(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144332
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】酸味及び/又は酸臭抑制用組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 27/00 20160101AFI20241003BHJP
A23L 27/60 20160101ALI20241003BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20241003BHJP
A23C 9/123 20060101ALI20241003BHJP
A23B 7/10 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A23L27/00 Z
A23L27/60 A
A23L2/52 101
A23L2/52
A23C9/123
A23B7/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】39
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024051060
(22)【出願日】2024-03-27
(31)【優先権主張番号】P 2023051604
(32)【優先日】2023-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 澄恵
(72)【発明者】
【氏名】北島 誠司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 実穂
(72)【発明者】
【氏名】中條 康太
【テーマコード(参考)】
4B047
4B117
4B169
【Fターム(参考)】
4B047LB09
4B047LF07
4B047LF10
4B047LG09
4B047LG14
4B047LG16
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4B117LK15
4B117LK16
4B117LK18
4B169DA10
4B169DA14
(57)【要約】
【課題】食品や医薬の有する酸味及び/又は酸臭を抑制しうる組成物を提供する。
【解決手段】(A)グルタミルバリルグリシン又はその塩、(B)三温糖及び(C)うま味成分からなる群から選択される少なくとも2つを含む酸味及び/又は酸臭抑制用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)グルタミルバリルグリシン又はその塩、(B)三温糖及び(C)うま味成分からなる群から選択される少なくとも2つを含む酸味及び/又は酸臭抑制用組成物。
【請求項2】
成分(A)に対する成分(B)の重量比((A):(B))が、フリー体に換算して、1:0.1~200,000,000である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
成分(A)に対する成分(C)の重量比((A):(C))が、フリー体に換算して、1:0.000001~100である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
成分(C)に対する成分(B)の重量比((C):(B))が、フリー体に換算して、1:500~20,000,000である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
成分(A)、(B)及び(C)を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
成分(A)に対する成分(B)及び(C)の重量比(A:B:C)が、フリー体に換算して、1:0.1~200,000,000:0.000001~100である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
酸味及び/又は酸臭が有機酸又はその塩に起因する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
成分(A)の食品又は医薬への添加量が、フリー体に換算して、食品又は医薬の総重量に対して、喫食時の濃度が0.00001~50重量ppmとなるように用いられる、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
成分(B)の食品又は医薬への添加量が、食品又は医薬の総重量に対して、喫食時の濃度が0.0001~50重量%となるように用いられる、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
成分(C)の食品又は医薬への添加量が、フリー体に換算して、食品又は医薬の総重量に対して、喫食時の濃度が0.000005~100重量ppmとなるように用いられる、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
成分(A)の食品又は医薬への添加量が、フリー体に換算して、食品又は医薬中の有機酸100重量部に対して、0.00000005~2重量部となるように用いられる、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
成分(B)の食品又は医薬への添加量が、食品又は医薬中の有機酸100重量部に対して、0.001~2000重量部となるように用いられる、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
成分(C)の食品又は医薬への添加量が、フリー体に換算して、食品又は医薬中の有機酸100重量部に対して、0.00000005~0.001重量部となるように用いられる、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
(A)グルタミルバリルグリシン又はその塩、(B)三温糖及び(C)うま味成分からなる群から選択される少なくとも2つを添加することを含む、食品又は医薬の酸味及び/又は酸臭抑制方法。
【請求項15】
成分(A)の添加量に対する成分(B)の添加量の重量比((A):(B))が、フリー体に換算して、1:0.1~200,000,000である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
成分(A)の添加量に対する成分(C)の添加量の重量比((A):(C))が、フリー体に換算して、1:0.000001~100である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
成分(C)の添加量に対する成分(B)の添加量の重量比((C):(B))が、フリー体に換算して、1:500~20,000,000である、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
成分(A)、(B)及び(C)を添加することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
成分(A)の添加量に対する成分(B)及び(C)の添加量の重量比(A:B:C)が、フリー体に換算して、1:0.1~200,000,000:0.000001~100である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
酸味及び/又は酸臭が有機酸又はその塩に起因する、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
食品又は医薬の総重量に対する、成分(A)の添加量が、フリー体に換算して、0.00001~50重量ppmである、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
食品又は医薬の総重量に対する、成分(B)の添加量が、0.0001~50重量%である、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
食品又は医薬の総重量に対する、成分(C)の添加量が、0.000005~100重量ppmである、請求項14に記載の方法。
【請求項24】
食品又は医薬中の有機酸100重量部に対する、成分(A)の添加量が、フリー体に換算して、0.00000005~2重量部である、請求項14に記載の方法。
【請求項25】
食品又は医薬中の有機酸100重量部に対する、成分(B)の添加量が、0.001~2000重量部である、請求項14に記載の方法。
【請求項26】
食品又は医薬中の有機酸100重量部に対する、成分(C)の添加量が、0.00000005~0.001重量部である、請求項14に記載の方法。
【請求項27】
(A)グルタミルバリルグリシン又はその塩、(B)三温糖及び(C)うま味成分からなる群から選択される少なくとも2つを添加することを含む、酸味及び/又は酸臭が抑制された食品又は医薬の製造方法。
【請求項28】
成分(A)の添加量に対する成分(B)の添加量の重量比((A):(B))が、フリー体に換算して、1:0.1~200,000,000である、請求項27に記載の製造方法。
【請求項29】
成分(A)の添加量に対する成分(C)の添加量の重量比((A):(C))が、フリー体に換算して、1:0.000001~100である、請求項27に記載の製造方法。
【請求項30】
成分(C)の添加量に対する成分(B)の添加量の重量比((C):(B))が、フリー体に換算して、1:500~20,000,000である、請求項27に記載の製造方法。
【請求項31】
成分(A)、(B)及び(C)を添加することを含む、請求項27に記載の製造方法。
【請求項32】
成分(A)の添加量に対する成分(B)及び(C)の添加量の重量比(A:B:C)が、フリー体に換算して、1:0.1~200,000,000:0.000001~100である、請求項31に記載の製造方法。
【請求項33】
酸味及び/又は酸臭が有機酸又はその塩に起因する、請求項27に記載の製造方法。
【請求項34】
食品又は医薬の総重量に対する、成分(A)の添加量が、フリー体に換算して、0.00001~50重量ppmである、請求項27に記載の製造方法。
【請求項35】
食品又は医薬の総重量に対する、成分(B)の添加量が、0.0001~50重量%である、請求項27に記載の製造方法。
【請求項36】
食品又は医薬の総重量に対する、成分(C)の添加量が、0.000005~100重量ppmである、請求項27に記載の製造方法。
【請求項37】
食品又は医薬中の有機酸100重量部に対する、成分(A)の添加量が、フリー体に換算して、0.00000005~2重量部である、請求項27に記載の製造方法。
【請求項38】
食品又は医薬中の有機酸100重量部に対する、成分(B)の添加量が、0.001~2000重量部である、請求項27に記載の製造方法。
【請求項39】
食品又は医薬中の有機酸100重量部に対する、成分(C)の添加量が、0.00000005~0.001重量部である、請求項27に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品又は医薬の酸味及び/又は酸臭抑制用組成物及び当該酸味及び/又は酸臭抑制方法、ならびに当該酸味及び/又は酸臭が抑制された食品又は医薬及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品分野において、酢などの有機酸は、マヨネーズやドレッシングの原料として使用されたり酢の物や和え物などの料理に直接使用されるほかにも、酸味料、調味料、保存料、日持向上剤、およびpH調整剤等として広く使用されている。特に酢の主成分である酢酸はその防腐及び抗菌作用により、従来から食品に添加されることが多いが、鼻をつく酸味とともに刺激臭(酸臭)を有するため、食品本来の風味を損ない一部の消費者に敬遠される原因にもなっている。
【0003】
こうした食品等の酸味・酸臭を抑制する方法について、従来、種々の提案がなされている。例えば、グルタミルバリルグリシン及び/又はその塩を、有機酸又はその塩と併用することで、有機酸又はその塩に特有の酸味や酸臭が抑制できること(特許文献1)、シクロテン、プロピオン酸、(±)-シトロネラール、2-メチルピラジン、酪酸、アントラニル酸メチル、ノートカトン及びβ-カリオフィレンオキシド等の化合物が酸味及び酸臭を効果的に抑制できること(特許文献2)等が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-187326号公報
【特許文献2】特開2022-170686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、食品等が有する酸味及び/又は酸臭を幅広く抑制しうる組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上述の課題を解決するべく鋭意検討した結果、グルタミルバリルグリシンに加え、意外にも三温糖を食品等に添加するだけで、食品等の酸味及び/又は酸臭が抑制されることを見出し、本発明を完成するに至った。またさらにうま味成分も前記成分と組み合わせることで食品等の酸味及び/又は酸臭が抑制されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0007】
[1](A)グルタミルバリルグリシン又はその塩、および(B)三温糖を含む酸味及び/又は酸臭抑制用組成物。
[2]成分(A)に対する成分(B)の重量比が、フリー体に換算して、1:0.00001~200,000,000である、[1]に記載の組成物。
[3]酸味及び/又は酸臭が有機酸又はその塩に起因する、[1]又は[2]に記載の組成物。
[4]成分(A)の食品又は医薬への添加量が、フリー体に換算して、食品又は医薬の総重量に対して、喫食時の濃度が0.001~100,000重量ppmとなるように用いられる、[1]~[3]のいずれかに記載の組成物。
[5]成分(B)の食品又は医薬への添加量が、食品又は医薬の総重量に対して、喫食時の濃度が0.0001~20重量%となるように用いられる、[1]~[4]のいずれかに記載の組成物。
[6]成分(A)の食品又は医薬への添加量が、フリー体に換算して、食品又は医薬中の有機酸100重量部に対して、0.0005~1.25重量部となるように用いられる、[1]~[5]のいずれかに記載の組成物。
[7]成分(B)の食品又は医薬への添加量が、食品又は医薬中の有機酸100重量部に対して、0.1~2000重量部となるように用いられる、[1]~[6]のいずれかに記載の組成物。
[8](A)グルタミルバリルグリシン又はその塩、および(B)三温糖を添加することを含む、食品又は医薬の酸味及び/又は酸臭抑制方法。
[9]成分(A)の添加量に対する成分(B)の添加量の重量比が、フリー体に換算して、1:0.00001~200,000,000である、[8]に記載の方法。
[10]酸味及び/又は酸臭が有機酸又はその塩に起因する、[8]又は[9]に記載の方法。
[11]食品又は医薬の総重量に対する、成分(A)の添加量が、フリー体に換算して、0.001~100,000重量ppmである、[8]~[10]のいずれかに記載の方法。
[12]食品又は医薬の総重量に対する、成分(B)の添加量が、0.0001~20重量%である、[8]~[11]のいずれかに記載の方法。
[13]食品又は医薬中の有機酸100重量部に対する、成分(A)の添加量が、フリー体に換算して、0.0005~1.25重量部である、[8]~[12]のいずれかに記載の方法。
[14]食品又は医薬中の有機酸100重量部に対する、成分(B)の添加量が、0.1~2000重量部である、[8]~[13]のいずれかに記載の方法。
[15](A)グルタミルバリルグリシン又はその塩、および(B)三温糖を添加することを含む、酸味及び/又は酸臭が抑制された食品又は医薬の製造方法。
[16]成分(A)の添加量に対する成分(B)の添加量の重量比が、フリー体に換算して、1:0.00001~200,000,000である、[15]に記載の方法。
[17]酸味及び/又は酸臭が有機酸又はその塩に起因する、[15]又は[16]に記載の方法。
[18]食品又は医薬の総重量に対する、成分(A)の添加量が、フリー体に換算して、0.001~100,000重量ppmである、[15]~[17]のいずれかに記載の方法。
[19]食品又は医薬の総重量に対する、成分(B)の添加量が、0.0001~20重量%である、[15]~[18]のいずれかに記載の方法。
[20]食品又は医薬中の有機酸100重量部に対する、成分(A)の添加量が、フリー体に換算して、0.0005~1.25重量部である、[15]~[19]のいずれかに記載の方法。
[21]食品又は医薬中の有機酸100重量部に対する、成分(B)の添加量が、0.1~2000重量部である、[15]~[20]のいずれかに記載の方法。
[1a](A)グルタミルバリルグリシン又はその塩、(B)三温糖及び(C)うま味成分からなる群から選択される少なくとも2つを含む酸味及び/又は酸臭抑制用組成物。
[1a-1]成分(A)及び(B)を含む、[1a]に記載の組成物。
[1a-2]成分(A)及び(C)を含む、[1a]に記載の組成物。
[1a-3]成分(B)及び(C)を含む、[1a]に記載の組成物。
[2a]成分(A)に対する成分(B)の重量比((A):(B))が、フリー体に換算して、1:0.1~200,000,000である、[1a]又は[1a-1]に記載の組成物。
[3a]成分(A)に対する成分(C)の重量比((A):(C))が、フリー体に換算して、1:0.000001~100である、[1a]又は[1a-2]に記載の組成物。
[4a]成分(C)に対する成分(B)の重量比((C):(B))が、フリー体に換算して、1:500~20,000,000である、[1a]又は[1a-3]に記載の組成物。
[5a]成分(A)、(B)及び(C)を含む、[1a]に記載の組成物。
[6a]成分(A)に対する成分(B)及び(C)の重量比(A:B:C)が、フリー体に換算して、1:0.1~200,000,000:0.000001~100である、[5a]に記載の組成物。
[7a]酸味及び/又は酸臭が有機酸又はその塩に起因する、[1a]~[6a]のいずれかに記載の組成物。
[8a]成分(A)の食品又は医薬への添加量が、フリー体に換算して、食品又は医薬の総重量に対して、喫食時の濃度が0.00001~50重量ppmとなるように用いられる、[1a]~[1a-2]、[2a]~[3a]及び[5a]~[7a]のいずれかに記載の組成物。
[9a]成分(B)の食品又は医薬への添加量が、食品又は医薬の総重量に対して、喫食時の濃度が0.0001~50重量%となるように用いられる、[1a]~[1a-1]、[1a-3]~[2a]及び[4a]~[7a]のいずれかに記載の組成物。
[10a]成分(C)の食品又は医薬への添加量が、フリー体に換算して、食品又は医薬の総重量に対して、喫食時の濃度が0.000005~100重量ppm又は0.000005~1重量ppmとなるように用いられる、[1a]、[1a-2]~[1a-3]及び[3a]~[7a]のいずれかに記載の組成物。
[11a]成分(A)の食品又は医薬への添加量が、フリー体に換算して、食品又は医薬中の有機酸100重量部に対して、0.00000005~2重量部となるように用いられる、[1a]~[1a-2]、[2a]~[3a]及び[5a]~[7a]のいずれかに記載の組成物。
[12a]成分(B)の食品又は医薬への添加量が、食品又は医薬中の有機酸100重量部に対して、0.001~2000重量部となるように用いられる、[1a]~[1a-1]、[1a-3]~[2a]及び[4a]~[7a]のいずれかに記載の組成物。
[13a]成分(C)の食品又は医薬への添加量が、フリー体に換算して、食品又は医薬中の有機酸100重量部に対して、0.00000005~0.001重量部となるように用いられる、[1a]、[1a-2]~[1a-3]及び[3a]~[7a]のいずれかに記載の組成物。
[14a](A)グルタミルバリルグリシン又はその塩、(B)三温糖及び(C)うま味成分からなる群から選択される少なくとも2つを添加することを含む、食品又は医薬の酸味及び/又は酸臭抑制方法。
[14a-1](A)及び(B)を添加することを含む、[14a]に記載の方法。
[14a-2](A)及び(C)を添加することを含む、[14a]に記載の方法。
[14a-3](B)及び(C)を添加することを含む、[14a]に記載の方法。
[15a]成分(A)の添加量に対する成分(B)の添加量の重量比((A):(B))が、フリー体に換算して、1:0.1~200,000,000である、[14a]又は[14a-1]に記載の方法。
[16a]成分(A)の添加量に対する成分(C)の添加量の重量比((A):(C))が、フリー体に換算して、1:0.000001~100である、[14a]又は[14a-2]に記載の方法。
[17a]成分(C)の添加量に対する成分(B)の添加量の重量比((C):(B))が、フリー体に換算して、1:500~20,000,000である、[14a]又は[14a-3]に記載の方法。
[18a]成分(A)、(B)及び(C)を添加することを含む、[14a]に記載の方法。
[19a]成分(A)の添加量に対する成分(B)及び(C)の添加量の重量比(A:B:C)が、フリー体に換算して、1:0.1~200,000,000:0.000001~100である、[18a]に記載の方法。
[20a]酸味及び/又は酸臭が有機酸又はその塩に起因する、[14a]~[19a]のいずれかに記載の方法。
[21a]食品又は医薬の総重量に対する、成分(A)の添加量が、フリー体に換算して、0.00001~50重量ppmである、[14a]~[14a-2]、[15a]~[16a]及び[18a]~[20a]のいずれかに記載の方法。
[22a]食品又は医薬の総重量に対する、成分(B)の添加量が、0.0001~50重量%である、[14a]~[14a-1]、[14a-3]~[15a]及び[17a]~[20a]のいずれかに記載の方法。
[23a]食品又は医薬の総重量に対する、成分(C)の添加量が、0.000005~100重量ppm又は0.000005~1重量ppmである、[14a]、[14a-2]~[14a-3]及び[16a]~[20a]のいずれかに記載の方法。
[24a]食品又は医薬中の有機酸100重量部に対する、成分(A)の添加量が、フリー体に換算して、0.00000005~2重量部である、[14a]~[14a-2]、[15a]~[16a]及び[18a]~[20a]のいずれかに記載の方法。
[25a]食品又は医薬中の有機酸100重量部に対する、成分(B)の添加量が、0.001~2000重量部である、[14a]~[14a-1]、[14a-3]~[15a]及び[17a]~[20a]のいずれかに記載の方法。
[26a]食品又は医薬中の有機酸100重量部に対する、成分(C)の添加量が、0.00000005~0.001重量部である、[14a]、[14a-2]~[14a-3]及び[16a]~[20a]のいずれかに記載の方法。
[27a](A)グルタミルバリルグリシン又はその塩、(B)三温糖及び(C)うま味成分からなる群から選択される少なくとも2つを添加することを含む、酸味及び/又は酸臭が抑制された食品又は医薬の製造方法。
[27a-1](A)及び(B)を添加することを含む、[27a]に記載の製造方法。
[27a-2](A)及び(C)を添加することを含む、[27a]に記載の製造方法。
[27a-3](B)及び(C)を添加することを含む、[27a]に記載の製造方法。
[28a]成分(A)の添加量に対する成分(B)の添加量の重量比((A):(B))が、フリー体に換算して、1:0.1~200,000,000である、[27a]又は[27a-1]に記載の製造方法。
[29a]成分(A)の添加量に対する成分(C)の添加量の重量比((A):(C))が、フリー体に換算して、1:0.000001~100である、[27a]又は[27a-2]に記載の製造方法。
[30a]成分(C)の添加量に対する成分(B)の添加量の重量比((C):(B))が、フリー体に換算して、1:500~20,000,000である、[27a]又は[27a-3]に記載の方法。
[31a]成分(A)、(B)及び(C)を添加することを含む、[27a]に記載の製造方法。
[32a]成分(A)の添加量に対する成分(B)及び(C)の添加量の重量比(A:B:C)が、フリー体に換算して、1:0.1~200,000,000:0.000001~100である、[31a]に記載の製造方法。
[33a]酸味及び/又は酸臭が有機酸又はその塩に起因する、[27a]~[32a]のいずれかに記載の製造方法。
[34a]食品又は医薬の総重量に対する、成分(A)の添加量が、フリー体に換算して、0.00001~50重量ppmである、[27a]~[27a-2]、[28a]~[29a]及び[31a]~[33a]のいずれかに記載の製造方法。
[35a]食品又は医薬の総重量に対する、成分(B)の添加量が、0.0001~50重量%である、[27a]~[27a-1]、[27a-3]~[28a]及び[30a]~[33a]のいずれかに記載の製造方法。
[36a]食品又は医薬の総重量に対する、成分(C)の添加量が、0.000005~100重量ppm又は0.000005~1重量ppmである、[27a]、[27a-2]~[27a-3]及び[29a]~[33a]のいずれかに記載の製造方法。
[37a]食品又は医薬中の有機酸100重量部に対する、成分(A)の添加量が、フリー体に換算して、0.00000005~2重量部である、[27a]~[27a-2]、[28a]~[29a]及び[31a]~[33a]のいずれかに記載の製造方法。
[38a]食品又は医薬中の有機酸100重量部に対する、成分(B)の添加量が、0.001~2000重量部である、[27a]~[27a-1]、[27a-3]~[28a]及び[30a]~[33a]のいずれかに記載の製造方法。
[39a]食品又は医薬中の有機酸100重量部に対する、成分(C)の添加量が、0.00000005~0.001重量部である、[27a]、[27a-2]~[27a-3]及び[29a]~[33a]のいずれかに記載の製造方法。
【0008】
本発明により、簡便かつ安全に酸味及び/又は酸臭が抑制された食品等を提供することができ、小児から高齢者まで幅広い層において気軽に長期にわたり摂取することが容易になる。
本発明により、抗菌効果を維持したまま、簡便に酸味及び/又は酸臭を抑制することができるので、様々な加工食品や医薬等も製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、(A)グルタミルバリルグリシン又はその塩、ならびに(B)三温糖及び(C)うま味成分からなる群から選択される少なくとも2つを有効成分として含む酸味及び/又は酸臭抑制用組成物に関する(本明細書中、「本発明の組成物」と称することもある)。より詳細には、本発明の組成物は、成分(A)及び(B)、成分(A)及び(C)、成分(B)及び(C)の2つまたは成分(A)、(B)及び(C)の3種の組み合わせを有効成分として含む。
【0010】
(A)グルタミルバリルグリシン又はその塩
本発明におけるグルタミルバリルグリシンは、グルタミン酸、バリン、グリシンの3つのアミノ酸が結合したトリペプチドと呼ばれる化合物であり、帆立貝や魚醤などにも含まれている物質である。
【0011】
本発明において、グルタミルバリルグリシンの塩としては、経口摂取可能なものであれば特に制限されない。例えば、カルボキシル基等の酸性基に対する塩としては、アンモニウム塩、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属との塩、アルミニウム塩、亜鉛塩、トリエチルアミン、エタノールアミン、モルホリン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、ジシクロへキシルアミン等の有機アミンとの塩、アルギニン、リジン等の塩基性アミノ酸との塩が挙げられる。また、アミノ基等の塩基性基に対する塩としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、臭化水素酸等の無機酸との塩、酢酸、クエン酸、安息香酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸、タンニン酸、酪酸、ヒベンズ酸、パモ酸、エナント酸、デカン酸、テオクル酸、サリチル酸、乳酸、シュウ酸、マンデル酸、リンゴ酸、メチルマロン酸等の有機カルボン酸との塩、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等の有機スルホン酸との塩が挙げられる。なお、塩としては、1種の塩を用いてもよく、2種またはそれ以上の塩を組み合わせて用いてもよい。
【0012】
グルタミルバリルグリシン及びその塩は、市販品を用いてもよく、適宜製造して取得したものを用いてもよい。
【0013】
グルタミルバリルグリシンの製造方法は特に制限されず、例えば公知の方法を利用できる。公知の方法としては、例えば、(1)化学的にグルタミルバリルグリシンを合成する方法や(2)酵素的な反応によりグルタミルバリルグリシンを合成する方法が挙げられる。
【0014】
化学的にグルタミルバリルグリシンを合成する場合、ペプチド合成機を用いてペプチドを合成あるいは半合成することができる。化学的にペプチドを合成する方法としては、例えば、ペプチド固相合成法が挙げられる。酵素的な反応によりグルタミルバリルグリシンを合成する場合、例えば、WO2004/011653に記載の方法を用いることができる。
【0015】
また、グルタミルバリルグリシンは、例えば、当該グルタミルバリルグリシンの生産能を有する微生物を培養し、培養液または菌体から当該グルタミルバリルグリシンを回収することで製造することができる。具体的には、例えば、特開2012-213376号公報に記載の方法により、グルタミルバリルグリシンを高濃度に含有する酵母が得られる。また、グルタミルバリルグリシンは、例えば、当該グルタミルバリルグリシンを含有する農水畜産物から回収することで製造することができる。
【0016】
グルタミルバリルグリシンは、精製品であってもよく、そうでなくてもよい。すなわち、グルタミルバリルグリシンとしては、当該ペプチドを高含有する素材を用いてもよい。「グルタミルバリルグリシンを高含有する」とは、グルタミルバリルグリシンの含有量が100重量ppm以上であることをいう。すなわち、「グルタミルバリルグリシンを配合(添加)すること」には、グルタミルバリルグリシンそのものを配合することに限られず、グルタミルバリルグリシンを高含有する素材を配合することも包含される。グルタミルバリルグリシンを高含有する素材として、具体的には、例えば、当該ペプチドの生産能を有する微生物を培養して得られた培養液、菌体、培養上清等の発酵生産物、およびそれらの加工品が挙げられる。加工品としては、上記のような発酵生産物を、濃縮、希釈、乾燥、分画、抽出、精製等の処理に供したものが挙げられる。そのような加工品としては、例えば、グルタミルバリルグリシンを含有する酵母エキスが挙げられる。なお、酵母エキス以外にも、食品(食材や調味料を含む)には天然にグルタミルバリルグリシンを含有するものが存在し得るが、そのような酵母エキス以外の食品(食材や調味料を含む)そのものは、本発明の組成物における「グルタミルバリルグリシンを高含有する素材」からは除かれてもよい。
【0017】
本発明の組成物におけるグルタミルバリルグリシンの濃度や含有比率は、本発明の組成物の使用量等の諸条件に応じて適宜設定することができる。
【0018】
本発明の組成物における成分(A)グルタミルバリルグリシンの食品又は医薬への添加量(濃度)は、喫食時の濃度が、酸味及び/又は酸臭抑制の観点から所望の範囲となるように用いられる。
例えば、成分(A)のグルタミルバリルグリシンのフリー体の重量換算で、喫食時の濃度が、食品又は医薬の総重量に対して、通常0.001重量ppm以上、好ましくは0.01重量ppm以上、より好ましくは0.1重量ppm以上、さらに好ましくは0.5重量ppm以上、よりさらに好ましくは0.6重量ppm以上、特に好ましくは1重量ppm以上、より特に好ましくは1.2重量ppm以上、最も好ましくは1.5重量ppm以上であり、上限は、通常100,000重量ppm以下、好ましくは10,000重量ppm以下、より好ましくは1,000重量ppm以下、さらに好ましくは100重量ppm以下、よりさらに好ましくは50重量ppm以下、特に好ましくは10重量ppm以下、より特に好ましくは5重量ppm以下、最も好ましくは3重量ppm以下となるように用いられる。
具体的には、当該濃度は、通常0.001~100,000重量ppm、好ましくは0.01~10,000重量ppm、より好ましくは0.1~1,000重量ppm、さらに好ましくは0.5~100重量ppm、よりさらに好ましくは0.6~50重量ppm、特に好ましくは1~10重量ppm、より特に好ましくは1.2~5重量ppm、最も好ましくは1.5~3重量ppmである。
【0019】
別の態様としては、成分(A)のグルタミルバリルグリシンのフリー体の重量換算で、喫食時の濃度が、食品又は医薬の総重量に対して、通常0.00001重量ppm以上、好ましくは0.00005重量ppm以上、より好ましくは0.0001重量ppm以上、さらに好ましくは0.0002重量ppm以上であり、上限は、通常50重量ppm以下、好ましくは20重量ppm以下、より好ましくは10重量ppm以下、さらに好ましくは3重量ppm以下となるように用いられる。
具体的には、当該濃度は、通常0.00001~50重量ppm、好ましくは0.00005~20重量ppm、より好ましくは0.0001~10重量ppm、さらに好ましくは0.0002~3重量ppmである。
【0020】
本明細書において、喫食時の濃度とは、食品又は医薬の摂取時(経口服用時、口腔内使用時)における、成分(A)グルタミルバリルグリシンの濃度を意味し、調理後の喫食時点での濃度を表す。なお、歯磨き剤や洗口剤などの医薬部外品における喫食濃度とは、使用時の濃度、すなわち口に含む時点での濃度を表す。例えば、食品又は医薬が濃縮飲料である場合には、希釈して飲用する際における飲料のグルタミルバリルグリシン濃度を意味し、また食品又は医薬が粉末飲料である場合には、飲用水等に溶解して飲用する際の、飲料中のグルタミルバリルグリシン濃度を意味する。
【0021】
(B)三温糖
本発明の組成物に含まれる三温糖は、遠心分離した糖液(分蜜糖)をさらに繰り返し煮詰めて、結晶として取り出した砂糖であり、加熱によりカラメル色(黄褐色)を呈しているが、三温糖は上白糖の白い砂糖と同じ車糖に分類される精製糖の一種である。
【0022】
本発明において用いられる三温糖は、自体公知の方法又はこれに準ずる方法によって製造したもの、あるいは市販品を用いてもよい。
【0023】
本発明の組成物における成分(B)三温糖の食品又は医薬への添加量(濃度)は、喫食時の濃度が、酸味及び/又は酸臭抑制の観点から所望の範囲となるように用いられる。
例えば、成分(B)の三温糖の喫食時の濃度が、食品又は医薬の総重量に対して、通常0.0001重量%以上、好ましくは0.001重量%以上、より好ましくは0.01重量%以上、さらに好ましくは0.04重量%以上、よりさらに好ましくは0.05重量%以上、特に好ましくは0.08重量%以上、最も好ましくは0.1重量%以上であり、上限は、通常20重量%以下、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下、よりさらに好ましくは3重量%以下、特に好ましくは1重量%以下となるように用いられる。
具体的には、当該濃度は、通常0.0001~20重量%、好ましくは0.001~15重量%、より好ましくは0.01~10重量%、さらに好ましくは0.04~5重量%、よりさらに好ましくは0.05~3重量%、特に好ましくは0.08~1重量%、最も好ましくは0.1~1重量%である。
【0024】
別の態様としては、成分(B)の三温糖の喫食時の濃度が、食品又は医薬の総重量に対して、通常0.0001重量%以上、好ましくは0.0002重量%以上、より好ましくは0.0003重量%以上、さらに好ましくは0.0005重量%以上であり、上限は、通常50重量%以下、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは3重量%以下となるように用いられる。
具体的には、当該濃度は、通常0.0001~50重量%、好ましくは0.0002~20重量%、より好ましくは0.0003~10重量%、さらに好ましくは0.0005~3重量%、特に好ましくは0.001~1重量%、最も好ましくは0.01~1重量%である。
【0025】
本明細書において、喫食時の濃度とは、食品又は医薬の摂取時(経口服用時、口腔内使用時)における、成分(B)三温糖の濃度を意味し、調理後の喫食時点での濃度を表す。なお、医薬部外品における喫食濃度とは、使用時の濃度、すなわち口に含む時点での濃度を表す。例えば、食品又は医薬が濃縮飲料である場合には、希釈して飲用する際における飲料の三温糖濃度を意味し、また食品又は医薬が粉末飲料である場合には、飲用水等に溶解して飲用する際の、飲料中の三温糖濃度を意味する。
【0026】
本発明の組成物に含まれる成分(A)及び(B)の合計量は、例えば、本発明の組成物の総重量に対して、通常0.001重量%以上であり、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上である。また当該量は、本発明の組成物に対して、通常100重量%以下であり、好ましくは99重量%以下、より好ましくは90重量%以下である。
具体的には、当該量は、通常0.001~100重量%であり、好ましくは0.01~99重量%であり、より好ましくは0.1~90重量%である。
【0027】
本発明の組成物における成分(A)及び(B)の濃度や含有比率は、本発明の組成物を使用する食品等の種類等の諸条件に応じて適宜設定することができる。
【0028】
(C)うま味成分
本発明において、うま味成分とは、うま味を食品に付与する成分であって、核酸系うま味成分及びアミノ酸系うま味成分が挙げられる。酸味及び酸臭の抑制の観点からは核酸系うま味成分が好ましい。
【0029】
核酸系うま味成分としては、イノシン酸及びグアニル酸ならびにそれらの塩が挙げられる。
核酸の塩としては、成分(A)で例示されたものであれば特に限定されないが、ナトリウム塩、カルシウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩などが挙げられる。また核酸の塩は水和物塩又は無水化物でもよい。なかでも酸味及び/又は酸臭抑制の観点から、イノシン酸のナトリウム塩、グアニル酸のナトリウム塩及びそれらの混合物(5’-リボヌクレオタイド二ナトリウムでもよい)が好ましい。
本発明における核酸系うま味成分は、公知の製造方法で得られたものや市販品を使用することができる。
【0030】
アミノ酸系うま味成分としては、グルタミン酸、アスパラギン酸、リジン、ヒスチジン、タウリン、ベタイン、グリシン、クレアチン、アラニン及びアルギニンならびにそれらの塩が挙げられる。
アミノ酸の塩としては、成分(A)で例示されたものであれば特に限定されないが、ナトリウム塩、カルシウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩などが挙げられる。またアミノ酸の塩は水和物塩又は無水化物でもよい。なかでも酸味及び/又は酸臭抑制の観点から、グルタミン酸ナトリウムが好ましい。
本発明におけるアミノ酸系うま味成分は、公知の製造方法で得られたものや市販品を使用することができる。
【0031】
本発明におけるうま味成分は、上記から2種以上を含んでもよい。
【0032】
本発明におけるイノシン酸やグアニル酸又はグルタミン酸は、精製品であってもよく、そうでなくてもよい。例えば、イノシン酸やグアニル酸などの核酸としては、当該核酸を高含有する素材を用いてもよい。すなわち、「当該核酸を配合(添加)すること」には、当該核酸そのものを配合することに限られず、「当該核酸を高含有する素材」を配合することも包含される。例えばイノシン酸を高含有する素材として、具体的には、イノシン酸を含有する酵母エキスが挙げられる。なお、酵母エキス以外にも、食品(食材や調味料を含む)には天然にイノシン酸を含有するものが存在し得るが、そのような酵母エキス以外の食品(食材や調味料を含む)そのものは、本発明の組成物における「イノシン酸を高含有する素材」からは除かれてもよい。グアニル酸又はグルタミン酸を高含有する素材も同様である。
【0033】
本発明の組成物における成分(C)うま味成分の食品又は医薬への添加量(濃度)は、喫食時の濃度が、酸味及び/又は酸臭抑制の観点から所望の範囲となるように用いられる。
例えば、成分(C)の喫食時の濃度が、食品又は医薬の総重量に対して、通常0.000005重量ppm以上、好ましくは0.00001重量ppm以上、より好ましくは0.00005重量ppm以上、さらに好ましくは0.0001重量ppm以上であり、上限は、通常1重量ppm以下、好ましくは0.5重量ppm以下、より好ましくは0.1重量ppm以下、さらに好ましくは0.01重量ppm以下となるように用いられる。
具体的には、当該濃度は、通常0.000005~1重量ppm、好ましくは0.00001~0.5重量ppm、より好ましくは0.00005~0.1重量ppm、さらに好ましくは0.0001~0.01重量ppmである。
または成分(C)の喫食時の濃度が、食品又は医薬の総重量に対して、通常0.000005重量ppm以上、好ましくは0.00005重量ppm以上、より好ましくは0.0005重量ppm以上、さらに好ましくは0.001重量ppm以上であり、上限は、通常100重量ppm以下、好ましくは10重量ppm以下、より好ましくは1重量ppm以下、さらに好ましくは0.1重量ppm以下となるように用いられる。
具体的には、当該濃度は、通常0.000005~100重量ppm、好ましくは0.00005~10重量ppm、より好ましくは0.0005~1重量ppm、さらに好ましくは0.001~0.1重量ppmでもよい。
さらに例えば、成分(C)のイノシン酸やグルタミン酸のフリー体の重量換算で、喫食時の濃度が、食品又は医薬の総重量に対して、通常0.00005重量ppm以上、好ましくは0.0001重量ppm以上、より好ましくは0.0005重量ppm以上、さらに好ましくは0.001重量ppm以上であり、上限は、通常1重量ppm以下、好ましくは0.5重量ppm以下、より好ましくは0.1重量ppm以下、さらに好ましくは0.01重量ppm以下となるように用いられる。
具体的には、当該濃度は、通常0.00005~1重量ppm、好ましくは0.0001~0.5重量ppm、より好ましくは0.0005~0.1重量ppm、さらに好ましくは0.001~0.01重量ppmである。
【0034】
本発明の組成物は、成分(A)及び(B)、成分(A)及び(C)、成分(B)及び(C)の2つまたは成分(A)、(B)及び(C)の3つの組み合わせを含む。
【0035】
本発明の組成物に含まれる成分(A)~(C)の上記組み合わせの各合計量は、例えば、本発明の組成物の総重量に対して、通常0.001重量%以上であり、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上である。また当該量は、本発明の組成物に対して、通常100重量%以下であり、好ましくは99重量%以下、より好ましくは90重量%以下である。
具体的には、当該量は、通常0.001~100重量%であり、好ましくは0.01~99重量%であり、より好ましくは0.1~90重量%である。
【0036】
本発明の組成物における成分(A)~(C)の濃度や含有比率は、本発明の組成物を使用する食品等の種類等の諸条件に応じて適宜設定することができる。
【0037】
本発明の組成物における、成分(A)及び(B)の重量比((A):(B))は、酸味及び/又は酸臭抑制の観点から、フリー体に換算して、通常1:0.00001~200,000,000であり、1:0.001~15,000,000が好ましく、1:0.1~1,000,000がより好ましく、1:4~100,000がさらに好ましく、1:10~50,000がよりさらに好ましく、1:80~10,000が特に好ましく、1:200~8400がより特に好ましく、1:300~6700が最も好ましい。
別の態様において、本発明の組成物における、成分(A)及び(B)の重量比((A):(B))は、酸味及び/又は酸臭抑制の観点から、フリー体に換算して、通常1:0.1~200,000,000であり、1:1~180,000,000が好ましく、1:10~160,000,000がより好ましく、1:16.7~150,000,000がさらに好ましい。
【0038】
本発明の組成物における、成分(A)及び(C)の重量比((A):(C))は、酸味及び/又は酸臭抑制の観点から、フリー体に換算して、通常1:0.000001~100であり、1:0.000005~50が好ましく、1:0.00001~20がより好ましく、1:0.0001~10がさらに好ましい。
【0039】
本発明の組成物における、成分(C)及び(B)の重量比((C):(B))は、酸味及び/又は酸臭抑制の観点から、フリー体に換算して、通常1:500~20,000,000であり、1:1000~10,000,000が好ましく、1:2000~7,000,000がより好ましく、1:5000~5,000,000がさらに好ましい。
【0040】
本発明の組成物において、成分(A)、(B)及び(C)を含む場合の重量比((A):(B):(C))は、酸味及び/又は酸臭抑制の観点から、フリー体に換算して、通常1:0.1~200,000,000:0.000001~100であり、1:1~180,000,000:0.000005~50が好ましく、1:10~160,000,000:0.00001~20がより好ましく、1:16.7~150,000,000:0.0001~10がさらに好ましい。
【0041】
本発明の組成物は、成分(A)及び(B)のみ、成分(A)及び(C)のみ、成分(B)及び(C)のみ、成分(A)、(B)及び(C)のみ又は「その他の成分」を加えて、食品製造等の分野において慣用の方法により製造することができる。
「その他の成分」として、本発明の効果を損なわない範囲であれば特には限定されないが、例えば、γ-アミノ酪酸、セリン、アラニン、グリシン等のアミノ酸類およびその塩;食塩、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の無機塩類;難消化性デキストリン等の食物繊維;三温糖以外の砂糖、蜂蜜、メープルシロップ、スクロース、グルコース、フルクトース、異性化糖、オリゴ糖等の糖類;キシリトール、エリスリトール等の糖アルコール類;高甘味度甘味料;pH緩衝剤、pH調整剤、賦形剤、増量剤、香料、食用油、酸化防止剤、増粘安定剤、乳化剤、有機塩類、無機塩類、調味料(例、グルタミン酸ナトリウム等のうま味調味料等)、酸味料、着色料、発色剤、エタノール、水が挙げられる。
「その他の成分」としては、1種の成分を用いてもよく、2種またはそれ以上の成分を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
本発明の組成物は、本発明の効果を奏することを限度として、その他の成分を0~99.999重量%の割合で、好ましくは1~99.99重量%の割合で含有することができる。
【0043】
本発明の組成物の形態は、特に制限されないが、食品等に添加しやすい形態であり、粉状、顆粒状、液状、シロップ状、ゲル状、ペースト状、キューブ状等が挙げられる。製剤化は常法により行うことができる。
【0044】
本発明の組成物の製造は、自体公知の方法又はそれに準ずる方法により行い得る。
【0045】
本発明の組成物は、食品又は医薬、あるいはそれらの原料に添加して用いられる。本発明において「食品」とは、経口的に摂取され得るものを広く包含し、特に断りのない限り、いわゆる食べ物の他、飲料、調味料、サプリメント等も包含される。食品は、食品組成物も包含する概念である。また、本発明において「医薬」とは、医薬品の他、医薬部外品も包含する概念である。
【0046】
本発明の組成物が用いられ得る食品又は医薬は、酸味及び/又は酸臭を有し得るものであれば特に制限されないが、本発明の組成物は、有機酸又はその塩を含有する食品又は医薬に好適に用いられ得る。したがって、本発明の組成物は、有機酸又はその塩を含有する食品又は医薬用であってよい。また本発明の組成物は酸味及び/又は酸臭抑制剤として使用することもできる。
【0047】
本発明において、「酸味」とは、口腔内で感じる「酸っぱい」味をいい、例えば、食酢などの有機酸を含む食品等や未熟な果実や腐敗が進んだ食品等において感じられる味である。また本発明の組成物は、酸味の先味、中味、および後味のいずれも抑制することができるが、なかでも酸味の後味をより抑制することができる。
本発明において、「酸臭」とは、酸味を想起させるような「酸っぱい刺激臭」をいう。本発明の組成物は、鼻から直接嗅ぐ臭い(オルソネーザルアロマ)と、口に入れて飲み込むときや咀嚼中に喉から鼻腔に抜ける時に感じる臭い(レトロネーザルアロマ)のいずれも抑制することができるが、なかでもレトロネーザルアロマをより抑制することができる。
本発明において、酸味及び/又は酸臭の「抑制」とは、酸味及び/又は酸臭の強度を弱めること、すなわち酸味及び/又は酸臭の原因となる物質(酸味及び/又は酸臭物質ともいう)の酸味や酸臭の強度を部分的又は完全に感知されなくすることをいう。例えば、食品中の酸味成分の通常の量に本発明の組成物を適用した場合に酸味が低下した場合、酸味成分の倍量を加えた製品において、通常の量を加えた製品と同等またはそれ以下の酸味を感じることができた場合などを酸味が抑制されたと定義する。酸臭も同様である。
酸味及び/又は酸臭の有無や程度は、例えば、専門パネルによる官能評価等によって評価できる。
【0048】
酸味及び/又は酸臭は、その原因となる物質は限定されないが、有機酸又はその塩に起因するもの(酸味及び/又は酸臭物質ともいう)が挙げられる。
有機酸としては、食品又は医薬に通常含有され得るものであれば特に制限されないが、例えば、酢酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸、グルコン酸、フマル酸、アジピン酸、アスコルビン酸、フィチン酸、イタコン酸、α-ケトグルタル酸、ギ酸、吉草酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、クロロゲン酸、ソルビン酸、安息香酸等が挙げられ、好ましくは、酢酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸、グルコン酸、フマル酸、アジピン酸であり、より好ましくは、酢酸、クエン酸である。
また別の態様としては、有機酸としては、好ましくは、酢酸、クエン酸、アスコルビン酸、乳酸、より好ましくは酢酸、クエン酸、アスコルビン酸が挙げられる。
【0049】
有機酸の塩は、食品又は医薬に通常含有され得るものであれば特に制限されないが、例えば、アルカリ金属(例、ナトリウム、カリウム等)との塩、アルカリ土類金属(例、カルシウム、マグネシウム等)との塩等が挙げられる。
【0050】
なかでも本発明の組成物は、酢酸又はクエン酸に由来する酸味及び/又は酸臭を抑制するために、好適に用いられる。すなわち本発明の組成物は酢酸又はクエン酸などを含む食品又は医薬に好適に用いられる。
【0051】
また本発明の組成物は、酢酸、クエン酸又はアスコルビン酸に由来する酸味及び/又は酸臭を抑制するために、好適に用いられる。すなわち本発明の組成物は酢酸、クエン酸及びアスコルビン酸などを含む食品又は医薬に好適に用いられる。
【0052】
本発明の組成物が用いられ得る食品又は医薬における有機酸又はその塩の含有量(濃度)は、酸味及び/又は酸臭を感じる量であれば特に制限されず、食品又は医薬に通常含有され得る量であればよいが、食品又は医薬に対して、通常0.1重量%以上、好ましくは0.2重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上であり、上限は、通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは2重量%以下である。
具体的には、食品中の酢酸又はその塩の含有量(濃度)は、食品又は医薬に対して、通常0.1~10重量%であり、好ましくは0.2~5重量%であり、より好ましくは0.5~2重量%である。
【0053】
本発明の組成物が用いられ得る食品の種類は特に制限されないが、例えば、食酢(醸造酢、合成酢)を含有する食品(ドレッシング(イタリアンドレッシング、サウザンアイランドドレッシング、フレンチドレッシング、マヨネーズタイプ調味料等)、マヨネーズ;ソース類(タルタルソース、ケチャップ、ウスターソース等);天然系調味料(鶏肉エキス、牛肉エキス、豚肉エキス、羊肉エキス等の各種畜肉エキス類;鶏がらエキス、牛骨エキス、豚骨エキス等の各種がらエキス類;鰹エキス、鯖エキス、ぐちエキス、帆立エキス、蟹エキス、蝦エキス、煮干エキス、干し貝柱エキス等の各種魚介エキス類;鰹節エキス、鯖節エキス、宗田節エキス等の各種節エキス類;オニオンエキス、白菜エキス、セロリエキス等の各種野菜エキス類;昆布エキス等の各種海藻エキス類;ガーリックエキス、唐辛子エキス、胡椒エキス、カカオエキス等の各種香辛料エキス類;酵母エキス類;各種タンパク加水分解物;醤油、魚醤、蝦醤、味噌等の各種発酵調味料等やその混合物、加工品);風味調味料(鶏風味調味料、牛風味調味料、豚風味調味料等の各種畜肉風味調味料;鰹風味調味料、煮干風味調味料、干し貝柱風味調味料、甲殻類風味調味料等の各種魚介風味調味料;各種香辛野菜風味調味料;昆布風味調味料等);スープ(トムヤムクン、酸辣湯等);マリネ、南蛮漬け、寿司、酢飯、酢豚等);醸造酢、ヨーグルト、サワークリーム、チーズ、漬物、キムチ、味噌、醤油等の発酵食品;果実飲料(例、濃縮果汁、果汁飲料等)、ハーブティー、ヨーグルト飲料等の飲料;合成酢;ポン酢醤油等の果汁入り調味料;静菌剤、保存料、pH調整剤が用いられ得る食品(白米、おにぎり、おこわ、赤飯、ピラフ、チャーハン等の米飯類;中華麺、そば、うどん、パスタ等の麺類;煮物、揚げ物、サラダ、魚介類、餃子、ハンバーグ、焼き肉、ドリア、グラタン、スープ、卵焼き等の惣菜等、弁当類);菓子、パン類;及びこれらの加工品(電子レンジ調理用食品、インスタント食品(即席麺等)、缶詰食品、瓶詰食品、冷凍食品、乾燥食品等)等が挙げられる。
なかでも酸味課題の観点から、本発明の組成物は、食酢(醸造酢、合成酢)を含有する食品、pH調整剤が用いられ得る食品に好ましく適用され、なかでもドレッシングやマヨネーズ、弁当、総菜、冷凍食品等に好ましく適用される。
なかでも酸味課題の観点から、本発明の組成物は、果汁飲料、ヨーグルト飲料などの飲料等にも好ましく適用される。
さらには酸味課題の観点から、本発明の組成物は、漬物、キムチなどの発酵食品等にも好ましく適用される。
【0054】
本発明の組成物が用いられ得る食品は、例えば、保健機能食品、特定保健用食品、栄養機能食品、ダイエタリーサプリメント、栄養補助食品、健康補助食品、医療用食品、メディカルフード等として提供されるものであってよい。
【0055】
本発明の組成物が用いられ得る医薬の種類、剤形等は特に制限されないが、経口的に摂取し得るものが好ましく、例えば、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセルを含む)、エリキシル剤、シロップ剤、マイクロカプセル剤、ドリンク剤、乳剤、懸濁液剤等が挙げられる。医薬部外品としては、歯磨き剤、口中清涼剤、口臭予防剤、口臭除去剤、洗口剤、うがい剤等が挙げられる
【0056】
本発明の組成物が用いられ得る食品又は医薬の製造方法は特に制限されず、自体公知の方法又はこれに準ずる方法によって製造し得る。
【0057】
本発明には、成分(A)、(B)及び(C)からなる群から選択される少なくとも2つを添加することを含む、食品又は医薬品の酸味及び/又は酸臭の抑制方法も含まれる(本発明の方法と略することもある)。より詳細には、本発明の方法は、成分(A)及び(B)、成分(A)及び(C)、成分(B)及び(C)の2つまたは成分(A)、(B)及び(C)の3つを添加することを含む。
本発明の方法において用いられ得る成分(A)、(B)及び(C)の定義は既述に準じる。
【0058】
また本発明の方法における、食品及び医薬の定義及び酸味及び/又は酸臭の定義や種類さらにその好適範囲は、既述に準じる。
【0059】
本発明の方法における成分(A)、(B)及び(C)を食品又は医薬に添加する方法及び条件は特に限定されず、成分(A)、(B)及び(C)の形態や、成分(A)、(B)及び(C)を添加する食品又は医薬の種類等に応じて自体公知の方法又はそれに準ずる方法で行い得る。成分(A)、(B)及び(C)を食品又は医薬に添加する時期は特に限定されないが、例えば、食品又は医薬の製造中、食品又は医薬の製造後等が挙げられる。食品又は医薬を製造する前の原料に対し、成分(A)、(B)及び(C)を添加してもよい。成分(A)、(B)及び(C)は同時に添加しても時間差で添加してもよく、添加する順番も特に限定されない。
【0060】
本発明の方法において、食品又は医薬への成分(A)、(B)及び(C)の添加量は、酸味及び/又は酸臭物質の食品又は医薬への添加量に応じて設定し得る。
例えば、「酸味及び/又は酸臭物質を含有しているが、許容できない酸味及び/又は酸臭を呈していない食品又は医薬」に、酸味及び/又は酸臭物質を追加で添加すること(すなわち、食品又は医薬が含有する酸味及び/又は酸臭物質を増量すること)によって、当該組成物が許容できない酸味及び/又は酸臭を呈するようになる場合、当該食品又は医薬への成分(A)、(B)及び(C)の添加量は、追加で添加された酸味及び/又は酸臭物質の量(増量分)に応じて設定すればよく、酸味及び/又は酸臭物質を追加で添加する前の食品又は医薬(許容できない酸味及び/又は酸臭を呈していない食品又は医薬)が元から含有していた酸味及び/又は酸臭物質の量は考慮しなくてよい。
また、酸味及び/又は酸臭物質を原料の一つとして添加して製造された食品又は医薬が酸味及び/又は酸臭を呈する場合、当該食品又は医薬への成分(A)、(B)及び(C)の添加量は、原料として用いられた酸味及び/又は酸臭物質の量に応じて設定し得る。
更に、酸味及び/又は酸臭物質を原料の一つとして添加して製造された、酸味及び/又は酸臭を呈する食品又は医薬に、酸味及び/又は酸臭物質を追加で添加する場合、当該食品又は医薬への成分(A)、(B)及び(C)の添加量は、原料として用いられた酸味及び/又は酸臭物質と追加で添加された酸味及び/又は酸臭物質の合計量に応じて設定し得る。
【0061】
本発明の方法における、成分(A)、(B)及び(C)の食品又は医薬への添加量(食品又は医薬に添加される成分(A)、(B)及び(C)の量)は以下の通りである。
【0062】
本発明の方法における成分(A)の食品又は医薬への添加量(濃度)は、酸味及び/又は酸臭抑制の観点から所望の範囲となるように添加される。例えば、成分(A)のグルタミルバリルグリシンの添加量(濃度)は、フリー体の重量換算で、食品又は医薬の総重量に対して、通常0.001重量ppm以上、好ましくは0.01重量ppm以上、より好ましくは0.1重量ppm以上、さらに好ましくは0.5重量ppm以上、よりさらに好ましくは0.6重量ppm以上、特に好ましくは1重量ppm以上、より特に好ましくは1.2重量ppm以上、最も好ましくは1.5重量ppm以上であり、上限は、通常100,000重量ppm以下、好ましくは10,000重量ppm以下、より好ましくは1,000重量ppm以下、さらに好ましくは100重量ppm以下、よりさらに好ましくは50重量ppm以下、特に好ましくは10重量ppm以下、より特に好ましくは5重量ppm以下、最も好ましくは3重量ppm以下である。
具体的には、当該添加量(濃度)は、通常0.001~100,000重量ppm、好ましくは0.01~10,000重量ppm、より好ましくは0.1~1,000重量ppm、さらに好ましくは0.5~100重量ppm、よりさらに好ましくは0.6~50重量ppm、特に好ましくは1~10重量ppm、より特に好ましくは1.2~5重量ppm、最も好ましくは1.5~3重量ppmである。
【0063】
別の態様として、本発明の方法における成分(A)の食品又は医薬への添加量(濃度)は、酸味及び/又は酸臭抑制の観点から所望の範囲となるように添加される。例えば、成分(A)のグルタミルバリルグリシンの添加量(濃度)は、フリー体の重量換算で、食品又は医薬の総重量に対して、通常0.00001重量ppm以上、好ましくは0.00005重量ppm以上、より好ましくは0.0001重量ppm以上、さらに好ましくは0.0002重量ppm以上であり、上限は、通常50重量ppm以下、好ましくは20重量ppm以下、より好ましくは10重量ppm以下、さらに好ましくは3重量ppm以下である。
具体的には、当該添加量(濃度)は、通常0.00001~50重量ppm、好ましくは0.00005~20重量ppm、より好ましくは0.0001~10重量ppm、さらに好ましくは0.0002~3重量ppmである。
【0064】
本発明の方法における(B)の食品又は医薬への添加量(濃度)は、酸味及び/又は酸臭抑制の観点から所望の範囲となるように添加される。例えば、(B)の添加量(濃度)は、食品又は医薬の総重量に対して、通常0.0001重量%以上、好ましくは0.001重量%以上、より好ましくは0.01重量%以上、さらに好ましくは0.04重量%以上、よりさらに好ましくは0.05重量%以上、特に好ましくは0.08重量%以上、最も好ましくは0.1重量%以上であり、上限は、通常20重量%以下、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下、よりさらに好ましくは3重量%以下、特に好ましくは1重量%以下である。
具体的には、当該添加量(濃度)は、通常0.0001~20重量%、好ましくは0.001~15重量%、より好ましくは0.01~10重量%、さらに好ましくは0.04~5重量%、よりさらに好ましくは0.05~3重量%、特に好ましくは0.08~1重量%、最も好ましくは0.1~1重量%である。
【0065】
別の態様として、本発明の方法における(B)の食品又は医薬への添加量(濃度)は、酸味及び/又は酸臭抑制の観点から所望の範囲となるように添加される。例えば、(B)の添加量(濃度)は、食品又は医薬の総重量に対して、通常0.0001重量%以上、好ましくは0.0002重量%以上、より好ましくは0.0003重量%以上、さらに好ましくは0.0005重量%以上であり、上限は、通常50重量%以下、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは3重量%以下である。
具体的には、当該添加量(濃度)は、通常0.0001~50重量%、好ましくは0.0002~20重量%、より好ましくは0.0003~10重量%、さらに好ましくは0.0005~3重量%、特に好ましくは0.001~1重量%、最も好ましくは0.01~1重量%である。
【0066】
本発明の方法における成分(C)の食品又は医薬への添加量(濃度)は、酸味及び/又は酸臭抑制の観点から所望の範囲となるように添加される。例えば、成分(C)の添加量(濃度)は、フリー体の重量換算で、食品又は医薬の総重量に対して、通常0.000005重量ppm以上、好ましくは0.00001重量ppm以上、より好ましくは0.00005重量ppm以上、さらに好ましくは0.0001重量ppm以上であり、上限は、通常1重量ppm以下、好ましくは0.5重量ppm以下、より好ましくは0.1重量ppm以下、さらに好ましくは0.01重量ppm以下である。
具体的には、当該添加量(濃度)は、通常0.000005~1重量ppm、好ましくは0.00001~0.5重量ppm、より好ましくは0.00005~0.1重量ppm、さらに好ましくは0.0001~0.01重量ppmである。
または成分(C)の添加量(濃度)は、フリー体の重量換算で、食品又は医薬の総重量に対して、通常0.000005重量ppm以上、好ましくは0.00005重量ppm以上、より好ましくは0.0005重量ppm以上、さらに好ましくは0.001重量ppm以上であり、上限は、通常100重量ppm以下、好ましくは10重量ppm以下、より好ましくは1重量ppm以下、さらに好ましくは0.1重量ppm以下である。
具体的には、当該濃度は、通常0.000005~100重量ppm、好ましくは0.00005~10重量ppm、より好ましくは0.0005~1重量ppm、さらに好ましくは0.001~0.1重量ppmでもよい。
さらに例えば、成分(C)のイノシン酸やグルタミン酸の食品又は医薬への添加量(濃度)は、フリー体の重量換算で、食品又は医薬の総重量に対して、通常0.00005重量ppm以上、好ましくは0.0001重量ppm以上、より好ましくは0.0005重量ppm以上、さらに好ましくは0.001重量ppm以上であり、上限は、通常1重量ppm以下、好ましくは0.5重量ppm以下、より好ましくは0.1重量ppm以下、さらに好ましくは0.01重量ppm以下である。
具体的には、当該濃度は、通常0.00005~1重量ppm、好ましくは0.0001~0.5重量ppm、より好ましくは0.0005~0.1重量ppm、さらに好ましくは0.001~0.01重量ppmである。
【0067】
本発明の方法において、酸味及び/又は酸臭物質を含む食品の種類やその含有量によって成分(A)、(B)及び(C)の添加量を設定することができる。
【0068】
食品又は医薬中の酸味及び/又は酸臭物質の含有量は、その物質の種類や含まれている食品又は医薬の形態によって異なる。
例えば、食品又は医薬中の有機酸の濃度が通常0.1重量%以上、好ましくは0.2重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上で酸味及び/又は酸臭が感じられる場合、本発明の方法における成分(A)、(B)及び(C)は酸味及び/又は酸臭物質に対して、以下の割合で添加することができる:
成分(A):酸味及び/又は酸臭物質100重量部に対して、フリー体に換算して、通常0.0005重量部以上、好ましくは0.001重量部以上、より好ましくは0.008重量部以上、さらに好ましくは0.01重量部以上であり、上限は、通常1.25重量部以下、好ましくは0.5重量部以下、より好ましくは0.2重量部以下、さらに好ましくは0.04重量部以下である。具体的には、通常0.0005~1.25重量部、好ましくは0.001~0.5重量部、より好ましくは0.008~0.2重量部、さらに好ましくは0.01~0.04重量部;
成分(B):酸味及び/又は酸臭物質100重量部に対して、通常0.1重量部以上、好ましくは1重量部以上、より好ましくは5重量部以上、さらに好ましくは8重量部以上であり、上限は、通常2000重量部以下、好ましくは1000重量部以下、より好ましくは750重量部以下、さらに好ましくは500重量部以下、よりさらに好ましくは250重量部以下、特に好ましくは50重量部以下、最も好ましくは25重量部以下である。具体的には、通常0.1~2000重量部、好ましくは1~1000重量部、より好ましくは5~750重量部、さらに好ましくは8~500重量部、よりさらに好ましくは8~250重量部以下、特に好ましくは8~50重量部、最も好ましくは8~25重量部。
【0069】
具体的には、酸味及び/又は酸臭物質が酢酸の場合、例えばマヨネーズにおいて、酢酸の濃度が通常0.1重量部以上、好ましくは0.2重量部以上、より好ましくは0.5重量%以上で酸味及び/又は酸臭が感じられる。本発明の方法における成分(A)及び(B)はマヨネーズ中の酢酸に対して、以下の割合で添加することができる:
成分(A):酢酸100重量部に対して、フリー体に換算して、通常0.0005重量部以上、好ましくは0.001重量部以上、より好ましくは0.008重量部以上、さらに好ましくは0.01重量部以上であり、上限は、通常1.25重量部以下、好ましくは0.5重量部以下、より好ましくは0.2重量部以下、さらに好ましくは0.04重量部以下である。具体的には、通常0.0005~1.25重量部、好ましくは0.001~0.5重量部、より好ましくは0.008~0.2重量部、さらに好ましくは0.01~0.04重量部;
成分(B):酢酸100重量部に対して、通常0.1重量部以上、好ましくは1重量部以上、より好ましくは5重量部以上、さらに好ましくは8重量部以上であり、上限は、通常2000重量部以下、好ましくは1000重量部以下、より好ましくは750重量部以下、さらに好ましくは500重量部以下、よりさらに好ましくは250重量部以下、特に好ましくは50重量部以下、最も好ましくは25重量部以下である。具体的には、通常0.1~2000重量部、好ましくは1~1000重量部、より好ましくは5~750重量部、さらに好ましくは8~500重量部、よりさらに好ましくは8~250重量部以下、特に好ましくは8~50重量部、最も好ましくは8~25重量部である。
【0070】
別の態様としては、食品又は医薬中の酢酸、クエン酸及びアスコルビン酸などの有機酸の濃度が通常0.1重量%以上、好ましくは0.2重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上で酸味及び/又は酸臭が感じられる場合、本発明の方法における成分(A)及び(B)は酸味及び/又は酸臭物質に対して、以下の割合で添加することができる:
成分(A):酸味及び/又は酸臭物質100重量部に対して、フリー体に換算して、通常0.00000005重量部以上、好ましくは0.0000001重量部以上、より好ましくは0.0000005重量部以上、さらに好ましくは0.000001重量部以上であり、上限は、通常2重量部以下、好ましくは1重量部以下、より好ましくは0.5重量部以下、さらに好ましくは0.024重量部以下である。
具体的には、通常0.00000005~2重量部、好ましくは0.0000001~1重量部、より好ましくは0.0000005~0.5重量部、さらに好ましくは0.000001~0.024重量部である。
成分(B):酸味及び/又は酸臭物質100重量部に対して、通常0.001重量部以上、好ましくは0.005重量部以上、より好ましくは0.01重量部以上、さらに好ましくは0.02重量部以上であり、上限は、通常2000重量部以下、好ましくは1000重量部以下、より好ましくは500重量部以下、さらに好ましくは150重量部以下である。
具体的には、通常0.001~2000重量部、好ましくは0.005~1000重量部、より好ましくは0.01~500重量部、さらに好ましくは0.02~150重量部である。
成分(C):酸味及び/又は酸臭物質100重量部に対して、通常0.00000005重量部以上、好ましくは0.0000001重量部以上、より好ましくは0.0000005重量部以上、さらに好ましくは0.0000008重量部以上であり、上限は、通常0.001重量部以下、好ましくは0.0005重量部以下、より好ましくは0.0001重量部以下、さらに好ましくは0.00008重量部以下である。
具体的には、通常0.00000005~0.001重量部、好ましくは0.0000001~0.0005重量部、より好ましくは0.0000005~0.0001重量部、さらに好ましくは0.0000008~0.00008重量部である。
【0071】
さらに別の態様としては、成分(A)は、酸味及び/又は酸臭物質100重量部に対して、フリー体に換算して、通常0.0000001重量部以上、好ましくは0.0000002重量部以上、より好ましくは0.0000005重量部以上、さらに好ましくは0.000001重量部以上であり、上限は、通常0.002重量部以下、好ましくは0.001重量部以下、より好ましくは0.0002重量部以下、さらに好ましくは0.00002重量部以下である。
具体的には、通常0.0000001~0.002重量部、好ましくは0.0000002~0.001重量部、より好ましくは0.0000005~0.0002重量部、さらに好ましくは0.000001~0.00002重量部である。
【0072】
本発明の方法における、成分(A)及び(B)の添加量の重量比((A):(B))は、酸味及び/又は酸臭抑制の観点から、フリー体に換算して、通常1:0.00001~200,000,000であり、1:0.001~15,000,000が好ましく、1:0.1~1,000,000がより好ましく、1:4~100,000がさらに好ましく、1:10~50,000がよりさらに好ましく、1:80~10,000が特に好ましく、1:200~8400がより特に好ましく、1:300~6700が最も好ましい。
【0073】
別の態様において、本発明の方法における、成分(A)及び(B)の添加量の重量比((A):(B))は、酸味及び/又は酸臭抑制の観点から、フリー体に換算して、通常1:0.1~200,000,000であり、1:1~180,000,000が好ましく、1:10~160,000,000がより好ましく、1:16.7~150,000,000がさらに好ましい。
【0074】
本発明の方法における、成分(A)及び(C)の添加量の重量比((A):(C))は、酸味及び/又は酸臭抑制の観点から、フリー体に換算して、通常1:0.000001~100であり、1:0.000005~50が好ましく、1:0.00001~20がより好ましく、1:0.0001~10がさらに好ましい。
【0075】
本発明の組成物における、成分(C)及び(B)の添加量の重量比((C):(B))は、酸味及び/又は酸臭抑制の観点から、フリー体に換算して、通常1:500~20,000,000であり、1:1000~10,000,000が好ましく、1:2000~7,000,000がより好ましく、1:5000~5,000,000がさらに好ましい。
【0076】
本発明の組成物における、成分(A)、(B)及び(C)の添加量の重量比((A):(B):(C))は、酸味及び/又は酸臭抑制の観点から、フリー体に換算して、通常1:0.1~200,000,000:0.000001~100であり、1:1~180,000,000:0.000005~50が好ましく、1:10~160,000,000:0.00001~20がより好ましく、1:16.7~150,000,000:0.0001~10がさらに好ましい。
【0077】
本発明の方法には、食品又は医薬の製造工程に通常含まれる処理や工程を含んでもよい。
【0078】
本発明の方法において、成分(A)、(B)及び(C)を食品又は医薬に添加する方法としては、食品又は医薬への直接添加や、水や溶媒等を用いて希釈してからの添加等が挙げられ、添加形態に特に制限はない。また食品又は医薬に成分(A)、(B)及び(C)を添加する時期は、食品又は医薬の製造前の原料への添加、製造中、製造後、喫食直前、喫食中などいつ添加してもよく、(A)、(B)及び(C)は同時に添加しても時間差で添加してもよい。また各種定義や好適範囲は既述に準じる。
【0079】
本発明には、成分(A)、(B)及び(C)からなる群から選択される少なくとも2つを食品又は医薬に添加することを含む、酸味及び/又は酸臭が抑制された食品又は医薬の製造方法も含まれる(本発明の製造方法と略することもある)。より詳細には、本発明の製造方法は、成分(A)及び(B)、成分(A)及び(C)、成分(B)及び(C)の2つまたは成分(A)、(B)及び(C)の3つを添加することを含む。
【0080】
本発明の製造方法において用いられ得る成分(A)、(B)及び(C)ならびに食品又は医薬等の定義は既述に準じる。
【0081】
本発明の製造方法における、成分(A)、(B)及び(C)の食品又は医薬への添加量(食品又は医薬に添加される成分(A)、(B)及び(C)の量)や好適範囲は既述に準じる。
【0082】
また本発明の製造方法における、酸味及び/又は酸臭を有する成分の食品又は医薬中の含有量は、既述に準じる。
【0083】
本発明の製造方法において、食品又は医薬及びそれらに含まれ得る酸味及び/又は酸臭物質は、経口的に摂取され得るものであれば、その製造方法は特に制限されず、自体公知の方法又はこれに準ずる方法によって製造したものを用いてよい。例えば、化学合成法によって製造された化学合成品、あるいは、酸味及び/又は酸臭物質を含有する素材から抽出、精製された単離品であってよい。また、酸味及び/又は酸臭物質を含有する素材を、そのまま又は所望の程度に精製して用いてもよい。食品又は医薬ならびに酸味及び/又は酸臭物質は市販品であってもよい。
【0084】
本発明の製造方法における成分(A)、(B)及び(C)の添加比率は、酸味及び/又は酸臭物質の濃度等の諸条件に応じて適宜設定することができる。
【0085】
本発明の製造方法における成分(A)、(B)及び(C)の食品又は医薬への添加濃度は、特に制限されないが、本発明の製造方法に適用される、酸味及び/又は酸臭物質の種類や含有量に準じて適宜設定される。すなわち、本発明の製造方法においては酸味及び/又は酸臭物質を含む食品又は医薬に成分(A)、(B)及び(C)を添加することにより、成分(A)、(B)及び(C)を含まない場合と比較して、全体的に酸味及び/又は酸臭が抑制された食品又は医薬を得ることができる。
【0086】
上記成分(A)、(B)及び(C)の添加濃度は、食品又は医薬の喫食態様に応じて、そのまま、あるいは適宜修正して、当該成分(A)、(B)及び(C)の喫食量(喫食濃度)とすることができる。すなわち、濃縮または希釈されず喫食される(例えば、そのまま喫食される)食品を製造する場合、上記例示した成分(A)、(B)及び(C)の添加濃度は、そのまま、当該成分(A)、(B)及び(C)の喫食量と読み替えてよい。また、濃縮または希釈されて喫食される食品を製造する場合、上記例示した成分(A)、(B)及び(C)の添加濃度と、濃縮または希釈の倍率とから、当該成分(A)、(B)及び(C)の喫食量を設定することができる。例えば、10倍希釈して喫食される食品等を製造する場合、上記例示した成分(A)、(B)及び(C)の添加濃度の10倍を、当該成分(A)、(B)及び(C)の喫食量として設定してよい。
【0087】
本発明の製造方法においては、さらに、その他の成分(成分(A)、(B)及び(C)以外の成分)が添加される工程を含んでもよい。ここでいう「その他の成分」については、既述に準じる。また、溶解する工程、容器に充填する工程、ならびに殺菌処理する工程等、食品等の製造工程に通常含まれる処理や工程が含まれ得る。
【0088】
本発明の製造方法で得られる食品又は医薬は、具体的には、酸味及び/又は酸臭が抑制された食品又は医薬である。
【0089】
本発明の製造方法においては、成分(A)、(B)及び(C)を添加すること以外は、通常の食品又は医薬と同様の原料を用い、同様の方法によって食品又は医薬を製造することができる。成分(A)、(B)及び(C)の添加は、食品又は医薬の製造工程のいずれの段階で行われてもよい。すなわち、成分(A)、(B)及び(C)は、食品又は医薬の原料に添加されてもよく、製造途中の食品又は医薬に添加されてもよく、製造後の完成した食品等に添加されてもよい。また成分(A)、(B)及び(C)は、1回のみ添加されてもよく、2またはそれ以上の回数に分けて添加されてもよい。また、成分(A)、(B)及び(C)を添加する場合、成分(A)、(B)及び(C)は同時に食品又は医薬またはその原料に添加されてもよいし、それぞれ別個に、あるいは、任意の組み合わせで別個に、食品又は医薬またはその原料に添加されてもよい。すなわち食品又は医薬中で成分(A)、(B)及び(C)のいずれか2つが共存していれば酸味及び/又は酸臭抑制効果が得られる。
【0090】
本発明には、本発明の製造方法で得られた、成分(A)、(B)及び(C)からなる群から選択される少なくとも2つが含まれる食品又は医薬、特に酸味及び/又は酸臭が抑制された食品又は医薬も含まれる(本発明の食品又は医薬ともいう)。
本発明の食品又は医薬は、酸味及び/又は酸臭物質を含みながらも成分(A)、(B)及び(C)の少なくとも2つを一緒に含むことにより酸味及び/又は酸臭物質由来の酸味及び/又は酸臭が感じられない又はそれらが低減された食品又は医薬を意味する。本発明の食品又は医薬には、必要に応じて「その他の成分」を含んでもよく、各種定義や好適範囲は既述に準じる。
【実施例0091】
以下の実施例において本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
本明細書において「%」と記載されている場合は、特に断りのない限り、それぞれ「重量%」を意味する。
【0092】
(実施例1)
1.サンプルの調製
マヨネーズタイプ半固体状ドレッシング(有機酸含量0.76%)に酢酸ナトリウムを0.4%添加し撹拌後、各試料を表1に示す濃度通りの割合(評価サンプルの総重量に対する割合(%))で添加してサンプルを調製した。酢酸のみ添加したサンプル(0.4%酢酸ナトリウム添加マヨネーズタイプ半固体状ドレッシング)をネガティブコントロール(NC)とし、酢酸未添加のサンプルをポジティブコントロール(PC)とした。
【0093】
2.試験方法
あらかじめ表2に記載の参照サンプルを調製し、各サンプルに含まれる酢酸ナトリウムの相当量で評価した。すなわち0.4%酢酸ナトリウム添加サンプルで感じる酸臭及び酸味を5点とし、酢酸無添加のサンプルの酸臭及び酸味を1点とする表2に示す通りのサンプルの感覚を基準に評価した。5℃で一日放置したサンプル約0.5mLを口に含み、飲み込んで、上記のように表2(評価尺度の目安)を基準に評価者3名がそれぞれ0.1点刻みで点数をつけ、平均点を算出(表示)した。
【0094】
【0095】
【0096】
3.評価
3名の官能評価の平均点数の結果を表1に示す。
【0097】
グルタミルバリルグリシンと三温糖を組み合わせることにより、食品等の酸味及び/又は酸臭を相乗的に抑制する効果を示すことが認められた。
【0098】
(実施例2)
1.サンプルの調製
マヨネーズタイプ半固体状ドレッシング(有機酸含量0.76%)に酢酸ナトリウムを0.4%添加し撹拌後、各試料を表3に示す濃度通りの割合(評価サンプルの総重量に対する割合(%))で添加してサンプルを調製した。酢酸のみ添加したサンプル(0.4%酢酸ナトリウム添加マヨネーズタイプ半固体状ドレッシング)をネガティブコントロール(NC)とし、酢酸未添加のサンプルをポジティブコントロール(PC)とした。表中、グルタミルバリルグリシンを成分Aと表記する。
【0099】
2.試験方法
あらかじめ表2に記載の参照サンプルを調製し、実施例1と同様に、各サンプルに含まれる酢酸ナトリウムの相当量で評価した(評価者3名)。
【0100】
【0101】
3.評価
3名の官能評価の平均点数の結果を表3に示す。
単独では酸味及び/又は酸臭の抑制効果が弱いグルタミルバリルグリシン低濃度で添加した際にも、三温糖を組み合わせることにより、酢酸ナトリウム特有の酸味及び/又は酸臭を相乗的に抑制する効果を示すことが認められた。
【0102】
(実施例3)
1.サンプルの調製
マヨネーズタイプ半固体状ドレッシング(有機酸含量0.76%)にクエン酸を0.5%添加し撹拌後、各試料を表4に示す濃度通りの割合(評価サンプルの総重量に対する割合(%))で添加してサンプルを調製した。クエン酸のみ添加したサンプル(0.5%クエン酸添加マヨネーズタイプ半固体状ドレッシング)をネガティブコントロール(NC)とし、クエン酸未添加のサンプルをポジティブコントロール(PC)とした。表中、グルタミルバリルグリシンを成分Aと表記する。
【0103】
2.試験方法
あらかじめ表5に記載の参照サンプルを調製し、各サンプルに含まれるクエン酸の相当量で評価した。すなわち0.5%クエン酸添加サンプルで感じる酸臭及び酸味を6点とし、クエン酸無添加のサンプルの酸臭及び酸味を1点とする表5に示す通りのサンプルの感覚を基準に評価した。5℃で一日放置したサンプル約0.5mLを口に含み、飲み込んで、表5(評価尺度の目安)を基準に評価者3名がそれぞれ0.1点刻みで点数をつけ、平均点を算出(表示)した。
【0104】
【0105】
【0106】
3.評価
3名の官能評価の平均点数の結果を表4に示す。
単独添加時には酸味及び/又は酸臭の抑制効果が十分得られない低濃度添加時にも、グルタミルバリルグリシンと三温糖を組み合わせることにより、クエン酸の酸味及び/又は酸臭を相乗的に抑制する効果を示すことが認められた。
【0107】
(実施例4)
1.サンプルの調製
マヨネーズタイプ半固体状ドレッシング(有機酸含量0.76%)にクエン酸を0.5%添加し撹拌後、各試料を表6に示す濃度通りの割合(評価サンプルの総重量に対する割合(%))で添加してサンプルを調製した。クエン酸のみ添加したサンプル(0.5%クエン酸添加マヨネーズタイプ半固体状ドレッシング)をネガティブコントロール(NC)とし、クエン酸未添加のサンプルをポジティブコントロール(PC)とした。表中、グルタミルバリルグリシンを成分Aと表記する。イノシン酸二ナトリウムをINと表記する。
【0108】
2.試験方法
あらかじめ表5に記載の参照サンプルを調製し、実施例3と同様に、各サンプルに含まれるクエン酸の相当量で評価した(評価者3名)。
【0109】
【0110】
3.評価
3名の官能評価の平均点数の結果を表6に示す。
単独添加時には酸味及び/又は酸臭の抑制効果が十分得られない低濃度添加時にも、グルタミルバリルグリシン、三温糖、イノシン酸から2成分以上組み合わせることにより、クエン酸の酸味及び/又は酸臭を相乗的に抑制する効果を示すことが認められた。
【0111】
(実施例5)
1.サンプルの調製
マヨネーズタイプ半固体状ドレッシング(有機酸含量0.76%)にクエン酸を0.5%添加し撹拌後、各試料を表7に示す濃度通りの割合(評価サンプルの総重量に対する割合(%))で添加してサンプルを調製した。クエン酸のみ添加したサンプル(0.5%クエン酸添加マヨネーズタイプ半固体状ドレッシング)をネガティブコントロール(NC)とし、クエン酸未添加のサンプルをポジティブコントロール(PC)とした。表中、グルタミルバリルグリシンを成分Aと表記する。イノシン酸二ナトリウムをINと表記する。
【0112】
2.試験方法
あらかじめ表5に記載の参照サンプルを調製し、実施例3と同様に、各サンプルに含まれるクエン酸の相当量で評価した(評価者3名)。
【0113】
【0114】
3.評価
3名の官能評価の平均点数の結果を表7に示す。
単独添加では酸味及び/又は酸臭の抑制効果が十分得られない低濃度添加時にも、グルタミルバリルグリシン、三温糖、イノシン酸から2成分以上併用することで、クエン酸の酸味及び/又は酸臭を相乗的に抑制する効果を示すことが認められた。
【0115】
(実施例6)
1.サンプルの調製
果汁飲料(有機酸含量1.25%)にクエン酸を0.3%添加し撹拌後、各試料を表8に示す濃度通りの割合(評価サンプルの総重量に対する割合(%))で添加してサンプルを調製した。クエン酸のみ添加したサンプル(0.3%クエン酸添加果汁飲料)をネガティブコントロール(NC)とし、クエン酸未添加のサンプルをポジティブコントロール(PC)とした。表中、グルタミルバリルグリシンを成分Aと表記する。
果汁飲料は、水に以下の割合で材料を添加して撹拌して調製した。
ポッカレモン100(ポッカサッポロフード&ビバレッジ(株)):13%
上白糖(三井製糖(株)):7%
水:80%。
【0116】
2.試験方法
あらかじめ表9に記載の参照サンプルを調製し、各サンプルに含まれるクエン酸の相当量で評価した。すなわち0.3%クエン酸添加サンプルで感じる酸臭及び酸味を5点とし、クエン酸無添加のサンプルの酸臭及び酸味を1点とする表9に示す通りのサンプルの感覚を基準に評価した。5℃で一日放置したサンプル約0.5mLを口に含み、飲み込んで、表9(評価尺度の目安)を基準に評価者3名がそれぞれ0.1点刻みで点数をつけ、平均点を算出(表示)した。
【0117】
【0118】
【0119】
3.評価
3名の官能評価の平均点数の結果を表8に示す。
グルタミルバリルグリシンと三温糖を組み合わせることにより、飲料においてもクエン酸由来の酸味及び/又は酸臭を相乗的に抑制する効果を示すことが認められた。
【0120】
(実施例7)
1.サンプルの調製
果汁飲料(有機酸含量1.25%)にアスコルビン酸を0.8%添加し撹拌後、各試料を表10に示す濃度通りの割合(評価サンプルの総重量に対する割合(%))で添加してサンプルを調製した。アスコルビン酸のみ添加したサンプル(0.8%アスコルビン酸添加果汁飲料)をネガティブコントロール(NC)とし、アスコルビン酸未添加のサンプルをポジティブコントロール(PC)とした。表中、グルタミルバリルグリシンを成分Aと表記する。
果汁飲料は、実施例5と同じものを使用した。
【0121】
2.試験方法
あらかじめ表11に記載の参照サンプルを調製し、各サンプルに含まれるアスコルビン酸の相当量で評価した。すなわち0.8%アスコルビン酸添加サンプルで感じる酸臭及び酸味を5点とし、アスコルビン酸無添加のサンプルの酸臭及び酸味を1点とする表11に示す通りのサンプルの感覚を基準に評価した。5℃で一日放置したサンプル約0.5mLを口に含み、飲み込んで、表11(評価尺度の目安)を基準に評価者2名がそれぞれ0.1点刻みで点数をつけ、平均点を算出(表示)した。
【0122】
【0123】
【0124】
3.評価
2名の官能評価の平均点数の結果を表10に示す。
グルタミルバリルグリシンと三温糖を組み合わせることにより、飲料におけるアスコルビン酸由来の酸味及び/又は酸臭を相乗的に抑制する効果を示すことが認められた。
【0125】
(実施例8)
1.サンプルの調製
ヨーグルト飲料(有機酸含量0.86%)にクエン酸を0.4%添加し撹拌後、各試料を表12に示す濃度通りの割合(評価サンプルの総重量に対する割合(%))で添加してサンプルを調製した。クエン酸のみ添加したサンプル(0.4%クエン酸添加ヨーグルト飲料)をネガティブコントロール(NC)とし、クエン酸未添加のサンプルをポジティブコントロール(PC)とした。表中、グルタミルバリルグリシンを成分Aと表記する。イノシン酸をINと表記する。
ヨーグルト飲料は、水に以下の割合で材料を添加して撹拌して調製した。
ブルガリアのむヨーグルト((株)明治):98%
水:2%。
【0126】
2.試験方法
あらかじめ表13に記載の参照サンプルを調製し、各サンプルに含まれるクエン酸の相当量で評価した。すなわち0.4%クエン酸添加サンプルで感じる酸臭及び酸味を5点とし、クエン酸無添加のサンプルの酸臭及び酸味を1点とする表13に示す通りのサンプルの感覚を基準に評価した。5℃で一日放置したサンプル約0.5mLを口に含み、飲み込んで、表13(評価尺度の目安)を基準に評価者2名がそれぞれ0.1点刻みで点数をつけ、平均点を算出(表示)した。
【0127】
【0128】
【0129】
3.評価
2名の官能評価の平均点数の結果を表12に示す。
ヨーグルト飲料において、単独添加時には酸味及び/又は酸臭の抑制効果が十分得られない低濃度添加時にも、グルタミルバリルグリシン及び三温糖及びまたはイノシン酸を組み合わせることにより、クエン酸由来の酸味及び/又は酸臭を相乗的に抑制する効果を示すことが認められた。
【0130】
(実施例9)
1.サンプルの調製
キムチに各試料を表14に示す濃度通りの割合(評価サンプルの総重量に対する割合(%))で添加してサンプルを調製した。21日冷蔵保管想定品100%配合のキムチのみのサンプル(21日冷蔵保管キムチ)をネガティブコントロール(NC)とし、購入直後のキムチのサンプルをポジティブコントロール(PC)とした。表中、グルタミルバリルグリシンを成分Aと表記する。
キムチのサンプルは、キムチの漬け汁と水を以下の割合で添加して撹拌して調製した。
本場韓国輸入キムチ((株)東京にいたか屋):95%
水:5%。
【0131】
2.試験方法
あらかじめ表15に記載の参照サンプルを調製し、各サンプルで感じられる酸味の相当量で評価した。すなわち21日冷蔵保管相当品100%添加サンプルで感じる酸臭及び酸味を5点とし、購入直後品100%添加サンプルを0点とする表15に示す通りのサンプルの感覚を基準に評価した。5℃で一日放置したサンプル約3.0mLを口に含み、飲み込んで、表15(評価尺度の目安)を基準に評価者2名がそれぞれ0.1点刻みで点数をつけ、平均点を算出(表示)した。
【0132】
【0133】
【0134】
3.評価
2名の官能評価の平均点数の結果を表14に示す。
グルタミルバリルグリシンと三温糖を組み合わせることにより、キムチの保管中に発現する酸味及び/又は酸臭を相乗的に抑制する効果を示すことが認められた。
【0135】
(実施例10)
1.サンプルの調製
マヨネーズタイプ半固体状ドレッシング(有機酸含量0.76%)にクエン酸を0.5%添加し撹拌後、各試料を表16に示す濃度通りの割合(評価サンプルの総重量に対する割合(%))で添加してサンプルを調製した。クエン酸のみ添加したサンプル(0.5%クエン酸添加マヨネーズタイプ半固体状ドレッシング)をネガティブコントロール(NC)とし、クエン酸未添加のサンプルをポジティブコントロール(PC)とした。表中、グルタミルバリルグリシンを成分Aと表記する。L-グルタミン酸ナトリウムMSGを、イノシン酸二ナトリウムをIN、グアニル酸二ナトリウムをGMP、5’-リボヌクレオタイドナトリウムをWPと表記する。
【0136】
2.試験方法
あらかじめ表5に記載の参照サンプルを調製し、実施例3と同様に、各サンプルに含まれるクエン酸の相当量で評価した(評価者2名)。
【0137】
【0138】
3.評価
2名の官能評価の平均点数の結果を表16に示す。
単独添加では酸味及び/又は酸臭の抑制効果が十分得られない低濃度添加時にも、グルタミルバリルグリシン、三温糖、うま味成分から2成分以上併用することで、クエン酸の酸味及び/又は酸臭を相乗的に抑制する効果を示すことが認められた。
【0139】
(実施例11)
1.サンプルの調製
ヨーグルト飲料(有機酸含量0.86%)にクエン酸を0.4%添加し撹拌後、各試料を表17に示す濃度通りの割合(評価サンプルの総重量に対する割合(%))で添加して実施例8と同様にサンプルを調製した。クエン酸のみ添加したサンプル(0.4%クエン酸添加ヨーグルト飲料)をネガティブコントロール(NC)とし、クエン酸未添加のサンプルをポジティブコントロール(PC)とした。表中、グルタミルバリルグリシンを成分Aと表記する。L-グルタミン酸ナトリウムMSGを、イノシン酸二ナトリウムをIN、グアニル酸二ナトリウムをGMPと表記する。ヨーグルト飲料は、実施例8と同様に調製した。
【0140】
2.試験方法
あらかじめ表13に記載の参照サンプルを調製し、実施例8と同様に各サンプルに含まれるクエン酸の相当量で評価した。実施例8と同様に5℃で一日放置したサンプル約0.5mLを口に含み、飲み込んで、表13(評価尺度の目安)を基準に評価者2名がそれぞれ0.1点刻みで点数をつけ、平均点を算出(表示)した。
【0141】
【0142】
3.評価
2名の官能評価の平均点数の結果を表17に示す。
ヨーグルト飲料において、単独添加時には酸味及び/又は酸臭の抑制効果が十分得られない低濃度添加時にも、グルタミルバリルグリシン及び三温糖及び/又はうま味成分を組み合わせることにより、クエン酸由来の酸味及び/又は酸臭を相乗的に抑制する効果を示すことが認められた。