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特開2024-144304レシピの推薦方法,レシピの推薦方法を実行するコンピュータプログラム,及びレシピ推薦装置。
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144304
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】レシピの推薦方法,レシピの推薦方法を実行するコンピュータプログラム,及びレシピ推薦装置。
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20241003BHJP
   G16H 20/00 20180101ALI20241003BHJP
【FI】
G06Q50/10
G16H20/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024049087
(22)【出願日】2024-03-26
(31)【優先権主張番号】P 2023054872
(32)【優先日】2023-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYTHON
(71)【出願人】
【識別番号】504300088
【氏名又は名称】国立大学法人北海道国立大学機構
(71)【出願人】
【識別番号】511307144
【氏名又は名称】アドバンストヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115613
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 寧司
(72)【発明者】
【氏名】前田 康成
(72)【発明者】
【氏名】高野 賢裕
【テーマコード(参考)】
5L050
5L099
【Fターム(参考)】
5L050CC11
5L099AA15
(57)【要約】
【課題】食材購入コスト等の経済的な視点及び食品ロスの視点,そしてヘルスケアの視点を含めたレシピを推薦する方法を提供すること。
【解決手段】T回(1≦t≦T,但しTは2以上の整数,tは整数)のレシピの推薦に際し,動的計画法を用いて推薦するレシピの利益の最大化又は損失の最小化を図るレシピの推薦方法であって,前記利益の最大化又は損失の最小化が,ヘルスケア視点で定義するスコアの最大化又はヘルスケア視点で定義するロスの最小化であり,前記スコア又はロスが,前記レシピに含まれる栄養素についてその推奨摂取量を満たすか満たさないかに基づいて決定するものであるレシピの推薦方法とした。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
T回(1≦t≦T,但しTは2以上の整数,tは整数)のレシピの推薦に際し,動的計画法を用いて推薦するレシピの利益の最大化又は損失の最小化を図るレシピの推薦方法であって,
前記利益の最大化又は損失の最小化が,ヘルスケア視点で定義するスコアの最大化又はヘルスケア視点で定義するロスの最小化であり,
前記スコア又はロスが,前記レシピに含まれる栄養素についてその推奨摂取量を満たすか満たさないかに基づいて決定するものであるレシピの推薦方法。
【請求項2】
前記スコアが,前記レシピに含まれる栄養素についてその推奨摂取量の上限と下限の範囲内にある栄養素の数とするものであり,
前記スコアの最大化が前記T回全体でのスコアの最大化であるか,又は各回のスコアの最大化であり,
前記ロスが,前記レシピに含まれる栄養素についてその推奨摂取量を満たせば0,満たさなければその推奨摂取量の基準(上限又は下限)との差の基準に対する割合とするものであり,
前記ロスの最小化が前記T回全体でのロスの最小化であるか,又は各回のロスの最小化である
請求項1記載のレシピの推薦方法。
【請求項3】
余剰食材の重量と,追加購入可能な購入食材の予算,当該余剰食材又は当該購入食材を廃棄する場合に許容し得る重量の条件を設定したもとで,
前記余剰食材又は前記購入食材の消費期限までの残日数と,
前記余剰食材,前記購入食材そして推薦候補となるレシピに含まれる栄養素とその含有量のデータを用いて,T回の前記レシピの推薦と,T回以内の追加購入食材の推薦とを行う前記動的計画法を実行する請求項2記載のレシピの推薦方法。
【請求項4】
前記動的計画法において,
t回からt+1回に変化させる際に次の手順1から手順6,
手順1;前記食材の消費期限までの残日数について,t回目からt+1回目までの経過日数を差し引くこと,
手順2;前記食材の重量について,t回目に推薦したレシピに使われた重量を差し引き,t回目に推薦した追加食材があればその重量を付け加えること,
手順3;t回目のレシピ推薦後に消費期限までの前記残日数が0になって発生する食材の廃棄重量を算出し,前記許容し得る重量から差し引くこと,
手順4;前記予算について,t回目に推薦した追加食材があればその費用を差し引くこと,
手順5;前記食材の廃棄を許容し得る重量までの残許容量を更新すること,
手順6;t回目のレシピ推薦で推薦したレシピをレシピの履歴情報に加えること,
を行う請求項3記載のレシピの推薦方法。
【請求項5】
前記食材に関する情報を,電子レシートを通じて得る請求項4記載のレシピの推薦方法。
【請求項6】
請求項1~請求項5何れか1項のレシピの推薦方法を実行するコンピュータプログラム。
【請求項7】
制御手段,記憶手段,及び通信手段を有し,請求項1~請求項5何れか1項のレシピの推薦方法を実行するレシピ推薦装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,ユーザの有する食材を考慮してレシピを推薦するレシピの推薦方法とそのレシピの推薦方法に用いるコンピュータプログラム,そしてレシピ推薦装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から,ヘルスケアの視点に基づく料理レシピ(以下「レシピ」と略す)の推薦に関して,数多く検討されている。例えば,インターネット上のレシピサイトでは健康面を配慮したレシピが数多く紹介されている。
数理工学分野でも,ヘルスケア視点に基づくレシピ推薦の検討が多い。苅米ら(非特許文献1)では栄養バランスのよい献立(複数レシピの組合せ)推薦,三野ら(非特許文献2)では日々のスケジュールでのカロリー消費も考慮したレシピ推薦が検討されている。花井ら(非特許文献3),前田(非特許文献4)では,レシピ中の食材の他の食材での代替による,元レシピよりも健康的なレシピ生成が検討されている。しかし,これらの従来研究ではヘルスケア視点の検討のみで,食材の購入,余剰食材の有効活用などは考慮していない。そのため,推薦レシピに対する食材購入コストが高コストであったり,多くの食品ロス(食材廃棄)が発生したりする可能性がある。
【0003】
従来研究の中には,ヘルスケア視点に加えて食材購入や余剰食材の有効活用を考慮した研究もある。林ら(非特許文献5)では,1日分の食材購入コストの限度額のもとで献立を推薦する。鄭ら(非特許文献6)では,余剰食材を有効活用するレシピを推薦する。しかし,前記林ら,前記鄭らでは食材の消費期限を考慮しないため,消費期限までの残日数が短い余剰食材がある場合には適用が難しい。また,栄養面や食品ロスに関する最適化は未検討である。
【0004】
食品ロス視点のレシピ推薦に関する木原ら(非特許文献7),前田(非特許文献8),前田(非特許文献9),前田(非特許文献10)では,消費期限を考慮して余剰食材を活用するレシピ推薦を検討している。前田(非特許文献9)及び前田(非特許文献10)では,同一食材で重量や価格が異なる商品を考慮し,食品ロスと食材購入コストの総和の最小化,食材購入限度額のもとでの食品ロス最小化,最小食品ロスのもとでの購入コスト最小化のための,レシピ推薦と食材購入方法を検討している。しかし,上記木原ら及び上記前田(非特許文献8~10)では,ヘルスケアは未検討である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】S. Karikome and A. Fujii: “A Retrieval System for Cooking Recipes Considering Nutritional Intake Balance”, IEICE Transaction on Information and Systems, Vol.J92-D, No.7, pp.975-983 (2009) (in Japanese)苅米志帆乃・藤井敦:「栄養素等摂取バランスを考慮した料理レシピ検索システム」,信学論D,Vol.J92-D, No.7, pp.975-983 (2009)
【非特許文献2】Y. MINO and I. KOBAYASHI: “Flexible Recommendation of Cooking Recipes for a Diet”, Journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics, Vol.24, No.1, pp.616-626 (2012) (in Japanese)三野陽子・小林一郎:「ダイエットのための柔軟なレシピ推薦」,知能と情報, Vol.24, No.1, pp.616-626 (2012)
【非特許文献3】花井俊介・難波英嗣・灘本明代:「健康を意識した代替食材の発見手法」,DEIM2015, G6-6 (2015)
【非特許文献4】Y. Maeda: “A Note on Supporting Method for Making Recipes with Control of Nutritional Elements”, IEEJ Trans.EIS, Vol.131, No.9, pp.1654-1655 (2011) (in Japanese)前田康成:「特定栄養素を調整する新規料理レシピ発想支援方法」,電学論C,Vol.131, No.9, pp.1654-1655 (2011)
【非特許文献5】Y. Hayashi, R. Oku, H. Takenouchi and M. Tokumaru: “Consideration of Ingredient Purchases Using the Healthy Eating Habits Support System”, 31st Fuzzy System Symposium, TE1-3 (2015) (in Japanese)林優太・奥良太・竹之内宏・徳丸正孝:「食材の購入を考慮した食生活支援システム」,第31 回ファジィシステムシンポジウム,TE1-3 (2015)
【非特許文献6】M. Zheng, E. Inoue and M. Nakagawa: “Recommending Cooking Recipes Considering the Amount of Ingredients”, DEIM2011, E3-4 (2011) (inJapanese)鄭美玲・井上悦子・中川優:「食材の使い切りを考慮した期間的な料理レシピセットの推薦」,DEIM2011, E3-4 (2011)
【非特許文献7】H. Kihara, M. Ueda and S. Nakajima: “Proposal of recipe recommendation method for using up surplus ingredients”, DEIM2011, E3-3 (2011) (inJapanese)木原ひかり・上田真由美・中島伸介:「余剰食材の使い切りを考慮したレシピ推薦手法の提案」,DEIM2011, E3-3 (2011)
【非特許文献8】Y. Maeda: “A Note on Recommendation Method for Recipes Considering Expiration Date”, IEICE Transaction on Information and Systems, Vol.J103-D, No.11, pp.849-852 (2020) (in Japanese)前田康成:「消費期限を考慮したレシピ推薦方法に関する一考察」,信学論D,Vol.J103-D, No.11, pp.849-852 (2020)
【非特許文献9】Y. Maeda: “Recommendation of Recipes and Additional Purchase of Ingredients Considering Expiration Date”, Journal of Biomedical Fuzzy Systems Association, Vol.23, No.1, pp.9-16 (2021) (in Japanese)前田康成:「消費期限を考慮したレシピ推薦と食材の追加購入」,バイオメディカル・ファジィ・システム学会誌,Vol.23, No.1, pp.9-16 (2021)
【非特許文献10】Y. Maeda: “Minimizing Food Loss under the Limit on Cost of Purchasing Additional Ingredients”, IEEJ Trans.EIS, Vol.142, No.8, pp.877-883 (2022) (in Japanese)前田康成:「食材の追加購入コストの限度額のもとでの食品ロスの最小化」,電学論C,Vol.142, No.8, pp.877-883 (2022)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ヘルスケア視点のレシピ推薦においても,実際の食生活への適用を想定すると,食材購入コストなどの経済的な視点や,食品ロスの視点も必要であり,これら全てを考慮してレシピの推薦を行うことは好ましい。
あるいはまた,ユーザの有する食材の状況が変化した際にいち早くその変化後の食材に対応したレシピの推薦をすることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために,本開示は次の構成を有するものである。
[1]本開示は,T回(1≦t≦T,但しTは2以上の整数,tは整数)のレシピの推薦に際し,動的計画法を用いて推薦するレシピの利益の最大化又は損失の最小化を図るレシピの推薦方法であって,前記利益の最大化又は損失の最小化が,ヘルスケア視点で定義するスコアの最大化又はヘルスケア視点で定義するロスの最小化であり,前記スコア又はロスが,前記レシピに含まれる栄養素についてその推奨摂取量を満たすか満たさないかに基づいて決定するものであるレシピの推薦方法である。
【0008】
本開示は,T回(1≦t≦T,但しTは2以上の整数,tは整数)のレシピの推薦に際し,動的計画法を用いて推薦するレシピの利益の最大化又は損失の最小化を図るレシピの推薦方法であって,前記利益の最大化又は損失の最小化が,ヘルスケア視点で定義するスコアの最大化又はヘルスケア視点で定義するロスの最小化であり,前記スコア又はロスが,前記レシピに含まれる栄養素についてその推奨摂取量を満たすか満たさないかに基づいて決定するものであるレシピの推薦方法としたため,T回目のレシピ推薦から1回目まで遡りながら処理し,t+1回目以降の最大総スコアを再帰的に利用することができる。この先読みによって,ヘルスケア視点から推薦レシピのスコアを最大化又はロスを最小化する計画的なレシピ推薦を実現することができる。
【0009】
[2]本開示は,前記スコアが,前記レシピに含まれる栄養素についてその推奨摂取量の上限と下限の範囲内にある栄養素の数とするものであり,前記スコアの最大化が前記T回全体でのスコアの最大化であるか,又は各回のスコアの最大化であり,
前記ロスが,前記レシピに含まれる栄養素についてその推奨摂取量を満たせば0,満たさなければその推奨摂取量の基準(上限又は下限)との差の基準に対する割合とするものであり,前記ロスの最小化が前記T回全体でのロスの最小化であるか,又は各回のロスの最小化であるレシピの推薦方法である。
【0010】
本開示は,前記スコアが,前記レシピに含まれる栄養素についてその推奨摂取量の上限と下限の範囲内にある栄養素の数とするものであり,前記スコアの最大化が前記T回全体でのスコアの最大化であるか,又は各回のスコアの最大化であり,
前記ロスが,前記レシピに含まれる栄養素についてその推奨摂取量を満たせば0,満たさなければその推奨摂取量の基準(上限又は下限)との差の基準に対する割合とするものであり,前記ロスの最小化が前記T回全体でのロスの最小化であるか,又は各回のロスの最小化であるレシピの推薦方法としたため,食材に含まれる栄養素に着目し,摂取する栄養素の観点から最良のレシピの推薦を行うことができる。
【0011】
[3]本開示は,余剰食材の重量と,追加購入可能な購入食材の予算,当該余剰食材又は当該購入食材を廃棄する場合に許容し得る重量の条件を設定したもとで,前記余剰食材又は前記購入食材の消費期限までの残日数と,前記余剰食材,前記購入食材そして推薦候補となるレシピに含まれる栄養素とその含有量のデータを用いて,T回の前記レシピの推薦と,T回以内の追加購入食材の推薦とを行う前記動的計画法を実行するレシピの推薦方法である。
【0012】
本開示は,余剰食材の重量と,追加購入可能な購入食材の予算,当該余剰食材又は当該購入食材を廃棄する場合に許容し得る重量の条件を設定したもとで,前記余剰食材又は前記購入食材の消費期限までの残日数と,前記余剰食材,前記購入食材そして推薦候補となるレシピに含まれる栄養素とその含有量のデータを用いて,T回の前記レシピの推薦と,T回以内の追加購入食材の推薦とを行う前記動的計画法を実行するレシピの推薦方法としたため,所定の前提のもとで実験計画法を実行することができ,その前提のもとでの最良のレシピの推薦を行うことができる。
【0013】
[4]本開示は,前記動的計画法において,
t回からt+1回に変化させる際に次の手順1から手順6,
手順1;前記食材の消費期限までの残日数について,t回目からt+1回目までの経過日数を差し引くこと,
手順2;前記食材の重量について,t回目に推薦したレシピに使われた重量を差し引き,t回目に推薦した追加食材があればその重量を付け加えること,
手順3;t回目のレシピ推薦後に消費期限までの前記残日数が0になって発生する食材の廃棄重量を算出し,前記許容し得る重量から差し引くこと,
手順4;前記予算について,t回目に推薦した追加食材があればその費用を差し引くこと,
手順5;前記食材の廃棄を許容し得る重量までの残許容量を更新すること,
手順6;t回目のレシピ推薦で推薦したレシピをレシピの履歴情報に加えること,
を行うレシピの推薦方法である。
【0014】
本開示は,前記動的計画法において,
t回からt+1回に変化させる際に次の手順1から手順6,
手順1;前記食材の消費期限までの残日数について,t回目からt+1回目までの経過日数を差し引くこと,
手順2;前記食材の重量について,t回目に推薦したレシピに使われた重量を差し引き,t回目に推薦した追加食材があればその重量を付け加えること,
手順3;t回目のレシピ推薦後に消費期限までの前記残日数が0になって発生する食材の廃棄重量を算出し,前記許容し得る重量から差し引くこと,
手順4;前記予算について,t回目に推薦した追加食材があればその費用を差し引くこと,
手順5;前記食材の廃棄を許容し得る重量までの残許容量を更新すること,
手順6;t回目のレシピ推薦で推薦したレシピをレシピの履歴情報に加えること,
を行うレシピの推薦方法としたため,T回目のレシピ推薦及び食材の追加購入量から1回目まで遡りながら処理し,t+1回目以降の最大スコア又は最小ロスを再帰的に利用することができる。この先読みによって,ヘルスケア視点から推薦レシピのスコアを最大化又はロスを最小化する計画的なレシピ推薦と食材の追加購入量の提案を実現することができる。
【0015】
[5]本開示は,前記食材に関する情報を,電子レシートを通じて得る請求項4記載のレシピの推薦方法とすることができる。
本開示は,前記食材に関する情報を,電子レシートを通じて得る請求項4記載のレシピの推薦方法としたため,購入した食材に関する情報を電子レシートの発行元から電子情報として受領することができ,ユーザが購入した食材情報を逐一入力する等の手間を省略することができる。
【0016】
[6]本開示は,前記何れかのレシピの推薦方法を実行するコンピュータプログラムとすることができる。
本開示を前記何れかのレシピの推薦方法を実行するコンピュータプログラムとしたため,前記何れかのレシピの推薦方法をコンピュータ上で実行することができる。
【0017】
[7]本開示は,制御手段,記憶手段,及び通信手段を有し,前記何れかのレシピの推薦方法を実行するレシピ推薦装置とすることができる。
本開示は,制御手段,記憶手段,及び通信手段を有し,前記何れかのレシピの推薦方法を実行するレシピ推薦装置としたため,このレシピ推薦装置で前記レシピの推薦方法を実行することができる。
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
本開示は,t回目のレシピ推薦後に,t回目のレシピ推薦時に推薦された食材の追加購入量を超えた食材又は推薦された食材以外の食材等の新たな食材情報を追加して,新たに動的計画法を実施してレシピ推薦を行うレシピの推薦方法とすることができ,当初予定の無かった新たな食材情報の追加があれば,その食材情報も考慮した新たなレシピと食材の追加購入量の提案を行うことができる。
【0025】
本開示は,t回目のレシピ推薦後に,t回目のレシピ推薦時に推薦された食材の追加購入量の食材を購入したことの情報を受領しない場合に,残りの回数のレシピ推薦を行わないレシピの推薦方法とすることができ,当初の条件のもとで提案される予定の残りの回数のレシピ推薦を受領する無駄を省略することができる。
【発明の効果】
【0026】
本開示のレシピの推薦方法,レシピの推薦方法を実行するコンピュータプログラム,及びレシピ推薦装置によれば,食材購入コストなどの経済的な視点や,食品ロスの視点,そしてヘルスケアの視点,これら全てを考慮したレシピの推薦を行うことができる。
本開示のレシピの推薦方法,レシピの推薦方法を実行するコンピュータプログラム,及びレシピ推薦装置によれば,ユーザの有する食材の状況が変化した際にいち早くその変化後の食材に対応したレシピの推薦を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】レシピ提供システムのブロック図である。
図2】レシピ推薦装置のブロック図である。
図3】動的計画法のアルゴリズムの処理を説明する説明図である。
図4】動的計画法のアルゴリズムの処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本開示のレシピの推薦方法を実施形態に基づいて説明する。なお,以下の説明において異なる態様であっても,同一の操作方法や種々の条件,作用,効果等について重複する部分があればその説明を省略する。
【0029】
[レシピ推薦システムのシステム構成]
本開示によるレシピの推薦方法の実行を行うレシピ提供システム1(以下「システム」ともいう)の一実施形態を図1のブロック図で示す。レシピ提供システム1は,レシピ推薦装置10と,ユーザ端末20と,これらを通信可能に接続するネットワーク50等を備えたシステムである。
【0030】
ユーザ端末20は,ユーザが利用するスマートフォン,タブレット,PDA等の携帯情報端末,ウエアラブルコンピュータ,又はパーソナルコンピュータ等である。ユーザ端末20を構成するハードウエアは,各種演算等を行い制御手段となるCPU等のプロセッサを有し,ネットスーパーや実店舗を有するスーパーで発行可能な電子レシートに記録された情報等のデータ,及びプログラムを記録するROM,プログラムの実行に用いるRAM,大量のデータを記録する補助記憶手段となるHDD等,記録したデータをレシピ推薦装置10に送信する通信手段としての通信インターフェースを有している。さらに,レシピ推薦装置10から受領した種々のデータや画像等を表示する表示部,キーやタッチセンサ,スキャナー等のユーザ操作を行うための入力部を有している。
【0031】
ユーザが紙レシートに表示された食材やその価格,量等を入力部を通じて入力すると,それらのデータは通信手段を通じて後述するレシピ推薦装置10に送信することができる。あるいはまた,ユーザが冷蔵庫内を撮影した画像等のデータを入力部を通じて入力すると,そのデータは通信手段を通じて後述する外部サーバに送信し,その外部サーバから食材名等に変換されたデータ等を通信手段を通じて受領し記憶手段に記録することができる。
【0032】
レシピ推薦装置10のシステム構成を表すブロック図を図2に示す。レシピ推薦装置10は,レシピ提供システム1の主管理サーバ装置であり,制御手段11,主記憶手段12,補助記憶手段13,通信手段14,及びその他の手段15を有している。主記憶装置12と補助記憶装置13を合わせて記憶装置ともいう。
制御手段11は,各種演算等を行う演算部であり,CPUやGPU等のプロセッサである。主記憶手段12は,プログラムやデータを記録する記憶部であり,ROMやRAM等からなる。補助記憶手段13は,大量のデータを記録する記憶部であり,HDDやSSD,フラッシュメモリ等の装置である。通信手段14は,ユーザ端末20との間やネットワーク50を介して他のコンピュータとデータ通信を行う通信部であり,ネットワークカードや無線通信モジュール等を用いて実行することができる。これらの構成以外にも表示手段や入力手段等を含むその他の手段15を有している。
【0033】
レシピ提供システム1では,上記のほかに,ネットスーパーや実店舗を有するスーパー等が利用する店舗サーバや,電子レシート事業者が利用するレシートサーバ,ユーザ関連情報やレシピ情報等の種々の情報やデータを管理及び記録することが可能な外部サーバ,その他の各種サーバを有していても良く,それらのサーバもまたネットワーク50を解して情報やデータの授受が可能に構成される。
【0034】
[レシピ推薦装置の機能]
次にレシピ推薦装置10の機能について説明する。なお,以下の機能はレシピ推薦装置10のCPU等の制御手段がプログラムを実行することにより実現される。
【0035】
記憶部:
記憶部は種々の情報やデータを記録する部位であり,主記憶手段12や補助記憶手段13等の記憶手段に備わるものとすることができる。あるいはまた,レシピ推薦装置10とは別の外部サーバに管理される記憶装置(図示せず)に記録されるものとしても良い。
【0036】
レシピデータベース(レシピDB):
レシピデータベース16は,ユーザに推薦するレシピを記録するデータベースである。各レシピに含まれる情報には,サーモンのトマト煮や牛モモの牛すき煮といったレシピの名称,玉ネギやトマトといったレシピに使われる食材名とそのレシピにおける食材の番号,そのレシピにおいてその食材が使われる分量(g),レシピに含まれる栄養素とその含量,ヘルスケア視点からのスコア,その他のレシピとして提供される料理を作るのに必要な情報が含まれる。また,食材としての肉,魚又は野菜等とは別に調味料等を含んでもよい。
【0037】
栄養素データベース(栄養素DB):
栄養素データベース17は,食材の有する栄養素に関する情報やデータを記録するデータベースである。栄養素に関する情報には,栄養素の名称(種類),例えば,ビタミンA,カルシウム,リン等が挙げられ,エネルギー(カロリー)も栄養素の名称に含めることができる。また,その栄養素をヒトが1日に摂取して良い上限値や,1日に摂取が必要な下限値等についても栄養素に関する情報に含まれる。
【0038】
食材データベース(食材DB):
食材データベース18は,各種食材に関する情報を記録するデータベースである。各種食材に関する情報には,玉ネギやトマトといった食材の名称,その食材の量(g)が挙げられる。食材の購入後に全く使われていない食材の購入量や,購入後に一部を使ったが残っている場合にはその残量を併せて余剰量ということもできる。さらに食材に関する情報には,その食材の消費期限までの残日数(日)(ここで,消費期限の最後の日を1日とし,0日になると消費期限が過ぎて消費できないといったようにカウントした日数をいう),食材に含まれる栄養素とその含量,その他のレシピに使われる食材に必要な情報等を挙げることができる。
また,食材情報として,その食材の産地,食材の入荷時等の食材に関する情報を含んでいても良い。これらの情報は画像情報として記憶されたものも含めることができる。
【0039】
食材商品データベース(食材商品DB):
食材商品データベース19は,食材商品(ここで,同一食材でも購入時の重量や価格が異なるまとまりを食材商品とする)の量(g)と価格と消費期限までの残日数,その他の食材が何らかのまとまりある商品とされている場合に,それらの商品に関する情報を含んだデータベースである。
【0040】
ユーザデータベース(ユーザDB):
ユーザデータベース20は,レシピ推薦を受けるユーザに関する情報を記録するデータベースである。ユーザデータベース20には,ユーザの氏名,年齢,住所,性別,ユーザ番号等のユーザを特定する事項の他,ユーザの購入した商品に関する履歴情報,例えば,電子レシートの情報や紙レシートを写真に撮った後テキストデータに変換された情報等のユーザの取得した食材等に関する情報,ユーザの有する冷蔵庫内を撮影した画像から処理された食材情報や,その冷蔵庫内に設けた計量手段から得られた食材重量情報等を記録するデータベースである。また,これらの他,ユーザが要望する食材の追加購入の予算の額,例えば,T日間でT回のレシピの推薦を受けるために,それらのレシピを作成するために購入しなければならない食材の追加購入の限度額であったり,食材が廃棄される廃棄限度量,例えば,T日間でT回のレシピの推薦を受け,それらのレシピを作成した後に食材が残っていることを許容できるその食材の残量(g),あるいは,それらの食材が廃棄されるとした場合の廃棄限度量である。その他,レシピ推薦の履歴情報,即ちこれまでに推薦を受けたレシピの名称と回数等のユーザの要望する種々の情報が含まれる。
【0041】
その他のデータベース(その他DB):
その他のデータベース21は,演算の過程で生じる種々のデータや,一時的に保管するデータなどの他,上記各種データベース16,17,18,19,20で記録される情報やデータ以外の情報やデータを記録するデータベースである。
【0042】
外部情報データベース(外部情報DB):
外部情報データベース22は,ネットスーパーや実店舗を有するスーパー等の店舗サーバから送られてくる情報やデータ,電子レシート事業者が利用するレシートサーバから送られてくる情報やデータ等,ユーザ端末30以外と送受信して得られる情報やデータを記録するデータベースである。
【0043】
[レシピ推薦の方法]
次にレシピ推薦の方法をレシピ推薦装置10の動作とともに説明する。
ユーザからのレシピ推薦の要求に伴いレシピ推薦装置10が好適なレシピを推薦を行う。なお,明細書及び請求の範囲で「レシピの推薦」はレシピの提供と同意である。
【0044】
データの取得:
データ取得部22として機能する制御手段11は,レシピDB16,栄養素DB17,食材DB18,食材商品DB19等から,レシピ推薦前の初期の食材の余剰量,消費期限までの残日数,推薦回数,食材の追加購入の限度額,食材を廃棄しても良いとする廃棄限度量に関する初期データ,そして,その初期データに関連してレシピ推薦に必要な情報であるレシピ情報や,栄養素情報,食材情報,食材商品情報を取得する。
【0045】
ユーザが新たに購入した食材に関する情報は,ユーザがユーザ端末30から入力して記憶手段12,13に記録することができるが,電子レシート事業者のレシートサーバと連携して電子レシートの情報をレシピ推薦装置10に取り込んだり,ユーザの冷蔵庫内の食材検知システムとデータ連携してレシピ推薦装置10に取り込んだりすることができる。
【0046】
ヘルスケア視点からのスコアの算出:
ヘルスケア視点とは,レシピで使われる食材の栄養を考慮することであり,ヘルスケア視点からのスコアとは,レシピに含まれる食材や栄養素に基づいて算出したスコアである。このスコアの算出には,食品群での評価と,栄養素での評価に基づく算出方法があり,前者では,食品群ごとに推奨の摂取量に関してレシピを評価するものであり,後者では,レシピ中の全食材の栄養素の含有量を算出し,栄養素ごとに推奨摂取量に関してレシピを評価するものである。以下では,栄養素での評価を採用した。より具体的には,レシピに含まれる個々の栄養素について,その推奨摂取量の下限及び上限の範囲内にあるか否かを考慮し,その範囲内にある栄養素の数をスコアとした。例えば,レシピAには,ビタミンA,ビタミンB,タンパク質,脂質,……を栄養素として含むが,ビタミンAとビタミンBについてはその推奨摂取量の範囲内にあるが,タンパク質は推奨摂取量の範囲よりも少なくて逸脱し,脂質はその推奨摂取量の範囲よりも多くて逸脱し,その他の栄養素も推奨摂取量の範囲を逸脱する場合には,レシピAの含有する栄養素で推奨摂取量の範囲にあるのはビタミンAとビタミンBの2種であるのでレシピAのスコアは2と算出した。
スコア計算部24として機能する制御手段11では,レシピの食材情報に基づきレシピごとのスコアを算出する。なお,レシピ毎に予めスコアを算出してレシピ名とスコアを同時に記録しておくことができる。
【0047】
ヘルスケア視点からのロスの算出:
前記スコアとは別に,各栄養素の含量が標準摂取量等に対する不足量/超過量の割合を利用したロス(損失)を定義し,ヘルスケア視点のロスを最小化する提案を行う。より具体的には,各栄養素の標準摂取量等から外れる割合での評価を基本とし,1回のレシピ推薦単位で評価するロスと,期間全体(T回)で評価するロスの2パターンのロスを定義したもとで各ロスの最小化を達成するレシピを提案する。
スコア計算部24として機能する制御手段11では,レシピの食材情報に基づきレシピごとのロスを算出する。なお,レシピ毎に予めロスを算出してレシピ名とロスを同時に記録しておくことができる。
【0048】
推薦レシピと食材の追加購入量の提案:
食材の追加購入の限度額と,食材が廃棄される廃棄限度量との制限を設けた範囲内で,動的計画法を用い,時間を隔ててT回(1≦t≦T,但しTは2以上の整数,tは整数)のレシピ推薦を予定したときのt回目のレシピ推薦後にその推薦前のある種の状態を更新してt+1回目の状態に変化させる工程を実施し,最終回であるT回目までのレシピ推薦で,前記スコアが最大となるようなレシピと食材の追加購入量を導く。あるいはまた最終回であるT回目までのレシピ推薦で,前記ロスが最小となるようなレシピと食材の追加購入量を導く。
【0049】
ここで,食材の消費期限までの残日数と,食材の余剰量と,食材の追加購入の限度額に対する残予算と,食材の廃棄限度量に対する残許容量と,推薦したレシピの履歴情報とで構成される要素を前記の状態と定義する。そして,次の手順1から手順6の処理を行うことで,t回目のレシピ推薦時の状態からt+1回目のレシピ推薦時の状態に変化させる。
【0050】
手順1;食材の消費期限までの前記残日数について,t回目のレシピ推薦からt+1回目のレシピ推薦までの経過日数を差し引くこと。
手順2;食材の前記余剰量について,t回目に推薦したレシピに使われた食材の量を差し引き,推薦した食材の追加購入量があればそれを付け加えること。
手順3;t回目のレシピ推薦後に消費期限までの前記残日数が0になって発生する食材の廃棄量を算出し,前記余剰量から差し引くこと。
手順4;食材の追加購入の限度額に対する前記残予算について,t回目のレシピ推薦で追加購入する費用が発生した場合にその費用を差し引くこと。
手順5;食材の廃棄限度量に対する前記残許容量について,算出した食材の前記廃棄量を差し引くこと。
手順6;推薦したレシピの前記履歴情報について,t回目のレシピ推薦で推薦したレシピを加えること。
【0051】
【0052】
【0053】
第1実施形態:
レシピの推薦の一実施形態としては,ユーザの所有する食材を前提として,レシピの推薦を受けるに当たって必要な食材の追加購入の限度額と,全てのレシピ推薦を受けた後までに廃棄する食材の廃棄限度量を予め決定しておき,その条件の下で1日に1レシピずつT日間,レシピと食材の追加購入量とをアウトプットとして提供する。そして推薦するレシピは,ヘルスケア視点からのスコア評価が最大となるレシピである。
<定義・準備>
最初に本実施形態で使用する記号などを定義する。
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
各レシピで使用する食材量(グラム,4人前)をTable 6 に示す。ここでは4人前で考える。この例では調味料等は省略している。食材gの1グラム中の栄養素nの含有量g(i,j)をTable 7 とTable 8 に示す(16)。食材商品(重量,価格,消費期限までの残日数)をTable 9 に示す。食材商品の価格は,農林水産省の食品価格動向調査やネットスーパー等の価格を参考にした。初期の余剰食材(余剰量,消費期限までの残日数)をTable 10 に示す。Table 10 に記載されていない食材の初期の余剰量は0である。レシピの推薦回数(日数)はT=4回で,1日1回の夕食の主菜1レシピと当日の食材商品の購入を推薦(算出)する。
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
また,Table 13 の食品ロス100グラムはTable 11 の200グラムより小さい。ただし,Table 13 の追加購入コスト3572円はTable 11 より50円高い。Table 11 とTable 13 の推薦レシピ4個は同じで順番が異なる。順番の違いにより,Table 11 のキャベツ200グラムの廃棄に対して,Table 13 はキュウリ100グラムの廃棄である。初期の余剰食材のキャベツ200グラムはr鶏モモ皮無の肉野菜炒めに40グラム不足のため,キャベツを廃棄しないTable 13 でも,キャベツを追加購入する。そのため,Table 13 の追加購入コストは,キュウリ100グラムの50円分がTable 11 よりも高い。
【0088】
【0089】
このように,追加購入や食品ロスの限度L,Lの変更によって,同じ最大スコアのもとで追加購入コストや食品ロスを改善できる。しかし,各限度の適切な変更具合は不明である。上記アルゴリズムではスコアの最大化のみ実施するが,家庭での経済的な視点や食品ロスの視点も考慮すると,限度内でも,より小さな購入コストや食品ロスが好ましい。
【0090】
<第1実施形態の改善提案方法1のアルゴリズム(アルゴリズム1-2)>
第1実施形態の基本提案方法の改善を検討した。基本提案方法の最大スコアのもとで追加購入コストを最小化し,さらにその最小追加購入コストのもとで食品ロスを最小化する方法を改善提案方法1とした。
【0091】
【0092】
【0093】
<実施例2(アルゴリズム1-2の適用例)>
第1実施形態の改善提案方法1のアルゴリズムを用いた一つの適用例を以下に示す。
基本提案方法のTable 11 と同じ設定(Table 1 からTable 10,回数T=4,追加購入限度額L=5000円,食品ロス限度L2=1000円グラム)の場合の改善提案方法1の結果をTable 14 に示す。
【0094】
【0095】
Table 14 は,基本提案方法のTable 12 と同じ結果である。基本提案方法では追加購入限度Lの5000円から3200円への変更によって,追加購入コストを3162円に低減できた。他方,改善提案方法1では式(14)による最大スコアのもとでの追加購入コスト最小化によって,追加購入限度5000円のもとで追加購入コスト3162円の最適解を算出した。
【0096】
<第1実施形態の改善提案方法2のアルゴリズム(アルゴリズム1-3)>
基本提案方法の改善を改善提案方法1とは別に検討した。基本提案方法の最大スコアのもとで食品ロスを最小化し,さらにその最小食品ロスのもとで追加購入コストを最小化する方法を第1実施形態の改善提案方法2とした。
即ち,改善提案方法2は,改善提案方法1における追加購入コストと食品ロスの優先順位が逆の改善方法である。
【0097】
【0098】
【0099】
<実施例3(アルゴリズム1-3の適用例)>
第1実施形態の改善提案方法2のアルゴリズムを用いた一つの適用例を以下に示す。
基本提案方法のTable 11 と同じ設定(Table 1 からTable 10,回数T=4,追加購入限度額L=5000円,食品ロス限度L2=1000グラム)の場合の改善提案方法2の結果をTable 15 に示す。
【0100】
【0101】
Table 15 の食品ロスは基本提案方法のTable 13 と同じ100グラムである。基本提案方法では食品ロス限度L2の1000グラムから100グラムへの変更によって,食品ロスを100グラムに低減した。他方,改善提案方法2では式(16)による最大スコアのもとでの食品ロス最小化によって,食品ロス限度1000グラムのもとで食品ロス100グラムの最適解を算出した。また,基本提案方法の追加購入コスト3572円に対して,改善提案方法2は3212円である。これは,式(17)によって,最大スコアのもとでの最小食品ロスのもとで,さらに追加購入コストを最小化するからである。
なお,改善提案方法1のTable 14 と改善提案方法2のTable 15 の推薦レシピの組合せは同じで順番が異なり,廃棄食材や追加購入食材も異なる。この違いは,両方法での追加購入コストと食品ロスの優先順位の違いによる。
【0102】
<第1実施形態の提案方法と経験則の比較>
改善提案方法1又は改善提案方法2と簡易な経験則とを比較検討した。なお,最適化問題を解く第1の実施形態の提案方法の最適解が,経験則の解よりもいずれかの視点(スコア/追加購入コスト/食品ロス)で優れることは,最適化問題の性質上,自明であるが,第1実施形態の提案方法と経験則を比較し,その差を具体的に確認した。
【0103】
経験則1 同一レシピの重複推薦はなしで,スコアの高いレシピから推薦する。不足する食材は,当日の追加購入コストが最小の商品を購入する。スコアが同点の場合は,当日の追加購入コストが最小のレシピを推薦する。
経験則2 消費期限までの残日数1の余剰食材の消費を最優先でレシピを推薦する。その他は経験則1と同じ。ただし,残日数1の余剰食材が複数ある場合は,当日の廃棄量が最小のレシピを推薦する。当日の廃棄量が同じ場合は,当日の追加購入コストが最小のレシピを推薦する。
経験則3 同一レシピの重複推薦はなしで,当日の追加購入コストが最小のレシピを推薦する。
経験則4 消費期限までの残日数1の余剰食材の消費を最優先でレシピを推薦する。その他は経験則3と同じ。ただし,残日数1の余剰食材が複数ある場合は,当日の廃棄量が最小のレシピを推薦する。当日の廃棄量が同じ場合は,当日の追加購入コストが最小のレシピを推薦する。
経験則5 当日の追加購入限度を2000円として,その他は経験則1と同じ。
経験則6 当日の追加購入限度を2000円として,その他は経験則2と同じ。
【0104】
第1実施形態の提案方法と経験則の比較結果のうち,レシピのスコア,食品ロス,追加購入コストをTable 16 に示す。共通の設定はTable 1 からTable 10,回数T=4である。IP1_5000は改善提案方法1のTable 14(追加購入限度額5000円,食品ロス限度1000グラム),IP2_5000は改善提案方法2のTable15(追加購入限度額5000円,食品ロス限度1000グラム)の再掲である。IP1_6000,IP2_6000は改善提案方法1及び改善提案方法2の追加購入限度額6000円の場合である。EM1からEM6は経験則1から経験則6である。
【0105】
【0106】
最初に,当日の追加購入コストの最小化のみ目指す経験則3(EM3)と,経験則3に消費期限までの残日数1の場合の優先規則を追加した経験則4(EM4)の結果を確認する。ヘルスケア視点がないため,他の経験則や提案方法よりも明らかにレシピのスコアが低い。また,経験則3と経験則4の比較では,消費期限までの残日数1の場合の優先規則の有無によって,経験則3の方が追加購入コストが低く,経験則4の方が食品ロスが少ないことが確認できる。
【0107】
次にヘルスケア視点を最優先で,スコア最大化のみ目指す経験則1(EM1)と,経験則1に残日数1の場合の優先規則を追加した経験則2(EM2)の結果を確認する。経験則1,2ともにスコアは34で,改善提案方法1又は改善提案方法2の適用例よりも高い。具体的には,スコア10のレシピr牛ヒレのトマトすき焼き(温玉添)(Tomato sukiyaki with egg(beef fillet))の推薦で,総スコア34を達成する。上記提案方法の適用例の追加購入限度額5000円に対して,経験則1,2の追加購入コストはともに5000円より大きい。そこで,改善提案方法1又は改善提案方法2の限度額6000円のIP1_6000,IP2_6000を確認すると,ともにスコアは34である。また,最大スコアのもとで追加購入コストを食品ロスよりも優先して最小化するIP1_6000の追加購入コスト5400円は,経験則1の5500円よりも低い。最大スコアのもとで食品ロスを追加購入コストよりも優先して最小化するIP2_6000の食品ロス100グラムは経験則2と同じである。ただし,改善提案方法2は最大スコアのもとでの最小食品ロスのもとで追加購入コストも最小化するそのため,IP2_6000の追加購入コスト5502円は,経験則2の5642円より140円低い。
【0108】
最後に,経験則1,2に当日の追加購入限度2000円を追加した経験則5,6(EM5,6)を確認する。スコアはともに改善提案方法1又は改善提案方法2のIP1_5000,IP2_5000と同じ32である。食品ロスは,経験則5と追加購入コスト優先のIP1_5000で200グラム,残日数1の食材消費優先の経験則6と食品ロス優先のIP2_5000で100グラムである。他方,追加購入コストは,IP1_5000(3162円)が経験則5よりも100円低く,IP2_5000(3212円)が経験則6よりも170円低い。
【0109】
上記の比較では,改善提案方法1又は改善提案方法2と経験則の主な差は追加購入コストのみに見える。しかし,ヘルスケア視点のスコアにも差があるとも解釈できる。経験則5,6の当日の追加購入限度は2000円で,4日間で最大8000円の支出を許容する。しかし,経験則は単純な当日ごとの処理であり,改善提案方法1又は改善提案方法2のような計画性はない。仮に1日だけ高額の支出(約3000円)を許容すれば,経験則1,2(EM1,2),改善提案方法1又は改善提案方法2のIP1_6000,IP2_6000同様にレシピr牛ヒレのトマトすき焼き(温玉添)の推薦で,追加購入コスト8000円未満でスコア34が可能である。しかし,経験則5,6(EM5,6)では,当日の追加購入限度2000円の簡易な処理のため,実際のスコアは34よりも低い32である。
【0110】
前述のとおり,最適化問題を解く改善提案方法1又は改善提案方法2と経験則との比較では,解に差が生じるのは自明である。改善提案方法1又は改善提案方法2では動的計画法によって先読みし,計画的にスコア/追加購入コスト/食品ロスに関して最適化する。経験則では最適化処理がないため,解に差が生じることがある。
【0111】
<考察>
改善提案方法1又は改善提案方法2では,追加購入コストと食品ロスの優先順位が異なるため,どちらの方法が好ましいかはユーザの価値観次第である。追加購入コストと食品ロスに価値観に応じた重み付けを行い,重み付け後の総和を最小化する方法は,改善提案方法1と改善提案方法2の折衷案と考えられる。
【0112】
次に,第1実施形態の基本提案方法,改善提案方法1,そして改善提案方法2での推薦レシピが含む栄養素について考察した。基本提案方法,改善提案方法1,そして改善提案方法2の具体的な適用例をTable 11~15 に示したが,その結果から,各Tableのレシピ推薦の順番や購入商品は異なるもののレシピの組合せに注目した。推薦レシピの組合せは,(r2,r3,r6,r8)と(r2,r3,r8,r10)の2組である。栄養素に関するスコアは2組とも32である。どちらの組でも,Table 3 の15栄養素のうち,1レシピ以上で条件を満足するのは同じ12栄養素である。しかし,条件を満足するレシピが推薦されない残り3栄養素のカルシウム,マグネシウム,ビタミンAについては,もともとTable 2 に条件を満足するレシピがない。
【0113】
条件を満足するレシピがある12栄養素について,Table2 で条件を満足するレシピ数は,1栄養素で最大の9,1栄養素で8,3栄養素で7,1栄養素で5,3栄養素で4,2栄養素で3,1栄養素で最小の2である。他方,同12栄養素について上記2組の4レシピの組合せの中で満足するレシピ数は,3栄養素で4,3栄養素で3,5栄養素で2,1栄養素で1である。これらの数は2組で同じである。2組の差異は,レシピ数2の栄養素とレシピ数1の栄養素の入れ替えの1点のみである。
【0114】
上記問題設定及びレシピ集合等の適用例の設定のもとでは,推薦された2組のレシピの組合せはヘルスケアの視点で適切と考える。しかし,適用例の設定次第では,スコア最大化のために栄養素に偏りが生じる可能性がある。つまり,レシピ集合に当該栄養素の条件を満足するレシピが存在しても,当該栄養素の条件を満足するレシピを1つも推薦しない最適解を算出する可能性がある。よって,このような偏りの発生を回避する工夫の検討が必要である。
【0115】
次に,もともとTable 2 に条件を満足するレシピが存在しない3栄養素について考察した。3栄養素のうち,カルシウムとマグネシウムはTable 2 の全レシピで条件に対して含有量が不足する。他方,ビタミンAについては,不足するレシピと超過するレシピの両方がある。よって,レシピの選択(推薦)の仕方次第では,1回(1日)では条件を満足しなくても,数回(数日間)の平均で条件を満足する可能性がある。厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2020年版)によると,健康障害の発生までに要する期間は栄養素の種類によって大きく異なり,健康指導での栄養素の摂取状況に関する1日単位の評価は不適切である。
【0116】
本開示では,式(2)及び式(3)による1回(1日)ごとの評価の積み重ねによる対象期間の評価を検討した。上記のビタミンAの例及び日本人の食事摂取基準(2020年版)での指摘をふまえると,対象期間全体での平均的な栄養素の摂取を評価する必要がある。例えば,本開示の式(2)及び式(3)に基づくレシピ評価の仕組を,栄養素の摂取量の期間全体での累積値(または平均値)による評価の仕組に拡張することが挙げられる。
【0117】
上記実施形態では,対象期間の各日ごとに買い物を実施可能な設定(買い物が連日可能)だったが,買い物が対象期間中の限られた日のみに可能な設定(買い物が連日可能ではない場合)も対応可能である。例えばt日目に買い物は実施されず,直前の買い物日がt-2日目とする。この場合,本来の食材商品の消費期限までの残日数から2日間減した食材商品をt日目の追加購入商品の選択肢とすることで対応できる。つまり,t日目に追加購入として選択する食材商品は実際にはt-2日目に購入し,t日目には購入してから2日間経過した当該商品を使用(開封)することになる。
【0118】
第2実施形態:
第1実施形態では,食材の追加購入コスト及び食品ロス(廃棄)の限度(制約)のもとで,ヘルスケア視点での評価スコアが最大となるレシピ及び追加購入食材を推薦する基本提案方法と,評価スコア最大の最適解が複数存在する場合に最適解候補の中で追加購入コストや食品ロスを最小化する改善提案方法1及び改善提案方法2を提案した。
【0119】
実生活では,買い物が毎日実施可能とは限らず,レシピ推薦が必要な日も毎日とは限らない。よって,追加食材購入日やレシピ推薦日が任意に設定可能な推薦方法が望ましい。しかし,前記第1実施形態の方法では連続する有限のT日間の毎日が追加食材購入日(買い物可能な日)かつレシピ推薦日としたため,任意の購入日や推薦日には対応できない。そこで,本実施形態では第1実施形態の方法を拡張し,購入日や推薦日を任意に設定可能な推薦方法を提案する。
【0120】
また,第1実施形態のヘルスケア視点のレシピ評価では,各栄養素の含有量が標準摂取量等の範囲内なら1点,範囲外なら0点という簡易なスコア定義を用いた。その結果,T回のレシピ推薦で総スコアの最大値が同じT個のレシピの組合せ例が複数出されていた。ヘルスケア視点でより厳密に評価すると,最適なレシピの組合せはその複数の組合せよりも少数の組合せになる可能性がある。そこで,本実施形態では,標準摂取量等に対する不足量/超過量の割合を利用するロス(損失)を定義し,ヘルスケア視点のロスを最小化する方法を提案する。
【0121】
本実施形態の方法は第1実施形態の方法の拡張に相当し,第1実施形態の方法と同様に動的計画法を用いてロスを最小化した。本実施形態でもレシピ推薦日における1回1レシピの推薦を行い,食材は主な食材のみ対象として,調味料等は省略した。
【0122】
第1実施形態の場合と同様に,基本提案方法,改善提案方法1,改善提案方法2を提案する。基本提案方法は,単にヘルスケア視点での最適解を算出する。改善提案方法1,改善提案方法2は,ヘルスケア視点での最適解候補が複数存在する場合の方法である。改善提案方法1は,追加購入コストの抑制を優先したもとで,最適解候補の中で追加購入コストと食品ロスも最小化する。改善提案方法2は,食品ロスの抑制を優先したもとで,最適解候補の中で食品ロスと追加購入コストも最小化する。
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
【0140】
【0141】
<アルゴリズム2-1の適用例の省略>
第2実施形態の基本提案方法では,ヘルスケア視点のロスが最小になる推薦レシピと追加購入食材商品を算出するが,ロスの最小値に対して,最適解候補(購入する食材商品の組合せ等)が複数存在する場合もある。計算にPython言語のNumPy中の関数argminを使用したため,複数の最適解候補からどの解を出力するかはPythonの仕様やデータの順番等次第である。よって,後述する第2実施形態の改善提案方法1による追加購入コストの抑制,及び第2実施形態の改善提案方法2による食品ロスの抑制をそれぞれ優先した解の出力に譲り,アルゴリズム2-1の適用例はここでは省略する。
【0142】
【0143】
【0144】
【0145】
【0146】
【0147】
【0148】
【0149】
【0150】
【0151】
【0152】
【0153】
【0154】
【0155】
Table 23,そして後述のTable 24では,推薦レシピの組合せは同じである。ヘルスケア視点での最小ロスのもとで食品ロスよりも追加購入コストの抑制を優先する第2実施形態の改善提案方法1(Table 23)では,1回目の買い物(1日目)において消費期限までの残日数が1日で安価な大重量のサーモンm(2,2)を購入する。この結果,この改善提案方法1の追加購入コストは後述の第2実施形態の改善提案方法2(Table 24)よりも100円少ない。その代わり,この改善提案方法1では余ったサーモン300グラムを余分に廃棄する。他方,後述の改善提案方法2(Table 24)では食品ロスの抑制を優先するため,1回目の買い物(1日目)で必要量(小重量のサーモンm(2,1)を2個)のみ購入する。
この改善提案方法1の3回目のレシピ推薦(5日目)のための購入では,改善提案方法2同様に小重量のサーモンm(2,1)を購入する。これは,3回目のレシピ推薦の直近の買い物が2回目の買い物(4日目)のため,消費期限までの残日数不足で大重量のサーモンを購入できないためである。このように,購入日と推薦日の任意の設定に対して,消費期限までの残日数を適切に考慮できている。
【0156】
【0157】
【0158】
【0159】
【0160】
Table 24,そして前述のTable 23では,推薦レシピの組合せは同じである。
実施例4の改善提案方法1では余ったサーモン300グラムを余分に廃棄したのに対し,本実施例5の改善提案方法2(Table 24)では食品ロスの抑制を優先するため,1回目の買い物(1日目)で必要量(小重量のサーモンm(2,1)を2個)のみ購入する。
【0161】
第3実施形態:
第3実施形態もまた第1実施形態の方法を拡張した,購入日や推薦日を任意に設定可能な方法であり,標準摂取量等に対する不足量/超過量の割合を利用するロス(損失)を定義してヘルスケア視点のロスを最小化する。この点で第2実施形態の方法と同様である。
第2実施形態では,標準摂取量等から外れる割合での評価を基本とし,1回のレシピ推薦単位で評価するロスを定義したもとで,各ロスの最小化を検討した。しかし,健康障害の発生までに要する期間は栄養素の種類によって異なり,栄養素の摂取状況の1回単位での評価は必ずしも適切ではない。そこで,第3実施形態では,期間(T回)全体のレシピ推薦で評価するロスを定義したもとで,期間(T回)全体でのロスの最小化を検討した態様である。
なお,第3実施形態でも第1実施形態や第2実施形態の場合と同様に,第3実施形態における基本提案方法,改善提案方法1,改善提案方法2を提案する。
【0162】
【0163】
【0164】
【0165】
【0166】
【0167】
<アルゴリズム3-1の適用例の省略>
第3実施形態の基本提案方法では,ヘルスケア視点のロスが最小になる推薦レシピと追加購入食材商品を算出するが,ロスの最小値に対して,最適解候補(購入する食材商品の組合せ等)が複数存在する場合もある。計算にPython言語のNumPy中の関数argminを使用したため,複数の最適解候補からどの解を出力するかはPythonの仕様やデータの順番等次第である。よって,後述する第3実施形態の改善提案方法1による追加購入コストの抑制,及び第3実施形態の改善提案方法2による食品ロスの抑制をそれぞれ優先した解の出力に譲り,アルゴリズム3-1の適用例はここでは省略する。
【0168】
【0169】
【0170】
【0171】
【0172】
【0173】
第2実施形態での1回のレシピ推薦単位で評価するロスの場合と同様に,第3実施形態での期間(T回)全体で評価するロスの改善提案方法1では,適切に消費期限までの残日数を考慮することによって,3回目のレシピ推薦(5日目)のための購入では,小重量のサーモンm(2,1)を購入する。
【0174】
【0175】
【0176】
【0177】
【0178】
第3実施形態の改善提案方法1と改善提案方法2で推薦レシピの組合せは同じだが,この2方法での違いは,1回目の買い物(1日目)において購入コストの抑制優先でサーモンの大重量商品を購入するか,食品ロスの抑制優先で小重量商品を購入するかの違いである。
【0179】
【0180】
【0181】
最大スコアは1回ごとのスコアが2方法で同じ32,T回全体でのスコアが2方法で同じ10だが,購入コストと食品ロスの抑制の優先順位の違いにより,推薦レシピの組合せは異なる。従来研究のスコアは,栄養素の含有量が基準内であれば1,外れると0という簡易な定義のため,レシピの複数の組合せが同点になる傾向がある。
第2,第3実施形態の提案方法のヘルスケア視点のロス定義は詳細なため,最適解に対応するレシピの組合せは(今回の設定では)1つである。よって,提案方法の2方法間での解の違いは,抑制の優先順位の違いによる追加購入商品の組合せの違いのみである。この違いから,追加購入コストや食品ロスの差が生じる。
他方,第1実施形態のスコアの場合は,同じスコアの解候補の中でレシピの組合せが(今回の設定では)複数あるため,レシピと追加購入商品の両方の組合せの違いによって,第2,第3実施形態の提案方法よりも解候補の数が多い。その結果,第2,第3の実施形態の適用例では,購入コストの抑制を優先する改善提案方法1の購入コスト,食品ロスの抑制を優先する改善提案方法2の食品ロスは第2,第3の実施形態の提案方法よりも第1実施形態のスコアの場合の方が小さい。
【0182】
考察とまとめ:
第2,第3実施形態の提案方法の適用例において,1回ごとのロスの場合とT回全体でのロスの場合ともに,改善提案方法1と改善提案方法2の比較では,購入コストと食品ロスの抑制の優先順位が異なるため,購入コストと食品ロスが2方法で異なる例が確認された。2方法に優劣はなく,推薦方法の利用者の価値観次第で適切な方法は異なると考える。
1回ごとのロスの場合とT回全体でのロスの場合の比較では,最適なレシピの組合せが異なる例を確認した。各栄養素の性質や,レシピ推薦の利用者が特定栄養素の摂取に制限がある場合等の状況次第では,摂取量を評価すべき期間が1日/数日/長期等の複数パターンに栄養素が分類されることも想定される。このような場合には,第2,第3実施形態でのロスを拡張し,栄養素のパターンごとにロスを定義したもとで,総合的なロスの最小化の検討が必要と考える。
【0183】
第2,第3実施形態では,各栄養素の標準摂取量等との差分の割合によるロスを尺度として利用する。他方,第1実施形態では標準摂取量等を満足すれば1,満足しなければ0という離散的な簡易なスコアを尺度として利用する。尺度の違いから,適用例では第2,第3実施形態の提案方法では最適なレシピの組合せが1つに決まる傾向があるのに対して,比較対象の第1実施形態のスコアでは最適なレシピの組合せが複数存在する傾向が確認された。このため,ヘルスケア視点の最適解候補の中でさらに購入コストや食品ロスを最小化する改善提案方法1と改善提案方法2では,第1実施形態のスコアを適用した場合の方が,第2,第3実施形態の提案方法よりもより小さな購入コスト又はより小さな食品ロスが確認された。
【0184】
換言すると,第2,第3実施形態のロスは第1実施形態の離散的な簡易なスコアよりも,レシピ間(またはレシピの組合せ間)のヘルスケア視点での差をより厳密に評価できる。また,第2,第3実施形態のロスと第1実施形態のスコアの定義の違いのため,適用例では第2,第3実施形態の提案方法での最適なレシピの組合せは,第1実施形態のスコアを適用した比較対象の最適解候補には含まれない。第2,第3実施形態のロスと第1実施形態のスコアの間に優劣はなく,レシピ推薦方法の利用者の価値観等によって適切な尺度が決まるものと考える。
【0185】
第1実施形態~第3実施形態では,レシピ推薦1日1回1レシピ等の簡易な問題設定を対象とした。また,適用例でも結果の解釈を容易にするために小規模のレシピ集合を対象とした。より現実に近づけるためには,複数レシピの組合せである献立の推薦への拡張,より大きなレシピ集合の適用等が必要である。しかし,本実施形態では最適化問題を解いており,献立への拡張やより大きなレシピ集合の適用によって処理時間が膨大になる可能性がある。現実的な処理時間で対応するには,レシピ集合(または献立集合)全体を最適化の対象とするのではなく,その部分集合をランダム抽出する近似解法等が考えられる。
【0186】
第1実施形態では,追加購入コストと食品ロスの限度のもとでヘルスケア視点の評価スコアを最大化するとともに,最適解候補が複数ある場合には解候補の中で購入コストや食品ロスの最小化も行う。しかし,追加購入日や推薦日の任意の設定に対応できない,スコア定義が離散的な簡易な定義のため最適なレシピの組合せが複数存在することが多い等の改良の余地があった。
第2,第3実施形態では,第1実施形態を拡張し,追加購入日や推薦日の任意の設定に対応でき,栄養素の標準摂取量等との差分の割合に基づくロスによって第1実施形態よりも厳密にレシピ評価可能なレシピ推薦方法を提供した。
具体的には,第2実施形態では1回ごとの推薦レシピを評価するロス,第3実施形態ではT回の推薦全体でレシピ評価するロス,の2パターンのロスを定義して,各ロスに対する推薦方法(基本提案方法)を提案し,第1実施形態と同様に最適なレシピの組合せに対応する解候補が複数ある場合には,解候補の中で追加購入コストの最小化や食品ロスの最小化を実施する推薦方法(改善提案方法)を提案した。
【0187】
提案方法の検証のための適用例では,追加購入日や推薦日の任意の設定に対して余剰食材や食材商品の消費期限までの残日数を考慮して,適切にレシピと追加購入食材商品を推薦可能であることを確認した。また,第1実施形態のスコアを適用した比較対象との比較では,第2,第3実施形態の提案方法のロスはヘルスケア視点でレシピを厳密に評価するため最適なレシピの組合せは1組のみだった。他方,第1実施形態の離散的な簡易なスコアでは最適なレシピの組合せが複数存在するため,追加購入食材商品の選択肢も含めた解候補の数が第2,第3実施形態よりも多くなり,結果的に第2,第3実施形態よりも追加購入コストや食品ロスのより大きな抑制効果が確認できた。第2,第3実施形態のヘルスケア視点での厳密な評価と,第1実施形態のスコアによる追加購入コストや食品ロスのより大きな抑制効果のどちらが望ましいかは,推薦方法の利用者の価値観に依存すると考える。
【0188】
<実施形態の変更例>
上記実施形態は本発明の一例であり,こうした形態に限定されるものではなく,本発明の趣旨に反しない限度において,種々の変更や置換を行い得るものである。
例えば,食品ロスとなる廃棄する食材に関し,廃棄重量で評価する代わりにその食材の購入時の価値で評価しても良い。
推薦されるレシピは,ヘルスケア視点,経済的な視点,食品ロスの視点の3視点の観点を考慮して導き出すものとしたが,これら3視点のうち1又は2視点を考慮したレシピ推薦とすることもできる。
【0189】
上記実施形態の提案方法では調味料等は食材に含めずに省略し,1回の推薦対象は1レシピに限定し,適用例では,小さなレシピ/食材/商品集合を対象としたが,より現実に近い問題設定,例えば,調味料等も含めた食材とし,1度に複数のレシピ推薦,より大きなレシピ/食材/商品集合とした中でのレシピ推薦を行っても良く,これに加えて,近似解法や経験則の適用をしても良い。
また,レシピ集合全体を推薦候補とはせずに,ランダム抽出したレシピを推薦候補として推薦候補数の膨大化を回避しても良い。こうすることによりレシピ集合を拡大する際にも,推薦候補数の膨大化(問題規模の膨大化)を回避することができる。
あるいはまた,レシピの食材の使用量を厳守したが,レシピ中の食材の余剰食材がない場合に,他の余剰食材の代替に関する従来例を適用することができる。
【符号の説明】
【0190】
1 レシピ提供システム
10 レシピ推薦装置
11 制御手段
12 主記憶手段
13 補助記憶手段
14 通信手段
15 その他の手段
16 レシピデータベース
17 栄養素データベース
18 食材データベース
19 食材商品データベース
20 ユーザデータベース
21 その他のデータベース
22 外部情報データベース
23 データ取得部
24 スコア計算部
30 ユーザ端末
50 ネットワーク
図1
図2
図3
図4