(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144342
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】固形分含有フェノールフォーム用の分散剤
(51)【国際特許分類】
C08J 9/04 20060101AFI20241003BHJP
C08L 61/00 20060101ALI20241003BHJP
C08J 9/14 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C08J9/04 102
C08L61/00
C08J9/14 CEZ
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024051475
(22)【出願日】2024-03-27
(31)【優先権主張番号】23164585
(32)【優先日】2023-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ズーハン
(72)【発明者】
【氏名】ザラ オットー
【テーマコード(参考)】
4F074
4J002
【Fターム(参考)】
4F074AA59
4F074AC04
4F074AC31
4F074AD16
4F074AG03
4F074AG10
4F074BA39
4F074BA95
4F074BC02
4F074CA12
4F074CA21
4F074CB51
4F074DA02
4F074DA07
4F074DA14
4F074DA32
4J002AH002
4J002CC031
4J002CC032
4J002DA058
4J002DH058
4J002EB006
4J002EN139
4J002EU188
4J002EV189
4J002EV237
4J002FD207
4J002FD208
4J002FD319
4J002FD326
(57)【要約】 (修正有)
【課題】1つ以上の固形分を含むフェノールフォームの提供を可能にし、また、特に各成分の粘度の大幅な増加を回避しながら、沈降、沈降後の再分散の困難性および/または材料における不均一な分布が発生しない、フェノールフォームを製造するための組成物を提供する。
【解決手段】少なくとも1つのフェノール樹脂と、少なくとも1つの発泡剤と、少なくとも1つの触媒と、少なくとも1つの固形分とを含む、フェノールフォーム製造用の組成物であって、該組成物が、ケイ素不含第四級アンモニウム化合物の群から選択される少なくとも1つの界面活性剤を含む、組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのフェノール樹脂と、少なくとも1つの発泡剤と、少なくとも1つの触媒と、少なくとも1つの固形分とを含む、フェノールフォーム製造用の組成物において、前記組成物が、ケイ素不含第四級アンモニウム化合物の群から選択される少なくとも1つの界面活性剤を含むことを特徴とする、組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つの界面活性剤が、式(1)のエステルクワット、式(2)のエステルクワット、式(3)のアルキルクワット、式(4)のイミダゾリニウムクワット、式(5)のアミドアミンクワットおよび塩化セチルピリジニウムからなる群から選択され、
【化1】
ここで、
R
1は、8~22個の炭素原子の鎖長を有する飽和もしくは一価不飽和もしくは多価不飽和の、直鎖状もしくは分岐状の脂肪酸のアシル基、またはリシノール酸のアシル基、または水素であり、
式(1)または(2)の化合物は、異なる基R
1を含むことができるが、ただし、少なくとも1つの基R
1は、言及されたアシル基のうちの1つでなければならず、
R
2は、それぞれ互いに独立して、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、または水素、好ましくは水素、メチル、エチル、プロピルまたはイソプロピル、特に好ましくは水素またはメチルであり、
R
3は、それぞれ互いに独立して、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、または水素、好ましくは水素、メチル、エチル、プロピルまたはイソプロピル、特に好ましくはメチルまたは水素であり、
R
4は、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、またはヒドロキシエチル基、または水素、好ましくはメチル、エチル、プロピルまたはイソプロピル、特に好ましくはエチルまたはメチル、非常に特に好ましくはメチルであり、
式(1)および/または(2)の化合物は、異なる基R
4を含むことができ、
n=0~20、好ましくは0~10、特に好ましくは0であり、
a=1~3およびb=1~3であるが、
ただし、a+b=4であり、
かつ/または
【化2】
ここで、
R
5は、8~24個の炭素原子の鎖長を有する飽和または一価不飽和または多価不飽和の、直鎖状または分岐状のアルキル基であり、
式(3)の化合物は、異なる基R
5を含むことができ、
R
6は、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、またはヒドロキシエチル基、またはベンジル基、または水素、好ましくはメチル、エチル、プロピル、イソプロピルまたはベンジル、特に好ましくはエチルまたはメチル、非常に特に好ましくはメチルであり、
式(3)の化合物は、異なる基R
6を含むことができ、
c=1~3およびd=1~3であるが、
ただし、c+d=4であり、
かつ/または
【化3】
ここで、
R
7は、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、またはヒドロキシエチル基、または水素、好ましくはメチル、エチル、プロピルまたはイソプロピル、特に好ましくはエチルまたはメチル、非常に特に好ましくはメチルであり、
R
8は、8~22個の炭素原子を有する飽和もしくは一価不飽和もしくは多価不飽和の、直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、または基O(CO)R
10であり、ここで、R
10は、7~21個の炭素原子を有する脂肪族の、飽和または一価不飽和または多価不飽和の、直鎖状または分岐状のアルキル基であり、
R
9は、7~21個の炭素原子を有する、脂肪族の、飽和または一価不飽和または多価不飽和の、直鎖状または分岐状のアルキル基であり、
Zは、NH基または酸素であり、
eは、1~4の整数値をとることができ、
かつ/または
【化4】
ここで、
R
11は、7~21個の炭素原子の鎖長を有する、飽和または一価不飽和または多価不飽和の、直鎖状または分岐状のアルキル基であり、
R
12は、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、またはヒドロキシエチル基、または水素、好ましくはメチル、エチル、プロピルまたはイソプロピル、特に好ましくはエチルまたはメチル、非常に特に好ましくはメチルであり、
式(5)の化合物は、異なる基R
12を含むことができ
fは、0~5の整数値をとることができ、
h=1または2およびg=2または3であるが、
ただし、h+g=4であり、
式(5)の化合物は、h=2である場合に、fについて異なる値をとることができ、異なる基R
11を含むことができ、
R
4、R
6、R
7またはR
12がヒドロキシエチル基を含む場合、前記基はアルコキシル化されていてもよく、前記任意にアルコキシル化されたヒドロキシエチル基は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドおよび/またはスチレンオキシドをベースとする繰返し単位を含むことができ、1~15個の繰返し単位、好ましくは1~10個の繰返し単位を含むことができることを特徴とする、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
式(1)および/または式(2)において、R1が、それぞれ互いに独立して、オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、イコセン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ネルボン酸、リノール酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、カレンジン酸、プニカ酸、α-エレオステアリン酸、β-エレオステアリン酸、アラキドン酸、チムノドン酸、クルパノドン酸およびセルボン酸からなる群の酸のアシル基から選択されることを特徴とする、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
式(1)においてa=b=2であり、かつ/または式(5)においてh=1およびg=3であることを特徴とする、請求項2または3記載の組成物。
【請求項5】
前記一般式(1)、(2)、(3)、(4)および/または(5)の化合物に対して、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、アルキル硫酸イオン、エチル硫酸イオン、アルキルスルホン酸イオン、トリフラートイオン、トシラートイオン、リン酸イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、乳酸イオン、グリコール酸イオン、酢酸イオンおよびクエン酸イオンからなる群から選択される少なくとも1つの対アニオンがさらに含まれていることを特徴とする、請求項2から4までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1つの固形分が、以下:
(a)固体難燃剤、有利にはポリリン酸アンモニウム、メラミン、メラミン被覆ポリリン酸アンモニウム、メラミンマイクロカプセル化ポリリン酸アンモニウム、メラミンホルムアルデヒド樹脂マイクロカプセル化ポリリン酸アンモニウム、メラミンシアヌレート、赤リン、ホウ酸亜鉛、ポリリン酸メラミン、膨張黒鉛および/または三酸化アンチモン、特に赤リンおよび/またはポリリン酸アンモニウム、
(b)プラスチック粉末、
および
(c)炭酸カルシウム、グラファイト、グラフェン、リグニン、リグノセルロース、金属水酸化物、好ましくは水酸化アルミニウムおよび/または水酸化マグネシウム、金属炭酸塩、好ましくは炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウムおよび/または炭酸亜鉛、金属酸化物、好ましくは酸化アルミニウムおよび/または酸化亜鉛および/または金属粉末、好ましくは亜鉛
からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
前記固体難燃剤が、赤リンおよび/またはポリリン酸アンモニウムを含むことを特徴とする、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
少なくとも1つのプラスチック粉末が含まれており、前記少なくとも1つのプラスチック粉末が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、例えば特にPA6、PA6.6、PA10、PA11および/もしくはPA12、ポリエステル、例えば特にポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよび/またはポリ-ε-カプロラクトン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、スチレン-アクリロニトリルコポリマー、ポリエーテル、ポリ乳酸、ポリウレタン、フェノール樹脂、フェノールフォーム、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミドならびにポリイミドまたはそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのプラスチックからなり、前記プラスチック粉末が、特に好ましくは廃プラスチックから、特に好ましくはフェノール樹脂廃プラスチックおよび/またはフェノールフォーム廃プラスチックから形成されていてよいことを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1つの固形分が、<500μm、有利には<250μm、特に好ましくは<150μmの平均粒径を有する粉末であることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1つの界面活性剤が、使用される全フェノール樹脂100重量部に対して0.1~20重量部、有利には0.1~15重量部、特に好ましくは0.1~10重量部の総量で含まれていることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1つの固形分が、使用される全フェノール樹脂100重量部に対して1~100重量部、有利には1~60重量部、特に好ましくは5~50重量部の総量で含まれていることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項12】
アルコキシル化、好ましくはエトキシル化ヒマシ油が、使用される全フェノール樹脂100重量部に対して0.5~10重量部、有利には1~8重量部の総量でさらに含まれており、かつ/または
少なくとも1つのポリエーテルシロキサンが、使用される全フェノール樹脂100重量部に対して0.5~10重量部の量でさらに含まれている
ことを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項13】
前記少なくとも1つの発泡剤が、以下:
- 3、4または5個の炭素原子を有する炭化水素、好ましくはシクロ-、イソ-および/またはn-ペンタン
ならびに
- 3、4または5個の炭素原子を有するハロゲン化炭化水素、好ましくはハイドロフルオロオレフィンおよび/またはハイドロハロオレフィン、さらに好ましくは1234ze、1234yf、1224yd、1233zd(E)および/または1336mzz
からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか1項記載の組成物を含む反応混合物を用いた、フェノールフォームの製造方法。
【請求項15】
請求項14記載の方法により製造された、フェノールフォーム。
【請求項16】
断熱のための、請求項15記載のフェノールフォームの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェノールフォームの分野に関する。本発明は特に、フェノールフォームを製造するための組成物、フェノールフォームの製造方法、本発明により製造されたフェノールフォームおよびその使用に関する。本発明の範囲において、フェノールフォームとは特に、発泡剤の添加下にフェノール樹脂を触媒としての酸と反応させることにより得られるフォームを意味すると理解される。フェノールフォームは当業者に公知であり、例えば、欧州特許出願公開第3830174号明細書、欧州特許第602004006376号明細書独語翻訳文、欧州特許出願公開第2898005号明細書、欧州特許出願公開第1922357号明細書、国際公開第2022043561号、欧州特許出願公開第4073155号明細書、豪国特許出願公開第2021238847号明細書または国際公開第2006114777号に記載されている。フェノールフォームは、別称としてフェノール樹脂フォームとも呼ばれる。
【0002】
フェノールフォームの製造においては、一般にセル安定化添加剤あるいはフォーム安定化添加剤を使用することができ、これらの添加剤は、微細なセルで均一かつ乱れの少ないフォーム構造を得ることを目的としており、したがってフォームの使用特性、特に例えば断熱性能に大きな好影響を与える。この目的のためには通常、発泡安定剤を使用することができ、例えば欧州特許出願公開第3830174号明細書に記載されているように、エトキシル化植物油、例えばヒマシ油をベースとする発泡安定剤を使用することができる。例えば国際公開第2022043561号に記載されているようなポリエーテル変性シロキサン(PES)の使用は、使用特性をさらに改善するのに特に有効であることが証明されている。特に、エトキシル化植物油とポリエーテル変性シロキサンとの組み合わせは、優れた使用特性をもたらす。したがって、この組み合わせは、フェノールフォームの製造において一般的に好ましいタイプの発泡安定剤である。
【0003】
フェノールフォームの提供に関連して、これらを特にコスト効率よく製造することが特に重要な関心事である。さらなる関心事は、これらを特に持続可能な方法で、例えばバイオベースおよび/もしくは再生材料の使用により製造すること、ならびに/または難燃性を、例えば難燃剤の添加により向上させることである。このため、様々な固形分を使用することができる。フェノールフォームへの使用に適した対応する固形分自体は、公知である。
【0004】
しかし、固形分の使用は、液体出発原料における分散および処理に関してかなりの問題を伴う。これには特に、沈降、沈降後の再分散の困難性、フェノールフォームにおける不均一な分布、また特に、その結果生じる、このようにして製造されたフォームの不均一な特性プロファイルが含まれる。
【0005】
このような背景から、本発明の具体的な課題は、1つ以上の固形分を含むフェノールフォームの提供を可能にし、また、特に各成分の粘度の大幅な増加を回避しながら、沈降、沈降後の再分散の困難性および/または材料における不均一な分布という上述の課題を克服することであった。
【0006】
これに関連して、ケイ素不含第四級アンモニウム化合物の群から選択される1つ以上の界面活性剤、例えばエステルクワットおよび/またはアルキルクワットを使用することにより、再分散、沈降安定性および材料のより均一な特性プロファイルの所望の大幅な改善が可能になることが、本発明の範囲において驚くべきことに見出された。ここで、有利なことに、各成分の粘度はさほど影響をうけない。
【0007】
本発明の具体的な課題は、本発明の対象によって解決される。本発明の対象は、少なくとも1つのフェノール樹脂と、少なくとも1つの発泡剤と、少なくとも1つの触媒と、少なくとも1つの固形分とを含む、フェノールフォーム製造用の組成物であって、該組成物が、ケイ素不含第四級アンモニウム化合物の群から選択される少なくとも1つの界面活性剤を含む、組成物である。
【0008】
本発明の範囲において、固形分とは、25℃および101.325kPaで固体の凝集状態にある物質を意味すると理解される。
【0009】
本発明による対象は、様々な利点を有する。本発明による対象により、例えば、高い固形分含量を有するフェノールフォームの提供が可能になる。有利なことに、これは、材料の他の特性、特にその機械的特性を損なうことなく可能となる。特に、フェノールフォームは、非常に良好な断熱特性を有し、優れた長期挙動および高い表面品質を示す。本発明により、フェノールフォームにおける固形分の特に均一な分布が可能となる。全体として、本発明により、製造の範囲での固形分の容易な処理が可能となる。固形分は、例えば、有利にはエステルクワットおよび/またはアルキルクワットのようなケイ素不含第四級アンモニウム化合物の群から選択される少なくとも1つの界面活性剤と共に、容易にフェノール樹脂に導入することができる。本発明により、フェノール樹脂と固形分との分散液の貯蔵時の沈降の問題を大幅に低減または回避さえすることができる。本発明により、特に、非常に長期の貯蔵後に沈降が生じた場合の固形分の非常に良好な再分散性も可能となるため、例えば、貯蔵中の絶え間ない撹拌や混合はもはや必要ではない。本発明により、フェノールフォームにおける固形分のより均一な分布も可能となり、これはより均一な特性プロファイルをもたらす。
【0010】
ケイ素不含第四級アンモニウム化合物の群からの界面活性剤、例えば、エステルクワット、アミドアミンクワット、イミダゾリニウムクワット、塩化セチルピリジニウムおよび/またはアルキルクワット自体は、当業者に公知である。例えば、エステルクワットおよびアルキルクワットは、少なくとも1つの長い炭化水素基を有するケイ素不含第四級アンモニウム化合物である。アルキルクワットは一般に、テトラアルキルアンモニウム塩であるが、エステルクワットは一般に、少なくとも1つの脂肪酸でエステル化された第四級トリエタノールメチルアンモニウム化合物または第四級ジエタノールジメチルアンモニウム化合物をベースとしている。
【0011】
アルキルクワットやエステルクワットは、化粧品または洗剤および洗浄剤、例えば柔軟仕上げ剤に古くから使用されており、その製造は当業者に古くから知られている。アルキルクワットは、例えば対応するアミンを例えばクロロメタンや硫酸ジメチルなどのメチル化剤と反応させることにより製造することができる。エステルクワットの製造は、例えばメチルジエタノールアミンやトリエタノールアミンを脂肪酸でエステル化し、その後、例えば硫酸ジメチルやクロロメタンで四級化することにより行うことができる。
【0012】
本発明による組成物は、ケイ素不含第四級アンモニウム化合物の群から選択される少なくとも1つの界面活性剤を含む。本発明の特に好ましい実施形態によれば、少なくとも1つの界面活性剤は、式(1)のエステルクワット、式(2)のエステルクワット、式(3)のアルキルクワット、式(4)のイミダゾリニウムクワット、式(5)のアミドアミンクワットおよび塩化セチルピリジニウムからなる群から選択され、
【化1】
ここで、
R
1は、8~22個の炭素原子の鎖長を有する飽和もしくは一価不飽和もしくは多価不飽和の、直鎖状もしくは分岐状の脂肪酸のアシル基、またはリシノール酸のアシル基、または水素であり、
式(1)または(2)の化合物は、異なる基R
1を含むことができるが、ただし、少なくとも1つの基R
1は、言及されたアシル基のうちの1つでなければならず、
R
2は、それぞれ互いに独立して、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、または水素、好ましくは水素、メチル、エチル、プロピルまたはイソプロピル、特に好ましくは水素またはメチルであり、
R
3は、それぞれ互いに独立して、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、または水素、好ましくは水素、メチル、エチル、プロピルまたはイソプロピル、特に好ましくはメチルまたは水素であり、
R
4は、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、またはヒドロキシエチル基、または水素、好ましくはメチル、エチル、プロピルまたはイソプロピル、特に好ましくはエチルまたはメチル、非常に特に好ましくはメチルであり、
式(1)および/または(2)の化合物は、異なる基R
4を含むことができ、
n=0~20、好ましくは0~10、特に好ましくは0であり、
a=1~3およびb=1~3であるが、
ただし、a+b=4であり、
かつ/または
【化2】
ここで、
R
5は、8~24個の炭素原子の鎖長を有する飽和または一価不飽和または多価不飽和の、直鎖状または分岐状のアルキル基であり、
式(3)の化合物は、異なる基R
5を含むことができ、
R
6は、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、またはヒドロキシエチル基、またはベンジル基、または水素、好ましくはメチル、エチル、プロピル、イソプロピルまたはベンジル、特に好ましくはエチルまたはメチル、非常に特に好ましくはメチルであり、
式(3)の化合物は、異なる基R
6を含むことができ、
c=1~3およびd=1~3であるが、
ただし、c+d=4であり、
かつ/または
【化3】
ここで、
R
7は、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、またはヒドロキシエチル基、または水素、好ましくはメチル、エチル、プロピルまたはイソプロピル、特に好ましくはエチルまたはメチル、非常に特に好ましくはメチルであり、
R
8は、8~22個の炭素原子を有する飽和もしくは一価不飽和もしくは多価不飽和の、直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、または基O(CO)R
10であり、ここで、R
10は、7~21個の炭素原子を有する脂肪族の、飽和または一価不飽和または多価不飽和の、直鎖状または分岐状のアルキル基であり、
R
9は、7~21個の炭素原子を有する、脂肪族の、飽和または一価不飽和または多価不飽和の、直鎖状または分岐状のアルキル基であり、
Zは、NH基または酸素であり、
eは、1~4の整数値をとることができ、
かつ/または
【化4】
ここで、
R
11は、7~21個の炭素原子の鎖長を有する、飽和または一価不飽和または多価不飽和の、直鎖状または分岐状のアルキル基であり、
R
12は、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、またはヒドロキシエチル基、または水素、好ましくはメチル、エチル、プロピルまたはイソプロピル、特に好ましくはエチルまたはメチル、非常に特に好ましくはメチルであり、
式(5)の化合物は、異なる基R
12を含むことができ
fは、0~5の整数値をとることができ、
h=1または2およびg=2または3であるが、
ただし、h+g=4であり、
式(5)の化合物は、h=2である場合に、fについて異なる値をとることができ、異なる基R
11を含むことができ、
R
4、R
6、R
7またはR
12がヒドロキシエチル基を含む場合、この基はアルコキシル化されていてもよく、この任意にアルコキシル化されたヒドロキシエチル基は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドおよび/またはスチレンオキシドをベースとする繰返し単位を含むことができ、1~15個の繰返し単位、好ましくは1~10個の繰返し単位を含むことができる。
【0013】
特に上記のケイ素不含第四級アンモニウム化合物の群から選択される本発明による界面活性剤を1つ以上使用することができ、すなわち、そのような界面活性剤の任意の混合物を使用することもできる。その場合、式(1)のエステルクワットおよび/または式(2)のエステルクワットの使用が特に好ましい。したがって、式(1)のエステルクワットおよび式(2)のエステルクワットからなる群から選択される少なくとも1つの界面活性剤を使用することが特に好ましい。
【0014】
対応するケイ素不含第四級アンモニウム化合物を1つ以上含む対応する組成物は、上述した本発明による利点に関して特に好ましい結果を示す。
【0015】
式(1)および/または式(2)において、R1が、それぞれ互いに独立して、オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、イコセン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ネルボン酸、リノール酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、カレンジン酸、プニカ酸、α-エレオステアリン酸、β-エレオステアリン酸、アラキドン酸、チムノドン酸、クルパノドン酸およびセルボン酸からなる群の酸のアシル基から選択される場合、本発明のさらなる特に好ましい実施形態に相当する。
【0016】
さらに、式(1)においてa=b=2であり、かつ/または式(5)においてh=1およびg=3である場合に好ましい。これも同様に、本発明のさらなる特に好ましい実施形態に相当する。
【0017】
一般式(1)、(2)、(3)、(4)および/または(5)の化合物に対して、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、アルキル硫酸イオン、エチル硫酸イオン、アルキルスルホン酸イオン、トリフラートイオン、トシラートイオン、リン酸イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、乳酸イオン、グリコール酸イオン、酢酸イオンおよびクエン酸イオンからなる群から選択される少なくとも1つの対アニオンをさらに含む本発明による組成物は、本発明のさらなる特に好ましい実施形態に相当する。
【0018】
本発明による特に好ましい組成物は、少なくとも1つの固形分が以下からなる群から選択されることを特徴とする:
(a)固体難燃剤、有利にはポリリン酸アンモニウム、メラミン、メラミン被覆ポリリン酸アンモニウム、メラミンマイクロカプセル化ポリリン酸アンモニウム、メラミンホルムアルデヒド樹脂マイクロカプセル化ポリリン酸アンモニウム、メラミンシアヌレート、赤リン、ホウ酸亜鉛、ポリリン酸メラミン、膨張黒鉛および/または三酸化アンチモン、特に赤リンおよび/またはポリリン酸アンモニウム、
(b)プラスチック粉末、
および
(c)炭酸カルシウム、グラファイト、グラフェン、リグニン、リグノセルロース、金属水酸化物、好ましくは水酸化アルミニウムおよび/または水酸化マグネシウム、金属炭酸塩、好ましくは炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウムおよび/または炭酸亜鉛、金属酸化物、好ましくは酸化アルミニウムおよび/または酸化亜鉛および/または金属粉末、好ましくは亜鉛。
【0019】
これも本発明の特に好ましい実施形態に相当する。
【0020】
本発明による固形分、特に上記の固形分を1つ以上使用することができ、すなわち、そのような固形分の任意の混合物を使用することもできる。
【0021】
少なくとも1つの固形分は、特に粉末状である。これは、本発明の特に好ましい実施形態に相当する。好ましい粒径については後述する。
【0022】
フェノールフォームに好ましく使用可能な固体難燃剤自体も同様に公知であり、本発明は固体難燃剤の選択においても限定されない。しかし、特定の固体難燃剤、特に上述したような固体難燃剤が本発明による組成物において使用される場合、それは本発明の好ましい実施形態に相当する。固体難燃剤を1つ以上使用することができ、すなわち、それらの任意の混合物を使用することもできる。赤リンおよび/またはポリリン酸アンモニウムの使用が非常に特に好ましい。
【0023】
本発明による組成物に固体難燃剤として赤リンおよび/またはポリリン酸アンモニウムが含まれている場合、本発明の特に好ましい実施形態が存在する。
【0024】
本発明による組成物に少なくとも1つのプラスチック粉末が含まれており、少なくとも1つのプラスチック粉末が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、例えば特にPA6、PA6.6、PA10、PA11および/もしくはPA12、ポリエステル、例えば特にポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよび/またはポリ-ε-カプロラクトン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、スチレン-アクリロニトリルコポリマー、ポリエーテル、ポリ乳酸、ポリウレタン、フェノール樹脂、フェノールフォーム、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミドならびにポリイミドまたはそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのプラスチックからなり、プラスチック粉末が、特に好ましくは廃プラスチックから、特に好ましくはフェノール樹脂廃プラスチックおよび/またはフェノールフォーム廃プラスチックから形成されていてよい場合、本発明のさらなる特に好ましい実施形態が存在する。
【0025】
特に上記のプラスチック粉末を1つ以上使用することができ、すなわち、そのようなプラスチック粉末の任意の混合物を使用することもできる。
【0026】
廃プラスチックは、特に、
(i)プラスチック製造中に得られる製造廃棄物から生じるプラスチック、例えば切断残渣、鋸屑、もしくは品質管理に合格しない材料、および/または
(ii)耐用年数に達したプラスチックから生じるプラスチック、例えば、使用済みの断熱材や断熱板から生じるフェノールフォームベースのプラスチック、またはその他の使用済みのプラスチック部品およびプラスチック半製品
である。
【0027】
本発明による組成物に、廃プラスチックから、好ましくはフェノール樹脂廃プラスチックから、特に好ましくはフェノールフォーム廃プラスチックからの1つ以上のプラスチック粉末が含まれる場合にも、本発明のさらなる特に好ましい実施形態が存在する。
【0028】
固形分が、有利にはISO 13320:2020に準拠してレーザー回折分光法により体積ベースのメジアン値として決定された、好ましくは<500μm、有利には<250μm、特に好ましくは<150μmの平均粒径を有する粉末であることを本発明による組成物が特徴とする場合、本発明のさらなる特に好ましい実施形態が存在する。この場合、粒子の平均粒径は、ISO 13320:2020に準拠してレーザー回折分光法により決定される。平均直径(すなわち、平均粒子直径)に関するデータは、体積ベースのメジアン値に相当し、すなわち、等体積球相当径を示し、50%の粒子がこれよりも小さく、50%の粒子がこれよりも大きい。
【0029】
ケイ素不含第四級アンモニウム化合物の群からの少なくとも1つの界面活性剤が、使用される全フェノール樹脂100重量部に対して0.1~20重量部、有利には0.1~15重量部、特に好ましくは0.1~10重量部の総量で含まれていることを本発明による組成物が特徴とする場合、本発明のさらなる特に好ましい実施形態が存在する。
【0030】
本発明のさらなる好ましい実施形態によれば、少なくとも1つの固形分が、使用される全フェノール樹脂100重量部に対して1~100重量部、有利には1~60重量部、特に好ましくは5~50重量部の総量で、本発明による組成物に含まれている。
【0031】
アルコキシル化、好ましくはエトキシル化ヒマシ油が、使用される全フェノール樹脂100重量部に対して0.5~10重量部、有利には1~8重量部の総量でさらに含まれており、かつ/または
少なくとも1つのポリエーテルシロキサンが、使用される全フェノール樹脂100重量部に対して0.5~10重量部の量でさらに含まれている
ことを本発明による組成物が特徴とする場合、これは本発明のさらなる好ましい実施形態である。
【0032】
ポリエーテル変性シロキサン(PES)としても知られるポリエーテルシロキサン自体は公知であり、これについては後述する。
【0033】
少なくとも1つの発泡剤が、以下:
- 3、4または5個の炭素原子を有する炭化水素、好ましくはシクロ-、イソ-および/またはn-ペンタン
ならびに
- 3、4または5個の炭素原子を有するハロゲン化炭化水素、好ましくはハイドロフルオロオレフィンおよび/またはハイドロハロオレフィン、さらに好ましくは1234ze、1234yf、1224yd、1233zd(E)および/または1336mzz
からなる群から選択されることを本発明による組成物が特徴とする場合、本発明のさらなる好ましい実施形態が存在する。
【0034】
特に上記の発泡剤を1つ以上使用することができ、すなわち、発泡剤の任意の混合物を使用することもできる。
【0035】
本発明のさらなる対象は、少なくとも1つのフェノール樹脂と、少なくとも1つの発泡剤と、少なくとも1つの触媒と、少なくとも1つの固形分とを含む組成物を含む反応混合物を用いたフェノールフォームの製造方法であって、該組成物が、特に好ましい実施形態において上記で詳細に記載したような、例えばエステルクワットまたはアルキルクワットまたはアミドアミンクワットまたはイミダゾリニウムクワットのようなケイ素不含第四級アンモニウム化合物の群から選択される少なくとも1つの界面活性剤を含む、方法である。
【0036】
本発明の趣意における特に好ましいフェノールフォーム配合物は、5~900kg/m
3の密度を提供し、有利には、本発明の好ましい実施形態に相当する表1に示す組成を有する:
【表1】
【0037】
本発明による方法のさらなる好ましい実施形態および構成については、本発明による組成物に関連して先に既に示した説明も参照されたい。
【0038】
本発明のさらなる対象は、前述の本発明による方法により、特に本発明による組成物を使用して製造されたフェノールフォームである。
【0039】
本発明のさらなる対象は、前述の本発明によるフェノールフォームの、断熱材としての、有利には断熱板またはサンドイッチ要素としての使用に関する。
【0040】
本発明による特に好ましい組成物は、以下の成分を含む:
- 少なくとも1つのフェノール樹脂、
- 特に上記で式(1)、(2)、(3)、(4)および/もしくは(5)で定義されるケイ素不含第四級アンモニウム化合物ならびに/または塩化セチルピリジニウムの群から選択される少なくとも1つの界面活性剤、
- 少なくとも1つの発泡剤、
- 少なくとも1つの触媒、
- ケイ素不含第四級アンモニウム化合物の群からの界面活性剤ではない少なくとも1つの発泡安定剤、
- 少なくとも1つの固形分、
- 任意にさらなる添加剤など。
【0041】
フェノールフォーム(これは、本発明の範囲において別称としてフェノール樹脂フォームとも呼ばれる)の製造自体は公知である。フェノールフォームを製造するために、1つ以上のフェノール樹脂、有利には1つ以上のいわゆるレゾール樹脂を使用することができる。それに応じて使用できるフェノール樹脂、有利にはレゾール樹脂自体は公知である。特に、これらは公知の様式で製造することができ、例えば、有利には塩基性条件下で、例えば、触媒量のアルカリ金属水酸化物、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムもしくは水酸化カルシウム、または脂肪族アミン、例えば、トリメチルアミンもしくはトリエチルアミンを、好ましくは過剰のアルデヒドと一緒に使用することにより、フェノールまたはフェノール系化合物、例えば、クレゾール、キシレノール、p-アルキルフェノール、p-フェニルフェノール、レゾルシンなどおよびアルデヒド、例えば、ホルムアルデヒド、フルフラール、アセトアルデヒドなどを縮合させることにより製造することができる。これは、フェノール樹脂、有利にはレゾール樹脂の通常の製造経路であるが、本発明は、上に挙げた化学物質に限定されるものではない。
【0042】
ここで、フェノール基とアルデヒド基とのモル比は特に制限されない。好ましくは、その比は1:1~1:3の範囲であり、特に好ましくは1:1.5~1:2.5の範囲である。これに限定されないが、有利には、フェノール樹脂は、0.1重量%~0.5重量%の遊離アルデヒド含量を有する。これは、塩酸ヒドロキシルアミンを用いたISO 11402:2004に準拠した電位差滴定によって決定することができる。
【0043】
フォーム製造時に使用可能である好ましく使用できるフェノール樹脂は、25℃、常圧で液体であり、有利には、水濃度が約1~25重量%、好ましくは5~20重量%であり、例えば欧州特許第0170357号明細書に記載されているように、反応性置換基としてメチロール基を有する。所望の場合には、フェノール樹脂の粘度を、特に含水率によって調整することができる。含水率が高いと、通常は粘度が低くなるため、樹脂の取り扱いやフォーム製造時の混合が容易になる。
【0044】
好ましく使用できるフェノール樹脂の25℃、常圧での粘度は、有利には1000~28000mPa・sの範囲であり、当業者に公知の通常の方法、例えばブルックフィールド粘度計を用いて測定することができる。フェノール樹脂の製造および組成に関する基本的な情報は、先行技術から得ることができ、特に、例えば、欧州特許出願公開第3830174号明細書、欧州特許出願公開第2898005号明細書、国際公開第2022043561号または欧州特許出願公開第4073155号明細書に記載されている。
【0045】
特に上記で式(1)、(2)、(3)、(4)および/もしくは(5)で定義されるケイ素不含第四級アンモニウム化合物ならびに/または塩化セチルピリジニウムの群からの本発明による界面活性剤については、既に上述した。
【0046】
発泡剤およびフェノールフォームの製造におけるその使用は、当業者に公知である。1つ以上の発泡剤の使用は、基本的に系のタイプおよび得られるフェノールフォームの用途に依存する。使用される発泡剤の量に応じて、高密度または低密度のフォームを製造することができる。例えば、ASTM D1622-20に準拠して、有利には5kg/m3~900kg/m3、好ましくは5~500kg/m3、特に好ましくは10~200kg/m3、特に12~100kg/m3の密度を有するフォームを製造することができる。
【0047】
発泡剤として、適切な沸点を有する対応する1つ以上の化合物、例えば、3、4または5個の炭素原子を有する炭化水素、好ましくはシクロ-、イソ-またはn-ペンタン、ハロゲン化炭化水素、例えば塩素化炭化水素、例えば、ジクロロエタン、1,2-ジクロロエテン、n-プロピルクロリド、イソプロピルクロリド、ブチルクロリド、イソブチルクロリド、ペンチルクロリド、イソペンチルクロリド、1,1-ジクロロエテン、トリクロロエテンもしくはクロロエテン、またはハイドロフルオロカーボン(HFC)、例えば、HFC245fa、HFC134aもしくはHFC365mfc、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)またはハイドロハロオレフィン、好ましくは、1234ze、1234yf、1224yd、1233zd(E)もしくは1336mzzおよびそれらの混合物を使用することができる。
【0048】
フェノールフォームの製造に使用できる触媒は、先行技術から当業者に公知であり、例えば、欧州特許出願公開第0170357号明細書または欧州特許第602004006376号明細書独語翻訳文に記載されている。ここで、有利には、先行技術から公知の通常の有機酸および無機酸を使用することができる。1つ以上の酸を使用することができる。特に好ましく使用可能であるのは、硫酸、リン酸、ベンゼンスルホン酸、キシレンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、ナフトールスルホン酸、クメンスルホン酸および/またはフェノールスルホン酸である。特に、これらの化合物の複数の混合物を触媒として使用することができる。完全な反応に使用される触媒の好ましい量は、特に、フェノール樹脂の含水率および/または触媒が水溶液として存在する場合にはその含水率によっても影響される。例えば、含水率が高いほど高い酸濃度が必要となり得る。
【0049】
フェノールフォームは、公知の様式で、すなわち、特に、フェノール樹脂と発泡剤と発泡安定剤と触媒とを含む混合物の反応によって形成することができる。フェノール樹脂と発泡剤と発泡安定剤との混合物に触媒を添加すると、メチロール基とフェノールとの間で発熱反応が起こり、メチレン架橋が形成され架橋する。その際、縮合によって水が脱離する。ここで、使用される酸の種類および量、発泡剤の特性、ならびに発泡安定剤の構造は、反応の発熱性および発泡形成に影響を及ぼす。
【0050】
発泡安定剤およびフェノールフォームの製造におけるその使用は、上述したように当業者に一般に知られている。例えば、エトキシル化ヒマシ油の使用は欧州特許出願公開第3830174号明細書に記載されており、エトキシル化ヒマシ油およびポリエーテル変性シロキサンの使用は国際公開第2022043561号に記載されている。エトキシ化ヒマシ油の使用ならびにエトキシ化ヒマシ油およびポリエーテル変性シロキサンの使用は、本発明の好ましい実施形態に相当する。
【0051】
固形分については、既に上述した。
【0052】
任意の添加剤として、フェノールフォームの製造に一般的に使用される先行技術により公知の1つ以上の物質、例えば、減粘剤、可塑剤、硬化剤、液体難燃剤、セル微細化添加剤、着色剤および/または香料を使用することができる。適切な任意の添加剤は、例えば欧州特許出願公開第3830174号明細書、米国特許第4444912号明細書および欧州特許出願公開第1922357号明細書に記載されている。
【0053】
フェノール樹脂の粘度を低下させるために、例えばモノエチレングリコールまたはポリエステルポリオールを使用することができる。硬化剤として、例えば尿素やジシアンジアミドなどのアミノ基を有する化合物を使用することができる。有利には尿素が使用される。これらは、発泡時だけでなく、既にフェノール樹脂の製造時にも使用することができる。
【0054】
本発明によるフェノールフォームの製造方法は、公知のあらゆる方法を用いて実施することができる。これらは当業者に公知であり、例えば欧州特許出願公開第3830174号明細書に記載されている。
【0055】
本明細書から特に明らかでない限り、本発明の好ましいまたは特に好ましいすべての実施形態を、本発明の他の好ましいまたは特に好ましい1つ以上の実施形態と組み合わせることができる。
【0056】
本発明による対象につき、以下に例示的に説明するが、本発明の適用範囲は、本明細書全体および特許請求の範囲から明らかであり、本発明は、これらの例示的な実施形態に限定されるものではない。範囲、一般式または化合物クラスが示されている場合、これらは、明示的に言及されている対応する範囲または化合物群だけでなく、個々の値(範囲)または化合物の抽出によって得ることができるすべての部分範囲および部分化合物群をも包含するものとする。本明細書の範囲において文書が引用されている場合、その内容は、特にその文書が引用された文脈における主題に関して、完全に本発明の開示内容の一部を構成するものとする。特に断りのない限り、パーセンテージは、重量%単位のデータである。平均値が示されている場合、特に断りのない限り、これらは数値平均である。測定により決定されたパラメータが記載されている場合、特に断りのない限り、測定は温度23℃、常圧で行われた。
【0057】
実施例:
実施例1:フェノールフォームの製造
応用技術的な比較のために、表2の配合物および表3の分散剤を選択した。
【0058】
比較発泡を、ハンドミキシング法で行った。このために、フェノール樹脂(バッチ量180±5g)、発泡安定剤、分散剤および固形分をビーカーにはかり入れ、プレートスターラー(直径6cm)を用いて20℃、500rpmで15分間混合した。次に発泡剤を加え、1500rpmで30秒間混合し、18℃まで冷却した。次に酸を加え、この混合物を2000rpmで45秒間撹拌し、ポリエチレンフィルムで被覆され、50℃に調温された寸法25cm×25cm×7cmのアルミニウム型に移した。1時間後、フォームを脱型し、60℃に加熱したオーブンで18時間硬化させた。
【0059】
【0060】
【0061】
表面および細孔構造を、主観的に1~10のスケールで評価し、10は、(理想的な)乱れのない非常に微細なフォームを表し、1は、極度に乱れた粗いフォームを表す。熱伝導率(λ値、単位:mW/m・K)を、規格EN12667:2001の規定にしたがって、平均温度10℃でHesto Lambda Control装置、HLC X206型を用いて厚さ2.5cmのパネルについて測定した。密度を、ASTM D1622-20に準拠して測定した。
【0062】
結果を表4から表8に示す。
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
この結果は、本発明によらない分散剤が、固形分の使用時に、はるかにより劣悪な特性プロファイルを招き、特に熱伝導率が高くなり、表面が劣悪になることを示している。対照的に、本発明による分散剤を用いた場合には、本発明によらない分散剤と比較して、特性プロファイルを著しく改善することができる。
【0069】
実施例2:分散挙動
応用技術的な比較のために、表9に示す配合を使用した。このために、フェノール樹脂および分散剤をはかり入れ(バッチサイズ250g)、プレートスターラー(直径6cm)を用いて1000rpmで30秒間混合した。次に、プレートスターラーをさらに作動させた状態で(2000rpm)固形分を加え、さらに45秒間混合した。その後、配合物をガラス容器に充填して閉鎖し、完全に沈降するまでの時間を測定した。
【0070】
室温で21日間直立貯蔵した後、すべての試料を再分散させ、再分散性を1~3のスケールで評価した。ここで、1点であれば、既に実験室用電気スターラー(300rpm、30秒間)を用いて試料を再分散できたことを意味する。800rpm、60秒間で再分散が可能であれば2点をつけた。非常に固形で緻密な沈降物が形成され、この沈降物が前述の2つの方法のいずれでも再分散できなかった試料には、3点をつけた。
【0071】
【0072】
結果を表10および表11に示す。
【0073】
【0074】
【0075】
試験したケースでは、分散剤を含まない配合物と比較して、あるいは本発明による分散剤を含まない配合物と比較して、沈降安定性および再分散性の改善を達成することができた。
【0076】
特に、固形で緻密な沈降物の形成を避けることができた。したがって、本発明により、非常に長期の貯蔵後に沈降が生じた場合の固形分の非常に良好な再分散性が可能となるため、例えば、長期の貯蔵中の絶え間ない撹拌や混合はもはや必要ではない。