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特開2024-144258負極複合材料、その製造方法、負極及びリチウムイオン二次電池
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  • 特開-負極複合材料、その製造方法、負極及びリチウムイオン二次電池 図1
  • 特開-負極複合材料、その製造方法、負極及びリチウムイオン二次電池 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144258
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】負極複合材料、その製造方法、負極及びリチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/48 20100101AFI20241003BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20241003BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20241003BHJP
【FI】
H01M4/48
H01M4/36 C
H01M4/13
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024045558
(22)【出願日】2024-03-21
(31)【優先権主張番号】202310333248.9
(32)【優先日】2023-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】王麗
(72)【発明者】
【氏名】周燕
(72)【発明者】
【氏名】李于利
(72)【発明者】
【氏名】武志 一正
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050AA08
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA07
5H050CA08
5H050CB02
5H050CB03
5H050DA03
5H050EA08
5H050EA12
5H050FA17
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA12
5H050GA27
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
【課題】本発明は、負極複合材料、その製造方法、負極、及びリチウムイオン二次電池を提供する。
【解決手段】負極複合材料は、負極活物質粒子と、負極活物質粒子の表面におけるLiCO及びLiOHと、を含み、負極活物質粒子は、ケイ素酸化物及びLiSiOとLiSiから選択される少なくとも1種のリチウムケイ酸塩を含有する顆粒と、顆粒の表面の少なくとも一部に被覆された炭素被覆層と、を含み、負極活物質粒子の重量を基準にして、LiCOの含有量は0wt%超0.01wt%未満であり、LiOHの含有量は0wt%超0.01wt%未満である。本発明の負極複合材料、その製造方法、負極及びリチウムイオン二次電池によれば、残留リチウム量を大幅に低減させ、スラリーの加工性を顕著に改善し、リチウムイオン二次電池の初回クーロン効率及びサイクル特性を向上させることができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極活物質粒子と、前記負極活物質粒子の表面におけるLiCO及びLiOHと、を含み、前記負極活物質粒子は、
ケイ素酸化物及びLiSiOとLiSiから選択される少なくとも1種のリチウムケイ酸塩を含む顆粒と、
前記顆粒の表面の少なくとも一部に被覆された炭素被覆層と、を含み、
前記負極活物質粒子の重量を基準にして、LiCOの含有量が0wt%超0.01wt%未満であり、且つLiOHの含有量が0wt%超0.01wt%未満である、ことを特徴とする負極複合材料。
【請求項2】
前記ケイ素酸化物はSiO(0.5≦x≦1.6)である、ことを特徴とする請求項1に記載の負極複合材料。
【請求項3】
前記負極活物質粒子の重量を基準にして、前記炭素被覆層の被覆量が、1wt%~30wt%の範囲内である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の負極複合材料。
【請求項4】
前記炭素被覆層は前記顆粒の表面全体に被覆される、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の負極複合材料。
【請求項5】
負極複合材料を製造するための方法であって、
炭素源を用いて、ケイ素酸化物前駆体に炭素被覆処理を行い、炭素被覆ケイ素酸化物を形成するステップと、
前記炭素被覆ケイ素酸化物とリチウム源とを混合して第1混合物を形成し、前記第1混合物に第1熱処理を行い、か焼生成物を形成し、その後、前記か焼生成物に第2熱処理を行い、プレリチウム化生成物を形成するステップと、
前記プレリチウム化生成物を洗浄処理して、前記負極複合材料を形成する、ことを特徴とする方法。
【請求項6】
前記洗浄処理は、前記プレリチウム化生成物を、2wt%~10wt%の固形分となるように、水又は酸と混合し、第2混合物を形成し、前記第2混合物を超音波処理した後に、分散させ、次に、吸引濾過し、最後に、吸引濾過後の物質を乾燥することを含む、ことを特徴とする請求項5に記載の負極複合材料を製造するための方法。
【請求項7】
前記酸は、塩酸、クエン酸、シュウ酸、リン酸、亜硫酸、酢酸、塩素酸、次亜塩素酸、及びホウ酸から選択される少なくとも1種である、ことを特徴とする請求項6に記載の負極複合材料を製造するための方法。
【請求項8】
前記リチウム源と前記炭素被覆ケイ素酸化物との重量比が、5:95~15:85の範囲である、ことを特徴とする請求項5に記載の負極複合材料を製造するための方法。
【請求項9】
前記第1熱処理の温度は500℃~750℃の範囲であり、前記第1熱処理の時間は2h~5hの範囲である、ことを特徴とする請求項5に記載の負極複合材料を製造するための方法。
【請求項10】
前記第2熱処理の温度は925℃~1050℃の範囲であり、前記第2熱処理の時間は3h~6hの範囲である、ことを特徴とする請求項5に記載の負極複合材料を製造するための方法。
【請求項11】
前記超音波処理の時間は10min~30minの範囲である、ことを特徴とする請求項6に記載の負極複合材料を製造するための方法。
【請求項12】
前記分散の時間は24h~72hの範囲である、ことを特徴とする請求項6に記載の負極複合材料を製造するための方法。
【請求項13】
前記炭素源は、アルカン、アルケン、及びアルキンのうちの少なくとも1種を含む、ことを特徴とする請求項5に記載の負極複合材料を製造するための方法。
【請求項14】
請求項1又は2に記載の負極複合材料を含む、ことを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極。
【請求項15】
正極と、負極と、セパレータと、を含む、リチウムイオン二次電池であって、
前記負極は、請求項1又は2に記載の負極複合材料を含む、ことを特徴とするリチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池の分野に関し、具体的には、負極複合材料、該負極複合材料を製造するための方法、並びに、該負極複合材料を含む負極及びリチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子技術の発展に伴い、電子機器のエネルギー供給を支持する電池装置の需要が高まっている。現在、より多くの電力を貯蔵し、大電力を出力できる電池が求められている。従来の鉛蓄電池やニッケル水素電池などは、スマートフォンなどのモバイル機器や蓄電システムなどの据え置き機器などの新しい電子機器の要件に対応できなくなっている。そのため、リチウムイオン二次電池が広く注目を集めている。リチウムイオン二次電池の開発において、その容量及び特性の向上が効果的に行われてきた。リチウムイオン二次電池は、エネルギー密度が高く、動作電圧が高く、サイクル寿命が長く、環境汚染が少ないなどの優位性を持ち、現在の世界で極めて発展の潜在力を持つ環境保全型の新たな高エネルギー化学電源となっている。
【0003】
リチウムイオン二次電池は、正極と、負極材料を含む負極と、電解液とを備える。複数種類の負極材料が開発されているが、その中でもケイ素系負極材料は、比較的潜在力のある負極材料の1種である。従来技術では、ケイ素系負極材料の特性を向上させるためにプレリチウム化技術を採用し、ケイ素系負極材料の残留リチウム量を制御することが開示されているが、従来技術では、ケイ素系負極材量の残留リチウム量制御の上限及び下限がいずれも高く、負極材料を含むスラリーの加工性を改善することが困難であり、リチウムイオン二次電池の初回クーロン効率及びサイクル特性を効果的に向上させることが困難であった。そのため、新たな負極複合材料、この負極複合材料を製造するための方法、この負極複合材料を含む負極、及びリチウムイオン二次電池の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の主な目的は、負極材料の残留リチウム量が高すぎ、スラリーの加工性を改善することが困難であり、リチウムイオン二次電池の初回クーロン効率及びサイクル特性を効果的に向上させることが困難であるという従来技術の問題を解決するために、負極複合材料、該負極複合材料を製造するための方法、並びに、該負極複合材料を含む負極、及びリチウムイオン二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成させるために、本発明の一態様によれば、負極活物質粒子と、前記負極活物質粒子の表面におけるLiCO及びLiOHと、を含み、前記負極活物質粒子は、
ケイ素酸化物及びLiSiOとLiSiから選択される少なくとも1種のリチウムケイ酸塩を含む顆粒と、
顆粒の表面の少なくとも一部に被覆された炭素被覆層と、を含み、
負極活物質粒子の重量を基準にして、LiCOの含有量が0wt%超0.01wt%未満であり、LiOHの含有量が0wt%超0.01wt%未満である、ことを特徴とする負極複合材料を提供する。
【0006】
さらに、前記負極複合材料において、ケイ素酸化物はSiO(0.5≦x≦1.6)である。
【0007】
さらに、前記負極複合材料において、負極活物質粒子の重量を基準にして、炭素被覆層の被覆量が、1wt%~30wt%の範囲内である。
【0008】
さらに、前記負極複合材料において、炭素被覆層は顆粒の表面全体に被覆される。
【0009】
本発明の別の態様によれば、負極複合材料を製造するための方法であって、
炭素源を用いて、ケイ素酸化物前駆体に炭素被覆処理を行い、炭素被覆ケイ素酸化物を形成するステップと、
炭素被覆ケイ素酸化物とリチウム源とを混合して第1混合物を形成し、第1混合物に第1熱処理を行い、か焼生成物を形成し、その後、か焼生成物に第2熱処理を行い、プレリチウム化生成物を形成するステップと、
プレリチウム化生成物を洗浄処理して、負極複合材料を形成する、方法を提供する。
【0010】
さらに、前記負極複合材料を製造するための方法において、洗浄処理は、プレリチウム化生成物を、好ましくは2wt%~10wt%の固形分となるように、水又は酸と混合し、第2混合物を形成し、第2混合物を超音波処理した後に、分散させ、次に、吸引濾過し、最後に、吸引濾過後の物質を乾燥することを含む。
【0011】
さらに、前記負極複合材料を製造するための方法において、酸は、塩酸、クエン酸、シュウ酸、リン酸、亜硫酸、酢酸、塩素酸、次亜塩素酸、及びホウ酸から選択される少なくとも1種である。
【0012】
さらに、前記負極複合材料を製造するための方法において、リチウム源と炭素被覆ケイ素酸化物との重量比が、5:95~15:85の範囲である。
【0013】
さらに、前記負極複合材料を製造するための方法において、第1熱処理の温度は500℃~750℃の範囲であり、第1熱処理の時間は2h~5hの範囲である。
【0014】
さらに、前記負極複合材料を製造するための方法において、第2熱処理の温度は925℃~1050℃の範囲であり、第2熱処理の時間は3h~6hの範囲である。
【0015】
さらに、前記負極複合材料を製造するための方法において、超音波処理の時間は10min~30minの範囲である。
【0016】
さらに、前記負極複合材料を製造するための方法において、分散の時間は24h~72hの範囲である。
【0017】
さらに、前記負極複合材料を製造するための方法において、炭素源は、アルカン、アルケン、及びアルキンのうちの少なくとも1種を含む。
【0018】
本発明の更なる態様によれば、前述の負極複合材料を含むリチウムイオン二次電池用負極を提供する。
【0019】
本発明の更なる態様によれば、正極と、負極と、セパレータを含み、前記負極は、前述の負極複合材料を含む、リチウムイオン二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の負極複合材料、該負極複合材料を製造するための方法、並びに、該負極複合材料を含む負極及びリチウムイオン二次電池によれば、残留リチウム量を大幅に低減させ、スラリーの加工性を改善し、リチウムイオン二次電池の初回クーロン効率及びサイクル特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】比較例4における負極スラリーの外観の写真を示す。
図2】実施例1~2、比較例2、及び比較例4における負極複合材料のLi 1s XPS(X線光電子スペクトル)のマップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
なお、本願の様々な実施例及び実施例の特徴は、矛盾することなく相互に組み合わされてもよい。以下、実施例を参照して本発明を詳細に説明する。以下の実施例は例示的なものにすぎず、本発明の保護範囲を制限するものではない。
【0023】
背景技術に記載の通り、従来技術では、負極材料の残留リチウム量が高すぎ、負極材料を含むスラリーの加工性を改善することが困難であり、リチウムイオン二次電池の初回クーロン効率及びサイクル特性を効果的に向上させることが困難である。従来技術における問題に対して、本発明の代表的な実施形態では、負極活物質粒子と、負極活物質粒子の表面におけるLiCO及びLiOHと、を含み、該負極活物質粒子は、ケイ素酸化物及びLiSiOとLiSiから選択される少なくとも1種のリチウムケイ酸塩を含む顆粒と、顆粒の表面の少なくとも一部に被覆された炭素被覆層と、を含み、負極活物質粒子の重量を基準にして、LiCOの含有量が0wt%超0.01wt%未満でありLiOHの含有量が0wt%超0.01wt%未満である、負極複合材料が提供される。
【0024】
残留リチウム値が高いと、負極複合材料を含むスラリーの加工性に影響を与え、負極複合材料を用いてスラリーを製造する過程でスラリーが「ゼリー」化しやすくなる。本発明者らは、多くの実験を行った結果、意外なことに、本発明により、残留リチウム量を大幅に低減させ、残留リチウム量の極めて低い負極複合材料を得ることができることを見出した。本発明の負極複合材料は、残留リチウム量が極めて低く、負極複合材料を用いてスラリーを製造する過程でスラリーが「ゼリー」化することを効果的に回避することができ、スラリーの加工性を顕著に改善することができ、リチウムイオン二次電池の初回クーロン効率及びサイクル特性を向上させることができる。
【0025】
本願に係るケイ素酸化物は、当該分野で一般的に負極材料に使用されるケイ素酸化物を用いてもよい。本発明のいくつかの実施形態では、本発明の負極複合材料において、ケイ素酸化物は、SiO(0.5≦x≦1.6、好ましくは0.8≦x≦1.2、最も好ましくは、x=1.0)であってもよい。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態では、本発明の負極複合材料において、負極活物質粒子の重量を基準にして、炭素被覆層の被覆量は、1wt%~30wt%の範囲、好ましくは、3wt%~20wt%の範囲、より好ましくは、5wt%~10wt%の範囲である。炭素被覆層の被覆量を上記の範囲にすることによって、材料の容量と被覆均一性との間において良好なバランスが取られる。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態では、本発明の負極複合材料において、炭素被覆層は、顆粒の表面全体に被覆されてもよく、それによって、負極複合材料の導電性を向上させ、初回クーロン効率を高め、残留リチウム量を効果的に低下させ、スラリーの加工性を改善することができる。
【0028】
本発明の別の代表的な実施形態では、炭素源を用いて、ケイ素酸化物前駆体に炭素被覆処理を行い、炭素被覆ケイ素酸化物を形成するステップと、炭素被覆ケイ素酸化物とリチウム源とを混合して第1混合物を形成し、第1混合物に第1熱処理を行い、か焼生成物を形成した後に、か焼生成物に第2熱処理を行い、プレリチウム化生成物を形成するステップと、プレリチウム化生成物を洗浄処理し、負極複合材料を形成するステップと、を含む、負極複合材料を製造するための方法が提供される。
【0029】
本発明に係る負極複合材料を製造するための方法は、残留リチウム量を大幅に低減させ、負極複合材料を用いてスラリーを製造する過程でスラリーが「ゼリー」化することを効果的に回避することができ、スラリーの加工性を改善し、リチウムイオン二次電池の初回クーロン効率及びサイクル特性を向上させることができ、しかも、スラリーによるガス発生を抑制できる。本発明に係る上記の方法によって得られた負極複合材料は、残留リチウム量が極めて低く、スラリーの加工性を顕著に改善し、リチウムイオン二次電池の初回クーロン効率及びサイクル特性を向上させることができる。
【0030】
本発明におけるケイ素酸化物前駆体、例えばSiO(0.5≦x≦1.6)は、本分野の常法によって製造することができる。本発明のいくつかの実施形態では、ケイ素酸化物前駆体は、以下の工程によって製造することができる。所定の粒子径のケイ素粉末及びシリカを約1.1:1のモル比で混合し、その後、バイブレータに置いて約12h振動させることで均一に混合し、均一に混合した上記の物質約1kgを取り、塊体にプレスし、その後、塊体を真空昇華炉に入れて1200℃~1500℃の温度に加熱し、真空度を0~30Pa、加熱時間を8h~10h、収集端の温度を400℃~800℃に調整することによって塊状ケイ素酸化物前駆体を製造し、塊状ケイ素酸化物前駆体を破砕機に入れてミリメートルスケールまで破砕し、その後、ミリメートルスケールのケイ素酸化物前駆体をジェット粉砕機に入れて粉砕し、気流分級機により粒子径の異なる粉体を分級し、最後に、粒子径の異なる粉体をサイズ別にブレンドし、最終的に、所望の粒子径のケイ素酸化物前駆体を得る。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態では、上記の負極複合材料を製造するための方法において、50Pa~10000Paの圧力、600℃~1000℃の温度で、アルカン、アルケン、及びアルキンのうちの少なくとも1種を炭素源として、ケイ素酸化物前駆体の表面に化学蒸着することで、ケイ素酸化物前駆体に炭素被覆処理を行い、炭素被覆ケイ素酸化物を形成する。本発明のいくつかの実施形態では、炭素被覆処理は、ロータリーキルン、固定床や流動床などの装置で行われる。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態では、上記の負極複合材料を製造するための方法において、洗浄処理は、プレリチウム化生成物を、好ましくは、2wt%~10wt%、例えば2wt%~8wt%や5wt%~10wt%の固形分となるように、水又は酸と混合し、第2混合物を形成し、第2混合物を超音波処理し、その後、分散させ、次に、吸引濾過し、最後に、吸引濾過後の物質を乾燥することを含む。洗浄処理の過程においては、水を利用して、LiCOやLiOHのようなアルカリ性物質を溶解することができ、酸を利用して、洗浄時にプレリチウム化生成物の表面に生成されたアルカリを中和することができる。超音波処理により、プレリチウム化生成物をより清潔に洗浄し、良好な洗浄効果を確保することができ、リチウムイオン二次電池のサイクル特性を向上させることができる。水洗処理や酸洗処理などの洗浄処理により、残留リチウム量を大幅に低減させ、負極複合材料の残留リチウム量をほぼゼロにし、それによって、負極複合材料を用いてスラリーを製造する過程でスラリーが「ゼリー」化することを効果的に回避し、スラリーの加工性を顕著に改善し、リチウムイオン二次電池の初回クーロン効率及びサイクル特性をさらに向上させることができる。固形分を上記の範囲にすることによって、単位質量のプレリチウム化生成物を清浄するための洗剤の十分の量を確保し、良好な洗浄効果を確保することができる。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態では、製造されたプレリチウム化生成物、例えばプレリチウム化SiO(0.5≦x≦1.6)材料を、2wt%~10wt%の固形分となるように、水と混合し、第2混合物を形成し、常温で第2混合物を10min~30min超音波処理してから、マグネチックスターラを用いて第2混合物を24h~72h分散させ、次に、吸引濾過し、その後、純水を濾紙上の物質上に注ぎ、吸引濾過によって2回洗浄し、最後に、吸引濾過後の物質を100℃~120℃で3~8時間真空乾燥する。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態では、上記の負極複合材料を製造するための方法において、洗浄時にプレリチウム化生成物の表面に生成されたアルカリを中和するために、酸としては、塩酸、クエン酸、シュウ酸、リン酸、亜硫酸、酢酸、塩素酸、次亜塩素酸、及びホウ酸から選択される少なくとも1種である。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態では、製造されたプレリチウム化生成物、例えばプレリチウム化SiO(0.5≦x≦1.6)材料を、2wt%~10wt%の固形分となるように、塩酸、クエン酸、シュウ酸、リン酸、亜硫酸、酢酸、塩素酸、次亜塩素酸、及びホウ酸などのうちの少なくとも1種、例えば濃度1mol/Lのクエン酸と混合し、第2混合物を形成し、常温で第2混合物を10min~30min超音波処理してから、マグネチックスターラを用いて第2混合物を24h~72h分散させ、次に、吸引濾過し、その後、純水を濾紙上の物質上に注ぎ、吸引濾過によって2回洗浄し、最後に、吸引濾過後の物質を100℃~120℃で3~8時間真空乾燥する。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態では、上記の負極複合材料を製造するための方法において、リチウム源と炭素被覆ケイ素酸化物との重量比は、5:95~15:85の範囲である。リチウム源と炭素被覆ケイ素酸化物との重量比を上記の範囲にすることによって、ケイ素酸化物の十分なプレリチウム化を確保し、残留残リチウム量を低下させ、リチウムイオン二次電池の初回クーロン効率及びサイクル特性をさらに向上させることができる。本発明のいくつかの実施形態では、リチウム源は、リチウムインゴット、リチウム金属粉末、及びリチウム箔のうちのいずれかを含んでもよい。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態では、上記の負極複合材料を製造するための方法において、第1熱処理の温度は500℃~750℃の範囲であり、第1熱処理の時間は2h~5hの範囲である。第1熱処理の温度及び時間を上記の範囲にすることによって、固相反応におけるリチウムの拡散に有利で、ケイ素酸化物の十分なプレリチウム化を確保することができ、残量リチウム量を低下させ、リチウムイオン二次電池の初回クーロン効率及びサイクル特性をさらに向上させることができる。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態では、上記の負極複合材料を製造するための方法において、第2熱処理の温度は925℃~1050℃の範囲であり、第2熱処理の時間は3h~6hの範囲である。第2熱処理の温度を上記の範囲にすることによって、LiCO及びLiOH(分解温度は924℃である。)の分解に有利で、LiCO及びLiOHの分解生成物LiOが1000℃以上で昇華し始めるため、残量リチウム量を大幅に低減させるのに有利である。第2熱処理の温度及び時間を上記の範囲にすることによって、ケイ素酸化物の十分なプレリチウム化を確保し、残留リチウム量を大幅に低減させ、リチウムイオン二次電池の初回クーロン効率及びサイクル特性をさらに向上させることができる。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態では、不活性雰囲気アルゴンの保護下、リチウム源と炭素被覆ケイ素酸化物と、を5:95~15:85の重量比で粉砕して混合し、第1混合物を形成し、その後、第1混合物をロータリーキルンに入れて、アルゴン雰囲気下、500℃~750℃で保温して2h~5hか焼し、炭素被覆ケイ素酸化物とリチウム金属とを十分に反応させ、次に、925℃~1050℃で3h~6h熱処理し、プレリチウム化生成物を得る。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態では、上記の負極複合材料を製造するための方法において、超音波処理の時間は10min~30minの範囲である。超音波処理の時間を上記の範囲にすることによって、穴中の残留リチウムの洗浄に有利で、プレリチウム化生成物をより清潔に洗浄することができ、良好な洗浄効果を確保することができ、また、プレリチウム化生成物の顆粒へのダメージを回避し、粒子径分布への影響を回避することができる。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態では、上記の負極複合材料を製造するための方法において、主にエネルギー消費量、時間コストや洗浄効果を考慮して、分散時間を24h~72hの範囲に制御してもよい。分散時間が短すぎると、清潔に洗浄されない恐れがあり、分散時間が長すぎると、エネルギー消費量及び時間コストが高い。分散時間を上記の範囲に制御することによって、良好な洗浄効果を確保できるだけではなく、ネルギー消費量や時間コストを低減させることができる。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態では、上記の負極複合材料を製造するための方法において、ケイ素酸化物の表面の少なくとも一部を炭素被覆し、良好な被覆効果を得るために、炭素源は、アルカン、アルケン、及びアルキンのうちの少なくとも1種を含む。
【0043】
本発明の更なる代表的な実施形態では、前述の負極複合材料を含むリチウムイオン二次電池用負極が提供される。本発明のリチウムイオン二次電池用負極は前述の負極複合材料を含むため、残留リチウム量を大幅に低減させ、スラリーの加工性を顕著に改善し、リチウムイオン二次電池の初回クーロン効率及びサイクル特性を向上させることができる。
【0044】
本発明の負極極シートは、当該分野の常法によって作製され得る。例えば、本発明の負極複合材料、導電剤、及びバインダを溶媒である水に分散させ、均一な負極スラリーを形成し、負極スラリーを負極集流体上に塗布し、オーブンで乾燥して、負極極シートを得ることができる。導電剤は、導電性カーボンブラック、導電性グラファイト、気相成長炭素繊維、カーボンナノチューブ、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。バインダは、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリイミド(PI)などのうちの1つ種又は複数であってもよく、好ましくはポリアクリル酸(PAA)バインダである。
【0045】
本発明の更なる代表的な実施形態では、正極と、負極と、セパレータと、を含み、該負極は、前述の負極複合材料を含む、リチウムイオン二次電池が提供される。本発明のリチウムイオン二次電池が、前述の負極複合材料を含むため、残留リチウム量を大幅に低減させ、スラリーの加工性を顕著に改善し、リチウムイオン二次電池の初回クーロン効率及びサイクル特性を向上させることができる。
【0046】
本発明の正極は、正極集流体と、正極活性材料を含有する正極活性材料層と、を含む。正極集流体の2つの表面上に正極活性材料層が形成されている。正極集流体として、例えばアルミニウム箔、ニッケル箔やステンレス鋼箔のような金属箔が使用可能である。
【0047】
正極活性材料層には、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な1種又は複数の正極材料が正極活性材料として含まれてもよく、必要に応じて、他の材料、例えば、正極バインダ及び/又は正極導電剤が含まれていてもよい。
【0048】
好ましくは、正極材料はリチウム含有化合物である。このようなリチウム含有化合物の例として、リチウム-遷移金属複合酸化物、リチウム-遷移金属リン酸塩化合物などが含まれる。リチウム-遷移金属複合酸化物は、Li及び1種又は2種以上の遷移金属元素を構成元素として含む酸化物であり、リチウム-遷移金属リン酸塩化合物は、Li及び1種又は2種以上の遷移金属元素を構成元素として含むリン酸塩化合物である。遷移金属元素は、有利的にはCo、Ni、MnやFeなどのうちの1種又は複数種である。
【0049】
リチウム-遷移金属複合酸化物の例として、例えばLiCoOやLiNiOなどが含まれてもよい。リチウム-遷移金属リン酸塩化合物の例として、例えばLiFePOやLiFe1-uMnPO(0<u<1)などが含まれてもよい。
【0050】
本発明の負極は、負極集流体と、負極複合材料を含有する負極活性材料層と、を含む。負極集流体の2つの表面上に負極活性材料層が形成されている。負極集流体として、例えば銅(Cu)箔、炭素被覆銅箔、ニッケル箔やステンレス鋼箔の金属箔が使用可能である。
【0051】
本発明のセパレータは、電池の正極と負極を仕切るためのものであり、リチウムイオンを通過させるとともに、正極と負極との間の接触による電流短絡を防止することができる。セパレータは、例えば、合成樹脂又はセラミックで形成される多孔質膜であり、また、2種又はより多くの種類の多孔質膜を積層した積層膜であってもよい。合成樹脂の例としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン及びポリエチレンなどが含まれる。
【0052】
本発明の実施形態では、リチウムイオン二次電池を充電するときに、例えば、リチウムイオンは、正極から放出され、セパレータに浸漬された電解液を介して負極に嵌め込まれる。リチウムイオン二次電池を放電する場合、例えば、リチウムイオンは、負極から放出され、セパレータに浸漬された電解液を介して正極に嵌め込まれる。
【0053】
以下、特定実施例を参照して本願をさらに詳細に説明するが、これらの実施例は、本願が保護を要求する範囲を制限するものではない。
【0054】
実施例1
負極複合材料の製造
50Paの圧力、920℃の温度で、メタンを炭素源として、20gのケイ素酸化物前駆体SiO(x=1)材料の表面に化学蒸着することで、ケイ素酸化物前駆体SiO(x=1)材料を炭素被覆し、21gの炭素被覆SiO(x=1)材料を形成した。
【0055】
不活性雰囲気アルゴンの保護下、リチウムインゴットと炭素被覆SiO(x=1)材料とを10:90の重量比で研磨して混合し、第1混合物を形成し、その後、第1混合物をロータリーキルンに入れて、アルゴン雰囲気下、550℃で3h保温してか焼し、炭素被覆SiO材料とリチウム金属とを十分に反応させ、さらに925℃で3h熱処理し、プレリチウム化されたSiO材料を得た。
【0056】
製造されたプレリチウム化SiO材料と濃度1mol/Lの塩酸とを8wt%の固形分となるようにビーカーに取り、混合して第2混合物を形成し、常温で第2混合物を先ず20min超音波処理してから、マグネチックスターラを用いて第2混合物を48h分散させ、次に、吸引濾過し、その後、純水を濾紙上の物質上に注ぎ、吸引濾過により2回洗浄し、最後に、吸引濾過後の物質を120℃で8時間真空乾燥し、負極複合材料を得た。
【0057】
負極シートの製造
上記のプロセスで製造された負極複合材料4gを秤量し、該負極複合材料、導電剤として導電性カーボンブラックSuper-P、及びバインダとしてポリアクリル酸PAAを82:8:10の質量比で、適量の脱イオン水にて十分に撹拌して混合し、固形分を42wt%に調整することで均一な負極スラリーを形成し、その後、負極集流体である銅箔の表面上に負極スラリーを塗布し、乾燥して負極極シートを得た。
【0058】
電池の組み立て
製造された負極極シート、セパレータ、リチウムシート、ガスケット、及び電池ケースを順次積層して、100μlの電解液を注入し、封口機で封口し、所望の半電池を組み立てた。
【0059】
実施例2
不活性雰囲気アルゴンの保護下、リチウムインゴットと炭素被覆SiO(x=1)材料とを15:85の重量比で研磨して混合し、第1混合物を形成し、その後、第1混合物をロータリーキルンに入れて、アルゴン雰囲気下、600℃で4h保温してか焼し、炭素被覆SiO材料とリチウム金属とを十分に反応させ、1000℃で4h熱処理し、プレリチウム化されたSiO材料を得たこと、
製造されたプレリチウム化SiO材料と濃度1mol/Lの塩酸とを5wt%の固形分となるようにビーカーに取り、混合して第2混合物を形成し、常温で第2混合物を先ず15min超音波処理してから、マグネチックスターラを用いて第2混合物を36h分散させ、次に、吸引濾過し、その後、純水を濾紙上の物質上に注ぎ、吸引濾過により2回洗浄し、最後に、吸引濾過後の物質を120℃で8時間真空乾燥し、負極複合材料を得たこと以外、実施例1と同様な方法によって半電池を製造した。
【0060】
実施例3
不活性雰囲気アルゴンの保護下、リチウムインゴットと炭素被覆SiO(x=1)材料とを5:95の重量比で研磨して混合し、第1混合物を形成し、その後、第1混合物をロータリーキルンに入れて、アルゴン雰囲気下、500℃で2h保温してか焼し、炭素被覆SiO材料とリチウム金属とを十分に反応させ、さらに、1050℃で6h熱処理し、プレリチウム化されたSiO材料を得たこと、
製造されたプレリチウム化SiO材料と濃度1mol/Lの塩酸とを2wt%の固形分となるようにビーカーに取り、混合して第2混合物を形成し、常温で第2混合物を先ず30min超音波処理してから、マグネチックスターラを用いて第2混合物を72h分散させ、次に、吸引濾過し、その後、純水を濾紙上の物質上に注ぎ、吸引濾過により2回洗浄し、最後に、吸引濾過後の物質を120℃で8時間真空乾燥し、負極複合材料を得たこと以外、実施例1と同様な方法によって半電池を製造した。
【0061】
実施例4
不活性雰囲気アルゴンの保護下、リチウムインゴットと炭素被覆SiO(x=1)材料とを15:85の重量比で研磨して混合し、第1混合物を形成し、その後、第1混合物をロータリーキルンに入れて、アルゴン雰囲気下、750℃で5h保温してか焼し、炭素被覆SiO材料とリチウム金属とを十分に反応させ、さらに、1025℃で4h熱処理し、プレリチウム化されたSiO材料を得たこと、
製造されたプレリチウム化SiO材料と濃度1mol/Lの塩酸とを10wt%の固形分となるようにビーカーに取り、混合して第2混合物を形成し、常温で第2混合物を先ず10min超音波処理してから、マグネチックスターラを用いて第2混合物を24h分散させ、次に、吸引濾過し、その後、純水を濾紙上の物質上に注ぎ、吸引濾過により2回洗浄し、最後に、吸引濾過後の物質を120℃で8時間真空乾燥し、負極複合材料を得たこと以外、実施例1と同様な方法によって半電池を製造した。
【0062】
実施例5
不活性雰囲気アルゴンの保護下、リチウムインゴットと炭素被覆SiO(x=1)材料とを5:95の重量比で研磨して混合し、第1混合物を形成し、その後、第1混合物をロータリーキルンに入れて、アルゴン雰囲気下、650℃で2h保温してか焼し、炭素被覆SiO材料とリチウム金属とを十分に反応させ、さらに、1050℃で6h熱処理し、プレリチウム化されたSiO材料を得たこと、
製造されたプレリチウム化SiO材料と純水とを2wt%の固形分となるようにビーカーに取り、混合して第2混合物を形成し、常温で第2混合物を先ず30min超音波処理してから、マグネチックスターラを用いて第2混合物を72h分散させ、次に、吸引濾過し、その後、純水を濾紙上の物質上に注ぎ、吸引濾過により2回洗浄し、最後に、吸引濾過後の物質を120℃で8時間真空乾燥し、負極複合材料を得たこと以外、実施例1と同様な方法によって半電池を製造した。
【0063】
比較例1
不活性雰囲気アルゴンの保護下、リチウムインゴットと炭素被覆SiO(x=1)材料とを15:85の重量比で研磨して混合し、第1混合物を形成し、その後、第1混合物をロータリーキルンに入れて、アルゴン雰囲気下、750℃で5h保温してか焼し、炭素被覆SiO材料とリチウム金属とを十分に反応させ、さらに、775℃で4h熱処理し、プレリチウム化されたSiO材料を得たこと、
製造されたプレリチウム化SiO材料と濃度1mol/Lの塩酸とを10wt%の固形分となるようにビーカーに取り、混合して第2混合物を形成し、常温で第2混合物を先ず10min超音波処理してから、マグネチックスターラを用いて第2混合物を24h分散させ、次に、吸引濾過し、その後、純水を濾紙上の物質上に注ぎ、吸引濾過により2回洗浄し、最後に、吸引濾過後の物質を120℃で8時間真空乾燥し、負極複合材料を得たこと以外、実施例1と同様な方法によって半電池を製造した。
【0064】
比較例2
不活性雰囲気アルゴンの保護下、リチウムインゴットと炭素被覆SiO(x=1)材料とを2:98の重量比で研磨して混合し、第1混合物を形成し、その後、第1混合物をロータリーキルンに入れて、アルゴン雰囲気下、400℃で2h保温してか焼し、炭素被覆SiO材料とリチウム金属とを十分に反応させ、さらに、950℃で7h熱処理し、プレリチウム化されたSiO材料を得たこと、
製造されたプレリチウム化SiO材料と濃度1mol/Lの塩酸とを20wt%の固形分となるようにビーカーに取り、混合して第2混合物を形成し、常温で第2混合物を先ず10min超音波処理してから、マグネチックスターラを用いて第2混合物を8h分散させ、次に、吸引濾過し、その後、純水を濾紙上の物質上に注ぎ、吸引濾過により2回洗浄し、最後に、吸引濾過後の物質を120℃で8時間真空乾燥し、負極複合材料を得たこと以外、実施例1と同様な方法によって半電池を製造した。
【0065】
比較例3
不活性雰囲気アルゴンの保護下、リチウムインゴットと炭素被覆SiO(x=1)材料とを15:85の重量比で研磨して混合し、第1混合物を形成し、その後、第1混合物をロータリーキルンに入れて、アルゴン雰囲気下、600℃で4h保温してか焼し、炭素被覆SiO材料とリチウム金属とを十分に反応させ、1000℃で4h熱処理し、プレリチウム化されたSiO材料を得たこと、
製造されたプレリチウム化SiO材料と濃度1mol/Lの塩酸とを5wt%の固形分となるようにビーカーに取り、混合して第2混合物を形成し、常温でマグネチックスターラを用いて第2混合物を36h分散させ、次に、吸引濾過し、その後、純水を濾紙上の物質上に注ぎ、吸引濾過により2回洗浄し、最後に、吸引濾過後の物質を120℃で8時間真空乾燥し、負極複合材料を得たこと以外、実施例1と同様な方法によって半電池を製造した。
【0066】
比較例4
不活性雰囲気アルゴンの保護下、リチウムインゴットと炭素被覆SiO(x=1)材料とを10:90の重量比で研磨して混合し、第1混合物を形成し、その後、第1混合物をロータリーキルンに入れて、アルゴン雰囲気下、550℃で3h保温してか焼し、炭素被覆SiO材料とリチウム金属とを十分に反応させ、さらに925℃で3h熱処理し、プレリチウム化されたSiO材料を得たこと、
プレリチウム化されたSiO材料を洗浄処理せずに、プレリチウム化されたSiO材料をそのまま負極複合材料としたこと以外、実施例1と同様な方法によって半電池を製造した。
【0067】
比較例5
不活性雰囲気アルゴンの保護下、リチウムインゴットと炭素被覆SiO(x=1)材料とを30:70の重量比で研磨して混合し、第1混合物を形成し、その後、第1混合物をロータリーキルンに入れて、アルゴン雰囲気下、600℃で5h保温してか焼し、炭素被覆SiO材料とリチウム金属とを十分に反応させ、さらに820℃で2h熱処理し、プレリチウム化されたSiO材料を得たこと、
製造されたプレリチウム化SiO材料と純水とを5wt%の固形分となるようにビーカーに取り、混合して第2混合物を形成し、常温でマグネチックスターラを用いて第2混合物を48h分散させ、次に、吸引濾過し、その後、純水を濾紙上の物質上に注ぎ、吸引濾過により2回洗浄し、最後に、吸引濾過後の物質を120℃で8時間真空乾燥し、負極複合材料を得たこと以外、実施例1と同様な方法によって半電池を製造した。
【0068】
材料の物性のテスト
実施例1~5及び比較例1~5における負極複合材料についてテストを行い、LiCOの含有量及びLiOHの含有量の結果を得た。
【0069】
中和滴定法:負極複合材料と純水とを1:9の質量比でビーカーに量り、混合し、常温でマグネチックスターラを用いて負極複合材料を1h分散させ、1h静置し、該分散液をろ過した。酸アルカリ自動滴定装置で、0.2Mの塩酸を用いて、得られた濾過液10mLを自動的に滴定し、第1終点(a mL)及び第2終点(b mL)を求めた。
【0070】
LiCOの含有量=[純水量(g)/濾過液量(g)]×2×(b/1000)×(塩酸滴定量の当量濃度×係数)×(1/2)×(LiCOのモル質量)×[100(%)/試料量(g)]
LiOHの含有量=[純水量(g)/濾過液量(g)]×[(a-b)/1000]×(塩酸滴定量の当量濃度×係数)×(1/2)×(LiOHのモル質量)×[100(%)/試料量(g)]。
【0071】
電池特性のテスト
25℃の環境、0V~1.5Vの電圧で、実施例1~5及び比較例1~5における半電池について、充放電テストを行った。まず、上記の実施例及び比較例における半電池を、25℃の環境下、0.1Cの充放電電流で1回(充放電電圧の範囲は0V~1.5Vであった。)サイクルしてテストすることによって、電池の初回放電容量及び初回クーロン効率を測定し、その後、1C電流を用いて電池について充放電を50回(充放電カットオフ電圧は0V~1.5Vであった。)サイクルしてテストすることによって、電池の50サイクル後の容量維持率を得た。初回クーロン効率(%)=初回放電容量/初回充電容量×100%。実験結果を以下の表1及び図1~2に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
以上のテスト結果から分かるように、本発明の上記の実施例は、下記技術的効果を達成した。
【0074】
実施例1~5と比較例1~5の結果を比較した結果、負極活物質粒子の重量に対するLiCOの含有量及びLiOHの含有量が本発明の範囲ではない比較例1~5と比べて、負極活物質粒子の重量に対するLiCOの含有量が0wt%超0.01wt%未満であり、かつ、LiOHの含有量が0wt%超且0.01wt%未満である実施例1~5では、電池は、より高い初回クーロン効率、及びより高い50サイクル後の放電容量維持率を有することが明らかになった。
【0075】
図2は、実施例1~2、比較例2、及び比較例4における負極複合材料のLi 1s XPS(X線光電子スペクトル)のマップが示されている。該XPSマップは、実施例1~2、比較例2、及び比較例4の負極複合材料中の、残留リチウムの成分の1種である炭酸リチウムLiCOの量の比較を示している。図2から、実施例1~2における負極複合材料のXPSマップにLiCOピークが存在しないことが明らかになった。このことは、実施例1~2の負極複合材料におけるLiCOの量が、XPSテストに要求される量に達していないことを示している。
【0076】
実施例1と比較例4の結果を比較した結果、プレリチウム化されたSiO材料を洗浄処理することによって、極めて低いLiCO含有量及び極めて低いLiOH含有量を有する負極複合材料が得られ、それにより、残留リチウム量を大幅に低減させ、スラリーの加工性を顕著に改善し、電池の初回放電容量、初回クーロン効率、及び50サイクル後の放電容量維持率を向上できることが明らかになった。図1は、比較例4における負極スラリーの外観の写真を示す。図1から、比較例4における負極複合材料の残留リチウム量が高いため、負極スラリーにゼリー化が現われることが分かった。
【0077】
実施例2と比較例3の結果を比較した結果、洗浄処理に第2混合物を超音波処理することが含まれる場合に、極めて低いLiCO含有量及び極めて低いLiOH含有量を有する負極複合材料が得られ、それにより、残留リチウム量を低減させ、スラリーの加工性を顕著に改善し、電池の初回放電容量、初回クーロン効率、及び50サイクル後の放電容量維持率を向上できることが明らかになった。
【0078】
実施例4と比較例1の結果を比較した結果、前記第2熱処理の温度が925℃~1050℃の範囲である場合に、極めて低いLiCO含有量及び極めて低いLiOH含有量を有する負極複合材料が得られ、それにより、残留リチウム量を低減させ、スラリーの加工性を顕著に改善し、電池の初回放電容量、初回クーロン効率、及び50サイクル後の放電容量維持率を向上できることが明らかになった。
【0079】
上記の電池特性のテスト結果から分かるように、本発明に係る負極複合材料、該負極複合材料を製造するための方法、並びに、該負極複合材料を含む負極、及びリチウムイオン二次電池によれば、残留リチウム量を大幅に低減させ、スラリーの加工性を顕著に改善し、リチウムイオン二次電池の初回クーロン効率及びサイクル特性を向上させることができる。
【0080】
以上は、本発明の好適な実施例に過ぎず、本発明を限定するものではなく、当業者であれば、本発明に様々な変更及び変化を加えることができる。本発明の精神及び原則を逸脱することなく行われる如何なる修正、同等置換や改良などであれば、本発明の特許範囲に含まれるべきである。
図1
図2