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特開2024-144344セルフシーリング式空気入りタイヤのためのシーラント組成物
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  • 特開-セルフシーリング式空気入りタイヤのためのシーラント組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144344
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】セルフシーリング式空気入りタイヤのためのシーラント組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/10 20060101AFI20241003BHJP
   C08L 23/22 20060101ALI20241003BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20241003BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20241003BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20241003BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20241003BHJP
   B60C 19/12 20060101ALI20241003BHJP
   B60C 5/14 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C09K3/10 J
C08L23/22
C08L9/00
C08K3/013
C08K5/14
C09K3/10 A
B60C1/00 Z
B60C19/12 Z
B60C5/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024051551
(22)【出願日】2024-03-27
(31)【優先権主張番号】18/127,861
(32)【優先日】2023-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513158760
【氏名又は名称】ザ・グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100104374
【弁理士】
【氏名又は名称】野矢 宏彰
(74)【代理人】
【識別番号】100112634
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 美奈子
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ローレンス・ゲルズマン
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ・ジム・パパコンスタントパウロス
【テーマコード(参考)】
3D131
4H017
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA08
3D131AA60
3D131BB01
3D131BB03
3D131BC24
3D131CB11
3D131LA13
3D131LA28
4H017AA03
4H017AB07
4H017AC18
4H017AE01
4J002AC012
4J002AC032
4J002AC062
4J002AC082
4J002BB181
4J002DA026
4J002DA036
4J002DE136
4J002DE236
4J002DJ006
4J002DJ016
4J002DJ036
4J002DJ046
4J002EK037
4J002EK047
4J002EK057
4J002FD016
4J002FD098
4J002GJ02
4J002GN01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】タイヤにできたパンクをセルフシーリングすることができ、その一方でパンクの事象が生じた場合のシーラント組成物の過剰な流動も減少させるシーラント組成物を提供する。
【解決手段】タイヤにシーラント層を形成するのに適合したシーラント組成物は、少なくとも60phrのイソブチレンベースのエラストマー成分、および少なくとも5phrの共役ジエンベースのエラストマー成分を含む、100phrのエラストマーを含む。シーラント組成物は、少なくとも5phrの粒状充填剤、少なくとも0.5phrの有機過酸化物、および任意に、シーラントに非黒色の色を提供する着色剤をさらに含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも60phrのイソブチレンベースのエラストマー成分と、少なくとも5phrの共役ジエンベースのエラストマー成分とを特徴とする、100phrのエラストマー、
少なくとも5phrの粒状充填剤、および
少なくとも0.5phrの有機過酸化物
によって特徴付けられる、シーラント組成物。
【請求項2】
シーラントに非黒色の色を提供する着色剤をさらに特徴とする、請求項1に記載のシーラント組成物。
【請求項3】
前記イソブチレンベースのエラストマー成分が、ブチルゴム、ポリイソブチレン、およびこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載のシーラント組成物。
【請求項4】
前記イソブチレンベースのエラストマー成分が少なくとも80重量%のブチルゴムであることを特徴とする、請求項3に記載のシーラント組成物。
【請求項5】
前記イソブチレンベースのエラストマー成分が、少なくとも5,000および/または800,000以下の重量平均分子量を有するブチルゴムを含むことを特徴とする、請求項1に記載のシーラント組成物。
【請求項6】
少なくとも75phrの前記イソブチレンベースのエラストマーを含むことを特徴とする、請求項1に記載のシーラント組成物。
【請求項7】
少なくとも8phrの前記共役ジエンベースのエラストマー成分を含むことを特徴とする、請求項1に記載のシーラント組成物。
【請求項8】
周方向トレッド、
トレッドに結合している支持カーカス、
請求項1に記載のシーラント組成物を特徴とするシーラント層、および
閉じ込め層
によって特徴付けられる未硬化空気入りタイヤであって、前記シーラント層が前記支持カーカスと前記閉じ込め層との間に配置されている、未硬化空気入りタイヤ。
【請求項9】
閉じ込め層がハロブチルゴムを含むことを特徴とする、請求項8に記載の未硬化空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記有機過酸化物にとって、前記イソブチレンベースのエラストマー成分を少なくとも部分的に解重合させるのに十分な温度で、請求項8に記載の未硬化空気入りタイヤを硬化することにより形成される、硬化した空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明の態様は、空気入りタイヤにおけるパンクをシーリングするための使用に適合したシーラント組成物、組成物を組み込んだタイヤ、および製造の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]パンクシーリングタイヤは、鋭い物体、例えば、くぎ、ねじ、またはタイヤを貫通することが可能な別の物体によりタイヤがパンクした後、空気の消失、および結果として起こる収縮を遅らせるまたは阻止するように設計されている。
【0003】
[0003]シーラント組成物(「シーラント」)は一般的に、タイヤの層の間に収容または封入されている。例えば、シーラントは、別個のセルまたはシートに配置することによって、タイヤのトレッド部分を貫通する穿刺物体が、パンクを介した膨張空気の脱出に対抗してタイヤをシーリングするのに十分なシーラントを通過するようにすることができる。
【0004】
[0004]パンクシーリング能力を備えた空気入りタイヤはゴムの未加硫の層をシーラントとして最初に利用した。(例えば、米国特許第1,419,470A号、米国特許第1,601,013A号、および米国特許第1,977,281A号を参照されたい)。後に、シーラント組成物は、パンクした後のタイヤに対してより長い使用を提供するように開発された。これによって、タイヤの修理または交換のためにより好都合な場所に運転して行きつくことができるまで、タイヤを継続して使用することが可能となる。例えば、米国特許第3,048,509A号は、加硫化ゴムコンパウンドで主に構成されるシートを覆うことによって分離されたシートの形態で、1,3-ブタジエン-スチレンコポリマーと、軟化剤および粘着付与剤とを含有する未加硫の合成ゴムシーリング組成物について記載している。
【0005】
[0005]ブチルゴム、すなわちイソブチレンとイソプレンのコポリマーもまたシーラント組成物に使用されている。例えば、米国特許第4,228,839A号、米国特許第4,171,237A号、米国特許第4,140,167A号、ならびに米国特許第4,426,468A号および米国公開第2005/0034799A1号を参照されたい。
【0006】
[0006]分散した粒状の予備硬化したゴム材料を組み込んだシーラント組成物もまた、米国特許第6,837,287B2号に記載されている通り使用されている。無機粒状材料もまたシーラント組成物に使用されている。米国特許第9,427,918B2号は、生のゴム、ポリブテン、処理したシリカ、および過酸化物を含むシーラント組成物について記載している。シーラント組成物中の生のゴムは、天然ゴム、ブチルゴム、または天然ゴムとブチルゴムのブレンドであることができる。米国特許第9,802,446B2号は、膨張性グラフェン構造およびマイクロスフェアを含むシーラントを開示している。
【0007】
[0007]他のシーラント組成物およびそれらを含有するタイヤは、米国特許第4,089,360A号、米国特許第4,140,167A号、米国特許第4,228,839A号、米国特許第4,426,468A号、米国特許第7,674,344B2号、米国特許第8,221,849B2号、米国特許第8,360,122B2号、米国特許第9,677,025B2号、米国特許第10,730,255B2号、ならびに米国公開第20080115872A1号、米国公開第20220097326A1号、米国公開第20220111609A1号、および米国公開第20220410516A1号に開示されている。
【0008】
[0008]多くの既存のシーラント組成物に伴う1つの弱点は、タイヤがパンクした場合、シーラント組成物がパンク穴を超えて継続して流動してしまうことにある。これは、タイヤのバランスを喪失させ、また掃除の問題を提示し得る。他の場合において、シーラントコーティングは、暑い夏から寒い冬の環境まで幅広い温度範囲にわたり動作可能、または有効ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第1,419,470A号
【特許文献2】米国特許第1,601,013A号
【特許文献3】米国特許第1,977,281A号
【特許文献4】米国特許第3,048,509A号
【特許文献5】米国特許第4,228,839A号
【特許文献6】米国特許第4,171,237A号
【特許文献7】米国特許第4,140,167A号
【特許文献8】米国特許第4,426,468A号
【特許文献9】米国公開第2005/0034799A1号
【特許文献10】米国特許第6,837,287B2号
【特許文献11】米国特許第9,427,918B2号
【特許文献12】米国特許第9,802,446B2号
【特許文献13】米国特許第4,089,360A号
【特許文献14】米国特許第7,674,344B2号
【特許文献15】米国特許第8,221,849B2号
【特許文献16】米国特許第8,360,122B2号
【特許文献17】米国特許第9,677,025B2号
【特許文献18】米国特許第10,730,255B2号
【特許文献19】米国公開第20080115872A1号
【特許文献20】米国公開第20220097326A1号
【特許文献21】米国公開第20220111609A1号
【特許文献22】米国公開第20220410516A1号
【特許文献23】米国特許第5,587,416A号
【特許文献24】米国特許第5,800,608A号
【特許文献25】米国特許第5,882,617A号
【特許文献26】米国特許第6,107,226A号
【特許文献27】米国特許第6,180,076B1号
【特許文献28】米国特許第6,221,149B1号
【特許文献29】米国特許第6,268,424B1号
【特許文献30】米国特許第6,335,396B1号
【特許文献31】米国特許第7,585,481B2号
【特許文献32】米国特許第9,334,169B2号
【特許文献33】米国特許第9,359,215B2号
【特許文献34】米国公開第20020081247A1号
【特許文献35】米国公開第20030118500A1号
【特許文献36】米国公開第20040062701A1号
【特許文献37】米国公開第20050032965A1号
【特許文献38】EP0647591A1号
【特許文献39】米国特許第5,708,069A号
【特許文献40】米国特許第7,550,610B1号
【特許文献41】米国特許第5,789,514A号
【特許文献42】米国特許第7,071,258B1号
【特許文献43】米国特許第6,322,811B1号
【特許文献44】米国特許第4,082,703A号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Brunauer、EmmettおよびTeller、「Journal of the American Chemical Society」、60巻、309頁(1938)
【非特許文献2】「Standard Methods for Analysis&Testing of Petroleum and Related Products」および「British Standard 2000 Parts」、2003、第62版、英国石油研究所(Institute of Petroleum、United Kingdom)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
[0009]タイヤにできたパンクをセルフシーリングすることができ(セルフシーリングしないと空気の消失およびタイヤの最終的な収縮をもたらす)、その一方でパンクの事象が生じた場合のシーラント組成物の過剰な流動も減少させるシーラント組成物が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[0010]例示的な実施形態の1つの態様に従い、シーラント組成物は、少なくとも60phrのイソブチレンベースのエラストマー成分、および少なくとも5phrの共役ジエンベースのエラストマー成分を含む、100phrのエラストマーを含む。シーラント組成物は、少なくとも5phrの粒状充填剤、および少なくとも0.5phrの有機過酸化物をさらに含む。
【0013】
[0011]シーラント組成物は、シーラントに非黒色の色を提供する着色剤を含んでもよい。着色剤は黄色の顔料、黄色の染料、およびこれらの混合物から選択されてもよい。
[0012]シーラント組成物のイソブチレンベースのエラストマー成分は、ブチルゴム、ポリイソブチレン、およびこれらの混合物からなる群から選択されてもよい。イソブチレンベースのエラストマー成分は少なくとも80重量%のブチルゴムであってもよい。イソブチレンベースのエラストマー成分は、少なくとも5,000、または少なくとも30,000および/または800,000以下の重量平均分子量を有してもよい。シーラント組成物は、少なくとも75phrのイソブチレンベースのエラストマーを含んでもよい。
【0014】
[0013]シーラント組成物の共役ジエンベースのエラストマー成分は、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン-ブタジエンコポリマー、ならびにこれらの混合物およびコポリマーからなる群から選択されてもよい。共役ジエンベースのエラストマー成分は少なくとも80重量%の天然ゴムであってもよい。シーラント組成物は少なくとも8phrの共役ジエンベースのエラストマー成分を含んでもよい。
【0015】
[0014]シーラント組成物は、40phrまでの粒状充填剤を含んでもよい。粒状充填剤は、シリカ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、およびカーボンブラックのうちの少なくとも1種を含んでもよい。シーラント組成物は少なくとも5phrのシリカを含んでもよい。シーラント組成物は、全部で1phr以下の、カーボンブラック、グラファイト、グラフェン、およびこれらの混合物から選択される黒色の補強充填剤を含有してもよい。
【0016】
[0015]シーラント組成物中の有機過酸化物は、過酸化ジクミル;2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン;1,1-ジ-tert-ブチルペルオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3;p-クロロベンジルペルオキシド;2,4-ジクロロベンジルペルオキシド;2,2-ビス-(tert-ブチルペルオキシ)-ブタン;tert-ブチルクミルペルオキシド;ジ-tert-ブチルペルオキシド;過酸化ベンゾイル;2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン;2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン;およびこれらの混合物から選択されてもよい。
【0017】
[0016]シーラント組成物は少なくとも0.1phrのポリアルキレングリコールをさらに含んでもよい。
[0017]例示的な実施形態の別の態様に従い、未硬化空気入りタイヤは、周方向トレッド、トレッドに結合している支持カーカス、上記に記載されているシーラント組成物を含むシーラント層、および閉じ込め層を含み、シーラント層は、支持カーカスと閉じ込め層との間に配置されている。
【0018】
[0018]未硬化空気入りタイヤの閉じ込め層はハロブチルゴムを含んでもよい。
[0019]硬化した空気入りタイヤは、有機過酸化物にとって、少なくとも部分的にイソブチレンベースのエラストマー成分を解重合させるのに十分な温度で、上記に記載されている未硬化空気入りタイヤを硬化することにより形成されてもよい。
【0019】
[0020]例示的な実施形態の別の態様に従い、シーラント層を形成する方法は、100phrのエラストマー、粒状充填剤、着色剤、および有機過酸化物を含むシーラント組成物を形成するステップを含み、エラストマーは、少なくとも60phrのイソブチレンベースのエラストマー成分および少なくとも5phrの共役ジエンベースのエラストマー成分を含む。本方法は、イソブチレンベースのエラストマー成分を少なくとも部分的に分解するのに十分な温度まで、十分な時間の間シーラント組成物を処理して、シーラント層を形成するステップをさらに含む。
【0020】
[0021]本方法は、シーラント組成物を処理する前に、シーラント組成物の層を含む未硬化タイヤを形成するステップをさらに含んでもよい。
[0022]例示的な実施形態の別の態様に従い、パンクシーリング特徴を有する、空気入りゴムタイヤを製造する方法は、周方向ゴムトレッド、支持カーカス、閉じ込め層、および中間の支持カーカス、閉じ込め層に配置されたシーラント層を含む未加硫のタイヤを構築するステップを含む。シーラント層は、シーラント組成物を含み、シーラント組成物は100phrのエラストマーを含む。エラストマーは、少なくとも60phrのイソブチレンベースのエラストマー成分および少なくとも5phrの共役ジエンベースのエラストマー成分を含む。シーラント組成物は粒状充填剤および有機過酸化物をさらに含む。本方法は、イソブチレンベースのエラストマー成分を少なくとも部分的に解重合させるのに十分な温度で未加硫のタイヤを硬化し、パンクシーリング特徴を有する空気入りゴムタイヤを生成するステップをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】[0023]例示的な実施形態の1つの態様による、タイヤのインナーライナーとカーカスとの間に配置されたシーラント層を有するタイヤの断面図である。
図2】[0024]例示的な実施形態の別の態様による、第1のインナーライナー層と第2のインナーライナー層との間に配置されたシーラント層を有するタイヤの断面図である。
図3】[0025]例示的な実施形態の別の態様による、タイヤの閉じ込め層とカーカスとの間に配置されたシーラント層を有するタイヤの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[0026]空気入りタイヤのエンクロージャーにおける使用に適合したシーラント組成物(または「シーラント」)が本明細書に記載されている。シーラントは、エンクロージャーからの過剰のシーラントの流動を最小限に抑え、シール性の性能を長期間にわたり維持しながら、空隙を満たすために流動することによって、タイヤのパンクをシーリングする働きをする。
【0023】
[0027]本発明の明細書において、「phr」という用語は、ゴムまたはエラストマー100重量部当たりのそれぞれの材料の重量部を指す。「phf」という用語は、充填剤100重量部当たりの重量部を指す。慣習的には、シーラント組成物に利用されている未反応のゴム(すなわち、充填剤として使用されている、あらゆる予備硬化したゴム粒子は除外する)は、合計100phrとなる。
【0024】
[0028]「ゴム」および「エラストマー」という用語は、他に指摘されていない限り、交換可能なように使用することができる。
[0029]本明細書で使用される場合、ASTM D1646-19a、「ゴム粘度、応力緩和、および予備加硫特性の標準試験法(Standard Test Methods for Rubber-Viscosity、Stress Relaxation、and Pre-Vulcanization Characteristics)(ムーニー粘度計)」に従い、125℃でムーニー粘度を測定する。
【0025】
[0030]本明細書で参照されているエラストマーまたはエラストマー組成物のガラス転移温度(Tg)は、それぞれのエラストマーまたはエラストマー組成物の、その未反応状態での、またはエラストマー組成物の場合にはおそらく反応した状態でのガラス転移温度(複数可)を表す。本明細書で参照されたTg値は、ASTM D3418-21「示差走査熱量測定法による転移温度およびポリマーの融解および結晶化のエントロピーの標準試験法(Standard Test Method for Transition Temperatures and Enthalpies of Fusion and Crystallization of Polymers by Differential Scanning Calorimetry)」に従い、毎分10℃の増加の温度速度で、示差走査熱量計(DSC)によりピーク中点として決定されるものである。
【0026】
[0031]以下では、シーラント組成物、調製方法、およびシーラント組成物を組み込んだ例示的タイヤが記載されている。
シーラント組成物
[0032]例示的シーラント組成物は、低レベルの不飽和を有するイソブチレンベースのエラストマー、高レベルの不飽和を有する共役ジエンベースのエラストマー、および過酸化物、例えば、フリーラジカルを生成する有機過酸化物を含む混合物を硬化することにより形成される。シーラント組成物のブチレンベースのエラストマーは、フリーラジカルを生成する有機過酸化物により、タイヤ内in situで部分的に解重合され得る。シーラントは、1種または複数の粒状充填剤材料、例えば、シリカおよび粘土を組み込むことができる。1種または複数の着色剤は、タイヤのパンクを特定する補助剤として、タイヤの黒色と対比させるようにシーラント組成物中に存在することができる。加工油および/またはポリアルキレンオキシドポリマー、例えば、ポリエチレングリコールもまたシーラント組成物中に存在し得る。認識されているように、シーラント組成物はこれらの成分に限定されない。
【0027】
[0033]シーラント組成物は、空気入りタイヤ用のはめ込まれたシーラント層(または2つもしくはそれよりも多くの層)を提供するように使用される。各シーラント層は、シーラント組成物中のブチレンベースのエラストマーのブチレン単位の(部分的な)解重合によって得られる。シーラント層(複数可)は、はめ込まれたシーラント層の位置に応じて、タイヤのトレッドの内側に配置することができる。シーラント層は、適切な型の中またはコア上でタイヤ集合体を形成するようにタイヤにはめ込むことができる。シーラント組成物のブチレンベースのエラストマーのブチレン単位は、その後のタイヤの高温での硬化中に解重合させて、その結果としてシーラント層がはめ込まれたタイヤを形成することができる。
【0028】
[0034]完全に理解されていないが、共役ジエンベースのエラストマー成分は、イソブチレンベースのエラストマー成分の解重合によって得られるより低い分子量のブチル鎖を拘束するマトリックスを、反応したシーラント内に形成すると想定される。これは、タイヤがパンクした場合、タイヤ内の圧力を、数日または数週間という長期間の間運転可能なレベルに維持することを可能にしながら、限定された程度のみ(十分目立つ程度に)流動することができる反応したシーラント層をタイヤ内に作り出す。
【0029】
1.エラストマー
[0035]例示的シーラント組成物は、2種のエラストマー成分、イソブチレンベースのエラストマー成分および共役ジエンベースのエラストマー成分を含む。これら2種のエラストマー成分は一緒になって、シーラント組成物中少なくとも80phr、または少なくとも90phr、または少なくとも95phr、または100phrであってもよい。
【0030】
A.イソブチレンベースのエラストマー成分
[0036]イソブチレンベースのエラストマー成分は、シーラント組成物中、少なくとも60phr、少なくとも70phr、少なくとも75phr、もしくは少なくとも80phr、および/または95phrまで、92phrまで、もしくは90phrまでであってもよい。イソブチレンベースのエラストマー成分は、イソブチレンから誘導される1種または複数のエラストマーからなる。例えば、イソブチレンベースのエラストマー成分は、ブチルゴム、ポリイソブチレン、およびこれらの混合物から選択されてもよい。一実施形態では、イソブチレンベースのエラストマーは、少なくとも80重量%、または少なくとも90重量%、または少なくとも95重量%、または100重量%のブチルゴムである。
【0031】
[0037]ブチルゴムはイソブチレンおよび共役ジエン、特に、イソプレンのコポリマーである。一実施形態では、イソブチレン誘導単位はコポリマー中の単位の大部分を占める一方、イソプレン誘導単位は単位の少ない部分を占める。例えば、イソブチレン誘導単位の、イソプレン誘導単位に対する比は、少なくとも90:10もしくは少なくとも95:5もしくは少なくとも98:2、もしくは少なくとも98.5:1.5、もしくは少なくとも99:1、もしくは99.5:0.5までであってもよい。不飽和含有量の低い(例えば、イソブチレン誘導単位のイソプレン誘導単位に対する比は2まで)ブチルゴムの使用は、有機過酸化物によるより効率的な解重合を促進する。ブチルゴム内の二重結合の存在は、解重合プロセスがブチルゴムにおいて二重結合の不飽和に到達した場合、その解重合を終結させる傾向にあり、部分的であって、不完全な解重合が行われることを可能にする。ブチルゴムがシーラント組成物中に存在する有機過酸化物により少なくとも部分的に解重合された場合、このような解重合の副産物はイソブチレンである。
【0032】
[0038]ブチルゴムは、少なくとも30,000、または少なくとも40,000、例えば、800,000まで、または600,000まで、または400,000までの重量平均分子量Mwを有していてもよい。ブチルゴムは125℃で、例えば、25~60の範囲、または少なくとも40、または60までの比較的高いムーニー粘度を有する。
【0033】
[0039]例示的ブチルゴムは、Exxon068(商標)としてExxonMobil Companyより販売されているブチルゴムを含み、これは、イソプレンから誘導された1%未満の単位を有し、125℃で約51のムーニー粘度を有する、イソブチレンとイソプレンのコポリマーである。
【0034】
[0040]ポリイソブチレン(PIB)は、イソブチレンのホモポリマーであり、すなわち、イソプレンなどの不飽和モノマーなしで形成されるイソブチレンのホモポリマーである。イソブチレンベースのエラストマー成分における使用に適合したポリイソブチレンは、少なくとも5,000、または少なくとも10,000、または少なくとも30,000、または少なくとも40,000、または少なくとも50,000、例えば、800,000まで、または600,000まで、または400,000まで、または150,000までの重量平均分子量Mwを有してもよい。さらに、ポリイソブチレンは、1.6~4.0の範囲内の多分散(Mw/Mn)、および-55℃~-70℃の範囲内の、例えば、-62℃~-66℃の範囲内の、または-63℃~-65℃の範囲内のガラス転移温度を有してもよい。ポリイソブチレンエラストマーは、少量の抗酸化剤、例えば、100ppm~1,000ppmの抗酸化剤、または300ppm~約700ppmの抗酸化剤で任意に安定化されてもよい。様々な抗酸化剤、例えば、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を利用することができる。
【0035】
[0041]使用に適したポリイソブチレンの例が、BASFからOppanol(登録商標)B10、Oppanol(登録商標)B12、およびOppanol(登録商標)B15として入手可能である。Oppanol(登録商標)B10は、53,000の重量平均分子量Mw、40,000の粘度平均分子量Mv、および-64℃のガラス転移温度(Tg)を有する。Oppanol(登録商標)B12は、70,000の重量平均分子量、55,000の粘度平均分子量、および-64℃のガラス転移温度(Tg)を有する。ならびにOppanol(登録商標)B15は、108,000の重量平均分子量、85,000の粘度平均分子量、および-64℃のガラス転移温度(Tg)を有する。
【0036】
[0042]一実施形態では、シーラント組成物は、ポリブテン、特に低分子量のポリブテン(8,000未満のMw)を含まないまたは実質的に含まない(1phr未満)。ポリブテンは1-ブテン、2-ブテン、およびイソブチレンの混合物から形成されるポリマーである。
【0037】
B.共役ジエンベースのエラストマー成分
[0043]共役ジエンベースのエラストマー成分は、シーラント組成物中、少なくとも5phr、少なくとも6phr、もしくは少なくとも8phr、および/または40phrまで、25phrまで、20phrまで、もしくは15phrまでであってもよい。共役ジエンベースのエラストマー成分は、共役ジエンのみから、または主に共役ジエンから(少なくとも60重量%、または少なくとも80重量%、または少なくとも90重量%、または少なくとも95重量%)誘導される1種または複数のエラストマーからなる。共役ジエンベースのエラストマー成分は、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン-ブタジエンコポリマー、ならびにこれらの混合物およびコポリマーから選択されてもよい。一実施形態では、共役ジエンベースのエラストマー成分は少なくとも80重量%の天然ゴムである。
【0038】
[0044]天然ゴムは主にイソプレン(2-メチル-1,3-ブタジエン)から誘導され、よって主に(例えば、少なくとも99重量%)ポリイソプレンである。本明細書で使用される場合、「天然ゴム」という用語は、天然由来のゴム、例えば、ヘベアゴムの木などの供給源、および非ヘベア供給源(例えば、グアユール低木およびタンポポ、例えば、TKS)から収集することができることを意味する。言い換えると、「天然ゴム」という用語は、合成ポリイソプレンを除外するためと解釈されるべきである。パラゴムノキ(Hevea brasiliensis)の木から得たフィールド等級の凝固物(カップランプ)から生成される天然ゴムは、天然ゴムの一般的な形態である。例えば、技術的に特定されたゴムまたはブロックゴム(TSR)は、インドネシアから入手可能な天然ゴムであり、インドネシアでは、これは標準的なインドネシアンゴム(SIR)、マレーシア(SMR)、およびタイ(STR)と呼ばれる場合もある。この天然ゴムはTSR10およびTSR20を含むいくつかの等級で得ることができ、TSR10等級がより高い純度を有する。
【0039】
[0045]一実施形態では、共役ジエンベースのエラストマー成分は少なくとも80重量%の天然ゴム、もしくは少なくとも90重量%、または100重量%までの天然ゴムである。
【0040】
[0046]合成ポリイソプレンは、特に、少なくとも94重量%のcis含有量を有するcis-1,4-ポリイソプレンもまた適している。合成ポリイソプレンのcis-1,4-含有量は少なくとも96重量%であってもよい。合成ポリイソプレンのTgは-60℃~-70℃の範囲であってもよい。
【0041】
[0047]シーラント組成物中の共役ジエンベースのエラストマー成分(特に、天然ゴム)の、イソブチレンベースのエラストマー成分(特に、ブチルゴム)に対する重量比は、少なくとも5:95、もしくは少なくとも10:90、もしくは少なくとも15:85、もしくは少なくとも17:83、もしくは少なくとも20:80、もしくは少なくとも25:75、または40:60まで、もしくは30:70までであってもよい。
【0042】
2.充填剤
[0048]粒状充填剤がシーラント組成物中に含まれていてもよい。しかし、以下においてシーラント組成物に存在しないと言われている充填剤が、例えば、他の粒状充填剤中に不純物として慣例的に見出される場合など、微量に存在することもある。
【0043】
[0049]粒状充填剤(複数可)は、シーラント組成物中に、全部で、少なくとも5phr、もしくは少なくとも10phr、もしくは少なくとも15phr、もしくは少なくとも20phr、または75phrまで、もしくは60phrまで、もしくは50phrまで、もしくは40phrまで、もしくは30phrまで、もしくは25phrまで、もしくは20phrまでの量で存在してもよい。
【0044】
[0050]本明細書で有用な例示的粒状充填剤として、シリカ、炭酸カルシウム(CaCO)、二酸化チタン、水和したケイ酸アルミニウム粘土、2:1層状ケイ酸塩粘土およびそれから形成される有機親和性粘土、ケイ酸カルシウム、カーボンブラック、グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ、珪灰石、タルク、珪藻土、デンプン、リグニン、アルミナ、ポリマー性充填剤、ならびにこれらの混合物が挙げられる。
【0045】
[0051]一実施形態では、充填剤は、シリカ粒子、例えば、非晶質(例えば、沈殿させた)シリカおよび/または結晶性シリカを含む。「シリカ」という用語は、本明細書で、二酸化ケイ素、SiO(シリカが形成されるプロセスから生成された微量な不純物、一般的に1重量%未満を含有し得る)を指すように使用されている。「沈降シリカ」という用語は、酸性化剤を用いてケイ酸塩を沈殿させるプロセスにより通常得られる合成非晶質シリカを指すように使用されている。
【0046】
[0052]沈降シリカは、例えば、籾殻または他の生物学的廃棄物中に見出される非晶質シリカを、水酸化ナトリウムを用いて蒸解することにより、ケイ酸ナトリウムを形成し、酸性化剤、例えば、硫酸または二酸化炭素との反応により、シリカをケイ酸ナトリウムから沈殿させることにより調製することができる。生成したシリカ沈殿物は洗浄し、濾過する。沈降シリカの調製の方法は、米国特許第5,587,416A号、米国特許第5,800,608A号、米国特許第5,882,617A号、米国特許第6,107,226A号、米国特許第6,180,076B1号、米国特許第6,221,149B1号、米国特許第6,268,424B1号、米国特許第6,335,396B1号、米国特許第7,585,481B2号、米国特許第9,334,169B2号、米国特許第9,359,215B2号、米国公開第20020081247A1号、米国公開第20030118500A1号、米国公開第20040062701A1号、米国公開第20050032965A1号、およびEP0647591A1号に開示されている。沈降シリカはまた、例えば、米国特許第5,708,069A号、米国特許第7,550,610B1号、および米国特許第5,789,514A号に記載されている通り、シリカゲルから形成することもできる。シリカゲルは、例えば、シリカヒドロゲルを、例えば、オルガノメルカプトシランおよびアルキルシランを用いて疎水化し、生成物を乾燥させることにより誘導することができる。
【0047】
[0053]沈降シリカは100~350m/gの範囲の窒素(BET)表面積を有してもよい。沈降シリカのBET(窒素)表面積は、ASTM D1993-18、「多点BET窒素吸着法による沈降シリカの表面積の標準試験法(Standard Test Method for Precipitated Silica-Surface Area by Multipoint BET Nitrogen Adsorption)」に従い決定され、これは、Brunauer、EmmettおよびTeller、「Journal of the American Chemical Society」、60巻、309頁(1938)に記載されている従来の理論に関する。
【0048】
[0054]例示的沈降シリカとして、Hi-Sil(商標)532、およびHi-Sil(商標)532EP、PPG Industries製;Hubersil(商標)4155、J.M.Huber Company製;Zeosil(商標)、記号表示115GR、125GR、165GR、175GR、185GR、195GR、1085GR、1165MP、1115MP、HRS1200MP、Premium MP、Premium 200MP、Premium SW、および195HR、Solvay製;Ultrasil(商標)、記号表示VN2、VN3、VN3GR、5000GR、7000GR、9000GR、Evonik製;Zeopol(商標)、記号表示8755LSおよび8745、Evonik製;Newsil(商標)、記号表示115GRおよび2000MP、Wuxi Quechen Silicon Chemical Co.,Ltd製;ならびにTokusil(商標)315、Maruo Calcium Co.,Ltd製が挙げられる。
【0049】
[0055]シリカは、エラストマーへの分散および/または接着性を増強するために、前処理したシリカをシーラント組成物に組み込む前に、例えば、カップリング剤および/またはポリアルキレンオキシド、例えば、ポリエチレングリコールを用いて表面処理することもできる。カップリング剤および/またはポリアルキレンオキシドはまた、水和に関連する水またはシリカ上のヒドロキシル基が、シーラント組成物中のブチルゴムを解重合させることを意図する有機過酸化物を早期分解してしまう傾向を抑制するのを助けることもできる。別の実施形態では、シリカは、有機過酸化物への添加前に、カップリング剤および/またはポリアルキレンオキシドでシーラント組成物中in situで処理することができる。
【0050】
[0056]前処理に対して、またはシーラント組成物中in situで使用することができるポリアルキレングリコールは、以下により詳細に記載されている。
[0057]適切なカップリング剤は、一般的に、第1の部分(これは、沈降シリカの表面上に存在するヒドロキシル基(例えば、シラノール基)と反応性がある)と、ジエンベースのエラストマーと反応することが可能な第2の部分とを含む。2つの部分は、沈降シリカがエラストマーと化学的に結合されるよう、連結基、例えば、ヒドロカルビルまたは硫化系架橋により連結されている。シリカカップリング剤の例として、以下のような基、例えば、アルキル、アルコキシ、メルカプト、ブロック化メルカプト、スルフィド含有基(例えば、モノスルフィドベースのアルコキシ含有基、ジスルフィドベースのアルコキシ含有基、テトラスルフィドベースのアルコキシ含有基)、アミノ、ビニル、エポキシ、およびこれらの組合せなどの基を含有するものが挙げられる。シリカカップリング剤は、カップリング剤の総量のシリカ充填剤に対する少なくとも0.1:100または1:5までの重量比、例えば、少なくとも1:100、もしくは少なくとも1:50、または1:20まで、もしくは1:10までの比を得るのに十分な量で存在することができる。
【0051】
[0058]一実施形態では、シリカは、シーラント組成物中1phrまたはそれよりも多く、例えば、少なくとも2phr、もしくは少なくとも5phr、もしくは少なくとも6phr、もしくは少なくとも7phr、または20phrまで、もしくは18phrまで、もしくは15phrまで、もしくは14phrまで、もしくは12phrまで、もしくは10phrまで存在する。シリカは、少なくとも10phfもしくは少なくとも20phf、もしくは少なくとも30phf、または100phfまで、もしくは99phfまで、もしくは95phfまでの粒状充填剤であってもよい。
【0052】
[0059]一実施形態では、シリカの天然ゴムに対する比は少なくとも0.4:1であり、1:1までであってもよい。一実施形態では、シリカのブチルゴムに対する比は、少なくとも0.7:10であり、1.1:10までであってもよい。
【0053】
[0060]シーラント組成物に使用することができるケイ酸塩粘土として、層状にしたケイ酸塩粘土およびそれから誘導される有機親和性粘土が挙げられる。例示的層状にしたケイ酸塩粘土として、モンモリロナイト、ベントナイト、ヘクトライト、サポナイト、ノントロナイト、バイデライト、フルオロヘクトライト、スチーブンサイト、ボルコンスコアイト、ソーコナイトラポナイト、およびこれらの物理的ブレンドが挙げられる。有用な有機親和性粘土は、これらを有機物質と相容性のあるものにするために化学的に修飾されたケイ酸塩粘土である。出発材料として使用されているケイ酸塩粘土は、モンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイト、アタパルジャイトおよびセピオライト(sepolite)のうちの1種または複数を含んでもよい。これらの粘土は、交換可能なカチオン種、例えば、これらの表面上および粘土のギャラリーまたは層の間にナトリウム、カリウム、またはカルシウムイオンを含む。有機親和性粘土の製造の過程で、これら交換可能なカチオン種の少なくとも一部分は有機カチオン、例えば、第4級アミン、有機リンイオンなどで置換されている。
【0054】
[0061]ケイ酸塩粘土は、シーラント組成物中に存在しなくてもよいし、またはシーラント組成物中に0.5~20phr、例えば、少なくとも1phr、もしくは少なくとも2phr、もしくは少なくとも5phr、または10phrまで存在してもよい。
【0055】
[0062]炭酸カルシウムもまた、充填剤、例えば、シリカと組み合わせて使用されてもよい。炭酸カルシウムを使用するメリットは、シリカと比較して、強化度の修正をもたらすことであり、これは、シーラント組成物をプロセシングすること、ならびにシリカと組み合わせて、部分的に解重合させたシーラント組成物に対して適切な剛性、および付随する寸法の完全性を提供することを援助することができる。
【0056】
[0063]一実施形態では、炭酸カルシウムは、有機過酸化物に対する担体として使用することができる。
[0064]炭酸カルシウムは、シーラント組成物に存在しなくてもよいし、またはシーラント組成物中に、0.5phrもしくはそれよりも多く、例えば、少なくとも5phr、もしくは少なくとも10phr、もしくは少なくとも15phr、もしくは少なくとも18phr、または30phrまで、もしくは25phrまで存在してもよく、例えば、有機過酸化物に対する担体としての役目を果たす。炭酸カルシウムの有機過酸化物に対する比は、少なくとも20:80もしくは少なくとも30:70、または70:20まで、もしくは60:40まで、もしくは50:50までであってもよい。
【0057】
[0065]カーボンブラックは、シーラント組成物に使用された場合、少なくとも100、もしくは少なくとも102、もしくは少なくとも104、または120まで、もしくは118まで、もしくは116m/kgまでのCTAB比表面積を有してもよい。例示的なカーボンブラックとして、ASTM D1765-21、「ゴム製品に使用されるカーボンブラックの標準分類システム(Standard Classification System for Carbon Blacks Used in Rubber Products)」により特定されている、ASTM記号表示N110、N121、N134、N220、N231、N234、N242、N293、N299、N315、N326、N330、N332、N339、N343、N347、N351、N358、N375、N539、N550、N582、N630、N642、N650、N683、N754、N762、N765、N774、N787、N907、N908、N990およびN991が挙げられる、
[0066]一実施形態では、シーラント組成物は、カーボンブラックを含まないまたは実質的に含まない(1phr以下)。別の実施形態では、カーボンブラックは、シーラント組成物中に2~20phr、または10phrまで、もしくは5phrまで存在する。
【0058】
[0067]グラフェンは、シーラント組成物に使用された場合、一般的に、2次元ハニカム格子内に配置されたSIGMA結合により炭素原子がまとめられている、原子1個の厚さの炭素の結晶形態である。より具体的には、グラフェンは2次元の特性を有する炭素の結晶性同素体である。グラフェン中の炭素原子は、規則的な原子スケールの六方晶形(亀甲金網)パターンで高密度にぎっしりと詰まっている。各原子は4つの結合を有し、1つのσ結合はその3つの隣接する結合のそれぞれとの結合であり、1つのπ-結合は面外に方向づけられている。グラフェン中の隣接する炭素原子の間の距離はおよそ0.142ナノメートルである。粒状充填剤として使用されているグラフェンは、ジグザグ、アームチェア、K領域、ガルフ、ベイ、コーブ、および/またはフィヨルド型の端の構成を有してもよい。グラフェン構造の端の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、または少なくとも80%の炭素-炭素結合は、ジグザグ構成、アームチェア構成、およびベイ構成のうちの1種であってもよい。例えば、グラフェン構造の端の炭素-炭素結合のうちの、少なくとも40%、50%、または60%は、ジグザグ構成であってよく、40%未満、または30%未満はコーブ構成であってよく、20%未満はフィヨルド構成であってもよい。
【0059】
[0068]粒状充填剤として使用することができる例示的なグラフェンは、グラフェンの本質的に個々の単一シートまたはグラファイト面の複数のシートであるナノスケールのグラフェンプレート(NGP)材へと剥離される。各グラファイト面は一般的に炭素原子の2次元の六方晶形構造である。各面はグラファイト面に並行した長さおよび幅、ならびにグラファイト面に対して直角の厚さを有し、長さ、幅、および厚さのうちの少なくとも1つの値が100ナノメートル(nm)またはこれよりも小さいものとなる。一般的に、長さ、幅および厚さのそれぞれの値は100nmより小さい。このNGP材料は、例えば、米国特許第7,071,258B1号に記載されているプロセスにより生成することができる。
【0060】
[0069]一実施形態では、シーラント組成物はグラフェンを含まないまたは実質的に含まない(1phr以下)。別の実施形態では、グラフェンはシーラント組成物中に2~20phr、または10phrまで、または5phrまで存在する。
【0061】
[0070]1つの特定の実施形態では、カーボンブラック、グラファイト、グラフェン、および/またはカーボンナノチューブなどの形態または炭素から誘導される黒色の粒状充填剤は、シーラント組成物中5phr以下、または1phr以下である。
【0062】
[0071]二酸化チタンは、充填剤として使用された場合、着色剤としても機能することができる。本明細書で有用な二酸化チタンは、少なくとも0.1マイクロメートル(μm)、例えば、少なくとも0.2μm、または5μmまで、または4μmまでの平均粒子直径を有してもよい。二酸化チタンによる光散乱は直径0.2~0.3μmの粒子において最大となる。したがって、着色剤として機能するためには、少なくとも50重量%の粒子がこの範囲内にあってもよい。
【0063】
[0072]一実施形態では、シーラント組成物は二酸化チタンを含まないまたは実質的に含まない(0.1phr以下)。別の実施形態では、二酸化チタンはシーラント組成物中少なくとも0.1phr、例えば、少なくとも1phr、または10phrまで、もしくは5phrまで、もしくは3phrまでである。
【0064】
[0073]本明細書で有用な粒状形態の例示的ポリマー性充填剤として、ポリプロピレン、予備硬化したゴム、およびこれらの混合物が挙げられる。一般的に、このような充填剤の粒子は10マイクロメートル(μm)未満の平均サイズを有してもよい。
【0065】
[0074]充填剤としての使用に適したポリプロピレンは低分子量のものであってもよい。このような低分子量ポリプロピレンは、少なくとも4,000、もしくは少なくとも6,000、もしくは少なくとも8,000、もしくは少なくとも10,000、または40,000まで、もしくは25,000まで、もしくは20,000まで、もしくは15,000までの重量平均分子量(M)を有してもよい。ポリプロピレンは、カーボンブラックおよび/またはミネラル充填剤に対する代替品もしくは部分的な代替品として利用することができ、他の充填剤の場合より低いレベル(例えば、30~40重量%未満)が利用され得る。
【0066】
[0075]一実施形態では、ポリマー充填剤はシーラント組成物に存在しない。別の実施形態では、ポリマー充填剤は、シーラント組成物中、少なくとも1phr、または15phrまでの総量で存在する。
【0067】
3.加工油
[0076]シーラント組成物は1種または複数の加工油を任意に含んでもよい。適切な加工油として、芳香族油、パラフィン系油、ナフテン系油、トリグリセリド油、および低級多環芳香族(PCA)油、例えば、軽度抽出溶媒和物(MES)、留出油からの芳香族系抽出物を処理した油(TDAE)、残油からの芳香族系特殊抽出物(SRAE)、および重質ナフテン系油、ならびにこれらの混合物が挙げられる。適切な低PCA油として、IP346法により決定した場合、3重量%未満の多環式芳香族含有量を有する油を挙げることができる。IP346法の説明は、英国石油研究所(Institute of Petroleum、United Kingdom)によって出版された「Standard Methods for Analysis&Testing of Petroleum and Related Products」および「British Standard 2000 Parts」、2003、第62版に見出すことができる。15重量%未満の最大芳香族含有量を有する適切なナフテン系、パラフィン系加工油が例示的な油である。このような加工油は、35~45重量%のナフテン系含有量、45~55重量%のパラフィン系含有量、および15重量%未満(例えば、10~14重量%)の芳香族含有量を有してもよい。
【0068】
[0077]例示的ナフテン系加工油として、Hyprene(商標)100、Ergon Refining、Inc.製、およびTufflo 100(商標)、Barton Solvent Company製が挙げられる。
【0069】
[0078]使用することができるトリグリセリド油として、植物油、ヒマシ油、ダイズ油、アブラナ油(ナタネ油)、トウモロコシ油、綿実油、オリーブ油、パーム油、ベニバナ油、ヒマワリ油、ヤシ油、およびピーナッツ油を含む植物油が挙げられる。ヒマシ油は、およそ87重量%のリシノール酸、7重量%のオレイン酸、3重量%のリノール酸、2重量%のパルミチン酸、および1重量%のステアリン酸を含有するトリグリセリド油である。
【0070】
[0079]加工油は、比較的に低濃度で、シーラント組成物に対する成分の混合を補助し、および/またはシーラント組成物の加工を促進する。
[0080]加工油は、シーラント組成物に存在しなくてもよいし、またはシーラント組成物中、0.1phrもしくはより高い、もしくは少なくとも1phr、もしくは少なくとも2phr、もしくは少なくとも4phr、もしくは少なくとも5phr、または40phrまで、もしくは20phrまで、もしくは10phrまで、もしくは8phrまで利用されてもよい。
【0071】
4.ポリアルキレンオキシド
[0081]シーラント組成物における使用に適したポリアルキレンオキシドとして、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびこれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、ポリアルキレンオキシドはポリエチレングリコールである。ポリアルキレンオキシドは、少なくとも500、例えば、少なくとも2,000、もしくは少なくとも4,000、または15,000まで、もしくは12,000まで、もしくは10,000まで、もしくは8,500までの重量平均分子量Mwを有してもよい。ポリアルキレンオキシドはシーラント組成物に存在しなくてもよい。ポリアルキレンオキシド、例えば、ポリエチレングリコールが利用される場合、これは少なくとも0.1phr、例えば、少なくとも0.2phr、もしくは少なくとも0.3phr、または5phrまで、もしくは3phrまで、もしくは2phrまで、もしくは1phrまで、もしくは0.6phrまでの量で含まれていてもよい。
【0072】
[0082]市販のポリエチレングリコールの例として、Carbowax(商標)PEG3350およびCarbowax(商標)PEG8000、Dow Chemical Company製が挙げられ、これらの番号は近似する重量平均分子量を示している。例えば、米国特許第6,322,811B1号および米国特許第4,082,703A号に記載されている他のポリアルキレンオキシドポリマーを使用することもできる。
【0073】
5.着色剤
[0083]シーラント組成物は、1種または複数の着色剤を、顔料および/または染料の形態で含んでもよい。有機着色剤も無機着色剤も利用することができる。シーラント組成物中に1種または複数の非黒色着色剤を含むことにより、タイヤがパンクしているという事実が明らかとなり、パンクの場所をより容易に特定することができる。この目的のために多種多様な色を使用することができ、タイヤトレッドに特徴的な黒色からくっきりと見える薄いまたは明るい色が適切である。例えば、白色、赤色、オレンジ色、黄色、緑色、または青色の着色剤を含んでもよい。赤色の鉄顔料を使用して、輝く赤の色を付与することができ、または黄色の顔料を使用して、輝く黄の色を付与することができる。着色剤は、0.1phr~5phr、例えば、少なくとも0.2phrまたは4phrまで利用することができる。
【0074】
[0084]利用することができる顔料の一部の代表的な例として、Pigment Yellow 1(CAS番号2512-29-0)、Pigment Yellow 110(CAS番号5590-18-1)、Pigment Yellow 12(CAS番号15541-56-7)、Pigment Yellow 126(CAS番号90268-23-8)、Pigment Yellow 127(CAS番号68610-86-6)、Pigment Yellow 13(CAS番号5102-83-0)、Pigment Yellow 138(CAS番号30125-47-4)、Pigment Yellow 14(CAS番号5468-75-7)、Pigment Yellow 150(CAS番号68511-62-6)、Pigment Yellow 151(CAS番号31837-42-0)、Pigment Yellow 154(CAS番号68134-22-5)、Pigment Yellow 168(CAS番号71832-85-4)、Pigment Yellow 17(CAS番号4531-49-1)、Pigment Yellow 174(CAS番号78952-72-4)、Pigment Yellow 180(CAS番号77804-81-0)、Pigment Yellow 183(CAS番号65212-77-3)、Pigment Yellow 191(CAS番号129423-54-7)、Pigment Yellow 3(CAS番号6486-23-3)、Pigment Yellow 34(CAS番号1344-37-2)、Pigment Yellow 42(CAS番号51274-00-1)、Pigment Yellow 65(CAS番号6528-34-3)、Pigment Yellow 74(CAS番号6358-31-2)、Pigment Yellow 75(CAS番号52320-66-8)、Pigment Yellow 81(CAS番号22094-93-5)、Pigment Yellow 83(CAS番号5567-15-7)、C.I.Pigment Yellow 42(酸化鉄)、C.I.Pigment Yellow 34(クロム酸鉛)、C.I.Pigment Yellow 184(ナジン酸ビスマス)、C.I.Pigment Yellow 53(ニッケル-アンチモン)、C.I.Pigment Orange20(硫化カドミウム)、C.I.Pigment Red 101(酸化鉄)、C.I.Pigment Red 104、C.I.Pigment Red 29(ウルトラマリンブルー顔料)、C.I.Pigment Blue 29(ウルトラマリンブルー顔料)、C.I.Pigment Blue 28、C.I.Pigment Blue 36、C.I.Pigment Violet 15(ウルトラマリンブルー顔料)、C.I.Pigment Violet 16(マンガンバイオレット)、Pigment Green 17(酸化クロムグリーン)、C.I.Pigment Green 19(コバルトベースの混合した金属酸化物)、C.I.Pigment Green 26(コバルトベースの混合した金属酸化物)、およびC.I.Pigment Green 50(コバルトベースの混合した金属酸化物)が挙げられる。使用することができる一部の追加の無機顔料として、ウルトラマリンブルー、ペルシアンブルー、コバルトブルー(CAS番号1345-16-0)、セルリアンブルー、エジプシャンブルー、漢青(BaCuSi10)、アジュライトブルー(Cu(CO(OH)、プルシアンブルー(CAS番号14038-43-8)、YInMnブルー(オレゴンブルー)、Realgar red(α-As)、カドミウムレッド(CdSSe)、硫化セリウムレッド、ヴェネチアンレッド(Fe)、レッドオーカー(無水Fe)、バーントシェンナレッド、鉛丹(Pb)、ヴァーミリオンレッド、シナバーレッド、ウルトラマリンブルーバイオレット、漢紫(BaCuSi)、コバルトバイオレット(CO(PO)、マンガンバイオレット(NHMnP)、カシウス紫、プリムローズイエロー(BiVO)、カドミウムイエロー(CdS)、クロムイエロー(PbCrO)、オーレオリンイエロー(KCo(NO)、イエローオーカー(Fe・HO)、ナポリイエロー、チタニウムイエロー(NiO・Sb・20TiO)、亜鉛黄色(ZnCrO)、およびクロムオレンジ(PbCrO・PbO)が挙げられる。着色剤の混合物を利用することもできる。
【0075】
[0085]1つの特定の実施形態では、シーラント組成物は、白色のミネラル顔料、例えば、二酸化チタン、および/または黄色または他の非白色の顔料または染料を含む。しかしphrおよびphfを計算する目的では、二酸化チタンは着色剤よりもむしろ充填剤と考えられる。
【0076】
6.有機過酸化物
[0086]有機過酸化物(有機過酸化物)はシーラント組成物中に一般的に存在し、イソブチレンベースのエラストマー成分に対する解重合剤としての機能を果たす。
【0077】
[0087]利用される有機過酸化物は、ゴム状ポリマーの架橋に対して一般的に使用されているもののうちの1種でよい。より高い温度、例えば、75℃より上、または80℃より上の温度のみで分解する過酸化物化合物を使用することができる。適切な有機過酸化物として、同じまたは異なるラジカル基を有するジアルキル過酸化物、例えば、ジアルキルベンゼン過酸化物、およびアルキルペルエステルが挙げられる。有機過酸化物は2つの過酸化物基を含有してもよい。頻繁に、過酸化物基は第三級ブチル基に結合している。2つの過酸化物基がぶら下がっている塩基性部分は、脂肪族、環状脂肪族、または芳香族のラジカル基であることができる。
【0078】
[0088]適切な有機過酸化物の例として、ビス(α,α-ジメチルベンジル)ペルオキシド(過酸化ジクミルとしてより一般的に公知);ペルオキシ安息香酸tert-ブチル;2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン;1,1-ジ-tert-ブチルペルオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)-ヘキシン-3;p-クロロベンジルペルオキシド;2,4-ジクロロベンジルペルオキシド;2,2-ビス-(tert-ブチルペルオキシ)-ブタン;tert-ブチルクミルペルオキシド;ジ-tert-ブチルペルオキシド;過酸化ベンゾイル;2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン;2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン;およびこれらの混合物が挙げられる。
【0079】
[0089]一実施形態では、第1の有機過酸化物は解重合開始剤としての機能を果たし、第2の有機過酸化物は解重合プロパゲーターとしての機能を果たす。第1の有機過酸化物は第2の有機過酸化物よりも低い温度で活性化するが、より急速に分解する傾向にある。例えば、有機過酸化物は微量なn-ブチル4,4-ジ(tert-ブチルペルオキシ)バレレートを解重合開始剤としておよび多量の過酸化ジクミルを解重合プロパゲーターとして含んでもよい。
【0080】
[0090]適切な過酸化物として、少なくとも2の活性酸素含有量(AOC)を有するものが挙げられる。活性酸素含有量は、化合物中の活性酸素原子の重量を、化合物中のその合計分子量で割ることにより決定される(これはそれぞれの過酸化物部分(-O-O-)に対して1個の活性酸素原子ベースで行われる)。例えば、tert-ブチルクミルペルオキシドは1個の活性酸素原子(分子量16)および合計分子量208を有する。したがって、tert-ブチルクミルペルオキシドの活性酸素含有量は16/208(7.7%)である。7%、8%、9%より大きい、またはさらに10%もの活性酸素含有量を有する過酸化物が特に適している。なぜなら、これらの過酸化物はタイヤ硬化プロセスの間、低い活性酸素含有量を有する過酸化物よりも気体の生成が少ないからである。
【0081】
[0091]有機過酸化物はシーラント組成物に純粋な形態で(100%活性のある過酸化物)加えることができ、または不活性な、自由流動性ミネラル担体上に担持されていても、もしくはシリコーン油などの油の中に分散されていてもよい。炭酸カルシウムは、この目的のために頻繁に利用される不活性ミネラル担体である。別の担体は炭酸カルシウムとケイ酸カルシウムの組合せである。
【0082】
[0092]1つの例示的過酸化物は、Arkema Inc.からDi-Cup(登録商標)40Cとして入手可能な、沈殿した炭酸カルシウム上の過酸化ジクミルの複合体(40.5%活性のある)の形態である。別の例示的過酸化物は、n-ブチル4,4-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)バレレートの、ミネラル担体としての炭酸カルシウムとケイ酸カルシウムとの組合せとの複合体の形態であり、これは有機過酸化物対担体の重量比40/60である、Trigonox17-40B pd(商標)として、Nouryonから入手可能である。
【0083】
[0093]170℃へ5分間曝露後、生成したシーラント層に対してRubber Process Analyzer(RPA)で測定した場合(40℃、1ヘルツ、および5%歪みで測定)、貯蔵弾性率(G’)が少なくとも50kPa、もしくは少なくとも60kPa、もしくは少なくとも80kPa、もしくは少なくとも90kPa、または200kPaまで、もしくは180kPaまで、もしくは170kPaまでの範囲となるように、シーラント組成物のイソブチレンベースのエラストマー成分(例えば、ブチルゴム)が有機過酸化物により生成されたフリーラジカルにより解重合されることが望ましい。はめ込まれたタイヤシーラントのシーラント効率を促進するため、様々な穿刺物体、例えばくぎなどに対して、効率的にシーリングする能力を促進するため、適切な貯蔵弾性率(G’)は、タイヤのサイズ、および意図されるタイヤの使用条件を含む、タイヤの種類にある程度依存し得る。
【0084】
[0094]シーラント組成物中の天然ゴムは、有機過酸化物と反応し、よってイソブチレンベースのエラストマー成分(例えば、ブチルゴム)を解重合させるために利用可能な量を減少させる傾向にある。したがって、組成物に加える有機過酸化物の量は、タイヤ中in situでイソブチレンベースのエラストマー成分の部分的な解重合を引き起こすのに十分であるように選択される。有機過酸化物は、シーラント組成物に、少なくとも0.1phr(活性のある過酸化物として表現される)、例えば、少なくとも0.5phr、もしくは少なくとも1phr、もしくは少なくとも2phr、もしくは少なくとも4phr、または20phrまで、もしくは10phrまで、もしくは8phrまでの量で加えることができる。
【0085】
[0095]例示的シーラント組成物は、硫黄ベースの加硫化(硬化)剤を含まない。
[0096]一実施形態では、有機過酸化物は活性因子、例えば、2,2,6,6-テトラアルキルピペリジンヒンダードアミンで活性化される。このようなヒンダードアミンの例は、例えば、米国特許第7,674,344B2号に記載されているような、例えば、ポリ[[6-[1,1,3,3,-テトラメチルブチル)アミノ]-s-トリアジン-2,4-ジイル][2,2,6,6,-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]]化合物である。
【0086】
[0097]phrとして表現される例示的シーラント組成物が表1に示されている。
【0087】
【表1】
【0088】
[0098]認識されているように、上記範囲の組合せを利用することができる。
シーラント組成物の形成
[0099]シーラント層の様々な成分は、好都合なゴム混合装置、例えば、密閉式ゴムミキサーを使用して一緒に混合することができる。一般的に、エラストマー、例えば、ブチルゴムおよび天然ゴムは、少なくとも1つの連続的な予備の、または非生産的な、有機過酸化物の非存在下での混合工程でブレンドし、この後最終の、または生産的、混合工程が続き、ここで有機過酸化物(およびおそらく追加成分のうちの1種または複数)を加える。
【0089】
[0100]一実施形態では、第1の、非生産的段階(複数可)において、有機過酸化物以外の成分を、適切な温度、例えば、少なくとも100℃、または少なくとも110℃、または180℃までに設定されたミキサー内で撹拌する。混合物の温度は撹拌するにつれて上がる。温度が所望の値に到達したら、混合物をミキサーから滴下し、ミキサーに戻す前に冷却させる。第2の、生産的段階では、混合物を有機過酸化物と共にミキサーに戻す。ミキサーは、有機過酸化物の分解温度未満の温度、例えば、70℃、またはそれ未満、例えば、約60℃に設定する。混合物をミキサーから最大温度約85℃で滴下して、過酸化物の早期分解を最小限に抑える。
【0090】
タイヤの構築
[0101]上記に記載されているシーラント組成物で形成されるシーラント層は、加硫化を施す前に、未加硫のチューブレス空気入りゴムタイヤにはめ込むことができる。タイヤの構築において、シーラント組成物はタイヤ内の1つまたは複数のエンクロージャー内に層(複数可)の形態で封入することができる。エンクロージャー(複数可)は、少なくともある程度、1つまたは複数の閉じ込め層により画定することができ、これら閉じ込め層は堅いゴムで形成され、これによってシーラント組成物の取扱いおよびタイヤへの構築が比較的に容易となる。
【0091】
[0102]一実施形態では、タイヤは一般的にドーナツ形に成形した支持カーカス、外側周方向トレッド、および内側の閉じ込め層、例えば、インナーライナー(または「インナーライナー(innerliner)」)を含む。本明細書で使用される場合、「トレッド」という用語は、正常な膨張および負荷の下で道路と接触するタイヤの部分と、あらゆるサブトレッドとの両方を指す。インナーライナーは、空気または別の気体、例えば、窒素(タイヤを膨張させるために使用されている)が、拡散によりタイヤ構造を介して漏れ出ないようにする働きをする空気バリア層である。インナーライナーは、気体の透過に対して高度の耐性を有するハロブチルゴムまたは他のいくつかの適切な材料で形成されていてもよい。シーラント層は、支持カーカスとインナーライナーまたは他の閉じ込め層との中間に配置される。別の実施形態では、2つまたはそれよりも多くのインナーライナー層がシーラントに対して閉じ込め層として機能する。
【0092】
[0103]一実施形態では、シーラント層は、図1に例示されているように、タイヤの支持カーカスとインナーライナーとの間、および任意に直接接触して、配置されてよい。別の実施形態では、シーラント層配合物は、図2に例示されているように、2つのインナーライナー層の間、および任意に直接接触して、配置されてよい。この場合、シーラント層は、インナーライナーの第1の層と第2の層との間に挟まれて、インナーライナーの第1の層および第2の層によりタイヤカーカスおよびトレッドからそれぞれ距離をあけて配置される。インナーライナー層(複数可)のうちの1つまたは複数の代替として、1つまたは複数の他の閉じ込め層が利用されてもよい。別の実施形態では、タイヤは、いかなるインナーライナー層も含まず、シーラント組成物は、図3に例示されているように、タイヤの中の支持カーカスと、タイヤの異なる種類の閉じ込め層との間にはめ込まれる(押し出される)。認識されているように、多数のシーラント層が提供されてもよく、隣接するシーラント層の各対は中間の閉じ込め層から距離をあけて配置される。カーカスおよび/またはトレッドは、織物、ポリエチレンシート、および/または金属で形成される1つまたは複数の強化層を含んでもよい。
【0093】
[0104]図1の実施形態では、チューブレスタイプのセルフシーリング式空気入りゴムタイヤ2が示されている。タイヤは、側壁3、支持カーカス4、非伸縮性ビード5、インナーライナー(空気バリア層)6、シーラント層7、および外側周方向トレッド(トレッド部分)8(これは側壁から延びる)を有する。個々の側壁3は、トレッド部分の軸方向外側縁8から半径方向内側に延びて、それぞれの非伸縮性ビード5を連結する。支持カーカス4は、トレッド部分8および側壁3に対する支持構造として作用する。シーラント層7は、支持カーカス4から内側におよびインナーライナー6から外側に配置される。外側周方向トレッド8は、タイヤが使用された場合、地面に接触するように適合されている。
【0094】
[0105]図2の実施形態では、セルフシーリング式空気入りゴムタイヤ10が示されている。この空気入りタイヤは、チューブレスタイプであり、トレッド部分11、クラウン領域12、側壁13、支持カーカス14、非伸縮性ビード15、内側層および外側層16A、16Bで構成されるインナーライナー、ならびにシーラント層17を含む。本実施形態では、シーラント層17は、インナーライナーの2つの層16Aと16Bとの間に挟まれている。よって、シーラント層17は、インナーライナーの1つの層16Aから半径方向に内側、およびインナーライナーの別の層16Bから外側に配置される。インナーライナー16とシーラント層17の両方の層とも、支持カーカス14から半径方向に内側に配置される。
【0095】
[0106]図3の実施形態では、インナーライナーを含まない、チューブレスタイプのセルフシーリング式空気入りゴムタイヤ22が例示されている。セルフシーリング式空気入りゴムタイヤ22は、側壁23、支持カーカス24、非伸縮性ビード25、閉じ込め層26、シーラント層27、および外側周方向トレッド(トレッド部分)28を含む。個々の側壁23は、それぞれの非伸縮性ビード25と連結したトレッド部分の軸方向外側縁28から半径方向内側に延びている。支持カーカス24は、トレッド部分28および側壁23に対する支持構造体として作用する。シーラント層27は、支持カーカス24から内側におよび閉じ込め層26から外側に配置される。特に、シーラント層25は、支持カーカス24と閉じ込め層26との間に挟まれている。外側周方向トレッド28は、タイヤが使用された場合、地面と接触するように適合されている。本実施形態では、閉じ込め層26は、シーラント層27から内側に配置され、タイヤ22の最も内側の層である。
【0096】
[0107]シーラント層7、17、27は、少なくともタイヤの一方の側壁から他方へと延びていてもよい、言い換えると、シーラント層はタイヤのトレッド領域8、11、28を包含する長さを有してもよい。
【0097】
[0108]シーラント層の厚さは、未加硫のパンクシーラントタイヤにおいて大きく異なることができる。一実施形態では、シーラント層の厚さは、0.2mm~8.5mm、例えば、少なくとも3mm、もしくは少なくとも4mm、または6mmまで、もしくは5mmまでである。乗用車用タイヤでは、約4.5mmの厚さを使用することができる。
【0098】
[0109]トレッド、側壁、およびカーカスは、それぞれ硫黄硬化性ゴム組成物で形成されてもよく、これは同じでも異なっていてもよい。これらの部分に使用されるゴム組成物を形成するための例示的エラストマーは、天然ゴム、合成ポリイソプレン、天然ポリイソプレン、スチレン-ブタジエンコポリマー、溶液重合スチレン-ブタジエン(SSBR)、乳化重合スチレン-ブタジエンゴム(ESBR)、ブタジエンゴム(BR)、ハロブチルゴム、ブロモブチルゴム、クロロブチルゴム、ニトリルゴム、液体ゴム、ポリノルボルネンコポリマー、イソプレン-イソブチレンコポリマー、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリル酸塩ゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、ポリスルフィドゴム、エピクロロヒドリンゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエンターポリマー、水和アクリロニトリルブタジエンゴム、イソプレン-ブタジエンコポリマー、ブチルゴム、水素化スチレン-ブタジエンゴム、ブタジエンアクリロニトリルゴム、エチレンモノマーから形成されたターポリマー、プロピレンモノマー、および/またはエチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)、イソプレンベースのブロックコポリマー、ブタジエンベースのブロックコポリマー、スチレン系ブロックコポリマー、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロックコポリマー(SEBS)、スチレン-[エチレン-(エチレン/プロピレン)]-スチレンブロックコポリマー(SEEPS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー(SIS)、ランダムスチレンコポリマー、水素化スチレン系ブロックコポリマー、スチレンブタジエンコポリマー、ポリイソブチレン、エチレン酢酸ビニル(EVA)ポリマー、ポリオレフィン、非晶質ポリオレフィン、半結晶性ポリオレフィン、アルファ-ポリオレフィン、reactor-readyポリオレフィン、アクリル酸塩、メタロセン触媒ポリオレフィンポリマーおよびエラストマー、reactor-made熱可塑性ポリオレフィンエラストマー、オレフィンブロックコポリマー、コポリエステルブロックコポリマー、ポリウレタンブロックコポリマー、ポリアミドブロックコポリマー、熱可塑性ポリオレフィン、熱可塑性加硫物、エチレン酢酸ビニルコポリマー、エチレンn-ブチルアクリレートコポリマー、エチレンアクリル酸メチルコポリマー、ネオプレン、アクリル酸、ウレタン、ポリ(アクリレート)、エチレンアクリル酸コポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド、アタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレンを含むポリエチレン、エチレン-プロピレンポリマー、プロピレン-ヘキセンポリマー、エチレン-ブテンポリマー、エチレンオクテンポリマー、プロピレン-ブテンポリマー、プロピレン-オクテンポリマー、メタロセン触媒ポリプロピレンポリマー、メタロセン触媒ポリエチレンポリマー、エチレン-プロピレン-ブチレンターポリマー、プロピレンから生成されたコポリマー、エチレン、C~C10アルファ-オレフィンモノマー、ポリプロピレンポリマー、マレート化ポリオレフィン、ポリエステルコポリマー、コポリエステルポリマー、エチレンアクリル酸コポリマー、および/もしくはポリ酢酸ビニルのうちの1つもしくは複数を含むことができ、ならびに/またはポリマーは、ポリマー内のポリマー鎖末端および/またはペンダント位に、ヒドロキシル-、エトキシ-、エポキシ-、シロキサン-、アミン-、アミンシロキサン-、カルボキシ-、フタロシアニン-、およびシラン-スルフィド-基のうちの1種または複数から選択される改変および/または官能化を任意に含む。
【0099】
[0110]一例として、タイヤトレッドゴム組成物は、天然ゴム、ポリイソプレン、またはこれらの組合せを任意に使用した、100phrのエラストマー成分、例えば、スチレン-ブタジエンゴムとポリブタジエンの混合物を含む。
【0100】
[0111]一実施形態では、トレッド、側壁、カーカスおよび/または閉じ込め層(複数可)を形成するために使用されているゴム組成物は、ブチルゴムを含まない、または5phr以下のブチルゴムを含む。
【0101】
[0112]エラストマーに加えて、トレッド、側壁、およびカーカスを形成するためのゴム組成物は、1種または複数の補強充填剤;1種または複数の加工助剤、例えば、液体可塑剤(例えば、油)、樹脂、ワックス、抗酸化剤、劣化防止剤、および/またはオゾン劣化防止剤;ならびに硬化パッケージ(硫黄ベースの加硫剤を含む)を含んでもよい。硬化パッケージは、1種または複数の硬化促進剤および/または活性因子をさらに含むことができ、これは加硫剤に対して触媒として作用する。
【0102】
[0113]補強充填剤は、少なくとも1phr、または200phrまでの総量で、シリカ、カーボンブラック、アルミナ、水酸化アルミニウム、粘土(補強用等級)、水酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、および二酸化チタンのうちの1種または複数を含んでもよい。適切なシリカおよびカーボンブラックは、シーラント組成物に対して上に記載されている通りであってもよい。シリカは、ゴム組成物中1~200phr、例えば、少なくとも3phr、または少なくとも10phr存在することができる。カーボンブラックは、5phr~200phr、例えば、少なくとも10phr、または80phrまで、もしくは50phrまで存在し得る。
【0103】
[0114]硫黄ベースの加硫剤の例として、元素の硫黄(遊離の硫黄)、不溶性高分子硫黄、溶解性硫黄、硫黄を供与する加硫剤、例えば、アミンジスルフィド、ポリマー性ポリスルフィド、または硫黄オレフィン付加体、およびこれらの混合物が挙げられる。硫黄加硫剤は、0.1~10phrの量で、例えば、少なくとも0.5phr、もしくは少なくとも1phr、または8phrまで、もしくは5phrまでの量で使用することができる。別の実施形態では、硫黄加硫剤はゴム組成物に存在しない。
【0104】
[0115]硬化活性化剤の例として、酸化亜鉛、および脂肪酸、例えば、ステアリン酸、およびこれらの組合せが挙げられる。硬化促進剤の例として、アミン、ジスルフィド、グアニジン、チオウレア、チアゾール、チウラム、スルフェンアミド、ジチオカルバメート、キサンテート、およびこれらの組合せが挙げられる。
【0105】
[0116]トレッドを形成するための例示的組成物は、エラストマー、シリカおよびカーボンブラックからなる充填剤、ステアリン酸、加工油、酸化亜鉛、抗酸化剤、パラフィンワックス、および任意にシランカップリング剤、の混合物を含む。
【0106】
[0117]タイヤインナーライナーは、使用された場合、ハロブチルゴムの硫黄硬化性-含有性ハロブチルゴム組成物、例えば、クロロブチルゴムまたはブロモブチルゴムから形成されるハロブチルゴムベースの層であってもよい。インナーライナー層はまた、1種または複数の硫黄硬化性ジエンベースのエラストマー、例えば、cis-1,4-ポリイソプレン天然ゴム、cis-1,4-ポリブタジエンゴムおよびスチレン/ブタジエンゴム、ならびにこれらの混合物、特に、ハロブチルゴムのうちの1種または複数と、ジエンベースのエラストマーのうちの1種または複数との組合せを含有することもできる。
【0107】
シーラント組成物のタイヤへの組込み
[0118]シーラント組成物、例えば、材料のストリップという形態のシーラント組成物は未硬化タイヤに組み込まれる。タイヤの構成材料は、型内またはコア上で組み立て、次いで硬化することができる。
【0108】
[0119]一実施形態では、タイヤは型内で形成される。別の実施形態では、タイヤは、ドーナツ状のコアまたはタイヤブランク上で形成される。コア上で形成される場合、タイヤは、最も内側の層から始まって、層として徐々に築き上げることができ、この最も内側の層はインナーライナー層または他の閉じ込め層であってもよい。インナーライナー/他の閉じ込め層は、ゴムのストリップもしくはシート形態を使用して押出し機により、または他の適切な方法により適用することができる。任意のビード、例えば、1種または複数のワイヤーのカラムビードを、インナーライナー層/閉じ込め層上のビード領域に適用することができる。次いで、未反応のシーラントの層、任意にこれに続いて第2のインナーライナー層を適用する。最後に、カーカス、側壁、およびトレッドを築く。認識されるように、シーラント組成物を組み込んだ2つの層のインナーライナーを1つの小片としてコアに適用することもできる。型内で形成される場合、タイヤは、外側から、すなわち、逆の順序で構築することができる。未加硫のタイヤの形成は、シーラント層がその中に封入される限り、いかなる特定の方法にも限定されない。
【0109】
[0120]一実施形態では、シーラント層は、タイヤのカーボンブラック補強ゴムインナーライナー層とタイヤカーカスとの間、または2つのカーボンブラック補強タイヤゴムインナーライナー層の間に配置する。タイヤはゴム補強用カーボンブラックを含有するゴムトレッドおよびゴム側壁を有することもできる。
【0110】
[0121]未反応シーラント配合物の層を含むように未加硫のタイヤが構築された後、それが加硫化される。これは、タイヤを少なくとも80℃の温度に加熱して、ブチルゴムを部分的に解重合させるステップを含んでもよい。次いで、より高い温度を使用して、トレッド、カーカス、および側壁に対してゴム組成物を硬化する。
【0111】
[0122]未加硫のタイヤの加硫化は、幅広い温度範囲にわたり、例えば、100℃~200℃、例えば、少なくとも130℃、もしくは少なくとも140℃、または170℃まで、もしくは165℃までの範囲内の温度で実施することができる。一実施形態では、タイヤは、最大硬化温度160℃~165℃に到達し得る。未硬化タイヤを加硫化するために使用される硬化サイクルは、4分間~240分間の期間、例えば、10分間~25分間、または10分間~17分間、または11分間~13分間の期間を有してもよい。いずれかの適切な加硫化プロセス、例えば、プレスもしくは型内での加熱および/または過熱状態の水蒸気もしくは熱風を用いた加熱を使用することができる。
【0112】
[0123]タイヤにはめ込まれたシーラント組成物層(例えば、タイヤインナーライナーおよびタイヤカーカスの間)のイソブチレンベースのエラストマー成分の少なくとも部分的な解重合は、有機過酸化物を介して高温で、タイヤそれ自体の加硫化の間に生じる。実際に、高温条件下でのタイヤ集合体の加硫化により、シーラント組成物中のイソブチレンベースのエラストマー成分の大きな部分が、活性化した有機過酸化物の存在下で解重合される。よって未反応シーラント層は、タイヤの硬化の間にパンクシーラント層へと変換する。シーラント層は、本プロセスにおいてタイヤの隣接する層に結合することができる。
【0113】
[0124]一実施形態では、シーラント組成物は、材料のストリップ(複数可)という形態で未硬化タイヤへと組み込まれる。ストリップ(複数可)は、従来の装置、例えば、カレンダー加工器、押出し機、またはこれらの組合せを使用して調製でき、シーラント組成物のストリップをタイヤへと組み立てることができる。シーラント組成物層の厚さは少なくとも1mm、または12mmまでであることができる。乗用車用タイヤに対して、シーラント組成物層は2~5mmの厚さを有してもよいのに対して、トラックタイヤに対しては、5~9mmの厚さを使用することができる。シーラント層の幅は、少なくともタイヤのトレッドの幅、例えば、少なくとも5cm、または少なくとも10cmまで及ぶのに十分であってもよい。
【0114】
[0125]本発明の範囲の限界を意図することなく、以下の例は、シーラント組成物の調製および評価を例示している。
【実施例0115】
[0126]反応した際のシーラント組成物の粘度およびヒステリシスは、天然ゴムを含まない組成物と比較して、過剰な流出を減少させるように修正することができることを実証するため、ブチルゴムの天然ゴムに対する異なる比、過酸化物の異なる量、およびシリカの異なる量を使用してシーラント組成物を調製する。以下の実施例において、ヒステリシスはまた、充填剤の量を低下させることにより、および/または過酸化物の量により減少することが示されている。しかし、天然ゴムは過酸化物と架橋する傾向にあるため、ブチルゴムの分解を確実にする十分な量の過酸化物を利用する。
【0116】
[0127]表2に示されている未反応シーラント組成物は2段階で調製する。非生産的段階では、120℃および約100rpmに設定したミキサー内で過酸化物以外の成分を混合する。温度を約160℃に上げて、約4分後に混合物を滴下する。生産的段階では、約60℃および約60rpmに設定したミキサーに混合物を戻す。混合物を最大温度85℃(過酸化物の分解を最小限に抑えるため)で滴下する。
【0117】
[0128]実施例1は比較のためのシーラント組成物である。再現性を評価するため実施例1の2つのバッチを調製する。実施例2~4はブチルゴムと天然ゴムの混合物を含有する例示的組成物である。実施例5および6は天然ゴムを有さない比較のための組成物である。
【0118】
[0129]すべての成分はゴム100重量部当たりの重量部として表現されている(phr)。
【0119】
【表2】
【0120】
試料の評価
[0130]生産的段階後、試料を0.5cm未満の厚さに粉砕する。これらを冷却した後、ダイカッターを使用して、RPA試験に適した寸法に試料を型抜きする。
【0121】
[0131]ゴムプロセス分析器(RPA)、RPA2000を使用して、試料を特徴付ける。試料を載せた後、これらを温度170℃に5分間曝露する。動的機械分析を行い、1%、3%、および5%歪み(MPa)での貯蔵弾性率G’に対する値を温度40℃で得る。タンジェントデルタ値(G’’のG’に対する比)も得る。
【0122】
[0132]RPA結果は表3に示されている。
【0123】
【表3】
【0124】
[0133]実施例1より低いレベルの充填剤および有機過酸化物を用いて調製した実施例5は、同等のG’値を有するが、タンジェントデルタがより低いという結果で示されている通り、より低いヒステリシスを有する。実施例5に対するレベルと同じレベルの充填剤を用いたが、さらに低いレベルの有機過酸化物を用いた実施例6は、わずかに増加したG’を有する一方、タンジェントデルタのさらなる低減を示している。天然ゴムを含有する実施例2および3および4もまた実施例1より低いヒステリシスを示した。
【0125】
シール性
[0134]実施例組成物のパンクをシーリングする能力を評価するため、シミュレートしたタイヤ集合体を調製し、ここでは厚さ3mmの圧縮シーラント層を5mm層の「トレッド」と、それぞれ1mmの2つの材料パイルとの間に配置し、これは一方の側はシーラント層、他方の側は1mmインナーライナー層を有する。集合体はその端に沿ってシーリングし、170℃で11~12分間硬化する。冷却後、試料を試験固定具に固定し、空気圧138kPaを集合体のインナーライナー側に加える。
【0126】
[0135]2本の小さなくぎ(直径2.5mm)、2本の中間サイズのくぎ(直径3.4mm)、および2本の大きなくぎ(直径5mm)で各試料をパンクさせ、確実にくぎが試験試料を介して完全に移動するよう、ただし試験時にそれを引き抜くことができるようにくぎを十分試料から突出したままにしておくことに注意を払う。
【0127】
[0136]試料を241kPaに加圧し、その圧力で数分間維持する。次いでくぎを引き抜く。以下を考慮に入れて、シール性の測定を計算する:
[0137]1.パンクシーリング:シーリングするパンクの数の加重した尺度(より重い重量はより大きなくぎと一致する)。
【0128】
[0138]2.シーリング効率:パンクのシーリングが直ちに行われたかどうか。
[0139]よって、シーリング測定は一般的に、より良いシーリング特徴を示す試料により高い値を付与する。表4は得られた結果を示している。
【0129】
【表4】
【0130】
[0140]実施例4は直接的比較ではない。なぜなら、評価は硬化したタイヤを固定し、膨張させ、各サイズ9本のくぎ、36本のくぎでパンクさせたタイヤシール性試験で行われたからである。すべての試料は比較的に良好な性能を示したが、実施例5は最も弱いシール性の測定を示した。
【0131】
[0141]シール性試験が完了したら、試料を再膨張させて、くぎを再挿入することにより、一時的に修理した試料になんらかの小さな漏出を作り、2日間モニターする。次いで、すべての試料を再膨張させ、さらにもう7日間モニターする。次いで、試料を目視により試験する。すべての天然ゴム含有試料は空気圧を完全に保持し、実質的にいかなるシーラントもパンクから外に出なかった。天然ゴムを有さない試料に対しては、シーラントの有意な漏出および圧力の減少が観察された。
【0132】
[0142]天然ゴムの網状組織が、エンクロージャー内にシーラントを含有することおよび実験期間の間圧力を保持することにおいて有意な役割を果たすと結論付けられる。
[0143]予想外に、同等のRPA特性および類似のシール性測定を有する組成物が、長期的挙動において有意な差異を有することが観察された。天然ゴム含有組成物は1週間の実験期間の間試料中にシーラントを維持し、これらはその後も完全な空気圧を維持した。
【0133】
[0144]これらの結果により、天然ゴム含有組成物は、空隙を満たすように流動することによってタイヤのくぎのパンクをシーリングすることができるが、エンクロージャーから外へ、およびタイヤ空洞内へ、またはトレッドへの継続した流動を示さないことが実証される。
【0134】
[0145]上で参照した文献のそれぞれは参照により本明細書に組み込まれる。実施例の中、または他に明示的に示されている場合を除いて、材料の量、反応条件、分子量、炭素原子の数などを特定する本明細書中のすべての数値的な量は、単語「約」により修飾されていると理解されるものとする。他に指摘されていない限り、本明細書で参照された各化学物質または組成物は、異性体、副産物、誘導体、および通常商業用等級に存在すると考えられているような他の材料を含有し得る商業用等級の材料であると解釈されるべきである。しかし、他に指摘されていない限り、各化学成分の量は、通常商用材料中に存在し得るいずれかの溶媒または希釈油を除いて提示されている。本明細書で記載の量、範囲、ならびに比の上限および下限は独立して組み合わせられてもよいことを理解されたい。同様に、本発明の各要素に対する範囲および量は、他の要素のいずれかに対する範囲または量と一緒に使用することができる。
【0135】
[0146]上記に開示されたならびに他の特徴および機能の変化形、またはその代替形態は、組み合わせて、多くの他の異なるシステムまたは応用を作ることができることを認識されたい。現在予想外のまたは予期しないその様々な代替形態、変化形、修正または改善がその後当業者により作製されてもよく、これらもまた以下の特許請求の範囲により包含されることを意図する。
[発明の実施形態]
1.少なくとも60phrのイソブチレンベースのエラストマー成分、および
少なくとも5phrの共役ジエンベースのエラストマー成分
を含む100phrエラストマー、
少なくとも5phrの粒状充填剤、ならびに
少なくとも0.5phrの有機過酸化物
を含む、シーラント組成物。
2.シーラントに非黒色の色を提供する着色剤をさらに含む、1に記載のシーラント組成物。
3.着色剤が、黄色の顔料、黄色の染料、およびこれらの混合物から選択される、2に記載のシーラント組成物。
4.イソブチレンベースのエラストマー成分が、ブチルゴム、ポリイソブチレン、およびこれらの混合物からなる群から選択される、1に記載のシーラント組成物。
5.イソブチレンベースのエラストマー成分が少なくとも80重量%のブチルゴムである、3に記載のシーラント組成物。
6.イソブチレンベースのエラストマー成分が、少なくとも5,000および/または800,000以下の重量平均分子量を有するブチルゴムを含む、1に記載のシーラント組成物。
7.少なくとも75phrのイソブチレンベースのエラストマーを含む、1に記載のシーラント組成物。
8.共役ジエンベースのエラストマー成分が、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン-ブタジエンコポリマー、ならびにこれらの混合物およびコポリマーからなる群から選択される、1に記載のシーラント組成物。
9.共役ジエンベースのエラストマー成分が少なくとも80重量%の天然ゴムである、8に記載のシーラント組成物。
10.少なくとも8phrの共役ジエンベースのエラストマー成分を含む、1に記載のシーラント組成物。
11.40phrまでの粒状充填剤を含む、1に記載のシーラント組成物。
12.粒状充填剤が、シリカ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、およびカーボンブラックのうちの少なくとも1種を含む、1に記載のシーラント組成物。
13.少なくとも5phrのシリカを含む、12に記載のシーラント組成物。
14.有機過酸化物が、過酸化ジクミル;2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン;1,1-ジ-tert-ブチルペルオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3;p-クロロベンジルペルオキシド;2,4-ジクロロベンジルペルオキシド;2,2-ビス-(tert-ブチルペルオキシ)-ブタン;tert-ブチルクミルペルオキシド;ジ-tert-ブチルペルオキシド;過酸化ベンゾイル;2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン;2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン;およびこれらの混合物から選択される、1に記載のシーラント組成物。
15.少なくとも0.1phrのポリアルキレングリコールをさらに含む、1に記載のシーラント組成物。
16.周方向トレッド、
トレッドに結合している支持カーカス、
請求項1に記載のシーラント組成物を含むシーラント層、および
閉じ込め層を含む未硬化空気入りタイヤであって、シーラント層が、支持カーカスと閉じ込め層との間に配置されている、未硬化空気入りタイヤ。
17.閉じ込め層がハロブチルゴムを含む、16に記載の未硬化空気入りタイヤ。
18.有機過酸化物にとって、イソブチレンベースのエラストマー成分を少なくとも部分的に解重合させるのに十分な温度で、17に記載の未硬化空気入りタイヤを硬化することにより形成される、硬化した空気入りタイヤ。
19.シーラント層を形成する方法であって、
100phrのエラストマー、粒状充填剤、着色剤、および有機過酸化物を含むシーラント組成物を形成するステップであって、エラストマーが少なくとも60phrのイソブチレンベースのエラストマー成分および少なくとも5phrの共役ジエンベースのエラストマー成分を含むステップ、ならびに
イソブチレンベースのエラストマー成分を少なくとも部分的に分解するのに十分な温度まで、十分な時間の間シーラント組成物を処理するステップ
を含む、シーラント層を形成する方法。
20.シーラント組成物を処理する前に、シーラント組成物の層を含む未硬化タイヤを形成するステップをさらに含む、19に記載の方法。
21.パンクシーリング特徴を有する空気入りゴムタイヤを製造する方法であって、
周方向ゴムトレッド、支持カーカス、閉じ込め層、および中間の支持カーカス、閉じ込め層に配置されたシーラント層を含む未加硫のタイヤを構築するステップであって、シーラント層がシーラント組成物を含み、シーラント組成物が100phrのエラストマー、粒状充填剤および有機過酸化物を含み、エラストマーが、少なくとも60phrのイソブチレンベースのエラストマー成分および少なくとも5phrの共役ジエンベースのエラストマー成分を含むステップ、ならびに
イソブチレンベースのエラストマー成分を、少なくとも部分的に解重合させるのに十分な温度で、未加硫のタイヤを硬化し、パンクシーリング特徴を有する空気入りゴムタイヤを生成するステップ
を含む、方法。
【符号の説明】
【0136】
2 チューブレスタイプのセルフシーリング式空気入りゴムタイヤ
3 側壁
4 支持カーカス
5 非伸縮性ビード
6 インナーライナー(空気バリア層)
7 シーラント層
8 外側周方向トレッド(トレッド部分)
10 セルフシーリング式空気入りゴムタイヤ
11 トレッド部分
12 クラウン領域
13 側壁
14 支持カーカス
15 非伸縮性ビード
16A 外側層を構成するインナーライナー
16B 内側層を構成するインナーライナー
17 シーラント層
22 セルフシーリング式空気入りゴムタイヤ
23 側壁
24 支持カーカス
25 非伸縮性ビード
26 閉じ込め層
27 シーラント層
28 外側周方向トレッド(トレッド部分)
図1
図2
図3
【外国語明細書】