(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144265
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】アウターシース付きステント、ステントデリバリー装置及びアウターシース付きステント製造方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/07 20130101AFI20241003BHJP
A61F 2/962 20130101ALI20241003BHJP
【FI】
A61F2/07
A61F2/962
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024046134
(22)【出願日】2024-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2023051195
(32)【優先日】2023-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000200035
【氏名又は名称】SBカワスミ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】玉井 裕介
【テーマコード(参考)】
4C097
4C267
【Fターム(参考)】
4C097AA15
4C097BB01
4C097BB04
4C097CC01
4C097CC02
4C097CC11
4C097DD01
4C097DD10
4C097EE06
4C097MM02
4C267AA05
4C267AA45
4C267AA53
4C267AA56
4C267BB02
4C267BB19
4C267BB26
4C267EE03
4C267GG04
4C267GG07
4C267GG24
4C267GG32
4C267GG43
(57)【要約】
【課題】ステントがシースで覆われた状態の外径を細径化することが可能なアウターシース付きステント、ステントデリバリー装置及びアウターシース付きステント製造方法を提供する。
【解決手段】アウターシース付きステント1は、径方向に拡縮可能なステント10と、ステント10の収縮状態にて当該ステント10の周方向に巻かれた帯状のアウターシース11と、周方向におけるアウターシース11の両縁部11aの少なくとも一方を縫合するストリング12と、を備える。ステント10の少なくとも一部分は、ストリング12の一部分により緊縛されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
径方向に拡縮可能なステントと、
前記ステントの収縮状態にて当該ステントの周方向に巻かれた帯状のアウターシースと、
前記周方向における前記アウターシースの両縁部の少なくとも一方を縫合するストリングと、
を備え、
前記ステントの少なくとも一部分は、前記ストリングの一部分により緊縛されていることを特徴とするアウターシース付きステント。
【請求項2】
前記ステントは、前記ストリングにより、軸方向の一端部側のみ緊縛されている請求項1に記載のアウターシース付きステント。
【請求項3】
前記ストリングは、牽引されたときに、前記軸方向の前記一端部側から解かれ始めるように、前記アウターシースに対して縫合されている請求項2に記載のアウターシース付きステント。
【請求項4】
一連の前記ストリングの一部分ずつが、前記ステントを緊縛している緊縛部と、前記アウターシースの前記両縁部の少なくとも一方を縫合している縫合部と、を形成しており、
前記ストリングにおける前記緊縛部と前記縫合部との間の部分が前記アウターシースを貫通している請求項3に記載のアウターシース付きステント。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のアウターシース付きステントと、
該アウターシース付きステントをデリバリーするデリバリー部と、を備えることを特徴とするステントデリバリー装置。
【請求項6】
径方向に拡縮可能なステントと、前記ステントの収縮状態にて当該ステントの周囲に巻かれる帯状のアウターシースと、前記ステントの周方向における前記アウターシースの両縁部の少なくとも一方を縫合するストリングと、を用意する工程と、
前記ストリングを前記アウターシースに縫合する縫合工程と、
を備え、
前記縫合工程には、前記ステントの少なくとも一部分を前記ストリングの一部分により緊縛する緊縛工程が含まれていることを特徴とするアウターシース付きステント製造方法。
【請求項7】
前記緊縛工程は、前記ストリングの一端と他端との間に少なくとも1以上の仮止め部を形成する仮止め工程を更に備え、
該仮止め工程において、
前記ストリングに第1ループを形成し、
該第1ループを前記ステントに沿わせ、前記ストリングにおける前記第1ループよりも前記他端側の部位に第2ループを形成し、該第2ループを、前記ステントの周回方向一方の回りに前記第1ループと前記ステントとの間に通し、
前記ストリングにおける前記第2ループよりも前記他端側の部位に第3ループを形成し、
該第3ループを、前記第2ループを通した方向と同じ方向である前記ステントの周回方向一方の回りに、前記第2ループと前記ステントとの間に通して前記仮止め部を形成する、請求項6に記載のアウターシース付きステント製造方法。
【請求項8】
前記仮止め工程では、前記仮止め部を複数形成する請求項7に記載のアウターシース付きステント製造方法。
【請求項9】
前記仮止め工程では、少なくとも1個の前記仮止め部を形成した後に、
前記ストリングにおける前記第3ループよりも前記他端側の部位に第4ループを形成し、該第4ループを、前記ステントの周回方向他方の回りに前記第3ループに通し、
前記第4ループを前記ステントに沿わせ、前記ストリングにおける前記第4ループよりも前記他端側の部位に第5ループを形成し、該第5ループを、前記ステントの周回方向一方の回りに前記第4ループと前記ステントとの間に通し、
前記ストリングにおける前記第5ループよりも前記他端側の部位に第6ループを形成し、
該第6ループを、前記第5ループを通した方向と同じ方向である前記ステントの周回方向一方の回りに、前記第5ループと前記ステントとの間に通して他の仮止め部を形成する請求項8に記載のアウターシース付きステント製造方法。
【請求項10】
前記縫合工程は、
前記緊縛工程の前に、前記周方向における前記アウターシースの片側の縁部の少なくとも一部分を前記ストリングにより縫合する予備工程と、
前記緊縛工程の後に、前記周方向における前記アウターシースの両縁部を前記ストリングにより縫合するメイン工程と、
を更に備える請求項6に記載のアウターシース付きステント製造方法。
【請求項11】
前記予備工程を、前記アウターシースを展開した状態で行う請求項10に記載のアウターシース付きステント製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アウターシース付きステント、アウターシース付きステントを体内に搬送するステントデリバリー装置、及びアウターシース付きステント製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ステントは、生体管腔(血管、消化器管等)内に生じた病変部位(例えば、血管で瘤が生じている部位)等に留置して用いられる。ステントは一般に拡張可能な網目状の小さな金属製の筒として形成されている。ステントとしては、超弾性金属で作製された自己拡張型のステントがある。そのようなステントは、当該ステントの外周を覆うアウターシースがストリングにより縫合されていることによって縮径された状態で病変部位等に搬送された後に、ストリングによるアウターシースの縫合が解かれてアウターシースによるステントの拘束が解除されることによって、拡張する。
【0003】
例えば、特許文献1には、拡張可能なステント(同文献にはインプラントと記載。)と、当該ステントを取り囲むアウターシース(同文献にはスリーブと記載。)と、を備えるステントデリバリー装置(同文献にはカテーテルアッセンブリと記載。)が記載されている。
そして、ステントを拘束するために、アウターシースにストリング(同文献にはカップリング部材と記載。)を縫い込むことが記載されている。
【0004】
このステントデリバリー装置は、体内の目的位置に搬送されたステントの周囲のアウターシースからストリングが解かれることで、ステントの拘束を解除して、ステントを拡張させ、留置させるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ステントデリバリー装置のアウターシース等のシースは、細い生体管腔を通すこともできるように、細径であることが望まれている。
特許文献1に記載のステントデリバリー装置においては、ストリングにより緊縛されたアウターシースがステントを拘束していることにより、ステントの弾性復元力(以下、ラジアルフォースともいう。)が、ストリングとの縫合部においてアウターシースを引き裂く力としてアウターシースに伝播することとなっていた。
【0007】
したがって、アウターシースが意図せず引き裂かれることを避けるためには、アウターシースを肉厚にする必要があった。このため、アウターシースが太径化することになり、アウターシースで覆われたデリバリー状態でのアウターシース付きステントの外径の細径化について、改善の余地があった。
【0008】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものであり、ステントがシースで覆われた状態の外径を細径化することが可能なアウターシース付きステント、ステントデリバリー装置及びアウターシース付きステント製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のアウターシース付きステントは、径方向に拡縮可能なステントと、前記ステントの収縮状態にて当該ステントの周方向に巻かれた帯状のアウターシースと、前記周方向における前記アウターシースの両縁部の少なくとも一方を縫合するストリングと、を備え、前記ステントの少なくとも一部分は、前記ストリングの一部分により緊縛されていることを特徴とする。
【0010】
本発明のステントデリバリー装置は、前記アウターシース付きステントと、該アウターシース付きステントをデリバリーするデリバリー部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
アウターシース付きステント製造方法は、径方向に拡縮可能なステントと、前記ステントの収縮状態にて当該ステントの周囲に巻かれる帯状のアウターシースと、前記ステントの周方向における前記アウターシースの両縁部の少なくとも一方を縫合するストリングと、を用意する工程と、前記ストリングを前記アウターシースに縫合する縫合工程と、を備え、前記縫合工程には、前記ステントの少なくとも一部分を前記ストリングの一部分により緊縛する緊縛工程が含まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のアウターシース付きステント、ステントデリバリー装置及びアウターシース付きステント製造方法によれば、ステントがシースで覆われた状態の外径を細径化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態に係るステントデリバリー装置を示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係るアウターシース付きステントの外面を示す模式図である。
【
図3】アウターシースを縫合する前の状態を示す図であり、ストリングにより一部分が緊縛されたステントを示す模式図である。
【
図4】ステントの一部分をストリングにより緊縛する工程を説明する図であり、ステントに第1ループを沿わせた状態を示す説明図である。
【
図5】第1ループに第2ループを通した状態を示す説明図である。
【
図6】第2ループに第3ループを通した状態を示す説明図である。
【
図7】第3ループを引っ張って、仮止め部を形成した状態を示す説明図である。
【
図8】第3ループに第4ループを通した状態を示す説明図である。
【
図9】第4ループに第5ループを通した状態を示す説明図である。
【
図10】第5ループに第6ループを通した状態を示す説明図である。
【
図11】第6ループを引っ張って、仮止め部を形成した状態を示す説明図である。
【
図12】第2実施形態に係るアウターシース付きステント製造方法における予備工程を説明する図である。
【
図14】第3ループに第4ループを通した後で第3ループを縮径させた状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、以下に説明する部材の形状、寸法、配置等については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0015】
なお、本発明の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が単一の構成要素として構成されていること、一つの構成要素が複数の構成要素に分割されて形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
また、すべての図面において、同様な構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0016】
本願の図面に記載の各部位の太さや大きさについて、説明を容易にするための変更が適宜加えられており、実物の縮尺と合わせたものに限定されるものではない。
また、ステントデリバリー装置Dを使用する術者に近い側を近位側(基端側ともいう。)、遠い側を遠位側(先端側ともいう。)というものとする。
【0017】
なお、後述のステント10は、複数のワイヤが網状に交差して形成されているもの、又は網状のワイヤ及び樹脂製のグラフト部を含むものであるが、図示の明確化のため、網状に見える部分を省略し、全体としての外形のみを示している。
【0018】
<概要>
はじめに、本実施形態に係るアウターシース付きステント1の概要を、
図1から
図3を主に参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るステントデリバリー装置Dを示す斜視図である。
図2は、第1実施形態に係るアウターシース付きステント1の外面を示す模式図、
図3は、アウターシース11を縫合する前の状態を示す図であり、ストリング12により一部分が緊縛されたステント10を示す模式図である。なお、
図2において、ステント10を二点鎖線で示しており、アウターシース11に設けられたストリング12に通される穴の図示は明瞭化のために省略している。
【0019】
詳細については後述するように、
図1に示すステントデリバリー装置Dは、アウターシース付きステント1と、アウターシース付きステント1をデリバリーするデリバリー部2と、を備える。
【0020】
図2に示されているように、アウターシース付きステント1は、径方向に拡縮可能なステント10と、ステント10の収縮状態にて当該ステント10の周方向に巻かれた帯状のアウターシース11と、ステント10の周方向におけるアウターシース11の両縁部11aの少なくとも一方を縫合するストリング12と、を備える。ステント10の少なくとも一部分は、
図3に示されているようにストリング12の一部分により緊縛されていることを特徴とする。
【0021】
ステント10は、筒状(例えば円筒状)に形成されている。
ステント10は、径方向内側に収縮した収縮状態から、径方向外側に拡張した拡張状態へと自己拡張するように変形可能に構成されている。
ステント10のワイヤの材料としては、例えば、Ni-Ti合金(ニチノール)、コバルト-クロム合金、チタン合金、及びステンレス鋼等に代表される公知の金属又は金属合金が挙げられる。ワイヤの材料としてNi-Ti合金を用いる場合、ステント10を拡張状態の形状に整えた後に所定の熱処理を施すことにより、拡張状態の形状をステント10に記憶させることができる。
そのようなステント10の収縮状態にて当該ステント10の周囲にアウターシース11を巻き、その状態でストリング12によりアウターシース11を縫合することによって、ステント10はアウターシース11により収縮状態(縮径状態)に拘束されている。すなわち、ステント10の少なくとも一部分が、ストリング12の一部分により緊縛されている。
【0022】
ステント10は、金属ワイヤの網体のみで形成されるベアステントであっても、金属ワイヤの網体と樹脂膜であるグラフト部とを備えるステントグラフトであってもよい。そして、本実施形態に係るステント10は、実際には、網体状に形成されるもの、又は、網体とグラフト部とを備えるものであるが、各図においては筒状に簡略して示されている。
【0023】
また、同様に、アウターシース付きステント製造方法は、径方向に拡縮可能なステント10と、ステント10の収縮状態にて当該ステント10の周囲に巻かれる帯状のアウターシース11と、ステント10の周方向におけるアウターシース11の両縁部11aの少なくとも一方を縫合するストリング12と、を用意する工程と、ストリング12をアウターシース11に縫合する縫合工程と、を備える。縫合工程には、ステント10の少なくとも一部分を、ストリング12の一部分により緊縛する緊縛工程が含まれていることを特徴とする。
【0024】
「帯状のアウターシース」については、少なくともステントを覆う部位が帯状であればよい。すなわち、アウターシース11(において少なくともステント10を覆う部分)は、予め筒状に形成されているのではなく、例えば平面視四角形状などの膜状のアウターシース11がステント10の外周囲に巻かれることによって、当該アウターシース11が筒状になっている。
アウターシース11は、ストリング12を解いた展開状態において、平面視四角形状となるものの他に、インナーシース(又はプッシャー)等の他の部位に接続されたもの(この場合、例えば、平面視四角形状とは異なる形状になる)も含む。
【0025】
本実施形態では、ストリング12がアウターシース11の両縁部11aを縫合する例について説明するが、本発明はこのような構成に限定されない。
例えば、ストリング12がアウターシース11の両縁部11aのうち一方のみを縫合していてもよい。
【0026】
具体的には、アウターシース11がステント10の周囲に渦巻き状に巻き付けられ、両縁部11aのうち一方の縁部が径方向内側に巻き込まれている構成であれば、アウターシース11の外面を周回するようにストリング12を巻回して、他方の縁部についてのみ縫合するようにしてもよい。
また、上記の「緊縛」とは、本実施形態において、具体的には、ステント10から外向きの反力(弾性復元力)、すなわちラジアルフォースが生じるようにステント10の外側から内向きに縛ることをいう。
【0027】
上記構成によれば、ステント10がストリング12に緊縛されていることで、ステント10のラジアルフォースがアウターシース11に加わることを抑制できる。このため、ステント10の拡張を好適に抑制でき、アウターシース11を薄くすることができることとなって、ステント10がアウターシース11で覆われた状態のアウターシース付きステント1の外径を細径化することができる。さらに、アウターシース11を縫合するストリング12によりステント10も緊縛されている構成であっても、アウターシース11からステント10を露出させる際に、ステント10にアウターシース11が引っかかることを抑制できる。
【0028】
[全体構成]
図1に示されているように、本実施形態に係るステントデリバリー装置Dは、上記のアウターシース付きステント1と、アウターシース付きステント1をデリバリーするデリバリー部2と、を備える。
デリバリー部2は、本体部2aと、本体部2a内に一部分が固定され、アウターシース付きステント1を含むシース2bと、アウターシース付きステント1の近位側への移動を制限するガイドロッド2cと、シース2bの先端に設けられた先端チップ3と、を含んで構成されている。
なお、本体部2aは、ストリング12を牽引して、ストリング12の縫合を解除することが可能なように、ストリング12の後述する他端側12nが引き出される構成となっている。
【0029】
<第1実施形態>
次に、第1実施形態に係るアウターシース付きステント1、及びアウターシース付きステント製造方法について、
図1から
図3に加えて、
図4から
図11を主に参照して説明する。
図4は、ステント10の一部(先端側10f)をストリング12により緊縛する工程を説明する図であり、ステント10に第1ループ12rを沿わせた状態を示す説明図である。
図5は、第1ループ12rに第2ループ12sを通した状態を示す説明図、
図6は、第2ループ12sに第3ループ12tを通した状態を示す説明図、
図7は、第3ループ12tを引っ張って、仮止め部12xを形成した状態を示す説明図である。
図8は、第3ループ12tに第4ループ12uを通した状態を示す説明図、
図9は、第4ループ12uに第5ループ12vを通した状態を示す説明図、
図10は、第5ループ12vに第6ループ12wを通した状態を示す説明図、
図11は、第6ループ12wを引っ張って、仮止め部12yを形成した状態を示す説明図である。
なお、各ループは、一端側が開放端(閉じていない端部)となっており、他端側が閉じた端部である折り返し部となっている。ストリングにおいて各ループを形成している部位は、当該ループの一端側から折り返し部に向かう往路部分と、折り返し部から当該ループの一端側に戻る復路部分と、を含む。
【0030】
[構成]
本実施形態に係るアウターシース付きステント1は、前述し、
図2及び
図3に示すように、ステント10と、ステント10に巻かれた帯状のアウターシース11と、アウターシース11における周方向の両縁部11aを縫合するストリング12と、を備える。ステント10の少なくとも一部分が、
図3に示すように、ストリング12の一部分により緊縛されている。
【0031】
本実施形態に係るアウターシース11は、ポリテトラフルオロエチレンによって形成されているが、体内に留置する場合には、生分解性プラスチックであると好適である。
ストリング12は、アラミド繊維で形成されるものであると好適である。その他、ストリング12は、天然繊維、合成繊維の他、金属繊維によって構成されるものであってもよい。
なお、ストリング12の一端側12mは、術者に操作されない端部側であり、他端側12nは、アウターシース11及びステント10に対する縫合及び緊縛を解除する際に、術者に牽引操作される端部側である。
【0032】
図3に示すように、ステント10は、ストリング12により、軸方向の一端部側(本実施形態においては先端側10f)のみ緊縛されている。
上記構成によれば、ステント10の一部分のみがストリング12に緊縛されていることで、ステント10の全体が緊縛されているものと比較して、ストリング12がステント10に絡みつくことを抑制でき、ステント10をスムーズに拡張させることができる。
また、ステント10の一端部側(本実施形態においては先端側10f)のみストリング12により緊縛されていることで、緊縛された一端部側(先端側10f)を、ステント10が最後に拡張する部位として設定できる。
【0033】
図2に示すように、ストリング12は、牽引されたときに、軸方向の一端部側(先端側11f)から解かれ始めるように、アウターシース11に対して縫合されている。
換言すると、アウターシース11(の両縁部11a)に対するストリング12による縫合終わりが先端側11fに位置するように、アウターシース11が縫合されている。
上記の「縫合終わり」とは、ストリング12において両縁部11aに最後に通されるループ12bを有する部位、つまり、最も他端側12nのループ12bが通される部位である。
【0034】
上記構成においては、アウターシース11からストリング12が解かれ始める側と、ステント10に対するストリング12による緊縛側と、が同一の一端部側(先端側11f)となる。このような構成によれば、ストリング12が解かれ始めるアウターシース11の先端側11fに付加されるステント10の復元力(ラジアル荷重)を、ストリング12でステント10の先端側10fを緊縛することにより効果的に抑制できる。
したがって、このような構成によれば、ステント10からのラジアルフォースによって、意図せずアウターシース11に対するストリング12による縫合が解かれ始めてしまうことを、抑制できる。
【0035】
なお、ステント10の軸方向の一端部側のみではなく、全体に亘ってストリング12で緊縛するようにしてもよい。ステント10の全体に亘って緊縛すれば、ステント10からアウターシース11に加わるラジアルフォースを全体に亘って抑制することができる。また、ストリング12の縫合を解除することでアウターシース11を完全に展開したあとに、ステント10を拡張させることができる。
【0036】
なお、ステント10の全体に対する緊縛方法については任意である。
例えば、ステント10に対してストリング12を螺旋状に巻回してもよい。また、ストリング12に不図示の複数のループを形成して緊縛してもよい。この場合、ステント10の軸方向視において、ステント10の軸方向に延在させつつ、時計回り、反時計回りに複数のループを交互に延在させ交互に通すようにして、ステント10の全体を緊縛するようにすればよい。
【0037】
[縫合方法]
次に、ステント10及びアウターシース11を縫合する縫合工程のうち、
図3から
図11を主に参照してステント10を緊縛する緊縛工程及びストリング12を仮止めする仮止め工程を説明し、
図2を主に参照してアウターシースを縫合する縫合工程を説明する。
【0038】
緊縛工程は、ストリング12の一端と他端との間に少なくとも1以上の仮止め部12x(
図3及び
図7参照)を形成する仮止め工程を備える。
仮止め工程において、
図4に示すように、ストリング12に第1ループ12rを形成する。そして第1ループ12rをステント10に沿わせる。すなわち、第1ループ12rをステント10の周囲に巻き付ける。例えば
図4に示すように、第1ループ12rをステント10の周囲に1周未満巻き付ける。
次に、
図5に示すように、ストリング12における第1ループ12rよりも他端側12nの部位に第2ループ12sを形成する。そして、第2ループ12sを、ステント10の周回方向一方回りの方向(本実施形態においては先端側10fからの軸方向視における時計回りの方向)に第1ループ12rとステント10との間に通す。すなわち、第2ループ12sをステント10との間から第1ループ12rに通し、通す方向は、上記時計回りの方向である。ここで、第2ループ12sを第1ループ12rに通す方向は、第1ループ12rをステント10に巻き付けた方向(反時計回りの方向)とは逆方向である。
次に、
図6に示すように、ストリング12における第2ループ12sよりも他端側12nの部位に第3ループ12tを形成する。そして、第3ループ12tを、(第1ループ12rに)第2ループ12sを通した方向と同じ方向であるステント10の周回方向一方回りの方向(上記時計回りの方向)に、第2ループ12sとステント10との間に通す。すなわち、第3ループ12tをステント10との間から第2ループ12sに通し、通す方向は、上記時計回りの方向である。ここで、第3ループ12tは、第2ループ12sにおいて第1ループ12rをくぐり抜けた先の部位(折り返し部側の部位)に通される。
そして、第2ループ12s及び第1ループ12rの弛みが少なくなるよう、第3ループ12tが第2ループ12sをくぐっている箇所から第3ループ12tを引っ張り出すとともに、ストリング12を引っ張る。より詳細には、第2ループ12sにおける第1ループ12r側の部分を引っ張る(第1ループ12rを第2ループ12s側に引っ張る)ことにより第1ループ12rの緩みを小さくさせるとともに、第3ループ12tにおける第2ループ12s側の部分を引っ張る(第2ループ12xを第3ループ12t側に引っ張る)ことにより第2ループ12sの緩みを小さくさせる(第2ループ12sを縮径させる)。
これにより各ループ12r、12s、12tの交錯部をステント10の外周面に近づけて緊縮する。こうすることによって、
図7に示すように各ループ12r、12s、12tの交錯部に
図7に示す仮止め部12xを形成する。仮止め部12xは結び目となっている。
なお、
図7に示すように、第3ループ12tは、仮止め部12xから当該第3ループ12tの折り返し部に向かい、当該折り返し部から当該仮止め部12xに戻る、閉じたループ形状の部分として残留する。
【0039】
なお、本実施形態においては、緊縛工程と仮止め工程は同一行程で行われる。しかしながら、本発明はこのような方法に限定されず、緊縛工程は、ストリング12において仮止めに関わらない部位によってステント10を緊縛する工程を備えていてもよい。
また、上記の仮止め工程は、ステント10を緊縛するための緊縛荷重を付与するため、複数のループ(第1ループ12r、第2ループ12s、第3ループ12t)を形成してなされているが、さらに複数のループを形成してもよい。この場合においても、最後に軸方向視における同一の周回方向にループを通すことで仮止め部12xを形成できる。
【0040】
上記構成によれば、結び目である仮止め部12xを形成することで、ストリング12においてステント10を緊縛している部位がステント10から解けてしまうことを抑制でき、緊縛荷重(締結力ともいう。)を留める(緊縛荷重を維持させる)ことができる。また、ステント10を緊縛する作業を中断可能にすることができ、作業性を高めることができる。
【0041】
仮止め部12xを形成した後、アウターシース11の両縁部11aを縫合する縫合工程に移る。具体的には、
図3に示すように、ストリング12の他端側12nを、アウターシース11の基端側11eよりも外に配置する。そして、
図2に示すように、アウターシース11の両縁部11aの内面どうしを突き合せるようにしてアウターシース11でステント10を覆う。すなわち、アウターシース11の両縁部11aがアウターシース11における両縁部11a以外の部位よりも径方向外側に起立した状態にする。
不図示の治具を用いて、アウターシース11で覆った状態のステント10を縮径させた状態に維持する。そして、アウターシース11を治具から露出させて、
図2に示すように、アウターシース11の基端側11eから先端側11fへ、アウターシース11の両縁部11aをストリング12により縫合していく。
【0042】
具体的には、まず、アウターシース11の基端側11eにおいて、アウターシース11の中(径方向内側)から外面側(径方向外側)に折り返す折返し部12kをストリング12に形成する。
そして、ストリング12における折返し部12kよりも他端側12nの部位を折り曲げてループ12aを形成して、アウターシース11の両縁部11aに形成された不図示の穴に通す。すなわち両縁部11aが径方向外側に起立した状態で、一方の縁部の穴と他方の縁部の穴とに続けて同方向にループ12aを通す。
次に、ストリング12において、先に(1つ前に)通したループ12aよりも他端側12nの部位を折り曲げて次のループ12aを形成し、両縁部11aに形成された不図示の穴に当該次のループ12aを通し、更に、当該次のループ12aを先のループ12a(次のループ12aの1つ前に形成したループ12a)に通す。これを繰り返す。
そして、複数のループ12aのうち最も先端側11fに位置するループ12aを形成した後に、ストリング12におけるこのループ12aよりも他端側12nの部位を折り曲げてループ12bを形成する。形成したループ12bを両縁部11aに通した後に最も先端側11fのループ12aに通す。
このループ12bを両縁部11aに沿わさずに、ストリング12におけるループ12bよりも他端側12nの部位を折り曲げてループ12dを形成する。形成したループ12dをループ12bに通し、通した先でループ12dの一部を一端側12mから他端側12nに牽引することで、ループ12dの寸法を小さくして仮止め部12gを形成して、縫合工程が終了する。
【0043】
ここで、複数のループ12aのうち次のループ12aを通す穴は、先のループ12a(次のループ12aの1つ前に形成したループ12a)を通した穴よりも、先端側11fの位置に配置されている。このため、先のループ12aの一部分は、両縁部11aに沿う方向に延在する(ステント10の軸方向に延在する)。また、ループ12bを通す穴は、最も先端側11fに位置するループ12aを通した穴よりも、先端側11fの位置に配置されている。このため、最も先端側11fに位置するループ12aの一部分も、両縁部11aに沿う方向に延在する(ステント10の軸方向に延在する)。すなわち、各ループ12aの各々の一部分が両縁部11aに沿って延在する。
また、各ループ12aを両縁部11aに通す方向(
図2ではいずれも上から下)は、互いに同方向である。また、ループ12bを両縁部11aに通す方向(
図3では上から下)は、各ループ12aを両縁部11aに通す方向(
図2ではいずれも上から下)と同方向である。このため、各ループ12aにおいて、両縁部11aに沿う方向に延在している部分は、ステント10の周方向において、両縁部11aを基準として同じ側に隣接する位置(
図2ではいずれも両縁部11aの下側に隣接する位置)に配置されている。
【0044】
アウターシース11の両縁部11aの縫合方法は、このような縫合方法に限定されない。ステント10の緊縛とアウターシース11の縫合とを一連のストリング12により行うことができれば、アウターシース11の縫合は、他の方法で成されるものであってもよい。
【0045】
仮止め工程では、仮止め部を複数形成してもよい。より詳細には、上述した仮止め部12xを複数形成してもよいし、後述する仮止め部12yを複数形成してもよい。本実施形態の場合、仮止め工程では、少なくとも1個の仮止め部12x(上述)を形成した後に、仮止め部12y(後述)を形成する工程を備える。
具体的には、
図8に示すように第3ループ12tをステント10に沿わせ、ストリング12における第3ループ12tよりも他端側12nの部位に第4ループ12uを形成する。第4ループ12uを、ステント10の周回方向他方回りの方向(本実施形態においては、軸方向視における反時計回りの方向)に第3ループ12tとステント10との間に通す。すなわち、第4ループ12uをステント10との間から第3ループ12tに通し、通す方向は、上記時計回りとは反対方向である反時計回りの方向である。このように第4ループ12uを第3ループ12tに通すため、
図8に示すように、第4ループ12uをステント10の周囲に反時計回りに1周未満巻き付け、巻き付けた先で第4ループ12uを第3ループ12tに通す。
第4ループ12uをステント10に沿わせ、
図9に示すように、ストリング12における第4ループ12uよりも他端側12nの部位に第5ループ12vを形成する。第5ループ12vを、ステント10の周回方向一方回りの方向(本実施形態においては、軸方向視における時計回りの方向)に第4ループ12uとステント10との間に通す。すなわち、第5ループ12vをステント10との間から第4ループ12uに通し、通す方向は、上記時計回りの方向である。ここで、第5ループ12vは、第4ループ12uにおいて第3ループ12tをくぐり抜けた先の部位(折り返し部側の部位)に通される。
図10に示すように、ストリング12における第5ループ12vよりも他端側12nの部位に第6ループ12wを形成する。第6ループ12wを、第5ループ12vを通した方向と同じ方向であるステント10の周回方向一方回りの方向(本実施形態においては、軸方向視における時計回りの方向)に、第5ループ12vとステント10との間に通す。すなわち、第6ループ12wをステント10との間から第5ループ12vに通し、通す方向は、上記時計回りの方向である。ここで、第6ループ12wは、第5ループ12vにおいて第4ループ12uをくぐり抜けた先の部位(折り返し部側の部位)に通される。
そして、第3ループ12t、第4ループ12u及び第5ループ12vの弛みが少なくなるよう、第6ループ12wが第5ループ12vをくぐっている箇所から第6ループ12wを引っ張り出すとともに、ストリング12を引っ張る。
より詳細には、第4ループ12uにおける第3ループ12t側の部分を引っ張る(第3ループ12tを第4ループ12u側に引っ張る)ことにより第3ループ12tの緩みを小さくさせる(第3ループ12tを縮径させる)ことができる。それと同時に、第5ループ12vにおける第4ループ12u側の部分を引っ張る(第4ループ12uを第5ループ12v側に引っ張る)ことにより第4ループ12uの緩みを小さくさせる(第4ループ12uを縮径させる)ことができる。それと同時に、第6ループ12wにおける第5ループv側の部分を引っ張る(第5ループ12vを第6ループ12w側に引っ張る)ことにより第5ループ12vの緩みを小さくさせる(第5ループ12vを縮径させる)ことができる。
これにより各ループ12t、12u、12v、12wの交錯部をステント10の外周面に近づけて(例えば仮止め部12xに近づけて)緊縮する。こうすることによって、
図11に示すように各ループ12t、12u、12v、12wの交錯部に他の仮止め部12yを形成する。仮止め部12yは結び目となっている。
図11に示すように、第6ループ12wは、仮止め部12yから当該第6ループ12wの折り返し部に向かい、当該折り返し部から当該仮止め部12yに戻る、閉じたループ形状の部分として残留する。
【0046】
ここで、第3ループ12tを縮径させるタイミングは、仮止め部12yを形成する際(つまり第6ループ12wの形成後)に限らず、第4ループ12uを第3ループ12tに通した直後のタイミング(
図8の後)であってもよい。この場合の、第3ループ12tの縮径後の状態を
図14に示す。
また、第4ループ12uを縮径させるタイミングも、仮止め部12yを形成する際(つまり第6ループ12wの形成後)に限らず、第5ループ12vを第4ループ12uに通した直後のタイミングであってもよい。
【0047】
なお、上記の仮止め工程は、ステント10を緊縛する緊縛荷重を付与するため、複数のループを形成してなされるものであり、さらに複数のループを形成してもよい。複数のループを形成して、上記のようにループを他のループに通し、最後に軸方向視における同一の周回方向にループを通せば仮止め部12x、12yを形成できる。
上記構成によれば、仮止め部12yを追加的に形成することで、ステント10に対する締結力を高めることができる。
【0048】
また、仮止め部12x、12yを複数形成する方法としては、1つの仮止め部12x、12yを形成する工程ごとに、ループ(例えば第2ループ12s)に次の最後のループ(例えば第3ループ12t)を通す方向に関して、時計回りと反時計回りを異ならせてもよい。
上記構成によれば、仮止め部12x、12y全体として、ステント10に対する締結力を高めることができる。
【0049】
なお、本実施形態においては、
図11に示すように、2つの仮止め部12x及び仮止め部12yをステント10の周方向における同一箇所に配置した例を説明したが、2つの仮止め部12x及び仮止め部12yの位置をステント10の周方向において互いに異ならせるなど、複数の仮止め部には、ステント10の周方向における位置が互いに異なる仮止め部が含まれるようにしてもよい。このようにすることによって、ステント10の周方向における1箇所においてアウターシース11がステント10から過大に浮いて(盛り上がって)しまうことを抑制できる。
また、本実施形態においては、2つの仮止め部12x及び仮止め部12yを、ステント10の軸方向において先端側10fの同じ位置に設けるようにしている。しかしながら、このような構成に限定されず、例えば、ステント10における先端側10fと基端側10eとに仮止め部12x、12yを設けるようにするなど、複数の仮止め部には、ステント10の軸方向における位置が互いに異なる仮止め部が含まれるようにしてもよい。このようにすることによって、ステント10の軸方向における1箇所においてアウターシース11がステント10から過大に浮いて(盛り上がって)しまうことを抑制できる。
【0050】
<第2実施形態>
上記実施形態においては、アウターシース11の内部において、複数のループを形成して仮止め部12x、12yを形成して、ステント10を緊縛するものであったが、本発明はこのような方法に限定されない。
次に、第1実施形態とは異なる方法によるアウターシース付きステント製造方法について、
図2に加え、
図12及び
図13を主に参照して説明する。
【0051】
図12は、第2実施形態に係るアウターシース付きステント製造方法における予備工程を説明する図、
図13は、緊縛工程を説明する図である。
なお、アウターシース11には、ストリング22が通される穴が形成されているが、
図12、
図13においては、それら穴の図示を省略している。また、
図12は、アウターシース11を展開した状態、且つ、アウターシース11の縁部11bを立ち上げてストリング22で縫合している状態を説明する説明図である。
図12に示す予備工程でストリング22が通される穴は、メイン工程においてストリング22が通される穴(
図2においてストリング12が通される穴)と共通であっても別個に設けられるものであってもよい。
【0052】
本実施形態に係る縫合工程は、緊縛工程の前に、周方向におけるアウターシース11の片側の(一方の)縁部11bの少なくとも一部分をストリング22により縫合する予備工程(
図12参照)と、
図13に示す緊縛工程の後に、周方向におけるアウターシース11の両縁部11aをストリング22により縫合するメイン工程と、を更に備える。このうちメイン工程は、
図2を参照して第1実施形態において説明した工程と同様である。
つまり、予備工程及びメイン工程は、ストリング22によってアウターシース11を縫合する工程であり、緊縛工程は、ストリング22によってステント10を緊縛する工程である。
【0053】
[予備工程]
予備工程は、ストリング22がアウターシース11に対して一端側22mから解けないようにするために、両縁部11aを縫合するメイン工程及び緊縛工程の前に行われる工程である。
【0054】
本実施形態においては、
図12に示すように、アウターシース11を展開した状態で、予備工程を行う。
具体的には、予備工程において、アウターシース11の軸方向中央側において、アウターシース11の外面側から内面側に貫通するように、ストリング22の一部分を折り曲げて形成したループ22aを一方の縁部11bの不図示の穴に通す。
ここで、アウターシース11の内面側及び外面側は、ステント10が配置される側を内面側、逆側を外面側とする。
【0055】
そして、ストリング22において当該ループ22aよりも他端側22nの部位を折り曲げて隣のループ22aを形成して、アウターシース11の外面側から内面側に貫通するように、隣のループ22aを一方の縁部11bの穴に通して先のループ22aにくぐらせる。これを複数回行う。
本実施形態においては、
図12に示すように3つのループ22aを形成して縁部11bに沿わせて配置し、ストリング22において最後に形成したループ22aよりも他端側22nの部位を折り曲げてループ22bを形成する。アウターシース11の外面側から内面側に貫通するように、ループ22bを一方の縁部11bの穴に通し、該ループ22bを最後に形成したループ22aにくぐらせて予備工程が終了する(
図12の状態)。
ここで、複数のループ22aのうち次のループ22aを通す縁部11bの穴は、先のループ22a(次のループ22aの1つ前に形成したループ22a)を通した穴よりも、先端側11fの位置に配置されている。このため、先のループ22aの一部分は、縁部11bに沿う方向に延在する(ステント10の軸方向に延在する)。また、ループ22bを通す穴は、最も先端側11fに位置するループ22aを通した穴よりも、先端側11fの位置に配置されている。このため、最も先端側11fに位置するループ22aの一部分も、縁部11bに沿う方向に延在する(ステント10の軸方向に延在する)。すなわち、各ループ22aの各々の一部分が縁部11bに沿って延在する。
ループ22bは、
図13に示す緊縛工程において、ステント10を緊縛するのに用いられる。
【0056】
上記構成によれば、アウターシース11を展開した状態で予備工程を行うことで、その後の緊縛工程におけるステント10の緊縛を容易に行うことができる。
【0057】
[緊縛工程]
上記のように、予備工程で形成された
図12及び
図13に示すループ22bで、ステント10を緊縛する。
本実施形態においては、
図13に示すように、ステント10の先端側10fにおいて、ループ22bを2周半周回させて螺旋状に緊縛する。
なお、本実施形態においては、ステント10の先端側10fのみを緊縛する例を示しているが、第1実施形態において説明したように、ステント10の全体に亘って緊縛するようにしてもよい。
【0058】
その後、アウターシース11に形成された穴にループ22bを通して、アウターシース11の外側(ステント10が配設されている内側とは逆側)にループ22bの折り返し部側を引き出して配設する。ストリング22におけるループ22bよりも他端側22nの部位を折り曲げてループ22dを形成してループ22bに通す。ループ22bに通した先でループ22dの一部分を一端側22mから他端側22nに引っ張って、ループ22bの寸法を小さくして、アウターシース11の外側に仮止め部22gを形成する。
なお、仮止め部22gについては、アウターシース11の外側ではなく内側に形成するようにしてもよい。
【0059】
本実施形態における緊縛工程は、ストリング22でステント10を螺旋状に2周半巻回して緊縛するのみである。
しかしながら、このような構成に限定されず、さらに複数巻回して、ステント10の全体に亘って緊縛してもよく、第1実施形態において説明したように、仮止め部12x、12yを形成するようにしてもよい。
上記構成によれば、緊縛工程の前の予備工程において、ストリング22とアウターシース11とが縫合されていることにより、ストリング22により、ステント10の緊縛を保持しつつ、アウターシース11からストリング22が解けにくくすることができる。
【0060】
図13に示すように、一連のストリング22の一部分ずつが、ステント10を緊縛している緊縛部22hと、アウターシース11の両縁部11aの少なくとも一方(縁部11b)を縫合している縫合部22i(又は
図2に示す縫合部12i)と、を形成しており、ストリング22における緊縛部22hと縫合部22i(又は
図2に示す縫合部12i)との間の部分が、アウターシース11を貫通している。
すなわち、緊縛部22hと縫合部22iとは相互に連続しており、ストリング22における緊縛部22hと縫合部22iとの間の部分が、アウターシース11を内外に貫通している。
【0061】
また、第2実施形態に係るストリング22だけでなく、第1実施形態に係るストリング12においても、
図3に示す緊縛部12hと
図2に示す縫合部12iとの間の部分が、アウターシース11を内外に貫通していてもよい。
上記構成によれば、ストリング22(12)における緊縛部と縫合部との間の部分がアウターシース11を内外に貫通していることで、ストリング22における緊縛部と縫合部との間の部分が軸方向においてアウターシース11の存在範囲内に収まる(アウターシース11からはみ出さない)ようにできる。このため、ストリング22がアウターシース11を軸方向外側から迂回して回り込んでいる構成(
図2に示す折返し部12kが設けられている構成)と比較して、ストリング22が体管の内壁等からの外力を受けにくくなる。このため、この外力によってストリング22が不意に解けることを抑制できる。
【0062】
[メイン工程]
次に、アウターシース11の両縁部11aを縫合するメイン工程に移る。
ストリング22の他端側22nを仮止め部22gが設けられているアウターシース11の先端側11fから基端側11e側に配設する。不図示の治具を用いて、アウターシース11で覆った状態のステント10を縮径させた状態に維持する。この状態から
図2に示して前述したように、アウターシース11の基端側11eから先端側11fへ、アウターシース11を治具から露出させて、アウターシース11の両縁部11aをストリング22により縫合していく。
なお、前述したように、両縁部11aを縫合する方法は一例であり、他の縫合方法であってもよい。
上記の縫合方法によれば、ストリング22の他端側22nを牽引したときに、アウターシース11の展開は先端側11fから始まり、基端側11eまで全て展開し終えた後に、ステント10を緊縛が解除されて、先端側11fに配置されたステント10が広がるようになる。
【0063】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってもよい。
上記実施形態では、ストリング12は、アウターシース11に対してその基端側11eから先端側11fに縫合され、ストリング12が牽引されることでアウターシース11の先端側11fから基端側11eに縫合が解けるように構成されているが、一例であってこれに限られるものではない。例えば、ストリング12は、アウターシース11に対してその先端側11fから基端側11eに縫合され、ストリング12が牽引されることでアウターシース11の基端側11eから先端側11fに縫合が解けるように構成されていてもよい。
また、ステント10の緊縛位置は、軸方向の先端側10fであってもよいし、軸方向の基端側10eであってもよいし、軸方向全体であってもよく、さらに、上記したアウターシース11の縫合方向(解除方向)と適宜任意に組み合わせることができる。
【0064】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)
径方向に拡縮可能なステントと、
前記ステントの収縮状態にて当該ステントの周方向に巻かれた帯状のアウターシースと、
前記周方向における前記アウターシースの両縁部の少なくとも一方を縫合するストリングと、
を備え、
前記ステントの少なくとも一部分は、前記ストリングの一部分により緊縛されていることを特徴とするアウターシース付きステント。
(2)
前記ステントは、前記ストリングにより、軸方向の一端部側のみ緊縛されている(1)に記載のアウターシース付きステント。
(3)
前記ストリングは、牽引されたときに、前記軸方向の前記一端部側から解かれ始めるように、前記アウターシースに対して縫合されている(1)又は(2)に記載のアウターシース付きステント。
(4)
一連の前記ストリングの一部分ずつが、前記ステントを緊縛している緊縛部と、前記アウターシースの前記両縁部の少なくとも一方を縫合している縫合部と、を形成しており、
前記ストリングにおける前記緊縛部と前記縫合部との間の部分が前記アウターシースを貫通している(1)から(3)のいずれか一項に記載のアウターシース付きステント。
(5)
(1)から(4)のいずれか一項に記載のアウターシース付きステントと、
該アウターシース付きステントをデリバリーするデリバリー部と、を備えることを特徴とするステントデリバリー装置。
(6)
径方向に拡縮可能なステントと、前記ステントの収縮状態にて当該ステントの周囲に巻かれる帯状のアウターシースと、前記ステントの周方向における前記アウターシースの両縁部の少なくとも一方を縫合するストリングと、を用意する工程と、
前記ストリングを前記アウターシースに縫合する縫合工程と、
を備え、
前記縫合工程には、前記ステントの少なくとも一部分を前記ストリングの一部分により緊縛する緊縛工程が含まれていることを特徴とするアウターシース付きステント製造方法。
(7)
前記緊縛工程は、前記ストリングの一端と他端との間に少なくとも1以上の仮止め部を形成する仮止め工程を更に備え、
該仮止め工程において、
前記ストリングに第1ループを形成し、
該第1ループを前記ステントに沿わせ、前記ストリングにおける前記第1ループよりも前記他端側の部位に第2ループを形成し、該第2ループを、前記ステントの周回方向一方の回りに前記第1ループと前記ステントとの間に通し、
前記ストリングにおける前記第2ループよりも前記他端側の部位に第3ループを形成し、
該第3ループを、前記第2ループを通した方向と同じ方向である前記ステントの周回方向一方の回りに、前記第2ループと前記ステントとの間に通して前記仮止め部を形成する、(6)に記載のアウターシース付きステント製造方法。
(8)
前記仮止め工程では、前記仮止め部を複数形成する(7)に記載のアウターシース付きステント製造方法。
(9)
前記仮止め工程では、少なくとも1個の前記仮止め部を形成した後に、
前記ストリングにおける前記第3ループよりも前記他端側の部位に第4ループを形成し、該第4ループを、前記ステントの周回方向他方の回りに前記第3ループに通し、
前記第4ループを前記ステントに沿わせ、前記ストリングにおける前記第4ループよりも前記他端側の部位に第5ループを形成し、該第5ループを、前記ステントの周回方向一方の回りに前記第4ループと前記ステントとの間に通し、
前記ストリングにおける前記第5ループよりも前記他端側の部位に第6ループを形成し、
該第6ループを、前記第5ループを通した方向と同じ方向である前記ステントの周回方向一方の回りに、前記第5ループと前記ステントとの間に通して他の仮止め部を形成する(8)に記載のアウターシース付きステント製造方法。
(10)
前記縫合工程は、
前記緊縛工程の前に、前記周方向における前記アウターシースの片側の縁部の少なくとも一部分を前記ストリングにより縫合する予備工程と、
前記緊縛工程の後に、前記周方向における前記アウターシースの両縁部を前記ストリングにより縫合するメイン工程と、
を更に備える(6)から(9)のいずれか一項に記載のアウターシース付きステント製造方法。
(11)
前記予備工程を、前記アウターシースを展開した状態で行う(10)に記載のアウターシース付きステント製造方法。
【符号の説明】
【0065】
D ステントデリバリー装置
1 アウターシース付きステント
2 デリバリー部
2a 本体部
2b シース
2c ガイドロッド
3 先端チップ
10 ステント
10e 基端側
10f 先端側
11 アウターシース
11a 両縁部
11b 縁部
11e 基端側
11f 先端側
12 ストリング
12a ループ
12b ループ
12d ループ
12h 緊縛部
12i 縫合部
12g 仮止め部
12k 折返し部
12m 一端側
12n 他端側
12r 第1ループ
12s 第2ループ
12t 第3ループ
12u 第4ループ
12v 第5ループ
12w 第6ループ
12x、12y 仮止め部
22 ストリング
22a、22b ループ
22d ループ
22g 仮止め部
22h 緊縛部
22i 縫合部
22m 一端側
22n 他端側