(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144309
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】起伏補助装置を備えたクレーン及びそのクレーンの起伏方法
(51)【国際特許分類】
B66C 23/26 20060101AFI20241003BHJP
B66C 23/36 20060101ALI20241003BHJP
B66C 23/82 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B66C23/26 C
B66C23/36 A
B66C23/82 Z
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024049372
(22)【出願日】2024-03-26
(31)【優先権主張番号】10 2023 107 839.9
(32)【優先日】2023-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】597120075
【氏名又は名称】リープヘル-ヴェルク エーインゲン ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Liebherr-Werk EhingenGmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュタングル トーマス
【テーマコード(参考)】
3F205
【Fターム(参考)】
3F205AA07
3F205CA01
3F205CA09
3F205DA01
3F205DA03
3F205JA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】補助クレーンのような外部補助を必要とせずに、より長い、またはより重いブームを容易且つ安全に上昇させる。
【解決手段】ブーム16は、水平旋回軸を中心に旋回するように上部台車に取り付けられたブレーシングフレーム18で補強され、ブレーシングフレーム18を旋回させることにより上下に起伏させることができる。本発明によれば、クレーンは、ブーム16をフラットブーム位置において起伏させるために、ブレーシングに加えて作用するトルクをブームに与えられる起伏補助装置30を備える。この起伏補助装置30は、上部台車14に旋回可能に取り付けられた補助アーム32を有し、この補助アーム32は、保持要素を介して上部台車に連結され、可変長の牽引要素34を介してブームに連結されている。牽引要素34は、ブームに補助アームの方向へ牽引力を与えるように構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部台車(14)と、水平旋回軸を中心として旋回するように前記上部台車(14)に連接されたブーム(16)と、を有し、前記ブームは、前記水平旋回軸を中心として旋回するように上部台車(14)に取り付けられたブレーシングフレーム(18)により補強され、前記ブレーシングフレーム(18)を旋回させることによって上下に起伏可能であるクレーン(10)、特に移動式ラチスブームクレーンであって、
フラットなブーム位置における前記ブーム(16)の起伏のために、ブレーシング(19)に加えて作用するトルクを前記ブーム(16)に与えることができる起伏補助装置(30)を備え、前記起伏補助装置(30)が、上部台車(14)に旋回可能に取り付けられるとともに、前記上部台車(14)に保持要素(34)を介して連結され且つ前記ブーム(16)に可変長の牽引要素(36)を介して連結される補助アーム(32)を有し、前記牽引要素(36)がブーム(16)に前記補助アーム(32)の方向へ牽引力を与えるように構成されていることを特徴とするクレーン(10)。
【請求項2】
請求項1に記載のクレーン(10)において、
前記牽引要素(36)は、前記補助アーム(32)及び前記ブーム(16)に関節接合態様で連結され、好ましくは、クレーンの運転中の全体にわたって前記ブーム(16)に連結された状態を維持し、好ましくは前記補助アーム(32)にも連結された状態を維持するように構成されているクレーン(10)。
【請求項3】
請求項1または2に記載のクレーン(10)において、
前記ブレーシングフレーム(18)が、能動的に調節可能なブレーシングケーブリング(20)を介して前記上部台車(14)に連結され、前記ブレーシングケーブリング(20)はケーブルウインチ(24)に取り付けられて巻き取り及び巻き戻しが可能なブレーシングケーブル(22)を含み、前記ケーブルウインチ(24)は、前記ブレーシングケーブル(22)を巻き上げることによって前記ブレーシングフレーム(18)を前記上部台車の後方に向かって旋回させることによって前記ブレーシングフレーム(18)に連結された前記ブーム(16)を前記ブレーシング(19)を介して起伏させるように構成されているクレーン(10)。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のクレーン(10)において、
前記牽引要素(36)が、前記ブレーシング(19)、前記ブレーシングフレーム(18)及びブーム(16)とは別個の構成要素であるクレーン(10)。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のクレーン(10)において、
前記牽引要素(36)が能動的に長さを調節可能であり、好ましくは、前記ブーム(16)が起立するときに前記ブーム(16)に一定の牽引力または変化する牽引力を与えるように制御可能及び/または調節可能であるクレーン(10)。
【請求項6】
請求項5に記載のクレーン(10)において、
前記牽引要素(36)が油圧シリンダとして構成され、前記牽引要素(36)が好ましくは複動式油圧シリンダとして構成されることによって牽引力と圧縮力の両方を前記ブーム(16)に与えることができるクレーン(10)。
【請求項7】
請求項6に記載のクレーン(10)において、
前記牽引要素(36)が前記ブーム(16)の第1の角度範囲において前記ブーム(16)に牽引力を加えて起伏プロセスを補助するように、前記牽引要素(36)が、前記クレーン(10)の少なくとも1つの油圧ポンプ及び制御ユニットを介して制御及び/または調整することができるクレーン(10)。
【請求項8】
請求項7に記載のクレーン(10)において、
前記牽引要素(36)は、前記ブーム(16)の第3の角度範囲において前記上部台車(14)から離れる方向を向く圧縮力を前記ブーム(16)に与えるように構成され、前記ブーム(16)は、特に、前記第1の角度範囲よりも急角度のブーム位置を有し、前記制御ユニットは、好ましくは、前記第3の角度範囲において特性曲線を用いる制御で作動油が前記牽引要素(36)から流出するかまたは前記牽引要素(36)に流入するように構成されていることを特徴とするクレーン(10)。
【請求項9】
請求項6から8のいずれか1項に記載のクレーン(10)において、
前記牽引要素(36)は、フォールバックサポートとして構成され、前記補助アーム(32)は、好ましくは牽引要素(36)がフォールバックサポートモードであるとき前記牽引要素(36)のためのアバットメントとして機能するように構成されているクレーン(10)。
【請求項10】
請求項6から9のいずれか1項に記載のクレーン(10)において、
制御ユニットと通信可能に接続された測定装置をさらに備え、前記制御ユニットは、前記測定装置によって検出された変数に応じて前記牽引要素(36)のスイッチをオフにするように構成され、
前記測定装置は、好ましくは、少なくとも、
前記ブーム(16)、前記ブレーシングフレーム(18)及び/または前記補助アーム(32)の角度を検出するための少なくとも1つのセンサと、
前記ブレーシング(19)、前記保持要素(34)及び/または前記牽引要素(36)の力を検出するための少なくとも1つのセンサと、を備えているクレーン(10)。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載のクレーン(10)において、
前記ブレーシングフレーム(18)及び前記補助アーム(32)が互いに独立して旋回可能であり、前記補助アーム(32)は、好ましくは受動的に旋回可能であり、前記ブーム(16)の第2の角度範囲において前記牽引要素(36)を介する前記ブーム(16)との連結によって前記ブーム(16)の旋回動作に追従するクレーン(10)。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載のクレーン(10)において、
前記保持要素(34)が可撓性であり、好ましくは牽引ケーブルを有するクレーン(10)。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載のクレーン(10)において、
前記保持要素(34)は、牽引要素(36)のフォールバックサポートモードにおいて上部台車(14)に載置され、特に、負荷がかからないように設計されていることを特徴とするクレーン(10)。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項に記載のクレーン(10)のブーム(16)を起伏させる方法であって、
前記ブーム(16)を、フラットな、好ましくは平置きされたブーム位置に設けるステップ、
前記ブーム(16)に上向きのトルクを与えるために前記ブレーシングフレーム(18)を後方に旋回させ、同時に前記補助アーム(32)へ向かう牽引力を前記ブーム(16)に前記牽引要素(36)を介して与えて起伏プロセスを補助するステップ、
前記ブレーシングフレーム(18)の旋回を継続することによってブーム(16)を起伏させるステップ、及び
好ましくは、所定の角度を超えたとき、及び/または所定の力に達しなかったときに、前記牽引要素(36)のスイッチをオフにするステップ
を有する方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、
前記牽引要素(36)が、好ましくは特定のブーム角度でのみ作動してそれ以外はスイッチがオフに切り替えられる上昇プロセス後の前記ブーム(16)のフォールバックサポートとして使用される方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に係るクレーン、特に移動式ラチスブームクレーン、及びそのクレーンのブームを起伏させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来知られているラチスブームクレーンは、一般に、移動可能な下部台車と、下部台車の上に設置された回転可能な上部台車と、水平旋回軸を中心として上部台車に連接(関節接合)されたラチスブームとを有する。後者は通常、上部台車に連結される連接片と、ボルト接続により連結されてメインブームを形成する複数のラチス部分(格子部分)とを有する。
【0003】
ラチスブームクレーンのブームは、一般に、ブームに対するブレーシング角度を増加させてブームの旋回ポイントの周りのレバー(てこ)の作用を大きくするために、追加のブレーシングフレーム(AフレームまたはSAフレームとしても知られている)によって補強されている。ブレーシングフレームは、水平旋回軸を中心に旋回できるように上部台車に連接され、通常は複数のブレーシングロッドを有するブレーシングシステムを介してブームに連結される。ブレーシングフレームは、長さ調節可能なブレーシングシステムを介して上部台車に連結され、引き込み機構を用いてその長さを能動的に調節することができる。特に、ブレーシングフレームは、上部台車のケーブルウインチでのブレーシングケーブルの巻き取り及び引き出し(巻き戻し)によって、その旋回軸を中心に旋回させることができ、それによってブームを上下に起伏させることができる。
【0004】
このタイプのクレーンでは、下降位置からのブームの初期の上昇も、ブレーシングケーブリング、ブレーシングフレーム及びブレーシングケーブリング、または引き込み機構を使用して行われる。この構成により、ブームを垂直方向に上昇させるトルクが発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年ますます必要とされているような長いブームまたは重いブーム(例えば、より大型の風力タービンの架設用)では、ケーブルウインチとブレーシングの両方が最大耐荷重まで伸ばされるため、前述のブレーシング、ブレーシングフレーム及び引き込み機構のシステムが限界に達するという問題がある。
【0006】
このような背景から、本発明の目的は、このタイプのクレーンにおいて、より長いブーム及び/またはより重いブームの使用を可能にすることである。特に、その目的は、補助クレーンのような外部補助を必要とせずに、より長い、またはより重いブームを容易且つ安全に上昇させることができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、この目的は、請求項1の特徴を有するクレーン及び請求項14の特徴を有する方法によって達成される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項及び以下の説明から得られる。
【0008】
したがって、一方では、上部台車と、水平旋回軸を中心として起伏または旋回するように上部台車に取り付けられたブームとを備えるクレーン、特に移動式ラチスブームクレーンが提案される。特に、上部台車は、移動可能な下部台車に回転可能に取り付けられる。また、ブレーシングフレームも、水平旋回軸を中心に旋回できるように上部台車に連接され、ブレーシングフレームはブームのブレーシングの一部である。言い換えると、ブームはブレーシングフレームにより補強され、ブームはブレーシングフレームを旋回させることによって上下に起伏する。ブームはブレーシングフレームの動きに追従する。
【0009】
本発明によれば、クレーンはフラットなブーム位置でブームを起伏させるために、ブレーシングに加えて作用するトルクをブームに与える起伏補助装置を備える。起伏補助装置は、ブームのフラット位置、特にレイドアウト位置(横倒し位置)からのブームの上昇を補助し、ブレーシングだけでは生成される上昇トルクが不足する場合、または上昇トルクを発生させるための構成要素のうちの少なくとも1つの上昇トルクがその容量または耐荷重を超えて加えられている場合に、ブームの上昇を補助する。
【0010】
起伏補助装置は補助アームを有し、この補助アームは、一方が上部台車に旋回可能に取り付けられ、他方が保持要素を介して上部台車に連結され、可変長の牽引要素を介してブームに連結されている。牽引要素は、補助アームとブームとの間に配置されて、ブームに対して補助アームの方向に牽引力を加えるように構成され、この牽引要素によって上昇プロセスが補助される。牽引要素が発生するトルクは、ブレーシングフレーム及びブレーシングを介して加えられるトルクに加えて作用するため、ブレーシングまたは引き込み機構に過負荷を与えることなく、ブームをフラット位置または下降位置から持ち上げることもできる。
【0011】
ブームと補助アームの間に長さ可変の牽引要素が配置されているため、クレーンの運転の間中ずっと牽引要素をクレーン上に維持することができ、複雑な改変の作業が不要になる。同時に、牽引要素と補助アームが適切に構成されていれば、牽引要素がブームに適切な位置で接続されるため、ブームが急勾配であるときに牽引要素をフォールバックサポート(縮退運転サポート)として使用することが可能になる。
【0012】
本発明に係る起伏補助装置により、従来よりも長いブーム及び/または重いブームを設けることが可能であり、特に初期の上昇プロセス中にブレーシングまたは引き込み機構に過負荷がかからない。
【0013】
また、保持要素は長さが可変であっても一定であってもよく、特に補助アームを所定位置に保持して、長さ可変の牽引要素がブームを補助アームに向かって引っ張る間に必要な抵抗を作り出すのに使用される。
【0014】
考え得る実施形態では、牽引要素が補助アーム及びブームに関節接合態様で連結される。これにより、ブームと補助アームの間での相対的な動作が可能になる。特に、ブームがある段階において上昇するとき、ブームが旋回すると牽引要素の長さが短くなるため、補助アームがブームとともに旋回しないことがある。好ましくは、牽引要素は、クレーンの運転中の全体を通してブームに連結される状態を維持し、好ましくは補助アームにも連結される状態を維持するように構成される。
【0015】
さらに可能な実施形態では、ブレーシングフレームが、能動的に調整可能なブレーシングケーブルを介して上部台車に連結される。ブレーシングフレームは、引き込み機構を介して旋回可能であり、ブレーシングケーブルは、特に上部台車に取り付けられたケーブルウインチで巻き取り及び巻き戻しが可能なブレーシングケーブルを有する。ブレーシングケーブルは、好ましくは、上部台車及びブレーシングフレームのデフレクションプーリにより案内される。好ましい実施形態では、ケーブルがブレーシングフレームの複数のデフレクションプーリと上部台車の複数のデフレクションプーリにわたって案内され、すなわち複数回巻き取られて、ブレーシングケーブルがプーリブロックを形成する。ケーブルウインチは、ブレーシングケーブルを巻き上げることによってブレーシングフレームを上部台車の後方へ向かって旋回させることによってブレーシングを介してブレーシングフレームに連結されたブームを起伏させるように構成される。
【0016】
さらに考え得る実施形態では、牽引要素が、ブレーシング、ブレーシングフレーム、及びブームとは別個の構成要素である。ブームを上昇させるための追加の牽引力は、特に追加される可変長の牽引要素によって発揮されるため、ブレーシング、ブレーシングフレームまたはクレーンのその他の要素のうちの既存の要素の単なる副生成物ではない。
【0017】
原理的には、可変長さの牽引要素が長さを受動的に可変にするだけで、特にブームに与える牽引力がブームと補助アームとの間の相対角度によって決まるようにすることが考えられる。例えば、牽引要素は、バネ要素を含むようにするか、またはそのようなものとして構成してもよい。この場合、牽引力は上昇プロセスの開始時に最大となり、ブーム角度が大きくなるに伴って小さくなる。牽引要素の牽引力だけでは、ブームを起伏させるのに十分ではない。このため、ブレーシングによってさらに復原モーメントを加える必要がある。
【0018】
しかしながら、受動的にしか作動しない牽引要素では、牽引力に影響を与えたり変更したりすることはできない。また、牽引要素をフォールバックサポートとして使用することもできない。
【0019】
別の考え得る実施形態では、牽引要素が能動的に長さ調節可能である。これによって、付加的な牽引力をブームに能動的に作用させることができ、この牽引力は、好ましくは、目標とする方法で制御及び/または調整することができる。この目的のために、好ましくは電気制御ユニットが設けられ、最も簡単な場合にはこれをクレーン制御ユニットそのものとすることができる。これにより、例えば、急勾配のブーム位置ではブレーシングのみによる牽引力で十分である場合などの特定の実施態様では、牽引要素を能動的にオフに切り替えることもできる。
【0020】
牽引要素は、一定もしくは可変の、または変化する牽引力を、長時間にわたって、及び/またはブームの旋回角度の全体で、ブレーシングフレームまたはブームに加えるように、制御ユニットを介して制御及び/または調節することができる。ブレーシングケーブルのケーブルウインチを制御ユニットによって制御及び/または調整することも考えられる。これにより、制御ユニットは、牽引要素の状態に応じて上昇プロセスに干渉することができる。ケーブルウインチと牽引要素の同期運転も可能である。制御ユニットは、クレーン制御ユニットまたはそれに接続された別の制御ユニットであってもよい。
【0021】
さらに他の可能な実施形態では、牽引要素が油圧シリンダとして構成される。牽引力は、1つまたは複数の油圧ポンプと、電気制御ユニットを用いる対応の制御システムとにより、油圧シリンダを加圧することで生成される。これにより、ブーム角度などの特定のパラメータに応じて牽引力を制御または調整することもできる。あるいは、アクチュエータとしては、ケーブル駆動装置やスピンドル駆動装置も考えられる。
【0022】
牽引要素は複動式油圧シリンダとして構成することが好ましく、それにより、シリンダの加圧に応じて牽引力と圧縮力の両方をブームに加えることができる。この実施態様によれば、牽引要素を上昇補助としてだけでなく、上昇プロセス後の油圧フォールバックサポートとしても使用することが可能になり、ブームが上部台車の後方へ転倒するのを防止できる。
【0023】
さらに他の可能な実施形態では、起伏プロセスをサポートするためにブームの第1の角度範囲において牽引要素がブームに牽引力を与えるように、少なくとも1つの油圧ポンプ及びクレーンの制御ユニットで牽引要素を制御及び/または調整できる。第1の角度範囲は、好ましくは、フラットなブーム位置、特にブームを下降させた位置と、付加的に発生する牽引力による上昇プロセスのサポートが必要とされる所定の第1の限界角度との間のことである。限界角度は、制御ユニットに直接記憶させてもよいし、別の変数、例えばブレーシングの限界力またはブレーシングフレームの限界角度から導き出してもよい。
【0024】
さらに他の可能な実施形態では、牽引要素が、ブームが第1の角度範囲内で特に急なブーム位置になるブームの第3の角度範囲において、上部台車から離れる方向へブームに圧縮力を与えるように構成される。第3の角度範囲では、牽引要素は特にブームのフォールバックサポートとして機能する。この範囲では、ブームを旋回させるためには、ブレーシングだけから加えることができる牽引力またはそれに対応するトルクで十分であるため、追加の牽引力は必要ない。したがって、牽引要素を、好ましいことにフォールバックサポートとして使用することができる。補助アームとブームとの間の配置及び補助アームの旋回により、牽引要素をこの目的のために変更する必要はない。
【0025】
好ましくは、制御ユニットは、特性曲線を用いて第3の角度範囲において制御された態様で、作動油の牽引要素からの流出または牽引要素への流入が可能なように構成される。このことにより、フォールバックサポートが目的通りに作動し、各ブーム位置に対して最適な力を付与することができる。
【0026】
さらに他の可能な実施形態では、牽引要素をフォールバックサポートとして構成するか、または牽引要素を上昇補助としての機能に加えてフォールバックサポートとして使用できるように構成することが提案される。補助アームは、好ましくは、牽引要素のフォールバックサポートモードにおいて、牽引要素の張力負荷のアバットメント(接合点、支持台)として機能するように構成されるので、ドロップバックサポート(後退サポート)が安定して取り付けられ、発生した圧縮力をブームに伝達することができる。したがって、牽引要素と補助アームとの接続は、牽引と圧縮の両方で機能するように構成しなければならない。フォールバックサポートモードでは、フォールバックサポートまたは牽引要素は好ましくは上部台車に支持される。
【0027】
さらに他の可能な実施形態においては、クレーンが、制御ユニットに通信可能に接続された測定装置をさらに備え、制御ユニットが、測定装置によって検出された変数の関数として牽引要素のスイッチをオフにするように構成される。検出される変数は、角度(例えば、ブームの角度及び/またはブレーシングフレームの角度及び/または補助アームの角度)、及び/または力(例えば、ブレーシングの力及び/またはブレーシングケーブルの力及び/または牽引要素の力及び/または保持要素の力)にすることができる。
【0028】
測定装置は、好ましくは、
ブーム、ブレーシングフレーム及び/または補助アームの角度を検出するための少なくとも1つのセンサ、
ブレーシング、保持要素及び/または牽引要素の力を検出するための少なくとも1つのセンサ、
のうちの少なくとも1つを備える。
【0029】
さらに、例えばブームの速度及び/または牽引要素の油圧を検出するためのセンサを設けることもできる。
【0030】
例えば、クレーンは、ブレーシングフレームの角度位置を検出するための少なくとも1つのセンサを有することができる。これは、例えば、ケーブルウインチ及び/またはブレーシングフレームのケーブルの位置を検出することによって、及び/またはブレーシングフレームの角度位置を直接検出することによって行うことができる。
【0031】
ブームの角度位置は、例えば、ブレーシングフレーム及び/または補助アームの角度位置を検出することによって、及び/または角度エンコーダを用いてブームの角度位置を直接検出することによって、間接的に検出することができる。
【0032】
それに代えて、またはそれに加えて、クレーンは、可変長の牽引要素によって与えられる牽引力を検出するための少なくとも1つのセンサを備えることができる。これは、例えば、牽引要素に接続されたロードセルにより行うことができる。牽引要素の牽引力を監視することにより、上昇中及び/またはフォールバックサポートモードにおける正しい動作を保証でき、(特に故障の場合に)周囲の構造物の過負荷を防止できる。
【0033】
その代わりに、またはそれに加えて、クレーンは、可変長の牽引要素の位置及び/または長さを検出するための少なくとも1つのセンサを有していてもよい。特に、牽引要素の端部位置(最小伸長位置及び最大伸長位置)は、適切なセンサを用いて検出することができる。端部位置センサまたはセンサは、牽引要素が完全に収縮及び/または伸長したときに、制御ユニットに通知する。牽引要素の最大伸長長さを検出して送り出すための端部位置センサは、例えばブレーシングのブレーシングロッドが正しく接続されていない場合の不具合を検出するために使用することができ、牽引要素またはクレーンを損傷から保護する。牽引要素の最小伸長長さ(これは物理的に制限された最小長さに対応しなければならないものではなく、固定の最小長さを表してもよい)を検出して送り出すための端部位置センサは、初期の上昇プロセスが完了した後に、牽引要素を動力のない状態に切り替えるために使用することができる。
【0034】
設けられるのが好ましい制御ユニットは、少なくとも1つのセンサからの信号を受信し、センサデータに基づいて、牽引要素を介してブームに加えられる牽引力を制御及び/または調整するように構成される。好ましくは、制御ユニットは、障害が発生した場合、上昇プロセスに干渉し、損傷を防止するために必要であればケーブルウインチを停止させることができる。その代わりに、またはそれに加えて、制御ユニットは、オペレータに対応する警告(例えば、視覚的及び/または音響的な警告信号)を発するように構成してもよい。
【0035】
好ましくは、制御ユニットは、自動的に上昇プロセスを実行するように構成される。したがって、追加の牽引力を発生させるプロセスは、特に、例えば、ブームの定義された限界角度を超えるまで、及び/または(例えばブレーシングにおける)所定の限界力を下回るまで、及び/または牽引要素の所定の限界長さを下回るまで、自動的に実行される。牽引要素は、例えば制御ユニットによって、自動的に動力供給しないようにすることができる。
【0036】
他の可能な実施形態では、ブレーシングフレームと補助アームを互いに単独で旋回できるようにすることが考えられる。補助アームは、好ましくは、受動的に旋回可能であり、ブームの第2の角度範囲において、牽引要素を介したブームとの結合のためにブームの旋回運動に追従する。特に、第2の角度範囲は、上述した第1の角度範囲と第3の角度範囲との間にある。第2の角度範囲では、ブームは、ブレーシングのみによって加えることのできる牽引力がブームを旋回させるのに十分な程度に起立することが好ましい。ブームは、フォールバックサポートの使用を必要とするほど急角度にはまだ起立しないことが好ましい。この領域では、牽引要素は好ましくはオフに切り替えられて引き込まれる。したがって、牽引要素は、特に補助アームとブームの旋回運動を結合する結合要素として作用する。一方、第1の角度範囲では、ブームが旋回するときに牽引要素が引き込まれる(つまり、その長さが短くなる)ので、補助アームはブームとともによりゆっくりと旋回するか、まったく旋回しない。
【0037】
他の可能な実施形態では、保持要素が可撓性であり、好ましくは牽引ケーブルを有することが提案される。牽引ケーブルという用語は広義に解釈され、チェーンまたはチェーンとケーブルの組み合わせを含むようにすることもできる。
【0038】
保持要素は固定長にすることができ、これはすなわち非可変長の牽引要素を表す。あるいは、保持要素は、能動的に長さを調節することもでき、例えば、上昇動作中に補助アームを所定位置に保持してアバットメントとして機能する油圧シリンダを有するものであるか、またはその油圧シリンダに相当する。
【0039】
他の可能な実施形態では、牽引要素がフォールバックサポートモードに移行するとき、保持要素が上部台車の上に置かれるように構成される。したがって、フォールバックサポートモードでは、保持要素は上部台車上に載置され、特に、牽引または圧縮されない。保持要素は好ましくは牽引ケーブルとして構成される。したがって、保持要素は、補助アームまたは可変長の牽引要素のためのアバットメントを形成するための上昇プロセスにおいてのみ必要とされることが好ましい。一方、フォールバックサポートモードでは、特に折り畳まれた補助アームがフォールバックサポートとして作用する牽引要素のためのアバットメントを形成し、この牽引要素には引張荷重がかかるため、保持要素は必要ではない。
【0040】
原理的には、1つ以上の牽引要素を設けることができ、例えば、互いに平行に位置合わせがなされた2つの牽引要素を互いに隣り合わせに配置したり、または互いに平行に配置したりすることができる。複数の牽引要素を、ブームの旋回軸及び/またはブレーシングフレームの旋回軸から異なる距離に設置することも考えられる。
【0041】
好ましくは、ブームは、上部台車に関節接合態様で連結される連接片と、その連接片に連結されるかまたは互いに連結される(特にボルトで固定される)1つまたは複数のブーム片(特にグリッド片)とを有する。牽引要素は、好ましくは連接片に連結される。
【0042】
また、本発明は、本発明に係るクレーンのブームを起伏させる方法に関する。この方法の開始点は、ブームがフラット位置にあること、すなわちブームが起立し、特に地面または支持装置の上に置かれていることである。これは、ブームを初めて上昇させる前にクレーンを設置する場合である。ブームを起伏させるには、ブレーシングを介してブームに連結されたブレーシングフレームを、特にブレーシングケーブルを適宜作動させることによって後方へ旋回させる。
【0043】
ブームとブレーシングフレームは互いに連結され、同期した旋回動作を行う。ブレーシングはブームに上向きのモーメントを与える。長さ可変の牽引要素は補助アームとブームの間に設置され、補助アームに向かう牽引力をブームに与え、その結果、ブレーシングを介して加えられるトルクに加えて作用するトルクがブームの上昇をサポートし、ひいては引き込み機構が過負荷になるのを防ぐ。ブレーシングフレームを上部台車の後方に向かって後方へ旋回させ続けることにより、ブームが上昇し、または起立する。
【0044】
ブームが上昇すると、少なくとも初期の上昇段階では補助アームが動かされないように、牽引要素の長さは特に短くなる。このことにより、ブレーシングフレームが補助アームに対して後方へ旋回することになる。
【0045】
急勾配のブーム位置では、ブームを動かすのに必要なトルクは初期の上昇中よりも小さくなるため、引き込み機構に過負荷をかけることなくブレーシングだけで旋回可能である。ブームが特定の角度を超えるか、または牽引要素が特定の長さまで短くなると、牽引要素が制御ユニットによって停止してブームにどのような力も与えないのが好ましい。角度、力、及び/または牽引要素の長さは、限界値として用いることができる。
【0046】
本発明に係る方法は、明らかに本発明に係るクレーンと同じ利点と特性をもたらすので、ここでは繰り返して説明はしない。そして、本発明に係るクレーンの可能な実施形態に関する前述の説明は、この方法にも適宜適用されるものである。
【0047】
この方法の可能な実施形態では、牽引要素が、上昇プロセス後にブームのフォールバックサポートとして使用される。好ましくは、フォールバックサポートは、特定のブーム角度においてのみ、特にフォールバックサポートがブームの後傾を防止することを目的とする急なブーム角度においてのみ有効である。中間の場合、すなわちブーム位置がそれほど急角度でなく、ブレーシングと引き込み機構だけで旋回が可能な場合、牽引要素は好ましくはオフに切り替えられる。
【0048】
本発明のさらに他の特徴、詳細及び効果は、図を用いて説明する以下の例示的な実施形態から得られる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】
図1は、本発明の例示的な実施形態に係るクレーンの側面図を示す。
【
図2】
図2は、クレーンのブーム上昇プロセスの一の段階を概略側面図で示す。
【
図3】
図3は、クレーンのブーム上昇プロセスの他の段階を概略側面図で示す。
【
図4】
図4は、クレーンのブーム上昇プロセスの他の段階を概略側面図で示す。
【
図5】
図5は、クレーンのブーム上昇プロセスの他の段階を概略側面図で示す。
【
図6】
図6は、本発明のさらに他の例示的な実施形態に係るクレーンの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図1~
図5は、本発明に係るクレーン10の好ましい例示的な実施形態を概略側面図で示す。ここで説明するクレーン10の例示的な実施形態は、移動式ラチスブームクレーン10であり、このクレーン10は、クローラシャシを備えた下部台車12と、垂直回転軸を中心に回転するように下部台車12に取り付けられた上部台車14とを備えている。上部台車14には、ラチスブーム16が水平旋回軸を中心に旋回できるように連接(関節接合態様で連結)されている。ブーム16は、上部台車17に旋回可能に取り付けられ、ラチスブーム16の1つまたは複数のラチス部(格子部)がボルトで固定された連接片17を有する。この連結は、フォークフィンガー形の連結を用いて通常の方法で行うことができる。
【0051】
ブーム16は、好ましくは複数のテンションロッドを有するブレーシング19によって補強される。ブーム16に対する角度を大きくするために、すなわち上昇トルクを発生させるためにブーム16の旋回軸にレバー(てこ)を発生させるために、ブレーシングフレーム18がブーム旋回軸に平行な旋回軸を中心に旋回するように上部台車14に連接されている。ブーム16とブレーシングフレーム18は、同じ旋回軸を中心に旋回運動することができ、また、平行に離れた旋回軸を中心に旋回することができる。ブレーシングフレーム18はブレーシング19を介してブーム16に連結されているので、ブレーシングフレーム18を旋回させることによりブーム16が上下に起伏(ラフィング)する。ブレーシング19を組み立てるには、好ましくはブーム16を取り付け、地面(またはトロリー)に置き、次にブレーシング19を組み立てる。
【0052】
ブーム16は、ブレーシングフレーム18を旋回させることによって旋回し、上下に起伏する。これは、引き込み機構によって調節可能なブレーシングケーブリング20を介して上部台車14に連結される。ブレーシングケーブリング20は特にテンションケーブル22を有し、このテンションケーブル22は上部台車14上に配置されるケーブルウインチ24に取り付けられ、巻き取り及び巻き戻しができるようになっている。これらの構成要素は、本発明に係るクレーン10の特定の例示的な実施形態に基づいて
図6に概略的に示されており、
図1~5の例示的な実施形態にも設けることができる。テンションケーブル22は、好ましくは、ブレーシングケーブリング20がプーリブロックを形成するように、ブレーシングフレーム18に回転可能に取り付けられた1つまたは複数のデフレクションプーリ28と、上部構造体の後部に回転可能に取り付けられた1つまたは複数のデフレクションプーリ26とにわたって案内される。したがって、ブーム16を上昇させるのに必要なトルクは、引き込み機構またはケーブルウインチ24によって発生する。ブレーシングケーブリング20の牽引力はブレーシング19を介してブーム16に伝達される。
【0053】
図1は、ブーム16が配置されたクレーン10(例えば、ブーム組立後、ブーム16を上昇させてクレーン10を運転状態にする前)を示している。この位置からブーム16を上昇させる場合、低いブーム角度またはフラットなブーム位置のために大きなトルクが必要となる。これを引き込み機構またはブレーシング19だけで行う場合、より長いブーム16またはより重いブーム16を使用すると、ブレーシングシステムまたはケーブルウインチ24に過負荷がかかることがある。これを回避するために、例えば補助クレーンを使用して、ブーム16が引き込み機構のみを使用してより大きな角度でその負荷限界内で旋回できるようになるまで、初期の上昇プロセスに追加トルクを加えることができる。
【0054】
本発明によれば、外部の補助装置に頼ることなく、より大きくてより重いブームを使用できる別の手法が採用される。本発明によれば、クレーン10は統合された起伏補助装置(ラフィング補助装置)30を有し、この起伏補助装置30は、引き込み機構またはブレーシング19への負荷を軽減するために、ブーム16の最初の起伏プロセス中に追加の上昇トルクを発生させる。
【0055】
起伏補助装置30は補助アーム32を有し、この補助アーム32は水平な旋回軸を中心として旋回可能に上部台車14に取り付けられる。補助アーム32は、ブーム16及び/またはブレーシングフレーム18と同じ軸を中心に、あるいはそこから間隔を隔てた平行な軸を中心に旋回することができる。補助アーム32は、保持要素34を介して上部台車14に連結されている。起伏補助装置30は、さらに可変長の牽引要素36を備えており、この可変長の牽引要素36は、一方でブーム16に、特に連接片17に関節接合態様で連結され、他方で補助アーム32に、特に上部台車14から離れたその端部に関節接合態様で連結される。
【0056】
ブーム16には、ブレーシング19を介して発生する力F1に加えて、可変長の牽引要素36を介してブーム16に作用する付加的な牽引力F2または対応する付加的なモーメントが与えられる。必要な牽引力F2を加えるために、補助アーム32はブーム16の方向への傾きに対して保持要素34を介して固定または保持される。保持要素34は、補助アーム32のアバットメント(接合点、支持台)として機能する。可変長の牽引要素36を短くすることで、ブーム16を地面から持ち上げ、または上方へ向かわせる牽引力F2、ひいてはトルクが発生する。
【0057】
ここで示されている例示的な実施形態では、牽引要素36は、能動的に調整可能な複動式油圧シリンダ36として構成されているが、これに代えて、電気機械駆動装置、スピンドル駆動装置、ケーブル駆動装置などの電動アクチュエータ、またはバネなどの受動要素も使用可能である。油圧シリンダ36は、クレーン10の油圧システムに接続され、目的とする方法で所望の牽引力を発生させるために、制御ユニット(詳細は図示せず)を介して、特にクレーン制御システムを介して制御することができる。所望の制御に応じて、牽引要素36は、ブーム16を上昇させる際に、ブーム16に一定または可変の牽引力を加えることができる。以下では、可変長の牽引要素36を「牽引シリンダ」とも称する。
【0058】
起伏補助装置30によるブーム16の上昇プロセスを
図2~
図5に示す。
図2において、ブーム16は伸ばされて地面に支持されている。ブレーシング19の力F
1はケーブルアジャスタ20によって発生する。これはブーム16を地面から持ち上げるには必ずしも十分ではない。本発明によれば、追加の力F
2がブームシステムに導入される。この付加的な力F
2は、ブーム16を地面から持ち上げるのに十分なトルクを発生する。付加的な力F
2は、ブーム16及び補助アーム32と関節接合態様で連結された油圧シリンダ36によって発生する。これには1つまたは複数の油圧ポンプを介して油圧が供給される。
【0059】
図3では、ブーム16はその起伏軸を中心に起立の動作をし、その重心は起伏軸の方向に変位している。ブーム16のブーム角が大きいか急角度であるこの位置では、ブレーシング19を介して伝達される力F
1は、ブーム16をそれ自体でさらに上昇させるのに十分である。補助アーム32と保持要素34は、上部台車14上の連接点を中心に回転していないことに留意すべきである。形状は変わっていない。一方、牽引シリンダ36は、上昇プロセス中に短縮している。ブレーシングフレーム18はブーム16とともに旋回する。これらの動きが相互依存し、または互いに結合しているからである。
【0060】
図4では、牽引シリンダ36はその端部位置に達し、幾何学的に設けられたブームに応じて引き込まれている。保持要素34は、ここで、上部台車14上に載り始める。好ましくは、保持要素34は牽引ケーブルとして構成されるか、そのようなケーブルを有する。補助アーム32は、上部台車14上のその関節結合点を中心に旋回し、上部台車14上に置かれる。この時点で、「連接点(関節結合点)」、「旋回軸」及び「起伏軸」という用語が同意語として使用されていることに留意されたい。
【0061】
ここで示した例示的な実施形態では、牽引シリンダ36が複動式であるため、牽引だけでなく、圧縮でも負荷をかけることができ、ブーム16に圧縮力を与えることができる。このことにより、ブーム16が急角度の位置にあるときに、牽引シリンダをフォールバックプレス(縮退運転プレス)またはフォールバックサポート(縮退運転サポート)として使用できる。
【0062】
図5は、牽引シリンダ36における可能なフォールバックサポートモードを示している。補助アーム32が上部台車14上に完全に位置するとすぐに、補助アーム32は牽引シリンダ36のアバットメントとして機能し、引張荷重を受ける。これにより、引っ張りシリンダ36は圧縮力F
Dを蓄積し、ブーム16に対するフォールバックサポートとして作用する。したがって、牽引シリンダ36と補助アーム32との間の接続は、牽引と圧縮とが可能でなければならず、それに応じて構成される。
【0063】
牽引シリンダ36の長さは、幾何学的な要件に対して適切に選択される。油圧媒体は、ブーム16が起立し続けるにつれて、牽引シリンダ36から制御された態様で流出しなければならない。フォールバック装置を意図したとおりに作動させるために、所定の特性曲線にしたがって圧縮を制御または調整することが好ましい。この目的で、
図5に示す経路または距離40がブーム16の動きに追従できるようにするために設けられている。したがって、牽引シリンダ36のピストンロッドは、フォールバックサポートモードでは完全には引き込まれず、距離40だけ伸びたままである。
【0064】
この解決手段では、牽引シリンダ36のフォールバックサポート動作のための力の比は、好ましくは制御システムによって反転し、牽引シリンダ36が圧縮部材として作用する。油圧牽引シリンダ36のワイヤリングは、操作の要求に応じて調整される。初期起立後のフラットなブーム位置の場合には、フォールバックの問題がなく、引き込み機構によって発生する力F1またはブレーシング19によって伝達される力F1がブーム16を旋回させるのに十分であるため、制御システムによって牽引シリンダ36をオフに切り替えることができる。
【0065】
オフへの切り替えは、測定されたセンサ値に基づいて行うことができる。例えば、ブーム角度を測定することができ、及び/またはブレーシング19の力を測定することができる。力を測定する場合は限界力に対する比較をし、角度を測定する場合は限界角度に対する比較をする。例えば、ブレーシングフレーム18の角度、補助アーム32の角度、牽引シリンダ36内の力(及び/または牽引シリンダ36または油圧システムの油圧)、保持要素34内の力、及び/またはブレーシングケーブリング20内の力など、他の測定または追加的な測定も考えられる。
【0066】
コントローラまたは制御ユニットは、牽引シリンダ36と引き込み機構またはケーブルドラム24との両方を制御及び/または調整するように構成できる。
【0067】
前述した上昇プロセス、オフへの切り替え、及びフォールバックサポートモードは、少なくとも部分的に自動化し、選択的には完全に自動化さえして、クレーンのオペレータがこれらのモード間で手動の切り替えをする必要がないようにすることが好ましい。その代わりに、コントローラは、ブーム16の起立時に、異なるモード(フラットなブーム位置:上昇補助-複合牽引力F1+F2;中間ブーム位置:スイッチオフされた牽引要素36-牽引力F1;急勾配のブーム位置:フォールバックサポートモード-牽引力F1及び可能な圧縮力FD)を自動的に切り替える。
【0068】
牽引要素36は、好ましくは、クレーンの全作業中、ブーム16(または連接片17)及び補助アーム32に取り付けられたままである。
【0069】
図6は、本発明に係るクレーン10のさらに他の例示的な実施形態の側面図であり、引き込み機構またはブレーシングケーブリング20の更なる構成要素、例えば、上部台車14に取り付けられたケーブルウインチ24、及びブレーシングケーブル22を巻き取るために上部台車14上及びブレーシングフレーム18の先端に設けられたデフレクションプーリ26、28が示されている。ここで、補助アーム32の旋回軸は、ブーム16の起伏軸(ここでは模式的に線でのみ示す)に対して、及びブレーシングフレーム18の旋回軸に対して、上部台車の後方に向かってオフセットしている。しかし、補助アーム32の旋回軸が、ブレーシングフレーム18の旋回軸とブーム16の間にあるか、またはこれらの旋回軸の一方または旋回軸の両方に一致することも考えられる。
【符号の説明】
【0070】
10 クレーン
12 下部台車
14 上部台車
15 上部台車バラスト
16 ブーム
17 連接片
18 ブレーシングフレーム
19 ブレーシング
20 ブレーシングケーブリング
22 ブレーシングケーブル
24 ケーブルウインチ
26 デフレクションプーリ
28 デフレクションプーリ
30 起伏補助装置
32 補助アーム
34 保持要素
36 可変長の牽引要素
40 距離
F1 引き込み機構とブレーシングによる牽引力
F2 上昇プロセスでの牽引要素による牽引力
FD フォールバックサポートモードにおける牽引要素による圧縮力
【手続補正書】
【提出日】2024-04-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部台車(14)と、水平旋回軸を中心として旋回するように前記上部台車(14)に連接されたブーム(16)と、を有し、前記ブームは、前記水平旋回軸を中心として旋回するように上部台車(14)に取り付けられたブレーシングフレーム(18)により補強され、前記ブレーシングフレーム(18)を旋回させることによって上下に起伏可能であるクレーン(10)、特に移動式ラチスブームクレーンであって、
フラットなブーム位置における前記ブーム(16)の起伏のために、ブレーシング(19)に加えて作用するトルクを前記ブーム(16)に与えることができる起伏補助装置(30)を備え、前記起伏補助装置(30)が、上部台車(14)に旋回可能に取り付けられるとともに、前記上部台車(14)に保持要素(34)を介して連結され且つ前記ブーム(16)に可変長の牽引要素(36)を介して連結される補助アーム(32)を有し、前記牽引要素(36)がブーム(16)に前記補助アーム(32)の方向へ牽引力を与えるように構成されていることを特徴とするクレーン(10)。
【請求項2】
請求項1に記載のクレーン(10)において、
前記牽引要素(36)は、前記補助アーム(32)及び前記ブーム(16)に関節接合態様で連結され、好ましくは、クレーンの運転中の全体にわたって前記ブーム(16)に連結された状態を維持し、好ましくは前記補助アーム(32)にも連結された状態を維持するように構成されているクレーン(10)。
【請求項3】
請求項1に記載のクレーン(10)において、
前記ブレーシングフレーム(18)が、能動的に調節可能なブレーシングケーブリング(20)を介して前記上部台車(14)に連結され、前記ブレーシングケーブリング(20)はケーブルウインチ(24)に取り付けられて巻き取り及び巻き戻しが可能なブレーシングケーブル(22)を含み、前記ケーブルウインチ(24)は、前記ブレーシングケーブル(22)を巻き上げることによって前記ブレーシングフレーム(18)を前記上部台車の後方に向かって旋回させることによって前記ブレーシングフレーム(18)に連結された前記ブーム(16)を前記ブレーシング(19)を介して起伏させるように構成されているクレーン(10)。
【請求項4】
請求項1に記載のクレーン(10)において、
前記牽引要素(36)が、前記ブレーシング(19)、前記ブレーシングフレーム(18)及びブーム(16)とは別個の構成要素であるクレーン(10)。
【請求項5】
請求項1に記載のクレーン(10)において、
前記牽引要素(36)が能動的に長さを調節可能であり、好ましくは、前記ブーム(16)が起立するときに前記ブーム(16)に一定の牽引力または変化する牽引力を与えるように制御可能及び/または調節可能であるクレーン(10)。
【請求項6】
請求項5に記載のクレーン(10)において、
前記牽引要素(36)が油圧シリンダとして構成され、前記牽引要素(36)が好ましくは複動式油圧シリンダとして構成されることによって牽引力と圧縮力の両方を前記ブーム(16)に与えることができるクレーン(10)。
【請求項7】
請求項6に記載のクレーン(10)において、
前記牽引要素(36)が前記ブーム(16)の第1の角度範囲において前記ブーム(16)に牽引力を加えて起伏プロセスを補助するように、前記牽引要素(36)が、前記クレーン(10)の少なくとも1つの油圧ポンプ及び制御ユニットを介して制御及び/または調整することができるクレーン(10)。
【請求項8】
請求項7に記載のクレーン(10)において、
前記牽引要素(36)は、前記ブーム(16)の第3の角度範囲において前記上部台車(14)から離れる方向を向く圧縮力を前記ブーム(16)に与えるように構成され、前記ブーム(16)は、特に、前記第1の角度範囲よりも急角度のブーム位置を有し、前記制御ユニットは、好ましくは、前記第3の角度範囲において特性曲線を用いる制御で作動油が前記牽引要素(36)から流出するかまたは前記牽引要素(36)に流入するように構成されていることを特徴とするクレーン(10)。
【請求項9】
請求項6に記載のクレーン(10)において、
前記牽引要素(36)は、フォールバックサポートとして構成され、前記補助アーム(32)は、好ましくは牽引要素(36)がフォールバックサポートモードであるとき前記牽引要素(36)のためのアバットメントとして機能するように構成されているクレーン(10)。
【請求項10】
請求項6に記載のクレーン(10)において、
制御ユニットと通信可能に接続された測定装置をさらに備え、前記制御ユニットは、前記測定装置によって検出された変数に応じて前記牽引要素(36)のスイッチをオフにするように構成され、
前記測定装置は、好ましくは、少なくとも、
前記ブーム(16)、前記ブレーシングフレーム(18)及び/または前記補助アーム(32)の角度を検出するための少なくとも1つのセンサと、
前記ブレーシング(19)、前記保持要素(34)及び/または前記牽引要素(36)の力を検出するための少なくとも1つのセンサと、を備えているクレーン(10)。
【請求項11】
請求項1に記載のクレーン(10)において、
前記ブレーシングフレーム(18)及び前記補助アーム(32)が互いに独立して旋回可能であり、前記補助アーム(32)は、好ましくは受動的に旋回可能であり、前記ブーム(16)の第2の角度範囲において前記牽引要素(36)を介する前記ブーム(16)との連結によって前記ブーム(16)の旋回動作に追従するクレーン(10)。
【請求項12】
請求項1に記載のクレーン(10)において、
前記保持要素(34)が可撓性であり、好ましくは牽引ケーブルを有するクレーン(10)。
【請求項13】
請求項1に記載のクレーン(10)において、
前記保持要素(34)は、牽引要素(36)のフォールバックサポートモードにおいて上部台車(14)に載置され、特に、負荷がかからないように設計されていることを特徴とするクレーン(10)。
【請求項14】
請求項1に記載のクレーン(10)のブーム(16)を起伏させる方法であって、
前記ブーム(16)を、フラットな、好ましくは平置きされたブーム位置に設けるステップ、
前記ブーム(16)に上向きのトルクを与えるために前記ブレーシングフレーム(18)を後方に旋回させ、同時に前記補助アーム(32)へ向かう牽引力を前記ブーム(16)に前記牽引要素(36)を介して与えて起伏プロセスを補助するステップ、
前記ブレーシングフレーム(18)の旋回を継続することによってブーム(16)を起伏させるステップ、及び
好ましくは、所定の角度を超えたとき、及び/または所定の力に達しなかったときに、前記牽引要素(36)のスイッチをオフにするステップ
を有する方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、
前記牽引要素(36)が、好ましくは特定のブーム角度でのみ作動してそれ以外はスイッチがオフに切り替えられる上昇プロセス後の前記ブーム(16)のフォールバックサポートとして使用される方法。
【外国語明細書】