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特開2024-144296極性基含有オレフィン共重合体及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144296
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】極性基含有オレフィン共重合体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 234/02 20060101AFI20241003BHJP
   C08F 4/80 20060101ALI20241003BHJP
   C08F 4/602 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C08F234/02
C08F4/80
C08F4/602
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024048853
(22)【出願日】2024-03-26
(31)【優先権主張番号】P 2023055180
(32)【優先日】2023-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】303061270
【氏名又は名称】日本ポリケム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】中本 和心
(72)【発明者】
【氏名】満重 佑輔
(72)【発明者】
【氏名】山田 芳佳
【テーマコード(参考)】
4J015
4J100
4J128
【Fターム(参考)】
4J015DA23
4J100AA02Q
4J100AL03R
4J100AR32P
4J100CA05
4J100FA39
4J128AA01
4J128AB00
4J128AC48
4J128BA01B
4J128BB01B
4J128BC11B
4J128BC15B
4J128BC24B
4J128EB02
4J128EB25
4J128EB26
4J128EC04
4J128FA02
4J128GA01
4J128GA06
4J128GA16
4J128GB01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】新規な極性基含有オレフィン共重合体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】炭素数2~20のオレフィンの少なくとも1種に由来する構造単位(A)と、下記一般式(1)で表されるモノマーの少なくとも1種に由来する構造単位(B)と、下記一般式(2)で表されるモノマーの少なくとも1種に由来する構造単位(C)と、を含むことを特徴とする極性基含有オレフィン共重合体。

(RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ホルミル基、カルボキシ基、炭素数1~30のエステル基、炭素数1~30のアシルオキシ基等、Rは、水素原子、ハロゲン原子、少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている炭素数1~10の炭化水素基、または炭素数1~10の炭化水素基、Rは、水素原子、少なくとも1つの炭素数1~30の炭化水素基で置換されていてもよいシリル基等である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数2~20のオレフィンの少なくとも1種に由来する構造単位(A)と、
下記一般式(1)で表されるモノマーの少なくとも1種に由来する構造単位(B)と、
下記一般式(2)で表されるモノマーの少なくとも1種に由来する構造単位(C)と、
を含むことを特徴とする極性基含有オレフィン共重合体。
【化1】
(式(1)中、
およびRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ホルミル基、カルボキシ基、炭素数1~30のエステル基、炭素数1~30のアシルオキシ基、炭素数1~30のアシル基、炭素数1~30のアルコキシ基、炭素数6~30のアリールオキシ基、炭素数1~30のアルキルチオ基、炭素数6~30のアリールチオ基、ニトロ基、少なくとも1つの炭素数1~30の炭化水素基で置換されていてもよいアミノ基、少なくとも1つの炭素数1~30の炭化水素基で置換されていてもよいシリル基、少なくとも1つの炭素数1~30の炭化水素基で置換されていてもよいアミド基、少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている炭素数1~30の炭化水素基、又は、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい炭素数1~30の炭化水素基若しくは複素環基であるか、或いは、RとRは互いに結合して4~10員環の環を形成していてもよい。)
【化2】
(式(2)中、
は、水素原子、ハロゲン原子、少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている炭素数1~10の炭化水素基、または炭素数1~10の炭化水素基である。
は、水素原子、少なくとも1つの炭素数1~30の炭化水素基で置換されていてもよいシリル基、少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている炭素数1~30の炭化水素基、又は、酸素原子、硫黄原子若しくは窒素原子の少なくとも1種を含む少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい炭素数1~30の炭化水素基若しくは複素環基である。)
【請求項2】
前記構造単位(B)が、下記一般式(I)で表される構造単位、又は、下記一般式(I)で表される構造単位および下記一般式(II)で表される構造単位を含むことを特徴とする請求項1に記載の極性基含有オレフィン共重合体。
【化3】
(式(I)及び式(II)中、R1およびR2は、前記と同様である。)
【請求項3】
前記構造単位(C)が、下記一般式(III)で表されることを特徴とする請求項1に記載の極性基含有オレフィン共重合体。
【化4】
(式(III)中、R及びRは、前記と同様である。)
【請求項4】
前記構造単位(B)のR及びRの少なくとも1つが、水素原子であることを特徴とする、請求項1または2に記載の極性基含有オレフィン共重合体。
【請求項5】
前記構造単位(C)のRが、水素原子であることを特徴とする、請求項1または3に記載の極性基含有オレフィン共重合体。
【請求項6】
前記構造単位(B)のRおよびRが、いずれも水素原子であることを特徴とする、請求項1または2に記載の極性基含有オレフィン共重合体。
【請求項7】
前記オレフィンが、エチレンであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の極性基含有オレフィン共重合体。
【請求項8】
前記構造単位(B)の含量が、0.01mol%~10mol%であることを特徴とする、請求項1または2に記載の極性基含有オレフィン共重合体。
【請求項9】
前記構造単位(C)の含量が、0.01mol%~30mol%であることを特徴とする、請求項1または3に記載の極性基含有オレフィン共重合体。
【請求項10】
下記一般式(101)で表される化合物を少なくとも1種含む触媒の存在下で、炭素数2~20のオレフィンの少なくとも1種、下記一般式(1)で表されるモノマーの少なくとも1種、及び、下記一般式(2)で表されるモノマーの少なくとも1種を重合させることを特徴とする、極性基含有オレフィン共重合体の製造方法。
【化5】
[一般式(101)中、
Mは、周期表第10族の金属原子を示す。
Qは、酸素原子、硫黄原子、-S(=O)-O-または-C(=O)-O-を示し、前記各基は左側がAに結合し、右側がMに結合している。
Aは、置換基を有していてもよい炭素数1~30の2価の炭化水素基を示す。
は、水素原子、ヘテロ原子を含有していてもよい炭素数1~20の炭化水素基またはMに配位したリガンドを示す。
Lは、Mに配位したリガンドを示す。
とRは、それぞれ独立に、水素原子またはヘテロ原子を含有していてもよい炭素数1~20の炭化水素基を表す。
とLおよびRとRは、環を形成してもよく、RとAまたはRとAは、環を形成してもよい。]
【化6】
(式(1)中、
およびRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ホルミル基、カルボキシ基、炭素数1~30のエステル基、炭素数1~30のアシルオキシ基、炭素数1~30のアシル基、炭素数1~30のアルコキシ基、炭素数6~30のアリールオキシ基、炭素数1~30のアルキルチオ基、炭素数6~30のアリールチオ基、ニトロ基、少なくとも1つの炭素数1~30の炭化水素基で置換されていてもよいアミノ基、少なくとも1つの炭素数1~30の炭化水素基で置換されていてもよいシリル基、少なくとも1つの炭素数1~30の炭化水素基で置換されていてもよいアミド基、少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている炭素数1~30の炭化水素基、又は、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい炭素数1~30の炭化水素基若しくは複素環基であるか、或いは、RとRは互いに結合して4~10員環の環を形成していてもよい。)
【化7】
(式(2)中、
は、水素原子、ハロゲン原子、少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている炭素数1~10の炭化水素基、または炭素数1~10の炭化水素基である。
は、水素原子、少なくとも1つの炭素数1~30の炭化水素基で置換されていてもよいシリル基、少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている炭素数1~30の炭化水素基、又は、酸素原子、硫黄原子若しくは窒素原子の少なくとも1種を含む少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい炭素数1~30の炭化水素基若しくは複素環基である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な極性基含有オレフィン共重合体に関し、詳しくは、主鎖に炭素数2~20のオレフィン由来の構造、炭酸ビニレン誘導体および特定の極性基含有モノマー由来の構造が導入されている新規な極性基含有オレフィン共重合体、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オレフィン共重合体は、樹脂材料の中で物性や成型性などの諸性質に優れ、経済性や環境問題適合性なども高く、非常に汎用される重要な産業資材である。
しかし、オレフィン共重合体は極性基を持たないため、他の材料との接着性や印刷適性、あるいはフィラーなどとの相溶性の物性が要求される用途への適用は困難であった。かかる状況において、近年後周期金属錯体の存在下オレフィンと極性ビニルモノマーとの共重合により、オレフィン共重合体の高分子鎖に極性基を導入する研究が盛んにおこなわれている(非特許文献1)。また、オレフィンと炭酸ビニレンの共重合体として、エチレンと炭酸ビニレンのラジカル共重合による極性基含有オレフィン共重合体が報告されている(例えば、特許文献1及び2)。さらに、金属触媒を用いたエチレンと炭酸ビニレンの共重合、及び得られた極性基含有オレフィン共重合体の加水分解が報告されている(特許文献3)。
【0003】
炭酸ビニレンとの共重合で導入される環状カーボナート構造はアミンと容易に反応し、グラフト重合やポリマー鎖の架橋に用いることができることが報告されている(例えば、非特許文献2,3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第2847398号明細書
【特許文献2】米国特許第3114728号明細書
【特許文献3】国際公開第00/56781号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Chem.Rev.,2011,111,2363-2449.
【非特許文献2】J.Polym.Sci.A:Polym.Chem.,2001,39,860-867.
【非特許文献3】J.Network Polym.Japan,2015,36,160-166.
【非特許文献4】Organometallics,2004,23,5121-5123.
【非特許文献5】J.Am.Chem.Soc.,2009,131,12613-12622.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
炭酸ビニレンは工業的に炭酸エチレンのクロロ化と引き続く脱塩酸反応によって作られる化合物であり、主にリチウムイオンバッテリーへの添加剤として用いられる。一方で、構造内に炭素-炭素二重結合を含むことから、α-オレフィンとの共重合にも用いることができる。原料の炭酸エチレンは二酸化炭素から作ることができるため、炭酸ビニレンとα-オレフィンとの共重合は二酸化炭素固定法としてみなすことができる。また、炭酸ビニレンとα-オレフィンとの共重合で酸素原子をポリオレフィンのビシナル位に導入することができる。
非特許文献4、5において、エチレンとアクリル酸エステルの共重合が進行しないことが報告されている。
【0007】
かかる状況において本願は、オレフィン、炭酸ビニレン誘導体および特定の極性基含有モノマー由来の構造単位を含む新規な極性基含有エチレン共重合体、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本研究者らは、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、オレフィンと炭酸ビニレン誘導体と特定の極性基含有モノマーとを用いた新規な構造の極性基含有オレフィン共重合体、及びその製造方法を見出した。
すなわち、本発明には、以下の態様が含まれる。
【0009】
<1> 炭素数2~20のオレフィンの少なくとも1種に由来する構造単位(A)と、
下記一般式(1)で表されるモノマーの少なくとも1種に由来する構造単位(B)と、 下記一般式(2)で表されるモノマーの少なくとも1種に由来する構造単位(C)と、を含むことを特徴とする極性基含有オレフィン共重合体。
【0010】
【化1】
(式(1)中、
とRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ホルミル基、カルボキシ基、炭素数1~30のエステル基、炭素数1~30のアシルオキシ基、炭素数1~30のアシル基、炭素数1~30のアルコキシ基、炭素数6~30のアリールオキシ基、炭素数1~30のアルキルチオ基、炭素数6~30のアリールチオ基、ニトロ基、少なくとも1つの炭素数1~30の炭化水素基で置換されていてもよいアミノ基、少なくとも1つの炭素数1~30の炭化水素基で置換されていてもよいシリル基、少なくとも1つの炭素数1~30の炭化水素基で置換されていてもよいアミド基、少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている炭素数1~30の炭化水素基、又は、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい炭素数1~30の炭化水素基若しくは複素環基であるか、或いは、RとRは互いに結合して4~10員環の環を形成していてもよい。)
【0011】
【化2】
(式(2)中、
は、水素原子、ハロゲン原子、少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている炭素数1~10の炭化水素基、または炭素数1~10の炭化水素基である。
は、水素原子、少なくとも1つの炭素数1~30の炭化水素基で置換されていてもよいシリル基、少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている炭素数1~30の炭化水素基、又は、酸素原子、硫黄原子若しくは窒素原子の少なくとも1種を含む少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい炭素数1~30の炭化水素基若しくは複素環基である。)
【0012】
<2> 前記構造単位(B)が、下記一般式(I)で表される構造単位、又は、下記一般式(I)で表される構造単位および下記一般式(II)で表される構造単位を含むことを特徴とする前記<1>に記載の極性基含有オレフィン共重合体。
【0013】
【化3】
(式(I)及び式(II)中、R1およびR2は、前記と同様である。)
【0014】
<3> 前記構造単位(C)が、下記一般式(III)で表されることを特徴とする、前記<1>又は<2>に記載の極性基含有オレフィン共重合体。
【0015】
【化4】
(式(III)中、R及びRは、前記と同様である。)
【0016】
<4> 前記構造単位(B)のR及びRの少なくとも1つが、水素原子であることを特徴とする、前記<1>~<3>のいずれか1項に記載の極性基含有オレフィン共重合体。
<5> 前記構造単位(C)のRが、水素原子であることを特徴とする、前記<1>~<4>のいずれか1項に記載の極性基含有オレフィン共重合体。
<6> 前記構造単位(B)のRおよびRが、いずれも水素原子であることを特徴とする、前記<1>~<5>のいずれか1項に記載の極性基含有オレフィン共重合体。
<7> 前記オレフィンが、エチレンであることを特徴とする、前記<1>~<6>のいずれか1項に記載の極性基含有オレフィン共重合体。
<8> 前記構造単位(B)の含量が、0.01mol%~10mol%であることを特徴とする、前記<1>~<7>のいずれか1項に記載の極性基含有オレフィン共重合体。
<9> 前記構造単位(C)の含量が、0.01mol%~30mol%であることを特徴とする、前記<1>~<8>のいずれか1項に記載の極性基含有オレフィン共重合体。
【0017】
<10> 下記一般式(101)で表される化合物を少なくとも1種含む触媒の存在下で、炭素数2~20のオレフィンの少なくとも1種、下記一般式(1)で表されるモノマーの少なくとも1種、及び、下記一般式(2)で表されるモノマーの少なくとも1種を重合させることを特徴とする、極性基含有オレフィン共重合体の製造方法。
【0018】
【化5】
[一般式(101)中、
Mは、周期表第10族の金属原子を示す。
Qは、酸素原子、硫黄原子、-S(=O)-O-または-C(=O)-O-を示し、前記各基は左側がAに結合し、右側がMに結合している。
Aは、置換基を有していてもよい炭素数1~30の2価の炭化水素基を示す。
は、水素原子、ヘテロ原子を含有していてもよい炭素数1~20の炭化水素基またはMに配位したリガンドを示す。
Lは、Mに配位したリガンドを示す。
とRは、それぞれ独立に、水素原子またはヘテロ原子を含有していてもよい炭素数1~20の炭化水素基を表す。
とLおよびRとRは、環を形成してもよく、RとAまたはRとAは、環を形成してもよい。]
【0019】
【化6】
(式(1)中、RおよびRは、前記と同様である。)
【0020】
【化7】
(式(2)中、R及びRは、前記と同様である。)
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、オレフィン、炭酸ビニレン誘導体および特定の極性基含有モノマー由来の構造単位を含む新規な極性基含有エチレン共重合体、及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、実施例1の極性基含有オレフィン共重合体1の13C-NMR測定結果を示す。
図2図2は、実施例1の極性基含有オレフィン共重合体1の13C-NMR測定結果の一部拡大図を示す。
図3図3は、実施例1の極性基含有オレフィン共重合体1のH-NMR測定結果を示す。
図4図4は、実施例1の極性基含有オレフィン共重合体1のH-NMR測定結果の一部拡大図を示す。
図5図5は、実施例1の極性基含有オレフィン共重合体1のHSQC測定結果を示す。
図6図6は、実施例1の極性基含有オレフィン共重合体1のHSQC測定結果の一部拡大図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の極性基含有オレフィン共重合体について、項目毎に詳細に説明する。なお、本明細書において、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイル及びメタクリロイルの各々を示す。また、本明細書において数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0024】
本発明の極性基含有オレフィン共重合体は、炭素数2~20のオレフィンの少なくとも1種に由来する構造単位(A)と、
下記一般式(1)で表されるモノマーの少なくとも1種に由来する構造単位(B)と、 下記一般式(2)で表されるモノマーの少なくとも1種に由来する構造単位(C)と、を含むことを特徴とする極性基含有オレフィン共重合体である。
【0025】
【化8】
(式(1)中、
とRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ホルミル基、カルボキシ基、炭素数1~30のエステル基、炭素数1~30のアシルオキシ基、炭素数1~30のアシル基、炭素数1~30のアルコキシ基、炭素数6~30のアリールオキシ基、炭素数1~30のアルキルチオ基、炭素数6~30のアリールチオ基、ニトロ基、少なくとも1つの炭素数1~30の炭化水素基で置換されていてもよいアミノ基、少なくとも1つの炭素数1~30の炭化水素基で置換されていてもよいシリル基、少なくとも1つの炭素数1~30の炭化水素基で置換されていてもよいアミド基、少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている炭素数1~30の炭化水素基、又は、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい炭素数1~30の炭化水素基若しくは複素環基であるか、或いは、RとRは互いに結合して4~10員環の環を形成していてもよい。)
【0026】
【化9】
(式(2)中、
は、水素原子、ハロゲン原子、少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている炭素数1~10の炭化水素基、または炭素数1~10の炭化水素基である。
は、水素原子、少なくとも1つの炭素数1~30の炭化水素基で置換されていてもよいシリル基、少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている炭素数1~30の炭化水素基、又は、酸素原子、硫黄原子若しくは窒素原子の少なくとも1種を含む少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい炭素数1~30の炭化水素基若しくは複素環基である。)
【0027】
本発明の極性基含有オレフィン共重合体は、図1等に示されるように、エチレン等の炭素数2以上のオレフィン重合体の主鎖(図中の化学構造式における波線はポリマーの主鎖を表す)に、前記一般式(1)で表される炭酸ビニレン誘導体由来の極性基を含有する構造単位(B)と、前記一般式(2)で表されるアクリル酸エステル誘導体由来の極性基を含有する構造単位(C)を含む、新規な極性基含有オレフィン共重合体である。
【0028】
本発明の極性基含有オレフィン共重合体は、前記構造単位(B)として、下記一般式(I)で表される構造単位を必須構造単位として含んでいてよく、すなわち、下記一般式(I)で表される構造単位、又は、下記一般式(I)で表される構造単位および下記一般式(II)で表される構造単位を含んでいてもよい。本発明の極性基含有オレフィン共重合体は、さらに、前記構造単位(C)として、下記一般式(III)で表される構造を含んでいてもよい。
【0029】
【化10】
(式(I)及び式(II)中、R及びRは、前記と同様である。)
【0030】
【化11】
(式(III)中、R及びRは、前記と同様である。)
【0031】
本発明の極性基含有オレフィン共重合体は、エチレン等の炭素数2以上のポリオレフィン中に、酸素原子をビシナル位に持つ炭酸ビニレン誘導体由来の構造単位と、さらにアクリル酸エステル誘導体由来の構造単位が導入されている。これにより、例えばエチレン-炭酸ビニレン-アクリル酸エステル共重合体に金属へのキレート配位性を有するなどの、従来のエチレン共重合体にない機能を実現できる可能性が期待される。そのような機能を有する共重合体は、金属錯体触媒のための担体や金属錯体回収のための吸着材などの用途への展開も期待される。
【0032】
また、本発明の極性基含有オレフィン共重合体は、その構造単位(B)又は構造単位(C)に含まれる各々異なる極性基を利用してグラフト重合を行うことで、さらなる機能化を行うことも可能と考えられる。
本発明の極性基含有オレフィン共重合体を加水分解体とすると、炭酸ビニレン誘導体由来の-OHとアクリル酸エステル誘導体由来の-COOHのプロトンの酸性度が異なるため、それぞれ異なる化学修飾が可能となり、従来のオレフィン-アクリル酸エステル系共重合体とは異なる材料物性が期待できる。
さらに、エチレンと炭酸ビニレン誘導体とアクリル酸エステル誘導体の共重合により、二酸化炭素の固定を行うことができると考えられる。ポリエチレンは最も製造量の多いプラスチックであり、そのさらなる機能化と製造時の二酸化炭素排出量を減らすことが求められているのは明白である。
【0033】
(1)構造単位(A)
構造単位(A)は、炭素数2~20のオレフィンの少なくとも1種に由来する構造単位である。
構造単位(A)を誘導する本発明に用いられるモノマー(モノマー(A))は、少なくとも1種の炭素数2~20のオレフィンである。炭素数2~20のオレフィンは、鎖状オレフィンであっても環状オレフィンであってもよく、エチレンを含む炭素数2~20のα-オレフィン及び炭素数4~20の環状オレフィンからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0034】
本発明に用いられる炭素数2~20のα-オレフィンは、構造式:CH=CHRで表される炭素数2~20のα-オレフィン(ここでRは水素原子または炭素数1~18の炭化水素基であり、直鎖構造であっても分岐を有していてもよい)、より好ましくは、炭素数2~12のα-オレフィンである。
また、炭素数4~20の環状オレフィンは、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、ノルボルネン等が挙げられる。
【0035】
モノマー(A)の具体例としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、及びノルボルネン等が挙げられる。モノマー(A)としては、重合体の製造効率の点から、中でも、エチレン、プロピレン、1-ブテン、及びノルボルネンからなる群より選択される1種以上であることが好ましく、更に、エチレンであることが好ましい。
また、構造単位(A)は、1種単独であってもよいし、2種以上であってもよい。2種以上の組み合わせとしては、上記具体例のモノマー(A)の2種以上の組み合わせが挙げられる。より具体的には、2種の組み合わせとして、エチレン-1-ブテン、エチレン-1-ヘキセン、エチレン-1-オクテン、エチレン-ノルボルネンなどに由来する構造単位が挙げられる。3種の組み合わせとしては、エチレン-1-ブテン-1-ヘキセン、エチレン-1-ブテン-1-オクテンに由来する構造単位などが挙げられる。
【0036】
本発明においては、モノマー(A)としては、好ましくは、エチレンを必須で含み、必要に応じて1種以上の炭素数3~20のα-オレフィンをさらに含んでもよい。
モノマー(A)中のエチレンは、モノマー(A)全体100mol%に対して、65mol%~100mol%であってもよく、70mol%~100mol%であってもよい。
【0037】
(2)構造単位(B)
構造単位(B)は、下記一般式(1)で表されるモノマーの少なくとも1種に由来する構造単位である。
【0038】
【化12】
(式(1)中、
とRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ホルミル基、カルボキシ基、炭素数1~30のエステル基、炭素数1~30のアシルオキシ基、炭素数1~30のアシル基、炭素数1~30のアルコキシ基、炭素数6~30のアリールオキシ基、炭素数1~30のアルキルチオ基、炭素数6~30のアリールチオ基、ニトロ基、少なくとも1つの炭素数1~30の炭化水素基で置換されていてもよいアミノ基、少なくとも1つの炭素数1~30の炭化水素基で置換されていてもよいシリル基、少なくとも1つの炭素数1~30の炭化水素基で置換されていてもよいアミド基、少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている炭素数1~30の炭化水素基、又は、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい炭素数1~30の炭化水素基若しくは複素環基であるか、或いは、RとRは互いに結合して4~10員環の環を形成していてもよい。)
【0039】
一般式(1)中、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
一般式(1)中、炭素数1~30のエステル基は、-COORで示される1価の基であり、ここでRは、炭素数1~30の炭化水素基を示す。当該エステル基における炭素数は、カルボニル基の炭素数を含まず、前記Rにおける炭素数をいい、下限値が1以上であればよく、2以上であってもよく、上限値は30以下であればよく、20以下であってもよく、10以下であってもよい。
【0040】
における炭素数1~30の炭化水素基としては、例えば、直鎖、分岐、環状の飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、及びこれらの組み合わせが挙げられ、例えば、下記炭素数1~30のアルキル基の例の他、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基等のアルケニル基、フェニル基、メチルフェニル基、n-プロピルフェニル基、i-プロピルフェニル基、n-ブチルフェニル基、i-ブチルフェニル基、s-ブチルフェニル基、t-ブチルフェニル基、n-ヘキシルフェニル基、トリメチルフェニル基、ペンタメチルフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フルオレニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、ジフェニルメチル基、トリフェニルメチル基等のアラルキル基等を好適に挙げることができる。
【0041】
また、炭素数1~30のアルキル基としては、例えば、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、メチル基、エチル基、1-プロピル基、1-ブチル基、1-ペンチル基、1-ヘキシル基、1-ヘプチル基、1-オクチル基、1-ノニル基、1-デシル基、t-ブチル基、トリシクロヘキシルメチル基、イソプロピル基、1-ジメチルプロピル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、1,1-ジエチルプロピル基、イソブチル基、1,1-ジメチルブチル基、2-ペンチル基、3-ペンチル基、2-ヘキシル基、3-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、2-ヘプチル基、3-ヘプチル基、4-ヘプチル基、2-プロピルヘプチル基、2-オクチル基、3-ノニル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基、ノルボルニル基、等を好適に挙げることができる。
【0042】
当該炭化水素基は、更に置換基を有していてもよく、当該置換基としては、例えば、ハロゲン原子、エポキシ基、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていてもよいアミノ基、炭素数1~30のアルコキシ基、炭素数6~30のアリールオキシ基、水酸基等が挙げられる。なお、置換基に含まれる炭素数は、前記炭素数に含まれないものとする。
前記Rにおける炭化水素基は、中でも炭素数1~8の炭化水素基であることが好ましく、炭素数1~6の炭化水素基であることがより好ましく、炭素数1~6の無置換の炭化水素基であることがより更に好ましい。
【0043】
炭素数1~30のエステル基の具体例としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、t-ブトキシカルボニル基、シクロヘキシロキシカルボニル基、2-エチルヘキシロキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等を好適に挙げることができる。
【0044】
一般式(1)中、炭素数1~30のアシルオキシ基は、-OCORで示される1価の基であり、ここでRは、炭素数1~30の炭化水素基を示す。当該アシルオキシ基における炭素数は、カルボニル基の炭素数を含まず、前記Rにおける炭素数をいい、下限値が1以上であればよく、2以上であってもよく、上限値は30以下であればよく、20以下であってもよく、10以下であってもよい。
炭素数1~30の炭化水素基としては、前記Rと同様のものを挙げることができる。
炭素数1~30のアシルオキシ基の具体例としては、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等を好適に挙げることができる。
【0045】
一般式(1)中、炭素数1~30のアシル基は、-CORで表される示される1価の基であり、ここでRは、炭素数1~30の炭化水素基を示す。当該アシル基における炭素数は、カルボニル基の炭素数を含まず、前記Rにおける炭素数をいい、下限値が1以上であればよく、2以上であってもよく、上限値は30以下であればよく、20以下であってもよく、10以下であってもよい。
における炭素数1~30の炭化水素基は、前記Rと同様のものを挙げることができる。
炭素数1~30のアシル基の具体例としては、アセチル基、プロピオニル基、(メタ)アクリロイル基、ベンゾイル基等を好適に挙げることができる。
【0046】
一般式(1)中、炭素数1~30のアルコキシ基は、-ORで示される1価の基であり、ここでRは、炭素数1~30のアルキル基又は炭素数7~30のアラルキル基を示す。当該アルコキシ基における炭素数は、下限値が1以上であればよく、2以上であってもよく、上限値は30以下であればよく、20以下であってもよく、10以下であってもよい。
における炭素数1~30のアルキル基及び炭素数7~30のアラルキル基は、前記Rと同様のものを挙げることができる。
炭素数1~30のアルコキシ基の具体例としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基,i-ブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペントキシ基、n-ヘキソキシ基、シクロプロポキシ基、シクロペントキシ基、シクロヘキシロキシ基、n-オクトキシ基、n-デトキシ基、ベンジルオキシ基等を好適に挙げることができる。
また、炭素数6~30のアリールオキシ基は、-ORd’で示される1価の基であり、ここでRd’は、炭素数6~30のアリール基を示す。当該アリール基における炭素数は、下限値が6以上であればよく、8以上であってもよく、上限値は30以下であればよく、20以下であってもよく、12以下であってもよい。
d’における炭素数6~30のアリール基は、前記Rのうち、炭素数6~30のアリール基に相当するものを挙げることができる。
炭素数6~30のアリールオキシ基の具体例としては、例えば、フェノキシ基、メチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、ブチルフェノキシ基、ナフチルオキシ基、フルオレニルオキシ基、アントラセニルオキシ基等を挙げることができる。
【0047】
一般式(1)中、炭素数1~30のアルキルチオ基は、-SRで示される1価の基であり、ここでRは、炭素数1~30のアルキル基又は炭素数7~30のアラルキル基を示す。当該アルキルチオ基における炭素数は、下限値が1以上であればよく、2以上であってもよく、上限値は30以下であればよく、20以下であってもよく、10以下であってもよい。
における炭素数1~30のアルキル基及び炭素数7~30のアラルキル基としては、前記Rと同様のものを挙げることができる。
炭素数1~30のアルキルチオ基の具体例としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ、ベンジルチオ基等を好適に挙げることができる。
【0048】
また、炭素数6~30のアリールチオ基は、-SRe’で示される1価の基であり、ここでRe’は、炭素数6~30のアリール基を示す。当該アリール基における炭素数は、下限値が6以上であればよく、8以上であってもよく、上限値は30以下であればよく、20以下であってもよく、12以下であってもよい。
e’における炭素数6~30のアリール基は、前記Rのうち、炭素数6~30のアリール基に相当するものを挙げることができる。
炭素数6~30のアリールチオ基の具体例としては、例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等を挙げることができる。
【0049】
一般式(1)中、少なくとも1つの炭素数1~30の炭化水素基で置換されていてもよいアミノ基は、-N(R)Rで示される1価の基であり、ここでR及びRはそれぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1~30の炭化水素基を示す。当該置換アミノ基に置換される炭化水素基の炭素数は、下限値が1以上であればよく、2以上であってもよく、上限値は30以下であればよく、20以下であってもよく、10以下であってもよい。
及びRにおける炭素数1~30の炭化水素基は、前記Rと同様のものを挙げることができる。
炭素数1~30の炭化水素基で置換されていてもよいアミノ基の具体例としては、例えば、アミノ基(-NH)、モノメチルアミノ基、ジメチルアミノ基、モノエチルアミノ基、ジエチルアミノ基、モノイソプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、モノフェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基等を好適に挙げることができる。
【0050】
一般式(1)中、少なくとも1つの炭素数1~30の炭化水素基で置換されていてもよいシリル基は、-SiRで示される1価の基であり、ここでR、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1~30の炭化水素基を示す。当該シリル基に置換される炭化水素基の炭素数は、下限値が1以上であればよく、2以上であってもよく、上限値は30以下であればよく、20以下であってもよく、10以下であってもよい。
、R及びRにおける炭素数1~30の炭化水素基は、前記Rと同様のものを挙げることができる。
炭素数1~30の炭化水素基で置換されていてもよいシリル基の具体例としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基等を好適に挙げることができる。
【0051】
一般式(1)中、少なくとも1つの炭素数1~30の炭化水素基で置換されていてもよいアミド基は、-CONRまたは-NRCORで示される1価の基であり、ここでR及びRはそれぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1~30の炭化水素基を示す。当該置換アミド基に置換される炭化水素基の炭素数は、カルボニル基の炭素数を含まず、前記R及びRにおける炭素数をいい、下限値が1以上であればよく、2以上であってもよく、上限値は30以下であればよく、20以下であってもよく、10以下であってもよい。
及びRにおける炭素数1~30の炭化水素基は、前記Rと同様のものを挙げることができる。
炭素数1~30の炭化水素基で置換されていてもよいアミド基の具体例としては、例えば、-CONH、-CONH(CH)、-CON(CH、-CONH(C)、-CON(C、-CONH(i-C)、-CON(i-C、-CONH(Ph)、-CON(Ph)、-NHCOCH、-NHCOC等を好適に挙げることができる。なお、本明細書において、Phはフェニル基を示す。
【0052】
一般式(1)中、少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている炭素数1~30の炭化水素基(炭素数1~30のハロゲン置換炭化水素基)は、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子に置換された基である。当該炭素数1~30の炭化水素基は、前記Rと同様のものを挙げることができるが、中でも、アルキル基及びアリール基が入手の容易性の点から好ましい。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
当該炭素数1~30のハロゲン置換炭化水素基の炭素数は、下限値が1以上であればよく、2以上であってもよく、上限値は30以下であればよく、20以下であってもよく、10以下であってもよい。
炭素数1~30のハロゲン置換炭化水素基の具体例としては、例えば、メチル基の水素原子の1~3個がハロゲン原子で置換されているハロメチル基、クロロエチル基、γ-クロロプロピル基、3,3’,3”-トリフルオロプロピル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロフェニル基、ブロモフェニル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基、ジクロロフェニル基等が挙げられ、前記ハロメチル基としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、フルオロメチル基、ジクロロメチル基、トリフルオロメチル基等が挙げられる。
【0053】
一般式(1)中、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む置換基で置換されていてもよい炭素数1~30の炭化水素基における炭素数1~30の炭化水素基は、前記Rと同様のものを挙げることができる。酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む置換基で置換されていてもよい炭素数1~30の炭化水素基としては、中でも、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又はアラルキル基が、共重合体の製造効率の点から好ましい。
無置換の炭素数1~30の炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、1-プロピル基、1-ブチル基、1-ペンチル基、1-ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、t-ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、フェニル基等を好適に挙げることができる。
【0054】
一般式(1)中、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む置換基で置換されていてもよい複素環基における複素環の炭素数は、2以上が挙げられ、上限値は8以下であればよく、6以下であってもよく、5以下であってもよい。
当該複素環基の具体例としては、ピリジル基、フラニル基、チエニル基、オキサゾイル基、オキサゾリジニル基、イソキサゾリジニル基、チアゾリル基、ジヒドロフラニル基、テトラヒドロフラニル基等が挙げられる。
【0055】
酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む置換基としては、例えば、水酸基、ホルミル基、カルボキシ基、エポキシ基、炭素数1~30のエステル基、炭素数1~30のアシルオキシ基、炭素数1~30のアシル基、炭素数1~30のアルコキシ基、炭素数6~30のアリールオキシ基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていてもよいアミノ基、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていてもよいアミド基、炭素数1~30のアルキルチオ基、炭素数6~30のアリールチオ基、炭素数1~30のスルホニル基、炭素数1~30のスルホキシド基、炭素数1~30のスルホン酸エステル基等が挙げられる。
当該炭素数1~30のエステル基、炭素数1~30のアシルオキシ基、炭素数1~30のアシル基、炭素数1~30のアルコキシ基、炭素数6~30のアリールオキシ基、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていてもよいアミノ基、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていてもよいアミド基、炭素数1~30のアルキルチオ基、炭素数6~30のアリールチオ基は、前述と同様であってよい。
【0056】
前記炭素数1~30のスルホニル基は、-SOで示される1価の基であり、ここでRは炭素数1~30の炭化水素基を示す。当該スルホニル基の炭素数は、下限値が1以上であればよく、2以上であってもよく、上限値は30以下であればよく、20以下であってもよく、10以下であってもよい。
における炭素数1~30の炭化水素基は、前記Rと同様のものを挙げることができる。
炭素数1~30のスルホニル基の具体例としては、例えば、-SOCH、-SOPh等を好適に挙げることができる。
【0057】
前記炭素数1~30のスルホキシド基は、-SORで示される1価の基であり、ここでRは炭素数1~30の炭化水素基を示す。当該スルホキシド基の炭素数は、下限値が1以上であればよく、2以上であってもよく、上限値は30以下であればよく、20以下であってもよく、10以下であってもよい。
における炭素数1~30の炭化水素基は、前記Rと同様のものを挙げることができる。
炭素数1~30のスルホキシド基の具体例としては、例えば、-SOCH、-SOPh等を好適に挙げることができる。
【0058】
前記炭素数1~30のスルホン酸エステル基は、-OSOで示される1価の基であり、ここでRは炭素数1~30の炭化水素基を示す。当該スルホン酸エステル基の炭素数は、下限値が1以上であればよく、2以上であってもよく、上限値は30以下であればよく、20以下であってもよく、10以下であってもよい。
における炭素数1~30の炭化水素基は、前記Rと同様のものを挙げることができる。
炭素数1~30のスルホン酸エステル基の具体例としては、例えば、-OSOCH、-OSOPh等を好適に挙げることができる。
【0059】
前記酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む置換基としては、中でも、共重合体の製造効率の点から、水酸基、炭素数1~30のアルコキシ基、炭素数6~30のアリールオキシ基、炭素数1~30の炭化水素基で置換されていてもよいアミノ基、炭素数1~30のアルキルチオ基、及び炭素数6~30のアリールチオ基からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、炭素数1~30のアルコキシ基、炭素数6~30のアリールオキシ基、及び炭素数1~30の炭化水素基で置換されていてもよいアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
【0060】
一般式(1)中、RおよびRは、互いに結合して、RおよびRが結合している不飽和結合と共に4~10員環の環を形成していてもよく、5~6員環の環を形成していてもよい。RおよびRが互いに結合して形成される環は、炭素環または複素環であってよく、該炭素環または複素環は単環でも多環であってもよい。RおよびRは、互いに結合して飽和結合または不飽和結合を形成してよく、或いは、-CO-O-CO-基を形成していてもよく、非芳香環であってよい。
【0061】
前記構造単位(B)においては、極性基含有オレフィン共重合体の利用可能性が向上する点から、前記RとRの少なくとも1つは、水素原子とは異なる置換基であってもよく、ハロゲン原子、水酸基、ホルミル基、カルボキシ基、炭素数1~30のエステル基、炭素数1~30のアシルオキシ基、炭素数1~30のアシル基、炭素数1~30のアルコキシ基、炭素数6~30のアリールオキシ基、炭素数1~30のアルキルチオ基、炭素数6~30のアリールチオ基、ニトロ基、少なくとも1つの炭素数1~30の炭化水素基で置換されていてもよいアミノ基、少なくとも1つの炭素数1~30の炭化水素基で置換されていてもよいシリル基、少なくとも1つの炭素数1~30の炭化水素基で置換されていてもよいアミド基、少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている炭素数1~30の炭化水素基、又は、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい炭素数1~30の炭化水素基若しくは複素環基であるか、或いは、RとRは互いに結合して4~10員環の環を形成していてもよい。
なお、一般式(1)中のRとRは、同一であっても異なっていてもよい。
【0062】
一方で、前記構造単位(B)においては重合活性の点から、前記一般式(1)中の前記RとRの少なくとも1つが水素原子であってよく、前記RおよびRが、いずれも水素原子であってよい。
【0063】
構造単位(B)を誘導する少なくとも1種の前記一般式(1)で表されるモノマー(モノマー(B))としては、例えば以下のモノマーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0064】
【化13】
【0065】
前記モノマーは(B)、従来公知の製造方法を適宜組み合わせて製造することができる。R1とR2の少なくとも1つが水素原子とは異なる置換基である場合、例えば、銀触媒を用いたプロパルギルアルコールと二酸化炭素の環化反応、アシロインとホスゲンなどのカルボニル化剤を用いた反応を利用して置換基を導入できる。また、Synlett(2014),25,P1178-1180.、Tetrahedron Lett.(1972), 17,P1701-1704.、Adv. Synth.Catal.(2021),363,P5129-5137.を参考にすることでも置換基を導入できる。
前記一モノマー(B)としては、市販品を用いてもよい。
また、前記モノマー(B)としては、2種以上混合して用いてもよい。
【0066】
一般式(1)で表される少なくとも1種のモノマーに由来する構造単位(B)としては、下記一般式(I)で表される構造単位、又は、下記一般式(I)で表される構造単位および下記一般式(II)で表される構造単位を含むことが好ましい。
【0067】
【化14】
(式(I)及び式(II)中、RおよびRは、それぞれ独立して、前記と同様である。)
【0068】
さらに、構造単位(B)としては、ポリマー鎖末端に含まれるアルデヒド構造を含んでもよい。当該アルデヒド構造は、炭酸ビニレンの移動挿入後、β-カーボナート脱離、続いて脱炭酸、プロトン化が起こることにより生成されると推定される。アルデヒド構造の生成機構推定を以下に示す。以下のスキームにおいて、M及びQは後述する式(101)と同様である。
また構造単位(B)として、RおよびRの少なくとも一方が水素原子でない場合に、ポリマー鎖末端に含まれるケトン構造を含んでもよい。
【0069】
【化15】
【0070】
(3)構造単位(C)
構造単位(C)は、下記一般式(2)で表されるモノマーの少なくとも1種に由来する構造単位である。
【0071】
【化16】
(式(2)中、
は、水素原子、ハロゲン原子、少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている炭素数1~10の炭化水素基、または炭素数1~10の炭化水素基である。
は、水素原子、少なくとも1つの炭素数1~30の炭化水素基で置換されていてもよいシリル基、少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている炭素数1~30の炭化水素基、又は、酸素原子、硫黄原子若しくは窒素原子の少なくとも1種を含む少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい炭素数1~30の炭化水素基若しくは複素環基である。)
【0072】
式(2)中のRにおいて、ハロゲン原子は、前記式(1)において説明したハロゲン原子と同様のものを挙げることができる。少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている炭素数1~10の炭化水素基は、前記式(1)において説明した少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている炭素数1~30の炭化水素基のうち、炭素数1~10のものと同様のものを挙げることができる。また、炭素数1~10の炭化水素基は、前記式(1)において説明した炭素数1~30の炭化水素基のうち、炭素数1~10のものと同様のものを挙げることができる。
【0073】
式(2)中のRは、重合活性やコモノマー含有率の点から、水素原子、ハロゲン原子、または少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている炭素数1~3の炭化水素基、または炭素数1~3の炭化水素基であってよく、水素原子、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、またはメチル基であってよく、水素原子またはメチル基であってよく、水素原子であってもよい。
【0074】
式(2)中のRにおいて、少なくとも1つの炭素数1~30の炭化水素基で置換されていてもよいシリル基、少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている炭素数1~30の炭化水素基、又は、酸素原子、硫黄原子若しくは窒素原子の少なくとも1種を含む少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい炭素数1~30の炭化水素基若しくは複素環基は、それぞれ、前記式(1)において説明したものと同様のものを挙げることができる。
【0075】
式(2)中のRは、重合活性やコモノマー含有率の点から、水素原子、少なくとも1つの炭素数1~6の炭化水素基で置換されていてもよいシリル基、少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている炭素数1~6の炭化水素基、又は、酸素原子、硫黄原子若しくは窒素原子の少なくとも1種を含む少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい炭素数1~6の炭化水素基若しくは複素環基であってよく、炭素数1~6の炭化水素基であってよい。
【0076】
構造単位(C)を誘導する少なくとも1種の前記一般式(2)で表されるモノマー(モノマー(C))としては、例えば以下のモノマーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0077】
【化17】
【0078】
【化18】
【0079】
前記モノマー(C)は、従来公知の製造方法を適宜組み合わせて製造することができる。例えば、アセチレンに一酸化炭素を反応させて、メタノールを付加するレッペ法により合成できる。Rは一般的に、エステル交換反応により交換できる。また、Organometallics (2016), 35, P943-949.、J. Org. Chem. (1989),54, P1006-1012.、Tetrahedron Lett.(2018),59, P3279-3282.を参考にすることでも置換基を導入できる。
前記モノマー(C)としては、市販品を用いてもよい。
また、モノマー(C)としては、2種以上混合して用いてもよい。
【0080】
少なくとも1種の一般式(2)で表されるモノマーに由来する構造単位(C)としては、下記一般式(III)で表される少なくとも1種の構造単位を含むことが好ましい。
【0081】
【化19】
(式(III)中、R及びRは、前記と同様である。)
【0082】
(4)その他の構造単位
本発明の極性基含有オレフィン共重合体は、前記構造単位(A)、前記構造単位(B)及び前記単位構造(C)とは異なるその他の構造単位をさらに含んでいてもよい。その他の構造単位としては、例えば、酢酸ビニル、酢酸アリル、3-酢酸ブテニル、アクリロニトリル、3-シアノプロペン、ビニルエーテル等のその他の極性基含有モノマー由来の構造単位等が挙げられる。
【0083】
(5)極性基含有オレフィン共重合体
本発明の極性基含有オレフィン共重合体は、炭素数2~20のオレフィンの少なくとも1種に由来する構造単位(A)と、下記一般式(1)で表されるモノマーの少なくとも1種に由来する構造単位(B)と、下記一般式(2)で表されるモノマーの少なくとも1種に由来する構造単位(C)とを含むものである。
本発明の極性基含有オレフィン共重合体は、構造単位(A)、構造単位(B)及び単位構造(C)をそれぞれ1種以上含有し、合計3種以上のモノマーに由来する構造単位を含むことが必要である。
【0084】
本発明において、極性基含有オレフィン共重合体中の構造単位(A)の割合は、所望の物性に応じて適宜選択されればよいが、構造単位全体100mol%に対して、通常下限値が60.00mol%が挙げられ、70.00mol%であってもよく、80.00mol%であってもよく、90.00mol%であってもよく、95.00mol%であってもよく、96.00mol%であってもよく、97.00mol%であってもよく、98.00mol%であってもよい。一方、通常上限値は99.98mol%が挙げられ、99.95mol%であってもよく、99.92mol%であってもよく、99.90mol%であってもよく、99.80mol%であってもよく、99.60mol%であってもよく、99.50mo%であってもよく、99.20mo%であってもよく、99.00mo%であってもよく、98.20mol%であってもよい。
【0085】
極性基含有オレフィン共重合体中の構造単位(B)の割合は、平均分子量や所望の物性に応じて適宜選択されればよいが、構造単位全体100mol%に対して、通常下限値が0.01mol%が挙げられ、0.05mol%であってもよく、0.10mol%であってもよく、0.20mol%であってもよく、0.25mol%であってもよく,0.30mol%であってもよく、0.50mol%であってもよく、1.00mol%であってもよい。一方、通常上限値は10.00mol%が挙げられ、5.00mol%であってもよく、4.80mol%であってもよく、3.00mol%であってもよく、2.00mol%であってもよい。
【0086】
極性基含有オレフィン共重合体中の構造単位(C)の割合は、平均分子量や所望の物性に応じて適宜選択されればよいが、構造単位全体100mol%に対して、通常下限値が0.01mol%が挙げられ、0.05mol%であってもよく、0.10mol%であってもよく、0.25mol%であってもよく、0.50mol%であってもよく、0.80mol%であってもよい。一方、通常上限値は30.00mol%が挙げられ、20.00mol%であってもよく、15.00mol%であってもよく、10.00mol%であってもよく、5.00mol%であってもよく、4.50mol%であってもよく、2.50mol%であってもよく、2.00mol%以下であってもよい。
【0087】
各構造単位の組み合わせとしては、構造単位(A)は80.00~99.20mol%、構造単位(B)は0.30~10.00mol%、構造単位(C)は0.50~10.00mol%であってもよく、さらに、構造単位(A)は90.00~99.5mol%、構造単位(B)は0.25~5.00mol%、構造単位(C)は0.25~5.00mol%であってもよい。なお、さらに構造単位(A)は90.00~99.20mol%、構造単位(B)は0.30~5.00mol%、構造単位(C)は0.50~5.00mol%であってもよい。
【0088】
本発明の極性基含有オレフィン共重合体は、さらに、その他の構造単位を1種以上含むものであってもよい。
本発明の極性基含有オレフィン共重合体がその他の構造単位を含む場合、極性基含有オレフィン共重合体中のその他の構造単位の割合は、所望の物性に応じて適宜選択されればよいが、構造単位全体100mol%に対して、通常下限値は0.01mol%が挙げられ、0.05mol%であってもよく、0.10mol%であってもよく、0.50mol%であってもよい。一方、通常上限値は35.00mol%が挙げられ、30.00mol%であってもよく、20.00mol%であってもよく、10.00mol%であってもよい。
【0089】
なお、各モノマー1分子に由来する構造を、極性基含有オレフィン共重合体中の1構造単位と定義する。
そして、極性基含有オレフィン共重合体中の構造単位全体を100mol%とした時に各構造単位の比率をmol%で表したものが構造単位量である。
【0090】
本発明の極性基含有オレフィン共重合体では、構造単位(A)、構造単位(B)、構造単位(C)、及び必要に応じて含まれるその他の構造単位等のランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等が挙げられる。これらの中では、構造単位(B)及び構造単位(C)を多く含むことが可能なランダム共重合体であってよい。
【0091】
なお、構造単位量は、触媒の選択や、重合時に添加するモノマー(A)、モノマー(B)、モノマー(C)及びその他のモノマーの量、重合時の圧力や温度で制御することが可能である。共重合体中のモノマー(B)やモノマー(C)に由来する構造単位量を増加させる具体的手段としては、重合時に添加するモノマー(B)やモノマー(C)の量の増加、触媒の選択、重合時のオレフィン圧力の低減、重合温度の増加が有効である。例えば、これらの因子を調節して、目的とするコポリマー領域に制御することが求められる。
【0092】
本発明における極性基含有オレフィン共重合体中の構造単位量はH-NMRスペクトル及び13C-NMRスペクトルを用いて求められる。NMRスペクトルは、具体的には実施例に記載した方法によって測定することができる。
また、本発明における極性基含有オレフィン共重合体中に構造単位(B)や(C)等の極性基が含まれることは、IRスペクトルを解析することによっても確認できる。
【0093】
本発明における極性基含有オレフィン共重合体の重量平均分子量(Mw)は、通常1,000~2,000,000、好ましくは10,000~1,500,000、更に好ましくは10,000~1,000,000、好適なのは10,000~800,000、より好適なのは5,000~600,000の範囲である。Mwが下限値以上であると機械的強度や耐衝撃性などの物性が充分になりやすく、Mwが上限値以下であると溶融粘度の点から、成形加工しやすい。
【0094】
本発明における極性基含有オレフィン共重合体の数平均分子量(Mn)は、通常1,000~2,000,000、好ましくは3,000~1,500,000、更に好ましくは3,000~1,000,000、好適なのは3,000~800,000、より好適なのは3,000~600,000の範囲である。Mnが下限値以上であると機械的強度や耐衝撃性などの物性が充分になりやすく、Mnが上限値以下であると溶融粘度の点から、成形加工しやすい。
【0095】
本発明における極性基含有オレフィン共重合体のMwとMnの比(Mw/Mn)は、通常1.0~4.0、好ましくは1.3~3.5、更に好ましくは1.4~3.3の範囲である。Mw/Mnが1.0以上であれば成形を始めとして各種加工性が充分になりやすく、4.0以下であると機械物性が良好になりやすい。
また、本発明においてはMw/Mnを分子量分布パラメーターと表現することがある。
【0096】
本発明における重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)によって求められる。
本発明におけるGPCの測定は、具体的には実施例に記載した方法によって測定することができる。
【0097】
本発明の極性基含有オレフィン共重合体は、13C-NMRにより算出されるメチル分岐数が、炭素原子1,000個当たり50以下であることが好ましい。このうちで特に好ましくは、メチル分岐数が、炭素原子1,000個当たり5以下である。メチル分岐数がこの数値を満たすと弾性率が高く、成形体の機械強度も高くなる。
このメチル分岐数は、使用する遷移金属触媒の選択や、重合温度の調節で制御することが可能である。本発明の極性基含有オレフィン共重合体のメチル分岐数を低下させる具体的手段として、重合温度の低下が有効である。また、メチル分岐数を低下させるには、例えば、これらの因子を調節して、目的とするコポリマー領域に制御することが求められる。
【0098】
なお、メチル分岐数は、後述する実施例の[極性基含有オレフィン共重合体の構造]に記載した13C-NMRスペクトルを用いて、次のように算出する。13C-NMRスペクトルの20.0~19.8ppmのメチル炭素と、33.2~33.0ppmのメチン炭素と、37.5~37.3ppmのメチレン炭素と、による信号の積分強度の総和を4で割った値I(B1)を用いて、トータル1,000個の炭素原子(トータル1000C)あたりのメチル分岐数を、以下の式を用いて算出する。
【0099】
メチル分岐数(個/トータル1000C)=I(B1)×1000/I(トータル)
ここで、I(B1)、I(トータル)はそれぞれ、以下の式で示される量である。
(B1)=(I20.0~19.8+I33.2~33.0+I37.5~37.3)/4
(トータル)=I180.0~135.0+I120.0~2.0
なお、Iは積分強度を、Iの下つき添字の数値は化学シフトの範囲を示す。例えばI180.0~135.0は180.0ppmと135.0ppmの間に検出したシグナルの積分強度を示す。
【0100】
(6)極性基含有オレフィン共重合体の製造方法
(6-1)触媒
本発明の極性基含有オレフィン共重合体は、一段階の重合反応で、少なくとも1種の前記モノマー(B)及びモノマー(C)を、炭素数2以上のオレフィン重合体の主鎖に導入する観点、及び共重合体の分子構造を直鎖状とする観点から、遷移金属を含む触媒の存在下で重合してよい。
前記遷移金属を含む触媒としては、少なくとも1種の前記モノマー(B)及びモノマー(C)及びモノマー(A)と重合させることが可能なものであれば特に限定されないが、例えば、キレート性配位子を有する周期表第5~11族の遷移金属化合物が挙げられる。
【0101】
好ましい遷移金属の具体例として、バナジウム、ニオビウム、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、白金、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウム、銅などが挙げられる。これらの中で好ましくは、第8~11族の遷移金属であり、さらに好ましくは第10族遷移金属であり、当該第10族遷移金属としては、ニッケル、パラジウム、又は白金が挙げられ、特に好ましくはニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)である。これらの金属は、単一であっても複数を併用してもよい。
【0102】
キレート性配位子は、P、N、O、及びSからなる群より選択される少なくとも2個の原子を有しており、二座配位(bidentate)又は多座配位(multidentate)であるリガンドを含み、電子的に中性又は陰イオン性である。Brookhartらによる総説に、その構造が例示されている(Chem.Rev.,2000,100,1169)。
好ましくは、二座アニオン性P、O配位子として例えば、リンスルホナート、リンカルボキシラート、リンフェノキシド、リンアルコキシド、リンエノラートが挙げられ、他に、二座アニオン性N、O配位子として例えば、ピリジンカルボキシラートが挙げられ、他に、ジイミン配位子、ジフェノキシド配位子、ジアミド配位子が挙げられる。
【0103】
前記遷移金属を含む触媒としては、重合体の製造効率、重合体の分子量、並びに前記モノマー(A)と前記モノマー(B)及び前記モノマー(C)との共重合性の点から、第8族~10族遷移金属からなる群より選ばれる後周期遷移金属を含む触媒であることが好ましく、中でも、第10族遷移金属を含む触媒であることが好ましく、更に、第10族遷移金属を含む触媒であり、当該第10族遷移金属への配位点として一つ以上のリン原子を含むキレート配位子を有することが好ましい。
【0104】
前記遷移金属を含む触媒としては、重合体の製造効率、重合体の分子量、並びに前記モノマー(A)と前記モノマー(B)及び前記モノマー(C)との共重合性の点から、中でも、第10族遷移金属を含む触媒であり、下記一般式(101)で表される化合物の少なくとも1種であることが好ましい。
【0105】
【化20】
[一般式(101)中、
Mは、周期表第10族の金属原子を示す。
Qは、酸素原子、硫黄原子、-S(=O)-O-または-C(=O)-O-を示し、前記各基は左側がAに結合し、右側がMに結合している。
Aは、置換基を有していてもよい炭素数1~30の2価の炭化水素基を示す。
は、水素原子、ヘテロ原子を含有していてもよい炭素数1~20の炭化水素基またはMに配位したリガンドを示す。
Lは、Mに配位したリガンドを示す。
とRは、それぞれ独立に、水素原子またはヘテロ原子を含有していてもよい炭素数1~20の炭化水素基を表す。
とLおよびRとRは、環を形成してもよく、RとAまたはRとAは、環を形成してもよい。]
【0106】
一般式(101)中、Mは周期表第10族の金属原子を示し、中でも、Ni、またはPdであることが好ましい。
Qは、-S(=O)-O-、-C(=O)-O-、-O-、または-S-で示される2価の基を表し、Mに1電子配位する部位である。前記各基の左側がAに結合し、右側がMに結合している。Qは、これらの中でも触媒活性の面から、-S(=O)-O-または-O-が好ましく、-O-が特に好ましい。
【0107】
Aは、Qとリン原子を連結する炭素数1~30の2価の炭化水素基であって、置換基を有していてもよい。
炭素数1~30の2価の炭化水素基としては、炭素数1~20の2価の炭化水素基であってよく、好ましくはアルキレン基、アリーレン基、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
例えば、下記式(a-1)~(a-7)が挙げられる。(a-3)の-[C(R101-におけるnは1~3の整数であり、-[C(R101]-の繰り返し数を示す。下記式において、R101は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~20の炭化水素基、又は置換基を示す。複数のR101は隣接置換基同士が互いに連結し、脂環式環、芳香族環、または酸素原子、窒素原子および硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1つのヘテロ原子を含有する複素環を形成してもよい。このとき、環員数は5~8であり、該環上に置換基を有していてもよい。
【0108】
101における、炭素数1~20の炭化水素基は、前記一般式(1)のRのうち、炭素数1~20の炭化水素基と同様のものを挙げることができる。当該炭素数1~20の炭化水素基は、中でも炭素数1~15の炭化水素基が好ましく、炭素数1~10の炭化水素基が更に好ましい。
Aにおける炭素数1~30の2価の炭化水素基としては、中でも、触媒活性の面から、下記式(a-2)または下記式(a-7)であることが好ましい。
【0109】
【化21】
【0110】
Aにおける置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ORβ、COβ、COM’、CON(Rα、CORβ、OC(O)Rβ、SRβ、SOβ、SORβ、OSOβ、PO(ORβ2-y(Rα、CN、NHRβ、N(Rβ、Si(ORα3-x(Rα、OSi(ORα3-x(Rα、NO、SOM’、POM’、P(O)(ORβM’、またはエポキシ含有基等が挙げられる(ここで、Rαは、水素原子または炭素数1~20の炭化水素基を表し、Rβは、炭素数1~20の炭化水素基を表し、M’は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、4級アンモニウム又はホスホニウムを表し、xは0~3の整数を表し、yは0~2の整数を表す)。
ここでの炭素数1~20の炭化水素基は、前記一般式(1)のRのうち、炭素数1~20の炭化水素基と同様のものを挙げることができる。
【0111】
LはMに配位したリガンドを示す。Lは金属原子から脱離可能な0価の配位子であってよい。
Lは、電子供与性基を有し、金属原子Mに配位して金属錯体を安定化させることのできる化合物であることが好ましい。Lは、配位結合可能な原子として、酸素、窒素及び硫黄原子のうち少なくとも1種を有する炭素数1~20の炭化水素化合物、或いは、金属原子Mに配位可能な炭素-炭素不飽和結合を有する、ヘテロ原子を含有していてもよい炭化水素化合物も使用することができる。好ましくは、Lの炭素数は1~16であり、更に好ましくは1~10である。
【0112】
好ましいLとしては、環状不飽和炭化水素類、ホスフィン類、ピリジン類、ピペリジン類、アルキルエーテル類、アリールエーテル類、アルキルアリールエーテル類、環状エーテル類、アルキルニトリル誘導体、アリールニトリル誘導体、アルコール類、アミド類、脂肪族エステル類、芳香族エステル類、アミン類などを挙げることができる。
Lは、硫黄原子を有するものとしてジメチルスルホキシド(DMSO)が挙げられる。
窒素原子を有するものとして、アルキル基の炭素数1~10のトリアルキルアミン、アルキル基の炭素数1~10のジアルキルアミン、ピリジン、2-メチルピリジン(別名:ピコリン)、2,6-ジメチルピリジン(別名:2,6-ルチジン)、アニリン、2,6-ジメチルアニリン、2,6-ジイソプロピルアニリン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、4-(N,N-ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)、アセトニトリル、ベンゾニトリル、キノリン、2-メチルキノリンなどが挙げられる。酸素原子を有するものとして、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタンが挙げられる。錯体の安定性及び触媒活性の観点から、DMSO、ピリジン、ピコリン、2,6-ルチジン、TMEDAが好ましく、DMSO、ピコリン、2,6-ルチジンがより好ましい。
さらに好ましいLとしては、環状オレフィン類、ホスフィン類、ピリジン類、環状エーテル類、脂肪族エステル類、芳香族エステル類が挙げられ、より好ましいLとして、トリアルキルホスフィン、ピリジン、2,6-ルチジン、ピコリン、RβCOβ(Rβの定義は、前記の通り)を挙げることができる。
【0113】
本発明においてRは、水素原子、ヘテロ原子を含有していてもよい炭素数1~20の炭化水素基、またはMに配位したリガンドを表す。
が、Mに配位したリガンドである場合、前記Lと同様のものが挙げられるが、中性リガンドではなく、アニオン性リガンドであってよい。例えば、配位子と、遷移金属化合物としてニッケル(0)ビス(1,5-シクロオクタジエン)(Ni(cod))とが反応した場合、遷移金属化合物由来の配位子は、RとLが互いに結合して環を形成したσ、π-シクロオクタ-4-エニル基となる。
【0114】
本発明における重合反応は、MとRの結合に本発明におけるエチレン等のオレフィンまたはその共重合モノマーが挿入されることによって、開始されると考えられる。したがって、Rの炭素数が過度に多いと、この開始反応が阻害される傾向にある。このため、好ましいRとしては、置換基に含まれる炭素数を除く炭素数が1~16、さらに好ましくは当該炭素数が1~10である。
の具体的な例としては、ヒドリド基、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-デシル基、n-ドデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、フェニル基、p-メチルフェニル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリフェニルシリル基等を挙げることができる。
なお、RとLが互いに結合して環を形成してもよい。そのような例として、σ、π-シクロオクタ-4-エニル基、アセチルアセトナト基を挙げることができ、これも本発明における好ましい様態である。
【0115】
及びRは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~30の炭化水素基を示す。
及びRにおける炭素数1~30の炭化水素基は、前記一般式(1)のRと同様のものを挙げることができる。
及びRにおける置換基は、前記Aにおける置換基と同様であってよい。
【0116】
及びRは、金属原子Mの近傍にあって、立体的及び/又は電子的に金属原子Mに相互作用を及ぼす。こうした効果を及ぼすためには、RとRは嵩高い方が好ましい。
及びRの好ましい炭素数はそれぞれ独立に、3~30、より更に好ましくは6~20である。
【0117】
及びRは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数3~10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6~20のシクロアルキル基、または置換基を有していてもよい炭素数6~20のアリール基であることが好ましい。
【0118】
及びRにおける置換基を有していてもよい炭素数3~10のアルキル基としては、置換基を有していてもよい炭素数3~10の直鎖又は分岐アルキル基が挙げられる。当該置換基を有していてもよい炭素数3~10のアルキル基としては、例えば、1-プロピル基、1-ブチル基、1-ペンチル基、1-ヘキシル基、1-ヘプチル基、1-オクチル基、1-ノニル基、1-デシル基、i-プロピル基、1-ジメチルプロピル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、1,1-ジエチルプロピル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、1,1-ジメチルブチル基、2-ペンチル基、3-ペンチル基、2-ヘキシル基、3-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、2-ヘプチル基、3-ヘプチル基、4-ヘプチル基、2-プロピルヘプチル基、2-オクチル基、3-ノニル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、i-プロポキシメチル基、t-ブトキシメチル基等が挙げられる。
置換基を有していてもよい炭素数3~10のアルキル基としては、中でも、置換基を有していてもよい炭素数3~10の分岐アルキル基であってよく、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、またはt-ブチル基であってよい。
【0119】
及びRにおける置換基を有していてもよい炭素数6~20のシクロアルキル基としては、ヘテロ原子を含有していてもよい炭素数3~10の直鎖又は分岐アルキル基が置換されていてもよいシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、アダマンチル基等が挙げられる。
また、例えば特開2018-141138号公報の段落0104~0113に記載されているシクロアルキル基(特開2018-141138号公報の段落0104~0113におけるXは、本発明の一般式(101)においてP(リン原子)の結合位置を示す)であってもよい。
置換基を有していてもよい炭素数6~20のシクロアルキル基としては、中でも、炭素数3~10の直鎖又は分岐アルキル基が置換されているシクロヘキシル基、またはアダマンチル基であってよく、2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキシル基(メンチル基)またはアダマンチル基であってよい。
【0120】
及びRは、中でも、重合体分子量制御および極性モノマー共重合性制御の点から、置換基を有していてもよい炭素数6~20のアリール基であることがより好ましい。
【0121】
及びRにおける置換基を有していてもよい炭素数6~20のアリール基としては、ヘテロ原子を含有していてもよい炭素数3~10の直鎖又は分岐アルキル基が置換されていてもよいフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられる。当該炭素数6~20のアリール基は、炭素数3~6の分岐アルキル基、炭素数1~6の炭化水素基置換シリル基または酸素原子及び窒素原子の少なくとも1種を含む置換基を有していることが好ましく、酸素原子及び窒素原子の少なくとも1種を含む置換基を有していることがより好ましい。
当該炭素数6~20のアリール基が酸素原子及び窒素原子の少なくとも1種を含む置換基を有する場合、当該置換基は、アリール基においてリンに結合した炭素に対してオルト位に置換されていることが好ましい。このようにすることによって、R及びR中の酸素原子及び窒素原子の少なくとも1種が金属原子Mと相互作用を持つように空間的配置をとることができるからである。
【0122】
好ましいR及びRの具体例としては、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキシル基、アダマンチル基、フェニル基、2,6-ジメトキシフェニル基、2,4,6-トリメトキシフェニル基、2,6-ジt-ブチルフェニル基、2,4,6-トリt-ブチルフェニル基、2,6-ジトリメチルシリルフェニル基、4-メチル-2,6-ジメトキシフェニル基、4-t-ブチル-2,6-ジメトキシフェニル基、1,3-ジメトキシ-2-ナフチル基、2,6-ジエトキシフェニル基、2,4,6-トリエトキシフェニル基、4-メチル-2,6-ジエトキシフェニル基、4-t-ブチル-2,6-ジエトキシフェニル基、1,3-ジエトキシ-2-ナフチル基、2,6-ジフェノキシフェニル基、2,4,6-トリフェノキシフェニル基、4-メチル-2,6-ジフェノキシフェニル基、4-t-ブチル-2,6-ジフェノキシフェニル基、1,3-ジフェノキシ-2-ナフチル基、2,6-ジメトキシメチルフェニル基、2,4,6-トリメトキシメチルフェニル基、4-メチル-2,6-ジメトキシメチルフェニル基、4-t-ブチル-2,6-ジメトキシメチルフェニル基、1,3-ジメトキシメチル-2-ナフチル基、2,6-ジフェノキシメチルフェニル基、2,4,6-トリフェノキシメチルフェニル基、4-メチル-2,6-ジフェノキシメチルフェニル基、4-t-ブチル-2,6-ジフェノキシメチルフェニル基、1,3-ジフェノキシメチル-2-ナフチル基、2,6-ジ(2-メトキシエチル)フェニル基、2,4,6-トリ(2-メトキシエチル)フェニル基、4-メチル-2,6-ジ(2-メトキシエチル)フェニル基、4-t-ブチル-2,6-ジ(2-メトキシエチル)フェニル基、1,3-ジ(2-メトキシエチル)-2-ナフチル基、2,6-ジ(2-フェノキシエチル)フェニル基、2,4,6-トリ(2-フェノキシエチル)フェニル基、4-メチル-2,6-ジ(2-フェノキシエチル)フェニル基、4-t-ブチル-2,6-ジ(2-フェノキシエチル)フェニル基、1,3-ジ(2-フェノキシエチル)-2-ナフチル基、下記化学式で示される基などを挙げることができる。中でも、2,6-ジメトキシフェニル基であることが好ましい。
【0123】
【化22】
(化学式中、*は、リン原子に結合する位置を示す。)
【0124】
とRは、Aと結合して環構造を形成してもよい。具体的には例えば特開2018-141138号公報の段落0120~0121に記載されている構造(なお、ここでの例は、本発明で示すR又はRの一方に相当するR16とAが結合して環構造を形成している場合を示しており、PとQは本発明の一般式(101)と同義である。)が挙げられる。
【0125】
本発明の一般式(101)で表される化合物の中でも、下記一般式(102)で表される化合物、または、下記一般式(103)で表される化合物であることが、重合体の製造効率の点から好ましい。
【0126】
【化23】
(一般式(102)中、M、L、R、R及びRは、それぞれ前記一般式(101)と同義であり、R11、R12、R13及びR14はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~20の炭化水素基、又は置換基を示す。R11、R12、R13及びR14は隣接置換基同士が互いに連結し、脂環式環、芳香族環、または酸素原子、窒素原子および硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1つのヘテロ原子を含有する複素環を形成してもよい。このとき、環員数は5~8であり、該環上に置換基を有していてもよい。)
【0127】
一般式(102)中、R11、R12、R13及びR14における置換基を有していてもよい炭素数1~20の炭化水素基及び置換基は、前記Aに説明したR101と同様のものであってよい。
【0128】
中でも、R11は、嵩高い方が、高分子量の重合体を与える傾向にあり、置換基を有していてもよい炭素数1~20の炭化水素基、または置換基であることが好ましく、置換基を有していてもよい炭素数1~20の炭化水素基であることが好ましい。
11として用いられる置換基で置換されていてもよい炭素数1~30の炭化水素基としては、具体的には、メチル基、エチル基、1-プロピル基、i-プロピル基、1-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基、ノルボルニル基、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントラセニル基、フルオレニル基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、2,5-ジメチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、2-エチルフェニル基、3-エチルフェニル基、4-エチルフェニル基、2,3,4-トリメチルフェニル基、2,4,5-トリメチルフェニル基、3,4,5-トリメチルフェニル基、2-i-プロピルフェニル基、3-i-プロピルフェニル基、4-i-プロピルフェニル基、2-t-ブチルフェニル基、3-t-ブチルフェニル基、4-t-ブチルフェニル基、2,4-ジt-ブチルフェニル基、2,5-ジt-ブチルフェニル基、3,5-ジt-ブチルフェニル基、ペンタメチルフェニル基、ペンタフルオロフェニル基等が好適なものとして挙げられる。
【0129】
また、R11として用いられる置換基としては、具体的には、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、t-ブトキシ基、フェノキシ基、p-メチルフェノキシ基、p-メトキシフェノキシ基、エトキシカルボニル基、メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、i-プロピルチオ基、n-ブチルチオ基、t-ブチルチオ基、フェニルチオ基、シクロヘキシルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ-n-プロピルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、カルバゾリル基、ピペリジル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリメチルシリルオキシ基、トリメトキシシロキシ基等が好適なものとして挙げられる。
中でも、R11は、置換基を有していてもよい炭素数4~20の炭化水素基であってよい。
【0130】
前記一般式(102)で表される化合物として好適なものとしては、例えば下記化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
以降の化学式において、Phはフェニル基、DMPは2,6-ジメトキシフェニル基、iPrはイソプロピル基、t-Buはt-ブチル基、Adはアダマンチル基、Cyはシクロヘキシル基、Meはメチル基、TMSはトリメチルシリル基、pyはピリジンを表す。
【0131】
【化24】
【0132】
【化25】
(一般式(103)中、M、L、R、R及びRは、それぞれ前記一般式(101)と同義であり、R21、R22、R23及びR24はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~20の炭化水素基、又は置換基を示す。R21、R22、R23及びR24は複数の基が互いに連結し、脂環式環、芳香族環、または酸素原子、窒素原子および硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1つのヘテロ原子を含有する複素環を形成してもよい。このとき、環員数は5~8であり、該環上に置換基を有していてもよい。nは、0又は1であり、nが0のとき、Pは、O、R21およびR22が結合する炭素原子に直接結合する。)
【0133】
21及びR22は、少なくともいずれか一方が、置換基を有していてもよい炭素数1~20の炭化水素基、又は置換基であることが、立体制御によりオレフィンが反応する方向を制御することや連鎖移動の防止ができるため、好ましい。特に、少なくともR21またはR22の一方が、電子求引性基であると、オレフィン重合触媒としての性能がより向上するため好ましい。
電子求引性基としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロフェニル基、メトキシカルボニル基等が好適に用いられる。
【0134】
また、R21、R22、R23及びR24は複数の基が互いに連結し、脂環式環、芳香族環、または酸素原子、窒素原子および硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1つのヘテロ原子を含有する複素環を形成している場合、1つの環員数は5~8であるが、さらに2つ以上の環が縮合環を形成していてもよい。
【0135】
前記一般式(103)で表される化合物として好適なものとしては、例えば下記化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0136】
【化26】
【0137】
【化27】
【0138】
また、前記一般式(103)で表される化合物として好適なものとしては、例えば下記化合物と、Ni(cod)又はNi(acac)との反応により得られる遷移金属錯体も挙げられる。
【0139】
【化28】
【0140】
本発明に用いられる遷移金属錯体は、従来公知の方法で調製することができる。
また、本発明に用いられる遷移金属を含む触媒は、前記の遷移金属錯体を主要な触媒成分とするものであり、必要により、活性化剤、担体などを併用することができる。
【0141】
Al(R31(OR31(3-(s+t))
一般式中、R31は、それぞれ独立して、炭素数1~20の炭化水素基、Xは、水素原子、ハロゲン原子、又はシロキシ基を示し、s及びtはそれぞれ独立して0以上3以下の数を示し、s及びtのいずれかが0より大きく、s+tは3以下である。
31は、炭素数1~20の炭化水素基であるが、好ましくは1~12のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基などが挙げられる。
中でも、良好な助触媒である点から、s又はtが3である有機アルミニウム化合物であることが好ましい。
前記一般式で表される有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリイソブトキシアルミニウム、トリ-sec-ブトキシアルミニウム、トリ-tert-ブトキシアルミニウムなどのトリアルコキシアルミニウム、ジエチルアルミニウムモノクロライド、ジエチルアルミニウムモノメトキシドなどのハロゲン又はアルコキシ含有アルキルアルミニウムが挙げられ、中でもトリアルキルアルミニウムまたはトリアルコキシアルミニウムが好ましく、トリアルコキシアルミニウムが好ましい。
トリアルキルアルミニウムのアルキル基としては、前述と同様であってよく、中でもメチル基、イソブチル基、n-オクチル基が好ましく、これらの中では、トリイソブチルアルミニウムまたはトリ-n-オクチルアルミニウムが好ましい。
トリアルコキシアルミニウムのアルコキシ基としては、前述と同様であってよく、中でもメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基が好ましく、これらの中では、トリイソプロポキシアルミニウム、トリイソブトキシアルミニウム、トリsec-ブトキシアルミニウム、トリtert-ブトキシアルミニウムが好ましい。
【0142】
また、担体としては、本発明の主旨をそこなわない限りにおいて、任意の担体を用いることができる。一般に、無機酸化物やポリマー担体が好適に使用できる。
具体的には、SiO、Al、MgO、ZrO、TiO、B、CaO、ZnO、BaO、ThOなど又はこれらの混合物が挙げられ、SiO-Al、SiO-V、SiO-TiO、SiO-MgO、SiO-Crなどの混合酸化物も使用することができ、無機ケイ酸塩、ポリエチレン担体、ポリプロピレン担体、ポリスチレン担体、ポリアクリル酸担体、ポリメタクリル酸担体、ポリアクリル酸エステル担体、ポリエステル担体、ポリアミド担体、ポリイミド担体などが使用可能である。これらの担体については、粒径、粒径分布、細孔容積、比表面積などに特に制限はなく、任意のものが使用可能である。
【0143】
(6-2)極性基含有オレフィン共重合体の重合方法:
本発明における極性基含有オレフィン共重合体の重合方法は限定されない。
媒体中に全ての生成重合体が溶解する溶液重合、媒体中で少なくとも一部の生成重合体がスラリーとなるスラリー重合、液化したモノマー自身を媒体とするバルク重合、又は、高温高圧で液化したモノマーに生成重合体の少なくとも一部が溶解する高圧イオン重合などが用いられる。
重合形式としては、バッチ重合、セミバッチ重合、連続重合のいずれの形式でもよい。
具体的な製造プロセス及び条件については、例えば、特開2010-260913号公報、特開2010-202647号公報に開示されている。
【0144】
未反応モノマーや媒体は、生成重合体から分離し、リサイクルして使用してもよい。リサイクルの際、これらのモノマーや媒体は、精製して再使用してもよいし、精製せずに再使用してもよい。生成重合体と未反応モノマー及び媒体との分離には、従来の公知の方法が使用できる。例えば、濾過、遠心分離、溶媒抽出、貧溶媒を使用した再沈などの方法が使用できる。
【0145】
共重合温度、共重合圧力及び共重合時間に特に制限はないが、通常は、以下の範囲から生産性やプロセスの能力を考慮して、最適な設定を行うことができる。
即ち、共重合温度は、通常-20℃~290℃、好ましくは0℃~250℃、より好ましくは0℃~200℃、さらに好ましくは10℃~150℃、特に好ましくは20℃~100℃である。共重合圧力は、0.1MPa~100MPa、好ましくは、0.3MPa~90MPa、より好ましくは0.5MPa~80MPa、さらに好ましくは1.0MPa~70MPa、特に好ましくは1.3MPa~60MPaである。共重合時間は、0.1分~50時間、好ましくは、0.5分~40時間、更に好ましくは1分~30時間の範囲から選ぶことができる。
本発明において、重合は、一般に不活性ガス雰囲気下で行われる。例えば、窒素、アルゴン雰囲気が使用でき、窒素雰囲気が好ましく使用される。
【0146】
重合反応器への触媒とモノマーの供給に関しても特に制限はなく、目的に応じて様々な供給法をとることができる。例えばバッチ重合の場合、予め所定量のモノマーを共重合反応器に供給しておき、そこに触媒を供給する手法をとることが可能である。この場合、追加のモノマーや追加の触媒を共重合反応器に供給してもよい。また、連続重合の場合、所定量のモノマーと触媒を共重合反応器に連続的に、又は間歇的に供給し、共重合反応を連続的に行う手法をとることができる。
【0147】
共重合体の組成の制御に関しては、モノマーの供給比率を変えることによって制御する方法を一般に用いることができる。その他、触媒の構造の違いによるモノマー反応性比の違いを利用して共重合組成を制御する方法や、モノマー反応性比の重合温度依存性を利用して共重合組成を制御する方法が挙げられる。
共重合体の分子量制御には、従来公知の方法を使用することができる。即ち、重合温度を制御して分子量を制御する方法、モノマー濃度を制御して分子量を制御する方法、遷移金属錯体中の配位子構造の制御により分子量を制御するなどが挙げられる。
【実施例0148】
次に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限りこれらの実施例によって制約を受けるものではない。なお、極性基含有オレフィン共重合体等の物性等は、以下の方法で測定した。
【0149】
[極性基含有オレフィン共重合体の構造]
(1)H-NMR及び13C-NMR解析
一般式(I)と一般式(II)の類似化合物のH-NMR及び13C-NMRスペクトル(国立研究開発法人産業技術総合研究所が提供するスペクトルデータベース)を参考にNMRスペクトルを帰属し、極性基含有オレフィン共重合体の構造を決定した。
一般式(I)の類似構造として炭酸ジエチル(δH=4.2ppm付近、δ13C=64ppm付近)、一般式(II)の類似構造として2,3-ブタンジオール(δH=3.8ppm付近、δ13C=71ppm付近)の化学シフト値と同等の位置にシグナルが検出することを2次元NMRで検証した。
一般式(III)の構造は、δH=2.3ppmとδ13C=47ppmの化学シフト値にシグナルが検出することを、2次元NMRおよびDEPT135-NMRにより確認した。
[測定条件]
試料200mgを溶媒(o-ジクロロベンゼン/重水素化臭化ベンゼン(CBr))2.4mLおよび化学シフトの基準物質であるヘキサメチルジシロキサンと共に内径10mmφのNMR試料管に入れ、150℃のブロックヒーターで均一に溶解した。
【0150】
H-NMR)
装置:ブルカー・バイオスピン(株)のAV400型NMR装置
プローブ:10mmφのクライオプローブ
試料温度:120℃
パルス角:4.5°
パルス間隔:2秒
積算回数:512回
化学シフト:化学シフトはヘキサメチルジシロキサンのプロトンシグナルを0.09ppmに設定し、他のプロトンによるシグナルの化学シフトはこれを基準とする。
13C-NMR)
装置:ブルカー・バイオスピン(株)のAV400型NMR装置
プローブ:10mmφのクライオプローブ
試料温度:120℃
パルス角:90°
パルス間隔:51.5秒
積算回数:512回
デカップリング条件:逆ゲートデカップリング法
化学シフト:化学シフトはヘキサメチルジシロキサンの13Cシグナルを1.98ppmに設定し、他の13Cによるシグナルの化学シフトはこれを基準とした。
(DEPT135-NMR)
試料温度:120℃
パルス角:90℃
取り込み時間:2.9秒
待ち時間:3秒
積算回数:128回
【0151】
(1H-DOSY)
装置:ブルカー・バイオスピン(株)のAV400型NMR装置
プローブ:10mmφのクライオプローブ
試料温度:120℃
積算回数:32回
F2軸のデータポイント:25208
F1軸のデータポイント:2
(2次元-NMR:HSQC)
装置:ブルカー・バイオスピン(株)のAV400型NMR装置
プローブ:10mmφのクライオプローブ
試料温度:120℃
積算回数:128-256回
F2軸のデータポイント:1024
F1軸のデータポイント:50-64
【0152】
<極性基含有モノマー含量の算出方法>
(エチレン(E)と炭酸ビニレン(VC)とアクリル酸t-ブチル(tBA)共重合体) 13C-NMRスペクトルを用いて、以下の式から各モノマー含量を算出した。VCcは一般式(I)で表される構造単位を、VCoは一般式(II)で表される構造単位を表す。
VC量(mol%)=I(VC)×100/[I(VC)+I(VC)+I(tBA)+I(E)〕
tBA量(mol%)=I(tBA)×100/[I(VC)+I(VC)+I(tBA)+I(E)〕
ここで、I(VC)、I(VC)、I(tBA)、I(E)はそれぞれ、以下の式で示される量である。
I(VC)=(I79.5~79.8)/2
I(VC)=(I74.5~75.5)/2
I(tBA)=I79.1~79.5
I(E)=(I2.0~120.0+I135.0~200.0-I(VC)×3-I(VC)×2-I(tBA)×7)/2
Iは積分強度を、Iの下つき添字の数値は化学シフトの範囲を示す。例えばI2.0~120.0は2.0ppmと120.0ppmの間に検出したシグナルの積分強度を示す。
【0153】
VCに関してはH-NMRスペクトルを用いて、以下の式から計算した。Alはアルデヒド構造を指す。
VC量(mol%)=I(VC)×100/[I(VC)+I(VC)+I(tBA)+I(E)〕
ここで、I(Al)、I(VC)、I(VC)、I(tBA)、I(E)はそれぞれ、以下の式で示される量である。
(Al)=IH、9.5~9.7
(VC)=(IH、4.2~4.7)/2
(VC)=(IH、3.3~3.7)/2
(tBA)=IH、2.1~2.5
(E)=(IH、0.1~6.0-I(VC)×2-I(VC)×2-I(tBA)×12)/4
ただし、I(VC)に係るIH、3.3~3.7において当該化学シフト範囲内に不純物シグナルが存在する場合、IH、3.3~3.7から不純物に由来するピークの積分値を引いた値を使用した。不純物シグナルは、HSQCスペクトルにおいて、VC由来の炭素原子-水素原子の相関(C-H相関)ピークと同じF1かつ異なるF2の値を持つC-H相関ピークが存在することにより確認した。
H-NMRスペクトルの積分強度を示す。Hの読点の右側の数字は、化学シフトの範囲を示す。例えばIH、0.1~6.0は、0.1ppmと6.0ppmの間に検出したシグナルの積分強度を示す。
【0154】
<アルデヒド(Al)構造の算出方法>
H-NMRスペクトルを用いて以下の式からアルデヒド含量(Al量)を算出した。
Al量(mol%)=I(Al)×100/(I(VC)+I(VC)+I(tBA)+I(E)+I(Al))
【0155】
(エチレン(E)と炭酸ビニレン(VC)とアクリル酸メチル(MA)共重合体)
13C-NMRスペクトルを用いて、以下の式からMA含量を算出した。
MA量(mol%)=I(MA)×100/(I(E’)+I(MA)+I(VC)+I(VC))
VC量(mol%)=I(VC)×100/(I(E’)+I(MA)+I(VC)+I(VC))
VC量(mol%)=I(VC)×100/(I(E’)+I(MA)+I(VC)+I(VC))
ここで、I(MA)、I(E’)はそれぞれ、以下の式で示される量である。
I(MA)=I50.4~51.0
I(E’)=((I2.0~120.0+I135.0~200.0 -I(MA)×4-I(VC)×3-I(VC)×2)/2
【0156】
<アルデヒド(Al)構造の算出方法>
H-NMRスペクトルを用いて以下の式からアルデヒド含量(Al量)を算出した。
Al量(mol%)=I(Al)×100/(I(VC)+I(VC)+I(MA)+I(E’)+I(Al))
ここで、I(MA)、I(E’)はそれぞれ、以下の式で示される量である。
(MA)=(IH、3.2~3.8)/3
(E’)=(IH、0.1~6.0-I(VC)×2-I(MA)×6)/4
【0157】
<エチレン含量の算出方法>
エチレン含量は、重合体全体を100mol%とし、上記極性基含有コモノマーの含量を除した値として求めた。
(エチレン(E)と炭酸ビニレン(VC)とアクリル酸t-ブチル(tBA)共重合体)
エチレン量(mol%)=100-(VC量+VC量+tBA量+Al量)
(エチレン(E)と炭酸ビニレン(VC)とアクリル酸メチル(MA)共重合体)
エチレン量(mol%)=100-(VC量+VC量+MA量+Al量)
【0158】
(2)数平均分子量及び重量平均分子量
数平均分子量および重量平均分子量は、ポリスチレンを分子量の標準物質とするサイズ排除クロマトグラフィーにより算出した。GPCの具体的な測定手法は以下の通りである。
装置:Agilent Technologies社製 PL-GPC 220
検出器:IR検出器
カラム:レゾナック製AT-806MS(3本直列)
移動相溶媒:オルトジクロロベンゼン(ODCB)
測定温度:140℃
流速:1.0mL/min
注入量:0.3mL
[試料の調製]
極性基含有オレフィン共重合体は0.24mg/mLのTMP(2,4,6-トリメチルフェノール)を含むODCBを用いて1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。
GPC測定で得られた保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレン(PS)による検量線を用いて行う。使用する標準ポリスチレンは、何れも東ソー(株)製の次の銘柄である。F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000。各々が0.5mg/mLとなるようにエチレン(共)重合体用には0.24mg/mLのTMPを含むODCBに溶解した溶液を0.3mL注入して較正曲線を作成する。較正曲線は、最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。なお、分子量への換算に使用する粘度式[η]=K×Mαは、以下の数値を用いる。
PS:K=1.38×10-4、α=0.700
PP:K=1.03×10-4、α=0.780
PE:K=3.92×10-4、α=0.733
【0159】
(合成例1:AL-16の合成)
シュレンク管にビス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスフィンボランを535mg(1.67mmol)量り取り、テトラヒドロフランを21mL加えた。-78℃に冷やした後、ノルマルブチルリチウムを1.2mL(1.84mmol)ゆっくりと滴下した。
滴下終了後、室温で2時間15分撹拌させた。その後0℃に冷やしてから、テトラヒドロフラン5.4mLに溶解させた2,2-ビス(トリフルオロメチル)オキシラン0.18mL(1.67mmol)をゆっくり加えた。室温で1時間40分撹拌した後、溶媒を完全に留去し残留物をヘキサン10mLで2回洗浄した。洗浄後、溶媒を完全に留去してからテトラヒドロフランを16mL加えた。0℃に冷やした後、塩酸エーテル溶液を1.0mL(2.00mmol)ゆっくりと滴下した。室温で30分撹拌させた後、脱気した水を15mL加え有機層を抽出した。水層にエーテルを8mL加え有機層を抽出する操作を3回繰り返した。集めた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、ガラスフィルターを用いて硫酸ナトリウムを除去した。回収した溶液を完全に乾固し、722mg(1.44mmol)の残留物を得た。
上記の残留物にトルエンを14mL加えた。そこに、トルエン7mLに溶解させた1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン194mg(1.73mmol)を加え、60℃に昇温してから2時間撹拌した。撹拌後、溶媒を完全に留去してからヘキサン:アセトン=2:1の溶媒を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。精製後、テトラヒドロフラン2mLとヘキサン8mLで再結晶することで471mgの固体を得た。31P{H}-NMRから求めた純度は97%であった。
【0160】
H-NMR(400MHz、CDCl)δ:7.22(t、J=8.4、2H)、6.49(dd、J=8.4、3.0Hz、4H)、5.25(d、J=5.8Hz、1H)、3.68(s、12H)、3.19(s、2H)
19F-NMR(376MHz、CDCl)δ:-77.3(d、J=17.5Hz)31P{H}-NMR(162MHz、CDCl)δ:-62.0(septet、J=20.0Hz)
【0161】
【化29】
【0162】
[合成例2](B27-DM)
国際公開第2010/050256号に記載された合成例4に従い、下記の2-ビス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスファノ-6-ペンタフルオロフェニルフェノール配位子(B-27DM)を使用した。
【0163】
【化30】
【0164】
[合成例3](AL-40)
(1)2,2,6,6-テトラメチルベンゾ[1,2-d:5,4-d’]ビス([1,3]ジオキソール)の合成
Bioorg.Med.Chem.Lett.2014,24,2379-2382.の記述に従って下記化学式の化合物を合成した。
【0165】
【化31】
【0166】
(2)ビス(2,2,6,6-テトラメチルベンゾ[1,2-d:5,4-d’]ビス([1,3]ジオキソール)-4-イル)クロロホスフィンの合成
2,2,6,6-テトラメチルベンゾ[1,2-d:5,4-d’]ビス([1,3]ジオキソール)(5g,22.5mmol,1eq)を50mLのテトラヒドロフランに溶解させた。生じた溶液を0℃に冷やし、n-BuLi(24.8mmol,1.1eq)をゆっくりと加えて混合物を20℃で2.5時間攪拌して黄色の溶液を得た。この溶液を-78℃に冷やし、PCl(1.39g、10.1mmol,0.45eq)を一挙に加えた。当該混合物を20℃に昇温してから、1.5時間攪拌して黄色の懸濁液を得た。この懸濁液を乾固させ、5.72gの黄色の粘性のある目的物を含む混合物を得た。得られた混合物は精製せずに次の合成に用いた。
31P{H} NMR(162MHz、CDCl)δ:46.3(積分比100%)
【0167】
【化32】
【0168】
(3)ビス(2,2,6,6-テトラメチルベンゾ[1,2-d:5,4-d’]ビス([1,3]ジオキソール)-4-イル)ホスフィンの合成
ビス(2,2,6,6-テトラメチルベンゾ[1,2-d:5,4-d’]ビス([1,3]ジオキソール)-4-イル)クロロホスフィン(5.72g,11.2mmol,1eq)を50mLのテトラヒドロフランに溶解させた。生じた溶液を0℃に冷やし、水素化アルミニウムリチウム(0.64g,16.9mmol,1.5eq)を加えて混合物を20℃で12時間攪拌し、無色の懸濁液を得た。生じた懸濁液を0℃に冷やし、0.6mLの水、0.6mLの10%水酸化ナトリウム水溶液、1.8mLの水の順に加えて、生じた混合物を室温で30分攪拌して反応を停止させた。混合物を濾過し、ろ液を蒸発乾固して無色の固体を得た。続いて、得られた固体に30mLの水を加え、生成物をジクロロメタン30mLで3回抽出した。集めた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、固体をろ別し、ろ液を濃縮して黄色の粗生成物を得た。粗生成物を大気下でシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:石油エーテル/酢酸エチル=20/1)により精製し、10mLのヘキサンで洗浄した後、蒸発乾固させることで3.1g(6.5mmol、58%)の目的化合物を無色の固体として得た。
H NMR(400MHz、CDCl)δ:6.26(s,2H),5.15(d,J=235Hz,1H),1.57(s,24H)
31P{H} NMR(162MHz、CDCl)δ:-126.8(s)
【0169】
【化33】
(4)AL-40の合成
シュレンク管にビス(2,2,6,6-テトラメチルベンゾ[1,2-d:5,4-d’]ビス([1,3]ジオキソール)-4-イル)ホスフィンを400mg(0.84mmol)量り取り、テトラヒドロフランを11mL加えた。生じた溶液を-78℃に冷やした後、n-BuLiを0.58mL(0.92mmol)ゆっくりと滴下した。滴下終了後、当該混合物を-78℃で1時間撹拌させた。その後当該混合物を0℃に昇温してから、テトラヒドロフラン2.8mLに溶解させた2,2-ビス(トリフルオロメチル)オキシラン92μL(0.84mmol)をゆっくり加えた。当該混合物を室温で1時間撹拌した後、溶媒を留去した。残留物に、テトラヒドロフランを14mL加えてから0℃に冷やした後、塩酸エーテル溶液を1.0mL(1.0mmol)ゆっくりと滴下した。当該混合物を0℃で1時間撹拌させた後、大気下で水を8mL加えて洗浄し、有機層を分離した。水層にジエチルエーテルを4mL加え有機層を抽出する操作を3回繰り返した。集めた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、濾過により硫酸ナトリウムを除去した。ろ液を蒸発乾固し、得られた固体を大気下でシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/アセトン=10/1)により精製し、242mgの固体を得た。
31P NMRから求めたAL-40の純度は、99%以上であった。
H NMR(400MHz、CDCl)δ:6.30(s、2H)、4.76(d、J=3.4Hz、1H)、3.25(brs、2H)、1.58(s、12H)、1.55(s、12H)
19F NMR(376MHz、CDCl)δ:-77.0(d、J=22.0Hz)31P{H} NMR(162MHz、CDCl)δ:-62.1(septet、J=22.9Hz)
【0170】
【化34】
【0171】
以下の操作は全て窒素雰囲気下で行った。
(実施例1)
(1)触媒溶液の調製
50mLフラスコに、Ni(cod)(東京化成工業社製、純度>97.0%)を10.8mg(39.3μmol)量り取り、8mLのトルエンに溶解させた。また、別のフラスコに12.1mg(24.9μmol)の合成例1で得られたAL-16を量り取った。Ni(cod)のトルエン溶液を5mL量り取り、この溶液をAL-16の入ったフラスコに加えた。生じた溶液を40℃の水浴で温め、15分間撹拌して触媒溶液を得た。
(2)極性基含有オレフィン共重合体の製造
触媒シリンダー及びキラーフィーダーを有する0.2Lのオートクレーブにトルエンを74mL、炭酸ビニレン(VC、Aldrich社製、99.5%,acid<200ppm,HO<100ppm)を1.72g(20.0mmol)、アクリル酸t-ブチル(tBA)を0.6mL(4.2mmol)、トリイソプロポキシアルミニウム(Al(OPr))のトルエン溶液(0.1M)を0.5mL加え、90℃に昇温した。ここに高圧窒素を加えて0.5MPaにして、エチレンを2.5MPa加えた。触媒シリンダーに1mLの触媒溶液を加え、高圧窒素で触媒をオートクレーブに圧入し、この時点を反応開始時刻とした。さらに反応開始5分後に1mL、10分後に2mLの上記触媒溶液を触媒シリンダーから圧入した。上記触媒溶液の3回の圧入後は、毎回3mLのトルエンで触媒シリンダーを洗浄し、洗浄液をオートクレーブに圧入した。反応開始30分後に、1mLの重酢酸のトルエン溶液(2M)をキラーフィーダーから圧入して反応を停止し、キラーフィーダーを3mLのトルエンで洗浄した後、洗浄液を圧入し、エチレンを脱圧した。オートクレーブの内温を室温まで冷却後、アセトンを100mL加えた。析出した固体を、濾過により回収し、固体を100mLのアセトンで2回洗浄後、減圧乾燥した。得られた極性基含有オレフィン共重合体1は0.23gであった。
【0172】
(実施例2)
(1)触媒溶液の調製
50mLフラスコに、Ni(cod)を10.8mg(39.3μmol)量り取り、8mLのトルエンに溶解させた。また、別のフラスコに合成例2から得られたB-27DMを16.8mg(29.8μmol)量り取った。Ni(cod)のトルエン溶液を6mL量り取り、この溶液をB-27DMの入ったフラスコに加えた。生じた溶液を40℃の水浴で温め、15分間撹拌して触媒溶液を得た。
【0173】
(2)極性基含有オレフィン共重合体の製造
実施例1と同様の0.2Lのオートクレーブにトルエンを74mL、VCを1.76g(20.5mmol)、tBAを0.6mL(4.2mmol)、Al(OPr)のトルエン溶液(0.1M)0.5mLを加え、90℃に昇温した。ここに高圧窒素を加えて0.5MPaにして、エチレンを2.5MPa加えた。
触媒シリンダーに2mLの触媒溶液を加え、高圧窒素で触媒をオートクレーブに圧入し、この時点を反応開始時刻とした。その後、3mLのトルエンで触媒シリンダーを洗浄し、洗浄液をオートクレーブに圧入した。反応開始30分後に、1mLの重酢酸のトルエン溶液(2M)をキラーフィーダーから圧入して反応を停止し、キラーフィーダーを3mLのトルエンで洗浄した後、洗浄液を圧入し、エチレンを脱圧した。オートクレーブの内温を室温まで冷却後、アセトン100mLを加えた。析出した固体を、濾過により回収し、固体を100mLのアセトンで2回洗浄後、減圧乾燥した。得られた極性基含有オレフィン共重合体2は0.96gであった。
【0174】
(実施例3)
(1)触媒溶液の調製
50mLフラスコに、Ni(cod)を27.7mg(101μmol)量り取り、10mLのトルエンに溶解させた。また、別のフラスコに合成例2から得られたB-27DMを45.2mg(80.0μmol)量り取った。Ni(cod)のトルエン溶液を8mL量り取り、この溶液をB-27DMの入ったフラスコに加えた。生じた溶液を40℃の水浴で温め、15分間撹拌して触媒溶液を得た。
【0175】
(2)極性基含有オレフィン共重合体の製造
実施例1と同様の0.2Lのオートクレーブにトルエンを62mL、VCを11.3g(132.0mmol)、tBAを2.20mL(15.3mmol)、Al(OPr)のトルエン溶液(0.1M)2mLを加え、90℃に昇温した。ここに高圧窒素を加えて0.5MPaにして、エチレンを2.5MPa加えた。
触媒シリンダーに3mLの触媒溶液を加え、高圧窒素で触媒をオートクレーブに圧入し、この時点を反応開始時刻とした。その後、3mLのトルエンで触媒シリンダーを洗浄し、洗浄液をオートクレーブに圧入した。11分後、触媒シリンダーに1mLの触媒溶液を加え、高圧窒素で触媒をオートクレーブに圧入した。その後、3mLのトルエンで触媒シリンダーを洗浄し、洗浄液をオートクレーブに圧入した。反応開始30分後に、1mLの重酢酸のトルエン溶液(2M)をキラーフィーダーから圧入して反応を停止し、キラーフィーダーを3mLのトルエンで洗浄した後、洗浄液を圧入し、エチレンを脱圧した。オートクレーブの内温を室温まで冷却後、アセトンを100mL加えた。析出した固体を、濾過により回収し、固体を100mLのアセトンで2回洗浄後、減圧乾燥した。得られた極性基含有オレフィン共重合体3は0.16gであった。
【0176】
(実施例4)
(1)触媒溶液の調整
50mLフラスコに、ニッケル(II)アセチルアセトナート(Ni(acac),Merck社製、純度>98%)を12.9mg(50.2μmol)量り取り、10mLのトルエンに溶解させた。また、別のフラスコに19.4mg(29.6μmol)の合成例3で得られたAL-40を量り取った。Ni(acac)のトルエン溶液を6mL量り取り、この溶液をAL-40の入ったフラスコに加えた。生じた溶液を40℃の水浴で温め、15分間撹拌して触媒溶液を得た。
(2)極性基含有オレフィン共重合体の製造
実施例1と同様の0.2Lのオートクレーブにトルエンを87mL、VCを3.2mL(50.0mmol)、MAを0.4mL(4.5mmol)、トリオクチルアルミニウムのトルエン溶液(TNOA、0.1M)を0.5mL加え、90℃に昇温した。ここに高圧窒素を加えて0.5MPaにして、さらにエチレンを2.5MPa加えた。触媒シリンダーに2mLの触媒溶液を加え、高圧窒素で触媒をオートクレーブに圧入し、この時点を反応開始時刻とした。上記触媒溶液の圧入から2分後、3mLのトルエンで触媒シリンダーを洗浄し、洗浄液をオートクレーブに圧入した。反応開始30分後に、3mLの1,2-ブタンジオールをキラーフィーダーから圧入して反応を停止し、エチレンを脱圧した。オートクレーブの内温を室温まで冷却後、アセトンを100mL加えた。析出した固体を、濾過により回収し、固体を100mLのアセトンで2回洗浄後、減圧乾燥した。得られた極性基含有オレフィン共重合体4は2.99gであった。
【0177】
表1に各実験例の条件をまとめた。表2に各実験から得られた共重合体の分析結果をまとめた。
また、図1に極性基含有オレフィン共重合体1の13C-NMRスペクトルを示し、図2に当該13C-NMRスペクトルの部分的な拡大図(73~83ppm付近)を示した。さらに、図3に極性基含有オレフィン共重合体1のH-NMRスペクトルを示し、図4に当該H-NMRスペクトルの部分的な拡大図(3.5~3.7ppm付近)を示した。
【0178】
【表1】
【0179】
【表2】
【0180】
図5は極性基含有オレフィン共重合体1のHSQCスペクトルである。横軸のH-NMRスペクトルにおいて、不純物由来のピークを「*」で示した。Ibrは、図1および図2に記載した構造における炭酸ビニレン骨格由来の水素原子であるa1およびa2のC-H相関を示す。なお、図5内の破線で囲まれた範囲は、図6において拡大した範囲を示す。
図6図5の破線部の拡大図である。図5同様に横軸のH-NMRスペクトルにおいて不純物由来のピークを「*」で示した。IIbrは、図4に記載した構造における炭酸ビニレンの開環に由来する水素原子であるb1およびb2のC-H相関を示す。図6において、不純物に由来するC-H相関は丸で示した。
【0181】
NMR測定結果から明らかなように、主鎖に、オレフィン、一般式(1)で表される炭酸ビニレン誘導体由来の構造単位(B)と一般式(2)で表されるアクリル酸エステル誘導体由来の構造単位(C)が導入されている新規な極性基含有オレフィン共重合体を得ることができた。
なお、表2において、コモノマー含有量(mol%)は、重合体の構造単位全体を100mol%とした場合の一般式(1)で表される炭酸ビニレン誘導体由来の構造単位(B)、もしくは一般式(2)で表されるアクリル酸エステル誘導体由来の構造単位(C)の含有割合を意味する。
【産業上の利用可能性】
【0182】
本発明の新規な極性基含有オレフィン共重合体は、エチレン等の炭素数2以上のポリオレフィン中に、酸素原子をビシナル位に有する炭酸ビニレンと、アクリル酸エステル誘導体由来の構造単位が導入されているため、キレート配位性を有するなどの、従来のオレフィン共重合体にない機能を実現できる可能性がある。例えば、本発明の極性基含有オレフィン共重合体は、金属錯体触媒のための担体や金属錯体回収のための吸着材などの用途も期待できる。
また、本発明の極性基含有オレフィン共重合体の構造単位(B)の極性基にグラフト重合を行うことで、さらなる機能化を行うことも可能となる。
さらに、エチレン等の炭素数2以上のポリオレフィンと炭酸ビニレン誘導体及びアクリル酸エステル誘導体を共重合することにより、二酸化炭素の固定を行うことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6