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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144282
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】塗布装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/02 20060101AFI20241003BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B05C5/02
B05C11/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024048082
(22)【出願日】2024-03-25
(31)【優先権主張番号】P 2023054455
(32)【優先日】2023-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 敦
(72)【発明者】
【氏名】木田 威
【テーマコード(参考)】
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
4F041AA12
4F041AB01
4F041BA05
4F041BA12
4F041BA34
4F041BA36
4F041CA03
4F041CA13
4F041CA17
4F042AA22
4F042BA02
4F042BA06
4F042BA08
4F042BA12
4F042BA25
4F042CA01
4F042CA09
4F042CB02
4F042CB08
4F042CB10
4F042CB19
4F042DF23
(57)【要約】
【課題】塗布終了部における塗布液の引きずりを抑制することができる塗布装置を提供することを目的としている。
【解決手段】搬送される基材に対して塗布液を塗布する塗布装置であって、基材の搬送方向と直交する幅方向に長い吐出口と、前記吐出口と繋がり塗布液を前記吐出口に供給する塗布流路とが形成された塗布部と、前記塗布流路の容積を変化させる容積調節機構と、を備えており、前記容積調節機構は、前記塗布流路に挿入された容積調節部と、前記容積調節部の挿入量を調節する駆動部と、を有している構成とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される基材に対して塗布液を塗布する塗布装置であって、
基材の搬送方向と直交する幅方向に長い吐出口と、前記吐出口と繋がり塗布液を前記吐出口に供給する塗布流路とが形成された塗布部と、
前記塗布流路の容積を変化させる容積調節機構と、を備えており、
前記容積調節機構は、前記塗布流路に挿入された容積調節部と、前記容積調節部の挿入量を調節する駆動部と、を有していることを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
前記容積調節機構は、前記幅方向における前記塗布流路の両端部のそれぞれから挿入された一対の前記容積調節部を有していることを特徴とする請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記塗布流路は、前記幅方向における前記吐出口の両端部のそれぞれよりも前記幅方向に向かって突出するように形成された一対の拡大空間を有しており、
前記一対の前記容積調節部は、前記一対の前記拡大空間に挿入されていることを特徴とする請求項2に記載の塗布装置。
【請求項4】
前記塗布流路は、前記幅方向に長く塗布液を溜める空間であるマニホールドと、前記マニホールドと前記吐出口とを繋ぐスリットと、を有しており、
前記一対の前記拡大空間は、前記幅方向における前記マニホールドの両端部のそれぞれから突出するように形成されていることを特徴とする請求項3に記載の塗布装置。
【請求項5】
前記幅方向における前記拡大空間の断面積は、前記幅方向における前記マニホールドの断面積よりも小さいことを特徴とする請求項4に記載の塗布装置。
【請求項6】
前記容積調節部の前記拡大空間に挿入された先端部には、前記幅方向において少なくとも一部の断面積が前記拡大空間の断面積と略同一の大きさになるように形成された抵抗部が設けられ、前記拡大空間において前記駆動部により前記幅方向に往復動作することを特徴とする請求項3から請求項5のいずれかに記載の塗布装置。
【請求項7】
前記抵抗部は、前記幅方向における断面積が、前記幅方向における前記塗布部の中央側に向かうにつれて小さくなるように形成されていることを特徴とする請求項6に記載の塗布装置。
【請求項8】
前記塗布流路は、前記幅方向に長く塗布液を溜める空間であるマニホールドと、前記幅方向に広く前記マニホールドと前記吐出口とを繋ぐスリットと、を有しており、前記容積調節部は、前記マニホールドに挿入されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
基材に塗布液を塗布して塗膜を形成する塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、ロールツーロールで搬送されるアルミ箔や、銅箔などのシート状の基材に対して、電極材料のスラリーを塗布して塗膜を形成し、形成した塗膜を乾燥させることで正極、負極が形成されている。
【0003】
そして、搬送される基材に塗布液を塗布する工程では、生産性向上のための高速化、塗布液のロス軽減のために塗布液を間欠的に塗布することが行われている。すなわち、ロールツーロールで搬送される基材に対して塗布液の塗布と塗布の中断が繰り返されて、基材の搬送方向において各々の塗膜間に一定の間隔が空くように基材上に塗膜を連続的に形成している。
【0004】
下記特許文献1には、塗布液を間欠的に塗布する塗布装置が開示されている。この塗布装置は、図10に示すように、塗布液を塗布する塗布部910と、塗布部910に塗布液を供給する供給機構920と、を備え、供給機構920から塗布部910に供給された塗布液が、塗布部910の内部に形成されたマニホールド911およびスリット912を経由して、基材930と対向する吐出口913から吐出される。
【0005】
また、供給機構920は、図10に示すように、塗布液を貯留するタンク940と塗布部910を連結する供給路921と、供給路921の途中に設けられた供給バルブ922と、を有しており、供給バルブ922の内部に設けられた弁体923の位置がモータの駆動により変化することによって、塗布液の流路を形成する開状態と塗布液の流路を遮断する閉状態との2つの状態に切り替える。ここで、塗布装置900は、供給バルブ922を開状態に切り替えたときに塗布部910の吐出口913から塗布液が吐出されて塗布液の塗布を開始し、供給バルブ922を閉状態に切り替えたときに塗布部910への塗布液の供給が途切れて塗布液の塗布を中断する。すなわち、塗布装置900は、弁体923の位置を変化させて供給バルブ922の開状態と閉状態の切り替えを繰り返すことによって、基材上に塗布液を間欠的に塗布している。
【0006】
また、図10に示すように、供給バルブ922よりも手前の供給路921の途中には回収バルブ924があり、回収バルブ924の内部に設けられた弁体925の位置がモータの駆動により変化することによって、回収バルブ924を開状態と閉状態に切り替える。ここで、塗布装置900は、供給バルブ922を閉状態に切り替え回収バルブ924を開状態に切り替えることによって塗布液の塗布を中断して塗布液をタンク940に回収し、供給バルブ922を開状態に切り替え回収バルブ924を閉状態に切り替えることによって、塗布液の塗布を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014-188449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記塗布装置900では、塗布終了部において塗布液の引きずりが生じるという問題があった。具体的には、上記塗布装置900では、供給バルブ922を閉状態に切り替えて塗布部910による塗布液の塗布を中断する際に、供給路921の上流側に向かって弁体923の位置を変化させて塗布部910内の圧力を低減させることによって、吐出口913から供給路921に向かって塗布液を引き込み、吐出口913における液切りを行っている。このように、上記塗布装置900では、吐出口913から離れた位置に設けられた供給バルブ922の弁体923の動作によって、塗布部910内の圧力を低減させているため、その効果が吐出口913に及びにくくなっていた。そのため、吐出口913における液切りを十分に行うことができず、図11(a)に示すように塗膜931の終端である塗布終了部932において塗布液の引きずり933が生じる場合があった。
【0009】
本発明は、上記問題点を鑑みてなされたものであり、塗布終了部における塗布液の引きずりを抑制することができる塗布装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明の塗布装置は、搬送される基材に対して塗布液を塗布する塗布装置であって、基材の搬送方向と直交する幅方向に長い吐出口と、前記吐出口と繋がり塗布液を前記吐出口に供給する塗布流路とが形成された塗布部と、前記塗布流路の容積を変化させる容積調節機構と、を備えており、前記容積調節機構は、前記塗布流路に挿入された容積調節部と、前記容積調節部の挿入量を調節する駆動部と、を有していることを特徴としている。
【0011】
上記塗布装置によれば、容積調節機構が容積調節部と駆動部を有し、駆動部によって塗布部に形成された塗布流路に挿入された容積調節部の挿入量を調節することにより塗布流路の容積を大きくし、塗布流路の圧力を低減させ、塗布液を吐出口から塗布流路に引き込ませることが可能になる。すなわち、容積調節機構は、塗布部内に挿入された容積調節部の挿入量を調節することによって、塗布部内の圧力を低減させている。これにより、吐出口に近い位置で塗布部内の圧力を低減させることが可能になるため、その効果を吐出口に及ぼしやすくなる。これにより、塗布部による塗布液の塗布を中断させる際に吐出口における液切りを十分に行うことが可能になり、塗布終了部における塗布液の引きずりを抑制することができる。
【0012】
また、前記容積調節機構は、前記幅方向における前記塗布流路の両端部のそれぞれから挿入された一対の前記容積調節部を有している構成としてもよい。
【0013】
この構成によれば、基材の搬送方向と直交する幅方向(以下、幅方向と呼ぶ)における流路の両端部のそれぞれから塗布流路に挿入された一対の容積調節部の挿入量を調節することにより、幅方向における塗布流路の両端部のそれぞれの近傍の容積を大きくし、塗布流路の圧力を低減させ、吐出口から塗布流路に向かって塗布液を引き込むことが可能になる。すなわち、塗布流路の圧力を幅方向に亘って低減させることが可能になり、その効果を吐出口の幅方向に亘って及ぼすことができる。これにより、塗布終了部における塗布液の引きずりを幅方向に亘って抑制することができる。
【0014】
また、前記塗布流路は、前記幅方向における前記吐出口の両端部のそれぞれよりも前記幅方向に向かって突出するように形成された一対の拡大空間を有しており、前記一対の前記容積調節部は、前記一対の前記拡大空間に挿入されている構成としてもよい。
【0015】
この構成によれば、一対の容積調節部が、幅方向における吐出口の両端部のそれぞれよりも幅方向に向かって突出するように形成された一対の拡大空間に挿入されているため、塗布液の流れを阻害しにくくなっている。
【0016】
また、前記塗布流路は、前記幅方向に長く塗布液を溜める空間であるマニホールドと、前記マニホールドと前記吐出口とを繋ぐスリットと、を有しており、前記一対の前記拡大空間は、前記幅方向における前記マニホールドの両端部のそれぞれから突出するように形成されている構成としてもよい。
【0017】
この構成によれば、拡大空間が、スリットよりも広いマニホールドから突出するように形成されているため、スリットに拡大空間を形成するよりも塗布液の流れを阻害しにくくなる。
【0018】
また、前記幅方向における前記拡大空間の断面積は、前記幅方向における前記マニホールドの断面積よりも小さい構成としてもよい。
【0019】
この構成によれば、幅方向における拡大空間の断面積が幅方向におけるマニホールドの断面積よりも小さいため、幅方向における拡大空間の断面積が幅方向におけるマニホールドの断面積と同等以上の大きさである場合よりも、拡大空間に挿入される容積調節部の幅方向における断面積を小さくすることが可能になる。そして、幅方向における容積調節部の断面積を小さくすると、容積調節部の挿入量を調整する際に容積調節部が受ける抵抗が小さくなり、容積調節部の挿入量の調節を素早く行うことが可能になる。これにより、容積調節機構の応答性が向上するため、塗布終了部における塗布液の引きずりを抑制しやすくなる。
【0020】
また、前記容積調節部の前記拡大空間に挿入された先端部には、前記幅方向において少なくとも一部の断面積が前記拡大空間の断面積と略同一の大きさになるように形成された抵抗部が設けられ、前記拡大空間において前記駆動部により前記幅方向に往復動作する構成としてもよい。
【0021】
この構成によれば、容積調節部の先端部に抵抗部が設けられているため、抵抗部が設けられていない場合よりも容積調節部の挿入量を調節することによる塗布流路の容積の変化量を大きくし、塗布流路の圧力を急速に変化させることが可能になり、その効果を吐出口により及ぼしやすくなる。これにより、塗布終了部における塗布液の引きずりをより抑制することができる。
【0022】
また、前記抵抗部は、前記幅方向における断面積が、前記幅方向における前記塗布部の中央側に向かうにつれて小さくなるように形成されている構成としてもよい。
【0023】
この構成によれば、拡大空間に挿入された容積調節部を拡大空間に押し入れる方向に動作させる際に、抵抗部によって塗布液が塗布流路を通じて吐出口に向かって押し出される力を低減することができる。これにより、塗布液が過剰に塗布されることを防ぐことができる。
【0024】
また、前記塗布流路は、前記幅方向に長く塗布液を溜める空間であるマニホールドと、前記幅方向に広く前記マニホールドと前記吐出口とを繋ぐスリットと、を有しており、前記容積調節部は、前記マニホールドに挿入されている構成としてもよい。
【0025】
この構成によれば、容積調節部が、スリットよりも広いマニホールドに挿入されているため、スリットに容積調節部を挿入するよりも塗布液の流れを阻害しにくくなっている。
【発明の効果】
【0026】
本発明の塗布装置によれば、塗布終了部における塗布液の引きずりを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態における塗布装置を概略的に示す図であり、塗布液を塗布している状態を示している。
図2】本発明の一実施形態における塗布装置を概略的に示す図であり、塗布液の塗布を中断している状態を示している。
図3】本発明の一実施形態における容積調節機構を説明するための図であり、(a)は、図1のA-A矢視断面図を示し、(b)は図2のB-B矢視断面図を示している。
図4】本発明の一実施形態における塗布装置の塗布動作を説明するための図であり、(a)は供給バルブ、回収バルブ、および容積調節部の動作のタイムチャートを示し、(b)は本実施形態における塗布装置により形成された塗膜の状態を示している。
図5】本発明の一実施形態における塗布部のバリエーションを示す図である。
図6】本発明の一実施形態における塗布部のバリエーションを示す図である。
図7】本発明の一実施形態における容積調節部のバリエーションを示す図である。
図8】本発明の一実施形態における塗布部のバリエーションを示す図である。
図9】本発明の一実施形態における塗布装置の塗布動作のバリエーションを示す図である。
図10】従来の塗布装置を示す図である。
図11】従来の塗布装置により形成された塗膜の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本実施形態における塗布装置100について図面を参照しながら説明する。図1および図2は、本発明の第一実施形態における塗布装置100を概略的に示す図であり、図1は塗布液11を塗布している状態を示し、図2は塗布液11の塗布を中断している状態を示している。なお、以下の説明では、直交座標系の3軸をX、Y、Zとし、水平方向をX軸方向、Y軸方向と表現し、XY平面と垂直な方向(つまり、鉛直方向)をZ軸方向と表現する。
【0029】
塗布装置100は、図1に示すように、基材1を搬送する搬送機構2と、基材1に塗布液11を塗布する塗布部3と、塗布液11が貯留されたタンク4と、タンク4から塗布液11を塗布部3に供給する供給機構5と、塗布部3に形成されたマニホールド34の容積を調節する容積調節機構6と、を備えている。そして、搬送機構2により搬送される基材1に対して塗布部3による塗布液11の塗布と塗布の中断を繰り返すことによって、基材1上に塗膜12を間欠的に形成する。ここでいう、塗布液11を間欠的に塗布するとは、図4(b)に示すように、基材1の搬送方向において形成する各々の塗膜12間に一定の間隔が空くように基材1上に塗布液11を連続的に塗布することである。
【0030】
基材1は、リチウムイオン電池の電池用極板となる金属箔であり、正極を構成する場合はアルミニウム箔などが用いられ、負極を構成する場合は銅箔などが用いられる。この基材1は、一方向に長い帯状のシートであり、搬送機構2により連続的に搬送される。
【0031】
塗布液11は、たとえば、活物質、バインダー、導電助剤を溶剤により混合させたスラリーのことであり、リチウムイオン電池の電池用極板の材料(所謂、電極材料)として用いられる。この塗布液11を塗布部3により基材1に塗布することで、塗膜11が形成される。
【0032】
搬送機構2は、基材1を搬送するためのものであり、複数のロールが回転することにより基材1を搬送するロールツーロール方式を採用している。この搬送機構2による基材1の搬送速度は、図示しない制御部により制御される。この制御部はたとえば、汎用のコンピューターであり、以下の説明でも同様に扱う。なお、本実施形態では、塗布液11を塗布する場所に基材1を案内する塗布ロール21のみを図示している。そして、塗布ロール21は、塗布部3と対向し、塗布部3により塗布液11を塗布するときに吐出口36と所定の間隔を空けるよう配置される。そのため、塗布部3と一定の間隔を保ちながら基材1を搬送することができる。
【0033】
塗布部3は、搬送される基材1に塗布液11を塗布して塗膜12を形成するためのものであり、基材1の搬送方向と直交する幅方向(図1におけるY軸方向)に沿って長く形成されている。なお、以下の説明では、基材1の搬送方向と直交する幅方向を単に幅方向と呼ぶ。
【0034】
この塗布部3は、図1に示すように、先細り形状である第1のリップ31aを有する第1の分割体31と、先細り形状である第2のリップ32aを有する第2の分割体32とを、これらの間にシム板33を挟んで、組み合わせることによって形成されている。そして、塗布部3の内部には、幅方向に長く塗布液11を溜める空間であるマニホールド34と、このマニホールド34と繋がった幅方向に広いスリット35とが形成され、第1のリップ31aと第2のリップ32aとの間には、スリット35の開放端であり幅方向においてスリット35と同じ長さで開口する吐出口36が形成されている。すなわち、マニホールド34と吐出口36はスリット35を経由して繋がっている。
【0035】
スリット35は、マニホールド34と同様に幅方向に長く形成されている。このスリット35の幅方向寸法は、シム板33の内寸によって決定されており、スリット35の幅方向寸法と略同一の幅方向寸法の塗布液11を、基材1上に塗布することができるようになっている。また、スリット35の隙間寸法(高さ寸法)は、たとえば0.1~10mmである。なお、本実施形態では、スリット35の隙間方向が上下方向(図1におけるZ軸方向)であり、幅方向が水平方向となる姿勢で塗布部3が設置されている。すなわち、マニホールド34とスリット35が水平方向に並んで配置される姿勢で塗布部3が設置され、マニホールド34に溜められている塗布液11がスリット35を経由して吐出口36を通じて吐出される方向は水平方向になる。
【0036】
なお、本実施形態においては、塗液11が吐出口36を通じて基材1へと流れる方向を水平方向としたが、必ずしもこれに限定されず任意の方向に適宜変更してもよい。たとえば、上方向としてもよいし、下方向としてもよい。
【0037】
そして、吐出口36は、塗布ロール21と基材1を挟んで対向している。すなわち、吐出口36は基材1の表面側で基材1と対向している。これにより、吐出口36と基材1との間隔を一定に保った状態で、基材1の表面側に塗布液11を塗布することができる。
【0038】
また、図1および図3(a)に示すように、塗布部3の幅方向の中央部には、流入部37が設けられている。流入部37は、塗布部3の外部からマニホールド34に繋がる貫通孔であり、この流入部37を通じて供給機構5によりマニホールド34に塗布液11が供給されるようになっている。なお、本実施形態では、流入部37はマニホールド34の底部に繋がっている。
【0039】
供給機構5は、タンク4に貯留された塗布液11を塗布部3に供給するためのものである。本実施形態における供給機構5は、図1に示すように、塗布部3とタンク4とを連結する供給路51と、供給路51の開閉状態を切り替える供給バルブ52と、供給路51とタンク4とを連結する回収路53と、回収路53の開閉状態を切り替える回収バルブ54と、タンク4から塗布部3に向かって塗布液11を送液する図示しないポンプと、を有している。
【0040】
供給路51は、図1に示すように、塗布部3とタンク4とを連結し、ポンプによりタンク4から塗布部3へ塗布液11が送液される流路である。本実施形態では、供給路51は流入部37と繋がっており、ポンプによりタンク4から送液された塗布液11が供給路51と流入路37を通じてマニホールド34に供給される。そして、マニホールド34に供給された塗布液11は、スリット35を経由して吐出口36から吐出される。これにより、基材1上に塗布液11が塗布されて塗膜12が形成される。
【0041】
供給バルブ52は、塗布液11の流路を形成する開状態と塗布液11の流路を遮断する閉状態との2つの状態に供給路51の状態を切り替えるためのものである。この供給バルブ52は、供給路51の途中に設けられている。具体的には、図1に示すように、供給バルブ52の塗布液11の入口部は回収バルブ54の塗布液11の入口部を介して供給路51と連結され、供給バルブ52の塗布液11の出口部は供給路51を介して塗布部3と連結されている。すなわち、ポンプによりタンク4から送液された塗布液11が、供給路51と回収バルブ54の入口部を通じて供給バルブ52の入口部から供給バルブ52に供給され、供給バルブ52の出口部から供給路51を通じて塗布部3に供給されるようになっている。
【0042】
また、図1に示すように、供給バルブ52は内部に弁体52aを有し、弁体52aの位置を変化させることによって供給路51の開閉状態を切り替えるようになっている。具体的には、図1に示すように、弁体52aは駆動源である弁体駆動部52b(たとえば、エアシリンダーや電動モータ)と接続されており、弁体駆動部52bにより弁体52aと繋がるシャフト52cを供給路51の開閉方向に移動させることによって、弁体52aにより供給路51を開閉する。なお、弁体駆動部52bの制御は、前述の制御部により行う。
【0043】
そして、供給機構5は、図1に示すように供給バルブ52により供給路51を開状態に切り替えることによって塗布部3へ塗布液11を供給し、図2に示すように供給バルブ52により供給路51を閉状態に切り替えることによって塗布部3への塗布液11の供給を停止する。そして、供給バルブ52による供給路51の開閉状態の切り替えを繰り返し行うことによって、塗布部3による塗布液11の塗布と塗布の中断が繰り返し行われ、搬送機構2により搬送される基材1に対して塗布液11が間欠的に塗布される。
【0044】
回収路53は、図1に示すように、回収バルブ54の出口部を介して塗布液11の流路において供給バルブ52よりも上流側に位置する供給路51とタンク4を連結している。すなわち、供給路51を流れる塗布液11が、回収バルブ54の入口部から回収バルブ54に供給され、回収バルブ54の出口部から回収路53を通じてタンク4に回収されるようになっている。
【0045】
回収バルブ54は、塗布液11の流路を形成する開状態と塗布液11の流路を遮断する閉状態との2つの状態に回収路53の状態を切り替えるためのものである。この回収バルブ54は、図1に示すように、弁体54aを有しており、弁体54aの位置を変化させることによって回収路53の開閉状態を切り替えるようになっている。具体的には、図1に示すように、弁体54aは駆動源である弁体駆動部54b(たとえば、エアシリンダーや電動モータ)と接続されており、弁体駆動部54bにより弁体54aと繋がるシャフト54cを回収路53の開閉方向に移動させることによって、弁体54aにより回収路53を開閉する。なお、弁体駆動部54bの制御は前述の制御部により行う。
【0046】
そして、供給機構5は、図2に示すように回収バルブ54により回収路53を開状態に切り替えることによってタンク4に塗布液11を回収させ、図1に示すように回収バルブ54により回収路53を閉状態に切り替えることによってタンク4への塗布液11の回収を停止する。
【0047】
ここで、図4(a)に示すように、供給機構5は、回収バルブ54による回収路53の開閉状態の切り替え動作を、供給バルブ52による供給路51の開閉状態の切り替え動作に合わせて行うようになっている。具体的には、図1および図2に示すように回収バルブ54は、供給バルブ52により供給路51を開状態に切り替えるときに回収路53を閉状態に切り替え、供給バルブ52により供給路51を閉状態に切り替えるときに回収路53を開状態に切り替える。
【0048】
これにより、図2に示すように、供給バルブ52により供給路51を閉状態に切り替えて塗布部3への塗布液11の供給を停止する際に、供給バルブ52よりも上流に位置する供給路51内の塗布液11を回収路53を通じてタンク4に回収させることができるため、供給バルブ52よりも上流側に位置する供給路51内の圧力が高くなることを防ぐことができる。これにより、供給バルブ52により供給路51を開状態に切り替えたときに、塗布液11が塗布部3に過剰に供給されることを防ぐことができる。
【0049】
また、供給機構5は、供給バルブ52により供給路51を閉状態に切り替えて塗布部3による塗布液11の塗布を中断させる際に、図2に示すように弁体駆動部52bにより弁体52aと繋がるシャフト52cを供給路51の閉方向に移動させて、塗布部3内の圧力を低減させることによって、吐出口36から供給路51に向かって塗布液11を引き込んでいる。これにより、塗布装置100は、塗布部3による塗布液11の塗布を中断するときに吐出口36による液切りを行っている。
【0050】
ここで、塗布装置100は、吐出口36と離れた位置に設けられた供給バルブ52の弁体52aの動作によって、塗布部3内の圧力を低減させているため、その効果が吐出口36に及びにくくなっていた。そのため、吐出口36における液切りを十分に行うことができず、塗膜12の終端部であると塗布終了部14(図4(b)を参照)において塗布液11の引きずり(図11(a)に示す引きずり933)が生じる場合があった。そこで、本実施形態における塗布装置100は、塗布終了部14における塗布液11の引きずりを抑制するため、容積調節機構6によって供給バルブ52よりも吐出口36に近い位置で塗布部3内の圧力を低減させている。
【0051】
以下、容積調節機構6について説明する。
【0052】
容積調節機構6は、塗布流路の容積を変化させるためのものである。ここでいう、塗布流路とは、塗布部3に形成された塗布液11を吐出口36に供給するための流路のことであり、本実施形態ではマニホールド34とスリット35のことをいう。この容積調節機構6は、図3(a)に示すように、幅方向における塗布流路の両端部のそれぞれから挿入された一対の容積調節部61と、一対の前記容積調節部61のそれぞれの挿入量を調節する駆動部62と、を有している。
【0053】
容積調節部61は、図3(a)に示すように、一方向に長く形成された棒状形状を有しており、マニホールド34に挿入される。ここで、マニホールド34は、図3(a)に示すように、幅方向における吐出口36の両端部のそれぞれよりも幅方向に向かって突出するように形成された一対の拡大空間38を有している。
【0054】
本実施形態では、一対の容積調節部61は一対の拡大空間38に挿入されるようになっている。具体的には、図3(a)に示すように、各々の容積調節部61が、塗布部3に形成された各々の拡大空間38を形成する壁部からもう一方の容積調節部61が挿入される拡大空間38に向かって伸びるように各々の拡大空間38に挿入される。
【0055】
このように本実施形態では、一対の容積調節部61が、幅方向における吐出口36の両端部のそれぞれよりも幅方向に向かって突出するように形成された一対の拡大空間38に挿入されるため、塗布流路の一対の拡大空間38以外の部分に容積調節部61を挿入するよりも塗布液11の流れを阻害しにくくなっている。具体的には、塗布液11が流れる流路に凸部(本実施形態でいう容積調節部61)があると、その凸部によって塗布液11の流速に変化が生じ、吐出口37から吐出される塗布液11の量が幅方向においてばらついてしまう場合がある。すなわち、容積調節部61によって塗布液11の流れが阻害されてしまう場合がある。これに対し、本実施形態では、容積調節部61が塗布流路から突出するように形成された拡大空間38に挿入されているため、塗布液11の流れが阻害されにくくなる。
【0056】
また、拡大空間38は、スリット35よりも広いマニホールド34から突出するように形成されているため、スリット35に拡大空間38を形成するよりも塗布液11の流れを阻害しにくくなっている。具体的には、塗布液11が流れる流路に凹部(本実施形態でいう拡大空間38)があると、その凹部によって塗布液11の流速に変化が生じ、吐出口37から吐出される塗布液11の量が幅方向においてばらつく場合がある。すなわち、拡大空間38が塗布液11の流れを阻害する要因になり得る。これに対し、本実施形態では、拡大空間38がスリット35よりも広いマニホールド34から突出するように形成されているため、拡大空間38がマニホールド34よりも狭いスリット35に形成されるよりも、拡大空間38によって塗布液11の流れが阻害されにくくなる。
【0057】
また、図1図2図3(a)、および図3(b)に示すように、幅方向における拡大空間38の断面積は、幅方向におけるマニホールド34の断面積よりも小さくなっている。本実施形態では、マニホールド34を形成する第1の分割体31、第2の分割体32、およびシム33のうち、第2の分割体32のみに拡大空間38を形成することにより、幅方向におけるマニホールド34の断面積よりも幅方向における拡大空間38の断面積を小さくしている。このように、第2の分割体32のみに拡大空間38が形成されているため、スリット35の高さ寸法を変更するためにシム33を変更するなど、塗布部3を構成する第2の分割体32以外の構成を変更したとしても、拡大空間38の大きさや形状に変化を生じさせないようにしている。
【0058】
駆動部62は、容積調節部61の挿入量を調節するための駆動源(たとえば、エアシリンダーや電動モータ)であり、図1に示すように容積調節部61と接続されている。本実施形態では、駆動部62は電動モータであり、容積調節部61の挿入量を調節する動作の速度を可変することができるようになっている。この駆動部62は、容積調節部61を容積調節部61の長手方向に往復動作させることによって、塗布流路の容積を調節するようになっている。
【0059】
具体的には、駆動部62により容積調節部61を拡大空間38から引き出すように動作させることによって塗布流路の容積を大きくして塗布流路の圧力を低減させ、駆動部62により容積調節部61をマニホールド34に押し入れるように動作させることによって塗布流路の容積を小さくして塗布流路の圧力を増大させている。また、駆動部62の動作は前述の制御部により制御される。
【0060】
ここで、駆動部62により往復動作する容積調節部61の拡大空間38に挿入された先端部には、抵抗部63が設けられている。本実施形態における抵抗部63は、図3(a)に示すように、円盤部63aと円錐部63bにより構成されている。
【0061】
円盤部63aは、幅方向における断面積が拡大空間38の断面積と略同一の大きさになるように形成されている。ここでいう、略同一の大きさとは、駆動部62による容積調節部61の動作に伴って抵抗部63を動作させることが可能であり、抵抗部63が動作する際に容積調節部61が挿入される拡大空間38の壁部側に塗布液11が漏れ出ないようにすることが可能な大きさのことである。これにより、駆動部62により容積調節部61を往復動作させる際に、抵抗部63を設けない場合よりも塗布流路の容積の変化量を大きくすることが可能になるため、塗布流路の容積を大きくする際に塗布流路の圧力を急速に低減させることができる。
【0062】
また、円錐部63bは、幅方向における断面積が、容積調節部61が拡大空間に挿入される方向に向かうにつれて小さくなるように形成されている。これにより、駆動部62により容積調節部61を拡大空間38に押し入れるように動作させて塗布流路の容積を小さくする際に、抵抗部63が円盤部63aのみにより構成される場合よりも塗布液11が吐出口36に向かって押し出される力を低減することができる。
【0063】
なお、駆動部62により容積調節部61を拡大空間38に押し入れるように動作させるときは、図3(a)に示すように抵抗部63の先端部が幅方向において吐出口36の端部の位置と同じ位置に位置するように容積調節部61を動作させる。この動作の後の容積調節部61の位置を、以下の説明では第1の位置と呼ぶ。また、駆動部62により容積調節部61を拡大空間38から引き出すように動作させるときは、図3(b)に示すように拡大空間38に抵抗部63を残して拡大空間38から容積調節部61を引き出すように容積調節部61を動作させる。この動作の後の容積調節部61の位置を、以下の説明では第2の位置と呼ぶ。
【0064】
また、本実施形態における容積調節機構6は、塗布部3による塗布液11の塗布を中断させる際に一対の容積調節部61の挿入量が少なくなるように駆動部62により一対の容積調節部61の挿入量を調節する第1の調節モードと、塗布部3による塗布液11の塗布を再開させる際に第1の調節モードにおいて調節された容積調節部61の挿入量を調節前の挿入量に戻すように駆動部62により容積調節部61の挿入量を調節する第2の調節モードと、を有している。なお、第1の調節モードと第2の調節モードの2つのモードは、前述の制御部により切り替えられる。
【0065】
具体的に説明する。容積調節機構6は、第1の調節モードにおいて、図3(a)に示す第1の位置から図3(b)に示す第2の位置に一対の容積調節部61を移動させるように、駆動部62により一対の容積調節部61を一対の拡大空間38から引き出すように動作させることによって、塗布流路の容積を大きくして塗布流路の圧力を低減させている。すなわち、容積調節機構6は、塗布部3内に挿入された一対の容積調節部61を動作させることによって、塗布部3内の圧力を低減させている。これにより、吐出口36に近い位置で塗布部3内の圧力を低減させることが可能になるため、その効果を吐出口36に及ぼしやすくなる。これにより、塗布部3による塗布液11の塗布を中断させる際に吐出口36における液切りを十分に行うことが可能になり、塗布終了部14における塗布液11の引きずりを抑制することができる。
【0066】
ここで、容積調節部61の先端部には、円盤部63aと円錐部63bにより構成された抵抗部63が設けられているため、抵抗部63が設けられていない場合よりも一対の容積調節部61の挿入量を調節することによる塗布流路の容積の変化量を大きくし、塗布流路の圧力を急速に変化させることが可能になり、その効果を吐出口36により及ぼしやすくなる。これにより、塗布終了部14における塗布液11の引きずりをより抑制することができる。
【0067】
また、第1の調節モードでは、駆動部62によって、幅方向における塗布流路の両端部のそれぞれから塗布流路に挿入された一対の容積調節部61の挿入量を調節することにより、幅方向における塗布流路の両端部のそれぞれの近傍の容積を大きくしている。そのため、1つの容積調節部61を動作させることによって塗布流路の容積を大きくするよりも、高速で塗布流路の圧力を低減させることが可能になるため、塗布終了部13における塗布液11の引きずりをより抑制することができる。また、塗布流路の圧力を幅方向に亘って低減させることが可能になり、その効果を吐出口36の幅方向に亘って及ぼすことができる。これにより、塗布終了部14における塗布液11の引きずりを幅方向に亘って抑制することができる。
【0068】
また、容積調節機構6は、第2の調節モードにおいて、図3(b)に示す第2の位置から図3(a)に示す第1の位置に一対の容積調節部61の位置を戻すように、駆動部62により一対の容積調節部61を一対の拡大空間38に押し入れるように動作させることによって、塗布流路の容積を小さくして塗布流路の圧力を増大させている。これにより、塗布液11が塗布流路から吐出口36に向かって押し出され、吐出口36から吐出される。
【0069】
そして、容積調節部61の先端部には、円盤部63aと円錐部63bにより構成された抵抗部63が設けられているため、抵抗部63が円盤部63aのみにより構成される場合よりも一対の容積調節部61を一対の拡大空間38に押し入れるときの塗布液11への抗力を低減することが可能になるため、塗布液11が吐出口36に向かって押し出される力を低減させることができる。これにより、塗布液11の塗布を再開する際に塗布液11が過剰に塗布されることを防ぎ、塗膜12の始端である塗布開始部13(図4(b)を参照)において塗膜12が盛り上がる(図11(b)の盛り上がり934)ことを防ぐことができる。
【0070】
また、前述のとおり、幅方向における拡大空間38の断面積が、幅方向におけるマニホールド34の断面積よりも小さくなっているため、幅方向における拡大空間38の断面積が幅方向におけるマニホールド34の断面積と同等以上の大きさである場合よりも、拡大空間38に挿入される容積調節部61の幅方向における断面積を小さくすることが可能になる。そして、幅方向における容積調節部61の断面積を小さくすると、容積調節部61の挿入量を調整する際に容積調節部61が受ける抵抗が小さくなり、容積調節部61の挿入量の調節を素早く行うことが可能になる。これにより、容積調節機構6の応答性が向上するため、塗布終了部14における塗布液11の引きずりを抑制しやすくなる。また、幅方向における拡大空間38の断面積が幅方向におけるマニホールド34の断面積と同等以上の大きさである場合よりも、容積調節部61の挿入量を調整した際の塗布流路の容積の変化量が小さくなるため、塗布流路の圧力を微調整することが可能になる。
【0071】
以下に本実施形態における塗布装置100の動作について具体的に説明する。
【0072】
なお、以下の説明では、図4(a)に示すように供給機構5による塗布部3への塗布液11の供給が行われておらず、塗布液11の塗布を行っていない状態から説明する。すなわち、図2に示すように、供給バルブ52により供給路51が閉状態になり、回収バルブ54により回収路53が開状態になっている状態から説明を始める。なお、ポンプによるタンク4から塗布部3への塗布液11の送液は、塗布部3による塗布液11の塗布を完全に停止させるまでの間は常に行われているものとする。
【0073】
まず、塗布装置100により塗布液11の塗布を開始するときの動作を説明する。塗布装置100は、図1および図4(a)に示すように、供給バルブ52により供給路51を閉状態から開状態に切り替え、回収バルブ54により回収路53を開状態から閉状態に切り替える。これにより、塗布液11が、ポンプによりタンク4から供給路51を通じてマニホールド34に供給される。そして、マニホールド34に供給された塗布液11がスリット35を経由して吐出口36から吐出される。これにより、図4(b)に示すように搬送機構2により搬送される基材1上に塗布開始部13が形成される。この塗布装置100により塗布液11の塗布を開始するときの一連の動作は、塗布液11の塗布を中断した後、塗布液11の塗布を再開するときにも行われるようになっている。
【0074】
また、塗布装置100により塗布液11の塗布を開始するときは、図3(a)に示すように一対の容積調節部61は第1の位置に位置している。
【0075】
そして、塗布装置100は、供給バルブ52、回収バルブ53、および容積調節部61の状態を維持しながら塗布部3による塗布液11の塗布を続けることによって、図4(b)に示すように搬送機構2により搬送される基材1上に塗膜12を形成する。
【0076】
次に、塗布装置100により塗布液11の塗布を中断するときの動作を説明する。塗布装置100は、図2および図4(a)に示すように、供給バルブ52により供給路51を開状態から閉状態に切り替え、回収バルブ54により回収路53を閉状態から開状態に切り替える。これにより、マニホールド34への塗布液11の供給が停止されて塗布部3による塗布液11の塗布が中断され、図4(b)に示すように搬送機構により搬送される基材1上に塗膜12の終端である塗布終了部14が形成される。
【0077】
ここで、容積調節機構6は、供給バルブ52と回収バルブ54の動作と同時に、第1の調節モードにおける動作を実行する。具体的には、容積調節機構6は、図3(a)および図4(a)に示す第1の位置から図3(b)および図4(a)に示す第2の位置に一対の容積調節部61を移動させるように、駆動部62により一対の容積調節部61を一対の拡大空間38から引き出すように動作させることによって、吐出口36における液切りを行う。
【0078】
次に、塗布装置100により塗布液11の塗布を再開するときの動作を説明する。なお、容積調節機構6の動作以外は、塗布液11の塗布を開始するときの動作と同様なため、説明を省略する。
【0079】
容積調節機構6は、供給バルブ52と回収バルブ54の動作と同時に、第2の調節モードにおける動作を実行する。具体的には、容積調節機構6は、図3(b)および図4(a)に示す第2の位置から図3(a)および図4(a)に示す第1の位置に一対の容積調節部61の位置を戻すように、駆動部62により一対の容積調節部61を一対の拡大空間38に押し入れるように動作させることによって、塗布流路の容積を小さくして塗布流路の圧力を増大させている。
【0080】
これにより、塗布部3による塗布液11の塗布が再開され、塗布開始部13が形成される。ここで、容積調節機構6は、図4(a)に示すように、容積調節部61を第1の位置から第2の位置に動作させるときよりも、低速で容積調節部61を第2の位置から第1の位置に動作させるようになっている。これにより、塗布流路の圧力が急速に増大することを防ぐことができるため、塗布液11の塗布を再開する際に塗布液11が過剰に塗布されることを防ぎ、塗布開始部13において塗膜12が盛り上がることを防ぐことができる。そして、塗布装置100は、以上の動作を図4(a)に示すように繰り返し行うことによって、図4(b)に示すように基材1に塗布液11を間欠的に塗布する。
【0081】
このように上記実施形態における塗布装置100によれば、容積調節機構6が容積調節部61と駆動部62を有し、駆動部62によって塗布部3に形成された塗布流路に挿入された容積調節部61の挿入量を調節することにより塗布流路の容積を大きくし、塗布流路の圧力を低減させ、塗布液11を吐出口36から塗布流路に引き込ませることが可能になる。すなわち、容積調節機構6は、塗布部3内に挿入された容積調節部61の挿入量を調節することによって、塗布部3内の圧力を低減させている。これにより、吐出口36に近い位置で塗布部3内の圧力を低減させることが可能になるため、その効果を吐出口36に及ぼしやすくなる。これにより、塗布部3による塗布液11の塗布を中断させる際に吐出口36における液切りを十分に行うことが可能になり、塗布終了部14における塗布液11の引きずりを抑制することができる。
【0082】
また、上記実施形態における塗布装置100によれば、幅方向における塗布流路の両端部のそれぞれから塗布流路に挿入された一対の容積調節部61の挿入量を調節することにより、塗布流路の圧力を幅方向に亘って低減させることが可能になり、その効果を吐出口36の幅方向に亘って及ぼすことができる。これにより、塗布終了部14における塗布液11の引きずりを幅方向に亘って抑制することができる
【0083】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、各実施形態における構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。たとえば、上記実施形態では、容積調節機構6が一対の容積調節部61を有している構成を例について説明したが、これに限らず、容積調機構6が容積調節部61を1つだけ有している構成としてもよい。
【0084】
また、容積調節機構6は、一対の容積調節部61を複数有していてもよく、一対の容積調節61それぞれを塗布流路の塗布液11が流れる方向に沿って並べて配置してもよい。具体的には、図5(a)および図5(b)に示すように、マニホールド34とスリット35のそれぞれが一対の拡大空間38を有しており、一対の拡大空間38それぞれに一対の容積調節部61それぞれが挿入されるようになっている。ここで、容積調節機構6は、マニホールド34が有する一対の拡大空間38に挿入された一対の容積調節部61を図5(b)に示す第2の位置から図5(a)に示す第1の位置に動作させるときに、スリット35が有する一対の拡大空間38に挿入された一対の容積調節部61を図5(b)に示す第1の位置から図5(a)に示す第2の位置に動作させる。すなわち、塗布液11の塗布を再開させる際に、マニホールド34が有する一対の拡大空間38に挿入された一対の容積調節部61を動作させることにより増大した塗布流路の圧力を、スリット35が有する一対の拡大空間38に挿入された一対の容積調節部61を動作させることにより低減させている。これにより、塗布液11の塗布を再開する際に塗布液11が過剰に塗布されることを防ぐことができ、塗布開始部13において塗膜12が盛り上がることを防ぐことができる。
【0085】
また、上記実施形態では、第1の位置が、抵抗部63の先端部が幅方向において吐出口36の端部の位置と同じ位置に位置するように容積調節部61を動作させた後の位置であり、第2の位置が、拡大空間38に抵抗部63を残して拡大空間38から容積調節部61を引き出すように容積調節部61を動作させた後の位置であることを例に説明したがこれに限らず、形成する塗膜の12の幅方向の寸法や膜厚に応じて適宜変更してもよい。すなわち、塗布液11を塗布する条件に応じて、第1の位置と第2の位置を適宜変更することにより、塗布経路の容積の変化量をコントロールしてもよい。
【0086】
また、上記実施形態では、拡大空間38が第2の分割体32に形成されている例について説明したがこれに限られない。たとえば、第1の分割体31に形成されていてもよい。
【0087】
また、上記実施形態では、幅方向における拡大空間38の断面積が、幅方向におけるマニホールド34の断面積よりも小さい例について説明したが、これに限らず、図6(a)および6(b)に示すように幅方向における拡大空間38の断面積が、幅方向におけるマニホールド34の断面積と同一の大きさであってもよい。この場合、図6(a)および図6(b)に示すように、幅方向における容積調節部61の断面積も、幅方向におけるマニホールド34の断面積と同一の大きさであってもよい。
【0088】
また、上記実施形態では、抵抗部63が、円盤部63aと円錐部63bにより構成される例について説明したが、これに限らず、幅方向において少なくとも抵抗部63の一部の断面積が拡大空間38の断面積と略同一の大きさになるように形成されるとよい。たとえば、図6に示すように、抵抗部63を円盤部63aのみにより構成してもよい。
【0089】
また、上記実施形態では、容積調節部61の先端部に抵抗部63を設ける例について説明したが、抵抗部63を設けなくてもよい。
【0090】
また、上記実施形態では、マニホールド34が一対の拡大空間38を有している例について説明したが、これに限られず、少なくとも塗布流路が拡大空間38を有しているとよい。たとえば、図8に示すようにスリット35が拡大空間38を有していてもよい。
【0091】
また、上記実施形態では、塗布流路が一対の拡大空間38を有している例について説明したが、拡大空間38は一つでもよい。
【0092】
また、塗布流路が拡大空間38を有していなくてもよい。すなわち、幅方向においてマニホールド34、スリット35、および吐出口36が同じ広さに形成されていてもよい。
【0093】
また、上記実施形態では、供給バルブ52と回収バルブ54により供給路51と回収路53の開閉状態を切り替えることによって塗布部3による塗布液11の塗布と塗布の中断を行っていたが、容積調節機構6によって行ってもよい。すなわち、塗布装置100は、供給バルブ52と回収バルブ54を備えていなくてもよい。
【0094】
また、上記実施形態では、容積調節機構6が、容積調節部61を第1の位置から第2の位置に動作させるときよりも、低速で容積調節部61を第2の位置から第1の位置に動作させる例について説明したが、図9(a)に示すように同一の速度で容積調節部61を第2の位置から第1の位置に動作させてもよい。
【符号の説明】
【0095】
100 塗布装置
1 基材
11 塗布液
12 塗膜
13 塗布開始部
14 塗布終了部
2 搬送機構
21 塗布ロール
3 塗布部
31 第1の分割体
31a 第1のリップ
32 第2の分割体
32a 第2のリップ
33 シム板
34 マニホールド
35 スリット
36 吐出口
37 流入部
38 拡大空間
4 タンク
5 供給機構
51 供給路
52 供給バルブ
52a 弁体
52b 弁体駆動部
52c シャフト
53 回収路
54 回収バルブ
54a 弁体
54b 弁体駆動部
54c シャフト
6 容積調節機構
61 容積調節部
62 駆動部
63 抵抗部
63a 円盤部
63b 円錐部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11