(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144259
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】コラーゲン分泌促進剤、およびその利用
(51)【国際特許分類】
A61K 36/185 20060101AFI20241003BHJP
A61K 36/61 20060101ALI20241003BHJP
A61K 36/736 20060101ALI20241003BHJP
A61K 36/258 20060101ALI20241003BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20241003BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241003BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20241003BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A61K36/185
A61K36/61
A61K36/736
A61K36/258
A61P17/00
A61P43/00 111
A61K8/9789
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024045630
(22)【出願日】2024-03-21
(31)【優先権主張番号】P 2023054319
(32)【優先日】2023-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390011442
【氏名又は名称】株式会社マンダム
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】下村 明日香
(72)【発明者】
【氏名】田中 利明
(72)【発明者】
【氏名】守矢 恒司
【テーマコード(参考)】
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083CC02
4C083EE12
4C088AB12
4C088AB18
4C088AB52
4C088AB57
4C088AC01
4C088AC04
4C088CA03
4C088MA07
4C088MA63
4C088NA14
4C088ZA89
4C088ZC41
(57)【要約】
【課題】コラーゲン分泌促進剤を提供することである。
【解決手段】テンニンカ果実エキス、マロニエエキス、ニンジンエキスおよびトウニンエキスからなる群から選択される少なくとも1種のエキスを含有する、コラーゲン分泌促進剤である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記A)~D)からなる群より選択される少なくとも1種のエキスを含有する、コラーゲン分泌促進剤:
A)テンニンカ果実エキス
B)マロニエエキス
C)ニンジンエキス
D)トウニンエキス。
【請求項2】
請求項1に記載のコラーゲン分泌促進剤を含有する、皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コラーゲン分泌促進剤、およびその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
コラーゲンは、人体に最も多く存在する生体分子であり、皮膚の真皮に多く存在し、皮膚にハリおよび弾力を与える。
【0003】
一方、コラーゲンは、紫外線などの外部刺激、および、ストレスなどに起因する内部刺激の影響によって、ダメージを受ける。コラーゲンがダメージを受けた場合であっても、質の良いコラーゲンが直ちに分泌されることによって、皮膚のハリおよび弾力を保つことができる。
【0004】
コラーゲンは、真皮中にある線維芽細胞によって産生され、線維芽細胞の外へ分泌される。当該線維芽細胞の外へ分泌されたコラーゲンによって、皮膚にハリおよび弾力を与えることができる。コラーゲンの産生から分泌までの機構には未解明の部分が多く残されている。コラーゲンの産生が促進された場合であっても、コラーゲンの分泌が促進されない場合には、前記のコラーゲンによる働きを得ることは困難である。
【0005】
これまでに、コラーゲン産生促進剤は多く知られている(特許文献1および2参照)。また、コラーゲン分泌促進剤も多く知られている(特許文献3、4および5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2022/080287
【特許文献2】WO2021/235275
【特許文献3】特開2022-187867号公報
【特許文献4】特表2009-501160号公報
【特許文献5】特開2016-056116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のような従来技術では十分とは言えず、新規なコラーゲン分泌促進剤が求められている。
【0008】
本発明の一態様は、新規なコラーゲン分泌促進剤、およびその利用を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、テンニンカ果実エキス、マロニエエキス、ニンジンエキスおよびトウニンエキスが、コラーゲンの分泌を促進させ得ることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の一実施形態は、以下の構成を含むものである。
【0010】
〔1〕下記A)~D)からなる群より選択される少なくとも1種のエキスを含有する、コラーゲン分泌促進剤:
A)テンニンカ果実エキス
B)マロニエエキス
C)ニンジンエキス
D)トウニンエキス。
【0011】
〔2〕〔1〕に記載のコラーゲン分泌促進剤を含有する、皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0012】
新規なコラーゲン分泌促進剤、およびその利用を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】各種エキスのコラーゲン分泌効果を示すグラフである。
【
図2】各種エキスのコラーゲン分泌効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、記述した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意図する。
【0015】
〔1.コラーゲン分泌促進剤〕
本発明の一実施形態に係るコラーゲン分泌促進剤は、テンニンカ果実エキス、マロニエエキス、ニンジンエキスおよびトウニンエキスからなる群より選択される少なくとも1種のエキスを含有する。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、コラーゲンの分泌を促進することにより、皮膚のハリおよび弾力を保つことができる。本発明の一実施形態は、例えば、目標3「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する」等の持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献できる。
【0017】
本明細書中にて、「コラーゲン分泌促進剤」とは、細胞内で産生されたコラーゲンの細胞外への分泌を促進させる製剤を意図する。
【0018】
本明細書中にて、「テンニンカ果実エキス」は、フトモモ科植物テンニンカの果実から得られる抽出物を意図する。
【0019】
本明細書中にて、「マロニエエキス」(例えば、CAS No.8053-39-2)は、ムクロジ科植物マロニエ(セイヨウトチノキとも言われる)から得られる抽出物を意図する。マロニエエキスは、マロニエの任意の部分から得られる抽出物であり得るが、マロニエの果実、種子、葉または樹皮から得られる抽出物であることが好ましい。
【0020】
本明細書中にて、「ニンジンエキス」は、ウコギ科植物オタネニンジンから得られる抽出物を意図する。ニンジンエキスは、オタネニンジンの根から得られる抽出物であることが好ましい。
【0021】
本明細書中にて、「トウニンエキス」は、バラ科植物モモの種子(すなわち、トウニン)から得られる抽出物を意図する。
【0022】
テンニンカ果実エキス、マロニエエキス、ニンジンエキスおよびトウニンエキスとしては、市販のテンニンカ果実エキス、マロニエエキス、ニンジンエキスおよびトウニンエキスを用いることも可能であるし、テンニンカ果実、マロニエ、ニンジンおよびトウニンを抽出して得たテンニンカ果実エキス、マロニエエキス、ニンジンエキスおよびトウニンエキスを用いることも可能である。
【0023】
テンニンカ果実、マロニエ、ニンジンおよびトウニンからテンニンカ果実エキス、マロニエエキス、ニンジンエキスおよびトウニンエキスを得る方法は、限定されない。例えば、(i)テンニンカ果実、マロニエ、ニンジンおよびトウニンを溶媒(例えば、水、エタノール、メタノール、アセトン、酢酸エチル、または、ブチレングリコール)によって抽出して得られる抽出物をテンニンカ果実エキス、マロニエエキス、ニンジンエキスおよびトウニンエキスとしてもよいし、(ii)テンニンカ果実、マロニエ、ニンジンおよびトウニンを溶媒(例えば、水、エタノール、メタノール、アセトン、酢酸エチル、または、ブチレングリコール)によって抽出して抽出物を得、当該抽出物から溶媒を除去して得られる乾燥物をテンニンカ果実エキス、マロニエエキス、ニンジンエキスおよびトウニンエキスとしてもよいし、(iii)テンニンカ果実、マロニエ、ニンジンおよびトウニンを溶媒(例えば、水、エタノール、メタノール、アセトン、酢酸エチル、または、ブチレングリコール)によって抽出して抽出物を得、任意で当該抽出物から溶媒を除去して乾燥物を得た後、当該抽出物または当該乾燥物に、化粧品などに使用される所望の溶媒(例えば、水、エタノールおよびブチレングリコールからなる群から選択される少なくとも1つ)を加えたものをテンニンカ果実エキス、マロニエエキス、ニンジンエキスおよびトウニンエキスとしてもよい。
【0024】
テンニンカ果実エキス、マロニエエキス、ニンジンエキスおよびトウニンエキスは、様々な用途に用いられ、人体への安全性も確認されている。それ故に、本発明の一実施形態によれば、安全性の高いコラーゲン分泌促進剤を実現することができる。
【0025】
本発明の一実施形態に係るコラーゲン分泌促進剤に含有される有効成分(換言すれば、テンニンカ果実エキス、マロニエエキス、ニンジンエキスおよびトウニンエキスからなる群より選択される少なくとも1種のエキス)の濃度は、特に限定されず、例えば、コラーゲン分泌促進剤を100質量%とした場合に、0.0001質量%~100質量%であってもよく、0.0001質量%~95質量%であってもよく、0.0001質量%~90質量%であってもよく、0.0001質量%~80質量%であってもよく、0.0001質量%~70質量%であってもよく、0.0001質量%~60質量%であってもよく、0.0001質量%~50質量%であってもよく、0.0001質量%~40質量%であってもよく、0.0001質量%~30質量%であってもよく、0.0001質量%~20質量%であってもよく、0.0001質量%~10質量%であってもよく、0.0001質量%~5質量%であってもよい。当該構成によると、得られるコラーゲン分泌促進剤は、コラーゲンの分泌量を十分に促進させるとともに、毒性も示さないという利点を有する。
【0026】
本発明の一実施形態に係るコラーゲン分泌促進剤は、上述した有効成分以外の成分を含有していてもよい。
【0027】
有効成分以外の成分は、特に限定されず、例えば、その他のエキス、緩衝剤、pH調整剤、等張化剤、防腐剤、抗酸化剤、高分子量重合体、賦形剤、溶媒、抗菌剤等であり得る。
【0028】
その他のエキスとしては、テンニンカ果実エキス、マロニエエキス、ニンジンエキスおよびトウニンエキス以外のエキスであれば、特に限定されないが、例えば、ケイ皮エキス、スターフルーツ葉エキス、ユーカリエキス、セイヨウハッカエキス、シャクヤクエキスおよびトウキエキス等が挙げられる。
【0029】
前記緩衝剤としては、例えば、リン酸またはリン酸塩、ホウ酸またはホウ酸塩、クエン酸またはクエン酸塩、酢酸または酢酸塩、炭酸または炭酸塩、酒石酸または酒石酸塩、ε-アミノカプロン酸、トロメタモールが挙げられる。前記リン酸塩としては、例えば、リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウムが挙げられる。前記ホウ酸塩としては、例えば、ホウ砂、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウムが挙げられる。前記クエン酸塩としては、例えば、クエン酸ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウムが挙げられる。前記酢酸塩としては、例えば、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムが挙げられる。前記炭酸塩としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムが挙げられる。前記酒石酸塩としては、例えば、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウムが挙げられる。
【0030】
前記pH調整剤としては、例えば、塩酸、リン酸、クエン酸、酢酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられる。
【0031】
前記等張化剤としては、例えば、イオン性等張化剤(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム)、非イオン性等張化剤(例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、マンニトール)が挙げられる。
【0032】
前記防腐剤としては、例えば、ベンザルコニウム塩化物、ベンザルコニウム臭化物、ベンゼトニウム塩化物、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、クロロブタノールが挙げられる。
【0033】
前記抗酸化剤としては、例えば、アスコルビン酸、トコフェノール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、エリソルビン酸ナトリウム、没食子酸プロピル、亜硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0034】
前記高分子量重合体としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール、アテロコラーゲンが挙げられる。
【0035】
前記賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、D-マンニトール、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール、デンプン、結晶セルロースが挙げられる。
【0036】
前記溶媒としては、例えば、水、生理的食塩水、アルコールが挙げられる。
【0037】
前記抗菌剤としては、例えば、β-ラクタム系、アミノグリコシド系、テトラサイクリン系、リンコマイシン系、クロラムフェニコール系、マクロライド系、ケトライド系、ポリペプチド系、グリコペプチド系の抗生物質;ピリドンカルボン酸(キノロン)系、ニューキノロン系、オキサゾリジノン系、サルファ剤系の合成抗菌薬が挙げられる。
【0038】
本発明の一実施形態に係るコラーゲン分泌促進剤に含有される有効成分以外の成分の量は、特に限定されず、例えば、コラーゲン分泌促進剤を100質量%とした場合に、0質量%~99.9999質量%であってもよく、5質量%~99.9999質量%であってもよく、10質量%~99.9999質量%であってもよく、20質量%~99.9999質量%であってもよく、30質量%~99.9999質量%であってもよく、40質量%~99.9999質量%であってもよく、50質量%~99.9999質量%であってもよく、60質量%~99.9999質量%であってもよく、70質量%~99.9999質量%であってもよく、80質量%~99.9999質量%であってもよく、90質量%~99.9999質量%であってもよく、95質量%~99.9999質量%であってもよい。
【0039】
本発明の一実施形態に係るコラーゲン分泌促進剤の剤型は、特に限定されず、例えば、外用剤(例えば、液剤、ゲル剤、クリーム剤、スティック剤、シート剤)、錠剤、粉末剤、顆粒剤が挙げられる。
【0040】
本発明の一実施形態に係るコラーゲン分泌促進剤の投与対象は、特に限定されず、例えば、ヒト、非ヒト動物(例えば、家畜、愛玩動物、および、実験動物)、これらから採取した組織、これらから採取した細胞、株化された細胞が挙げられる。前記非ヒト動物としては、特に限定されず、例えば、サル、チンパンジー、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、マウス、および、ラットが挙げられる。
【0041】
本発明の一実施形態に係るコラーゲン分泌促進剤の投与経路は、特に限定されず、例えば、非経口投与(例えば、経皮投与)、および、経口投与が挙げられる。
【0042】
本発明の一実施形態に係るコラーゲン分泌促進剤の対象への投与間隔は、特に限定されず、例えば、1時間に1回、1~6時間に1回、6~12時間に1回、12時間~1日あたり1回、1日~3日あたり一回、1日~5日あたり1回、1日~7日あたり1回、7日~14日あたり1回、14日~21日あたり1回、1カ月あたり1回、2カ月あたり1回、3カ月あたり1回、4カ月あたり1回、5カ月あたり1回、6カ月あたり1回、または、1年あたり1回が挙げられる。
【0043】
〔2.皮膚外用剤〕
本発明の一実施形態に係る皮膚外用剤は、テンニンカ果実エキス、マロニエエキス、ニンジンエキスおよびトウニンエキスからなる群より選択される少なくとも1種のエキスを含有するものである。本発明の一実施形態に係る皮膚外用剤は、本発明の一実施形態に係るコラーゲン分泌促進剤を含有するもの、または、本発明の一実施形態に係るコラーゲン分泌促進剤からなるものである。
【0044】
前記コラーゲン分泌促進剤、前記テンニンカ果実エキス、前記マロニエエキス、前記ニンジンエキス、および前記トウニンエキスについては、既に説明したので、ここではその説明を省略する。
【0045】
本明細書において、「皮膚外用剤」とは、皮膚における病状の改善、または、スキンケア等を目的として、体外から直接皮膚へ供する物質を意図する。外用剤としては、特に限定されないが、例えば、化粧品、医薬品、医薬部外品等が挙げられる。
【0046】
前記化粧品の具体例としては、例えば、ボディーローション、デオドラント化粧料、化粧水、乳液、スキンケアクリーム、トニック、スティック化粧料、リップ、洗顔料、洗浄料、シート状化粧料、髭そり用化粧料、育毛剤が挙げられる。
【0047】
前記皮膚外用剤の剤型としては、特に限定されず、例えば、液剤、ゲル剤、クリーム剤、スティック剤、および、シート剤が挙げられる。前記ゲル剤のゲル化度は、用途によって異なり得るので、特に限定されない。
【0048】
前記皮膚外用剤が適用され得る皮膚としては、特に限定されず、例えば、頭、顔、首、腕、手、肘、脛、背中、胴、および、足が挙げられる。
【0049】
本発明の一実施形態に係る皮膚外用剤に含有される、コラーゲン分泌促進剤(有効成分)の量は、特に限定されず、例えば、皮膚外用剤を100質量%とした場合に、0.001質量%~100質量%であってもよく、0.01質量%~100質量%であってもよく、0.1質量%~100質量%であってもよく、0.1質量%~95質量%であってもよく、0.1質量%~90質量%であってもよく、0.1質量%~80質量%であってもよく、0.1質量%~70質量%であってもよく、0.1質量%~60質量%であってもよく、0.1質量%~50質量%であってもよく、0.1質量%~40質量%であってもよく、0.1質量%~30質量%であってもよく、0.1質量%~20質量%であってもよく、0.1質量%~10質量%であってもよい。
【0050】
本発明の一実施形態に係る皮膚外用剤は、上述したコラーゲン分泌促進剤以外の成分を含有していてもよい。当該「コラーゲン分泌促進剤以外の成分」としては、特に限定されず、例えば、上述した〔1.コラーゲン分泌促進剤〕にて説明した「有効成分以外の成分」が挙げられる。
【0051】
本発明の皮膚外用剤は、前記各構成成分を混合し、公知の方法(例えばパドルミキサー)を用いて攪拌することにより製造することができる。
【0052】
本発明の一実施形態に係る皮膚外用剤の投与対象、投与経路、および、投与間隔は、特に限定されず、上述した本発明の一実施形態に係るコラーゲン分泌促進剤の投与対象、投与経路、および、投与間隔と同じであり得る。
【0053】
〔3.その他〕
本発明の一実施形態は、以下のように構成することもできる。
【0054】
<1>下記A)~D)からなる群より選択される少なくとも1種のエキスを含有するコラーゲン分泌促進剤を、被験体(例えば、ヒト、または、非ヒト動物(例えば、サル、チンパンジー、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、マウス、および、ラット))へ投与する工程を有する、コラーゲンの分泌促進方法:
A)テンニンカ果実エキス
B)マロニエエキス
C)ニンジンエキス
D)トウニンエキス。
【0055】
<2>下記A)~D)からなる群より選択される少なくとも1種のエキスを含有するコラーゲン分泌促進剤を含有する皮膚外用剤を、被験体(例えば、ヒト、または、非ヒト動物(例えば、サル、チンパンジー、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、マウス、および、ラット))へ投与する工程を有する、皮膚処置方法:
A)テンニンカ果実エキス
B)マロニエエキス
C)ニンジンエキス
D)トウニンエキス。
【0056】
<3>コラーゲン分泌促進剤を製造するための、下記A)~D)からなる群より選択される少なくとも1種のエキスの使用:
A)テンニンカ果実エキス
B)マロニエエキス
C)ニンジンエキス
D)トウニンエキス。
【0057】
<4>皮膚外用剤を製造するための、下記A)~D)からなる群より選択される少なくとも1種のエキスの使用:
A)テンニンカ果実エキス
B)マロニエエキス
C)ニンジンエキス
D)トウニンエキス。
【実施例0058】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0059】
<エキスのコラーゲン分泌促進効果>
可視化ヒトI型プロコラーゲンが導入されたNIH-3T3細胞に各種エキスを添加し、各種エキスを添加した後のコラーゲン分泌量を、コラーゲンと結合しているGFPの蛍光量を測定することにより経時的に評価した。
【0060】
<細胞内のコラーゲンの蛍光観察>
非特許文献「Toshiaki Tanaka et al., Visualized procollagen Iα1 demonstrates the intracellular processing of propeptides. Life Science Alliance volume 5, No. 5, 2022.(DOI:10.26508/lsa.202101060)」に記載の、ヒトpreprocollagen1 α1-EGFP-mCherry融合cDNAを含むベクター(Gr-CCの発現用ベクター)を使用した。当該ベクターをマウスのNIH3T3細胞に導入し、共焦点蛍光顕微鏡で、蛍光を検出した。蛍光顕微鏡により48時間後にEGFPおよびmCherryの蛍光シグナルを観察した。EGFPがコラーゲンタンパク質に挿入され、mCherryがC―プロペプチドに挿入されていることにより、合成直後のプロコラーゲンは黄色のシグナルによって、また、プロセシングにより切断されたコラーゲンタンパク質は緑色の蛍光シグナルによって、細胞質に存在することを確認できた。
【0061】
<細胞外に分泌されたコラーゲン量の測定>
前記ベクターを導入したマウスのNIH3T3細胞(EGFP-Collagen導入細胞)を、6-well plateに3.0×10
5cells/wellの細胞密度で播種し、37℃、5%CO
2存在下で、24時間培養した。その後、培地を、2ng/mLのTGF-β1を含む1%FBS/PS/DMEMに交換した。TGF-β1を含む培地への交換から24時間後、表1に記載の各評価原料を1%FBS/PS/DMEMを用いて希釈して、培地中の各評価原料の濃度が表1に記載の濃度となるように添加して、37℃のCO
2インキュベーターで培養した。評価原料を添加してから24時間後に、培養上清を1.5mLチューブに回収した。遠心分離(2000rpm、10min、4℃)した上清100μlを測定直前に96-well plateに移して、蛍光光度計EnSpire(PerkinElmer)を用いてEGFP蛍光を測定した。EGFPの精製標品(0-20ng/μl)を標準曲線の作成に使用した。各々の評価原料の24時間後の測定値を、それぞれ、評価原料無添加(None)の24時間後の測定値で除して比率を求め、培養上清に分泌されたEGFP-Collagen量を相対評価した。結果を
図1に示す。テンニンカ果実エキス、マロニエエキス、ニンジンエキスおよびトウニンエキスは顕著なコラーゲン分泌促進効果を示した。
【0062】
本実施例で用いたTGF-β1は、コラーゲンタンパク質の合成を著しく促進する効果を有することから、エキスを添加していない細胞を含む全ての細胞において、コラーゲンタンパク質の合成は最大値近くまで促進された状態となっている。それ故に、本実施例では、各種エキスの効果として、コラーゲン合成に対する効果ではなく、コラーゲン分泌に対する効果を観察していることとなる。
【0063】
なお、TGF-β1を添加してもコラーゲンの分泌量が増えないことは、上述した非特許文献にて開示の通りである。
【0064】
【0065】
<初代ヒト真皮線維芽細胞を用いた細胞外へのコラーゲン分泌量の測定>
初代ヒト真皮線維芽細胞(JCRB細胞バンクより入手)を6-well plateに3.0×10
5cells/wellの細胞密度で播種し、培養培地(10%FBS/PS/EMEM)にて、37℃、5%CO
2存在下で、24時間前培養した。前培養後、表1に記載の各評価原料を同表に記載の濃度で含有する培養培地(1%FBS/PS/EMEM)で培地交換を行い、37℃、5%CO
2存在下で、48時間培養し、培養後の培養上清を回収した。培養上清2mL中のヒトI型コラーゲン量をELISA法(Human Collagen Type I ELISA Kit(Abcam))によって定量した。結果を
図2に示す。なお、培養上清2mL中のタンパク質の総量をBCAアッセイ(Pierce BCA Protein Assay Kits(Thermo Fisher Scientific))によって定量することで、ヒトI型コラーゲン量のノーマライズを行った。
【0066】
図2より、テンニンカ果実エキス、マロニエエキス、ニンジンエキス、およびトウニンエキスが、初代ヒト真皮線維芽細胞におけるヒトI型コラーゲンの細胞外への分泌を促進させることが分かる。
本発明は、コラーゲン分泌促進剤、および、それを用いた皮膚外用剤に利用することができる。それゆえ、本発明は、化粧品、医薬品、または、医薬部外品として好適に利用することができる。