(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144321
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】組成物、及び悪臭成分の消臭方法
(51)【国際特許分類】
A61L 9/01 20060101AFI20241003BHJP
C12N 9/06 20060101ALI20241003BHJP
C12N 1/14 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A61L9/01 H
C12N9/06 Z
C12N1/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024050393
(22)【出願日】2024-03-26
(31)【優先権主張番号】P 2023050973
(32)【優先日】2023-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 麻衣
(72)【発明者】
【氏名】和田 凪左
【テーマコード(参考)】
4B065
4C180
【Fターム(参考)】
4B065AA57X
4B065BB18
4B065BB22
4B065BD27
4B065CA28
4B065CA60
4C180AA02
4C180BB02
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4C180BB06
4C180BB07
4C180EB06X
4C180EB41X
4C180EB42X
4C180EB43X
4C180EC01
(57)【要約】
【課題】フェノール性化合物と酵素との併用によって消臭を可能とし、酵素の使用量を低減しても高い消臭効果が得られる組成物の提供。
【解決手段】ラッカーゼと、フェノール性水酸基を有する化合物と、を含有する組成物であって、前記ラッカーゼが、TEMPO酸化セルロースナノファイバーを含有する培地を用いて、真菌を生育させることにより産生されたラッカーゼである、組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
前記組成物は、ラッカーゼと、フェノール性水酸基を有する化合物と、を含有し、
前記ラッカーゼが、TEMPO酸化セルロースナノファイバーを含有する培地を用いて、真菌を生育させることにより産生されたラッカーゼである、組成物。
【請求項2】
前記フェノール性水酸基を有する化合物が、タンニン酸、フェルラ酸、カテキン類、リグニンスルホン酸塩、没食子酸、没食子酸プロピル、コーヒー豆抽出成分、葡萄種子抽出成分及び緑茶エキス含有成分からなる群より選択される1種又は2種以上である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記培地が米ぬかを含有している、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ラッカーゼがビリルビンオキシダーゼ(EC1.3.3.5)である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の組成物を、悪臭成分と接触させることにより、前記悪臭成分を消臭する、悪臭成分の消臭方法。
【請求項6】
水の共存下で、前記組成物を前記悪臭成分と接触させる、請求項5に記載の悪臭成分の消臭方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物、及び悪臭成分の消臭方法に関する。
【背景技術】
【0002】
身の回りに存在する悪臭成分として、トリメチルアミン等の含窒素化合物、メチルメルカプタン等の含硫黄化合物が挙げられる。これら悪臭成分を環境から除去したり、量を低減したりすることによって消臭する方法が、これまでに報告されている。
【0003】
例えば、フェノール性水酸基を有するフェノール性化合物と、酵素としてポリフェノールオキシダーゼと、を含有する組成物を用いた消臭方法が、これまでに開示されている(特許文献1~2参照)。
ポリフェノールオキシダーゼには、ラッカーゼやチロシナーゼ等が存在し、これらポリフェノールオキシダーゼは、フェノール性化合物に作用してキノン体を生成し、このキノン体が悪臭成分に作用することで、消臭効果を発現することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3766375号公報
【特許文献2】特許第6023946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
消臭に必要な酵素の量は、併用するフェノール性化合物の種類によって異なるが、通常、酵素活性単位(U、ユニット)が大きいほど、悪臭成分と反応して消臭に導くときの化学反応の反応率が高くなり、消臭効果が高くなる。そこで従来は、酵素の使用量(質量部)が、フェノール性化合物の使用量(質量部)に対して同等以上とされてきた。例えば、特許文献1~2で開示されている消臭方法では、フェノール性化合物に対して大過剰量の酵素を用いている。
しかし、酵素は元来、少量でその効果を発現するものであり、高価である点も考慮すると、酵素の使用量の削減が望まれる。
【0006】
本発明は、フェノール性化合物と酵素との併用によって消臭を可能とし、酵素の使用量を低減しても高い消臭効果が得られる組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用する。
[1] 組成物であって、前記組成物は、ラッカーゼと、フェノール性水酸基を有する化合物と、を含有し、前記ラッカーゼが、TEMPO酸化セルロースナノファイバーを含有する培地を用いて、真菌を生育させることにより産生されたラッカーゼである、組成物。
[2] 前記フェノール性水酸基を有する化合物が、タンニン酸、フェルラ酸、カテキン類、リグニンスルホン酸塩、没食子酸、没食子酸プロピル、コーヒー豆抽出成分、葡萄種子抽出成分及び緑茶エキス含有成分からなる群より選択される1種又は2種以上である、[1]に記載の組成物。
[3] 前記培地が米ぬかを含有している、[1]又は[2]に記載の組成物。
[4] 前記ラッカーゼがビリルビンオキシダーゼ(EC1.3.3.5)である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の組成物。
【0008】
[5] [1]~[4]のいずれか一項に記載の組成物を、悪臭成分と接触させることにより、前記悪臭成分を消臭する、悪臭成分の消臭方法。
[6] 水の共存下で、前記組成物を前記悪臭成分と接触させる、[5]に記載の悪臭成分の消臭方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、フェノール性化合物と酵素との併用によって消臭を可能とし、酵素の使用量を低減しても高い消臭効果が得られる組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<<組成物>>
本発明の一実施形態に係る組成物は、ラッカーゼと、フェノール性水酸基を有する化合物(本明細書においては、「フェノール性化合物」と称することがある)と、を含有し、前記ラッカーゼが、TEMPO酸化セルロースナノファイバー(本明細書においては、「TEMPO酸化CNF」と称することがある)を含有する培地を用いて、真菌を生育させることにより産生されたラッカーゼである。
本実施形態の組成物は、酵素として特定の製造方法で得られたラッカーゼと、フェノール性化合物と、を含有していることにより、悪臭成分に作用させたときに、ラッカーゼの使用量を低減しても、高い消臭効果が得られる。
【0011】
本実施形態の組成物が含有するラッカーゼは、TEMPO酸化CNFを含有する培地を用いて、真菌を生育させることにより産生されたものであることで、従来の他の酵素よりも、高い酵素活性を有する。このようなラッカーゼを含有する本実施形態の組成物は、従来よりも少ないラッカーゼの含有量(使用量)であっても、高い消臭効果を発現する。例えば、本実施形態の組成物を消臭対象物に作用させることで、悪臭成分の検出値を、悪臭成分が存在していない場合と同程度にまで低減可能であり、後述する悪臭成分の消臭率を100%とするこが可能である。
【0012】
本実施形態の組成物を用いた場合には、ラッカーゼがフェノール性化合物に作用することで、フェノール性化合物が活性種に変化し、この活性種が悪臭成分と反応することで、悪臭成分をそれ以外の成分に変えて、消臭作用を発現すると推測される。
【0013】
本明細書においては、ラッカーゼの酵素活性とは、特に断りのない限り、ラッカーゼ活性を意味する。
【0014】
本実施形態の組成物の消臭対象となる悪臭成分としては、例えば、アミン(第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン)、アンモニア、尿素、インドール、インドール誘導体等の含窒素化合物(窒素原子を有する化合物);メルカプタン、硫化水素、スルフィド等の含硫黄化合物(硫黄原子を有する化合物)等が挙げられる。ただし、悪臭成分はこれらに限定されない。
【0015】
本実施形態の組成物は、ラッカーゼとフェノール性化合物以外に、さらに、水を含有していることが好ましい。ラッカーゼ、フェノール性化合物及び水を含有する前記組成物は、より効率的に悪臭成分を消臭できる。
【0016】
<フェノール性水酸基を有する化合物(フェノール性化合物)>
前記フェノール性化合物は、その1分子中に1個又は2個以上のフェノール性水酸基を有していれば、特に限定されない。ただし、1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール性化合物の方が、酵素の使用量を低減しても高い消臭効果が得られるという本発明の効果が、より高くなる傾向がある。
【0017】
フェノール性化合物は、天然物及び非天然物のいずれであってもよい。前記非天然物は、例えば、化学合成されたものであってもよいし、天然物を化学処理(例えば、化学修飾、分解等)して得られたものであってもよい。
【0018】
フェノール性化合物として、より具体的には、例えば、タンニン酸;フェルラ酸;(+)-カテキン、(-)-カテキン、(+)-ガロカテキン、(-)-カテキンガレート、(+)-ガロカテキンガレート、(-)-エピカテキン、(-)-エピガロカテキン、(-)-エピカテキンガレート、(-)-エピガロカテキンガレート等のカテキン類(カテキン及びカテキン誘導体);リグニンスルホン酸カルシウム、リグニンスルホン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸マグネシウム、リグニンスルホン酸アンモニウム等のリグニンスルホン酸塩;没食子酸(別名:3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸);没食子酸プロピル(別名:3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸プロピル);ピロガロール;クロロゲン酸等のコーヒー豆抽出成分;葡萄種子抽出成分;緑茶エキス含有成分等が挙げられる。
前記コーヒー豆抽出成分、葡萄種子抽出成分又は緑茶エキス含有成分として、より具体的には、例えば、ポリフェノール類等が挙げられる。
これらフェノール性化合物のうちの一部の構造式を以下に示す。なお、クロロゲン酸は、共通の骨格を有する複数種の化合物の総称であり、以下に示す化合物以外にも、さらに複数種のものが存在する。
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
本明細書においては、ある特定の化合物において、1個以上の水素原子が水素原子以外の基で置換された構造が想定される場合、このような置換された構造を有する化合物を、上述の特定の化合物の「誘導体」と称する。
本明細書において、「基」とは、特に断りのない限り、複数個の原子が結合してなる原子団だけでなく、1個の原子も包含するものとする。
【0023】
上記のフェノール性化合物の中でも、タンニン酸、フェルラ酸、カテキン類、リグニンスルホン酸塩、没食子酸、没食子酸プロピル、コーヒー豆抽出成分、葡萄種子抽出成分、緑茶エキス含有成分)は、いずれも、組成物において、酵素の使用量を低減しても高い消臭効果が得られるという点で有利である。さらに、これらフェノール性化合物の中でも、タンニン酸、カテキン類、没食子酸プロピル、コーヒー豆抽出成分、葡萄種子抽出成分、緑茶エキス含有成分は、より短時間で高い消臭効果が得られる点で、より好ましい。
【0024】
前記組成物が含有するフェノール性化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
【0025】
前記組成物が水を含有する場合、組成物において、水の含有量に対する、フェノール性化合物の含有量の割合([組成物のフェノール性化合物の含有量(質量部)]/[組成物の水の含有量(質量部)]×100)は、0.04~1質量%であることが好ましく、0.05~0.3質量%であることがより好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、酵素の使用量を低減しても高い消臭効果が得られるという本発明の効果が、より高くなる。
【0026】
前記組成物は、フェノール性化合物として、タンニン酸、フェルラ酸、カテキン類、リグニンスルホン酸塩、没食子酸、没食子酸プロピル、コーヒー豆抽出成分、葡萄種子抽出成分及び緑茶エキス含有成分からなる群より選択される1種又は2種以上を含有していることが好ましく、例えば、タンニン酸、フェルラ酸、カテキン及びリグニンスルホン酸カルシウムからなる群より選択される1種又は2種以上を含有していてもよい。
そして、前記組成物は、フェノール性化合物として、タンニン酸、カテキン類、没食子酸プロピル、コーヒー豆抽出成分、葡萄種子抽出成分及び緑茶エキス含有成分からなる群より選択される1種又は2種以上を含有していることがより好ましく、例えば、タンニン酸及びカテキンからなる群より選択される1種又は2種以上を含有していてもよい。
【0027】
<ラッカーゼ、ラッカーゼの産生方法>
前記ラッカーゼは、TEMPO酸化CNF(TEMPO酸化セルロースナノファイバー)を含有する培地を用いて、真菌を生育させることにより産生されたラッカーゼである。
TEMPO酸化CNFとは、TEMPO、すなわち、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン 1-オキシル(2,2,6,6-tetramethylpiperidine 1-oxyl)の触媒作用によって、セルロースを化学変性させて得られたセルロースナノファイバー(本明細書においては、「CNF」と称することがある)である。
【0028】
セルロースナノファイバー(CNF)としては、例えば、セルロース若しくはその誘導体で、繊維幅が3~200nmのミクロフィブリル又はミクロフィブリル集合体となっているものが挙げられる。
【0029】
前記培地は、液状及び固形状のいずれであってもよい。
前記培地が液状である場合、TEMPO酸化CNFは培地中で偏在していてもよいが、均一に分散していることが好ましい。
前記培地が固形状である場合、TEMPO酸化CNFは培地中に偏在していてもよいし、均一に分散していてもよいが、偏在している場合には、培地中の真菌を生育させる部位とその近傍領域に、偏在していることが好ましい。
【0030】
真菌の生育(培養)に供する前記培地において、前記培地の総質量に対する、TEMPO酸化CNFの含有量の割合は、真菌の生育が良好となるように適宜調節すればよく、特に限定されない。
なかでも、前記割合は、0.05~4質量%であることが好ましく、0.1~2.5質量%であることがより好ましく、例えば、0.2~1.5質量%、及び0.3~1質量%のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、真菌が産生するラッカーゼの酵素活性が、より高くなる。前記割合が前記上限値以下であることで、TEMPO酸化CNFの過剰使用がより抑制される。
【0031】
前記真菌は、TEMPO酸化CNFを利用して生育し、ラッカーゼ産生能を有するラッカーゼ産生菌であれば、特に限定されない。
【0032】
前記真菌としては、例えば、木材腐朽菌、麹菌等が挙げられ、子実体(キノコ)であってもよい。すなわち、本実施形態においては、真菌の生育には、微生物の培養と、子実体(キノコ)の栽培(生育)と、の両方が含まれる。
【0033】
木材腐朽菌は、セルロース、ヘミセルロース及びリグニン等の、いずれかの木材の主要成分を分解して、腐朽を引き起こす。
木材腐朽菌としては、例えば、シイタケ、ヒラタケ、マイタケ、エリンギ等の白色腐朽菌;オオウズラタケ、サルノコシカケ、ナミダタケ等の褐色腐朽菌;トリコデルマ(Trichoderma)属に属する微生物、カエトミウム(Caetomium)属に属する微生物等の軟腐朽菌等が挙げられる。
【0034】
麹菌は、アスペルギルス(Aspergillus)属に属する微生物であり、その具体例としては、黄麹菌、白麹菌、黒麹菌等が挙げられる。
【0035】
前記培地を用いて生育させる真菌は、1種のみのであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
【0036】
真菌のうち、キノコは、ラッカーゼを産生させる真菌として好適であるだけでなく、それ自体の利用価値が高い。
【0037】
前記培地は、TEMPO酸化CNF以外に、真菌の生育に必要な他の成分(本明細書においては、「他の成分(1)」と称することがある)を含有していてもよい。
培地が含有する前記他の成分(1)は特に限定されず、真菌の種類等に応じて、適宜選択できる。
培地が含有する前記他の成分(1)は、例えば、有機成分及び無機成分のいずれであってもよい。
【0038】
前記培地は、例えば、公知の培地に、TEMPO酸化CNFが添加されたものであってもよい。
【0039】
培地が含有する前記他の成分(1)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
【0040】
培地が含有する前記他の成分(1)としては、例えば、おが屑、コーンコブ等の基材;米ぬか、フスマ、オカラ、コーンブラン、豆皮等の栄養材;水;ペプトン;酵母エキス;硫酸鉄、硫酸マグネシウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、塩化カルシウム、硫酸マンガン(II)、硫酸亜鉛、硫酸銅(II)等の金属塩等が挙げられる。
前記金属塩のうち、水和物が存在するものは、前記培地の製造時において、その金属水和物を配合してもよい。
【0041】
前記培地が液状の場合、前記培地において、前記培地の総質量に対する、水の含有量の割合は、89~99.3質量%であることが好ましい。
【0042】
ペプトン、酵母エキス、金属塩及び米ぬかは、液状の培地での含有成分として好ましい。
前記培地が液状の場合、前記培地において、前記培地の総質量に対する、ペプトンの含有量の割合は、0.5~5質量%であることが好ましい。
前記培地が液状の場合、前記培地において、前記培地の総質量に対する、酵母エキスの含有量の割合は、0.05~0.5質量%であることが好ましい。
前記培地が液状の場合、前記培地において、前記培地の総質量に対する、金属塩の含有量の割合は、0.01~1質量%であることが好ましい。
前記培地が液状の場合、前記培地において、前記培地の総質量に対する、米ぬかの含有量の割合は、2.5~10質量% であることが好ましい。
【0043】
前記培地において、前記培地の総質量に対する、前記培地の1種又は2種以上の上述の含有成分の合計含有量の割合は、100質量%を超えない。
【0044】
前記培地がTEMPO酸化CNF、ペプトン、酵母エキス、金属塩及び水を含有する場合、前記培地において、前記培地の総質量に対する、TEMPO酸化CNF、ペプトン、酵母エキス、金属塩及び水の合計含有量の割合([培地のTEMPO酸化CNF、ペプトン、酵母エキス、金属塩及び水の合計含有量(質量部)]/[培地の総質量(質量部)]×100)は、真菌の生育が良好となるように適宜調節すればよく、特に限定されない。
なかでも、前記割合は、90~100質量%であることが好ましく、93~100質量%であることがより好ましく、例えば、95~100質量%であってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、真菌がより良好に生育する。
【0045】
前記培地がTEMPO酸化CNF、米ぬか及び水を含有する場合、前記培地において、前記培地の総質量に対する、TEMPO酸化CNF、米ぬか及び水の合計含有量の割合([培地のTEMPO酸化CNF、米ぬか及び水の合計含有量(質量部)]/[培地の総質量(質量部)]×100)は、真菌の生育が良好となるように適宜調節すればよく、特に限定されない。
なかでも、前記割合は、80 ~100質量%であることが好ましく、85~100質量%であることがより好ましく、例えば、90~100質量%であってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、真菌がより良好に生育する。
【0046】
組成物中のラッカーゼの含有量がより少ない条件でも、極めて短時間で高い消臭効果を発現可能である点では、前記培地は米ぬかを含有していることが好ましい。
【0047】
前記培地が、水を含有する液状培地である場合には、培地のpHは5.5~7であることが好ましい。培地のpHがこのような範囲であることで、真菌をより良好に生育させることができ、その結果、ラッカーゼの産生効率が高くなる。
【0048】
前記培地は、TEMPO酸化CNFを含有していることにより、真菌を生育させることで、酵素活性(ラッカーゼ活性)が高いラッカーゼを産生できる。
これに対して、TEMPO酸化CNF以外のCNF、例えば、機械解繊セルロースナノファイバー(本明細書においては、「機械解繊CNF」と称することがある)を用いた場合には、このような効果は得られない。
前記機械解繊CNFは、TEMPOを用いることなく、水等の分散媒中で、セルロースナノファイバー前駆体(CNF前駆体)に対して機械解繊処理を行うことにより、セルロースナノファイバー分散液(CNF分散液)を得る工程を有する製造方法で製造されたCNFである。
【0049】
前記培地は、TEMPO酸化CNFと、前記他の成分(1)と、を配合することで製造できる。
各成分の配合は、例えば、15~40℃の温度条件下で行うことができ、常温下で行ってもよい。
本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15~25℃の温度等が挙げられる。
また、各成分の配合は、例えば、常圧下で行うことができる。
【0050】
TEMPO酸化CNFは、例えば、取り出し若しくは精製によって、純品となっている状態で配合してもよいし、後処理によって、TEMPO酸化CNF以外の成分との混合物の状態となっているものを配合してもよいし、TEMPO酸化CNFの製造時に得られた、TEMPO酸化CNF以外の成分との混合物の状態となっているものを、そのまま配合してもよい。
【0051】
前記培地が液状である場合には、真菌の生育時には、前記培地を静置してもよいし、振とう(すなわち、振とう培養)してもよい。
前記培地が固形状である場合には、真菌の生育時には、前記培地を静置しておけばよい。
【0052】
ラッカーゼは、例えば、前記培地を滅菌処理した後、得られた滅菌済み培地に真菌を植菌し、滅菌済み培地中又は滅菌済み培地上で、植菌した真菌を生育させることで、産生できる。
【0053】
真菌を生育させるときの温度は、真菌の種類に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。
通常、真菌の生育温度は、13~50℃であることが好ましく、15~35℃であることがより好ましい。前記温度がこのような範囲内であることで、真菌の生育度がより向上する。
【0054】
真菌を生育させる時間は、真菌の種類、真菌の生育温度、培地の態様(固形状又は液状)等に応じて、適宜選択すればよく、特に限定されない。
通常、真菌の生育時間(日数)は、3~40日間であることが好ましく、4~20日間であることがより好ましい。真菌の生育時間が前記下限値以上であることで、真菌の生育度がより向上する。真菌の生育時間が前記上限値以下であることで、生育時間が過剰な長さとなることが避けられる。
【0055】
前記組成物が含有するラッカーゼは、ラッカーゼ産生後の前記培地から分離して、後処理を行うことで得られたものが好ましく、さらに精製処理を行って得られたものであってもよい。このときの後処理方法及び精製方法は、公知の方法であってよい。
【0056】
ラッカーゼの酵素活性は、酵素としてラッカーゼを含有する液体(本明細書においては、「酵素液」と称することがある)を用いて、公知の方法で測定できる。
例えば、ABTS、すなわち、2,2’-アジノ-ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)ジアンモニウム塩(2,2’-Azino-bis(3-ethylbenzothiazoline-6-sulfonic acid) diammonium salt, C18H16N4S4(NH4)2)を基質として用い、ABTS水溶液と、緩衝液と、酵素液と、を用意し、これらを混合して得られた反応液を検体とする。この検体中では、ラッカーゼの酵素作用によって、ABTSが酸化されていく。ABTSの酸化物は、波長420nmでの吸光度が大きいため、ABTS水溶液は、本来は透明であるが、ラッカーゼにより酸化されると、その色が青色に変化する。混合後(換言すると反応開始後)、一定時間(例えば数分)が経過するまで、この検体について、波長420nmでの吸光度A420を継続的に測定し、A420が直線的に増大する範囲で、波長420nmでの吸光度の増加量ΔA420と、それに対応した反応時間(min)を求める。そして、下記式(i)に各数値を代入することにより、ラッカーゼの酵素活性を算出できる。式(i)中、「36」とは、波長420nmでのABTSのモル吸光係数(36000M-1・cm-1)に由来する。
[ラッカーゼの酵素活性(U/mL)]={ΔA420×[反応液量(mL)]}/{[反応時間(min)]×36×[酵素液量(mL)]} (i)
ここで、ラッカーゼの総酵素活性1Uは、上記の反応によって、1分間に1μmolのABTSを酸化する酵素量、と定義され、下記式(ii)の関係を満たす。
[ラッカーゼの総酵素活性(U)]=[ラッカーゼの酵素活性(U/mL)]×[酵素液量(mL)] (ii)
【0057】
ラッカーゼの酵素活性は、80U/mL以上であることが好ましく、110U/mL以上であることがより好ましく、例えば、140U/mL以上であってもよい。ラッカーゼの酵素活性が前記下限値以上であることで、酵素の使用量を低減しても高い消臭効果が得られるという本発明の効果が、より高くなる。また、ヒトが簡単に感じる臭気を、より容易に消すことができる。
一方、ラッカーゼの酵素活性の上限値は、特に限定されない。例えば、酵素活性が1000U/mL以下であるラッカーゼは、より容易に得られる。
【0058】
実施例で後述するように、本実施形態の組成物と、従来のラッカーゼを含有する比較用の組成物と、を調製し、このとき、これら組成物でのラッカーゼの酵素活性(U/mL)が同じとなるように調節し、悪臭成分に対する消臭効果を比較したとき、本実施形態の組成物を用いた方が、比較用の組成物を用いた場合よりも、高い消臭効果が得られる。ここで、消臭効果が高い、ということは、例えば、悪臭成分の完全な消臭に必要な時間が短いことを意味する。すなわち、本実施形態の組成物において、ラッカーゼの含有量を、比較用の組成物における従来のラッカーゼの含有量よりも少なくしても、本実施形態の組成物は比較用の組成物の場合と同等の消臭効果を示す。これは、本実施形態の組成物中のラッカーゼが、従来のラッカーゼの場合よりも少ない使用量で高い消臭効果が得られることを意味する。
【0059】
ラッカーゼとして、粉体(酵素粉体又は粗酵素粉体)を用いることができる場合には、前記組成物において、フェノール性化合物の含有量に対する、ラッカーゼ粉体の含有量の割合([組成物のラッカーゼ粉体の含有量(質量部)]/[組成物のフェノール性化合物の含有量(質量部)]×100)は、30~120質量%であることが好ましく、例えば、30~90質量%、及び30~60質量%のいずれかであってもよいし、60~120質量%、及び90~120質量%のいずれかであってもよいし、60~90質量%であってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、前記組成物の消臭効果がより高くなる。前記割合が前記上限値以下であることで、より少ないラッカーゼの含有量で、高い消臭効果が得られ。
【0060】
ラッカーゼとして、その水溶液等の、酵素液又は粗酵素液を用いる場合には、例えば、その中のラッカーゼの粉体換算量を求め、前記組成物における、フェノール性化合物の含有量に対する、ラッカーゼの粉体換算量の割合が、上述の前記組成物における、フェノール性化合物の含有量に対する、ラッカーゼ粉体の含有量の割合と同じとなるように、調節できる。
【0061】
ラッカーゼとして、その水溶液等の、酵素液又は粗酵素液を準備できた場合には、前記酵素液又は粗酵素液を、凍結乾燥又は減圧乾燥等によって、溶媒成分を除去し、ラッカーゼ粉体として、これを用いてもよい。
【0062】
前記ラッカーゼはビリルビンオキシダーゼ(EC1.3.3.5)であってもよい。ラッカーゼとしてビリルビンオキシダーゼ(EC1.3.3.5)を用いた場合には、酵素の使用量を低減しても高い消臭効果が得られるという本発明の効果が、より高くなる。
【0063】
<他の成分>
前記組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、ラッカーゼと、フェノール性化合物と、水と、のいずれにも該当しない他の成分(本明細書においては、「他の成分(2)」と称することがある)を含有していてもよい。
【0064】
前記組成物が含有する前記他の成分(2)は、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。
例えば、ラッカーゼとして、ラッカーゼ産生後の前記培地から分離して、後処理を行うことで得られたものを用いた場合には、組成物は、後処理を行ったラッカーゼ由来の夾雑物を含有していてもよい。
【0065】
前記組成物が含有する前記他の成分(2)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
【0066】
例えば、特許文献2に記載の消臭方法では、組成物として、フェノール性化合物とポリフェノールオキシダーゼに加え、さらに、塩基及び金属塩を含有するものを用いている。これに対して、本実施形態の組成物は、前記他の成分(2)としてこれら塩基及び金属塩を含有していてもよいが、含有していなくても、従来よりも少ない酵素の使用量で、高い消臭効果が得られる。これは、本実施形態で用いるラッカーゼの酵素活性が、先の説明のとおり高いからである。
【0067】
前記組成物において、前記組成物の総質量に対する、ラッカーゼ、フェノール性化合物及び水の合計含有量の割合([組成物のラッカーゼ、フェノール性化合物及び水の合計含有量(質量部)]/[組成物の総質量(質量部)]×100)は、80質量%以上であることが好ましく、例えば、90質量%以上、95質量%以上、97質量%以上及び99質量%以上のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、より少ない組成物の使用量で、高い消臭効果が得られる。
一方、前記割合は100質量%以下である。
換言すると、前記組成物において、前記組成物の総質量に対する、前記他の成分(2)の含有量の割合([組成物の前記他の成分(2)の含有量(質量部)]/[組成物の総質量(質量部)]×100)は、20質量%以下であることが好ましく、例えば、10質量%以下、5質量%以下、3質量%以下及び1質量%以下のいずれかであってもよい。例えば、前記組成物において、前記組成物の総質量に対する、前記塩基及び金属塩の合計含有量の割合([組成物の前記塩基及び金属塩の合計含有量(質量部)]/[組成物の総質量(質量部)]×100)が、1質量%以下である前記組成物は、特に好ましい。
【0068】
<<組成物の製造方法>>
前記組成物は、ラッカーゼと、フェノール性化合物と、必要に応じて、水及び前記他の成分(2)のいずれか一方又は両方と、を配合することで、製造できる。
各成分の配合後は、得られたものをそのまま前記組成物としてもよいし、必要に応じて引き続き公知の後処理操作又は精製操作を行って得られたものを前記組成物としてもよい。
【0069】
前記組成物の製造時には、ラッカーゼは、ラッカーゼ産生後の前記培地から分離して、後処理を行うことで得られた後処理物の状態で配合することが好ましく、前記後処理物をさらに精製処理することで得られた精製物の状態で配合してもよい。
前記後処理物中のラッカーゼ以外の成分は、前記他の成分(2)である。
本実施形態においては、前記後処理物が液状である場合には、この後処理物を「粗酵素液」と称することがある。
【0070】
フェノール性化合物としてコーヒー豆抽出成分を配合する場合には、コーヒー豆抽出成分とこれ以外の成分を含有する原料組成物として、コーヒー豆抽出物を配合してもよい。
同様に、フェノール性化合物として葡萄種子抽出成分を配合する場合には、葡萄種子抽出成分とこれ以外の成分を含有する原料組成物として、葡萄種子抽出物を配合してもよい。
同様に、フェノール性化合物として緑茶エキス含有成分を配合する場合には、緑茶エキス含有成分とこれ以外の成分を含有する原料組成物として、緑茶エキスを配合してもよい。
【0071】
各成分の配合順序は、特に限定されない。各成分の好ましい配合方法の一例としては、水を用いる場合には、フェノール性化合物に、水と、必要に応じて前記他の成分(2)と、を添加して混合し、得られた混合物に、ラッカーゼと、必要に応じて前記他の成分(2)と、を添加して混合する配合方法が挙げられる。
【0072】
各成分の配合時の温度は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、例えば、5~35℃であってよい。
各成分の配合時間も、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、各配合成分が均一に混和するように適宜調節すればよい。
【0073】
<<悪臭成分の消臭方法(組成物の使用方法)>>
本実施形態の組成物を、悪臭成分と接触させることにより、前記悪臭成分を消臭できる。
悪臭成分を消臭するために、前記組成物を接触させる対象物は、悪臭成分のみからなるものであってもよいし、悪臭成分と、それ以外の他の成分(本明細書においては、「他の成分(3)」と称することがある)と、の混合物であってもよく、液状、気体状及び固形状のいずれであってもよい。
特に、組成物が液状である場合には、消臭対象物の状態が液状、気体状及び固形状のいずれであっても、高い消臭効果が得られる。
【0074】
消臭時の前記組成物の使用量は、組成物中の前記ラッカーゼと、前記フェノール性化合物と、の量が、目的とする消臭度を達成できる量であれば、特に限定されない。ただし、前記組成物中のラッカーゼは、他のラッカーゼよりも、その酵素活性が高いため、従来よりも少ないラッカーゼの量となる組成物の使用量で、高い消臭効果が得られる。
【0075】
消臭時には、前記組成物の水の含有の有無によらず、前記他の成分(3)として水を用い、水の共存下で、前記組成物を悪臭成分と接触させることが好ましい。このように水の共存下で消臭を行うことで、先に説明したラッカーゼのフェノール性化合物への作用、並びに、この作用により生じたフェノール性化合物の活性種と、悪臭成分と、の反応が、より円滑に進行し、悪臭成分がより速く消臭される。これは、水を用いることで、消臭時に用いる各種原料又は反応中間体の溶解性が高くなるからであると推測される。
【0076】
水の共存下で、前記組成物を悪臭成分と接触させる場合には、水と悪臭成分が予め混在している混合物を用いてもよい。
前記混合物は、例えば、水溶液と、水分散体等の液状の含水物と、固形状の含水物と、のいずれであってもよい。前記水溶液は、例えば、尿等の体液であってもよい。
【0077】
消臭時における、前記組成物中の水と、前記他の成分(3)としての水と、の合計量は、フェノール性化合物に対して500~3000質量倍であることが好ましく、700~2100質量倍であることがより好ましい。前記水の合計量が前記下限値以上であることで、水を用いたことにより得られる効果が、より高くなる。前記水の合計量が前記上限値以下であることで、水の過剰使用が抑制される。
【実施例0078】
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
【0079】
<<含硫黄化合物の濃度の測定(比較試験)>>
[試験例1]
蒸留水(20mL)に、濃度が15質量%のメチルメルカプタンナトリウム水溶液(東京化成工業社製)(5μL)を添加し、撹拌することで、メチルメルカプタンナトリウム希釈水溶液を得た。ここで得られたメチルメルカプタンナトリウム希釈水溶液を用いて、これから生じたガス中の悪臭成分の濃度の測定値を、後述の測定方法で測定し、その測定値が約8ppmとなることを事前に確認しておいた。
【0080】
バイアル瓶(容量50mL)に、蒸留水(1800μL)と、メチルメルカプタンナトリウム希釈水溶液(200μL)を加え、パラフィルムを用いてバイアル瓶の開口部を塞ぎ、この状態で、20℃の温度条件下でバイアル瓶の内容物を撹拌した。そして、撹拌開始から5分後、10分後及び30分後にそれぞれ、バイアル瓶の内部のヘッドスペース領域中のガスを、ガス検知管(ガステック社製)に通し、ガス中の悪臭成分である含硫黄化合物の濃度を測定した。結果を表1に示す。
【0081】
[試験例2]
蒸留水(20mL)に、濃度が15質量%のメチルメルカプタンナトリウム水溶液(東京化成工業社製)(30μL)を添加し、撹拌することで、メチルメルカプタンナトリウム希釈水溶液を得た。ここで得られたメチルメルカプタンナトリウム希釈水溶液を用いて、これから生じたガス中の悪臭成分の濃度の測定値を、後述の測定方法で測定し、その測定値が約30ppmとなることを事前に確認しておいた。
【0082】
試験例2で作製したメチルメルカプタンナトリウム希釈水溶液を用いた点以外は、試験例1の場合と同じ方法で測定し、評価した。結果を表1に示す。
【0083】
[試験例3]
1Lテドラーバッグに、濃度が15質量%のメチルメルカプタンナトリウム水溶液(東京化成工業社製)(5μL)を入れキャップで開口部を塞ぎ、窒素ガスで容器内を満たした。
次いで40℃の温度条件下で2時間静置し、メチルメルカプタンガスを生じさせた。ガス中の悪臭成分の濃度の測定値を、開始から30分後、60分後及び120分後にそれぞれ後述の測定方法で測定し、その測定値が80ppmとなることを事前に確認しておいた。
【0084】
蒸留水(4mL)を加え、キャップで開口部を塞ぎ、20℃の温度条件下でよく振って混合し静置した。そして、30分後にガス検知管(ガステック社製)に通し、ガス中の悪臭成分である含硫黄化合物の濃度を測定した。結果を表1に示す。
【0085】
[実施例1]
<<組成物の製造>>
<培地の製造>
濃度が2質量%のTEMPO酸化CNFの水分散体(250g)を容量300mLのビーカー内に量り取り、前記水分散体をビーカーごと121℃で1時間オートクレーブすることで、滅菌処理した。
【0086】
濃度が10g/Lのペプトン、濃度が1.0g/Lの酵母エキス、濃度が1.0g/Lのリン酸二水素カリウム水溶液、濃度が0.25g/Lのリン酸水素二ナトリウム十二水和物水溶液、濃度が13.2mg/Lの塩化カルシウム二水和物水溶液、濃度が1.08mg/Lの硫酸マンガン(II)五水和物水溶液、濃度が1.0mg/Lの硫酸亜鉛七水和物水溶液、濃度が2.0mg/Lの硫酸銅(II)五水和物水溶液、濃度が0.1g/Lの硫酸鉄(II)七水和物水溶液、濃度が0.5g/Lの硫酸マグネシウム七水和物水溶液、及び濃度が5.0g/LのTEMPO酸化CNFの水分散体を混合し、さらに蒸留水を添加することで、全体の液量を50mLに調節した。
次いで、得られた水溶液のpHを6.00に調節することにより、TEMPO酸化CNFを含有する培地を得た。
【0087】
上記で得られた培地(50mL)中での、各成分の量は以下のとおりである。
ペプトン0.5g、酵母エキス0.05g、リン酸二水素カリウム0.05g、リン酸水素二ナトリウム十二水和物0.0125g、塩化カルシウム二水和物0.66mg、硫酸マンガン(II)五水和物0.054mg、硫酸亜鉛七水和物0.05mg、硫酸銅(II)五水和物0.1mg、硫酸鉄(II)七水和物0.005g、硫酸マグネシウム七水和物0.025g、TEMPO酸化CNF0.25g
【0088】
<ラッカーゼの製造>
[培地の滅菌処理]
上記で得られた培地を、121℃で20分オートクレーブ滅菌することにより、滅菌済みの本培養培地を得た。
【0089】
[ラッカーゼの製造(真菌の培養)]
〇PDA培地の作製
ポテトデキストロース寒天(PDA)(15.6g)に蒸留水を添加して全量を400mLとすることで、培地を作製した。
この培地をビーカー内に移し、アルミホイルでビーカーの開口部に蓋をした。
次いで、この培地をビーカーごと121℃で20分オートクレーブすることで、滅菌処理した。ビーカーを、その温度を80℃まで下げてからクリーンベンチ内に移し、クリーンベンチ内で、ビーカー内の培地をシャーレに分注した。
次いで、クリーンベンチ内で培地が固まるまでシャーレを静置することで、PDA培地を得た。このPDA培地は、シャーレの開口部をパラフィルムで塞いだ状態とし、常温下で静置保管した。
【0090】
〇真菌の前々培養
上記で得られたPDA培地を用いて、あらかじめ培養し、保存しておいた真菌:プレウロタス オストレアタス(Pleurotus ostreatus) NBRC 104981株を、滅菌済みストローを用いて培地ごとくり抜いて取り出し(直径7mm)、滅菌済みループを用いて、別のシャーレ内のPDA培地の中心に植菌した。ここで用いた真菌は、ヒラタケの子実体を形成する前の種菌であり、独立行政法人製品評価技術基盤機構バイオテクノロジーセンターより分譲可能である。
次いで、シャーレの開口部をサージカルテープで塞いだ状態とし、26℃の温度条件下で、前記シャーレ内で前記真菌を7日間静置培養することで、前々培養物を得た。
【0091】
〇MYG培地の作製
麦芽エキス(0.5g)、酵母エキス(0.2g)及びグルコース(0.2g)に蒸留水を添加して全量を50mLとすることで培地を作製した。
この培地を、容量250mLの三角フラスコ内に注ぎ、シリコ栓(シリコーンゴム素材を用いた培養栓)で三角フラスコの開口部を塞いだ。
次いで、この培地を三角フラスコごと121℃で20分オートクレーブして、滅菌処理することにより、MYG培地を得た。
【0092】
〇真菌の前培養
上記で得られた前々培養物を、滅菌済みストローを用いてPDA培地ごとくり抜いて取り出し、滅菌済みループを用いて、三角フラスコ内のMYG培地に植菌した。
次いで、シリコ栓で三角フラスコの開口部を再び塞ぎ、26℃の温度条件下で回転数を100rpmとして、前記フラスコ内で前記真菌を7日間振とう培養した。
次いで、クリーンベンチ内において、ハンディホモジナイザーを用いて分散させ、新しく作製したMYG培地に植菌し、7日間振とう培養することで、前培養物を得た。
【0093】
〇ラッカーゼの製造(真菌の本培養)
クリーンベンチ内において、上記で得られた前培養物の全量を、滅菌済みチューブ内に移し、ハンディホモジナイザーを用いて、前記チューブ内で前培養物を分散させた。
次いで、前記チューブ内の前培養物を、遠心力8000G、温度4℃の条件で10分遠心分離し、上清を取り除いた。
次いで、前記チューブ内の沈殿物に、適量の蒸留水を注ぎ、前記チューブの開口部を滅菌済みの蓋で塞いだ。そして、前記チューブ内の内容物を振り混ぜて懸濁液とし、この懸濁液を、遠心力8000G、温度4℃の条件で10分遠心分離し、上清を取り除いた。
さらに、前記チューブ内の沈殿物に、蒸留水を注ぎ、懸濁液とし、遠心分離して、上清を取り除くことを繰り返し、このプロセスを合計で2回行うことで、前記沈殿物を洗浄した。
【0094】
次いで、前記チューブ内の沈殿物に、適量の滅菌水を注ぎ、ハンディホモジナイザーを用いて、沈殿物を滅菌水に分散させた。得られた分散液(1mL)を、先に製造した、三角フラスコ内の液状の培地(本培養培地)に植菌し、シリコ栓で三角フラスコの開口部を再び塞いだ。なお、このとき植菌した、湿潤状態の前記沈殿物の質量は、約0.25gであった。
次いで、26℃の温度条件下で回転数を100rpmとして、前記三角フラスコ内で前記真菌を振とう培養することで、真菌の本培養を行い、ラッカーゼを製造した。振とう培養は10日間行った。
【0095】
<ラッカーゼの評価>
[粗酵素液の調製]
10日間培養後の前記培地から上清を取り出し、これにベントナイトを添加し、得られた混合物を4℃で30分間撹拌した。ベントナイトの添加量は、上清の質量に対して、5質量%とした。
撹拌後の前記混合物から、さらに上清を取り出し、これに硫酸アンモニウムを添加する(塩析を行う)ことで、沈殿物を得た。硫酸アンモニウムの添加量は、硫酸アンモニウムの濃度が、その飽和濃度の70%となるように調節した。
次いで、沈殿物を回収し、これに濃度が50mMのリン酸ナトリウム緩衝液(10mL)を添加して、懸濁させることで、粗酵素液を得た。
【0096】
[ラッカーゼの酵素活性の測定]
濃度が50mMであるクエン酸ナトリウム緩衝液(pH3.0)に、基質としてABTSを添加し、溶解させることにより、ABTSの濃度が10mMであるABTS溶液を調製した。
前記ABTS溶液(100μL)と、濃度が50mMであるクエン酸ナトリウム緩衝液(pH3.0)(2840μL)と、を混合し、得られた混合液を40℃の温度で保温した。
次いで、上記で得られた粗酵素液(60μL)を、この保温している混合液に添加し、反応液(3mL)を得た。
【0097】
この反応液について、波長420nmで1分間、吸光度を測定した。そして、波長420nmでの吸光度の増加量ΔA420と、前記反応時間(min)を求め、前記式(i)により、ラッカーゼの酵素活性(U/mL)を求めたところ、140U/mLであった。
【0098】
上記で得られた粗酵素液を精製し、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS PAGE)法で分離した目的物を、液体クロマトグラフ質量分析法(LC/MS/MS)で分析することにより、粗酵素液中のラッカーゼがビリルビンオキシダーゼ(EC1.3.3.5)であることを特定した。
【0099】
<粗酵素粉体の調製>
上記で得られたラッカーゼの粗酵素液を、凍結乾燥させることで、ラッカーゼを含む粗酵素粉体を得た。
【0100】
<組成物の製造>
常温下で、タンニン酸(1mg)(富士フイルム和光純薬社製、カタログNo.205-06335)に、上記で得られた粗酵素液(130μL)を添加し、撹拌することで、組成物を得た。
【0101】
先に求めた、粗酵素液でのラッカーゼの酵素活性(140U/mL)から、ここで得られた組成物でのラッカーゼの酵素活性を求めると、18(=140×130/1000)Uであった。
【0102】
<<組成物の評価>>
<消臭性能の評価>
試験例1の場合と同じ方法で、メチルメルカプタンナトリウム希釈水溶液を調製した。
以降、蒸留水(1800μL)に代えて、蒸留水(1.67mL)と、上記で得られた組成物の全量と、を加えた点以外は、試験例1の場合と同じ方法で、バイアル瓶の内部のヘッドスペース領域中のガスについて、その中の悪臭成分である含硫黄化合物の濃度を測定した。すなわち、バイアル瓶(容量50mL)に、上記で得られた組成物の全量と、メチルメルカプタンナトリウム希釈水溶液(200μL)を加え、パラフィルムを用いてバイアル瓶の開口部を塞ぎ、この状態で、20℃の温度条件下でバイアル瓶の内容物を撹拌した。そして、撹拌開始から5分後、10分後及び30分後にそれぞれ、バイアル瓶の内部のヘッドスペース領域中のガスを、ガス検知管(ガステック社製)に通し、ガス中の悪臭成分である含硫黄化合物の濃度を測定した。
【0103】
そして、下記式(iii)により、悪臭成分の消臭率を算出した。結果を表1に示す。
[悪臭成分の消臭率(%)]=100×{1-[組成物を用いた場合のガス中の含硫黄化合物の濃度の測定値]/[組成物を用いなかった場合のガス中の含硫黄化合物の濃度の測定値]} (iii)
前記式(iii)中、「組成物を用いた場合のガス中の含硫黄化合物の濃度の測定値」とは、ここでは本実施例での含硫黄化合物の濃度の測定値であり、「組成物を用いなかった場合のガス中の含硫黄化合物の濃度の測定値」とは、試験例1での含硫黄化合物の濃度の測定値である。
【0104】
<<組成物の製造及び評価>>
[実施例2]
タンニン酸(1mg)に代えて(+)-カテキン(Sigma Aldrich社製、カタログNo.PHR1963)(1mg)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、組成物を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0105】
[実施例3]
タンニン酸(1mg)に代えてフェルラ酸(Sigma Aldrich社製、カタログNo.128708)(1mg)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、組成物を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0106】
[実施例4]
タンニン酸(1mg)に代えてリグニンスルホン酸カルシウム(Sigma Aldrich社製、カタログNo.471054)(1mg)を用いた点と、蒸留水の添加量を1.67mLに代えて1.8mLとした点と、前記粗酵素液(130μL)を添加するのに代えて、前記粗酵素粉体(3mg)を添加した点、以外は、実施例1の場合と同じ方法で、組成物を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0107】
[実施例5]
タンニン酸(1mg)に代えて(+)-カテキン(Sigma Aldrich社製、カタログNo.PHR1963)(1mg)を用いた点と、蒸留水の添加量を1.67mLに代えて1.8mLとした点と、前記粗酵素液(130μL)を添加するのに代えて、前記粗酵素粉体(1mg)を添加した点、以外は、実施例1の場合と同じ方法で、組成物を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0108】
[実施例6]
タンニン酸(1mg)に代えてリグニンスルホン酸カルシウム(Sigma Aldrich社製、カタログNo.471054)(1mg)を用いた点と、蒸留水の添加量を1.67mLに代えて1.73mLとした点と、前記粗酵素液の添加量を130μLに代えて70μLとした点、以外は、実施例1の場合と同じ方法で、組成物を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0109】
[実施例7]
タンニン酸(1mg)に代えて(+)-カテキン(Sigma Aldrich社製、カタログNo.PHR1963)(1mg)を用いた点と、蒸留水の添加量を1.67mLに代えて1.8mLとした点と、前記粗酵素液(130μL)を添加するのに代えて、前記粗酵素粉体(0.5mg)を添加した点、以外は、実施例1の場合と同じ方法で、組成物を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0110】
[実施例8]
TEMPO酸化CNFを含有する培地として、ペプトン、酵母エキス及び金属塩に代えて、米ぬかを添加して得られた培地を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法でラッカーゼを製造し、このラッカーゼを用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で組成物を製造し、評価した。
より具体的には、米ぬか(36g)、滅菌処理済みのTEMPO酸化CNFの水分散体(60g)、及び蒸留水(1104mL)を混合し、ここに濃度が1Mの塩酸を添加することで、TEMPO酸化CNFを含有するpH6の液状の培地(1200mL)を得た。
この培地において、培地の総質量に対する、TEMPO酸化CNFの含有量の割合は、0.1質量%であり、培地の総質量に対する、米ぬかの含有量の割合は、3質量%であった。
以降、この培地を、実施例1の場合と同じ方法で、滅菌処理し、静置して室温まで放冷することで滅菌済みの本培養培地を得た。
【0111】
さらに、実施例1の場合と同じ方法で、PDA培地の作製及び真菌の前々培養を行った。
【0112】
麦芽エキス(2.0g)、酵母エキス(0.8g)及びグルコース(0.8g)に蒸留水を添加して全量を200mLとすることで培地を作製した。
この培地を、容量500mLの三角フラスコ内に注ぎ、シリコ栓で三角フラスコの開口部を塞いだ。
次いで、この培地を三角フラスコごと121℃で20分オートクレーブして、滅菌処理することにより、MYG培地を得た。
【0113】
実施例1の場合と同じ方法で、真菌の前培養を行った。
【0114】
クリーンベンチ内において、上記で得られた前培養物を、ハンディホモジナイザーを用いて分散させた。前記滅菌済み培地が入った容量2000mLのジャーファーメンターに前記前培養物の全量を植菌した。
次いで、26℃の温度条件下で回転数を250rpmとして、前記ジャーファーメンター内でスパージャーから空気を供給しながら前記真菌を培養することで、真菌の本培養を行い、ラッカーゼを製造した。培養は3日間行った。
【0115】
濃度が50mMのリン酸ナトリウム緩衝液の使用量を、10mLに代えて160mLとした点以外は、実施例1の場合と同じ方法で粗酵素液を得た。この粗酵素液のラッカーゼの酵素活性(U/mL)を、実施例1の場合と同じ方法で求めたところ、140U/mLであった。
【0116】
タンニン酸(1mg)に代えて没食子酸(MP五協フード&ケミカル社製)(1mg)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、組成物を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0117】
[実施例9]
没食子酸(1mg)に代えてピロガロール(MP五協フード&ケミカル社製)(1mg)を用いた点以外は、実施例8の場合と同じ方法で、組成物を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0118】
[実施例10]
没食子酸(1mg)に代えてフェルラ酸(Sigma Aldrich社製、カタログNo.128708)(1mg)を用いた点以外は、実施例8の場合と同じ方法で、組成物を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0119】
[実施例11]
試験例1で作製したメチルメルカプタンナトリウム希釈水溶液に代えて、試験例2で作製したメチルメルカプタンナトリウム希釈水溶液を用いた点と、没食子酸(1mg)に代えてタンニン酸(MP五協フード&ケミカル社製)(1mg)を用いた点と、蒸留水の添加量を1.67mLに代えて1.70mLとした点と、前記粗酵素液の添加量を130μLに代えて100μLとした点、以外は、実施例8の場合と同じ方法で、組成物を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0120】
[実施例12]
タンニン酸(1mg)に代えて(+)-カテキン(Sigma Aldrich社製、カタログNo.PHR1963)(1mg)を用いた点以外は、実施例11の場合と同じ方法で、組成物を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0121】
[実施例13]
タンニン酸(1mg)に代えてカテキン混合物(富士フイルム和光純薬社製、カタログNo.032-18231)(1mg)を用いた点以外は、実施例11の場合と同じ方法で、組成物を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0122】
[実施例14]
タンニン酸(1mg)に代えてコーヒー豆抽出成分(富士化学工業社製)(1mg)を用いた点以外は、実施例11の場合と同じ方法で、組成物を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0123】
[実施例15]
タンニン酸(1mg)に代えて葡萄種子抽出成分(青雲山薬業社製)(1mg)を用いた点以外は、実施例11の場合と同じ方法で、組成物を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0124】
[実施例16]
タンニン酸(1mg)に代えて緑茶エキス含有成分(太陽化学社製)(1mg)を用いた点以外は、実施例11の場合と同じ方法で、組成物を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0125】
[実施例17]
タンニン酸(1mg)に代えて没食子酸プロピル(MP五協フード&ケミカル社製)(1mg)を用いた点以外は、実施例11の場合と同じ方法で、組成物を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0126】
[実施例18]
タンニン酸(1mg)に代えてピロガロール(MP五協フード&ケミカル社製)(1mg)を用いた点以外は、実施例11の場合と同じ方法で、組成物を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0127】
[実施例19]
試験例1で作製したメチルメルカプタンナトリウム希釈水溶液に代えて、試験例2で作製したメチルメルカプタンナトリウム希釈水溶液を用いた点と、蒸留水の添加量を1.67mLに代えて1.70mLとした点と、前記粗酵素液の添加量を130μLに代えて100μLとした点、以外は、実施例8の場合と同じ方法で、組成物を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0128】
[実施例20]
試験例1で作製したメチルメルカプタンナトリウム希釈水溶液を用いてガスを発生させるのに代えて、試験例3で用いた濃度が15質量%のメチルメルカプタンナトリウム水溶液を用いてガスを発生させた点と、没食子酸(1mg)に代えてタンニン酸(MP五協フード&ケミカル社製)(4mg)を用いた点と、蒸留水の添加量を1.67mLに代えて3.00mLとした点と、前記粗酵素液の添加量を130μLに代えて400μLとした点、以外は、実施例8の場合と同じ方法で、組成物を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0129】
[実施例21]
タンニン酸(MP五協フード&ケミカル社製)(4mg)に代えてカテキン混合物(富士フイルム和光純薬社製、カタログNo.032-18231)(4mg)を用いた点以外は、実施例20の場合と同じ方法で、組成物を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0130】
[実施例22]
タンニン酸(MP五協フード&ケミカル社製)(4mg)に代えてコーヒー豆抽出成分(富士化学工業社製)(4mg)を用いた点以外は、実施例20の場合と同じ方法で、組成物を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0131】
[実施例23]
タンニン酸(MP五協フード&ケミカル社製)(4mg)に代えて葡萄種子抽出成分(青雲山薬業社製)(4mg)を用いた点以外は、実施例20の場合と同じ方法で、組成物を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0132】
[実施例24]
タンニン酸(MP五協フード&ケミカル社製)(4mg)に代えて緑茶エキス含有成分(太陽化学社製)(4mg)を用いた点以外は、実施例20の場合と同じ方法で、組成物を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0133】
[実施例25]
タンニン酸(MP五協フード&ケミカル社製)(4mg)に代えて没食子酸プロピル(MP五協フード&ケミカル社製)(4mg)を用いた点以外は、実施例20の場合と同じ方法で、組成物を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0134】
[比較例1]
培地の製造時に、TEMPO酸化CNFに代えて、同量の機械解繊CNFを用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、組成物を製造し、評価した。結果を表3に示す。
実施例1の場合と同じ方法で、本比較例で得られたラッカーゼの酵素活性(U/mL)を求めたところ、60U/mLであった。
【0135】
[比較例2]
タンニン酸(1mg)に代えてリグニンスルホン酸カルシウム(Sigma Aldrich社製、カタログNo.471054)(1mg)を用いた点と、蒸留水の添加量を1.67mLに代えて1.8mLとした点と、前記粗酵素液に代えて市販品のラッカーゼ製剤(Sigma Aldrich社製)(3mg)を添加した点、以外は、実施例1の場合と同じ方法で、組成物を製造し、評価した。ラッカーゼ製剤の添加量は、組成物全体におけるラッカーゼの酵素活性(U/mL)が実施例6のラッカーゼの場合と同程度となるように調節した。結果を表3に示す。
【0136】
[比較例3]
試験例1で作製したメチルメルカプタンナトリウム希釈水溶液を用いてガスを発生させるのに代えて、試験例3で用いた濃度が15質量%のメチルメルカプタンナトリウム水溶液を用いてガスを発生させた点と、タンニン酸の使用量を1mgに代えて4mgとした点と、蒸留水の添加量を1.67mLに代えて4.0mLとした点と、前記粗酵素液に代えて市販品のラッカーゼ製剤(Sigma Aldrich社製)(17mg)を添加した点、以外は、実施例8の場合と同じ方法で、組成物を製造し、評価した。ラッカーゼ製剤の添加量は、組成物全体におけるラッカーゼの酵素活性(U/mL)が実施例21のラッカーゼの場合と同程度となるように調節した。結果を表3に示す。
【0137】
なお、表1~3中、「消臭率(%)」の欄の「-」との記載は、その時間においては、ガス中の含硫黄化合物の濃度を測定せず、消臭率を算出していないことを意味する。
【0138】
【0139】
【0140】
【0141】
上記結果から明らかなように、実施例1~19においては、メチルメルカプタンナトリウム希釈水溶液に前記組成物を作用させてから30分以内に、また、実施例20~25においては、メチルメルカプタンガスに前記組成物を作用させてから120分以内に、悪臭成分の消臭率が100%になっており、短時間で完全な消臭を達成できた。
実施例1~25の組成物は、ラッカーゼとフェノール性化合物を含有しており、ラッカーゼが、TEMPO酸化CNFを含有する培地を用いて、真菌を生育させることにより産生されたものであった。これら実施例においては、酵素の使用量が少ないにも関わらず、高い消臭効果が得られた。
【0142】
なかでも、実施例1~2、8~9、11~17においては、メチルメルカプタンナトリウム希釈水溶液に前記組成物を作用させてから5分の段階ですでに、悪臭成分の消臭率が100%になっており、極めて短時間で完全な消臭を達成できた。
これら実施例の組成物が含有するフェノール性化合物は、1分子あたりのフェノール性水酸基の数が3個以上であって多く、かつ低分子化合物であった。なかでも、実施例1~2、11~17の組成物が含有するフェノール性化合物は、1分子あたりのフェノール性水酸基の数が5個以上であってさらに多く、かつ低分子化合物であった。
これら実施例の中でも、特に実施例11~17においては、本培養の培地成分として米ぬかを用いており、組成物中のラッカーゼの含有量がより少ない条件で、極めて短時間で完全な消臭を達成できた。
【0143】
実施例5においても、実施例1~2、8~9、11~17の場合とほぼ同等に、極めて短時間で完全な消臭を達成できた。実施例1~2、8~9、11~17においては、ラッカーゼを粗酵素液の形態で使用しているのに対し、実施例5においては、ラッカーゼを粗酵素粉体の形態で使用しており、いずれの形態でも、組成物の消臭性能が高かった。
【0144】
実施例4と実施例6の結果からも、ラッカーゼの使用形態によらず、短時間で完全な消臭を達成できたことを確認できた。
【0145】
さらに、実施例5の場合よりも、ラッカーゼの使用量を低減した実施例7においても、短時間で完全な消臭を達成できた。
【0146】
これに対して、比較例1~2においては、メチルメルカプタンナトリウム希釈水溶液に前記組成物を作用させてから30分の段階でも、悪臭成分の消臭率が100%未満であり、消臭率が実施例1~7よりも低かった。また、比較例3においても、メチルメルカプタンガスに前記組成物を作用させてから120分の段階でも、悪臭成分の消臭率が100%未満であり、消臭率が実施例20~25よりも低かった。
比較例1においては、前記組成物を作用させてから10分の段階で、比較的消臭率が高かったが、この後の消臭率の向上が、鈍化していた。
比較例2においては、前記組成物を作用させてから同じ時間で、実施例1~7と消臭率を比較したとき、実施例1~7よりも明らかに消臭率が低かった。
比較例3においては、前記組成物を作用させてから同じ時間で、実施例20~25と消臭率を比較したとき、実施例20~25よりも明らかに消臭率が低かった。
比較例1~3の組成物が含有するラッカーゼは、TEMPO酸化CNFを含有する培地を用いて、真菌を生育させることにより産生されたものではなかった(TEMPO酸化CNFが不使用であった)。
【0147】
実施例6の組成物は、比較例2の組成物と、組成物の酵素活性(U)が同じであるにも関わらず、比較例2の組成物の場合よりも短時間で、悪臭成分を消臭できた。すなわち、実施例6の組成物において、ラッカーゼの含有量を、比較例2の組成物における従来のラッカーゼの含有量よりも少なくしても、実施例6の組成物は比較例2の組成物の場合と同等の消臭効果を示すのであり、本実施形態の組成物は、従来よりも酵素の使用量を低減しても、高い消臭効果が得られるものであった。
【0148】
同様に、実施例20の組成物は、比較例3の組成物と、組成物の酵素活性(U)が同じであるにも関わらず、比較例3の組成物の場合よりも短時間で、悪臭成分を消臭できた。すなわち、実施例20の組成物において、ラッカーゼの含有量を、比較例3の組成物における従来のラッカーゼの含有量よりも少なくしても、実施例20の組成物は比較例3の組成物の場合と同等の消臭効果を示すのであり、本実施形態の組成物は、従来よりも酵素の使用量を低減しても、高い消臭効果が得られるものであった。
【0149】
さらに、実施例1~3と、実施例6との比較、並びに、実施例4と、実施例5と、実施例7との比較から、高い消臭効果を得るために、ラッカーゼの使用量の一層の低減が可能であることを確認できた。