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特開2024-144299ポリエステル系樹脂ならびにその製造方法および用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144299
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】ポリエステル系樹脂ならびにその製造方法および用途
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/16 20060101AFI20241003BHJP
   C08G 63/78 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C08G63/16
C08G63/78
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024048957
(22)【出願日】2024-03-26
(31)【優先権主張番号】P 2023054049
(32)【優先日】2023-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591147694
【氏名又は名称】大阪ガスケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142594
【弁理士】
【氏名又は名称】阪中 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100090686
【弁理士】
【氏名又は名称】鍬田 充生
(72)【発明者】
【氏名】南 聡史
(72)【発明者】
【氏名】中田 梨香子
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 久芳
【テーマコード(参考)】
4J029
【Fターム(参考)】
4J029AA03
4J029AB01
4J029AB04
4J029AB07
4J029AC02
4J029AD07
4J029AD10
4J029AE04
4J029BB06A
4J029BB18
4J029BD08
4J029BF12
4J029BF20
4J029CB09A
4J029CC03A
4J029CC05A
4J029CC06A
4J029CD05
4J029HA01
4J029HB03A
4J029KB02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】屈折率が高く、耐熱性も維持しつつ、成形性も向上できるポリエステル系樹脂。
【解決手段】ビス(ヒドロキシアルキル)アレーンまたはビス(ヒドロキシアルコキシ)アレーンである第1のジオール単位(A1)、式(2)で表される第2のジオール単位(A2)、及び縮合多環式芳香族ジカルボン酸単位(B1)を含むポリエステル系樹脂。

(式中、Z及びZはアレーン環を示し、A及びAは独立してアルキレン基を示し、m1及びm2は独立して0以上の整数を示し、R及びRは独立して置換基を示し、k1及びk2は独立して0以上の整数を示し、Rは置換基を示し、pは0~8の整数を示す)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジオール単位(A)とジカルボン酸単位(B)とを含むポリエステル系樹脂であって、
前記ジオール単位(A)が、下記式(1)で表される第1のジオール単位(A1)および下記式(2)で表される第2のジオール単位(A2)を含み、かつ
前記ジカルボン酸単位(B)が、下記式(4)で表される第1のジカルボン酸単位(B1)を含むポリエステル系樹脂。
【化1】
(式中、
およびXは独立してエーテル結合または直接結合を示し、
およびAは独立してアルキレン基を示し、
はハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、ニトロ基、シアノ基または置換アミノ基を示し、nは0~4の整数を示す)
【化2】
(式中、
およびZはアレーン環を示し、
およびAは独立してアルキレン基を示し、m1およびm2は独立して0以上の整数を示し、
およびRは独立して置換基を示し、k1およびk2は独立して0以上の整数を示し、
は置換基を示し、pは0~8の整数を示す)
【化3】
(式中、
は縮合多環式アレーン環を示し、
は置換基を示し、sは0以上の整数を示す)
【請求項2】
前記ジカルボン酸単位(B)が、下記式(5)で表される第2のジカルボン酸単位(B2)をさらに含む請求項1記載のポリエステル系樹脂。
【化4】
(式中、
およびAは独立してアルキレン基を示し、
は置換基を示し、tは0~8の整数を示す)
【請求項3】
前記式(1)において、
およびXがエーテル結合であり、かつAおよびAがC2-4アルキレン基であるか、または
およびXが直接結合であり、かつAおよびAがC1-3アルキレン基である請求項1または2記載のポリエステル系樹脂。
【請求項4】
ガラス転移温度が130℃以上である請求項1または2記載のポリエステル系樹脂。
【請求項5】
ガラス転移温度が150~170℃であり、かつ屈折率が1.655以上である請求項1または2記載のポリエステル系樹脂。
【請求項6】
前記第1のジオール単位(A1)と、前記第2のジオール単位(A2)との割合が、前者/後者(モル比)=1/99~50/50である請求項1または2記載のポリエステル系樹脂。
【請求項7】
数平均分子量200~1500のポリアルキレングリコールに由来するジオール単位を実質的に含まない請求項1または2記載のポリエステル系樹脂。
【請求項8】
前記ジオール単位(A)に対応するジオール成分と、前記ジカルボン酸単位(B)に対応するジカルボン酸成分とを含む重合成分を重合して、請求項1または2記載のポリエステル系樹脂を製造する方法。
【請求項9】
請求項1または2記載のポリエステル系樹脂を含む成形体。
【請求項10】
光学レンズである請求項9記載の成形体。
【請求項11】
ジオール単位(A)とジカルボン酸単位(B)とを含むポリエステル系樹脂において、
前記ジオール単位(A)として、下記式(1)で表される第1のジオール単位(A1)および下記式(2)で表される第2のジオール単位(A2)を導入し、かつ
前記ジカルボン酸単位(B)として、下記式(4)で表される第1のジカルボン酸単位(B1)を導入することにより、
前記ポリエステル系樹脂の高い屈折率および耐熱性を維持しつつ、成形性を向上する方法。
【化5】
(式中、
およびXは独立してエーテル結合または直接結合を示し、
およびAは独立してアルキレン基を示し、
はハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、ニトロ基、シアノ基または置換アミノ基を示し、nは0~4の整数を示す)
【化6】
(式中、
およびZはアレーン環を示し、
およびAは独立してアルキレン基を示し、m1およびm2は独立して0以上の整数を示し、
およびRは独立して置換基を示し、k1およびk2は独立して0以上の整数を示し、
は置換基を示し、pは0~8の整数を示す)
【化7】
(式中、
は縮合多環式アレーン環を示し、
は置換基を示し、sは0以上の整数を示す)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、重合成分として特定の芳香族ジオール成分を含むポリエステル系樹脂ならびにその製造方法および用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル樹脂は、構成単位として芳香族モノマー成分を含むことにより、屈折率およびガラス転移温度が高くなるため、高屈折率で耐熱性に優れた光学材料として利用されている。特に、芳香族ジカルボン酸成分であるナフタレンジカルボン酸を含むポリエチレンナフタレートは、機械的特性、耐熱性に優れ、様々な用途に適用されている。しかし、溶融粘度が高く、溶融重合での高分子量化には限度があり、得られるポリマーは脆くなるため、様々な共重合体が検討されている。
【0003】
国際公開第2015/163323号(特許文献1)には、ジオール構成単位中の10~84モル%がエチレングリコールに由来する構成単位であり、ジオール構成単位中の16~90モル%がネオペンチルグリコールに由来する構成単位であり、ジカルボン酸構成単位中の50~100モル%がナフタレンジカルボン酸に由来する構成単位であるポリエステル樹脂が開示されている。
【0004】
また、ジオール成分として芳香族ジオールの一種であるフルオレン骨格を有するジオールは、高屈折率、高耐熱性などの優れた特性を有することが知られており、フルオレン骨格を有するジオール成分をナフタレンジカルボン酸成分の共重合成分として用いたポリエステル樹脂も検討されている。
【0005】
特開2006-335974号公報(特許文献2)には、ジカルボン酸が主としてナフタレンジカルボン酸および/またはそのエステル形成性誘導体であり、ジヒドロキシ化合物がビスフェニルフルオレン骨格を有するフルオレン化合物を含み、d線のアッベ数が23以下でガラス転移温度が130℃以上であり、少なくとも1種類以上のリン酸化合物および/または亜リン酸化合物を含むポリエステル樹脂組成物が開示されている。
【0006】
特開2017-149857号公報(特許文献3)には、ナフタレンジカルボン酸類に由来する構造部位と、ビスフェニルフルオレン系化合物に由来する構造部位とを合計70質量%以上、数平均分子量200~15000のポリアルキレングリコールに由来する構造部位を3~20質量%含有するポリエステル系樹脂が開示されている。
【0007】
さらに、ジカルボン酸がフルオレン骨格を有するポリエステル樹脂も検討されており、特開2015-172147号公報(特許文献4)には、少なくともフルオレンジカルボン酸成分を含むジカルボン酸成分と、少なくともヘテロ原子として酸素原子を含む非芳香族5または6員縮合複素環式ジオール成分とを重合成分とするポリエステル樹脂が開示されている。
【0008】
また、特開2021-138826号公報(特許文献5)には、フルオレンジカルボン酸成分を含むジカルボン酸成分と、アダマンタン環を有するジオール成分とを重合成分とするポリエステル樹脂が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2015/163323号
【特許文献2】特開2006-335974号公報
【特許文献3】特開2017-149857号公報
【特許文献4】特開2015-172147号公報
【特許文献5】特開2021-138826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1では、ナフタレンジカルボン酸成分に対して、脂肪族ジオール成分を組み合わせることにより、流動性は改善されるが、屈折率およびガラス転移温度を向上させることはできない。
【0011】
また、特許文献2では、ナフタレンジカルボン酸とフルオレン骨格を有する化合物とを組み合わせており、エチレングリコールなどの脂肪族ジオール成分の比率を低下させて、両成分の比率を高めると、屈折率およびガラス転移温度を向上できる。しかし、ガラス転移温度を向上させると、耐熱性は向上する反面、成形には高温が必要となり、成形性が低下する。すなわち、芳香族成分である両成分の比率を高めると、屈折率およびガラス転移温度は向上するが、成形性は低下するため、両者の間にはトレードオフの関係がある。特に、光学材料の中でも、光学レンズにおいては、比較的高い屈折率が求められる上に、精密な成形性が要求される。そのため、高い屈折率と、成形性と、機械的特性とのバランスを取るのが困難である。
【0012】
特許文献3では、数平均分子量200~15000のポリアルキレングリコールを含むため、屈折率を向上できず、耐熱性が低下する。
【0013】
特許文献4では、複素環式ジオール成分を含むため、有機溶媒に対する溶解性は向上できるものの、屈折率および耐熱性のいずれも向上できない。
【0014】
特許文献5では、アダマンタン環を有するジオール成分を含むため、アッベ数を中間領域に調整できるものの、屈折率および耐熱性のいずれも向上できない。
【0015】
従って、本開示の目的は、屈折率が高く、耐熱性も維持しつつ、成形性も向上できるポリエステル系樹脂ならびにその製造方法および用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者等は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、特定の芳香族ジオール単位と特定の芳香族ジカルボン酸単位とを組み合わせてポリエステル系樹脂を形成することにより、屈折率が高く、耐熱性も維持しつつ、成形性も向上できることを見出し、本発明(本開示)を完成した。
【0017】
すなわち、本開示の態様[1]としてのポリエステル系樹脂は、ジオール単位(A)とジカルボン酸単位(B)とを含むポリエステル系樹脂であって、
前記ジオール単位(A)が、下記式(1)で表される第1のジオール単位(A1)および下記式(2)で表される第2のジオール単位(A2)を含み、かつ
前記ジカルボン酸単位(B)が、下記式(4)で表される第1のジカルボン酸単位(B1)を含む。
【0018】
【化1】
【0019】
(式中、
およびXは独立してエーテル結合または直接結合を示し、
およびAは独立してアルキレン基を示し、
はハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、ニトロ基、シアノ基または置換アミノ基を示し、nは0~4の整数を示す)
【0020】
【化2】
【0021】
(式中、
およびZはアレーン環を示し、
およびAは独立してアルキレン基を示し、m1およびm2は独立して0以上の整数を示し、
およびRは独立して置換基を示し、k1およびk2は独立して0以上の整数を示し、
は置換基を示し、pは0~8の整数を示す)
【0022】
【化3】
【0023】
(式中、
は縮合多環式アレーン環を示し、
は置換基を示し、sは0以上の整数を示す)
【0024】
本開示の態様[2]は、前記態様[1]の前記ジカルボン酸単位(B)が、下記式(5)で表される第2のジカルボン酸単位(B2)をさらに含む態様である。
【化4】
【0025】
(式中、
およびAは独立してアルキレン基を示し、
は置換基を示し、tは0~8の整数を示す)
【0026】
本開示の態様[3]は、前記態様[1]または[2]の前記式(1)において、
およびXがエーテル結合であり、かつAおよびAがC2-4アルキレン基であるか、または
およびXが直接結合であり、かつAおよびAがC1-3アルキレン基である態様である。
【0027】
本開示の態様[4]は、前記態様[1]~[3]のいずれかの態様のポリエステル系樹脂のガラス転移温度が130℃以上である態様である。
【0028】
本開示の態様[5]は、前記態様[1]~[4]のいずれかの態様のポリエステル系樹脂のガラス転移温度が150~170℃であり、かつ屈折率が1.655以上である態様である。
【0029】
本開示の態様[6]は、前記態様[1]~[5]のいずれかの態様において、前記第1のジオール単位(A1)と、前記第2のジオール単位(A2)との割合が、前者/後者(モル比)=1/99~50/50である態様である。
【0030】
本開示の態様[7]は、前記態様[1]~[6]のいずれかの態様において、数平均分子量200~1500のポリアルキレングリコールに由来するジオール単位を実質的に含まない態様である。
【0031】
本開示には、態様[8]として、前記ジオール単位(A)に対応するジオール成分と、前記ジカルボン酸単位(B)に対応するジカルボン酸成分と含む重合成分を重合して、前記態様[1]~[7]のいずれかの態様のポリエステル系樹脂を製造する方法も含まれる。
【0032】
本開示には、態様[9]として、前記態様[1]~[7]のいずれかの態様のポリエステル系樹脂を含む成形体も含まれる。
【0033】
本開示の態様[10]は、前記態様[9]の成形体が光学レンズである態様である。
【0034】
本開示には、態様[11]として、
ジオール単位(A)とジカルボン酸単位(B)とを含むポリエステル系樹脂において、
前記ジオール単位(A)として、前記式(1)で表される第1のジオール単位(A1)および前記式(2)で表される第2のジオール単位(A2)を導入し、かつ
前記ジカルボン酸単位(B)として、前記式(4)で表される第1のジカルボン酸単位(B1)を導入することにより、
前記ポリエステル系樹脂の高い屈折率および耐熱性を維持しつつ、成形性を向上する方法も含まれる。
【0035】
本明細書および特許請求の範囲において「ジカルボン酸単位」、「ジカルボン酸成分由来の構成単位」は、対応するジカルボン酸の2つのカルボキシル基から、OH(ヒドロキシル基)をそれぞれ除いた単位(または2価の基)を意味し、「ジカルボン酸成分」(ジカルボン酸成分として例示される化合物を含む)は、対応する「ジカルボン酸単位」と同義に用いる場合がある。また、同様に、「ジオール単位」、「ジオール成分由来の構成単位」は、対応するジオール成分の2つのヒドロキシル基から、水素原子をそれぞれ除いた単位(または2価の基)を意味し、「ジオール成分」(ジオール成分として例示される化合物を含む)は、対応する「ジオール単位」と同義に用いる場合がある。
【0036】
また、本明細書および特許請求の範囲において、「ジカルボン酸成分」とは、ジカルボン酸に加えて、そのエステル形成性誘導体を含む意味に用いる。エステル形成性誘導体としては、例えば、アルキルエステル、酸クロリドなどの酸ハライド、酸無水物などが挙げられる。前記アルキルエステルとしては、低級アルキルエステル、例えば、メチルエステル、エチルエステル、t-ブチルエステルなどのC1-4アルキルエステルなどが挙げられる。なお、エステル形成性誘導体は、モノエステル(ハーフエステル)またはジエステルであってもよい。
【0037】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、置換基などの炭素原子の数をC、C、C10などで示すことがある。例えば「Cアルキル基」は炭素数が1のアルキル基を意味し、「C6-10アリール基」は炭素数が6~10のアリール基を意味する。
【0038】
また、本明細書および特許請求の範囲において、「独立して」とは、2つの構成要素が、それぞれ独立した構成要素であることを意味し、例えば、アルキレン基AおよびAの場合、AとAとが同一のアルキレン基である必要はなく、異なるアルキレン基であってもよいことを意味する。
【0039】
さらに、本明細書および特許請求の範囲において、「A~B」を用いて数値範囲を示す場合、端の数値AおよびBを含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0040】
本開示では、ポリエステル系樹脂が特定の芳香族ジオール単位および特定のジカルボン酸単位を含むため、屈折率が高く、耐熱性も維持しつつ、成形性も向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0041】
[ポリエステル系樹脂]
(A)ジオール単位
本開示のポリエステル系樹脂は、ジオール単位(A)として前記式(1)で表される第1のジオール単位(A1)を含むことを特徴とする。
【0042】
(A1)第1のジオール単位
本開示では、ジオール単位(A)が前記第1のジオール単位(A1)を含むことにより、高い屈折率および耐熱性を維持しつつ、成形性や機械的特性を向上でき、特に、ジカルボン酸単位(B)として縮合多環式アレーン環を有する芳香族骨格を有するジカルボン酸単位と組み合わせると、光学レンズに必要な屈折率と耐熱性と成形性とのバランスに優れたポリエステル系樹脂を調製できる。
【0043】
前記式(1)において、AおよびAで表されるアルキレン基(直鎖状または分岐鎖状アルキレン基)としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基(1,2-プロパンジイル基)、1,2-ブタンジイル基、1,3-ブタンジイル基、2-メチルプロパン-1,3-ジイル基、テトラメチレン基、1,5-ペンタンジイル基、1,6-ヘキサンジイル基、1,8-オクタンジイル基、1,10-デカンジイル基などのC1-12アルキレン基などが挙げられる。これらのアルキレン基は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。アルキレン基Aとアルキレン基Aとは、異なっていてもよいが、同一であるのが好ましい。これらのアルキレン基のうち、C1-8アルキレン基が好ましく、C1-4アルキレン基がさらに好ましく、C1-3アルキレン基がより好ましく、C1-2アルキレン基が最も好ましい。
【0044】
特に、XおよびXがエーテル結合である場合、アルキレン基AおよびAは、C2-8アルキレン基であり、好ましくはC2-6アルキレン基、さらに好ましくはC2-4アルキレン基、より好ましくはC2-3アルキレン基、最も好ましくはエチレン基である。
【0045】
また、XおよびXが直接結合である場合、アルキレン基AおよびAは、好ましくはC1-4アルキレン基、さらに好ましくはC1-3アルキレン基、より好ましくはC1-2アルキレン基、最も好ましくはメチレン基である。
【0046】
アルキレン基A含有基およびアルキレン基A含有基の結合位置は、オルト位(1,2位)、メタ位(1,3位)、パラ位(1,4位)のいずれであってもよいが、メタ位、パラ位が好ましく、メタ位が最も好ましい。
【0047】
で表される置換基において、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。アルキル基(直鎖状または分岐鎖状アルキル基)としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基などのC1-10アルキル基などが挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n-ブトキシ基、t-ブトキシ基などのC1-10アルコキシ基が挙げられる。アシル基としては、アセチル基などのC1-6アルキル-カルボニル基などが挙げられる。置換アミノ基としては、ジメチルアミノ基などのモノまたはジC1-4アルキルアミノ基;ジアセチルアミノ基などのビス(C1-4アルキル-カルボニル)アミノ基が挙げられる。これらの置換基のうち、アルキル基、アルコキシ基が好ましく、アルキル基がさらに好ましく、C1-3アルキル基がより好ましく、メチル基などのC1-2アルキル基が最も好ましい。
【0048】
置換基Rの置換数nは、好ましくは0~3の整数、さらに好ましくは0~2の整数、より好ましくは0または1、最も好ましくは0である。nが2以上の整数であるとき、2以上の置換基Rの種類は、それぞれ同一であってもよく、異なる組み合わせであってもよい。
【0049】
第1のジオール単位(A1)に対応する第1のジオール成分としては、前記式(1)において、XおよびXがエーテル結合であり、かつAおよびAがC2-4アルキレン基であるジオール成分、例えば、1,3-ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4-ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼン;前記式(1)において、XおよびXが直接結合であり、かつAおよびAがC1-3アルキレン基であるジオール成分、例えば、1,3-ベンゼンジメタノール、1,4-ベンゼンジメタノールなどが挙げられる。
【0050】
これらのジオール単位は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。好ましい第1のジオール単位(A1)としては、前記式(1)において、XおよびXがエーテル結合であり、かつAおよびAがC2-4アルキレン基であるジオール単位、前記式(1)において、XおよびXが直接結合であり、かつAおよびAがC1-3アルキレン基であるジオール単位;さらに好ましくは前記式(1)において、XおよびXがエーテル結合であり、かつAおよびAがC2-3アルキレン基であるジオール単位、前記式(1)において、XおよびXが直接結合であり、かつAおよびAがC1-2アルキレン基であるジオール単位である。好ましい第1のジオール単位(A1)の割合は、第1のジオール単位(A1)中10~100モル%程度の範囲から選択でき、好ましくは以下段階的に、50モル%以上、70モル%以上、90モル%以上であり、さらに好ましくは100モル%である。
【0051】
第1のジオール単位(A1)は、ジオール単位(A)中1モル%以上であってもよく、例えば1~90モル%程度の範囲から選択でき、好ましくは以下段階的に、2~50モル%、3~40モル%、5~30モル%、7~25モル%、10~20モル%、13~17モル%である。第1のジオール単位(A1)の割合が少なすぎない適度な範囲にあると、屈折率と耐熱性と成形性とのバランスを取り易い傾向がある。
【0052】
(A2)第2のジオール単位
ジオール単位(A)は、前記第1のジオール単位(A1)に加えて、前記式(2)で表される第2のジオール単位(A2)を含む。本開示では、ジオール単位(A)として、第1のジオール単位(A1)と第2のジオール単位(A2)とを組み合わせることにより、屈折率と耐熱性とを向上できる。
【0053】
前記式(2)において、ZおよびZで表されるアレーン環(芳香族炭化水素環)としては、例えば、ベンゼン環などの単環式アレーン環、多環式アレーン環などが挙げられ、多環式アレーン環には、縮合多環式アレーン環(縮合多環式芳香族炭化水素環)、環集合アレーン環(環集合多環式芳香族炭化水素環)などが含まれる。
【0054】
縮合多環式アレーン環は、縮合二ないし四環式アレーン環であってもよい。縮合二環式アレーン環としては、インデン環、ナフタレン環などの縮合二環式C8-20アレーン環などが挙げられる。縮合三環式アレーン環としては、アセナフチレン環、フルオレン環、フェナレン環、アントラセン環、フェナントレン環などの縮合三環式C14-20アレーン環などが挙げられる。縮合四環式アレーン環としては、ピレン環、ナフタセン環などの縮合四環式C16-22アレーン環などが挙げられる。これらの縮合多環式アレーン環は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、C10-16縮合二環式炭化水素環が好ましく、ナフタレン環などの縮合二環式C10-14アレーン環が好ましく、ナフタレン環が特に好ましい。
【0055】
環集合アレーン環としては、ビフェニル環、フェニルナフタレン環、ビナフチル環などのビアレーン環;テルフェニル環などのテルアレーン環などが挙げられる。これらの環集合アレーン環は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、ビフェニル環などのC12-18ビアレーン環が好ましい。
【0056】
なお、本明細書および特許請求の範囲において「環集合アレーン環」とは、2つ以上の環系(アレーン環系)が一重結合(単結合)か二重結合で直結し、環を直結する結合の数が環系の数より1つだけ少ないものを意味し、例えば、上述のように、フェニルナフタレン環、ビナフチル環などは縮合多環式アレーン環骨格を有していても環集合アレーン環に分類され、ナフタレン環(非環集合アレーン環)などの「縮合多環式アレーン環」と明確に区別される。
【0057】
環Zと環Zとは、異なっていてもよいが、同一であるのが好ましい。好ましいZおよびZは、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環などのC6-12アレーン環であり、さらに好ましくはベンゼン環、ナフタレン環などのC6-10アレーン環、ビフェニル環などのC12-18アレーン環、より好ましくはベンゼン環、ビフェニル環、最も好ましくはベンゼン環である。
【0058】
なお、フルオレン環の9位に結合するZおよびZの置換位置は、特に限定されず、例えば、ZおよびZがベンゼン環の場合、いずれの位置であってもよく、ZおよびZがナフタレン環の場合、1位(1-ナフチル)または2位(2-ナフチル)のいずれかの位置、好ましくは2位であり、ZおよびZがビフェニル環の場合、2位、3位、4位のいずれかの位置、好ましくは3位である。
【0059】
およびAで表されるアルキレン基(直鎖状または分岐鎖状アルキレン基)としては、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、1,2-ブタンジイル基、テトラメチレン基などのC2-6アルキレン基などが挙げられる。これらのアルキレン基は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、C2-6アルキレン基が好ましく、C2-4アルキレン基がさらに好ましく、エチレン基、プロピレン基などのC2-3アルキレン基がより好ましく、エチレン基が最も好ましい。アルキレン基Aとアルキレン基Aとは、異なっていてもよいが、同一であるのが好ましい。
【0060】
繰り返し数m1およびm2は、それぞれ0以上であり、例えば0~15の整数の範囲から選択でき、好ましくは以下段階的に、0~10、0~8、0~6、0~4、0~2、0~1である。また、繰り返し数m1およびm2は、1以上であると重合反応性を向上し易く、好ましくは以下段階的に、1~10、1~8、1~6、1~4、1~3、1~2であり、特に1が最も好ましい。
【0061】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、「繰り返し数(付加モル数)」は、平均値(算術平均値、相加平均値)または平均付加モル数であってもよく、好ましい態様は、上述の好ましい整数の範囲と同様であってもよい。m1およびm2が大きすぎない適度な範囲にあると、耐熱性や屈折率が向上し易い傾向がある。また、m1とm2は、同一であってもよく、異なっていてもよい。m1およびm2がそれぞれ2以上の整数である場合、2以上のアルキレン基AおよびAの種類は、それぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0062】
基[-O-(AO)m1-]および基[-O-(AO)m2-](すなわち、ポリエステル系樹脂の主鎖を形成するエーテル結合)の環ZおよびZに対する置換位置は、特に限定されず、Z、Zの適当な位置にそれぞれ置換していればよい。
【0063】
基[-O-(AO)m1-]および基[-O-(AO)m2-]の環Z、Zに対する置換位置は、ZおよびZがベンゼン環である場合、フルオレン環の9位に結合するフェニル基の2位、3位、4位のいずれかの位置、なかでも、3位または4位、特に4位に置換するのが好ましい。
【0064】
およびZがナフタレン環である場合、フルオレン環の9位に結合するナフチル基の5~8位のいずれかの位置に置換している場合が多く、例えば、フルオレン環の9位に対してナフタレン環の1位または2位が置換し(1-ナフチルまたは2-ナフチルの関係で置換し)、この置換位置に対して、1,5位、2,6位の関係、特に2,6位の関係で置換するのが好ましい。
【0065】
およびZが環集合アレーン環である場合、基[-O-(AO)m1-]および基[-O-(AO)m2-]の置換位置は特に限定されず、例えば、フルオレン環の9位に結合するアレーン環またはこのアレーン環に隣接するアレーン環に置換していてもよい。例えば、ZおよびZがビフェニル環(またはZおよびZがベンゼン環、k1およびk2が1、RおよびRがフェニル基)の場合、ビフェニル環の3位または4位、好ましくは3位がフルオレン環の9位に結合していてもよく、ビフェニル環の3位がフルオレン環の9位に結合する場合、基[-O-(AO)m1-]および基[-O-(AO)m2-]の置換位置は、例えば、ビフェニル環の2位、4位、5位、6位、2’位、3’位、4’位のいずれの位置であってもよく、好ましくは6位または4’位、特に6位が好ましい。
【0066】
およびRで表される置換基としては、反応に不活性な非反応性置換基であってもよく、例えば、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アシル基、ニトロ基、シアノ基、置換アミノ基が挙げられる。
【0067】
ハロゲン原子としては、前記置換基Rとして例示されたハロゲン原子などが挙げられる。
【0068】
炭化水素基には、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基などが含まれる。
【0069】
アルキル基としては、前記置換基Rとして例示されたアルキル基などが挙げられる。シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのC5-10シクロアルキル基が挙げられる。アリール基としては、フェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基などのC6-12アリール基;メチルフェニル基(またはトリル基)、ジメチルフェニル基(またはキシリル基)などのモノないしトリC1-4アルキル-フェニル基などが挙げられる。アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基などのC6-10アリール-C1-4アルキル基が挙げられる。
【0070】
アルコキシ基、アシル基および置換アミノ基としては、前記置換基Rとして例示されたアルコキシ基、アシル基および置換アミノ基などが挙げられる。
【0071】
これらの置換基は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0072】
代表的な置換基RおよびRとしては、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アシル基、ニトロ基、シアノ基などが挙げられる。これらのうち、アルキル基、アルコキシ基が好ましく、C1-6アルキル基、C1-4アルコキシ基がより好ましく、メチル基などのC1-4アルキル基が最も好ましい。置換基Rと置換基Rとは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0073】
置換数k1およびk2は、0~4の整数、好ましくは0~2の整数、さらに好ましくは0または1、より好ましくは0である。k1およびk2が2以上の整数であるとき、2以上の置換基Rおよび置換基Rの種類は、それぞれ同一であってもよく、異なる組み合わせであってもよい。
【0074】
で表される置換基としては、反応に不活性な非反応性置換基であってもよく、RおよびRの置換基として例示した置換基などが挙げられる。前記置換基は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。前記置換基のうち、シアノ基、ハロゲン原子、アルキル基が好ましく、アルキル基が特に好ましい。アルキル基のなかでも、C1-8アルキル基が好ましく、C1-6アルキル基がさらに好ましく、メチル基などのC1-4アルキル基が特に好ましい。
【0075】
なお、置換基Rの置換数pが2以上である場合、フルオレン環を構成する2つのベンゼン環のうち、同一のベンゼン環に置換する2以上の置換基Rの種類は、同一であっても異なっていてもいずれでもよく、異なるベンゼン環に置換する2以上の基Rの種類も、同一であってもよく異なっていてもいずれでもよい。また、基Rの結合位置(置換位置)は、フルオレン環の1~8位である限り特に制限されず、例えば、フルオレン環の2位、7位、2,7位などが挙げられる。
【0076】
置換数pは、例えば0~6の整数であってもよく、好ましくは以下段階的に、0~4の整数、0~3の整数、0~2の整数、0または1であり、最も好ましくは0である。なお、フルオレン環を構成する2つのベンゼン環において、基Rのそれぞれの置換数は、互いに異なっていてもよいが、同一であるのが好ましい。
【0077】
第2のジオール単位(A2)に対応する第2のジオール成分としては、例えば、前記式(2)において、m1およびm2が0である9,9-ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類;m1およびm2が1以上、例えば1~10程度である9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール]フルオレン類などが挙げられる。
【0078】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、特に断りのない限り、「(ポリ)アルコキシ」とは、アルコキシ基およびポリアルコキシ基の双方を含む意味に用いる。
【0079】
9,9-ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類としては、例えば、9,9-ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(アルキル-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(アリール-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレンなどが挙げられる。
【0080】
9,9-ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレンとしては、例えば、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンなどが挙げられる。
【0081】
9,9-ビス(アルキル-ヒドロキシフェニル)フルオレンとしては、例えば、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)フルオレンなどの9,9-ビス[(モノまたはジ)C1-4アルキル-ヒドロキシフェニル]フルオレンなどが挙げられる。
【0082】
9,9-ビス(アリール-ヒドロキシフェニル)フルオレンとしては、例えば、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9-ビス(C6-10アリール-ヒドロキシフェニル)フルオレンなどが挙げられる。
【0083】
9,9-ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレンとしては、例えば、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(5-ヒドロキシ-1-ナフチル)フルオレンなどが挙げられる。
【0084】
9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール]フルオレン類としては、例えば、9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル]フルオレン、9,9-ビス[アルキル-ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル]フルオレン、9,9-ビス[アリール-ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル]フルオレン、9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシナフチル]フルオレンなどが挙げられる。
【0085】
9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル]フルオレンとしては、例えば、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9-ビス[ヒドロキシ(モノないしデカ)C2-4アルコキシ-フェニル]フルオレンなどが挙げられる。
【0086】
9,9-ビス[アルキル-ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル]フルオレンとしては、例えば、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシプロポキシ)-3-メチルフェニル]フルオレンなどの9,9-ビス[(モノまたはジ)C1-4アルキル-ヒドロキシ(モノないしデカ)C2-4アルコキシ-フェニル]フルオレンなどが挙げられる。
【0087】
9,9-ビス[アリール-ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル]フルオレンとしては、例えば、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシプロポキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9-ビス[C6-10アリール-ヒドロキシ(モノないしデカ)C2-4アルコキシ-フェニル]フルオレンなどが挙げられる。
【0088】
9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシナフチル]フルオレンとしては、例えば、9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル]フルオレン、9,9-ビス[5-(2-ヒドロキシエトキシ)-1-ナフチル]フルオレン、9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシプロポキシ)-2-ナフチル]フルオレンなどの9,9-ビス[ヒドロキシ(モノないしデカ)C2-4アルコキシ-ナフチル]フルオレンなどが挙げられる。
【0089】
これらの第2のジオール単位(A2)は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。好ましい第2のジオール単位(A2)としては、9,9-ビス[ヒドロキシ(モノないしペンタ)C2-4アルコキシC6-10アリール]フルオレンなどの9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール]フルオレン類;より好ましくは9,9-ビス[ヒドロキシC2-4アルコキシC6-10アリール]フルオレンなどの9,9-ビス[ヒドロキシアルコキシアリール]フルオレン;さらに好ましくは9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9-ビス[ヒドロキシC2-3アルコキシ-フェニル]フルオレン由来の構成単位である。
【0090】
なお、9,9-ビス[ヒドロキシアルコキシアリール]フルオレンなどの好ましい第2のジオール単位(A2)の割合は、第2のジオール単位(A2)中10~100モル%程度の範囲から選択でき、好ましくは以下段階的に、50モル%以上、70モル%以上、90モル%以上であり、さらに好ましくは100モル%である。
【0091】
第1のジオール単位(A1)と、第2のジオール単位(A2)との割合は、前者/後者(モル比)=0.5/99.5~90/10程度の範囲から選択でき、好ましくは以下段階的に、1/99~50/50、3/97~40/60、5/95~30/70、5/95~25/75、7/93~23/77、10/90~20/80であり、最も好ましくは13/87~17/83である。第1のジオール単位(A1)に対する第2のジオール単位(A2)の割合が少なすぎない適度な範囲にあると、屈折率および耐熱性が向上し易い傾向があり、逆に高すぎない適度な範囲にあると、屈折率と耐熱性と成形性とのバランスを取り易い傾向がある。
【0092】
第2のジオール単位(A2)は、ジオール単位(A)中10モル%以上であってもよく、例えば10~99モル%程度の範囲から選択でき、好ましくは以下段階的に、50~99モル%、60~98モル%、70~97モル%、75~95モル%、80~90モル%、83~87モル%である。第2のジオール単位(A2)の割合が少なすぎない適度な範囲にあると、屈折率および耐熱性が向上し易い傾向があり、逆に高すぎない適度な範囲にあると、屈折率と耐熱性と成形性とのバランスを取り易い傾向がある。
【0093】
第1のジオール単位(A1)および第2のジオール単位(A2)の総量は、全ジオール単位(A)中、例えば50モル%以上であってもよく、例えば80モル%以上、好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、より好ましくは99モル%以上、最も好ましくは100モル%である。前記総量が上限以上であると、屈折率と耐熱性と成形性とのバランスを取り易い傾向がある。
【0094】
(A3)第3のジオール単位
ジオール単位(A)は、必要に応じて、下記式(3)で表される第3のジオール単位(A3)をさらに含んでいてもよい。ジオール単位(A)として第3のジオール単位を用いることにより、分子量を向上させたり、屈折率と耐熱性と成形性とのバランスを調整し易くなる。
【0095】
【化5】
【0096】
(式中、Aはアルキレン基を示し、qは1以上の整数を示す)
【0097】
前記式(3)において、Aで表されるアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、1,2-ブタンジイル基、1,3-ブタンジイル基、テトラメチレン基などのC2-12アルキレン基などが挙げられる。これらのうち、C2-6アルキレン基が好ましく、C2-4アルキレン基がさらに好ましく、エチレン基、プロピレン基などのC2-3アルキレン基がより好ましく、特にエチレン基が最も好ましい。
【0098】
繰り返し数qは、例えば1~10程度の範囲から選択してもよく、好ましくは以下段階的に、1~4、1~3、1~2であり、特に1が好ましい。なお、繰り返し数qは、平均値(算術平均値または相加平均値)であってもよく、好ましい態様は前記整数の範囲と同様である。qが2以上である場合、2以上のアルキレン基Aの種類は、異なっていてもよいが、同一が好ましい。
【0099】
第3のジオール単位(A3)に対応する第3のジオール成分としては、アルカンジオール(またはアルキレングリコール)、ポリアルカンジオール(またはポリアルキレングリコール)などが挙げられる。
【0100】
アルキレングリコールとしては、例えば、前記式(3)においてqが1、Aが前記例示のアルキレン基に対応するアルキレングリコール、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、テトラメチレングリコール(または1,4-ブタンジオール)、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオールなどのC2-12アルキレングリコールなどが挙げられ、好ましい態様は前記アルキレン基Aに対応して同様である。
【0101】
ポリアルキレングリコールとしては、例えば、前記式(3)においてqが2以上、好ましくは2~10、より好ましくは2~6、さらに好ましくは2~4であり、Aが前記例示のアルキレン基に対応するポリアルキレングリコール、具体的には、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコールなどのジないしデカC2-12アルキレングリコールなどが挙げられ、好ましくはジないしヘキサC2-6アルキレングリコール、さらに好ましくはジないしテトラC2-4アルキレングリコールが挙げられる。
【0102】
これらの第3のジオール単位(A3)は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。好ましい第3のジオール単位(A3)としては、C2-6アルキレングリコールなどのアルキレングリコールであり、好ましくはC2-4アルキレングリコール、さらに好ましくはエチレングリコール、プロピレングリコールなどのC2-3アルキレングリコール、特にエチレングリコールに由来する単位を含むのが好ましい。
【0103】
なお、アルキレングリコールなどの好ましい態様の第3のジオール単位(A3)の割合は、第3のジオール単位(A3)中10~100モル%程度の範囲から選択でき、好ましくは以下段階的に、50モル%以上、70モル%以上、90モル%以上であり、さらに好ましくは100モル%である。
【0104】
第3のジオール単位(A3)の割合は、第2のジオール単位(A2)100モルに対して50モル以下であってもよく、好ましくは以下段階的に、30モル以下、10モル以下、8モル以下、5モル以下であり、例えば1~50モル、好ましくは3~10モルであってもよい。第3のジオール単位(A3)の割合が多すぎない適度な範囲にあると、屈折率および耐熱性が向上し易い傾向がある。
【0105】
第3のジオール単位(A3)の割合は、ジオール単位(A)中50モル%以下であってもよく、好ましくは以下段階的に、30モル%以下、10モル%以下、8モル%以下、5モル%以下であり、例えば1~10モル%、好ましくは3~7モル%であってもよい。ジオール単位(A)は、第3のジオール単位(A3)を実質的に含まないのが好ましく、第3のジオール単位(A3)を含まないのが最も好ましい。第3のジオール単位(A3)の割合が多すぎない適度な範囲にあると、屈折率および耐熱性が向上し易い傾向がある。
【0106】
なかでも、ジオール単位(A)は、屈折率および耐熱性を向上できる点から、ポリアルキレングリコール由来のジオール単位を実質的に含まない(含んでいても10モル%以下)のが好ましく、ポリアルキレングリコール由来のジオール単位を含まないのが特に好ましい。特に、ジオール単位(A)は、数平均分子量200~1500のポリアルキレングリコールに由来するジオール単位を実質的に含まないのがより好ましく、数平均分子量200~1500のポリアルキレングリコールに由来するジオール単位を含まないのが最も好ましい。
【0107】
第1のジオール単位(A1)、第2のジオール単位(A2)および第3のジオール単位(A3)の総量は、全ジオール単位(A)中、例えば50モル%以上であってもよく、例えば80モル%以上、好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、より好ましくは99モル%以上、最も好ましくは100モル%である。前記総量が上限以上であると、屈折率と耐熱性と成形性とのバランスを取り易い傾向がある。
【0108】
(A4)第4のジオール単位
ジオール単位(A)は、必要に応じて、第1のジオール単位(A1)、第2のジオール単位(A2)および第3のジオール単位(A3)とは異なる第4のジオール単位(A4)をさらに含んでいてもよい。
【0109】
第4のジオール単位(A4)としては、芳香族ジオール単位、脂環族ジオール単位などが挙げられる。
【0110】
芳香族ジオール単位としては、芳香族ジオール成分[ただし、前記第1のジオール単位(A1)および前記第2のジオール単位(A2)は除く]およびそのジオール成分のアルキレンオキシド(アルキレンカーボネートまたはハロアルカノール)付加体に由来する構成単位などが挙げられる。
【0111】
芳香族ジオールとしては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールC、ビスフェノールG、ビスフェノールSなどのビスフェノール類;p,p’-ビフェノールなどのビフェノール類などが挙げられる。
【0112】
これらのジオール成分のアルキレンオキシド(対応するアルキレンカーボネートまたはハロアルカノール)付加体としては、例えば、C2-4アルキレンオキシド付加体、好ましくはエチレンオキシド付加体、プロピレンオキシド付加体などのC2-3アルキレンオキシド付加体が挙げられ、付加モル数は特に制限されない。具体的には、ビスフェノールAなどの芳香族ジオール1モルに対して、2~10モル程度のエチレンオキシドが付加した付加体などが挙げられる。
【0113】
脂環族ジオール単位としては、脂環族ジオール成分およびそのジオール成分のアルキレンオキシド(アルキレンカーボネートまたはハロアルカノール)付加体に由来する構成単位に由来する構成単位などが挙げられる。脂環族ジオールとしては、シクロヘキサンジオールなどのシクロアルカンジオール;シクロヘキサンジメタノールなどのビス(ヒドロキシアルキル)シクロアルカン;アダマンタンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールなどのビス(ヒドロキシC1-3アルキル)ビまたはトリシクロアルカンなどが挙げられる。
【0114】
これらのジオール成分のアルキレンオキシド付加体としては、例えば、C2-4アルキレンオキシド付加体、好ましくはエチレンオキシド付加体、プロピレンオキシド付加体などのC2-3アルキレンオキシド付加体が挙げられ、付加モル数は特に制限されない。具体的には、シクロアルカンジオールなどの脂環族ジオール1モルに対して、2~10モル程度のエチレンオキシドが付加した付加体などが挙げられる。
【0115】
これらの第4のジオール単位(A4)は、単独でまたは二種以上組み合わせて含まれていてもよい。
【0116】
第4のジオール単位(A4)の割合は、ジオール単位(A)中50モル%以下であってもよく、好ましくは以下段階的に、30モル%以下、10モル%以下、5モル%以下である。ジオール単位(A)は、第4のジオール単位(A4)を実質的に含まないのが好ましく、第4のジオール単位(A4)を含まないのが最も好ましい。
【0117】
(B)ジカルボン酸単位
本開示のポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸単位(B)として前記式(4)で表される第1のジカルボン酸単位(B1)を含む。
【0118】
(B1)第1のジカルボン酸単位
本開示では、ジカルボン酸単位(B)が第1のジカルボン酸単位(B1)を含むことにより、屈折率および耐熱性が向上できる。特に、同じく屈折率および耐熱性を向上できる第2のジオール単位(A2)と組み合わせることにより、屈折率および耐熱性をより向上できる。本開示では、第2のジオール単位(A2)とジカルボン酸単位(B1)との組み合わせに対して、さらに芳香族単位であるジオール単位(A1)を組み合わせると、意外にもガラス転移温度を上げすぎることなく、光学レンズに必要な屈折率と耐熱性と成形性とのバランスを取ることができる。
【0119】
前記式(4)において、Zで表される縮合多環式アレーン環としては、前記式(2)におけるZおよびZの縮合多環式アレーン環として例示された縮合多環式アレーン環などが挙げられる。前記縮合多環式アレーン環は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。前記縮合多環式アレーン環のうち、C10-16縮合二環式アレーン環が好ましく、ナフタレン環などの縮合二環式C10-14アレーン環が好ましく、ナフタレン環が特に好ましい。
【0120】
エステル結合を形成するカルボニル基の結合位置は、環Zの種類に応じて適宜選択でき、Zがナフタレン環である場合、1,2位、1,4位、1,5位、1,8位、2,3位、2,6位などが挙げられる。これらの結合位置のうち、1,5位、2,6位が好ましく、2,6位が最も好ましい。
【0121】
置換基Rとしては、前記式(1)における置換基Rとして例示されたハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、ニトロ基、シアノ基または置換アミノ基などが挙げられる。前記置換基は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。前記置換基のうち、アルキル基、アルコキシ基が好ましく、アルキル基がさらに好ましく、C1-3アルキル基がより好ましく、メチル基などのC1-2アルキル基が最も好ましい。
【0122】
の置換数sは、0以上の整数であればよく、環Zの種類に応じて適宜選択でき、それぞれ、例えば0~6の整数であってもよく、好ましい置換数sは、以下段階的に、0~4の整数、0~3の整数、0~2の整数、0または1であり、0が最も好ましい。
【0123】
第1のジカルボン酸単位(B1)に対応する第1のジカルボン酸成分としては、1,2-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などのナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体;アントラセンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体;フェナントレンジカルボン酸などの縮合多環式C10-24アレーン-ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0124】
これらのジカルボン酸単位は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。好ましい第1のジカルボン酸単位(B1)は、前記式(4)において、Zがナフタレン環であり、かつsが0であるジカルボン酸単位;より好ましくは2,6-ナフタレンジカルボン酸由来のジカルボン酸単位である。好ましい第1のジカルボン酸単位(B1)の割合は、第1のジカルボン酸単位(B1)中10~100モル%程度の範囲から選択でき、好ましくは以下段階的に、50モル%以上、70モル%以上、90モル%以上であり、さらに好ましくは100モル%である。
【0125】
第1のジカルボン酸単位(B1)は、ジカルボン酸単位(B)中50モル%以上であってもよく、例えば50~100モル%程度の範囲から選択でき、好ましくは以下段階的に、60モル%以上、70モル%以上、80モル%以上、90モル%以上、95モル%以上、99モル%以上であり、最も好ましくは100モル%である。第1のジカルボン酸単位(B1)の割合が少なすぎない適度な範囲にあると、屈折率および耐熱性が向上し易い傾向がある。
【0126】
(B2)第2のジカルボン酸単位
ジカルボン酸単位(B)は、必要に応じて、前記ジカルボン酸単位(B1)に加えて、前記式(5)で表される第2のジカルボン酸単位(B2)をさらに含んでいてもよい。ジカルボン酸単位(B)として第2のジカルボン酸単位(B2)を用いることにより、屈折率と耐熱性と成形性とのバランスを調整したり、複屈折を低下し易くなる。
【0127】
前記式(5)において、AおよびAで表されるアルキレン基(直鎖状または分岐鎖状アルキレン基)としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、1,2-ブタンジイル基、テトラメチレン基、2-メチルプロパン-1,3-ジイル基などのC1-8アルキレン基などが挙げられる。前記アルキレン基は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。アルキレン基Aとアルキレン基Aとは、異なっていてもよいが、同一であるのが好ましい。前記アルキレン基のうち、C2-6アルキレン基が好ましく、C2-4アルキレン基がさらに好ましく、エチレン基、プロピレン基などのC2-3アルキレン基がより好ましく、エチレン基が最も好ましい。
【0128】
で表される置換基としては、反応に不活性な非反応性置換基であってもよく、前記式(2)における置換基RおよびRとして例示された置換基などが挙げられる。前記置換基は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。前記置換基のうち、アルキル基、アルコキシ基が好ましく、アルキル基がさらに好ましく、C1-3アルキル基がより好ましく、メチル基などのC1-2アルキル基が最も好ましい。
【0129】
の置換数tは、例えば0~8の整数の範囲から選択でき、好ましくは以下段階的に、0~6の整数、0~4の整数、0~3の整数、0~2の整数であり、さらに好ましくは0または1であり、0が最も好ましい。
【0130】
第2のジカルボン酸単位(B2)に対応する第2のジカルボン酸成分としては、9,9-ビス(2-カルボキシエチル)-フルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシプロピル)-フルオレンなどの9,9-ビス(カルボキシC2-6アルキル)-フルオレンまたはそのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0131】
これらのジカルボン酸単位は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。好ましい第2のジカルボン酸単位(B2)は、前記式(5)において、AおよびAがC1-8アルキレン基であり、かつtが0~2の整数であるジカルボン酸単位;より好ましくはAおよびAがC2-3アルキレン基であり、かつtが0であるジカルボン酸単位である。好ましい第2のジカルボン酸単位(B2)の割合は、第2のジカルボン酸単位(B2)中10~100モル%程度の範囲から選択でき、好ましくは以下段階的に、50モル%以上、70モル%以上、90モル%以上であり、さらに好ましくは100モル%である。
【0132】
第1のジカルボン酸単位(B1)と、第2のジカルボン酸単位(B2)との割合は、前者/後者(モル比)=100/0~10/90程度の範囲から選択でき、好ましくは以下段階的に、100/0~30/70、100/0~40/60、100/0~50/50、100/0~60/40、100/0~70/30、100/0~80/20であり、最も好ましくは100/0~85/15である。第2のジカルボン酸単位(B2)に対する第1のジカルボン酸単位(B1)の割合が少なすぎない適度な範囲にあると、屈折率および耐熱性が向上し易い傾向がある。
【0133】
第2のジカルボン酸単位(B2)の割合は、ジカルボン酸単位(B)中50モル%以下であってもよく、好ましくは40モル%以下、さらに好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下、最も好ましくは15モル%以下であり、例えば1~20モル%、好ましくは5~15モル%であってもよい。第2のジカルボン酸単位(B2)の割合が多すぎない適度な範囲にあると、屈折率と耐熱性と成形性とのバランスを調整したり、複屈折を低下し易くなる傾向がある。
【0134】
第1のジカルボン酸単位(B1)および第2のジカルボン酸単位(B2)の総量は、全ジカルボン酸単位(B)中、例えば50モル%以上であってもよく、例えば80モル%以上、好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、より好ましくは99モル%以上、最も好ましくは100モル%である。前記総量が上限以上であると、屈折率と耐熱性と成形性とのバランスを調整したり、複屈折を低下し易くなる傾向がある。
【0135】
(B3)第3のジカルボン酸単位
ジカルボン酸単位(B)は、必要に応じて、前記第1のジカルボン酸単位(B1)および前記第2のジカルボン酸単位(B2)とは異なる第3のジカルボン酸単位(B3)をさらに含んでいてもよい。
【0136】
第3のジカルボン酸単位(B3)としては、単環式芳香族ジカルボン酸単位、環集合多環式芳香族ジカルボン酸単位、脂肪族ジカルボン酸単位、脂環族ジカルボン酸単位などが挙げられる。
【0137】
単環式芳香族ジカルボン酸単位に対応する単環式芳香族ジカルボン酸成分としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などのベンゼンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体;5-メチルイソフタル酸などのC1-4アルキル-ベンゼンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0138】
環集合多環式芳香族ジカルボン酸単位に対応する環集合多環式芳香族ジカルボン酸成分としては、2,2’-ビフェニルジカルボン酸、3,3’-ビフェニルジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸などのビC6-10アレーン-ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0139】
脂肪族ジカルボン酸単位に対応する脂肪族ジカルボン酸成分としては、マロン酸、コハク酸、アジピン酸などのC1-20アルカン-ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体;マレイン酸、フマル酸などのC2-10アルケン-ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0140】
脂環族ジカルボン酸単位に対応する脂環族ジカルボン酸成分としては、シクロヘキサンジカルボン酸などのC4-12シクロアルカン-ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体;ノルボルナンジカルボン酸などの(ビまたはトリ)シクロC7-10アルカン-ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体;シクロペンテンジカルボン酸などのC5-10シクロアルケン-ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体;ノルボルネンジカルボン酸などの(ビまたはトリ)シクロC7-10アルケン-ジカルボン酸などが挙げられる。
【0141】
これらの第3のジカルボン酸単位(B3)は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0142】
第3のジカルボン酸単位(B3)の割合は、ジカルボン酸単位(B)中50モル%以下であってもよく、好ましくは以下段階的に、30モル%以下、10モル%以下、5モル%以下である。ジカルボン酸単位(B)は、第3のジカルボン酸単位(B3)を実質的に含まないのが好ましく、第3のジカルボン酸単位(B3)を含まないのが最も好ましい。
【0143】
(C)他の構成単位
本開示のポリエステル系樹脂は、必要に応じて、ジオール単位(A)およびジカルボン酸単位(B)とは異なる他の構成単位(C)を含んでいてもよい。
【0144】
他の構成単位(C)としては、ヒドロキシアルカン酸や対応するラクトン、3以上のカルボキシル基および/またはヒドロキシル基を有する多官能性重合成分、カーボネート結合形成成分などに由来する構成単位などが挙げられる。
【0145】
前記ヒドロキシアルカン酸や対応するラクトンとしては、例えば、乳酸、3-ヒドロキシ酪酸、6-ヒドロキシヘキサン酸などのヒドロキシアルカン酸;ε-カプロラクトンなどのヒドロキシアルカン酸に対応するラクトンなどが挙げられる。
【0146】
前記多官能性重合成分としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸や、グリセリン、ペンタエリスリトールなどの3価以上の多価アルコールなど、合計で3以上のカルボキシル基および/またはヒドロキシル基を有する多官能性重合成分などが挙げられる。
【0147】
カーボネート結合形成成分としては、2つのジオール成分との反応により、カーボネート結合を形成可能な化合物であればよい。すなわち、「カーボネート結合形成成分に由来する構成単位」とは、カルボニル基を意味し、このカルボニル基に隣接して結合する2つのジオール単位の末端酸素原子とともにカーボネート結合を形成する。代表的なカーボネート結合形成成分としては、例えば、ホスゲン、トリホスゲンなどのホスゲン類、ジフェニルカーボネートなどの炭酸ジエステル類などが挙げられる。
【0148】
このような他の構成単位(C)の割合は、構成単位全体[ジオール単位(A)、ジカルボン酸単位(B)および他の構成単位(C)の総量]に対して50モル%以下であってもよく、好ましくは以下段階的に、40モル%以下、30モル%以下、20モル%以下、10モル%以下、5モル%以下であり、通常、他の構成単位(C)を実質的に含まない場合が多い。なお、前記割合は、0~10モル%程度、例えば0.01~1モル%程度であってもよい。
【0149】
[ポリエステル系樹脂の製造方法]
本開示のポリエステル系樹脂の製造方法は、前記第1のジオール単位(A1)に対応するジオール成分(A1)、前記第2のジオール単位(A2)に対応するジオール成分(A2)および前記第1のジカルボン酸単位(B1)に対応するジカルボン酸成分(B1)を重合成分として用いること以外は特に制限されず、樹脂の種類または他の重合成分(共重合成分)などに応じて、慣用の方法が利用できる。例えば、ジオール単位(A)とジカルボン酸単位(B)とからなるポリエステル樹脂である場合、ジオール単位(A)に対応するジオール成分(A)とジカルボン酸単位(B)に対応するジカルボン酸成分(B)とを反応(重合)させて製造すればよく、例えば、エステル交換法(エステル交換反応)、直接重合法などの溶融重合法、溶液重合法、界面重合法などの慣用の方法で調製でき、溶融重合法が好ましい。なお、反応は、重合方法に応じて、溶媒の存在下または非存在下で行ってもよい。
【0150】
ジオール単位(A)とジカルボン酸単位(B)とを含むポリエステル系樹脂を調製する場合、ジオール成分(A)とジカルボン酸成分(B)との使用割合(または仕込み割合)は、通常、前者/後者(モル比)=例えば、1/1.2~1/0.8、好ましくは1/1.1~1/0.9であるが、必ずしもこの範囲である必要はなく、重合成分に含まれる少なくとも1種の成分を、予定する導入割合に対して過剰に用いて反応させてもよい。例えば、反応系から留出可能なエチレングリコールなどのジオール成分は、ポリエステル系樹脂中に導入される割合(または導入割合)よりも過剰に使用してもよい。
【0151】
反応は、触媒の存在下で行ってもよい。触媒としては、慣用のエステル化触媒、例えば、金属触媒などが利用できる。金属触媒としては、例えば、ナトリウムなどのアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム、バリウムなどのアルカリ土類金属;チタン、マンガン、コバルトなどの遷移金属;亜鉛、カドミウムなどの周期表第12族金属;アルミニウムなどの周期表第13族金属;ゲルマニウム、鉛などの周期表第14族金属;アンチモンなどの周期表第15族金属などを含む金属化合物が用いられる。金属化合物としては、例えば、アルコキシド;酢酸塩、プロピオン酸塩などの有機酸塩;ホウ酸塩、炭酸塩などの無機酸塩;酸化物などであってもよく、これらの水和物であってもよい。代表的な金属化合物としては、例えば、二酸化ゲルマニウム、水酸化ゲルマニウム、シュウ酸ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウム-n-ブトキシドなどのゲルマニウム化合物;三酸化アンチモン、酢酸アンチモン、アンチモンエチレングリコレートなどのアンチモン化合物;テトラ-n-プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ-n-ブチルチタネート(チタン(IV)テトラブトキシド)、シュウ酸チタン、シュウ酸チタンカリウムなどのチタン化合物;酢酸マンガン・4水和物などのマンガン化合物;酢酸カルシウム・1水和物などのカルシウム化合物などが例示できる。
【0152】
これらの触媒は単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。複数の触媒を用いる場合、反応の進行に応じて、各触媒を添加することもできる。これらの触媒のうち、酢酸マンガン・4水和物、酢酸カルシウム・1水和物、二酸化ゲルマニウム、チタン(IV)テトラブトキシドなどが好ましい。触媒の使用量は、例えば、ジカルボン酸成分(B)1モルに対して、0.01×10-4~100×10-4モル、好ましくは0.1×10-4~40×10-4モルである。
【0153】
また、反応は、必要に応じて、熱安定剤や酸化防止剤などの安定剤の存在下で行ってもよい。通常、熱安定剤がよく利用され、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジブチルホスフェート(リン酸ジブチルまたはジブチルリン酸)、亜リン酸、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイトなどのリン化合物などが挙げられる。これらのうち、リン酸ジブチルがよく利用される。熱安定剤の使用量は、例えば、ジカルボン酸成分(B)1モルに対して、0.01×10-4~100×10-4モル、好ましくは0.1×10-4~40×10-4モルである。
【0154】
反応は、通常、不活性ガス、例えば、窒素ガス;ヘリウム、アルゴンなどの希ガスなどの雰囲気中で行われる。また、反応は、減圧下、例えば、1×10~1×10Pa程度で行うこともできる。通常、エステル交換反応は、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下で行うことが多く、重縮合反応は、減圧下で行うことが多い。反応温度は、重合方法に応じて選択でき、例えば、溶融重合法における反応温度は150~320℃、好ましくは180~310℃、さらに好ましくは200~300℃である。
【0155】
[ポリエステル系樹脂の特性]
本開示のポリエステル系樹脂は、前記第1のジオール単位(A1)を含むため、高い屈折率および高い耐熱性を有しているにも拘わらず、成形性にも優れている。
【0156】
本開示のポリエステル系樹脂の屈折率nDは、温度20℃、波長589nmにおいて、例えば1.6以上、好ましくは1.655以上であり、例えば1.6~1.7、好ましくは1.650~1.690、さらに好ましくは1.655~1.680、より好ましくは1.657~1.670である。
【0157】
本開示のポリエステル系樹脂のガラス転移温度Tgは130℃以上であってもよいが、特に150℃以上であってもよく、好ましくは以下段階的に、130~200℃、140~190℃、145~180℃、150~170℃であり、最も好ましくは155~165℃である。ガラス転移温度Tgが低過ぎない適度な範囲にあると、耐熱性が向上して、成形および/または使用に際して劣化または変色(または着色)が抑制される傾向や、所定形状に成形後、高温環境下で変形が抑制される傾向があり、高い耐熱性(または熱安定性)が要求される用途などで利用し易くなる傾向がある。一方、高過ぎない適度な範囲にあると、成形温度が低くなり、取り扱い性が向上すると共に、流動性も向上して成形性が向上する傾向がある。
【0158】
本開示のポリエステル系樹脂のアッベ数は、温度20℃において、例えば5~50、好ましい範囲としては、以下段階的に、10~30、15~25、17~23、18~22であり、さらに好ましくは19~21である。
【0159】
本開示のポリエステル系樹脂の重量平均分子量Mwは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)などにより測定でき、ポリスチレン換算で、例えば、10000~1000000程度の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、15000~90000、20000~80000、25000~70000、30000~60000、32000~50000、33000~45000、35000~40000である。重量平均分子量Mwが低すぎない適度な範囲にあると、耐熱性や成形性(生産性)が向上し易い傾向がある。
【0160】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、屈折率nD、ガラス転移温度Tg、アッベ数、重量平均分子量Mwは、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
【0161】
[成形体]
本開示の成形体は、少なくとも前記ポリエステル系樹脂を含み、優れた光学的特性などを示すため、光学フィルム(または光学シート)、光学レンズなどの光学部材として利用でき、高い屈折率と耐熱性と成形性とを兼ね備える点から、光学レンズとして有効に利用できる。
【0162】
本開示の成形体は、慣用の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、炭素材などの充填剤または補強剤、染顔料などの着色剤、導電剤、難燃剤、可塑剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、分散剤、流動調整剤、レベリング剤、消泡剤、表面改質剤、加水分解抑制剤、安定剤、低応力化剤などを含んでいてもよい。安定剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤などが挙げられる。低応力化剤としては、例えば、シリコーンオイル、シリコーンゴム、各種プラスチック粉末、各種エンジニアリングプラスチック粉末などが挙げられる。これらの添加剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらの添加剤の合計割合は、前記熱可塑性樹脂100質量部に対して、例えば50質量部以下、好ましくは以下段階的に、30質量部以下、0~10質量部であり、0.1~5質量部程度であってもよい。
【0163】
本開示の成形体は、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、トランスファー成形法、ブロー成形法、加圧成形法、キャスティング成形法などを利用して製造することができる。
【0164】
なお、成形体の形状は、特に限定されず、例えば、線状、繊維状(またはファイバー状)、糸状などの一次元的構造、フィルム状、シート状、板状などの二次元的構造、凹または凸レンズ状、棒状、中空状(管状)などの三次元的構造などが挙げられる。
【0165】
本開示のポリエステル系樹脂を用いて、光学フィルムを形成してもよい。このようなフィルムの平均厚みは、1~1000μm程度の範囲から用途に応じて選択でき、例えば1~200μm、好ましくは5~150μm、さらに好ましくは10~120μmである。
【0166】
このようなフィルム(光学フィルム)は、前記樹脂を、慣用の成膜方法、例えば、キャスティング法(溶剤キャスト法)、溶融押出法、カレンダー法などを用いて成膜(または成形)することにより製造できる。
【0167】
フィルムは、未延伸または延伸フィルムであってもよく、延伸フィルムであっても低い複屈折を維持できる。なお、このような延伸フィルムは、一軸延伸フィルムまたは二軸延伸フィルムのいずれであってもよい。
【0168】
延伸倍率は、一軸延伸または二軸延伸において各方向にそれぞれ、例えば1.1~10倍、好ましくは1.2~8倍、さらに好ましくは1.5~6倍である。なお、二軸延伸の場合、等延伸、例えば、縦横両方向に1.5~5倍延伸であってもよく、偏延伸、例えば、縦方向に1.1~4倍、横方向に2~6倍延伸であってもよい。また、一軸延伸の場合、縦延伸、例えば、縦方向に2.5~8倍延伸であってもよく、横延伸、例えば、横方向に1.2~5倍延伸であってもよい。
【0169】
延伸フィルムの平均厚みは、例えば1~150μm、好ましくは3~120μm、さらに好ましくは5~100μmである。
【0170】
なお、このような延伸フィルムは、成膜後のフィルム(または未延伸フィルム)に、延伸処理を施すことにより得ることができる。延伸方法は、特に制限が無く、一軸延伸の場合、湿式延伸法または乾式延伸法のいずれであってもよく、二軸延伸の場合、テンター法(フラット法)であってもチューブ法であってもよいが、延伸厚みの均一性に優れるテンター法が好ましい。
【実施例0171】
以下に、実施例に基づいて本開示をより詳細に説明するが、本開示はこれらの実施例によって限定されるものではない。以下に、評価項目および原料の詳細について示す。
【0172】
[評価方法]
(分子量)
試料をクロロホルムに溶解し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(東ソー(株)製「HLC-8320GPC」)を用いて、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwを求めた。
【0173】
(屈折率およびアッベ数)
多波長アッベ屈折計((株)アタゴ製「DR-M2/1550」)を用いて、接触液に1-ブロモナフタレンを使用して、測定温度20℃、測定波長486nm(F線)、589nm(D線)、656nm(C線)における屈折率nF、nD、nCをそれぞれ測定した。なお、アッベ数は以下の式によって算出した。
【0174】
アッベ数=(nD-1)/(nF-nC)
【0175】
なお、屈折率およびアッベ数の測定試験片は、試料を200~280℃で熱プレスすることによって、厚みが10~100μmのフィルムを成形し、このフィルムを縦10mm×横10~20mm程度の短冊状に切り出すことで作製した。
【0176】
(ガラス転移温度Tg)
示差走査熱量計(エスアイアイナノテクノロジー(株)製「EXSTAR6000 DSC6220 ASD-2」)を用いて、窒素雰囲気下、10℃/分の昇温速度で測定した。
【0177】
[原料]
DMN:2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチル
DMI:イソフタル酸ジメチル
FDP-m:9,9-ビス(2-メトキシカルボニルエチル)フルオレン
BPEF:9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、大阪ガスケミカル(株)製
BОPPEF:9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレン
EG:エチレングリコール
REO:1,3-ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼン
HEO:1,4-ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼン
BDM:1,4-ベンゼンジメタノール
【0178】
[比較例1]
ジオール成分としてBPEF(37.27g、85mmol)、EG(13.35g、215mmol)、ジカルボン酸成分としてDMN(24.42g、100mmol)、エステル交換反応および重縮合反応の触媒として、チタン(IV)テトラブトキシド(16.0mg、47μmol)を仕込み、窒素雰囲気下、240℃まで徐々に加熱しつつ撹拌し、エステル交換反応を行った。エステル交換反応により生成するアルコール成分を除去した後、徐々に290℃、130Paまで昇温、減圧し、EGを除去しながら重縮合反応を行った。反応終了後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂を得た。
【0179】
[比較例2~3および実施例3、6、9]
ジオール単位およびジカルボン酸単位の組成を表1に示すポリマー組成に変更する以外は比較例1と同様にしてポリエステル樹脂を得た。
【0180】
[実施例1]
ジオール成分としてBPEF(39.47g、90mmol)、REO(1.98g、10mmol)、EG(12.41g、200mmol)、ジカルボン酸成分としてDMN(24.42g、100mmol)、エステル交換反応および重縮合反応の触媒として、チタン(IV)テトラブトキシド(16.0mg、47μmol)を仕込み、窒素雰囲気下、240℃まで徐々に加熱しつつ撹拌し、エステル交換反応を行った。エステル交換反応により生成するアルコール成分を除去した後、徐々に290℃、130Paまで昇温、減圧し、重縮合反応を行った。反応終了後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂を得た。
【0181】
[実施例2、4~5、7~8および10~11]
ジオール単位およびジカルボン酸単位の組成を表1に示す組成に変更する以外は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂を得た。
【0182】
結果を表1に示す。
【0183】
【表1】
【0184】
表1から明らかなように、比較例1と実施例4とを比較すると、比較例1ではガラス転移温度が170℃を超えており、光学レンズなどの用途では、取り扱いが困難であり、成形加工性が低い。これに対して、実施例4では、比較例1のEGに代えて、ガラス転移温度が上昇すると予測される芳香族化合物であるREOを用いているにも拘わらず、ガラス転移温度が10℃以上も低下する意外な結果となり、成形性が大きく向上した。
【0185】
さらに、他の実施例についても、実施例4と同様に、屈折率が1.655以上と高い水準を維持しつつ、アッベ数も20程度で、ガラス転移温度も160℃前後で成形性に優れ、かつ耐熱性も備えた範囲にある。これに対して、比較例では、屈折率とガラス転移温度とを両立できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0186】
本開示のポリエステル系樹脂は、優れた光学的特性などを示すため、様々な用途、例えば、コーティング剤またはコーティング膜、具体的には、塗料、インキ、電子機器や液晶部材などの保護膜など;接着剤、粘着剤;樹脂充填剤;電気・電子材料または電気・電子部品(電気・電子機器)、具体的には、帯電防止剤、キャリア輸送剤、発光体、有機感光体、感熱記録材料、フォトクロミック材料、ホログラム記録材料、帯電防止トレイ、導電シート、光ディスク、インクジェットプリンタ、デジタルペーパ、カラーフィルタ、有機EL素子、有機半導体レーザ、色素増感型太陽電池、センサ、EMIシールドフィルムなど;機械材料または機械部品(機器)、具体的には、自動車用材料または部品、航空・宇宙関連材料または部品、摺動部材などに利用してもよい。
【0187】
本開示のポリエステル系樹脂は、光学部材として特に有効に利用できる。代表的な光学部材としては、液晶用フィルム、有機EL用フィルムなどの光学フィルム(光学シート);メガネ用レンズ、カメラ用レンズなどの光学レンズ;プリズム、ホログラム、光ファイバーなどが挙げられる。
【0188】
光学フィルムとしては、例えば、偏光フィルム、偏光フィルムを構成する偏光素子と偏光板保護フィルム、位相差フィルム、配向膜(配向フィルム)、視野角拡大(補償)フィルム、拡散板(フィルム)、プリズムシート、導光板、輝度向上フィルム、近赤外吸収フィルム、反射フィルム、反射防止(AR)フィルム、反射低減(LR)フィルム、アンチグレア(AG)フィルム、透明導電(ITO)フィルム、異方導電性フィルム(ACF)、電磁波遮蔽(EMI)フィルム、電極基板用フィルム、カラーフィルタ基板用フィルム、バリアフィルム、カラーフィルタ層、ブラックマトリクス層、光学フィルム同士の接着層もしくは離型層などが挙げられる。これらの光学フィルムは、液晶ディスプレイ(LCD)、有機ELディスプレイ(OLED)、プラズマディスプレイ(PDP)、フィールド・エミッション・ディスプレイ(FED)、電子ペーパなどのディスプレイ用の光学フィルムとして有効に利用でき、具体的な機器または装置としては、テレビジョン;デスクトップ型PC、ノート型PCまたはタブレット型PCなどのパーソナル・コンピュータ(PC);スマートフォン、携帯電話;カー・ナビゲーションシステム;タッチパネルなどフラットパネルディスプレイ(FPD)を備えた機器または装置などが挙げられる。
【0189】
光学レンズとしては、例えば、メガネ用レンズ、コンタクトレンズ、カメラ用レンズ、VTRズームレンズ、ピックアップレンズ、フレネルレンズ、太陽集光レンズ、対物レンズ、ロッドレンズアレイなどが挙げられ、なかでもカメラ用レンズなどの低アッベ数が要求されるレンズに好適に利用できる。このような光学レンズが搭載される機器または装置として、代表的には、スマートフォン、携帯電話、デジタルカメラなどのカメラ機能を有する小型機器またはモバイル機器;ドライブレコーダー、バックカメラ(リアカメラ)などの車載用カメラなどが挙げられる。本開示のポリエステル系樹脂は、低アッベ領域のアッベ数を有するため、特に光学レンズとして好適に利用できる。