(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144238
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】土壌の液状化度をモニタリングする液状化モニタリング装置の設置方法
(51)【国際特許分類】
E02D 1/04 20060101AFI20241003BHJP
E02D 3/115 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
E02D1/04
E02D3/115
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024043317
(22)【出願日】2024-03-19
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-09-03
(31)【優先権主張番号】112111734
(32)【優先日】2023-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】524106554
【氏名又は名称】超島環能有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHAO DAO ENVIRONMENT AND ENERGY LTD.
【住所又は居所原語表記】5F.‐4, NO. 120, ZHONGZHENG 1ST RD., LINGYA DIST., KAOHSIUNG CITY, TAIWAN
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】▲曾▼ 玉修
(72)【発明者】
【氏名】▲黄▼ 瑞箴
【テーマコード(参考)】
2D043
【Fターム(参考)】
2D043BA05
2D043BA08
2D043BA10
(57)【要約】
【課題】土壌の液状化度を正確にモニタリングできるように液状化モニタリング装置を設置する方法を提供する。
【解決手段】モニタリングの対象となる領域を掘削して補充土を取得するステップと、当該領域にアウターチューブ200を沈下させるステップと、アウターチューブ200内に採土器300を押し込んで配置し、採土器300内に土壌を収容させるステップと、採土器300を取り出してボーリング孔を形成するステップと、採土器300を凍結保存させて凍結土柱を取得するステップと、ボーリング孔の底部に液状化モニタリング装置を配置するステップと、採土器300内の凍結土柱を取り出し、ボーリング孔内での採土器300の位置に従って凍結土柱をボーリング孔内に戻すステップと、凍結土柱とアウターチューブ200との間に補充土を充填するステップと、アウターチューブ200を引き上げるステップとを含む。
【選択図】
図4C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある領域の下層土壌の液状化度をモニタリングする液状化モニタリング装置の設置方法であって、
前記領域を掘削して補充土を取得するステップと、
前記領域にアウターチューブを沈下させるステップと、
前記アウターチューブ内に少なくとも一つの採土器を押し込んで配置し、前記採土器内に土壌を収容させるステップと、
前記少なくとも一つの採土器を取り出してボーリング孔を形成するステップと、
前記採土器を凍結保存させて複数の凍結土柱を取得するステップと、
前記ボーリング孔の底部に液状化モニタリング装置を配置するステップと、
前記採土器内の前記凍結土柱を取り出して、前記ボーリング孔内での前記採土器の位置に従って前記凍結土柱を前記ボーリング孔内に戻すステップと、
前記凍結土柱と前記アウターチューブとの間に前記補充土を充填するステップと、
前記アウターチューブを引き上げるステップと、を含む方法。
【請求項2】
前記アウターチューブは中空のチューブである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも一つの採土器及び前記液状化モニタリング装置はプッシュロッドによって下方に向かって前記アウターチューブ内に配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも一つの採土器は、上部蓋と、少なくとも一つの側壁と、下部蓋とを有し、
前記上部蓋は、前記プッシュロッドと連結するための連結装置を有し、
前記少なくとも一つの側壁は、前記上部蓋及び前記下部蓋に係合され、
前記下部蓋は開口を有し、前記少なくとも一つの採土器が前記プッシュロッドによって押動されて沈下する際に、前記開口を介して土壌が前記採土器内に入る、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記液状化モニタリング装置は、
前記プッシュロッドと連結するための連結孔を有する上部と、
前記上部を貫通する第1孔部及び第2孔部と、
前記上部と共に収容空間を画定する外壁と、
前記収容空間内に配置された土圧計及び水圧計と、を有し、
前記液状化モニタリング装置の前記外壁は土壌内に沈下するためのものである、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記ボーリング孔の前記底部に前記液状化モニタリング装置を配置するステップは、
前記液状化モニタリング装置の前記第1孔部に、信号線を収容する信号線保護チューブを連結させると共に、前記第1孔部を水密状態に封止させるステップと、
前記第2孔部に、バルブを有する流入出管を連結させるステップと、を更に含み、
前記プッシュロッドによって前記液状化モニタリング装置を前記ボーリング孔の前記底部に配置した後に、前記流入出管の前記バルブを開け、前記流入出管に水及び空気を流し込んで前記液状化モニタリング装置の内部を水及び空気で満たし、続いて、前記プッシュロッドによって前記液状化モニタリング装置を前記領域の下層土壌内に押し込んで余分の水及び空気を前記流入出管から流出させた後に、前記バルブを閉め、前記液状化モニタリング装置に土壌を付着させる、請求項5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現場で掘削して採取された土サンプルを凍結工法によって埋め戻すことで、液状化モニタリング装置を比較的一定の深さに配置させ且つその上の土壌の堆積順序を維持し、これにより、土壌の液状化状態を正確に検出することができる土壌液状化モニタリング装置の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記液状化モニタリング装置を設置する従来の方法では、検出したい領域の土壌を掘削し、そのボーリング孔に水圧計を設置した後に、清浄な土砂(例えば7厘の砂利)を埋め戻していた。というのも、下層土の状態を検出するためには、深さ50メートルまで掘削する必要がある場合があり、その場合、粘土層とカルキ質の砂層を横切る可能性があり、それぞれの層は深さによって土壌の堆積順序が異なるため、掘削した土を元の位置に従ってボーリング孔に埋め戻すことができないからである。しかし、埋め戻された土砂と、掘削された元の土壌とは異なるため、水圧計によって測定される、地震による過剰間隙水圧の発生量は、元の地盤での実際の過剰間隙水圧の発生量とは異なり、土壌の液状化を正確にモニタリングすることが困難であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、土壌の液状化度を正確にモニタリングできるように液状化モニタリング装置を設置する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために提供される本発明に係る方法は、ある領域の下層土壌の液状化度をモニタリングする液状化モニタリング装置の設置方法であって、
前記領域を掘削して補充土を取得するステップと、
前記領域にアウターチューブを沈下させるステップと、
前記アウターチューブ内に少なくとも一つの採土器を押し込んで前記採土器内に土壌を収容させるステップと、
前記少なくとも一つの採土器を取り出してボーリング孔を形成するステップと、
前記採土器を凍結保存させて複数の凍結土柱を取得するステップと、
前記ボーリング孔の底部に液状化モニタリング装置を配置するステップと、
前記採土器内の前記凍結土柱を取り出して、前記ボーリング孔内での前記採土器の位置に従って前記凍結土柱を前記ボーリング孔内に戻すステップと、
前記凍結土柱と前記アウターチューブとの間に前記補充土を充填するステップと、
前記アウターチューブを引き上げるステップと、を含むという点に特徴がある。
【0005】
本発明に係るある領域の下層土壌の液状化度をモニタリングする液状化モニタリング装置の設置方法において、前記アウターチューブは中空チューブである。
【0006】
本発明に係るある領域の下層土壌の液状化度をモニタリングする液状化モニタリング装置の設置方法において、前記少なくとも一つの採土器及び前記液状化モニタリング装置はプッシュロッドによって下方に向かって前記ボーリング孔内に押し込まれる。
【0007】
本発明に係るある領域の下層土壌の液状化度をモニタリングする液状化モニタリング装置の設置方法において、
前記少なくとも一つの採土器は、上部蓋と、二つの側壁と、下部蓋とを有し、
前記上部蓋は、前記プッシュロッドと連結するための連結装置を有し、
前記二つの側壁は、前記上部蓋及び前記下部蓋に係合され、
前記下部蓋は開口を有し、前記少なくとも一つの採土器が前記プッシュロッドによって押動されて沈下する際に、前記開口を介して土壌が前記採土器内に入る。
【0008】
本発明に係るある領域の下層土壌の液状化度をモニタリングする液状化モニタリング装置の設置方法において、
前記液状化モニタリング装置は、
前記プッシュロッドと連結するための連結孔を有する上部と、
前記上部を貫通し且つ前記連結孔の両側に位置する第1孔部及び第2孔部と、
前記上部と共に収容空間を画定する外壁と、
前記収容空間内に配置された土圧計及び水圧計と、有し、
前記土圧計及び前記水圧計のモニタリング信号線は第1開口を介して地面におけるデータ抽出器(data extractor)に接続され、
前記液状化モニタリング装置の前記外壁は土壌内に沈下するためのものである。
【0009】
本発明に係るある領域の下層土壌の液状化度をモニタリングする液状化モニタリング装置の設置方法において、前記ボーリング孔の前記底部に前記液状化モニタリング装置を配置するステップは、以下のステップをさらに含む。
前記液状化モニタリング装置の前記第1孔部に信号線保護チューブを連結させると共に、モニタリング装置の下降前に、信号線を前記液状化モニタリング装置内の土圧計及び水圧計に接続させて前記第1孔部を防水材で封止させる。
前記第2孔部に、バルブを有しており空気及び水が通過可能な流入出管を連結させる。
ここで、前記プッシュロッドによって前記液状化モニタリング装置を前記ボーリング孔の前記底部に配置した後に、前記流入出管の前記バルブを開けて前記流入出管に水及び空気を流し込んで前記液状化モニタリング装置の内部を水及び空気で満たし、続いて、プッシュロッドによって液状化モニタリング装置をモニタリングする領域の下層土壌内に押し込んで余分の水及び空気を流入出管から流出させた後に、バルブを閉めて前記液状化モニタリング装置に土壌を付着させる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】本発明に係る液状化モニタリング装置の設置方法に適用される液状化モニタリング装置の外観を示す模式図である。
【
図1B】本発明における液状化モニタリング装置の内部を示す模式図である。
【
図2】本発明におけるアウターチューブの模式図である。
【
図4A】本発明に係る液状化モニタリング装置の設置方法における補充土を取り出すステップの模式図である。
【
図4B】本発明に係る液状化モニタリング装置の設置方法におけるアウターチューブを沈下させるステップの模式図である。
【
図4C】本発明に係る液状化モニタリング装置の設置方法における採土器を沈下させるステップの模式図である。
【
図4D】本発明に係る液状化モニタリング装置の設置方法における液状化モニタリング装置を沈下させるステップの模式図である。
【
図4E】本発明に係る液状化モニタリング装置の設置方法における凍結土を戻すステップの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1Aは本発明に係る設置方法に適用される液状化モニタリング装置100の一例を示す模式図である。液状化モニタリング装置100は上部101と外壁102を備える。上部101は、クイック連結タイプの連結孔103を有し、連結孔103は液状化モニタリング装置100を押動するためのプッシュロッド400(図示せず)と連結するためのものである。上部101はまた、上部101を貫通し且つ連結孔103の両側に位置する孔部105及び孔部107を有する。
図1Bは、液状化モニタリング装置100の内部を示す模式図である。
図1Bに示すように、上部101及び外壁102により、土圧計111及び水圧計113を収容し得る収容空間が画定されている。土圧計111及び水圧計113は、例えば上部101の内側又は外壁102の内側に配置される。液状化モニタリング装置100は、外壁102を土壌内に沈めることが可能なように、底部を有しない構造となっている。なお、土圧計又は水圧計は、測定方法又は設計条件に応じて複数個設けられてもよい。
【0012】
図2は本発明におけるアウターチューブ200の模式図である。アウターチューブ200は、中空に構成されており、外径D
oが10~13cmであってよく、厚さt
oが0.5~0.7cmであってよく、内径D
iが8.6~12cmであってよい。アウターチューブ200は、沈下される採土器300の位置を規定するためのものである。
【0013】
図3は本発明における採土器300の模式図である。採土器300の材料は非ステンレス鋼であって良い。採土器300は、上部蓋301と、二つの側壁305、307と、下部蓋303とを有する。上部蓋301は、プッシュロッド400と連結するための連結装置(図示しないが、例えばクイックリリース機構を持つもの)を有する。二つの側壁305、307は、上部蓋301及び下部蓋303と係合している。下部蓋303は開口有する。プッシュロッド400によって押動された採土器300が土壌内に沈下した際、土壌は下部蓋303の開口を介して採土器300内に入っていく。採土器300の外径又は外部寸法は、アウターチューブ200の外径D
oよりも小さく構成されてもよい。また、採土器300の外径又は外部寸法は、当該採土器300によって形成されたボーリング孔内に液状化モニタリング装置100を収容し得るように、液状化モニタリング装置100の寸法(例えば外壁102の外径)よりも大きく構成されてもよい。なお、採土器300は、ユーザーのニーズに応じて、一つのみの側壁を有するように構成されてもよく、又は、互いに組み合わされる三つ以上の側壁を有するように構成されてもよい。
【0014】
以下、本発明に係る液状化モニタリング装置の設置方法について説明する。
【0015】
まず、
図4Aに示すように、液状化モニタリング装置100の設置位置に隣接する領域で掘削を行い、掘削によって除去された土壌を、土壌液状化モニタリング装置100の設置孔用の補充土500として取っておく。最終的に補充土500が埋められる位置と、掘削前の補充土500の元の深さ位置とは互いに対応しない可能性があるが、必要な補充土500の量は、その後のステップにおいて採土器300によって取得される土壌の量よりも遥かに少ないので、本発明における土圧計111及び水圧計113の測定結果には影響しない。
【0016】
次に、
図4Bに示すように、アウターチューブ200を土壌内に沈下させる。
【0017】
次に、
図4Cに示すように、上部蓋301を介してプッシュロッド400と連結した採土器300を、油圧リアクションフレーム(又はトラックなどの機械設備)によってプッシュロッド400を押し動かすことにより、土壌内に沈下させる。このとき採土器300内に入った土壌は、採土器300と壁部との間の摩擦力により採土器300内に保持される。その後、プッシュロッド400によって採土器300を引き上げて採土器300とプッシュロッド400とを分離させた後に、採土器300を凍結させる。このステップを繰り返して行われる。凍結される複数の採土器300には、例えば、最初に取り出した採土器300に、位置が最も上であることを示す1番、次に取り出した採土器300に2番、というように、対応する位置を示すための印を付けることができる。凍結されることにより、水と土壌は結合し、本来の堆積順序及び状態に維持される。なお、作業時間の短縮のために、二つの(又はそれより多くの)採土器300を一度に配置して、この二つの採土器300を一度に取り出すようにしてもよい。この場合、採土器300は、一方の採土器300の上部蓋と他方の採土器300の下部蓋とがクイックリリース機構を介して連結できるように構成されてもよい。これにより、プッシュロッド400を用いて二つの採土器300を一度に押し動かすことが可能になる。また、本発明においては、アウターチューブ200をより大きく構成すれば、アウターチューブ200によって規定されたボーリング孔の領域内に一つ以上の採土器300を一度に収容することが可能になる。アウターチューブ200の大きさは、ユーザーの測定上のニーズ等に応じて設定可能である。
【0018】
次に、
図4Dに示すように、液状化モニタリング装置100の第1孔部105に、土圧計信号線112及び水圧計信号線114を収容するための信号線保護チューブ701を連結させると共に、モニタリング装置の設置前に信号線の接続を完了させて第1孔部105を防水材で封止させる。また、液状化モニタリング装置100の第2孔部107には流入出管703を連結させる。流入出管703には、その内部での流体の通過可否を制御するバルブが設けられている。そして、プッシュロッド400を用いて液状化モニタリング装置100をボーリング孔の底部に配置させた後に、流入出管703のバルブを開け、流入出管703に水及び空気を流し込んで液状化モニタリング装置100内を水及び空気で満たす。続いて、プッシュロッド400によって液状化モニタリング装置を、モニタリングの対象となるある領域の下層土壌内に押し込んで余分の水及び空気を流入出管703から流出させた後に、バルブを閉めることで、液状化モニタリング装置100は、外部圧力によって土壌と付着するので、概ね一定の位置に維持される。なお、信号線保護チューブ701は土圧計信号線112及び水圧計信号線114を収容して保護するためのものである。
【0019】
次に、
図4Eに示すように、採土器300内の凍結土柱を取り出してボーリング孔内の元の位置に順次戻し、凍結土柱とボーリング孔との隙間に前述したステップで取っておいた補充土500を充填した後に、アウターチューブ200を引き上げる。これで、全てのステップが完了する。
【0020】
本発明を上記実施形態により説明したが、本発明はこれら開示された実施形態に限定されず、当業者が本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で変更および修飾を加えた均等物はいずれも本発明の技術的思想に含まれるものである。したがって、本発明の範囲は、別添の特許請求の範囲において特定されたものとする。
【符号の説明】
【0021】
100 液状化モニタリング装置
101 上部
102 外壁
103 連結孔
105、107 孔部
111 土圧計
112 土圧計信号線
113 水圧計
114 水圧計信号線
200 アウターチューブ
300 採土器
301 上部蓋
303 下部蓋
305、307 側壁
400 プッシュロッド
500 補充土
701 信号線保護チューブ
703 流入出管