(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014425
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】皮膚外用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/31 20060101AFI20240125BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20240125BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20240125BHJP
A61K 8/35 20060101ALI20240125BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20240125BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
A61K8/31
A61K8/73
A61K8/34
A61K8/35
A61K8/9789
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117240
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】000149181
【氏名又は名称】株式会社大阪製薬
(74)【代理人】
【識別番号】100119725
【弁理士】
【氏名又は名称】辻本 希世士
(74)【代理人】
【識別番号】100168790
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英之
(72)【発明者】
【氏名】柴田 知佳
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA121
4C083AA122
4C083AC011
4C083AC012
4C083AC022
4C083AC211
4C083AD241
4C083AD242
4C083AD531
4C083AD532
4C083CC02
4C083EE01
4C083EE06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】所定の融点を有するワセリンなどの炭化水素及びコーンスターチを含有しながらも、身体に塗布したときにべたつかず同様にサラサラした触感を付与することができるとともに、親油性の薬効成分を配合しても分離などしない安定した性状を保持することができる皮膚外用組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】融点が30~60℃である第一炭化水素が20~75重量%と、前記第一炭化水素に分散されたコーンスターチが10~55重量%と、親油性薬効成分が10~50重量%を含有し、前記コーンスターチと前記第一炭化水素の配合割合が、前記コーンスターチ:前記第一炭化水素=1:0.5~1:7.5である皮膚外用組成物などにより解決することができた。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点が30~60℃である第一炭化水素が20~75重量%と、
前記第一炭化水素に分散されたコーンスターチが10~55重量%と、
親油性薬効成分が10~50重量%を含有し、
前記コーンスターチと前記第一炭化水素の配合割合が、前記コーンスターチ:前記第一炭化水素=1:0.5~1:7.5であることを特徴とする皮膚外用組成物。
【請求項2】
前記油水性薬効成分が、カンフル、メントール、ユーカリ油から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の皮膚外用組成物。
【請求項3】
37.8℃における動粘度が10~80mm2/secである第二炭化水素を含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の皮膚外用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手指や体幹に塗布して水分の蒸発を抑制して保湿する皮膚外用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、皮膚の乾燥を防止するために、指、手、腕、足、脚、体幹などの身体に塗布して保湿する皮膚外用組成物が種々知られている。ところが、一般的に、塗布後にべたつかずにサラサラした触感を付与するものとして、組成物中に環状シリコーンを含有するものがあるが、油と水の両方になじみにくいために洗い流しにくく、また昨今シリコーン系化合物を含有しないノンシリコーンの商品が消費者に選考されやすいためシリコーン系化合物を配合しにくかった。
【0003】
このようなべたつきの問題を解決するために、例えば、特許文献1において、シリコーン系化合物を含有せずに、所定の融点を有するワセリンなどの炭化水素、粒状剤を含有し、指、手、腕、足、脚、体幹などの身体に塗布した後にべとつかずサラサラとした触感を付与することができる皮膚外用組成物が記載されている。そして、当該皮膚外用組成物によると、シリコーン系化合物を含有せずとも、皮膚に塗布したときにべたつかずサラサラとした触感となることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の発明では、トコフェロールなどの親油性の化合物を配合しうることが開示されているものの、実際にそのような親油性の化合物を配合したとしても組成物が均一にならず分離することもあるなどの課題が存在した。
【0006】
そこで、本発明では、所定の融点を有するワセリンなどの炭化水素及びコーンスターチを含有しながらも、身体に塗布したときにべたつかず同様にサラサラした触感を付与することができるとともに、親油性の薬効成分を配合しても分離などしない安定した性状を保持することができる皮膚外用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔1〕すなわち、本発明は、融点が30~60℃である第一炭化水素が20~75重量%と、前記第一炭化水素に分散されたコーンスターチが10~40重量%と、親油性薬効成分が10~50重量%を含有し、前記コーンスターチと前記第一炭化水素の配合割合が、前記コーンスターチ:前記第一炭化水素=1:0.5~1:7.5であることを特徴とする皮膚外用組成物である。
【0008】
〔2〕そして、前記油水性薬効成分が、カンフル、メントール、ユーカリ油から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記〔1〕に記載の皮膚外用組成物である。
【0009】
〔3〕そして、37.8℃における動粘度が10~80mm2/secである第二炭化水素を含有することを特徴とする前記〔1〕又は前記〔2〕に記載の皮膚外用組成物である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、所定の融点を有するワセリンなどの炭化水素及びコーンスターチを含有しながらも、身体に塗布したときにべたつかず同様にサラサラした触感を付与することができるとともに、親油性の薬効成分を配合しても分離などしない安定した性状を保持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の皮膚外用組成物に関する実施形態について詳しく説明する。なお、説明中における範囲を示す表記「~」のある場合は、上限と下限を含有するものである。
【0012】
本発明における第一炭化水素は、融点が30~60℃である化合物であり、常温で固形状又は形状を維持しつつ力を加えると変形する程度の半固形状の化合物である。第一炭化水素により、皮膚の保湿を高め、さらに、粒状剤が短期に沈殿することを防ぎ比較的長期間に亘り粒状剤を均一に分散させておくことができる。
【0013】
第一炭化水素は、具体的には、ワセリン、固形パラフィンなどの直鎖炭化水素、分岐鎖含有炭化水素、脂環式炭化水素からなる炭化水素であることが好ましい。これらの第一炭化水素は、1種のみ又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0014】
第一炭化水素の皮膚外用組成物における含有割合としては、20~75重量%であることが好ましく、25~70重量%であることがさらに好ましい。当該第一炭化水素の含有割合が上記範囲内であると、皮膚外用組成物を皮膚に塗布したときに皮膚からの水分蒸発を抑制し保湿効果を高めることができる。
【0015】
本発明におけるコーンスターチは、トウモロコシを原料として製造されたでんぷんであり、少なくとも第一炭化水素及に分散されている粒状の部材である。コーンスターチにより、皮膚外用組成物を皮膚に塗布したときのべたつきを抑制し、テカリも抑制することができる。
【0016】
コーンスターチとしては、粒子径が1~50μmであることが好ましく、2~35μmであることがさらに好ましい。コーンスターチの粒子径が上記範囲内であると、皮膚外用組成物を皮膚に塗布したときにべたつかずサラサラした触感を付与することができ、第一炭化水素による光の照り返しを抑えテカリを防ぐことができる。なお、粒子径は、光学顕微鏡による検鏡により測定される。
【0017】
コーンスターチの皮膚外用組成物における含有割合としては、10~55重量%であることが好ましく、15~50重量%であることがさらに好ましい。当該コーンスターチの含有割合が上記範囲内であると、皮膚外用組成物を皮膚に塗布したときにべたつかずサラサラした触感を付与することができ、第一炭化水素による光の照り返しを抑えテカリを防ぐことができるとともに、塗布するときに皮膚外用組成物を伸ばしやすくなる。
【0018】
そして、本発明の皮膚外用組成物におけるコーンスターチと第一炭化水素の配合割合が、コーンスターチ:第一炭化水素=1:0.5~1:7.5であることが好ましく、コーンスターチ:第一炭化水素=1:1.7~1:7.3であることがさらに好ましい。コーンスターチと第一炭化水素の配合割合が上記範囲内であると、皮膚外用組成物を作製したときに親油性薬効成分が浮上したり、均一ではない分離した状態となったりすることを防ぐことができる。
【0019】
本発明における親油性薬効成分は、人体に対して薬としての効能を発現し、油成分となじみやすく水への溶解性が乏しい化合物である。親油性薬効成分としては、具体的に、カンフル、メントール、ユーカリ油などが好ましい。これらの親油性薬効成分は、単体で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0020】
親油性薬効成分の皮膚外用組成物における含有割合としては、10~50重量%であることが好ましく、15~45重量%であることがさらに好ましい。当該親油性薬効成分の含有割合が上記範囲内であると、皮膚外用組成物を皮膚に塗布したときに親油性薬効成分による薬効も付与することができる。
【0021】
そして、本発明の皮膚外用組成物におけるコーンスターチと、第一炭化水素及び親油性薬効成分の和の配合割合が、コーンスターチ:(第一炭化水素+親油性薬効成分)=1:0.7~1:14であることが好ましく、コーンスターチ:(第一炭化水素+親油性薬効成分)=1:0.7~1:10であることがさらに好ましい。コーンスターチと、第一炭化水素及び親油性薬効成分の和の配合割合が上記範囲内であると、皮膚外用組成物を作製したときに親油性薬効成分が浮上したり、均一ではない分離した状態となったりすることを防ぐことができる。
【0022】
本発明における第二炭化水素は、37.8℃における動粘度が10~80mm2/secであり、20~25℃の常温で液状の化合物である。必要に応じて第二炭化水素が皮膚外用組成物に均一に分散されることにより、皮膚外用組成物の硬さを柔らかくし、季節に応じて身体に塗布したときにべたつかず同様にサラサラした触感を付与することができる。第二炭化水素において、上記動粘度が上記範囲未満であると、皮膚外用組成物の硬さが柔らかくなりすぎで身体に塗布したあとにべたつき感が生じて、そもそもサラサラした触感を付与することができず、また、上記動粘度が上記範囲を超えると、皮膚外用組成物の硬さが硬くなりすぎ、寒い時季に身体に塗布したときに伸ばしにくくなる。なお、動粘度については、JIS K 2283、日本薬局方などに定められている方法により測定される。
【0023】
第二炭化水素の皮膚外用組成物における含有割合としては、0~40重量%であることが好ましく、3~20重量%であることがさらに好ましく、3~15重量%であることがもっとも好ましい。当該第二炭化水素の含有割合が上記範囲内であると、第二炭化水素における上記動粘度と相俟って、寒い時季や暑い時季においても、指、手、腕、足、脚、体幹などの身体に塗布したときに伸ばしやすく、べたつき感がなくサラサラした触感を付与することができ、寒暖差に大きな影響を受けにくい皮膚外用組成物を作製することができる。
【実施例0024】
〔実施例1〕
第一炭化水素として融点が50~60℃であるワセリン(Sonneborn社製、Snowwhite Special)を72.75重量部、粒子径2~35μmであるコーンスターチ(日本コーンスターチ株式会社、コーンスターチホワイト)を10重量部、親油性薬効成分としてdl-カンフル9.6重量部、l-メントール1.35重量部、ユーカリ油を1.3重量部の3成分、第二炭化水素として流動パラフィン(三光化学工業製、流動パラフィンNo.350-S,37.8℃における動粘度:77mm2/sec)を5重量部として合計100重量部の組成物を調製し、湯浴で加熱し各成分が均一に分散するようによく混合して皮膚外用組成物を作製した。
【0025】
〔実施例2~8〕
実施例1と同様に、表1に記載した各成分及び各配合量にて皮膚外用組成物を作製した。
【0026】
〔比較例1~4〕
実施例1と同様に、表2に記載した各成分及び各配合量にて皮膚外用組成物を作製した。
【0027】
上述したように作製した皮膚外用組成物の外観、物性及び使用感について、作製後の性状の目視確認、安定性の目視確認、25℃保存後における伸ばしやすさの官能評価を行った。
【0028】
〔性状〕
作製した直後の皮膚外用組成物を50mlのスクリュー管に入れ、そのときの状態を目視にて確認した。固形分が分散しておらずざらついた性状、油分と水分が分離している性状が全くみられず均一で滑らかな性状を○、固形分が分散しておらずざらついた性状、油分と水分が分離している性状、のいずれか一つでも見られた状態を×と区分し、「〇」評価が好ましく、「×」評価は好ましくないと評価を行った。
【0029】
〔保存安定性〕
作製した皮膚外用組成物を50mlのスクリュー管に入れ、50℃で1日保存したときの状態を目視にて確認した。固形分が分散しておらずざらついた性状、油分と水分が分離している性状が全くみられない状態を○、固形分が分散しておらずざらついた性状、油分と水分が分離している性状のいずれか一つでも見られた状態を×と区分し、「〇」評価が好ましく、「×」評価は好ましくないと評価を行った。
【0030】
〔伸ばしやすさ〕
25℃保存後における伸ばしやすさについて官能評価を行った。具体的には、専門パネラー5名にて、作成した皮膚外用組成物を25℃の恒温室に一日以上保存し、その環境下にて0.2gを取り出して前腕に塗布したときの、伸ばしやすさについて、各1点から5点までの5段階の官能評価を行い、点数化して判断した。作製した皮膚外用組成物の伸ばしやすさを評価するに際して、評価基準として、伸ばしやすさを非常に感じる:5点、感じる:4点、やや感じる:3点、あまり感じない:2点、感じない:1点とし、各パネラーの平均点が3.5以上を〇、平均点が2.0以上3.5未満を△、平均点が2.0未満を×として区分し、「〇」評価が好ましく、「△」評価及び「×」評価は好ましくないと評価を行った。
【0031】
〔べたつき〕
25℃保存後におけるべたつきについて官能評価を行った。具体的には、伸ばしやすさの評価と同様に、専門パネラー5名にて、作成した皮膚外用組成物を25℃の恒温室に一日以上保存し、その環境下にて0.2gを取り出して前腕に塗布したときの、べたつきについて、各1点から5点までの5段階の官能評価を行い、点数化して判断した。作製した皮膚外用組成物のべたつきを評価するに際して、評価基準として、感じない:5点、あまり感じない:4点、やや感じる:3点、感じる:2点、非常に感じる:1点とし、各パネラーの平均点が3.5以上を〇、平均点が2.0以上3.5未満を△、平均点が2.0未満を×として区分し、「〇」評価が好ましく、「△」評価及び「×」評価は好ましくないと評価を行った。
【0032】
実施例1~8、比較例1~4について、性状、保存安定性、伸ばしやすさ、べたつきに関する結果を、それぞれ表1に示す。なお、比較例4については、作製した直後の性状が好ましくなかったので、他の評価については行わなかった。
【0033】
【0034】
表1に示すように、所定のワセリン、コーンスターチ、親油性薬効成分を用いて特定範囲の配合割合にて均一混合した組成物では、作製した直後における均一で滑らかな性状を有し、所定の期間その均一な状態を保ち安定性が優れるとともに、皮膚に塗布すると同様に伸ばしやすく、べたつきもないサラサラした触感を付与するできることが分かった。