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特開2024-144294ウレタンポリマー粒子を含有した人工爪組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144294
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】ウレタンポリマー粒子を含有した人工爪組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20241003BHJP
   A61K 8/87 20060101ALI20241003BHJP
   A61Q 3/02 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 8/896 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K8/87
A61Q3/02
A61K8/896
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024048655
(22)【出願日】2024-03-25
(31)【優先権主張番号】P 2023052706
(32)【優先日】2023-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390011143
【氏名又は名称】株式会社松風
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100122448
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 賢一
(72)【発明者】
【氏名】山本 雄己
(72)【発明者】
【氏名】下曽山 俊
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC892
4C083AD071
4C083AD072
4C083AD092
4C083CC28
4C083DD23
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】本発明は、光沢を抑制したマット感を有し、かつ、高い柔軟性を有する人工爪組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の人工爪組成物は、成分(A):重合性化合物、成分(B):ウレタンポリマー粒子、及び成分(C):重合開始剤を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(A):重合性化合物
成分(B):ウレタンポリマー粒子
成分(C):重合開始剤
を含む人工爪組成物。
【請求項2】
前記成分(B)ウレタンポリマー粒子の平均粒子径が0.8~52μmである、請求項1に記載の人工爪組成物。
【請求項3】
前記成分(B)ウレタンポリマー粒子の含有量が前記人工爪組成物全量に対し、5~50質量%である、請求項1に記載の人工爪組成物。
【請求項4】
前記成分(B)ウレタンポリマー粒子が架橋構造を有している、請求項1に記載の人工爪組成物。
【請求項5】
前記成分(A)重合性化合物がウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及びエチレン性不飽和基を有する重合性単量体からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の人工爪組成物。
【請求項6】
前記成分(C)重合開始剤が光重合開始剤である、請求項1に記載の人工爪組成物。
【請求項7】
成分(A):重合性化合物 49~94質量%
成分(B):ウレタンポリマー粒子 5~50質量%
成分(C):重合開始剤 0.1~10質量%
を含む請求項1に記載の人工爪組成物。
【請求項8】
前記人工爪組成物は、ネイルポリッシュ、ジェルネイル、又はアクリルネイルである、請求項1~7のいずれかに記載の人工爪組成物。
【請求項9】
請求項1~7のいずれかに記載の人工爪組成物から得られる人工爪。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光沢を抑制したマット感を有し、かつ、高い柔軟性を有する人工爪組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ネイルポリッシュ、ジェルネイル、アクリルネイル等の人工爪の中でも、ジェルネイルは良好な操作性、爪や人工爪上での長期間の維持性、および、低臭気性の観点から広く使用されている。ジェルネイルのデザインの一つとして、光沢を抑制した(艶がない)マット感を有したジェルネイルが求められており、このようなマット感を有するジェルネイルを実現する手法の一つとして、光硬化性人工爪組成物に充填剤を添加することによって硬化膜表面に凹凸を作り、光の乱反射を起こす事で光沢を抑制するという手法が挙げられる。
【0003】
前述のような充填剤の添加により光沢を抑制した人工爪組成物としては、特許文献1に例示されているものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第7014970号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の人工爪組成物は、(メタ)アクリルポリマー粒子を含有しており、硬化後の人工爪組成物の柔軟性が低いため、爪又は人工爪の動きに追随できず剥がれやすいという問題があった。このように、従来の人工爪組成物は光沢を抑制したマット感を有しつつも、高い柔軟性を持たせることが困難であった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、光沢を抑制したマット感を有し、かつ、高い柔軟性を有する人工爪組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題の解決は以下の本発明によって達成される。即ち、本発明の人工爪組成物は、成分(A)重合性化合物、成分(B)ウレタンポリマー粒子、成分(C)重合開始剤を含有することを特徴とする。
【0008】
本発明の人工爪組成物の一実施形態としては、前記成分(B)ウレタンポリマー粒子の平均粒子径が0.8~52μmであることが好ましい。
【0009】
本発明の人工爪組成物の他の実施形態としては、前記成分(B)ウレタンポリマー粒子の含有量が前記人工爪組成物全量に対し、5~50質量%であることが好ましい。
【0010】
本発明の人工爪組成物の他の実施形態としては、前記成分(B)ウレタンポリマー粒子が架橋構造を有していることが好ましい。
【0011】
本発明の人工爪組成物の他の実施形態としては、前記成分(A)重合性化合物がウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及びエチレン性不飽和基を有する重合性単量体からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0012】
本発明の人工爪組成物の他の実施形態としては、前記成分(C)重合開始剤が光重合開始剤であることが好ましい。
【0013】
本発明の人工爪組成物の他の実施形態としては、成分(A)重合性化合物 49~94質量%、成分(B)ウレタンポリマー粒子 5~50質量%、成分(C)重合開始剤 0.1~10質量%を含有することが好ましい。
【0014】
本発明の人工爪組成物の他の実施形態としては、前記人工爪組成物は、ネイルポリッシュ、ジェルネイル、又はアクリルネイルであることが好ましい。
【0015】
また、本発明は、前記人工爪組成物から得られる人工爪、に関する。
【0016】
また、本発明は、成分(A)重合性化合物、成分(B)ウレタンポリマー粒子、及び成分(C)重合開始剤を含む人工爪組成物を、爪又は基材上に塗布し、硬化させる工程を含む、人工爪の製造方法、に関する。
【0017】
また、本発明は、成分(A)重合性化合物、成分(B)ウレタンポリマー粒子、及び成分(C)重合開始剤を含む人工爪組成物を、爪又は基材上に塗布し、硬化させる、人工爪形成方法、に関する。
【0018】
また、本発明は、人工爪組成物の製造のための、成分(A)重合性化合物、成分(B)ウレタンポリマー粒子、及び成分(C)重合開始剤を含む組成物の使用、に関する。
【0019】
また、本発明は、人工爪の製造のための、成分(A)重合性化合物、成分(B)ウレタンポリマー粒子、及び成分(C)重合開始剤を含む組成物の使用、に関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、光沢を抑制したマット感を有し、かつ、高い柔軟性を有する人工爪組成物を提供することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の人工爪組成物は、成分(A)重合性化合物、成分(B)ウレタンポリマー粒子、成分(C)重合開始剤を含むことを特徴とする。
【0022】
[重合性化合物]
成分(A)重合性化合物は、光又は熱により反応し、重合体を形成する物質である。本発明の人工爪組成物に硬化性、表面硬度、強度、柔軟性、耐久性、除去性などの特性を与える。前記成分(A)重合性化合物は、重合性官能基としてのエチレン性不飽和基を少なくとも1つ有する化合物(例えば、重合性単量体、オリゴマー、及びポリマーなど)であれば特に制限はなく、公知の重合性化合物を用いることができる。エチレン性不飽和基を具体的に例示すると、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリルアミド基、ビニル基、ビニルエーテル基、メチルビニルエーテル基、アリル基、アリルエーテル基、及びマレイミド基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。前記エチレン性不飽和基は、1種含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。これらの中でも、硬化性、表面硬度、耐久性の観点から、(メタ)アクリロイル基及び(メタ)アクリロイルオキシ基からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0023】
尚、本明細書中における(メタ)アクリロイルという用語はアクリロイル及びメタクリロイルの双方を包含し、(メタ)アクリレートという用語はアクリレート及びメタクリレートの双方を包含し、(メタ)アクリロイルオキシという用語はアクリロイルオキシ及びメタクリロイルオキシの双方を包含し、(メタ)アクリルアミドという用語はアクリルアミド及びメタクリルアミドの双方を包含することを意味する。
【0024】
1分子内に1個のエチレン性不飽和基を有する成分(A)重合性化合物を具体的に例示すると、メタクリル酸、アクリル酸、ウレタン(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサフタル酸、ステアリル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンフォスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンフォスフェート、10-(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンフォスフェート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンフォスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル2-ブロモエチルハイドロジェンフォスフェート、メチロール(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルフォリン、及びビニルクロライドなどの重合性単量体;前記重合性単量体のオリゴマー;前記重合性単量体のポリマーなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。前記オリゴマー及びポリマーは、前記例示の重合性単量体を1種含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0025】
尚、本明細書におけるオリゴマーという用語は重合性単量体が2~数十個重合された重合体を意味する。また、ポリマーという用語は重合性単量体が数十個以上重合された重合体(オリゴマー以外)を意味する。
【0026】
1分子内に2個のエチレン性不飽和基を有する成分(A)重合性化合物を具体的に例示すると、ウレタンジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、及びビス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)ハイドロジェンフォスフェートなどの重合性単量体;前記重合性単量体のオリゴマー;前記重合性単量体のポリマーなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。前記オリゴマー及びポリマーは、前記例示の重合性単量体を1種含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0027】
1分子内に3個以上のエチレン性不飽和基を有する成分(A)重合性化合物を具体的に例示すると、ウレタントリ(メタ)アクリレート、ウレタンテトラ(メタ)アクリレート、ウレタンペンタ(メタ)アクリレート、ウレタンヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、及びカプロラクトン変性ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの重合性単量体;前記重合性単量体のオリゴマー;記重合性単量体のポリマーなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。前記オリゴマー及びポリマーは、前記例示の重合性単量体を1種含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0028】
前記成分(A)重合性化合物としての重合性単量体の分子量は特に制限されないが、好ましくは1,000未満である。また、前記成分(A)重合性化合物としてのオリゴマーの重量平均分子量(Mw)は特に制限されないが、例えば、30,000以下であり、好ましくは300~30,000、より好ましくは500~25,000、さらに好ましくは700~20,000、特に好ましくは700~18,000である。また、前記成分(A)重合性化合物としてのポリマーの重量平均分子量(Mw)は特に制限されないが、例えば、30,000超であり、好ましくは30,000超60,000以下である。この範囲であれば、硬化性、表面硬度、強度、柔軟性、耐久性、除去性などの特性を良好にすることができる。尚、本明細書において、重量平均分子量(Mw)は標準物質としてポリスチレンを用いたゲルろ過クロマトグラフィー(Gel PermeationChromatography;GPC)で測定された値を採用した。
【0029】
前記成分(A)重合性化合物としての重合性単量体は、23℃雰囲気下で液体であり、流動性を有することが好ましい。具体的には、前記重合性単量体は、動的粘弾性測定装置であるレオメーターを用いて測定される23℃、せん断速度10s-1における粘度が20,000mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは5,000mPa・s以下、さらに好ましくは1,000mPa・s以下、特に好ましくは100mPa・s以下である。前記成分(A)重合性化合物としてのオリゴマーは、23℃雰囲気下で流動性を有していても良いし、有していなくても良い。具体的には、前記オリゴマーは、動的粘弾性測定装置であるレオメーターを用いて測定される23℃、せん断速度10s-1における粘度が9,000mPa・s以上であることが好ましく、より好ましくは9,000~3,000,000mPa・s、さらに好ましくは9,000~2,500,000mPa・s、特に好ましくは9,000~2,200,000mPa・sである。前記成分(A)重合性化合物としてのポリマーは、23℃雰囲気下で流動性を有していても良いし、有していなくても良い。
【0030】
前記成分(A)重合性化合物は2種類以上を選択し、人工爪組成物を構成することもできる。前記例示の中でも、メタクリル酸、アクリル酸、ウレタン(メタ)アクリレート、ウレタンジ(メタ)アクリレート、ウレタントリ(メタ)アクリレート、ウレタンテトラ(メタ)アクリレート、ウレタンペンタ(メタ)アクリレート、ウレタンヘキサ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルフォリン、ビス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)ハイドロジェンフォスフェート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、これらのオリゴマー、及びこれらのポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。前記オリゴマー及びポリマーは、前記例示の重合性単量体を1種含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。また、前記成分(A)重合性化合物は、前記オリゴマーと前記重合性単量体とを含むことがより好ましく、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ウレタンジ(メタ)アクリレートオリゴマー、及びウレタンヘキサ(メタ)アクリレートオリゴマーからなる群より選ばれる少なくとも1種のオリゴマーと、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルフォリン、及びトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種の重合性単量体とを含むことが更に好ましく、ウレタンジ(メタ)アクリレートオリゴマーと、イソボルニル(メタ)アクリレート及びテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種の重合性単量体とを含むことが特に好ましい。前記成分(A)重合性化合物が前記オリゴマーと前記重合性単量体とを含むことで、柔軟性、耐久性、除去性、硬化性、表面硬度、及び強度などの特性を良好なものにすることができる。
【0031】
前記成分(A)重合性化合物の含有量に特に制限はないものの、組成物全量に対する前記成分(A)重合性化合物の含有量が49~94質量%の範囲内であることが好ましく、55~87質量%の範囲内であることがより好ましく、60~80質量%の範囲内であることが更に好ましい。前記成分(A)重合性化合物の含有量を49~94質量%の範囲内にすることで、マット感、柔軟性、耐久性、除去性、硬化性、表面硬度、強度などの特性を良好なものにすることができる。
【0032】
前記成分(A)重合性化合物がオリゴマーと重合性単量体とを含む場合、重合性単量体の含有量は、オリゴマー100質量部当たり、通常10~1000質量部程度であり、柔軟性、耐久性、除去性、硬化性、表面硬度、及び強度などの特性をより良好なものにする観点から、好ましくは50~750質量部、より好ましくは100~750質量部、更に好ましくは200~650質量部、より更に好ましくは200~550質量部である。
【0033】
[ウレタンポリマー粒子]
成分(B)ウレタンポリマー粒子は、本発明の人工爪組成物の硬化膜表面に凹凸を作り、光の乱反射を起こす事でマット感を付与し、更に、本発明の人工爪組成物に高い柔軟性、高級感、強度、耐久性などの特性を付与する。前記成分(B)ウレタンポリマー粒子は、その分子構造中に少なくとも1つのウレタン結合を有するポリマー粒子である。その製造方法に特に制限はないものの、例えば2つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートと2つ以上のヒドロキシ基を有するポリオールとを反応させることによって得ることができる。
【0034】
前記ポリイソシアネートを具体的に例示すると、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4-ジイソシアネート-1-メチルシクロヘキサン、ジイソシアネートシクロブタン、テトラメチレンジイソシアネート、o-、m-もしくはp-キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、ドデカンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレン-2,4-ジイソシアネート、トリレン-2,6-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4'-ジイソシアネート、3-メチルジフェニルメタン-4,4'-ジイソシアネート、m-もしくはp-フェニレンジイソシアネート、クロロフェニレン-2,4-ジイソシアネート、ナフタリン-1,5-ジイソシアネート、ジフェニル-4,4'-ジイソシアネート、3,3'-ジメチルジフェニル-1,3,5-トリイソプロピルベンゼン-2,4-ジイソシアネート、カーボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、及びジフェニルエーテルジイソシアネート等のジイソシアネート;2,4,6-トリイソシアネートトルエン、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、トリフェニルメタントリイソシアネート、及びポリフェニルポリメチレンイソシアネートなどの3官能以上のポリイソシアネートが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらのポリイソシアネートは、1種類のみを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
前記ポリオールを具体的に例示すると、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ポリエーテルグリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシプロピレンポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオキシテトラメチレングリコール、これらの2価アルコールと環状エーテル結合含有化合物との開環重合によって得られる変性ポリエーテルジオール、及びこれらの2価アルコール1種以上とジカルボン酸との縮重合によって得られるポリエステルジオール等のジオール;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ヘキサントリオール、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、トリペンタエリトリトール、ジグリセロール、トリグリセロール、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、シクロヘキサントリオール、トリヒドロキシナフタレン、テトラヒドロキシナフタレン、ベンゼントリオール、ビフェニルテトラオール、これらの3価以上のアルコールと環状エーテル結合含有化合物との開環重合によって得られる変性ポリエーテルポリオール、及びこれらの3価以上のアルコール1種以上と多価カルボン酸との縮重合によって得られるポリエステルポリオール等の3価以上のポリオールが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらのポリオールは、1種類のみを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
前記成分(B)ウレタンポリマー粒子を得るための重合方法に特に制限はない。重合方法を具体的に例示すると、乳化重合、シード重合、及び懸濁重合等が挙げられる。また、前記成分(B)ウレタンポリマー粒子の形状に特に制限はなく、球状、針状、板状、破砕状、及び鱗片状等の任意の粒子形状のものを何ら制限無く用いることができる。前記例示の中でも、球状であることが好ましい。
【0037】
前記成分(B)ウレタンポリマー粒子は他の成分に溶解せず、本発明の人工爪組成物にマット感を付与できるものであれば、その高分子構造に特に制限はなく、線状高分子、星型高分子、櫛型高分子、ブラシ状高分子、及び架橋高分子等の分岐構造を有する高分子、またはこれらを組み合わせたものを用いることができる。これらの中でも、前記成分(B)ウレタンポリマー粒子以外の他の成分に溶解しにくいという観点から、架橋構造を有するウレタンポリマー粒子が好ましい。ウレタンポリマー粒子の架橋構造は、例えば、3官能以上のポリイソシアネートを用いる方法、3価以上のポリオールを用いる方法、これらを併用する方法などにより形成することができる。
【0038】
前記成分(B)ウレタンポリマー粒子の平均粒子径に特に制限はないものの、0.8~52μmの範囲内であることが好ましく、5~52μmの範囲内であればより好ましく、5~25μmの範囲内であれば更に好ましい。
【0039】
尚、本明細書中における平均粒子径という用語は、レーザー回折式粒度分布測定機で粒度分布を測定することにより求められる、積算体積50%粒子径の値を意味する。
【0040】
前記成分(B)ウレタンポリマー粒子の積算体積10%粒子径に特に制限はないものの、0.1~20μmの範囲内であることが好ましく、1~18μmの範囲内であればより好ましく、1~16μmの範囲内であれば更に好ましい。
【0041】
前記成分(B)ウレタンポリマー粒子の積算体積90%粒子径に特に制限はないものの、3~90μmの範囲内であることが好ましく、4~70μmの範囲内であればより好ましく、5~50μmの範囲内であれば更に好ましい。
【0042】
前記成分(B)ウレタンポリマー粒子のガラス転移温度Tgに特に制限はないものの、-60℃~0℃であることが好ましく、-20℃~0℃であることがより好ましい。-60℃~0℃の範囲内とすることで、高い柔軟性を与えることができる。
【0043】
尚、本明細書中におけるガラス転移温度Tgは、示差走査熱量測定(DSC)法で測定した中間点ガラス転移温度を意味する。また、本明細書中における中間点ガラス転移温度という用語は、各ベースラインの延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点の温度を意味する。
【0044】
前記成分(B)ウレタンポリマー粒子の吸油量に特に制限はないものの、1g/g~5g/gであることが好ましく、1.5g/g~4.5g/gであることがより好ましい。1g/g~5g/gの範囲内とすることで、本発明の人工爪組成物の保存安定性を良好なものにすることができる。
【0045】
尚、本明細書中における吸油量は、以下の方法で測定した値を意味する。すなわち、ウレタンポリマー粒子40gを容器に入れた後、トルエン5.0gを注ぎ入れる。攪拌棒を用いて容器内の試料を攪拌しながら、試料が流動性を生じるまでトルエンを追加添加した後、1時間放置する。放置後に試料が流動性を維持している場合には、この時点までに添加したトルエン総質量を吸油量とする。放置後に試料の流動性が消失した場合には、試料が流動性を生じるまでさらにトルエンを添加し、この時点までに添加したトルエン総質量を吸油量とする。ここで、流動性とは、試料の攪拌に用いた攪拌棒を引き上げた際、攪拌棒に付着した試料が、引き上げ後から10秒以内に落下する状態のことである。
【0046】
前記成分(B)ウレタンポリマー粒子の含有量に特に制限はないものの、組成物全量に対して5~50質量%の範囲内であることが好ましく、11~44質量%であることがより好ましく、18~39質量%であることが更に好ましい。5~50質量%の範囲内とすることで、マット性、柔軟性、高級感及び良好な操作性を与えることができる。
【0047】
[重合開始剤]
成分(C)重合開始剤は、前記成分(A)重合性化合物の重合反応を開始するための化合物である。前記成分(C)重合開始剤の種類に特に制限はなく、公知の重合開始剤を使用することができる。前記成分(C)重合開始剤としては、可視光線、紫外線、X線、電子線等のエネルギー線の照射によって重合反応の起点となる光重合開始剤、一定以上の温度に加熱することによって重合反応の起点となる熱重合開始剤、特定の物質を混合することによって重合反応の起点となる二剤以上を混合するタイプの化学重合開始剤などが挙げられるが、光重合開始剤が好ましい。光重合開始剤としては、エネルギー線の照射によってラジカルを発生するラジカル重合開始剤、カチオンを発生するカチオン重合開始剤、アニオンを発生するアニオン重合開始剤などが挙げられるが、ラジカル重合開始剤が好ましい。ラジカル光重合開始剤を具体的に例示すると、ベンゾインエーテル類、ベンジルケタール類、α-ジアルコキシアセトフェノン類、α-ヒドロキシアルキルフェノン類、α-アミノアルキルフェノン類、アシルフォスフィンオキサイド類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、及びチタノセン類等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの重合開始剤の内、2種類以上を選択し、人工爪組成物を構成することもできる。これらの中でも、α-ヒドロキシアルキルフェノン類、及びアシルフォスフィンオキサイド類からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0048】
α-ヒドロキシアルキルフェノン類として具体的な化合物を例示すると、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、及びα-アミノアルキルフェノンなどが挙げられる。アシルホスフィンオキサイド類として具体的な化合物を例示すると、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、及びビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドなどが挙げられる。これらの中でも、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、及びビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドから選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0049】
前記成分(C)重合開始剤の含有量に特に制限はないものの、組成物全量に対して0.1~10質量%の範囲内であることが好ましく、0.1~6質量%の範囲内であることがより好ましく、1~6質量%の範囲内であることが更に好ましい。0.1~10質量%の範囲内にすることで、硬化性、表面硬度、耐久性などの特性を良好なものにすることができる。
【0050】
[その他の成分]
本発明の人工爪組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、前記成分(A)~(C)以外の成分を含むことができる。その他成分としては、人工爪組成物において広く使用される、溶剤、補助剤、添加剤、着色剤、レベリング剤、可塑剤、酸化防止剤、重合促進剤、重合禁止剤、合一剤、保存剤、ワックス、増粘剤、芳香剤、UV遮蔽剤、拡散剤、消泡剤、分散剤、充填剤、界面活性剤、顔料、染料、賦形剤、イオン放出剤、及びシランカップリング剤などが挙げられる。
【0051】
重合促進剤としては、1分子内に2個以上のチオール基を有する多官能チオール化合物を使用することができる。多官能チオール化合物を使用することで酸素による硬化阻害を受けることなく硬化反応が進行する。多官能チオール化合物として具体的な化合物を例示すると、1,2-エタンジチオール、1,2-プロパンジチオール、1,3-プロパンジチオール、1,3-ブタンジチオール、2,3-ブタンジチオール、1,5-ペンタンジチオール、1,6-ヘキサンジチオール、1,8-オクタンジチオール、1,9-ノナンジチオール、1,10-デカンジチオール、1,2-ベンゼンジチオール、1,3-ベンゼンジチオール、1,4-ベンゼンジチオール、3,6-ジクロロ-1,2-ベンゼンジチオール、トルエン-3,4-ジチオール、1,5-ナフタレンジチオール、エチレングリコールビス(チオグリコレート)、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、1,4-ブタンジオールビスチオグリコレート、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、トリス[(3-メルカプトプロピオニロキシ)-エチル]イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、ジメルカプトジエチルスルフィド、1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、1,2-ビス[(2-メルカプトエチル)チオ]-3-メルカプトプロパン、テトラキス(7-メルカプト-2,5-ジチアヘプチル)メタン、トリチオシアヌル酸、1,2-ベンゼンジメタンチオール、4,4'-チオビスベンゼンチオール、2-ジ-n-ブチルアミノ-4,6-ジメルカプト-s-トリアジン、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、1,8-ジメルカプト-3,6-ジオキサオクタン、1,5-ジメルカプト-3-チアペンタン、トリメルカプトプロピオン酸トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,4-ジメチルメルカプトベンゼン、2,4,6-トリメルカプト-s-トリアジン、2-(N,N-ジブチルアミノ)-4,6-ジメルカプト-s-トリアジン、ビス(4-(2-メルカプトプロポキシ)フェニル)メタン、1,1-ビス(4-(2-メルカプトプロポキシ)フェニル)エタン、2,2-ビス(4-(2-メルカプトプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(2-メルカプトプロポキシ)フェニル)ブタン、1,1-ビス(4-(2-メルカプトプロポキシ)フェニル)イソブタン、2,2-ビス(4-(2-メルカプトプロポキシ)-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(2-メルカプトプロポキシ)-5-メチルフェニル)プロパン、ビス(2-(2-メルカプトプロポキシ)-5-メチルフェニル)メタン、2,2-ビス(4-(2-メルカプトプロポキシ)-3-t-ブチルフェニル)プロパン、トリス(4-(2-メルカプトプロポキシ)フェニル)メタン、1,1,1-トリス(4-(2-メルカプトプロポキシ)フェニル)エタン、ビス(4-(2-メルカプトブトキシ)フェニル)メタン、2,2-ビス(4-(2-メルカプトブトキシ)フェニル)プロパン、トリス(4-(2-メルカプトブトキシ)フェニル)メタン、1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオール、及びこれらのアルキルビニールエーテル付加物等が挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。これらの重合促進剤は、1種類のみを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
本発明の人工爪組成物は、天然爪;人工爪組成物によって塗膜が形成されている爪;人工の樹脂製チップ、樹脂製フィルム、及び樹脂製シートなどの基材に対して塗布することができるが、これらに制限されるものではない。また、塗布の方法としては筆、スポンジ、スプレー、インクジェット、エアーナイフ、及びロールなどで塗布する方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0053】
本発明の人工爪組成物の粘度に特に制限はないものの、操作性の観点から、23℃雰囲気下で流動性を有することが好ましい。具体的には、動的粘弾性測定装置であるレオメーターを用いて測定される23℃、せん断速度10s-1における粘度が200,000mPa・s以下であることが好ましく、150,000mPa・s以下であることがより好ましく、120,000mPa・s以下であることが更に好ましく、100,000mPa・s以下であることがより更に好ましく、50,000mPa・s以下であることが特に好ましい。一方、粘度の下限は特に制限されないが、1mPa・s以上であることが好ましく、1,000mPa・s以上であることがより好ましく、5,000mPa・s以上であることが更に好ましい。尚、本発明の人工爪組成物の粘度は、前記成分(A)~(C)の種類及び含有量を適宜調整することにより変更できる。
【0054】
本発明の人工爪組成物の形態に特に制限はなく、ネイルポリッシュ、ジェルネイル、アクリルネイル等とすることができる。ネイルポリッシュは、ネイルラッカー、ネイルエナメル、又はマニキュア等と呼ばれる爪用の塗料であり、含まれる溶剤を乾燥させる事で美的外観に優れた塗膜を作る組成物である。ジェルネイルは、紫外線又は可視光線によって硬化する樹脂成分を含有する剤料であり、天然爪又は人工爪上に塗布後、紫外線又は可視光線を照射し硬化させることで美的外観に優れた塗膜を作る組成物である。アクリルネイルは、ポリマービーズと重合性単量体とを含む粉液型剤料であり、粉液混合後にポリマービーズ中に含有された過酸化物によって重合性単量体の重合が開始され硬化する組成物である。アクリルネイルは塗布だけでなく、築盛した形態の作製が可能である事が特徴であり、主として爪の伸長に用いられる場合が多い。これらの中でも、本発明の人工爪組成物は、ジェルネイルの形態で提供されることが好ましい。ジェルネイルの形態とすることで、光沢を抑制したマット感を有し、かつ、高い柔軟性を有する人工爪組成物を提供することができる。
【0055】
前記ジェルネイルは、一般的には天然爪又は基材に対してベース層、カラー層、トップコート層の順に積層し、塗膜が構成される。本発明の人工爪組成物の適用方法に特に制限はなく、ベース層、カラー層、トップコート層の何れの層とすることもできる。本発明の人工爪組成物は、光沢を抑制したマット感を最も顕著に発現できるという観点から、トップコート層として用いることが好ましい。
【0056】
前記ジェルネイルには、手の爪に塗布するハンド用、足の爪に塗布するフット用、動物の爪に塗布する動物用などがある。本発明の人工爪組成物の用途に特に制限はなく、ハンド用、フット用、動物用などのいずれにも使用することができる。
【0057】
本発明の人工爪は、本発明の人工爪組成物から得られるものである。本発明の人工爪は、例えば、本発明の人工爪組成物を、天然爪、人工爪組成物によって塗膜が形成されている爪、あるいは人工の樹脂製チップ、樹脂製フィルム、及び樹脂製シートなどの基材に対して塗布し、硬化させることにより形成することができる。塗布方法は特に制限されないが、例えば、筆、スポンジ、スプレー、インクジェット、エアーナイフ、及びロールなどで塗布する方法が挙げられる。硬化方法は特に制限されないが、例えば、紫外線又は可視光線を照射して硬化させる方法、及び加熱して硬化させる方法などが挙げられ、迅速に硬化させる観点から、紫外線又は可視光線を照射して硬化させる方法が好ましい。
【実施例0058】
以下に本発明の実施例及び比較例について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0059】
[人工爪組成物の調製に用いた成分]
実施例、及び比較例の人工爪組成物の調製に用いた成分を表1に記載した。表1中の粘度は、動的粘弾性測定装置であるレオメーター(アントンパール社製、商品名:MCR301)を用いて、23℃、せん断速度10s-1の条件で測定された値を採用した。表1中の重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography;GPC)により、GPC測定装置(島津製作所社製、商品名:Nexera GPCシステム)、カラム(Waters社製、商品名:Styragel HR)、溶離液としてテトラヒドロフラン、標準物質としてポリスチレンを用いて測定された値を採用した。表1中の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定機(マイクロトラック・ベル社製、商品名:マイクロトラック MT3300EX II)で粒度分布を測定することにより求められる積算体積50%粒子径値を採用した。表1中のガラス転移温度Tgは、示差走査熱量測定(DSC)法で測定した中間点ガラス転移温度であり、各ベースラインの延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点の温度を採用した。表1中の吸油量は、以下の方法で測定した値である。試料としてウレタンポリマー粒子40gを容器に入れた後、トルエン5.0gを注ぎ入れた。攪拌棒を用いて容器内の試料を攪拌しながら、試料が流動性を生じるまでトルエンを追加添加した後、1時間放置した。放置後に試料が流動性を維持している場合には、この時点までに添加したトルエン総質量を吸油量とした。放置後に試料の流動性が消失した場合には、試料が流動性を生じるまでさらにトルエンを添加し、この時点までに添加したトルエン総質量を吸油量とした。なお、流動性とは、試料の攪拌に用いた攪拌棒を引き上げた際、攪拌棒に付着した試料が、引き上げ後から10秒以内に落下する状態のことである。
【0060】
【表1】
【0061】
[光硬化性人工爪組成物の調製]
表3~6に記載の各配合割合に従い、それぞれの成分の量を計算し、大気圧下で自転・公転式混合機(シンキー社製、商品名:ARV-310P)を使用して、均一液状になるまで混合することで実施例及び比較例の人工爪組成物を調製した。
【0062】
実施例及び比較例の人工爪組成物の評価方法は以下の通りである。尚、評価は、特に明記していない場合には、室温23±2℃、湿度50±10%、室内用LED照明下にて実施した。
【0063】
[試験例1:マット感評価]
実施例及び比較例の人工爪組成物を、ガラス平板上にスペーサーを使用して塗布し、市販ジェルネイル用ライト(ネイルラボ社製、商品名:PRESTO LEDライト)にて20秒間光照射することで硬化させた後、エタノールを浸み込ませたワイプを使用して人工爪組成物の表面未重合層部分を除去し、厚さ0.2mm、長辺50.0mm、短辺15.0mmの薄膜を作製した。次に、光沢度計(堀場製作所社製、型式:HORIBA Gloss Checker IG-331)を使用して60°光沢を測定した。また、1つの人工爪組成物に対して3つの薄膜を作製し、マット感の評価を実施した。尚、マット感評価の値は、3つの薄膜を用いて測定した60°光沢の測定値の平均値であり、15.0以下であればマット感を有していると判断し、10.0以下であれば好ましく、5.0以下であれば更に好ましい。
【0064】
[試験例2:粘度測定]
実施例及び比較例の人工爪組成物を、動的粘弾性測定装置であるレオメーター(アントンパール社製、型式:Physica MCR 301)を使用して以下の測定条件で粘度測定を実施し、せん断速度10s-1における測定値を実施例及び比較例の人工爪組成物の粘度値とした。尚、人工爪組成物の粘度値は、操作性の観点から、200,000mPa・s以下であることが好ましく、150,000mPa・s以下であることがより好ましく、120,000mPa・s以下であることが更に好ましく、100,000mPa・s以下であることがより更に好ましく、50,000mPa・s以下であることが特に好ましい。一方、粘度の下限は特に制限されないが、1mPa・s以上であることが好ましく、1,000mPa・s以上であることがより好ましく、5,000mPa・s以上であることが更に好ましい。
【0065】
(測定条件)
測定治具:パラレルプレート PP20
測定温度:23℃
せん断速度:0.1~100s-1
【0066】
[試験例3:破断伸度測定]
実施例及び比較例の人工爪組成物を、市販ジェルネイル用ライト(ネイルラボ社製、商品名:PRESTO LEDライト)にて20秒間光照射することで硬化させ、厚さ1.9mm、全長28.6mm、タブ部間距離25.0mm、平行部の長さ15.0mm、肩部の半径7.0mm、平行部の幅2.0mmのダンベル型試験片を作製し、これを破断伸度測定試験片とした。一昼夜静置後、インストロン万能試験機(インストロン社製、型式:インストロン5943型)を使用し、クロスヘッドスピード10mm/minの条件下で破断伸度を測定した。尚、破断伸度の値は25.0[%]以上であれば高い柔軟性を有していると判断し、30.0[%]以上であれば好ましく、35.0[%]以上であれば更に好ましい。
【0067】
[試験例4:触感試験]
実施例及び比較例の人工爪組成物を、ガラス平板上にスペーサーを使用して塗布し、市販ジェルネイル用ライト(ネイルラボ社製、商品名:PRESTO LEDライト)にて20秒間光照射することで硬化させた後、エタノールを浸み込ませたティッシュペーパーを使用して人工爪組成物の表面未重合層部分を除去し、厚さ0.2mm、長辺50.0mm、短辺15.0mmの薄膜を作製した。次に、日本ネイリスト協会認定ネイリスト10名が、薄膜の光照射面に対して、エタノールで清浄にした指先で触れ、薄膜の触感を官能評価し、表2に示す基準による評価結果を持ち寄り、総合評価した。尚、触感品質の観点から、総合評価結果がAである事が好ましい。
【0068】
【表2】
【0069】
(実施例、及び比較例の評価結果)
表3~表6に各実施例及び比較例のマット感、粘度、破断伸度、触感の評価結果を示した。
【0070】
【表3】
【0071】
【表4】
【0072】
【表5】
【0073】
【表6】
【0074】
表3~表6から明らかなように、実施例に係る人工爪組成物は、何れもマット感を有し、高い柔軟性、高級感、及び良好な操作性を有することが認められた。一方、比較例の人工爪組成物は、マット感と高い柔軟性を両立することができないものであった。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明によれば、光沢を抑制したマット感を有し、かつ、高い柔軟性を有する人工爪組成物を提供することが可能である。