(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144326
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】偏光子保護フィルム、偏光板および液晶パネル
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20241003BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20241003BHJP
G02F 1/13363 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G02B5/30
G02F1/1335 510
G02F1/13363
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024050656
(22)【出願日】2024-03-27
(31)【優先権主張番号】P 2023056578
(32)【優先日】2023-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】片岡 直人
【テーマコード(参考)】
2H149
2H291
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AB02
2H149AB05
2H149BA02
2H149CA04
2H149CA09
2H149EA02
2H149EA12
2H149FA08X
2H149FA08Y
2H149FD07
2H149FD09
2H291FA10X
2H291FA10Z
2H291FA22X
2H291FA22Z
2H291FA30X
2H291FA30Z
2H291FA94X
2H291FA94Z
2H291FA98X
2H291FA98Z
2H291FB02
2H291FC09
2H291HA15
2H291LA25
2H291LA27
(57)【要約】
【課題】面内位相差の均一性および液晶パネルの斜め方向から視認した場合の黄色度の低減を両立させることが可能な偏光子保護フィルムを提供する。
【解決手段】偏光子保護フィルムは、アクリル樹脂組成物を含み、面内位相差の平均値が0.0nmよりも大きく、0.7nm以下であり、波長590nmにおける厚さ方向位相差Rthが-15.0nm以上0.0nm未満である。アクリル樹脂組成物は、主鎖に環構造を有するアクリル樹脂を含み、ガラス転移温度が120℃以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル樹脂組成物を含み、
面内位相差Reの平均値が0.0nmよりも大きく、0.7nm以下であり、
波長590nmにおける厚さ方向位相差Rthが-15.0nm以上0.0nm未満であり、
前記アクリル樹脂組成物は、主鎖に環構造を有するアクリル樹脂を含み、ガラス転移温度が120℃以上である、偏光子保護フィルム。
【請求項2】
前記主鎖に環構造を有するアクリル樹脂は、グルタルイミド環、ラクトン環、無水マレイン酸環、マレイミド環および無水グルタル酸環からなる群より選択される一種以上の環構造を主鎖に含む構成単位を有する、請求項1に記載の偏光子保護フィルム。
【請求項3】
前記主鎖に環構造を有するアクリル樹脂は、下記式(1)で表される構成単位を有する、請求項2に記載の偏光子保護フィルム。
【化1】
(式中、R
1およびR
2は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1以上8以下のアルキル基であり、R
3は、水素原子、炭素数1以上18以下のアルキル基または炭素数3以上12以下のシクロアルキル基である。)
【請求項4】
前記アクリル樹脂組成物は、芳香族ビニルに由来する構成単位の含有率が0重量%以上8重量%以下である、請求項1に記載の偏光子保護フィルム。
【請求項5】
前記アクリル樹脂組成物は、スチレンに由来する構成単位の含有率が0重量%以上8重量%以下である、請求項4に記載の偏光子保護フィルム。
【請求項6】
前記アクリル樹脂組成物は、ポリメタクリル酸メチルまたはメタクリル酸メチル-スチレン共重合体をさらに含む、請求項1に記載の偏光子保護フィルム。
【請求項7】
前記アクリル樹脂組成物は、1%重量減少温度が300℃以上である、請求項1に記載の偏光子保護フィルム。
【請求項8】
紫外線吸収剤を含まない、請求項1に記載の偏光子保護フィルム。
【請求項9】
二軸延伸フィルムである、請求項1に記載の偏光子保護フィルム。
【請求項10】
黄色度が0.01以上5.00以下である、請求項1に記載の偏光子保護フィルム。
【請求項11】
波長380nmの吸光度が0.01以上1.00以下である、請求項1に記載の偏光子保護フィルム。
【請求項12】
Nz係数の絶対値が0.1以上30.0以下であり、
波長548nmにおける厚さ方向位相差Rth(548)に対する波長447nmにおける厚さ方向位相差Rth(447)の比Rth(447)/Rth(548)が0.50以上1.10以下であり、
波長548nmにおける厚さ方向位相差Rth(548)に対する波長628nmにおける厚さ方向位相差Rth(628)の比Rth(628)/Rth(548)が0.50以上2.00以下である、請求項1に記載の偏光子保護フィルム。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の偏光子保護フィルムを備える、偏光板。
【請求項14】
請求項13に記載の偏光板を備える、液晶パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光子保護フィルム、偏光板および液晶パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル樹脂は、優れた透明性、色調、外観、耐熱性および加工性を有するため、例えば、偏光子保護フィルムに適用されている(例えば、特許文献1参照)。ここで、偏光子保護フィルムは、偏光子の両面に貼り合わせて偏光板とした後、液晶セルの両面に配置されることにより、液晶パネルに適用される。
【0003】
一方、視野角が広く、色の再現性に優れることから、IPS方式の液晶パネルが、液晶テレビ等の用途で好ましく使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、アクリル樹脂を含む偏光子保護フィルムをIPS方式の液晶パネルに適用すると、黒表示した液晶パネルを斜め方向から視認した場合に、僅かながら黄色味がかる場合がある。一方、このような色調の問題を偏光子保護フィルムの位相差によって光学補償する場合、偏光子保護フィルムの面内位相差のバラつきがあると、液晶パネルの表示にムラが生じる可能性がある。
【0006】
本発明は、面内位相差の均一性および液晶パネルの斜め方向から視認した場合の黄色度の低減を両立させることが可能な偏光子保護フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]アクリル樹脂組成物を含み、面内位相差の平均値が0.0nmよりも大きく、0.7nm以下であり、波長590nmにおける厚さ方向位相差Rthが-15.0nm以上0.0nm未満であり、前記アクリル樹脂組成物は、主鎖に環構造を有するアクリル樹脂を含み、ガラス転移温度が120℃以上である、偏光子保護フィルム。
【0008】
[2]前記主鎖に環構造を有するアクリル樹脂は、グルタルイミド環、ラクトン環、無水マレイン酸環、マレイミド環および無水グルタル酸環からなる群より選択される一種以上の環構造を主鎖に含む構成単位を有する、[1]に記載の偏光子保護フィルム。
【0009】
[3]前記主鎖に環構造を有するアクリル樹脂は、下記式(1)で表される構成単位を有する、[2]に記載の偏光子保護フィルム。
【0010】
【化1】
(式中、R
1およびR
2は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1以上8以下のアルキル基であり、R
3は、水素原子、炭素数1以上18以下のアルキル基または炭素数3以上12以下のシクロアルキル基である。)
【0011】
[4]前記アクリル樹脂組成物は、芳香族ビニルに由来する構成単位の含有率が0重量%以上8重量%以下である、[1]から[3]のいずれか一項に記載の偏光子保護フィルム。
【0012】
[5]前記アクリル樹脂組成物は、スチレンに由来する構成単位の含有率が0重量%以上8重量%以下である、[4]に記載の偏光子保護フィルム。
【0013】
[6]前記アクリル樹脂組成物は、ポリメタクリル酸メチルまたはメタクリル酸メチル-スチレン共重合体をさらに含む、[1]から[5]のいずれか一項に記載の偏光子保護フィルム。
【0014】
[7]前記アクリル樹脂組成物は、1%重量減少温度が300℃以上である、[1]から[6]のいずれか一項に記載の偏光子保護フィルム。
【0015】
[8]紫外線吸収剤を含まない、[1]から[7]のいずれか一項に記載の偏光子保護フィルム。
【0016】
[9]二軸延伸フィルムである、[1]から[8]のいずれか一項に記載の偏光子保護フィルム。
【0017】
[10]黄色度が0.01以上5.00以下である、[1]から[9]のいずれか一項に記載の偏光子保護フィルム。
【0018】
[11]波長380nmの吸光度が0.01以上1.00以下である、[1]から[10]のいずれか一項に記載の偏光子保護フィルム。
【0019】
[12]Nz係数の絶対値が0.1以上30.0以下であり、波長548nmにおける厚さ方向位相差Rth(548)に対する波長447nmにおける厚さ方向位相差Rth(447)の比Rth(447)/Rth(548)が0.50以上1.10以下であり、波長548nmにおける厚さ方向位相差Rth(548)に対する波長628nmにおける厚さ方向位相差Rth(628)の比Rth(628)/Rth(548)が0.50以上2.00以下である、[1]から[11]のいずれか一項に記載の偏光子保護フィルム。
【0020】
[13][1]から[12]のいずれか一項に記載の偏光子保護フィルムを備える、偏光板。
【0021】
[14][13]に記載の偏光板を備える、液晶パネル。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、面内位相差の均一性および液晶パネルの斜め方向から視認した場合の黄色度の低減を両立させることが可能な偏光子保護フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0024】
(偏光子保護フィルム)
本実施形態の偏光子保護フィルムは、アクリル樹脂組成物を含む。
【0025】
本実施形態の偏光子保護フィルムの面内位相差Reの平均値は、0.0nmよりも大きく、0.7nm以下であるが、0.6nm以下であることが好ましい。Reの平均値が0.7nm以下であると、面内位相差の均一性が向上する。このとき、本実施形態の偏光子保護フィルムは、面内位相差Reの標準偏差が0.2未満であることが好ましい。
【0026】
本実施形態の偏光子保護フィルムの波長590nmにおける厚さ方向位相差Rthは、-15.0nm以上0.0nm未満であり、-13.0nm以上-2.5nm以下であることがより好ましく、-10.0nm以上-2.5nm以下であることがさらに好ましく、-10.0nm以上-5.0nm以下であることがさらにより好ましく、-10.0nm以上-7.0nm以下であることが特に好ましい。Rthが-15.0nm以上0.0nm未満であると、液晶パネルの斜め方向から視認した場合の黄色度が低減される。このとき、本実施形態の偏光子保護フィルムは、液晶パネルの斜め方向から視認した場合の黄色度が50以下であることが好ましい。
【0027】
なお、ReおよびRthは、式
Re=(nx-ny)×d
Rth=[(nx+ny)/2-nz]×d
により算出される。ここで、nx、nyおよびnzは、それぞれ、MD方向をX軸、TD方向をY軸、フィルムの厚さ方向をZ軸とした場合の、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の屈折率である。また、dは、フィルムの厚さである。
【0028】
本実施形態の偏光子保護フィルムの黄色度は、0.01以上5.00以下であることが好ましく、0.1以上2.0以下であることがさらに好ましい。本実施形態の偏光子保護フィルムの黄色度が5.00以下であると、本実施形態の偏光子保護フィルムの着色が少なく、液晶ディスプレイの演色性への影響が少ない。
【0029】
本実施形態の偏光子保護フィルムの波長380nmの吸光度は、0.01以上1.00以下であることが好ましく、0.10以上0.80以下であることがさらに好ましい。本実施形態の偏光子保護フィルムの波長380nmの吸光度が1.00以下であると、本実施形態の偏光子保護フィルムが紫外線吸収剤を実質的に含まない。
【0030】
本実施形態の偏光子保護フィルムのNz係数の絶対値は、0.1以上30.0以下であることが好ましい。本実施形態の偏光子保護フィルムのNz係数の絶対値が0.1以上30.0以下であると、液晶パネルの斜め方向から視認した場合の黄色度が低減される。
【0031】
本実施形態の偏光子保護フィルムの波長548nmにおける厚さ方向位相差Rth(548)に対する波長447nmにおける厚さ方向位相差Rth(447)の比Rth(447)/Rth(548)は、0.50以上1.10以下であることが好ましく、0.80以上1.08以下であることがより好ましい。本実施形態の偏光子保護フィルムのRth(447)/Rth(548)が0.50以上1.10以下であると、液晶パネルの斜め方向から視認した場合の黄色度が低減される。
【0032】
本実施形態の偏光子保護フィルムの波長548nmにおける厚さ方向位相差Rth(548)に対する波長628nmにおける厚さ方向位相差Rth(628)の比Rth(628)/Rth(548)は、0.50以上2.00以下であることが好ましく、0.7以上1.5以下であることがより好ましい。本実施形態の偏光子保護フィルムのRth(628)/Rth(548)が0.50以上2.00以下であると、液晶パネルの斜め方向から視認した場合の黄色度が低減される。
【0033】
本実施形態の偏光子保護フィルムの光弾性係数は、-10×10-12Pa-1以上10×10-12Pa-1以下であることが好ましく、-5.5×10-12Pa-1以上5.5×10-12Pa-1以下であることがより好ましく、-4.5×10-12Pa-1以上4.5×10-12Pa-1以下であることがさらに好ましい。本実施形態の偏光子保護フィルムの光弾性係数が-10×10-12Pa-1以上10×10-12Pa-1以下であると、本実施形態の偏光子保護フィルムに色ムラが発生しにくくなり、特に、高温高湿環境下において、その傾向が顕著になる。
【0034】
(アクリル樹脂組成物)
アクリル樹脂組成物は、主鎖に環構造を有するアクリル樹脂を含む。アクリル樹脂組成物のガラス転移温度は、120℃以上であり、120℃超であることが好ましく、121℃以上であることがより好ましく、122℃以上であることがさらに好ましい。アクリル樹脂組成物のガラス転移温度が120℃未満であると、高温高湿環境下において配向緩和が進み、位相差の安定性が低下する場合がある。アクリル樹脂組成物のガラス転移温度は、例えば、160℃以下である。
【0035】
本明細書および特許請求の範囲において、アクリル樹脂とは、アクリロイル基を有する単量体および/またはメタクリロイル基を有する単量体の重合体を意味する。このとき、アクリル樹脂は、単独重合体および共重合体のいずれであってもよい。アクリル樹脂が共重合体である場合、アクリル樹脂は、アクリロイル基またはメタクリロイル基を有しない単量体の共重合体であってもよい。
【0036】
アクリル樹脂組成物は、例えば、ポリメタクリル酸メチルまたはメタクリル酸メチル-スチレン共重合体をさらに含んでいてもよい。なお、アクリル樹脂組成物に含まれるアクリル樹脂は、芳香族ビニルに由来する構成単位を有していないことが好ましい。
【0037】
また、アクリル樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲であれば、添加剤をさらに含んでいてもよい。添加剤としては、特に限定されないが、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、ブルーライトカットを目的とした特定波長吸収剤もしくは特定波長吸収色素、ラジカル捕捉剤等の耐光性安定剤、位相差調整剤、触媒、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、着色剤、収縮防止剤、抗菌・脱臭剤、蛍光増白剤、相溶化剤が挙げられ、二種以上を併用してもよい。
【0038】
アクリル樹脂組成物の複屈折発現性Δnxyは、-1.0×10-3以上-0.1×10-3以下であることが好ましく、-0.8×10-3以上-0.25×10-3以下であることがより好ましく、-0.8×10-3以上-0.20×10-3以下であることがさらに好ましく、-0.8×10-3以上-0.12×10-3以下であることがさらにより好ましい。Δnxyが-1.0×10-3以上であると、二軸延伸した際に所望の厚み方向位相差を発現しやすく、-0.1×10-3以下であると、二軸延伸した際に面内位相差が均一になりやすい。
【0039】
本明細書および特許請求の範囲において、アクリル樹脂組成物の複屈折発現性Δnxyとは、アクリル樹脂組成物のガラス転移温度よりも5℃高い温度で、縦方向(長手方向)の延伸倍率が2倍になるように、未延伸状態のアクリル樹脂組成物のフィルムを自由端一軸延伸した場合に発現する複屈折を意味する。
【0040】
なお、Δnxyは、式
Δnxy=nx-ny=Re/d
により算出される。ここで、nxおよびnyは、それぞれ、MD方向をX軸、TD方向をY軸とし、フィルムの厚さ方向をZ軸とした場合のX軸方向およびY軸方向の屈折率である。また、Reは、フィルムの面内位相差であり、dは、フィルムの厚さである。
【0041】
アクリル樹脂組成物中の芳香族ビニル(例えば、スチレン)に由来する構成単位の含有率は、0重量%以上8重量%以下であることが好ましく、0.5重量%以上5重量%以下であることがより好ましく、0.5重量%以上3重量%以下であることがさらに好ましく、0.5重量%以上2.5重量%であることがさらにより好ましく、1.0重量%以上2.5重量%であることが特に好ましい。アクリル樹脂組成物中の芳香族ビニル(例えば、スチレン)に由来する構成単位の含有率が8重量%以下であると、本実施形態の偏光子保護フィルムの面内位相差の均一性が向上する。
【0042】
アクリル樹脂組成物の1%重量減少温度は、300℃以上であることが好ましく、302℃以上であることがより好ましく、305℃以上であることがさらに好ましい。アクリル樹脂組成物の1%重量減少温度が300℃以上であると、原反フィルムを製造する際の冷却ロールへの汚染が抑制され、原反フィルムの製膜性が向上する。アクリル樹脂組成物の1%重量減少温度は、例えば、380℃以下である。
【0043】
アクリル樹脂組成物の重量平均分子量は、5万以上20万以下であることが好ましく、9万以上15万以下であることがより好ましい。アクリル樹脂組成物の重量平均分子量が5万以上であると、アクリル樹脂組成物の成形体の機械的特性が向上する傾向にあり、20万以下であると、アクリル樹脂組成物の成形性が向上する傾向にある。
【0044】
アクリル樹脂組成物の数平均分子量に対する重量平均分子量の比(多分散度)は、1.5以上2.5以下であることが好ましく、1.5以上2.2以下であることがより好ましい。アクリル樹脂組成物の多分散度が1.5以上であると、アクリル樹脂組成物の流動性が向上して成形しやすくなる傾向にあり、2.5以下であると、アクリル樹脂組成物の成形体の耐衝撃性、靭性、屈曲耐性等の機械的特性が向上する傾向にある。
【0045】
なお、アクリル樹脂組成物の数平均分子量および重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される標準ポリスチレン換算の値である。また、アクリル樹脂組成物の数平均分子量および重量平均分子量は、アクリル樹脂を合成する際に使用される重合開始剤および連鎖移動剤の種類、使用量によって制御することができる。
【0046】
本実施形態の偏光子保護フィルムは、偏光子に貼り合わせて、偏光板とすることができる。偏光子としては、特に限定されず、公知の偏光子を用いることができる。また、偏光板は、液晶セルと組み合わせて、液晶パネルとすることができる。この場合、視野角が広いIPS方式の液晶セルを使用することが好ましい。また、本実施形態の偏光子保護フィルムは、液晶セルと対向する側に配置される場合、紫外線吸収剤を含んでいなくてもよく、紫外線吸収剤を実質的に含んでいなくてもよい。
【0047】
(主鎖に環構造を有するアクリル樹脂)
主鎖に環構造を有するアクリル樹脂(以下、アクリル樹脂という)は、グルタルイミド環、ラクトン環、無水マレイン酸環、マレイミド環および無水グルタル酸環からなる群より選択される一種以上の環構造を主鎖に含む構成単位を有することが好ましい。
【0048】
主鎖にグルタルイミド環を含む構成単位は、例えば、下記式(1)で表される。
【0049】
【化2】
(式中、R
1およびR
2は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1以上8以下のアルキル基であり、R
3は、水素原子、炭素数1以上18以下のアルキル基または炭素数3以上12以下のシクロアルキル基である。)
【0050】
式(1)で表される構成単位を有するアクリル樹脂は、公知の方法を用いて、製造することができる。以下、式(1)で表される構成単位を有するアクリル樹脂の製造方法の一例を説明する。
【0051】
ます、出口にダイスを備える二軸押出機を用いて、メタクリル酸メチル樹脂を溶融させた後、イミド化し、ダイスからストランドを押出す。次に、水槽を用いて、ストランドを冷却した後、ペレタイザを用いて、ストランドをペレット化し、イミド化されたメタクリル酸メチル樹脂を得る。次に、出口にダイスを備える二軸押出機を用いて、イミド化されたメタクリル酸メチル樹脂を溶融させた後、エステル化し、ダイスからストランドを押出す。次に、水槽を用いて、ストランドを冷却した後、ペレタイザを用いて、ストランドをペレット化し、式(1)で表される構成単位を有するアクリル樹脂を得る。
【0052】
イミド化剤としては、例えば、アンモニア、下記式(2)で表される1級アミンが挙げられる。これらの中でも、モノメチルアミンが好ましい。
【0053】
R3NH2 (2)
(式中、R3は、式(1)と同義である。)
【0054】
エステル化剤としては、例えば、ジメチルカーボネート、2,2-ジメトキシプロパン、ジメチルスルホキシド、トリエチルオルトホルメート、トリメチルオルトアセテート、トリメチルオルトホルメート、ジフェニルカーボネート、ジメチルサルフェート、メチルトルエンスルホネート、メチルトリフルオロメチルスルホネート、メチルアセテート、メタノール、エタノール、メチルイソシアネート、p-クロロフェニルイソシアネート、ジメチルカルボジイミド、ジメチル-t-ブチルシリルクロライド、イソプロペニルアセテート、ジメチルウレア、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、ジメチルジエトキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン、ジメチル(トリメチルシラン)フォスファイト、トリメチルフォスファイト、トリメチルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、ジアゾメタン、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテルが挙げられる。これらの中でも、ジメチルカーボネートが好ましい。
【0055】
アクリル樹脂中の主鎖に環構造を含む構成単位の含有率は、1重量%以上80重量%以下であることが好ましい。アクリル樹脂のガラス転移温度は、120℃以上160℃以下であることが好ましい。
【0056】
アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位をさらに有していてもよい。
【0057】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル等の(メタ)アクリル酸アルキル;(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸アリール;(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アラルキル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルが挙げられ、二種以上を併用してもよい。これらの中でも、メタクリル酸アルキルが好ましく、メタクリル酸メチルが特に好ましい。
【0058】
アクリル樹脂中のメタクリル酸アルキルに由来する構成単位の含有率は、50重量%以上であることが好ましく、75重量%以上であることがより好ましく、90重量%以上であることが特に好ましい。
【0059】
アクリル樹脂中のアクリル酸エステルに由来する構成単位の含有率は、1重量%未満であることが好ましく、0.5重量%未満であることがより好ましく、0.3重量%未満であることが特に好ましい。
【0060】
アクリル樹脂は、その他のモノマーに由来する構成単位をさらに有していてもよい。その他のモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、スチレン、メチルスチレン等の芳香族モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリルモノマーが挙げられる。
【0061】
(偏光子保護フィルムの製造方法)
本実施形態の偏光子保護フィルムは、公知の方法を用いて、製造することができる。以下、本実施形態の偏光子保護フィルムの製造方法の一例を説明する。
【0062】
まず、出口にダイスを備える押出機を用いて、アクリル樹脂を、必要に応じて、メタクリル酸メチル-スチレン共重合体とともに、混練した後、ダイスからストランドを押出す。次に、水槽を用いて、ストランドを冷却した後、ペレタイザを用いて、ストランドをペレット化し、アクリル樹脂組成物を得る。次に、出口にTダイを備える押出機を用いて、アクリル樹脂組成物を溶融させた後、Tダイからシートを押出し、冷却ロールで冷却して、原反フィルムを得る。次に、原反フィルムを二軸延伸して、本実施形態の偏光子保護フィルムを得る。このとき、二軸延伸は、同時二軸延伸であってもよいし、逐次二軸延伸であってもよい。
【0063】
原反フィルムを二軸延伸するときの温度は、アクリル樹脂組成物のガラス転移温度をTgとしたときに、(Tg+5)℃以上(Tg+20)℃以下であることが好ましく、(Tg+6)℃以上(Tg+18)℃以下であることがより好ましく、(Tg+7)℃以上(Tg+15)℃以下であることがさらに好ましい。また、原反フィルムを二軸延伸するときの面倍率は、特に限定されないが、例えば、2倍以上10倍以下である。原反フィルムを二軸延伸するときの延伸速度は、特に限定されないが、例えば、1.1倍/分以上100倍/分以下である。原反フィルムを逐次二軸延伸する場合は、一段目の延伸速度と二段目の延伸速度が同じであってもよいし、異なっていてもよい。なお、逐次二軸延伸において、通常、一段目の延伸は、長手方向(MD方向)の延伸であり、二段目の延伸は、幅方向(TD方向)の延伸である。
【0064】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されず、本発明の趣旨の範囲内で、上記の実施形態を適宜変更してもよい。
【実施例0065】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【0066】
(主鎖にグルタルイミド環を含む構成単位の含有率)
プロトン共鳴周波数400MHzの核磁気共鳴装置AvanceIII(BRUKER製)を用いて、アクリル樹脂の1H-NMRスペクトルを測定した。メタクリル酸メチルに由来する構成単位と、主鎖にグルタルイミド環を含む構成単位と、のモル比を重量換算し、主鎖にグルタルイミド環を含む構成単位の含有率を算出した。このとき、3.5~3.8ppm付近のメタクリル酸メチルのO-CH3プロトンに由来するピーク面積Aと、3.0~3.3ppm付近のグルタルイミドのN-CH3プロトンに由来するピーク面積Bと、により、モル比を求めた。
【0067】
(ガラス転移温度)
高感度型示差走査熱量計DSC7000X(日立ハイテクサイエンス製)を用いて、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/minで、アクリル樹脂またはアクリル樹脂組成物10mgを昇温し、中点法により、ガラス転移温度を決定した。
【0068】
(1%重量減少温度)
示差熱熱重量同時測定装置STA7200(日立ハイテクサイエンス製)を用いて、窒素雰囲気下、室温から昇温速度10℃/minで、アクリル樹脂組成物10mgを昇温し、1%重量減少温度を求めた。
【0069】
(複屈折発現性Δnxy)
原反フィルムから30×100mmの範囲を切り出した後、原反フィルムのガラス転移温度よりも5℃高い温度で、縦方向(長手方向)の延伸倍率が2倍になるように自由端一軸延伸し、一軸延伸フィルムを得た。次に、位相差測定装置KOBRA-WR(王子計測機器製)を用いて、一軸延伸フィルムの中央部の面内位相差を測定した後、一軸延伸フィルムの厚さで除し、複屈折発現性Δnxyを求めた。
【0070】
(厚さ方向位相差Rth)
位相差測定装置KOBRA-WR(王子計測機器製)を用いて、偏光子保護フィルムの波長590nmにおける厚さ方向位相差Rthを測定した。
【0071】
(面内位相差Reの平均値および標準偏差)
偏光子保護フィルムから中央の150×150mmの範囲を切り出した後、2次元複屈折評価システムWPA-200(フォトニックラティス製)を用いて、面内位相差Reの平均値および標準偏差を測定した。このとき、MD方向およびTD方向に、それぞれ3本ずつ線を引いた後、ライン解析機能により、面内位相差Reの平均値および標準偏差を求めた。
【0072】
(黄色度)
偏光子保護フィルムを3cm角に切り出した後、カラーメーターSC-P(スガ試験機製)を用いて、JIS K7373:2006に準拠して、黄色度(YI)を測定した。
【0073】
(波長380nmの吸光度)
紫外可視近赤外分光光度計UV-560(日本分光製)を用いて、偏光子保護フィルムの波長380nmの吸光度を測定した。
【0074】
(光弾性係数)
位相差測定装置KOBRA(王子計測機器製)を用いて、偏光子保護フィルムの光弾性係数を測定した。具体的には、偏光子保護フィルムを15mm×60mmに裁断したフィルムに対して、引張荷重を0gから1100gまで100gずつ変化させて負荷したときの位相差の変化を測定した。引張荷重値より算出される応力をX軸とし、位相差の実測値とフィルムの厚みから算出される複屈折をY軸として、プロットしたグラフの直線の傾きを算出し、光弾性係数とした。
【0075】
(液晶パネルの斜め方向から視認した場合の黄色度)
液晶シミュレーターLCD Master(シンテック製)を用いて、液晶パネルのシミュレーションを実施した。このとき、光源側に配置されている偏光板と、面内位相差Reが295nmであるIPS方式の液晶セルと、視認側に配置されている偏光板と、の順に配置し、光源側および視認側に配置されている偏光板の液晶セルと対向する側の偏光子保護フィルムの光学特性として、厚さ方向位相差Rthの測定結果を入力した。次に、液晶セルを暗状態に設定した時の極角70°、方位角40°から視認した場合のXYZ表色の値をシミュレーションにより求め、JIS K7373:2006に準拠し、下記式から、黄色度(YI)を求めた。
YI=100(1.2985X-1.1335Z)/Y
【0076】
(Rth(447)/Rth(548)、Rth(628)/Rth(548)およびNz係数)
位相差測定装置KOBRA-WR(王子計測機器製)を用いて、偏光子保護フィルムの波長λ(λ=446.7nm、547.9nm、628.2nm)における位相差を測定した。具体的には、各波長における面内位相差Re(λ)および吸収軸を傾斜軸として40°傾斜させて測定した位相差R40(λ)を測定した後、3次元屈折率計算ソフトN-Calc(王子計測機器製)を用いて、各波長における三次元屈折率nx(λ)、ny(λ)、nz(λ)を計算した。次に、三次元屈折率nx(λ)、ny(λ)、nz(λ)を用いて、式
Rth(λ)=[{nx(λ)+ny(λ)}/2-nz(λ)]×d
により、各波長における厚さ方向位相差Rth(λ)を計算し、波長分散特性Rth(447)/Rth(548)、Rth(628)/Rth(548)を求めた。また、波長548nmにおける面内位相差Re(548)、厚さ方向位相差Rth(548)を用いて、式
Nz係数=[Rth(548)/Re(548)]+0.5
により、Nz係数を計算した。
【0077】
(重量平均分子量、数平均分子量および多分散度)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、アクリル樹脂組成物の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および多分散度(Mw/Mn)を算出した。このとき、アクリル樹脂組成物20mgをテトラヒドロフラン10mLに溶解して調製した試料溶液を用いて、以下の条件で分析を実施した。
測定機器:HLC-8420GPC(東ソー製)
検出器:RI検出器
溶離剤:テトラヒドロフラン
ガードカラム:TSKgel guardcolumn SuperH-L(東ソー製)
分析カラム:TSKgel SuperH5000、SuperH4000、SuperH3000、SuperH2000(東ソー製)(直列)
溶離剤流量:0.6mL/min
測定温度:40℃
標準物質:標準ポリスチレン(東ソー製)
【0078】
(アクリル樹脂1の製造)
出口にダイスを備える口径40mmの噛合い型同方向回転式二軸押出機(L/D=90)の各温調ゾーンの設定温度を250~280℃、スクリュー回転数を85rpmとし、メタクリル酸メチル樹脂パラペットHM(クラレ製)をニーディングブロックによって溶融させ、充満させた。次に、メタクリル酸メチル樹脂に対して、1.8重量%のモノメチルアミン(三菱ガス化学製)をノズルから添加して、メタクリル酸メチル樹脂をイミド化させた。次に、水槽を用いて、ダイスから押し出されたストランドを冷却した後、ペレタイザを用いて、ストランドをペレット化して、樹脂(I)を得た。
【0079】
出口にダイスを備える口径40mmの噛合い型同方向回転式二軸押出機(L/D=90)の各温調ゾーンの設定温度を240~260℃、スクリュー回転数を85rpmとし、樹脂(I)をニーディングブロックによって溶融させ、充満させた。次に、樹脂(I)に対して、0.56重量%の炭酸ジメチルをノズルから添加し、樹脂(I)中のカルボキシル基をエステル化させた。このとき、反応後の副生成物および過剰の炭酸ジメチルを除去した。次に、水槽を用いて、ダイスから押し出されたストランドを冷却した後、ペレタイザを用いて、ストランドをペレット化して、アクリル樹脂1を得た。アクリル樹脂1は、ガラス転移温度が123℃であり、主鎖にグルタルイミド環を含む構成単位の含有率が6重量%であった。
【0080】
(アクリル樹脂2の製造)
モノメチルアミンの添加量を、メタクリル酸メチル樹脂に対して、4.3重量%に変更した以外は、アクリル樹脂1と同様にして、アクリル樹脂2を得た。アクリル樹脂2は、ガラス転移温度が125℃であり、主鎖にグルタルイミド環を含む構成単位の含有率が15重量%であった。
【0081】
(アクリル樹脂3の製造)
メタクリル酸メチル樹脂の代わりに、スチレンに由来する構成単位の含有率が40重量%であるメタクリル酸メチル-スチレン共重合体TX-100(デンカ製)を使用し、モノメチルアミンの添加量を、メタクリル酸メチル-スチレン共重合体に対して、8.2重量%とした以外は、アクリル樹脂1と同様にして、アクリル樹脂3を得た。アクリル樹脂5は、ガラス転移温度が125℃であり、主鎖にグルタルイミド環を含む構成単位の含有率が45重量%であった。
【0082】
表1に、アクリル樹脂の特性を示す。
【0083】
【0084】
(実施例1)
出口にダイスを備える口径15mmの噛合い型同方向回転式二軸押出機(L/D=45)を用いて、95重量%のアクリル樹脂1と、スチレンに由来する構成単位の含有率が11重量%であるメタクリル酸メチル-スチレン共重合体KT-89(デンカ製)5重量%と、を混練した。次に、水槽を用いて、押出機の出口に設けられたダイスから押出されたストランドを冷却した後、ペレタイザを用いて、ストランドをペレット化して、アクリル樹脂組成物を得た。アクリル樹脂組成物は、ガラス転移温度が123℃であり、1%重量減少温度が308℃であり、Mwが8.1万であり、Mw/Mnが1.62であった。
【0085】
アクリル樹脂組成物を100℃で5時間乾燥させた後、出口にTダイを備える口径15mmの噛合い型同方向回転式二軸押出機(L/D=45)を用いて、アクリル樹脂組成物を溶融させた。次に、冷却ロールを用いて、Tダイから押出されたシートを冷却し、幅160mm、厚み160μmの原反フィルムを得た。
【0086】
フィルム二軸延伸装置IMC-1905(井元製作所製)を用いて、アクリル樹脂組成物のガラス転移温度よりも15℃高い温度で、縦方向および横方向の延伸倍率が2倍になるように、原反フィルムを同時二軸延伸し、280mm×280mmの偏光子保護フィルムを得た。
【0087】
(実施例2)
アクリル樹脂1およびKT-89(デンカ製)を混合する比率を、それぞれ90重量%および10重量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、偏光子保護フィルムを得た。このとき、アクリル樹脂組成物は、ガラス転移温度が123℃であり、1%重量減少温度が308℃であり、Mwが8.1万であり、Mw/Mnが1.62であった。
【0088】
(実施例3)
アクリル樹脂組成物のガラス転移温度よりも7℃高い温度で、原反フィルムを同時二軸延伸した以外は、実施例2と同様にして、偏光子保護フィルムを得た。
【0089】
(実施例4)
KT-89(デンカ製)の代わりに、スチレンに由来する構成単位の含有率が25重量%であるメタクリル酸メチル-スチレン共重合体MS-750(東洋スチレン製)を使用し、アクリル樹脂組成物のガラス転移温度よりも10℃高い温度で、原反フィルムを同時二軸延伸した以外は、実施例2と同様にして、偏光子保護フィルムを得た。このとき、アクリル樹脂組成物は、ガラス転移温度が122℃であり、1%重量減少温度が306℃であり、Mwが7.6万であり、Mw/Mnが1.59であった。
【0090】
(実施例5)
KT-89(デンカ製)の代わりに、メタクリル酸メチル樹脂パラペットHM(クラレ製)を10重量%添加した以外は、実施例4と同様にして、偏光子保護フィルムを得た。このとき、アクリル樹脂組成物は、ガラス転移温度が120℃であり、1%重量減少温度が302℃であり、Mwが8.1万であり、Mw/Mnが1.59であった。
【0091】
(比較例1)
KT-89(デンカ製)を使用しなかった以外は、実施例1と同様にして、偏光子保護フィルムを得た。このとき、アクリル樹脂組成物は、ガラス転移温度が123℃であり、1%重量減少温度が310℃であった。
【0092】
(比較例2)
アクリル樹脂1の代わりに、アクリル樹脂2を使用した以外は、比較例1と同様にして、偏光子保護フィルムを得た。このとき、アクリル樹脂組成物は、ガラス転移温度が125℃であり、1%重量減少温度が315℃であった。
【0093】
(比較例3)
アクリル樹脂1を使用せず、アクリル樹脂組成物のガラス転移温度よりも20℃高い温度で、原反フィルムを同時二軸延伸した以外は、実施例1と同様にして、偏光子保護フィルムを得た。このとき、アクリル樹脂組成物は、ガラス転移温度が117℃であり、1%重量減少温度が297℃であった。
【0094】
(比較例4)
KT-89(デンカ製)の代わりに、スチレンに由来する構成単位の含有率が20重量%であるメタクリル酸メチル-スチレン共重合体MS800(新日鉄化学製)を使用し、アクリル樹脂組成物のガラス転移温度よりも30℃高い温度で、原反フィルムを同時二軸延伸した以外は、比較例3と同様にして、偏光子保護フィルムを得た。このとき、アクリル樹脂組成物は、ガラス転移温度が115℃であり、1%重量減少温度が296℃であった。
【0095】
(比較例5)
アクリル樹脂1の代わりに、アクリル樹脂3を使用し、アクリル樹脂組成物のガラス転移温度よりも35℃高い温度で、原反フィルムを同時二軸延伸した以外は、比較例1と同様にして、偏光子保護フィルムを得た。このとき、アクリル樹脂組成物は、ガラス転移温度が125℃であり、1%重量減少温度が320℃であった。
【0096】
表2に、アクリル樹脂組成物および偏光子保護フィルムの特性および評価結果を示す。
【0097】
【0098】
表2から、実施例1~5の偏光子保護フィルムは、Reの標準偏差および液晶パネルの斜め方向から視認した場合のYIの低減を両立していることがわかる。これに対して、比較例1、2の偏光子保護フィルムは、それぞれRthが0.0nm、10.2nmであるため、液晶パネルの斜め方向から視認した場合のYIが大きくなる。比較例3~5の偏光子保護フィルムは、それぞれReの平均値が0.8、0.9、1.0であるため、Reの標準偏差が大きくなる。