合わせることによって製造される。あるいは支持体上に直接研磨層を成形することもできる。
【0043】
より具体的には、研磨層は、研磨層の研磨面とは反対の面側に両面テープが貼り付けられ、所定形状にカットされて、研磨パッドとなる。両面テープに特に制限はなく、当技術分野において公知の両面テープの中から任意に選択して使用することが出来る。また、研磨パッドは、研磨層のみからなる単層構造であってもよく、研磨層の研磨面とは反対の面側に他の層(下層、支持層)を貼り合わせた複層からなっていてもよい。
【0044】
研磨層は、ポリウレタン樹脂を更に含むことができる。
上記ポリウレタン樹脂は、特に限定されないが、イソシアネート末端ウレタンプレポリマー、硬化剤、及び加熱膨張性微小球体を含む硬化性樹脂組成物の硬化物とすることができる。
研磨層は、イソシアネート末端ウレタンプレポリマー、硬化剤、及び加熱膨張性微小球体を含む硬化性樹脂組成物を調製し、当該硬化性樹脂組成物を発泡硬化させることによって成形することができる。
【0045】
研磨層(硬化性樹脂組成物の硬化物)全体又は全体に対する微小球体の含有量は、特に限定されないが、0.1~10.0重量%が好ましく、1.0~5.0重量%がより好ましく、2.0~4.0重量%が最も好ましい。微小球体の含有量が上記数値範囲内であると、所望の研磨特性が得られる。
【0046】
研磨層の表面における平均開孔径は、特に限定されないが、5~20μmが好ましく、8~18μmがより好ましく、10~15μmが最も好ましい。平均開孔径が上記数値範囲内であることで、被研磨物をより精密に研磨することができる。
【0047】
研磨層の表面における、単位面積当たりの開孔の個数は、特に限定されないが、1200~3000個/mmが好ましく、1400~2800個/mmがより好ましく、1600~2600個/mmが最も好ましい。
【0048】
研磨層の表面における開孔率は、特に限定されないが、10~50%が好ましく、10~45%がより好ましく、10~40%が最も好ましい。開孔率が上記数値範囲内であると、スラリーの保持性が良く、被研磨物を安定的に研磨することができる。ここで、研磨層の表面における開孔率とは、研磨層の表面の面積に対する、当該表面に存在する開孔の総面積の割合(%)を意味する。
【0049】
上記の研磨層の表面における平均開孔径、単位面積当たりの開孔の個数、及び開孔率は、後述の[実施例]の(評価方法)の項目(2)に記載の手順・条件に基づいて測定することができる。
【0050】
研磨層の密度は、特に限定されないが、0.60~1.20g/cmが好ましく、0.65~1.15g/cmがより好ましく、0.70~1.10g/cmが最も好ましい。密度が上記数値範囲内であると、研磨副生成物(研磨屑)によるスクラッチの発生を抑制することができる。
研磨層のショアD硬度は、特に限定されないが、35~75が好ましく、40~70がより好ましく、45~65が最も好ましい。ショアD硬度が小さすぎると、軽微な凹凸を平坦化することが難しくなる。ショアD硬度が大きすぎると、被研磨物にスクラッチが発生する可能性がある。
上記の研磨層の密度及びショアD硬度は、後述の[実施例]の(評価方法)の項目(3)に記載の手順・条件に基づいて測定することができる。
【0051】
<工程(A)>
研磨パッドの製造方法は、上記工程(1)と上記工程(2)との間に、(A)上記組成物に含まれる上記複数の微小球体の間の凝集力を緩和する工程を更に含むことができる。
本発明の研磨パッドの製造方法において、工程(A)と工程(2)とを組み合わせることにより、ほぐれた複数の微小球体に対して分級を行うことになり、凝集力の緩和と分級との相乗効果により微小球体同士が凝集体を形成しにくくなり、結果として、研磨層における開孔の微細さ及び均一性が向上すると考えられる。
【0052】
理論に縛られるものではないが、以下のように推察できる。
分級を行う前の微小球体を含む組成物に関して、複数の微小球体同士が凝集し、単体の微小球体とは異なるサイズ・形状の凝集体となっている成分も含むと推察できる。この場合、様々なサイズ・形状の凝集体を含む微小球体を分級工程にかけることになる。分級を行った際に、非常に大きなサイズの凝集体は粗粒子として除去可能であるが、比較的小さなサイズの凝集体は粗粒子としては除去できずに、単体の微小球体と共に存在してしまうと推察できる。このような凝集体が微小球体と共に存在すると、研磨層の開孔を形成する際に、発泡不良が起きやすくなり、開孔の均一性が低下すると考えられる。したがって、当該凝集体に由来する開孔が形成されると、開孔の微細さ及び均一性が損なわれてしまうと考えられる。
上記の点を考慮し、複数の微小球体の間の凝集力を緩和してから分級の処理を行うと、ほぐれた複数の微小球体に対して分級を行うことになり、凝集力の緩和と分級処理との相乗効果により微小球体同士が凝集体を形成しにくくなり、結果として、研磨層における開孔の微細さ及び均一性が向上すると考えられる。研磨層に微小球体を導入する際に、他の工程に比べて、微小球体の凝集状態を解除するために有効な工程が分級工程であると考えられるため、分級の前に複数の微小球体の間の凝集力を緩和することが重要であると推察する。
【0053】
上記(A)は、特に限定されないが、(A’)上記組成物を乾燥する工程を含む又はからなることができる。微小球体の表面には水分等の液体成分や半固体成分が存在しており、複数の微小球体の間で当該液体成分や半固体成分がくっつき合って凝集力が発現していると推察される。工程(A’)により当該液体成分や半固体成分を揮発させて除去することができ、その結果、複数の微小球体の間の凝集力を緩和できると考えられる。
【0054】
工程(A’)における乾燥の種類は、特に限定されないが、後述する低い露点を有するガスの雰囲気下に置く方法、真空乾燥、減圧乾燥、加熱乾燥(ただし微小球体が膨張しない温度下での加熱とする)、又はこれらのうちの2種以上の組み合わせが挙げられる。これらのうちでも、低い露点を有するガスの雰囲気下に置く方法を採用することが好ましく、当該方法の採用により、微小球体を形成する樹脂成分や内包成分に影響を与えること無く乾燥することができる。
【0055】
工程(A’)は、特に限定されないが、(A’’)上記組成物を、-50℃以下の露点を有するガスの雰囲気下に置く工程を含む又はからなることができる。-50℃以下の露点を有するガスは含まれる水分量が少ないため、工程(A’’)を行うことにより、微小球体の乾燥を効率良く行うことができる。ここで、-50℃以下の露点を有するガスの雰囲気下とは、必ずしも当該ガスが100体積%存在する雰囲気を意味するものではなく、当該ガスの含有量が90体積%以上かつ100体積%未満存在する雰囲気も含み得る。
上記ガスの純度は、特に限定されないが、90%以上、95%以上、又は99%以上とすることができる。上記ガスの純度は、特に限定されないが、100%以下、99.99%以下、又は99.9%以下とすることができる。ガスの純度に関する上記数値範囲は、任意に組み合わせることができる。
【0056】
上記-50℃以下の露点を有するガスは、特に限定されないが、不活性ガスを含む又はからなることができる。不活性ガスを使用することにより、工程(A’’)において、微小球体の周囲又は微小球体を収納する容器(原料タンク等)の内部の酸素濃度が粉塵爆発酸素濃度以下となり、仮に静電気等の着火源が発生しても粉塵爆発の発生を防止できる。露点が低いガスを使用すると装置内が乾燥するため粉塵爆発が起きやすくなる傾向があるが、不活性ガスを使用することにより、粉塵爆発の発生を防止できる。
不活性ガスの種類は、特に限定されないが、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン、又はこれらのうちの2種以上の組み合わせが挙げられる。これらのうちでも、窒素が好ましい。二酸化炭素およびアルゴンは、窒素と比較して分子量が大きいため、微小球体を収納する容器(原料タンク等)の下部に留まりやすく、微小球体の乾燥効率が窒素より劣る傾向がある。また、ヘリウムは、窒素と比較して分子量が小さいため、微小球体を収納する容器(原料タンク等)の上部に留まりやすく、微小球体の乾燥効率が窒素より劣る傾向がある。
【0057】
工程(A)を行った後の(工程(2)を行う前の)微小球体を含む組成物の水分率は、特に限定されないが、0.01~3重量%、0.01~2重量%、又は0.01~1重量%とすることができる。上記組成物の含水率は、後述の[実施例]に記載されているような、乾燥減量法に基づいて測定することができる。
【0058】
工程(A)の時間、工程(A’)の乾燥時間、又は工程(A’’)のガスの雰囲気下に置く時間は、特に限定されないが、0.5~12時間が好ましく、0.5~6時間がより好ましく、0.5~3時間が最も好ましい。これらの時間を上記数値範囲内とすることにより、複数の微小球体の間の凝集力の緩和が促進される。
【0059】
<微小球体の製造装置>
図1は、本発明の研磨パッドの製造方法に適用可能な微小球体の製造装置の模式図である。
図1の製造装置は、原料タンク10、分級装置20、粗粒子回収タンク30、及び微小球体回収タンク40を含む。
図1において、原料タンク10と分級装置20とは配管により接続されており、原料タンク10から分級装置20へ、原料として、上述の複数の微小球体を含む組成物が供給される。また、分級装置20と、粗粒子回収タンク30及び微小球体回収タンク40とはそれぞれ配管により接続されている。分級装置20により分離された、粗粒子及び分級後の微小球体がそれぞれ粗粒子回収タンク30及び微小球体回収タンク40へと供給される。
【0060】
(原料タンク)
原料タンク10内に、上述の複数の微小球体を含む組成物を投入し保管できる。図1の原料タンク10の例では、微小球体A、粗粒子B等が含まれた組成物が保管されている。原料タンク10において上記の工程(1)を行うことができる。
原料タンク10内の上記組成物に対して、上記の工程(A)を行うことができる。例えば、原料タンクにおいて、原料タンク内に、-50℃以下の露点を有する窒素を充填し、当該窒素の雰囲気下に上記組成物を置くことができる。
図1の装置において、原料タンク10は分級装置20と配管を通じて一体となっているが、必ずしもこのような形態に限られない。例えば、原料タンク10を、分級装置20から分離した別体としておき、このような原料タンク10内に上記組成物を収容し上記の工程(A)を行うこともできる。そして、研磨パッドの製造を行う際に、原料タンク10を分級装置20に接続し、上記組成物を供給することができる。
【0061】
(分級装置)
分級装置20において上記の工程(2)を行うことができる。
分級装置20は、特に限定されないが、慣性分級を行う装置として、エルボージェット(株式会社マツボー製)を使用することができ、また、遠心分級を行う装置として、半自由渦型遠心分級装置(例えば日清エンジニアリング(株)製、エディクラシファイア)、自由渦型遠心分級装置(例えば日本ニューマチック工業(株)製、ディスパージョンセパレーター)、強制渦型遠心分級装置(例えばホソカワミクロン(株)製、ターボプレックス)を使用することができる。
【0062】
図2は、自由渦型遠心分級装置の概略図である。
図2の装置は、2次ガス202を取り込むことで、装置内部に自由渦を発生させている。この2次ガス202には粒子の分散および再分級の機能を持たせている。装置に原料である組成物Cが1次ガス201とともに供給され、その後、分級により分離された微小球体Aは装置の下部の出口22から、外部(図1の微小球体回収タンク40等)へ送られ、また、分級により分離された粗粒子Bは装置の下部から、外部(図1の粗粒子回収タンク30等)へ送られる。
上記1次ガス及び/又は2次ガスの種類は、特に限定されないが、不活性ガス、空気、又はこれらのうちの2種以上の組み合わせを使用できる。これらのうちでも、不活性ガスを使用することにより、分級装置20内を不活性ガスの充填を促進でき、微小球体の凝集力の緩和や粉塵爆発の抑制をより促進できる。
不活性ガスの種類は、特に限定されないが、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン、又はこれらのうちの2種以上の組み合わせが挙げられる。これらのうちでも、窒素を使用することが好ましい。二酸化炭素およびアルゴンは、窒素と比較して分子量が大きく、微小球体との比重差のバランスが悪いため、微小球体の凝集力の緩和が窒素に比べて不十分となる傾向がある。また、ヘリウムは、窒素と比較して分子量が小さく、微小球体との比重差のバランスが悪いため、微小球体の凝集力の緩和が窒素に比べて不十分となる傾向がある。
【0063】
(粗粒子回収タンク)
分級装置20において分離された粗粒子Bは、粗粒子回収タンク30に回収される。
【0064】
(微小球体回収タンク)
分級装置20において分級された微小球体Aは、微小球体回収タンク40に回収される。回収された微小球体Aは、上述の工程(3)の硬化性樹脂組成物の成分として使用できる。
【0065】
微小球体の製造装置に関して、原料タンク10、分級装置20、粗粒子回収タンク30、微小球体回収タンク40、これらの構成のうちの2つ以上、又はこれらの構成の全てにおいて、-50℃以下の露点を有するガスを充填することができる。これらの中でも、上記構成の全ての内部に、-50℃以下の露点を有するガスを充填することが好ましい。このように上記構成の全ての内部に当該ガスを充填することにより、微小球体同士の凝集を一貫して防止でき、その結果、その後の研磨層の形成時に粗大な開孔が形成されるのを防止できる。また、上記構成の全ての内部に充填する上記ガスとして、不活性ガスを使用することにより、微小球体の周囲又は上記構成の全ての内部の酸素濃度が粉塵爆発酸素濃度以下となり、粉塵爆発の発生をより効果的に防止できる。
-50℃以下の露点を有するガスを製造装置内の上記の各構成に供給する手段は、特に限定されないが、ガスの製造装置を接続することにより供給することができ、当該ガスの製造装置は分級装置20に付属させることもできる。ガスの製造装置により製造されたガスは、上記の各構成を接続する配管を通じて、全ての構成の内部に行き渡らせることもできる。
【0066】
上述の原料タンク10、分級装置20、粗粒子回収タンク30、及び/又は微小球体回収タンク40の材質は、特に限定されないが、セラミック、ステンレス、又はこれらのうちの2種以上の組み合わせを使用できる。これらのうちでも、セラミックを使用することが好ましく、セラミックを使用することにより、摩擦による静電気の発生を防止でき、その結果、粉塵爆発の発生を抑制できる。
【0067】
図1のように、上記の原料タンク10、分級装置20、粗粒子回収タンク30、及び微小球体回収タンク40の全てを接続した装置とすることができ、これにより、分級後の微小球体の製造を連続的に行うことができ生産性が向上する。また、微小球体回収タンク40に、工程(3)に使用する混合機及び工程(4)に使用する型枠を更に接続した研磨パッドの製造装置とすることができ、これにより、微小球体が再凝集するのを抑制しつつ、原料の投入から研磨パッドの製造までを連続的に行うことができ更に生産性が向上する。
【0068】
2.光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法
本発明において、光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法は、上記「1.研磨パッドの製造方法」により得られる研磨パッドを使用して光学材料又は半導体材料の表面を研磨する工程を含む。
光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法は、研磨パッドの表面、光学材料若しくは半導体材料の表面、又はそれらの両方にスラリーを供給する工程を更に含むことができる。
【0069】
(スラリー)
スラリーに含まれる液体成分としては、特に限定されないが、水(純水)、酸、アルカリ、有機溶剤、又はそれらの組み合わせが挙げられ、被研磨物の材質や所望の研磨条件等によって選択される。スラリーは、水(純水)を主成分とすることが好ましく、スラリー全体に対して、水を80重量%以上含むことが好ましい。スラリーに含まれる砥粒成分としては、特に限定されないが、シリカ、珪酸ジルコニウム、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化マンガン、又はそれらの組み合わせが挙げられる。スラリーは、液体成分に可溶な有機物やpH調整剤等、その他の成分を含有していてもよい。
【実施例0070】
本発明を以下の例により実験的に説明するが、以下の説明は、本発明の範囲が以下の例に限定して解釈されることを意図するものではない。
【0071】
(材料)
後述の実施例1~4並びに比較例1及び2で使用した材料を以下に列挙する。
【0072】
・イソシアネート末端ウレタンプレポリマー:
プレポリマー(1)・・・ポリイソシアネート成分として、2,4-トリレンジイソシアネートを含み、高分子量ポリオール成分として、数平均分子量が650であるポリテトラメチレンエーテルグリコール及び数平均分子量が1000であるポリテトラメチレンエーテルグリコールを含み、低分子量ポリオール成分として、ジエチレングリコールを含む、NCO当量455のウレタンプレポリマー
【0073】
・硬化剤:
MOCA・・・3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(別名:メチレンビス-o-クロロアニリン)(MOCA)(NH当量=133.5)
【0074】
・微小球体:
微小球体(1)・・・Expancel(登録商標)461DU20(日本フィライト株式会社)(未膨張タイプ、未膨張の状態での平均粒径(D50):6~9μm、膨張開始温度:100~106℃、最大膨張温度:143~151℃、シェル組成:アクリロニトリル-塩化ビニリデン共重合体)
【0075】
<複数の微小球体の間の凝集力を緩和する処理>
原料タンク(材質:セラミック、容量:5.0L)内に窒素(露点-50℃、純度99.9%)を吹き込み、原料タンク内に当該窒素が90体積%以上となるように十分に充填させた。このようにして得られた窒素が充填された原料タンク内に、微小球体(1)(微小球体を含む組成物)0.8kgを投入した。微小球体(1)を投入した原料タンクを、外気温25℃、外気湿度40%RHの条件下で2時間、静置し、微小球体(A)(微小球体を含む組成物)を得た。
一方、別の原料タンク(材質:セラミック、容量:5.0L)を準備し、内部に窒素等のガスを充填させずに空気(25℃、40%RH)が充填された状態のままとした。このような空気が充填された状態の原料タンク内に、微小球体(1)(微小球体を含む組成物)0.8kgを投入した。微小球体(1)を投入した原料タンクを、外気温25℃、外気湿度40%RHの条件下で2時間、静置し、微小球体(B)(微小球体を含む組成物)を得た。
そして、原料タンクに入れる前の状態の微小球体(1)、上記微小球体(A)、及び上記微小球体(B)について、各試料1つあたり10g計量し、乾燥シリカゲルの入ったデシケーター中(室温)に2日間静置させ、重量の減少量から水分率(含水率)(重量%)を算出した(乾燥減量法)。測定結果を表1に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
表1の結果より、窒素が充填された原料タンク内に静置することにより得られた微小球体(A)は、静置前の微小球体(1)に比べて水分率が低かった。
一方、空気が充填された状態のままの原料タンク内に静置することにより得られた微小球体(B)は、静置前の微小球体(1)と同等の水分率であった。
微小球体における水分率が低いと、微小球体の表面に存在する水分が少なくなると考えられる。そのため、隣接する微小球体同士の表面が水分の少ない状態(乾燥した状態)で接することになるため、隣接する微小球体の間の凝集力が小さくなり、ほぐれやすくなると考えられる。したがって、微小球体(A)は、微小球体(1)及び微小球体(B)に比べて、隣接する微小球体の間の凝集力が小さく、ほぐれやすいと考えられる。
【0078】
<微小球体を分級する処理>
図2に示す自由渦型遠心分級装置に、上記微小球体(A)0.8kgを投入し、1次ガス及び2次ガスとして窒素(露点-50℃、純度99.9%)を使用し、遠心分級により処理して粗粒子を除去し、分級後の微小球体(A)(以下、「微小球体(A-1)」という)0.28kgを得た。粗粒子及び微小球体(A-1)は、それぞれ別の回収タンクに回収した。なお、分級装置並びに粗粒子及び分級後の微小球体の各回収タンクの内部には、窒素(露点-50℃、純度99.9%)を継続して吹き込み、当該窒素で充填された状態とした。
また、上記微小球体(A-1)を得た場合の2次ガスの圧力を1とした時の相対値(倍)が表2のようになるように、分級処理における2次ガスの圧力を変更する以外は、上記微小球体(A-1)を得た場合と同様にして、上記微小球体(A)の分級処理を行い、粗粒子を除去し、分級後の微小球体(A)(以下、それぞれ「微小球体(A-2)及び(A-3)」という)を得た。
さらに、微小球体(A)0.8kgに代えて微小球体(B)0.8kgを使用する以外は、上記微小球体(A-1)を得た場合と同様にして、上記微小球体(B)の分級処理を行い、粗粒子を除去し、分級後の微小球体(B)(以下、「微小球体(B-1)」という)を得た。
【0079】
そして、得られた微小球体(A-1)~(A-3)及び微小球体(B-1)について、下記式に基づいて、収率(%)を算出した。
【0080】
【数1】
【0081】
また、得られた微小球体(A-1)~(A-3)及び微小球体(B-1)並びに原料である微小球体(1)について、レーザー回折式粒度分布測定装置(スペクトリス(株)製、マスターサイザー2000)を使用して、各粒子径(D10、D50、D90(μm))の測定を行った。
測定した収率(%)及び粒子径の結果を表2に示す。
【0082】
【表2】
【0083】
(実施例1)
A成分としてプレポリマー(1)を100g、B成分として、硬化剤であるMOCAを26.3g、C成分として、上記のようにして得られた微小球体(A-1)を3.5g、それぞれ準備した。なお、各成分の比率を示すためにg表示として記載しているが、ブロックの大きさに応じて必要な重量(部)を準備すれば良い。以下同様にg(部)表記で記載する。
A成分とC成分を混合し、得られたA成分とC成分との混合物を減圧脱泡した。また、B成分であるMOCAを減圧脱泡した。脱泡したA成分とC成分との混合物及び脱泡したB成分を混合機に供給し、A成分、B成分、及びC成分の混合液を得た。
なお、得られたA成分、B成分、及びC成分の混合液における、A成分のプレポリマー(1)のNCOのモル数に対するB成分のMOCAのNHのモル数の比率(NHのモル数/NCOのモル数)は0.9である。また、上記混合液全体に対するC成分である微小球体(A)の含有量は2.7重量%である。
得られたA成分、B成分、及びC成分の混合液を80℃に加熱した型枠(850mm×850mmの正方形の形状)に注型した。注型終了後に型枠を加熱・昇温し、注型終了から10分後の温度が120℃となるようにした。その後、注型終了から10~20分の間、120℃を維持して一次硬化させ、樹脂発泡体を形成した。形成された樹脂発泡体を型枠から抜き出し、オーブンにて120℃で4時間、二次硬化した。得られた二次硬化後の樹脂発泡体を25℃まで放冷した後、再度オーブンにて120℃で5時間加熱した。得られた加熱後の樹脂発泡体を厚さ方向にわたって1.3mm厚にスライスしてウレタンシートを作製し、このウレタンシートの裏面に両面テープを貼り付け、研磨パッドとした。
【0084】
(実施例2及び3)
実施例1のC成分の微小球体(A-1)3.5gに代えて上記微小球体(A-2)又は(A-3)3.5gをそれぞれ使用した以外は、実施例1と同様にして、ウレタンシートを作製し、実施例2及び3の各研磨パッドを得た(実施例2:微小球体(A-2)、実施例3:微小球体(A-3)をそれぞれ使用)。
なお、得られたA成分、B成分、及びC成分の混合液における、A成分のプレポリマー(1)のNCOのモル数に対するB成分のMOCAのNHのモル数の比率(NHのモル数/NCOのモル数)は0.9である。また、上記混合物全体に対するC成分である微小球体(A-2)又は(A-3)それぞれの含有量は2.7重量%である。
【0085】
(実施例4)
実施例1のC成分の微小球体(A-1)3.5gに代えて上記微小球体(B-1)3.5gを使用した以外は、実施例1と同様にして、ウレタンシートを作製し、実施例4の研磨パッドを得た。
なお、得られたA成分、B成分、及びC成分の混合液における、A成分のプレポリマー(1)のNCOのモル数に対するB成分のMOCAのNHのモル数の比率(NHのモル数/NCOのモル数)は0.9である。また、上記混合物全体に対するC成分である微小球体(B-1)の含有量は2.7重量%である。
【0086】
(比較例1)
実施例1と同様にして、A成分、B成分、及びC成分の混合液を得た。
なお、得られたA成分、B成分、及びC成分の混合液における、A成分のプレポリマー(1)のNCOのモル数に対するB成分のMOCAのNHのモル数の比率(NHのモル数/NCOのモル数)並びに上記混合液全体に対するC成分である微小球体(A)の含有量は、実施例1と同様である。
得られたA成分、B成分、及びC成分の混合液を90℃に加熱した型枠(850mm×850mmの正方形の形状)に注型した。注型終了後に型枠を加熱・昇温し、注型終了から10分後の温度が140℃となるようにした。その後、注型終了から10~20分の間、140℃を維持して一次硬化させ、樹脂発泡体を形成した。形成された樹脂発泡体を型枠から抜き出し、オーブンにて130℃で4時間、二次硬化した。得られた二次硬化後の樹脂発泡体を25℃まで放冷した後、再度オーブンにて130℃で5時間加熱した。得られた加熱後の樹脂発泡体を厚さ方向にわたって1.3mm厚にスライスしてウレタンシートを作製し、このウレタンシートの裏面に両面テープを貼り付け、研磨パッドとした。
【0087】
(比較例2)
比較例1のC成分の微小球体(A-1)3.5gに代えて上記微小球体(B-1)3.5gを使用した以外は、比較例1と同様にして、ウレタンシートを作製し、比較例2の研磨パッドを得た。
なお、得られたA成分、B成分、及びC成分の混合液における、A成分のプレポリマー(1)のNCOのモル数に対するB成分のMOCAのNHのモル数の比率(NHのモル数/NCOのモル数)は0.9である。また、上記混合物全体に対するC成分である微小球体(B-1)の含有量は2.7重量%である。
【0088】
(評価方法)
実施例1~4並びに比較例1及び2それぞれの研磨パッド又はウレタンシートについて、以下の(1)SEMによる断面の観察、(2)平均開孔径、開孔率、及び開孔数、(3)密度及びショアD硬度、(4)膨張倍率、(5)スクラッチ、並びに(6)研磨レートの各測定又は評価を行った。測定結果を以下の表3及び4に示す。
【0089】
(1)SEMによる断面の観察
各研磨パッドを厚み方向に沿って切断し、その断面について、走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子株式会社製、JSM-5000LV)により写真撮影を行った。得られたSEMによる断面写真を図3~8に示す。
図3は、実施例1の研磨パッドについて、200倍の倍率で測定した断面写真である。図4は、実施例2の研磨パッドについて、200倍の倍率で測定した断面写真である。図5は、実施例3の研磨パッドについて、200倍の倍率で測定した断面写真である。図6は、実施例4の研磨パッドについて、200倍の倍率で測定した断面写真である。図7は、比較例1の研磨パッドについて、200倍の倍率で測定した断面写真である。図8は、比較例2の研磨パッドについて、200倍の倍率で測定した断面写真である。
【0090】
(2)平均開孔径、開孔率、及び開孔数
研磨パッドの研磨層の表面から偏りのないように任意に3箇所の領域(それぞれ縦0.5mm×横0.7mmの長方形)を選び出し、各領域を、レーザーマイクロスコープ(VK-X1000、KEYENCE製)を用いて400倍に拡大して観察した。得られた各画像(縦0.5mm×横0.7mmの長方形)を、画像処理ソフト(WinROOF2018 Ver4.0.2、三谷商事製)により二値化処理して開孔を確認し、また、各々の開孔の面積から円相当径(開孔径)を算出した。なお、開孔径のカットオフ値(下限)は5μmとし、ノイズ成分を除外した。
・平均開孔径
上記の各領域(画像)中に含まれる全ての開孔径を平均して、各領域の平均開孔径を算出した。このようにして得られた3箇所の領域の平均開孔径をさらに平均することにより、最終的な平均開孔径を算出した。
・開孔率
上記の各領域(画像)の面積当たりの開孔している部分の総面積の割合(%)(開孔している部分の総面積/画像(領域)の面積 ×100)を算出した。このようにして得られた3箇所の領域の開孔率をさらに平均することにより、最終的な開孔率を算出した。
・開孔数
上記の各領域(画像)の面積当たりの開孔の個数(個/mm)を算出した。このようにして得られた3箇所の領域の開孔数をさらに平均することにより、最終的な開孔数を算出した。
【0091】
(3)密度及びショアD硬度
(密度)
ウレタンシートの密度(g/cm)は、日本工業規格(JIS K 6505)に準拠して測定した。
(ショアD硬度)
ウレタンシートのショアD硬度は、日本工業規格(JIS-K-6253)に準拠して、D型硬度計を用いて測定した。ここで、測定試料は、少なくとも総厚さ4.5mm以上になるように、必要に応じて複数枚のウレタンシートを重ねることで得た。
【0092】
(4)膨張倍率
下記式に基づき、微小球体の膨張倍率を算出した。
膨張倍率 = (上記(2)で算出した平均開孔径)/(膨張前の微小球体の平均粒径(D50))
*膨張前の微小球体の平均粒径(D50)は6μmとした。
【0093】
(5)スクラッチ
スクラッチの評価は、下記(研磨試験)に記載の条件に基づいて、基板を研磨し、研磨加工後の基板について、ウエハ表面検査装置(KLAテンコール社製、Surfscan SP5)の高感度測定モードにて測定し、基板全体における、大きさが110nm以上となるディフェクト(表面欠陥)を検出した。検出された各ディフェクトについて、レビューSEMを用いて撮影したSEM画像の解析を行い、「パーティクル」、「パッド屑」、及び「スクラッチ」に分類分けし、これらのうちのスクラッチの個数を計測した。結果はn4での平均結果となる。ここで、分類「パーティクル」は、被研磨物の表面に付着した細かい粒子が残留したものを意味し、分類「パッド屑」は、被研磨物の表面に付着した研磨層の屑を意味し、分類「スクラッチ」は、被研磨物の表面についた傷を意味する。
【0094】
(研磨試験)
使用研磨機:F-REX300X(荏原製作所社製)
Disk:A188(3M社製)
研磨剤温度:20℃
研磨定盤回転数:85rpm
研磨ヘッド回転数:86rpm
研磨圧力:3.5psi
研磨スラリー:CSL-9044C(CSL-9044C原液:純水=重量比1:1の混合液を使用)(フジミコーポレーション製)
研磨スラリー流量:200ml/min
研磨時間:60秒
被研磨物:Cu膜基板(直径300mmの円盤状)
パッドブレーク:35N 10分
コンディショニング:Ex-situ、35N、4スキャン
【0095】
(6)研磨レート
研磨パッドについて、上記(5)の(研磨試験)に記載の研磨条件に基づいて研磨された被研磨物について研磨レートを以下のように測定した。
研磨試験前後のCu膜基板について、基板上の直径方向で測定を実施し、それらの箇所における研磨試験前後の厚みを測定した。測定した厚みに基づいて、研磨試験前の厚みの平均値及び研磨試験後の厚みの平均値を算出し、これらの平均値の差をとることにより研磨された厚みの平均値を算出した。そして、得られた研磨された厚みの平均値を研磨時間で除することにより研磨レートを算出した。なお、厚み測定は、4探針シート抵抗測定装置(KLAテンコール社製、商品名「RS-200」、測定:DBSモード)にて測定した。
【0096】
【表3】
【0097】
【表4】
【0098】
実施例1~3の研磨パッドは、複数の微小球体の間の凝集力を緩和する工程を経てから分級を行った加熱膨張性微小球体を使用して、当該加熱膨張性微小球体を1.5~3倍に膨張させることにより製造されたものである。実施例4の研磨パッドは、複数の微小球体の間の凝集力を緩和する工程を経由せずに分級を行った加熱膨張性微小球体を使用して、当該加熱膨張性微小球体を1.5~3倍に膨張させることにより製造されたものである。
一方、比較例1の研磨パッドは、複数の微小球体の間の凝集力を緩和する工程を経てから分級を行った加熱膨張性微小球体を使用して、当該加熱膨張性微小球体を3倍を超えて膨張させることにより製造されたものである。比較例2の研磨パッドは、複数の微小球体の間の凝集力を緩和する工程を経由せずに分級を行った加熱膨張性微小球体を使用して、当該加熱膨張性微小球体を3倍を超えて膨張させることにより製造されたものである。
【0099】
図3~8の断面写真より、実施例1~4の研磨パッドは、微細かつ均一な開孔が得られていることがわかった。一方、比較例1及び2の研磨パッドは、開孔が大きく不均一であることがわかった。
この点について、表3の結果より、実施例1~4の研磨パッドは、平均開孔径が15μm以下であり、開孔率が30~35%であり、開孔数が1600~2600個/mmであることから、微細かつ均一な開孔であることが確認できた。一方、比較例1及び2の研磨パッドは、平均開孔径が20μm以上であり、開孔率が35%以上であり、開孔数が1200~1300個/mmであることから、開孔が大きく不均一であることが確認できた。
【0100】
また、表4の結果より、実施例1~4の研磨パッドは、スクラッチの個数が少なく、スクラッチの発生を十分に抑制できており、また、研磨レートも8000Åを超えており、十分な研磨性能を示していた。実施例1~4の研磨パッドは、微細かつ均一な開孔を有しており、当該開孔に由来する微細な凹凸が研磨点として作用することで、高い研磨性能を示したと推察される。一方、比較例1及び2の研磨パッドは、スクラッチの個数が多く、実施例1~4に比べてスクラッチの発生を十分に抑制できていないことがわかった。また、研磨レートも7000Åを下回っており、実施例1~4に比べて低い研磨性能を示していた。
【0101】
また、図3~5の断面写真及び表3及び4の結果より、実施例1~3の研磨パッドは、実施例4の研磨パッドに比べて、得られる開孔の微細性及び均一性並びにスクラッチ発生の抑制の点でより優れていることがわかった。この結果より、複数の微小球体の間の凝集力を緩和する工程は必須ではないものの、開孔の微細性及び均一性を向上させ、スクラッチの発生を抑制する上では有効であることがわかった。
【0102】
以上の結果より、本発明の(1)複数の微小球体を含む組成物を準備する工程、(2)前記組成物を分級して粗粒子を除去し、加熱膨張性微小球体を含む分級処理後の微小球体を得る工程、(3)前記分級処理後の微小球体を、イソシアネート末端ウレタンプレポリマー及び硬化剤と混合して、硬化性樹脂組成物を形成する工程、及び(4)前記硬化性樹脂組成物を硬化させて前記研磨層を形成する工程であって、前記加熱膨張性微小球体を1.5~3倍に膨張させる、前記工程を含む、製造方法により得られた研磨パッドは、微細かつ均一な開孔を有することがわかった。
【符号の説明】
【0103】
10…原料タンク
20…分級装置
22…出口
201…1次ガス
202…2次ガス
30…粗粒子回収タンク
40…微小球体回収タンク

A…微小球体
B…粗粒子
C…組成物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8