(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144320
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】素子転写装置および素子転写方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/52 20060101AFI20241003BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H01L21/52 F
H01L21/60 311T
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024050351
(22)【出願日】2024-03-26
(31)【優先権主張番号】P 2023054269
(32)【優先日】2023-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023054310
(32)【優先日】2023-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【弁理士】
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】藤重 遥
(72)【発明者】
【氏名】新井 義之
(72)【発明者】
【氏名】岡田 達弥
(72)【発明者】
【氏名】風間 浩一
(72)【発明者】
【氏名】陣田 敏行
(72)【発明者】
【氏名】津田 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】池原 巧
【テーマコード(参考)】
5F044
5F047
【Fターム(参考)】
5F044KK01
5F044PP15
5F044PP19
5F044RR12
5F047AA17
5F047CA08
5F047FA07
5F047FA57
(57)【要約】
【課題】素子を容易に剥離することが可能な素子転写装置を提供する。
【解決手段】この半導体チップ転写装置100(素子転写装置)は、粘着層2を介して半導体チップ1が支持された支持基板10を保持する支持基板保持部30と、支持基板10に向かってレーザ光Lを照射するレーザ光照射部70と、レーザ光照射部70から照射されるレーザ光Lの照射位置を制御する制御部60と、を備える。レーザ光Lのスポット領域SAの面積は、半導体チップ1の支持基板10によって支持される面1cの面積よりも小さく、制御部60は、支持基板19の表面に対して垂直な方向から見て、半導体チップ1の一方端1a側から他方端1b側に向かって、レーザ光Lが支持基板10に対して相対的に移動して照射されるように、レーザ光Lの照射位置を制御する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着層を介して素子が支持された支持基板を保持する支持基板保持部と、
前記支持基板が前記素子を支持する面と反対側に配置され、前記支持基板に向かってレーザ光を照射するレーザ光照射部と、
前記レーザ光照射部から照射される前記レーザ光の照射位置を制御する制御部と、を備え、
前記レーザ光のスポット領域の面積は、前記素子の前記支持基板によって支持される面の面積よりも小さく、
前記制御部は、前記支持基板の表面に対して垂直な方向から見て、前記素子の一方端側から他方端側に向かって、前記レーザ光が前記支持基板に対して相対的に移動して照射されるように、前記レーザ光の照射位置を制御する、素子転写装置。
【請求項2】
前記レーザ光のスポット領域の面積は、転写対象となる前記素子の脆さに応じて設定されている、請求項1に記載の素子転写装置。
【請求項3】
前記レーザ光照射部は、前記レーザ光が前記支持基板に対して相対的に移動して照射される際に、間欠的に前記レーザ光を照射するように構成されており、
間欠的に照射される前記レーザ光の照射位置のピッチは、前記素子が脆くなるに従って小さくなるように設定されている、請求項2に記載の素子転写装置。
【請求項4】
前記レーザ光照射部は、前記レーザ光が前記支持基板に対して相対的に移動して照射される際に、間欠的に前記レーザ光を照射するように構成されており、
前記制御部は、前記レーザ光が照射されることにより前記素子が前記支持基板から剥離した部分と、前記素子が前記支持基板に支持された状態が維持されている部分と、の境界部分近傍を照射するように、間欠的に照射される前記レーザ光の照射位置を制御する、請求項1に記載の素子転写装置。
【請求項5】
前記制御部は、間欠的に照射される前記レーザ光の照射位置のピッチを、前記素子の端部側では小さく、前記素子の中央部では大きくなるように調整する、請求項4に記載の素子転写装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記支持基板の表面に対して垂直な方向から見て、前記素子の一方端側から他方端側に向かう第1方向に、前記レーザ光が前記支持基板に対して相対的に移動して照射されるように制御することによって、
前記支持基板に支持された前記素子が一方端側から剥離されて、前記支持基板から前記素子の全体が剥離される前に前記素子の一方端から被転写基板に接触して、前記素子の全体が転写されるように構成されている、請求項1に記載の素子転写装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記レーザ光が、前記素子の面を蛇行しながら、前記支持基板に対して前記第1方向に相対的に移動して照射されるように制御する、請求項6に記載の素子転写装置。
【請求項8】
前記素子が転写される前記被転写基板を保持する被転写基板保持部と、
前記支持基板保持部および前記被転写基板保持部のうち少なくとも一方を移動させる移動機構とをさらに備え、
前記制御部は、前記素子が前記被転写基板に転写される予測転写位置を取得するとともに、前記素子が水平方向に移動されずに垂直に落下して転写した場合の垂直転写位置とを比較して、転写位置の位置ずれ量を予め取得し、
前記支持基板保持部および前記被転写基板保持部のうち少なくとも一方を、前記位置ずれ量に基づいて移動させるように、前記移動機構を制御する、請求項6に記載の素子転写装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記位置ずれ量に基づいて、前記垂直転写位置に対して前記位置ずれ量と等しい量ずれた目標転写位置を取得するとともに、
前記目標転写位置が、転写する前記素子の真下に位置するように、前記支持基板保持部および前記被転写基板保持部のうち少なくとも一方を移動させるように、前記移動機構を制御する、請求項8に記載の素子転写装置。
【請求項10】
前記制御部は、少なくとも前記支持基板と前記被転写基板との間の距離と、前記素子の前記第1方向に沿う長さとに基づいて、前記素子が前記被転写基板に転写される前記予測転写位置を取得し、
前記素子が水平方向に移動されずに垂直に落下して転写した場合の前記垂直転写位置と前記予測転写位置とを比較して、転写位置の前記位置ずれ量を予め取得する、請求項8または9に記載の素子転写装置。
【請求項11】
前記制御部は、さらに前記素子の厚みに基づいて、前記素子が前記被転写基板に転写される前記予測転写位置を取得し、前記垂直転写位置と、前記予測転写位置とを比較して、前記位置ずれ量を予め取得する、請求項10に記載の素子転写装置。
【請求項12】
前記支持基板保持部に保持された前記支持基板は、複数の前記素子を支持し、
前記制御部は、前記支持基板に支持された全ての転写対象の前記素子に対して、前記レーザ光が前記支持基板に対して前記第1方向に相対的に移動して照射されるように制御する、請求項6または7に記載の素子転写装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記支持基板の表面に対して垂直な方向から見て、前記レーザ光が前記粘着層に照射されて発生するブリスタの一部のみが前記素子とオーバラップするように、前記レーザ光の照射を開始させる、請求項1に記載の素子転写装置。
【請求項14】
前記レーザ光照射部は、前記レーザ光が前記支持基板に対して相対的に移動して照射される際に、間欠的に前記レーザ光を照射するように構成されており、
前記制御部は、間欠的に照射される前記レーザ光により前記素子が前記支持基板から剥離した部分同士が重なるように、間欠的に照射される前記レーザ光の照射位置を制御する、請求項1に記載の素子転写装置。
【請求項15】
前記制御部は、間欠的に照射される前記レーザ光により前記粘着層に生じる小さなブリスタ同士が合体して大きな共通のブリスタを形成するように、間欠的に照射される前記レーザ光の照射位置を制御する、請求項1に記載の素子転写装置。
【請求項16】
σpeelを前記粘着層から剥離するときに前記素子にかかる最小応力とし、
前記レーザ光が前記粘着層に照射されて発生するブリスタが前記素子を押す力をP、前記素子の剥離範囲の半径をR、tを前記素子の厚み、および、νをポアソン比とし、前記素子にかかる最大曲げ応力σmaxを、σmax=P×(1+ν)×(0.485×ln(R/t)+0.52)/t2として定義し、
σbを前記素子の抗折強度としたときに、
前記レーザ光のスポット領域の面積およびエネルギが調整されることにより、σpeel<σmax<σbの関係性を満たすようにPおよびRが設定されている、請求項1に記載の素子転写装置。
【請求項17】
粘着層を介して素子が支持された支持基板に向かって、前記支持基板が前記素子を支持する面と反対側からレーザ光を照射する工程を備え、
前記レーザ光を照射する工程は、前記レーザ光のスポット領域の面積が、前記素子の前記支持基板によって支持される面の面積よりも小さくなるように前記レーザ光を調整し、かつ、前記支持基板の表面に対して垂直な方向から見て、前記素子の一方端側から他方端側に向かって、前記レーザ光が前記支持基板に対して相対的に移動して照射されるように、前記レーザ光を照射する工程を含む、素子転写方法。
【請求項18】
前記レーザ光を照射する工程は、前記支持基板の表面に対して垂直な方向から見て、前記素子の一方端側から他方端側に向かう第1方向に、前記レーザ光を前記支持基板に対して相対的に移動して照射することによって、前記支持基板に支持された前記素子を前記素子の一方端側から剥離させて、前記支持基板から前記素子の全体が剥離される前に、前記素子の一方端が被転写基板に接触して転写される、請求項17に記載の素子転写方法。
【請求項19】
少なくとも前記支持基板と前記被転写基板との間の距離と、前記素子の前記第1方向に沿う長さとに基づいて、前記素子が前記被転写基板に転写される予測転写位置を取得し、
前記素子が水平方向に移動されずに垂直に落下して転写した場合の垂直転写位置と、前記予測転写位置とを比較して、転写位置の位置ずれ量を取得する工程を含む取得工程をさらに備える、請求項18に記載の素子転写方法。
【請求項20】
前記取得工程は、さらに前記素子の厚みに基づいて、前記素子が前記被転写基板に転写される前記予測転写位置を取得し、前記垂直転写位置と前記予測転写位置とを比較して、前記位置ずれ量を取得する、請求項19に記載の素子転写方法。
【請求項21】
前記支持基板および前記被転写基板を相対的に移動させる移動工程をさらに備え、
前記移動工程は、前記支持基板および前記被転写基板のうち少なくとも一方を、前記位置ずれ量に基づいて移動させる、請求項20に記載の素子転写方法。
【請求項22】
前記取得工程は、前記位置ずれ量に基づいて、前記垂直転写位置に対して前記位置ずれ量と等しい量ずれた目標転写位置を取得し、
前記移動工程は、前記目標転写位置が、転写する前記素子の真下に位置するように、前記支持基板および前記被転写基板のうち少なくとも一方を移動させる、請求項21に記載の素子転写方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レーザ光を照射するレーザ光照射部を含む素子転写装置および素子転写方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ光照射部からレーザ光を照射する素子の転写装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、基板に取り付けられた物品を、別の基板に転写するレーザ転写装置が開示されている。上記特許文献1では、基板と物品との間には、接着層が設けられており、物品は、接着層により保持されている。そして、上記特許文献1では、基板の上面側から接着層に向かってレーザ光が照射されて、粘着層が下方に凸状に膨らむ。その結果、物品が粘着層から剥離して別の基板に転写される。また、特許文献1では、レーザ光が物品の中央部に向かって照射された粘着層が比較的大きく凸状に膨らみ、物品が中央部から剥離されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載のように、物品を中央部から剥離する場合、物品の中央部では剥離される部分の周囲が粘着層と接触しているため、物品を剥離しにくい場合がある。そこで、物品を容易に剥離することが可能な素子転写装置および素子転写方法が望まれている。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、素子を容易に剥離することが可能な素子転写装置および素子転写方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この第1の局面による素子転写装置は、粘着層を介して素子が支持された支持基板を保持する支持基板保持部と、支持基板が素子を支持する面と反対側に配置され、支持基板に向かってレーザ光を照射するレーザ光照射部と、レーザ光照射部から照射されるレーザ光の照射位置を制御する制御部と、を備え、レーザ光のスポット領域の面積は、素子の支持基板によって支持される面の面積よりも小さく、制御部は、支持基板の表面に対して垂直な方向から見て、素子の一方端側から他方端側に向かって、レーザ光が支持基板に対して相対的に移動して照射されるように、レーザ光の照射位置を制御する。
【0008】
この第1の局面による素子転写装置は、上記のように、制御部は、支持基板の表面に対して垂直な方向から見て、素子の一方端側から他方端側に向かって、レーザ光が支持基板に対して相対的に移動して照射されるように、レーザ光の照射位置を制御する。ここで、素子を中央部から剥離する場合よりも素子を端部から剥離する場合の方が粘着層の粘着力の影響が小さい。中央部では剥離される部分の周囲が粘着層と接触している一方、端部では剥離される部分の片側にしか粘着層が存在していないからである。そこで、制御部が、素子の一方端側から他方端側に向かって移動するようにレーザ光の照射位置を制御することにより、素子の端部から剥離が始まるので、素子を容易に剥離することができる。
【0009】
上記第1の局面による素子転写装置において、好ましくは、レーザ光のスポット領域の面積は、転写対象となる素子の脆さに応じて設定されている。これにより、厚みが比較的小さい素子のように、素子が比較的脆い場合でも、レーザ光のスポット領域の面積が素子の脆さに応じて設定される。たとえば、素子が比較的脆い場合には、レーザ光のスポット領域の面積も比較的小さくなるように調整される。このため、レーザ光のスポット領域の面積が比較的小さくなることにより、粘着層の変形も小さくなる。これにより、粘着層の変形に起因する素子への応力が小さくなり、素子が破損するのを抑制することができる。その結果、粘着層の変形に起因する素子の破損をより抑制しながら素子を転写することができる。
【0010】
上記第1の局面による素子転写装置において、好ましくは、レーザ光照射部は、レーザ光が支持基板に対して相対的に移動して照射される際に、間欠的にレーザ光を照射するように構成されており、間欠的に照射されるレーザ光の照射位置のピッチは、素子が脆くなるに従って小さくなるように設定されている。ここで、レーザ光のスポット領域の面積が、素子が脆くなるに従って小さくなるように設定された場合において、レーザ光の照射位置のピッチが比較的大きいままであると、粘着層から剥離された素子の部分同士の間隔が大きくなり、素子の全体に対する粘着層による保持力が比較的大きいままである。そこで、レーザ光の照射位置のピッチを素子が脆くなるに従って小さくなるように設定することにより、粘着層から剥離された素子の部分同士の間隔が小さくなるので、素子の全体に対する粘着層による保持力が低減される。その結果、粘着層から素子を適切に剥離することができる。
【0011】
上記第1の局面による素子転写装置において、好ましくは、レーザ光照射部は、レーザ光が支持基板に対して相対的に移動して照射される際に、間欠的にレーザ光を照射するように構成されており、制御部は、レーザ光が照射されることにより素子が支持基板から剥離した部分と、素子が支持基板に支持された状態が維持されている部分と、の境界部分近傍を照射するように、間欠的に照射されるレーザ光の照射位置を制御する。ここで、境界部分近傍の粘着層による保持力は、境界部分近傍から離間した未剥離の部分の粘着層による保持力と比べて小さくなる。境界部分近傍以外では剥離される部分の周囲が粘着層と接触している一方、境界部分近傍では剥離される部分の片側にしか粘着層が存在していないからである。その結果、境界部分近傍にレーザ光を照射することにより、素子を容易に剥離することができる。
【0012】
この場合、好ましくは、制御部は、間欠的に照射されるレーザ光の照射位置のピッチを、素子の端部側では小さく、素子の中央部では大きくなるように調整する。ここで、1回のレーザ光の照射によって素子が剥離される面積の大きさは、素子の中央部よりも素子の端部側の方が大きくなることが、本願発明者が行った実験およびシミュレーションにより確認されている。また、素子が剥離した部位に重ねてレーザ光を照射しても剥離には寄与しないことが確認されている。すなわち、素子の端部では1回のレーザ照射により剥離する面積が大きいため、素子の中央部に続けてレーザ光を照射する場合、レーザ光の照射ピッチを大きくすることで、より効率的に素子を転写することができる。そこで、制御部は、間欠的に照射されるレーザ光の照射位置のピッチを、素子の端部側では小さく、素子の中央部では、大きくなるように調整することにより、素子の全体に亘ってレーザ光の照射位置のピッチを小さくする場合と比べて、素子の転写に要する時間を短縮することができる。
【0013】
上記第1の局面による素子転写装置において、好ましくは、制御部は、支持基板の表面に対して垂直な方向から見て、素子の一方端側から他方端側に向かう第1方向に、レーザ光が支持基板に対して相対的に移動して照射されるように制御することによって、支持基板に支持された素子が一方端側から剥離されて、支持基板から素子の全体が剥離される前に素子の一方端から被転写基板に接触して、素子の全体が転写されるように構成されている。これにより、素子の一方端が被転写基板に接触して位置が決まった状態で残りの部分が剥離されるので、素子の転写位置ずれの方向が一定方向に制御されることとなり、被転写基板上の素子の転写位置が様々な方向にばらついて配置されること(転写位置のばらつき)を抑制することができる。
【0014】
上記第1の局面による素子転写装置において、好ましくは、制御部は、レーザ光が、素子の面を蛇行しながら、支持基板に対して第1方向に相対的に移動して照射されるように制御する。このように構成すれば、レーザ光が、蛇行しながら第1方向に相対的に移動されるので、素子の面の全体にわたってレーザ光を照射させることができる。
【0015】
この場合、好ましくは、素子が転写される被転写基板を保持する被転写基板保持部と、支持基板保持部および被転写基板保持部のうち少なくとも一方を移動させる移動機構とをさらに備え、制御部は、素子が被転写基板に転写される予測転写位置を取得するとともに、素子が水平方向に移動されずに垂直に落下して転写した場合の垂直転写位置とを比較して、転写位置の位置ずれ量を予め取得し、支持基板保持部および被転写基板保持部のうち少なくとも一方を、位置ずれ量に基づいて移動させるように、移動機構を制御する。このように構成すれば、実際に素子が被転写基板に転写される前に、素子が水平方向に移動されずに垂直に落下して転写した場合の垂直転写位置と実際の転写位置との間で発生する位置ずれがなくなるように、支持基板および被転写基板の位置を予め調整することができるようになる。その結果、所望の位置に素子を転写させることができる。
【0016】
この場合、好ましくは、制御部は、位置ずれ量に基づいて、垂直転写位置に対して位置ずれ量と等しい量ずれた目標転写位置を取得するとともに、目標転写位置が、転写する素子の真下に位置するように、支持基板保持部および被転写基板保持部のうち少なくとも一方を移動させるように、移動機構を制御する。このように構成すれば、位置ずれを考慮した転写位置(目標転写位置)に基づいて、支持基板保持部および被転写基板保持部のうち少なくとも一方を予め移動させることができるため、位置ずれを起こさずに転写させることができる。
【0017】
上記被転写基板保持部と移動機構とを備える素子転写装置において、好ましくは、制御部は、少なくとも支持基板と被転写基板との間の距離と、素子の第1方向に沿う長さとに基づいて、素子が被転写基板に転写される予測転写位置を取得し、素子が水平方向に移動されずに垂直に落下して転写した場合の垂直転写位置と予測転写位置とを比較して、転写位置の位置ずれ量を予め取得する。このように構成すれば、実際に素子が被転写基板に転写される前に、素子が水平方向に移動されずに垂直に落下して転写した場合の垂直転写位置と実際の転写位置との間で発生する位置ずれの量を予め特定することができる。
【0018】
この場合、好ましくは、制御部は、さらに素子の厚みに基づいて、素子が被転写基板に転写される予測転写位置を取得し、垂直転写位置と、予測転写位置とを比較して、位置ずれ量を予め取得する。このように構成すれば、素子の厚みが、支持基板と被転写基板との間の距離に対して無視できないほど大きい場合にも、素子が水平方向に移動されずに垂直に落下して転写した場合の垂直転写位置と、実際の転写位置との間で発生する位置ずれの量を予め精度良く特定することができる。
【0019】
上記素子の一方端側から他方端側に向かう第1方向にレーザ光が相対的に移動する素子転写装置において、好ましくは、支持基板保持部に保持された支持基板は、複数の素子を支持し、制御部は、支持基板に支持された全ての転写対象の素子に対して、レーザ光が支持基板に対して第1方向に相対的に移動して照射されるように制御する。このように構成すれば、支持基板に支持された全ての転写対象の素子の一方端を、いずれも同じ向きから被転写基板に接触させることになる。その結果、素子の転写位置ずれの方向が一定方向に制御されることとなり、被転写基板上の素子の転写位置が様々な方向にばらついて配置されること(転写位置のばらつき)を抑制することができる。
【0020】
上記第1の局面による素子転写装置において、好ましくは、制御部は、支持基板の表面に対して垂直な方向から見て、レーザ光が粘着層に照射されて発生するブリスタの一部のみが素子とオーバラップするように、レーザ光の照射を開始させる。ここで、素子の剥離開始時は、素子の全面が粘着層に密着している状態であるため、ブリスタの全体が素子とオーバラップする位置にレーザ光を照射すると、素子にかかる粘着力の総和が大きくなり、素子にかかる曲げ応力が増大し、素子に破損が起きる場合がある。そこで、ブリスタの一部のみが素子とオーバラップする位置にレーザ光を照射することにより、素子にかかる粘着力の総和を小さくでき、素子にかかる曲げ応力が低減されるため、素子の破損を抑制することができる。
【0021】
上記第1の局面による素子転写装置において、好ましくは、レーザ光照射部は、レーザ光が支持基板に対して相対的に移動して照射される際に、間欠的にレーザ光を照射するように構成されており、制御部は、間欠的に照射されるレーザ光により素子が支持基板から剥離した部分同士が重なるように、間欠的に照射されるレーザ光の照射位置を制御する。このように構成すれば、素子の剥離した部分同士が重なるので、レーザ光を間欠的に照射しても素子を剥離することができる。また、複数の剥離した部分の間に隙間が生じる場合でも、隙間に対応する素子の部分も隣接する部分の剥離に伴って自然に剥離するので、レーザ光を間欠的に照射しても素子を剥離することができる。
【0022】
上記第1の局面による素子転写装置において、好ましくは、制御部は、間欠的に照射されるレーザ光により粘着層に生じる小さなブリスタ同士が合体して大きな共通のブリスタを形成するように、間欠的に照射されるレーザ光の照射位置を制御する。このように構成すれば、ブリスタ同士が合体して大きな共通のブリスタが形成されるので、レーザ光を間欠的に照射しても素子を剥離することができる。また、レーザ光により生じるブリスタは小さいので、素子にかかる応力を低減できる。その結果、素子の破損をより抑制できる。
【0023】
上記第1の局面による素子転写装置において、好ましくは、σpeelを粘着層から剥離するときに素子にかかる最小応力とし、レーザ光が粘着層に照射されて発生するブリスタが素子を押す力をP、素子の剥離範囲の半径をR、tを素子の厚み、および、νをポアソン比とし、素子にかかる最大曲げ応力σmaxを、σmax=P×(1+ν)×(0.485×ln(R/t)+0.52)/t2として定義し、σbを素子の抗折強度としたときに、レーザ光のスポット領域の面積およびエネルギが調整されることにより、σpeel<σmax<σbの関係性を満たすようにPおよびRが設定されている。このように構成すれば、上記の関係性に基づいて、容易に、素子の破損を抑制することが可能なレーザ光のスポット領域の面積およびエネルギを調整することができる。
【0024】
この第2の局面による素子転写方法は、粘着層を介して素子が支持された支持基板に向かって、支持基板が素子を支持する面と反対側からレーザ光を照射する工程を備え、レーザ光を照射する工程は、レーザ光のスポット領域の面積が、素子の支持基板によって支持される面の面積よりも小さくなるようにレーザ光を調整し、かつ、支持基板の表面に対して垂直な方向から見て、素子の一方端側から他方端側に向かって、レーザ光が支持基板に対して相対的に移動して照射されるように、レーザ光を照射する工程を含む。
【0025】
この第2の局面による素子転写方法は、上記のように、レーザ光を照射する工程は、レーザ光のスポット領域の面積が、素子の支持基板によって支持される面の面積よりも小さくなるようにレーザ光を調整し、かつ、支持基板の表面に対して垂直な方向から見て、素子の一方端側から他方端側に向かって、レーザ光が支持基板に対して相対的に移動して照射されるように、レーザ光を照射する工程を含む。ここで、素子を中央部から剥離する場合よりも素子を端部から剥離する場合の方が粘着層の粘着力の影響が小さい。中央部では剥離される部分の周囲が粘着層と接触している一方、端部では剥離される部分の片側にしか粘着層が存在していないからである。そこで、制御部が、素子の一方端側から他方端側に向かって移動するようにレーザ光の照射位置を制御することにより、素子の端部から剥離が始まるので、素子を容易に剥離することが可能な素子転写方法を提供することができる。
【0026】
上記第2の局面による素子転写方法において、好ましくは、レーザ光を照射する工程は、支持基板の表面に対して垂直な方向から見て、素子の一方端側から他方端側に向かう第1方向に、レーザ光を支持基板に対して相対的に移動して照射することによって、支持基板に支持された素子を素子の一方端側から剥離させて、支持基板から素子の全体が剥離される前に、素子の一方端が被転写基板に接触して転写される。これにより、素子の一方端が被転写基板に接触して位置が決まった状態で、残りの部分が剥離されることになる。その結果、素子の転写位置ずれの方向が一定方向に制御されることとなり、被転写基板上の素子の転写位置が様々な方向にばらついて配置されること(転写位置のばらつき)を抑制することができる。
【0027】
この場合、好ましくは、少なくとも支持基板と被転写基板との間の距離と、素子の第1方向に沿う長さとに基づいて、素子が被転写基板に転写される予測転写位置を取得し、素子が水平方向に移動されずに垂直に落下して転写した場合の垂直転写位置と、予測転写位置とを比較して、転写位置の位置ずれ量を取得する工程を含む取得工程をさらに備える。このように構成すれば、実際に素子が被転写基板に転写される前に、素子が水平方向に移動されずに垂直に落下して転写した場合の垂直転写位置と、実際の転写位置との間で発生する位置ずれの量を予め特定することが可能な素子の転写方法を提供することができる。
【0028】
上記取得工程を備える素子転写方法において、好ましくは、取得工程は、さらに素子の厚みに基づいて、素子が被転写基板に転写される予測転写位置を取得し、垂直転写位置と予測転写位置とを比較して、位置ずれ量を取得する。このように構成すれば、素子の厚みが、支持基板と被転写基板との間の距離に対して無視できないほど大きい場合にも、素子が水平方向に移動されずに垂直に落下して転写した場合の垂直転写位置と、実際の転写位置との間で発生する位置ずれの量を予め精度良く特定することが可能な素子の転写方法を提供することができる。
【0029】
この場合、好ましくは、支持基板および被転写基板を相対的に移動させる移動工程をさらに備え、移動工程は、支持基板および被転写基板のうち少なくとも一方を、位置ずれ量に基づいて移動させる。このように構成すれば、実際に素子が被転写基板に転写される前に、素子が水平方向に移動されずに垂直に落下して転写した場合の垂直転写位置と、実際の転写位置との間で発生する位置ずれがなくなるように、支持基板および被転写基板の位置を予め調整することができるようになる。その結果、目標の位置に素子を転写させることが可能な素子の転写方法を提供することができる。
【0030】
上記移動工程を備える素子転写方法において、好ましくは、取得工程は、位置ずれ量に基づいて、垂直転写位置に対して位置ずれ量と等しい量ずれた目標転写位置を取得し、移動工程は、目標転写位置が、転写する素子の真下に位置するように、支持基板および被転写基板のうち少なくとも一方を移動させる。このように構成すれば、位置ずれを考慮した転写位置に基づいて、支持基板および被転写基板のうち少なくとも一方を予め移動させられるため、位置ずれを起こさずに転写させることが可能な素子の転写方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の素子転写装置および素子転写方法は、上記のように、素子を容易に剥離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】第1実施形態による半導体チップ転写装置の全体構成を示した模式図である。
【
図2】半導体チップが支持基板に支持されている構成を示した模式図である。
【
図3】第1実施形態による導体チップ転写装置の側面図である。
【
図4】レーザ光のスポット領域を説明するための図である。
【
図5】レーザ光のスポット領域が大きい場合のブリスタを示す図である。
【
図6】レーザ光のスポット領域が小さい場合のブリスタを示す図である。
【
図7】半導体チップの厚みに対する、半導体チップが耐えられる応力、スポット領域、レーザ光の照射のピッチ、粘着層の厚み、および、粘着力の関係性を示す図である。
【
図8】半導体チップが転写される状態を説明するための図である。
【
図9】半導体チップが支持基板から剥離した部分と、半導体チップが支持基板に支持された状態が維持されている部分との境界部分を示す図である。
【
図10】第2実施形態による半導体チップ転写装置の全体構成を示した模式図である。
【
図11】第2実施形態による半導体チップ転写方法の処理を説明するためのフローチャートである。
【
図12】第3実施形態によるレーザ光の照射の開始位置を示す図である。
【
図13】第4実施形態による半導体チップの剥離した部分を示す図である。
【
図14】第5実施形態によるレーザ光の照射経路を示す図である。
【
図15】第5実施形態によるレーザ光の照射により生じた大きいブリスタと小さいブリスタを示す図である。
【
図16】第5実施形態によるレーザ光の照射により生じた2つの大きいブリスタを示す図である。
【
図17】第6実施形態によるレーザ光の照射により生じたブリスタおよび半導体チップを示す図である。
【
図18】(a)は、第6実施形態によるモデル化された粘着層および半導体チップを示す図である。(b)は、(a)の部分拡大図である。
【
図19】第6実施形態による半導体チップの厚みおよび抗折強度と、最大曲げ応力との関係を示す図である。
【
図20】第6実施形態による最小応力、最大曲げ応力および抗折強度の関係を示すグラフである。
【
図21】第7実施形態による転写方法の処理を説明するためのフローチャートである。
【
図22】第7実施形態による半導体チップ転写装置において、半導体チップの位置ずれ量の取得方法を説明するための図である。
【
図23】第7実施形態による半導体チップ転写装置において、支持基板と被転写基板との間の距離を取得する構成を示した図である。
【
図24】第7実施形態による半導体チップ転写装置において、位置ずれ量に基づいて半導体チップの転写位置を調整する動作を説明するための図である。
【
図25】第7実施形態による半導体チップ転写装置において、レーザ光を一方端側から第1方向に向かって移動させながら照射するときの状態を説明するための模式図である。
【
図26】第7実施形態による半導体チップ転写装置において、半導体チップが一方端側から剥離し、一方端が被転写基板へ接触するときの状態を説明するための図である。
【
図27】第7実施形態による半導体チップ転写装置において、レーザ光が半導体チップに照射されるときの状態を説明するための図である。
【
図28】第8実施形態による半導体チップ転写装置において、厚みの大きな半導体チップの位置ずれ量の取得方法を説明するための図である。
【
図29】第9実施形態による半導体チップ転写装置において、位置ずれ量に基づいて半導体チップの目標転写位置を取得する方法を説明するための図である。
【
図30】第9実施形態による半導体チップ転写装置において、位置ずれ量に基づいて半導体チップの転写位置を調整する動作を説明するための図である。
【
図31】第1変形例による半導体チップ転写装置において、レーザ光が半導体チップに照射されるときの状態を説明するための図である。
【
図32】第2変形例による半導体チップ転写装置において、レーザ光が半導体チップに照射されるときの状態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0034】
[第1実施形態]
図1および
図2を参照して、第1実施形態による半導体チップ転写装置100の構成について説明する。なお、半導体チップ転写装置100は、特許請求の範囲の「素子転写装置」の一例である。
【0035】
(半導体チップ転写装置)
図1に示すように、半導体チップ転写装置100は、支持基板10に支持された半導体チップ1を、レーザリフトオフ法により、被転写基板20に転写するように構成されている。
【0036】
半導体チップ転写装置100は、支持基板保持部30と、被転写基板保持部40と、移動機構50と、制御部60と、レーザ光照射部70とを備える。なお、図面において、半導体チップ転写装置100の左右方向(水平面内の一方向)をX方向としている。また、半導体チップ転写装置100の上下方向(垂直方向)をZ方向としている。また、上方向Z1方向とし、下方向をZ2方向とする。また、半導体チップ転写装置100のX方向およびZ方向と直交する方向(水平面内の他方向)をY方向としている。
【0037】
図2に示すように、半導体チップ1として、例えば、メモリのような、一辺約数百um~十数mm程度の長方形で厚みの薄い素子が用いられる。なお、半導体チップ1は、メモリのような厚みの薄い素子に限定されず、種々の半導体素子を用いてもよい。また、半導体チップ1は、特許請求の範囲の「素子」の一例である。
【0038】
図3に示すように、支持基板10は、たとえば、SiO
2(二酸化ケイ素)基板やサファイヤ基板のようにレーザ光Lを透過する材料により形成されている。支持基板10は、粘着層2を介して半導体チップ1を支持している。また、支持基板10は、粘着層2を介して複数の半導体チップ1を支持している。なお、粘着層2は、転写材とも呼ばれる。
【0039】
粘着層2は、支持基板10のZ2側の面10aに配置されている。複数の半導体チップ1は、粘着層2のZ2側の面2aに保持されている。
図2に示すように、複数の半導体チップ1は、支持基板10上において粘着層2を介して所定の間隔でマトリクス状に配列されている。支持基板10は、円形状を有している。粘着層2は、レーザ光照射部70からレーザ光Lが照射されることにより分解してガス成分を発生する材料により形成されている。そして、ガス成分を発生することにより、粘着層2は、Z2側に突出する凸形状に変形(
図5および
図6参照)する。粘着層2としては、たとえば、ポリイミドやシリコンが用いられる。
【0040】
図1に示すように、支持基板保持部30は、半導体チップ1が支持された支持基板10を保持する。支持基板保持部30は、半導体チップ1を支持した支持基板10を、半導体チップ1を支持した面を下向きにして保持する。支持基板保持部30は、開口部31を有する。支持基板保持部30に保持された支持基板10には、開口部31を介してレーザ光照射部70から出射されたレーザ光Lが照射される。支持基板保持部30は、移動機構50により、少なくともX方向およびY方向において被転写基板保持部40に対して相対移動可能なように構成されている。
【0041】
図3に示すように、被転写基板20は、たとえば、支持基板10上の半導体チップ1が被転写基板20に多数転写されることにより、半導体製品を製造するための基板である。被転写基板20には、転写された半導体チップ1を接着するための粘着層21が形成されている。なお、粘着層21は、キャッチ層とも呼ばれる。また、被転写基板20には、転写された半導体チップ1に対して電気的に接続可能な配線が形成されていてもよい。被転写基板20は、矩形形状を有している。
【0042】
被転写基板保持部40は、支持基板10に支持された半導体チップ1が転写される被転写基板20を下方(Z2側)から保持する。被転写基板保持部40は、移動機構50により、少なくともX方向およびY方向において支持基板保持部30に対して相対移動可能なように構成されている。なお、移動機構50は、支持基板保持部30と被転写基板保持部40とに対して別々に設けられていてもよい。移動機構50による支持基板保持部30の移動および被転写基板保持部40の移動の一方または両方が行われることにより、支持基板10内に配置された半導体チップ1の、被転写基板20に対する相対位置を調節することが可能である。
【0043】
図1に示すように、制御部60は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサにより構成され、プログラム(ソフトウェア)を実行することにより各種制御を行う。制御部60は、転写領域内の半導体チップ1を任意に選択し、レーザ光照射部70にレーザ光Lを照射させることにより、選択した半導体チップ1を被転写基板20に転写する制御を行う。また、制御部60は、移動機構50の動作と、スリット74の開閉の動作を制御する。
【0044】
レーザ光照射部70は、支持基板10にレーザ光Lを照射するように構成されている。レーザ光照射部70は、レーザ光源71と、ガルバノミラー72と、fθレンズ73とを含む。レーザ光源71は、レーザ光Lを出射する光源である。ガルバノミラー72は、交差する二軸を回転軸として回転可能であり、レーザ光Lを任意の角度で反射する。fθレンズ73はガルバノミラー72からのレーザ光Lを支持基板10の転写領域上に集光する。したがって、ガルバノミラー72の回転可能範囲内において反射されるレーザ光Lの照射範囲内に、支持基板10内に配置された転写領域の大きさが納まる。
【0045】
また、レーザ光源71と、ガルバノミラー72との間には、スリット74が設けられている。スリット74の大きさが調整されることにより、レーザ光Lのスポット領域SA(
図4参照)の面積が調整される。スポット領域SAとは、レーザ光Lが集光された際の焦点の領域を意味する。
【0046】
レーザ光照射部70は、ガルバノミラー72およびfθレンズ73を介して、支持基板保持部30に保持された支持基板10の半導体チップ1を支持した面10aと反対側の面10b(
図3参照)にレーザ光Lを照射する。レーザ光Lは、ガルバノミラー72およびfθレンズ73により、転写領域における、選択した半導体チップ1に照射される。レーザ光Lが支持基板10を介して粘着層2に照射されることにより、支持基板10から半導体チップ1が剥離され、支持基板10から被転写基板20へ半導体チップ1が転写される。すなわち、レーザリフトオフ法による転写が行われる。支持基板10の面10bは、特許請求の範囲の「表面」の一例である。
【0047】
ここで、第1実施形態では、
図4に示すように、レーザ光Lのスポット領域SAの面積は、半導体チップ1の支持基板10によって支持される面1cの面積よりも小さく、かつ、半導体チップ1の脆さに応じて設定されている。具体的には、レーザ光Lのスポット領域SAの面積は、半導体チップ1の厚みt1(
図5および
図6参照)が小さくなるに従って小さくなるように調整(設定)されている。なお、半導体チップ1の厚みt1は、たとえば、100μm以下である。また、半導体チップ1は、たとえば、矩形形状を有しており、半導体チップ1の一辺の長さL1(
図3参照)は、数十μm以上、数mm以下である。また、スポット領域SAは、たとえば、矩形形状を有しており、スポット領域SAの一辺の長さL2は、たとえば、数μm以上、数十μm以下である。なお、スポット領域SAの面積は、半導体チップ1の面積に比べて十分小さくなるように調整される。
【0048】
ここで、
図5および
図6に示すように、粘着層2にレーザ光Lが照射されることにより、粘着層2は、Z2側に突出する凸形状に変形する。
図5は、レーザ光Lのスポット領域SAの面積が大きい場合の変形した粘着層2の状態を表し、
図6は、レーザ光Lのスポット領域SAの面積が小さい場合の変形した粘着層2の状態を表している。
図5に示すように、レーザ光Lのスポット領域SAの面積が大きい場合、粘着層2の変形した部分であるブリスタBが比較的大きくなる。
図6に示すように、レーザ光Lのスポット領域SAの面積が小さい場合、Z方向から見たブリスタBの面積は比較的小さくなる。なお、
図5および
図6に示すように、同じレーザ光の出力(出力密度)が等しい場合、レーザ光Lのスポット領域SAの面積が小さい
図6の方が、ブリスタBの高さhは小さくなる。ブリスタBによって、半導体チップ1に曲げ応力がかかる。ブリスタBの高さhが小さい場合、半導体チップ1にかかる曲げ応力は、
図6に示すようにレーザ光Lのスポット領域SAの面積が小さい場合の方が小さい。これにより、レーザ光Lのスポット領域SAの面積が小さくした方が、半導体チップ1が破損しにくくなる。
【0049】
また、
図6に示すようにレーザ光Lのスポット領域SAの面積が小さい場合の方が、ブリスタBが小さくなり、
図5に示されるブリスタBに比べて、半導体チップ1と粘着層2との接触面積が小さくなる。これにより、粘着層2が半導体チップ1を保持する保持力が小さくなるため、
図6に示すようにレーザ光Lのスポット領域SAの面積が小さい場合の方が粘着層2から剥離されやすくなる。なお、
図5および
図6において、点線の円で囲まれた領域が、半導体チップ1と粘着層2とが接触している部分を表している。
【0050】
また、
図5に示すようなレーザ光Lのスポット領域SAの面積が大きい状態で、レーザ光Lの出力を小さくすれば、ブリスタBの高さhが小さくなり、半導体チップ1と粘着層2との接触面積は小さくなる。しかしながら、レーザ光Lの出力を小さくし過ぎると、粘着層2においてガス成分が発生せず、ブリスタBが発生しない。このため、半導体チップ1が転写されない。すなわち、レーザ光Lのスポット領域SAの面積を、半導体チップ1の厚みt1が小さくなるに従って小さくなるように調整することは、半導体チップ1の破損を抑制しながら半導体チップ1の転写を行う点において有効である。
【0051】
また、第1実施形態では、レーザ光Lのスポット領域SAの面積の調整(設定)は、操作者によって実施されている。
図7に示すように、本願発明者が行った実験およびシミュレーションにより、半導体チップ1の抗折強度が低くなるに従って、レーザ光Lのスポット領域SAの面積の小さくすることにより、半導体チップ1の破損が抑制されることを見出した。なお、抗折強度は、半導体チップ1の脆さを表す指標の一例である。また、抗折強度とは、半導体チップ1の曲げ試験によって半導体チップ1が破断に至る時に発生する内部応力値を意味する。言い換えると、抗折強度とは、半導体チップ1の曲げ破壊強度を意味する。また、半導体チップ1の抗折強度は、半導体チップ1の材質、結晶方位、表面粗度、アスペクト比(厚み/面積、長さ/面積)などの要因によって決まる。具体的には、本願発明者は、半導体チップ1の厚みt1が小さくなるに従って、レーザ光Lのスポット領域SAの面積の小さくすることにより、半導体チップ1の破損が抑制されることを見出した。そこで、第1実施形態では、本願発明者の実験およびシミュレーションの結果に基づいて、操作者は、レーザ光Lのスポット領域SAの面積を、半導体チップ1の脆さに応じて設定する。具体的には、操作者は、レーザ光Lのスポット領域SAの面積を、半導体チップ1の厚みt1に応じて、半導体チップ1の破損が抑制されるような面積に調整(設定)する。なお、スポット領域SAの面積が変更できない半導体チップ転写装置100であっても、レーザ光Lのスポット領域SAの面積が比較的小さければ、様々な厚みt1を有する半導体チップ1の転写を行うことが可能である。
【0052】
また、本願発明者が行った実験およびシミュレーションにより、本願発明者は、半導体チップ1の抗折強度が低くなるに従って、粘着層2の厚みt2(
図5参照)を薄くすることにより、半導体チップ1の破損が抑制されることを見出した。具体的には、本願発明者は、半導体チップ1の厚みt1が小さくなるに従って、粘着層2の厚みt2(
図5参照)を薄くすることにより、半導体チップ1の破損が抑制されることを見出した。つまり、粘着層2の厚みt2が大きい場合、粘着層2の変形(ブリスタBの発生)に起因する応力が大きくなり、半導体チップ1が破損してしまうことが見出された。
【0053】
また、本願発明者が行った実験およびシミュレーションにより、本願発明者は、半導体チップ1の抗折強度が低くなるに従って、粘着層2の粘着力を弱くすることにより、半導体チップ1の破損が抑制されることを見出した。具体的には、本願発明者は、半導体チップ1の厚みt1が薄くなるに従って、粘着層2の粘着力を弱くすることにより、半導体チップ1の破損が抑制されることを見出した。つまり、粘着層2の粘着力が大きい場合、粘着層2の変形(ブリスタBの発生)に起因する応力が大きくなり、半導体チップ1が破損してしまうことが見出された。
【0054】
また、第1実施形態では、
図1に示すように、制御部60は、レーザ光照射部70から照射されるレーザ光Lの照射位置を制御する。具体的には、制御部60は、ガルバノミラー72を回転させることにより、レーザ光照射部70から照射されるレーザ光Lの照射位置を制御する。また、
図4に示すように、制御部60は、支持基板10の面10bに対して垂直な方向(Z方向)から見て、半導体チップ1の一方端1a側から他方端1b側(X1側)に向かって、レーザ光Lが支持基板10に対して相対的に移動して照射されるように、レーザ光Lの照射位置を制御する。
図4に示す例では、半導体チップ1は、矩形形状を有している。制御部60は、半導体チップ1の角部1dにレーザ光Lが照射されるようにレーザ光Lの照射を開始する。その後、制御部60は、レーザ光Lを蛇行させながら、角部1dに対して対角線上に位置する角部にレーザ光Lの照射位置が移動するようにレーザ光Lの照射位置を制御する。なお、
図4において、レーザ光Lの移動の軌跡は、矢印付きの点線により表されている。
【0055】
また、第1実施形態では、
図4に示すように、レーザ光照射部70は、レーザ光Lが支持基板10に対して相対的に移動して照射される際に、支持基板10に対して移動しながら間欠的にレーザ光Lを照射するように構成されている。たとえば、制御部60は、レーザ光Lのスポット領域SAが互いに重ならないようにレーザ光Lの照射位置を制御する。これにより、
図8に示すように、レーザ光Lの第1回目の照射から、第N回目の照射が順次行われることにより、半導体チップ1の一方端1a側から他方端1b側に亘って、複数のブリスタBがうろこ状に生成されるとともに互いに連結されながら発生する。その結果、半導体チップ1の略全域が、被転写基板20の粘着層21に保持される。その後、移動機構50により支持基板10がZ1方向側に移動され、半導体チップ1が支持基板10の粘着層2から剥離される。なお、
図8では、レーザ光LがX方向に沿って移動するように図示されているが、実際には、
図4に示すように、レーザ光Lは、X-Y平面内で蛇行するように移動している。
【0056】
また、第1実施形態では、
図4に示すように、制御部60は、間欠的に照射されるレーザ光Lの照射位置のピッチptを、半導体チップ1の端部側では小さく、半導体チップ1の中央部では大きくなるように調整する。たとえば、制御部60は、ガルバノミラー72を制御することにより、レーザ光Lの照射位置のピッチptを、半導体チップ1の端部側では小さく、半導体チップ1の中央部では、大きくなるように、レーザ光Lの照射位置を制御する。なお、レーザ光Lの照射位置のピッチptは、半導体チップ1の一方端1a側では小さく、半導体チップ1の中央部では大きし、半導体チップ1の他方端1b側では小さくする。一方、レーザ光Lの照射位置のピッチptを、半導体チップ1の一方端1a側では小さく、半導体チップ1の中央部では大きし、半導体チップ1の他方端1b側でも大きくしてもよい。半導体チップ1の剥離が進むにつれて半導体チップ1の剥離された部分の自重によっても剥離が進むので、半導体チップ1の他方端1b側においてレーザ光Lの照射位置のピッチptが大きい状態が維持されても半導体チップ1が剥離するからである。また、照射位置のピッチptとは、X方向に隣り合うレーザ光Lのスポット領域SA同士の間の中心間距離である。また、間欠的に照射されるレーザ光Lのスポット領域SAの面積は、半導体チップ1の一方端1a側から他方端1b側に亘って一定である。
【0057】
また、第1実施形態では、
図7に示すように、間欠的に照射されるレーザ光Lの照射位置のピッチptは、半導体チップ1が脆くなるに従って小さくなるように設定されている。具体的には、制御部60は、間欠的に照射されるレーザ光Lの照射位置のピッチptを、半導体チップ1の抗折強度が低くなるに従って小さくなるように調整する。また、制御部60は、間欠的に照射されるレーザ光Lの照射位置のピッチptを、半導体チップ1の厚みt1が小さくなるに従って小さくなるように調整する。なお、レーザ光Lのスポット領域SAの面積が半導体チップ1の厚みt1が小さくなるに従って小さくなるように調整した場合、レーザ光Lの照射位置のピッチptが比較的大きいままであると、粘着層2から剥離された半導体チップ1の部分同士の間隔が大きくなる。言い換えると、ブリスタB同士の間隔が大きくなる。このため、半導体チップ1の全体に対する粘着層2の粘着力が比較的大きいままである。そこで、制御部60は、レーザ光Lの照射位置のピッチptを、レーザ光Lのスポット領域SAの面積が小さくなるに従って小さくなるように、かつ、半導体チップ1の厚みt1が小さくなるに従って小さくなるようにレーザ光Lの照射位置を制御する。
【0058】
また、第1実施形態では、
図9に示すように、制御部60は、レーザ光Lが照射されることにより半導体チップ1が支持基板10から剥離した部分と、半導体チップ1が支持基板10に支持された状態が維持されている部分と、の境界部分BA近傍を照射するように、間欠的に照射されるレーザ光Lの照射位置を制御する。半導体チップ1の角部1dにレーザ光Lが照射されるようにレーザ光Lの照射を開始した場合、半導体チップ1の角部1dを頂点とする三角形の領域AA(ハッチングで示された領域)が粘着層2(支持基板10)から剥離する。そして、制御部60は、三角形の領域AAの底辺に対応する境界部分BAの近傍であって、かつ、半導体チップ1が支持基板10に支持された状態が維持されている部分にレーザ光Lが照射されるように、レーザ光Lの照射位置を制御する。
【0059】
(第1実施形態の効果)
次に、第1実施形態の効果について説明する。
【0060】
第1実施形態では、上記のように、制御部60bは、支持基板10の面10bに対して垂直な方向から見て、半導体チップ1の一方端1a側から他方端1b側に向かって、レーザ光Lが支持基板10に対して相対的に移動して照射されるように、レーザ光Lの照射位置を制御する。ここで、半導体チップ1を中央部から剥離する場合よりも半導体チップ1を端部から剥離する場合の方が粘着層2の粘着力の影響が小さい。中央部では剥離される部分の周囲が粘着層2と接触している一方、端部では剥離される部分の片側にしか粘着層2が存在していないからである。そこで、制御部60が、半導体チップ1の一方端1a側から他方端1b側に向かって移動するようにレーザ光Lの照射位置を制御することにより、半導体チップ1の端部から剥離が始まるので、半導体チップ1を容易に剥離することができる。
【0061】
第1実施形態では、上記のように、転写対象となる半導体チップ1の脆さに応じて設定されている。これにより、厚みt1が比較的小さい半導体チップ1のように、半導体チップ1が比較的脆い場合でも、レーザ光Lのスポット領域SAの面積が半導体チップ1の脆さに応じて設定される。たとえば、半導体チップ1が比較的脆い場合には、レーザ光のスポット領域の面積も比較的小さくなるように調整される。このため、レーザ光Lのスポット領域SAの面積が比較的小さくなることにより、粘着層2の変形も小さくなる。これにより、粘着層2の変形に起因する半導体チップ1への応力が小さくなり、半導体チップ1が破損するのを抑制することができる。その結果、粘着層2の変形に起因する半導体チップ1の破損を抑制しながら半導体チップ1を転写することができる。
【0062】
また、第1実施形態では、上記のように、レーザ光照射部70は、レーザ光Lが支持基板10に対して相対的に移動して照射される際に、間欠的にレーザ光Lを照射するように構成されている。制御部60は、レーザ光Lが照射されることにより半導体チップ1が支持基板10から剥離した部分と、半導体チップ1が支持基板10に支持された状態が維持されている部分と、の境界部分BA近傍を照射するように、間欠的に照射されるレーザ光Lの照射位置を制御する。ここで、境界部分BA近傍の粘着層2の粘着力の影響は、境界部分BA近傍から離間した未剥離の部分の粘着力の影響と比べて小さくなる。境界部分BA近傍以外では剥離される部分の周囲が粘着層2と接触している一方、境界部分BA近傍では剥離される部分の片側にしか粘着層2が存在していないからである。その結果、境界部分BA近傍にレーザ光Lを照射することにより、半導体チップ1を容易に剥離することができる。
【0063】
また、第1実施形態では、上記のように、制御部60は、間欠的に照射されるレーザ光Lの照射位置のピッチptを、半導体チップ1の端部側では小さく、半導体チップ1の中央部では大きくなるように調整する。ここで、1回のレーザ光Lの照射によって半導体チップ1が剥離される面積の大きさは、半導体チップ1の中央部よりも半導体チップ1の端部側の方が大きくなることが、本願発明者が行った実験およびシミュレーションにより確認されている。また、半導体チップ1が剥離した部位に重ねてレーザ光Lを照射しても剥離には寄与しないことが確認されている。すなわち、半導体チップ1の端部では1回のレーザ照射により剥離する面積が大きいため、半導体チップ1の中央部に続けてレーザ光Lを照射する場合、レーザ光Lの照射位置のピッチptを大きくすることで、より効率的に素子を転写することができる。そこで、制御部60は、間欠的に照射されるレーザ光Lの照射位置のピッチptを、半導体チップ1の端部側では小さく、半導体チップ1の中央部では大きくなるように調整することにより、半導体チップ1の全体に亘ってレーザ光Lの照射位置のピッチptを小さくする場合と比べて、半導体チップ1の転写に要する時間を短縮することができる。
【0064】
また、第1実施形態では、上記のように、間欠的に照射されるレーザ光Lの照射位置のピッチptは、半導体チップ1が脆くなるに従って小さくなるように設定されている。ここで、レーザ光Lのスポット領域SAの面積が、半導体チップ1が脆くなるに従って小さくなるように設定された場合において、レーザ光Lの照射位置のピッチptが比較的大きいままであると、粘着層2から剥離された半導体チップ1の部分同士の間隔が大きくなり、半導体チップ1の全体に対する粘着層2による保持力が比較的大きいままである。そこで、レーザ光Lの照射位置のピッチptを半導体チップ1が脆くなるに従って小さくなるように設定することにより、粘着層2から剥離された半導体チップ1の部分同士の間隔が小さくなるので、半導体チップ1の全体に対する粘着層2による保持力が低減される。その結果、粘着層2から半導体チップ1を適切に剥離することができる。
【0065】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態による半導体チップ転写装置100aについて説明する。第2実施形態では、半導体チップ1の厚みt1に応じて、スポット領域SAの面積が制御部60により調整される。なお、半導体チップ転写装置100aは、特許請求の範囲の「素子転写装置」の一例である。
【0066】
図10に示すように、半導体チップ転写装置100aは、記憶部201を備えている。記憶部201には、半導体チップ1の厚みt1に対するレーザ光Lのスポット領域SAの適切な面積の情報が予め記憶されている。半導体チップ1の厚みt1に対する適切な面積は、実験およびシミュレーションによって求められる。
【0067】
第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0068】
(半導体チップ転写方法)
次に、
図11を参照して、第2実施形態における半導体チップ転写方法について説明する。
【0069】
ステップS1において、制御部60aは、スポット領域SAの面積の入力を受け付ける。もしくは、制御部60aは、半導体チップ1の厚みt1の入力を受け付ける。この入力は、操作者によって実行される。
【0070】
ステップS2において、制御部60aは、入力されたスポット領域SAの面積に基づいてスリット74の開閉を調整する。もしくは、制御部60aは、入力された半導体チップ1の厚みt1と、記憶部201に記憶された半導体チップ1の厚みt1に対するレーザ光Lのスポット領域SAの適切な面積とに基づいて、スリット74の開閉を調整する。
【0071】
ステップS3において、制御部60aは、粘着層2を介して半導体チップ1が支持された支持基板10に向かって、支持基板10が半導体チップ1を支持する面10aと反対側(Z1側)からレーザ光Lを照射する。ここで、第2実施形態では、レーザ光Lを照射する工程では、レーザ光Lのスポット領域SAの面積が、半導体チップ1の支持基板10によって支持される面1cの面積よりも小さく、かつ、転写対象となる半導体チップ1の脆さに応じて設定されている。具体的には、レーザ光Lのスポット領域SAの面積は、半導体チップ1の厚みt1が小さくなるに従って小さくなるように、レーザ光Lが調整されて照射される。なお、上記のように、制御部60aは、半導体チップ1の角部1dからレーザ光Lの照射が開始されるようにガルバノミラー72を制御する。その後、制御部60aは、レーザ光Lが蛇行させながら、角部1dに対して対角線上に位置する角部にレーザ光Lの照射位置が移動するようにガルバノミラー72を制御する。また、制御部60aは、間欠的にレーザ光Lを照射するようにレーザ光照射部70を制御する。
【0072】
ステップS4において、制御部60aは、支持基板10に支持された複数の半導体チップ1の全てが転写されたか否かを判定する。ステップS4において、noの場合、ステップS3に戻る。ステップS4において、yesの場合、半導体チップ1の転写の動作が終了する。
【0073】
(第2実施形態の効果)
次に、第2実施形態の効果について説明する。
【0074】
第2実施形態では、上記のように、半導体チップ1の厚みt1に応じて、スポット領域SAの面積が調整(変更)される。これにより、様々な厚みを有する複数種の半導体チップ1の転写を行うことができる。
【0075】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態による半導体チップ転写装置100b(
図1参照)について説明する。なお、第3実施形態の半導体チップ転写装置100bの制御部60b以外の構成は、第1実施形態と同様である。
【0076】
第3実施形態の半導体チップ転写装置100bでは、
図12に示すように、制御部60bは、支持基板10の表面(面10b)に対して垂直な方向から見て、レーザ光Lが粘着層2に照射されて発生するブリスタBの一部のみが半導体チップ1とオーバラップするように、レーザ光Lの照射を開始させる。具体的には、制御部60bは、支持基板10の表面に対して垂直な方向から見て、半導体チップ1とオーバラップしないように、レーザ光Lを照射させる。これにより、ブリスタBのX1側の端部のみが半導体チップ1のX2側の端部のみとオーバラップする。また、ブリスタBにより、支持基板10と粘着層2との間、および、粘着層2と半導体チップ1との間に、ぞれぞれ、空隙Vが生じる。なお、その後、第1実施形態と同様に、制御部60bは、半導体チップ1の一方端1a側から他方端1b側に向かって、レーザ光Lが支持基板10に対して相対的に移動して照射されるように、レーザ光Lの照射位置を制御する。
【0077】
(第3実施形態の効果)
次に、第3実施形態の効果について説明する。
【0078】
第3実施形態では、上記のように、制御部60bは、支持基板10の表面に対して垂直な方向から見て、レーザ光Lが粘着層2に照射されて発生するブリスタBの一部のみが半導体チップ1とオーバラップするように、レーザ光Lの照射を開始させる。ここで、半導体チップ1の剥離開始時は、半導体チップ1の全面が粘着層2に密着している状態であるため、ブリスタBの全体が半導体チップ1とオーバラップする位置にレーザ光Lを照射すると、半導体チップ1にかかる粘着力の総和が大きくなり、半導体チップ1にかかる曲げ応力が増大し、半導体チップ1に破損が起きる場合がある。そこで、ブリスタBの一部のみが半導体チップ1とオーバラップする位置にレーザ光Lを照射することにより、半導体チップ1にかかる粘着力の総和を小さくでき、半導体チップ1にかかる曲げ応力が低減されるため、半導体チップ1の破損を抑制することができる。
【0079】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態による半導体チップ転写装置100c(
図1参照)について説明する。なお、第4実施形態の半導体チップ転写装置100cの制御部60c以外の構成は、第1実施形態と同様である。
【0080】
第4実施形態の半導体チップ転写装置100cでは、
図13に示すように、レーザ光照射部70は、レーザ光Lが支持基板10に対して相対的に移動して照射される際に、間欠的にレーザ光Lを照射するように構成されている。そして、制御部60cは、間欠的に照射されるレーザ光Lにより半導体チップ1が支持基板10から剥離した部分PP同士が重なるように、間欠的に照射されるレーザ光Lの照射位置を制御する。具体的には、レーザ光Lは、ピッチptの間隔を隔てて、間欠的に照射される。そして、レーザ光Lの照射により、半導体チップ1は、たとえば、円形状(円環形状)の部分PPが剥離する。剥離された円形状の部分PPの一部同士が互いにオーバラップするようにレーザ光Lの照射位置が制御されている。また、複数の剥離した部分PPの間に隙間が生じる場合でも、隙間に対応する半導体チップ1の部分も隣接する部分PPの剥離に伴って自然に剥離するので、レーザ光Lを間欠的に照射しても半導体チップ1を剥離することができる。
【0081】
(第4実施形態の効果)
次に、第4実施形態の効果について説明する。
【0082】
第4実施形態では、上記のように、レーザ光照射部70は、レーザ光Lが支持基板10に対して相対的に移動して照射される際に、間欠的にレーザ光Lを照射するように構成されている。そして、制御部60cは、間欠的に照射されるレーザ光Lにより半導体チップ1が支持基板10から剥離した部分PP同士が重なるように、間欠的に照射されるレーザ光Lの照射位置を制御する。これにより、半導体チップ1の剥離した部分PP同士が重なるので、レーザ光Lを間欠的に照射しても半導体チップ1を剥離することができる。
【0083】
[第5実施形態]
次に、第5実施形態による半導体チップ転写装置100d(
図1参照)について説明する。なお、第5実施形態の半導体チップ転写装置100dの制御部60d以外の構成は、第1実施形態と同様である。
【0084】
第5実施形態の半導体チップ転写装置100dでは、
図14~
図16に示すように、制御部60dは、間欠的に照射されるレーザ光Lにより粘着層2に生じる小さなブリスタB同士が合体して大きな共通のブリスタB1を形成するように、間欠的に照射されるレーザ光Lの照射位置を制御する。たとえば、
図14に示すように、制御部60dは、半導体チップ1の矩形状の領域に対して、レーザ光Lを蛇行させながらレーザ光Lの照射位置が移動するようにレーザ光Lの照射位置を制御する。制御部60dは、間欠的にレーザ光Lを照射しながらレーザ光Lを蛇行させる。これにより、
図15に示すように、1回のレーザ光Lの照射によって小さなブリスタBが形成され、形成されたブリスタB同士が合体して大きな共通のブリスタB1が形成される。この大きなブリスタB1により、
図16に示すように、半導体チップ1が被転写基板20の粘着層21まで到達される。
【0085】
(第5実施形態の効果)
次に、第5実施形態の効果について説明する。
【0086】
第5実施形態では、上記のように、制御部60dは、間欠的に照射されるレーザ光Lにより粘着層2に生じる小さなブリスタB同士が合体して大きな共通のブリスタB1を形成するように、間欠的に照射されるレーザ光Lの照射位置を制御する。これにより、ブリスタB同士が合体して大きな共通のブリスタB1が形成されるので、レーザ光Lを間欠的に照射しても半導体チップ1を剥離することができる。また、レーザ光Lにより生じるブリスタBは小さいので、半導体チップ1にかかる応力を低減できる。その結果、半導体チップ1の破損をより抑制できる。
【0087】
[第6実施形態]
次に、第6実施形態による半導体チップ転写装置100e(
図1参照)について説明する。なお、第6実施形態の半導体チップ転写装置100eでは、レーザ光Lのスポット領域SAの決め方が第1実施形態と異なっている。半導体チップ転写装置100eのその他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0088】
まず、
図18(a)に示すように、レーザ光Lが粘着層2に照射されてブリスタBが発生した場合(
図17)の、粘着層2および半導体チップ1をモデル化する。このモデルでは、半導体チップ1の厚みがt、ブリスタBによって半導体チップ1が押される力をPとしている。また、半導体チップ1には、粘着層2による粘着力がブリスタBによって押される力と反対方向に働き、半導体チップ1に曲げ応力σが生じる。具体的には、
図18(b)に示すように、力Pにより、半導体チップ1の内部に断面に対して垂直な応力(曲げ応力)σが生じる。曲げ応力σは、半導体チップ1の表面に近いほど大きくなる。曲げ応力σのうち最大の力をσ
maxとする。そして、第6実施形態の半導体チップ転写装置100dでは、σ
peelを粘着層2から剥離するときに半導体チップ1にかかる最小応力とし、レーザ光Lが粘着層2に照射されて発生するブリスタBが半導体チップ1を押す力をP、半導体チップ1の剥離範囲の半径をR、tを半導体チップ1の厚み、および、νをポアソン比とし、半導体チップ1にかかる最大曲げ応力σ
maxを、σ
max=P×(1+ν)×(0.485×ln(R/t)+0.52)/t
2として定義する。そして、σ
bを半導体チップ1の抗折強度としたときに、レーザ光Lのスポット領域SAの面積およびエネルギが調整されることにより、σ
peel<σ
max<σ
bの関係性を満たすようにPおよびRが設定されている。なお、σ
maxの式は、円板の中心に集中荷重がかかる場合の円板の最大応力を算出するための式である。ここで、半導体チップ1の厚みtと、ポアソン比νとは、半導体チップ1の形状や材質に依存する値である。レーザ光Lのスポットサイズとエネルギとを調整することにより、上記の関係性を満たすようにPおよびRが設定される。また、P=kπR
2の関係が満たされるとき、半導体チップ1が剥離する条件であるσ
peelが得られる。なお、kは、粘着層2の粘着力に依存する値である。
図19に示すように、半導体チップ1の厚みtが大きいほど、最大曲げ応力σ
maxは、大きくなる。また、半導体チップ1の抗折強度σ
bが高いほど、最大曲げ応力σ
maxは、大きくなる。
【0089】
図20に示すように、横軸をRとし、縦軸をσ(σ
peel、σ
max、σ
b)とするグラフを作成する。そして、σ
peelおよびσ
bで囲まれたハッチングされた領域が、上記の関係性(σ
peel<σ
max<σ
b)を満たす領域である。このグラフから、Rが小さい方が、半導体チップ1が破損せずに剥離可能なマージンが大きいことが分かる。また、レーザ光Lのエネルギが大きくなるほど、σ
maxのグラフは、上方に移動する。また、粘着層2の粘着力が小さくなるほど、σ
peelのグラフは、右方に移動する。なお、半導体チップ転写装置100eでは、上記の関係性を満たすPおよびRが手動で設定されてもよいし、半導体チップ転写装置100eが自動的に設定してもよい。
【0090】
(第6実施形態の効果)
次に、第6実施形態の効果について説明する。
【0091】
第6実施形態では、上記の関係性を満たすようにPおよびRが設定されている。これにより、上記の関係性に基づいて、容易に、半導体チップ1の破損を抑制することが可能なレーザ光Lのスポット領域SAの面積およびエネルギを調整することができる。
【0092】
[第7実施形態]
次に、第7実施形態による半導体チップ転写装置100f(
図1参照)について説明する。なお、第7実施形態の半導体チップ転写装置100fの制御部60f以外の構成は、第1実施形態と同様である。
【0093】
第7実施形態の半導体チップ転写装置100fの制御部60fは、転写領域内の半導体チップ1を任意に選択し、レーザ光照射部70にレーザ光Lを照射させることにより、転写領域内の半導体チップ1のみを被転写基板20に転写する制御を行う。また、制御部60fは、少なくとも支持基板10と被転写基板20との間の距離d1と、半導体チップ1のX方向に沿う長さl1とに基づいて、半導体チップ1が被転写基板20に転写される予測転写位置A1を取得する。また、制御部60fは、半導体チップ1がX方向およびY方向に移動されずにZ2方向に落下して転写した場合の垂直転写位置Aと、予測転写位置A1とを比較して、転写位置の位置ずれ量pを取得する制御を行う。また、制御部60fは、支持基板保持部30および被転写基板保持部40のうち少なくとも一方を、取得した位置ずれ量pに基づいて移動させるように、移動機構50を制御するように構成されている。
【0094】
(半導体チップの転写方法)
次に、
図21~
図27を参照して、第7実施形態における半導体チップ1の転写方法の処理について説明する。なお、以下に説明する半導体チップ1の転写方法の処理は、制御部60fにより実行される。
【0095】
図21のステップS11において、今回実行される半導体チップ1の転写工程において、支持基板10に支持された転写対象の半導体チップ1を選択する。その選択された半導体チップ1が被転写基板20に転写するよう、支持基板10と被転写基板20とを対向させる。その後、ステップS12の処理に進む。
【0096】
ステップS12において、第7実施形態では、制御部60fは、少なくとも支持基板10と被転写基板20との間の距離d1と、半導体チップ1のX方向に沿う長さl1とに基づいて、半導体チップ1が被転写基板20に転写される予測転写位置A1を取得する。そして、半導体チップ1がX方向およびY方向に移動されずにZ2方向に落下して転写した場合の垂直転写位置Aと予測転写位置A1とを比較して、転写位置の位置ずれ量pを予め取得する。
【0097】
位置ずれ量pの取得についての具体的な方法について
図22を用いて説明する。
図22は、
図1の半導体チップ転写装置100fをY2方向から見た側面図(XZ断面図)である。
図22において破線で示される半導体チップ1は、支持基板10から剥離し終わる直前の半導体チップ1の状態を示している。この半導体チップ1のレーザ光Lが照射されたX2方向側の一方端1aが被転写基板20に接触する位置を、予測転写位置A1とする。このとき、半導体チップ1の他方端1bは、支持基板10から剥離されずに、位置Bにおいて接触して支持されている状態となる。これにより、半導体チップ1は、一方端1aと、一方端1aより上方(Z1方向)にある他方端1bとが支持された傾斜状態となる。また、支持基板10上の位置Bから垂直下方(Z2方向)にある被転写基板20上の位置を位置Cとする。このとき、
図22に示すXZ断面において、位置A1と位置Bと位置Cとを頂点とする直角三角形が描かれる。
【0098】
このとき、制御部60fは、半導体チップ1の厚みt、半導体チップ1のX方向に沿う長さl1、および、支持基板10と被転写基板20との間の距離d1を取得する。第7実施形態では、制御部60fは、予め既知である半導体チップ1の厚みt、半導体チップ1のX方向に沿う長さl1を取得する。また、第7実施形態では、
図23に示すように、制御部60fは、支持基板10の上方(Z1方向)に取り付けられたレーザ変位計80を用いて測定したデータをもとに、支持基板10と被転写基板20との間の距離d1を取得する。
図23に示すように、レーザ変位計80は、レーザ光Laを支持基板10に向かって照射し、たとえば白色干渉法式の測定方法により、基準位置Tと、支持基板10の半導体チップ1を支持する側の面における任意の位置S1との間の距離を、第1距離D1として測定する。また、レーザ変位計80は、レーザ光Laを支持基板10に向かって照射し、基準位置Tと、位置S1の垂直下方(Z2方向)に位置する被転写基板20の半導体チップ1が転写される側の面の位置S2との間の距離を、第2距離D2として取得する。そして、レーザ変位計80は、測定した第1距離D1および第2距離D2の差分を支持基板10と被転写基板20との間の距離d1として取得するように構成されている。
【0099】
半導体チップ1の厚みtが支持基板10と被転写基板20との間の距離d1に比べて無視することが可能なほど小さい場合は、位置A1と位置Bと位置Cとを頂点とする直角三角形において、位置Bと位置A1との間の距離d3は、半導体チップ1のX方向に沿う長さl1とみなされる。これにより、斜辺の長さl1と一辺の距離d1に基づいて、三平方の定理を用いることにより、制御部60fは、位置Bと位置Cとの間の距離d2を、d2=(l12-d12)(1/2)として算出する。また、制御部60fは、半導体チップ1がX方向およびY方向に移動されずに垂直下方(Z2方向)に落下して転写した場合の垂直転写位置Aと、予測転写位置A1との位置ずれ量pを、p=l1-d2として取得する。その後、ステップS13の処理に進む。
【0100】
ステップS13において、第7実施形態では、支持基板10および被転写基板20のうち少なくとも一方を、位置ずれ量pに基づいて移動させる。たとえば、
図24に示すように、制御部60fは移動機構50を制御して、予め取得した位置ずれ量pと等しい量だけ、被転写基板保持機構をX1方向にずれた位置に移動させる。その後、ステップS14の処理に進む。
【0101】
ステップS14において、第7実施形態では、支持基板10の表面に対して垂直なZ方向から見て、半導体チップ1の一方端1a側から他方端1b側に向かうX1方向に、レーザ光Lが支持基板10に対して相対的に移動して照射される。これによって、支持基板10に支持された半導体チップ1がX1側から剥離されて、支持基板10から半導体チップ1の全体が剥離される前に、半導体チップ1のX2方向側の一方端1aから被転写基板20に接触して支持される。このとき、半導体チップ1の他方端1bは、支持基板10から剥離されずに、位置Bにおいて接触して支持されている状態となる。これによって、半導体チップ1は、一方端1aと、一方端1aより上方(Z1方向)にある他方端1bとが支持された傾斜状態で転写が開始され、その後、半導体チップ1の全体が転写される。
【0102】
具体的には、制御部60fは、ガルバノミラー72を調整するとともに、レーザ光照射部70からレーザ光Lを照射させる。
図25に示すように、支持基板10の半導体チップ1を支持した面と反対側の面から半導体チップ1にレーザ光Lが照射されることにより、支持基板10に形成された図示しない粘着層が、レーザ光Lが照射されるX2方向側の一方端1a側から分解されるため、半導体チップ1がX2方向側の一方端1a側から剥離される。
【0103】
また、
図26に示すように、レーザ光LをX1方向に相対的に移動させた場合、支持基板10から半導体チップ1の全体が剥離される前に、半導体チップ1のX2方向側の一方端1aが被転写基板20に接触して支持される。このとき、半導体チップ1の他方端1bは、支持基板10から剥離されずに、位置Bにおいて接触して支持されている状態となる。これによって、半導体チップ1は、一方端1aと、一方端1aより上方(Z1方向)にある他方端1bとが支持された傾斜状態で転写が開始され、その後、半導体チップ1の全体が転写される。その結果、半導体チップ1は、半導体チップ1がX方向およびY方向に移動されずにZ2方向へ落下して転写した場合の位置Aに対して、X1方向にずれて転写される。
【0104】
また、ステップS14において、第7実施形態では、
図27に示すように、レーザ光のスポット領域Lsの面積が半導体チップ1の支持基板10によって支持される面の面積より小さく設定されている。そして、制御部60fは、レーザ光Lが支持基板10に対してX1方向に相対的に移動して照射される際に、レーザ光Lを半導体チップ1の面を蛇行しながら移動させるように制御する。たとえば、
図27に示すように、制御部60fは、レーザ光Lを、矢印のついた点線に沿うように蛇行しながらX1方向へ相対的に移動させるように制御する。その後、ステップS15の処理に進む。
【0105】
ステップS15において、制御部60fは、配置した複数の転写領域のすべてにおいて半導体チップ1の被転写基板20へ転写が終了したか否かを判定する。制御部60fは、配置した複数の転写領域のすべてにおいて半導体チップ1の被転写基板20に対しての転写が終了したと判定した場合(ステップS15においてYesの場合)、処理は終了し、配置した複数の転写領域のすべてにおいて半導体チップ1の被転写基板20に対しての転写が終了していないと判定した場合(ステップS15においてNoの場合)は、ステップS11の処理に戻る。この一連の処理を繰り返すことによって、第7実施形態では、制御部60fは、支持基板10に支持された全ての転写対象の半導体チップ1に対して、レーザ光Lが支持基板10に対してX1方向に相対的に移動して照射されるように制御する。たとえば、
図2のように、支持基板10が水平面内(XY平面内)に複数の半導体チップ1を支持している場合、制御部60fは、1つの半導体チップ1を選択して、選択された半導体チップ1に対して、レーザ光LをX1方向に相対的に移動して照射されるように制御して、半導体チップ1をX1方向にずらした位置に転写させる。そして、次に別の半導体チップ1を選択し、同様の処理を行うように構成される。これを繰り返すことにより、支持基板10に支持された全ての転写対象の半導体チップ1に対して、支持基板10に対してレーザ光LがX1方向に相対的に移動して照射される。
【0106】
(第7実施形態の効果)
次に、第7実施形態の効果について説明する。
【0107】
第7実施形態の半導体チップ転写装置100fおよび半導体チップ1の転写方法は、少なくとも1つの半導体チップ1が支持された支持基板10を保持する支持基板保持部30と、支持基板10が半導体チップ1を支持する面と反対側に配置され、支持基板10にレーザ光Lを照射するレーザ光照射部70と、少なくともレーザ光照射部70から照射されるレーザ光Lの照射位置を制御する制御部60fとを備える。そして、制御部60fは、支持基板10の表面に対して垂直な方向から見て、半導体チップ1の一方端1a側から他方端1b側に向かうX1方向に、レーザ光Lが支持基板10に対して相対的に移動して照射されるように制御する。これによって、支持基板10に支持された半導体チップ1がX2方向側の一方端1a側から剥離されて、支持基板10から半導体チップ1の全体が剥離される前に、半導体チップ1のX2方向側の一方端1aから被転写基板20に接触して、半導体チップ1の全体が転写されるように構成されている。これにより、半導体チップ1のX2方向側の一方端1aが被転写基板20に接触して位置が決まった状態で残りの部分が剥離されるので、半導体チップ1の転写位置ずれの方向が一定方向に制御されることとなり、被転写基板20上の半導体チップ1の転写位置が様々な方向にばらついて配置されること(転写位置のばらつき)を抑制することができる。
【0108】
なお、第7実施形態の半導体チップ転写装置100fおよび半導体チップ1の転写方法では、レーザ光のスポット領域Lsの面積は、半導体チップ1の支持基板10によって支持される面の面積よりも小さく、制御部60fは、レーザ光Lが、半導体チップ1の面を蛇行しながら、支持基板10に対してX1方向に相対的に移動して照射されるように制御する。これにより、レーザ光のスポット領域Lsの面積が半導体チップ1の面の面積より大きい場合に比べて、所望の位置のみに照射することが容易になるので、半導体チップ1を所望の部分から部分的に剥離しやすくなる。その結果、半導体チップ1を所望の部分(半導体チップ1のX2方向側の一方端1a)から被転写基板20に接触させて転写させることができる。また、レーザ光Lが、蛇行しながらX1方向に相対的に移動されるので、半導体チップ1の面の全体にわたってレーザ光Lを照射させることができる。
【0109】
また、第7実施形態では、制御部60fは、少なくとも支持基板10と被転写基板20との間の距離d1と、半導体チップ1のX方向に沿う長さl1とに基づいて、半導体チップ1が被転写基板20に転写される予測転写位置A1を取得する。そして、制御部60fは、半導体チップ1がX方向およびY方向に移動されずにZ2方向に落下して転写した場合の垂直転写位置Aと予測転写位置A1とを比較して、転写位置の位置ずれ量pを予め取得する。これにより、実際に半導体チップ1が被転写基板20に転写される前に、半導体チップ1がX方向およびY方向に移動されずにZ2方向に落下して転写した場合の垂直転写位置Aと実際の転写位置との間で発生する位置ずれの量を予め特定することができる。
【0110】
また、第7実施形態では、半導体チップ転写装置100fは、半導体チップ1が転写される被転写基板20を保持する被転写基板保持部40と、支持基板保持部30および被転写基板保持部40のうち少なくとも一方を移動させる移動機構50とをさらに備える。そして、制御部60fは、支持基板保持部30および被転写基板保持部40のうち少なくとも一方を、位置ずれ量pに基づいて移動させるように、移動機構50を制御する。これにより、半導体チップ1がX方向およびY方向に移動されずにZ2方向に落下して転写した場合の垂直転写位置Aと実際の転写位置との間で発生する位置ずれがなくなるように、支持基板10および被転写基板20の位置を転写前に予め調整することができるようになる。その結果、所望の位置に半導体チップ1を転写させることができる。
【0111】
また、第7実施形態では、支持基板保持部30に保持された支持基板10は、複数の半導体チップ1を支持し、制御部60fは、支持基板10に支持された全ての転写対象の半導体チップ1に対して、レーザ光Lが支持基板10に対してX1方向に相対的に移動して照射されるように制御するように構成されている。これにより、支持基板10に支持された全ての転写対象の半導体チップ1のX2方向側の一方端1aを、いずれも同じ向き(X1方向)から被転写基板20に接触させることができるため、半導体チップ1の転写位置ずれの方向が一定方向に制御されることとなり、被転写基板20上の半導体チップ1の転写位置が様々な方向にばらついて配置されること(転写位置のばらつき)を抑制することができる。
【0112】
[第8実施形態]
次に、
図28を用いて、第8実施形態による半導体チップ転写装置100g(
図1参照)および半導体チップ1の転写方法について説明する。半導体チップ転写装置100gの装置構成は、制御部60g以外は、
図1に示した半導体チップ転写装置100と同様の装置構成である。第8実施形態では、半導体チップ1の厚みtが支持基板10と被転写基板20との間の距離d1に比べて無視することが可能な場合の上記第7実施形態とは異なり、半導体チップ1の厚みtが支持基板10と被転写基板20との間の距離d1に比べて無視できない例について説明する。なお、第8実施形態において、第7実施形態と共通する点については、説明を省略する。
【0113】
第8実施形態では、制御部60gは、支持基板10と被転写基板20との間の距離d1と、半導体チップ1のX方向に沿う長さl1とに加えて、半導体チップ1の厚みtに基づいて、半導体チップ1が被転写基板20に転写される予測転写位置A1を取得し、半導体チップ1がX方向およびY方向に移動されずにZ方向に落下して転写した場合の垂直転写位置Aと予測転写位置A1とを比較して、転写位置の位置ずれ量pを予め取得するように構成される。
【0114】
第8実施形態においても、破線で示される半導体チップ1は、支持基板10から剥離し終わる直前の半導体チップ1の状態を示している。この半導体チップ1のレーザ光Lが照射されたX2方向側の一方端1aが、被転写基板20に接触する位置を、予測転写位置A1とする。このとき、他方端1bが支持基板10から剥離されずに位置Bの部分において支持されている状態になる。また、支持基板10上の位置Bから垂直下方(
図28のZ2方向)にある被転写基板20上の位置を位置Cとする。このとき、
図28に示すXZ断面において、位置A1と位置Bと位置Cとを頂点とする直角三角形を描かれる。
【0115】
半導体チップ1の厚みtが支持基板10と被転写基板20との間の距離d1に比べて無視できない厚みの場合、位置A1と位置Bと位置Cとを頂点とする直角三角形において、まずは位置Bと位置A1との間の距離d3を算出する。位置Bと位置A1との間の距離d3は、半導体チップ1のXZ断面における対角線となる。そのため、制御部60gは、半導体チップ1の厚みtおよび半導体チップ1のX方向の長さl1に基づいて、三平方の定理を用いることにより、位置Bと位置A1との間の距離d3をd3=(t2+l12)2として取得する。
【0116】
次に制御部60gは、位置Bと位置A1との間の距離d3と支持基板10と被転写基板20との間の距離d1に基づいて、三平方の定理を用いることにより、制御部60gは、位置Bと位置Cとの間の距離d2を、d2=(d32-d12)(1/2)として算出する。また、制御部60gは、半導体チップ1がX方向およびY方向に移動されずにZ方向に落下して転写した場合の垂直転写位置Aと、予測転写位置A1との位置ずれ量pを、p=l1-d2として取得する。
【0117】
(第8実施形態の効果)
次に、第8実施形態の効果について説明する。
【0118】
第8実施形態では、制御部60gは、支持基板10と被転写基板20との間の距離d1と、半導体チップ1のX方向に沿う長さl1とに加えて、半導体チップ1の厚みtに基づいて、半導体チップ1が被転写基板20に転写される予測転写位置A1を取得する。そして、制御部60gは、半導体チップ1がX方向およびY方向に移動されずにZ2方向に落下して転写した場合の垂直転写位置Aと予測転写位置A1とを比較して、転写位置の位置ずれ量pを予め取得するように構成される。これにより、半導体チップ1の厚みtが、支持基板10と被転写基板20との間の距離d1に対して無視できないほど大きい場合にも、半導体チップ1がX方向およびY方向に移動されずにZ2方向に落下して転写した場合の垂直転写位置Aと、実際の転写位置との間で発生する位置ずれの量を予め精度良く特定することができる。
【0119】
なお、第8実施形態のその他の効果は、上記第7実施形態と同様である。
【0120】
[第9実施形態]
次に、
図29および
図30を用いて、第9実施形態による半導体チップ転写装置100h(
図1参照)および半導体チップ1の転写方法について説明する。半導体チップ転写装置100hの装置構成は、制御部60h以外は、
図1に示した半導体チップ転写装置100と同様の装置構成である。第9実施形態では、制御部60hが位置ずれ量pに基づいて、支持基板保持部30および被転写基板保持部40の少なくとも一方を移動機構50により移動させる方法の別の例について説明する。なお、第9実施形態において、第7実施形態および第8実施形態と共通する点については、説明を省略する。
【0121】
第9実施形態は、制御部60hは、位置ずれ量pに基づいて、垂直転写位置Aに対して位置ずれ量pと等しい量ずれた目標転写位置A2を取得する。そして、制御部60hは、目標転写位置A2が、転写する半導体チップ1の位置の真下に位置する(すなわち、垂直転写位置Aと目標転写位置A2が重なる)ように、支持基板保持部30および被転写基板保持部40のうち少なくとも一方を移動させるように、移動機構50を制御する。
【0122】
第9実施形態においても、
図22に示すように、制御部60hは、少なくとも支持基板10と被転写基板20との間の距離d1と、半導体チップ1のX方向に沿う長さl1とに基づいて、半導体チップ1が被転写基板20に転写される予測転写位置A1を取得する。そして、半導体チップ1がX方向およびY方向に移動されずにZ2方向に落下して転写した場合の垂直転写位置Aと予測転写位置A1とを比較して、転写位置の位置ずれ量pを取得する。
【0123】
また、
図29に示すように、制御部60hは、取得した位置ずれ量pに基づいて、被転写基板20の表面に目標転写位置A2を取得する。このとき、制御部60hは、垂直転写位置Aに対して、X2方向に位置ずれ量pだけずれた位置が、目標転写位置A2となるように目標転写位置A2を取得する。
【0124】
次に、
図30に示すように、制御部60hは、目標転写位置A2が、支持基板10に支持された半導体チップ1のZ2方向の位置する(すなわち、垂直転写位置Aと目標転写位置A2が重なる)ように、支持基板保持部30および被転写基板保持部40のうち少なくとも一方を移動させるように、移動機構50を制御する。
【0125】
(第9実施形態の効果)
次に、第9実施形態の効果について説明する。
【0126】
第9実施形態では、制御部60hは、位置ずれ量pに基づいて、垂直転写位置Aに対して位置ずれ量pと等しい量ずれた目標転写位置A2を取得するとともに、目標転写位置A2が、転写する半導体チップ1のZ2方向に位置する(すなわち、垂直転写位置Aと目標転写位置A2が重なる)ように、支持基板保持部30および被転写基板保持部40のうち少なくとも一方を移動させるように、移動機構50を制御する。これにより、位置ずれ量pを考慮した目標転写位置A2に基づいて、支持基板保持部30および被転写基板保持部40のうち少なくとも一方を予め移動させられるため、位置ずれを起こさずに転写させることができる。
【0127】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0128】
たとえば、上記第1~第6実施形態では、粘着層2が変形することにより半導体チップ1が剥離される例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、粘着層2がガス化して、ガスの圧力により半導体チップ1が剥離する半導体チップ転写装置に対しても本発明を適用することは可能である。
【0129】
また、上記第1~第6実施形態では、制御部60は、半導体チップ1の一方端1a側から他方端1b側に向かって、レーザ光Lが支持基板10に対して相対的に移動して照射されるように、レーザ光Lの照射位置を制御する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、制御部60は、半導体チップ1の中央部からレーザ光Lの照射を開始するように、レーザ光Lの照射位置を制御してもよい。
【0130】
また、上記第1および第2実施形態では、制御部60は、間欠的に照射されるレーザ光Lの照射位置のピッチptを、半導体チップ1の端部側では小さく、半導体チップ1の中央部では大きくなるように調整する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、制御部60は、間欠的に照射されるレーザ光Lの照射位置のピッチptが一定となるように照射位置を調整してもよい。
【0131】
また、上記第1~第9実施形態では、支持基板10の形状は円形であり、被転写基板20の形状は矩形形状である例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、支持基板10および被転写基板20の形状は、いずれも、円形であってもよいし、多角形であってもよい。
【0132】
また、上記第1~第9実施形態では、レーザ光照射部70は、レーザ光源71と、ガルバノミラー72と、fθレンズ73とを含む例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、ガルバノミラー72の代わりにポリゴンミラーを用いてもよいし、ガルバノミラー72とfθレンズ73との代わりにマスクを用いてもよい。
【0133】
また、上記第1~第6実施形態では、半導体チップ1が粘着層2を介して支持基板10に支持される際に、半導体チップ1の面1c全体が支持されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、ブリスタチップのように、半導体チップ1が一部に凸状部を含み、半導体チップ1の凸状部のみが、粘着層2を介して支持基板10に支持されるように構成されていてもよい。
【0134】
また、上記第1~第9実施形態では、本発明の素子として半導体チップ1を適用する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明の素子として、半導体チップ1以外の素子を適用してもよい。
【0135】
また、上記第2実施形態では、半導体チップ1の脆さとして、厚みt1の入力が受け付けられる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、半導体チップ1の脆さとして、厚みt1以外の入力が受け付けられてもよい。
【0136】
また、上記第3実施形態では、制御部60bは、支持基板10の表面に対して垂直な方向から見て、半導体チップ1とオーバラップしないように、レーザ光Lを照射させる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、制御部60bは、レーザ光Lが粘着層2に照射されて発生するブリスタBの一部のみが半導体チップ1とオーバラップするように、支持基板10の表面に対して垂直な方向から見て、半導体チップ1と部分的にオーバラップするように、レーザ光Lを照射させてもよい。
【0137】
また、上記第4実施形態では、半導体チップ1の剥離した部分PPの間に隙間が生じる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、半導体チップ1の剥離した部分PPの間に隙間が生じないようにレーザ光Lが照射されてもよい。
【0138】
また、上記第5実施形態では、大きなブリスタB1により、半導体チップ1が被転写基板20の粘着層21まで到達される例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、半導体チップ1が、大きなブリスタB1から自重で落下することにより被転写基板20の粘着層21まで到達してもよい。
【0139】
また、上記第6実施形態では、半導体チップ1にかかる最大曲げ応力σmaxの式が、円板の中心に集中荷重がかかる場合の円板の最大応力を算出するための式である例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、最大曲げ応力σmaxの式が、円板に環状に荷重がかかる場合の円板の最大応力を算出するための式であってもよい。
【0140】
また、上記第1~第9実施形態では、レーザ光のスポット領域Lsの面積が、半導体チップ1の支持基板10によって支持される面積より小さい例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、レーザ光のスポット領域Lsの面積は、半導体チップ1の支持基板10によって支持される面積より大きくしてもよいし、等しい面積にしてもよい。
【0141】
また、上記第1~第9実施形態では、レーザ光Lが支持基板10に対してX1方向に相対的に移動して照射される際に、レーザ光Lが半導体チップ1の面を蛇行しながら移動されるように制御される構成を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、レーザ光のスポット領域Lsの面積を半導体チップ1の支持基板10によって支持される面積より大きくして、蛇行させずにX1方向に相対的に移動して照射されるように制御してもよい。
【0142】
また、上記第1~第9実施形態では、半導体チップ1が粘着層を介して支持基板10に支持される際に、半導体チップ1の面全体が支持されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、ブリスタチップのように、半導体チップ1が一部に凸状部を含み、半導体チップ1の凸状部のみが、粘着層を介して支持基板10に支持されるように構成されていてもよい。
【0143】
また、上記第1~第9実施形態では、レーザ光Lが支持基板10に対してX1方向に相対的に移動して照射される際に、レーザ光Lが半導体チップ1の面を蛇行しながら移動するように制御される例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、ブリスタチップのように、半導体チップ1の凸状部のみが粘着層を介して支持基板10に支持される場合は、
図31のように、レーザ光Lがうずまき状に回転して、剥離したい領域の大きさに対応して大きさの異なる円を複数個描くように、X1方向へ相対的に移動するように制御されていてもよい。
【0144】
また、上記第1~第9実施形態では、転写を行う全ての転写対象の半導体チップ1に対して、レーザ光Lの相対的な移動方向をX2方向からX1方向に向かう例を示したが、本発明はこれに限られない。レーザ光Lの相対的な移動方向は、支持基板10の表面に対してZ方向から見て、半導体チップ1の一方端1a側から他方端1b側に向かう方向であれば、いずれの方向へ向かう向きとしてもよい。たとえば、Y1方向からY2方向へ向かうように制御してもよい。
【0145】
また、上記第7~第9実施形態では、制御部60f、60gおよび60hが半導体チップ1の厚みtおよび半導体チップ1のX方向に沿う長さl1を取得する場合に、既知の値を取得する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、制御部60f、60gおよび60hが取得するそれぞれの値は、レーザ変位計80を用いて測定した値を取得してもよいし、マイクロメータ等によって直接測定した値を取得してもよい。
【0146】
また、上記第7~第9実施形態では、制御部60f、60gおよび60hが支持基板10と被転写基板20との間の距離d1を取得する場合に、レーザ変位計80を用いて測定した値を取得する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、制御部60f、60gおよび60hが取得するそれぞれの値は、オペレータにとって既知の値を取得してもよいし、マイクロメータ等によって直接測定した値を取得してもよい。
【0147】
また、上記第7~第9実施形態では、半導体チップ1の一辺の長さl1がX方向に沿うように配置されることにより、半導体チップ1の一辺の長さl1に基づいて位置ずれ量pを取得する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、
図32に示すように、半導体チップ1の対角線がX方向に沿うように配置される場合、半導体チップ1の対角線の長さl3に基づいて位置ずれ量pを取得するように構成されていてもよい。
【0148】
また、上記第7~第9実施形態では、制御部60f、60gおよび60hが予測位置を取得する際に、少なくとも支持基板10と被転写基板20との間の距離d1と、半導体チップ1のX方向に沿う長さl1とに基づいて、半導体チップ1が被転写基板20に転写される予測転写位置A1を取得し、半導体チップ1が水平方向に移動されずに垂直に落下して転写した場合の垂直転写位置Aと予測転写位置A1とを比較して、転写位置の位置ずれ量pを予め取得する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、実際に転写を行う前に、実際の転写と同条件でテスト転写を行うことによって、制御部60f、60gおよび60hが、半導体チップ1が被転写基板20に転写される転写位置を取得し、半導体チップ1が水平方向に移動されずに垂直に落下して転写した場合の垂直転写位置Aと比較して、転写位置の位置ずれ量pを予め取得するように構成されていてもよい。
【0149】
また、上記第7~第9実施形態では、位置ずれ量pを取得する構成を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、位置ずれ量pを取得せずに、X1方向に、レーザ光Lが支持基板10に対して相対的に移動して照射されるように制御することによって、支持基板10に支持された半導体チップ1が一方端1a側から剥離されて、支持基板10から半導体チップ1の全体が剥離される前に半導体チップ1のX2方向側の一方端1aから被転写基板20に接触して、半導体チップ1の全体が転写されるように構成されていてもよい。
【0150】
また、上記第7~第9実施形態では、制御部60f、60gおよび60hが移動機構50を制御して、被転写基板保持部40を移動させる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、制御部60f、60gおよび60hが移動機構50を制御して、被転写基板保持部40および支持基板保持部30の両方を移動させるように構成されていてもよいし、支持基板保持部30のみを移動させるように構成されていてもよい。
【0151】
また、上記第7~第9実施形態では、位置ずれ量pに基づいて被転写基板保持部40および支持基板保持部30を移動させる構成を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、取得した位置ずれ量pが、所望の転写位置精度に影響を与えない程度に小さい場合、被転写基板保持部40および支持基板保持部30の移動を行わずに、転写が行われてもよい。
【符号の説明】
【0152】
1 半導体チップ(素子)
1a 半導体チップの一方端
1b 半導体チップ他方端
1c 面(支持基板によって支持される面)
2 粘着層
10 支持基板
10a 面(素子を支持する面)
10b 面(表面)
20 被転写基板
30 支持基板保持部
40 被転写基板保持部
50 移動機構
60、60a~60d、60f~60h 制御部
70 レーザ光照射部
100、100a~100h 半導体チップ転写装置(素子転写装置)
A 垂直転写位置
A1 予測転写位置
B ブリスタ
B1 共通のブリスタ
BA 境界部分
L レーザ光
Ls レーザ光のスポット領域
pt ピッチ
p 位置ずれ量
PP 剥離した部分
SA スポット領域
t1 厚み