(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144260
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】水位予測モデル構築方法、水位予測モデル構築プログラム、予測水位データ出力方法、予測水位データ出力プログラム、水位予測的中率算出方法及び水位予測的中率算出プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/26 20240101AFI20241003BHJP
E02B 3/00 20060101ALI20241003BHJP
G01W 1/00 20060101ALI20241003BHJP
G01W 1/10 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G06Q50/26
E02B3/00
G01W1/00 Z
G01W1/10 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024045639
(22)【出願日】2024-03-21
(31)【優先権主張番号】P 2023054797
(32)【優先日】2023-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100173716
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】置田 耕大
(72)【発明者】
【氏名】小松 知滉
(72)【発明者】
【氏名】小礒 康正
(72)【発明者】
【氏名】小井▲土▼ 亜希
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕晃
(72)【発明者】
【氏名】福島 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】大▲がんな▼ 洸太
【テーマコード(参考)】
5L050
【Fターム(参考)】
5L050CC35
(57)【要約】
【課題】本開示は、機械学習を用いて、河川等の高水位(特に、水位ピーク付近)を高精度に予測するとともに、河川等の低水位(特に、水位定常状態)を高精度に予測するように、訓練用データを適切に抽出することを目的とする。
【解決手段】本開示は、水位予測地点でのある時刻の水位の学習に必要な訓練用データL1等として、水位予測地点又は水位予測地点より上流での当該時刻より過去の水位データWLのうち、水位変動時並びに水位変動時の直前及び直後の水位不変動時の水位データWLを抽出し、水位変動時の直前及び直後以外の水位不変動時の水位データWLを棄却する訓練用データ抽出ステップと、訓練用データL1等を用いて、水位予測モデルM1等を構築するモデル構築ステップと、を順に備えることを特徴とする水位予測モデル構築方法である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水位予測地点でのある時刻の水位の学習に必要な訓練用データとして、前記水位予測地点又は前記水位予測地点より上流での当該時刻より過去の水位データのうち、水位変動時並びに水位変動時の直前及び直後の水位不変動時の水位データを抽出し、水位変動時の直前及び直後以外の水位不変動時の水位データを棄却する訓練用データ抽出ステップと、
前記訓練用データを用いて、水位予測モデルを構築するモデル構築ステップと、
を順に備えることを特徴とする水位予測モデル構築方法。
【請求項2】
前記水位予測モデルの検証のための検証用データを、水位ピーク時の前後の様々な長さの期間の水位データを用いて構築された複数の前記水位予測モデルに入力し、水位予測誤差が最も小さい一つの前記水位予測モデルを選定するモデル選定ステップ、
をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の水位予測モデル構築方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の水位予測モデル構築方法が備える各処理ステップを、順にコンピュータに実行させるための水位予測モデル構築プログラム。
【請求項4】
水位予測のためのテストデータを、請求項1又は2に記載の前記水位予測モデルに入力し、予測水位データを出力する予測水位データ出力ステップ、
を備えることを特徴とする予測水位データ出力方法。
【請求項5】
請求項4に記載の予測水位データ出力方法が備える前記予測水位データ出力ステップを、コンピュータに実行させるための予測水位データ出力プログラム。
【請求項6】
請求項1に記載の水位予測モデル構築方法が構築した前記水位予測モデルの検証のための検証用データとして、前記水位データ及び前記水位データが抽出される期間における過去観測雨量データと、検証対象時刻より将来の予報雨量データと、を抽出する検証用データ抽出ステップと、
前記水位予測モデルに前記検証用データとして、前記水位予測地点での複数時刻の水位を検証するための前記水位データ、前記過去観測雨量データ及び前記予報雨量データを入力し、前記水位予測地点での当該複数時刻の予測水位データを出力する予測水位データ出力ステップと、
前記水位予測地点での当該複数時刻の予測水位データのうちの、前記水位予測地点での当該複数時刻の観測水位データの周りの誤差幅内に収まるものの割合を、前記水位予測地点での水位の予測的中率として算出する水位予測的中率算出ステップと、
を順に備えることを特徴とする水位予測的中率算出方法。
【請求項7】
前記検証用データ抽出ステップは、前記検証用データとして、当該検証対象時刻より将来の将来観測雨量データも抽出し、
前記水位予測モデルに前記検証用データとして、前記水位予測地点での当該複数時刻の水位を検証するための前記水位データ、前記過去観測雨量データ及び前記将来観測雨量データを入力し、前記水位予測地点での水位の予測誤差の確率分布を算出し、前記水位予測的中率算出ステップでの観測水位データに対する予測水位データの誤差幅を設定する水位予測誤差幅設定ステップ、
を前記検証用データ抽出ステップと前記予測水位データ出力ステップとの間に備える
ことを特徴とする、請求項6に記載の水位予測的中率算出方法。
【請求項8】
前記水位予測的中率算出ステップは、前記水位予測地点での水位警戒のための各発令基準毎に、及び/又は、前記予測水位データ出力ステップでの予測出力時刻から各予測対象時刻までの各期間長さ毎に、前記水位予測地点での水位の予測的中率を算出する
ことを特徴とする、請求項6又は7に記載の水位予測的中率算出方法。
【請求項9】
前記水位予測的中率算出ステップは、前記水位データ、前記過去観測雨量データ及び前記予報雨量データに基づく前記水位予測地点での予測対象時刻の水位の予測時に、前記水位予測地点での当該予測対象時刻の予測水位データとともに、前記水位予測地点での水位の予測的中率を出力する
ことを特徴とする、請求項6又は7に記載の水位予測的中率算出方法。
【請求項10】
請求項6又は7に記載の水位予測的中率算出方法が順に備える各処理ステップを、コンピュータに順に実行させるための水位予測的中率算出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、機械学習を用いて、河川等の水位を予測する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
機械学習を用いて、河川等の水位を予測する技術が、特許文献1等に開示されている。訓練段階では、水位学習のための訓練用データを用いて、ニューラルネットワーク等の水位予測モデルを構築する。検証段階では、水位予測モデルの検証のための検証用データを水位予測モデルに入力し、水位予測モデルの汎化性能を評価する。予測段階では、水位予測のためのテストデータを水位予測モデルに入力し、河川等の水位を予測する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、水位予測地点でのある時刻の高水位(特に、避難勧告等の発令基準となる水位ピーク付近)の学習に必要な訓練用データとして、水位予測地点又は水位予測地点より上流での当該時刻より過去の水位データのうち、水位ピーク抽出閾値以上の水位データを抽出し、水位ピーク抽出閾値未満の水位データを棄却する。
【0005】
つまり、水位変動時の水位データは、全水位データのうちの一部分しか占めないところ、水位ピーク付近の水位の学習に必要となるため、訓練用データとして抽出される。一方で、水位不変動時の水位データは、全水位データのうちの大部分を占めるところ、水位ピーク付近の水位の学習で雑音となるため、訓練用データとして棄却される。
【0006】
従来技術の訓練用データの抽出処理を
図1に示す。訓練用データ期間において、水位ピーク抽出閾値以上の水位データは抽出されるが、水位ピーク抽出閾値未満の水位データは棄却される。訓練用データ期間からテストデータ期間への遷移期間において、河川等の経年変化又は改修工事等によって、川底等の高さの変化が起こることがある。テストデータ期間において、高水位(特に、水位ピーク付近)の実水位に対する予測水位の誤差は小さいが、低水位(特に、水位定常状態)の実水位に対する予測水位の誤差は大きい。
【0007】
そこで、前記課題を解決するために、本開示は、機械学習を用いて、河川等の高水位(特に、水位ピーク付近)を高精度に予測するとともに、河川等の低水位(特に、水位定常状態)を高精度に予測するように、訓練用データを適切に抽出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、水位予測地点でのある時刻の高水位(特に、避難勧告等の発令基準となる水位ピーク付近)の学習に必要な訓練用データとして、水位変動時の水位データを抽出する。一方で、水位予測地点でのある時刻の低水位(特に、水位定常状態)の学習に必要な訓練用データとして、水位変動時の直前及び直後の水位不変動時の水位データを抽出し、水位変動時の直前及び直後以外の水位不変動時の水位データを棄却する。
【0009】
具体的には、本開示は、水位予測地点でのある時刻の水位の学習に必要な訓練用データとして、前記水位予測地点又は前記水位予測地点より上流での当該時刻より過去の水位データのうち、水位変動時並びに水位変動時の直前及び直後の水位不変動時の水位データを抽出し、水位変動時の直前及び直後以外の水位不変動時の水位データを棄却する訓練用データ抽出ステップと、前記訓練用データを用いて、水位予測モデルを構築するモデル構築ステップと、を順に備えることを特徴とする水位予測モデル構築方法である。
【0010】
この構成によれば、機械学習を用いて、河川等の高水位(特に、水位ピーク付近)を高精度に予測するとともに、河川等の低水位(特に、水位定常状態)を高精度に予測するように、訓練用データを適切に抽出又は棄却することができる。
【0011】
また、本開示は、前記水位予測モデルの検証のための検証用データを、水位ピーク時の前後の様々な長さの期間の水位データを用いて構築された複数の前記水位予測モデルに入力し、水位予測誤差が最も小さい一つの前記水位予測モデルを選定するモデル選定ステップ、をさらに備えることを特徴とする水位予測モデル構築方法である。
【0012】
この構成によれば、様々な長さの期間にわたり抽出された複数の訓練用データを用いて構築された複数の水位予測モデルから、最適な水位予測モデルを選定することができる。
【0013】
また、本開示は、以上に記載の水位予測モデル構築方法が備える各処理ステップを、順にコンピュータに実行させるための水位予測モデル構築プログラムである。
【0014】
この構成によれば、以上に記載の効果を有するプログラムを提供することができる。
【0015】
また、本開示は、水位予測のためのテストデータを、以上に記載の前記水位予測モデルに入力し、予測水位データを出力する予測水位データ出力ステップ、を備えることを特徴とする予測水位データ出力方法である。
【0016】
この構成によれば、適切に抽出又は棄却された訓練用データを用いて構築された水位予測モデルによって、河川等の高水位(特に、水位ピーク付近)を高精度に予測するとともに、河川等の低水位(特に、水位定常状態)を高精度に予測することができる。
【0017】
また、本開示は、以上に記載の予測水位データ出力方法が備える前記予測水位データ出力ステップを、コンピュータに実行させるための予測水位データ出力プログラムである。
【0018】
この構成によれば、以上に記載の効果を有するプログラムを提供することができる。
【0019】
実運用上、テストデータとして、水位データ、「過去観測」雨量データ及び「予報」雨量データを抽出する。しかし、「予報」雨量データは、「将来観測」雨量データと比べて、精度が低いため、「予測」水位データは、「観測」水位データと比べて、大きく外れることがある。
【0020】
前記課題を解決するために、検証段階では、検証用データとして、水位データ、「過去観測」雨量データ及び「将来観測」雨量データを抽出し、水位の予測誤差の確率分布を算出し、観測水位データに対する予測水位データの誤差幅を設定する。そして、検証用データとして、「将来観測」雨量データを「予報」雨量データに置き換え、予測水位データのうちの観測水位データの周りの誤差幅内に収まるものの割合を、水位の予測的中率として算出する。
【0021】
予測段階では、テストデータとして、実運用上は水位データ、「過去観測」雨量データ及び「予報」雨量データを抽出し、予測水位データとともに、水位の予測的中率を出力する。ここで、各発令基準毎に、及び/又は、各N時間後予測毎に、水位の予測的中率を出力する。
【0022】
具体的には、本開示は、以上に記載の水位予測モデル構築方法が構築した前記水位予測モデルの検証のための検証用データとして、前記水位データ及び前記水位データが抽出される期間における過去観測雨量データと、検証対象時刻より将来の予報雨量データと、を抽出する検証用データ抽出ステップと、前記水位予測モデルに前記検証用データとして、前記水位予測地点での複数時刻の水位を検証するための前記水位データ、前記過去観測雨量データ及び前記予報雨量データを入力し、前記水位予測地点での当該複数時刻の予測水位データを出力する予測水位データ出力ステップと、前記水位予測地点での当該複数時刻の予測水位データのうちの、前記水位予測地点での当該複数時刻の観測水位データの周りの誤差幅内に収まるものの割合を、前記水位予測地点での水位の予測的中率として算出する水位予測的中率算出ステップと、を順に備えることを特徴とする水位予測的中率算出方法である。
【0023】
この構成によれば、機械学習を用いて、河川等の水位を予測するにあたり、テストデータとして、「予報」雨量データを抽出するときでも、検証段階において、水位の予測的中率を算出することにより、予測水位データの信頼性を可視化することができる。
【0024】
また、本開示は、前記検証用データ抽出ステップは、前記検証用データとして、当該検証対象時刻より将来の将来観測雨量データも抽出し、前記水位予測モデルに前記検証用データとして、前記水位予測地点での当該複数時刻の水位を検証するための前記水位データ、前記過去観測雨量データ及び前記将来観測雨量データを入力し、前記水位予測地点での水位の予測誤差の確率分布を算出し、前記水位予測的中率算出ステップでの観測水位データに対する予測水位データの誤差幅を設定する水位予測誤差幅設定ステップ、を前記検証用データ抽出ステップと前記予測水位データ出力ステップとの間に備えることを特徴とする水位予測的中率算出方法である。
【0025】
この構成によれば、機械学習を用いて、河川等の水位を予測するにあたり、検証段階において、水位の予測誤差の確率分布を算出し、観測水位データに対する予測水位データの誤差幅を設定し、水位の予測的中率を算出することができる。
【0026】
また、本開示は、前記水位予測的中率算出ステップは、前記水位予測地点での水位警戒のための各発令基準毎に、及び/又は、前記予測水位データ出力ステップでの予測出力時刻から各予測対象時刻までの各期間長さ毎に、前記水位予測地点での水位の予測的中率を算出することを特徴とする水位予測的中率算出方法である。
【0027】
この構成によれば、機械学習を用いて、河川等の水位を予測するにあたり、テストデータとして、「予報」雨量データを抽出するときでも、検証段階において、水位の予測的中率を算出することにより、各発令基準の到達判断を支援することができる。
【0028】
また、本開示は、前記水位予測的中率算出ステップは、前記水位データ、前記過去観測雨量データ及び前記予報雨量データに基づく前記水位予測地点での予測対象時刻の水位の予測時に、前記水位予測地点での当該予測対象時刻の予測水位データとともに、前記水位予測地点での水位の予測的中率を出力することを特徴とする水位予測的中率算出方法である。
【0029】
この構成によれば、機械学習を用いて、河川等の水位を予測するにあたり、テストデータとして、「予報」雨量データを抽出するときでも、予測段階において、水位の予測的中率を出力することにより、予測水位データの信頼性を可視化することができる。
【0030】
また、本開示は、以上に記載の水位予測的中率算出方法が順に備える各処理ステップを、コンピュータに順に実行させるための水位予測的中率算出プログラムである。
【0031】
この構成によれば、以上に記載の効果を有するプログラムを提供することができる。
【0032】
なお、上記各開示の発明は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0033】
このように、本開示は、機械学習を用いて、河川等の高水位(特に、水位ピーク付近)を高精度に予測するとともに、河川等の低水位(特に、水位定常状態)を高精度に予測するように、訓練用データを適切に抽出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】従来技術の訓練用データの抽出処理を示す図である。
【
図2】本開示の水位予測装置の構成を示す図である。
【
図3】本開示の水位予測処理の手順を示す図である。
【
図4】本開示の訓練用データの抽出処理を示す図である。
【
図5】本開示の水位予測モデルの選定処理を示す図である。
【
図6】本開示の水位予測モデルの選定処理を示す図である。
【
図7】本開示の水位予測処理の実例を示す図である。
【
図8】本開示の水位予測装置の構成を示す図である。
【
図9】本開示の水位予測的中率算出処理の手順を示す図である。
【
図10】本開示の水位予測誤差幅設定処理の具体例を示す図である。
【
図11】本開示の水位予測的中率算出処理の具体例を示す図である。
【
図12】本開示の水位予測的中率出力処理の実例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
添付の図面を参照して本開示の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本開示の実施の例であり、本開示は以下の実施形態に制限されるものではない。
【0036】
(本開示の水位予測装置の構成)
本開示の水位予測装置の構成を
図2に示す。本開示の水位予測処理の手順を
図3に示す。水位予測装置Wは、水位予測モデルM1、・・・、Mn(最適な水位予測モデルを選定)、訓練用データ抽出部1、モデル構築部2、モデル選定部3及び予測水位データ出力部4を備え、
図3の水位予測プログラムをコンピュータにインストールし実現可能である。
【0037】
訓練用データ抽出部1は、水位予測地点でのある時刻の高水位(特に、避難勧告等の発令基準となる水位ピーク付近)の学習に必要な訓練用データL1、・・・、Ln(最適な訓練用データを選定)として、水位予測地点又は水位予測地点より上流での当該時刻より過去の水位データWLのうち、水位変動時の水位データWLを抽出する(ステップS1)。
【0038】
訓練用データ抽出部1は、水位予測地点でのある時刻の低水位(特に、水位定常状態)の学習に必要な訓練用データL1、・・・、Ln(最適な訓練用データを選定)として、水位予測地点又は水位予測地点より上流での当該時刻より過去の水位データWLのうち、水位変動時の直前及び直後の水位不変動時の水位データWLを抽出し(ステップS1)、水位変動時の直前及び直後以外の水位不変動時の水位データWLを棄却する(ステップS2)。
【0039】
つまり、水位変動時の水位データWLは、全水位データWLのうちの一部分しか占めないところ、水位ピーク付近の水位の学習に必要となるため、訓練用データL1、・・・、Lnとして抽出される。一方で、水位変動時の直前及び直後の水位不変動時の水位データWLは、全水位データWLのうちの一部分しか占めないところ、水位定常状態の水位の学習に必要となるため、訓練用データL1、・・・、Lnとして抽出される。ただし、水位変動時の直前及び直後以外の水位不変動時の水位データWLは、全水位データWLのうちの大部分を占めるところ、水位定常状態の水位の学習を高精度にするものの、水位ピーク付近の水位の学習で雑音となるため、訓練用データL1、・・・、Lnとして棄却される。
【0040】
なお、訓練用データ抽出部1は、水位予測地点でのある時刻の高水位の学習に必要な訓練用データL1、・・・、Lnとして、水位予測地点又は水位予測地点より上流での当該時刻より過去の雨量データRFのうち、水位変動時の雨量データRFを抽出してもよい(ステップS1)。また、訓練用データ抽出部1は、水位予測地点でのある時刻の低水位の学習に必要な訓練用データL1、・・・、Lnとして、水位予測地点又は水位予測地点より上流での当該時刻より過去の雨量データRFのうち、水位変動時の直前及び直後の水位不変動時の雨量データRFを抽出してもよく(ステップS1)、水位変動時の直前及び直後以外の水位不変動時の雨量データRFを棄却してもよい(ステップS2)。以下では、訓練用データ抽出部1が水位データWLを抽出・棄却する場合を説明するが、訓練用データ抽出部1が水位データWL及び雨量データRFを抽出・棄却する場合も同様である。
【0041】
モデル構築部2は、訓練用データL1、・・・、Lnを用いて、水位予測モデルM1、・・・、Mnを構築する(ステップS3)。モデル選定部3は、水位予測モデルM1、・・・、Mnの検証のための検証用データVを、訓練用データL1、・・・、Lnを用いて構築された水位予測モデルM1、・・・、Mnに入力し、水位予測誤差が最も小さい一つの水位予測モデル(例えば、M1等)を選定する(ステップS4)。予測水位データ出力部4は、水位予測のためのテストデータTを、水位予測誤差が最も小さい一つの水位予測モデル(例えば、M1等)に入力し、予測水位データPを出力する(ステップS5)。
【0042】
(本開示の訓練用データの抽出処理)
本開示の訓練用データの抽出処理を
図4に示す。訓練用データ期間において、水位変動時の水位データWL並びに水位変動時の直前及び直後の水位不変動時の水位データWLは抽出されるが、水位変動時の直前及び直後以外の水位不変動時の水位データWLは棄却される。訓練用データ期間からテストデータ期間への遷移期間において、河川等の経年変化又は改修工事等によって、川底等の高さの変化が起こることがある。テストデータ期間において、高水位(特に、水位ピーク付近)の実水位に対する予測水位の誤差は小さいし、低水位(特に、水位定常状態)の実水位に対する予測水位の誤差も小さい。
【0043】
ここで、水位変動時の水位データWL並びに水位変動時の直前及び直後の水位不変動時の水位データWLは、水位定常状態から始まり水位上昇状態及び水位下降状態を経て水位定常状態へと戻る、水位の数日程度の一連の変化を示す水位データWLであればよい。
【0044】
このように、機械学習を用いて、河川等の高水位(特に、水位ピーク付近)を高精度に予測するとともに、河川等の低水位(特に、水位定常状態)を高精度に予測するように、訓練用データL1、・・・、Lnを適切に抽出又は棄却することができる。そして、適切に抽出又は棄却された訓練用データL1、・・・、Lnを用いて構築された水位予測モデルM1、・・・、Mnによって、河川等の高水位(特に、水位ピーク付近)を高精度に予測するとともに、河川等の低水位(特に、水位定常状態)を高精度に予測することができる。
【0045】
(本開示の水位予測モデルの選定処理)
本開示の水位予測モデルの選定処理を
図5、6に示す。モデル構築部2は、水位ピーク時の前後の様々な長さの期間の水位データWLを用いて、水位予測モデルM1、・・・、Mnを構築する(ステップS3)。モデル選定部3は、水位予測モデルM1、・・・、Mnの検証のための検証用データVを、水位ピーク時の前後の様々な長さの期間の水位データWLを用いて構築された水位予測モデルM1、・・・、Mnに入力し、水位予測誤差が最も小さい一つの水位予測モデル(例えば、M1等)を選定する(ステップS4)。
【0046】
図5の上段では、水位ピーク時の前後の短い期間の水位データWLが抽出され、水位変動時の直前及び直後の水位不変動時の水位データWLが抽出されない。よって、高水位(特に、水位ピーク付近)の実水位に対する予測水位の誤差は小さいが、低水位(特に、水位定常状態)の実水位に対する予測水位の誤差は大きく、高水位及び低水位を合わせて全体的には実水位に対する予測水位の誤差は大きい。そして、水位ピーク時の前後の短い期間の水位データWLを用いて構築された水位予測モデルは棄却される。
【0047】
図5の中段では、水位ピーク時の前後の中程度の期間の水位データWLが抽出され、水位変動時の直前及び直後の水位不変動時の水位データWLが抽出される。よって、高水位(特に、水位ピーク付近)の実水位に対する予測水位の誤差は中程度であり、低水位(特に、水位定常状態)の実水位に対する予測水位の誤差も中程度であり、高水位及び低水位を合わせて全体的には実水位に対する予測水位の誤差は小さい。そして、水位ピーク時の前後の中程度の期間の水位データWLを用いて構築された水位予測モデルは選定される。
【0048】
図5の下段では、水位ピーク時の前後の長い期間の水位データWLが抽出され、水位変動時の直前及び直後以外の水位不変動時の水位データWLも抽出される。よって、低水位(特に、水位定常状態)の実水位に対する予測水位の誤差は小さいが、高水位(特に、水位ピーク付近)の実水位に対する予測水位の誤差は大きく、高水位及び低水位を合わせて全体的には実水位に対する予測水位の誤差は大きい。そして、水位ピーク時の前後の長い期間の水位データWLを用いて構築された水位予測モデルは棄却される。
【0049】
図6の上段では、河川R1において、水位定常状態から始まり水位上昇状態及び水位下降状態を経て水位定常状態へと戻る、水位の一連の変化が長い期間に及ぶ。そこで、水位ピーク時の前後の長い期間の水位データWLが抽出されるが、水位変動時の直前及び直後の水位不変動時の水位データWLは抽出され、水位変動時の直前及び直後以外の水位不変動時の水位データWLは抽出されない。そして、河川R1について、水位ピーク時の前後の長い期間の水位データWLを用いて構築された水位予測モデルが選定される。
【0050】
図6の中段では、河川R2において、水位定常状態から始まり水位上昇状態及び水位下降状態を経て水位定常状態へと戻る、水位の一連の変化が中程度の期間に及ぶ。そこで、水位ピーク時の前後の中程度の期間の水位データWLが抽出されるが、水位変動時の直前及び直後の水位不変動時の水位データWLは抽出され、水位変動時の直前及び直後以外の水位不変動時の水位データWLは抽出されない。そして、河川R2について、水位ピーク時の前後の中程度の期間の水位データWLを用いて構築された水位予測モデルが選定される。
【0051】
図6の下段では、河川R3において、水位定常状態から始まり水位上昇状態及び水位下降状態を経て水位定常状態へと戻る、水位の一連の変化が短い期間で終わる。そこで、水位ピーク時の前後の短い期間の水位データWLが抽出されるが、水位変動時の直前及び直後の水位不変動時の水位データWLは抽出され、水位変動時の直前及び直後以外の水位不変動時の水位データWLは抽出されない。そして、河川R3について、水位ピーク時の前後の短い期間の水位データWLを用いて構築された水位予測モデルが選定される。
【0052】
このように、様々な長さの期間にわたり抽出された複数の訓練用データL1、・・・、Lnを用いて構築された複数の水位予測モデルM1、・・・、Mnから、最適な水位予測モデル(例えば、M1等)を河川等毎に自動的に選定することができる。
【0053】
(本開示の水位予測処理の実例)
本開示の水位予測処理の実例を
図7に示す。実水位の一連の変化は、1日目の水位定常状態から始まり、2日目の始めからの急激な水位上昇状態を経て、2日目の終わりまでの緩慢な水位下降状態を経て、3日目の水位定常状態へと戻る。
【0054】
従来技術では、高水位(特に、水位ピーク付近)の実水位に対する予測水位の誤差は、水位の上振れを優先するモデルが選定されているため、大きくなっている。一方で、低水位(特に、水位定常状態)の実水位に対する予測水位の誤差は、水位変動時の直前及び直後の水位不変動時の水位データWLが訓練時に抽出されていないため、大きくなっている。
【0055】
本開示では、高水位(特に、水位ピーク付近)の実水位に対する予測水位の誤差は、水位の上振れを優先する効果が希釈されているため、小さくなっている。一方で、低水位(特に、水位定常状態)の実水位に対する予測水位の誤差は、水位変動時の直前及び直後の水位不変動時の水位データWLが訓練時に抽出されているため、小さくなっている。
【0056】
ここで、水位変動時の水位データWL並びに水位変動時の直前及び直後の水位不変動時の水位データWLは、水位ピーク時の以前の短めの期間(半日程度)の水位データWLと、水位ピーク時の以後の長めの期間(数日程度)の水位データWLと、を組み合わせればよい。
【0057】
(本開示の水位予測装置の構成)
本開示の水位予測装置の構成を
図8に示す。本開示の水位予測的中率算出処理の手順を
図9に示す。水位予測装置Wは、
図2に加えて、検証用データ抽出部5、水位予測誤差幅設定部6、水位予測的中率算出部7及びテストデータ抽出部8を備える。検証用データ抽出部5、水位予測誤差幅設定部6及び水位予測的中率算出部7は、
図9に示した水位予測的中率算出プログラムを、コンピュータにインストールし実現することができる。
【0058】
訓練用データ抽出部1(
図8に不図示)は、水位予測地点でのある時刻の水位の学習に必要な訓練用データとして、水位予測地点及び水位予測地点より上流地点のうちの少なくともいずれかでの、当該時刻及び当該時刻より過去のうちの少なくともいずれかの水位データWL及び過去の観測雨量データROと、当該時刻より将来の観測雨量データROと、を抽出する。ここで、訓練用データ抽出部1は、水位変動時等の水位データWL、過去の観測雨量データRO及び将来の観測雨量データROを抽出してもよく、水位変動時の直前及び直後の水位不変動時等の水位データWL、過去の観測雨量データRO及び将来の観測雨量データROを抽出してもよい。モデル構築部2は、訓練用データを用いて、水位予測モデルMを構築する。
【0059】
テストデータ抽出部8は、水位予測地点でのある時刻の水位の予測に必要なテストデータTとして、水位予測地点及び水位予測地点より上流地点のうちの少なくともいずれかでの、当該時刻及び当該時刻より過去のうちの少なくともいずれかの水位データWL及び過去の観測雨量データROと、当該時刻より将来の予報雨量データRPと、を抽出する。ここで、テストデータ抽出部8は、実運用上、将来の観測雨量データROを抽出しないで、予報雨量データRPを抽出している。予測水位データ出力部4は、水位予測モデルMを用いて、予測水位データPを出力する。
【0060】
しかし、「予報」雨量データRPは、「将来の観測」雨量データROと比べて、精度が低いため、「予測」水位データPは、「観測」水位データと比べて、大きく外れることがある。そこで、本開示では、「予測」水位データPの信頼性を可視化する。
【0061】
検証段階では、検証用データVとして、水位データWL、「過去の観測」雨量データRO及び「将来の観測」雨量データROを抽出し、水位の予測誤差確率分布Eを算出し、観測水位データに対する予測水位データPの誤差幅を設定する。そして、検証用データVとして、「将来の観測」雨量データROを「予報」雨量データRPに置き換え、予測水位データPのうちの観測水位データの周りの誤差幅内に収まるものの割合を、水位予測的中率Hとして算出する。
【0062】
予測段階では、テストデータTとして、実運用上は水位データWL、「過去の観測」雨量データRO及び「予報」雨量データRPを抽出し、予測水位データPとともに、水位予測的中率Hを出力する。ここで、各発令基準毎に、及び/又は、各N時間後予測毎に、水位予測的中率Hを出力する。
【0063】
ここで、訓練用データは、水位学習のための既知のデータであり、水位予測的中率Hをほぼ100%とするため、水位予測的中率Hの算出に適用することができない。そして、テストデータTは、水位予測のための未知のデータであるが、特定の降雨の状況に特化したデータであるため、水位予測的中率Hの算出に適用することができない。一方で、検証用データVは、水位予測モデルMの検証のための未知のデータであり、特定の降雨の状況に特化しないデータであるため、水位予測的中率Hの算出に適用することができる。
【0064】
(本開示の水位予測誤差幅設定処理の具体例)
本開示の水位予測誤差幅設定処理の具体例を
図10に示す。検証用データ抽出部5は、本開示の水位予測モデル構築処理で構築した水位予測モデルMの検証のための検証用データVとして、水位データWL及び水位データWLが抽出される期間における過去の観測雨量データROと、検証対象時刻より将来の観測雨量データROと、を抽出する(ステップS11)。ここで、検証用データ抽出部5は、水位変動時等の水位データWL、過去の観測雨量データRO及び将来の観測雨量データROを抽出してもよく、水位変動時の直前及び直後の水位不変動時等の水位データWL、過去の観測雨量データRO及び将来の観測雨量データROを抽出してもよく、水位予測誤差幅設定処理では、予報雨量データRPを抽出していない。
【0065】
検証用データ抽出部5は、水位予測モデルMに検証用データVとして、水位予測地点での複数時刻の水位を検証するための水位データWL、過去の観測雨量データRO及び将来の観測雨量データROを入力する(ステップS12)。そして、水位予測誤差幅設定部6は、水位予測地点での水位の予測誤差確率分布Eを算出し、水位予測的中率算出ステップS15での観測水位データに対する予測水位データPの誤差幅を設定する(ステップS13)。ここで、水位予測誤差幅設定部6は、水位予測地点での水位警戒のための各発令基準毎に、及び/又は、予測水位データ出力ステップS12での予測出力時刻から各予測対象時刻までの各期間長さ毎に、予測誤差確率分布Eを算出し、予測水位データPの誤差幅を設定する(ステップS13)。
【0066】
図10の「各N時間後の予測誤差」の欄では、0m以上発令基準水位A未満の観測水位と、発令基準水位A以上発令基準水位B未満の観測水位と、発令基準水位B以上の観測水位と、について、水位予測地点での水位の予測誤差確率分布Eが算出される。
図10の「各N時間後の誤差幅」の欄では、0m以上発令基準水位A未満の観測水位と、発令基準水位A以上発令基準水位B未満の観測水位と、発令基準水位B以上の観測水位と、について、予測誤差確率分布Eのうちの、e
lоw-min以上e
lоw-max以下と、e
mid-min以上e
mid-max以下と、e
high-min以上e
high-max以下と、が誤差幅内となるように、観測水位データに対する予測水位データPの誤差幅が設定される。ここで、予測誤差確率分布Eの最小値及び最大値を0%及び100%として、0.1%≦e
high-min≦e
mid-min≦e
lоw-min≦20%と、80%≦e
lоw-max≦e
mid-max≦e
high-max≦99.9%と、が満たされる。つまり、予測水位データPの誤差幅は、高水位ほど広く設定され、低水位ほど狭く設定され、中水位では中間に設定される。予測水位データPの誤差幅の上振れ幅及び下振れ幅は、予測誤差確率分布Eの分布形状に応じて、等しくてもよく異なってもよい。
【0067】
なお、ehigh-min、emid-min、elоw-min、elоw-max、emid-max、ehigh-maxは、暫定的には以上のように設定されるが、最終的には以下のように設定される。まず、水位予測モデルMにテストデータとして、水位データ及び解析雨量データ(レーダを雨量計で補間)が入力される。次に、高水位、低水位及び中水位のそれぞれについて、予測水位データのうちの80%以上が、予測水位データの誤差幅内に収まるように、ehigh-min、emid-min、elоw-min、elоw-max、emid-max、ehigh-maxが設定される。
【0068】
このように、機械学習を用いて、河川等の水位を予測するにあたり、検証段階において、水位の予測誤差確率分布Eを算出し、観測水位データに対する予測水位データPの誤差幅を設定し、水位予測的中率Hを算出する準備をすることができる。
【0069】
そして、機械学習を用いて、河川等の水位を予測するにあたり、テストデータTとして、「予報」雨量データRPを抽出するときでも、検証段階において、水位予測的中率Hを算出する準備をすることにより、各発令基準の到達判断を支援する準備ができる。
【0070】
(本開示の水位予測的中率算出処理の具体例)
本開示の水位予測的中率算出処理の具体例を
図11に示す。検証用データ抽出部5は、本開示の水位予測モデル構築処理で構築した水位予測モデルMの検証のための検証用データVとして、水位データWL及び水位データWLが抽出される期間における過去の観測雨量データROと、検証対象時刻より将来の予報雨量データRPと、を抽出する(ステップS11)。ここで、検証用データ抽出部5は、水位変動時等の水位データWL、過去の観測雨量データRO及び予報雨量データRPを抽出してもよく、水位変動時の直前及び直後の水位不変動時等の水位データWL、過去の観測雨量データRO及び予報雨量データRPを抽出してもよく、水位予測的中率算出処理では、将来の観測雨量データROを抽出していない。
【0071】
検証用データ抽出部5は、水位予測モデルMに検証用データVとして、水位予測地点での複数時刻の水位を検証するための水位データWL、過去の観測雨量データRO及び予報雨量データRPを入力する(ステップS14)。そして、水位予測モデルMは、水位予測地点での当該複数時刻の予測水位データPを出力する。さらに、水位予測的中率算出部7は、水位予測地点での当該複数時刻の予測水位データPのうちの、水位予測地点での当該複数時刻の観測水位データの周りの誤差幅内に収まるものの割合を、水位予測地点での水位予測的中率Hとして算出する(ステップS15)。ここで、水位予測的中率算出部7は、水位予測地点での水位警戒のための各発令基準毎に、及び/又は、予測水位データ出力ステップS14での予測出力時刻から各予測対象時刻までの各期間長さ毎に、水位予測的中率Hを算出する(ステップS15)。
【0072】
図11の「各N時間後の予測データ」の欄では、0m以上発令基準水位A未満の観測水位と、発令基準水位A以上発令基準水位B未満の観測水位と、発令基準水位B以上の観測水位と、について、水位予測地点での当該複数時刻の予測水位データPが出力される。0m以上発令基準水位A未満の観測水位について、誤差幅内に収まるデータは80個であり、誤差幅を下回るデータは10個であり、誤差幅を上回るデータは10個である。発令基準水位A以上発令基準水位B未満の観測水位について、誤差幅内に収まるデータは30個であり、誤差幅を下回るデータは15個であり、誤差幅を上回るデータは15個である。発令基準水位B以上の観測水位について、誤差幅内に収まるデータは10個であり、誤差幅を下回るデータは10個であり、誤差幅を上回るデータは10個である。
【0073】
図11の「各N時間後の予測的中率」の欄では、0m以上発令基準水位A未満の観測水位と、発令基準水位A以上発令基準水位B未満の観測水位と、発令基準水位B以上の観測水位と、について、水位予測地点での水位予測的中率Hが算出される。0m以上発令基準水位A未満の観測水位について、水位予測的中率は80/(80+10+10)×100=80%である。発令基準水位A以上発令基準水位B未満の観測水位について、水位予測的中率は30/(30+15+15)×100=50%である。発令基準水位B以上の観測水位について、水位予測的中率は10/(10+10+10)×100=33%である。
【0074】
なお、テストデータTが蓄積されたとしても、水位予測モデルMは更新されないため、水位予測的中率Hは更新の必要がない。また、訓練用データが蓄積されたときには、水位予測モデルMは更新されてもよく、水位予測的中率Hも更新されてもよい。
【0075】
このように、機械学習を用いて、河川等の水位を予測するにあたり、テストデータTとして、「予報」雨量データRPを抽出するときでも、検証段階において、水位予測的中率Hを算出することにより、予測水位データPの信頼性を可視化することができる。
【0076】
そして、機械学習を用いて、河川等の水位を予測するにあたり、テストデータTとして、「予報」雨量データRPを抽出するときでも、検証段階において、水位予測的中率Hを算出することにより、各発令基準の到達判断を支援することができる。
【0077】
(本開示の水位予測的中率出力処理の実例)
本開示の水位予測的中率出力処理の実例を
図12に示す。水位予測的中率算出部7は、水位データWL、過去の観測雨量データRO及び予報雨量データRPに基づく水位予測地点での予測対象時刻の水位の予測時に、水位予測地点での当該予測対象時刻の予測水位データPとともに、水位予測地点での水位予測的中率Hを出力する(ステップS16)。ここで、水位予測的中率算出部7は、水位予測地点での水位警戒のための各発令基準毎に、及び/又は、予測出力時刻から各予測対象時刻までの各期間長さ毎に、水位予測的中率Hを出力する(ステップS16)。
【0078】
図12では、発令基準水位として、L
0、L
1、L
2、L
3、L
4、L
5が設定される。検証段階では、発令基準水位L
0~L
1、L
1~L
2、L
2~L
3、L
3~L
4、L
4~L
5の観測水位について、水位予測的中率はそれぞれH
01%、H
12%、H
23%、H
34%、H
45%と算出される。予測段階では、1日目の12時頃、2日目の14時頃、3日目の8時頃、4日目の12時頃の予測水位(6時間後予測)について、水位予測的中率はそれぞれH
01%(的中)、H
23%(はずれ)、H
45%(的中)、H
01%(的中)と出力される。
【0079】
このように、機械学習を用いて、河川等の水位を予測するにあたり、テストデータTとして、「予報」雨量データRPを抽出するときでも、予測段階において、水位予測的中率Hを出力することにより、予測水位データPの信頼性を可視化することができる。
【0080】
そして、機械学習を用いて、河川等の水位を予測するにあたり、テストデータTとして、「予報」雨量データRPを抽出するときでも、予測段階において、水位予測的中率Hを出力することにより、各発令基準の到達判断を支援することができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本開示の水位予測モデル構築方法、水位予測モデル構築プログラム、予測水位データ出力方法及び予測水位データ出力プログラムは、機械学習を用いて、河川等の高水位(特に、水位ピーク付近)を高精度に予測するとともに、河川等の低水位(特に、水位定常状態)を高精度に予測するように、訓練用データを適切に抽出することができる。
【符号の説明】
【0082】
W:水位予測装置
M1、Mn、M:水位予測モデル
1:訓練用データ抽出部
2:モデル構築部
3:モデル選定部
4:予測水位データ出力部
5:検証用データ抽出部
6:水位予測誤差幅設定部
7:水位予測的中率算出部
8:テストデータ抽出部
WL:水位データ
RF:雨量データ
RО:観測雨量データ
RP:予報雨量データ
L1、Ln:訓練用データ
V:検証用データ
T:テストデータ
E:予測誤差確率分布
P:予測水位データ
H:水位予測的中率