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特開2024-144291ポリオレフィン系樹脂発泡粒子およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144291
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】ポリオレフィン系樹脂発泡粒子およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/18 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
C08J9/18 CES
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024048305
(22)【出願日】2024-03-25
(31)【優先権主張番号】P 2023056680
(32)【優先日】2023-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】松田 安叶
(72)【発明者】
【氏名】木口 太郎
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA24A
4F074AA24L
4F074AC02
4F074AC19
4F074AD10
4F074AD12
4F074AD16
4F074AG03
4F074AG04
4F074AG10
4F074BA32
4F074CA34
4F074CA38
4F074CA49
4F074DA02
4F074DA18
4F074DA32
4F074DA33
4F074DA35
4F074DA37
4F074DA47
(57)【要約】
【課題】成形性および難燃性に優れるポリオレフィン系樹脂発泡成形体を、小さい環境負荷で提供すること。
【解決手段】ポリオレフィン系樹脂(A)特定のカルシウム化合物、フェノール系酸化防止剤(D)およびリン系加工安定剤(E)を含む、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子およびその製造方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂(A)、カルシウム化合物(C1)、フェノール系酸化防止剤(D)およびリン系加工安定剤(E)を含み、
前記カルシウム化合物(C1)は、硫黄元素およびハロゲン元素を含まない化合物であり、
前記カルシウム化合物(C1)の含有量は、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子100重量%中、0.10重量%~3.00重量%であり、
前記カルシウム化合物(C1)は、気泡を構成している膜の内部に分散しているポリオレフィン系樹脂発泡粒子。
【請求項2】
前記カルシウム化合物(C1)は、
酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウムおよび脂肪酸カルシウムからなる群より選択される1種以上を含む、請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂発泡粒子。
【請求項3】
前記ポリオレフィン系樹脂(A)は、リサイクルポリオレフィン系樹脂を含む、請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂発泡粒子。
【請求項4】
さらにヒンダードアミン(B)を含む、請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂発泡粒子。
【請求項5】
さらにカーボンブラックおよび/または黒鉛を含む、請求項4に記載のポリオレフィン系樹脂発泡粒子。
【請求項6】
さらに金属不活性化剤を含む、請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂発泡粒子。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂発泡粒子を成形してなるポリオレフィン系樹脂発泡成形体。
【請求項8】
容器内において、
ポリオレフィン系樹脂(A)、カルシウム化合物(C2)、フェノール系酸化防止剤(D)およびリン系加工安定剤(E)を含んでなるポリオレフィン系樹脂組成物からなるポリオレフィン系樹脂粒子と、発泡剤と、を水系分散媒中に分散させる分散工程と、
前記分散工程にて得られた分散液を、前記容器内の圧力よりも低圧の領域に放出する放出工程と、を含み、
前記カルシウム化合物(C2)は、硫黄元素およびハロゲン元素を含まない化合物であり、
前記カルシウム化合物(C2)の含有量は、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子100重量%中、0.10重量%~3.00重量%である、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項9】
前記カルシウム化合物(C2)は、
酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウムおよび脂肪酸カルシウムからなる群より選択される1種以上を含む、請求項8に記載のポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項10】
前記カルシウム化合物(C2)は、
酸化カルシウムおよび脂肪酸カルシウムからなる群より選択される1種以上を含む、請求項8に記載のポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項11】
前記ポリオレフィン系樹脂(A)は、リサイクルポリオレフィン系樹脂を含む、請求項8~10のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項12】
ポリオレフィン系樹脂(A)、カルシウム化合物(C1)、フェノール系酸化防止剤(D)およびリン系加工安定剤(E)を含むポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法であって、
容器内において、
(i)ポリオレフィン系樹脂(A)、(ii)カルシウム化合物(C1)および/またはカルシウム化合物(C1)の前駆体、(iii)フェノール系酸化防止剤(D)および(iv)リン系加工安定剤(E)を含んでなるポリオレフィン系樹脂組成物からなるポリオレフィン系樹脂粒子と、発泡剤と、を水系分散媒中に分散させる分散工程と、
前記分散工程にて得られた分散液を、前記容器内の圧力よりも低圧の領域に放出する放出工程と、を含み、
前記カルシウム化合物(C1)は、硫黄元素およびハロゲン元素を含まない化合物であり、
前記カルシウム化合物(C1)の前駆体は、硫黄元素およびハロゲン元素を含まない化合物であり、
前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子において、カルシウム化合物(C1)の含有量は、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子100重量%中、0.10重量%~3.00重量%である、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項13】
前記カルシウム化合物(C1)の前駆体は、
酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウムおよび脂肪酸カルシウムからなる群より選択される1種以上を含む、請求項12に記載のポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項14】
前記カルシウム化合物(C1)の前駆体は、
酸化カルシウムおよび脂肪酸カルシウムからなる群より選択される1種以上を含む、請求項12に記載のポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項15】
前記ポリオレフィン系樹脂(A)は、リサイクルポリオレフィン系樹脂を含む、請求項12~14のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリオレフィン系樹脂発泡粒子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン系樹脂発泡粒子を用いて得られるポリオレフィン系樹脂発泡成形体は、自動車内装部材および/または自動車バンパー用芯材をはじめ、断熱材、緩衝包装材、通い箱など様々な用途に用いられている。また、ポリオレフィン系樹脂発泡成形体の難燃性を向上させるために、ポリオレフィン系樹脂に難燃剤、金属塩水和物を添加する技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-35949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した従来技術では、ポリオレフィン系樹脂に対して添加する(樹脂組成物中に含まれる)物質が硫黄元素を含んでおり、環境負荷と得られる発泡成形体の成形性および燃焼速度との両立の観点から改善の余地があった。
【0005】
本発明の一実施形態は、前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、成形性および難燃性に優れる発泡成形体を、小さい環境負荷で提供し得るポリオレフィン系樹脂発泡粒子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明の一実施形態は、以下の構成を含むものである。
〔1〕ポリオレフィン系樹脂(A)、カルシウム化合物(C1)、フェノール系酸化防止剤(D)およびリン系加工安定剤(E)を含み、前記カルシウム化合物(C1)は、硫黄元素およびハロゲン元素を含まない化合物であり、前記カルシウム化合物(C1)の含有量は、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子100重量%中、0.10重量%~3.00重量%であり、前記カルシウム化合物(C1)は、気泡を構成している膜の内部に分散しているポリオレフィン系樹脂発泡粒子。
〔2〕前記カルシウム化合物(C1)は、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウムおよび脂肪酸カルシウムからなる群より選択される1種以上を含む、〔1〕に記載のポリオレフィン系樹脂発泡粒子。
〔3〕前記ポリオレフィン系樹脂(A)は、リサイクルポリオレフィン系樹脂を含む、〔1〕または〔2〕に記載のポリオレフィン系樹脂発泡粒子。
〔4〕さらにヒンダードアミン(B)を含む、〔1〕~〔3〕のいずれか1つに記載のポリオレフィン系樹脂発泡粒子。
〔5〕さらにカーボンブラックおよび/または黒鉛を含む、〔1〕~〔4〕のいずれか1つに記載のポリオレフィン系樹脂発泡粒子。
〔6〕さらに金属不活性化剤を含む、〔1〕~〔5〕のいずれか1つに記載のポリオレフィン系樹脂発泡粒子。
〔7〕〔1〕~〔6〕のいずれか1つに記載のポリオレフィン系樹脂発泡粒子を成形してなるポリオレフィン系樹脂発泡成形体。
〔8〕容器内において、ポリオレフィン系樹脂(A)、カルシウム化合物(C2)、フェノール系酸化防止剤(D)およびリン系加工安定剤(E)を含んでなるポリオレフィン系樹脂組成物からなるポリオレフィン系樹脂粒子と、発泡剤と、を水系分散媒中に分散させる分散工程と、前記分散工程にて得られた分散液を、前記容器内の圧力よりも低圧の領域に放出する放出工程と、を含み、前記カルシウム化合物(C2)は、硫黄元素およびハロゲン元素を含まない化合物であり、前記カルシウム化合物(C2)の含有量は、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子100重量%中、0.10重量%~3.00重量%である、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法。
〔9〕前記カルシウム化合物(C2)は、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウムおよび脂肪酸カルシウムからなる群より選択される1種以上を含む、〔8〕に記載のポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法。
〔10〕前記カルシウム化合物(C2)は、酸化カルシウムおよび脂肪酸カルシウムからなる群より選択される1種以上を含む、〔8〕または〔9〕に記載のポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法。
〔11〕前記ポリオレフィン系樹脂(A)は、リサイクルポリオレフィン系樹脂を含む、〔8〕~〔10〕のいずれか1つに記載のポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法。
〔12〕ポリオレフィン系樹脂(A)、カルシウム化合物(C1)、フェノール系酸化防止剤(D)およびリン系加工安定剤(E)を含むポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法であって、
容器内において、
(i)ポリオレフィン系樹脂(A)、(ii)カルシウム化合物(C1)および/またはカルシウム化合物(C1)の前駆体、(iii)フェノール系酸化防止剤(D)および(iv)リン系加工安定剤(E)を含んでなるポリオレフィン系樹脂組成物からなるポリオレフィン系樹脂粒子と、発泡剤と、を水系分散媒中に分散させる分散工程と、
前記分散工程にて得られた分散液を、前記容器内の圧力よりも低圧の領域に放出する放出工程と、を含み、
前記カルシウム化合物(C1)は、硫黄元素およびハロゲン元素を含まない化合物であり、
前記カルシウム化合物(C1)の前駆体は、硫黄元素およびハロゲン元素を含まない化合物であり、
前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子において、カルシウム化合物(C1)の含有量は、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子100重量%中、0.10重量%~3.00重量%である、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法。
〔13〕前記カルシウム化合物(C1)の前駆体は、
酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウムおよび脂肪酸カルシウムからなる群より選択される1種以上を含む、〔12〕に記載のポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法。
〔14〕前記カルシウム化合物(C1)の前駆体は、
酸化カルシウムおよび脂肪酸カルシウムからなる群より選択される1種以上を含む、〔12〕または〔13〕に記載のポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法。
〔15〕前記ポリオレフィン系樹脂(A)は、リサイクルポリオレフィン系樹脂を含む、〔12〕~〔14〕のいずれか1つに記載のポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、成形性および難燃性に優れる発泡成形体を小さい環境負荷で提供し得るポリオレフィン系樹脂発泡粒子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態または実施例にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせて得られる実施形態または実施例についても、本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。なお、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意図する。
【0010】
本明細書において、重合体または共重合体に含まれる、X単量体に由来する構成単位を「X単位」と称する場合がある。
【0011】
本明細書において特記しない限り、構成単位として、X単位と、X単位と、・・・およびX単位(nは2以上の整数)とを含む共重合体を、「X/X/・・・/X共重合体」とも称する。X/X/・・・/X共重合体としては、明示されている場合を除き、重合様式は特に限定されず、ランダム共重合体であってもよく、交互共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよく、グラフト共重合体であってもよい。
【0012】
〔1.ポリオレフィン系樹脂発泡粒子〕
本発明の一実施形態に係るポリオレフィン系樹脂発泡粒子は、ポリオレフィン系樹脂(A)、カルシウム化合物(C1)、フェノール系酸化防止剤(D)およびリン系加工安定剤(E)を含み、前記カルシウム化合物(C1)は、硫黄元素およびハロゲン元素を含まない化合物であり、前記カルシウム化合物(C1)の含有量は、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子100重量%中、0.10重量%~3.00重量%であり、前記カルシウム化合物(C1)は、気泡を構成している膜の内部に分散しているポリオレフィン系樹脂発泡粒子である。
【0013】
本発明の一実施形態に係るポリオレフィン系樹脂発泡粒子は、前記構成を有するため、成形性および難燃性に優れる発泡成形体を小さい環境負荷で提供することができるという利点を有する。
【0014】
また、前記構成によれば、水質・土壌等の汚染を低減できる。このような効果は、例えば、国連が提唱する持続可能な開発目標(SDGs)の目標14「持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する」等の達成にも貢献するものである。
【0015】
本明細書において、「ポリオレフィン系樹脂粒子」を「樹脂粒子」と称する場合があり、「ポリオレフィン系発泡粒子」を「発泡粒子」と称する場合があり、「本発明の一実施形態に係るポリオレフィン系発泡粒子」を「本発泡粒子」と称する場合があり、「ポリオレフィン系樹脂発泡成形体」を「発泡成形体」と称する場合がある。
【0016】
本明細書において、成形性とは、発泡成形体の表面美麗性を意味する。
【0017】
本明細書において、難燃性は、発泡成形体の燃焼速度によって評価する。本明細書において、発泡成形体の最高燃焼速度または平均燃焼速度の少なくとも1つが優れる場合、難燃性に優れると評価する。評価方法について、詳しくは後述する。
【0018】
<ポリオレフィン系樹脂(A)>
本明細書において、「ポリオレフィン系樹脂」とは、樹脂を構成している全構成単位100モル%中、オレフィン単位を50モル%以上含む樹脂を意図する。
【0019】
ポリオレフィン系樹脂(A)としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン系樹脂およびポリプロピレン系樹脂などが挙げられる。これらポリオレフィン系樹脂は、1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
(ポリエチレン系樹脂)
本明細書において、「ポリエチレン系樹脂」とは、樹脂を構成している全構成単位100モル%中、エチレン単位を50モル%より多く含む樹脂を意図する。
【0021】
ポリエチレン系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、スチレン改質ポリエチレン系樹脂、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1-ブテン共重合体、エチレン/1-ブテン/プロピレン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体およびエチレン/4-メチル-1-ペンテン共重合体などが挙げられる。
【0022】
上述したエチレン系樹脂は、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0023】
(ポリプロピレン系樹脂)
本明細書において、「ポリプロピレン系樹脂」とは、樹脂を構成している全構成単位100モル%中、プロピレン単位を50モル%以上含む樹脂を意図する。
【0024】
ポリプロピレン系樹脂は、(i)プロピレンの単独重合体であってもよく、(ii)プロピレンとプロピレン以外の単量体とのブロック共重合体、交互共重合体、ランダム共重合体もしくはグラフト共重合体であってもよく、または(iii)これらの2種以上の混合物であってもよい。プロピレンとプロピレン以外の単量体とのブロック共重合体はインパクトコポリマーと称されることもある。プロピレンの単独重合体、プロピレンとプロピレン以外の単量体とのブロック共重合体、交互共重合体およびランダム共重合体は、いずれも直鎖状の重合体である。ポリプロピレン系樹脂は直鎖状の重合体であることが好ましい。
【0025】
後述する発泡工程、および発泡成形の工程において、低い加熱温度で樹脂粒子および発泡粒子を加工できることから、ポリプロピレン系樹脂は、プロピレンとプロピレン以外の単量体とのランダム共重合体であることが好ましい。
【0026】
ポリプロピレン系樹脂は、プロピレン単位に加えて、プロピレン単量体以外の単量体に由来する構成単位を1単位以上有していてもよく、1種以上有していてもよい。ポリプロピレン系樹脂の製造で使用される「プロピレン単量体以外の単量体」を「コモノマー」と称する場合もある。ポリプロピレン系樹脂に含まれる「プロピレン単量体以外の単量体に由来する構成単位」を「コモノマー単位」と称する場合もある。
【0027】
コモノマーとしては、エチレン、1-ブテン、イソブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3,4-ジメチル-1-ブテン、1-ヘプテン、3-メチル-1-ヘキセン、1-オクテンおよび1-デセンなどの炭素数2または4~12のα-オレフィンが挙げられる。
【0028】
ポリプロピレン系樹脂の具体例としては、ポリプロピレン単独重合体、エチレン/プロピレンランダム共重合体、1-ブテン/プロピレンランダム共重合体、1-ブテン/エチレン/プロピレンランダム共重合体、エチレン/プロピレンブロック共重合体、1-ブテン/プロピレンブロック共重体、1-ブテン/エチレン/プロピレンブロック共重合体、エチレン/プロピレンブロック交互重合体、1-ブテン/プロピレンブロック交互重体、1-ブテン/エチレン/プロピレンブロック交互重合体、プロピレン/塩素化ビニル共重合体、プロピレン/無水マレイン酸共重合体およびスチレン改質ポリプロピレン系樹脂などが挙げられる。
【0029】
ポリプロピレン系樹脂として、上述した具体例の中の1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。得られる樹脂粒子が良好な発泡性を有する点、および、得られる発泡粒子が良好な成形性を有する点から、上述した具体例の中でも、ポリプロピレン系樹脂としては、エチレン/プロピレンランダム共重合体および/または1-ブテン/エチレン/プロピレンランダム共重合体を含むことが好適である。また、成形性および難燃性に優れる発泡成形体を得ることができる点から、上述した具体例の中でも、ポリプロピレン系樹脂は、エチレン/プロピレンランダム共重合体および/または1-ブテン/エチレン/プロピレンランダム共重合体を含むことが好適である。
【0030】
ポリプロピレン系樹脂が、エチレン/プロピレンランダム共重合体と1-ブテン/エチレン/プロピレンランダム共重合体との混合物である場合、ポリプロピレン系樹脂中における、エチレン/プロピレンランダム共重合体の好ましい割合は、特に限定されない。
【0031】
ポリオレフィン系樹脂(A)は、当該ポリオレフィン系樹脂(A)100重量%中、ポリプロピレン系樹脂を70重量%以上含むことが好ましく、80重量%以上含むことがより好ましく、90重量%以上含むことがより好ましく、95重量%以上含むことがさらに好ましく、98重量%以上含むことがよりさらに好ましい。ポリオレフィン系樹脂(A)は、当該ポリオレフィン系樹脂(A)100重量%中、ポリプロピレン系樹脂を100重量%含むことが特に好ましい。換言すれば、ポリオレフィン系樹脂(A)は、ポリプロピレン系樹脂のみから構成されることが好ましい。ポリオレフィン系樹脂(A)に含まれるポリプロピレン系樹脂の量が上述した範囲内である場合、難燃性に優れる発泡成形体を得ることができるという利点を有する。
【0032】
本発泡粒子におけるポリオレフィン系樹脂(A)の含有量は、特に限定されないが、本発泡粒子100重量%中、93.00重量%~98.00重量%であることが好ましく、94.00重量%~97.50重量%であることがより好ましく、95.50重量%~97.00重量%であることがさらに好ましく、95.00重量%~96.50重量%であることが特に好ましい。当該構成によれば、(i)発泡成形体の強度低下が小さい、(ii)気泡径が大きくなることにより、発泡成形体が成形性および外観美麗性に優れるという利点を有する。
【0033】
ポリオレフィン系樹脂(A)は、リサイクルポリオレフィン系樹脂を含むことが好ましい。
【0034】
本発明者らは、ポリオレフィン系樹脂がリサイクルポリオレフィン系樹脂を含む場合に、リサイクルポリオレフィン系樹脂を含まない場合と比較して、(I)造粒工程においてポリオレフィン系樹脂が熱分解されやすいことにより、得られる樹脂粒子のMFRが上昇し、当該樹脂粒子から得られる発泡粒子からなる発泡成形体に粒間が多くみられること、また、(II)得られる発泡粒子からなる発泡成形体の難燃性が悪化することを新規に見出した。
【0035】
ここで、ポリオレフィン系樹脂がリサイクルポリオレフィン系樹脂を含む場合に得られる発泡成形体の難燃性が悪化するのは、(i)リサイクルポリオレフィン系樹脂は、リサイクルされる工程において繰り返し加熱されることにより、低分子量化し、分解および揮発が起こりやすいため、および(ii)リサイクルポリオレフィン系樹脂を含むリサイクル材料中に含まれる不純物等は、リサイクルポリオレフィン系樹脂の分解を促進し、難燃剤の効果を打ち消すため、であると推察される。なお、本発明の一実施形態はかかる推察に何ら制限されるものではない。
【0036】
そこで、本発明者らは、鋭意検討の過程において、リサイクルポリオレフィン系樹脂を含むポリオレフィン系樹脂粒子を製造する際に、酸化防止剤を用いることにより、得られる樹脂粒子のMFRの上昇の抑制を試みたが、十分な改善はみられなかった。また、本発明者らは、鋭意検討の過程において、リサイクルポリオレフィン系樹脂を含むポリオレフィン系樹脂からなる発泡粒子の製造において、既存の難燃剤の増量および既存の2種以上の難燃剤の併用により、得られる発泡成形体の難燃性の向上を試みたものの、改善はみられなかった。
【0037】
また、市場に流通しているリサイクル材料(リサイクルポリオレフィン系樹脂を含むリサイクル材料)は、カーボンブラックを含み得る。一方、一般的に、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子がカーボンブラックを含む場合、難燃性が悪いことが知られていた。
【0038】
鋭意検討の結果、本発明者らは、ポリオレフィン系樹脂(A)がリサイクルポリオレフィン系樹脂を含む場合においても、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子が、カルシウム化合物(C1)、フェノール系酸化防止剤(D)およびリン系加工安定剤(E)を含み、前記カルシウム化合物(C1)は、硫黄元素およびハロゲン元素を含まない化合物であり、前記カルシウム化合物(C1)の含有量は、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子100重量%中、0.10重量%~3.00重量%であり、前記カルシウム化合物(C1)は、気泡を構成している膜の内部に分散しているポリオレフィン系樹脂発泡粒子である場合には、造粒工程においてポリオレフィン系樹脂が熱分解されてMFRが上昇することが抑制され、得られる発泡成形体が成形性および難燃性に優れるとの新規知見を得た。
【0039】
また、本発明者らは、発泡粒子がカーボンブラックを含む場合においても、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子が、カルシウム化合物(C1)、フェノール系酸化防止剤(D)およびリン系加工安定剤(E)を含み、前記カルシウム化合物(C1)は、硫黄元素およびハロゲン元素を含まない化合物であり、前記カルシウム化合物(C1)の含有量は、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子100重量%中、0.10重量%~3.00重量%であり、前記カルシウム化合物(C1)は、気泡を構成している膜の内部に分散しているポリオレフィン系樹脂発泡粒子であり、発泡粒子がヒンダードアミン(B)を含む場合には、得られる発泡成形体が成形性および難燃性に優れるとの新規知見を得た。
【0040】
また、ポリオレフィン系樹脂(A)がリサイクルポリオレフィン系樹脂を含む場合、プラスチックごみの発生量、および、製造に用いるプラスチック量を低減できる。このような効果は、例えば、国連が提唱する持続可能な開発目標(SDGs)の目標12「持続可能な生産消費形態を確保する」等の達成にも貢献するものである。
【0041】
本明細書において、「リサイクルポリオレフィン系樹脂」とは、一度以上、ポリオレフィン系樹脂製品の形態(例えば、発泡粒子;発泡成形体;フィルム;食品トレー;袋、ボトル等の包装容器;点滴パック、注射器シリンジ等の医療用容器;衣装ケース;クリアファイル等の雑貨;家電;自動車部品;等)となった後、使用および/または廃棄されたポリオレフィン系樹脂製品を、任意の手段(例えば、破砕、細断、溶融およびこれらの組み合わせなど)によって、再度、ポリオレフィン系樹脂(またはポリオレフィン系樹脂ペレット)の形態となったポリオレフィン系樹脂、および(ii)ポリオレフィン系樹脂製品の製造過程で排出される廃棄物を、任意の手段(例えば、破砕、細断、溶融およびこれらの組み合わせなど)によって、再度、ポリオレフィン系樹脂(またはポリオレフィン系樹脂ペレット)の形態となったポリオレフィン系樹脂、のことを意図する。
【0042】
本明細書において、「非リサイクルポリオレフィン系樹脂」とは、一度もポリオレフィン系樹脂製品の形態を経たことが無い、ポリオレフィン系樹脂のことを意図する。
【0043】
ポリオレフィン系樹脂(A)がリサイクルポリオレフィン系樹脂を含む場合、本発泡粒子におけるリサイクルポリオレフィン系樹脂の含有量は、特に限定されないが、ポリオレフィン系樹脂(A)重量%に対して、10重量%~100重量%であることが好ましく、20重量%~70重量%であることがより好ましく、25重量%~50重量%であることがさらに好ましい。当該構成によれば、環境への負荷をより低減することができるとの利点を有する。
【0044】
(その他の樹脂)
本発明の一実施形態において、本発泡粒子は、本発明の一実施形態に係る効果を損なわない範囲で、ポリオレフィン系樹脂(A)以外の樹脂(本明細書において、その他の樹脂、と称する場合がある。)をさらに含んでいてもよい。その他の樹脂としては、スチレン系樹脂(ポリスチレン、スチレン/無水マレイン酸共重合体およびスチレン/エチレン共重合体など)などが挙げられる。
【0045】
本発泡粒子がその他の樹脂を含む場合、本発泡粒子におけるその他の樹脂の含有量は特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂(A)100重量部に対して、1重量部~10重量部であることが好ましく、2重量部~5重量部であることがさらに好ましい。難燃性により優れるポリオレフィン系樹脂発泡成形体を提供できることから、発泡粒子におけるその他の樹脂の含有量は、ポリオレフィン系樹脂(A)100重量部に対して、5重量部以下が好ましい。換言すれば、前記ポリオレフィン系樹脂粒子は、さらに前記ポリオレフィン系樹脂(A)以外の樹脂を有し、前記その他の樹脂の含有量は、前記ポリオレフィン系樹脂(A)100重量部に対して、5重量部以下であることが好ましい。難燃性にさらに優れるポリオレフィン系樹脂発泡成形体を提供できることから、発泡粒子におけるその他の樹脂の含有量は、ポリオレフィン系樹脂(A)100重量部に対して、4重量部以下がより好ましく、3重量部以下がより好ましく、2重量部以下がより好ましく、1重量部以下がさらに好ましく、0.1重量部以下が特に好ましい。樹脂粒子におけるその他の樹脂の含有量がポリオレフィン系樹脂(A)100重量部に対して0.1重量以下であるということは、発泡粒子(樹脂粒子)がその他の樹脂を実質的に含んでいないことを意図する。
【0046】
(物性)
ポリオレフィン系樹脂(A)の230±0.2℃におけるメルトフローレート(MFR)としては、特に限定されないが、1g/10分~40g/10分が好ましく、2g/10分~35g/10分がより好ましく、3g/10分~30g/10分がさらに好ましく、3g/10分~10g/10分が特に好ましい。なお、MFRは「メルトインデックス(MI)」と称する場合もある。ポリオレフィン系樹脂(A)のMFRが1g/10分以上である場合、本発泡粒子の製造において発泡粒子の発泡倍率を高めることが容易になるという利点を有する。ポリオレフィン系樹脂(A)のMFRが30g/10分以下である場合、得られる発泡粒子の気泡が連通化する虞がなく、その結果、(i)本発泡粒子から得られる発泡成形体の圧縮強度が良好となる傾向、または、(ii)当該発泡成形体の表面美麗性が良好となる傾向があるという利点を有する。なお、ポリオレフィン系樹脂のMFRの測定方法については、後述の実施例にて詳説する。
【0047】
ポリオレフィン系樹脂(A)の融点としては、特に限定されないが、135℃~160℃が好ましく、137℃~155℃がより好ましく、139℃~153℃がさらに好ましい。ポリオレフィン系樹脂(A)の融点が、(i)135℃以上である場合、得られる発泡粒子から得られる発泡成形体は優れた耐熱性を有するという利点を有し、(ii)160℃以下である場合、発泡粒子の製造において発泡粒子の発泡倍率を高めることが容易になるという利点を有する。なお、ポリオレフィン系樹脂(A)の融点の測定方法については、後述の実施例にて詳説する。
【0048】
<ヒンダードアミン(B)>
本発明の一実施形態に係るポリオレフィン系樹脂発泡粒子は、ヒンダードアミン(B)を含むことが好ましい。
【0049】
(ヒンダードアミン)
本明細書において、「ヒンダードアミン」とは、N原子上に直接的に置換されたOR基(ここで、Rは飽和または不飽和の一価の炭化水素基である)を有しているヒンダードアミン(以下、N-置換型ヒンダードアミンと称する場合がある)を意図する。ヒンダードアミンとしては、N原子上に直接的に置換されたOR基を有しているヒンダードアミンである限り特に限定されず、公知のヒンダードアミンを使用し得る。ヒンダードアミンとしては、1種類のヒンダードアミンを単独で使用してもよく、2種類以上のヒンダードアミンを組み合わせて使用してもよい。
【0050】
広い温度範囲で難燃効果を発揮できることから、ヒンダードアミンとしては、トリアジン成分を含有しているN-置換型ヒンダードアミン(以下、「トリアジン骨格含有ヒンダードアミン」と称する場合がある。)が好ましい。トリアジン骨格含有ヒンダードアミンとしては、特に限定されないが、(i)CAS番号191680-81-6の化合物((i-1)過酸化処理したN-ブチル-2,2,6,6,-テトラメチル-4-ピぺリジンアミンと、2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジンとの反応生成物にシクロヘキサンを反応させてなる生成物と、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミンとの反応生成物であり、(i-2)2,4-ビス((1-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピぺリジン-4-イル)ブチルアミノ)-6-クロロ-S-トリアジンと、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミンとの反応生成物であるともいえ、(i-3)N,N’,N’’’-トリス{2,4-ビス[(1-ヒドロカルビルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アルキルアミノ]-s-トリアジン-6-イル}-3,3’-エチレンジイミノジプロピルアミンであるともいえる)、および/または、(ii)ビス(1-ウンデカンオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピぺリジン-4-イル)カルボネート、が好ましい。また、上述したトリアジン骨格含有ヒンダードアミンの異性体、および、上述したトリアジン骨格含有ヒンダードアミンの架橋された誘導体を使用することもできる。トリアジン骨格含有ヒンダードアミンについて、より詳細には、欧州特許第0889085号明細書の第2頁32行目~第4頁6行目に開示されている。
【0051】
トリアジン骨格含有ヒンダードアミンとしては、市販品も好適に使用できる。トリアジン骨格含有ヒンダードアミンの市販品としては、BASF社製FLAMESTAB(登録商標)NOR116(CAS番号191680-81-6の化合物)、およびCLARIANT社製HOSTAVIN(登録商標)NOW XP、アデカ社製アデカスタブLA-81(ビス(1-ウンデカンオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピぺリジン-4-イル)カルボネート)などが挙げられる。
【0052】
本発明の一実施形態において、ヒンダードアミンは、下記の構造式(iv)によって表される化合物であってもよい:
【0053】
【化1】
【0054】
上記構造式(iv)中、GおよびGは、独立して、C1-8アルキル基、またはペンタメチレンであり;ZおよびZは、それぞれメチル基であるか、またはZおよびZは、共に結合成分を形成しており、当該結合成分は、エステル基、エーテル基、アミド基、アミノ基、カルボキシ基またはウレタン基によって付加的に置換されていてもよく;かつ、Eは、C1-8アルコキシ基、C5-12シクロアルコキシ基C7-15アラルコキシ基、-O-C(O)-C1-18アルキル基、または-O-T-(OH)基であり;ここで、Tは、(i)C1-18アルキレン鎖、(ii)C5-18シクロアルキレン鎖、(iii)C5-18シクロアルケニレン鎖、または(iv)フェニル基もしくはC1-4アルキル置換型フェニル基によって置換されたC1-4アルキレン鎖であり;bは1~3であり、かつ、Tの有する炭素原子の数以下であり、また、bが2または3であるときに、それぞれのヒドロキシル基は、Tの異なる炭素原子に連結されている。
【0055】
上記構造式(iv)で表される化合物について、より詳細には、欧州特許第2225318号明細書に開示されており、より具体的には、欧州特許第2225318号明細書の第5頁35行目~第25頁48行目に開示されている。
【0056】
本発明の一実施形態において、ヒンダードアミンは、下記の構造式(v)によって表される化合物であってもよい:
【0057】
【化2】
【0058】
上記構造式(v)中、Rは、水素またはメチル基であり、かつRは、C1-18アルキル基、C2-18アルケニル基、C2-18アルキニル基、C5-12シクロアルキル基、C5-8シクロアルケニル基、C6-10アリール基またはC7-9アラルキル基である。
【0059】
上記構造式(v)で表される化合物について、より詳細には、欧州特許第0309402号明細書の第3頁33行目~第8頁58行目に開示されている。
【0060】
本発明の一実施形態において、ヒンダードアミンは、下記の構造式(vi)によって表される化合物であってもよい:
【0061】
【化3】
【0062】
上記構造式(vi)中、E、k、Y、W、R~RおよびG~Gは、米国特許第8598369号明細書において規定されているとおりである。
【0063】
上記構造式(vi)によって表される化合物について、より詳細には、米国特許第8598369号明細書の実施例1~12および表1~5において開示されている。
【0064】
本発泡粒子におけるヒンダードアミン(B)の含有量は、特に限定されないが、当該発泡粒子100重量%中、0.01重量%~3.00重量%であることが好ましく、0.03重量%~1.00重量%であることがより好ましく、0.05重量%~0.75重量%であることがより好ましく、0.07重量%~0.50重量%であることがさらに好ましく、0.10重量%~0.25重量%であることが特に好ましい。当該構成によれば、難燃性に優れる発泡成形体を得ることができるという利点を有する。
【0065】
<カルシウム化合物(C1)>
本発明の一実施形態に係るポリオレフィン系樹脂発泡粒子は、カルシウム化合物(C1)を含む(前記カルシウム化合物(C1)は、硫黄元素およびハロゲン元素を含まない化合物である)。当該構成によれば、難燃性に優れる発泡成形体を得ることができるという利点を有する。
【0066】
カルシウム化合物(C1)とは、カルシウムを含むが、硫黄元素およびハロゲン元素を含まない化合物を意図する。
【0067】
カルシウム化合物(C1)は、後述するカルシウム化合物(C2)に由来する化合物であり得る。カルシウム化合物(C1)は、(I)後述するカルシウム化合物(C2)と同一の化合物、または、(II)本発泡粒子の製造工程において、耐圧容器内に存在する水または発泡剤と、後述するカルシウム化合物(C2)が反応することにより得られる化合物であり得る。
【0068】
それ故、カルシウム化合物(C1)は、(i)カルシウム化合物(C2)と同一の化合物、(ii)カルシウム化合物(C2)の水和物、または(iii)カルシウム化合物(C2)の炭酸塩、のいずれかであることが好ましい。
【0069】
カルシウム化合物(C2)については、後述する〔2.ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法〕における<カルシウム化合物(C2)>の項で説明するため、当該記載を援用し、ここでは説明を省略する。
【0070】
カルシウム化合物(C1)としては、例えば、硫黄元素およびハロゲン元素を含まない化合物であって、カルシウム塩(例えば、カルシウムを含む無機塩の無水物、カルシウムを含む無機塩の水和物、カルシウムを含む有機塩、カルシウムを含む有機塩の水和物等。)、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、過酸化カルシウムおよび炭化カルシウムからなる群より選択される1種以上の化合物であることが好ましい。
【0071】
カルシウム化合物(C1)に含まれる、「カルシウムを含む無機塩の無水物」、「カルシウムを含む無機塩の水和物」としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、亜リン酸カルシウム、アルミノケイ酸一カルシウム、アルミノケイ酸二カルシウム、アルミン酸一カルシウム、アルミン酸三カルシウム、ケイ酸二カルシウム、ケイ酸三カルシウム、ジ亜リン酸カルシウム、水酸化リン酸カルシウム、炭酸マグネシウムカルシウム、二リン酸カルシウム、ヘキサケイ酸五カルシウム、ヘキサケイ酸六カルシウム、ヘキサフルオロケイ酸カルシウム、メタケイ酸カルシウム、メタケイ酸マグネシウムカルシウム、メタリン酸カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸四カルシウム、リン酸八カルシウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウムおよびその水和物からなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
【0072】
また、カルシウム化合物(C1)に含まれる、「カルシウムを含む有機塩の無水物」、「カルシウムを含む有機塩の水和物」としては、例えば、脂肪酸カルシウムおよびその水和物からなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
【0073】
カルシウム化合物(C1)に含まれ得る脂肪酸カルシウムとしては、例えば、酢酸カルシウム、クエン酸カルシウム、シュウ酸カルシウムおよびステアリン酸カルシウムからなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
【0074】
上述したカルシウム化合物は、本発泡粒子において、1種のみが含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。
【0075】
カルシウム化合物(C1)は、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウムおよび脂肪酸カルシウムからなる群より選択される1種以上を含むことが好ましい。換言すれば、発泡粒子の原料である樹脂粒子は後述するカルシウム化合物(C2)を含むことが好ましい。当該構成によれば、樹脂粒子を製造する造粒工程において、ポリオレフィン系樹脂の熱分解が抑制され、樹脂粒子のMFRが上昇しにくくなり、かつ、長期熱安定性と難燃性に優れる発泡成形体を得ることができるという利点を有する。
【0076】
発泡粒子におけるカルシウム化合物(C1)の含有量は、当該発泡粒子100重量%中、0.10重量%~3.00重量%であり、0.12重量%~3.00重量%であることがより好ましく、0.14重量%~3.00重量%であることがより好ましく、0.16重量%~3.00重量%であることがさらに好ましく、0.18重量%~3.00重量%であることが特に好ましい。当該構成によれば難燃性に優れる発泡成形体を得ることができるという利点を有する。
【0077】
カルシウム化合物(C1)が、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、および炭酸カルシウムからなる群より選択される1種以上を含む場合、発泡粒子100重量%中、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、および炭酸カルシウムの含有量の合計は、0.03重量%以上であることが好ましく、0.05重量%以上であることがより好ましく、0.10重量%以上であることが好ましく、0.12重量%以上であることがより好ましく、0.14重量%以上であることがさらに好ましく、0.15重量%以上であることが特に好ましい。当該構成によれば、樹脂粒子を製造する造粒工程において、ポリオレフィン系樹脂の熱分解が抑制され、樹脂粒子のMFRが上昇しにくくなり、かつ、長期熱安定性、難燃性および表面美麗性に優れる発泡成形体を得ることができるという利点を有する。
【0078】
カルシウム化合物(C1)が、脂肪酸カルシウム(化合物中に硫黄元素、ハロゲン元素を含まない)を含む場合、脂肪酸カルシウム(化合物中に硫黄元素、ハロゲン元素を含まない)の含有量は、特に限定されないが、発泡粒子100重量%中、0.01重量%以上であることが好ましく、0.02重量%以上であることがより好ましく、0.03重量%以上であることがさらに好ましく、0.04重量%以上であることが特に好ましい。当該構成によれば、樹脂粒子を製造する造粒工程において、ポリオレフィン系樹脂の熱分解が抑制され、樹脂粒子のMFRが上昇しにくくなり、かつ、長期熱安定性、難燃性および表面美麗性に優れる発泡成形体を得ることができるという利点を有する。
【0079】
本発明の一実施形態において、カルシウム化合物(C1)は、気泡を構成している膜の内部(膜それ自体)に分散している。換言すれば、カルシウム化合物(C1)は、気泡を構成している膜の表面および/または外周には存在しないことを意図する。当該構成によれば、難燃性および表面美麗性に優れる発泡成形体を得ることができるという利点を有する。なお、後述する造粒工程のように、ポリオレフィン系樹脂(A)およびカルシウム化合物(C2)を含む樹脂組成物を溶融混練して、樹脂粒子を得、当該樹脂粒子を用いて、例えば後述する分散工程および放出工程を行い、発泡粒子を得る場合、得られた発泡粒子において、カルシウム化合物(C1)は、当該発泡粒子の気泡を構成している膜の内部に分散している。また、発泡粒子の気泡を構成している膜の断面を走査型電子顕微鏡エネルギー分散型X線分光法[SEM-EDX]を用いて分析することにより、発泡粒子の気泡を構成している膜の内部にカルシウム化合物が分散しているか否か、確認することができる。
【0080】
<フェノール系酸化防止剤(D)>
ポリオレフィン系樹脂発泡粒子は、フェノール系酸化防止剤(D)を含む。当該構成によれば、樹脂粒子を製造する造粒工程において、ポリオレフィン系樹脂の熱分解が抑制され、樹脂粒子のMFRが上昇しにくくなり、長期熱安定性、表面美麗性、および難燃性に優れる発泡成形体を得ることができるという利点を有する。
【0081】
フェノール系酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、テトラキス〔メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4・ヒドロキシベンジル)イソシアヌレイト、n-オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートおよび1,1,3-トリス(2メチ-4ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタンからなる群より選択される1種以上であるが好ましい。この中でも、テトラキス[3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸]ペンタエリトリトールがより好ましい。当該構成によれば、樹脂粒子を製造する造粒工程において、ポリオレフィン系樹脂の熱分解が抑制され、樹脂粒子のMFRが上昇しにくくなり、長期熱安定性、表面美麗性、および難燃性に優れる発泡成形体を得ることができるという利点を有する。
【0082】
フェノール系酸化防止剤(D)としては、市販品も好適に使用できる。フェノール系酸化防止剤(D)の市販品としては、BASF社製「Irganox 1010」(テトラキス〔メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン)、BASF社製「Irganox 1076」(オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート)、ならびにBASF社製「Irganox 3114」およびADEKA社製「アデカスタブAO-20」(1,3,5-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン)からなる群より選択される1種以上であることが好ましい。当該構成によれば、難燃性に優れる発泡成形体を得ることができるという利点を有する。
【0083】
本発泡粒子において、上述したフェノール系酸化防止剤(D)は、1種のみが含有されていてもよく、2種以上が組み合わせられて含有されていてもよい。
【0084】
本発泡粒子におけるフェノール系酸化防止剤(D)の含有量は、特に限定されないが、当該発泡粒子100重量%中、0.01重量%~1.00重量%であることが好ましく、0.03重量%~0.50重量%であることがより好ましく、0.05重量%~0.30重量%であることがより好ましく、0.05重量%~0.20重量%であることがさらに好ましい。当該構成によれば、樹脂粒子を製造する造粒工程において、ポリオレフィン系樹脂の熱分解が抑制され、樹脂粒子のMFRが上昇しにくくなり、長期熱安定性、表面美麗性、および難燃性に優れる発泡成形体を得ることができるという利点を有する。
【0085】
<リン系加工安定剤(E)>
ポリオレフィン系樹脂発泡粒子は、リン系加工安定剤(E)を含む。当該構成によれば、樹脂粒子を製造する造粒工程において、ポリオレフィン系樹脂の熱分解が抑制され、樹脂粒子のMFRが上昇しにくくなり、長期熱安定性、表面美麗性、および難燃性に優れる発泡成形体を得ることができるという利点を有する。
【0086】
リン系加工安定剤は、特に限定されないが、三価のリン化合物であることが好ましく、例えば、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、およびトリス(モノ,ジノニルフェニル)ホスファイトからなる群より選択される1種以上であることが好ましい。これらの中でも、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイトがより好ましい。当該構成によれば、樹脂粒子を製造する造粒工程において、ポリオレフィン系樹脂の熱分解が抑制され、樹脂粒子のMFRが上昇しにくくなり、長期熱安定性、表面美麗性、および難燃性に優れる発泡成形体を得ることができるという利点を有する。
【0087】
リン系加工安定剤(E)としては、市販品も好適に使用できる。リン系加工安定剤(E)の市販品としては、BASF社製「Irgafos 168」(トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト)およびADEKA社製「アデカスタブPEP-24G」(ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト)からなる群より選択される1種以上であることが好ましい。当該構成によれば、樹脂粒子を製造する造粒工程において、ポリオレフィン系樹脂の熱分解が抑制され、樹脂粒子のMFRが上昇しにくくなり、長期熱安定性、表面美麗性、および難燃性に優れる発泡成形体を得ることができるという利点を有する。
【0088】
本発泡粒子において、リン系加工安定剤(E)は、1種のみが含有されていてもよく、2種以上が組み合わせられて含有されていてもよい。
【0089】
本発泡粒子におけるリン系加工安定剤(E)の含有量は、特に限定されないが、当該発泡粒子100重量%中、0.01重量%~1.00重量%であることが好ましく、0.03重量%~0.50重量%であることがより好ましく、0.05重量%~0.30重量%であることがより好ましく、0.07重量%~0.20重量%であることがさらに好ましい。当該構成によれば、樹脂粒子を製造する造粒工程において、ポリオレフィン系樹脂の熱分解が抑制され、樹脂粒子のMFRが上昇しにくくなり、長期熱安定性、表面美麗性、および難燃性に優れる発泡成形体を得ることができるという利点を有する。
【0090】
<その他の添加剤>
本発明の一実施形態において、発泡粒子は、ポリオレフィン系樹脂(A)、ヒンダードアミン(B)、カルシウム化合物(C1)、フェノール系酸化防止剤(D)、およびリン系加工安定剤(E)の他に、本発明の一実施形態に係る効果を損なわない限り、任意でその他の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、着色剤、親水性化合物、結晶核剤、帯電防止剤、難燃剤、酸化防止剤、光安定剤、導電剤、滑剤、カーボンブラック、粉状活性炭、金属不活性化剤等が挙げられる。このような添加剤は、樹脂組成物に添加することにより得られる樹脂粒子へ含有させてもよく、樹脂粒子を発泡するときに、分散液へ直接添加してもよい。
【0091】
親水性化合物は、樹脂粒子中の含浸水分量を増加させることを目的として、使用される物質である。樹脂組成物が親水性化合物を含む場合、樹脂粒子に発泡性を付与することができる。親水性化合物による樹脂粒子への発泡性付与効果は、発泡剤として水を用いる場合に特に顕著になる。
【0092】
本発明の一実施形態で用いられ得る親水性化合物としては、例えば、グリセリン、ポリエチレングリコール、C12~C18の脂肪族アルコール類(例えば、ペンタエリスリトール、セチルアルコール、ステアリルアルコール)、メラミン、イソシアヌル酸、メラミン-イソシアヌル酸縮合物、ホウ砂、ホウ酸亜鉛等が挙げられる。これら親水性化合物の1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。また、2種類以上の親水性化合物を混合して使用する場合、目的に応じて、混合比率を適宜調整してもよい。
【0093】
発泡粒子における親水性化合物の含有量は、発泡粒子100重量%に対して、0.01重量%~1.00重量%であることが好ましく、0.05重量%~0.70重量%であることがより好ましく、0.10重量%~0.60重量%であることがさらに好ましい。親水性化合物の含有量が、(i)0.01重量%以上である場合、親水性化合物による発泡性付与効果を十分に得ることができ、(ii)1.00重量%以下である場合、得られる発泡粒子が過度に収縮する虞がない。
【0094】
樹脂組成物に配合される結晶核剤は、樹脂粒子を発泡するときに発泡核となり得る物質である。発泡粒子は結晶核剤を含むことが好ましい。
【0095】
本発明の一実施形態で用いられ得る結晶核剤としては、例えば、タルク、長石、ゼオライト、マイカ、シリカ、カオリン、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、ベントナイト、ホウ酸亜鉛等が挙げられる。なお、これら結晶核剤の1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。また、2種類以上の結晶核剤を混合して使用する場合、目的に応じて、混合比率を適宜調整してもよい。
【0096】
発泡粒子における結晶核剤の含有量は、平均気泡径の均一性の観点から、発泡粒子100重量%に対して、0.01重量%~2.00重量%が好ましく、0.02重量%~1.00重量%がより好ましく、0.03重量%~0.50重量%がさらに好ましい。
【0097】
本発泡粒子は、得られる発泡成形体を灰色または黒色に着色するために、カーボンブラックおよび/または黒鉛を含むことが好ましい。
【0098】
本発泡粒子における、カーボンブラックの一次粒子の平均粒子径は、10nm~200nmであることが好ましく、15nm~150nmであることがより好ましく、20nm~100nmであることがさらに好ましく、20nm~50nmであることが特に好ましい。当該構成によれば、カーボンブラックの添加量が少ない場合であっても、黒色度の高い発泡成形体が得られ、また、発泡成形体が難燃性に優れるとの利点を有する。
【0099】
発泡粒子におけるカーボンブラックの含有量は、特に限定されないが、当該発泡粒子100重量%中、2.00重量%~5.00重量%であることが好ましく、2.00重量%~4.00重量%であることがより好ましく、2.50重量%~3.50重量%であることがさらに好ましい。発泡粒子100重量%中におけるカーボンブラックの含有量が2.00重量%以上の場合、得られる発泡成形体の黒色度が良好となる傾向にある。発泡粒子100重量%中におけるカーボンブラックの含有量が5.00重量%以下の場合、得られる発泡成形体の難燃性が良好となりやすい傾向にある。
【0100】
金属不活性剤とは、「金属イオンを捕捉可能な物質」を意図する。具体的には、金属不活性剤とは、金属イオンとイオン結合を形成するか、あるいは金属イオンと錯体を形成し得る物質を意図する。
【0101】
本発泡粒子は、さらに金属不活性化剤を含むことが好ましい。本発泡粒子が金属不活性剤を含む場合、金属イオンに起因する、発泡粒子または発泡成形体の酸化による劣化促進を低減できるという利点を有する。リサイクルポリオレフィン系樹脂は金属イオンを含み得る。そのため、本発泡粒子がポリオレフィン系樹脂(A)としてリサイクルポリオレフィン系樹脂を含む場合、特に、発泡粒子はさらに金属不活性剤を含むことが好ましい。
【0102】
金属不活性剤としては、金属イオンを捕捉可能である限り特に限定されないが、例えば、2-ヒドロキシ-N-1H-1,2,4-トリアゾール-3-イルベンザミド、N’1,N’12-ビス(2-ヒドロキシベンゾイル)ドデカンジヒドラジド、N,N’-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミン、2’,3-ビス[[3-[3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロピオニル]]プロピオンヒドラジド、EDTA、およびEDTA-2Na等が挙げられる。金属不活性剤として、市販品を用いてもよい。金属不活性剤として使用可能な市販品としては、BASF社製のIRGANOX(登録商標) MD1024、ADEKA社製のアデカスタブ(登録商標)CDA-1、アデカスタブ(登録商標)CDA-1M、アデカスタブ(登録商標)CDA-6S、アデカスタブ(登録商標)CDA-10、およびアデカスタブ(登録商標)ZSシリーズなどが挙げられる。
【0103】
<物性>
(ポリオレフィン系樹脂粒子のMFR)
本発明の一実施形態に係るポリオレフィン系樹脂粒子のMFRは、特に限定されないが、3g/10分~35g/10分がより好ましく、5g/10分~25g/10分がさらに好ましく、7g/10分~15g/10分が特に好ましい。ポリオレフィン系樹脂粒子のMFRが3g/10分以上である場合、本発泡粒子の製造において発泡粒子の発泡倍率を高めることが容易になるという利点を有する。ポリオレフィン系樹脂粒子のMFRが35g/10分以下である場合、得られる発泡粒子の気泡が連通化する虞がなく、その結果、(i)本発泡粒子から得られる発泡成形体の圧縮強度が良好となる傾向、または、(ii)当該発泡成形体の表面美麗性が良好となる傾向がある。ポリオレフィン系樹脂粒子のMFRの測定方法については、後述の実施例にて詳述する。
【0104】
(ポリオレフィン系樹脂粒子の酸素指数)
本発明の一実施形態に係るポリオレフィン系樹脂粒子の酸素指数は、特に限定されないが、18.7%以上であることが好ましく、19.0%以上であることがより好ましく、19.1%以上であることがさらに好ましく、19.2%以上であることが特に好ましい。樹脂粒子の酸素指数が高くなるほど、発泡成形体の難燃性が高くなる傾向にあることを意味する。ポリオレフィン系樹脂粒子の酸素指数の測定方法については、後述の実施例にて詳述する。
【0105】
(ポリオレフィン系樹脂発泡粒子のDSC比)
本発泡粒子のDSC比は、特に限定されないが、10.0%~50.0%であることが好ましく、15.0%~40.0%であることがより好ましく、18.0%~30.0%であることがさらに好ましく、20.0%~25.0%であることが特に好ましい。発泡粒子のDSC比が10.0%以上である場合、発泡粒子は十分な強度を有する発泡成形体を提供できるという利点を有する。一方、発泡粒子のDSC比が40.0%以下である場合、発泡粒子を比較的低い温度(成形温度)で成形して発泡成形体を提供できるという利点を有する。発泡粒子のDSC比の測定方法については、後述の実施例にて詳述する。
【0106】
(ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の嵩密度)
本発泡粒子の嵩密度は、特に限定されないが、15.0g/L~55.0g/Lであることが好ましく、20.0g/L~40.0g/Lであることがより好ましく、20.0g/L~30.0g/Lであることがさらに好ましい。また、20.0g/L~30.0g/Lの範囲において、嵩密度が大きくなるほど発泡体の燃焼速度が遅くなる傾向がある。当該嵩密度が15.0g/L未満の場合、得られるポリオレフィン系樹脂の発泡成形体は収縮あるいは変形しやすくなり、機械的性能が低下する傾向がある。本明細書において、発泡成形体が収縮または変形しやすいとは、成形体の寸法収縮率または変形収縮率が大きい傾向があることを意図する。当該嵩密度が55.0g/Lを超えると、得られる型内発泡成形体の機械的強度が高くなる傾向があるが、型内発泡成形体の軽量化のメリットが得られず、また得られる型内発泡成形体の柔軟性および緩衝特性が不十分となる傾向がある。本明細書において、型内発泡成形体の機械的強度が高くなる傾向があるとは、型内発泡成形体の寸法収縮率を抑えられる傾向があることを意図する。発泡粒子の嵩密度の測定方法については、後述の実施例にて詳述する。
【0107】
〔2.ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法〕
本発明の一実施形態に係るポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法は、容器内において、ポリオレフィン系樹脂(A)、カルシウム化合物(C2)、フェノール系酸化防止剤(D)およびリン系加工安定剤(E)を含んでなるポリオレフィン系樹脂組成物からなるポリオレフィン系樹脂粒子と、発泡剤と、を水系分散媒中に分散させる分散工程と、前記分散工程にて得られた分散液を、前記容器内の圧力よりも低圧の領域に放出する放出工程と、を含み、前記カルシウム化合物(C2)は、硫黄元素およびハロゲン元素を含まない化合物であり、前記カルシウム化合物(C2)の含有量は、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子100重量%中、0.10重量%~3.00重量%である、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法である。
【0108】
本発明の別の一実施形態に係るポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法は、ポリオレフィン系樹脂(A)、カルシウム化合物(C1)、フェノール系酸化防止剤(D)およびリン系加工安定剤(E)を含むポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法であって、容器内において、(i)ポリオレフィン系樹脂(A)、(ii)カルシウム化合物(C1)および/またはカルシウム化合物(C1)の前駆体、(iii)フェノール系酸化防止剤(D)および(iv)リン系加工安定剤(E)を含んでなるポリオレフィン系樹脂組成物からなるポリオレフィン系樹脂粒子と、発泡剤と、を水系分散媒中に分散させる分散工程と、前記分散工程にて得られた分散液を、前記容器内の圧力よりも低圧の領域に放出する放出工程と、を含み、前記カルシウム化合物(C1)は、硫黄元素およびハロゲン元素を含まない化合物であり、前記カルシウム化合物(C1)の前駆体は、硫黄元素およびハロゲン元素を含まない化合物であり、前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子において、カルシウム化合物(C1)の含有量は、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子100重量%中、0.10重量%~3.00重量%である。
【0109】
本明細書において、「ポリオレフィン系樹脂組成物」を「樹脂組成物」と称する場合があり、「本発明の一実施形態に係るポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法」を「本製造方法」と称する場合がある。
【0110】
本製造方法は、上述した構成を有するため、樹脂粒子を製造する造粒工程において、ポリオレフィン系樹脂の熱分解が抑制され、樹脂粒子のMFRが上昇しにくくなり、長期熱安定性、表面美麗性、および難燃性に優れる発泡成形体を小さい環境負荷で提供し得るポリオレフィン系樹脂発泡粒子を提供することができる、という利点を有する。
【0111】
本製造方法において、ポリオレフィン系樹脂(A)は、リサイクルポリオレフィン系樹脂を含んでいてもよい。本製造方法によれば、ポリオレフィン系樹脂(A)が、リサイクルポリオレフィン系樹脂を含む場合においても、樹脂粒子を製造する造粒工程において、ポリオレフィン系樹脂の熱分解が抑制され、樹脂粒子のMFRが上昇しにくくなり、得られる発泡成形体が長期熱安定性、表面美麗性、および難燃性に優れるとの利点を有する。
【0112】
<カルシウム化合物(C2)>
本製造方法において、ポリオレフィン系樹脂組成物は、カルシウム化合物(C2)を含み、カルシウム化合物(C2)は樹脂組成物内部に分散されている。
【0113】
カルシウム化合物(C2)とは、カルシウムを含むが、硫黄元素およびハロゲン元素を含まない化合物を意図する。本明細書において、「カルシウム化合物(C2)」を「カルシウム化合物(C1)の前駆体」と称する場合もあり、用語「カルシウム化合物(C2)」と、用語「カルシウム化合物(C1)の前駆体」とは相互置換可能である。換言すれば、本明細書において、「カルシウム化合物(C2)」の説明を「カルシウム化合物(C1)の前駆体」の説明として置き換えることができる。
【0114】
カルシウム化合物(C2)としては、硫黄元素およびハロゲン元素を含まない化合物であって、例えば、カルシウム塩(例えば、カルシウムを含む無機塩の無水物、カルシウムを含む無機塩の水和物、カルシウムを含む有機塩、カルシウムを含む有機塩の水和物等。)、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、過酸化カルシウム、および炭化カルシウムからなる群より選択される1種以上の化合物であることが好ましい。
【0115】
カルシウム化合物(C2)に含まれる、「カルシウムを含む無機塩の無水物」、「カルシウムを含む無機塩の水和物」としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、亜リン酸カルシウム、アルミノケイ酸一カルシウム、アルミノケイ酸二カルシウム、アルミン酸一カルシウム、アルミン酸三カルシウム、ケイ酸二カルシウム、ケイ酸三カルシウム、ジ亜リン酸カルシウム、水酸化リン酸カルシウム、炭酸マグネシウムカルシウム、二リン酸カルシウム、ヘキサケイ酸五カルシウム、ヘキサケイ酸六カルシウム、ヘキサフルオロケイ酸カルシウム、メタケイ酸カルシウム、メタケイ酸マグネシウムカルシウム、メタリン酸カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸四カルシウム、リン酸八カルシウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウムおよびその水和物からなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
【0116】
また、カルシウム化合物(C2)に含まれる、「カルシウムを含む有機塩の無水物」、「カルシウムを含む有機塩の水和物」としては、例えば、脂肪酸カルシウムおよびその水和物からなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
【0117】
本製造方法における加熱工程では、水系分散剤中に樹脂粒子を分散させる。そのため、樹脂粒子中に含まれるカルシウム化合物(C2)は、製造過程でカルシウム化合物(C2)の水和物に変化し得る。その結果、当該製造方法により得られる発泡粒子(本発泡粒子)は、カルシウム化合物(C1)として、使用したカルシウム化合物(C2)の水和物を含み得る。また、本製造方法における加熱工程において、二酸化炭素を発泡剤として使用する場合、樹脂粒子中に含まれるカルシウム化合物(C2)は、製造過程でカルシウム化合物(C2)の炭酸塩に変化し得る。その結果、当該製造方法により得られる発泡粒子(本発泡粒子)は、カルシウム化合物(C1)として、使用したカルシウム化合物(C2)の炭酸塩を含み得る。
【0118】
上述したカルシウム化合物(C2)は、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0119】
カルシウム化合物(C2)は、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウムおよび脂肪酸カルシウムからなる群より選択される1種以上を含むことが好ましい。当該構成によれば、難燃性に優れる発泡成形体が得られるとの利点を有する。
【0120】
また、カルシウム化合物(C2)は、酸化カルシウムおよび/または脂肪酸カルシウムであることが好ましい。すなわち、カルシウム化合物(C2)は、酸化カルシウムおよび脂肪酸カルシウムからなる群より選択される1種以上を含むことが好ましい。当該構成によれば、難燃性に優れる発泡成形体が得られるとの利点を有する。
【0121】
なお、樹脂組成物中における各成分の使用量は、〔1.ポリオレフィン系樹脂発泡粒子〕の項に記載した各成分の含有量と同じ数値範囲であることが好ましい。カルシウム化合物(C2)の使用量に関しては、カルシウム化合物(C1)の含有量と同じ数値範囲であることが好ましい。
【0122】
以下、本製造方法に関する各態様(例えば、各工程)について説明するが、以下に詳説した事項以外は、適宜、〔1.ポリオレフィン系樹脂発泡粒子〕の項の記載を援用する。
【0123】
(造粒工程)
本製造方法は、発泡工程の前に、樹脂粒子を調製する、造粒工程を含むことが好ましい。
【0124】
本製造方法における造粒工程は、樹脂粒子を得ることができる限り特に限定されず、公知の方法を採用することができる。造粒工程の一例として、以下の(S1)~(S3)を順に行う方法が挙げられる:(S1)所定量のポリオレフィン系樹脂(A)、カルシウム化合物(C2)、フェノール系酸化防止剤(D)、およびリン系加工安定剤(E)と、必要に応じて、ヒンダードアミン(B)と、その他の添加剤と、を含む樹脂組成物を、押出機を用いて溶融混練し、溶融混練物を調製する;(S2)当該溶融混練物を押出機が備えるダイより押出す;(S3)押出された溶融混練物を所望の形状(例えば、円柱状および球状など)に細断し、ポリオレフィン系樹脂粒子を得る。
【0125】
前記(S1)において、予め、所定量のポリオレフィン系樹脂(A)、カルシウム化合物(C2)、フェノール系酸化防止剤(D)、およびリン系加工安定剤(E)と、必要に応じて、ヒンダードアミン(B)と、その他の添加剤と、を含む樹脂組成物を調製した後、押出機に供し、溶融混練し、溶融混練物を調製してもよい。
【0126】
前記(S3)において、溶融混練物を細断する前に、押出された溶融混練物を水などの冷却媒体を用いて冷却し、固化してもよい。
【0127】
(分散工程)
容器は、例えば、耐圧容器、およびオートクレーブ型の耐圧容器が挙げられる。容器は、容器内に、撹拌機を備えていてもよい。
【0128】
水系分散媒としては、例えば、(a)メタノール、エタノール、エチレングリコールおよびグリセリンなどを水に添加して得られた分散媒、(b)水道水および工業用水などの水、並びに、(c)塩化ナトリウムまたは硫酸ナトリウムなどの塩を含む溶液(水溶液)、などが挙げられる。発泡粒子の安定した生産が可能な点から、水系分散媒としては、RO水(逆浸透膜法により精製された水)、蒸留水、脱イオン水(イオン交換樹脂により精製された水)等の純水および超純水等を用いることが好ましい。
【0129】
発泡剤としては、(a)(a-1)窒素、二酸化炭素、空気(酸素、窒素、二酸化炭素の混合物)等の無機ガス、および(a-2)水、などの無機系発泡剤;並びに(b)(b-1)プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタン等の炭素数3~5の飽和炭化水素、(b-2)ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、およびメチルエチルエーテル等のエーテル、(b-3)モノクロルメタン、クロロエタン、ハイドロフルオロオレフィン等のハロゲン化炭化水素、などの有機系発泡剤;等が挙げられる。
【0130】
本発泡粒子の製造方法では、分散剤(例えば、カオリンおよびタルクなどの難水溶性無機化合物)および分散助剤(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアニオン界面活性剤)を使用することが好ましい。当該構成によると、樹脂粒子同士の合着(ブロッキングと称する場合がある。)を低減でき、容器内での分散液の安定性を高めることができる。その結果、安定的に発泡粒子を製造できるという利点を有する。
【0131】
上述した水系分散媒および発泡剤について、各々、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0132】
水系分散媒、発泡剤、分散剤および分散助剤のそれぞれの使用量は、特に限定されず、(i)分散液の安定性(樹脂粒子の分散性)、(ii)得られる発泡粒子の密度、(iii)得られる発泡粒子を成形してなる発泡成形体の融着性、(iv)生産性および(v)経済性などを考慮して、適宜設定され得る。
【0133】
容器内において、ポリオレフィン系樹脂粒子と、発泡剤とを水系分散媒中に分散させる方法、すなわち分散工程の具体的な方法としては特に限定されない。例えば、容器内に、水系分散媒、ポリオレフィン系樹脂粒子および発泡剤を供給し、容器内に備えられた撹拌機で、容器内の混合物を攪拌するなどの方法が挙げられる。
【0134】
(昇温-昇圧工程および保持工程)
本製造方法は、分散工程の後であり、かつ放出工程の前に、(1)容器内温度を一定温度まで昇温し、かつ容器内圧力を一定圧力まで昇圧する昇温-昇圧工程と、(2)容器内温度および圧力を一定温度かつ一定圧力で保持する保持工程とを、この順で、さらに含むことが好ましい。本明細書において、昇温-昇圧工程および保持工程における(a)一定温度を発泡温度と称する場合があり、(b)一定圧力を発泡圧力と称する場合がある。
【0135】
発泡温度は、特に限定されないが、130℃~165℃が好ましく、135℃~160℃がより好ましく、140℃~158℃がより好ましく、150℃~158℃がさらに好ましい。発泡粒子のDSC比は発泡温度によって調整することができ、当該構成によると、DSC比が10%~50%になる。
【0136】
発泡圧力は、特に限定されないが、0.5MPa(ゲージ圧)~10.0MPa(ゲージ圧)が好ましく、1.0MPa(ゲージ圧)~5.0MPa(ゲージ圧)がより好ましく、2.0MPa(ゲージ圧)~3.0MPa(ゲージ圧)がより好ましく、2.2MPa(ゲージ圧)~2.5MPa(ゲージ圧)がさらに好ましい。発泡圧力が0.5MPa(ゲージ圧)以上であれば、密度の好適な発泡粒子を得ることができる。
【0137】
保持工程において、容器内の分散液を発泡温度および発泡圧力付近で保持する時間(保持時間)は、特に限定されないが、例えば、10分間~60分間が好ましく、12分間~50分間がより好ましく、15分間~40分間がさらに好ましい。
【0138】
(放出工程)
放出工程では、加熱工程後に得られる分散物を低圧下に放出する。放出工程により、樹脂粒子を発泡させることができ、結果として発泡粒子が得られる。放出工程は、容器の一端を解放し、容器内の分散液(分散物)を、発泡圧力(すなわち、容器内圧力)よりも低圧の領域(空間)に放出する工程、ともいえる。
【0139】
放出工程において、「発泡圧力よりも低圧の領域」は、「発泡圧力よりも低い圧力下の領域」または「発泡圧力よりも低い圧力下の空間」を意図し、「発泡圧力よりも低圧の雰囲気下」ともいえる。発泡圧力よりも低圧の領域は、例えば、大気圧下の領域であってもよい。
【0140】
放出工程において、放出する領域(雰囲気)の温度は、特に限定されないが、20℃~110℃であることが好ましく、50℃~105℃であることがより好ましく、80℃~100℃であることがより好ましく、90℃~100℃であることがさらに好ましい。当該構成によれば、低い発泡圧力でも比較的低い嵩密度の発泡粒子を得ることができ、放出領域において発泡粒子同士が互着する恐れがないとの利点を有する。
【0141】
(発泡工程)
分散工程から放出工程までの工程を発泡工程と称する場合がある。また、このように、樹脂粒子から発泡粒子を製造する工程を「1段発泡工程」と呼び、得られた発泡粒子を「1段発泡粒子」と呼ぶ。
【0142】
(2段発泡工程)
発泡倍率の高い発泡粒子を得る為に、1段発泡工程で得られた1段発泡粒子を再度発泡させてもよい。1段発泡粒子の発泡倍率を高める工程を「2段発泡工程」と呼び、2段発泡工程によって得られたポリオレフィン系樹脂発泡粒子を「2段発泡粒子」と呼ぶ。2段発泡工程の具体的な方法は特に限定されず、公知の方法を採用できる。
【0143】
〔3.ポリオレフィン系樹脂発泡成形体〕
本発明の一実施形態に係るポリオレフィン系樹脂発泡成形体は、〔1.ポリオレフィン系発泡粒子〕の項に記載のポリオレフィン系発泡粒子を発泡成形してなる、発泡成形体である。本明細書において、「本発明の一実施形態に係るポリオレフィン系樹脂発泡成形体」を、「本発泡成形体」と称する場合がある。
【0144】
本発泡成形体は、上記構成を有するため、長期熱安定性、表面美麗性および難燃性に優れるという利点を有する。
【0145】
<物性>
(ポリオレフィン系樹脂発泡成形体の燃焼速度)
本発泡成形体の最高燃焼速度は、100mm/分未満であることが好ましく、95mm/分未満であることがより好ましく、90mm/分未満であることがより好ましく、89mm/分以下であることがより好ましく、87mm/分以下であることがより好ましく、80mm/分以下であることがさらに好ましく、75mm/分以下であることが特に好ましい。
【0146】
また、本発泡成形体の平均燃焼速度は、95mm/分未満であることが好ましく、90mm/分未満であることがより好ましく、88mm/分以下であることがより好ましく、87mm/分以下であることがより好ましく、85mm/分以下であることがより好ましく、80mm/分以下であることがより好ましく、75mm/分以下であることがさらに好ましく、70mm/分以下であることが特に好ましい。
【0147】
本明細書において、発泡成形体が「難燃性に優れる」とは、発泡成形体の最高燃焼速度が100mm/分未満であること、または、発泡成形体の平均燃焼速度が95mm/分未満であることのいずれか1つを満たすことを意図する。本明細書において、発泡成形体が不燃性を有する場合も、発泡成形体が「難燃性に優れる」ことに含む。
【0148】
発泡成形体の最高燃焼速度および平均燃焼速度の測定方法については、後述の実施例にて詳述する。
【0149】
(ポリオレフィン系樹脂発泡成形体の密度)
本発泡成形体の密度は、特に限定されないが、20.0g/L~60.0g/Lであることが好ましく、26.5g/L~50.0g/Lであることが好ましく、25.0g/L~45.0g/Lであることが好ましく、30.0g/L~45.0g/Lであることが好ましく、35.0g/L~40.0g/Lであることが好ましい。発泡成形体の密度が26.5g/L以上であれば、発泡成形体の表面にひけがなく、平滑であり、より表面美麗性に優れる発泡成形体を得られるという利点があり、50.0g/L以下であると、十分に軽量化された発泡成形体を得られる。また、上述した構成によれば、成形性および難燃性に優れる発泡成形体を得ることができるという利点を有する。発泡成形体の密度の測定方法については、後述の実施例にて詳説する。
【0150】
<発泡成形体の製造方法>
本発泡成形体の製造方法は、本発泡粒子を成形(好ましくは型内発泡成形)できる限り、その他の態様は特に限定されず、公知の方法を適用することができる。本発泡成形体の製造方法としては、例えば、国際公開公報WO2022/149538の<発泡成形体の製造方法>の項に記載の製造方法を好適に採用できる。
【実施例0151】
以下、実施例および比較例をあげて、本発明の一実施形態をより詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0152】
〔材料〕
以下に、実施例および比較例で使用した材料について説明する。実施例および比較例において、使用した材料は、特に精製等は行わずに使用した。
【0153】
<ポリオレフィン系樹脂(A)>
・ポリプロピレン系樹脂1:エチレン/プロピレンランダム共重合体[リサイクルポリオレフィン系樹脂、プロピレン単位含有率:91モル%、MFR=7.1g/10分、融点153℃]
・ポリプロピレン系樹脂2:1-ブテン/エチレン/プロピレンランダム共重合体[非リサイクルポリオレフィン系樹脂、プロピレン単位含有率:96モル%、MFR=10g/10分、融点148℃]
・ポリプロピレン系樹脂3:エチレン/プロピレンランダム共重合体[リサイクルポリオレフィン系樹脂、プロピレン単位含有率:91モル%、MFR=12g/10分、融点152℃]。
【0154】
<添加剤>
(ヒンダードアミン(B))
・ヒンダードアミン[BASF社製、FLAMESTAB(登録商標) NOR116(CAS番号191680-81-6の化合物)]
(カルシウム化合物(C2))
・酸化カルシウム[富士フイルム和光純薬株式会社製]
・ステアリン酸カルシウム[富士フイルム和光純薬株式会社製]
(フェノール系酸化防止剤(D))
・フェノール系酸化防止剤[BASF社製、IRGANOX(登録商標) 1010(テトラキス[3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸]ペンタエリトリトール)]
(リン系加工安定剤(E))
・リン系加工安定剤[BASF社製、Irgafos 168(トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト)]
(酸化カルシウム混合物)
・酸化カルシウム混合物(BASF社製、PS032G(酸化カルシウム、ステアリン酸カルシウム、フェノール系酸化防止剤およびリン系加工安定剤を少なくとも含む混合物。当該混合物中、カルシウムを含む化合物は、酸化カルシウムおよびステアリン酸カルシウムのみであり、酸化カルシウムおよびステアリン酸カルシウムの合計含有量は、当該製品100重量%中、45重量%である))
(その他の難燃剤)
・リン酸エステル系難燃剤[大八化学工業株式会社製、PX-200(テトラキス(2,6-ジメチルフェニル)-m-フェニレンビスホスフェート)]
(その他の添加剤)
・タルク[林化成株式会社製、タルカンパウダーPK-S]
・グリセリン[ライオン株式会社製、精製グリセリンD]
・カーボンブラック(一次粒子の平均粒子径30nm)
・硫酸カルシウム2水和物[和光純薬株式会社製]
・金属不活性化剤[BASF社製、IRGANOX(登録商標) MD1024]。
【0155】
〔測定方法〕
実施例および比較例において実施した各種項目の測定および評価方法に関して、以下に説明する。
【0156】
(ポリオレフィン系樹脂(A)およびポリオレフィン系樹脂粒子のMFR)
ポリオレフィン系樹脂(A)およびポリオレフィン系樹脂粒子のMFRは、JIS K7210-1:2014に記載のMFR測定器を用いて測定した。測定条件は、オリフィスの直径が2.0959±0.005mmφ、オリフィスの長さが8.000±0.025mm、荷重が2160g、かつ、温度が230±0.2℃とした。
【0157】
<ポリオレフィン系樹脂(A)の融点>
ポリオレフィン系樹脂(A)の融点は、示差走査熱量計[株式会社日立ハイテクサイエンス製、DSC7020]を用いて測定した。具体的な操作手順は以下(1)~(4)の通りであった:(1)ポリオレフィン系樹脂(A)5mg~6mgの温度を10.0℃/分の昇温速度で40.0℃から220.0℃まで昇温することにより、当該ポリオレフィン系樹脂(A)を融解させた;(2)その後、融解されたポリオレフィン系樹脂(A)の温度を10.0℃/分の降温速度で220.0℃から40.0℃まで降温することにより当該ポリオレフィン系樹脂(A)を結晶化させた;(3)その後、さらに、結晶化されたポリオレフィン系樹脂(A)の温度を10.0℃/分の昇温速度で40.0℃から220.0℃まで昇温した;(4)2回目の昇温時(すなわち(3)のとき)に得られる当該ポリオレフィン系樹脂(A)のDSC曲線のピーク(融解ピーク)の温度を当該ポリオレフィン系樹脂(A)の融点とした。なお、上述の方法により、2回目の昇温時に得られる、ポリオレフィン系樹脂(A)のDSC曲線において、ピーク(融解ピーク)が複数存在する場合、融解熱量が最大のピーク(融解ピーク)の温度を、当該ポリオレフィン系樹脂(A)の融点とした。
【0158】
(カーボンブラックの一次粒子の平均粒子径)
得られたポリオレフィン系樹脂発泡粒子の気泡を構成している膜の断面を、透過型電子顕微鏡にて4万倍に拡大した写真を撮影した。得られた透過型電子顕微鏡写真において、任意に50個のカーボンブラック一次粒子についてのX方向とY方向の粒子径(フェレ径)をそれぞれ測定し、平均値を算出し、カーボンブラックの一次粒子の平均粒子径とした。
【0159】
(ポリオレフィン系樹脂粒子の酸素指数)
ポリオレフィン系樹脂粒子の酸素指数の測定は、以下の(1)~(3)の方法で実施した。(1)ポリオレフィン系樹脂粒子を、縦150mm×横150mm×厚み1mmのスペーサーを用いて、200℃にて1分間熱プレスすることにより、ポリオレフィン系樹脂粒子からなる樹脂板を得た;(2)ポリオレフィン系樹脂粒子からなる樹脂板から長さ100mm×幅6.5mmの試料を切り出した;(3)切り出した試料の酸素指数を、JIS K7201(酸素指数による燃焼性の試験方法)に準拠して測定した。
【0160】
(ポリオレフィン系樹脂発泡粒子のDSC比の測定)
ポリオレフィン系樹脂発泡粒子のDSC比の測定は、示差走査熱量計[株式会社日立ハイテクサイエンス製、DSC7020]を用いて行なった。具体的には、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子5mg~6mgを10℃/分の昇温速度で40℃から220℃まで昇温する際に得られる、1回目昇温時のDSC曲線の低温側の融解ピーク面積をQlとし、高温側の融解ピーク面積をQhとし、[Qh/(Ql+Qh)×100]より求めた。厳密には、低温側の融解ピークと、低温側の融解ピークと高温側の融解ピークとの間の極大点からの融解開始ベースラインへの接線とで囲まれる面積をQlとした。また、高温側の融解ピークと、低温側の融解ピークと高温側の融解ピークとの間の極大点からの融解終了ベースラインへの接線とで囲まれる熱量である高温側の融解ピーク熱量をQhとした。
【0161】
(ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の嵩密度)
ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の重量w(g)を秤量し、23℃において大気圧(標準大気圧0.1MPa)下で、メスシリンダーを用いてその体積v(L)を測定し、嵩密度をw/v(g/L)にて求めた。
【0162】
(発泡成形体の密度)
発泡成形体の密度の測定方法は以下の(1)~(3)の通りであった;(1)発泡成形体の長さ方向(mm)、幅方向(mm)、および厚さ方向の長さ(mm)を測定し、発泡成形体の体積V(L)を算出した;(2)当該発泡成形体の重量W(g)を測定した;(3)下記の式に基づき、発泡成形体の密度を算出した:
発泡成形体の密度(g/L)=W/V。
【0163】
(ポリオレフィン系樹脂発泡成形体の表面美麗性評価)
得られた発泡成形体表面の側面を目視観察し、以下の基準にて、表面美麗性を判定した。なお、数字が大きいほど、表面美麗性に優れることを意味する。
2(良好):粒間(ポリオレフィン系樹脂発泡粒子間の粒間)がほとんどなく、表面凹凸が目立たず、シワや収縮、色のムラもなく美麗である。
1(可):粒間や表面凹凸、収縮、シワあるいは色のムラが若干見られる。
0(不可):観察面全体に明らかに粒間、表面凹凸、収縮、シワあるいは色のムラが目立つ。
【0164】
(ポリオレフィン系樹脂発泡成形体の燃焼速度)
得られたポリオレフィン系樹脂発泡成形体から、長さ350mm×幅100mm×厚さ12mmの難燃性試験サンプルを切り出し、サンプルの長さ方向の一端より38mmの位置にA標線、292mmの位置にB標線を設けた。試験サンプルは10本準備し、これらすべてについて試験を実施した。FMVSS燃焼性試験器[スガ試験機社製]を用いて、当該サンプルの長さ方向の該一端に、サンプル端が炎の中心となるようにして高さ38mmに調製したバーナーの炎を15秒間当て、下記(i)~(iii)に示した基準を基に、「不燃性」を有さなかった試験片の燃焼速度を算出し、それらの結果から最高燃焼速度と平均燃焼速度を求めた。
【0165】
(i)炎がA標線に達する前に消火したもの:「不燃性」を有するとした
(ii)炎がA標線を超えて燃焼し、B標線に達する前に消火したもの:炎がA標線を通過してから消火するまでの時間T1(分)とA標線からの燃焼距離L1(mm)から、燃焼速度{(L1)/T1}(mm/分)を求めた
(iii)炎がA標線を超えて燃焼し、B標線に達するまで燃焼したもの:炎がA標線を通過してからB標線に達するまでの時間T2(分)とA標線からのB標線までの距離254mmから、燃焼速度254/T2(mm/分)を求めた
これらの結果に基づき、10本の試料サンプルの燃焼速度のうち、最も大きな燃焼速度を「最高燃焼速度」とした。また、10本の試料サンプルの燃焼速度の平均値を「平均燃焼速度」とした。
【0166】
以下に実施例および比較例における、ポリオレフィン系樹脂粒子、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子およびポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体の製造方法を説明する。
【0167】
(実施例1~8および比較例1~6)
[ポリオレフィン系樹脂粒子の作製]
ポリオレフィン系樹脂と表1または表2に記載の材料とを、表1または表2に記載の重量比となるように、ハンドブレンドし、2軸押出機を用いて、樹脂温度220℃にて溶融混練した。その後、得られた溶融混練物を、押出機からストランド状に押出し、得られたストランドを水冷後、カットして平均重量1.2mgのポリオレフィン系樹脂粒子を得た。
【0168】
[ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の作製]
容量10Lの耐圧オートクレーブ中に、上述の方法で得られたポリオレフィン系樹脂粒子100重量部(2.4kg)、水200重量部、難水溶性無機化合物としてのカオリン[BASF社製、ASP170]0.3重量部および界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液[花王株式会社製、ネオペレックス G-15]0.38重量部を仕込んだ。その後、仕込んだ原料の攪拌下、発泡剤として二酸化炭素4重量部をオートクレーブ中に添加し、分散液を調製した(分散工程)。次いで、オートクレーブ内容物を昇温し、表1または表2に記載の発泡温度まで加熱し、10分間保持した後、二酸化炭素を追加圧入してオートクレーブ内圧を表1または表2に記載の発泡圧力まで昇圧した(昇温-昇圧工程)。前記発泡温度、発泡圧力で20分間保持した(保持工程)後、オートクレーブ下部のバルブを開き、直径3.6mmの開口オリフィスを通して、大気圧下、97℃の雰囲気に放出してポリオレフィン系樹脂発泡粒子を得た(放出工程)。この際、放出中は容器内の圧力が低下しないように、二酸化炭素を圧入して圧力を保持した。
【0169】
[二段発泡粒子の作製]
実施例2以外については、得られたポリオレフィン系樹脂発泡粒子を80℃にて乾燥させた後、耐圧容器内にて、加圧空気を含浸させて、内圧を0.3MPa(絶対圧)にした後、0.07MPa(ゲージ圧)の水蒸気と接触させることにより、二段発泡させた。得られた二段発泡粒子の嵩密度はおおよそ21g/Lであった。
【0170】
[ポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体の作製]
得られた二段発泡粒子を耐圧容器内に投入し、加圧空気を含浸させ、あらかじめ0.20MPa(絶対圧)の発泡粒子内圧になるように調整したポリオレフィン系樹脂発泡粒子を、縦370mm×横320mm×厚み50mmの金型内に充填した。その後、金型チャンバー内を0.32MPa(ゲージ圧)の水蒸気にて加熱し、発泡粒子同士を融着させた。金型内および成形体表面を水冷した後、成形体を取り出して、ポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体を得た。得られた型内発泡成形体は、23℃で2時間静置し、次に75℃で16時間養生した。
【0171】
(実施例9および比較例8)
ポリオレフィン系樹脂と表1または表2に記載の材料とを、表1または表2に記載の重量比となるように、ハンドブレンドし、2軸押出機を用いて、樹脂温度220℃にて溶融混練した。その後、得られた溶融混練物を、押出機からストランド状に押出し、得られたストランドを水冷後、カットして平均重量1.2mgのポリオレフィン系樹脂粒子を得た。得られたポリオレフィン系樹脂粒子を2軸押出機に投入し、同様の手順にて平均重量1.2mgのポリオレフィン系樹脂粒子を得た。この工程を4回繰り返すことにより、4回溶融混練されたポリオレフィン系樹脂粒子を得た。
【0172】
得られたポリオレフィン系樹脂粒子、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子、ポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体における評価結果を表1および表2に示す。
【0173】
【表1】
【0174】
【表2】
【0175】
実施例1~4および6では、カルシウム化合物(C2)として、酸化カルシウムを使用した。その使用量は、発泡粒子100重量%中、0.15重量%であった。したがい、実施例1~4および6で得られた発泡粒子は、カルシウム化合物(C1)として、酸化カルシウム、酸化カルシウムの水和物および炭酸カルシウムからなる群から選択される少なくともいずれか1種を含み、発泡粒子中の酸化カルシウム、酸化カルシウムの水和物および炭酸カルシウムの合計含有量は、発泡粒子100重量%中、少なくとも0.10重量%~3.00重量%の範囲内であり、おおむね0.15重量%~0.27重量%であるといえる。
【0176】
また、実施例1~3では、カルシウム化合物(C2)として、ステアリン酸カルシウムを使用した。その使用量は、発泡粒子100重量%中、0.04重量%であった。したがい、実施例1~3で得られた発泡粒子は、カルシウム化合物(C1)として、ステアリン酸カルシウムを、発泡粒子100重量%中、0.04重量%含むものである。
【0177】
実施例5では、カルシウム化合物(C2)として、酸化カルシウム混合物を使用した。当該酸化カルシウム混合物は、上述のとおり、酸化カルシウム、ステアリン酸カルシウム、フェノール系酸化防止剤およびリン系加工安定剤を少なくとも含む混合物である。また、当該混合物中、カルシウムを含む化合物は、酸化カルシウムおよびステアリン酸カルシウムのみであり、酸化カルシウムおよびステアリン酸カルシウムの合計含有量は、当該製品100重量%中、45重量%である。したがって、実施例5で得られた発泡粒子は、カルシウム化合物(C1)として、酸化カルシウム、酸化カルシウムの水和物および炭酸カルシウムからなる群から選択される少なくともいずれか1種とステアリン酸カルシウムとを含む。発泡粒子中の酸化カルシウム、酸化カルシウムの水和物、炭酸カルシウムおよびステアリン酸カルシウムの合計含有量は、発泡粒子100重量%中、少なくとも0.10重量%~3.00重量%の範囲内であり、おおむね0.225重量%~0.400重量%であるといえる。
【0178】
実施例1~6には本発明の一実施形態に係るポリオレフィン系樹脂粒子、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子およびポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体の評価結果を示した。実施例1~5では、発泡粒子がカーボンブラックを含むにもかかわらず、得られた型内発泡成形体は難燃性に優れていた。発泡粒子がカーボンブラックを含まない実施例6では、得られた型内発泡成形体は、「不燃性」を有していた。このように、本発明の製造方法により得られるポリオレフィン系樹脂発泡粒子からなる型内発泡成形体は、難燃性に優れていた。比較例1~4に示すように、発泡粒子中にカルシウム化合物(C2)を含まない場合、得られる発泡成形体は難燃性に優れず、比較例2のように、ヒンダードアミン(B)を増量した場合においても、難燃性に改善の余地がある結果となった。
【0179】
また、カルシウム化合物(C2)を含む、実施例3~6のポリオレフィン系樹脂粒子は、カルシウム化合物(C2)を含まない、比較例1~3のポリオレフィン系樹脂粒子と比較して、MFRが低かった。すなわち、ポリオレフィン系樹脂粒子がカルシウム化合物(C2)を含むことにより、MFRの上昇が抑制されていた。なお、比較例4で得られたポリオレフィン系樹脂粒子は、フェノール系酸化防止剤(D)およびリン系加工安定剤(E)を含むことから、比較例1~3よりもMFRの値が低かったが、実施例3~6と同等のMFRにはならなかった。また、比較例5~6には、カルシウム化合物(C2)を含む一方で、カルシウム化合物(C2)の含有量が少ない場合、またはカルシウム化合物(C2)の含有量が多い場合の結果を示した。比較例5~6の場合も、比較例1~3よりもポリオレフィン系樹脂粒子のMFRの値が低かったが、実施例3~6と同等のポリオレフィン系樹脂粒子のMFRにはならなかった。また、酸化カルシウム、ステアリン酸カルシウム、フェノール系酸化防止剤およびリン系加工安定剤を含む酸化カルシウム混合物を添加した参考例2は、参考例1と比較して、MFRの上昇が抑制されていた。したがって、MFRの上昇を抑制するためには、ポリオレフィン系樹脂粒子100重量%中、0.10重量%~3.00重量%の含有量のカルシウム化合物(C2)と、フェノール系酸化防止剤(D)と、リン系加工安定剤(E)と、が必要であることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0180】
本発明の一実施形態では、造粒工程におけるポリオレフィン系樹脂の熱分解が促進されにくくなることにより、樹脂粒子のMFRの上昇が抑制され、当該樹脂粒子から得られるポリオレフィン系発泡粒子を発泡成形することにより、成形性および難燃性に優れるポリオレフィン系樹脂発泡成形体を提供することができる。また、本発明の一実施形態では、ポリオレフィン系樹脂がリサイクルポリオレフィン系樹脂および/またはカーボンブラックを含む場合においても、成形性および難燃性に優れるポリオレフィン系樹脂発泡成形体を提供することができる。難燃性に優れるポリオレフィン系樹脂発泡成形体は、緩衝包装材、物流資材、断熱材、土木建築部材、自動車部材など様々な用途に利用することができ、特に、輸送、建物、構築物、家具、電気機器および電子機器等の、厳しい難燃性基準を満たすことが要求される種々の分野において好適に利用することができる。