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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144267
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】研磨パッドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/26 20120101AFI20241003BHJP
   B24B 37/24 20120101ALI20241003BHJP
   B29C 33/06 20060101ALI20241003BHJP
   B29C 33/04 20060101ALI20241003BHJP
   B29C 35/08 20060101ALI20241003BHJP
   B29C 41/20 20060101ALI20241003BHJP
   B29C 41/12 20060101ALI20241003BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B24B37/26
B24B37/24 B
B24B37/24 E
B29C33/06
B29C33/04
B29C35/08
B29C41/20
B29C41/12
H01L21/304 622F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024046139
(22)【出願日】2024-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2023053209
(32)【優先日】2023-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005359
【氏名又は名称】富士紡ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149799
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】中瀬 恵介
(72)【発明者】
【氏名】永井 克樹
【テーマコード(参考)】
3C158
4F202
4F203
4F205
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158AA09
3C158CB01
3C158CB05
3C158DA17
3C158EB01
3C158EB06
3C158EB20
3C158EB28
3C158EB29
4F202AA36
4F202AA44
4F202AB03
4F202AD16
4F202AF01
4F202AG01
4F202AH81
4F202CA07
4F202CB01
4F202CB12
4F202CK12
4F202CN01
4F202CQ03
4F203AA44
4F203AB04
4F203AC05
4F203AD16
4F203AF01
4F203AG01
4F203AH81
4F203DA02
4F203DB01
4F203DC08
4F205AA44
4F205AB04
4F205AC05
4F205AD16
4F205AF01
4F205AG01
4F205AH81
4F205GA07
4F205GB01
4F205GB12
4F205GF05
4F205GF24
5F057AA11
5F057EB05
5F057EB13
(57)【要約】
【課題】
凹版72を用いて樹脂50に凹凸パターンを転写させる際に樹脂50の凸部51が脱落しにくい、凸部51の強度に優れた研磨パッドの製造方法を提供する。
【解決手段】
樹脂50を硬化してなり、凸部51を有する研磨層11を有する研磨パッドの製造方法であって、凹凸パターンを形成した凹版72を準備する工程と、前記凹版72に樹脂原料50を流し込む工程と、前記樹脂50が硬化する前にシート状の繊維材料6を前記樹脂50に埋め込む工程と、前記樹脂50を硬化させる工程と、前記凹版72から硬化させた前記樹脂50を剥離し、前記研磨層11を得る工程とを有する、研磨パッドの製造方法。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂を硬化してなり、凸部を有する研磨層を有する研磨パッドの製造方法であって、
凹凸パターンを形成した凹版を準備する工程と、
前記凹版に樹脂原料を流し込む工程と、
前記樹脂が硬化する前にシート状の繊維材料を前記樹脂に埋め込む工程と、
前記樹脂を硬化させる工程と、
前記凹版から硬化させた前記樹脂を剥離し、前記研磨層を得る工程とを有する、
研磨パッドの製造方法。
【請求項2】
前記研磨層が、前記凸部と、前記凸部の下に設けた基部とからなり、前記凸部及び前記基部とが同一樹脂により一体成型されている、請求項1に記載の研磨パッドの製造方法。
【請求項3】
前記繊維材料が、織布である、請求項1に記載の研磨パッドの製造方法。
【請求項4】
前記樹脂が光硬化性樹脂である、請求項1に記載の研磨パッドの製造方法。
【請求項5】
樹脂を硬化してなり、凸部を有する研磨層を有する研磨パッドの製造方法であって、
凹凸パターンを形成した凹版を準備する工程と、
前記凹版の上にシート状の繊維材料を配置する工程と、
繊維材料が配置されている状態の凹版に樹脂原料を流し込む工程と、
前記樹脂を硬化させる工程と、
前記凹版から硬化させた前記樹脂を剥離し、前記研磨層を得る工程とを、有する、
研磨パッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨パッドの製造方法に関する。詳細には、本発明の製造方法によって得られる研磨パッドは、光学材料、半導体デバイス、ハードディスク用のガラス基板等のラッピングや研磨に用いられ、特にサファイアやSiCなどのラッピングや研磨をするのに好適に用いられる。
【背景技術】
【0002】
光学材料、半導体デバイス、ハードディスク用のガラス基板や、サファイアやSiCのラッピング及び研磨では、研磨パッドを使用した研磨加工が行われている。研磨パッドとしては、不織布を用いた研磨パッド、発泡又は無発泡ポリウレタンを用いた研磨パッド、固定砥粒を有する研磨パッド、凹凸パターンを有する樹脂層を研磨面として用いた研磨パッドなど、様々な種類のものが知られている。
【0003】
このなかでも凹凸パターンを有する樹脂層を研磨面として用いた研磨パッドは、凹凸パターンを形成する溝が、スラリーの流動性に作用し、結果として被研磨物を均一に研磨できるという利点を有する。このような研磨パッドの製造方法としては、平板状の母材の表面を切削加工して溝を形成する方法や、スクリーン印刷法を応用して基材上の凹凸パターンを形成する方法、凹凸パターンを有する金型を作製し、作製した金型を用いてモールド成形する方法が挙げられる
【0004】
例えば、特許文献1では、感光性樹脂からなる凹凸パターンを設けた版(図1のC72)から転写することにより凹凸パターンが形成された研磨パッド(C50)が、特許文献2では、感光性樹脂からなる凹凸パターンを設けた版を転写させたシリコーンゴム等からなる成形型を用いて凹凸パターンが形成された研磨パッドが、それぞれ開示されている。
しかし、特許文献1及び2の様に凹版を用いて樹脂に凹凸パターンを転写させる方法では、硬化した樹脂を凹版から剥がす際に剥がしにくかったり、樹脂の凸部(C51)に切れ目(C9)が入り、凸部(C51)が脱落してしまう問題点があった(図1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-178248
【特許文献2】特開2019-178258
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、凹版を用いて樹脂に凹凸パターンを転写させる際に樹脂の凸部が脱落しにくい、凸部の強度に優れた研磨層を備える研磨パッドの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は検討した結果、樹脂の内部に繊維材料を埋め込むことにより、凸部の強度が増し、製造時(凹版からの剥離時)及び研磨時に、研磨パッド凸部の脱落を防ぐことができる研磨パッドの製造方法を見出した。本発明は、以下を包含する。
[1] 樹脂を硬化してなり、凸部を有する研磨層を有する研磨パッドの製造方法であって、
凹凸パターンを形成した凹版を準備する工程と、
前記凹版に樹脂原料を流し込む工程と、
前記樹脂が硬化する前にシート状の繊維材料を前記樹脂に埋め込む工程と、
前記樹脂を硬化させる工程と、
前記凹版から硬化させた前記樹脂を剥離し、前記研磨層を得る工程とを有する、
研磨パッドの製造方法。
[2] 前記研磨層が、前記凸部と、前記凸部の下に設けた基部とからなり、前記凸部及び前記基部とが同一樹脂により一体成型されている、[1]に記載の研磨パッドの製造方法。
[3] 前記繊維材料が、織布である、[1]に記載の研磨パッドの製造方法。
[4] 前記樹脂が光硬化性樹脂である、[1]に記載の研磨パッドの製造方法。
[5] 樹脂を硬化してなり、凸部を有する研磨層を有する研磨パッドの製造方法であって、
凹凸パターンを形成した凹版を準備する工程と、
前記凹版の上にシート状の繊維材料を配置する工程と、
繊維材料が配置されている状態の凹版に樹脂原料を流し込む工程と、
前記樹脂を硬化させる工程と、
前記凹版から硬化させた前記樹脂を剥離し、前記研磨層を得る工程とを、有する、
研磨パッドの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
樹脂の内部に繊維材料を埋め込むことにより、研磨層の凸部の強度が増し、製造時(凹版からの剥離時)及び研磨時に、研磨パッド凸部の脱落を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、従来の研磨層の製造方法の工程図である。
図2図2は、従来の研磨層を凹版C72から剥がす際の凸部C51の損傷や脱落C9を説明する模式図である。
図3図3は、本発明の研磨パッドの研磨層11の断面図である。
図4図4は、本発明の研磨パッドの研磨層11の製造方法の工程図である。
図5図5は、別の態様である、本発明の研磨パッドの研磨層11の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0011】
本発明の製造方法により得られる研磨層11は、図3に示すように、上面に設けられた凸部51と、凸部51の下に設けた基部52とからなる研磨層11を有し、該研磨層11は凸部51及び基部52が同一の樹脂50により一体成型されており、凹凸パターンを有し、基部52の樹脂50内部に繊維材料6が埋め込まれている、研磨パッドである。
なお、本明細書では、繊維材料を樹脂に埋め込むとは、繊維材料の全部または一部を樹脂の中に入れ込むことを指す。
また、便宜上、型に流し込む前の樹脂原料(すなわち硬化前樹脂)及び硬化後の樹脂のいずれも符号50で表すことにする。
【0012】
<<研磨パッドの製造方法>>
本発明の研磨パッドの製造方法の第一態様は、以下の通りである。
すなわち;
樹脂50を硬化してなり、凸部51を有する研磨層11を有する研磨パッドの製造方法であって、
凹凸パターンを形成した凹版72を準備する工程(Step1)と、
前記凹版72に樹脂原料50を流し込む工程(Step2)と、
前記樹脂50が硬化する前にシート状の繊維材料6を前記樹脂50に埋め込む工程(Step3)と、
前記樹脂50を硬化させる工程(Step4)と、
前記凹版72から硬化させた前記樹脂50を剥離し、前記研磨層11を得る工程(Step5)を、有する、研磨パッドの製造方法である。
【0013】
なお、本明細書では、繊維材料を樹脂に埋め込むとは、繊維材料の全部または一部を樹脂の中に入れ込むことを指す。
図1に従来の研磨層の製造方法のフローチャートを、図4に本発明の研磨パッド研磨層11の製造方法(第一態様)のフローチャートを示す。下記説明は、主に、図4に沿っておこなっている。
【0014】
(Step1)
凹凸パターンを形成した凹版72を準備する。
凹凸パターンを形成した凹版72は、凹凸パターンを有する金型、感光性樹脂から成る凹版、シリコーンゴム等から成る凹版、プラスチック材料よりなる凹版等が挙げられ、上面に凸部51が形成された研磨層11が得られる限り、特に限定されない。なお、凹版とは、樹脂を流し込む面に凹部を設け、それにより、樹脂材料に凸部を形成できるものである。
【0015】
なお、凹版72に樹脂原料50を流し込む前に、凹版72に離型剤を塗布する工程を有してもよい。離型剤は凹版72から硬化した樹脂を剥離できる限り特に限定されず、シリコーン系離型剤、フッ素系離型剤が挙げられ、フッ素系離型剤が好ましい。離型剤の塗布方法は、凹版72から硬化した樹脂を剥離できる限り特に限定されず、噴霧法、静電塗布法等が挙げられ、噴霧法が好ましい。
【0016】
(Step2)
凹版72に樹脂原料50を流し込む。
凹版72に樹脂原料50を流し込む方法としては、凹版72の凹部に樹脂原料50が充填(流し込み)される態様であれば特に制限されないが、例えば、常温常圧で樹脂原料自身の重さによって凹部に流し込む重力注型法や、凹版72と樹脂50を真空容器に入れて減圧し大気圧で凹部に流し込む真空注型法が挙げられる。
樹脂50を流し込む際に、研磨層11は、凸部51及び基部52を備えるため、凹版72の凹部のみに樹脂50を流し込むだけでなく、凹版72の凸部の高さを超える程度に流し込み、基部52を形成する必要がある。
【0017】
樹脂50は、凹凸パターンを有する樹脂層11を研磨面として用いた研磨パッドが得られる限り、特に限定されないが、硬化性樹脂組成物が好ましい。
硬化性樹脂組成物としては、特に制限されないが、例えば、熱硬化性樹脂;UV硬化性樹脂;光重合開始剤及び重合性化合物を含む光硬化性樹脂組成物;熱重合開始剤及び重合性化合物を含む熱硬化性樹脂組成物;2液混合型の硬化樹脂を含む硬化性樹脂組成物等が挙げられる。また、硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、重合性官能基を2以上有する架橋剤等を含んでもよい。
【0018】
熱硬化性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。
【0019】
UV硬化性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、数平均分子量1000~10000程度のプレポリマーが好ましく、材料としては、イソシアヌレート系樹脂、アクリル(メタクリル)系エステル樹脂やそのウレタン変性樹脂、チオコール系樹脂等が挙げられ、適宜用途に応じて反応性希釈剤や有機溶剤を用いることができる。
【0020】
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、チオチサントン系化合物が挙げられる。また、熱重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビスブチロニトリルのようなアゾ化合物;メチルエチルケトンパーオキサイド、過酸化ベンゾイル(BPO)などの過酸化物が挙げられる。
【0021】
具体的な樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、及びマレイン酸などの重合性不飽和基を有する不飽和カルボン酸;(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート(ビニルエステル樹脂)、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等の重合性不飽和基を有する不飽和カルボン酸エステル;不飽和基を有するポリエステル;重合性不飽和基を有するポリエーテル;重合性不飽和基を有するポリアミド;重合性不飽和基を有するウレタン;スチレン等の重合性不飽和基を有する芳香族系化合物が挙げられる。
【0022】
また、2液混合型の硬化樹脂としては、特に限定されないが、例えば、異なる物性のプレポリマーを用いることができ、エポキシ樹脂や、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。
【0023】
このなかでも、所望の形状に硬化させやすく、凹版72の耐熱性を考慮する観点から、常温にて硬化が進むものが好ましい。このような硬化性樹脂組成物としては、特に制限されないが、例えば、常温にて作用する重合開始剤を含む硬化性樹脂組成物、光照射により硬化するUV硬化性樹脂組成物及び光硬化性樹脂組成物、2液を混合することにより硬化する混合型の硬化性樹脂組成物が挙げられる。
また、研磨(ラッピング)性能としては、耐熱性の高い(変形温度が高い)ビニルエステル樹脂又は不飽和ポリエステル樹脂が好ましい。
【0024】
(Step3)
樹脂50が硬化する前にシート状の繊維材料6を樹脂50に埋め込む工程について説明する。
樹脂50が硬化する前にシート状の繊維材料6を樹脂50に埋め込む方法としては、樹脂50に繊維材料6を埋め込めれば特に限定されないが、例えば、樹脂50を凹版72に流し込んだあと、硬化する前の粘度の低い状態の樹脂50にシート状の繊維材料6を配置し、自重で、または手などにより加圧して樹脂50の中に繊維材料6を埋め込む方法が考えられる。
繊維材料6と凹版72との位置関係は、図4に示すように、繊維材料6が凹版72の凹凸パターンに接しないようにしてもよいし、繊維材料6が凹版72の凹凸パターンに接するようにしてもよい。
【0025】
繊維材料6を樹脂50に埋め込む時機は、凹版72に樹脂原料50を流し込む工程中や流し込んだ後等が挙げられるが、樹脂50に埋め込むことが可能であれば特に限定されず、樹脂原料50、繊維材料6の材料や強度の調整によって異なる。
【0026】
本発明の研磨パッドの研磨層11の基部52の樹脂50に埋め込まれている繊維材料6は、糸状、束状、綿状、布状等が挙げられ、布状が好ましい。布状の繊維材料は、織布、編布、不織布等が挙げられ、樹脂強度を高めるため、織布や編布が好ましく、特にメッシュ生地が好ましい。
【0027】
繊維材料6の材料は、有機繊維、無機繊維、合成繊維、半合成繊維、再生繊維等が挙げられる。有機繊維としては、例えば、セルロース、炭素繊維、パルプ、キチン、キトサン等の天然物由来の繊維等が挙げられるがこれらに限定されない。無機繊維としては、例えば、ガラス繊維、岩石繊維、金属繊維等が挙げられるがこれらに限定されない。合成繊維としては、例えば、ナイロン、ビニロン、ビニリデン、ポリエステル、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリウレタン、アクリル、ポリ塩化ビニル、アラミド等が挙げられるがこれらに限定されない。半合成繊維としては、アセテート、トリアセテート、プロミックス等が挙げられるがこれらに限定されない。再生繊維としては、例えば、レーヨン、キュプラ、ポリノジックレーヨン、リヨセル、テンセル等が挙げられるがこれらに限定されない。本発明の研磨パッドの研磨層11の基部52の樹脂50に埋め込まれている繊維材料6は、入手しやすさや加工のしやすさの観点から、ポリエチレン又はポリプロピレンが好ましい。
【0028】
繊維材料6の繊維径は、100μm以上、300μm以下で、より好ましくは150μm以上、250μm以下である。繊維材料6の繊維径が上記範囲内であると、樹脂50の骨格材として機能し研磨層11の強度を上げることができる。繊維径が100μm未満であると強度不足となる恐れがあり、繊維径が300μmより大きいと樹脂50内部に組み込む際に、周りから空気が入る原因などとなる。
【0029】
繊維材料6の目開きは、10μm以上、700μm以下で、より好ましくは30μm以上、520μm以下である。繊維材料6の目開きが上記範囲内であることにより、樹脂中に程良く組み込まれ樹脂50の強度を上げることができる。目開きが10μm未満であると樹脂50が馴染みにくくなってしまい、目開きが700μmより大きいと骨格材として機能せず研磨層11の強度不足となってしまう。
【0030】
繊維材料6の厚さは、100μm以上、500μm以下で、より好ましくは150μm以上、300μm以下である。前記繊維材料6の厚さが上記範囲内であることにより、研磨パッドとしての研磨性能を損なうことなく研磨層11の強度を上げることができる。
【0031】
また、樹脂50に繊維材料6を埋め込んだ後、樹脂50を硬化させる前に、樹脂50の凹版72と接する面と反対側の面に基材を接合させる工程をさらに有していてもよい。基材を用いることにより、基材と凹版72で樹脂50を挟んだ状態で、樹脂50を硬化させることになる。これにより、得られる硬化物の厚さの均一性が向上したり、得られる硬化物の裏面(凹版72と接する面と反対側の面)の平坦性がより向上したりする傾向にある。
【0032】
(Step4)
樹脂原料50を硬化させる工程について説明する。
樹脂原料50を硬化させる方法としては、各々の樹脂原料50に適した方法であれば特に制限されないが、例えば、紫外線などを照射する光硬化方法、熱を加える熱硬化方法(常温で放置する方法も含む)、又は2液混合型のように混合して放置する方法等が挙げられる。使用する装置としては、光を照射する装置等を使用する方法や恒温装置を使用する方法が挙げられ、光を照射する装置としては、光硬化性樹脂が硬化する光の波長を含む波長範囲の光を発する装置であれば特に限定されるものではなく、例えば、紫外線照射装置が挙げられる。
照射する光としては、樹脂原料50を硬化させることが可能なものであれば特に制限されないが、例えば、紫外線などが挙げられる。また、このような光を発する光源としては、高圧水銀ランプ、UV-LEDランプ、ブラックライト蛍光ランプ(BLB)などが挙げられるが、この中でもBLBが好ましい光を照射する方向は、プラスチック凹版72の下面72A側から照射する方向、樹脂原料50の上面50A側から照射する方向のいずれでもよい。下面72A側から照射すると、凸部51に十分に光をあてることができため、凸部51の硬化が十分になる。紫外線照射の波長は200nm~400nmが好ましく、照射時間は3分~30分が好ましい。
熱を加える熱硬化方法としては、樹脂原料50を流し込んだ状態の凹版72を炉に入れて加熱する方法、凹版72をあらかじめ加熱しておいて樹脂原料50を流しいれる方法等が挙げられる。
樹脂原料50を硬化させる時機としては、繊維材料6を硬化前の樹脂50中に埋め込んだ後に硬化させるのが好ましい。
【0033】
(Step5)
硬化した樹脂50を凹版72から剥離することにより、研磨層11を得る。剥離の方法は、研磨層11の端部を持ち、凹版72から取り除くように剥がすなどの方法が挙げられる。得られた研磨層11は凹版72から転写された凹凸パターンを有し、その凹凸パターンの凸部51の表面は、被研磨物を研磨するための研磨面となる。
【0034】
得られた研磨層11の曲げ強さは、30MPa以上であり、好ましくは30~1000MPaであり、より好ましくは40~900MPaであり、さらに好ましくは50~800MPaである。曲げ強さは、JIS K7203に準じて行った測定により得られるものである。曲げ強さが上記範囲内であることにより、凹版72から研磨層11を剥離する際に研磨層11の破損や変形を抑制することができる。
【0035】
また、研磨層11が、凸部51と凸部52の下に設けた基部52とからなり、基部52及び凸部51とが同一樹脂で一体成型されており、凹凸パターンを有するものであることが好ましい。凸部51と基部52とが一体成型されたことにより、凸部51と基部52を接合する工程がなくなり、コストを削減することができる。また、凸部51と基部52を接着する場合に比べて、接合強度が高くなり、凸部51が基部52から取れにくくなる。なお、研磨層11の凸部51がある面が研磨面になる。
【0036】
本発明の研磨パッドの研磨層11の凹凸パターンの凸部51の高さの平均は、0.3mm以上、1.5mm以下であることが好ましく、0.8mm以上、1.2mm以下であることがより好ましい。凸部51の高さの平均が0.3mm未満であると研磨パッドとしての製品寿命(ライフ)が短くなってしまい、1.5mmより大きいと製造時に脱落・損傷してしまうおそれがある。
なお、本明細書では、図3のα(基部52における凸部51側の面から凸部51の最も高いところまでの距離)を凸部の高さということにする。
研磨層11の凸部51の形状は、本例では四角錐台であるが、円錐台、略円錐台、だ円錐台などの錐台状、または四角柱、円柱、略円柱、だ円柱などの柱状であってもよい。
【0037】
次に本発明の製造方法の第二態様を説明する。第二態様は以下のとおりである。
樹脂50を硬化してなり、凸部51を有する研磨層11を有する研磨パッドの製造方法であって、
凹凸パターンを形成した凹版72を準備する工程と、
前記凹版72の上にシート状の繊維材料6を配置する工程と、
繊維材料6が配置されている状態の凹版72に樹脂原料50を流し込む工程と、
前記樹脂50を硬化させる工程と、
前記凹版72から硬化させた前記樹脂50を剥離し、前記研磨層11を得る工程とを、有する、
研磨パッドの製造方法。
【0038】
第二態様は第一態様と多くの部分を共通するが、第二態様は、凹版72に樹脂50を流し込む前にシート状繊維材料6を配置し、その後、樹脂50を流しこむ。このようにすることにより、シート状の繊維材料6を埋め込む必要がないが、樹脂50を流しこむときに、シート状繊維材料6が流されないようにする必要がある。
【0039】
シート状の繊維材料6がメッシュ生地のように目開きがある場合は、第二態様が好適に用いられる。
【0040】
図5には、図3とは別の形状の研磨層11を示す。図5の研磨層11と異なる点は凸部51とは反対側に凹部53を備える。凹部53を備えることで、さらなる軽量化と、費用の削減を実現することができる。凹部53は、上記Step2の工程において、凸部51を形成する箇所に意図的に樹脂量を減らす方法や、Step3の工程の後に、上方から凹部53に対応する型を押し付けることで、凹部53を設けることができる。凹部53の形状は、特に限定されるものではなく、図5のように、角を有する形状(例えば四角錐台)であってもよいし、曲面を有する形状(例えばドーム状)であってもよい。
【実施例0041】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0042】
各実施例及び比較例において、特段の指定のない限り、「部」とは「質量部」を意味するものとする。
【0043】
(研磨パッドの製造)
【0044】
(研磨パッド1の製造)
ポリプロピレン樹脂シートを真空成形することにより、高さ0.85mmを有し、底辺が1.5mm角の四角錐台形状の凹部を複数有する凹版72を作製した。
次に、この凹版72に、不飽和ポリエステル樹脂(製品名:リゴラック、株式会社レゾナック製)を90部流し込んだ。硬化させる前に繊維材料6としてポリプロピレンからなる繊維径150μm、目開き30μm、厚み300μmのメッシュ生地を樹脂50の上から内部に沈ませ、基部52に繊維材料6が入り込むようにした。
30分かけて樹脂50を室温(25℃)で硬化させたのち、凹版72から樹脂50を剥離させることにより凹版72を取り除き、研磨パッド1を製造した。
【0045】
(研磨パッド2の製造)
研磨パッドの材料を不飽和ポリエステル樹脂の代わりにビニルエステル樹脂(製品名:リポキシ、株式会社レゾナック製)を用い、メッシュ生地の材料をポリプロピレン繊維の代わりにポリエチレン繊維を用いた以外は、研磨パッド1と同様の方法で、研磨パッド2を製造した。
【0046】
なお、研磨パッド2の製造において、研磨パッドの材料及びメッシュ生地の材料を変更しても、ポリプロピレン樹脂からなるプラスチック凹版を用いて、研磨パッド1同様研磨パッドを製造することもできることを確認した。
【0047】
(凹版からの剥離時)
剥離ローラーを用いて、凹版72から樹脂50の剥離実験を行った。剥離ローラーとしては、例えば特開平9-114384号公報に記載されている粘着テープと棒状の剥離ローラーを組み合わせたものなどが用いられる。上記実施例によるメッシュ生地を基部52に含むもの、及びメッシュ生地を基部52に含まないものに対し、凹版72と樹脂50との剥離が可能な条件にて剥離実験を行ったところ、メッシュ生地を基部52に含まないものは凸部51の脱落や損傷が見られたのに対し、ポリプロピレン樹脂からなるプラスチック凹版72を用いて得られた研磨パッド1及び研磨パッド2については、剥離時に凸部51の脱落や損傷は見られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の研磨パッドの製造方法は、光学材料、半導体デバイス、ハードディスク用のガラス基板等のラッピングや研磨に用いる研磨パッドを製造する方法として、産業上の利用可能性を有する。
【0049】
11 研磨層
72 凹版
72A 凹版下面
50 樹脂原料
50A 樹脂原料上面
51 凸部
52 基部
53 凹部
6 繊維材料
C9 凸部の脱落
図1
図2
図3
図4
図5