(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144308
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】皮膚バリヤ機能改善剤、及び肌状態改善剤
(51)【国際特許分類】
A23L 33/135 20160101AFI20241003BHJP
A61K 35/744 20150101ALI20241003BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20241003BHJP
A61K 8/99 20170101ALI20241003BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20241003BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A23L33/135
A61K35/744
A61P17/00
A61K8/99
A61Q19/00
A61K9/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024049295
(22)【出願日】2024-03-26
(31)【優先権主張番号】P 2023052543
(32)【優先日】2023-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】000108993
【氏名又は名称】株式会社大阪ソーダ
(72)【発明者】
【氏名】井戸垣 秀聡
(72)【発明者】
【氏名】西川 孝治
【テーマコード(参考)】
4B018
4C076
4C083
4C087
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB07
4B018LB08
4B018LB09
4B018LE01
4B018LE02
4B018LE05
4B018MD05
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4B018MD30
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4B018MD36
4B018MD86
4B018ME14
4B018MF08
4C076AA36
4C076BB01
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4C076EE30
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4C083AA031
4C083AA032
4C083CC02
4C083EE12
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC56
4C087MA35
4C087MA52
4C087NA14
4C087ZA89
(57)【要約】
【課題】 本発明は、皮膚バリヤ機能改善剤、及び肌状態改善剤を提供することを目的とする。
【解決手段】 フルクトバシラス(Fructobacillus)属に属する乳酸菌、前記乳酸菌の培養物、前記乳酸菌の培養上清、及び/又は前記乳酸菌の抽出物は、皮膚バリヤ機能改善剤、及び肌状態改善剤の有効成分として有用である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルクトバシラス(Fructobacillus)属に属する乳酸菌、前記乳酸菌の培養物、前記乳酸菌の培養上清、及び/又は前記乳酸菌の抽出物を含有する、皮膚バリヤ機能改善剤。
【請求項2】
前記乳酸菌がフルクトバシラス・フルクトサス(Fructobacillus fructosus)である、請求項1に記載の皮膚バリヤ機能改善剤。
【請求項3】
前記乳酸菌がフルクトバシラス・フルクトサス(Fructobacillus fructosus) OS-1010株(受託番号:NITE BP-03818)である、請求項1に記載の皮膚バリヤ機能改善剤。
【請求項4】
皮膚乾燥改善用、経皮水分蒸散量抑制用、皮膚肥厚化抑制用のいずれかである、請求項1に記載の皮膚バリヤ機能改善剤
【請求項5】
請求項1に記載の皮膚バリヤ機能改善剤を含む、飲食品、化粧品又は医薬品。
【請求項6】
フルクトバシラス(Fructobacillus)属に属する乳酸菌、前記乳酸菌の培養物、前記乳酸菌の培養上清、及び/又は前記乳酸菌の抽出物を含有する、肌状態改善剤。
【請求項7】
前記乳酸菌がフルクトバシラス・フルクトサス(Fructobacillus fructosus)である、請求項6に記載の肌状態改善剤。
【請求項8】
前記乳酸菌がフルクトバシラス・フルクトサス(Fructobacillus fructosus) OS-1010株(受託番号:NITE BP-03818)である、請求項6に記載の肌状態改善剤。
【請求項9】
皮膚粘弾性改善又は低下抑制用、肌のシワ改善又は抑制用、肌のたるみ改善又は抑制用、肌のハリ及び弾力改善用のいずれかである、請求項6に記載の肌状態改善剤。
【請求項10】
請求項6に記載の肌状態改善剤を含む、飲食品、化粧品又は医薬品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚バリヤ機能改善剤、及び肌状態改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
シワは、加齢、ストレス、紫外線暴露などの要因により引き起こされる皮膚の老化症状のひとつであり、見た目に分かりやすいことから顔の印象に大きく影響する。そのため、シワとその改善方法に対する関心は非常に高い。
【0003】
従来、ムコ多糖類やコラーゲン等の保水力を有する高分子を含有する皮膚外用剤による保湿という手段が、シワを改善するために採られてきた。しかしながら、それだけではシワを十分に改善する事はできなかった。
しかしながら、シワが形成されるメカニズムは複雑で、実験的に再現することも困難であるため、現在においてもそのメカニズムは完全に解明されるには至っていない。それでも、近年の研究では、皮膚の老化症状は、加齢が重要な因子であることに加えて、乾燥、酸化、糖化、紫外線なども大きく関与する因子であることが分かってきた。具体的には、前記因子、とりわけ紫外線曝露が、細胞の損傷とそれにより亢進する細胞のアポトーシス、真皮における主要な細胞である線維芽細胞の増殖活性やコラーゲン等の合成機能の低下によるコラーゲン等の線維成分のターンオーバー速度の低下、炎症性サイトカインの亢進による線維束の崩壊、血管系の減少による老廃物の蓄積、栄養供給の低下などを引き起こし、その結果として皮膚の弾力がなくなり、シワが発生すると考えられる。
【0004】
特許文献1には、特定の構造を有するアミノカルボン酸誘導体及びその酸付加塩が、優れたシワ改善作用を発揮することが記載されている。
特許文献2には、メタクリル酸エチルベタイン/アクリレーツコポリマーとポリビニルピロリドンを組み合わせることにより、塗布膜の肌への付着性と柔軟性が向上することが記載されている。
【0005】
特許文献3には、イヌリンを有効成分として含む、肌状態改善剤又は肌状態改善用食品組成物が記載されている。
特許文献4には、α-グリコシルヘスペリジンを利用した経口投与・摂取用の皮膚粘弾性低下抑制剤が記載されている。
【0006】
特許文献5には、葛のつる由来の乳酸菌 (Leuconostoc mesenteroides)を有効成分とする経皮水分蒸散量抑制剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-206483号公報
【特許文献2】特開2020-164431号公報
【特許文献3】特開2022-72515号公報
【特許文献4】特開2010-100634号公報
【特許文献5】特開2022-72433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、皮膚バリヤ機能改善剤、及び肌状態改善剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、所定の乳酸菌及び/又は所定の乳酸菌由来成分に、皮膚バリヤ機能を改善する効果(皮膚バリヤ機能改善)及び肌の状態を改善させる効果(肌状態改善効果)があることを新たに見出し、本発明を完成させた。
【0010】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. フルクトバシラス(Fructobacillus)属に属する乳酸菌、前記乳酸菌の培養物、前記乳酸菌の培養上清、及び/又は前記乳酸菌の抽出物を含有する、皮膚バリヤ機能改善剤。
項2. 前記乳酸菌がフルクトバシラス・フルクトサス(Fructobacillus fructosus)である、項1に記載の皮膚バリヤ機能改善剤。
項3. 前記乳酸菌がフルクトバシラス・フルクトサス(Fructobacillus fructosus) OS-1010株(受託番号:NITE BP-03818)である、項1に記載の皮膚バリヤ機能改善剤。
項4. 皮膚乾燥改善用、経皮水分蒸散量抑制用、皮膚肥厚化抑制用のいずれかである、項1に記載の皮膚バリヤ機能改善剤
項5. 項1に記載の皮膚バリヤ機能改善剤を含む、飲食品、化粧品又は医薬品。
項6. フルクトバシラス(Fructobacillus)属に属する乳酸菌、前記乳酸菌の培養物、前記乳酸菌の培養上清、及び/又は前記乳酸菌の抽出物を含有する、肌状態改善剤。
項7. 前記乳酸菌がフルクトバシラス・フルクトサス(Fructobacillus fructosus)である、項6に記載の肌状態改善剤。
項8. 前記乳酸菌がフルクトバシラス・フルクトサス(Fructobacillus fructosus) OS-1010株(受託番号:NITE BP-03818)である、請求項6に記載の肌状態改善剤。
項9. 皮膚粘弾性改善又は低下抑制用、肌のシワ改善又は抑制用、肌のたるみ改善又は抑制用、肌のハリ及び弾力改善用のいずれかである、項6に記載の肌状態改善剤。
項10. 項6に記載の肌状態改善剤を含む、飲食品、化粧品又は医薬品。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、皮膚バリヤ機能改善剤、及び肌状態改善剤の有効成分として有用な新規の素材が提供される。具体的には、本発明によれば、フルクトバシラス(Fructobacillus)属に属する乳酸菌、前記乳酸菌の培養物、前記乳酸菌の培養上清、及び/又は前記乳酸菌の抽出物が、皮膚バリヤ機能改善剤、及び肌状態改善剤の有効成分として提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】Visual Analogue Scale(以下VASとする)アンケート各項目のスコア変化量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の皮膚バリヤ機能改善剤、及び肌状態改善剤は、いずれも、フルクトバシラス(Fructobacillus)属に属する乳酸菌、前記乳酸菌の培養物、前記乳酸菌の培養上清、及び/又は前記乳酸菌の抽出物を、有効成分として含有することを特徴とする。以下、皮膚バリヤ機能改善剤、及び肌状態改善剤について詳述する。
【0014】
[1.有効成分]
本発明の皮膚バリヤ機能改善剤、及び肌状態改善剤の有効成分は、フルクトバシラス(Fructobacillus)属に属する乳酸菌、前記乳酸菌の培養物、前記乳酸菌の培養上清、及び/又は前記乳酸菌の抽出物である。
【0015】
[1-1.フルクトバシラス(Fructobacillus)属に属する乳酸菌]
フルクトバシラス(Fructobacillus)属に属する乳酸菌(以下において、「所定の乳酸菌」とも記載する。)は、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)及び/又はニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)を産生する微生物である。また、フルクトバシラス属に属する乳酸菌は、好ましくは、少なくともNADを産生する微生物であり、より好ましくは、NMN及びNADの両方を産生する微生物である。
【0016】
フルクトバシラス属に属する乳酸菌としては、例えば、フルクトバシラス・ドゥリオニス(Fructobacillus durionis)、フルクトバシラス・トロパエオイル(Fructobacillus tropaeoil)、及びフルクトバシラス・フルクトサス(Fructobacillus fructosus)が挙げられる。
【0017】
フルクトバシラス属に属する乳酸菌のより具体的な例としては、Fructobacillus durionis RD011727株、Fructobacillus durionis NBRC113239株、Fructobacillus tropaeoil RD012353株、Fructobacillus tropaeoil RD012354株、Fructobacillus fructosus NBRC3516株、及びFructobacillus fructosus OS-1010株が挙げられる。
【0018】
Fructobacillus durionis RD011727株は、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NPMD)(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に、2020年10月28日付で寄託番号NITE BP-02764として国際寄託されている。
【0019】
Fructobacillus tropaeoil RD012353株は、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NPMD)(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に、2020年10月28日付で寄託番号NITE BP-02765として国際寄託されている。
【0020】
Fructobacillus tropaeoil RD012354株は、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NPMD)(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に、2020年10月28日付で寄託番号NITE BP-02766として国際寄託されている。
【0021】
Fructobacillus fructosus OS-1010株は、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NPMD)(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に、2024年1月5日付で受託番号NITE BP-03818として国際寄託されている。
【0022】
これらのフルクトバシラス属に属する乳酸菌は1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
皮膚バリヤ機能を改善する効果(皮膚バリヤ機能改善)果をより一層効果的に向上させる観点からは、フルクトバシラス属に属する乳酸菌は、フルクトバシラス・トロパエオイル(Fructobacillus tropaeoil)及びフルクトバシラス・フルクトサス(Fructobacillus fructosus)が好ましく、フルクトバシラス・フルクトサス(Fructobacillus fructosus)がより好ましい。
【0024】
これらのフルクトバシラス属に属する乳酸菌の中でも、皮膚バリヤ機能を改善する効果(皮膚バリヤ機能改善)をより一層効果的に向上させる観点から、Fructobacillus durionis RD011727株、Fructobacillus durionis NBRC113239株、Fructobacillus tropaeoil RD012353株、Fructobacillus tropaeoil RD012354株、Fructobacillus fructosusNBRC3516株、及びFructobacillus fructosus OS-1010株が好ましく、より好ましくはFructobacillus tropaeoil RD012353株、Fructobacillus tropaeoil RD012354株、Fructobacillus fructosusNBRC3516株、及びFructobacillus fructosus OS-1010株、さらに好ましくは、Fructobacillus fructosusNBRC3516株、及びFructobacillus fructosus OS-1010株、特に好ましくはFructobacillus fructosus OS-1010株が挙げられる。
【0025】
肌の状態を改善させる効果(肌状態改善効果)をより一層効果的に向上させる観点からは、フルクトバシラス属に属する乳酸菌は、フルクトバシラス・トロパエオイル(Fructobacillus tropaeoil)及びフルクトバシラス・フルクトサス(Fructobacillus fructosus)が好ましく、フルクトバシラス・フルクトサス(Fructobacillus fructosus)がより好ましい。
【0026】
これらのフルクトバシラス属に属する乳酸菌の中でも、肌の状態を改善させる効果(肌状態改善効果)をより一層効果的に向上させる観点から、Fructobacillus durionis RD011727株、Fructobacillus durionis NBRC113239株、Fructobacillus tropaeoil RD012353株、Fructobacillus tropaeoil RD012354株、Fructobacillus fructosusNBRC3516株、及びFructobacillus fructosus OS-1010株が好ましく、より好ましくはFructobacillus tropaeoil RD012353株、Fructobacillus tropaeoil RD012354株、Fructobacillus fructosusNBRC3516株、及びFructobacillus fructosus OS-1010株、さらに好ましくは、Fructobacillus fructosusNBRC3516株、及びFructobacillus fructosus OS-1010株、特に好ましくはFructobacillus fructosus OS-1010株が挙げられる。
【0027】
[1-2.有効成分の形態]
有効成分の形態は、上記所定の乳酸菌、前記乳酸菌の培養物、前記乳酸菌の培養上清、及び前記乳酸菌の抽出物の、少なくともいずれかである。有効成分は、これらのいずれか1種の形態のものを単独で用いてもよいし、複数種の形態のものを組み合わせて用いてもよい。
【0028】
[1-2-1.乳酸菌]
有効成分が乳酸菌の形態である場合、当該有効成分は、当該乳酸菌の菌体成分及び当該乳酸菌に内在する又は内在していた産生物を含む。乳酸菌は、生菌及び死菌のいずれであってもよい。また、死菌の場合、菌体が破砕されていてもよい。また、破砕菌の場合、菌体成分の一部が除去されていてもよい。さらに、乳酸菌は、凍結乾燥、棚乾燥、スプレードライ等の手段により乾燥された菌体粉末の形態であってもよい。この中でも、皮膚バリヤ機能を改善する効果(皮膚バリヤ機能改善)及び肌の状態を改善させる効果(肌状態改善効果)をより一層高める観点から、例えば、凍結乾燥等により乾燥された菌体粉末であることが好ましい。
【0029】
乳酸菌は、上記の所定の乳酸菌の1種又は複数種を培養する工程、並びに菌体を分離回収する工程を含む製造方法により得ることができる。分離回収する工程で行われる方法は、固液分離及び菌体洗浄を含む。当該製造方法は、上記の工程以外に、他の工程を含むことができる。他の工程としては、休止菌体反応工程(培養する工程の後、好ましくは分離回収する工程の後に行うことができる。)、乾燥工程(分離回収する工程又は休止菌体反応の後に行うことができる。)、菌体破砕工程(分離回収する工程、休止菌体反応工程又は乾燥工程の後に行うことができる。)等が挙げられる。
【0030】
培養する工程で用いることができる培地としては、拡大培養に用いられるもの(前培養培地)、及び生産培養に用いられるもの(本培養培地)が挙げられる。本培養培地は、前培養培地として用いられる培地を基本として、更に添加物を含有させて調製することができる。培地の性状については、好ましくは液体培地であるが、寒天培地であってもよい。培地は、炭素源の他、一般的には窒素源、ミネラル等を含む。
【0031】
炭素源としては、糖質及び糖質材料が挙げられる。糖質としては、糖類(単糖、二糖、オリゴ糖)、多糖類、及び糖アルコールが挙げられる。糖質としては、乳糖、ショ糖、グルコース、デンプン、キシリトール、デキストロース等が挙げられる。糖質材料は、糖質を含む有機組成物であればよく、例えば、乳及びその加工品(脱脂粉乳、ホエイ、ミルクパウダー、練乳等)、豆乳及びその加工品(豆乳加水分解物等)、穀類、果実、野菜等の食品が挙げられる。乳としては、ウシ、ヤギ、ヒツジ、水牛、ラクダ、ラマ、ロバ、ヤク、ウマ、トナカイ等の任意の哺乳動物に由来するものが挙げられる。なお糖質は、単離されたものであってもよいし、糖質材料に含まれているものであってもよい。例えば、フルクトース(糖質)は、果実(糖質材料)に含まれる形態のものを用いてもよい。これらの炭素源は、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。これらの炭素源の中でも、好ましくはグルコースが挙げられる。
【0032】
培地中の炭素源の濃度については特に限定されず、培地の種類や培養方式等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.5~4w/w%、好ましくは1~3w/w%、より好ましくは1.5~2.5w/w%が挙げられる。
【0033】
窒素源としては、任意の無機窒素源又は有機窒素源を使用することができる。例えば、酵母エキス(ビール酵母等)、肉エキス、カゼイン等のタンパク質;ペプトン(プロテアーゼペプトン等)等のタンパク質加水分解物、ペプチド等のペプチド類;アンモニウム塩(クエン酸アンモニウム等)、硝酸塩等の含窒素塩等が挙げられる。これらの窒素源は、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
培地中の窒素源の濃度については特に限定されず、培地の種類や培養方式等に応じて適宜設定すればよいが、タンパク質の場合、例えば、0.3~4w/w%、好ましくは0.5~3w/w%、より好ましくは1~2w/w%が挙げられ;ペプチド類の場合、例えば、0.1~2w/w%、好ましくは0.3~1.8w/w%、より好ましくは0.5~1.5w/w%が挙げられ;含窒素塩の場合、例えば、0.03~1.5w/w%、好ましくは0.05~1w/w%、より好ましくは0.1~0.5w/w%が挙げられる。
【0035】
ミネラルとしては、例えば、マンガン(例えば、硫酸マンガン等のマンガン塩)、亜鉛、鉄、ナトリウム(例えば、酢酸ナトリウム等のナトリウム塩)、カリウム(例えば、硫酸水素二カリウム、リン酸水素二カリウム等のカリウム塩)、マグネシウム(例えば、硫酸マグネシウム等のマグネシウム塩)、カルシウム、リン(例えば、リン酸水素二カリウム等のリン酸塩)、硫黄(例えば、硫酸マンガン、硫酸水素カリウム、硫酸マグネシウム等の硫酸塩)、微量元素等が挙げられる。これらのミネラルは、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。これらのミネラルの中でも、好ましくは、マンガン、ナトリウム、マグネシウム、カリウムが挙げられる。
【0036】
培地中のミネラルの濃度については特に限定されず、培地の種類や培養方式等に応じて適宜設定すればよいが、マンガン塩の場合、例えば、0.001~0.01w/w%、好ましくは0.003~0.008w/w%が挙げられ;ナトリウム塩の場合、例えば、0.05~1.5w/w%、好ましくは0.1~1w/w%が挙げられ;マグネシウム塩の場合、例えば、0.001~0.02w/w%、好ましくは0.005~0.015w/w%が挙げられ;カリウム塩の場合、例えば、0.05~1w/w%、好ましくは0.1~0.5w/w%が挙げられ;リン酸塩の場合、例えば、0.05~1w/w%、好ましくは0.1~0.5w/w%が挙げられ;硫酸塩の場合、0.001~0.04w/w%、好ましくは0.005~0.02w/w%が挙げられる。
【0037】
培地は、上記成分以外に、ビタミン(ビタミンB群等)、界面活性剤(非イオン性界面活性剤(Tween等)、陰イオン性界面活性剤(SDS等)等)、抗菌剤(トリクロサン等)、抗生物質(モネシン等)等の他の成分を含んでもよい。これらの他の成分は、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。これらの他の成分の中でも、好ましくは界面活性剤、より好ましくは非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0038】
培地中の他の成分の濃度については特に限定されず、他の成分の種類、培地の種類、培養方式等に応じて適宜設定すればよいが、界面活性剤を含む場合、界面活性剤の濃度として、例えば、0.01~0.5w/w%、好ましくは0.05~0.3w/w%が挙げられる。
【0039】
培養条件としては、フルクトバシラス属に属する乳酸菌が生育できる条件下であれば特に限定されない。
【0040】
培養温度としては、培養対象となるフルクトバシラス属に属する乳酸菌の至適温度であればよく、例えば、26~40℃、好ましくは27~38℃、より好ましくは28~36℃、更に好ましくは29~34℃が挙げられる。培養時間としては、実際に培養するフルクトバシラス属に属する乳酸菌の種類等に合せて適宜設定すればよく、例えば、4~48時間、好ましくは8~36時間、より好ましくは12~24時間が挙げられる。
【0041】
培養中の操作については、培養中における培養液の攪拌の要否は問わない。また、具体的な培養手順の例については、上述の培養を一定時間生産培養(本培養)として行い、その前に、少量(例えば、体積比で本培養培地の1/6~1/4)の培地で拡大培養を(前培養)行うことができる。前培養の培養条件は、フルクトバシラス属に属する乳酸菌の種類等に合せて適宜設定すればよく、上述の条件を採用することができる。また、本培養においては、前培養で得られた培養物を、OD660が例えば、0.01~0.04、好ましくは0.01~0.03となるように本培養培地に植菌することができる。
【0042】
分離回収工程においては、ろ紙を用いたろ過、遠心分離、デカンテーション、スクリュープレス、ローラープレス、ロータリードラムスクリーン、ベルトスクリーン、振動スクリーン、多重板振動フィルター、真空脱水、加圧脱水、ベルトプレス、遠心濃縮脱水、多重円板脱水等によって培養液の固液分離を行い、得られた菌体を洗浄することができる。
【0043】
休止菌体工程では、乳酸菌中のニコチンアミドモノヌクレオチド含有比率を増大させることができる。
【0044】
休止菌体反応工程で用いる液体としては、フルクトバシラス属に属する乳酸菌が休止菌体反応できるものであれば、特に制限なく用いることができる。例えば、水、緩衝液、有機溶剤等を用いることができる。
【0045】
休止菌体反応に用いる液体のpHとしては、例えば、4.0~10.0、好ましくはpH5.0~9.0、より好ましく5.5~7.5が挙げられる。
【0046】
休止菌体反応に用いる液体が緩衝液である場合、緩衝液としては、例えば、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、炭酸緩衝液、クエン酸緩衝液、トリス緩衝液、HEPES衝液等が挙げられる。
【0047】
緩衝液のより具体的な例としては、KHC8H4O4-NaOH (pH4.0)、CH3COOH-CH3COONa(pH4.0)、MES-NaOH (pH5.0)、CH3COOH-CH3COONa(pH5.0)、KH2PO4-K2HPO4(pH6.0)、MES-NaOH(pH6.0)、 KH2PO4-K2HPO4(pH7.0)、PIPES-NaOH (pH7.0)、HEPES-NaOH(pH8.0)、H3BO4-NaOH(pH8.0)、CHES-NaOH(pH9.0)、H3BO4-NaOH(pH9.0)、H2CO3-NaHCO3(pH10.0)、CHES-NaOH(pH10.0)等が挙げられ、好ましくはCH3COOH-CH3COONa、KH2PO4-K2HPO4、H3BO4-NaOH、より好ましくはKH2PO4-K2HPO4が挙げられる。
【0048】
休止菌体反応に用いる液体が有機溶剤である場合、有機溶剤としては、例えば、ベンゼン、ベンゾニトリル等の芳香族化合物、アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酪酸エチル、蟻酸エチル等の脂肪酸エステル類、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル類、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール等のジオール類、炭素数1~7の直鎖又は分岐アルキルを有するアルコール、シクロヘキサノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メトキシ-1-ブタノール等のアルコール類等が挙げられる。
【0049】
休止菌体反応に用いる液体としては、上記の液体の中でも、好ましくは水、緩衝液が挙げられる。
【0050】
休止菌体反応における反応温度としては、例えば、21~37℃、好ましくは24~28℃が挙げられる。反応時間としては、例えば、0.1~24時間、好ましくは6~12時間が挙げられる。
【0051】
休止菌体反応は、フルクトバシラス属に属する乳酸菌を上記の液体に懸濁し、静置、攪拌または振盪することで行うことができる。
【0052】
また、休止菌体反応は、上記の液体を用いることなく、フルクトバシラス属に属する乳酸菌を含む培養液のpHを4.0~10.0、好ましくは5.0~9.0、より好ましくは5.5~7.5の範囲に調整することにより行ってもよい。
【0053】
乾燥工程では、凍結乾燥、棚乾燥、スプレードライ等の工程の乾燥方法を用いて菌体を乾燥させることができる。
【0054】
菌体破砕工程では、乾燥菌体を任意の方法で破砕することができる。菌体破砕工程では、破砕された菌体は菌体成分の一部を除去してもよい。
【0055】
[1-2-2.乳酸菌の培養物]
有効成分が乳酸菌の培養物の形態である場合、当該有効成分は、乳酸菌とともに、当該乳酸菌の産生物を含む培地成分を含む。乳酸菌の培養物は、上記の所定の乳酸菌の1種を単独で用いて製造した培養物であってもよいし、複数種を組み合わせて用いて製造した培養物であってもよいし、ある1種を単独で用いて製造した培養物と他の1種を単独で用いて製造した培養物との混合物であってもよい。
【0056】
培養物に含まれる培地成分は、当該乳酸菌の培養に用いた培地成分の一部が除去されていてもよい。また、培養物に含まれる乳酸菌は、生菌及び死菌のいずれであってもよい。また、死菌の場合、菌体は破砕されていてもよい。また、菌体が破砕されている場合、菌体成分の一部が除去されていてもよい。
【0057】
乳酸菌の培養物は、上記の所定の乳酸菌の1種又は複数種を培養する工程を含む製造方法により得ることができる。当該製造方法は、上記の工程以外に、他の工程を含むことができる。他の工程としては、培地成分の一部を除去する工程、乳酸菌を休止菌体反応に供する工程、及び/又は、乾燥工程を含んでもよい。それぞれの工程の詳細は、上記「1-2-1.乳酸菌」で述べた通りである。
【0058】
[1-2-3.乳酸菌の培養上清]
有効成分が乳酸菌の培養上清の形態である場合、当該有効成分は、当該乳酸菌の産生物を含む培地成分を含む。乳酸菌の培養上清は、上記の所定の乳酸菌の1種を単独で用いて製造した培養上清であってもよいし、複数種を組み合わせて用いて製造した培養上清でもあってよいし、ある1種を単独で用いて製造した培養上清と他の1種を単独で用いて製造した培養上清との混合物であってもよい。
【0059】
培養上清に含まれる培地成分は、当該乳酸菌の培養に用いた培地成分の一部が除去されていてもよい。
【0060】
乳酸菌の培養上清は、上記の所定の乳酸菌の1種又は複数種を培養する工程、並びに培養上清を分離回収する工程を含む製造方法により得ることができる。当該製造方法は、上記の工程以外に、他の工程を含むことができる。他の工程としては、培地成分の一部を除去する工程、乳酸菌を休止菌体反応に供する工程、及び/又は、乾燥工程を含んでもよい。それぞれの工程の詳細は、上記「1-2-1.乳酸菌」で述べた通りである。
【0061】
[1-2-4.乳酸菌の抽出物]
有効成分が乳酸菌の抽出物の形態である場合、当該有効成分は、上記乳酸菌又は乳酸菌の培養物を抽出処理に供して得られる多成分系の組成物である。当該抽出物の調製に用いられる抽出溶媒としては、例えば、水;エタノール、イソプロパノール等の炭素数1~4の1価低級アルコール;1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール;これらの混合液等の極性溶媒が挙げられる。また、抽出時の温度条件としては、室温(例えば、5~35℃、好ましくは20~30℃)であることが好ましい。抽出物の具体的な調製方法としては、例えば、記乳酸菌又は乳酸菌の培養物若しくはそれらの粉砕物を抽出溶媒中に含む懸濁液を調製し、当該懸濁液を固液分離することで抽出液(エキス液)を得る方法、又は必要に応じて当該抽出液を乾燥させることで粉末(エキス末)を得る方法が挙げられる。
【0062】
[1-3.有効成分に含まれる成分]
本発明で用いられる有効成分であるフルクトバシラス属に属する乳酸菌、前記乳酸菌の培養物、前記乳酸菌の培養上清、及び前記乳酸菌の抽出物は、いずれも、当該乳酸菌が産生したNMN及び/又はNAD)だけでなく、当該乳酸菌が産生した(NMN、NAD以外の)他の代謝物、及び/又は菌体成分等も含む。本発明による皮膚バリヤ機能を改善する効果(皮膚バリヤ機能改善)及び肌の状態を改善させる効果(肌状態改善効果)は、これらの成分が相まって奏されると考えられる。
【0063】
本発明で用いられる有効成分がNAD及びNMNを含む場合、NMNの含有量は特に限定されないが、NAD1重量部あたりのNMNの含有量(含有比率)は、例えば、0.001重量部以上10重量部以下である。皮膚バリヤ機能を改善する効果(皮膚バリヤ機能改善)及び肌の状態を改善させる効果(肌状態改善効果)をより一層効果的に向上させる観点からは、NAD1重量部あたりのNMNの含有量は、好ましくは0.005重量部以上5.0重量部以下、より好ましくは0.005重量部以上3.0重量部以下、さらに好ましくは0.008重量部以上2.0重量部以下、特に好ましくは0.01重量部以上1.5重量部以下、一層好ましくは0.03重量部以上1.0重量部以下が挙げられる。
【0064】
また、NAD1モルあたりのNMNの含有量(含有比率)は特に限定されないが、例えば、0.001モル以上10モル以下、好ましくは0.005モル以上5モル以下が挙げられる。さらに好ましい形態において、NAD1モルあたりのNMNの含有量としては、好ましくは0.01モル以上3モル以下、より好ましくは0.02モル以上2モル以下、さらに好ましくは0.03モル以上1.5モル以下が挙げられる。
【0065】
[1-4.有効成分の含有量]
本発明の皮膚バリヤ機能改善剤、及び肌状態改善剤それぞれに含まれる有効成分の量としては特に限定されず、付与すべき皮膚バリヤ機能を改善する効果(皮膚バリヤ機能改善)又は肌の状態を改善させる効果(肌状態改善効果)に応じて適宜決定することができる。
【0066】
本発明の皮膚バリヤ機能改善剤、及び肌状態改善剤それぞれに含まれる有効成分の含有量としては、例えば、フルクトバシラス属に属する乳酸菌の乾燥重量換算量で、0.00001~10重量%、好ましくは0.0001~1重量%が挙げられる。上記の乾燥重量換算量とは、有効成分が、乳酸菌、乳酸菌の培養物である場合は、有効成分の乾燥重量を指し、有効成分が乳酸菌の培養上清である場合は、培養上清の取得に用いた乳酸菌の乾燥重量を指し、有効成分が抽出物である場合は、抽出物の取得に用いた乳酸菌の乾燥重量を指す。
【0067】
[2.他の成分]
本発明の皮膚バリヤ機能改善剤、及び肌状態改善剤は、上記の有効成分以外に、必要に応じて、他の薬理成分を含有していてもよいし、含有していなくてもよい。このような薬理成分としては、例えば、抗炎症剤、抗酸化剤、殺菌剤、清涼化剤、ビタミン類、ムコ多糖類等が挙げられる。
【0068】
また、本発明の皮膚バリヤ機能改善剤、及び肌状態改善剤は、所望の製剤形態にするために、必要に応じて、基剤及び/又は添加剤が含まれていてもよいし、含有していなくてもよい。このような基剤及び/又は添加剤については、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、水、炭素数1~4の1価低級アルコール(エタノール、イソプロパノール等)等の水性基剤;天然由来油(植物油、動物油、それらの加工油)、鉱物油、エステル油、脂肪酸アルキルエステル、脂肪酸、脂肪酸エステル、高級アルコール等の油性基剤;界面活性剤;多価アルコール(グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等);清涼化剤、防腐剤、着香剤、着色剤、粘稠剤、pH調整剤、湿潤剤、安定化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、粘着剤、緩衝剤、溶解補助剤、可溶化剤、保存剤等の添加剤が挙げられる。
【0069】
[3.製剤形態及び製品分類]
本発明の皮膚バリヤ機能改善剤、及び肌状態改善剤の製剤形態については、特に制限されず、液状、半固形状(クリーム状、ゲル状、軟膏状、ペースト状)、固形状(顆粒剤、細粒剤、散剤、錠剤、カプセル剤)等のいずれであってもよい。また、本発明の皮膚バリヤ機能改善剤、及び肌状態改善剤は、水性製剤、油性製剤等の非乳化製剤であってもよく、また水中油型乳化製剤、油中水型乳化製剤等の乳化製剤であってもよい。
【0070】
また、本発明の皮膚バリヤ機能改善剤、及び肌状態改善剤の製品分類としては、飲食品、化粧品、医薬品が挙げられる。
【0071】
飲食品としては特に限定されないが、例えば、発酵乳(ドリンクヨーグルト等)、乳酸菌飲料、乳飲料(コーヒー牛乳、フルーツ牛乳等)、茶系飲料(緑茶、紅茶及び烏龍茶等)、果物・野菜系飲料(オレンジ、りんご、ぶどう等の果汁、トマト、ニンジン等の野菜汁を含む飲料)、アルコール性飲料(ビール、発泡酒、ワイン等)、炭酸飲料、清涼飲料、水ベースの飲料等の飲料;及び発酵乳(セットタイプヨーグルト、ソフトヨーグルト等)、菓子、インスタント食品、調味料等の加工食品等の食品が挙げられる。
【0072】
また、飲食品としては、機能性食品も挙げられる。機能性食品は、生体に対して一定の機能性を有する食品を意味し、例えば、特定保健用食品(条件付きトクホ[特定保健用食品]を含む)及び栄養機能食品等の保健機能食品、機能性表示食品、特別用途食品、栄養補助食品、健康補助食品、サプリメント(例えば、錠剤、被覆錠、糖衣錠、カプセル及び液剤等の各種剤形のもの)及び美容食品(例えば、ダイエット食品)等が挙げられる。更に、機能性食品は、病者用食品、妊産婦・授乳婦用粉乳、乳児用調製粉乳、高齢者用食品、介護用食品等の特別用途食品であってもよい。
【0073】
化粧品としては、皮膚外用剤及び粘膜外用剤を含む外用剤が挙げられ、より具体的には、化粧水、乳液、クリーム、エッセンス、ゲル、パック、シートマスク、リップクリーム等の基礎化粧料;洗顔料、メイク落とし(クレンジング剤を含む)、角質除去剤、ボディーシャンプー等の皮膚洗浄料;サンスクリーン剤、ボディー用ジェル、ボディー用マッサージ剤、抑汗剤、防臭剤、除毛剤、入浴剤等のボディーケア化粧料;ファンデーション、おしろい、口紅、頬紅、アイシャドー、アイライナー、マスカラ、眉墨等のメークアップ化粧料;マネキュア、ネイルリムーバー等の爪用化粧料;ヘアスタイリング剤、シャンプー、コンディショナー、リンス、育毛剤等の毛髪化粧料;液体歯磨、練歯磨、洗口液、マウススプレー等の口腔用化粧料等が挙げられる。
【0074】
医薬品としては、経口剤、並びに、皮膚外用剤及び粘膜外用剤を含む外用剤(医薬部外品を含む)が挙げられる。経口剤の剤形としては、錠剤、被覆錠、糖衣錠、カプセル及び液剤等が挙げられ、外用剤の剤型としては、液剤(ローション剤、スプレー剤、エアゾール剤、及び乳液剤を含む)、フォーム剤、軟膏剤、クリーム剤、ジェル剤、貼付剤等が挙げられる。
【0075】
これらの製品分類の中でも、皮膚バリヤ機能を改善する効果(皮膚バリヤ機能改善)又は肌の状態を改善させる効果(肌状態改善効果)をより一層高める観点から、好ましくは経口剤及び飲食品が挙げられる。
【0076】
[4.用途]
本発明の皮膚バリヤ機能改善剤、及び肌状態改善剤は、それぞれ、皮膚バリヤ機能を改善する効果(皮膚バリヤ機能改善)又は肌の状態を改善させる効果(肌状態改善効果)を目的とした用途に用いられる。
【0077】
皮膚バリヤ機能改善剤の用途としては、皮膚乾燥改善用、経皮水分蒸散量抑制用、皮膚肥厚化抑制用が挙げられる。中でも、経皮水分蒸散量抑制用が好ましい。従って、皮膚バリヤ機能改善剤を摂取することにより肌の乾燥状態を改善(ドライスキンの改善)したり、肌の乾燥を予防(ドライスキンの予防)したり、肌の角層バリヤ機能を向上・改善したりする効果が期待できる。このような作用に伴い、乾燥による肌荒れの防止乃至改善作用も期待できる。
皮膚乾燥改善とは、例えば、皮膚の乾燥状態が続いた場合、潤いを補うために過剰分泌された皮脂が毛穴に詰まることで、皮膚表面に皮脂膜が形成されず、さらに乾燥が進行することを抑制するものである。
経皮水分蒸散量抑制とは、例えば、皮膚(肌)表面の水分蒸散量を抑制する効果を意味し、肌の保湿作用、または水分を保持する効果を含むものである。
皮膚肥厚化抑制とは、例えば、表皮及び/又は真皮及び/又は皮膚の皮下層(例えば、皮下脂肪又は筋肉)において、角質の厚みが増すことを抑制し、皮膚細胞のターンオーバーを促進するものである。
【0078】
肌状態改善剤の用途としては、皮膚粘弾性改善又は低下抑制用、肌のシワ改善又は抑制用、肌のたるみ改善又は抑制用、肌のハリ及び弾力改善用が挙げられる。中でも、皮膚粘弾性改善又は抑制用または、肌のシワ改善又は抑制用が好ましい
皮膚粘弾性改善又は低下抑制とは、例えば、皮膚の粘弾性を改善や肌の柔軟性を改善、または、低下を抑制するものである。また、対象となる皮膚は、特に限定されず、例えば、顔面(例えば、額、頬、口元、目尻等)や、腕、肘、手の甲、指先、足、膝、脛、かかと、首、脇、背中等が挙げられる。
肌のシワ改善又は抑制とは、例えば、肌のシワの増加を抑制またはシワの減少を促進させることにより、外見上の肌の老化を防止するものである。
肌のたるみ改善又は抑制とは、例えば、加齢等により失われてしまった肌の張り回復、加齢等により生じてしまった肌のたるみ改善や抑制するものである。
肌のハリ及び弾力改善とは、例えば、皮下脂肪の肥厚やセルライトでハリの低下した肌のハリ改善効果や加齢に伴う肌の老化現象の抑制、紫外線や活性酸素により生じるシミ、肌の弾力改善するものである。
【0079】
[5.用量]
本発明の皮膚バリヤ機能改善剤、及び肌状態改善剤が内用される場合、有効成分量が、例えば、0.001~1000mg/kg/日、好ましくは0.01~500mg/kg/日となる量で、1日に1~5回、内用することができる。
【実施例0080】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0081】
[OS-1010株乾燥菌体粉末(死菌)の調製]
フルクトバシラス・フルクトサスOS-1010株を、Difco社製のMRS培地(前培養培地)30mlに植菌し、30℃で24時間、静置で拡大培養した。得られた培養液をOD660が0.02となるように、MRS培地(本培養培地)1Lに植菌し、30℃で12時間、pH6.0~7.0で攪拌培養した。得られた培養液を遠心分離に供して菌体を回収した。回収した菌体を1Lの0.85w/w%KCl水溶液で洗浄した。洗浄した菌体を再度遠心分離に供し、菌体を回収した。回収した菌体を50mlの蒸留水に懸濁し、65℃で30分間殺菌後に凍結乾燥を行い。OS-1010株乾燥菌体粉末(死菌)を得た。OS-1010株乾燥菌体粉末(死菌)を用いて、錠剤を作成し、評価試験に用いた。
【0082】
後述するHPLC分析条件を用い、回収した乳酸菌粉末中のニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)及びニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)生産量を測定したところ、NAD1重量部あたりのNMNの比率は0.03重量部(NAD1モルあたりのNMNの比率としては0.06モル)であった。
【0083】
(MRS培地の組成)
2w/w% グルコース
1w/w% プロテアーゼペプトン
1w/w% 牛肉エキス
0.5w/w% 酵母エキス
0.2w/w% クエン酸アンモニウム
0.1w/w% Tween80
0.5w/w% 酢酸ナトリウム
0.01w/w% 硫酸マグネシウム
0.005w/w% 硫酸マンガン
0.2w/w% リン酸水素二カリウム
【0084】
(HPLC分析条件)
・NMNの測定方法
カラム:DaisoPak SP-100-5-ODS-P(4.6×150mm)×2本
カラム温度:25℃
溶離液 :75mM リン酸アンモニウム水溶液(pH6.0)
流速 :0.6ml/min
検出器 :UV検出器(260nm)
検出時間 :14.5分
・NADの測定方法
カラム:DAISOPAK SP-100-5-ODS-P(4.6×250mm)×2本
カラム温度:25℃
溶離液 :75mM リン酸アンモニウム水溶液(pH6.0):メタノール=95:5(w:w)
流速 :0.7mL/min
検出器 :UV検出器(260nm)
検出時間 :33分
【0085】
(NMN及びNADの定量方法)
購入したNMN及びNADを標準試料として用いて検量線を作成し、OS-1010株乾燥菌体粉末(死菌)中のNMN及びNADの生産量をそのHLPCのピーク面積比から定量した。
【0086】
ヒトに対する試験を実施して、フルクトバシラス・フルクトサスOS-1010株乾燥菌体粉末(死菌)を含有する錠剤の摂取による皮膚状態の改善効果ついて検証した。
【0087】
(1)試験内容
本試験は、30~59歳の健常者男女60名を対象にして行った。被験者を下記の2群にランダムに分けた。
(錠剤a) プラセボ群:プラセボ錠剤(即ち、フルクトバシラス・フルクトサスOS-1010株の乾燥菌体粉末(死菌)含まない錠剤)を摂取する群
(錠剤b)OS-1010株摂取群(乳酸菌接種群):フルクトバシラス・フルクトサスOS-1010株の乾燥菌体粉末(死菌)を含む錠剤を摂取する群(乳酸菌含有量 120億個/錠)を摂取する群
【0088】
試験に用いた錠剤中の各組成は、次に記載する通りである。
プラセボ群が接種する錠剤は、錠剤aと、乳酸菌接種群が接種する錠剤は、錠剤bとした。錠剤bには、フルクトバシラス・フルクトサスOS-1010株の死菌体が120億個/錠含まれている。
プラセボ群、乳酸菌接種群のいずれの群でも被験者あたり、1日1錠、8週間摂取させた。錠剤の摂取前、摂取後8週で、経皮水分蒸散量、皮膚粘弾性、シワ面積率、総シワ平均深さ、最大シワ平均深さをそれぞれ測定した。
【0089】
錠剤a(プラセボ群用)組成
デキストリン;132mg
粉末セルロース;16mg
微粒二酸化ケイ素;4mg
ショ糖脂肪酸エステル;4mg
麦芽糖;24mg
乳糖;20mg
合計(1錠);200mg
【0090】
錠剤b(乳酸菌接種群用)組成
デキストリン;129mg
粉末セルロース;16mg
微粒二酸化ケイ素;4mg
ショ糖脂肪酸エステル;4mg
麦芽糖;24mg
乳糖;20mg
フルクトバシラス・フルクトサスOS-1010株の乾燥菌体粉末(死菌);3mg
合計(1錠);200mg
【0091】
(2)実施例1: 経皮水分蒸散量に関する試験
Tewameter(株式会社インテグラル)を使用して、腕(前腕部内側)を対象に5回測定した。摂取前及び摂取8週後のそれぞれについて、被験者30名の経皮水分蒸散量を測定し、各群の平均値を求めた。摂取前の平均値を100とした場合の値を表1に示す。数値が低いほど効果が高いことを示す。
【0092】
【0093】
プラセボ群と比較し、乳酸菌摂取群では経皮水分蒸散量の増加が抑制されており、肌の乾燥状態を改善(ドライスキンの改善)や肌の乾燥を予防(ドライスキンの予防)等、皮膚のバリヤ機能が改善する効果のあることが確認された。
【0094】
(3)実施例2:皮膚の粘弾性に関する試験
Cutometer(株式会社インテグラル)を用いて頬を対象に5回測定した。
摂取前及び摂取8週後のそれぞれについて、被験者30名の粘弾性(R0;柔軟性、R2;総弾性、R5;正味の弾性、R7;回復弾性)を測定し、各群の平均値を求めた。摂取前の平均値を100とした場合の値を表2に示す。数値が大きいほど効果が高いことを示す。
【0095】
【0096】
プラセボ群と比較し、乳酸菌摂取群ではR0(柔軟性)及びR7(回復弾性)が向上しており、乳酸菌株の摂取により、皮膚の弾力性を向上させ、肌のはり等を改善する効果があることが確認された。
【0097】
(4)実施例3 皮膚の粘弾性に関する試験(サブグループ解析)
実施例2の結果について、さらに摂取開始前の肌の皮脂量が中央値以上の被験者によるサブグループ解析を実施した。摂取前及び摂取8週後のそれぞれについて、被験者(プラセボ群:17名、乳酸菌摂取群:15名)の粘弾性(R0;柔軟性、R2;総弾性、R5;正味の弾性、R7;回復弾性)の平均値を基に、摂取前の平均値を100とした場合の値を表3に示す。数値が大きいほど効果が高いことを示す。
【0098】
【0099】
プラセボ群と比較し、乳酸菌摂取群ではR2(総弾性)、R5(正味の弾性)及びR7(回復弾性)が向上しており、乳酸菌株の摂取により、皮膚の弾力性を向上させ、肌のはり等を改善する効果があることが確認された。
【0100】
(5)実施例4:目尻シワに関する試験
PRIMOS(株式会社インテグラル)を使用して、目尻を対象に測定した。
摂取前及び摂取8週後のそれぞれについて、被験者30名の目尻シワについて、シワ面積率、総シワ平均深さ、最大シワ平均深さを測定した。摂取前の平均値を100とした場合の値を表4に示す。数値が小さいほど効果が高いことを示す。
【0101】
【0102】
プラセボ群と比較し、乳酸菌摂取群において、シワ面積率、総シワ平均深さ、最大シワ平均深さの全ての値が改善しており、OS-1010株の摂取により、皮膚のシワを改善する効果があることが確認された。
【0103】
(5)実施例5;Visual Analogue Scaleアンケート
年齢が20歳以上64歳以下の健常な男性及び女性を被験者として以下の試験を実施した。以下に示す錠剤cを、被験者あたり、1日2錠、12週間摂取させた。錠剤の摂取前、摂取後4週、8週、12週で、肌状態に対する体感性について、Visual Analogue Scale(以下VASとする)アンケートに記入させた。
【0104】
錠剤c(OS-1010株配合)組成
デキストリン;12mg
粉末セルロース;24mg
微粒二酸化ケイ素;4mg
ショ糖脂肪酸エステル;4mg
麦芽糖;40mg
乳糖;16mg
フルクトバシラス・フルクトサスOS-1010株の乾燥菌体粉末(死菌);100mg
合計(1錠);200mg
【0105】
VASアンケート項目は「肌の調子」「肌のしっとり感(うるおい)」「肌のキメ」「目尻の小じわ」「肌のツヤ」「肌の透明感」「肌のハリ・弾力」の7項目とした。
VASアンケートは、100mm線分上に、左端が最も良い状態(症状なし)、右端が最も悪い状態(過去最大の症状)として被験者が自己の状態を記した位置の、左端からの距離(mm)であり、数字が小さいほど、良い評価となる。
図1にVASアンケートのスコア変化量を示す。
体感性に関するVASアンケートにおいて、乳酸菌摂取前と比較しスコアが低下しており、乳酸菌摂取による肌状態の体感の改善が確認された。