(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144343
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】予め形成された天然ゴムカーボンブラック複合材料を組み込んだゴム組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 7/00 20060101AFI20241003BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20241003BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20241003BHJP
C08K 3/06 20060101ALI20241003BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C08L7/00
C08L9/00
C08K3/04
C08K3/06
C08K3/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024051513
(22)【出願日】2024-03-27
(31)【優先権主張番号】18/127,763
(32)【優先日】2023-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513158760
【氏名又は名称】ザ・グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100104374
【弁理士】
【氏名又は名称】野矢 宏彰
(74)【代理人】
【識別番号】100112634
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 美奈子
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・ロペス・ガシオラ
(72)【発明者】
【氏名】ライアン・マイケル・シュミット
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AC011
4J002AC031
4J002AC061
4J002AC081
4J002DA036
4J002DA047
4J002DJ016
4J002EN079
4J002EU059
4J002EV278
4J002EV328
4J002FD016
4J002FD079
4J002FD147
4J002FD158
4J002GN01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】トレッド摩耗に過度に影響を及ぼすことなく、硬化した組成物から形成されるタイヤの転がり抵抗および引き裂き特性を維持することができる複合体から形成されるゴム組成物を提供する。
【解決手段】例示的な実施形態の1つの態様に従い、ゴム組成物は、少なくとも20phrの複合材料、少なくとも3phrの共役ジエンエラストマー、硬化活性化剤、および硫黄ベースの硬化剤を含む。複合材料は、天然ゴム中に分散した補強用カーボンブラックを含む。複合材料および共役ジエンエラストマーは一緒になって、ゴム組成物中の少なくとも90phrの加硫性エラストマーを提供する。ゴム組成物は、カーボンブラック以外の補強充填剤をさらに含むことができる。補強充填剤はシリカを含むことができる。ゴム組成物は、少なくとも5phr、もしくは少なくとも8phrのシリカ、または30phrまで、もしくは18phrまでのシリカを含むことができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴム中に分散した補強用カーボンブラックを特徴とする少なくとも20phrの複合材料、
少なくとも3phrの共役ジエンエラストマー、
硬化活性化剤、および
硫黄ベースの硬化剤
を特徴とするゴム組成物であって、前記複合材料および前記共役ジエンエラストマーが一緒になって、前記ゴム組成物中の少なくとも90phrの加硫性エラストマーを提供する、ゴム組成物。
【請求項2】
少なくとも5phrのシリカを含むことを特徴とする、請求項3に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記複合材料が少なくとも20phrの前記補強用カーボンブラックを有するゴム組成物を提供することを特徴とする、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記複合材料が少なくとも50phrの前記天然ゴムを有するゴム組成物を提供することを特徴とする、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記複合材料が固体であることを特徴とする、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記共役ジエンエラストマーが天然ゴムおよび合成ポリイソプレンのうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項7】
少なくとも5phrの前記共役ジエンエラストマーを含むことを特徴とする、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項8】
少なくとも1phrの、抗酸化剤およびオゾン劣化防止剤のうちの少なくとも1種をさらに特徴とする、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の組成物から形成される物品。
【請求項10】
タイヤトレッドを特徴とする、請求項9に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]例示的な実施形態の態様は、様々なタイヤ構成部材、例えば、タイヤトレッド、基材、およびワイヤコーティングにおける使用に適した組成物、特に、従来の形態の天然ゴムに加えて、予め形成された天然ゴム・カーボンブラック複合体を組み込んだ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]タイヤトレッドは一般的に、硫黄ベースの硬化剤、例えば、元素の硫黄を添加する前に、様々な添加剤、例えば、充填剤および硬化助剤とブレンドした天然ゴムまたは他のエラストマーから形成される。このような混合成分は、多くの場合、トレッド摩耗およびタイヤの走行マイル数(マイル=1.6キロメートル)に関係した性能指標を改善するように選択される。多くの場合、トレッド摩耗および走行マイル数の改善と、他のパラメーター、例えば、引き裂きおよび転がり抵抗との間にはトレードオフが存在する。
【0003】
[0003]米国特許第8,536,262B2号は、微量のシンジオタクチック-1,2-ポリブタジエンならびに多量の、イソプレンおよび/または1,3-ブタジエンのポリマーまたはコポリマー、ならびにスチレンとイソプレンおよび/または1,3-ブタジエンとのコポリマーのうちの少なくとも1種を含むゴムから形成されたタイヤの内部トレッドゴム層について記載している。組成物は、ヨウ素吸収値(ASTM D2515)約20~約50g/kgおよび100~約300g/kgをそれぞれ有するゴム補強用カーボンブラック充填剤のブレンドをさらに含む。内部トレッドゴム層はタイヤキャップと、カーカスとの間に配置され、ゴムのヒステリシス特性を実質的に維持し、タイヤの使用中に内部熱が蓄積される傾向を減少させながら、タイヤハンドリングを促進するように作られている。余分なトレッド層の追加は有益ではあるが、タイヤを構築するためのコストまたは時間を増加させる可能性がある。
【0004】
[0004]最近になって、天然ゴムラテックスおよびカーボンブラックを含有するエラストマー複合材料が、例えば、米国特許第9,156,955B2号および米国特許第10,767,028B2号に記載されているようなタイヤ組成物における使用のために開発されている。複合体は硬化剤および他の添加剤と混合して、例えば、タイヤトレッドを形成することに適合した組成物を生成することができる。しかし、このような複合体は、提供される特性の範囲が限定されてしまう傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第8,536,262B2号
【特許文献2】米国特許第9,156,955B2号
【特許文献3】米国特許第10,767,028B2号
【特許文献4】米国公開第20100071817A1号
【特許文献5】米国公開第20150105491A1号
【特許文献6】米国特許第5,587,416A号
【特許文献7】米国特許第5,800,608A号
【特許文献8】米国特許第5,882,617A号
【特許文献9】米国特許第9,359,215B2号
【特許文献10】米国公開第20020081247A1号
【特許文献11】米国公開第20050032965A1号
【特許文献12】米国特許第5,708,069号
【特許文献13】米国特許第7,550,610号
【特許文献14】米国特許第5,789,514号
【特許文献15】米国特許第6,322,811号
【特許文献16】米国特許第4,082,703号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Gruberら、「Raman Studies of Heat-Treated Carbon Blacks」、Carbon、32巻(7号)、1377~1382頁(1994)
【非特許文献2】The Vanderbilt Rubber Handbook (1978)、344~347頁
【非特許文献3】The Vanderbilt Rubber Handbook(1978)、346および347頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
[0005]トレッド摩耗に過度に影響を及ぼすことなく、硬化した組成物から形成されるタイヤの転がり抵抗および引き裂き特性を維持することができる複合体から形成されるゴム組成物が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[0006]例示的な実施形態の1つの態様によると、ゴム組成物は、少なくとも20phrの複合材料、少なくとも3phrの共役ジエンエラストマー、硬化活性化剤、および硫黄ベースの硬化剤を含む。複合材料は、天然ゴム中に分散した補強用カーボンブラックを含む。複合材料および共役ジエンエラストマーは一緒になって、ゴム組成物中に少なくとも90phrの加硫性エラストマーを提供する。
【0009】
[0007]ゴム組成物は、カーボンブラック以外の補強充填剤をさらに含むことができる。補強充填剤はシリカを含むことができる。ゴム組成物は、少なくとも5phr、もしくは少なくとも8phrのシリカ、または30phrまで、もしくは18phrまでのシリカを含むことができる。
【0010】
[0008]複合材料は、少なくとも20phrの補強用カーボンブラック、もしくは少なくとも30phr、または80phrまで、もしくは55phrまでの補強用カーボンブラックを有するゴム組成物を提供することができる。複合材料は、少なくとも50phrの天然ゴム、もしくは少なくとも70phr、または95phrまで、もしくは90phrまでの天然ゴムを有するゴム組成物を提供することができる。複合材料は、21℃および大気圧で固体であることができる。
【0011】
[0009]共役ジエンエラストマーは、天然ゴムおよび合成ポリイソプレンのうちの少なくとも1種を含むことができる。ゴム組成物は、少なくとも5phrの共役ジエンエラストマー、もしくは少なくとも10phr、または50phrまで、もしくは30phrまでの共役ジエンエラストマーを含むことができる。
【0012】
[0010]硬化活性化剤は、脂肪酸、酸化亜鉛、およびこれらの混合物からなる群から選択することができる。
[0011]ゴム組成物は、少なくとも0.1phrの、樹脂、油、およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の加工助剤をさらに含むことができる。
【0013】
[0012]ゴム組成物は、少なくとも1phrの、抗酸化剤およびオゾン劣化防止剤のうちの少なくとも1種、ならびに/または少なくとも0.5phrの硬化促進剤、ならびに/または少なくとも0.05phrの硬化抑制剤をさらに含むことができる。
【0014】
[0013]複合材料および共役ジエンエラストマーは、一緒になって、ゴム組成物中の少なくとも98phrの加硫性エラストマーを提供することができる。
[0014]例示的な実施形態の別の態様では、物品は、上記に記載されている態様のいずれかのゴム組成物から形成される。物品はタイヤトレッドを含むことができる。
【0015】
[0015]例示的な実施形態の別の態様では、ゴム組成物を形成する方法は、複合材料を共役ジエンエラストマーと、少なくとも115℃の温度でブレンドして、混合物を形成するステップを含む。複合材料は天然ゴム中に分散した補強用カーボンブラックを含む。複合材料および共役ジエンエラストマーは一緒になって、加硫性エラストマーの合計100phrのうちの少なくとも90phrを提供する。混合物は硫黄ベースの硬化剤とブレンドして、ゴム組成物を形成する。
【0016】
[0016]本方法において、混合物はシリカをさらに含むことができる。
[0017]本方法は、ゴム組成物を硬化して、造形品を形成するステップをさらに含むことができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[0018]例示的な実施形態の態様は、成型したまたは押し出した物品を形成するための使用に適合したゴム組成物、およびこの組成物から形成される物品、例えばタイヤトレッドなどに関する。組成物は、予め形成された複合材料、共役ジエンベースのエラストマー、補強充填剤、例えば、シリカ、硫黄ベースの硬化剤、ならびに任意に、加工助剤、例えば、油およびワックス、カップリング剤、抗酸化剤、オゾン劣化防止剤、硫黄ベースの硬化パッケージの他の構成材料、例えば、硬化活性化剤、硬化促進剤、および硬化抑制剤、ならびに当技術分野で公知の他の添加剤のうちの1種または複数を含む。
【0018】
[0019]例示的な複合材料は天然ゴムおよびカーボンブラックを主成分として含む。複合材料と、別個の共役ジエンベースのゴムとの組合せは多相モルホロジーを有する硬化したゴム組成物を結果として生じ、この多相モルホロジーにおいて、カーボンブラックはゴム組成物中に不均一に分散しており、これによってトレッド摩耗に過度に影響を及ぼすことなく、タイヤの良好な転がり抵抗および引き裂き特性が得られる。
【0019】
[0020]発明の説明において、「phr」という用語は、ゴムまたはエラストマー100重量部当たりのそれぞれの材料の重量部を指す。「phf」という用語は、充填剤100重量部当たりの重量部を指す。慣習的には、シーラント組成物に利用されている未硬化のゴムは、合計100phrとなる。
【0020】
[0021]「ゴム」および「エラストマー」という用語は、他に指摘されていない限り、交換可能なように使用することができる。「硬化する」および「加硫化する」という用語は、他に指摘されていない限り、交換可能なように使用することができる。
【0021】
[0022]本明細書で使用される場合、ASTM D1646-19a、「ゴム粘度、応力緩和、および予備加硫特性の標準試験法(Standard Test Methods for Rubber-Viscosity、Stress Relaxation、and Pre-Vulcanization Characteristics)(ムーニー粘度計)」に従い、M.U.で、100℃で、ムーニー粘度(ML1+4)を測定する。
【0022】
[0023]本明細書で参照されているエラストマーまたはエラストマー組成物のガラス転移温度(Tg)は、それぞれのエラストマーまたはエラストマー組成物の、その未硬化状態での、またはエラストマー組成物の場合にはおそらく硬化状態でのガラス転移温度を表す。本明細書で参照されたTg値は、ASTM D3418-21「示差走査熱量測定法による転移温度およびポリマーの融解および結晶化のエントロピーの標準試験法(Standard Test Method for Transition Temperatures and Enthalpies of Fusion and Crystallization of Polymers by Differential Scanning Calorimetry)」に従い、毎分10℃の増加の温度速度で、示差走査熱量計(DSC)によりピーク中点として決定されるものである。
【0023】
複合材料
[0024]複合材料は天然ゴムおよび補強用カーボンブラックを含み、この補強用カーボンブラックは天然ゴム中に分散している。一実施形態では、天然ゴムおよびカーボンブラックは一緒になって、複合材料の少なくとも90重量%、もしくは少なくとも95重量%、もしくは少なくとも98重量%、または100重量%までを構成する。
【0024】
[0025]一実施形態では、複合材料は、100M.U.以下、もしくは85M.U.以下、または少なくとも60M.U.のムーニー粘度を有する。複合材料は、室温(21℃)および大気圧で固体であってもよいし、流動性のある液体であってもよい。別の実施形態では、複合材料は、室温で固形物、例えば、ストリップまたはクラムの形態であってもよい。
【0025】
[0026]複合材料は加硫化されておらず、硫黄ベースの硬化剤および有機過酸化物硬化剤を含まない。複合材料はまたカーボンブラック以外の補強充填剤を含まなくてもよいし、硬化促進剤、硬化活性化剤、および硬化抑制剤を含まなくてもよく、これらの例は以下に述べられている。
【0026】
[0027]複合材料は、ゴム組成物中、少なくとも20phr、もしくは少なくとも30phr、もしくは少なくとも50phr、もしくは少なくとも80phr、もしくは少なくとも100phr、または160phrまで、もしくは150phrまで、もしくは140phrまでの量で使用することができる。複合材料中のエラストマー含有量(主に、天然ゴム)は、ゴム組成物中、合計100phrのエラストマーに寄与する。したがって、ゴム組成物中の複合材料の最大phrは、少なくとも部分的に、そのゴム含有量に依存する。例えば、複合材料は、ゴム組成物中、全エラストマーの少なくとも10phr、もしくは少なくとも20phr、もしくは少なくとも50phr、もしくは少なくとも60phr、もしくは少なくとも70phr、もしくは少なくとも80phr、または95phrまで、もしくは90phrまでを提供することができる。
【0027】
[0028]複合材料は、少なくとも10phr、もしくは少なくとも15phr、もしくは少なくとも20phr、もしくは少なくとも30phr、もしくは少なくとも40phr、または80phrまで、もしくは60phrまで、もしくは50phrまでのカーボンブラックをゴム組成物に寄与することができる。
【0028】
[0029]複合材料中のカーボンブラックの天然ゴムに対する重量比は、少なくとも20:80、もしくは少なくとも30:70、または50:50まで、もしくは40:60まで、例えば、約35:65であってもよい。
【0029】
[0030]複合材料中のカーボンブラックは、単一の補強用カーボンブラックであってもよいし、または2種もしくはそれよりも多くの異なる種類のカーボンブラックを含んでもよい。
【0030】
[0031]複合材料において有用なカーボンブラックは、ASTM D6556-21「窒素吸着によるカーボンブラックと外表面の標準試験法(Standard Test Method for Carbon Black-Total and External Surface Area by Nitrogen Adsorption)」に従い決定した場合、15m2/g~300m2/g、または少なくとも40m2/gの窒素表面積(NSA)を有することができる。例示的なカーボンブラックとして、ASTM D1765-21、「ゴム製品に使用されるカーボンブラックの標準分類システム(Standard Classification System for Carbon Blacks Used in Rubber Products)」により特定されている、ASTM表示記号N110、N121、N134、N220、N231、N234、N242、N293、N299、N315、N326、N330、N332、N339、N343、N347、N351、N358、N375、N539、N550、N582、N630、N642、N650、N683、N754、N762、N765、N774、N787、N907、N908、N990およびN991が挙げられる。
【0031】
[0032]2種またはそれよりも多くの形態のカーボンブラックの混合物を利用することができる。本明細書での使用に適合した複合材料の1つの例は、2種類のカーボンブラックを含み、米国特許第10,767,028B2号に記載されている。異なるカーボンブラックを有する他の複合材料は米国公開第20100071817A1号に記載されている。
【0032】
[0033]一実施形態では、カーボンブラックは、複合材料を形成する前に、例えば、ケイ素で前処理する。1つの例示的ケイ素処理したカーボンブラックは、Cabot CorporationからCRX(商標)2000ECOBLACK(登録商標)として入手可能である。
【0033】
[0034]カーボンブラックおよび天然ゴムを含む例示的な複合材料は、Cabot Corporationから、Engineered Elastomer Composites(E2C(商標))、例えば、E2C(商標)DX9620およびE2C(商標)DX9640として入手可能である。E2C(商標)DX9620は、100℃で、約69M.U.のムーニー粘度ML(1+4)、300%での約17.0MPaの弾性率、約29.8MPaの引張り強度、約528%の破断点伸び、および60℃で約0.130のtanδを有する。E2C(商標)DX9640は、約84M.U.のムーニー粘度、300%での約18.5MPaの弾性率、約30.1MPaの引張り強度、約473%の破断点伸び、および60℃で、約0.15のtanδを有する。
【0034】
[0035]2種またはそれよりも多くの形態の炭素が使用される場合、複合体中の第1のカーボンブラックは、1100℃~1800℃の間の温度で熱処理することによって、第2のカーボンブラックよりも多くの結晶構造を得ることができる。部分的に結晶化した第1のカーボンブラックは、ASTM D2414-22、「カーボンブラック吸油量(OAN)の標準試験法(Standard Test Method for Carbon Black-Oil Absorption Number(OAN))」に従い決定した場合、120cm3/100g~200cm3/100gのOAN構造、およびGruberら、「Raman Studies of Heat-Treated Carbon Blacks」、Carbon、32巻(7号)、1377~1382頁(1994)の方法を使用して決定した場合、25Å~50Åのラマン微結晶性平面サイズ(La)を有することができる。
【0035】
[0036]1つの特定の実施形態では、カーボンブラックは、STSAで測定した場合少なくとも95m2/gの外部表面領域、および80mL/100gより大きいフタル酸ジブチル吸着を有し、複合材料は少なくとも65phrのカーボンブラックを含む。別の特定の実施形態では、カーボンブラックは、STSAで測定した場合少なくとも75m2/gの表面積および60mL/100gより大きいフタル酸ジブチル吸着を有し、複合材料は少なくとも70phrのカーボンブラックを含む。別の特定の実施形態では、カーボンブラックは、L≧-0.26*S+94(式中、Lは複合材料中のカーボンブラックの量(単位:phr)であり、Sは、STSAで測定した場合のカーボンブラックの表面積(単位:m2/g)である)を満たす量で複合材料中に存在する。これらおよび他の適切な複合材料は、例えば、米国公開第20150105491A1号に記載されている。
【0036】
[0037]複合材料はカーボンブラックおよび天然ゴムから本質的になることができるが(例えば、これら2種の材料は全部で複合材料の少なくとも95重量%もしくは少なくとも98重量%、または100重量%までである)、複合材料が他の構成材料を含み得ることもまた想定される。例えば、一実施形態では、複合体の2~25重量%、または15重量%まで、または8重量%までが他のゴム形成エラストマーで構成され得る。これら他のエラストマーとして、他の共役ジエンエラストマー、例えば、合成cis-1,4-ポリイソプレン、ポリブタジエン、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー、およびこれらのエラストマーの混合物を挙げることができる。適切なコポリマーは、ブタジエン/スチレンコポリマー、イソプレン/ブタジエンコポリマー、イソプレン/スチレンコポリマーおよびイソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマーからなる群から選択される。
【0037】
[0038]複合材料は、極めて分散した混合物を達成するために、適切な温度(例えば、少なくとも100℃、または少なくとも120℃)で、十分な時間の間、カーボンブラックを天然ゴムと混合することによって形成することができる。一実施形態では、カーボンブラックは、天然ゴムにスラリーとして加え、凝固剤、例えば、酸を使用して混合物を凝固する。このような方法は、米国特許第9,156,955B2号に記載されている。スラリーは、カーボンブラックと水を混合することによって形成することができ、例えば、米国公開第20150105491A1号に記載されている通り、これを粉砕して、分散を改善することができる。
【0038】
共役ジエンベースのエラストマー
[0039]共役ジエンベースのエラストマー(複合材料の一部を形成しない)は、少なくとも3phr、もしくは少なくとも5phr、もしくは少なくとも6phr、もしくは少なくとも8phr、もしくは少なくとも10phr、もしくは少なくとも12phr、および/または90phrまで、もしくは80phrまで、もしくは60phrまで、もしくは40phrまで、もしくは30phrまで、もしくは20phrまで、もしくは16phrまで、例えば、10~30phrの範囲の量でゴム組成物中に存在してもよい。
【0039】
[0040]一実施形態では、複合材料中に存在する共役ジエンベースのエラストマーの、天然ゴムに対する重量比は、少なくとも5:95、もしくは少なくとも6:94、もしくは少なくとも10:90、もしくは少なくとも12:88、または30:70まで、もしくは25:75まで、もしくは20:80までである。
【0040】
[0041]共役ジエンベースのエラストマーは、単に、または主に共役ジエンから誘導される(例えば、少なくとも60重量%、または少なくとも90重量%、または少なくとも95重量%)1種または複数のエラストマーからなる。例えば、共役ジエンベースのエラストマーは、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、ならびにその混合物およびコポリマーから選択することができる。これらエラストマーはすべて、各モノマー単位中に二重結合を含む。
【0041】
[0042]天然ゴムは主にイソプレン(2-メチル-1,3-ブタジエン)から誘導され、よって主に(例えば、少なくとも99重量%)ポリイソプレンである。本明細書で使用される場合、「天然ゴム」という用語は、天然由来のゴム、例えば、ヘベアゴムの木などの供給源、および非ヘベア供給源(例えば、グアユール低木およびタンポポ、例えば、TKS)から収集することができることを意味する。言い換えると、「天然ゴム」という用語は、合成ポリイソプレンを除外するためと解釈されるべきである。パラゴムノキ(Hevea brasiliensis)の木から得たフィールド等級の凝固物(カップランプ)から生成される天然ゴムは、天然ゴムの一般的な形態である。例えば、技術的に特定されたゴムまたはブロックゴム(TSR)は、インドネシアから入手可能な天然ゴムであり、インドネシアでは、これは標準的なインドネシアンゴム(SIR)、マレーシア(SMR)、およびタイ(STR)と呼ばれる場合もある。この天然ゴムはTSR10およびTSR20を含むいくつかの等級で得ることができ、TSR10等級がより高い純度を有する。
【0042】
[0043]一実施形態では、共役ジエンベースのエラストマーは少なくとも60重量%の天然ゴム、もしくは少なくとも80重量%、もしくは少なくとも90重量%、もしくは少なくとも95重量%、または100重量のまで%天然ゴムである。
【0043】
[0044]一部の実施形態では、合成ポリイソプレン、特に、少なくとも94重量%、または少なくとも96重量%のcis含有量を有するcis-1,4-ポリイソプレンを、共役ジエンベースのエラストマーに使用することができる。合成ポリイソプレンのTgは-60℃~-70℃の範囲であってよい。一実施形態では、合成ポリイソプレンと天然ゴムの混合物は共役ジエンベースのエラストマーとして使用されている。
【0044】
[0045]任意に微量で存在してもよい他の共役ジエンベースのエラストマー(例えば、合計10phrまで、または5phrまで、または2phrまで)は、ブタジエンゴム(BR)、イソプレン-イソブチレンコポリマー、およびハロブチルゴム、例えば、ブロモブチルゴムおよびクロロブチルゴムのうちの1種または複数を含むことができる。
【0045】
他の加硫性エラストマー
[0046]複合材料および共役ジエン基材エラストマー中に存在する天然ゴムとは別に、他の加硫性エラストマーがゴム組成物中に微量で存在してもよく(例えば、合計10phrまで、または5phrまで、または2phrまで)、これらは、ニトリルゴム、液体ゴム、ポリノルボルネンコポリマー、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリル酸塩ゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、ポリスルフィドゴム、エピクロロヒドリンゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエンターポリマー、水和アクリロニトリルブタジエンゴム、イソプレン-ブタジエンコポリマー、ブチルゴム、水素化スチレン-ブタジエンゴム、ブタジエンアクリロニトリルゴム、エチレンモノマーから形成されたターポリマー、プロピレンモノマー、および/またはエチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)、イソプレンベースのブロックコポリマー、ブタジエンベースのブロックコポリマー、スチレン系ブロックコポリマー、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロックコポリマー(SEBS)、スチレン-[エチレン-(エチレン/プロピレン)]-スチレンブロックコポリマー(SEEPS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー(SIS)、ランダムスチレンコポリマー、水素化スチレン系ブロックコポリマー、スチレンブタジエンコポリマー、ポリイソブチレン、エチレン酢酸ビニル(EVA)ポリマー、ポリオレフィン、非晶質ポリオレフィン、半結晶性ポリオレフィン、アルファ-ポリオレフィン、reactor-readyポリオレフィン、アクリル酸塩、メタロセン触媒ポリオレフィンポリマーおよびエラストマー、reactor-made熱可塑性ポリオレフィンエラストマー、オレフィンブロックコポリマー、コポリエステルブロックコポリマー、ポリウレタンブロックコポリマー、ポリアミドブロックコポリマー、熱可塑性ポリオレフィン、熱可塑性加硫物、エチレン酢酸ビニルコポリマー、エチレンn-ブチルアクリレートコポリマー、エチレンアクリル酸メチルコポリマー、ネオプレン、アクリル酸、ウレタン、ポリ(アクリレート)、エチレンアクリル酸コポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド、アタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレンを含むポリエチレン、エチレン-プロピレンポリマー、プロピレン-ヘキセンポリマー、エチレン-ブテンポリマー、エチレンオクテンポリマー、プロピレン-ブテンポリマー、プロピレン-オクテンポリマー、メタロセン触媒ポリプロピレンポリマー、メタロセン触媒ポリエチレンポリマー、エチレン-プロピレン-ブチレンターポリマー、プロピレンから生成されたコポリマー、エチレン、C4~C10アルファ-オレフィンモノマー、ポリプロピレンポリマー、マレート化ポリオレフィン、ポリエステルコポリマー、コポリエステルポリマー、エチレンアクリル酸コポリマー、および/またはポリ酢酸ビニル、ならびにこれらの混合物から選択されてもよく、ならびに/またはポリマーは、ポリマー内のポリマー鎖末端もしくはペンダント位に、ヒドロキシル-、エトキシ-、エポキシ-、シロキサン-、アミン-、アミンシロキサン-、カルボキシ-、フタロシアニン-、およびシラン-スルフィド-基のうちの1種もしくは複数から選択される改変および/もしくは官能化を任意に含む。
【0046】
[0047]一実施形態では、ゴム組成物はこのような他の加硫性エラストマーを含まない。
補強充填剤
[0048]複合材料中に見出されるカーボンブラック以外の1種または複数の補強充填剤がゴム組成物に存在してもよい。このような補強充填剤の例として、シリカ、炭酸カルシウム(CaCO3)、二酸化チタン、水和したケイ酸アルミニウム粘土、2:1層状ケイ酸塩粘土およびそれから形成される有機親和性粘土、ケイ酸カルシウム、グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ、珪灰石、タルク、珪藻土、デンプン、リグニン、アルミナ、別のカーボンブラック、例えば、複合材料中に存在するカーボンブラックとは異なるもの、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0047】
[0049]補強充填剤は、ゴム組成物中に、0~150phr、例えば、少なくとも2phr、もしくは少なくとも4phr、もしくは少なくとも6phr、もしくは少なくとも8phr、または100phrまで、もしくは80phrまで、もしくは50phrまで、もしくは20phrまで、もしくは15phrまで、10phrまで、例えば、5~15phrで存在してもよい。
【0048】
[0050]一実施形態では、補強充填剤は、シリカ粒子、例えば、非晶質(例えば、沈殿させた)シリカおよび/または結晶性シリカを含むまたはからなる。「シリカ」という用語は、本明細書で、二酸化ケイ素、SiO2(シリカが形成されるプロセスから生成された微量な不純物、一般的に1重量%未満を含有し得る)を指すように使用されている。「沈降シリカ」という用語は、酸性化剤を用いてケイ酸塩を沈殿させるプロセスにより通常得られる合成非晶質シリカを指すように使用されている。
【0049】
[0051]シリカは、ゴム組成物中に、少なくとも2phr、もしくは少なくとも4phr、もしくは少なくとも6phr、もしくは少なくとも8phr、または100phrまで、もしくは80phrまで、もしくは50phrまで、もしくは20phrまで、もしくは18phrまで、もしくは15phrまで、10phrまで、例えば、5~15phrの量で存在してもよい。
【0050】
[0052]シリカは様々な方法で調製することができる。沈降シリカは、例えば、籾殻または他の生物学的廃棄物中に見出される非晶質シリカを、水酸化ナトリウムを用いて蒸解することにより、ケイ酸ナトリウムを形成し、酸性化剤、例えば、硫酸または二酸化炭素との反応により、シリカをケイ酸ナトリウムから沈殿させることにより調製することができる。生成したシリカ沈殿物は洗浄し、濾過する。沈降シリカの調製の方法は、例えば、米国特許第5,587,416A号、米国特許第5,800,608A号、米国特許第5,882,617A号、および米国特許第9,359,215B2号、ならびに米国公開第20020081247A1号、および米国公開第20050032965A1号に開示されている。沈降シリカはまた、例えば、米国特許第5,708,069号、米国特許第7,550,610号、および米国特許第5,789,514号に記載されている通り、シリカゲルから形成することもできる。シリカゲルは、例えば、シリカヒドロゲルを、例えば、オルガノメルカプトシランおよびアルキルシランを用いて疎水化し、生成物を乾燥させることにより誘導することができる。
【0051】
[0053]シリカの表面積を決定するための様々な方法が利用可能である。ASTM D6845-20「沈殿水和シリカの標準試験法CTAB(臭化セチルトリメチルアンモニウム)表面積(Standard Test Method for Silica、Precipitated、Hydrated-CTAB(Cetyltrimethylammonium Bromide)Surface Area)」の試験方法では、シリカの比表面積の測定は、小さすぎてCTAB分子が入れない微小孔により含有されている領域は除外される。この試験方法は、すべての種類のゴム等級シリカを特徴付けるのに適している。
【0052】
[0054]補強充填剤に使用されているシリカは、ASTM D6845-20に従い、少なくとも120m2/g、または少なくとも140m2/g、または少なくとも220m2/g、または少なくとも240m2/gのCTAB比表面積を有することができる。シリカは、500m2/gまで、または400m2/gまで、または300m2/gまでのCTAB比表面積を有することができる。
【0053】
[0055]本明細書での使用に適合した例示的沈降シリカとして、Hi-Sil(商標)532、Hi-Sil(商標)532EP、およびHi-Sil(商標)EZ 160G、PPG Industries製;Hubersil(商標)4155、J.M.HuberCompany製;Zeosil(商標)、記号表示115GR、125GR、165GR、175GR、185GR、195GR、1085GR、1165MP、1115MP、HRS1200MP、Premium MP、Premium 200MP、Premium SW、および195HR、Solvay製;Ultrasil(商標)、記号表示VN2、VN3、VN3GR、5000GR、6000GR、7000GR、および9000GR、Evonik製;Zeopol(商標)、記号表示8755LSおよび8745、Evonik製;Newsil(商標)、記号表示115GRおよび2000MP、Wuxi Quechen Silicon Chemical Co.,Ltd製;ならびにTokusil(商標)315、Maruo Calcium Co.,Ltd製、ならびにこれらの混合物が挙げられる。
【0054】
[0056]一実施形態では、シリカは、ゴム組成物中に、1phrまたはそれよりも多く、例えば、少なくとも2phr、もしくは少なくとも5phr、もしくは少なくとも6phr、もしくは少なくとも7phr、または20phrまで、もしくは18phrまで、もしくは15phrまで、もしくは14phrまで、もしくは12phrまで、もしくは10phrまでで存在する。シリカは、少なくとも2phf、もしくは少なくとも4phf、もしくは少なくとも8phf、もしくは少なくとも12phf、または25phfまで、もしくは20phfまで、もしくは18phfまでの補強充填剤であってよい。
【0055】
[0057]一実施形態では、ゴム組成物中のシリカの、全エラストマー(例えば、天然ゴム)に対する重量比は少なくとも4:100、または少なくとも6:100であり、20:100まで、または15:100までであってよい。
【0056】
[0058]一実施形態では、ゴム組成物中のシリカのカーボンブラックに対する重量比は、少なくとも4:100、または少なくとも7:100、または少なくとも12:100、または少なくとも15:100であり、3:10まで、または2:10までであってよい。
【0057】
[0059]一実施形態では、シリカは、前処理したシリカをゴム組成物に組み込む前に、例えば、カップリング剤および/またはポリアルキレンオキシド、例えば、ポリエチレングリコールを用いて表面処理することもできる。前処理は、シリカのエラストマーへの分散および/または接着性を増強するように機能することができる。別の実施形態では、シリカは一般的に硬化剤の添加前に、カップリング剤および/またはポリアルキレンオキシドを用いて、ゴム組成物中in situで処理することができる。
【0058】
[0060]シリカ前処理に対して、またはゴム組成物中in situで使用することができるポリアルキレングリコールとして、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびこれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、ポリアルキレンオキシドはポリエチレングリコールである。ポリアルキレンオキシドは、少なくとも500、例えば、少なくとも2,000、もしくは少なくとも4,000、または15,000まで、もしくは12,000まで、もしくは10,000まで、もしくは8,500までの重量平均分子量Mwを有することができる。ポリアルキレンオキシドはゴム組成物に存在しなくてもよい。ポリアルキレンオキシド、例えば、ポリエチレングリコールが利用される場合、これは少なくとも0.1phr、例えば、少なくとも0.2phr、もしくは少なくとも0.3phr、または5phrまで、もしくは3phrまで、もしくは2phrまで、もしくは1phrまで、もしくは0.6phrまでの量で含まれていてもよい。
【0059】
[0061]市販のポリエチレングリコールの例として、Carbowax(商標)PEG3350およびCarbowax(商標)PEG8000、Dow Chemical Company製が挙げられ、これらの番号は近似する重量平均分子量を示している。例えば、米国特許第6,322,811号および米国特許第4,082,703号に記載されている他のポリアルキレンオキシドポリマーを使用することもできる。
【0060】
[0062]適切なカップリング剤は一般的に、第1の部分(これは、沈降シリカの表面上に存在するヒドロキシル基(例えば、シラノール基)と反応性がある)と、例えば、例示的な天然ゴムであるジエンベースのエラストマーと反応することが可能な第2の部分とを含む。2つの部分は、沈降シリカがエラストマーと化学的に結合されるよう、連結基、例えば、ヒドロカルビルまたは硫化系架橋により連結されている。シリカカップリング剤の例として、以下のような基、例えば、アルキル、アルコキシ、メルカプト、ブロック化メルカプト、スルフィド含有基(例えば、モノスルフィドベースのアルコキシ含有基、ジスルフィドベースのアルコキシ含有基、テトラスルフィドベースのアルコキシ含有基)、アミノ、ビニル、エポキシ、およびこれらの組合せなどの基を含有するものが挙げられる。シリカカップリング剤は、カップリング剤の総量のシリカ充填剤に対する少なくとも0.1:100または1:5までの重量比、例えば、少なくとも1:100、もしくは少なくとも1:50、または1:20まで、もしくは1:10までの比を得るのに十分な量で存在することができる。
【0061】
[0063]シリカおよびカーボンブラック以外の追加の補強充填剤は、例えば、30phrまで、もしくは20phrまで、もしくは10phrまで、もしくは1phrまでの総量で利用してもよいし、または存在しなくてもよい。このような追加の補強充填剤の例として、アルミナ、水酸化アルミニウム、粘土(補強用等級)、水酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、二酸化チタン、補強用酸化亜鉛、およびこれらの組合せが挙げられる。
【0062】
[0064]一実施形態では、天然ゴム、カーボンブラック、およびシリカ以外のゴム組成物の構成材料は、40phr以下、または30phr以下、または20phr以下、または15phr以下の総量でゴム組成物中に存在する。
【0063】
加工助剤
[0065]加工助剤は、ゴム組成物中、合計1~20.0phr、または10phrまで、または5phrまで使用することができ、樹脂および液体可塑剤、例えば、油のうちの1種または複数を含むことができる。
【0064】
[0066]ゴム組成物に使用することができる例示的樹脂として、粘着性樹脂、例えば、非反応性フェノールホルムアルデヒド、および剛性樹脂、例えば、反応性フェノールホルムアルデヒド樹脂およびレゾルシノールまたはレゾルシノールおよびヘキサメチレンテトラミン、ベンゾオキサジン樹脂、炭化水素樹脂、例えば、芳香族、脂肪族、および環状脂肪族の樹脂が挙げられる。
【0065】
[0067]例示的炭化水素樹脂は、少なくとも30℃、または50℃までのTgを有することができる。炭化水素樹脂Tgは、エラストマーTg測定に対して上記に論じられた手順に従い、DSCにより決定することができる。炭化水素樹脂は、少なくとも70℃、または100℃までの軟化点を有していてもよい。炭化水素樹脂の軟化点は一般的にTgに関係している。Tgは一般的にその軟化点より低く、Tgが低いほど軟化点は低くなる。
【0066】
[0068]脂肪族樹脂の例として、C5画分ホモポリマーおよびコポリマー樹脂が挙げられる。環状脂肪族樹脂の例として、シクロペンタジエン(「CPD」)ホモポリマーまたはコポリマー樹脂、ジシクロペンタジエン(「DCPD」)ホモポリマーまたはコポリマー樹脂、およびこれらの組合せが挙げられる。
【0067】
[0069]芳香族樹脂の例として、芳香族ホモポリマー樹脂および芳香族コポリマー樹脂が挙げられる。芳香族コポリマー樹脂とは、1つまたは複数の芳香族モノマーの組合せを、1つまたは複数の他の(非芳香族)モノマーと組み合わせて含み、すべてのモノマーの重量の大部分が一般的に芳香族である、炭化水素樹脂を指す。
【0068】
[0070]芳香族樹脂の具体例として、クマロン-インデン樹脂、アルキル-フェノール樹脂、およびビニル芳香族ホモポリマーまたはコポリマー樹脂が挙げられる。アルキル-フェノール樹脂の例として、アルキルフェノール-アセチレン樹脂、例えば、p-tert-ブチルフェノール-アセチレン樹脂、アルキルフェノール-ホルムアルデヒド樹脂(例えば、低い重合度を有するもの)が挙げられる。ビニル芳香族樹脂は以下のモノマーのうちの1つまたは複数を含むことができる:アルファ-メチルスチレン、スチレン、オルト-メチルスチレン、メタ-メチルスチレン、パラ-メチルスチレン、ビニルトルエン、パラ(tert-ブチル)スチレン、メトキシスチレン、クロロスチレン、ヒドロキシスチレン、ビニルメシチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレンなど。ビニル芳香族コポリマー樹脂の例として、ビニル芳香族/テルペンコポリマー樹脂(例えば、リモネン/スチレンコポリマー樹脂)、ビニル芳香族/C5画分樹脂(例えば、C5画分/スチレンコポリマー樹脂)、ビニル芳香族/脂肪族コポリマー樹脂(例えば、CPD/スチレンコポリマー樹脂、およびDCPD/スチレンコポリマー樹脂)が挙げられる。
【0069】
[0071]上述したビニル芳香族モノマー(例えば、スチレン、アルファ-メチルスチレン)のうちの1種または複数に基づく芳香族樹脂の場合、芳香族樹脂中の少なくとも80重量%、もしくは少なくとも85重量%、もしくは少なくとも90重量%、または少なくとも95重量%、もしくは100重量%までのモノマーは芳香族モノマーであってもよい。
【0070】
[0072]他の芳香族樹脂として、テルペン樹脂、例えば、アルファ-ピネネン樹脂、ベータ-ピネン樹脂、リモネン樹脂(例えば、L-リモネン、D-リモネン、L異性体とD異性体とのラセミ混合物であるジペンテン)、ベータ-フェランドレン、デルタ-3-カレン、デルタ-2-カレン、およびこれらの組合せが挙げられる。
【0071】
[0073]一実施形態では、炭化水素樹脂として、芳香族と脂肪族/環状脂肪族の炭化水素の組合せが挙げられる。このような場合、芳香族樹脂と組み合わせて使用されるいずれかの脂肪族および/または環状脂肪族樹脂の総量は、炭化水素樹脂の全体量の5phr以下、もしくは4phr未満、もしくは3phr未満、または20重量%よりも多く、または15重量%以下、もしくは10重量%以下であってもよい。
【0072】
[0074]芳香族樹脂は、少なくとも1000グラム/モルおよび/または4000グラム/モルまでのMwを有することができる。
[0075]ゴム組成物中の樹脂の総量は、少なくとも1phr、もしくは少なくとも2phr、または20phrまで、もしくは10phrまで、もしくは5phrまでであってもよいし、または存在しなくてもよい。
【0073】
[0076]液体可塑剤という用語は、室温で液体である(すなわち、25℃およびこれよりも上で液体である)可塑剤成分を指すように使用され、油および非油性を含む。炭化水素樹脂は液体可塑剤とは対照的に、一般的に室温で固体である。一般的に、液体可塑剤は、0℃未満、一般的に0℃をはるかに下回る、例えば、-30℃未満、もしくは-40℃未満、もしくは-50℃未満のTg、例えば、0℃~-100℃のTgを有する。
【0074】
[0077]適切な液体可塑剤として、油(例えば、石油ならびに植物を供給源とする油)および非油性液体可塑剤、例えば、エーテル可塑剤、エステル可塑剤、リン酸塩可塑剤、およびスルホネート可塑剤が挙げられる。液体可塑剤は、混合プロセスの間または混合プロセス後に、エクステンダー油(ゴムを延ばすために使用される)として加えることができる。石油ベースの油は、芳香族、ナフテン系、低級多環式芳香族(PCA)油、およびこれらの混合物を含むことができる。植物油は、植物、ナッツ、種子から収集された油、およびこれらの混合物、例えば、トリグリセリドを含むことができる。使用される油のTgは-40℃~-100℃であってよい。
【0075】
[0078]存在する場合、ゴム組成物は、少なくとも1phrの液体可塑剤、または20phrまで、もしくは10phrまで、もしくは5phrまでの液体可塑剤を含むことができる。一実施形態では、いかなる液体可塑剤も利用されない。
【0076】
[0079]上記加工助剤のうちの1種または複数に加えて、ゴム組成物は、素練り促進剤、例えば、ペンタクロロチオフェノール、ジベンズアミドジフェニルジスルフィド、またはこれらの混合物を含むことができる。使用される場合、素練り促進剤の典型的な量は0.1phr~1phrであってよい。
劣化防止剤(抗酸化剤、オゾン劣化防止剤)
[0080]ゴム組成物は、1種または複数の劣化防止剤、例えば、オゾン劣化防止剤および/または抗酸化剤を含むことができる。これら化合物は、タイヤを酸化およびオゾン酸化から保護するのを助ける。代表的な劣化防止剤として、アミンベースの抗酸化剤、例えば、モノフェノール、ビスフェノール、チオビスフェノール、ポリフェノール、ポリマー性ヒンダードフェノール、ヒドロキノン誘導体、ホスフィット、リン酸塩ブレンド、チオエステル、ナフチルアミン、ジフェノールアミンならびに他のジアリールアミン誘導体、パラ-フェニレンジアミン(PPD)、キノリン、およびブレンドしたアミンが挙げられる。例示的なアミンベースの抗酸化剤として、ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(6PPD)、オリゴマー化2,2,4-トリメチル-キノリン(TMQ)、およびその他、例えば、The Vanderbilt Rubber Handbook (1978)、344~347頁に開示されたものなどが挙げられる。抗酸化剤は、ゴム組成物の少なくとも0.1phr、もしくは少なくとも0.3phr、もしくは少なくとも1phr、もしくは少なくとも2phr、または10phrまで、もしくは5phrまでであってよい。
【0077】
[0081]例示的なオゾン劣化防止剤として、物理的保護剤、例えば、ワックスが挙げられる。適切なワックスは、パラフィンワックスおよび微結晶性ワックスを含み、これらは、The Vanderbilt Rubber Handbook(1978)、346および347頁に記載されている種類であってよい。ワックスは、0.1phr、もしくはそれよりも多く、例えば、少なくとも0.3phr、もしくは少なくとも0.5phr、または5phrまで、もしくは2phrまでで存在してもよい。
【0078】
硬化パッケージ
加硫剤
[0082]例示的な硬化パッケージは、加硫(硬化)剤、ならびに硬化促進剤、硬化活性化剤、および硬化阻害剤のうちの1種または複数を含む。硬化パッケージは、ゴム組成物中、0.5~20phr、または少なくとも5phr、または10phrまでにおいて使用することができる。
【0079】
[0083]ゴム組成物の加硫化は、硫黄ベースの加硫剤の存在下で行うことができる。適切な硫黄ベースの加硫剤の例として、元素の硫黄(遊離の硫黄)、不溶性高分子硫黄、溶解性硫黄、および硫黄を供与する加硫剤、例えば、アミンジスルフィド、ポリマー性ポリスルフィド、または硫黄オレフィン付加体、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0080】
[0084]硫黄加硫剤は、ゴム組成物中、0.1~10phr、例えば、少なくとも0.3phr、もしくは少なくとも0.4phr、もしくは少なくとも0.5phr、もしくは少なくとも0.7phr、または5phrまで、もしくは3phrまでの量で使用することができる。
【0081】
硬化促進剤、硬化活性化剤、硬化抑制剤
[0085]硬化促進剤は加硫剤に対して触媒として作用する。適切な硬化促進剤として、アミン、ジスルフィド、グアニジン、チオウレア、チアゾール、チウラム、スルフェンアミド、ジチオカルバメートおよびキサンテートが挙げられる。チアゾール硬化促進剤の例として、2-メルカプトベンゾチアゾールおよび2,2’-ジチオビス(ベンゾチアゾール)(MBTS)が挙げられる。スルフェンアミド硬化促進剤の例として、ベンゾチアゾールスルフェンアミド、例えば、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)、およびN-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾール-スルフェンアミド(TBBS)が挙げられる。グアニジン硬化促進剤としてジフェニルグアニジン(DPG)が挙げられる。
【0082】
[0086]3分未満の「t0」と呼ばれる、速い加硫化開始時間を有する硬化促進剤は、超促進剤と呼ばれる。使用することができる例示的超促進剤として、1,6-ビス(N,N’-ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン(BDBZTH)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、テトライソブチルチウラムジスルフィド(TiBTD)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDBC)、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸テルル(TDEC)、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛(ZBED)、ジイソノニルジチオカルバミン酸亜鉛、ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛(ZBEC)、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛(ZIX)、ブチルキサントゲン酸亜鉛(ZBX)、エチルキサント酸ナトリウム(SEX)、イソブチルキサントゲン酸ナトリウム(SIBX)、イソプロピルキサントゲン酸ナトリウム(SIPX)、n-ブチルキサントゲン酸ナトリウム(SNBX)、アミルキサントゲン酸ナトリウム(SAX)、エチルキサントゲン酸カリウム(PEX)、アミルキサントゲン酸カリウム(PAX)、2-エチルヘキシルホスホロジチオ酸亜鉛(ZDT/S)、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0083】
[0087]いくつかの事例では、一方が他方より速く作用する促進剤の組合せが使用される。
[0088]硬化促進剤は、ゴム組成物中0.1~10phr、もしくは少なくとも0.5phr、もしくは少なくとも1phr、もしくは少なくとも2phr、または8phrまで、もしくは5phrまで組み込まれてもよい。硬化促進剤の量は、許容される硬化時間、例えば、90分間以下が得られるように選択することができる。
【0084】
[0089]硬化活性化剤は、加硫化をサポートするために使用される添加剤である。硬化活性化剤として、無機と有機の両方の硬化活性化剤が挙げられる。酸化亜鉛は広く使用されている無機硬化活性化剤であり、使用される場合、1phr~10phr、例えば、少なくとも2phr、または5phrまでで存在してもよい。
【0085】
[0090]有機硬化活性化剤として、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、これらの混合物、前述のそれぞれの亜鉛塩、およびチオウレア化合物、例えば、チオウレア、およびジヒドロカルビルチオウレア、例えば、ジアルキルチオウレアおよびジアリールチオウレア、ならびにこれらの混合物が挙げられる。特定のチオウレア化合物として、N,N’-ジフェニルチオウレア、トリメチルチオウレア、N,N’-ジエチルチオウレア(DEU)、N,N’-ジメチルチオウレア、N,N’-ジブチルチオウレア、エチレンチオウレア、N,N’-ジイソプロピルチオウレア、N,N’-ジシクロヘキシルチオウレア、1,3-ジ(o-トリル)チオウレア、1,3-ジ(p-トリル)チオウレア、1,1-ジフェニル-2-チオウレア、2,5-ジチオビウレア、グアニルチオウレア、1-(1-ナフチル)-2-チオウレア、1-フェニル-2-チオウレア、p-トリルチオウレア、およびo-トリルチオウレアが挙げられる。1つの一般的に使用されている有機硬化活性化剤は、ステアリン酸、パルミチン酸、およびオレイン酸のブレンドであり、ステアリン酸がブレンドの主要成分である。
【0086】
[0091]使用される場合、有機硬化活性化剤の総量は、0.1~6phr、例えば、少なくとも0.5phr、もしくは少なくとも1phr、または4phrまでであってよい。
[0092]硬化抑制剤は、加硫化プロセスを制御し、一般的には、所望の時間および/または温度に到達するまで、加硫化を遅らせるまたは阻害するために使用される。例示的硬化抑制剤としてシクロヘキシルチオフタルイミドが挙げられる。
【0087】
[0093]使用される場合、硬化抑制剤の量は、少なくとも0.1phr、または3phrまで、もしくは2phrまでであってよい。
例示的組成物
[0100]表1は例示的な実施形態の態様による例示的なゴム組成物を例示している。
【0088】
【0089】
ゴム組成物の調製
[0101]ゴム組成物は、複合材料、天然ゴム、ならびに/または使用される場合、他の加硫性エラストマー、シリカ、および他のゴム混合成分(硬化剤を含まない)を、少なくとも1種のメカニカルミキサーを用いた、普通「非生産的」混合工程と呼ばれる少なくとも1回の連続的な混合工程で、高温まで、高い剪断ゴム混合条件下で混合し、この後に最終の「生産的」混合工程が続き、この工程において硫黄ベースの硬化パッケージ、例えば、硫黄ベースの硬化剤および硬化促進剤を混合物に加え、混合工程中にゴム混合物をいたずらに予備硬化することを避けるため、より低い混合温度で混合することにより調製することができる。
【0090】
[0102]成分は、非生産的混合工程において、115℃~150℃、例えば、約124℃の温度まで数分間混合することができる。硬化パッケージを一度加えたら、その後の生産的混合ステップは、ゴム組成物の望ましくない予備硬化を回避するため加硫化(硬化)温度未満の温度で、例えば、180℃未満、もしくは160℃以下、もしくは120℃以下、例えば、少なくとも40℃、もしくは少なくとも60℃で、例えば、2分間の間、100~115℃の温度で行うことができる。混合は、例えば、バンバリーミキサー内またはミルロール上で成分を一緒に混練することにより実施することができる。ゴム組成物は、混合工程のそれぞれの間に、40℃未満の温度に冷却することができる。例えば、ゴム組成物は、各混合ステップ後、ミキサーから取り出し、オープンミルからシート状で出し、各混合ステップ後、40℃未満に冷却させてもよい。
【0091】
[0103]硬化パッケージが十分に混合されたら、ゴム組成物は、押し出す、成型する、またはさもなければ、物品、例えば、タイヤトレッドを形成するような形状にすることができる。混合物の温度は硬化を実行するために上昇させることができる。空気入りタイヤまたはその部品の硬化は、120℃~200℃、例えば、少なくとも140℃、または180℃まで、または約150℃で行うことができる。通常の加硫化プロセスのいずれか、例えば、プレスもしくは型内での加熱、または過熱状態の水蒸気もしくは熱風を用いた加熱を使用することができる。このようなタイヤは、公知であり、当業者には容易に明らかである様々な方法により構築、成形、成型、および硬化することができる。
【0092】
[0104]一実施形態では、タイヤが提供され、このタイヤは、少なくとも部分的に、例示的なゴム組成物から形成されるトレッドを有する。タイヤの他の部分、例えば、タイヤ側壁、またはワイヤコーティングが、追加的に、または代わりに、本明細書に記載されているゴム組成物から少なくとも部分的に形成されてもよい。タイヤは、オンロードビヒクル用、例えば、自動車またはトラック用空気入りタイヤ、またはオフロードビヒクル、飛行機用などのタイヤであってよい。タイヤトレッドは、少なくとも20mm、例えば、22~28mmのトレッド深さを有していてもよく、これがトラックにおける使用に適している。
【0093】
[0105]ゴム組成物はタイヤへの使用に限定されず、ゴム手袋、手術装置などにおける用途を発見することもできる。
物品の特性
[0106]タイヤ、例えば、タイヤトレッドにおけるゴム組成物の使用は、改善されたまたは望ましいトレッド特性を有するタイヤを結果としてもたらすことができる。これらの改善されたまたは望ましい特性は、引き裂き抵抗および破断点伸びを含むことができる。ゴム組成物はまた、ワイヤコーティングおよび基材配合物の特性における改善を生み出すこともできる。
【0094】
[0107]これらの改善は、市販の複合材料、Cabot Corporation製E2C(商標)DX9640を用いた、実験室での実験、プラントスケールの試験およびフィールド評価を介して部分的に実証されている。ゴム組成物中の天然ゴムの一部を複合体天然ゴムおよびカーボンブラック材料で置き換えることは、走行マイル数(特に、剛性および耐摩耗性)の改善に有益な混合特性を有意に増強することができる。
【0095】
[0108]例示的な実施形態の範囲を限定することを意図することなく、以下の実施例は、複合材料およびその特性を利用した、例示的なゴム組成物の調製を例示している。
【実施例0096】
[0109]表1.タイヤトレッドキャップ配合物は、複合材料が利用された場合、同等またはより良いトレッド摩耗(中型ラジアルトラック(MRT)タイヤに対してGrosch試験により示されている通り)、改善された転がり抵抗(100℃でのリバウンドを使用して示されている通り)および同等またはより良い引き裂き抵抗(100℃でのOriginal and aged Strebler adhesionに示されている通り)を達成することを目標にして調製している。タイヤ基材およびワイヤコーティング配合物もまた、転がり抵抗および引き裂き抵抗を達成することを目標にして調製する。
[0112]これら3つの実施例に対して、第1の混合工程において、混合物が160℃に到達するまで、天然ゴムをカーボンブラックの一部分(30phr)と混合する。次いで、これをミキサーから滴下し、冷却させる。第2の混合工程では、カーボンブラックの残り(18phr)、使用する場合、シリカ、ワックス、および抗酸化剤を加える。生産的混合工程において、硫黄、促進剤、および硬化抑制剤を加え、硬化温度未満の温度で混合物をミキサーから滴下する。
[0113]実施例D、E、およびFは、天然ゴムと複合材料との両方(およそ64.5重量%の天然ゴムおよび35.5重量%のカーボンブラックを含有する材料)を使用して調製する。これら3種の組成物中のカーボンブラックおよび天然ゴムの量は、ベースライン配合物A、B、およびCの場合とほぼ同じである。これら実施例のそれぞれはシリカを使用する。実施例Eは、改変した硬化パッケージを使用し、実施例Fは、実施例DおよびEに対するシリカより大きい表面積のシリカを使用する。
[0114]実施例D、E、およびFを調製するため、単一の非生産的工程において、温度が124℃に到達するまで組成物を混合し、ミキサーから滴下する。生産的工程では、硫黄、促進剤、および硬化抑制剤を加え、104℃に到達するまで混合物組成物をミキサー内で混合し、ミキサーから滴下する。この工程の間、ロータースピードは50rpmで一定に維持する。非生産的および生産的工程において、より低温の温度で混合することは、複合材料中のポリマー充填剤網状組織を保存し、よって、性能指標を維持するのを助ける。硬化工程では、ゴム組成物を150℃の温度に32分間加熱する。
[0117]硬化状態での剛性:貯蔵弾性率G’をゴムプロセス分析器(RPA500)で決定する。貯蔵弾性率値は、40℃の温度で、未硬化試料に対しては10%歪みで、硬化後には、10%および50%歪みで測定する(単位:MPa)。硬化した試料に対する測定は、トレッド内にゴム組成物を使用するタイヤの乗り心地およびハンドリングを示す。10%歪みにおけるtanΔ値(G’’のG’に対する比)もまた得る。
[0118]引張特性:エージング前および後の試料に対する300%歪みでのリングの引張弾性率(MPa)、引張り強度、MPa、および破断点伸び(%)をInstron Corporation装置で測定する。
[0119]転がり抵抗予測値:タイヤのウェット制動性の指標として、硬化した試料に対して、ASTM D7121-05(2018)「ショブ型反発振り子を使用したゴムの反発特性を測定するための標準的な試験方法(Standard Test Method for Rubber Property-Resilience Using Schob Type Rebound Pendulum)」に従い、所与の温度で、ZwickRoell 5109 Rebound Resilience Testerを用いて、反発パーセンテージを測定する。値は高いほど良い。反発は、負荷にさらされた場合のコンパウンドのヒステリシスの尺度であり、一般的に、測定された反発が高いほど、転がり抵抗が低い。
[0120]それ自体に対するStrebler Adhesion Steady State Average Loadは、エージング前および後の硬化した試料に対して100℃(N/mm)で決定する。これは、引き裂かれていない試験試料に対して直角に、一方のゴム組成物を他方から引っぱることにより界面接着を決定する剥離試験であり、ゴム組成物の2つの末端は、互いに180°の角度で引き裂かれる。
[0121]亀裂成長:DeMattia切傷成長(mm/min)は、95℃で、エージングさせた試料に対してASTMD813-07(2019)、「ゴム劣化の標準試験法-亀裂成長(Standard Test Method for Rubber Deterioration-Crack Growth)」に従い決定する。表3では、切傷成長率が高いほど、トレッドグルーブの表面亀裂成長に対する耐性がより大きい。
[0122]耐摩耗性:トレッド摩耗を示す耐摩耗性は、摩耗したゴムのGrosch摩耗率として(単位:mg/km)決定する。試験ゴム試料は、スリップ角で配置され、回転している研磨ディスク上の所与の距離をそれが横断する間、一定の負荷(ニュートン)を受ける。中程度および高い苛酷度摩耗試験を行う。これら2つの試験の主要な差異は、負荷およびスリップ角に関するものである。高い苛酷度のGroschは、角度12度で、70Nの負荷で試験した2つの試料の平均であり、中程度の苛酷度は、それぞれ70Nおよび40Nの負荷ならびに12度および6度の角度での2つの試験の平均である。
[0123]結果は表3に示されている。結果は、実施例Aに対する結果を100と設定して正規化されている。一般的にすべてのパラメーターに対して、高い値ほど良い。
[0124]表3の結果は、実施例、DおよびEが、高い苛酷度、より低い中程度の苛酷度耐摩耗性において、エージングさせたStrebler接着性のより高い値およびより良い耐摩耗性を有したことを示している。性能指標に対するこの改善されたバランスは、配合物中の天然ゴムの一部を複合材料で置き換えて使用することにより達成される。実施例Fは、低いおよび高い苛酷度での耐摩耗性とのトレードオフにより、Strebler値において実施例DおよびEと類似の改善を示した。
[0125]実施例Eは、含まれる硫黄、促進剤、および硬化抑制剤がわずかに少ないことを除いて実施例Dと同一である。実施例Aと比較して、実施例Eは転がり抵抗指標において10%の改善をもたらす一方、またコンパウンドの引き裂き抵抗指標および高い苛酷度におけるGrosch耐摩耗性を改善し、剛性および破断点伸び値は幹線輸送ドライブ用途に対する一般的ガイドライン内に維持している。
[0126]より高い300%~100%引張弾性比率に基づく分散パーセントの増加(すなわち、より良い充填剤-ポリマー相互作用)が複合材料を含有する試料に観察された。この場合、追加の非生産的混合ステップにより、分散および加工指標をさらに改善することができる。