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特開2024-144257触媒担体用炭素材料及び触媒担体用炭素材料の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144257
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】触媒担体用炭素材料及び触媒担体用炭素材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/60 20240101AFI20241003BHJP
   C01B 32/15 20170101ALI20241003BHJP
   B01J 32/00 20060101ALI20241003BHJP
   B01J 35/61 20240101ALI20241003BHJP
   B01J 35/63 20240101ALI20241003BHJP
   B01J 35/64 20240101ALI20241003BHJP
   B01J 35/40 20240101ALI20241003BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20241003BHJP
   B01J 37/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B01J35/60 G
C01B32/15
B01J32/00
B01J35/61
B01J35/63
B01J35/64
B01J35/40
B01J37/08
B01J37/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024045333
(22)【出願日】2024-03-21
(31)【優先権主張番号】P 2023052314
(32)【優先日】2023-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】506204818
【氏名又は名称】国立大学法人愛知教育大学
(71)【出願人】
【識別番号】523114372
【氏名又は名称】西 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】大平 純子
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 友隆
(72)【発明者】
【氏名】矢野 啓
(72)【発明者】
【氏名】日野 和之
(72)【発明者】
【氏名】西 信之
【テーマコード(参考)】
4G146
4G169
【Fターム(参考)】
4G146AA07
4G146AB04
4G146AC03A
4G146AC04A
4G146AC05A
4G146AC06A
4G146AC09A
4G146AD11
4G146AD35
4G146BA12
4G146BB06
4G146BC02
4G146BC23
4G146BC34B
4G146BC43
4G169AA01
4G169BA08A
4G169CC32
4G169EC08X
4G169EC13X
4G169EC14X
4G169EC15X
4G169FB29
4G169FB30
4G169FC07
(57)【要約】
【課題】電気伝導性及びガスやイオンなどの透過性に優れた触媒担体用炭素材料を提供することができる。
【解決手段】触媒担体用炭素材料は、グラフェンを含む細長状の炭素メソポーラス構造体からなる。炭素メソポーラス構造体は、50nm以上、200nm以下の長径及び30nm以上、100nm以下の短径を有する。窒素吸着等温線をDollimore-Heal法で解析して求まる細孔径が1nm以上、20nm以下であり、積算細孔容積が1.5cc/g以上、2.5cc/g以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフェンを含む細長状の炭素メソポーラス構造体からなる触媒担体用炭素材料であって、
前記炭素メソポーラス構造体は、50nm以上、200nm以下の長径及び30nm以上、100nm以下の短径を有し、
窒素吸着等温線をDollimore-Heal法で解析して求まる細孔径が1nm以上、20nm以下であり、積算細孔容積が1.5cc/g以上、2.5cc/g以下である、
触媒担体用炭素材料。
【請求項2】
前記炭素メソポーラス構造体の2nm以下の細孔径のマイクロ孔容積が、0.80cc/g以上、0.95cc/g以下である、
請求項1に記載の触媒担体用炭素材料。
【請求項3】
前記炭素メソポーラス構造体のBET比表面積が、1500~1800m/gである、
請求項1に記載の触媒担体用炭素材料。
【請求項4】
前記炭素メソポーラス構造体が、主としてグラフェン二重層膜によって構成されている、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の触媒担体用炭素材料。
【請求項5】
銀または銀塩を含む溶液を準備する工程と、
前記溶液に対してアセチレンガスを吹き込むことで、銀アセチリドからなるとともに棒状体または環状体が枝分かれてしてなる樹状の炭素ナノ構造体を生成する工程と、
前記樹状の炭素ナノ構造体を水浴にて80℃以上の温度で加熱することで、前記樹状の炭素ナノ構造体を分断して細長状にするとともに銀クラスターのカチオンと炭素クラスターのアニオンとのイオン対を生成させ、前記イオン対の電荷再結合に伴う発熱によって細長状の炭素ナノ構造体を膨張させることで、銀が内包された炭素メソポーラス構造体を生成する工程と、
前記炭素メソポーラス構造体を、減圧雰囲気下または不活性ガス雰囲気下において、1600℃から2000℃の温度にて0.5時間以上、2.0時間以下の範囲内で加熱処理を行う工程と、を備える、
触媒担体用炭素材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒担体用炭素材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の触媒担体用炭素材料及び製造方法としては、例えば特許文献1に記載の炭素材料及び製造方法がある。
特許文献1に記載の炭素材料は、炭素の樹状ナノ構造物(メソポーラス・カーボン・ナノ・デンドライトという)である。上記炭素材料は、銀アセチリドを合成した後に、相分離反応を経由して得られる。まず、硝酸銀のアンモニア水溶液に超音波を液中照射しながらアセチレンガスを吹き込むことで、銀アセチリドが沈殿物として生成する。銀アセチリドの沈殿物から水分を分離した後、真空雰囲気において60℃~80℃の温度で、12時間以上加熱処理を行う。これにより、銀アセチリドの偏析が生じ、金属銀粒子を内包した金属内包樹状ナノ構造物が形成される。なお、上記沈殿物を完全に乾燥させると不安定となり、摩擦刺激などによって爆発反応を示す場合がある。
【0003】
次に、銀アセチリドの沈殿物を、160℃~200℃の温度まで加熱する。銀アセチリドは、150℃付近で爆発的な相分離反応を起こし、内包された銀が噴出し、表面及び内部に多数の噴出孔(メソポア)を有する炭素の樹状ナノ構造物が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6198810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の炭素材料は、樹状ナノ構造物であるので、ガスなどが細孔内に滞留しやすい。このため、ガスなどの透過性に優れた触媒担体用炭素材料が求められている。
【0006】
また、特許文献1に記載の製造方法の場合、銀アセチリドの相分離反応を起こす際の爆発の規模が大きい。このため、反応装置に高い強度が求められたり、反応装置が大型化したりする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための触媒担体用炭素材料は、グラフェンを含む細長状の炭素メソポーラス構造体からなる触媒担体用炭素材料であって、炭素メソポーラス構造体は、50nm以上、200nm以下の長径及び30nm以上、100nm以下の短径を有し、窒素吸着等温線をDollimore-Heal法で解析して求まる細孔径が1nm以上、20nm以下であり、積算細孔容積が1.5cc/g以上、2.5cc/g以下である。
【0008】
同構成によれば、触媒担体用炭素材料が、グラフェンを含む細長状、所謂ビーンズ状の炭素メソポーラス構造体からなる。この炭素メソポーラス構造体の長径は、50nm以上、200nm以下であり、短径は、30nm以上、100nm以下である。このため、従来の樹状の炭素メソポーラス構造体に比べて、細孔内に存在するガスなどが外部に移動しやすくなる。したがって、細孔内におけるガスなどの滞留時間を短くすることができる。
【0009】
また、上記構成によれば、細孔径が1nm以上、20nm以下であり、積算細孔容積が1.5cc/g以上、2.5cc/g以下である。このように積算細孔容積が従来に比べて大きいので、ガスなどの透過性が高くなる。したがって、高い電気伝導性を有しつつ、ガスなどの透過性に優れた触媒担体用炭素材料を提供することができる。
【0010】
上記課題を解決するための触媒担体用炭素材料の製造方法は、銀または銀塩を含む溶液を準備する工程と、前記溶液に対してアセチレンガスを吹き込むことで、銀アセチリドからなるとともに棒状体または環状体が枝分かれてしてなる樹状の炭素ナノ構造体を生成する工程と、前記樹状の炭素ナノ構造体を水浴にて80℃以上の温度で加熱することで、前記樹状の炭素ナノ構造体を分断して細長状にするとともに銀クラスターのカチオンと炭素クラスターのアニオンとのイオン対を生成させ、前記イオン対の電荷再結合に伴う発熱によって細長状の炭素ナノ構造体を膨張させることで、銀が内包された炭素メソポーラス構造体を生成する工程と、前記炭素メソポーラス構造体を、減圧雰囲気下または不活性ガス雰囲気下において、1600℃から2000℃の温度にて0.5時間以上、2.0時間以下の範囲内で加熱処理を行う工程と、を備える。
【0011】
同構成によれば、樹状の炭素ナノ構造体を水浴にて80℃以上の温度で加熱することで、当該炭素ナノ構造体の形状を安定させる結晶水が気化する。結晶水の気化に伴って樹状の炭素ナノ構造体に対して外力が作用することで当該炭素ナノ構造体が分断されて細長状となる。
【0012】
また、上記のように加熱することで、上記炭素ナノ構造体を構成する銀イオンが銀クラスターカチオンに成長するとともに、炭素イオンが銀クラスターカチオンを被覆する炭素クラスターアニオンに成長する。これにより、銀クラスターカチオンと炭素クラスターアニオンとのイオン対が生成される。そして、これらイオン対の電荷再結合に伴う発熱によって細長状の炭素ナノ構造体が膨張することで、銀を内包した炭素メソポーラス構造体が生成される。詳しくは、イオン対の電荷再結合の際、プラスの電荷とマイナスの電荷とが互いに近づくことで中性電荷になる。このとき、電子及びホールの移動に伴って局所的には2000℃程度の熱が発生する。この発熱によって炭素がグラフェン化するとともに炭素が銀を内包した炭素メソポーラス構造体が生成される。
【0013】
ここで、銀イオン及び炭素イオンが、銀クラスターカチオン及び炭素クラスターアニオンになることで、プラスの電荷とマイナスの電荷とのペアが少なくなるため、爆発の危険度が低下する。銀アセチリドは、銀クラスターカチオン及び炭素クラスターアニオンの状態においては、200℃以上にならなければ大規模な爆発をしなくなる。これにより、銀アセチリドの常温での取り扱いが容易となる。ただし、銀アセチリドの常温での取り扱いが容易となるとはなるものの、100g程度以上の上記炭素メソポーラス構造体の生成を試みると、300度程度の加熱によって電荷再結合が連鎖的に発生することで大爆発を起こす可能性がある点について注意が必要である。
【0014】
上記のようにして生成された炭素メソポーラス構造体は、グラフェンの結晶性が低い状態である。上記構成によれば、上記炭素メソポーラス構造体に対して、上記のように加熱処理を行うことで、グラフェンの結晶性が高められる。また、内包されていた銀が昇華して除去される。
【0015】
したがって、グラフェンを含む細長状の炭素メソポーラス構造体からなる触媒担体用炭素材料を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、一実施形態の触媒担体用炭素材料のSEM像である。
図2図2は、一実施形態の触媒担体用炭素材料の他のSEM像である。
図3図3は、一実施形態の触媒担体用炭素材料のTEM像である。
図4図4は、一実施形態の触媒担体用炭素材料の他のTEM像である。
図5図5は、一実施形態の触媒担体用炭素材料の製造手順を示すフローチャートである。
図6図6は、比較例としてのメソポーラス・カーボン・ナノ・デンドライトのSEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図1図5を参照して、触媒担体用炭素材料及び触媒担体用炭素材料の製造方法の一実施形態について説明する。
図1図4に示すように、触媒担体用炭素材料(以下、炭素材料という)は、グラフェンを含む細長状の炭素メソポーラス構造体からなる。炭素材料は、本願発明者により、グラフェン・ウォールド・カーボン・ナノスポンジ(Graphene Walled Carbon Nano-Sponge)と名付けられた。
【0018】
炭素メソポーラス構造体は、50nm以上、200nm以下の長径及び30nm以上、100nm以下の短径を有する。炭素メソポーラス構造体は、所謂ビーンズ状である。
炭素メソポーラス構造体の細孔径は、1nm以上、20nm以下である。炭素材料の積算細孔容積は、1.5cc/g以上、2.5cc/g以下である。上記細孔径及び積算細孔容積は、窒素吸着等温線をDollimore-Heal法で解析して求められたものである。
【0019】
炭素メソポーラス構造体のBET比表面積は、1500~1800m/gであることが好ましい。
炭素メソポーラス構造体の2nm以下の細孔径のマイクロ孔容積は、0.80cc/g以上、0.95cc/g以下であることが好ましい。
【0020】
図3及び図4に示すように、炭素メソポーラス構造体は、主としてグラフェン二重層膜によって構成されていることが好ましい。炭素メソポーラス構造体には、グラフェン三重層膜やグラフェン四重層膜が含まれている。
【0021】
本実施形態の炭素材料は、例えば固体高分子型燃料電池の単セルを構成する触媒層に適用することができる。この場合、直径数nmに調製された白金などの触媒金属微粒子が高分散状態で細孔内に分散された状態で担持される。
【0022】
次に、図5を参照して、本実施形態の炭素材料の製造手順について説明する。
図5に示すように、炭素材料の製造方法は、溶液準備工程と、炭素ナノ構造体生成工程と、炭素メソポーラス構造体生成工程と、乾燥処理工程と、加熱処理工程とを備える。
【0023】
<溶液準備工程>
溶液準備工程は、銀または銀塩を含む溶液を準備する工程である。本実施形態では、上記溶液として、硝酸銀のアンモニア水溶液を準備する。
【0024】
<炭素ナノ構造体生成工程>
炭素ナノ構造体生成工程は、上記溶液に対してアセチレンガスを吹き込むことで、銀アセチリドからなるとともに棒状体または環状体が枝分かれてしてなる樹状の炭素ナノ構造体を生成する工程である。
【0025】
<炭素メソポーラス構造体生成工程>
炭素メソポーラス構造体生成工程は、上記樹状の炭素ナノ構造体を水浴にて80℃以上の温度で加熱することで銀が内包された炭素メソポーラス構造体を生成する工程である。本実施形態では、炭素ナノ構造体を水浴にて100℃の温度で加熱する。
【0026】
詳しくは、樹状の炭素ナノ構造体を水浴にて80℃以上の温度で加熱することで、当該炭素ナノ構造体の形状を安定させる結晶水が気化する。結晶水の気化に伴って樹状の炭素ナノ構造体に対して外力が作用することで当該炭素ナノ構造体が分断されて細長状となる。
【0027】
また、上記のように加熱することで、上記炭素ナノ構造体を構成する銀イオンが銀クラスターカチオンに成長するとともに、炭素イオンが銀クラスターカチオンを被覆する炭素クラスターアニオンに成長する。これにより、銀クラスターカチオンと炭素クラスターアニオンとのイオン対が生成される。そして、これらイオン対の電荷再結合に伴う発熱によって細長状の炭素ナノ構造体が膨張することで、銀を内包した炭素メソポーラス構造体が生成される。詳しくは、イオン対の電荷再結合の際、プラスの電荷とマイナスの電荷とが互いに近づくことで中性電荷になる。このとき、電子及びホールの移動に伴って局所的には2000℃程度の熱が発生する。この発熱によって炭素がグラフェン化するとともに炭素が銀を内包した炭素メソポーラス構造体が生成される。
【0028】
ここで、銀イオン及び炭素イオンが、銀クラスターカチオン及び炭素クラスターアニオンになることで、プラスの電荷とマイナスの電荷とのペアが少なくなるため、爆発の危険度が低下する。銀アセチリドは、銀クラスターカチオン及び炭素クラスターアニオンの状態においては、200℃以上にならなければ大規模な爆発をしなくなる。これにより、銀アセチリドの常温での取り扱いが容易となる。ただし、銀アセチリドの常温での取り扱いが容易となるとはなるものの、100g程度以上の上記炭素メソポーラス構造体の生成を試みると、300度程度の加熱によって電荷再結合が連鎖的に発生することで大爆発を起こす可能性がある点について注意が必要である。
【0029】
<乾燥処理工程>
乾燥処理工程は、上記の炭素メソポーラス構造体を乾燥させる工程である。
<加熱処理工程>
加熱処理工程は、炭素メソポーラス構造体を、減圧雰囲気下または不活性ガス雰囲気下において、1600℃から2000℃の温度にて0.5時間以上、2.0時間以下の範囲内で加熱処理を行う工程である。
【0030】
乾燥処理工程後の炭素メソポーラス構造体は、グラフェンの結晶性が低い状態である。そこで、炭素メソポーラス構造体に対して、上記のように加熱処理を行うことで、グラフェンの結晶性が高められる。また、内包されていた銀が昇華して除去される。
【0031】
本実施形態では、電気炉を用いて1800℃の温度にて加熱処理を行う。これにより、主としてグラフェン二重層膜が得られる。なお、加熱処理温度を1800℃よりも高くすることで、炭素メソポーラス構造体におけるグラフェン三重層膜及びグラフェン四重層の割合が大きくなる。グラフェン三重層及びグラフェン四重層の割合が大きくなるほど、炭素メソポーラス構造体のBET比表面積が小さくなる。一方、グラフェン三重層及びグラフェン四重層の割合が大きくなるほど、炭素メソポーラス構造体の導電性が高くなる。
【0032】
以上の各工程を順に行うことで、炭素材料を得ることができる。
次に、本実施形態の作用について説明する。
炭素材料は、グラフェンを含む細長状、所謂ビーンズ状の炭素メソポーラス構造体からなる。この炭素メソポーラス構造体の長径は、50nm以上、200nm以下であり、短径は、30nm以上、100nm以下である。このため、図6に示す従来の樹状の炭素メソポーラス構造体に比べて、細孔内に存在するガスなどが外部に移動しやすくなる。したがって、細孔内におけるガスやイオンなどの滞留時間を短くすることができる(以上、作用1)。
【0033】
また、細孔径が1nm以上、20nm以下であり、積算細孔容積が1.5cc/g以上、2.5cc/g以下である。このように積算細孔容積が従来に比べて大きいので、ガスやイオンなどの透過性が高くなる(以上、作用2)。
【0034】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)上記作用1,2を奏するので、電気伝導性及びガスやイオンなどの透過性に優れた触媒担体用炭素材料を提供することができる。
【0035】
(2)炭素メソポーラス構造体の2nm以下の細孔径のマイクロ孔容積が、0.80cc/g以上、0.95cc/g以下である。このため、炭素材料を固体高分子型燃料電池の単セルを構成する触媒層に適用した場合、2nm以下の細孔が、プロトンを一時的に貯めるプールとして効果的に機能する。これにより、プロトンを効率的に触媒に接触または近接させることができる。
【0036】
(3)BET比表面積が、1500~1800m/gであるため、触媒が担持される面積を大きくできる。したがって、より多くの触媒金属微粒子を担持させることができる。
【0037】
(4)炭素メソポーラス構造体が、主としてグラフェン二重層膜によって構成されているので、炭素メソポーラス構造体が、主としてグラフェン三重層膜によって構成されている場合に比べて、BET比表面積が大きくなる。これにより、触媒が担持される面積を大きくできるので、より多くの触媒を担持させることができる。
【0038】
(5)炭素材料の製造方法は、溶液準備工程と、炭素ナノ構造体生成工程と、炭素メソポーラス構造体生成工程と、加熱処理工程とを備える。
こうした構成によれば、グラフェンを含む細長状の炭素メソポーラス構造体からなる触媒担体用炭素材料を容易に製造することができる。
【0039】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0040】
・炭素メソポーラス構造体生成工程における加熱温度は、100℃に限定されず、80℃以上であればよい。
・炭素メソポーラス構造体のBET比表面積は、1500m/g未満であってもよいし、1800m2/gよりも大きくてもよい。
【0041】
<付記>
上記実施形態は、以下の付記に記載する構成を含む。
[付記1]
グラフェンを含む細長状の炭素メソポーラス構造体からなる触媒担体用炭素材料であって、
前記炭素メソポーラス構造体は、50nm以上、200nm以下の長径及び30nm以上、100nm以下の短径を有し、
窒素吸着等温線をDollimore-Heal法で解析して求まる細孔径が1nm以上、20nm以下であり、積算細孔容積が1.5cc/g以上、2.5cc/g以下である、
触媒担体用炭素材料。
【0042】
[付記2]
前記炭素メソポーラス構造体の2nm以下の細孔径のマイクロ孔容積が、0.80cc/g以上、0.95cc/g以下である、
付記1に記載の触媒担体用炭素材料。
【0043】
[付記3]
前記炭素メソポーラス構造体のBET比表面積が、1500~1800m/gである、
付記1または付記2に記載の触媒担体用炭素材料。
【0044】
[付記4]
前記炭素メソポーラス構造体が、主としてグラフェン二重層膜によって構成されている、
付記1から付記3のいずれか一項に記載の触媒担体用炭素材料。
図1
図2
図3
図4
図5
図6