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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144240
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】二次電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0583 20100101AFI20241003BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20241003BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20241003BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20241003BHJP
   H01M 50/466 20210101ALI20241003BHJP
   H01M 50/431 20210101ALI20241003BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20241003BHJP
   H01M 50/451 20210101ALI20241003BHJP
【FI】
H01M10/0583
H01M10/0566
H01M10/052
H01M4/38 Z
H01M50/466
H01M50/431
H01M50/434
H01M50/451
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024043657
(22)【出願日】2024-03-19
(31)【優先権主張番号】202310320245.1
(32)【優先日】2023-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】有賀 稔之
【テーマコード(参考)】
5H021
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H021CC04
5H021CC19
5H029AJ12
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL12
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM07
5H029BJ15
5H029DJ04
5H029HJ12
5H050AA15
5H050AA19
5H050BA16
5H050CA01
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB12
5H050DA19
(57)【要約】
【課題】充放電による負極層の厚みの変化が大きくても、正極層と負極層の位置ずれが起こりにくい二次電池及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】二次電池は、電極積層体と、電解液と、前記電極積層体及び前記電解液を収容する外装体と、を備え、前記電極積層体は、正極層と、負極層と、長尺状セパレータと、を有し、前記長尺状セパレータは、長さ方向に沿ってつづら折り状に折られた折返しを2つ以上有する電極層収容部と、前記電極層収容部の長さ方向の端部に接続する延出部とを有し、前記折返しのそれぞれに前記正極層と前記負極層とが互いに対向するように配置され、前記延出部は前記電極層収容部の外側面に巻回されている。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極積層体と、電解液と、前記電極積層体及び前記電解液を収容する外装体と、を備え、
前記電極積層体は、正極層と、負極層と、長尺状セパレータと、を有し、
長尺状セパレータは、絶縁性多孔質膜と、前記絶縁性多孔質膜の一方の表面に設けられた導電層とを含み、
前記長尺状セパレータは、前記絶縁性多孔質膜側の表面が内側となるように長さ方向に沿って折られた絶縁性折返しと、前記導電層側の表面が内側となるように長さ方向に沿って折られた導電性折返しとが交互に重なるように形成された電極層収容部と、前記電極層収容部の長さ方向の一方の端部から延出された第1延出部を有し、
前記絶縁性折返しには前記正極層が、前記導電性折返しには前記負極層がそれぞれ互いに対向するように配置され、
前記第1延出部は前記電極層収容部の外側面に、前記絶縁性多孔質膜側の表面が外側となるように巻回されている、二次電池。
【請求項2】
前記電極層収容部の長さ方向の他方の端部から延出された第2延出部を有し、
前記第2延出部は、前記導電性折返しの先端に前記絶縁性多孔質膜の表面が接するように延出されている、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記導電性折返しは、折り返しの先端が延長された延長部を有し、
前記延長部が、正極層側に折り曲げられている、請求項1に記載の二次電池。
【請求項4】
前記正極層に電気的に接続し、少なくとも一部が外部に露出した正極端子と、
前記負極層に電気的に接続し、少なくとも一部が外部に露出した負極端子と、を有し、
前記正極端子及び前記負極端子は、前記長尺状セパレータの長さ方向に直交する方向に沿って配置されている、請求項1に記載の二次電池。
【請求項5】
負極活物質が金属リチウムである、請求項1に記載の二次電池。
【請求項6】
絶縁性多孔質膜と、前記絶縁性多孔質膜の一方の表面に設けられた導電層とを含む長尺状積層シートの一部をつづら折りして、前記絶縁性多孔質膜側の表面が内側となるように長さ方向に沿って折られた絶縁性折返しと、前記導電層側の表面が内側となるように長さ方向に沿って折られた導電性折返しとが交互に重なるように形成された電極層収容部と、前記電極層収容部の長さ方向の一方の端部から延出された第1延出部とを有する長尺状セパレータを作製する工程と、
前記絶縁性折返しに正極層を、前記導電性折返しに負極層をそれぞれ互いに対向するように配置する工程と、
前記電極層収容部の外側面に、前記第1延出部を前記絶縁性多孔質膜側の表面が外側となるように巻き付ける工程と、を含む二次電池の製造方法。
【請求項7】
電極積層体と、電解液と、前記電極積層体及び前記電解液を収容する外装体と、を備え、
前記電極積層体は、正極層と、負極層と、長尺状セパレータと、を有し、
前記長尺状セパレータは、長さ方向に沿ってつづら折り状に折られた折返しを2つ以上有する電極層収容部と、前記電極層収容部の長さ方向の端部に接続する延出部とを有し、
前記折返しのそれぞれに前記正極層と前記負極層とが互いに対向するように配置され、
前記延出部は前記電極層収容部の外側面に巻回されている、二次電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能かつ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する二次電池に関する研究開発が行われている。二次電池のエネルギー密度を向上させるために、複数の正極層と負極層とを交互に重なるように積層した積層構造の二次電池が検討されている。この積層構造の二次電池では、正極層と負極層の位置ずれを抑制することなどを目的として、長尺状のセパレータをつづら折り状に折り、その折り返しの部分に正極層と負極層とを交互に重なるように配置することが検討されている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2020/003846号
【特許文献2】国際公開第2020/003847号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、二次電池に関する技術においては、高容量化が課題である。二次電池の高容量化のため、負極活物質として金属リチウムを用いたリチウム金属二次電池の実用化が望まれている。しかしながら、リチウム金属二次電池は充放電による負極層の厚みの変化が大きい。このため、複数の正極層と負極層とを交互に重なるように積層した積層構造のリチウム金属二次電池では、充放電による負極層の厚みの変化によって、正極層と負極層の位置ずれが生じやすくなるおそれがある。
【0005】
また、リチウム金属二次電池においては、充放電を繰り返すことによって、負極層の集電体とリチウムとの界面にSEI層(固体電解質中間相)が蓄積し、充電時にリチウムのデンドライトが生成しやすくなる。リチウムのデンドライトが生成すると、リチウムのデンドライトがセパレータを貫通して正極層と負極層とが短絡するおそれがある。また、リチウムのデンドライトが生成すると、負極集電体に析出した金属リチウムの層(負極活物質層)の密度が低下して、充電時のリチウム二次電池の膨張が過度に大きくなるおそれがある。
【0006】
本発明者の検討によると、多孔質膜の表面に導電層を積層した積層体をセパレータとし、その導電層が負極層側となるように配置することにより、デンドライトによる短絡や充電状態の負極層の活物質層の密度の低下を抑制することができることがある。しかしながら、一方の表面に導電層を有する長尺状セパレータをつづら折り状に折り、その折り返しの部分に正極層と負極層とを交互に重なるように配置すると、正極層と長尺状セパレータの導電層とが接触して、正極層と負極層とが短絡するおそれがある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、充放電による負極層の厚みの変化が大きくても、正極層と負極層の位置ずれが起こりにくい二次電池及びその製造方法を提供することを目的とする。特に、本発明は、一方の表面に導電層を有するセパレータを用いても、正極層と負極層の位置ずれが起こりにくく、正極層と負極層とが短絡しにくい二次電池及びその製造方法を提供することを目的とする。そして、延いてはエネルギーの効率化に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記の課題の解決するために、長尺状セパレータをつづら折りして正極層と負極層とを配置した電極層収容部の端部に、長尺状セパレータの延出部を設け、その延出部を電極層収容部の外側面に巻き付けることが有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。したがって、本発明は、次のものを提供する。
【0009】
(1)電極積層体と、電解液と、前記電極積層体及び前記電解液を収容する外装体と、を備え、前記電極積層体は、正極層と、負極層と、長尺状セパレータと、を有し、長尺状セパレータは、絶縁性多孔質膜と、前記絶縁性多孔質膜の一方の表面に設けられた導電層とを含み、前記長尺状セパレータは、前記絶縁性多孔質膜側の表面が内側となるように長さ方向に沿って折られた絶縁性折返しと、前記導電層側の表面が内側となるように長さ方向に沿って折られた導電性折返しとが交互に重なるように形成された電極層収容部と、前記電極層収容部の長さ方向の一方の端部から延出された第1延出部を有し、前記絶縁性折返しには前記正極層が、前記導電性折返しには前記負極層がそれぞれ互いに対向するように配置され、前記第1延出部は前記電極層収容部の外側面に、前記絶縁性多孔質膜側の表面が外側となるように巻回されている、二次電池。
【0010】
(1)の二次電池によれば、電極層収容部の外側面に第1延出部が巻回されているので、充放電による負極層の厚みの変化が大きくても、正極層と負極層の位置ずれが起こりにくい。また、長尺状セパレータの導電層が負極層側に配置されているので、デンドライトによる短絡や充電状態の負極層の負極活物質層の密度の低下が抑制される。さらに、長尺状セパレータの絶縁性多孔質膜は正極層側に配置され、第1延出部は電極層収容部の絶縁性多孔質膜側の表面を外側として巻回されているので、長尺状セパレータの導電層と正極層が接触しにくい。よって、正極層と負極層との短絡が起こりにくくなる。
【0011】
(2)前記電極層収容部の長さ方向の他方の端部から延出された第2延出部を有し、
前記第2延出部は、前記導電性折返しの先端に前記絶縁性多孔質膜の表面が接するように延出されている、(1)に記載の二次電池。
【0012】
(2)の二次電池によれば、第2延出部が導電性折返しの先端、すなわち絶縁性折返しの開口に絶縁性多孔質膜の表面が接するので、長尺状セパレータの導電層と正極層がより接触しにくくなり、正極層と負極層との短絡がより起こりにくくなる。
【0013】
(3)前記導電性折返しは、折り返しの先端が延長された延長部を有し、前記延長部が、正極層側に折り曲げられている、(1)又は(2)に記載の二次電池。
【0014】
(3)の二次電池によれば、導電性折返しの延長部が正極層側に折り曲げられることにより、絶縁性折返しの開口側に配置された正極層の端部が絶縁性多孔質膜で囲まれるので、長尺状セパレータの導電層と正極層がさらに接触しにくくなり、正極層と負極層との短絡がさらに起こりにくくなる。
【0015】
(4)前記正極層に電気的に接続し、少なくとも一部が外部に露出した正極端子と、前記負極層に電気的に接続し、少なくとも一部が外部に露出した負極端子と、を有し、前記正極端子及び前記負極端子は、前記長尺状セパレータの長さ方向に直交する方向に沿って配置されている、(1)~(3)のいずれか1つに記載の二次電池。
【0016】
(4)の二次電池によれば、正極端子と長尺状セパレータの導電層とが接触しにくいので、正極層と負極層との短絡が起こりにくくなる。
【0017】
(5)負極活物質が金属リチウムである、(1)~(4)のいずれか1つに記載の二次電池。
【0018】
(5)の二次電池によれば、負極活物質が金属リチウムであるので、高容量化が可能となる。
【0019】
(6)絶縁性多孔質膜と、前記絶縁性多孔質膜の一方の表面に設けられた導電層とを含む長尺状積層シートの一部をつづら折りして、前記絶縁性多孔質膜側の表面が内側となるように長さ方向に沿って折られた絶縁性折返しと、前記導電層側の表面が内側となるように長さ方向に沿って折られた導電性折返しとが交互に重なるように形成された電極層収容部と、前記電極層収容部の長さ方向の一方の端部から延出された第1延出部とを有する長尺状セパレータを作製する工程と、前記絶縁性折返しに正極層を、前記導電性折返しに負極層をそれぞれ互いに対向するように配置する工程と、前記電極層収容部の外側面に、前記第1延出部を前記絶縁性多孔質膜側の表面が外側となるように巻き付ける工程と、を含む二次電池の製造方法。
【0020】
(6)の二次電池の製造方法によれば、長尺状セパレータの第1延出部を電極層収容部の外側面を巻き付ける工程を含むので、充放電による負極層の厚みの変化が大きくても、正極層と負極層の位置ずれが起こりにくい二次電池を工業的に有利に製造することができる。また、得られた二次電池は、長尺状セパレータの導電層が負極層側に配置されているので、デンドライトによる短絡や充電状態の負極層の負極活物質層の密度の低下が抑制される。さらに、得られた二次電池は、長尺状セパレータの絶縁性多孔質膜が正極層側に配置され、第1延出部が電極層収容部の絶縁性多孔質膜側の表面を外側として巻回されているので、長尺状セパレータの導電層と正極層が接触しにくい。よって、得られた二次電池は、正極層と負極層との短絡が起こりにくくなる。
【0021】
(7)電極積層体と、電解液と、前記電極積層体及び前記電解液を収容する外装体と、を備え、前記電極積層体は、正極層と、負極層と、長尺状セパレータと、を有し、前記長尺状セパレータは、長さ方向に沿ってつづら折り状に折られた折返しを2つ以上有する電極層収容部と、前記電極層収容部の長さ方向の端部に接続する延出部とを有し、前記折返しのそれぞれに前記正極層と前記負極層とが互いに対向するように配置され、前記延出部は前記電極層収容部の外側面に巻回されている、二次電池。
【0022】
(7)の二次電池によれば、電極層収容部の外側面に第1延出部が巻回されているので、充放電による負極層の厚みの変化が大きくても、正極層と負極層の位置ずれが起こりにくい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、充放電による負極層の厚みの変化が大きくても、正極層と負極層の位置ずれが起こりにくい二次電池及びその製造方法を提供することが可能となる。特に、本発明によれば、一方の表面に導電層を有するセパレータを用いても、正極層と負極層の位置ずれが起こりにくく、正極層と負極層とが短絡しにくい二次電池及びその製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1実施形態に係る二次電池の斜視図である。
図2図1のII-II線断面図である。
図3図1のIII-III線断面図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る二次電池で用いられるセパレータの断面図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る二次電池の製造において、長尺状セパレータの電極層収容部に正極層と負極層を配置した状態を示す断面図である。
図6】本発明の第1実施形態に係る二次電池の変形例を示す断面図である。
図7】変形例に係る二次電池の製造において、長尺状セパレータの電極層収容部に正極層と負極層を配置した状態を示す断面図である。
図8】本発明の第2実施形態に係る二次電池の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明を例示するものであって、本発明は以下に限定されるものではない。
【0026】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る二次電池の斜視図である。図2は、図1のII-II線断面図であり、図3は、図1のIII-III線断面図である。図4は、本発明の第1実施形態に係る二次電池で用いられるセパレータの断面図である。
【0027】
本実施形態に係る二次電池100は、正極層20、負極層30及び正極層20と負極層30との間に配置された長尺状セパレータ40を有する電極積層体10と、電解液(不図示)と、電極積層体10及び電解液を収容する外装体50と、を有する。正極層20は、正極集電体21と、正極集電体21の両面に積層された正極活物質層22とを有する。負極層30は、負極集電体31と、負極集電体31の両面に積層されたリチウム箔32とを有する。二次電池100はリチウム金属二次電池とされている。リチウム金属二次電池は、負極活物質として金属リチウムを用いた二次電池であり、充電時において、正極活物質層22からリチウムが放出され、そのリチウムがリチウム箔32の表面に析出して金属リチウム層が生成する。このため、充電時は、負極層30の厚みが増加する。一方、放電時は、金属リチウム層からリチウムが放出され、正極活物質層22に吸蔵される。このため、放電時は負極層30の厚みが減少する。よって、負極層30は、充放電よる厚みの変化が大きい。図1図3に示す二次電池100は放電状態である。
【0028】
二次電池100は、さらに外装体50に備えられた正極端子24及び負極端子34と、正極層20(正極集電体21)と正極端子24とを電気的に接続する正極リード線23と、負極層30(負極集電体31)と負極端子34とを電気的に接続する負極リード線33と、を有する。正極端子24及び負極端子34の一部は、外部に露出している。正極端子24は、長尺状セパレータ40の幅方向(長尺状セパレータ40の長さ方向に直交する方向)に沿って配置され、負極端子34は、電極積層体10を挟んで対向する位置に配置されている。
【0029】
長尺状セパレータ40は、絶縁性折返し43と導電性折返し44とが交互に折り重なって形成された電極層収容部45を有する。絶縁性折返し43は、絶縁性多孔質膜41側の表面が内側となるように長さ方向に沿って折られた部分である。絶縁性折返し43は、折り返しの先端43aと、先端43aとは反対側に位置する開口43bとを有する。導電性折返し44は、導電層42側の表面が内側となるように長さ方向に沿って折られた部分である。
【0030】
長尺状セパレータ40は、電極層収容部45の長さ方向の上方の端部から延出された第1延出部46と、電極層収容部45の長さ方向の下方の端部から延出された第2延出部47とを有する。第1延出部46は、電極層収容部45の外側面に、絶縁性多孔質膜41側の表面を外側として巻回されている。第1延出部46の巻回の回数は、例えば1~3回の範囲内である。第2延出部47は、導電性折返し44の折り返しの先端44a、すなわち絶縁性折返し43の開口43bに絶縁性多孔質膜41の表面が接するように延出されている。
【0031】
絶縁性折返し43には正極層20が、導電性折返し44には負極層30がそれぞれ互いに対向するように配置されている。負極層30は、長尺状セパレータ40の導電層42と接触し、正極層20は、長尺状セパレータ40の絶縁性多孔質膜41と接触する。
【0032】
正極集電体21の材料は特に制限はなく、例えばアルミニウムを用いることができる。正極リード線23の材料は、正極集電体21の材料と同じであってもよいし、正極集電体21の材料と異なっていてもよい。正極リード線23は、正極集電体21と一体的に接続されていてもよい。本実施形態では、正極リード線23は、正極集電体21を延出させて形成されていて、正極集電体21と一体的に接続されている。正極端子24の材料は、正極リード線23の材料と同じであってもよいし、正極リード線23の材料と異なっていてもよい。正極端子24は、正極リード線23と一体的に接続されていてもよい。本実施形態では、正極端子24と正極リード線23とは別の部材であって、電気的に接続されている。
【0033】
正極活物質層22は、正極活物質を含む。正極活物質の例としては、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、LiNiMnCo(p+q+r=1)、LiNiAlCo(p+q+r=1)、マンガン酸リチウム(LiMn)、Li1+xMn2-x-y(x+y=2、M=Al、Mg、Co、Fe、Ni及びZnから選ばれる少なくとも1種)で表される異種元素置換Li-Mnスピネル、チタン酸リチウム(Li及びTiを含む酸化物)、リン酸金属リチウム(LiMPO、M=Fe、Mn、Co、及びNiから選ばれる少なくとも1種)等が挙げられる。正極活物質層22は、バインダー及び導電助剤など正極活物質層の材料として用いられている各種の添加剤を含んでいてもよい。
【0034】
負極集電体31の材料は特に制限はなく、例えば銅を用いることができる。負極リード線33の材料は、負極集電体31の材料と同じであってもよいし、負極集電体31の材料と異なっていてもよい。負極リード線33は、負極集電体31と一体的に接続されていてもよい。本実施形態では、負極リード線33は、負極集電体31を延出させて形成されていて、負極集電体31と一体的に接続されている。負極端子34の材料は、負極リード線33の材料と同じであってもよいし、負極リード線33の材料と異なっていてもよい。負極端子34は、負極リード線33と一体的に接続されていてもよい。本実施形態では、負極端子34と負極リード線33とは別の部材であって、電気的に接続されている。
【0035】
長尺状セパレータ40は、絶縁性多孔質膜41と、絶縁性多孔質膜41の負極層30側の表面に積層された導電層42とを有する。導電層42は、絶縁性多孔質膜41の全体に積層されていなくてもよい。導電層42は、図4に示すように、絶縁性多孔質膜41の孔部41aの一部を被覆するように積層されていてもよい。
【0036】
絶縁性多孔質膜41としては、例えば多孔体シート、不織布シートなどの二次電池のセパレータとして用いられている公知のものを用いることができる。多孔体シートの材料の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、アラミド、ポリイミド、フッ素樹脂等が挙げられる。不織布シートの材料の例としては、グラスファイバー、セルロースファイバー等が挙げられる。絶縁性多孔質膜41の膜厚は、特に制限されるものでないが、リチウム金属のデンドライトの遮断の観点から10μm以上であることが好ましく、電池内の抵抗低減の観点から15μm以下であることが好ましい。絶縁性多孔質膜41の膜厚は、より好ましくは10~12μmの範囲内にある。また、絶縁性多孔質膜41の透気度は、特に制限されるものでないが、電池内の抵抗低減の観点から200sec/100mL以下であることが好ましく、より好ましくは150sec/100mL以下である。絶縁性多孔質膜41の空隙率は、特に制限されるものでないが、長尺状セパレータ40内のリチウムの均一な拡散と長尺状セパレータ40の強度の観点から、40~60%の範囲内にあることが好ましい。
【0037】
導電層42の電気伝導率は、特に制限されるものでないが1.0×10~1.0×10S/cmの範囲内にある。導電層42の電気伝導率が1.0×10S/cm以上であることによって、導電層42の表面にリチウムを析出されることができ、リチウムのデンドライトが正極層20側に成長して短絡が生じることを抑制することができる。また、電気伝導率が1.0×10S/cm以下であることによって、導電層42の表面に均一にリチウムを析出させることができる。
【0038】
導電層42は、放電状態及び充電状態のいずれも場合も負極層30もしくは負極層30に析出した金属リチウムのいずれかと電気的に接触している。これにより、導電層42の電位と負極集電体31の電位が同じとなるので、長尺状セパレータ40の導電層42とリチウム箔32との間にリチウムをより均一に析出させることができる。
【0039】
導電層42の電気伝導率は負極集電体31の電気伝導率よりも低い、すなわち負極集電体31の電気伝導率は導電層42の電気伝導率よりも高くてもよい。負極集電体31の電気伝導率が導電層42の電気伝導率よりも高くすることによって、導電層42の絶縁性多孔質膜41側のリチウムの集中析出を防止し、リチウムの集中析出による導電層42の形状変化の破損を抑制することができる。導電層42の電気伝導率は、例えば負極集電体31の電気伝導率の1/10~1/100000の範囲内にあってもよい。
【0040】
絶縁性多孔質膜41に対する導電層42の剥離強度は、特に制限されるものでないが、10N/m以上であることが好ましく、より好ましくは30N/m以上である。導電層42の剥離強度が上記の値と高い場合は、長期間にわたって導電層42が安定して作用するので、充放電サイクルの寿命が長くなる。
【0041】
導電層42の表面抵抗率は200Ω/cm以下であってもよい。
【0042】
導電層42の厚さは0.01~5μmの範囲内にあってもよい。導電層42の厚さは0.01μm以上であると、上記の導電層42の効果を得ることができる。導電層42の厚さが5μm以下であると、導電層42によるエネルギー密度の低下を少なくできる。
【0043】
導電層42の材料としては、例えば金属、カーボンナノチューブ(CNT)などの導電性材料を用いることができる。金属の例としては、Cu、Zn、Ti、Snを挙げることができる。これらの導電性材料は一種を単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0044】
絶縁性多孔質膜41に導電層42を形成するコーティング方法としては、特に制限はなく、例えばスパッタリング法及び塗布法を用いることができる。スパッタリング法としては、DCスパッタリング法、RFスパッタリング法を用いることができる。塗布法は、導電層42の材料が分散された塗布液を、絶縁性多孔質膜41の表面に塗布し、乾燥する方法である。
【0045】
電解液は、有機溶媒と電解質とを含む。有機溶媒としては、例えば環状カーボネート、鎖状カーボネート、環状エーテル、鎖状エーテル、ハイドロフルオロエーテル、芳香族エーテル、スルホン、環状エステル、鎖状カルボン酸エステル、ニトリルを用いることができる。環状カーボネートの例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート等が挙げられる。鎖状カーボネートの例としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、及びエチルメチルカーボネート等が挙げられる。環状エーテルの例としては、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3-ジオキソラン、4-メチル1,3-ジオキソラン等が挙げられる。鎖状エーテルの例としては、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、エトキシメトキシエタン、ジエチルエーテル等が挙げられる。ハイドロフルオロエーテルの例としては、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)エーテル、1,2-ビス(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)エタン等が挙げられる。芳香族エーテルの例としては、アニソールが挙げられる。スルホンの例としては、スルホラン、メチルスルホラン等が挙げられる。環状エステルの例としては、γ-ブチロラクトン等が挙げられる。鎖状カルボン酸エステルの例としては、酢酸エステル、酪酸エステル、プロピオン酸エステル等が挙げられる。ニトリルの例としては、アセトニトリル、プロピオニトリル等が挙げられる。有機溶媒は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0046】
電解質は、電荷移動媒体であるリチウムイオンの供給源であり、リチウム塩を含む。リチウム塩の例としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiCFSO、LiC(CFSO、LiN(CFSO(LiTFSI)、LiN(FSO(LiFSI)、及びLiBC等が挙げられる。リチウム塩は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。電解質の濃度は、例えば1.5~4.0mol/Lの範囲内である。
【0047】
外装体50は、充放電による電極積層体10の厚みの変化(特に、負極層30の厚みの変化)にともなって伸縮可能とされている。外装体50の材料としては、ラミネートフィルムを用いることができる。ラミネートフィルムとしては、内側から内側樹脂層、金属層、外側樹脂層がこの順で積層された3層構造の積層フィルムを用いることができる。内側樹脂層及び外側樹脂層の材料としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(ナイロン)、ポリプロピレン(PP)などの熱可塑性樹脂を用いることができる。金属層の材料としては、例えばアルミニウムを用いることができる。
【0048】
次に、本実施形態の二次電池100の製造方法について説明する。
電極積層体10は、例えば長尺状セパレータ作製工程と、電極層配置工程と、長尺状セパレータ巻回工程とを含む方法によって製造することができる。
【0049】
長尺状セパレータ作製工程は、電極層収容部45と、第1延出部46と、第2延出部47とを有する長尺状セパレータ40を作製する工程である。長尺状セパレータ40は、絶縁性多孔質膜41と、絶縁性多孔質膜41の一方の表面に設けられた導電層42とを含む長尺状積層シートの中央の一部をつづら折りして、絶縁性多孔質膜41側の表面が内側となるように長さ方向に沿って折られた絶縁性折返し43と、導電層42側の表面が内側となるように長さ方向に沿って折られた導電性折返し44とを交互に折り重なるように形成することによって作製することができる。
【0050】
電極層配置工程は、絶縁性折返し43に正極層20を、導電性折返し44に負極層30を、それぞれ互いに対向するように配置する工程である。正極層20は、絶縁性折返し43の開口43bから正極層20を挿入することによって配置することができる。負極層30は、導電性折返し44の開口44bから負極層30を挿入することによって配置することができる。長尺状セパレータ作製工程と電極層配置工程とを並行して進めてもよい。例えば、長尺状積層シートの絶縁性多孔質膜41側の表面に正極層20を配置した後、絶縁性多孔質膜41側の表面が内側となるように長さ方向に沿って長尺状積層シートを折り、次いで、導電層42側の表面に負極層30を配置した後、導電層42側の表面が内側となるように長さ方向に沿って長尺状積層シートを折る操作を行ってもよい。
【0051】
図5は、本実施形態の長尺状セパレータの電極層収容部に正極層と負極層を配置した状態を示す断面図である。長尺状セパレータ40の第2延出部47となる部分は、チャック60によって固定されている。つづら折りによって形成された電極層収容部45に正極層20と負極層30とが交互に配置されている。電極層収容部45の絶縁性折返し43に正極層20が配置され、導電性折返し44に負極層30が配置されている。電極層収容部45の先は、第1延出部46となる部分である。
【0052】
長尺状セパレータ巻回工程は、長尺状セパレータ40の電極層収容部45の外側面に、第1延出部46を絶縁性多孔質膜41側の表面が外側となるように巻き付ける工程である。図5に示す長尺状セパレータの場合、第1延出部46を、電極層収容部45の外側面に対して導電層42が内側となるように(図5において時計周りに)巻き付ける。第1延出部46を巻き付けるとき、チャック60を外して、第1延出部46の導電層42と第2延出部47の導電層42とが接するように、第1延出部46と第2延出部47とを重ねる。こうすることによって、正極層20が配置される絶縁性折返し43の開口43bに第2延出部47の絶縁性多孔質膜41の表面が接する。長尺状セパレータ巻回工程の前に、長尺状セパレータ40の第2延出部を、導電性折返し44の先端に絶縁性多孔質膜41側の表面が接するようにしてもよい。
【0053】
二次電池100は、次のようにして作製することができる。得られた電極積層体10の正極層20の正極集電体21に正極リード線23を介して正極端子24を接続し、負極層30の負極集電体31に負極リード線33を介して負極端子34を接続する。次いで、正極端子24及び負極端子34の一部が突出するように、電極積層体10を外装体50に収容し、電解液を注液した後、外装体50を封止する。
【0054】
以上のような構成とされた本実施形態の二次電池100によれば、長尺状セパレータ40の第1延出部46が電極層収容部45の外側面を巻回されているので、充放電による負極層30の厚みの変化が大きくても、正極層20と負極層30の位置ずれが起こりにくい。また、長尺状セパレータ40の導電層42が負極層30側に配置されているので、デンドライトによる短絡や充電状態の負極層30の負極活物質層の密度の低下を抑制される。長尺状セパレータ40の絶縁性多孔質膜41は正極層20側に配置され、第1延出部46は電極層収容部45の絶縁性多孔質膜41側の表面を外側として巻回されているので、長尺状セパレータ40の導電層42と正極層20が接触しにくい。よって、正極層20と負極層30との短絡が起こりにくくなる。
【0055】
また、本実施形態の二次電池100によれば、第2延出部47が導電性折返し44の先端44a、すなわち絶縁性折返し43の開口43bに絶縁性多孔質膜41の表面が接するので、導電層42と正極層20がより接触しにくくなり、正極層20と負極層30との短絡がより起こりにくくなる。なお、絶縁性折返し43の開口43bが導電層と接しないようにされていれば、第2延出部47を導電性折返し44の先端44aに絶縁性多孔質膜41の表面を接するように延出させなくてもよい。
【0056】
また、本実施形態の二次電池100によれば、正極端子24が長尺状セパレータ40の長さ方向に直交する方向に沿って配置されているので、正極端子24と導電層42とが接触しにくい。このため、正極層20と負極層30との短絡が起こりにくくなる。
本実施形態の二次電池100によれば、負極活物質が金属リチウムであって、充放電による負極層の厚みの変化が大きくても、正極層と負極層の位置ずれが起こりにくく、高容量化が可能となる。
【0057】
また、本実施形態の二次電池100の製造方法によれば、上述の二次電池100を工業的に有利に製造することができる。
【0058】
本実施形態の二次電池100では、長尺状セパレータ40の電極層収容部45の折り目は等間隔であり、絶縁性折返し43の先端43aから開口43bまでの距離と、導電性折返し44の先端44aから開口44bまでの距離とは同じとされている。電極層収容部45の折り目は等間隔に限定されるものではない。例えば、導電性折返し44の折り返しの先端44aから開口44bまでの距離は、絶縁性折返し43の折り返しの先端43aから開口43bまでの距離よりも長くなるように延長されていてもよい。導電性折返し44の折り返しの先端44aが延長された二次電池の例を説明する。
【0059】
図6は、本発明の第1実施形態に係る二次電池の変形例を示す断面図であり、図3に示す断面図に対応する断面図である。
図6に示す二次電池101は、導電性折返し44の折り返しの先端44aが延長された延長部44cを有すること以外は、上述の二次電池100と同じである。このため、二次電池100と同じ構成については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0060】
導電性折返し44の延長部44cは、第1延出部の長手方向の先端側に沿って、絶縁性折返し43の開口43b側(正極層20側)に折り曲げられている。導電性折返し44の延長部44cは、外側が絶縁性多孔質膜41である。このため、導電性折返し44の延長部44cが正極層20側に折り曲げられることにより、絶縁性折返し43に配置された正極層20の端部が絶縁性多孔質膜41で囲まれるので、長尺状セパレータ40の導電層42と正極層20がさらに接触しにくくなる。よって、正極層20と負極層30との短絡が起こりにくくなる。
【0061】
二次電池101は、長尺状セパレータ作製工程において、導電性折返し44が絶縁性折返し43よりも長くなるようにつづら折りすることによって製造することができる。図7は、変形例の長尺状セパレータの電極層収容部に正極層と負極層を配置した状態を示す断面図である。長尺状セパレータ40の第2延出部47となる部分は、チャック60によって固定されている。つづら折りによって形成された電極層収容部45の絶縁性折返し43に正極層20が配置され、導電性折返し44に負極層30が配置されている。導電性折返し44の先端44aは、延長部44cとされている。延長部44cには、負極層30は配置されずに、折り曲げ可能とされている。電極層収容部45の先は、第1延出部46となる部分である。長尺状セパレータ巻回工程では、第1延出部46を、電極層収容部45の外側面に対して導電層42が内側となるように(図7において時計周りに)巻き付ける。第1延出部46を巻き付けるとき、導電性折返し44の延長部44cが絶縁性折返し43の開口43b側に折り曲げられる。
【0062】
変形例の二次電池101は、導電性折返し44の延長部44cによって正極層20の端部が絶縁性多孔質膜41で囲まれるので、第2延出部47によって正極層20の端部を絶縁性多孔質膜41で囲む上述の実施形態の二次電池100と比較して、第2延出部47を短くしてもよいし、第2延出部47を省略してもよい。
【0063】
[第2実施形態]
図8は、本発明の第2実施形態に係る二次電池の断面図であり、第1実施形態に係る二次電池の図3に示す断面図に対応する断面図である。
本実施形態の二次電池200は、長尺状セパレータ40が導電層を有しないこと以外は、第1実施形態に係る二次電池100と同じである。このため、二次電池100と同じ構成については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0064】
本実施形態の二次電池200において、長尺状セパレータ40の電極層収容部45は、長さ方向に沿ってつづら折り状に折られた折返しを有しており、折返しのそれぞれに正極層20と負極層30とが互いに対向するように配置されている。第1延出部46は電極層収容部45の外側面に巻回されている。第2延出部47は、正極層20が配置された折返しの開口に接するように延出されている。
【0065】
本実施形態の二次電池200は、長尺状セパレータ40の第1延出部46が電極層収容部45の外側面に巻回されているので、第1実施形態の二次電池100と同じと同様に、充放電による負極層30の厚みの変化が大きくても、正極層20と負極層30の位置ずれが起こりにくい。
【0066】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
例えば、本実施形態の二次電池では、負極層30は負極活物質層として充電時に析出した金属リチウム層を用いているが、負極活物質層はこれに限定されるものではない。負極活物質層としては、充電時にリチウムを吸蔵し、放電時にリチウムを放出する負極活物質を含む層を用いてもよい。負極活物質としては、チタン酸リチウム等のリチウム遷移金属酸化物、TiO、Nb及びWO等の遷移金属酸化物、SiO、金属硫化物、金属窒化物、並びに人造黒鉛、天然黒鉛、グラファイト、ソフトカーボン及びハードカーボン等の炭素材料を用いることができる。また、負極活物質として、リチウムと合金を形成する金属を用いることができる。リチウムと合金を生成する金属を用いることができる。リチウムと合金を形成する金属の例としては、Mg、Si、Au、Ag、In、Ge、Sn、Pb、Al及びZn等が挙げられる。
【0067】
[実験例]
多孔質膜の表面に導電層を積層した積層体をセパレータとして用い、その導電層が負極層側となるように配置した二次電池の効果を、実験例により説明する。
【0068】
[実験例1]
(セパレータの作製)
多孔質膜(膜厚:20μm、空隙率:58%、透気度:92sec/100mL)を用意した。多孔質膜の一方の表面に、RFスパッタリング法により、厚みが0.08μmの銅製導電層を形成した。銅製導電層を形成した多孔質膜を、40mm×50mmの大きさに打ち抜いて、セパレータとした。
【0069】
(正極層の作製)
電子伝導性材料としてアセチレンブラック(AB)と、結着剤(バインダー)としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)と、分散剤としてポリビニルピロリドン(PVP)を、分散溶媒としてのN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に予備混合し、自転公転ミキサーで湿式混合し、予備混合スラリーを得た。続いて、正極活物質としてLiNi0.8Co0.1Mn0.1(NCM811)およびプレドープ材と、得られた予備混合スラリーとを混合し、プラネタリーミキサーを用いて分散処理を行い、正極活物質ペーストを得た。NCM811は、メディアン径12μmである。次に、プライマー層を有さないアルミニウム製正極集電体に得られた正極活物質ペーストを塗布、乾燥し、ロールプレスで加圧した後、120℃の真空中で乾燥させて、正極活物質層を備える正極板を形成した。得られた正極板を30mm×40mmの大きさに打ち抜いて、正極層とした。
【0070】
(負極層の作製)
厚み10μmの銅箔(電気伝導率:6.5×10S/cm)と厚み20μmのリチウム箔とを接合したクラッド材を用意した。このクラッド材を、34mm×44mmの大きさに打ち抜いて負極集電体とした。
【0071】
(電解液)
1,2-ジメトキシエタン(DME)に、LiFSIを4mol/Lの濃度で溶解させた電解液を用意した。
【0072】
(リチウム金属二次電池の作製)
負極集電体のリチウム箔側の面に、セパレータの銅製導電層を重ね、セパレータの銅製導電層側とは反対側の表面に、正極層の正極活物質層を重ねて、負極層、セパレータ、正極層がこの順で積層された電極積層体を作製した。次いで、得られた電極積層体の正極集電体に正極リード線を介して正極端子を、負極集電体の銅箔に負極リード線を介して負極端子を取り付けた。正極端子と負極端子を取り付けた積層体をラミネートフィルム製袋に入れ、次いで電解液を入れた後、ラミネートフィルム製袋を封止して、リチウム金属二次電池を作製した。
【0073】
[実験例2]
セパレータの作製において、銅製導電層の代わりに、RFスパッタリング法により、厚みが0.06μmの亜鉛製導電層を形成したこと以外は、実験例1と同様にして、リチウム金属二次電池を作製した。
【0074】
[実験例3]
セパレータの作製において、銅製導電層の代わりに、塗布法により、厚み2.1μmのカーボンナノチューブ(CNT)製導電層を形成したこと以外は、実験例1と同様にして、リチウム金属二次電池を作製した。カーボンナノチューブ製導電層の形成は、次のようにして行った。まず、N-メチル-N-ピロリジノン(NMP)を溶媒として、カーボンナノチューブを固形分濃度が4質量%となる量投入し、バインダーとしてPVDF(#9300、株式会社クレハ製)を、カーボンナノチューブ95質量部に対して5質量部となる量投入した。次いで、自転公転ミキサーを用いて1000rpmの条件で10分間分散処理を行って塗布液を調製した。得られた塗布液を、ドクターブレードを用いて多孔質膜の表面に塗布して、乾燥した。
【0075】
[実験例4]
セパレータの作製において、銅製導電層の代わりに、RFスパッタリング法により、厚みが0.06μmのスズ製導電層を形成したこと以外は、実験例1と同様にして、リチウム金属二次電池を作製した。
【0076】
[比較実験例1]
セパレータの作製において、銅製導電層を形成しなかったこと以外は、実験例1と同様にして、リチウム金属二次電池を作製した。
【0077】
[評価]
各実験例で作製したセパレータの導電層の電気伝導率と表面抵抗率、剥離強度を下記の方法により測定した。その結果をセパレータの導電層の材料、コーティング方法及び厚みとともに表1に示す。
また、各実験例及び比較実験例で作製したリチウム金属二次電池の短絡の有無とリチウム厚み増加速度を、下記の方法により測定した。その結果を表1に示す。
【0078】
(導電層の電気伝導率と表面抵抗率)
電気伝導率と表面抵抗率は、高精度高機能抵抗率計(日東精工アナリテック株式会社、ロレスタGP TCP-600)を用いて測定した。
【0079】
(剥離強度)
固定した板に圧着させた幅2.5cmの粘着テープに、長さ5.0cm、幅2.5cmの導電層を圧着した。次いで、導電層の一端を180度に折り返し、電動計測スタンド(株式会社イマダ製)を用いて300mm/minの速度で引き上げて、多孔質膜から導電層を剥離させた。導電層の剥離開始から剥離終了までに要した荷重を、デジタルフォースゲージ(株式会社イマダ製)を用いて測定した。得られた荷重の平均値を粘着テープの幅で除した値を剥離強度とした。
【0080】
(リチウム金属二次電池の短絡の有無)
作製直後のリチウム金属二次電池を、測定温度25℃で24時間静置した。
静置後のリチウム金属二次電池に対して、下記の第1充放電サイクルを3サイクル行った後、下記の第2充放電サイクルを50サイクル行って、リチウム金属二次電池の短絡の有無を確認した。リチウム金属二次電池の充電容量が充電前の放電容量に対して105%以上となった場合、短絡が発生したとして、短絡有とした。
【0081】
(第1充放電サイクル)
充電は2.2mAの電流値で4.300Vまで定電流充電を実施し、続けて4.300Vの電圧値で定電圧充電を60分間実施する条件で行った。放電は、4mAの電流値で2.65Vまで定電流放電を実施する条件で行った。放電と充電の間は、30分間静置した。
【0082】
(第2充放電サイクル)
充電は、74mAの電流値で3.823Vまで、52mAの電流値で4.051Vまで、46mAの電流値で4.173Vまで、22mAの電流値で4.300Vまで定電流充電を実施し、その後4.300Vの電圧値で定電圧充電を90分間実施する条件で行った。放電は、18mAの電流値で2.65Vまで定電流放電を実施する条件で行った。放電と充電の間は、30分間静置した。
【0083】
(リチウム金属二次電池のリチウム厚み増加速度)
初期の充電時の負極層の厚みT1(μm)と50サイクル後の充電時の負極層(負極集電体と金属リチウム層の合計厚み)の厚みT2(μm)とを測定し、リチウム厚み増加速度T(μm/cycle)を下記の式より算出した。
T(μm/cycle)=(T2-T1)/50
【0084】
初期の充電時の負極層の厚みT1(μm)は、次のようにして測定した。
作製直後のリチウム金属二次電池を、測定温度25℃で24時間静置した。
静置後のリチウム金属二次電池に対して、上記の第1充放電サイクルを3サイクル行った。次いで、14.7mAの電流値で4.300Vまで定電流充電を実施し、続けて4.300Vの電圧値で定電圧充電を60分間実施して、リチウム金属二次電池を充電した。充電後のリチウム金属二次電池を30分間静置した後、解体して、負極層を取り出し、その厚みを負極層の厚みT1として測定した。
【0085】
50サイクル後の充電時の負極層の厚みT2は、次のようにして測定した。
作製直後のリチウム金属二次電池を、測定温度25℃で24時間静置した。
静置後のリチウム金属二次電池に対して、上記の第1充放電サイクルを3サイクル行った後、上記の第2充放電サイクルを50サイクル行った。次いで、14.7mAの電流値で4.300Vまで定電流充電を実施し、続けて4.300Vの電圧値で定電圧充電を60分間実施して、リチウム金属二次電池を充電した。充電後のリチウム金属二次電池を30分間静置した後、解体して、負極層を取り出し、その厚みを負極層の厚みT2として測定した。
【0086】
【表1】
【0087】
表1に示すように、導電層を有するセパレータを備える実験例1~4のリチウム金属二次電池は、充放電を繰り返しても短絡が発生しにくく、リチウム厚み増加速度が低く、充電によって生成する金属リチウム層(負極活物質層)は緻密で密度が高いことがわかる。これに対して、導電層を有しないセパレータを備える比較実験例1のリチウム金属二次電池は、充放電を繰り返すと短絡が発生しやすく、リチウム厚み増加速度が高いことから、充電によって粗で密度が低い負極活物質層が生成することがわかる。
【符号の説明】
【0088】
10 電極積層体
20 正極層
21 正極集電体
22 正極活物質層
23 正極リード線
24 正極端子
30 負極層
31 負極集電体
32 リチウム箔
33 負極リード線
34 負極端子
40 長尺状セパレータ
41 絶縁性多孔質膜
41a 孔部
42 導電層
43 絶縁性折返し
43a 先端
43b 開口
44 導電性折返し
44a 先端
44b 開口
44c 延長部
45 電極層収容部
46 第1延出部
47 第2延出部
50 外装体
60 チャック
100、101、200 二次電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8