IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 旭化成株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014428
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】更生タイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20240125BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20240125BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240125BHJP
   C08F 236/04 20060101ALI20240125BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240125BHJP
   B60C 11/02 20060101ALI20240125BHJP
   C08C 19/02 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
C08L21/00
C08L9/00
C08K3/36
C08F236/04
B60C1/00 B
B60C11/02 A
C08C19/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117245
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】早田 大祐
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
3D131BA01
3D131BA08
3D131BB01
3D131BB03
3D131BB18
3D131BC09
3D131BC31
3D131CA03
4J002AC011
4J002AC031
4J002AC032
4J002AC061
4J002AC081
4J002AC082
4J002AC112
4J002DA036
4J002DJ016
4J002FD010
4J002FD016
4J002FD020
4J002FD030
4J002FD140
4J002FD150
4J002FD170
4J002GN01
4J100AB02Q
4J100AS02P
4J100CA01
4J100CA04
4J100DA48
4J100DA50
4J100DA51
4J100FA03
4J100FA10
4J100HA03
4J100HB02
4J100JA29
(57)【要約】
【課題】特定の構造のゴム状重合体を含むゴム組成物から成るサイドウォール部を用いた台タイヤをリトレッドすることにより、共加硫接着する際の加熱におけるサイドウォール部の劣化を効果的に抑制し、更生タイヤとしての利用回数を増加させられる、更生タイヤの製造方法を提供する。
【解決手段】
共役ジエン化合物に基づく構成単位と、エチレンに基づく構成単位と、を有するゴム状重合体を、ゴム成分100質量部に対し20質量部以上含有するサイドウォール部を備えた台タイヤをリトレッドする、更生タイヤの製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共役ジエン化合物に基づく構成単位と、エチレンに基づく構成単位と、を有するゴム状重合体を、ゴム成分100質量部に対し20質量部以上含有するサイドウォール部を備えた台タイヤをリトレッドする、更生タイヤの製造方法。
【請求項2】
前記ゴム状重合体が、芳香族ビニル化合物に基づく構成単位を含む請求項1に記載の更生タイヤの製造方法。
【請求項3】
前記ゴム状重合体が、水素添加されたブタジエンゴム、又は、水素添加されたスチレン-ブタジエンゴムである、請求項1に記載の更生タイヤの製造方法。
【請求項4】
前記ゴム状重合体の水素添加率が、35~95モル%である、請求項3に記載の更生タイヤの製造方法。
【請求項5】
前記ゴム状重合体が、シリカ及び/又はカーボンブラックと相互作用する官能基を有する、請求項1に記載の更生タイヤの製造方法。
【請求項6】
前記サイドウォール部が、シリカをゴム成分100質量部に対して30質量部以上含有する、請求項1に記載の更生タイヤの製造方法。
【請求項7】
前記サイドウォール部が、天然ゴムを、ゴム成分100質量部に対し20質量部以上含有する請求項1に記載の更生タイヤの製造方法。
【請求項8】
前記サイドウォール部が、非水添ブタジエンゴムを、ゴム成分100質量部に対し20質量部以上含有する請求項1に記載の更生タイヤの製造方法。
【請求項9】
前記サイドウォール部が、ゴム成分100質量部に対し、前記ゴム状重合体を30質量部以上、天然ゴムを30質量部以上、非水添ブタジエンゴムを30質量部以上含有する請求項1に記載の更生タイヤの製造方法。
【請求項10】
前記更生タイヤの扁平率が45以上である、請求項1に記載の更生タイヤの製造方法。
【請求項11】
前記更生タイヤがトラック・バス用タイヤである、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の更生タイヤの製造方法。
【請求項12】
前記更生タイヤが乗用車用タイヤである、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の更生タイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、更生タイヤの製造方法に関し、更に詳しくは、特定の構造のゴム状重合体を含むゴム組成物から成るサイドウォール部を用いた台タイヤをリトレッドする更生タイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
経済性の観点のみならず、タイヤ製造における環境負荷低減の観点からも、更生タイヤの重要性が高まっている。更生タイヤは、一次寿命が終了したタイヤのトレッド表面を決められた寸度に削ることにより製造した台タイヤに、新しいトレッドを再度固着、形成等することにより製造される。
空気入りタイヤにおいて更生タイヤを製造する場合、安全性を確保するためには、長期にわたって使用可能な耐久性の高い空気入りタイヤのケース部分が不可欠であり、その部材を形成するサイドウォール部に用いるゴム組成物には、高い耐久性が求められる。
更生タイヤの耐久性を高める方法として、種々のものが知られているが、例えば、ジエン系ゴム100質量部に対して、カーボンブラック20~100質量部と、変性液状ゴム5~20質量部とを配合してなる更生タイヤ用クッションゴム組成物を用いることにより、オクルードラバーと称されるカーボンブラック凝集体中に取り込まれたゴム成分を減らし、更生タイヤの耐久性を向上することが知られている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-84405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような、カーボンブラック凝集塊に着目した耐久性向上に加えて、ゴム素材に着目した耐久性向上については更なる改良検討の余地がある。
【0005】
本発明は、上述の従来技術の課題及び現状に鑑みなされたもので、特定の構造のゴム状重合体を含むゴム組成物から成るサイドウォール部を用いた台タイヤをリトレッドすることにより、共加硫接着する際の加熱におけるサイドウォール部の劣化を効果的に抑制し、更生タイヤとしての利用回数を増加させられる、更生タイヤの製造方法を提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討した結果、更生タイヤの製造において、特に共加硫接着する際の加熱によりサイドウォール部の劣化が進み、更生タイヤとしての利用回数の制限に繋がっていることを見出し、特定の構造のゴム状重合体を含むゴム組成物から成るサイドウォール部を用いた台タイヤを用いることにより、この課題を解決できることを見出した。
すなわち本発明は以下の通りである。
【0007】
<1>
共役ジエン化合物に基づく構成単位と、エチレンに基づく構成単位と、を有するゴム状重合体を、ゴム成分100質量部に対し20質量部以上含有するサイドウォール部を備えた台タイヤをリトレッドする、更生タイヤの製造方法。
<2>
前記ゴム状重合体が、芳香族ビニル化合物に基づく構成単位を含む前記<1>に記載の更生タイヤの製造方法。
<3>
前記ゴム状重合体が、水素添加されたブタジエンゴム、又は、水素添加されたスチレン-ブタジエンゴムである、前記<1>又は<2>に記載の更生タイヤの製造方法。
<4>
前記ゴム状重合体の水素添加率が、35~95モル%である、前記<3>に記載の更生タイヤの製造方法。
<5>
前記ゴム状重合体が、シリカ及び/又はカーボンブラックと相互作用する官能基を有する、前記<1>~<4>のいずれか一つに記載の更生タイヤの製造方法。
<6>
前記サイドウォール部が、シリカをゴム成分100質量部に対して30質量部以上含有する、前記<1>~<5>のいずれか一つに記載の更生タイヤの製造方法。
<7>
前記サイドウォール部が、天然ゴムを、ゴム成分100質量部に対し20質量部以上含有する前記<1>~<6>のいずれか一つに記載の更生タイヤの製造方法。
<8>
前記サイドウォール部が、非水添ブタジエンゴムを、ゴム成分100質量部に対し20質量部以上含有する前記<1>~<7>のいずれか一つに記載の更生タイヤの製造方法。
<9>
前記サイドウォール部が、ゴム成分100質量部に対し、前記ゴム状重合体を30質量部以上、天然ゴムを30質量部以上、非水添ブタジエンゴムを30質量部以上含有する前記<1>~<6>のいずれか一つに記載の更生タイヤの製造方法。
<10>
前記更生タイヤの扁平率が45以上である、前記<1>~<9>のいずれか一つに記載の更生タイヤの製造方法。
<11>
前記更生タイヤがトラック・バス用タイヤである、前記<1>~<10>のいずれか一つに記載の更生タイヤの製造方法。
<12>
前記更生タイヤが乗用車用タイヤである、前記<1>~<10>のいずれか一つに記載の更生タイヤの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、特定の構造のゴム状重合体を含むゴム組成物から成るサイドウォール部を用いた台タイヤをリトレッドすることにより、共加硫接着する際の加熱におけるサイドウォール部の劣化を効果的に抑制し、更生タイヤとしての利用回数を増加させられる、更生タイヤの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。
なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施することができる。
【0010】
《更生タイヤの製造方法》
本実施形態の更生タイヤの製造方法は、共役ジエン化合物に基づく構成単位と、エチレンに基づく構成単位と、を有するゴム状重合体を、ゴム成分100質量部に対し20質量部以上含有するサイドウォール部を備えた台タイヤをリトレッドする工程(台タイヤにトレッド部を相形成する工程;以下、「リトレッド工程」と称することがある)を含む。
【0011】
本実施形態の更生タイヤの製造方法は、例えば、回収した使用済みタイヤを更生可能か否か検査する工程(以下、「検査工程」と称することがある)と、使用済みタイヤからトレッド部を削り取り台タイヤを製造する工程(以下、「台タイヤ製造工程」と称することがある)と、台タイヤにトレッド部を再形成する工程(台タイヤをリトレッドするリトレッド工程)とを含むことができる。リトレッド工程としては、あらかじめ加硫したトレッドパターンを固着して形成し、クッションゴムを介して、加硫缶内で共加硫接着すること等によりトレッド部を形成する方式(プレキュア方式)や、台タイヤに未加硫のトレッドゴムをのせて、金型内で加硫する方式(リ・モールド方式)等、公知の方法を用いることができる。各工程の説明については後述する。
【0012】
〈更生タイヤ〉
本実施形態における更生タイヤは、後述のゴム状重合体をゴム成分100質量部に対し20質量部以上含有するサイドウォール部を備えた台タイヤをリトレッドすることで得ることができる。本実施形態により製造される更生タイヤは、例えば、トレッド部と、クラウン部と、タイヤ側面を構成するサイドウォール部と、リムホイルに当接するビード部とを備える。また、本実施形態における更生タイヤは、例えば、ビードコアと、カーカス層と、を有する。カーカス層のタイヤ径方向内側には、チューブに相当する気密性の高いゴム層であるインナーライナーが設けられている。また、本実施形態における台タイヤは、使用済タイヤからトレッド部を取り除いたタイヤであり、例えば、上述の台タイヤ製造工程によって製造することができる。
【0013】
(ゴム状重合体)
本実施形態における台タイヤは、本実施形態におけるゴム状重合体をゴム成分100質量部に対し20質量部以上含有するサイドウォール部を備える。本実施形態におけるゴム状重合体は、共役ジエン化合物に基づく構成単位(以下、「共役ジエン部」ともいう。)と、エチレンに基づく構成単位(以下、「エチレン部」ともいう。)と、を有し、ランダム共重合体であることが好ましい。本実施形態におけるゴム状重合体は、共役ジエン部を有するジエン系共重合体に対して水素添加反応を行うことで、共役ジエン部中の二重結合部分の一部をエチレン部とすることにより製造してもよいし、共役ジエン化合物と、エチレンと、をランダム共重合して製造してもよい。
本明細書中、「ランダム共重合体」とは、ゴム状重合体の全質量に対し、エチレンに基づく構成単位(後述する芳香族ビニル化合物に基づく構成単位を含む場合にはエチレンに基づく構成単位、及び、芳香族ビニル化合物に基づく構成単位)の長連鎖割合が10質量%以下であることをいう。ここで、長連鎖割合とは、ある構造単位の全体に対する、その構造単位が8個以上連続した連鎖(長連鎖)の割合である。長連鎖割合が10質量%以上、すなわち、ゴム状重合体がランダム共重合体であると、燃費性が向上する傾向にある。
【0014】
製造コストの点から、ゴム状重合体は、ジエン系共重合体を水素添加反応に供して得ることが好ましい。以下において、このようにして得られるゴム状重合体を、「水添ジエン系重合体」ともいう。水添ジエン系重合体では、水素添加率を高くすることにより、エチレン部の含有量を高めることができる。なお、水添ジエン系重合体では、共役ジエン化合物単量体単位の主鎖の両端でポリマー鎖を形成するもの(例えば、1,3-ブタジエンをモノマーとした重合体の1,4結合)に対して水素が添加されたものをエチレン部とし、その他の形態(例えば、1,3-ブタジエンをモノマーとした重合体の1,2-ビニル結合)に対して水素が添加されたものはエチレン部に含めない。
【0015】
共役ジエン化合物としては、特に制限されないが、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ヘキサジエン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中で、モノマーの入手容易性等の実用面の観点から1,3-ブタジエン、イソプレンが好ましく、1,3-ブタジエンがより好ましい。
【0016】
ゴム状重合体は、芳香族ビニル化合物に基づく構成単位を含むことが好ましく、芳香族ビニル化合物に基づく構成単位を含むランダム共重合体であることがさらに好ましい。上述のように、ゴム状重合体が芳香族ビニル化合物に基づく構成単位を含む場合(特にランダム共重合体である場合)、燃費性の観点から、ゴム状重合体の全質量に対し、エチレンに基づく構成単位、及び、芳香族ビニル化合物に基づく構成単位の長連鎖割合が10質量%以下であることが好ましい。なお、芳香族ビニル化合物に基づく構成単位の長連鎖割合が10質量%以下である場合、相対的に、共役ジエン化合物に基づく構成単位やエチレンに基づく構成単位の長連鎖割合も低くなるため、芳香族ビニル化合物に基づく構成単位の長連鎖割合によってランダム共重合体かどうかを判定することができる。
【0017】
芳香族ビニル化合物としては、特に制限されないが、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、1-ビニルナフタレン、3-ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、4-シクロヘキシルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中で、モノマーの入手容易性等の実用面の観点でスチレンが特に好ましい。
なお、芳香族ビニル化合物に基づく構成単位の長連鎖割合が10質量%以下である場合、相対的に、共役ジエン化合物に基づく構成単位やエチレンに基づく構成単位の長連鎖割合も低くなるため、芳香族ビニル化合物に基づく構成単位の長連鎖割合によってランダム共重合体かどうかを判定することができる。
【0018】
ここで、芳香族ビニル化合物に基づく構造単位の長連鎖割合は、ゴム状重合体を、重クロロホルムを溶媒として測定した1H-NMRスペクトルで、以下の(a)~(c)の各化学シフトS範囲の積分値の合計に対する、(a)の範囲の積分値の割合で計算することができる。例えば、芳香族ビニルがスチレンの場合、(a)~(c)の各範囲の積分値の合計に対する(a)の範囲の積分値の割合を求め、その値を2.5倍することでスチレンの割合を計算できる。これにより、芳香族ビニル化合物に基づく構造単位の長連鎖割合を把握できる。
(a)芳香族ビニル化合物連鎖8以上: 6.00≦S<6.68
(b)芳香族ビニル化合物連鎖2~7: 6.68≦S<6.89
(c)芳香族ビニル化合物短連鎖 : 6.89≦S≦8.00
【0019】
以上のとおり、商業生産と低燃費性との観点から、ゴム状重合体は、水添ジエン系ランダム共重合体が好ましく、例えば、前記ゴム状重合体としては、例えば、水素添加されたブタジエンゴム、又は、水素添加されたスチレン-ブタジエンゴムであることが好ましい。
また、ゴム状重合体は、変性されていても非変性でもよいが、ブレーキ性能と耐摩耗性との観点では、変性されたランダム共重合体が好ましい。変性方法については後述するが、変性されたゴム状重合体とは、例えばその構造中に、シリカ及び/又はカーボンブラックと相互作用する官能基を有する化合物窒素を有するものが挙げられる。変性は、典型的にはゴム状重合体の重合終了末端に、窒素を含む官能基を有するカップリング剤や反応停止剤を反応させることによって製造できる。このように変性されたゴム状重合体は、フィラーとしてシリカ及び/又はカーボンブラックと混練しゴム組成物とした際に、ゴム状重合体とフィラーとの間で相互作用を形成することにより補強性が向上したり、フィラー間に働く相互作用を下げられることで発熱を抑え低燃費性が向上するという点で好ましい。
【0020】
ゴム状重合体が水添ジエン系共重合体である場合、その水素添加率(共役ジエン部に対して水素添加された割合)は、架橋性の観点から、好ましくは35~95モル%が好ましく、さらに好ましくは50モル%~95モル%であり、より好ましくは60モル%~90モル%であり、特に好ましくは70モル%~85モル%である。なお、水素添加率は、1H-NMRを測定して得られたスペクトルの不飽和結合部のスペクトル減少率から算出することができる。
【0021】
ゴム状重合体が芳香族ビニル化合物に基づく構成単位を含む場合、特に芳香族ビニル化合物に基づく構成単位を含むランダム共重合体である場合、ゴム状重合体の全体に占める芳香族部の含有量は、ゴム状重合体の総量に対して、ゴム組成物とした時の破壊強度の観点から、好ましくは4質量%以上であり、より好ましくは6質量%以上であり、更に好ましくは8質量%以上である。また、芳香族部の含有量は、ゴム状重合体の総量に対して、低燃費性の観点から、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下である。なお、芳香族部の含有量は、後述する実施例に記載の方法により測定される。
【0022】
ゴム状重合体の重量平均分子量(Mw)は、ゴム状重合体と混練する他種ゴムとの相溶性の観点から、好ましくは10×104以上であり、より好ましくは20×104以上であり、更に好ましくは30×104以上である。また、ゴム状重合体の重量平均分子量は、加工性の観点から、好ましくは200×104以下であり、より好ましくは100×104以下であり、更に好ましくは70×104以下である。
【0023】
ゴム状重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、加工性の観点から、好ましくは1.1以上であり、より好ましくは1.2以上であり、更に好ましくは1.3以上である。また、ゴム状重合体の分子量分布は、低燃費性の観点から、好ましくは4.0以下であり、より好ましくは3.0以下であり、更に好ましくは2.0以下である。なお、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0024】
(ゴム状重合体の製造方法)
ゴム状重合体の製造方法は、特に制限されないが、例えば、共役ジエン化合物と、必要に応じて芳香族ビニル化合物と、をランダム共重合させる重合工程と、重合工程により得られた重合体を水素添加反応に供する水素添加工程と、を有する方法;又は、共役ジエン化合物と、エチレンと、必要に応じて芳香族ビニル化合物とをランダム共重合させる重合工程を有する方法が挙げられる。ここで、ゴム状重合体の製造方法は、エチレン部を形成するために、水素添加工程を行ってもよいし、重合工程においてエチレンを共重合させてもよい。また、重合工程においてエチレンを共重合させる場合であっても、水素添加工程を行ってもよい。例えば、公知の方法として特開2022-019552号公報に記載の方法を使用することができる。
【0025】
さらに、ゴム状重合体の製造方法は、重合工程後に、得られた重合体を変性する変性工程を有していてもよい。変性工程を行う場合においては、重合工程の最後に、共役ジエン化合物を追加することで重合末端を共役ジエン化合物に基づく構成単位とすることが好ましい。これにより、変性剤による反応がより好適に進行する。
【0026】
(変性工程)
変性工程は、例えば、重合工程により得られた共重合体の活性末端と、シリカ及び/又はカーボンブラックと相互作用する官能基を有する化合物とを反応させる工程である。変性工程により、共重合体の重合終了末端に、シリカ及び/又はカーボンブラックと相互作用する官能基を導入することができ、重合終了末端が変性された共重合体が得られる。なお、本実施形態において末端とは、分子鎖の端に存在する、炭素-炭素二重結合を有するモノマーに由来する構造以外の部分を意味する。
【0027】
変性工程では、重合工程により得られた共重合体の活性末端と、シリカ及び/又はカーボンブラックと相互作用する官能基を有する化合物とを反応させる。また、シリカ及び/又はカーボンブラックと相互作用する官能基を分子中に有する重合開始剤を用いて重合を行うことにより、共重合体の開始末端に官能基を導入することができる。さらに必要に応じ開始末端及び終了末端の両末端に官能基を導入することもできる。
【0028】
変性反応(以下、「末端変性反応」ともいう。)に用いる共重合体は、活性末端を有している限り、重合開始末端が未変性のものでもよいし、変性されたものでもよい。また、前記官能基を有する化合物としては、シリカ及び/又はカーボンブラックと相互作用する官能基を有し、かつ共重合体の重合活性末端と反応し得る化合物であれば特に限定しないが、これら共重合体及び化合物を用いた変性反応としては、スズ原子又は窒素原子を含有する末端変性剤を用いて導入する方法が好ましく、窒素原子を含有する末端変性剤を用いて導入する方法がより好ましい。
【0029】
窒素原子を含有する末端変性剤として、重合生産性や高い変性率の点で、イソシアナート化合物、イソチオシアナート化合物、イソシアヌル酸誘導体、窒素基含有カルボニル化合物、窒素基含有ビニル化合物、窒素基含有エポキシ化合物、窒素基含有アルコキシシラン化合物、環状尿素化合物等が好ましい。このなかでも、重合生産性や高い変性率、フィラーとの補強性の点で、窒素基含有アルコキシシラン化合物や環状尿素化合物がより好ましい。
【0030】
窒素基含有アルコキシシラン化合物としては、特に制限されないが、例えば、2,2-ジメトキシ-1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジエトキシ-1-(3-トリエトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジメトキシ-1-(4-トリメトキシシリルブチル)-1-アザ-2-シラシクロヘキサン、2,2-ジメトキシ-1-(5-トリメトキシシリルペンチル)-1-アザ-2-シラシクロヘプタン、2,2-ジメトキシ-1-(3-ジメトキシメチルシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジエトキシ-1-(3-ジエトキシエチルシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2-メトキシ,2-メチル-1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2-エトキシ,2-エチル-1-(3-トリエトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2-メトキシ,2-メチル-1-(3-ジメトキシメチルシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2-エトキシ,2-エチル-1-(3-ジエトキシエチルシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)アミン、トリス(3-メチルジメトキシシリルプロピル)アミン、トリス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミン、トリス(3-メチルジエトキシシリルプロピル)アミン、トリス(トリメトキシシリルメチル)アミン、トリス(2-トリメトキシシリルエチル)アミン、トリス(4-トリメトキシシリルブチル)アミン、テトラキス[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-1,3-プロパンジアミン、テトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミン、テトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、及びN1-(3-(ビス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)アミノ)プロピル)-N1-メチル-N3-(3-(メチル(3-(トリメトキシシリル)プロピル)アミノ)プロピル)-N3-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)-1,3-プロパンジアミンが挙げられる。
【0031】
環状尿素化合物としては、特に制限されないが、例えば、1,3-ジエチル-2-イミダゾリノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリノン、1,3-ジプロピル-2-イミダゾリノン、1-メチル-3-エチル-2-イミダゾリノン、1-メチル-3-プロピル-2-イミダゾリノン、1-メチル-3-ブチル-2-イミダゾリノン、1,3-ジヒドロ-1,3-ジメチル-2H-イミダゾール-2-オン、1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジプロピル-2-イミダゾリジノン、1-メチル-3-エチル-2-イミダゾリジノン、1-メチル-3-プロピル-2-イミダゾリジノン、1-メチル-3-ブチル-2-イミダゾリジノンなどが挙げられる。
【0032】
(ゴム組成物)
本実施形態における更生タイヤは、ゴム状重合体をゴム成分100質量部に対し20質量部以上含有するサイドウォール部を備えた台タイヤを用いて製造される。本実施形態における更生タイヤのサイドウォール部は例えば、ゴム成分として上述のゴム状重合体を含み、さらに必要に応じて充填剤成分、可塑剤成分、架橋剤成分等を含むゴム組成物を用いて作製することができる。
【0033】
ゴム組成物中における、上述のゴム状重合体の含有量としては、サイドウォール部の耐候性を上げてリトレッド回数を増やす観点から、ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対し20質量部以上であり、より好ましくは30質量部以上含む。ここで、「ゴム成分」とは、本実施形態におけるゴム状重合体に加えて、後述する汎用のゴム材料を含む概念であり、「ゴム成分100質量部」とは、ゴム状重合体及び汎用のゴム成分の総量を100質量部とした場合を意味する。
【0034】
ゴム組成物は、上述のゴム状重合体のほか必要に応じて、一般的なタイヤ用ゴム組成物に汎用されている重合体を含んでいてもよい。このような重合体としては、特に制限されないが、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、本実施形態におけるゴム状重合体以外のスチレン-ブタジエンゴム(SBR)(以下、「非水添スチレン-ブタジエンゴム」と称することがある)、本実施形態におけるゴム状重合体以外のブタジエンゴム(BR)(以下、「非水添ブタジエンゴム」と称することがある)等の汎用のゴム材料が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0035】
サイドウォール部を構成するゴム組成物において、ゴム成分としての上述の汎用重合体の組成比は、所望のサイドウォール部の性能に応じて適宜設定することができる。
【0036】
例えば、サイドウォール部の引張強度を高める観点では、ゴム組成物中の組成を、サイドウォール部が、ゴム成分100質量部に対し天然ゴムを、好ましくは20質量部以上、より好ましくは20質量部以上80質量部以下、さらに好ましくは30質量部以上70質量部以下、含むように設定することが好ましい態様の一つである。
【0037】
また、例えば、サイドウォール部の耐屈曲性、低発熱性を良化させる観点では、ゴム成分中の組成を、サイドウォール部が、ゴム成分100質量部に対し上述の非水添ブタジエンゴムを20質量部以上、より好ましくは20質量部以上80質量部以下、さらに好ましくは30質量部以上70質量部以下、含むように設定することが好ましい様態の一つである。
【0038】
さらに、耐屈曲性、低発熱性、及び破壊強度の全ての特性を両立させるため、非水添ブタジエンゴムと天然ゴムを、上述のゴム状重合体と併用してもよい。しかしながら、ゴム組成物が天然ゴム及び/又は非水添ブタジエンゴムを含有することは、引張強度や低燃費性の面では好ましいが、一方において、ともに二重結合を多く含むため、耐候性や加熱耐性には劣る傾向にある。
一方でゴム状重合体は、その構造内に有する二重結合量が少ないため耐候性や加熱耐性に優れる。そこで、上述のように、前記ゴム状重合体を、ゴム成分100質量部のうち20質量部以上、より好ましくは30質量部以上含有することにより、耐候性を含む各種物性は、タイヤのサイドウォール用途において実用上十分な値となり好ましい。すなわち、耐候性や加熱耐性を高める観点では、エチレン部を有するゴム状重合体の割合を高く設定するのが好ましい。コスト等の観点で天然ゴムや非水添ブタジエンゴムを併用する場合には、エチレン部を有するゴム状重合体をゴム組成物中に微分散させるのが好ましい。例えば、本実施形態におけるサイドウォール部は、ゴム成分100質量部に対し、前記ゴム状重合体を30質量部以上、天然ゴムを30質量部以上、非水添ブタジエンゴムを30質量部以上含有するように作製することができる。
【0039】
このように耐候性及び加熱耐性に優れるサイドウォール部を有するタイヤは、後述する更生タイヤの製造方法において、トレッド再形成工程において加熱によるサイドウォール部の劣化を抑制することができる。更生タイヤの製造工程の中でも、検査工程における更生可能か否かの判断は、サイドウォール部の劣化状況によりなされるため、サイドウォール部の劣化抑制は、更生タイヤとしての繰り返し使用可能回数を増加することに繋がる。
【0040】
リトレッド回数の限界の指標となるサイドウォール部の劣化は、(1)タイヤの使用中に受ける熱や紫外線に起因する経年劣化と、(2)リトレッド時の加熱反応による劣化の両方が影響しうる。共役ジエン部とエチレン部を有するゴム状重合体を含有するサイドウォール部は、天然ゴム及び/又はブタジエンゴムからなる一般的なサイドウォール部と比較してゴム成分中の二重結合が少ないことで、(1)タイヤ使用時の紫外線等によるダメージの影響が少なく、また(2)リトレッドの加熱時に、ラジカルにより攻撃を受ける部位が少ないために、副反応によってポリマー鎖が切断されるような反応も抑制される傾向にある。これらが相まってリトレッド回数を増加させる効果につながっていると考えられる。
【0041】
サイドウォール部を構成するゴム成分中の二重結合が少ないことが、サイドウォール部の耐候性や耐熱性の向上につながる主因であることは上述のとおりであり、エチレン部の割合の高いゴム状重合体を配合したり、天然ゴムや非水添ブタジエンゴムの配合量を減らしたりすることで、サイドウォール部のゴム成分に含まれる二重結合の数を低減することがリトレッド回数増加につながる傾向にあるものの、単に量だけが影響しているともいえない。引っ張り強度の高いエチレン部を有するゴム状重合体を組成物全体に分散させることで、組成物全体として劣化の影響を受けにくくなる傾向が期待される。
【0042】
充填剤成分の含有量は、ゴム組成物全量に対して、20~50質量%が好ましい。また、可塑剤成分の含有量は、ゴム組成物全量に対して、10~40質量%が好ましい。
【0043】
充填剤の含有量は、低燃費性の観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30質量部以上、より好ましくは40質量部以上である。また、充填剤の含有量は、ムーニー粘度の観点から、ゴム組成物全体を100質量部として、好ましくは120質量部以下、より好ましくは100質量部以下である。
【0044】
充填剤成分は、ゴムの補強を目的にゴム組成物に配合されるものであり、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、雲母、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、クレー、タルク、アルミナ、酸化チタン、マイカ等の白色充填剤(無機充填剤)や、カーボンブラック等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、シリカ、カーボンブラックが好ましく、これらの併用がより好ましい。例えば、サイドウォール部がシリカを含む場合、サイドウォール部はシリカをゴム成分100質量部に対して30質量部以上含有することが好ましく、より好ましくは、30~120質量部、さらに好ましくは40~100質量部含有することが好ましい。
【0045】
カーボンブラックとしては、特に制限されないが、例えば、SAF、ISAF、HAF、MAF、FEF、SRF、GPF、APF、FF、CF、SCF及びECFのようなファーネスブラック(ファーネスカーボンブラック);アセチレンブラック(アセチレンカーボンブラック);FT及びMTのようなサーマルブラック(サーマルカーボンブラック);EPC、MPC及びCCのようなチャンネルブラック(チャンネルカーボンブラック);グラファイト等をあげることができる。これらは1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0046】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、通常5~200m2/gであり、耐摩耗性の観点から、好ましくは50m2/g以上、より好ましくは80m2/g以上であり、また、低燃費性の観点から、好ましくは150m2/g以下、より好ましくは120m2/g以下である。該窒素吸着比表面積は、ASTM D4820-93に従って測定される。
【0047】
また、カーボンブラックのジブチルフタレート(DBP)吸収量は、通常5~300ml/100gであり、下限は80ml/100g、上限は180ml/100gであることが好ましい。該DBP吸収量は、ASTM D2414-93に従って測定される。
【0048】
シリカとしては特に限定されず、例えば、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)等が挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
【0049】
シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は、耐摩耗性の観点から、好ましくは60m2/g以上、より好ましくは120m2/g以上であり、低燃費性の観点から、好ましくは300m2/g以下、より好ましくは200m2/g以下である。なお、シリカの窒素吸着比表面積は、ASTM D3037-81に準じてBET法で測定される値である。
【0050】
シリカは、シランカップリング剤と併用することが好ましい。シランカップリング剤としては、従来から公知のものを用いることができ、たとえば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド等のスルフィド系シランカップリング剤;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン等のメルカプト系化合物;ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニル系シランカップリング剤;3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ系シランカップリング剤;γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等のグリシドキシ系シランカップリング剤;3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシラン等のニトロ系シランカップリング剤;3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン、2-クロロエチルトリメトキシシラン、2-クロロエチルトリエトキシシラン等のクロロ系シランカップリング剤が挙げられる。なお、シランカップリング剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、シランカップリング剤によるカップリング効果、加工性、コストの観点から、スルフィド系シランカップリング剤が好ましく、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドがより好ましい。
【0051】
シランカップリング剤の含有量は、低燃費性、耐摩耗性の観点から、シリカ100質量部に対して、好ましくは3質量部以上であり、より好ましくは5質量部以上である。また、シランカップリング剤の含有量は、ムーニー粘度の観点から、シリカ100質量部に対して、好ましくは15質量部以下であり、より好ましくは10質量部以下である。
【0052】
可塑剤成分としては、特に制限されないが、例えば、伸展油、上述の重合体以外の樹脂、老化防止剤、ワックス、ステアリン酸、加硫促進剤等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0053】
伸展油としては、特に制限されないが、例えば、アロマチック系鉱物油(粘度比重恒数(V.G.C.値)0.900~1.049)、ナフテン系鉱物油(V.G.C.値0.850~0.899)、パラフィン系鉱物油(V.G.C.値0.790~0.849)等を挙げることができる。
【0054】
伸展油の多環芳香族含有量は、好ましくは3質量%未満であり、より好ましくは1質量%未満である。該多環芳香族含有量は、英国石油学会346/92法に従って測定される。また、伸展油の芳香族化合物含有量(CA)は、好ましくは20質量%以上である。これらの伸展油は、2種以上組み合わされて用いられてもよい。
【0055】
伸展油の含有量は、ムーニー粘度の観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上であり、より好ましくは10質量部以上である。また、伸展油の含有量は、低燃費性の観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下である。
【0056】
老化防止剤としては、特に制限されないが、例えば、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4’-ビス(α,α’-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-フェニル-N’-イソプロピル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、p-フェニレンジアミン系老化防止剤が好ましく、N-フェニル-N’-イソプロピル-p-フェニレンジアミンがより好ましい。
【0057】
老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1~5質量部、より好ましくは0.2~4質量部である。
【0058】
ワックスとしては、特に制限されないが、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;植物系ワックス、動物系ワックス等の天然系ワックス;エチレン、プロピレン等の重合物等の合成ワックス等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、石油系ワックスが好ましく、パラフィンワックスがより好ましい。
【0059】
ワックスの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1~5質量部、より好ましくは0.2~4質量部である。
【0060】
ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、例えば、日油(株)、NOF社、花王(株)、和光純薬工業(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0061】
ステアリン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1~5質量部、より好ましくは0.2~4質量部である。
【0062】
加硫促進剤としては、特に制限されないが、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジサルファイド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、本実施形態の効果がより好適に得られるという理由から、スルフェンアミド系加硫促進剤が好ましく、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミドがより好ましい。また、更にグアニジン系加硫促進剤を併用することも好ましい。
【0063】
加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1~5質量部、より好ましくは0.2~4質量部である。
【0064】
ゴム組成物には、成分以外にも、硫黄等の加硫剤;酸化亜鉛等の加硫活性化剤;有機過酸化物;滑剤等の加工助剤;老化防止剤等の従来ゴム工業で使用される配合剤を用いることができる。
【0065】
加硫剤としては、特に限定されないが、硫黄を好適に使用できる。硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5~5質量部、より好ましくは1~3質量部である。これにより、本実施形態の効果がより好適に得られる。
【0066】
ゴム組成物は、一般的な方法で製造される。すなわち、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロール等で各成分を混練りし、その後加硫する方法等により製造できる。
【0067】
(更生タイヤの構成)
上述のように本実施形態により製造される更生タイヤは、例えば、トレッド部と、クラウン部と、タイヤ側面を構成するサイドウォール部と、リムホイルに当接するビード部とを有する。また、本発明の実施形態における更生タイヤは、例えば、ビードコアと、カーカス層とを有する。カーカス層のタイヤ径方向内側には、チューブに相当する気密性の高いゴム層であるインナーライナーが設けられている。
リトレッドする台タイヤの構造や用途は特に限定されないが、本実施形態の更生タイヤの扁平率は45以上であるのが、サイドウォール部の面積が広く、本実施形態の耐候性や耐熱性向上の効果がより発揮されるため好ましい。
従来、リトレッドはトラック・バス用タイヤに利用されることが多く、本実施形態の更生タイヤの製造方法は、もちろんトラック・バス用タイヤ向けに使用可能である。一方、資源を有効活用し、持続可能な開発を目指す観点からは、乗用車向けのタイヤにもリトレッドを活用するのが有効であり、今後ニーズが高まってくるとも考えられる。このため、本実施形態の更生タイヤの製造方法は、乗用車向けのタイヤにも使用可能である。このように、サイドウォール部の耐候性や加熱耐性を高い台タイヤを用い、リトレッド可能な回数を増加させる更生タイヤの製造方法は、資源の有効活用に資するといえる。
【0068】
〈更生タイヤの製造方法の各工程〉
本実施形態の更生タイヤの製造方法は、上述のように、検査工程、台タイヤ製造工程、リトレッド工程、を含めることができる。なお、本実施形態の製造方法は、これら工程に限定されるものではなく、他の工程を含んでいてもよい。他の工程としては、例えば、リトレッド工程後に実施される、最終検査工程などが挙げられる。
【0069】
(検査工程)
検査工程は、回収した使用済みタイヤを更生可能か否か検査する工程である。検査工程においては、台タイヤが、更生可能か否かを検査することに加えて、併せて、台タイヤが、共役ジエン化合物に基づく構成単位と、エチレンに基づく構成単位と、を有するゴム状重合体を、ゴム成分100質量部に対し20質量部以上含有するサイドウォール部を備えているか否かを判別する工程を含むことが好ましい(以下、「判別工程」と称することがある)。判別工程は、検査工程の前後又は同時に実施してもよく、そのタイミングは限定されるものではない。
【0070】
-台タイヤ中のサイドウォール部におけるゴム状重合体の判別方法-
上述のように、本実施形態の更生タイヤの製造方法は、サイドウォール部に特定のゴム状重合体を含む台タイヤをリトレッドする方法であるので、実施に先だって台タイヤの組成を確認するのが好ましい。台タイヤのサイドウォール部において、本実施形態におけるゴム状重合体の含有有無の判別方法としては、例えば、台タイヤのサイドウォール部の刻印を元に製造ロットを認識し、当該製造ロットから、その製造工程において、共役ジエン化合物に基づく構成単位と、エチレンに基づく構成単位と、を有するゴム状重合体を使用していたかどうか、並びにその配合量を調査する方法等が挙げられる。また、例えば、JSR TECHNICAL REVIEW No.126/2019(ジエン系ブレンド加硫ゴムの13C NMR分析)に記載のように溶液NMRの13C-13C2次元NMRを活用することで、更生タイヤのサイドウォール中のゴム成分の本実施形態におけるゴム状重合体の含有量を定量することも可能である。
【0071】
(台タイヤ製造工程)
台タイヤ製造工程は、使用済タイヤからトレッド部を削り取り台タイヤを製造する工程である。使用済タイヤからトレッド部を削り取る方法は特に限定はなく、公知の方法を適宜採用することができる。
【0072】
(リトレッド工程)
リトレッド工程は、台タイヤにトレッドを再形成する工程である。上述のように、トレッドを再形成する工程としては、あらかじめ加硫したトレッドパターンを固着して形成し、クッションゴムを介して、加硫缶内で共加硫接着すること等によりトレッドを形成する方式(プレキュア方式)や、台タイヤに未加硫のトレッドゴムをのせて、金型内で加硫する方式(リ・モールド方式)等、公知の方法を用いることができる。
プレキュア方式において、共加硫接着する際の温度は特に限定はないが、台タイヤと加硫済みのトレッドパターンとの接着性を確保する観点で、80~140℃が好ましく、85~135℃がさらに好ましく、90~130℃が特に好ましい。
リ・モールド方式において、加硫時の温度は特に限定はないが、未加硫トレッドゴムを確実に加硫する観点で、125~175℃が好ましく、130~170℃がさらに好ましく、135~165℃が特に好ましい。
【0073】
本実施形態により得られる更生タイヤは、トラック・バス用タイヤ、乗用車用タイヤ、二輪車用タイヤ、競技用タイヤ等として好適に用いられ、特にトラック・バス用タイヤ、乗用車用タイヤとして好適に用いられる。
【実施例0074】
以下、具体的な実施例及び比較例を挙げて、本実施形態を更に詳しく説明するが、本実施形態は以下の実施例及び比較例により何ら限定されるものではない。
実施例及び比較例における各種の物性は下記に示す方法により測定した。
【0075】
(水素添加前のゴム状重合体におけるブタジエン部分のミクロ構造(1,2-ビニル結合量))
試料として、水素添加前のゴム状重合体50mgを、10mLの二硫化炭素に溶解して測定サンプルとした。
溶液セルを用いて、赤外線スペクトルを600~1000cm-1の範囲で測定して、所定の波数における吸光度によりハンプトンの方法(R.R.Hampton,Analytical Chemistry 21,923(1949)に記載の方法)の計算式に従い、ブタジエン部分のミクロ構造、すなわち、1,2-ビニル結合量(mol%)を求めた(測定装置:日本分光社製のフーリエ変換赤外分光光度計「FT-IR230」)。
【0076】
(ゴム状重合体の変性率)
カラム吸着GPC法で以下のとおり測定した。窒素原子含有官能基で変性したゴム状重合体がカラムに吸着する特性を利用し、ゴム状重合体の変性率を測定した。
試料及び低分子量内部標準ポリスチレンを含む試料溶液を、ポリスチレン系カラムで測定したクロマトグラムと、シリカ系カラムで測定したクロマトグラムと、の差分よりシリカ系カラムへのゴム状重合体の吸着量を測定し、変性率を求めた。
具体的には、以下に示すとおりである。
【0077】
-試料溶液の調製-
試料10mg及び標準ポリスチレン5mgを20mLのTHFに溶解させて、試料溶液とした。
5mmol/Lのトリエチルアミン入りTHFを溶離液として用い、試料溶液20μLを装置に注入して測定した。カラムは、ガードカラム:東ソー社製の商品名「TSKguardcolumn SuperH-H」、カラム:東ソー社製の商品名「TSKgel SuperH5000」、「TSKgel SuperH6000」、「TSKgel SuperH7000」を使用した。カラムオーブン温度40℃、THF流量0.6mL/分の条件で、RI検出器(東ソー社製 HLC8320)を用いて測定しクロマトグラムを得た。
【0078】
-シリカ系カラムを用いたGPC測定条件-
東ソー社製の商品名「HLC-8320GPC」を使用して、THFを溶離液として用い、試料溶液50μLを装置に注入し、カラムオーブン温度40℃、THF流量0.5ml/分の条件で、RI検出器を用いてクロマトグラムを得た。カラムは、商品名「Zorbax PSM-1000S」、「PSM-300S」、「PSM-60S」を接続して使用し、その前段にガードカラムとして商品名「DIOL 4.6×12.5mm 5micron」を接続して使用した。
【0079】
-変性率の計算方法-
ポリスチレン系カラムを用いたクロマトグラムのピーク面積の全体を100とした際の、試料のピーク面積を“P1”、標準ポリスチレンのピーク面積を“P2”とし、シリカ系カラムを用いたクロマトグラムのピーク面積の全体を”100とした際の、試料のピーク面積を“P3”、標準ポリスチレンのピーク面積を“P4”として、下記式より変性率(%)を求めた。
変性率(%)=[1-(P2×P3)/(P1×P4)]×100
(ただし、P1+P2=P3+P4=100)
【0080】
(ゴム状重合体の水素添加率)
水添反応後のゴム状重合体の反応液に、大量のメタノールを添加することで、水添共役ジエン系重合体を沈殿させて回収した。
ついで、水添共役ジエン系重合体をアセトンで抽出し、水添共役ジエン系重合体を真空乾燥した。
これを、1H-NMR測定のサンプルとして用いて、ゴム状重合体の水素添加率を測定した。
1H-NMR測定の条件を以下に記す。
-測定条件-
測定機器 :JNM-LA400(JEOL製)
溶媒 :重水素化クロロホルム
測定サンプル :ポリマーを水素添加する前後の抜き取り品
サンプル濃度 :50mg/mL
観測周波数 :400MHz
化学シフト基準:TMS(テトラメチルシラン)
パルスディレイ:2.904秒
スキャン回数 :64回
パルス幅 :45°
測定温度 :26℃
【0081】
(ゴム状重合体のスチレン量(質量%))
試料100mgを、クロロホルムで100mLにメスアップし、溶解して測定サンプルとした。スチレンのフェニル基による紫外線吸収波長(254nm付近)の吸収量により、試料中のスチレン量(質量%)を測定した(測定装置:島津製作所社製の分光光度計「UV-2450」)。
【0082】
《ゴム状重合体の製造》
<水素添加触媒の調製>
後述する製造例においてゴム状重合体を調製する際に用いる水素添加触媒を、下記の製造例αの方法により調製した。
【0083】
(製造例α)
窒素置換した反応容器に乾燥及び精製したシクロヘキサン1リットルを仕込み、ビス(η5-シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド100ミリモルを添加し、十分に攪拌しながらトリメチルアルミニウム200ミリモルを含むn-ヘキサン溶液を添加して、室温にて約3日間反応させ水素添加触媒(TC-1)を得た。
【0084】
<ゴム状重合体の重合>
〈(製造例1)ゴム状重合体A〉
内容積43Lで、撹持機及びジャケットを具備する温度制御が可能なオートクレーブを反応器として使用し、予め不純物を除去した、1,3-ブタジエンを3,309g、シクロヘキサンを25,800g、極性物質として、2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパン15.5gを、反応器へ入れ、反応器内温を42℃に保持した。
続けて、重合開始剤として、n-ブチルリチウム3.7gを前記反応器に供給した。
重合反応開始後、重合による発熱で反応器内の温度は上昇を始め、温度の上昇が確認されなくなったら追加の1,3-ブタジエンを992.6g添加した。
追加ブタジエンの反応熱による反応器内の温度上昇が終了したら、メタノール1.9gを反応器内へ添加し、5分間攪拌した。一部重合溶液を抜き出し、乾燥させることで、水素添加前のゴム状重合体を得た。
その後、水素添加前のゴム状重合体溶液に、前記(製造例α)で調製した水素添加触媒(TC-1)を、水素添加前のゴム状重合体100質量部当たり、Ti基準で60ppm添加し、水素圧0.8MPa、平均温度85℃で表1中の水素添加率となるように水素添加反応を50分間行い、ゴム状重合体Aを得た。
得られたゴム状重合体の溶液に、酸化防止剤としてn-オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロオキシフェニル)-プロピオネートを12.6gと、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾールを3.0g添加した。
ゴム状重合体Aの分析値を表1に示す。
【0085】
〈(製造例2)ゴム状重合体B〉
予め反応器内に入れるモノマーとして、1,3-ブタジエンを3,046g、スチレンを344.0g、追加の1,3-ブタジエン量を913.8gとした以外の製造条件は製造例1と同様にして、ゴム状重合体Bを得た。
ゴム状重合体Bの分析値を表1に示す。
【0086】
〈(製造例3)ゴム状重合体C〉
予め反応器内に入れるモノマーとして、1,3-ブタジエンを2,911g、スチレンを516.0g、追加の1,3-ブタジエン量を873.2gとした以外の製造条件は製造例1と同様にして、ゴム状重合体Cを得た。
ゴム状重合体Cの分析値を表1に示す。
【0087】
〈(製造例4)ゴム状重合体D〉
メタノールの代わりに、変性剤である2,2-ジメトキシ-1-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)-1,2-アザシロリジン(以下、「AS-1」と称することがある)3.8gを反応器内へ添加した以外の製造条件は製造例2と同様にして、ゴム状重合体Dを得た。
ゴム状重合体Dの分析値を表1に示す。
【0088】
〈(製造例5、6)ゴム状重合体E、F〉
表1中の水素添加率となるように水素添加量を変更した以外、製造条件は製造例4と同様にして、ゴム状重合体E及びFを得た。
ゴム状重合体E及びFの分析値を表1に示す。
【0089】
〈(製造例7)ゴム状重合体G〉
水素添加反応を行わなかった以外の製造条件は製造例1と同様にして、ゴム状重合体Gを得た。
ゴム状重合体Gの分析値を表1に示す。
【0090】
〈(製造例8)ゴム状重合体H〉
水素添加反応を行わなかった以外の製造条件は製造例4と同様にして、ゴム状重合体Hを得た。
ゴム状重合体Hの分析値を表1に示す。
【0091】
【表1】
【0092】
[実施例1~12,比較例1~6]
(架橋用ゴム組成物の調製、物性評価)
表1に示す、製造例1~8で得られたゴム状重合体A~Hを原料ゴムの1つとして、表2及び表3に示す配合に従い、それぞれの原料ゴムを含有する架橋用ゴム組成物(配合物I~Z)を得た。
配合条件は以下に示す。
【0093】
(配合条件)
各配合剤の添加量は、ゴム用軟化剤を含まないゴム成分100質量部に対する質量部数(phr)で示した。
・天然ゴムRSS No.3(生産者:UNIMAC RUBBER CO., LTD.(タイ)、供給者:丸紅テクノラバー(株);下記表中の「天然ゴム」)
・ポリブタジエンゴム(宇部興産(株)製の商品名「UBEPOL 150」;下記表中の「ブタジエンゴム」)
・シリカ(エボニック・デグサジャパン(株)製の商品名「ULTRASIL 7000GR」、窒素吸着比表面積 175m2/g)
・シランカップリング剤(エボニック・デグサジャパン(株)製の商品名「Si75」、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
・カーボンブラック(東海カーボン(株)製の商品名「シーストSO(FEF)」、窒素吸着比表面積42m2/g)
・オイル(JXTGエネルギー(株)製 「プロセスオイル PF30」(SRAEオイル))
・老化防止剤 6C(大内新興化学(株)製の商品名「ノクラック6C」)
・ステアリン酸(花王(株)製の商品名「ルナック S-90V」)
・亜鉛華(堺化学工業(株)製の商品名「酸化亜鉛」)
・ワックス(日本精蝋(株)製のオゾエース0355)
・粉末硫黄(鶴見化学工業(株)製「サルファックス 200S」)
・加硫促進剤1 TBBS(N-tert-ブチルベンゾチアゾール-2-スルフェンアミド)(三新化学(株)製の商品名 「サンセラーNS-G」)
・加硫促進剤2 DPG(1,3-ジフェニルグアニジン)(大内新興化学(株)製の商品名「ノクセラーD-P」)
【0094】
前記架橋用ゴム組成物を、160℃で加硫プレスにて加硫し、加硫ゴム組成物試験片を得た。前記加硫ゴム組成物試験片を、100℃のギアオーブン内に72時間加熱エージングし、加熱エージング前後の“引張伸び変化率”及び“硬度変化率”を、下記の方法により評価した。評価結果を表2及び表3に示す。
【0095】
(評価1:引張伸び変化率)
JIS K6251に準拠し、加熱エージング前後の引張伸びを測定した。予め測定しておいた、ブランク(加熱エージング前)からの引張伸び変化率を算出し、表2の配合においては配合物Q、表3の配合においては配合物Zの結果を100とした場合の指数で表した。数値が大きい程、伸びの低下度合いが大きいことを表す。
【0096】
(評価2:硬度変化率)
JIS K6301に準拠し、加熱エージング前後の硬度を測定した。予め測定しておいた、ブランク(加熱エージング前)の加硫後の組成物(加硫ゴム組成物試験片)からの硬度変化率を算出し、表2の配合においては配合物Q、表3の配合においては配合物Zの結果を100とした指数で表した。数値が大きい程、硬度の上昇度合いが大きいことを表す。
【0097】
(更生タイヤの製造)
表2及び表3に記載する配合表に従い混練して得た架橋用ゴム組成物をサイドウォール部に適用し、前記サイドウォール部を有する空気入りタイヤ(サイズ205/85R16)を加硫成形した。得られた空気入りタイヤを16.0×5.5のリムに装着し、商用車両に取り付けて、走行距離が50000kmになるまで市場モニター試験を行った。モニター試験後、使用済の更生タイヤからトレッド部を削り取って台タイヤを製造し、予め加硫したトレッドパターンを、クッションゴムを介して100℃で共加硫接着させ、更生タイヤを得た。
【0098】
(更生タイヤとしての利用回数の評価;リトレッド回数)
得られた更生タイヤを再度、16.0×5.5のリムに装着し、商用車両に取り付けて、走行距離が50000kmになるまで市場モニター試験を行った。モニター試験後、“目視検査”及び“非破壊検査”により台タイヤとして使用可能かどうかを検査した。合格したものについてはトレッド部を削り取って台タイヤを製造し、予め加硫したトレッドパターンを、クッションゴムを介して100℃で共加硫接着させ、更生タイヤを得た。この操作を繰り返し、台タイヤとしての利用が不可能になるまでの更生回数(リトレッド回数)を評価した。評価結果を表2及び表3に示す。
【0099】
【表2】
【0100】
【表3】
【0101】
表2及び表3に示す通り、実施例1~12における配合物は比較例1~6における配合物に比べ、加熱エージング後の伸び及び硬度の変化率において変化度合いが小さく、ゴム加硫物としての熱に対する劣化を抑制できていることを確認した。即ち、これら実施例の配合物は、100℃の加熱条件下においてより安定であるといえる。更に、これら配合物をサイドウォール部に有する台タイヤを用いてリトレッドされた更生タイヤは、リトレッド可能回数が増加している。これは、タイヤの使用中に受ける熱や紫外線に起因する経年劣化及び/又は更生タイヤ製造時の共加硫接着工程においてかかる熱による劣化が小さいため、リトレッド可能な回数を増加できたといえる。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明におけるゴム状重合体は、更生タイヤの分野において産業上の利用可能性があり、当該ゴム状重合体を含有するサイドウォール部を備えた台タイヤを用いた本発明の更生タイヤの製造方法も同様に更生タイヤの分野において産業上の利用可能性がある。