(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144269
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】研磨パッドの製造方法
(51)【国際特許分類】
B24D 11/00 20060101AFI20241003BHJP
B24B 37/26 20120101ALI20241003BHJP
B24B 37/24 20120101ALI20241003BHJP
B29C 33/40 20060101ALI20241003BHJP
B29C 41/42 20060101ALI20241003BHJP
B29C 41/12 20060101ALI20241003BHJP
B29C 41/20 20060101ALI20241003BHJP
B29C 33/64 20060101ALI20241003BHJP
C08J 5/14 20060101ALI20241003BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B24D11/00 Q
B24D11/00 C
B24B37/26
B24B37/24 B
B29C33/40
B29C41/42
B29C41/12
B29C41/20
B29C33/64
C08J5/14 CEY
C08J5/14 CFD
H01L21/304 622F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024046141
(22)【出願日】2024-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2023053210
(32)【優先日】2023-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005359
【氏名又は名称】富士紡ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149799
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】中瀬 恵介
(72)【発明者】
【氏名】永井 克樹
(72)【発明者】
【氏名】高木 正孝
(72)【発明者】
【氏名】小池 堅一
(72)【発明者】
【氏名】岡田 真治
(72)【発明者】
【氏名】東 亮介
【テーマコード(参考)】
3C063
3C158
4F071
4F202
4F205
5F057
【Fターム(参考)】
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3C063AB07
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5F057EB13
(57)【要約】
【課題】本発明は、凹版を用いて樹脂に凹凸パターンを転写させる際に、安価で樹脂を容易に剥離することが可能な研磨パッドの製造方法を提供する。
【解決手段】
汎用のプラスチックを使い捨ての凹版として用いることにより安価に製造することができ、また、表面自由エネルギーの低いポリオレフィン系やポリスチレンを用いることで研磨層となる樹脂との剥離が容易となる研磨パッドの製造方法である。当該製造方法は、樹脂を硬化してなり、砥粒を含む研磨層を有する研磨パッドの製造方法であって、真空成形又は射出成形により凹凸パターンを形成したプラスチック凹版を準備する工程、前記プラスチック凹版に砥粒を含む前記樹脂原料を流し込む工程、前記樹脂を硬化させる工程、前記プラスチック凹版から硬化させた前記樹脂を剥離し、前記研磨層を得る工程、を有するものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂を硬化してなり、砥粒を含む研磨層を有する研磨パッドの製造方法であって、
真空成形又は射出成形により凹凸パターンを形成したプラスチック凹版を準備する工程、
前記プラスチック凹版に、砥粒を含む樹脂原料を流し込む工程、
前記樹脂を硬化させる工程、
前記プラスチック凹版から硬化させた前記樹脂を剥離し、前記研磨層を得る工程、を有する、
研磨パッドの製造方法。
【請求項2】
前記樹脂を硬化させる工程において、前記プラスチック凹版の温度が130℃以下である、請求項1に記載の研磨パッドの製造方法。
【請求項3】
前記プラスチック凹版がポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルから選択される樹脂で構成される、請求項1に記載の研磨パッドの製造方法。
【請求項4】
さらに、前記プラスチック凹版に離型剤を塗布する工程を有し、前記離型剤がシリコーン系離型剤又はフッ素系離型剤である、請求項1に記載の研磨パッドの製造方法。
【請求項5】
前記樹脂がUV硬化性樹脂組成物である、請求項1に記載の研磨パッドの製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の研磨パッドの製造方法によって得られる研磨パッドを用いる被研磨物の研磨方法であって、
固定砥粒研磨によって研磨を実行する、研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨パッドに関する。詳細には、本発明の研磨パッドは、光学材料、半導体デバイス、ハードディスク用のガラス基板等のラッピングや研磨に用いられ、特にサファイアやSiCなどのラッピングや研磨をするのに好適に用いられる。
【背景技術】
【0002】
光学材料、半導体デバイス、ハードディスク用のガラス基板や、サファイアやSiCのラッピング及び研磨では、研磨パッドを使用した研磨加工が行われている。研磨パッドとしては、不織布を用いた研磨パッド、発泡又は無発泡ポリウレタンを用いた研磨パッド、固定砥粒を有する研磨パッド、凹凸パターンを有する樹脂層を研磨面として用いた研磨パッドなど、様々な種類のものが知られている。
【0003】
このなかでも凹凸パターンを有する樹脂層を研磨面として用いた研磨パッドは、凹凸パターンを形成する溝が、スラリーの流動性に作用し、結果として被研磨物を均一に研磨できるという利点を有する。このような研磨パッドの製造方法としては、平板状の母材の表面を切削加工して溝を形成する方法や、スクリーン印刷法を応用して基材上の凹凸パターンを形成する方法、凹凸パターンを有する金型を作製し、作製した金型を用いてモールド成形する方法が挙げられる
【0004】
例えば、特許文献1では、感光性樹脂からなる凹凸パターンを設けた版から転写することにより凹凸パターンが形成された研磨パッドが、特許文献2では、感光性樹脂からなる凹凸パターンを設けた版を転写させたシリコーンゴム等からなる成形型を用いて凹凸パターンが形成された研磨パッドが、それぞれ開示されている。
しかし、特許文献1及び2の様に凹版を用いて樹脂に凹凸パターンを転写させる方法では、硬化した樹脂を凹版から剥がす際に剥がしにくく、樹脂の凸部が脱落してしまう問題点があった。また、凹版として用いられている感光性樹脂やシリコーンゴム等は高価なものであり、繰り返し用いる際には耐久性に難があるため、量産化には向かないものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-178248
【特許文献2】特開2019-178258
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、凹版を用いて樹脂に凹凸パターンを転写させる際に、安価で樹脂を容易に剥離することが可能な研磨パッドの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は検討した結果、汎用のプラスチックを使い捨ての凹版として用いることにより安価に製造することができ、また、表面自由エネルギーの低いポリオレフィン系やポリスチレンを用いることで研磨層となる樹脂との剥離が容易となる研磨パッドの製造方法を見出した。本発明は、以下を包含する。
[1] 樹脂を硬化してなり、砥粒を含む研磨層を有する研磨パッドの製造方法であって、
真空成形又は射出成形により凹凸パターンを形成したプラスチック凹版を準備する工程、
前記プラスチック凹版に、砥粒を含む前記樹脂原料を流し込む工程、
前記樹脂を硬化させる工程、
前記プラスチック凹版から硬化させた前記樹脂を剥離し、前記研磨層を得る工程、を有する、
研磨パッドの製造方法。
[2] 前記樹脂を硬化させる工程において、前記プラスチック凹版の温度が130℃以下である、[1]に記載の研磨パッドの製造方法。
[3] 前記プラスチック凹版がポリエチレン・ポリプロピレン・ポリスチレン・ポリ塩化ビニルで構成される、[1]に記載の研磨パッドの製造方法。
[4] さらに、前記プラスチック凹版に離型剤を塗布する工程を有し、前記離型剤がシリコーン系離型剤又はフッ素系離型剤である、[1]に記載の研磨パッドの製造方法。
[5] 前記樹脂がUV硬化性樹脂組成物である、[1]に記載の研磨パッドの製造方法。
[6] [1]乃至[5]のいずれか一項に記載の研磨パッドの製造方法によって得られる研磨パッドを用いる被研磨物の研磨方法であって、
固定砥粒研磨によって研磨を実行する、研磨方法。
【発明の効果】
【0008】
汎用のプラスチックを使い捨て可能な凹版として用いることにより安価に製造することができ、また、表面自由エネルギーの低いポリオレフィン系やポリスチレンを用いることで研磨層となる樹脂との剥離が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の研磨パッドの研磨層11の製造方法の工程図である。
【
図2】
図2は、別の態様である、本発明の研磨パッドの研磨層11の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0011】
<<研磨パッドの製造方法>>
本発明の研磨パッドの製造方法の第一態様を、
図1のフローチャートを用いながら説明する。
第一態様は、下記の通りである。なお、研磨パッドは研磨層を備えるものであり、研磨層は研磨対象物を研磨するための研磨面を備える。
樹脂50を硬化してなる研磨層11を有する研磨パッドの製造方法であって、
真空成形又は射出成形により凹凸パターンを形成したプラスチック凹版72を準備する工程(Step1)、
前記プラスチック凹版72に離型剤8を塗布する工程(Step2)、
前記プラスチック凹版72に前記樹脂原料50を流し込む工程(Step3)、
前記樹脂50を硬化させる工程(Step4)、
前記プラスチック凹版72から硬化させた前記樹脂50を剥離して、前記研磨層11を得る工程(Step5)、を有する、研磨パッドの製造方法。
なお、本願明細書では、便宜上、型に流し込む前の樹脂原料(すなわち硬化前樹脂)及び硬化後の樹脂のいずれも符号50で表すことにする。
【0012】
(Step1)
まず、凹凸パターンを形成するための型を用意する。真空成形又は射出成形によりプラスチック材料に凹凸パターンを形成できる型であれば特に限定されず、木型、樹脂型、金型が挙げられる。凹凸パターンを形成したプラスチック凹版72は、非常に高い耐久性は求めないため、繰り返し製造できる型が好ましい。
【0013】
次に、プラスチック凹版72の材料であるプラスチック材料を用意する。プラスチック材料は、安価かつ表面自由エネルギーが低いプラスチックであれば特に限定されないが、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン)、やポリスチレン、ポリ塩化ビニル等が挙げられる。本発明の凹版72に用いられる材料の表面自由エネルギー50mN/m以下が好ましく、40mN/m以下がより好ましい。表面自由エネルギーが50mN/m以下であると、凹版72からの研磨層11の剥離が容易になるため、凹版72と研磨層11の剥離の際の凸部51の脱落・損傷を抑えることができる。なお、表面自由エネルギーは、接触角計を用いて水及びヨウ化メチレンとの接触角を測定することにより算出することができる。凹版72の材料としては、入手が容易で安価、かつ表面自由エネルギーが低いため、ポリプロピレン(表面自由エネルギー:29.8mN/m)やポリエチレン(表面自由エネルギー:35.6mN/m)が好ましい。ポリプロピレンとしては、オージェイケイ社製の商品名「イーロン」や、サンビック社製の商品名「ハイパール」などを用いることが出来、ポリエチレンとしては、レゾナック社製の商品名「EL-N-AN」などを用いることが出来る。
【0014】
プラスチック材料の形状は、真空成形又は射出成形で凹凸パターンを形成したプラスチック凹版72を作製できる形状であれば特に限定されないが、成形しやすいため、フィルムやシート状が好ましい。
フィルムやシート状のプラスチック材料の厚みは真空成形又は射出成形で凹凸パターンを形成したプラスチック凹版72を作製可能な厚みであれば特に限定されないが、版としての強度を保ち成形しやすいという観点で、0.1mm~5mmが好ましい。
真空成形の場合、フィルムやシート状のプラスチック材料を加熱軟化させ、凹凸パターンを形成した型に配置し、プラスチック材料と型との空間を真空状態にすることにより、プラスチック材料を型に密着させる。成型が完了したら冷却し、型から離して凹凸パターンを形成したプラスチック凹版72を得る。真空成形の条件はプラスチック材料、プラスチック材料の厚み等によって異なる。
射出成形の場合、加熱溶融したプラスチック材料を、凹凸パターンを形成した金型内に射出注入させ、冷却・固化させ、型から取り出すことにより凹凸パターンを形成したプラスチック凹版72を得る。射出成形の条件はプラスチック材料、プラスチック材料の凹版72の厚み等によって異なる。
真空成形又は射出成形により凹凸パターンを形成したプラスチック凹版72の強度は、Step4において、プラスチック凹版72から凹凸パターンが精度よく転写されることにより、凹凸パターンが形成された研磨層11を得られる限り、特に限定されないが、衝撃で割れたり破れたりしないため、デュポン式衝撃試験で0℃において衝撃強度0.5J/m以上が好ましい。
【0015】
(Step2)
次に、得られたプラスチック凹版72に離型剤8を塗布する。離型剤8はプラスチック凹版から硬化した樹脂の剥離を容易にするものである。種類は特に限定されず、例えば、シリコーン系離型剤、フッ素系離型剤が挙げられ、フッ素系離型剤が好ましい。
離型剤8の塗布方法は、プラスチック凹版から硬化した樹脂を剥離できる限り特に限定されず、噴霧法、静電塗布法等が挙げられ、噴霧法が好ましい。
【0016】
(Step3)
離型剤8を塗布したプラスチック凹版72に樹脂原料50を流し込む。
本発明は、樹脂原料50は砥粒を含む。すなわち、本発明の製造方法で得られた研磨パッド1は、固定砥粒研磨法用の研磨パッドであり、樹脂原料50をプラスチック凹版72に流し込む前に砥粒を液状樹脂に混合して、樹脂原料50を調製することが好ましい。
樹脂に対する砥粒の量は特に限定されるものではなく、従来と同様の含有割合でよい。例えば、樹脂原料50全体に対して、砥粒は、通常、1質量%以上、20質量%以下、好ましくは5質量%以上、10質量%以下の割合で含むことができる。
砥粒の種類は、特に限定されるものではなく、例えば、ダイヤモンド、酸化セリウム、炭化ケイ素、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化マンガン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム、ケイ酸ジルコニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、硫酸バリウム、炭酸カルシウムなどを使用することができる。砥粒の粒径は、1~100μmが好ましい。
プラスチック凹版72に樹脂原料50を流し込む方法としては、プラスチック凹版72の凹部に樹脂原料50が充填(流し込み)されれば、特に制限されないが、例えば、常温常圧で樹脂原料自身の重さによって凹部に流し込む重力注型法や、プラスチック凹版72と樹脂50を真空容器に入れて減圧し大気圧で凹部に流し込む真空注型法が挙げられる。
【0017】
樹脂50は、凹凸パターンを有する樹脂層11を研磨面として用いた研磨パッドが得られる限り、特に限定されないが、硬化性樹脂組成物が好ましい。
硬化性樹脂組成物としては、特に制限されないが、例えば、熱硬化性樹脂;UV硬化性樹脂;光重合開始剤及び重合性化合物を含む光硬化性樹脂組成物;熱重合開始剤及び重合性化合物を含む熱硬化性樹脂組成物;2液混合型の硬化樹脂を含む硬化性樹脂組成物等が挙げられる。また、硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、重合性官能基を2以上有する架橋剤等を含んでもよい。
【0018】
熱硬化性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。
【0019】
UV硬化性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、数平均分子量1000~10000程度のプレポリマーが好ましく、材料としては、イソシアヌレート系樹脂、アクリル(メタクリル)系エステル樹脂やそのウレタン変性樹脂、チオコール系樹脂等が挙げられ、適宜用途に応じて反応性希釈剤や有機溶剤を用いることができる。
【0020】
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、チオチサントン系化合物が挙げられる。また、熱重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビスブチロニトリルのようなアゾ化合物;メチルエチルケトンパーオキサイド、過酸化ベンゾイル(BPO)などの過酸化物が挙げられる。
【0021】
具体的な樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、及びマレイン酸などの重合性不飽和基を有する不飽和カルボン酸;(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート(ビニルエステル)、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等の重合性不飽和基を有する不飽和カルボン酸エステル;不飽和基を有するポリエステル;重合性不飽和基を有するポリエーテル;重合性不飽和基を有するポリアミド;重合性不飽和基を有するウレタン;スチレン等の重合性不飽和基を有する芳香族系化合物、ビニルエステル樹脂が挙げられる。
【0022】
また、2液混合型の硬化樹脂としては、特に限定されないが、例えば、異なる物性のプレポリマーを用いることができ、エポキシ樹脂や、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。
【0023】
このなかでも、プラスチック凹版72の耐熱性を考慮する観点から、常温にて硬化が進むものが好ましい。例えば、常温にて作用する重合開始剤を含む硬化性樹脂組成物、光照射により硬化するUV硬化性樹脂及び光硬化性樹脂組成物、2液を混合することにより硬化する混合型の硬化性樹脂組成物が挙げられる。
また、研磨(ラッピング)性能としては、耐熱性の高い(変形温度が高い)ビニルエステル樹脂又は不飽和ポリエステル樹脂が好ましい。
【0024】
樹脂50が硬化する前にシート状の繊維材料6を樹脂50に埋め込む工程をさらに有してもよい。樹脂50内部に繊維材料6が埋め込まれていることにより、凸部51の強度が増し、製造時(プラスチック凹版72からの剥離時)及び研磨時に、研磨パッド凸部51の脱落を防ぐことができる研磨層11が得られる。
【0025】
また、樹脂50を硬化させる前に、樹脂50のプラスチック凹版72と接する面と反対側の面に基材を接合させる工程をさらに有していてもよい。基材を用いることにより、基材とプラスチック凹版72で樹脂50を挟んだ状態で、樹脂50を硬化させることになる。これにより、得られる硬化物の厚さの均一性が向上したり、得られる硬化物の裏面(プラスチック凹版72と接する面と反対側の面)の平坦性がより向上したりする傾向にある。
【0026】
(Step4)
樹脂原料50を硬化させる工程について説明する。
樹脂原料50を硬化させる方法としては、各々の樹脂原料50に適した方法であれば特に制限されないが、樹脂の性質に応じて、紫外線などを照射する光硬化方法、熱を加える熱硬化方法(常温で放置する方法も含む)、又は2液混合型のように混合して放置する方法等が挙げられる。
照射する光としては、樹脂原料50を硬化させることが可能なものであれば特に制限されないが、例えば、紫外線などが挙げられる。また、このような光を発する光源としては、高圧水銀ランプ、UV-LEDランプ、ブラックライト蛍光ランプ(BLB)などが挙げられるが、この中でもBLBが好ましい。光を照射する方向は、プラスチック凹版72の下面72A側から照射する方向、樹脂原料50の上面50A側から照射する方向のいずれでもよい。特にプラスチック凹版72を用いた場合、下面72A側から照射であっても、その透明性から凸部51を硬化するのに十分な光を透過することができ、凸部51の硬化が十分になる。これは従来用いられたシリコーンゴム等からなる成形型では達成できないものであった。紫外線照射の波長は200nm~400nmが好ましく、照射時間は3分~30分が好ましい。
【0027】
(Step5)
硬化した樹脂50をプラスチック凹版72から剥離することにより、研磨層11を得る。剥離方法は特に限定するものではなく、樹脂硬化物の端部を持ち、凹版72から剥がす、などの方法がある。得られた研磨層11はプラスチック凹版72から転写された凹凸パターンを有し、その凹凸パターンの凸部51の表面は、被研磨物を研磨するための研磨面となる。
また、硬化した樹脂50の硬化物からプラスチック凹版72を剥離してもよく、本発明の研磨パッドの製造方法で用いるプラスチック凹版72は使い捨てなので、硬化した樹脂50からプラスチック凹版72を剥がす際に変形したり、破損してもよく、研磨層11の破損や変形、樹脂50の凸部51の脱落等の欠損を抑制することが出来る。
なお、剥離した研磨層11は、研磨パッドに備えられるように、所定の大きさに切断することができる。
また、凹凸パターンの面と反対側の面に、必要により、クッション層を張り付けて、研磨パッドにすることができる。
【0028】
得られた研磨層11の曲げ強さは、30MPa以上であり、好ましくは30~1000MPaであり、より好ましくは40~900MPaであり、さらに好ましくは50~800MPaである。曲げ強さは、JIS K7203に準じて行った測定により得られるものである。曲げ強さが上記範囲内であることにより、プラスチック凹版72から研磨層11を剥離する際に研磨層11の破損や変形を抑制することができる。
【0029】
図2には、
図1とは別の形状の研磨層11を示す。
図2の研磨層11と異なる点は凸部51とは反対側に凹部53を備える。凹部53を備えることで、さらなる軽量化と、費用の削減を実現することができる。凹部53は、上記Step3の工程において、凸部51を形成する箇所に意図的に樹脂量を減らす方法や、Step3の工程の後に、上方から凹部53に対応する型を押し付けることで、凹部53を設けることができる。凹部52の形状は、特に限定されるものではなく、
図2のように、角を有する形状(例えば四角錐台)であってもよいし、曲面を有する形状(例えばドーム状)であってもよい。
【0030】
(研磨方法)
本発明の製造方法で得られた研磨パッド1は、固定砥粒研磨において使用することが好ましい。ここで、固定砥粒研磨とは、砥粒を、研磨パッド1の研磨層に埋込んで研磨加工する方式である。
固定砥粒研磨は、遊離砥粒研磨に比べて、研磨時の廃棄物を削減しやすく、効率的である。したがって、研磨時の廃棄物を削減しやすく、より効率的にしたい場合に、本発明の研磨パッド1を使用することができる。
【実施例0031】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0032】
各実施例及び比較例において、特段の指定のない限り、「部」とは「質量部」を意味するものとする。
【0033】
(研磨パッドの製造)
【0034】
(研磨パッド1の製造)
ポリプロピレン樹脂シートを真空成形することにより、高さ0.85mmを有し、底辺が1.5mm角の四角錐台形状の凹部を複数有するプラスチック凹版72を作製した。
次に、このプラスチック凹版72に、不飽和ポリエステル樹脂(製品名:リゴラック、株式会社レゾナック製)を90部流し込んだ。硬化させる前に繊維材料としてポリプロピレンからなる繊維径150μm、目開き30μm、厚み300μmのメッシュ生地を樹脂50の上から内部に沈ませ、基部52に繊維材料が入り込むようにした。
30分かけて樹脂50を室温(25℃)で硬化させたのち、プラスチック凹版72から樹脂50を剥離させることによりプラスチック凹版72を取り除き、研磨パッド1を製造した。
【0035】
(研磨パッド2の製造)
研磨パッドの材料を不飽和ポリエステル樹脂の代わりにビニルエステル樹脂(製品名:リポキシ、株式会社レゾナック製)を用い、メッシュ生地の材料をポリプロピレン繊維の代わりにポリエチレン繊維を用いた以外は、研磨パッド1と同様の方法で、研磨パッド2を製造した。
【0036】
(研磨パッド3の製造)
研磨パッドの材料を不飽和ポリエステル樹脂の代わりに、砥粒(製品名:SQDP、サーフェイズ社製、粒径4μm)を12質量%含むUV硬化樹脂(製品名:SR368D NS(トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートアクリレート)、アルケマ社製)を用い、繊維材料を入り込むようにせず、紫外線を照射して硬化させたこと以外は、研磨パッド1と同様の方法で、研磨パッド3を製造した。
【0037】
なお、研磨パッド2及び3の製造において、研磨パッドの材料やメッシュ生地の材料、砥粒の有無等を変更しても、ポリプロピレン樹脂からなるプラスチック凹版を用いて、研磨パッド1同様研磨パッドを製造することもできることを確認した。
【0038】
(凹版からの剥離時)
剥離ローラーを用いて、プラスチック凹版72から樹脂50の剥離実験を行った。剥離ローラーとしては、例えば特開平9-114384号公報に記載されている粘着テープと棒状の剥離ローラーを組み合わせたものなどが用いられる。上記実施例によるプラスチック凹版72を用いたもの、及び凹版としてプラスチックの代わりにシリコーンゴムを用いたものに対し、凹版と樹脂50との剥離が可能な条件にて剥離実験を行ったところ、シリコーンゴム凹版を用いたものは剥離に大きな力を要し、剥離された樹脂50の凸部51の脱落や損傷が見られたのに対し、ポリプロピレン樹脂からなるプラスチック凹版72を用いて得られた研磨パッド1乃至研磨パッド3については、剥離時に凸部51の脱落や損傷は見られなかった。
本発明の研磨パッドの製造方法は、安価かつ凹版からの樹脂剥離を容易にした研磨パッドの製造方法であるため、光学材料、半導体デバイス、ハードディスク用のガラス基板等のラッピングや研磨に用いる研磨パッドを製造する方法として、産業上の利用可能性を有する。