(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144324
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】ポリエステル系樹脂及びその製造方法、並びに粘着剤及び粘着シート
(51)【国際特許分類】
C08G 63/00 20060101AFI20241003BHJP
C09J 167/04 20060101ALI20241003BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20241003BHJP
【FI】
C08G63/00
C09J167/04
C09J7/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024050617
(22)【出願日】2024-03-27
(31)【優先権主張番号】P 2023055399
(32)【優先日】2023-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504145364
【氏名又は名称】国立大学法人群馬大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早坂 遼平
(72)【発明者】
【氏名】樫尾 幹広
(72)【発明者】
【氏名】森岡 孝至
(72)【発明者】
【氏名】橘 熊野
(72)【発明者】
【氏名】粕谷 健一
【テーマコード(参考)】
4J004
4J029
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA15
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4J029KH05
4J029KH06
4J040ED021
4J040ED081
4J040JA09
4J040JB09
4J040MA10
4J040MB09
(57)【要約】
【課題】粘着性に優れるポリエステル系樹脂及びその製造方法、並びに該ポリエステル系樹脂を用いる粘着剤及び粘着シートを提供する。
【解決手段】多価カルボン酸又はその誘導体(a)に由来する構成単位(A)と、多価ヒドロキシ化合物又はその誘導体(b)に由来する構成単位(B)と、ヒドロキシカルボン酸又はその誘導体(c)に由来する構成単位(C)と、を含有し、前記多価カルボン酸又はその誘導体(a)に由来する構成単位(A)が、オキサビシクロ環を有する多価カルボン酸又はその誘導体(a1)に由来する構成単位(A1)を含有する、ポリエステル系樹脂及びその製造方法、並びに該ポリエステル系樹脂を用いる粘着剤及び粘着シートである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多価カルボン酸又はその誘導体(a)に由来する構成単位(A)と、
多価ヒドロキシ化合物又はその誘導体(b)に由来する構成単位(B)と、
ヒドロキシカルボン酸又はその誘導体(c)に由来する構成単位(C)と、
を含有し、
前記多価カルボン酸又はその誘導体(a)に由来する構成単位(A)が、オキサビシクロ環を有する多価カルボン酸又はその誘導体(a1)に由来する構成単位(A1)を含有する、ポリエステル系樹脂。
【請求項2】
前記オキサビシクロ環を有する多価カルボン酸又はその誘導体(a1)が、7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン環を有する多価カルボン酸又はその誘導体である、請求項1に記載のポリエステル系樹脂。
【請求項3】
前記オキサビシクロ環を有する多価カルボン酸又はその誘導体(a1)に由来する構成単位(A1)の含有量が、前記ポリエステル系樹脂の全構成単位(100モル%)中、1~50モル%である、請求項1又は2に記載のポリエステル系樹脂。
【請求項4】
前記ヒドロキシカルボン酸の炭素数が、4~30である、請求項1又は2に記載のポリエステル系樹脂。
【請求項5】
前記ヒドロキシカルボン酸又はその誘導体(c)に由来する構成単位(C)の含有量が、前記ポリエステル系樹脂の全構成単位(100モル%)中、2~70モル%である、請求項1又は2に記載のポリエステル系樹脂。
【請求項6】
前記多価カルボン酸又はその誘導体(a)に由来する構成単位(A)が、さらに、オキサビシクロ環を有さない多価カルボン酸又はその誘導体(a2)に由来する構成単位(A2)を含有する、請求項1又は2に記載のポリエステル系樹脂。
【請求項7】
前記オキサビシクロ環を有さない多価カルボン酸又はその誘導体(a2)が、オキサビシクロ環を有さない脂肪族ジカルボン酸又はその誘導体である、請求項6に記載のポリエステル系樹脂。
【請求項8】
前記オキサビシクロ環を有する多価カルボン酸又はその誘導体(a1)に由来する構成単位(A1)のモル基準の含有量と、前記オキサビシクロ環を有さない多価カルボン酸又はその誘導体(a2)に由来する構成単位(A2)のモル基準の含有量と、の比[(A1)/(A2)]が、0.01~2である、請求項6に記載のポリエステル系樹脂。
【請求項9】
前記多価ヒドロキシ化合物又はその誘導体(b)が、2価のフェノール化合物又はその誘導体である、請求項1又は2に記載のポリエステル系樹脂。
【請求項10】
生分解性を有する、請求項1又は2に記載のポリエステル系樹脂。
【請求項11】
請求項1又は2に記載のポリエステル系樹脂又はその反応物を含有する粘着剤。
【請求項12】
請求項11に記載の粘着剤を含有する粘着剤層を有する粘着シート。
【請求項13】
請求項1又は2に記載のポリエステル系樹脂を製造する方法であって、
前記オキサビシクロ環を有する多価カルボン酸又はその誘導体(a1)を含有する多価カルボン酸又はその誘導体(a)と、
前記多価ヒドロキシ化合物又はその誘導体(b)と、
前記ヒドロキシカルボン酸又はその誘導体(c)と、を反応させる、ポリエステル系樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル系樹脂及びその製造方法、並びに粘着剤及び粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルは、加工性、機械特性、経済性等に優れる樹脂であり、繊維、容器、フィルム等の各種成形品;コーティング剤、インキ、接着剤、粘着剤等の各種組成物の原料等として幅広い分野で使用されている。
【0003】
ポリエステル系粘着剤は、耐熱性、機械強度等に優れるという特徴を有しており、また、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のエステル系部材と共に使用することで、製品のモノマテリアル化(単一素材化)を図ることができるため、リサイクル適性にも優れる。
【0004】
特許文献1には、少なくとも、ジカルボン酸成分と、ジオール成分とを重縮合して得られるポリエステルと、粘着付与剤とを含有するポリエステル系粘着剤組成物より形成されるポリエステル系粘着剤層であって、前記ジカルボン酸成分に含まれるカルボキシ基1モルに対して、前記ジオール成分に含まれる水酸基が、1.04~2.10モルであり、前記粘着剤層のゲル分率が、15重量%以上40重量%未満であることを特徴とするポリエステル系粘着剤層が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術のように、ポリエステル系粘着剤の実用性を高めるための種々の検討が行われているが、ポリエステルはアクリル系粘着剤と比べると粘着性を発現し難いという問題があり、そのためポリエステル系粘着剤を適用できる用途は限定的であった。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、粘着性に優れるポリエステル系樹脂及びその製造方法、並びに該ポリエステル系樹脂を用いる粘着剤及び粘着シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、ポリエステル系樹脂の原料として特定の化合物を使用することで、得られるポリエステル系樹脂が優れた粘着性を発現することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記[1]~[13]に関する。
[1]多価カルボン酸又はその誘導体(a)に由来する構成単位(A)と、
多価ヒドロキシ化合物又はその誘導体(b)に由来する構成単位(B)と、
ヒドロキシカルボン酸又はその誘導体(c)に由来する構成単位(C)と、
を含有し、
前記多価カルボン酸又はその誘導体(a)に由来する構成単位(A)が、オキサビシクロ環を有する多価カルボン酸又はその誘導体(a1)に由来する構成単位(A1)を含有する、ポリエステル系樹脂。
[2]前記オキサビシクロ環を有する多価カルボン酸又はその誘導体(a1)が、7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン環を有する多価カルボン酸又はその誘導体である、上記[1]に記載のポリエステル系樹脂。
[3]前記オキサビシクロ環を有する多価カルボン酸又はその誘導体(a1)に由来する構成単位(A1)の含有量が、前記ポリエステル系樹脂の全構成単位(100モル%)中、1~50モル%である、上記[1]又は[2]に記載のポリエステル系樹脂。
[4]前記ヒドロキシカルボン酸の炭素数が、4~30である、上記[1]~[3]のいずれかに記載のポリエステル系樹脂。
[5]前記ヒドロキシカルボン酸又はその誘導体(c)に由来する構成単位(C)の含有量が、前記ポリエステル系樹脂の全構成単位(100モル%)中、2~70モル%である、上記[1]~[4]のいずれかに記載のポリエステル系樹脂。
[6]前記多価カルボン酸又はその誘導体(a)に由来する構成単位(A)が、さらに、オキサビシクロ環を有さない多価カルボン酸又はその誘導体(a2)に由来する構成単位(A2)を含有する、上記[1]~[5]のいずれかに記載のポリエステル系樹脂。
[7]前記オキサビシクロ環を有さない多価カルボン酸又はその誘導体(a2)が、オキサビシクロ環を有さない脂肪族ジカルボン酸又はその誘導体である、上記[6]に記載のポリエステル系樹脂。
[8]前記オキサビシクロ環を有する多価カルボン酸又はその誘導体(a1)に由来する構成単位(A1)のモル基準の含有量と、前記オキサビシクロ環を有さない多価カルボン酸又はその誘導体(a2)に由来する構成単位(A2)のモル基準の含有量と、の比[(A1)/(A2)]が、0.01~2である、上記[6]又は[7]に記載のポリエステル系樹脂。
[9]前記多価ヒドロキシ化合物又はその誘導体(b)が、2価のアルコール化合物又はその誘導体である、上記[1]~[8]のいずれかに記載のポリエステル系樹脂。
[10]生分解性を有する、上記[1]~[9]のいずれかに記載のポリエステル系樹脂。
[11]上記[1]~[10]のいずれかに記載のポリエステル系樹脂又はその反応物を含有する粘着剤。
[12]上記[11]に記載の粘着剤を含有する粘着剤層を有する粘着シート。
[13]上記[1]~[10]のいずれかに記載のポリエステル系樹脂を製造する方法であって、
前記オキサビシクロ環を有する多価カルボン酸又はその誘導体(a1)を含有する多価カルボン酸又はその誘導体(a)と、
前記多価ヒドロキシ化合物又はその誘導体(b)と、
前記ヒドロキシカルボン酸又はその誘導体(c)と、を反応させる、ポリエステル系樹脂の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、粘着性に優れるポリエステル系樹脂及びその製造方法、並びに該ポリエステル系樹脂を用いる粘着剤及び粘着シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態の粘着シートの構成の一例を示す模式的断面図である。
【
図2】本実施形態の粘着シートの構成の別の例を示す模式的断面図である。
【
図3】本実施形態の粘着シートの構成の別の例を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、数平均分子量(Mn)及び質量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される標準ポリスチレン換算の値であり、具体的には実施例に記載の方法に基づいて測定した値である。
【0012】
本明細書において、好ましい数値範囲(例えば、含有量等の範囲)について、段階的に記載された下限値及び上限値は、それぞれ独立して組み合わせることができる。例えば、「好ましくは10~90、より好ましくは30~60」という記載から、「好ましい下限値(10)」と「より好ましい上限値(60)」とを組み合わせて、「10~60」とすることもできる。
【0013】
本明細書中、「バイオマス」とは、再生可能な、生物由来の有機性資源であって、化石資源を除いたものを意味する。
【0014】
本明細書に記載されている作用機序は推測であって、本発明の効果を奏する機序を限定するものではない。
【0015】
[ポリエステル系樹脂]
本実施形態のポリエステル系樹脂は、
多価カルボン酸又はその誘導体(a)に由来する構成単位(A)と、
多価ヒドロキシ化合物又はその誘導体(b)に由来する構成単位(B)と、
ヒドロキシカルボン酸又はその誘導体(c)に由来する構成単位(C)と、
を含有し、
前記多価カルボン酸又はその誘導体(a)に由来する構成単位(A)が、オキサビシクロ環を有する多価カルボン酸又はその誘導体(a1)に由来する構成単位(A1)を含有する、ポリエステル系樹脂である。
【0016】
本実施形態のポリエステル系樹脂が粘着性に優れる理由は定かではないが、次のように推定される。
本実施形態のポリエステル系樹脂は、嵩高いオキサビシクロ環を含む構成単位(A1)を有するため、分子鎖同士のパッキングが抑制された構造を有すると考えられる。このように結晶性が低く維持される状態において、さらに、ヒドロキシカルボン酸又はその誘導体(c)に由来する構成単位(C)が導入されることによって、分子鎖の柔軟性が効果的に高まり、粘着性が向上したものと推定される。
【0017】
以下、本実施形態のポリエステル系樹脂を構成する各構成単位及びその原料について説明する。
【0018】
<多価カルボン酸又はその誘導体(a)に由来する構成単位(A)>
構成単位(A)は、多価カルボン酸又はその誘導体(a)に由来する構成単位であって、オキサビシクロ環を有する多価カルボン酸又はその誘導体(a1)に由来する構成単位(A1)を含有する。
構成単位(A)は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
【0019】
(オキサビシクロ環を有する多価カルボン酸又はその誘導体(a1)に由来する構成単位(A1))
構成単位(A1)は、オキサビシクロ環を有する多価カルボン酸又はその誘導体(a1)に由来する構成単位である。
構成単位(A1)は、後述する構成単位(C)と共に本実施形態のポリエステル系樹脂の粘着性の向上に寄与する。
構成単位(A1)は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
【0020】
〔オキサビシクロ環を有する多価カルボン酸又はその誘導体(a1)〕
(a1)成分は、オキサビシクロ環を有する多価カルボン酸又はその誘導体である。
以下、(a1)成分としてのオキサビシクロ環を有する多価カルボン酸を、オキサビシクロ環を有する多価カルボン酸(a1-1)と称する。
【0021】
≪オキサビシクロ環を有する多価カルボン酸(a1-1)≫
(a1-1)成分が有するオキサビシクロ環とは、2つの環が炭素-炭素結合を共有している二環式構造であって、少なくともいずれかの環が環形成原子として酸素原子を含む構造である。なお、ここでの「環形成原子」には、環を形成している原子に結合している水素原子、置換基等は含めないものとする。また、酸無水物基によって形成される環は、オキサビシクロ環を構成する環に含めないものとする。
【0022】
オキサビシクロ環の環形成原子数は、特に限定されないが、好ましくは5~12、より好ましくは6~9、さらに好ましくは7又は8、特に好ましくは7である。
オキサビシクロ環に含有される酸素原子の数は、特に限定されないが、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2、さらに好ましくは1である。
オキサビシクロ環の環形成原子は、炭素原子及び酸素原子以外の原子を含んでいてもよいが、炭素原子及び酸素原子のみから構成されることが好ましい。
オキサビシクロ環には、カルボキシ基、カルボキシ基に由来する基、カルボキシ基又はカルボキシ基に由来する基を含む基が結合するが、オキサビシクロ環は、これら以外の置換基を有していてもよく、有していなくてもよい。
【0023】
オキサビシクロ環としては、例えば、2-オキサビシクロ[3.1.0]ヘキサン環、2-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン環、3-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン環、7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン環、1,4-ジメチル-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン環、7-オキサビシクロ[2.2.1]へプト-5-エン環、7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン環、2-オキサビシクロ[2.2.2]オクタン環、3,5,8-トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタン環等が挙げられる。これらの中でも、ポリエステル系樹脂の粘着性の観点から、7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン環が好ましい。すなわち、(a1)成分は、7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン環を有する多価カルボン酸又はその誘導体であることが好ましい。
【0024】
オキサビシクロ環を有する多価カルボン酸は、オキサビシクロ環に直接2個以上のカルボキシ基が結合している構造を有するものが好ましく、オキサビシクロ環に直接2個のカルボキシ基が結合している構造を有するものがより好ましい。
【0025】
(a1-1)成分が有するカルボキシ基の数は、2個以上であれば特に限定されないが、ポリエステル系樹脂の製造時におけるゲル化抑制の観点から、好ましくは2個又は3個、より好ましくは2個である。
【0026】
(a1-1)成分としては、例えば、7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸、1,4-ジメチル-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸、7-オキサビシクロ[2.2.1]へプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸等が挙げられる。これらの中でも、7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸が好ましい。
【0027】
≪オキサビシクロ環を有する多価カルボン酸(a1-1)の誘導体≫
(a1-1)成分の誘導体としては、例えば、(a1-1)成分の酸無水物、(a1-1)成分のハロゲン化物、(a1-1)成分の金属塩、(a1-1)成分のカルボキシ基をエステル化した化合物等が挙げられる。これらの中でも、(a1-1)成分の酸無水物が好ましく、7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸無水物がより好ましい。
【0028】
〔構成単位(A1)の含有量〕
本実施形態のポリエステル系樹脂中における構成単位(A1)の含有量は、特に限定されないが、ポリエステル系樹脂の粘着性及び凝集力の観点から、本実施形態のポリエステル系樹脂の全構成単位(100モル%)中、好ましくは1~50モル%、より好ましくは2~30モル%、さらに好ましくは3~25モル%である。
なお、ポリエステル系樹脂中における各構成単位の含有量は、1H-NMRによって測定することができ、具体的には、実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0029】
(オキサビシクロ環を有さない多価カルボン酸又はその誘導体(a2)に由来する構成単位(A2))
構成単位(A)は、さらに、オキサビシクロ環を有さない多価カルボン酸又はその誘導体(a2)に由来する構成単位(A2)を含有することが好ましい。
本実施形態のポリエステル系樹脂は、構成単位(A1)及び構成単位(C)によって粘着性を向上させることができるため、構成単位(A2)の原料選択の自由度が高く、これによって、多様な樹脂物性の設計が容易になる。
構成単位(A2)は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
【0030】
〔オキサビシクロ環を有さない多価カルボン酸又はその誘導体(a2)〕
(a2)成分は、オキサビシクロ環を有さない多価カルボン酸又はその誘導体である。
以下、(a2)成分としてのオキサビシクロ環を有さない多価カルボン酸を、オキサビシクロ環を有さない多価カルボン酸(a2-1)と称する。
【0031】
≪オキサビシクロ環を有さない多価カルボン酸(a2-1)≫
(a2-1)成分としては、例えば、オキサビシクロ環を有さない芳香族多価カルボン酸、オキサビシクロ環を有さない脂肪族多価カルボン酸等が挙げられる。
なお、以下、(a2-1)成分として説明される化合物は、特に明記せずともオキサビシクロ環を有さないものとする。
【0032】
芳香族多価カルボン酸としては、例えば、芳香族ジカルボン酸、3価以上の芳香族多価カルボン酸等が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸等が挙げられる。
3価以上の芳香族多価カルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ピレントリカルボン酸、ピレンテトラカルボン酸等が挙げられる。
【0033】
脂肪族多価カルボン酸の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは2~10、より好ましくは3~8、さらに好ましくは3~5である。
脂肪族多価カルボン酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸、3価以上の脂肪族多価カルボン酸が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、トリデカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、ペンタデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、エイコサンジカルボン酸等の鎖状の脂肪族ジカルボン酸;1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、ジシクロヘキサンメタン-4,4’-ジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;等が挙げられる。これらの中でも、例えば、得られるポリエステル系樹脂の生分解性の観点からは、コハク酸が好ましい。
3価以上の脂肪族多価カルボン酸としては、例えば、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,5-シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸等が挙げられる。
【0034】
以上の選択肢の中でも、(a2-1)成分としては、脂肪族多価カルボン酸が好ましく、脂肪族ジカルボン酸がより好ましい。すなわち、(a2)成分は、オキサビシクロ環を有さない脂肪族ジカルボン酸又はその誘導体であることが好ましい。
【0035】
≪オキサビシクロ環を有さない多価カルボン酸(a2-1)の誘導体≫
(a2-1)成分の誘導体としては、例えば、(a2-1)成分の酸無水物、(a2-1)成分のハロゲン化物、(a2-1)成分の金属塩、(a2-1)成分のカルボキシ基をエステル化した化合物等が挙げられる。これらの中でも、(a2-1)成分の酸無水物が好ましく、コハク酸無水物がより好ましい。
【0036】
〔構成単位(A2)の含有量〕
本実施形態のポリエステル系樹脂中における構成単位(A2)の含有量は、特に限定されないが、ポリエステル系樹脂の粘着性及び他の物性を所望の範囲に調整する観点から、本実施形態のポリエステル系樹脂の全構成単位(100モル%)中、好ましくは5~50モル%、より好ましくは10~40モル%、さらに好ましくは15~35モル%である。
【0037】
本実施形態のポリエステル系樹脂中における構成単位(A1)のモル基準の含有量と、構成単位(A2)のモル基準の含有量と、の比[(A1)/(A2)]は、特に限定されないが、ポリエステル系樹脂の粘着性及び他の物性を所望の範囲に調整する観点から、好ましくは0.01~2、より好ましくは0.05~1.5、さらに好ましくは0.1~1である。
【0038】
(構成単位(A)の含有量)
本実施形態のポリエステル系樹脂中における構成単位(A)の含有量は、特に限定されないが、ポリエステル系樹脂の粘着性及び生産性の観点から、本実施形態のポリエステル系樹脂の全構成単位(100モル%)中、好ましくは10~80モル%、より好ましくは20~70モル%、さらに好ましくは25~60モル%である。
【0039】
構成単位(A)中における構成単位(A1)及び構成単位(A2)の合計含有量は、特に限定されないが、ポリエステル系樹脂の粘着性の観点から、好ましくは80~100モル%、より好ましくは90~100モル%、さらに好ましくは95~100モル%である。
【0040】
<多価ヒドロキシ化合物又はその誘導体(b)に由来する構成単位(B)>
構成単位(B)は、多価ヒドロキシ化合物又はその誘導体(b)に由来する構成単位である。
構成単位(B)は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
【0041】
(多価ヒドロキシ化合物又はその誘導体(b))
(b)成分は、多価ヒドロキシ化合物又はその誘導体である。
以下、(b)成分としての多価ヒドロキシ化合物を、多価ヒドロキシ化合物(b-1)と称する。
【0042】
〔多価ヒドロキシ化合物(b-1)〕
多価ヒドロキシ化合物(b-1)としては、例えば、多価フェノール化合物、多価アルコール化合物等が挙げられる。
なお、本明細書において、「多価フェノール化合物」は、芳香環に直接結合するヒドロキシ基を2個以上有する化合物を意味し、脂肪族炭化水素基を有していてもよい。
また、本明細書において、「多価アルコール化合物」は、脂肪族炭化水素基に直接結合するヒドロキシ基を2個以上有する化合物を意味し、芳香族炭化水素基を有していてもよい。
また、本明細書において、芳香環に直接結合する1個以上のヒドロキシ基と、脂肪族炭化水素基に直接結合する1個以上のヒドロキシ基と、を有する化合物は、多価フェノール化合物及び多価アルコール化合物の両方に該当するものとする。
【0043】
多価フェノール化合物としては、例えば、2価のフェノール化合物、3価以上のフェノール化合物等が挙げられる。
2価のフェノール化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF等が挙げられる。
3価以上のフェノール化合物としては、例えば、ピロガロール等が挙げられる。
【0044】
多価アルコール化合物の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは2~10、より好ましくは3~8、さらに好ましくは3~5である。
多価アルコール化合物としては、例えば、2価のアルコール化合物、3価以上のアルコール化合物等が挙げられる。
2価のアルコール化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール等の鎖状の脂肪族ジオール;パラキシレングリコール、メタキシレングリコール、オルトキシレングリコール等の芳香環を含む2価のアルコール化合物;1,4-シクロヘキサンジオ-ル、1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等の脂肪族環を含む2価のアルコール化合物;等が挙げられる。これらの中でも、例えば、得られるポリエステル系樹脂の生分解性の観点からは、1,4-ブタンジオールが好ましい。(a)成分としてコハク酸又はその誘導体、(b)成分として1,4-ブタンジオールを使用して形成されるポリブチレンサクシネートは生分解性を有するとされる一方、結晶性が高く粘着剤としての使用は困難であるが、本実施形態のポリエステル系樹脂は、これらを原料とする場合においても粘着性を発現させることが可能である。
3価以上のアルコール化合物としては、例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、1,3,6-ヘキサントリオール、ソルビトール、1,3,5-トリス(ヒドロキシメチル)ベンゼン等が挙げられる。
【0045】
以上の選択肢の中でも、多価ヒドロキシ化合物(b-1)としては、多価アルコール化合物が好ましく、2価のアルコール化合物がより好ましい。すなわち、(b)成分は、2価のアルコール化合物又はその誘導体であることが好ましい。
【0046】
〔多価ヒドロキシ化合物(b-1)の誘導体〕
(b-1)成分の誘導体としては、例えば、(b-1)成分のアルキレンオキサイド付加物、(b-1)成分のエステル化合物等が挙げられる。
【0047】
(構成単位(B)の含有量)
本実施形態のポリエステル系樹脂中における構成単位(B)の含有量は、特に限定されないが、ポリエステル系樹脂の粘着性の観点から、本実施形態のポリエステル系樹脂の全構成単位(100モル%)中、好ましくは10~80モル%、より好ましくは20~70モル%、さらに好ましくは25~60モル%である。
【0048】
<ヒドロキシカルボン酸又はその誘導体(c)に由来する構成単位(C)>
構成単位(C)は、ヒドロキシカルボン酸又はその誘導体(c)に由来する構成単位である。
構成単位(C)は、上記した構成単位(A1)と共に本実施形態のポリエステル系樹脂の粘着性の向上に寄与する。
構成単位(C)は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
【0049】
(ヒドロキシカルボン酸又はその誘導体(c))
(c)成分は、ヒドロキシカルボン酸又はその誘導体である。
以下、(c)成分としてのヒドロキシカルボン酸を、ヒドロキシカルボン酸(c-1)と称する。
【0050】
〔ヒドロキシカルボン酸(c-1)〕
ヒドロキシカルボン酸(c-1)は、分子中にヒドロキシ基及びカルボキシ基を有する化合物である。
ヒドロキシカルボン酸(c-1)の炭素数は、特に限定されないが、ポリエステル系樹脂の粘着性の観点から、好ましくは4~30、より好ましくは5~25、さらに好ましくは5~20である。
【0051】
ヒドロキシカルボン酸(c-1)が有するヒドロキシ基の数は1個以上であればよいが、ポリエステル系樹脂の製造時におけるゲル化抑制の観点から、好ましくは1個又は2個、より好ましくは1個である。
ヒドロキシカルボン酸(c-1)が有するカルボキシ基の数は1個以上であればよいが、ポリエステル系樹脂の製造時におけるゲル化抑制の観点から、好ましくは1個又は2個、より好ましくは1個である。
【0052】
ヒドロキシカルボン酸(c-1)としては、例えば、ヒドロキシ基及びカルボキシ基が芳香族炭化水素基に直接結合する芳香族ヒドロキシカルボン酸、ヒドロキシ基及びカルボキシ基が脂肪族炭化水素基に直接結合する脂肪族ヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。これらの中でも、ポリエステル系樹脂の粘着性の観点から、脂肪族ヒドロキシカルボン酸が好ましい。
【0053】
脂肪族ヒドロキシカルボン酸は、ポリエステル系樹脂の粘着性の観点から、下記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。
【0054】
【化1】
(式中、R
1は、炭素数4~50の2価の脂肪族炭化水素基である。)
【0055】
上記一般式(1)中のR1が示す炭素数4~50の2価の脂肪族炭化水素基の炭素数は、好ましくは4~40、より好ましくは5~30、さらに好ましくは5~20である。
炭素数4~50の2価の脂肪族炭化水素基は、2価の飽和脂肪族炭化水素基であってもよく、2価の不飽和脂肪族炭化水素基であってもよい。
炭素数4~50の2価の脂肪族炭化水素基は、置換基を有していてもよく、置換基を有していなくてもよい。置換基を有する場合、該置換基の炭素数も、2価の脂肪族炭化水素基の炭素数に含まれるものとする。
【0056】
炭素数4~50の2価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基等が挙げられる。これらの中でも、アルキレン基、アルケニレン基が好ましい。
【0057】
アルキレン基としては、例えば、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ドデカメチレン基、テトラデカメチレン基、ヘキサデカメチレン基、オクタデカメチレン基等が挙げられる。これらのアルキレン基は、置換基を有していてもよいが、置換基を有していないものが好ましい。これらの中でも、ペンタメチレン基が好ましい。
【0058】
アルケニレン基としては、例えば、n-ヘキセニレン基、n-オクテニレン基、n-デセニレン基、n-ドデセニレン基、n-テトラデセニレン基、n-ヘキサデセニレン基、n-オクタデセニレン基等が挙げられる。これらのアルケニレン基は、置換基を有していてもよく、有していなくてもよい。
【0059】
炭素数4~50の2価の脂肪族炭化水素基は、ポリエステル系樹脂の粘着性の観点から、ヒドロキシ基が結合する第2級又は第3級炭素を有する2価の脂肪族炭化水素基が好ましく、ヒドロキシ基が結合する第2級炭素を有する2価の脂肪族炭化水素基がより好ましく、下記一般式(2)で表される2価の脂肪族炭化水素基がさらに好ましい。
【0060】
【化2】
(式中、R
2は、炭素数1~20の1価の炭化水素基であり、R
3は、炭素数5~20の2価の脂肪族炭化水素基であり、*
1はカルボキシ基に結合する部位であり、*
2はヒドロキシ基に結合する部位である。)
【0061】
上記一般式(2)中のR2が示す炭素数1~20の1価の炭化水素基の炭素数は、好ましくは2~15、より好ましくは3~12、さらに好ましくは4~10である。
炭素数1~20の1価の炭化水素基としては、例えば、炭素数1~20の1価の脂肪族炭化水素基、炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基等が挙げられる。これらの炭化水素基は置換基を有していてもよく、有していなくてもよい。置換基を有する場合、置換基の炭素数も、炭素数1~20の1価の炭化水素基の炭素数に含まれるものとする。これらの中でも、炭素数1~20の1価の脂肪族炭化水素基が好ましい。
【0062】
炭素数1~20の1価の脂肪族炭化水素基の炭素数が3以上である場合、該脂肪族炭化水素基は直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
炭素数1~20の1価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられ、これらの中でも、アルキル基が好ましい。
炭素数1~20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基等が挙げられる。これらの中でも、n-ヘキシル基が好ましい。
【0063】
上記一般式(2)中のR3が示す炭素数5~20の2価の脂肪族炭化水素基の炭素数は、好ましくは6~17、より好ましくは7~15、さらに好ましくは8~12である。
炭素数5~20の2価の脂肪族炭化水素基は、分岐鎖を有していてもよく、分岐鎖を有していなくてもよい。
炭素数5~20の2価の脂肪族炭化水素基は、炭素数5~20の2価の飽和脂肪族炭化水素基であってもよく、炭素数5~20の2価の不飽和脂肪族炭化水素基であってもよい。
炭素数5~20の2価の不飽和脂肪族炭化水素基が含む脂肪族不飽和結合の数は、特に限定されないが、好ましくは1~3個、より好ましくは1個又は2個、さらに好ましくは1個である。
炭素数5~20の2価の不飽和脂肪族炭化水素基としては、R1として挙げられたアルケニレン基と同じものが例示される。これらの中でも、n-デセニレン基がより好ましい。
【0064】
ヒドロキシカルボン酸(c-1)としては、例えば、ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシトルイル酸、ヒドロキシナフトエ酸、3-(ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、ヒドロキシフェニル酢酸及び3-ヒドロキシ-3-フェニルプロピオン酸等の芳香族ヒドロキシカルボン酸;5-ヒドロキシペンタン酸、6-ヒドロキシヘキサン酸、7-ヒドロキシペンタン酸、8-ヒドロキシオクタン酸、9-ヒドロキシノナン酸、10-ヒドロキシデカン酸、12-ヒドロキシドデカン酸、14-ヒドロキシテトラデカン酸、16-ヒドロキシヘキサデカン酸、18-ヒドロキシオクタデカン酸、5-ヒドロキシ-2-プロピルペンタン酸、5-ヒドロキシ-2-ペンチルペンタン酸、6-ヒドロキシ-2-プロピルヘキサン酸、乳酸、2-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシ酪酸、2-ヒドロキシ-3-メチル酪酸、2-ヒドロキシ-3,3-ジメチル酪酸、2-ヒドロキシカプロン酸、3-ヒドロキシカプロン酸、4-ヒドロキシカプロン酸、5-ヒドロキシカプロン酸、2-ヒドロキシイソカプロン酸、4-ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸、マンデル酸、リシノール酸等の脂肪族ヒドロキシカルボン酸;等が挙げられる。
これらの中でも、ヒドロキシカルボン酸(c-1)は、環境負荷低減の観点から、バイオマス由来の化合物であることが好ましく、リシノール酸であることがより好ましい。リシノール酸は、下記式(3)で表される化合物であり、例えば、ひまし油等から抽出することが可能な化合物である。
【0065】
【0066】
〔ヒドロキシカルボン酸(c-1)の誘導体〕
(c-1)成分の誘導体としては、例えば、(c-1)成分のハロゲン化物、(c-1)成分の金属塩、(c-1)成分のカルボキシ基をエステル化した化合物、(c-1)成分が分子内脱水縮合した化合物、(c-1)成分が2分子間又は3分子間以上で脱水縮合した化合物、不飽和脂肪族炭化水素基を有するヒドロキシカルボン酸の不飽和結合をエポキシ化又は水素化した化合物等が挙げられる。これらの中でも、(c-1)成分のカルボキシ基をエステル化した化合物、(c-1)成分が分子内脱水縮合した化合物が好ましい。
(c-1)成分のカルボキシ基をエステル化した化合物としては、上記一般式(1)中のR1として、上記一般式(2)で表される2価の脂肪族炭化水素基を有する脂肪族ヒドロキシカルボン酸をアルキルエステル化した化合物が好ましく、リシノール酸をアルキルエステル化した化合物がより好ましく、リシノール酸メチルがさらに好ましい。
(c-1)成分が分子内脱水縮合した化合物としては、上記一般式(1)中のR1としてアルキレン基を有する脂肪族ヒドロキシカルボン酸が分子内脱水縮合した化合物が好ましい。当該脂肪族ヒドロキシカルボン酸が分子内脱水縮合した化合物としては、例えば、ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン、δ-オクタノラクトン、δ-デカラクトン、ε-デカラクトン等が挙げられ、これらの中でも、ε-カプロラクトンが好ましい。
【0067】
(構成単位(C)の含有量)
本実施形態のポリエステル系樹脂中における構成単位(C)の含有量は、特に限定されないが、ポリエステル系樹脂の粘着性の観点から、本実施形態のポリエステル系樹脂の全構成単位(100モル%)中、好ましくは2~70モル%、より好ましくは3~60モル%、さらに好ましくは5~45モル%である。
【0068】
<構成単位(A)~(C)の含有量>
本実施形態のポリエステル系樹脂中における、構成単位(A)~(C)の合計含有量は、特に限定されないが、本実施形態のポリエステル系樹脂の全構成単位(100モル%)中、好ましくは80~100モル%、より好ましくは90~100モル%、さらに好ましくは95~100モル%、特に好ましくは99~100モル%である。
【0069】
<ポリエステル系樹脂の数平均分子量(Mn)>
本実施形態のポリエステル系樹脂の数平均分子量(Mn)は、特に限定されないが、ポリエステル系樹脂の粘着性の観点から、好ましくは1,000~100,000、より好ましくは3,000~50,000、さらに好ましくは4,000~40,000、特に好ましくは5,000~30,000である。
【0070】
<ポリエステル系樹脂のガラス転移温度(Tg)>
本実施形態のポリエステル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、特に限定されないが、ポリエステル系樹脂の粘着性の観点から、好ましくは-100~0℃、より好ましくは-85~-10℃、さらに好ましくは-75~-25℃である。
ポリエステル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0071】
<ポリエステル系樹脂の融解温度(Tm)>
本実施形態のポリエステル系樹脂は融解温度(Tm)を有するものであってもよく、有しないものであってもよい。ポリエステル系樹脂が融解温度(Tm)を有する場合、融解温度(Tm)は、特に限定されないが、ポリエステル系樹脂の粘着性の観点から、好ましくは20~100℃、より好ましくは30~80℃、さらに好ましくは40~60℃である。
ポリエステル系樹脂の融解温度(Tm)は実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0072】
<ポリエステル系樹脂のプローブタック値>
本実施形態のポリエステル系樹脂のプローブタック値は、ポリエステル系樹脂の粘着性の観点から、好ましくは1N/cm2以上、より好ましくは2N/cm2以上、さらに好ましくは4N/cm2以上、よりさらに好ましくは7N/cm2以上、よりさらに好ましくは10N/cm2以上、特に好ましくは15N/cm2以上である。
本実施形態のポリエステル系樹脂のプローブタック値の上限値は特に限定されないが、製造容易性及び他の物性とのバランスを良好に保つ観点からは、100N/cm2以下であってもよく、90N/cm2以下であってもよい。
ポリエステル系樹脂のプローブタック値は実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0073】
<ポリエステル系樹脂の生分解性>
本実施形態のポリエステル系樹脂は、生分解性に優れる傾向にあり、環境負荷低減の観点から、生分解性を有するものであることが好ましい。
なお、本実施形態において、「生分解性」とは、例えば、加水分解、酵素分解、微生物分解等の作用により化学的に分解することが可能な性質を意味する。
本実施形態のポリエステル系樹脂の、後述する実施例に記載の方法で測定される対PBS比生分解度(本実施形態のポリエステル系樹脂の対グルコース比生分解度を、比較例1で得られたポリブチレンサクシネート(PBS)の対グルコース比生分解度を1とした場合の相対値に換算した値)は、好ましくは5~60、より好ましくは10~55、さらに好ましくは15~50である。
対PBS比生分解度の詳細な測定方法は、実施例に記載の通りである。
【0074】
[ポリエステル系樹脂の製造方法]
本実施形態のポリエステル系樹脂の製造方法は、
前記オキサビシクロ環を有する多価カルボン酸又はその誘導体(a1)を含有する多価カルボン酸又はその誘導体(a)と、
前記多価ヒドロキシ化合物又はその誘導体(b)と、
前記ヒドロキシカルボン酸又はその誘導体(c)と、を反応させる、ポリエステル系樹脂の製造方法である。
本実施形態のポリエステル系樹脂の製造方法における各成分の反応は、原料の種類に応じて、重縮合反応であってもよく、エステル交換反応であってもよい。以下、これらを総じて「ポリエステル化反応」と称する。
【0075】
ポリエステル化反応は、各成分を撹拌下で反応させることが好ましく、副生成物である水等を適宜留去しながら反応を進行させることが好ましい。
ポリエステル化反応は、溶媒中で行ってもよく、溶媒を使用せずに行ってもよいが、生産性の観点からは、溶媒を使用せずに行うことが好ましい。
ポリエステル化反応は、例えば、窒素等の不活性雰囲気下で行ってもよく、減圧下で行ってもよいが、生産性の観点からは、減圧下で行うことが好ましい。
減圧下で反応を行う場合における反応容器内の圧力は、好ましくは100Pa以下、より好ましくは30Pa以下、さらに好ましくは15Pa以下である。
【0076】
ポリエステル化反応に供する(a)成分及び(c)成分が有するカルボキシ基(COOH基)と、(b)成分及び(c)成分が有するヒドロキシ基(OH基)と、の当量比(COOH基/OH基)は、所望する物性に応じて調整すればよいが、例えば、0.3~1.2であってもよく、0.35~1.0であってもよく、0.4~0.8であってもよく、0.45~0.7であってもよい。
【0077】
ポリエステル化反応における反応温度は、所望するポリエステル系樹脂の性状に応じて決定すればよいが、例えば、100~240℃であってもよく、120~220℃であってもよく、140~200℃であってもよい。
ポリエステル化反応における反応時間は、所望するポリエステル系樹脂の性状に応じて決定すればよいが、例えば、1~20時間であってもよく、5~15時間であってもよく、8~12時間であってもよい。
【0078】
ポリエステル化反応においては、必要に応じて、エステル化触媒を使用してもよい。
エステル化触媒としては、例えば、チタン酸テトライソプロポキシド、チタン酸テトラブトキシド等のチタン系触媒;三酸化アンチモン等のアンチモン系触媒;二酸化ゲルマニウム等のゲルマニウム系触媒;酢酸亜鉛、酢酸マンガン、ジブチル錫オキサイド等が挙げられる。エステル化触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
エステル化触媒の使用量は、特に限定されないが、モノマー成分の総量(100質量部)に対して、好ましくは0.02~4質量部、より好ましくは0.2~3質量部、さらに好ましくは0.6~1.4質量部である。
【0079】
ポリエステル化反応によって得られたポリエステル系樹脂は、必要に応じて、蒸留、再沈殿、遠心分離、洗浄、乾燥等の公知の方法によって単離及び精製してもよい。
【0080】
本実施形態のポリエステル系樹脂の製造方法においては、得られるポリエステル系樹脂の分子量を調整し易くする観点からは、下記工程1及び工程2を有するものであってもよい。
工程1:不活性雰囲気下において、(a)~(c)成分を反応させることで中間重合体を得る工程
工程2:減圧下において、上記で得られた中間重合体の重縮合反応を行う工程
【0081】
工程1における反応温度は、特に限定されないが、例えば、100~230℃であってもよく、120~200℃であってもよく、140~180℃であってもよい。
工程1における反応時間は、特に限定されないが、例えば、0.5~10時間であってもよく、1~7時間であってもよく、2~5時間であってもよい。
工程1は、窒素雰囲気等の不活性雰囲気下で行うことが好ましい。
工程1では、エステル化触媒を使用することが好ましい。工程1におけるエステル化触媒の使用量は、特に限定されないが、モノマー成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.01~2質量部、より好ましくは0.1~1.4質量部、さらに好ましくは0.2~0.8質量部である。
【0082】
工程2における反応温度は、特に限定されないが、例えば、120~250℃であってもよく、150~230℃であってもよく、170~200℃であってもよい。なお、工程2における反応温度は、工程1における反応温度よりも高いことが好ましい。
工程2における反応時間は、特に限定されないが、例えば、1~15時間であってもよく、3~12時間であってもよく、5~10時間であってもよい。
工程2は、減圧下で行うことが好ましい。減圧下で反応を行う場合における反応容器内の好適な圧力の範囲は上記した通りである。
【0083】
工程2では、エステル化触媒を使用することが好ましい。工程1終了後、工程2において添加するエステル化触媒の量は、特に限定されないが、中間重合体及びモノマー成分の総量(100質量部)に対して、好ましくは0.01~2質量部、より好ましくは0.1~1.4質量部、さらに好ましくは0.2~0.8質量部である。
【0084】
[粘着剤]
本実施形態の粘着剤は、本実施形態のポリエステル系樹脂又はその反応物を含有する粘着剤である。
本実施形態の粘着剤は、本実施形態のポリエステル系樹脂又はその反応物のみを含有するものであってもよく、本実施形態のポリエステル系樹脂又はその反応物と、本実施形態のポリエステル系樹脂又はその反応物以外の成分と、を含有するものであってもよい。
【0085】
本実施形態の粘着剤中における本実施形態のポリエステル系樹脂又は本実施形態のポリエステル系樹脂に由来する構造の含有量は、粘着剤の全量(100質量%)中、好ましくは30~100質量%、より好ましくは50~99.95質量%、さらに好ましくは70~99.90質量%、特に好ましくは90~99.80質量%である。
【0086】
本実施形態の粘着剤は、必要に応じて粘着付与剤を含有していてもよい。
粘着付与剤としては、例えば、重合ロジン、重合ロジンエステル、ロジン誘導体等のロジン系樹脂;ポリテルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂及びその水素化物、テルペンフェノール樹脂等のテルペン系樹脂;クマロン・インデン樹脂;脂肪族石油系樹脂、芳香族系石油樹脂及びその水素化物、脂肪族/芳香族共重合体石油樹脂等の石油樹脂;スチレン又は置換スチレン重合体;α-メチルスチレン単一重合系樹脂、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体、スチレン系モノマーと脂肪族系モノマーとの共重合体、スチレン系モノマーとα-メチルスチレンと脂肪族系モノマーとの共重合体、スチレン系モノマーからなる単独重合体、スチレン系モノマーと芳香族系モノマーとの共重合体等のスチレン系樹脂;等が挙げられる。
粘着付与剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0087】
本実施形態のポリエステル系樹脂の反応物としては、例えば、本実施形態のポリエステル系樹脂を架橋剤と反応させてなる反応物が挙げられる。ポリエステル系樹脂を架橋させることによって、凝集力に優れる粘着剤を形成できる傾向にある。
架橋剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、ポリエポキシ化合物等のポリエステル系樹脂に含まれるヒドロキシ基又はカルボキシ基と反応する官能基を有する化合物が挙げられる。これらの中でも、粘着性、機械的強度、耐熱性等の観点から、ポリイソシアネート化合物が好ましい。
架橋剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0088】
本実施形態の粘着剤は、本発明の効果を損なわない範囲において、粘着剤用添加剤を含有していてもよい。
粘着剤用添加剤としては、例えば、酸化防止剤、軟化剤(可塑剤)、防錆剤、顔料、染料、遅延剤、反応促進剤(触媒)、紫外線吸収剤、加水分解抑制剤、帯電防止剤、充填材等が挙げられる。
粘着剤用添加剤は、各々について、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0089】
本実施形態の粘着剤は、例えば、本実施形態のポリエステル系樹脂及び必要に応じて使用される各成分を混合する方法によって製造することができる。
各成分を混合する方法は、各成分を溶融混練する方法であってもよく、各成分を溶媒中で混合する方法であってもよい。
溶融混練は、例えば、単軸押出機、二軸押出機、ロールミル、プラストミル、バンバリーミキサー、インターミックス、加圧ニーダー等の加熱装置を備えた混合装置を用いて、各成分が溶融状態で十分に混合される温度条件を適宜選択して行えばよい。
溶媒中で混合する場合は、各成分を溶媒に溶解及び分散させた状態で適宜撹拌して混合すればよく、溶媒中で混合されて得られた組成物は、その後、例えば、基材上に塗布された後、乾燥させることによって粘着シートの製造に供してもよく、所望に応じて、塗布工程を経ず、各種容器等に充填してもよい。
【0090】
本実施形態の粘着剤は、生分解性に優れる傾向にあり、環境負荷低減の観点から、生分解性を有するものであることが好ましい。
生分解性を有する本実施形態の粘着剤の上記対PBS比生分解度の好適な範囲は、上記した本実施形態のポリエステル系樹脂の対PBS比生分解度の好適な範囲と同じである。
【0091】
[粘着シート]
本実施形態の粘着シートは、本実施形態の粘着剤を含有する粘着剤層を有する粘着シートである。
本実施形態の粘着シートの一実施形態としては、基材と本実施形態の粘着剤層とを有する粘着シートが挙げられる。当該実施形態の粘着シートは、基材及び粘着剤層以外の層を有していてもよく、有していなくてもよい。基材及び粘着剤層以外の層としては、例えば、粘着剤層の基材とは反対側の面に設けられる剥離材が挙げられる。
また、本実施形態の粘着シートの別の実施形態としては、例えば、本実施形態の粘着剤層の両面に剥離材を有する基材レスの粘着シートが挙げられる。
【0092】
図1には、本実施形態の粘着シートの一例として、粘着剤層1の一方の面側に基材2を有し、他方の面側に剥離材3を有する粘着シート10が示されている。
図2には、本実施形態の粘着シートの別の例として、基材2の両面に粘着剤層1を有し、一方の粘着剤層1の基材2とは反対側の面に剥離材3aを有し、他方の粘着剤層1の基材2とは反対側の面に剥離材3bを有する両面粘着シート20が示されている。
図3には、本実施形態の粘着シートの更に別の例として、粘着剤層1の一方の面に剥離材3a、他方の面に3bを有する基材レスの粘着シート30が示されている。
以下、本実施形態の粘着シートが有し得る各部材について説明する。
【0093】
<粘着剤層>
粘着剤層が含有する本実施形態の粘着剤についての説明は上記の通りである。
粘着剤層は、例えば、上記した本実施形態の粘着剤の各原料及び希釈溶媒を配合して粘着剤組成物を調製し、該粘着剤組成物を剥離材又は基材上に塗布した後、乾燥することによって形成することができる。
粘着剤組成物の塗布方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等が挙げられる。
粘着剤組成物を塗布した後の乾燥条件は、特に限定されず、原料、希釈溶媒等の種類に応じて適宜調整すればよい。
【0094】
粘着剤層の厚さは、特に限定されず、所望する性能に応じて、1~1,000μmであってもよく、10~500μmであってもよく、15~200μmであってもよく、20~100μmであってもよい。
【0095】
<基材>
基材としては、例えば、樹脂、金属、紙材等が挙げられる。
樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体等のビニル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリスチレン;アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体;三酢酸セルロース;ポリカーボネート;ポリウレタン、アクリル変性ポリウレタン等のウレタン樹脂;ポリメチルペンテン;ポリスルホン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルスルホン;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルイミド、ポリイミド等のポリイミド系樹脂;ポリアミド系樹脂;アクリル樹脂;フッ素系樹脂等が挙げられる。
金属としては、例えば、アルミニウム、スズ、クロム、チタン等が挙げられる。
紙材としては、例えば、薄葉紙、中質紙、上質紙、含浸紙、コート紙、アート紙、硫酸紙、グラシン紙等が挙げられる。
基材の形成材料は、1種単独で構成されていてもよく、2種以上を組み合わせて構成されていてもよい。
【0096】
基材は、密着性を向上させる観点から、酸化法、凹凸化法等による表面処理、易接着処理、あるいはプライマー処理等を施されていてもよい。酸化法としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸処理(湿式)、熱風処理、オゾン、紫外線照射処理等が挙げられ、凹凸化法としては、例えば、サンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。
【0097】
基材は、必要に応じて、添加剤を含有していてもよい。
添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解抑制剤、光安定剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、着色剤、充填材等が挙げられる。
これらの添加剤は、各々について、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0098】
基材の厚さは、特に限定されないが、経済性及び取り扱い性の観点から、5~1,000μmであってもよく、10~500μmであってもよく、20~200μmであってもよく、30~100μmであってもよい。
【0099】
<剥離材>
剥離材としては、両面剥離処理をされた剥離シート;片面剥離処理をされた剥離シート;等が用いられ、剥離材用基材上に剥離剤を塗布したもの等が挙げられる。
剥離材用基材としては、本実施形態の粘着シートが有し得る基材として挙げられたものと同じものが挙げられる。
剥離剤としては、例えば、シリコーン系樹脂、オレフィン系樹脂、イソプレン系樹脂、ブタジエン系樹脂等のゴム系エラストマー;長鎖アルキル系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
剥離材の厚さは、特に限定されないが、好ましくは10~200μm、より好ましくは20~180μm、さらに好ましくは30~150μmである。
【0100】
本実施形態の粘着シートは、環境負荷低減の観点から、生分解性を有するものであることが好ましい。
生分解性を有する本実施形態の粘着シートの態様としては、例えば、生分解性を有する本実施形態の粘着剤を含有する粘着剤層からなる基材レスの粘着シート、該粘着剤層と生分解性を有する基材とを有する粘着シート等が挙げられる。
生分解性を有する本実施形態の粘着シートの上記対PBS比生分解度の好適な範囲は、上記した本実施形態のポリエステル系樹脂の対PBS比生分解度の好適な範囲と同じである。
【0101】
[ポリエステル系樹脂、粘着剤及び粘着シートの用途]
本実施形態のポリエステル系樹脂、粘着剤及び粘着シートは、種々の用途に使用することができる。
具体的には、例えば、ラベル用途、光学材料用途、表面保護用途、マスキング用途、装飾・表示用途、接合用途、シーリング材用途、医療衛生用途、電気絶縁用途、電子機器保持固定用途、半導体製造用途等が挙げられる。これらの中でも、本実施形態のポリエステル系樹脂は、半導体製造用として好適であり、具体的には、半導体装置の各種製造工程で用いられる仮固定用シート又はその原料として好適である。
【実施例0102】
本発明について、以下の実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0103】
[数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)]
ポリエステル系樹脂の数平均分子量(Mn)及び質量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフ装置(東ソー株式会社製、製品名「HLC-8020」)を用いて、下記の条件下で測定し、標準ポリスチレン換算にて測定した。
(測定条件)
・カラム:「TSK guard column SuperH-H」「TSK gel SuperHM-H」「TSK gel SuperHM-H」「TSK gel SuperH2000」(いずれも東ソー株式会社製)を順次連結したもの
・カラム温度:40℃
・展開溶媒:クロロホルム
・注入量:20μl
・流速:1.0mL/min
・検出器:示差屈折計
【0104】
[1H-NMR測定]
ポリエステル系樹脂の組成分析は、下記条件の1H-NMR測定によって行った。
装置:ブルカー・バイオスピン社製、商品名「AV-500」
1H-NMR共鳴周波数:500MHz
プローブ:5mmφ溶液プローブ
重溶媒:重クロロホルム
内部標準物質:TMS(テトラメチルシラン)
サンプル量:20~50mg
測定温度:25℃
積算回数:16回
〈1H-NMR測定試料作製方法〉
測定サンプルを、測定サンプル濃度が3質量%となるように、内部標準としてTMSを含む重クロロホルムに溶解させたものを1H-NMR測定試料とした。
【0105】
[示差走査熱量(DSC)測定]
測定試料をアルミニウム製パンに計量し、示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、製品名「DSC Q2000」)を用いて、窒素雰囲気下、昇温速度10.0℃/minで、-70℃から150℃までの昇温を行い、該昇温のDSC曲線から、JIS K 7121:2012に準拠して、ガラス転移温度(Tg)及び融解温度(Tm)を求めた。
なお、表1に示すガラス転移温度(Tg)における「-」は測定温度範囲にガラス転移温度(Tg)が検出されなかったことを意味し、融解温度(Tm)における「-」は測定温度範囲に融解温度(Tm)が検出されなかったことを意味する。また、温度範囲で記載された融解温度(Tm)は、融解温度(Tm)を特定できなかったが、融解による吸熱ピークが見られた温度範囲を意味する。
【0106】
[プローブタックの測定]
各例で得られたポリエステル系樹脂を10mm×10mmの正方形状のシートに成形し、23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で24時間静置したものを試験サンプルとして、23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で、プローブタックテスター(テスター産業株式会社製、製品名「TE-6001」)を用いて、試験サンプルの表面におけるプローブタック値を、JIS Z0237:1991に準拠して測定した。具体的には、直径5mmのステンレス鋼製のプローブを、1秒間、接触荷重0.98N/cm2で試験サンプルの表面に接触させた後、当該プローブを10mm/秒の速度で、試験サンプルの表面から離すのに必要な力を測定し、得られた値を、その試験サンプルのプローブタック値とした。
【0107】
[対PBS比生分解度(生分解性評価)]
生分解性は、JIS K 6950:2000に準拠して、以下の方法によって測定した。
精製水500gに対して土壌を1g入れ、撹拌後一晩静置し、上清をろ過して得られた水溶液を植種液とした。また、JIS K 6950:2000に記載の溶液A~Dを所定濃度で精製水と混合した水溶液を培養液とした。容量250mLの瓶に、測定対象となる試料を5mg入れ、培養液200mL及び植種液100μLを加え、該瓶に圧力センサー「OxiTop(登録商標)IDS」(Wissenshaftlich-Technische Werkstaetten(“ae”はアー・ウムラウトを意味する。)社製)を取り付け、25℃の恒温環境下、180日間試験液をスターラーで撹拌し、BOD測定に基づいて生分解度(%)を算出した。標準物質としてグルコースを使用し、180日後のグルコースの生分解度を100%として対グルコース比生分解度(%)を算出した。
各例で得られたポリエステル系樹脂の対グルコース比生分解度は、比較例1で得られたポリブチレンサクシネート(PBS)の対グルコース比生分解度を1とした場合の相対値に換算し、これを対PBS比生分解度として表1に示した。対PBS比生分解度が高い程、生分解性に優れることを示す。
【0108】
[ポリエステル系樹脂の製造]
実施例1~9、比較例1~2
(1)工程1
200mLの二口ナスフラスコに、表1に示す組成の(a)~(c)成分及びチタン酸テトライソプロポキシドを投入し、窒素雰囲気下、160℃で3時間撹拌した。
(2)工程2
次いで、反応液に、表1に示す量のチタン酸テトライソプロポキシドを加えた後、10Pa以下に減圧し、180℃で7時間撹拌して反応を行った。
反応終了後、固体状の生成物を40mlのクロロホルムに溶解させてから、ろ紙を使用してろ過し、ろ液を400mlのメタノールに注いで再沈殿を行った。沈殿物をデカンテーション又は吸引ろ過により回収し、減圧乾燥することでポリエステル系樹脂を得た。
なお、表1に示す原料の略称の意味は以下の通りである。
OBCA:7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸無水物
SAh:無水コハク酸
BD:1,4-ブタンジオール
MRA:リシノール酸メチル
ε-CL:ε-カプロラクトン
cat.:チタン酸テトライソプロポキシド
【0109】
各例で得られたポリエステル系樹脂の物性を表1に示す。
【0110】
【0111】
表1に示す通り、本実施形態の実施例1~9のポリエステル系樹脂は、良好なプローブタックを有しており、粘着性に優れていることが分かる。一方、比較例1~2のポリエステル系樹脂は、粘着性に劣っていた。