IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社パイロットコーポレーションの特許一覧

<>
  • 特開-多芯筆記具 図1
  • 特開-多芯筆記具 図2
  • 特開-多芯筆記具 図3
  • 特開-多芯筆記具 図4
  • 特開-多芯筆記具 図5
  • 特開-多芯筆記具 図6
  • 特開-多芯筆記具 図7
  • 特開-多芯筆記具 図8
  • 特開-多芯筆記具 図9
  • 特開-多芯筆記具 図10
  • 特開-多芯筆記具 図11
  • 特開-多芯筆記具 図12
  • 特開-多芯筆記具 図13
  • 特開-多芯筆記具 図14
  • 特開-多芯筆記具 図15
  • 特開-多芯筆記具 図16
  • 特開-多芯筆記具 図17
  • 特開-多芯筆記具 図18
  • 特開-多芯筆記具 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144317
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】多芯筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 24/12 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
B43K24/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024050085
(22)【出願日】2024-03-26
(31)【優先権主張番号】P 2023056508
(32)【優先日】2023-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】上原 康孝
【テーマコード(参考)】
2C353
【Fターム(参考)】
2C353HE01
2C353HE14
2C353HJ02
(57)【要約】
【課題】突出させた筆記体を軸筒内に退没する操作を迷うことなく実行することができる多芯筆記具を提供すること。
【解決手段】前端孔3aを有する軸筒2と、軸筒2の内部に収容された複数の筆記体6と、筆記体6の後部に連結された操作体7と、操作体7を後方へ弾発する弾発体8と、を備え、操作体7は係止部7gと係合部7fとを有し、軸筒2の内部に、操作体7が前方へスライドすることで係止部7gに係止する被係止部5cと、係止部7gと被係止部5cとが係止した状態から操作体7が更なる前方へのスライドをした際に係合部7fに係合する被係合部9iと、を備え、係合部7fと被係合部9iとが係合することで、係止部7gを軸筒2の径方向外方へ移動させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前端孔を有する軸筒と、前記軸筒の内部に収容された複数の筆記体と、前記複数の筆記体の各々の後部に連結され、各々の筆記体に対応した操作体と、前記各々の操作体を後方へ弾発する弾発体と、を備え、
前記軸筒の側部に、前後方向に延びる複数の摺動孔が径方向に貫設され、
前記各々の摺動孔から径方向外方に前記各々の操作体を突出させ、一つの操作体を前記摺動孔に沿って前方にスライドさせることにより、その一つの操作体に連結された前記筆記体のペン先を前記軸筒の前端孔から突出させる多芯筆記具において、
前記各々の操作体は、後部に設けられた係止部と前部に設けられた係合部とを有し、
前記軸筒の内部に、前記各々の操作体が前方へスライドすることで前記係止部に係止する被係止部を備え、前記係止部と前記被係止部とが係止することで、前記各々の操作体の後方への移動を規制し、前記各々の操作体に対応したペン先が前記前端孔から突出する状態が維持され、
前記各々の操作体は、前記係止部と前記被係止部とが係止した状態から更なる前方へのスライドが可能に構成され、
前記軸筒の内部に、前記各々の操作体が更なる前方へのスライドをした際に、前記係合部と係合する被係合部を備え、
前記係合部と前記被係合部とが係合することで、前記係止部が前記軸筒の径方向外方へ移動することを特徴とした多芯筆記具。
【請求項2】
前記軸筒の内部に、前記被係合部と、前記各々の筆記体が挿通する挿通孔と、を備えた中駒が配設されたことを特徴とする請求項1に記載の多芯筆記具。
【請求項3】
前記中駒は、後端に後方開口部を備え、前記後方開口部に前記被係合部が設けられたことを特徴とする請求項2に記載の多芯筆記具。
【請求項4】
前記被係合部は、前記後方開口部の内周面に周状に形成されたことを特徴とする請求項3に記載の多芯筆記具。
【請求項5】
前記各々の操作体の側面に外側突起が設けられ、前記各々の操作体が前記係止部と前記被係止部とが係止した状態から更なる前方へのスライドをした際、前記軸筒の外周部に前記外側突起と当接する被当接部を備えたことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の多芯筆記具。
【請求項6】
前記軸筒の被当接部は、段状に形成された外方段部を有し、前記外方段部が後方へ向かうにつれ径方向内方に向かって傾斜する外方傾斜部を備えたこと特徴とする請求項5に記載の多芯筆記具。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸筒内に複数の筆記体を出没可能に収容した多芯筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軸筒内に複数の筆記体が収容され、操作体を操作することで目的とする筆記端を突出させて筆記を行う構造の多芯筆記具がある。
このような多芯筆記具では、特許文献1に記載された筆記具のように、軸筒の側面から突出した複数の操作体から繰り出したいものを選び、選択した一つの操作体を前方へスライドすることでその操作体に連結した筆記体の筆記端を突出させることができる。この際、一つの操作体の係止部と軸筒の被係止部とが係止することで、筆記端を突出させた状態が維持される。そして、突出させた筆記体の筆記端を軸筒内に戻すには、前方へスライドさせた一つの操作体とは別の他の操作体を前方へスライドすることで、他の操作体と先に繰り出された一つの操作体とが軸筒内で接触し、それにより一つの操作体と軸筒との係止状態が解除され、後方へ付勢されている一つの操作体が後退することで連結されている筆記体も後退し、筆記体の筆記端が軸筒内に退没する構造となっている。
【0003】
特許文献1のような、筆記体を軸筒内に退没させるための構造は、広く一般的に使用され、一度知ればその後は誰にでも比較的容易に操作可能だが、初めて同構造の多芯筆記具を使うときには他の操作体をスライドさせることが、先に繰り出した一つの操作体の係止状態を解除することに繋がることを発想できず、操作に戸惑う虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-038635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題を鑑みて、突出させた筆記体を軸筒内に退没する操作を迷うことなく実行することができる多芯筆記具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
「1.前端孔を有する軸筒と、前記軸筒の内部に収容された複数の筆記体と、前記複数の筆記体の各々の後部に連結され、各々の筆記体に対応した操作体と、前記各々の操作体を後方へ弾発する弾発体と、を備え、
前記軸筒の側部に、前後方向に延びる複数の摺動孔が径方向に貫設され、
前記各々の摺動孔から径方向外方に前記各々の操作体を突出させ、一つの操作体を前記摺動孔に沿って前方にスライドさせることにより、その一つの操作体に連結された前記筆記体のペン先を前記軸筒の前端孔から突出させる多芯筆記具において、
前記各々の操作体は、後部に設けられた係止部と前部に設けられた係合部とを有し、
前記軸筒の内部に、前記各々の操作体が前方へスライドすることで前記係止部に係止する被係止部を備え、前記係止部と前記被係止部とが係止することで、前記各々の操作体の後方への移動を規制し、前記各々の操作体に対応したペン先が前記前端孔から突出する状態が維持され、
前記各々の操作体は、前記係止部と前記被係止部とが係止した状態から更なる前方へのスライドが可能に構成され、
前記軸筒の内部に、前記各々の操作体が更なる前方へのスライドをした際に、前記係合部と係合する被係合部を備え、
前記係合部と前記被係合部とが係合することで、前記係止部が前記軸筒の径方向外方へ移動することを特徴とした多芯筆記具。
2.前記軸筒の内部に、前記被係合部と、前記各々の筆記体が挿通する挿通孔と、を備えた中駒が配設されたことを特徴とする前記1項に記載の多芯筆記具。
3.前記中駒は、後端に後方開口部を備え、前記後方開口部に前記被係合部が設けられたことを特徴とする前記2項に記載の多芯筆記具。
4.前記被係合部は、前記後方開口部の内周面に周状に形成されたことを特徴とする前記3項に記載の多芯筆記具。
5.前記各々の操作体の側面に外側突起が設けられ、前記各々の操作体が前記係止部と前記被係止部とが係止した状態から更なる前方へのスライドをした際、前記軸筒の外周部に前記外側突起と当接する被当接部を備えたことを特徴とする前記1項から4項の何れか1項に記載の多芯筆記具。
6.前記軸筒の被当接部は、段状に形成された外方段部を有し、前記外方段部が後方へ向かうにつれ径方向内方に向かって傾斜する外方傾斜部を備えたこと特徴とする前記5項に記載の多芯筆記具。」である。
【0007】
本発明の多芯筆記具によれば、選択した一つの操作体を前進させて係止部と軸筒内の被係止部とを係止させることで、操作体の後方への移動が規制され、筆記体のペン先が軸筒の前端開口部から突出した状態を維持できるとともに、その状態から同じ操作体を更に前進させ、係合部と軸筒内の被係合部とを係合させることで係止部を径方向外方へ移動させることができることから、操作体の前方への押圧を解除し、弾発体で後方へ弾発された操作体が後方へ戻る際、係止部と被係止部とが再度係止されることを回避できる。このため、操作体の後退に伴い連結された筆記体のペン先を軸筒の先端孔内に退没させることができる。すなわち、操作体の1度目の前進で筆記体のペン体を軸筒から突出状態で維持し、同じ操作体の2回目の前進で筆記部を軸筒内に退没できるため、多芯筆記具を初めて使う人でも操作に迷うことなく筆記体のペン先の出没動作を行うことができる。
【0008】
また、前記軸筒の内部に、被係合部と各々の筆記体が挿通する挿通孔とを備えた中駒を配設してもよく、この場合、挿通孔により各々筆記体を誘導できるため、操作体の係合部と中駒に形成した被係合部とを係合させることが容易となる。
【0009】
また、中駒は、後端に後方開口部を備えた内孔を有し、後方開口部が被係合部を備えてもよく、この場合、内孔の形成時に同時に被係止部の形成が可能であるため、中駒の制作コストを軽減できる。
【0010】
さらに、被係合部は、後方開口部の内周面に周状に形成されていてもよく、この場合、各々の操作体の係合部と被係合部との周方向における位置合わせが不要になるため、設計の自由度が向上するとともに、部品の形成、組み立て作業が容易となる。
【0011】
また、各々の操作体の側面に外側突起が設けられ、各々の操作体が係止部と被係止部とが係止した状態から更なる前方へのスライドをした際、軸筒の外周部に外側突起と当接する被当接部を備えてもよく、この場合、係合部と被係合部とが係合することに合わせ外側突起と被当接部をと当接させることで操作体の係止部を径方向外方へ移動させるのが容易となるため好ましい。
【0012】
さらに、軸筒の被当接部は、段状に形成された外方段部を有し、外方段部が後方へ向かうにつれ径方向内方に向かって傾斜する外方傾斜部を備えてもよく、この場合、外側突起が被当接部にと当接した際に操作体が外方傾斜部に沿って径方向外方に向かって移動し易くなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、突出させた筆記体のペン先を軸筒内に退没する操作を迷うことなく実行できる多芯筆記具を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の一実施形態の多芯筆記具の一例を示す図であって、一部構造を省略した縦断面図である。
図2図1のB-B端面を示す端面図である。
図3図1のC-C端面を示す端面図である。
図4図1の実施形態における後軸の縦断面図である。
図5図1の実施形態における操作体の外観図である。
図6図1の実施形態における中駒の斜視図である。
図7図1において、筆記体が軸筒の前端から突出した状態を示す縦断面図である。
図8図7の要部を拡大した要部拡大図である。
図9図8の状態から筆記体を軸筒内に退没させる状態を段階的に説明するための説明図である。
図10図8の状態から筆記体を軸筒内に退没させる状態を段階的に説明するための説明図である。
図11図8の状態から筆記体を軸筒内に退没させる状態を段階的に説明するための説明図である。
図12図12は、本発明の変形例の多芯筆記具を示す図であって、一部構造を省略した縦断面図である。
図13図12のD-D端面を示す端面図である。
図14図12の変形例における後軸の縦断面図である。
図15図12の変形例における操作体の外観図である。
図16図12において、筆記体が軸筒の前端から突出した状態を示す縦断面図である。
図17図16の要部を拡大した要部拡大図である。
図18図17の状態から筆記体を軸筒内に退没させる状態を段階的に説明するための説明図である。
図19図17の状態から筆記体を軸筒内に退没させる状態を段階的に説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0016】
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件ならびにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
【0017】
本明細書では、筆記具の中心軸線Aが延びる方向(長手方向、縦断面図における上下方向)を軸方向da、中心軸線Aと直交する方向を径方向dr、中心軸線A周りの円周に沿った方向を周方向dcとする。また、軸方向daに沿って、筆記する際に紙面等の被筆記面に近接するペン先側を前方とし、被筆記面から離間する側を後方とする。また、径方向drに沿って、中心軸線Aに向かう方向を内側又は内方とし、中心軸線Aから離れる方向を外側又は外方とする。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態の多芯筆記具1の一例を示す図であって、一部構造を省略した縦断面図であり、図2は、図1のB-B端面を示す端面図であり、図3は、図1のC-C端面を示す端面図であり、図4は、後軸4を示す縦断面図であり、図5は操作体7を
示す外観図であり、図6は、中駒9を示す斜視図である。
【0019】
本実施形態の多芯筆記具1は、軸筒2内に複数本(具体的には3本)の筆記体6を前後方向に移動可能に収容している。前記各々の筆記体6は、弾発体8(具体的には圧縮コイルスプリング)により、後方に弾発されている。また、軸筒2内に各々の筆記体6が挿通される挿通孔9aを備えた中駒9が前後に移動不能且つ回動不能に設けられている。尚、多芯筆記具1は、長手方向に延びる中心軸線Aを有している。
【0020】
軸筒2は、先細状の円筒体からなる前軸3と、該前軸3の後端部と螺合または圧入により取り付けられる円筒状の後軸4とを含んでいる。前軸3の前端には、筆記体6のペン先6aが突出可能な前端孔3aを軸方向daに沿って貫設してある。前記前軸3及び後軸4は、合成樹脂(例えば、ポリカーボネイト等)の射出成形により得ることができる。
【0021】
後軸4の後部の側部には、摺動孔5となる複数本(具体的には3本)の前後方向に延びる細長状の窓孔5aを、径方向drに沿って貫設してある。3本の窓孔5a(摺動孔5)は、横断面から視て後軸4の周方向dcに、中心軸線Aに対して90°間隔の位置に形成されている。
【0022】
また、図2及び図4に示すように、各々の摺動孔5の相互間の内面には、軸方向daに沿って延びるリブよりなる係止壁部5bを形成してあり、係止壁部5bの前部に、筆記体6のペン先6aが前端孔3aから突出した際に筆記体6の操作体7の後端が係止される被係止部5cを形成してある。
【0023】
各々の筆記体6は、ボールペンレフィルであり、前端にボールが回転可能に抱持されたボールペンチップ(即ちペン先6a)と、ボールペンチップを前端に備え且つ後端が開口されたインキ収容管6bとを含んでいる。前記インキ収容管6bの内部には、剪断減粘性を有する水性ゲルインキ、低粘度の水性インキ、低粘度の油性インキ、または高粘度の油性インキからなるインキが収容されている。前記インキが、剪断減粘性を有する水性ゲルインキ、低粘度の水性インキ、または低粘度の油性インキの場合、インキ収容管6b内のインキの後端には、インキの消費に伴い前進する高粘度流体からなる追従体を充填してもよい。
【0024】
また、ボールペンチップ(ペン先6a)は、前端に回転可能に抱持されたボールを弾発体等により前方に弾発し、前端縁部の内面にボールを密接させる構成にしてもよい。また、ボールペンチップは、本実施の形態のように、インキ収容管6bの前端開口部に圧入等により直接、取り付けてもよく、ペン先ホルダーを介してインキ収容管6bの前端開口部に固着してもよい。
【0025】
各々の筆記体6の後端(即ちインキ収容管6bの後端開口部)には、操作体7を装着してある。各々の操作体7は、図1及び図5に示すように、後部に形成され且つ軸筒2の摺動孔5から外部に突出する操作部7aと、操作部7aの反対側(内方側)に設けられた突出部7bと、突出部7bから更に内方側に突出するように設けられる後側突出部7b2と、操作部7aの反対側(内方側)の後側突出部7b2の前方に設けられる前側突出部7b1と、前端部に形成され且つインキ収容管6aの後端開口部に嵌入される嵌入部7dと、該嵌入部7dの後方に形成される鍔部7eと、操作部7aの前方且つ鍔部7eの外方側に設けられる係合部7fと、操作部7aの後端部に後方へ向かって突出する係止部7gと、を備えている。嵌入部7dは、インキ収容管6bの後端開口部に嵌入された際、インキ収容管6bの後端開口部を完全には塞がず、インキ収容管6bの内部と外部とを通気可能にしている。また、操作体7は、嵌入部7dを支点にしてインキ収容管6bに対して微小に傾動するよう構成してある。鍔部7eの前面には、弾発体8の後端が係止されている。
【0026】
操作体7の突出部7bは操作部7aに比して周方向dcの幅が短く形成されており、これにより、操作部7aと突出部7bとの接続部には、内方側を向く面を有する係止段部7cが形成される。係止段部7cは後軸4の係止壁部5bに摺接しており、操作体7は係止段部7cと係止壁部5bが摺接している状態では内方への移動が制限されている。
また、操作体7の両方の側面には係止突起7hが形成される。係止突起7hは窓孔5aの内面両側壁5dに係合可能であり、操作体7が窓孔5aから外方へ抜けることを防止している。操作体7は、合成樹脂(例えば、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、ポリアセタール樹脂等)の成形体により得ることができる。
【0027】
筆記体6のペン先6aが軸筒2内に没入状態のとき、その筆記体6に連結された操作体7は、後端部が窓孔5a後端に当接して衝止されている(図1参照)。一方、筆記体6のペン先6aが前端孔3aから前方へ突出状態のとき、その筆記体6に取り付けられた操作体7の後端部に設けられた係止部7gは、軸筒2の内壁に形成された係止壁部5bの前部の被係止部5cに係止された状態となる(図7参照)。また、操作体7は、該操作体7の係止部7gと軸筒2の被係止部5cとが係止された図7の状態から更に前方へのスライド移動が可能に構成されている。
【0028】
中駒9は、図1に示すように、前軸3の後端と後軸4の内段との間に挟着されている。また、中駒9は、図6に示すように、外周部に外方へ突出し周方向dcに沿って延びるように形成された外周凸部9bと、外周凸部9bの後方の外周面に形成された面取部9cと、底部9dを有し後端から前方へ向かって穿設された内孔9eと、底部9dから軸方向daに沿って前方へ貫設された前記複数の挿通孔9aと、内孔9eの後部開口部9fの内周部に形成され、後方に向かうにつれ徐々に拡径するように形成された被係合部9iとなる傾斜部9gと、を備えている。尚、組み立て時において、中駒9は、後軸4の前端側から取り付けてあり、外周凸部9bを後軸4の内面に形成した周状突起4aに対して乗り越え嵌合させることで、後軸4に着脱不能に嵌着してある。この際、図3に示すように、面取部9cと後軸4の内面に形成した突起部4bとを合わせて挿入することで、中駒9は径方向drへの回動が規制される。すなわち、中駒9は軸筒2内に前後動不能且つ回動不能に挿着されている。
中駒9は、合成樹脂(例えば、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、ポリアセタール樹脂等)の成形体により得ることができる。
【0029】
また、各々の挿通孔9aには各々の筆記体6が挿入され。挿通孔9aは後部に比して前部が径小に形成されており、径差が生じる箇所に後方へ向く面として段部9hを備えている。その段部9hには弾発体8の前端を係止させてあり、これにより、弾発体8は段部9hと鍔部7eとの間に張架され、筆記体6及び操作体7は弾発体8により後方へ弾発される。そして、筆記体6が挿通孔9aに挿入されているため、筆記体6が前後動する際、筆記体6は挿通孔9aに沿って前後に摺動するように構成される。
【0030】
中駒9の中央部には後方へ向かって突出するように形成された後方突起部9jが設けられており、後方突起部9jには各々の筆記体6側(外方側)に向く面として、側壁面9kを有している。後方突起部9jは後端開口部9fより更に後方へ突出するように設けられている。前記後方突起部9jにより、各々の筆記体6は中駒9内において互いに近接することが防止されると共に、各々の筆記体6を弾発する弾発体8同士が接触して絡みつくことが防止される。
【0031】
また、図7の状態から前方へスライドさせていた操作体7を更に前進させた場合、操作体7の係合部7fと、中駒9の被係合部9i(即ち傾斜部9g)に当接可能に形成してあり、中駒9の被係合部9iと操作体7の係合部7fとが係合することにより、操作体7が被係合部9iの傾斜部9gを支点に当該傾斜部9gに沿うように回転し、操作体7の係止部7gが径方向drに沿って外方に移動するよう構成してある。尚、図6に示すように、本実施の形態において、中駒9は、内孔9eの後方開口部9fに被係合部9iを形成しているため、内孔9eの形成時に同時に被係合部9iの形成が可能であるため、中駒9の製作コストを軽減できる。また、被係合部9iとして形成している傾斜部9gは周方向dcに沿って周状に延びるように形成しているため、各々の操作体7の係合部7fと被係合部9iとの周方向dcにおける位置合わせが不要になる。このため、設計の自由度が向上するとともに、部品の形成や組み立て作業が容易となる。
【0032】
次に、図1及び図7図11を用いて、筆記体6のペン先6aを軸筒2の前端孔3aから突出及び軸筒2内に退没させる動作を説明する。
図7は、図1において、筆記体6が軸筒2の前端から突出した状態を示す縦断面図であり、図8図7の要部を拡大した縦断面図であり、図9図11は、図8の状態から筆記体6を軸筒2内に退没させる状態を段階的に説明するための説明図である。
【0033】
図1の状態から、筆記したい筆記体6に連結されている操作体7を選択し、その操作体7の操作部7aを弾発体8の弾発力に抗して指などで前方へ押圧し、前方へスライド(1回目の前進)させると、操作体7は、連結された筆記体6とともに係止段部7cが軸筒2の係止壁部5b(摺動孔5)に摺接しつつ前進し、操作体7の後端部の係止部7gが係止壁部5bの前端を超えると、内方側の支えが喪失した操作体7の後部が指等で押されて内方へ移動し、係止部7gと被係止部5cとが係止した図7及び図8の状態となる。
図7及び図8の状態では、筆記体6のペン先6aが軸筒2の前端孔3aから前方へ突出するとともに、操作体7の後方への移動が係止部7gと被係止部5cとが係止することで規制され、ペン先6aにより紙面などの筆記面への筆記が可能な筆記状態となる。
【0034】
次に、ペン先6aを軸筒2内に退没させる動作を説明する。図7及び図8の状態から、突出している筆記体6に接続されている操作体7を更に前方へスライド(2回目の前進)させると、筆記体6が中駒9の挿通孔9aに挿入されているため、筆記体6に連結されている操作体7は挿通孔9aに沿って中駒9に近づくように前進し、前進した操作体7の前端部に形成された係合部7fが中駒9の被係合部9i(傾斜部9g)に当接する図9の状態となる。図9の状態から更に操作体7を前方へ押圧すると、操作体7が傾斜部9gに沿って内方側へ移動しようとする。この際、操作体7の内方側への移動は中駒9の後方突起部9jの側壁面9kにより規制されるため、操作体7は傾斜部9gと当接している係合部7fを支点にして傾斜部9gに沿うように後部が外方側へ回転する(図10参照)。すなわち操作体7の後端部の係止部7gが径方向drに沿って外方側へ移動する。そして、図10の状態で、操作体7の前方への押圧を解除すると、弾発体8の弾発力で後方へ弾発された操作体7が後方へ移動する。この際、図7及び図8に比べて係止部7gは被係止部5cに対して外方側へ移動しているため、操作体7が後退しても係止部7gと被係止部5cとが再度係止することはなく、操作体7は後退を続け、操作体7に連結されている筆記体6も同時に後退してペン先6aが軸筒2内に退没し、図1の繰り出し前の非筆記状態に戻る。
換言すると、図1の非筆記状態から操作体7の1回目の前方へのスライドによりペン先6aを前端孔3aから繰り出し筆記状態にすることができ、図7及び図8の筆記状態から操作体7の2回目の前方へのスライドによりペン先6aの軸筒2内への退没が可能である。このため、ユーザーは選択した筆記体6の繰り出し及び退没動作が前記筆記体6に接続された同じ操作体7のみを操作することで実行できるため、操作に迷うことなく実行することが可能である。
【0035】
次に、ペン先6aを軸筒2内に退没させる第二の手段を説明する。本実施の形態では、先行文献(特開2007-038635号公報)と同様に、図7及び図8の状態から、他の操作体7を前方へスライドすることでも筆記体6のペン先6aを軸筒2内に退没させることが可能である。
図7及び図8の状態から、図11に示すように、他の操作体7を前方へスライドすると、前進した他の操作体7の前側突出部7b1が操作体7の後側突出部7b2に内方側から当接し、これにより操作体7は外方側へ押圧される。この際、外方へ押圧された操作体7の係止部7gと軸筒2の被係止部5cとの係止状態が解除され、弾発体8により後方へ弾発された操作体7の後退に伴ってペン先6aが軸筒2内に退没し、操作体7は窓孔5aの後端に衝止する。また、操作体7の係止部7gと被係止部5cとの係止状態が解除された時点で他の操作体7の前方へのスライド動作を停止した場合、他の操作体7を含め前方へ移動している2つの操作体7は弾発体8の弾発力で各々後方へ戻り図1の非筆記状態に戻すことができ、他の操作体7の前方へのスライド動作を止めずに継続した場合は、そのまま他の操作体6に連結されている他の筆記体6のペン先6aを軸筒2の前端孔3aから突出させ、他の筆記体6を筆記状態とすることが可能である。(図示せず)
【0036】
すなわち、本実施の形態では、軸筒2の前端孔3aから突出させた筆記体6のペン先6aを軸筒内に退没させる手段として、同筆記体6に連結された操作体7だけでなく、他の操作体7を操作することでもペン先6aを軸筒2内に退没可能であることから、初めて多芯筆記具1を扱う場合であっても操作に迷うことなくペン先6aの繰り出し及び退没動作をより確実に実行することができる。
【0037】
図12図19を参照して、本実施形態の変形例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述の実施形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略することがある。
【0038】
図12は、本発明における多芯筆記具の一変形例を示す図であって、多芯筆記具100の縦断面図である。図13は、図12のD-D端面を示す端面図である。図14は、図12の変形例における後軸104の縦断面図である。図15は、図12の変形例における操作体107の外観図である。
【0039】
本変形例の多芯筆記具100の後軸104の外周面には、図12及び図14に示すように、周方向dcに沿って形成された外方段部104cを有している。外方段部104cは摺動溝5により周方向dcに沿って複数に分断されるとともに摺動溝5にそれぞれ隣接している。外方段部104cは、軸方向daの後方に向く面として外方傾斜部104dを有している。外方傾斜部104dは後方に向かうにつれ径方向drの内方へ向かって傾斜する面として形成されている。外方傾斜部104dは、後述する操作体107が前方へスライドした際、操作体107の外部突起107jが当接する被当接部104eとして機能する。尚、外方傾斜部104dは軸方向daの後方に向かうにつれ径方向drの内方に向かって傾斜していれば、図14のように縦断面において直線状に傾斜してもよく、曲線状に傾斜していてもよい。
【0040】
本変形例の操作体107は、図12図13及び図15に示すように、後部に形成され且つ軸筒2の摺動孔5から外部に突出する操作部107aを有しており、図3に示すように操作部107aには両側面から突出するように形成された外側突起107jを有している。外側突起107jの前方部には断面半円状の当接部107kを有しており、当接部107kは操作体107が前進した際に後軸104の被当接部104eに当接するよう構成されている。
【0041】
次に、図12及び図16図19を用いて、本変形例における筆記体6のペン先6aを軸筒2の前端孔3aから突出及び軸筒2内に退没させる動作を説明する。
図16は、図12において、筆記体6が軸筒2の前端から突出した状態を示す縦断面図であり、図17図16の要部を拡大した縦断面図であり、図18図19は、図17の状態から筆記体6を軸筒2内に退没させる状態を段階的に説明するための説明図である。
【0042】
図12の状態から、筆記したい筆記体6に連結されている操作体107を選択し、その操作体107の操作部107aを弾発体8の弾発力に抗して指などで前方へ押圧し、前方へスライド(1回目の前進)させると、操作体107は、連結された筆記体6とともに係止段部7cが軸筒2の係止壁部5b(摺動孔5)に摺接しつつ前進し、操作体107の後端部の係止部7gが係止壁部5bの前端を超えると、内方側の支えが喪失した操作体107の後部が指等で押されて内方へ移動し、係止部7gと被係止部5cとが係止した図16及び図17の状態となる。
図16及び図17の状態では、筆記体6のペン先6aが軸筒2の前端孔3aから前方へ突出するとともに、操作体7の後方への移動が係止部7gと被係止部5cとが係止することで規制され、ペン先6aにより紙面などの筆記面への筆記が可能な筆記状態となる。
尚、本変形例では上記筆記体6のペン先6aの繰り出し操作時における操作体107の後部が指等で押されて内方へ移動する際、操作体107から側方へ突出する外側突起107jが後軸外周面に当接することで外側突起107jがストッパーとしても機能するため、操作体107が必要以上に内方へ押されることがなく、インキ収容管6bに嵌入される操作体107の嵌入部7dに掛かる負荷を軽減して破損を防止できる。
【0043】
次に、ペン先6aを軸筒2内に退没させる動作を説明する。図16及び図17の状態から、突出している筆記体6に接続されている操作体107を更に前方へスライド(2回目の前進)させると、筆記体6が中駒9の挿通孔9aに挿入されているため、筆記体6に連結されている操作体107は挿通孔9aに沿って中駒9に近づくように前進し、前進した操作体107の前端部に形成された係合部7fが中駒9の被係合部9i(傾斜部9g)に当接するとともに、前進した操作体107の当接部107k(外側突起107j)が後軸104の被当接部104e(外方傾斜部104d)に当接する図18の状態となる。図18の状態から更に操作体107を前方へ押圧すると、操作体107が傾斜部9gに沿って内方側へ移動しようとする。この際、操作体107の内方側への移動は中駒9の後方突起部9jの側壁面9kにより規制されるため、操作体107は傾斜部9gと当接している係合部7fを支点にして傾斜部9gに沿うように後部が外方側へ回転する。また、これと同時に当接部107kは被当接部104eの外方傾斜部104dに沿って径方向drの外方側に滑るように移動するため、操作体107の操作部107aを容易に径方向drの外方側へ移動させることができる(図19参照)。尚、この際、外側突起107jの先端である当接部107kは断面半円状に形成したことにより、当接部107kが被当接部104eの外方傾斜部104dを滑る際の摩擦抵抗が軽減され、操作性が向上している。そして、図19の状態で、操作体107の前方への押圧を解除すると、弾発体8の弾発力で後方へ弾発された操作体107が後方へ移動する。この際、図16及び図17に比べて係止部7gは被係止部5cに対して径方向drの外方側へ移動しているため、操作体107が後退しても係止部7gと被係止部5cとが再度係止することはなく、操作体107は後退を続け、操作体107に連結されている筆記体6も同時に後退してペン先6aが軸筒2内に退没し、図1の繰り出し前の非筆記状態に戻る。
換言すると、図12の非筆記状態から操作体107の1回目の前方へのスライドによりペン先6aを前端孔3aから繰り出し筆記状態にすることができ、図16及び図17の筆記状態から操作体107の2回目の前方へのスライドによりペン先6aの軸筒2内への退没が可能である。このため、ユーザーは選択した筆記体6の繰り出し及び退没動作が前記筆記体6に接続された同じ操作体107のみを操作することで実行できるため、操作に迷うことなく実行することが可能である。尚、本変形例では2回目の操作体107のスライドよるペン先6aの軸筒2内への退没動作がより確実に実行できるものとなった。
【符号の説明】
【0044】
1…多芯筆記具、
2…軸筒、
3…前軸、3a…前端孔、
4…後軸、4a…周状突起、4b…突起部
5…摺動孔、5a…窓孔、5b…係止壁部、5c…被係止部、5d…内面両側壁、
6…筆記体、6a…ペン先、6b…インキ収容管、
7…操作体、7a…操作部、7b…突出部、7b1…前側突出部、7b2…後側突出部、
7c…係止段部、7d…嵌入部、7e…鍔部、7f…係合部、7g…係止部、
7h…係止突起、
8…弾発体、
9…中駒、9a…挿通孔、9b…外周凸部、9c…面取部、9d…底部、9e…内孔、
9f…後端開口部、9g…傾斜部、9h…段部、9i…被係合部、9j…後方突起部、
9k…側壁面、
100…多芯筆記具、
104…後軸、104c…外方段部、104d…外方傾斜部、104e…被当接部、
107…操作体、107a…操作部、107j…外側突起、107k…当接部、
A…中心軸線。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19