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特開2024-144251樹脂組成物、積層体、および樹脂組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144251
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】樹脂組成物、積層体、および樹脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 33/02 20060101AFI20241003BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20241003BHJP
   C08L 27/06 20060101ALI20241003BHJP
   C08L 29/04 20060101ALI20241003BHJP
   C08F 20/06 20060101ALI20241003BHJP
   C08F 2/48 20060101ALI20241003BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20241003BHJP
   C09D 11/00 20140101ALI20241003BHJP
   C09D 133/02 20060101ALI20241003BHJP
   C09D 129/04 20060101ALI20241003BHJP
   C09D 127/06 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C08L33/02
C08L101/00
C08L27/06
C08L29/04 C
C08F20/06
C08F2/48
C09D201/00
C09D11/00
C09D133/02
C09D129/04
C09D127/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024045032
(22)【出願日】2024-03-21
(31)【優先権主張番号】P 2023056495
(32)【優先日】2023-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】福原 克郎
【テーマコード(参考)】
4J002
4J011
4J038
4J039
4J100
【Fターム(参考)】
4J002BD032
4J002BE022
4J002BG011
4J002GH01
4J011PA69
4J011PC02
4J011PC08
4J011QA02
4J011RA01
4J011RA02
4J011SA02
4J011SA14
4J011SA16
4J011SA20
4J011TA07
4J011UA01
4J011VA01
4J011WA02
4J011WA05
4J038CD041
4J038CE021
4J038CG031
4J038CG032
4J038EA011
4J038KA06
4J038KA08
4J038KA10
4J038KA12
4J038KA20
4J038MA08
4J038MA10
4J038NA01
4J038PC08
4J038PC10
4J039AD05
4J039AD06
4J039AD09
4J039BD02
4J039BE01
4J039BE02
4J039BE12
4J039BE13
4J039BE19
4J039BE22
4J039BE28
4J039CA03
4J039CA06
4J039EA18
4J039FA02
4J100AJ02Q
4J100AK13P
4J100CA01
4J100CA04
4J100EA09
4J100FA03
4J100FA19
4J100JA01
4J100JA07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、プラスチックフィルムや紙等の基材に、酸化チタンなどの高価な顔料を使用しない、または使用量を減少して、白色塗膜を簡便に形成することができ、酸化チタンと同程度の高い白色隠ぺい性を発現することが可能な塗料またはインキに用いることができる樹脂組成物、それ用いた積層体、および樹脂組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】上記課題は、不飽和結合を有するカルボン酸金属塩(A)の重合体微粒子、およびバインダー樹脂(B)を含有することを特徴とする樹脂組成物により解決する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和結合を有するカルボン酸金属塩(A)の重合体微粒子、およびバインダー樹脂(B)を含有することを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
不飽和結合を有するカルボン酸金属塩(A)が、(メタ)アクリル酸金属塩であることを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
不飽和結合を有するカルボン酸金属塩(A)が、亜鉛イオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、アルミニウムイオンおよびチタンイオンからなる群より選ばれる1つ以上の金属イオンを含むことを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項4】
不飽和結合を有するカルボン酸金属塩(A)が、亜鉛イオンを含むことを特徴とする請求項3記載の樹脂組成物。
【請求項5】
重合体微粒子の粒径が、50~500nmであることを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項6】
バインダー樹脂(B)が、ビニルアルコールおよび/または塩化ビニルの重合体であることを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項7】
樹脂組成物の固形分100質量%中、前記重合体微粒子の含有率が50~99質量%であることを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項8】
重合体が、側鎖にカルボン酸の金属塩を有することを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
さらに、溶剤(C)を含むことを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
塗料またはインキであることを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項11】
基材上に、請求項1~10いずれか1項に記載の樹脂組成物の塗工または印刷によって形成された樹脂組成物層を有することを特徴とする積層体。
【請求項12】
不飽和結合を有するカルボン酸金属塩(A)の重合体からなる微粒子、およびバインダー樹脂(B)を含有する樹脂組成物の製造方法であって、該重合体が、EB照射、UV照射、および加熱からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合反応によって得られることを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い隠ぺい性を有する樹脂組成物およびそれを用いた積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
塗料やインキなどに使用される白色顔料には白さと光を透過させない隠ぺい力が求められる。酸化チタン(TiO)は、可視光領域に吸収がなく、塗料用の樹脂と比較して屈折率がかなり高いため、隠ぺい力、着色力等に優れた白色顔料として、自動車部品材料、包装容器材料、家電部品材料等のプラスチック樹脂の着色に広く使用されている。しかしながら、酸化チタンは高価であり、発ガン性も危惧されているため、その代替品が求められている。代替顔料候補として酸化亜鉛(ZnO)や酸化マグネシウム(MgO)、炭酸カルシウム(CaCO)などの安価な無機物が挙げられるが屈折率が低く、顔料としての使用は限定的であるため、酸化チタンと種々の無機顔料とを併用した例が報告されている(特許文献1)。しかし、これは表面処理などがなされており、酸化チタンを含んでいるため白色顔料として使用される酸化チタンの完全な代替品とはならない。
したがって、本発明の目的は、酸化チタンなどの高価な顔料を使用しない、または使用量を減少しても、隠ぺい性が良好な塗料、インキに用いることができる樹脂組成物を提供することにある。
また、酸化チタンをはじめとした着色顔料には屈折率以外にも精密な粒形制御が求められている。一般に、粒子径の大きさが可視光波長の2分の1前後で隠ぺい力が高くなるとされており、そのため180~400nm程度の粒子径の顔料を使うのが好ましいと考えられる(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06-093204号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】日本接着学会誌Vol.46No.9 P345-349(2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、プラスチックフィルムや紙等の基材に、酸化チタンなどの高価な顔料を使用しない、または使用量を減少して、白色塗膜を簡便に形成することができ、酸化チタンと同程度の高い白色隠ぺい性を発現することが可能な塗料またはインキに用いることができる樹脂組成物、それを用いた積層体、および樹脂組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、カルボン酸の金属塩を含有する構造を採用することで可視光の2分の1程度に粒子径が制御された高い白色隠ぺい性を持つ樹脂組成物を製造できることを見出し、本発明に至った。
【0007】
すなわち、本発明は、不飽和結合を有するカルボン酸金属塩(A)の重合体微粒子、およびバインダー樹脂(B)を含有することを特徴とする樹脂組成物に関する。
【0008】
または、本発明は、不飽和結合を有するカルボン酸金属塩(A)が、(メタ)アクリル酸金属塩であることを特徴とする前記樹脂組成物に関する。
【0009】
または、本発明は、不飽和結合を有するカルボン酸金属塩(A)が、亜鉛イオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、アルミニウムイオンおよびチタンイオンからなる群より選ばれる1つ以上の金属イオンを含むことを特徴とする前記樹脂組成物に関する。
【0010】
または、本発明は、不飽和結合を有するカルボン酸金属塩(A)が、亜鉛イオンを含むことを特徴とする前記樹脂組成物に関する。
【0011】
または、本発明は、重合体微粒子の粒径が、50~500nmであることを特徴とする前記樹脂組成物に関する。
【0012】
または、本発明は、バインダー樹脂(B)が、ビニルアルコールおよび/または塩化ビニルの重合体であることを特徴とする前記樹脂組成物に関する。
【0013】
または、本発明は、樹脂組成物の固形分100質量%中、前記重合体微粒子の含有率が50~99質量%であることを特徴とする前記樹脂組成物に関する。
【0014】
または、本発明は、前記重合体微粒子の重合体が、側鎖にカルボン酸の金属塩を有することを特徴とする前記樹脂組成物に関する。
【0015】
または、本発明は、さらに、溶剤(C)を含むことを特徴とする前記樹脂組成物に関する。
【0016】
または、本発明は、塗料またはインキであることを特徴とする前記樹脂組成物に関する。
【0017】
または、本発明は、基材上に、前記樹脂組成物の塗工または印刷によって形成された樹脂層を有することを特徴とする積層体に関する。
【0018】
または、本発明は、不飽和結合を有するカルボン酸金属塩(A)の重合体を含む微粒子、およびバインダー樹脂(B)を含有する樹脂組成物の製造方法であって、該重合体が、EB照射、UV照射、および加熱からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合反応によって生成されることを特徴とする樹脂組成物の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、酸化チタンを使用しない、または使用量を減量しても、高い白色隠ぺい性を発現することができる、樹脂組成物、積層体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0021】
本発明の樹脂組成物および積層体は、不飽和結合を有するカルボン酸金属塩の重合体微粒子、およびバインダー樹脂を含有することを特徴とする
【0022】
[不飽和結合を有するカルボン酸金属塩の重合体微粒子]
本発明の不飽和結合を有するカルボン酸の金属塩の重合体微粒子は、不飽和結合を有するカルボン酸の金属塩の重合体からなる微粒子である。
一般に光の散乱は粒子径サイズに影響を受けると考えられ、粒子径が光の波長の2分の1の時に最も効果的に光を散乱することがわかっており、散乱させたい波長に合わせて粒子径を制御することで効率よく散乱が起こり隠ぺい性も高くなる。一方で、粒子径サイズが小さすぎると、散乱されにくく光を透過してしまい、隠ぺい性は低下してしまう。また、粒子サイズが大きすぎると、光の隠ぺい効率は散乱粒子の断面積に比例するため、粒子サイズが大きいほど光の隠ぺい効率は低下する。
このことから本発明における不飽和結合を有するカルボン酸の金属塩の重合体微粒子の粒子径は、50~500nmが好ましく、180~400nmがより好ましい。なお、重合体微粒子の粒子径は、組成や反応条件により制御することができる。
【0023】
<不飽和結合を有するカルボン酸金属塩の重合体>
本発明の不飽和結合を有するカルボン酸の金属塩の重合体は、不飽和結合を有するカルボン酸の金属塩を後述する重合方法で重合することにより合成でき、1種、または2種以上のカルボン酸の金属塩を含有してもよい。また、本発明の効果を損ねない範囲で、共重合可能な単量体を1種または2種以上の任意成分を含有してもよい。ここで言う単量体は特に限定されないが、脂肪族系、脂環族系、芳香族系のいずれであっても良く、アクリル酸、メタクリル酸などのカルボン酸系やメチルアクリレート、エチルアクリレートなどの脂肪族系のアクリル酸エステル、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレートなどの脂環族系のアクリル酸エステル、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレートなどの芳香族系のアクリル酸エステルなどが挙げられる。
【0024】
(不飽和結合を有するカルボン酸金属塩(A))
本発明における不飽和結合を有するカルボン酸金属塩(A)は、不飽和結合を有するカルボン酸と金属イオンとが配位結合またはイオン結合をすることによって形成される金属塩であり、具体的にはマイナスの電荷を帯びたカルボン酸部位とプラスの電荷を帯びた金属イオンとが配位結合またはイオン結合することによって強固に結びついた金属塩を示す。不飽和結合を有するカルボン酸の金属塩は市販の不飽和結合を有するカルボン酸の金属塩を用いても良いし、不飽和結合を有するカルボン酸または不飽和結合を有するカルボン酸塩と金属塩または金属水酸化物との反応からから不飽和結合を有するカルボン酸の金属塩を作製したものを用いても良いし、カルボン酸と金属酸化物との反応から不飽和結合を有するカルボン酸の金属塩を作製したものを用いても良い。特に、(メタ)アクリル酸金属塩が好ましい。不飽和結合を有するカルボン酸の金属塩の例としては、特に限定されないが、アクリル酸亜鉛、メタクリル酸亜鉛、アクリル酸マグネシウム、メタクリル酸マグネシウム、アクリル酸カルシウム、メタクリル酸マグネシウム、アクリル酸アルミニウム、メタクリル酸マグネシウム、アクリル酸チタニウム、メタクリル酸チタニウム、アクリル酸銅などがあげられる。このようなカルボン酸の金属塩の市販品としては、例えば、日本触媒社製のZN-DA、浅田化学工業社製のZDA-100、ZDA-90、M-CP、R-20S、R-MMA2、ZA30、MA35、CA25などが挙げられる。
なお、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸および/またはメタクリル酸を意味する。
【0025】
(不飽和結合を有するカルボン酸)
本発明における不飽和結合を有するカルボン酸は、重合性を持つカルボン酸であり、モノカルボン酸、ジカルボン酸、ポリカルボン酸でもよい。さらに詳しく言えば、前記カルボン酸は、少なくともひとつの活性炭素または二重結合と、少なくとも一つのカルボキシル基とを含有するオレフィン性不飽和カルボン酸、すなわち、C=C-COOHのカルボキシル基に関してアルファ、ベータ位に、またはCH=C<のメチレン末端基の一部として、オレフィン二重結合を含有する酸へと容易に変換される酸である。
また、本発明における不飽和結合をもつカルボン酸は、カルボン酸部位が配位子として機能することが特徴であり、具体的にはマイナスの電荷を帯びたカルボキシレートイオンが金属イオンに配位することによって架橋することが可能になる。
【0026】
この類のカルボン酸としては、特に限定されないがアクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、シアノアクリル酸、クロトン酸、フェニルアクリル酸、アクリルオキシプロピオン酸、けい皮酸、クロロけい皮酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、アコニット酸、トリカルボキシエチレン、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸と、無水イタコン酸、2-(トリフルオロメチル)アクリル酸、こはく酸モノ(2-アクリロイルオキシエチル)、フタル酸モノ-2-(メタクロイルオキシ)エチル、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノアクリレート、6-アクリルアミドヘキサン酸、4-カルボキシスチレン、4-メタクリロイロキシフタノレ酸、4-メタクリロキシエチルトリ
メリット酸無水物、1,3,4-ベンゼントリカルボン酸4-[2-(メタクリロイルオ
キシ)エチル]、などがあげられる。
【0027】
(金属イオン)
本発明における不飽和結合を有するカルボン酸金属塩の金属イオン種は、特に限定されないが、プラスの電荷を帯びた金属イオンを指しており、銅、亜鉛、ニッケル、鉄、コバルト、ガリウム、クロム、バナジウム、マンガン、チタニウム、ベリリウム、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、スカンジウム、カリウム、ナトリウム、リチウムなどが挙げられる
【0028】
本発明のカルボン酸金属塩として用いることができる金属イオンは特に限定されないが、前記のカルボン酸が金属イオンと配位結合することにより架橋が形成されやすくなるため2価以上の金属イオンが好ましい。また、金属イオンの選択により様々な色に発色させることができる。例えば、銅イオンを用いた場合は青、鉄イオンを用いた場合は赤、亜鉛イオンを用いた場合は白に発色させることが可能であり、所望の色に応じて金属イオンを使い分けることにより種々の着色塗工物として使用することができる。特に限定されないが、白色隠ぺい性を発現する場合は、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、チタニウム、アルミニウムなどの可視光領域に吸収を持たない金属イオンまたはカルボン酸の金属塩が好ましく、配位結合のしやすさという点で亜鉛がさらに好ましい。金属イオンまたは金属原子の固形分中の含有率は、環境配慮の点で塗工物の固形分中で50質量%以下が好ましく、25%以下がさらに好ましい。
【0029】
<重合>
本発明における重合または重合反応とは、前記、不飽和結合を有するカルボン酸の金属塩を用いて微粒子を作製するための手法であり、不飽和結合部位の化学反応により進行する。また、本発明における重合体とは、重合によって得られる分子量1000以上の化合物、重合体を意味するが、特に限定されない。重合するための手法として、加熱重合法、UV照射重合法、EB照射重合法が挙げられるが、特に限定されない。
【0030】
(加熱重合)
加熱重合とは熱開始剤(熱ラジカル重合開始剤)の存在下、モノマー及び連鎖移動基を含むラジカル重合性化合物を加熱することにより重合反応を起こす重合のことであり、前記、熱開始剤と不飽和結合を有するカルボン酸の金属塩と溶剤とを混ぜた混合液を加熱することにより重合体となり、50~500nmの微粒子を生成することができる。
【0031】
(UV照射重合)
UV照射重合とは、光開始剤(光ラジカル重合開始剤)の存在下、モノマー及び連鎖移動基を含むラジカル重合性化合物にUV照射することによりラジカル活性種を発生させ、これにより重合反応を起こす重合のことであり、光開始剤、不飽和結合を有するカルボン酸の金属塩、溶剤、バインダー樹脂を混ぜた混合液を基材に塗工した後にUV照射をすることにより50~500nmの微粒子を生成し、着色塗工物とすることができる。
UVの光源としては、低圧や高圧の水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ等の紫外線ランプ(UVランプ)が広く用いられるが、紫外線発光ダイオード(UV-LED)を光源とした照射モジュールを用いても良い。
【0032】
本発明は重合反応に際して、活性エネルギー線(紫外線や可視光線、近赤外線等)によるエネルギーの付与により重合し、目的とする重合物を得ることが可能であるが、エネルギーの付与をする光源として、250nmから450nmの波長領域に発光の主波長を有する光源が好ましい。
250nmから450nmの波長領域に発光の主波長を有する光源の例としては、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、水銀キセノンランプ、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ、キセノンランプ、パルス発光キセノンランプ、カーボンアーク灯、重水素ランプ、蛍光灯、アルゴンイオンレーザ、ヘリウムカドミウムレーザ、ヘリウムネオンレーザ、クリプトンイオンレーザ、各種半導体レーザ、YAGレーザ、発光ダイオード、CRT光源、プラズマ光源、ArFエキシマーレーザ、KrFエキシマーレーザ、F2レーザ、Nd-AG3倍波レーザー、窒素レーザー、Xe-Clエキシマレーザー、Xe-Fエキシマレーザー、LEDランプなどの各種光源が挙げられる。
【0033】
(電子線(EB)照射重合)
電子線照射重合とはUV光源に代えて、電子線(EB:Electron Beam)をモノマー及び連鎖移動基を含むラジカル重合性化合物に照射することで、光ラジカル重合開始剤を含有することなくラジカルを発生させ、分解または重合反応を進行させる方法であり、前記、不飽和結合を有するカルボン酸の金属塩と溶剤、、バインダー樹脂を混ぜた混合液を基材に塗工した後に電子線を照射することにより50~500nmの微粒子を生成し、着色塗工物とすることができる。
電子線照射の方法は特に限定されず、エリアビーム型、カーテンビーム型、スキャニングビーム型、真空管型等の電子線照射装置を用いることができる。照射時は10~000ppmの酸素濃度下で照射することが好ましい。また、電子線を取り出す際の加速電圧は特に限定されないが200kV未満で行われることが好ましい。加速電圧が200kV以上であると電子線のエネルギーが高くなりすぎ、エネルギー効率が悪いばかりか、材を劣化させるおそれが高まるため好ましくない。また、エネルギー効率よく電子線照射部位に所望の作用を生じさせるためには、加速電圧が10~150kVであることが好ましく、30~120kVであることが一層好ましい。
【0034】
<開始剤>
本発明で使用できる開始剤について詳述する。開始剤としては、例えば、従来公知の光開始剤(光ラジカル重合開始剤)、熱開始剤(熱ラジカル重合開始剤)、等を用いることができる。例えば、紫外線またはUVにより不飽和結合を有するカルボン酸の金属塩を重合させる場合には光開始剤を、また、例えば、熱により不飽和結合を有するカルボン酸の金属塩を重合させる場合には熱重合開始剤を用いた重合方法により重合させればよく、適宜、選択することができる。中でも、熱により不飽和結合を有するカルボン酸の金属塩を重合させる方が使用する装置が簡便で、コスト的にも優れており、得られた重合体の微粒子を顔料として回収することで取り扱いが容易になるため熱開始剤を用いて重合させることが好ましい。
【0035】
(光開始剤(F))
本発明で用いる光開始剤(F)は、光ラジカル重合開始剤を含み、光照射により重合反応を開始するラジカル活性種を発生させる化合物全般を示し、光ラジカル重合開始剤に加え、増感剤も含まれる。本発明では、380nm~410nmの光吸収をもつ開始剤を使用することが好ましく、例えば、アシルフォスフィンオキサイド系、αアミノアセトフェノン系、ベンゾフェノン系、及びチオキサントン系の光開始剤が挙げられ、従来公知の光開始剤を用いることが可能である。
具体的には、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルメチルケタール、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン、オリゴ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン}、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン等のアセトフェノン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド等のホスフィン類、その他フェニルグリオキシリックメチルエステル等が挙げられる。
より具体的には、オムニラッド651、オムニラッド184、オムニラッド1173、オムニラッド2529、オムニラッド127、オムニラッド500、オムニラッド1000、オムニラッド2959、オムニラッド907、オムニラッド369、オムニラッド379、オムニラッドTPO、オムニラッド819、オムニラッドMBE、オムニラッド754、オムニラッド250、オムニラッド270、オムニラッド784(IGM Resins社製)、アデカオプトマーN1414、アデカオプトマーN1717、Esacure1001M(Lamberti社製)等が挙げられ、特に限定されないが、本発明で使用するカルボン酸金属塩が水溶性であることから、オムニラッド-1173、オムニラッド2959などの水溶性の光開始剤が好ましい。
これらは単独または複数の組み合わせで使用することが可能であり、重合体に求める特性に応じて、任意に混合使用が可能であり、これらの光開始剤を用いる場合の使用量は、インキ組成物の総量100に対して0.01~100質量%の範囲で含有され、0.1~10の範囲で含有されるのが好ましい。
【0036】
光開始剤の使用量が0.01未満の場合は、活性エネルギー線照射により発生する活性種であるラジカルの量が十分ではなく、所望の重合速度を得る事が出来ない可能性がある。一方、光開始剤の使用量が200を超える場合は、低分子成分が多すぎるため、重合反応後の重合体の特性が不十分になる可能性がある。
【0037】
(熱開始剤(D))
本発明における熱開始剤(D)は、熱重合ラジカル開始剤を含み、熱分解によりラジカル重合性化合物をラジカル重合するためのラジカル活性種を発生するものであり、熱重合ラジカル開始剤としては特に制限はなく、当業者に公知のものを制限なく使用することができる。
熱重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類、オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、アゾ系化合物等が挙げられ、特に限定されないが、本発明で使用するカルボン酸金属塩が水溶性であることから、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなどの水溶性の熱開始剤が好ましい。
これらは単独または複数の組み合わせで使用することが可能であり、重合体に求める特性に応じて、任意に混合使用が可能であり、これらの熱開始剤を用いる場合の使用量は、樹脂組成物の固形分100質量%に対して0.001~99質量%の範囲で含有され、0.01~10質量%の範囲で含有されるのが好ましい。
【0038】
[バインダー樹脂(B)]
本発明の不飽和結合を有するカルボン酸の金属塩または不飽和結合を有するカルボン酸の金属塩の重合体微粒子と混合して使用可能なバインダー樹脂(B)としては、ポリアクリレート類、ポリ-α-アルキルアクリレート類、ポリアミド類、ポリビニルアセタール類、ポリホルムアルデヒド類、ポリウレタン類、ポリカーボネート類、ポリスチレン類、ポリビニルエステル類等の重合体、共重合体があげられ、さらに具体的には、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリアミド、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセテート、フェノキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アイオノマー樹脂、ノボラック樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂などが挙げられるが、微粒子分散性の観点からポリビニルアルコールおよび/または塩化ビニルの重合体であることが好ましい。
【0039】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は不飽和結合を有するカルボン酸金属塩(A)の重合体微粒子、およびバインダー樹脂(B)を含有することを特徴とし、また、本発明の樹脂組成物に含まれる重合体微粒子の含有率は基材接着性や白色性のバランスの観点から、カルボン酸金属塩はカルボン酸金属塩(A)とバインダー樹脂(B)との合計を100質量%とした場合、樹脂組成物の製造方法により異なるが、特に限定されず、50~99質量%が好ましく、60~95質量%がより好ましく、70~90質量%がさらに好ましい。
【0040】
<溶剤(C)>
本発明における樹脂組成物に使用される溶剤(C)は、溶解性や微粒子分散性の観点から水が好ましいが特に限定されなく、その他の溶剤として有機溶剤を用いることができ、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸ノルマルブチル、酢酸イソブチル、酢酸プロピル、エチルセルソルブアセテート、ノルマルプロピルアセテート、イソプロピルアセテート、イソブチルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル系溶剤、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロパノール、ノルマルブタノール、ノルマルプロピルアルコール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、およびメチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、トルエン、ベンゼン、シクロヘキサン、ヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどの炭化水素系溶剤など、公知の溶剤を使用できる。これらは、1種または2種以上を組合せて溶剤として用いることも可能である。
溶剤を使用する際の質量は特に限定されないが、樹脂組成物中、溶剤(C)の含有量が、0.1~99質量%であることが好ましく、10~95質量%であることがより好ましく、40~90質量%であることがさらに好ましい。
【0041】
<分散剤>
本発明の樹脂組成物は、溶剤を使用した際の分散性および保存安定性を向上させるために分散剤を添加するのが好ましい。分散剤としては、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ステアリルアミンアセテート等を用いることができる。分散剤の具体例としては、Disperbyk-101、Disperbyk-107、Disperbyk-110、Disperbyk-111、Disperbyk-130、Disperbyk-161、Disperbyk-162、Disperbyk-163、Disperbyk-164、Disperbyk-165、Disperbyk-166、Disperbyk-167、Disperbyk-168、Disperbyk-170、Disperbyk-400、Bykumen、BYK-P104、P105、P104S、240S、Lactimon(BYK Chemie社製)が挙げられる。また、EFKA44、EF
KA46、EFKA47、EFKA48、EFKA49、EFKA54、EFKA63、EFKA64、EFKA65、EFKA66、EFKA71、EFKA701、EFKA764、EFKA766、EFKAPOLYMER100、EFKAPOLYMER150、EFKAPOLYMER400、EFKAPOLYMER401、EFKAPOLYMER402、EFKAPOLYMER403、EFKAPOLYMER450、EFKAPOLYMER451、EFKAPOLYMER452、EFKAPOLYMER453、EFKAPOLYMER745(BASF社製)、フローレン TG-710、フローノンSH-290、SP-1000、ポリフローNo.50E、ポリフローNo.300(共栄社化学社製)、ディスパロン KS-860、ディスパロン873SN、ディスパロン874、ディスパロン#2150、ディスパロン#7004(楠本化成社製)が挙げられる。さらに、ホモゲノールL-18、エマルゲン920、エマルゲン930、エマルゲン931、エマルゲン935、エマルゲン950、エマルゲン985、アセタミン24、アセタミン86(花王社製)、「ソルスパース5000、ソルスパース13940、ソルスパース17000、ソルスパース24000GR、ソルスパース32000、ソルスパース33000、ソルスパース39000、ソルスパース41000、ソルスパース53000、ソルスパース76400、ソルスパース76500、ソルスパースJ100(ルーブリゾール社製)、ニッコール T106(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート)、MYS-IEX(ポリオキシエチレンモノステアレート)、Hexagline 4-0(ヘキサグリセリルテトラオレート)(日光ケミカル社製)、アジスパーPB821、アジスパー822、アジスパー824、アジスパー827、アジスパー711(味の素ファインテクノ社製)、TEGODisper685(テゴケミサービス社製)等が挙げられる。
分散剤の添加量は、所望の安定性を確保する上で任意に選択される。流動特性に優れるのは、重合体微粒子に対し分散剤が0.1~10質量%の場合である。この範囲内では分散安定性が良好となることからより好ましい。
【0042】
<その他>
また、本発明の樹脂組成物はさらに目的に応じて、ホスフィン、ホスホネート、ホスファイト等の酸素除去剤や還元剤、重合促進剤、カブリ防止剤、退色防止剤、ハレーション防止剤、蛍光増白剤、界面活性剤、着色剤、増量剤、可塑剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、防カビ剤、熱重合防止剤、帯電防止剤、染料、有機および無機顔料、色素前駆体、磁性体やその他種々の特性を付与する添加剤と混合して使用しても良い。
【0043】
<用途>
本発明の樹脂組成物は、塗料、インキ、着色成形品、着色剤、遮光剤、センサーに用いることができ、特に白色塗料、白色インキとして好適に用いることができる。
【0044】
[樹脂組成物の製造方法]
本発明の樹脂組成物の製造方法としては、特に限定はないが、不飽和結合を有するカルボン酸の金属塩(A)を前記重合方法で重合し、微粒子を合成した後に、微粒子、バインダー樹脂(E)を溶剤(C)に分散または溶解させて、樹脂組成物を製造する方法(製造方法1)、および不飽和結合を有するカルボン酸の金属塩(A)、バインダー樹脂(E)を溶剤に溶解させて樹脂組成物の中間体を得た後に、樹脂組成物の中間体を基材に塗工し、その後に基材上で、カルボン酸金属塩(A)を重合し、微粒子を生成することで、基材上に樹脂組成物を製造する方法(製造方法2)が挙げられる。
【0045】
本発明の樹脂組成物に含まれる重合体微粒子の含有率は、基材接着性や白色性のバランスの観点から、カルボン酸金属塩はカルボン酸金属塩とバインダー樹脂との合計を100質量%とした場合、製造方法1は十分にバインダー樹脂(E)を含む方が微粒子の分散性や密着性が向上するため60~90質量%であることが好ましい。また、製造方法2はカルボン酸金属塩が少なく、バインダー樹脂を多く含む場合、微粒子が上手く形成されない場合があるため70~100質量%であることがさらに好ましい。
【0046】
本発明の樹脂組成物の製造方法において、不飽和結合を有するカルボン酸の金属塩、またはその重合体を含む微粒子、バインダー樹脂などを溶剤に溶解または分散させる方法は特に限定されないが、プラネタリーミキサーやディスパーなどの撹拌機を備えた窯、またはガラス瓶、を用いて処理するのもよいが、微粒子を分散させる方法においては、ボールミル、ビーズミル、ローラーミル、ペブルミル、アトライター、サンドミルなどの分散処理を適用した方が好ましい。
また、本発明の樹脂組成物におけるカルボン酸金属塩の重合体からなる微粒子は、カルボン酸金属塩の重合反応で合成することが可能であり、重合反応に際して、紫外線や可視光線、近赤外線等、電子線、熱等による活性エネルギーの付与により重合し、目的とする粒子状の重合物を得ることが可能である。
【0047】
[積層体]
本発明の積層体は、基材の片面または両面上に樹脂組成物またはその中間体を塗工することにより形成される着色した樹脂組成物の層を有している。樹脂組成物の層は溶剤を含んでいても良いし、溶剤を含まなくても良いが、溶剤を含まない方が好ましい。樹脂組成物の塗工方法は、印刷方法も含まれ、特に限定されず、後述する公知の塗工方法を活用することができる。樹脂組成物の層の厚みは、特に限定されないが、折り曲げ時のクラック発生等を抑止する目的、隠ぺい性を向上させる目的から、乾燥状態で0.2~200μmが好ましく、0.5~10μmがより好ましい。また、ここで形成される樹脂組成物層は、基材の片面または両面に対して、1層または複数層を積層してもよい。複数層の樹脂組成物の層を設ける場合は、それらの組成が同一であっても、異なっていても良いが異なっていた方が好ましい。例えば、基材の片面に対して、白色の樹脂組成物を塗工した後に、乾燥工程を経て、さらに同様の工程で青色の樹脂組成物の層を形成して2層としても良いし、さらに異なる色の樹脂組成物の層を形成して3層としても良い。
また、本発明の積層体は、酸化チタンと同程度の高い白色隠ぺい性を求めていることからL値が70以上であることが好ましく、75以上であることがさらに好ましい。
【0048】
<基材フィルム(G)>
基材または基材フィルムは、樹脂シート、紙、アルミニウムシート(アルミ箔)からなる群より選ばれる。例えば、樹脂シートとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアリレート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン(OPP、CPP)、ポリノルボルネン等のポリオレフィン系樹脂などの樹脂から形成される樹脂シートが挙げられる。また、これらのシートに金属が積層した積層体であってもよく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)シートに金属が積層した積層体であってもよい。前記基材の中で、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン等が、延伸性、透光性、および剛性が良好なため好ましい。
基材は、本発明の効果を損ねない範囲で、1種または2種以上の任意成分を含有してもよい。本発明で用いられる基材は、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、界面活性剤、顔料、および蛍光増白剤等を含有してもよい。基材は、シリカ、炭酸カルシウム、または酸化チタン等を含む無機粒子、あるいは、アクリル樹脂またはスチレン樹脂等を含む有機粒子を含有してもよい。
【0049】
[積層体の製造方法]
上述の製造方法1により得られる樹脂組成物を用いた本発明の積層体の製造方法としては、特に限定されないが、樹脂組成物を後述する塗工方法により、基材の片面または両面に樹脂組成物の層を有する積層体を形成し、乾燥する工程を含む。上述の製造方法2により得られる樹脂組成物を用いた本発明の積層体の製造方法としては、特に限定されないが、基材の片面または両面に樹脂組成物の中間体を後述する塗工方法により塗工し、樹脂組成物中間体の層を形成した後に、ラジカル活性種を発生させ重合反応を進行させるUV照射重合法・電子線(EB)照射重合法、または加熱を行うことで樹脂組成物の層を有する積層体を形成し、さらに乾燥する工程を含む。
【0050】
<塗工・印刷方法>
積層体の製造方法において、樹脂組成物または樹脂組成物の中間体の塗工方法は、特に限定されず、印刷方法も含まれ、公知の塗工方法を活用して積層体を得ることができる。具体的な塗工方法としてはワイヤーバー塗工法、ダイコート塗工法、キャスト塗工法、スロット塗工法、オメガ塗工法、スパイラル塗工法、コントロールシーム塗工法、スロット塗工法、ドット塗工法、ホットメルトアプリケーター塗工法、ホットメルトコーター塗工法、ブレードコート塗工法、ディップ塗工法、グラビアコート塗工法、マイクログラビア塗工法、カーテンスプレー塗工法、ビード塗工法、ホットメルトロールコーター塗工法、スピンコート塗工法が挙げられ、印刷方法としてはインクジェット印刷法、スプレー印刷法、ロールコート印刷法、ドクターロール印刷法、ドクターブレード印刷法、カーテンコート印刷法、スリットコート印刷法、スクリーン印刷法、反転印刷法、プッシュコート印刷法、スリットコーター印刷法、オフセット印刷法等を挙げることができる。
【0051】
樹脂組成物、または樹脂組成物の中間体は、これらの方法により基材へ塗工した後、溶剤を除去したり、架橋を促進する目的で、必要に応じて加熱乾燥したり、減圧乾燥したりしてもよい。乾燥条件としては、膜厚や基材そして選択した溶剤にもより、基材が劣化しない範囲であれば特に限定されないが、好ましくは40~200℃程度の熱風加熱が用いられる。
【0052】
樹脂組成物が未反応の不飽和結合を有するカルボン酸金属塩またはその他反応性モノマーを含む場合、前記の方法で重合反応を起こすことにより、重合体を塗膜内部で形成することが可能となる。
樹脂組成物の層の厚みは、特に限定されないが、折り曲げ時のクラック発生等を抑止する目的、または隠ぺい性を高める目的で、乾燥状態で0.2~200μmが好ましく、0.5~10μmがより好ましい。
また、ここで形成される樹脂組成物の層は、基材の片面または両面に対して、1層または複数の層を積層して積層体としてもよい。積層体の樹脂組成物の層を設ける場合は、それらの組成が同一であっても、異なっていても良いが異なっていた方が好ましい。例えば、基材の片面に対して、白色の樹脂組成物を塗工した後に、乾燥工程を経て、さらに同様の工程で青色の樹脂組成物の層を形成して2層としても良いし、さらに異なる色の樹脂組成物の層を形成して3層としても良い。
【実施例0053】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の一態様に過ぎず、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。なお、表中、「部」とあるのは「質量部」を、「%」とあるのは「質量%」をそれぞれ表すものとする。市販の原料について他の溶剤に溶かした溶液については溶剤を除いた原料分のみで換算し使用したものとする。以下に述べる実施例および表1に記載のカルボン酸の金属塩(A)、バインダー樹脂(B)、溶剤(C)、熱開始剤(D)、モノマー(E)、光開始剤(F)、基材フィルム(G)、その他成分・構成要素の略号を以下に示す。
【0054】
<不飽和結合を有するカルボン酸金属塩(A)>
・A-1:株式会社日本触媒 商品名:ZN-DA(アクリル酸亜鉛)
・A-2:浅田化学工業株式会社 商品名:R-20S(メタクリル酸亜鉛)
・A-3:富士フイルム和光純薬株式会社 商品名:アクリル酸マグネシウム
・A-4:富士フイルム和光純薬株式会社 商品名:アクリル酸カルシウム
【0055】
<バインダー樹脂(B)>
・B-1:三菱化学株式会社 商品名:ゴーセノールNL-05(ポリビニルアルコール)
・B-2:日信化学工業株式会社 商品名:TA5R(塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体)
・B-3:株式会社日本触媒 商品名:HL-415 (ポリアクリル酸)
【0056】
<溶剤(C)>
・C-1:イオン交換水
・C-2:イオン交換水とイソプロピルアルコールの混合溶剤(混合比率9:1)
・C-3:富士フイルム和光純薬株式会社 商品名:酢酸エチル
【0057】
<熱開始剤(D)>
・D-1:富士フイルム和光純薬株式会社 商品名:過硫酸アンモニウム
【0058】
<モノマー(E)>
・E-1:富士フイルム和光純薬株式会社 商品名:アクリル酸
・E-2:富士フイルム和光純薬株式会社 商品名:メタクリル酸
【0059】
<光開始剤(F)>
・F-1:IGM Resins B.V.社 商品名:オムニラッド-1173
【0060】
<基材フィルム(G)>
・G-1:フタムラ化学株式会社 商品名:FOH(30μmOPPフィルム)
・G-2:東洋紡株式会社 商品名:E5102(25μmPETフィルム)
【0061】
<重合体微粒子の合成>
[合成例1]
(重合体微粒子1の合成)
反応容器にカルボン酸金属塩(A-1)28部と溶剤(C-2)210部を入れ、70℃に加熱し、同温度で熱開始剤(D-1)5部を含む溶剤(C-2)40部を1時間かけて滴下しながら反応容器で攪拌を行い、析出物を減圧濾過にて回収・洗浄し、減圧下で乾燥することで重合体微粒子1を得た。
【0062】
[合成例2~7、10~12]
(重合体微粒子2~7および10~12の合成)
表1の通り、カルボン酸の金属塩(A)、溶剤(C)、熱開始剤(D)を変更した以外は、合成例1と同様にして、合成例2~7、10~12を製造した。
【0063】
[合成例8]
反応容器にカルボン酸金属塩(A-1)15部、モノマー(E-1)10部、溶剤(C-1)220部を入れ、70℃に加熱し、同温度で熱開始剤(D-1)4部を含む溶剤(C-1)50部を1時間かけて滴下しながら反応容器で攪拌を行い、析出物を減圧濾過にて回収・洗浄し、減圧下で乾燥することで重合体微粒子8を得た。
【0064】
[合成例9]
反応容器にカルボン酸金属塩(A-1)15部とモノマー(E-2)10部、溶剤(C-1)220部を入れ、70℃に加熱し、同温度で熱開始剤(D-1)4部を含む溶剤(C-1)50部を1時間かけて滴下しながら反応容器で攪拌を行い、析出物を減圧濾過にて回収・洗浄し、減圧下で乾燥することで重合体微粒子9を得た。
【0065】
次に合成した微粒子を用いて、以下の試験を行い、表1に記載した。
1.粒子径サイズの評価
合成した微粒子の粒子径の評価は、以下の条件にて観察したSEM画像にて行った。
測定装置:JSM-7800F、日本電子社製
測定条件:加速電圧 5kV
観察モード:2次電子観察
倍率:1万~5万倍
【0066】
【表1】
【0067】
[実施例1]
合成例1で得られた重合体微粒子1を75部、バインダー樹脂(B-1)を25部、溶剤(C-2)を315部混合し、ビーズミルで1時間分散することで樹脂組成物1を得た。樹脂組成物1について基材(G-2)上に塗工し、70℃で1分乾燥することで白色の樹脂組成物層を有する積層体(以下、白色積層体)を得た。
【0068】
[実施例2~16、23~25]
表2の通り、合成例1~12で得られた重合体微粒子および市販の微粒子、樹脂(B)、溶剤(C)を変更した以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を得た。また実施例1と同様にして基材(G)上に塗工し、白色積層体を得た。
【0069】
[実施例17]
カルボン酸金属塩(A-1)75部、バインダー樹脂(B-1)を1部、溶剤(C-2)312部、光重合開始剤(F-1)1部を混合し、ビーズミルで1時間分散することで樹脂組成物の中間体を得た。
次いで、上記で調整した樹脂組成物の中間体を基材(G-2)上に塗工し、得られた塗膜に高圧水銀ランプを用いて、1000(mJ/cm)のUV照射をすることで白色積層
体を得た。塗膜中の微粒子の粒子径は、205nmであった。
なお、塗膜中の微粒子の粒子径の測定方法は、前述の合成した微粒子の粒子径の測定方法と同様である。
【0070】
[実施例18]
カルボン酸金属塩(A-2)80部、バインダー樹脂(B-1)25部、溶剤(C-2)350部、光重合開始剤(F-1)1部を配合で混合し、ビーズミルで1時間分散することで樹脂組成物の中間体を得た。
次いで、上記で調整した樹脂組成物の中間体を基材(G-2)上に塗工し、得られた塗膜に高圧水銀ランプを用いて、1000(mJ/cm)のUV照射をすることで白色積層体を得た。塗膜中の微粒子の粒子径は、180nmであった。
【0071】
[実施例19]
カルボン酸金属塩(A-1)81部、バインダー樹脂(B-1)21部、溶剤(C-2)299部、光重合開始剤(F-1)1部を配合で混合し、ビーズミルで1時間分散することで樹脂組成物の中間体を得た。
次いで、上記で調整した樹脂組成物の中間体を基材(G-2)上に塗工し、得られた塗膜に高圧水銀ランプを用いて、1000(mJ/cm)のUV照射をすることで白色積層
体を得た。塗膜中の微粒子の粒子径は、220nmであった。
【0072】
[実施例20]
カルボン酸金属塩(A-1)68部、バインダー樹脂(B-1)を1部、溶剤(C-2)312部、光重合開始剤(F-1)1部を混合し、ビーズミルで1時間分散することで樹脂組成物の中間体を得た。
次いで、上記で調整した樹脂組成物の中間体を基材(G-2)上に塗工し、得られた塗膜にEB照射装置を用いて、4Mrad(加速電圧100kV、電流値7mA、コンベアスピード20m/min)の電子線を照射することで白色積層体を得た。塗膜中の微粒子の粒子径は、185nmであった。
【0073】
[実施例21]
カルボン酸金属塩(A-2)86部、バインダー樹脂(B-1)25部、溶剤(C-2)300部、を混合し、ビーズミルで1時間分散することで樹脂組成物の中間体を得た。
次いで、上記で調整した樹脂組成物の中間体を基材(G-2)上に塗工し、得られた塗膜にEB照射装置を用いて、4Mrad(加速電圧100kV、電流値7mA、コンベアスピード20m/min)の電子線を照射することで白色積層体を得た。塗膜中の微粒子の粒子径は、190nmであった。
【0074】
[実施例22]
カルボン酸金属塩(A-1)75部、バインダー樹脂(B-1)24部、溶剤(C-2)299部、を混合し、ビーズミルで1時間分散することで樹脂組成物の中間体を得た。
次いで、上記で調整した樹脂組成物の中間体を基材(G-2)上に塗工し、得られた塗膜にEB照射装置を用いて、4Mrad(加速電圧100kV、電流値7mA、コンベアスピード20m/min)の電子線を照射することで白色積層体を得た。塗膜中の微粒子の粒子径は、210nmであった。
【0075】
[比較例1]
市販のZnO粉末(富士フィルム和光純薬社製)75部に、バインダー樹脂(B-2)25部、溶剤(C-2)300部を混合し、ビーズミルで1時間分散することで樹脂組成物の中間体を得た。上記で調整した樹脂組成物の中間体について基材(G-2)上に塗工し、70℃で1分乾燥することで白色積層体を得た。塗膜中の微粒子の粒子径は、170nmであった。
【0076】
次に作製した白色積層体を使用して、以下の試験を行った。
2.隠ぺい率
白色積層体の隠ぺい率は、黒色用紙の上に実施例1~22、比較例1で作製した白色積層体の樹脂組成物塗工面を上にして敷き、上(白色積層体の塗工面)から分光測色計(X-rite eXact エックスライト社製)の検出部をあてて白色性を示すL値を測定した。白色隠ぺい性を判定する基準とし、下記の3段階で評価した。評価結果を表2に示す。なお、酸化チタンでの同様の評価でのL値は、84以下75以上の範囲である。
◎:L値が、85以上
〇:L値が、84以下75以上
△:L値が、74以下70以上
×:L値が、69以下
【0077】
3.膜厚
実施例1~25、比較例1で作製した白色積層体について、基材を含まない樹脂組成物層の膜厚を、測長機を用いて測定した。結果を表2に示す。
【0078】
4.金属含有量
実施例1~25、比較例1で作製した白色積層体について、基材を含まない樹脂組成物層の乾燥後の固形分に含まれる金属成分の含有量を測定、評価した。具体的には固形分全体に対する金属原子の割合を質量%で計算し、含有率から下記の3段階で評価した。結果を表2に示す。
◎:含有率が、28%未満
〇:含有率が、28%以上50%未満
×:含有率が、50%以上
【0079】
【表2】