(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144278
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】負極複合材料、その製造方法、負極、及びリチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/48 20100101AFI20241003BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H01M4/48
H01M4/36 C
H01M4/36 A
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024047009
(22)【出願日】2024-03-22
(31)【優先権主張番号】202310332070.6
(32)【優先日】2023-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】王麗
(72)【発明者】
【氏名】周燕
(72)【発明者】
【氏名】李于利
(72)【発明者】
【氏名】武志 一正
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050AA08
5H050AA19
5H050BA16
5H050CA01
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050EA11
5H050EA12
5H050FA12
5H050FA17
5H050GA02
5H050GA12
5H050GA16
5H050GA22
5H050GA27
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
【課題】本発明は、負極複合材料、その製造方法、負極、及びリチウムイオン二次電池を提供する。
【解決手段】負極複合材料は、負極活物質粒子と、負極活物質粒子の表面におけるLi
2CO
3及びLiOHと、を含み、負極活物質粒子は、ケイ素酸化物、Li
2SiO
3及びLi
2Si
2O
5を含む顆粒と、顆粒の表面の少なくとも一部に被覆された炭素被覆層と、を含み、負極活物質粒子の重量を基準にして、Li
2CO
3の含有量は0.01wt%超1wt%未満であり、LiOHの含有量は0.001wt%超0.1wt%未満であり、Li
2Si
2O
5とLi
2SiO
3との重量比Li
2Si
2O
5/Li
2SiO
3は1.00~10.00の範囲である。本発明の負極複合材料、その製造方法、負極、及びリチウムイオン二次電池によれば、残留リチウム量を大幅に低減させ、スラリーの加工性を改善し、リチウムイオン二次電池の初回クーロン効率及びサイクル特性を向上させることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極活物質粒子と、前記負極活物質粒子の表面におけるLi2CO3及びLiOHと、を含み、前記負極活物質粒子は、
ケイ素酸化物、Li2SiO3及びLi2Si2O5を含む顆粒と、
前記顆粒の表面の少なくとも一部に被覆された炭素被覆層と、を含み、
前記負極活物質粒子の重量を基準にして、Li2CO3の含有量は0.01wt%超1wt%未満であり、LiOHの含有量は0.001wt%超0.1wt%未満であり、Li2Si2O5とLi2SiO3との重量比Li2Si2O5/Li2SiO3は1.00~10.00の範囲である、ことを特徴とする負極複合材料。
【請求項2】
前記負極活物質粒子の重量を基準にして、Li2SiO3の含有量は1.0wt超%48.0wt%未満である、ことを特徴とする請求項1に記載の負極複合材料。
【請求項3】
Li2SiO3は、前記顆粒内で前記顆粒の表面に近い位置から前記顆粒の中心に向かうに従って減少するように分布しており、かつ、Li2Si2O5は、Li2SiO3よりも前記顆粒の中心に近く分布している、ことを特徴とする請求項1に記載の負極複合材料。
【請求項4】
前記炭素被覆層は前記顆粒の表面全体に被覆される、ことを特徴とする請求項1に記載の負極複合材料。
【請求項5】
前記ケイ素酸化物はSiOx(0.5≦x≦1.6)である、ことを特徴とする請求項1に記載の負極複合材料。
【請求項6】
前記ケイ素酸化物中のケイ素は、サイズが5.0nm~12.0nmの範囲である結晶ケイ素の形態で存在する、ことを特徴とする請求項1に記載の負極複合材料。
【請求項7】
前記負極複合材料のラマンスペクトルにおけるDピークとGピークとの強度比ID/IGが、0.8超2.0未満、好ましくは、1.5超1.8未満である、ことを特徴とする請求項1に記載の負極複合材料。
【請求項8】
前記負極活物質粒子の重量を基準にして、前記炭素被覆層の被覆量は、1wt%~30wt%の範囲である、ことを特徴とする請求項1に記載の負極複合材料。
【請求項9】
負極複合材料を製造するための方法であって、
炭素源を用いて、ケイ素酸化物前駆体に炭素被覆処理を行い、炭素被覆ケイ素酸化物を形成するステップと、
前記炭素被覆ケイ素酸化物とリチウム源とを混合して第1混合物を形成し、前記第1混合物に第1熱処理を行い、仮焼生成物を形成し、その後、前記仮焼生成物に第2熱処理を行い、プレリチウム化生成物を形成するステップと、
前記プレリチウム化生成物を洗浄処理して、前記負極複合材料を形成するステップと、を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項10】
前記洗浄処理は、前記プレリチウム化生成物を、5wt%~20wt%の固形分となるように、水、アルコール又は酸と混合し、第2混合物を形成し、前記第2混合物を超音波処理した後、分散させ、次に、吸引濾過し、最後に、吸引濾過後の物質を乾燥することを含む、ことを特徴とする請求項9に記載の負極複合材料を製造するための方法。
【請求項11】
前記酸は、塩酸、クエン酸、シュウ酸、リン酸、亜硫酸、酢酸、塩素酸、次亜塩素酸、及びホウ酸から選択される少なくとも1種である、ことを特徴とする請求項10に記載の負極複合材料を製造するための方法。
【請求項12】
前記リチウム源と前記炭素被覆ケイ素酸化物との重量比が、5:95~40:60の範囲である、ことを特徴とする請求項9に記載の負極複合材料を製造するための方法。
【請求項13】
前記第1熱処理の温度は400℃~750℃の範囲であり、前記第1熱処理の時間は1h~5hの範囲である、ことを特徴とする請求項9に記載の負極複合材料を製造するための方法。
【請求項14】
前記第2熱処理の温度は800℃以上925℃未満の範囲であり、前記第2熱処理の時間は1h~6hの範囲である、ことを特徴とする請求項9に記載の負極複合材料を製造するための方法。
【請求項15】
前記超音波処理の時間は1min~30minの範囲である、ことを特徴とする請求項10に記載の負極複合材料を製造するための方法。
【請求項16】
前記分散の時間は8h~48hの範囲である、ことを特徴とする請求項10に記載の負極複合材料を製造するための方法。
【請求項17】
前記炭素源は、アルカン、アルケン、及びアルキンのうちの少なくとも1種を含む、ことを特徴とする請求項9に記載の負極複合材料を製造するための方法。
【請求項18】
前記アルコールは、エタノール、イソプロパノール、及びブタノールから選択される少なくとも1種である、ことを特徴とする請求項10に記載の負極複合材料を製造するための方法。
【請求項19】
請求項1~8のいずれか1項に記載の負極複合材料を含む、ことを特徴とするリチウムイオン二次電池負極。
【請求項20】
正極と、負極と、セパレータと、を含むリチウムイオン二次電池であって、
前記負極は、請求項1~8のいずれか1項に記載の負極複合材料を含む、ことを特徴とするリチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池の分野に関し、具体的には、負極複合材料、該負極複合材料を製造するための方法、並びに、該負極複合材料を含む負極及びリチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子技術の発展に伴い、電子機器のエネルギー供給を担当する電池装置の需要が高まっている。現在、より多くの電力を貯蔵し、大電力を出力できる電池が求められている。従来の鉛電池やニッケル水素電池などは、スマートフォンなどのモバイル機器や蓄電システムなどの据え置き機器などの新しい電子機器の要件に対応できなくなっている。そのため、リチウムイオン二次電池が注目を集めている。リチウムイオン二次電池の開発において、その容量及び特性の向上が効果的に行われてきた。リチウムイオン二次電池は、エネルギー密度が高く、動作電圧が高く、サイクル寿命が長く、環境汚染が少ないなどの優位性を持ち、現在の世界で発展の潜在力を持つ環境保全型の新たな高エネルギー化学電源となっている。
【0003】
リチウムイオン二次電池は、正極と、負極材料を含む負極と、電解液とを備える。複数種類の負極材料が開発されているが、その中でもケイ素系負極材料は、有望な負極材料の1種である。従来技術では、ケイ素系負極材料の特性を向上させるためにプレリチウム化技術を採用し、ケイ素系負極材料の残留リチウム量を制御することが開示されているが、従来技術では、ケイ素系負極材量の残留リチウム量制御の上限及び下限が高く、負極材料を含むスラリーの加工性を改善することが困難であり、リチウムイオン二次電池の初回クーロン効率及びサイクル特性を効果的に向上させることが困難であった。そのため、新たな負極複合材料、この負極複合材料を製造するための方法、この負極複合材料を含む負極、及びリチウムイオン二次電池の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の主な目的は、負極材料の残留リチウム量が高すぎ、スラリーの加工性を改善することが困難であり、リチウムイオン二次電池の初回クーロン効率及びサイクル特性を効果的に向上させることが困難であるという従来技術の問題を解決するために、負極複合材料、該負極複合材料を製造するための方法、並びに、該負極複合材料を含む負極及びリチウムイオン二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成させるために、本発明の一態様によれば、
負極活物質粒子と、負極活物質粒子の表面におけるLi2CO3及びLiOHと、を含み、該負極活物質粒子は、ケイ素酸化物、Li2SiO3及びLi2Si2O5を含む顆粒と、顆粒の表面の少なくとも一部に被覆された炭素被覆層と、を含み、負極活物質粒子の重量を基準にして、Li2CO3の含有量は0.01wt%超1wt%未満であり、LiOHの含有量は0.001wt%超0.1wt%未満であり、Li2Si2O5とLi2SiO3との重量比Li2Si2O5/Li2SiO3は1.00~10.00の範囲である、負極複合材料を提供する。
【0006】
さらに、前記負極複合材料において、負極活物質粒子の重量を基準にして、Li2SiO3の含有量は1.0wt超%48.0wt%未満である。
【0007】
さらに、前記負極複合材料において、Li2SiO3は、顆粒内で顆粒の表面に近い位置から顆粒の中心に向かうに従って減少するように分布しており、かつ、Li2Si2O5は、Li2SiO3よりも顆粒の中心に近く分布している。
【0008】
さらに、前記負極複合材料において、炭素被覆層は顆粒の表面全体に被覆される。
【0009】
さらに、前記負極複合材料において、ケイ素酸化物はSiOx(0.5≦x≦1.6)である。
【0010】
さらに、前記負極複合材料において、ケイ素酸化物中のケイ素は、サイズが5.0nm~12.0nmの範囲である結晶ケイ素の形態で存在する。
【0011】
さらに、前記負極複合材料において、負極複合材料のラマンスペクトルにおけるDピークとGピークとの強度比ID/IGが、0.8超2.0未満、好ましくは、1.5超1.8未満である。
【0012】
さらに、前記負極複合材料において、負極活物質粒子の重量を基準にして、炭素被覆層の被覆量は、1wt%~30wt%の範囲である。
【0013】
本発明の別の態様によれば、負極複合材料を製造するための方法であって、
炭素源を用いて、ケイ素酸化物前駆体に炭素被覆処理を行い、炭素被覆ケイ素酸化物を形成するステップと、
炭素被覆ケイ素酸化物とリチウム源とを混合して第1混合物を形成し、第1混合物に第1熱処理を行い、仮焼生成物を形成し、その後、仮焼生成物に第2熱処理を行い、プレリチウム化生成物を形成するステップと、
プレリチウム化生成物を洗浄処理して、負極複合材料を形成するステップと、を含む、方法を提供する。
【0014】
さらに、前記負極複合材料を製造するための方法において、洗浄処理は、プレリチウム化生成物を、好ましくは5wt%~20wt%の固形分となるように、水、アルコール又は酸と混合し、第2混合物を形成し、第2混合物を超音波処理した後、分散させ、次に、吸引濾過し、最後に、吸引濾過後の物質を乾燥することを含む。
【0015】
さらに、前記負極複合材料を製造するための方法において、酸は、塩酸、クエン酸、シュウ酸、リン酸、亜硫酸、酢酸、塩素酸、次亜塩素酸、及びホウ酸から選択される少なくとも1種である。
【0016】
さらに、前記負極複合材料を製造するための方法において、リチウム源と炭素被覆ケイ素酸化物との重量比が、5:95~40:60の範囲である。
【0017】
さらに、前記負極複合材料を製造するための方法において、第1熱処理の温度は400℃~750℃の範囲であり、第1熱処理の時間は1h~5hの範囲である。
【0018】
さらに、前記負極複合材料を製造するための方法において、第2熱処理の温度は800℃以上925℃未満の範囲であり、第2熱処理の時間は1h~6hの範囲である。
【0019】
さらに、前記負極複合材料を製造するための方法において、超音波処理の時間は1min~30minの範囲である。
【0020】
さらに、前記負極複合材料を製造するための方法において、分散の時間は8h~48hの範囲である。
【0021】
さらに、前記負極複合材料を製造するための方法において、炭素源は、アルカン、アルケン、及びアルキンのうちの少なくとも1種を含む。
【0022】
さらに、前記負極複合材料を製造するための方法において、アルコールは、エタノール、イソプロパノール、及びブタノールから選択される少なくとも1種である。
【0023】
本発明の更なる態様によれば、前述の負極複合材料を含むリチウムイオン二次電池負極を提供する。
【0024】
本発明の更なる態様によれば、正極と、負極と、セパレータと、を含み、該負極は前述の負極複合材料を含むリチウムイオン二次電池を提供する。
【0025】
本発明の負極複合材料、該負極複合材料を製造するための方法、並びに、該負極複合材料を含む負極及びリチウムイオン二次電池によれば、残留リチウム量を大幅に低減させ、スラリーの加工性を改善し、リチウムイオン二次電池の初回クーロン効率及びサイクル特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態に係る負極複合材料の構造概略図を示す。
【
図2】実施例1~10、並びに比較例1~3、5、7、及び9の負極複合材料中の結晶ケイ素のサイズと、Li
2Si
2O
5とLi
2SiO
3との重量比Li
2Si
2O
5/Li
2SiO
3との間の関係図を示し、縦座標は、負極複合材料中の結晶ケイ素のサイズ、横座標は、Li
2Si
2O
5とLi
2SiO
3との重量比Li
2Si
2O
5/Li
2SiO
3である。
【
図3】実施例1~8、並びに比較例1、3、4、6、8、及び9の50サイクル後の放電容量維持率(%)と、負極複合材料のラマンスペクトルにおけるDピークとGピークとの強度比I
D/I
Gとの間の関係図を示し、縦座標は、50サイクル後の放電容量維持率(%)、横座標は、負極複合材料のラマンスペクトルにおけるDピークとGピークとの強度比I
D/I
Gである。
【
図4】実施例2の各エッチング深さでのLi 1s XPS(X線光電子スペクトル)のスペクトルを示す。
【
図5】比較例1の各エッチング深さでのLi 1s XPS(X線光電子スペクトル)のスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
なお、本願の様々な実施例及び実施例の特徴は、矛盾することなく相互に組み合わされてもよい。以下、実施例を参照して本発明を詳細に説明する。以下の実施例は例示的なものにすぎず、本発明の保護範囲を制限するものではない。
【0028】
背景技術に記載の通り、従来技術では、負極材料の残留リチウム量が高すぎ、負極材料を含むスラリーの加工性を改善することが困難であり、リチウムイオン二次電池の初回クーロン効率及びサイクル特性を効果的に向上させることが困難である。従来技術における問題に対して、本発明の代表的な実施形態では、負極活物質粒子と、負極活物質粒子の表面におけるLi2CO3及びLiOHと、を含み、該負極活物質粒子は、ケイ素酸化物、Li2SiO3及びLi2Si2O5を含む顆粒と、顆粒の表面の少なくとも一部に被覆された炭素被覆層と、を含み、負極活物質粒子の重量を基準にして、Li2CO3の含有量は0.01wt%超1wt%未満であり、LiOHの含有量は0.001wt%超0.1wt%未満であり、Li2Si2O5とLi2SiO3との重量比Li2Si2O5/Li2SiO3は1.00~10.00の範囲である、負極複合材料が提供される。
【0029】
残留リチウム値が高いと、負極複合材料を含むスラリーの加工性に影響を与え、負極複合材料を用いてスラリーを製造する過程でスラリーが「ゼリー」化しやすくなる。従来技術では、リチウム含有化合物の分布及びLi2Si2O5とLi2SiO3との重量比Li2Si2O5/Li2SiO3が残留リチウムの制御に与える影響が明らかにされていない。本発明者らは、多くの実験を行った結果、意外なことに、リチウム含有化合物の負極複合材料での分布を設計し、かつ、Li2Si2O5とLi2SiO3との重量比Li2Si2O5/Li2SiO3を調節することによって、結晶ケイ素のサイズを調節できるだけでなく、残留リチウムの制御や最適化にも有利であり、残留リチウム量を大幅に低減させることができ、負極複合材料を用いてスラリーを製造する過程でのスラリーの「ゼリー」化を回避することができ、スラリーの加工性を改善することができ、リチウムイオン二次電池の初回クーロン効率及びサイクル特性を向上させることができることを意味出した。したがって、本発明の負極複合材料は、残留リチウム量が顕著に低下し、スラリーの加工性を改善することができ、リチウムイオン二次電池の初回クーロン効率及びサイクル特性を向上させることができる。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態では、本発明の負極複合材料において、負極活物質粒子の重量を基準にして、Li2SiO3の含有量は1.0wt超%48.0wt%未満である。従来技術では、水に可溶なLi2SiO3の量に対する制御が明確ではなく、また、水に可溶なLi2SiO3の量が電気化学的特性に与える影響についても綿密な研究が行われていない。本発明者らは、意外なことに、Li2SiO3の含有量を上記の範囲にすることによって、十分にプレリチウム化された負極複合材料の取得を確保することができ、しかも、リチウムイオン二次電池の初回クーロン効率及びサイクル特性を向上させることができる。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態では、本発明の負極複合材料において、Li
2SiO
3は、顆粒内で顆粒の表面に近い位置から顆粒の中心に向かうに従って減少するように分布しており、Li
2Si
2O
5は、Li
2SiO
3よりも顆粒の中心に近く分布している。上記の水に可溶なLi
2SiO
3及び水に不溶なLi
2Si
2O
5の負極複合材料での分布により、残留リチウムの制御や最適化に有利であり、残留リチウム量を大幅に低減させ、スラリーの加工性を改善し、リチウムイオン二次電池の初回クーロン効率及びサイクル特性を向上させることができる。
図1は本発明の一実施形態に係る負極複合材料の構造概略図を示す。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態では、本発明の負極複合材料において、炭素被覆層は顆粒の表面全体に被覆されてもよく、それによって、負極複合材料の導電性を向上させ、初回クーロン効率を高め、残留リチウム量をより効果的に低下させ、スラリーの加工性を改善することができる。
【0033】
本願におけるケイ素酸化物には、本分野で負極材料によく使用されているケイ素酸化物が使用可能である。本発明のいくつかの実施形態では、本発明の負極複合材料において、ケイ素酸化物は、SiOx(0.5≦x≦1.6、好ましくは0.8≦x≦1.2、最も好ましくは、x=1.0)であってもよい。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態では、本発明の負極複合材料において、ケイ素酸化物中のケイ素は、サイズが5.0nm~12.0nmの範囲、好ましくは、サイズが5.0nm~11.5nmの範囲の結晶ケイ素の形態で存在する。結晶ケイ素のサイズを上記の範囲にすることによって、負極複合材料の体積膨張を小さくすることができ、優れたサイクル特性を得ることができ、かつ、負極複合材料の残留リチウム量の低下とリチウムイオン二次電池のサイクル特性の向上とを両立させることができる。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態では、本発明の負極複合材料において、負極複合材料のラマンスペクトルにおけるDピークとGピークとの強度比ID/IGが、0.8超2.0未満、好ましくは、1.5超1.8未満である。負極複合材料のラマンスペクトルにおけるDピークとGピークとの強度比ID/IGを上記の範囲にすることによって、炭素被覆層の導電性をより良好なものとすることができ、リチウムイオン二次電池に優れたサイクル特性を持たせることができる。Dバンド(~1350cm-1)及びGバンド(~1580cm-1)のピーク強度ID及びIGは、それぞれラマン分光試験によって得られる。使用されるラマン装置は、例えばモデルRenishaw製Qontorであり、使用される波数範囲は、例えば100~1800cm-1であり、使用されるレーザー波長は、例えば532nmである。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態では、本発明の負極複合材料において、負極活物質粒子の重量を基準にして、炭素被覆層の被覆量は、1wt%~30wt%の範囲、好ましくは、3wt%~20wt%の範囲、より好ましくは、5wt%~10wt%の範囲である。炭素被覆層の被覆量を上記の範囲にすることによって、材料の容量と被覆均一性とのバランスをよくとることができる。
【0037】
本発明の別の代表的な実施形態では、炭素源を用いて、ケイ素酸化物前駆体に炭素被覆処理を行い、炭素被覆ケイ素酸化物を形成するステップと、炭素被覆ケイ素酸化物とリチウム源とを混合して第1混合物を形成し、第1混合物に第1熱処理を行い、仮焼生成物を形成し、その後、仮焼生成物に第2熱処理を行い、プレリチウム化生成物を形成するステップと、プレリチウム化生成物を洗浄処理して、負極複合材料を形成するステップと、を含む、負極複合材料を製造するための方法が提供される。
【0038】
本発明の負極複合材料を製造するための方法は、残留リチウムの制御や最適化に有利であり、残留リチウム量を大幅に低減させ、負極複合材料を用いてスラリーを製造する過程でのスラリーの「ゼリー」化を回避することができ、スラリーの加工性を改善することができ、リチウムイオン二次電池の初回クーロン効率及びサイクル特性を向上させることができ、しかも、スラリーによるガス発生を阻害できる。本発明に係る上記の方法によって得られた負極複合材料は、残留リチウム量が極めて低く、スラリーの加工性を改善することができ、リチウムイオン二次電池の初回クーロン効率及びサイクル特性を向上させることができる。
【0039】
本発明におけるケイ素酸化物前駆体、例えばSiOx(0.5≦x≦1.6)は、本分野の常法によって製造することができる。本発明のいくつかの実施形態では、ケイ素酸化物前駆体は、以下の工程によって製造することができる。所定の粒子径のケイ素粉末及びシリカを約1.1:1のモル比で混合し、その後、バイブレータに置いて約12h振動させることで均一に混合し、均一に混合した上記の物質約1kgをブロックにプレスし、その後、ブロックを真空昇華炉に入れて1200℃~1500℃の温度に加熱し、真空度を0~30Pa、加熱時間を8h~10h、収集端の温度を400℃~800℃に調整することによって塊状ケイ素酸化物前駆体を製造し、塊状ケイ素酸化物前駆体を破砕機に入れてミリメートルスケールまで破砕し、その後、ミリメートルスケールのケイ素酸化物前駆体をジェット粉砕機に入れて粉砕し、気流分級機により粒子径の異なる粉体を分級し、最後に、粒子径の異なる粉体をサイズ別にブレンドし、最終的に、所望の粒子径のケイ素酸化物前駆体を得る。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態では、本発明のいくつかの実施形態では、上記の負極複合材料を製造するための方法において、50Pa~10000Paの圧力、600℃~1000℃の温度で、アルカン、アルケン、及びアルキンのうちの少なくとも1種を炭素源として、ケイ素酸化物前駆体の表面に化学気相成長することで、ケイ素酸化物前駆体に炭素被覆処理を行い、炭素被覆ケイ素酸化物を形成する。本発明のいくつかの実施形態では、炭素被覆処理は、ロータリーキルン、固定層や流動層などの装置で行われる。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態では、前記負極複合材料を製造するための方法において、洗浄処理は、プレリチウム化生成物を、好ましくは、5wt%~20wt%、例えば5wt%~10wt%、10wt%~15wt%又は15wt%~20wt%の固形分となるように、水、アルコール又は酸と混合し、第2混合物を形成し、第2混合物を超音波処理し、その後、分散させ、次に、吸引濾過し、最後に、吸引濾過後の物質を乾燥することを含む。洗浄処理においては、水を利用する場合、Li2CO3、LiOHやLi2SiO3のようなアルカリ性物質を溶解し、アルコールを利用する場合、LiOHを微溶解し、酸を利用する場合、洗浄時にプレリチウム化生成物の表面に生成されたアルカリを中和することができる。超音波処理により、プレリチウム化生成物をより確実に洗浄し、良好な洗浄効果を確保することができ、リチウムイオン二次電池のサイクル特性を向上させることができる。洗浄処理により、残留リチウム量を大幅に低減させ、負極複合材料を用いてスラリーを製造する過程でのスラリーの「ゼリー」化を回避することができ、スラリーの加工性を改善することができ、リチウムイオン二次電池の初回クーロン効率及びサイクル特性をさらに向上させることができる。Li2Si2O5が水に不溶で、Li2SiO3が水に可溶であるため、洗浄処理によって、Li2Si2O5とLi2SiO3との重量比Li2Si2O5/Li2SiO3を調節することもできる。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態では、製造されたプレリチウム化生成物、例えばプレリチウム化SiOx(0.5≦x≦1.6)材料を、5wt%~20wt%の固形分となるように、水と混合し、第2混合物を形成し、常温で第2混合物を1min~30min超音波処理してから、マグネチックスターラを用いて第2混合物を8h~48h分散させ、次に、吸引濾過し、その後、純水を濾紙上の物質上に注ぎ、吸引濾過により2回洗浄し、最後に、吸引濾過後の物質を100℃~120℃で3~8時間真空乾燥する。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態では、前記負極複合材料を製造するための方法において、洗浄時にプレリチウム化生成物の表面に生成されたアルカリをより中和するために、酸としては、塩酸、クエン酸、シュウ酸、リン酸、亜硫酸、酢酸、塩素酸、次亜塩素酸、及びホウ酸から選択される少なくとも1種である。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態では、製造されたプレリチウム化生成物、例えばプレリチウム化SiOx(0.5≦x≦1.6)材料を、5wt%~20wt%の固形分となるように、塩酸、クエン酸、シュウ酸、リン酸、亜硫酸、酢酸、塩素酸、次亜塩素酸、及びホウ酸などのうちの少なくとも1種、例えば濃度1mol/Lのクエン酸と混合し、第2混合物を形成し、常温で第2混合物を1min~30min超音波処理してから、マグネチックスターラを用いて第2混合物を8h~48h分散させ、次に、吸引濾過し、その後、純水を濾紙上の物質上に注ぎ、吸引濾過により2回洗浄し、最後に、吸引濾過後の物質を100℃~120℃で3~8時間真空乾燥する。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態では、前記負極複合材料を製造するための方法において、リチウム源と炭素被覆ケイ素酸化物との重量比は、5:95~40:60の範囲である。リチウム源と炭素被覆ケイ素酸化物との重量比を上記の範囲にすることによって、ケイ素酸化物の十分なプレリチウム化を確保し、残留リチウム量を低下させ、リチウムイオン二次電池の初回クーロン効率及びサイクル特性をさらに向上させることができる。本発明のいくつかの実施形態では、リチウム源は、リチウムインゴット、リチウム金属粉末、及びリチウム箔のうちのいずれかを含んでもよい。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態では、前記負極複合材料を製造するための方法において、第1熱処理の温度は400℃~750℃の範囲であり、第1熱処理の時間は1h~5hの範囲である。第1熱処理の温度及び時間を上記の範囲にすることによって、ケイ素酸化物の十分なプレリチウム化を確保することができ、残量リチウム量を低下させることができ、リチウムイオン二次電池の初回クーロン効率及びサイクル特性をさらに向上させることができる。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態では、前記負極複合材料を製造するための方法において、第2熱処理の温度は800℃以上925℃未満の範囲であり、第2熱処理の時間は1h~6hの範囲である。第2熱処理の温度及び時間を上記の範囲にすることによって、ケイ素酸化物の十分なプレリチウム化を確保することができ、結晶ケイ素のサイズが大きすぎることを回避することができ、残留リチウム量を大幅に低減させ、リチウムイオン二次電池の初回クーロン効率及びサイクル特性をさらに向上させることができる。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態では、不活性雰囲気アルゴンの保護下、リチウム源と炭素被覆ケイ素酸化物と、を5:95~40:60の重量比で粉砕して混合し、第1混合物を形成し、その後、第1混合物をロータリーキルンに入れて、アルゴン雰囲気下、400℃~750で保温して1h~5h仮焼し、炭素被覆ケイ素酸化物とリチウム金属とを十分に反応させ、次に、800℃~924℃で1h~6h熱処理し、それによって、プレリチウム化の深さ及びリチウム含有ケイ酸塩の量を調節し、プレリチウム化生成物を得る。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態では、前記負極複合材料を製造するための方法において、超音波処理の時間は1min~30minの範囲である。超音波処理の時間を上記の範囲にすることによって、プレリチウム化生成物を十分に洗浄し、良好な洗浄効果を確保しつつ、プレリチウム化生成物の顆粒へのダメージを回避することができる。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態では、前記負極複合材料を製造するための方法において、主にエネルギー消費量、時間コストや洗浄効果を考慮して、分散時間を8h~48hの範囲にしてもよい。分散時間が短すぎると、洗浄が不十分である恐れがあり、分散時間が長すぎると、エネルギー消費量が高く、時間がかかる。分散時間を上記の範囲にすることによって、良好な洗浄効果を確保できるだけではなく、ネルギー消費量や時間コストを低減させることができる。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態では、前記負極複合材料を製造するための方法において、ケイ素酸化物の表面の少なくとも一部をよりよく炭素被覆し、良好な被覆効果を得るために、炭素源は、アルカン、アルケン、及びアルキンのうちの少なくとも1種を含む。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態では、前記負極複合材料を製造するための方法において、アルコールは、エタノール、イソプロパノール、及びブタノールから選択される少なくとも1種であってもよく、それによって、より優れた洗浄効果が得られる。アルコールは、好ましくは、LiOHを微溶解するエタノールである。エタノールを用いて清洗する場合、エタノールが揮発しやすいため、後続ステップにおける乾燥に有利である。エタノールに水が含有されるのが一般的であり、エタノールに含有される水は、Li2CO3、LiOHやLi2SiO3のようなアルカリ性物質を溶解することができる。エタノールとしては、通常、濃度75%のエタノールが使用される。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態では、製造されたプレリチウム化生成物、例えばプレリチウム化SiOx(0.5≦x≦1.6)材料を、5wt%~20wt%の固形分となるように、エタノール、イソプロパノール、及びブタノールなどのうちの少なくとも1種と混合し、第2混合物を形成し、常温で第2混合物を1min~30min超音波処理してから、マグネチックスターラを用いて第2混合物を8h~48h分散させ、次に、吸引濾過し、その後、純水を濾紙上の物質上に注ぎ、吸引濾過により2回洗浄し、最後に、吸引濾過後の物質を100℃~120℃で3~8時間真空乾燥する。
【0054】
本発明の更なる代表的な実施形態では、前述の負極複合材料を含むリチウムイオン二次電池負極が提供される。本発明のリチウムイオン二次電池負極は前述の負極複合材料を含むため、残留リチウム量を大幅に低減させ、スラリーの加工性を改善し、リチウムイオン二次電池の初回クーロン効率及びサイクル特性を向上させることができる。
【0055】
本発明の負極板は、当該分野の常法によって作製され得る。例えば、本発明の負極複合材料、導電剤、及びバインダを溶媒である水に分散させ、均一な負極スラリーを形成し、負極スラリーを負極集流体上に塗布し、ベークして、負極板を得る。導電剤は、導電性カーボンブラック、導電性グラファイト、気相成長炭素繊維、カーボンナノチューブ、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。バインダは、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリイミド(PI)などのうちの1つ種又は複数であってもよく、好ましくはポリアクリル酸(PAA)バインダである。
【0056】
本発明の更なる代表的な実施形態では、正極と、負極と、セパレータと、を含み、該負極は、前述の負極複合材料を含む、リチウムイオン二次電池が提供される。本発明のリチウムイオン二次電池が、前述の負極複合材料を含むため、残留リチウム量を大幅に低減させ、スラリーの加工性を改善し、リチウムイオン二次電池の初回クーロン効率及びサイクル特性を向上させることができる。
【0057】
本発明の正極は、正極集流体と、正極活性材料を含有する正極活性材料層と、を含む。正極集流体の2つの表面上に正極活性材料層が形成されている。正極集流体として、例えばアルミニウム箔、ニッケル箔やステンレス鋼箔のような金属箔が使用可能である。
【0058】
正極活性材料層には、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な1種又は複数の正極材料が正極活性材料として含まれてもよく、必要に応じて、他の材料、例えば、正極バインダ及び/又は正極導電剤が含まれていてもよい。
【0059】
好ましくは、正極材料はリチウム含有化合物である。このようなリチウム含有化合物の例として、リチウム-遷移金属複合酸化物、リチウム-遷移金属リン酸塩化合物などが含まれる。リチウム-遷移金属複合酸化物は、Li及び1種又は2種以上の遷移金属元素を構成元素として含む酸化物であり、リチウム-遷移金属リン酸塩化合物は、Li及び1種又は2種以上の遷移金属元素を構成元素として含むリン酸塩化合物である。遷移金属元素は、Co、Ni、MnやFeなどのうちの1種又は複数種が好適である。
【0060】
リチウム-遷移金属複合酸化物の例として、例えばLiCoO2やLiNiO2などが含まれてもよい。リチウム-遷移金属リン酸塩化合物の例として、例えばLiFePO4やLiFe1-uMnuPO4(0<u<1)などが含まれてもよい。
【0061】
本発明の負極は、負極集流体と、負極複合材料を含有する負極活性材料層と、を含む。負極集流体の2つの表面上に負極活性材料層が形成されている。負極集流体として、例えば銅(Cu)箔、炭素被覆銅箔、ニッケル箔やステンレス鋼箔の金属箔が使用可能である。
【0062】
本発明のセパレータは、電池の正極と負極を仕切るものであり、リチウムイオンを通過させるとともに、正極と負極との間の接触による電流短絡を防止することができる。セパレータは、例えば、合成樹脂又はセラミックで形成される多孔質膜であり、また、2種又は複数種類の多孔質膜を積層した積層膜であってもよい。合成樹脂の例としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンやポリエチレンなどが含まれる。
【0063】
本発明の実施形態では、リチウムイオン二次電池を充電するときに、例えば、リチウムイオンは、正極から放出され、セパレータに浸漬された電解液を介して負極に嵌め込まれる。リチウムイオン二次電池を放電する場合、例えば、リチウムイオンは、負極から放出され、セパレータに浸漬された電解液を介して正極に嵌め込まれる。
【0064】
以下、特定実施例を参照して本願をさらに詳細に説明するが、これらの実施例は、本願が保護を要求する範囲を制限するものではない。
【0065】
実施例1
負極複合材料の製造
50Paの圧力、920℃の温度で、メタンを炭素源として、ケイ素酸化物前駆体SiOx(x=1)材料20gの表面に化学気相成長することで、ケイ素酸化物前駆体SiOx(x=1)材料を炭素被覆し、炭素被覆SiOx(x=1)材料21gを形成した。
【0066】
不活性雰囲気アルゴンの保護下、リチウムインゴットと炭素被覆SiOx(x=1)材料とを20:80の重量比で粉砕して混合し、第1混合物を形成し、その後、第1混合物をロータリーキルンに入れて、アルゴン雰囲気下、500℃で保温して3h仮焼し、炭素被覆SiOx材料とリチウム金属とを十分に反応させ、さらに850℃で3h熱処理し、プレリチウム化されたSiOx材料を得た。
【0067】
製造されたプレリチウム化SiOx材料と濃度1mol/Lの塩酸とを5wt%の固形分となるようにビーカーに取り、混合して第2混合物を形成し、常温で第2混合物を30min超音波処理してから、マグネチックスターラを用いて第2混合物を48h分散させ、次に、吸引濾過し、その後、純水を濾紙上の物質上に注ぎ、吸引濾過により2回洗浄し、最後に、吸引濾過後の物質を120℃で8時間真空乾燥し、負極複合材料を得た。
【0068】
負極片の製造
上記のプロセスで製造された負極複合材料4gを秤量し、該負極複合材料、導電剤としての導電性カーボンブラックSuper-P、及びバインダとしてのポリアクリル酸PAAを82:8:10の質量比で、適量の脱イオン水にて十分に撹拌して混合し、固形分を42wt%に調整することで均一な負極スラリーを形成し、その後、負極集流体である銅箔の表面上に負極スラリーを塗布し、乾燥して負極板を得た。
【0069】
電池の組み立て
製造された負極板、セパレータ、リチウムシート、ガスケット、及び電池ケースを順次積層して、100μlの電解液を注入し、封口機で封口し、所望の半電池を組み立てた。
【0070】
実施例2
不活性雰囲気アルゴンの保護下、リチウムインゴットと炭素被覆SiOx(x=1)材料とを15:85の重量比で粉砕して混合し、第1混合物を形成し、その後、第1混合物をロータリーキルンに入れて、アルゴン雰囲気下、450℃で保温して3h仮焼し、炭素被覆SiOx材料とリチウム金属とを十分に反応させ、さらに900℃で4h熱処理し、プレリチウム化されたSiOx材料を得たこと、
製造されたプレリチウム化SiOx材料と濃度1mol/Lの塩酸とを5wt%の固形分となるようにビーカーに取り、混合して第2混合物を形成し、常温で第2混合物を10min超音波処理してから、マグネチックスターラを用いて第2混合物を48h分散させ、次に、吸引濾過し、その後、純水を濾紙上の物質上に注ぎ、吸引濾過により2回洗浄し、最後に、吸引濾過後の物質を120℃で8時間真空乾燥し、負極複合材料を得たこと以外、実施例1と同様な方法によって半電池を製造した。
【0071】
実施例3
不活性雰囲気アルゴンの保護下、リチウムインゴットと炭素被覆SiOx(x=1)材料とを10:90の重量比で粉砕して混合し、第1混合物を形成し、その後、第1混合物をロータリーキルンに入れて、アルゴン雰囲気下、600℃で保温して2h仮焼し、炭素被覆SiOx材料とリチウム金属とを十分に反応させ、さらに920℃で5h熱処理し、プレリチウム化されたSiOx材料を得たこと、
製造されたプレリチウム化SiOx材料と濃度1mol/Lの塩酸とを15wt%の固形分となるようにビーカーに取り、混合して第2混合物を形成し、常温で第2混合物を5min超音波処理してから、マグネチックスターラを用いて第2混合物を16h分散させ、次に、吸引濾過し、その後、純水を濾紙上の物質上に注ぎ、吸引濾過により2回洗浄し、最後に、吸引濾過後の物質を120℃で8時間真空乾燥し、負極複合材料を得たこと以外、実施例1と同様な方法によって半電池を製造した。
【0072】
実施例4
不活性雰囲気アルゴンの保護下、リチウムインゴットと炭素被覆SiOx(x=1)材料とを5:95の重量比で粉砕して混合し、第1混合物を形成し、その後、第1混合物をロータリーキルンに入れて、アルゴン雰囲気下、400℃で保温して1h仮焼し、炭素被覆SiOx材料とリチウム金属とを十分に反応させ、さらに924℃で6h熱処理し、プレリチウム化されたSiOx材料を得たこと、
製造されたプレリチウム化SiOx材料と濃度1mol/Lの塩酸とを20wt%の固形分となるようにビーカーに取り、混合して第2混合物を形成し、常温で第2混合物を1min超音波処理してから、マグネチックスターラを用いて第2混合物を8h分散させ、次に、吸引濾過し、その後、純水を濾紙上の物質上に注ぎ、吸引濾過により2回洗浄し、最後に、吸引濾過後の物質を120℃で8時間真空乾燥し、負極複合材料を得たこと以外、実施例1と同様な方法によって半電池を製造した。
【0073】
実施例5
不活性雰囲気アルゴンの保護下、リチウムインゴットと炭素被覆SiOx(x=1)材料とを25:75の重量比で粉砕して混合し、第1混合物を形成し、その後、第1混合物をロータリーキルンに入れて、アルゴン雰囲気下、600℃で保温して4h仮焼し、炭素被覆SiOx材料とリチウム金属とを十分に反応させ、さらに850℃で2h熱処理し、プレリチウム化されたSiOx材料を得た以外、
製造されたプレリチウム化SiOx材料と濃度1mol/Lの塩酸とを5wt%の固形分となるようにビーカーに取り、混合して第2混合物を形成し、常温で第2混合物を20min超音波処理してから、マグネチックスターラを用いて第2混合物を36h分散させ、次に、吸引濾過し、その後、純水を濾紙上の物質上に注ぎ、吸引濾過により2回洗浄し、最後に、吸引濾過後の物質を120℃で8時間真空乾燥し、負極複合材料を得たこと以外、実施例1と同様な方法によって半電池を製造した。
【0074】
実施例6
不活性雰囲気アルゴンの保護下、リチウムインゴットと炭素被覆SiOx(x=1)材料とを30:70の重量比で粉砕して混合し、第1混合物を形成し、その後、第1混合物をロータリーキルンに入れて、アルゴン雰囲気下、600℃で保温して5h仮焼し、炭素被覆SiOx材料とリチウム金属とを十分に反応させ、さらに820℃で2h熱処理し、プレリチウム化されたSiOx材料を得たこと、
製造されたプレリチウム化SiOx材料と濃度1mol/Lの塩酸とを10wt%の固形分となるようにビーカーに取り、混合して第2混合物を形成し、常温で第2混合物を30min超音波処理してから、マグネチックスターラを用いて第2混合物を40h分散させ、次に、吸引濾過し、その後、純水を濾紙上の物質上に注ぎ、吸引濾過により2回洗浄し、最後に、吸引濾過後の物質を120℃で8時間真空乾燥し、負極複合材料を得たこと以外、実施例1と同様な方法によって半電池を製造した。
【0075】
実施例7
不活性雰囲気アルゴンの保護下、リチウムインゴットと炭素被覆SiOx(x=1)材料とを40:60の重量比で粉砕して混合し、第1混合物を形成し、その後、第1混合物をロータリーキルンに入れて、アルゴン雰囲気下、750℃で保温して5h仮焼し、炭素被覆SiOx材料とリチウム金属とを十分に反応させ、さらに800℃で1h熱処理し、プレリチウム化されたSiOx材料を得たこと、
製造されたプレリチウム化SiOx材料と濃度1mol/Lの塩酸とを5wt%の固形分となるようにビーカーに取り、混合して第2混合物を形成し、常温で第2混合物を30min超音波処理してから、マグネチックスターラを用いて第2混合物を48h分散させ、次に、吸引濾過し、その後、純水を濾紙上の物質上に注ぎ、吸引濾過により2回洗浄し、最後に、吸引濾過後の物質を120℃で8時間真空乾燥し、負極複合材料を得たこと以外、実施例1と同様な方法によって半電池を製造した。
【0076】
実施例8
不活性雰囲気アルゴンの保護下、リチウムインゴットと炭素被覆SiOx(x=1)材料とを20:80の重量比で粉砕して混合し、第1混合物を形成し、その後、第1混合物をロータリーキルンに入れて、アルゴン雰囲気下、550℃で保温して4h仮焼し、炭素被覆SiOx材料とリチウム金属とを十分に反応させ、さらに900℃で5h熱処理し、プレリチウム化されたSiOx材料を得たこと、
製造されたプレリチウム化SiOx材料と濃度1mol/Lの塩酸とを10wt%の固形分となるようにビーカーに取り、混合して第2混合物を形成し、常温で第2混合物を10min超音波処理してから、マグネチックスターラを用いて第2混合物を24h分散させ、次に、吸引濾過し、その後、純水を濾紙上の物質上に注ぎ、吸引濾過により2回洗浄し、最後に、吸引濾過後の物質を120℃で8時間真空乾燥し、負極複合材料を得たこと以外、実施例1と同様な方法によって半電池を製造した。
【0077】
実施例9
不活性雰囲気アルゴンの保護下、リチウムインゴットと炭素被覆SiOx(x=1)材料とを30:70の重量比で粉砕して混合し、第1混合物を形成し、その後、第1混合物をロータリーキルンに入れて、アルゴン雰囲気下、600℃で保温して5h仮焼し、炭素被覆SiOx材料とリチウム金属とを十分に反応させ、さらに820℃で2h熱処理し、プレリチウム化されたSiOx材料を得たこと、
製造されたプレリチウム化SiOx材料と濃度75%のエタノールとを、5wt%の固形分となるようにビーカーに取り、混合して第2混合物を形成し、常温で第2混合物を30min超音波処理してから、マグネチックスターラを用いて第2混合物を40h分散させ、次に、吸引濾過し、その後、純水を濾紙上の物質上に注ぎ、吸引濾過により2回洗浄し、最後に、吸引濾過後の物質を120℃で8時間真空乾燥し、負極複合材料を得たこと以外、実施例1と同様な方法によって半電池を製造した。
【0078】
実施例10
不活性雰囲気アルゴンの保護下、リチウムインゴットと炭素被覆SiOx(x=1)材料とを30:70の重量比で粉砕して混合し、第1混合物を形成し、その後、第1混合物をロータリーキルンに入れて、アルゴン雰囲気下、600℃で保温して5h仮焼し、炭素被覆SiOx材料とリチウム金属とを十分に反応させ、さらに820℃で2h熱処理し、プレリチウム化されたSiOx材料を得たこと、
製造されたプレリチウム化SiOx材料と純水とを5wt%の固形分となるようにビーカーに取り、混合して第2混合物を形成し、常温で第2混合物を30min超音波処理してから、マグネチックスターラを用いて第2混合物を48h分散させ、次に、吸引濾過し、その後、純水を濾紙上の物質上に注ぎ、吸引濾過により2回洗浄し、最後に、吸引濾過後の物質を120℃で8時間真空乾燥し、負極複合材料を得たこと以外、実施例1と同様な方法によって半電池を製造した。
【0079】
比較例1
不活性雰囲気アルゴンの保護下、リチウムインゴットと炭素被覆SiOx(x=1)材料とを50:50の重量比で粉砕して混合し、第1混合物を形成し、その後、第1混合物をロータリーキルンに入れて、アルゴン雰囲気下、750℃で保温して5h仮焼し、炭素被覆SiOx材料とリチウム金属とを十分に反応させ、さらに800℃で1h熱処理し、プレリチウム化されたSiOx材料を得たこと、
製造されたプレリチウム化SiOx材料と濃度1mol/Lの塩酸とを5wt%の固形分となるようにビーカーに取り、混合して第2混合物を形成し、常温で第2混合物を30min超音波処理してから、マグネチックスターラを用いて第2混合物を48h分散させ、次に、吸引濾過し、その後、純水を濾紙上の物質上に注ぎ、吸引濾過により2回洗浄し、最後に、吸引濾過後の物質を120℃で8時間真空乾燥し、負極複合材料を得たこと以外、実施例1と同様な方法によって半電池を製造した。
【0080】
比較例2
不活性雰囲気アルゴンの保護下、リチウムインゴットと炭素被覆SiOx(x=1)材料とを40:60の重量比で粉砕して混合し、第1混合物を形成し、その後、第1混合物をロータリーキルンに入れて、アルゴン雰囲気下、750℃で保温して5h仮焼し、炭素被覆SiOx材料とリチウム金属とを十分に反応させ、さらに800℃で1h熱処理し、プレリチウム化されたSiOx材料を得たこと、
プレリチウム化されたSiOx材料を洗浄処理せずに、プレリチウム化されたSiOx材料を負極複合材料として用いたこと以外、実施例1と同様な方法によって半電池を製造した。
【0081】
比較例3
不活性雰囲気アルゴンの保護下、リチウムインゴットと炭素被覆SiOx(x=1)材料とを5:95の重量比で粉砕して混合し、第1混合物を形成し、その後、第1混合物をロータリーキルンに入れて、アルゴン雰囲気下、400℃で保温して1h仮焼し、炭素被覆SiOx材料とリチウム金属とを十分に反応させ、さらに1000℃で6h熱処理し、プレリチウム化されたSiOx材料を得たこと、
製造されたプレリチウム化SiOx材料と濃度1mol/Lの塩酸とを20wt%の固形分となるようにビーカーに取り、混合して第2混合物を形成し、常温で第2混合物を1min超音波処理してから、マグネチックスターラを用いて第2混合物を8h分散させ、次に、吸引濾過し、その後、純水を濾紙上の物質上に注ぎ、吸引濾過により2回洗浄し、最後に、吸引濾過後の物質を120℃で8時間真空乾燥し、負極複合材料を得たこと以外、実施例1と同様な方法によって半電池を製造した。
【0082】
比較例4
不活性雰囲気アルゴンの保護下、リチウムインゴットと炭素被覆SiOx(x=1)材料とを5:95の重量比で粉砕して混合し、第1混合物を形成し、その後、第1混合物をロータリーキルンに入れて、アルゴン雰囲気下、350℃で保温して1h仮焼し、炭素被覆SiOx材料とリチウム金属とを十分に反応させ、さらに924℃で6h熱処理し、プレリチウム化されたSiOx材料を得たこと、
製造されたプレリチウム化SiOx材料と濃度1mol/Lの塩酸とを20wt%の固形分となるようにビーカーに取り、混合して第2混合物を形成し、常温で第2混合物を1min超音波処理してから、マグネチックスターラを用いて第2混合物を8h分散させ、次に、吸引濾過し、その後、純水を濾紙上の物質上に注ぎ、吸引濾過により2回洗浄し、最後に、吸引濾過後の物質を120℃で8時間真空乾燥し、負極複合材料を得たこと以外、実施例1と同様な方法によって半電池を製造した。
【0083】
比較例5
不活性雰囲気アルゴンの保護下、リチウムインゴットと炭素被覆SiOx(x=1)材料とを30:70の重量比で粉砕して混合し、第1混合物を形成し、その後、第1混合物をロータリーキルンに入れて、アルゴン雰囲気下、600℃で保温して5h仮焼し、炭素被覆SiOx材料とリチウム金属とを十分に反応させ、さらに820℃で2h熱処理し、プレリチウム化されたSiOx材料を得たこと、
製造されたプレリチウム化SiOx材料と純水とを5wt%の固形分となるようにビーカーに取り、混合して第2混合物を形成し、常温でマグネチックスターラを用いて第2混合物を48h分散させ、次に、吸引濾過し、その後、純水を濾紙上の物質上に注ぎ、吸引濾過により2回洗浄し、最後に、吸引濾過後の物質を120℃で8時間真空乾燥し、負極複合材料を得たこと以外、実施例1と同様な方法によって半電池を製造した。
【0084】
比較例6
不活性雰囲気アルゴンの保護下、リチウムインゴットと炭素被覆SiOx(x=1)材料とを2:98の重量比で粉砕して混合し、第1混合物を形成し、その後、第1混合物をロータリーキルンに入れて、アルゴン雰囲気下、400℃で保温して1h仮焼し、炭素被覆SiOx材料とリチウム金属とを十分に反応させ、さらに924℃で6h熱処理し、プレリチウム化されたSiOx材料を得たこと、
製造されたプレリチウム化SiOx材料と濃度1mol/Lの塩酸とを20wt%の固形分となるようにビーカーに取り、混合して第2混合物を形成し、常温で第2混合物を1min超音波処理してから、マグネチックスターラを用いて第2混合物を8h分散させ、次に、吸引濾過し、その後、純水を濾紙上の物質上に注ぎ、吸引濾過により2回洗浄し、最後に、吸引濾過後の物質を120℃で8時間真空乾燥し、負極複合材料を得たこと以外、実施例1と同様な方法によって半電池を製造した。
【0085】
比較例7
不活性雰囲気アルゴンの保護下、リチウムインゴットと炭素被覆SiOx(x=1)材料とを40:60の重量比で粉砕して混合し、第1混合物を形成し、その後、第1混合物をロータリーキルンに入れて、アルゴン雰囲気下、750℃で保温して5h仮焼し、炭素被覆SiOx材料とリチウム金属とを十分に反応させ、さらに800℃で1h熱処理し、プレリチウム化されたSiOx材料を得たこと、
製造されたプレリチウム化SiOx材料と濃度1mol/Lの塩酸とを5wt%の固形分となるようにビーカーに取り、混合して第2混合物を形成し、常温で第2混合物を超音波処理してから40min、マグネチックスターラを用いて第2混合物を48h分散させ、次に、吸引濾過し、その後、純水を濾紙上の物質上に注ぎ、吸引濾過により2回洗浄し、最後に、吸引濾過後の物質を120℃で8時間真空乾燥し、負極複合材料を得たこと以外、実施例1と同様な方法によって半電池を製造した。
【0086】
比較例8
不活性雰囲気アルゴンの保護下、リチウムインゴットと炭素被覆SiOx(x=1)材料とを5:95の重量比で粉砕して混合し、第1混合物を形成し、その後、第1混合物をロータリーキルンに入れて、アルゴン雰囲気下、400℃で保温して0.5h仮焼し、炭素被覆SiOx材料とリチウム金属とを十分に反応させ、さらに924℃で6h熱処理し、プレリチウム化されたSiOx材料を得たこと、
製造されたプレリチウム化SiOx材料と濃度1mol/Lの塩酸とを20wt%の固形分となるようにビーカーに取り、混合して第2混合物を形成し、常温で第2混合物を1min超音波処理してから、マグネチックスターラを用いて第2混合物を8h分散させ、次に、吸引濾過し、その後、純水を濾紙上の物質上に注ぎ、吸引濾過により2回洗浄し、最後に、吸引濾過後の物質を120℃で8時間真空乾燥し、負極複合材料を得たこと以外、実施例1と同様な方法によって半電池を製造した。
【0087】
比較例9
不活性雰囲気アルゴンの保護下、リチウムインゴットと炭素被覆SiOx(x=1)材料とを5:95の重量比で粉砕して混合し、第1混合物を形成し、その後、第1混合物をロータリーキルンに入れて、アルゴン雰囲気下、400℃で保温して1h仮焼し、炭素被覆SiOx材料とリチウム金属とを十分に反応させ、さらに924℃で7h熱処理し、プレリチウム化されたSiOx材料を得た以外、
製造されたプレリチウム化SiOx材料と濃度1mol/Lの塩酸とを20wt%の固形分となるようにビーカーに取り、混合して第2混合物を形成し、常温で第2混合物を1min超音波処理してから、マグネチックスターラを用いて第2混合物を8h分散させ、次に、吸引濾過し、その後、純水を濾紙上の物質上に注ぎ、吸引濾過により2回洗浄し、最後に、吸引濾過後の物質を120℃で8時間真空乾燥し、負極複合材料を得たこと以外、実施例1と同様な方法によって半電池を製造した。
【0088】
材料の物性のテスト
実施例1~10及び比較例1~9にける負極複合材料についてテストを行い、ID/IG、Li2CO3の含有量、LiOHの含有量、Li2SiO3の含有量、Li2Si2O5とLi2SiO3との重量比Li2Si2O5/Li2SiO3、及び結晶ケイ素のサイズの結果を得た。
【0089】
XRD(Druker Advanced D8)テスト結果からLi2Si2O5とLi2SiO3との質量百分率を算出し、Li2Si2O5とLi2SiO3との重量比Li2Si2O5/Li2SiO3を得た。
【0090】
Li2SiO3の含有量は、XRDパターンから算出された。
【0091】
XRD(Druker Advanced D8)テスト結果から結晶ケイ素のサイズを算出した(XRDスペクトルにおける結晶ケイ素ピークの半値幅から、Scherrer式により算出される)。
【0092】
XRDテスト条件:10~80°、1°/min。
【0093】
中和滴定法:負極複合材料と純水とを1:9の質量比でビーカーに取り、混合し、常温でマグネチックスターラを用いて負極複合材料を1h分散させ、1h静置し、該分散液をろ過した。酸アルカリ自動滴定装置で、0.2Mの塩酸を用いて、得られた10mL濾過液を自動的に滴定し、第1終点(a mL)及び第2終点(b mL)を求めた。
【0094】
(数1)
Li2CO3の含有量=[純水量(g)/濾過液量(g)]×2×(b/1000)×(塩酸滴定量の当量濃度×係数)×(1/2)×(Li2CO3のモル質量)×[100(%)/試料量(g)]
【0095】
(数2)
LiOHの含有量=[純水量(g)/濾過液量(g)]×[(a-b)/1000]×(塩酸滴定量の当量濃度×係数)×(1/2)×(LiOHのモル質量)×[100(%)/試料量(g)]。
【0096】
電池性能のテスト
25℃の環境、0V~1.5Vの電圧で、実施例1~10及び比較例1~9における半電池について、充放電テストを行った。まず、上記の実施例及び比較例における半電池を、25℃の環境下、0.1Cの充放電電流で1回(充放電電圧の範囲は0V~1.5V)サイクルしてテストすることによって、電池の初回放電容量及び初回クーロン効率を測定し、その後、1C電流を用いて電池について充放電を50回(充放電カットオフ電圧は0V~1.5V)サイクルしてテストすることによって、電池の50サイクル後の容量維持率を決定した。初回クーロン効率(%)=初回放電容量/初回充電容量×100%。実験結果を以下の表1及び
図2~5に示す。
【0097】
図2から分かるように、負極複合材料中の結晶ケイ素サイズと、Li
2Si
2O
5とLi
2SiO
3との重量比Li
2Si
2O
5/Li
2SiO
3とは線形的な関係を示す。
図3から分かるように、負極複合材料のラマンスペクトルにおけるDピークとGピークとの強度比I
D/I
Gが、0.8超2.0未満、好ましくは、1.5超1.8未満である場合、優れたサイクル特性が得られた。
図4及び
図5において、下から上へは、表面から内部への方向である。
図4及び
図5から分かるように、水に可溶なLi
2CO
3及びLiOHは、ほとんど顆粒の表面に存在し(実施例2では、Li
2CO
3及びLiOHが極めて少ないため、表面のXPSスペクトルにおける信号が極めて弱い)、Li
2SiO
3は、顆粒内で顆粒の表面に近い位置から顆粒の中心に向かうに従って減少するように分布している。水に不溶な他のケイ酸リチウム(Li
2Si
2O
5)は、Li
2SiO
3よりも顆粒の中心に近く分布している。
【0098】
【0099】
以上のテスト結果から分かるように、本発明の上記の実施例は、下記技術的効果を達成させる。
【0100】
実施例1~10と比較例1~9の結果を比較した結果、負極活物質粒子の重量を基準にしてLi2CO3の含有量、LiOHの含有量及びLi2Si2O5とLi2SiO3との重量比Li2Si2O5/Li2SiO3がすべて本発明の範囲であるのではない比較例1~9と比べて、負極活物質粒子の重量を基準にしてLi2CO3の含有量が0.01wt%超1wt%未満であり、LiOHの含有量が0.001wt%超0.1wt%未満であり、且つLi2Si2O5とLi2SiO3との重量比Li2Si2O5/Li2SiO3が1.00~10.00の範囲である実施例1~10では、電池は、より高い初回クーロン効率、及びより高い50サイクル後の放電容量維持率を有することが明らかにあった。
【0101】
実施例1~10と比較例9の結果を比較した結果、負極活物質粒子の重量を基準にしてLi2Si2O5とLi2SiO3との重量比Li2Si2O5/Li2SiO3及びLi2SiO3の含有量がいずれも本発明の範囲ではない比較例9と比べて、負極活物質粒子の重量を基準にしてLi2Si2O5とLi2SiO3との重量比Li2Si2O5/Li2SiO3が1.00~10.00の範囲であり、且つLi2SiO3の含有量が1.0wt超%48.0wt%未満である実施例1~10では、電池は、より高い初回クーロン効率、及びより高い50サイクル後の放電容量維持率を有することが明らかになった。
【0102】
実施例6、実施例9、及び実施例10の結果から、酸洗、アルコール洗浄又は水洗処理を含む本発明の製造方法によれば、本発明の負極複合材料が得られ、それによって、残留リチウム量を大幅に低減させ、スラリーの加工性を改善し、電池の初回クーロン効率、及び50サイクル後の放電容量維持率を向上できることが明らかになった。
【0103】
実施例7と比較例1の結果を比較した結果、リチウム源と炭素被覆ケイ素酸化物との重量比が5:95~40:60の範囲である場合、Li2CO3含有量、LiOH含有量、Li2SiO3含有量、及びLi2Si2O5とLi2SiO3との重量比Li2Si2O5/Li2SiO3が適切な負極複合材料が得られ、それによって、残留リチウム量を大幅に低減させ、スラリーの加工性を改善し、電池の初回クーロン効率、及び50サイクル後の放電容量維持率を向上できることが明らかになった。
【0104】
実施例7と比較例2の結果を比較した結果、プレリチウム化されたSiOx材料を洗浄処理することによって、Li2CO3含有量、LiOH含有量、Li2SiO3含有量、及びLi2Si2O5とLi2SiO3との重量比Li2Si2O5/Li2SiO3が適切な負極複合材料が得られ、それによって、残留リチウム量を大幅に低減させ、スラリーの加工性を改善し、電池の初回クーロン効率、及び50サイクル後の放電容量維持率を向上できることが明らかになった。
【0105】
実施例4と比較例3の結果を比較した結果、第2熱処理の温度が800℃以上925℃未満の範囲である場合、LiOH含有量、Li2SiO3含有量、及びLi2Si2O5とLi2SiO3との重量比Li2Si2O5/Li2SiO3が適切な負極複合材料が得られ、それによって、結晶ケイ素のサイズを制御し、結晶ケイ素のサイズが大きすぎることを回避し、残留リチウム量を大幅に低減させ、スラリーの加工性を改善し、電池の初回クーロン効率、及び50サイクル後の放電容量維持率を向上できることが明らかになった。
【0106】
実施例4と比較例4の結果を比較した結果、第1熱処理の温度が400℃~750℃の範囲である場合、Li2CO3含有量、LiOH含有量、Li2SiO3含有量、及びLi2Si2O5とLi2SiO3との重量比Li2Si2O5/Li2SiO3が適切な負極複合材料が得られ、それによって、良好なプレリチウム化効果を確保することができ、電池の初回クーロン効率、及び50サイクル後の放電容量維持率を向上できることが明らかになった。第1熱処理の温度が低すぎると、プレリチウム化ができず、さらに、電池の初回クーロン効率が低下する恐れがある。
【0107】
実施例10と比較例5の結果を比較した結果、洗浄処理が第2混合物に対する超音波処理を含む場合、LiOH含有量、Li2SiO3含有量、及びLi2Si2O5とLi2SiO3との重量比Li2Si2O5/Li2SiO3が適切な負極複合材料が得られ、それによって、電池の初回クーロン効率、及び50サイクル後の放電容量維持率を向上できることが明らかになった。
【0108】
実施例4と比較例6の結果を比較した結果、リチウム源と炭素被覆ケイ素酸化物との重量比が5:95~40:60の範囲である場合、Li2CO3含有量、LiOH含有量、Li2SiO3含有量、及びLi2Si2O5とLi2SiO3との重量比Li2Si2O5/Li2SiO3が適切な負極複合材料が得られ、それによって、良好なプレリチウム化効果を確保することができ、電池の初回クーロン効率、及び50サイクル後の放電容量維持率を向上できることが明らかになった。リチウム源と炭素被覆ケイ素酸化物との重量比が低すぎる場合、プレリチウム化ができず、ケイ酸リチウムが得られず、かつ、電池の初回クーロン効率が低下する恐れがある。
【0109】
実施例7と比較例7の結果を比較した結果、超音波処理の時間が1min~30minの範囲である場合、Li2Si2O5とLi2SiO3との重量比Li2Si2O5/Li2SiO3が適切な負極複合材料が得られ、それによって、顆粒の崩れを回避し、電池の初回クーロン効率、及び50サイクル後の放電容量維持率を向上できることが明らかになった。
【0110】
実施例4と比較例8の結果を比較した結果、第1熱処理の時間が1h~5hである場合、Li2CO3含有量、LiOH含有量、Li2SiO3含有量、及びLi2Si2O5とLi2SiO3との重量比Li2Si2O5/Li2SiO3が適切な負極複合材料が得られ、それによって、良好なプレリチウム化効果を確保することができ、電池の初回クーロン効率、及び50サイクル後の放電容量維持率を向上できることが明らかになった。
【0111】
実施例4と比較例9の結果を比較した結果、第2熱処理の時間が1h~6hの範囲である場合、Li2SiO3含有量、及びLi2Si2O5とLi2SiO3との重量比Li2Si2O5/Li2SiO3が適切な負極複合材料が得られ、それによって、結晶ケイ素のサイズを制御し、結晶ケイ素のサイズが大きすぎることを回避でき、電池の初回クーロン効率、及び50サイクル後の放電容量維持率を向上できることが明らかになった。
【0112】
上記の電池性能のテスト結果から明らかに、本発明の負極複合材料、該負極複合材料を製造するための方法、並びに、該負極複合材料を含む負極及びリチウムイオン二次電池によれば、残留リチウム量を大幅に低減させ、スラリーの加工性を改善し、リチウムイオン二次電池の初回クーロン効率及びサイクル特性を向上させることができる。
【0113】
以上は、本発明の好適な実施例に過ぎず、本発明を限定するものではなく、当業者であれば、本発明に様々な変更及び変化を加えることができる。本発明の精神及び原則を逸脱することなく行われる修正、同等置換や改良などであれば、本発明の特許範囲に含まれるものとする。