(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144349
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】発酵乳
(51)【国際特許分類】
A23C 9/123 20060101AFI20241003BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20241003BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20241003BHJP
A23L 2/38 20210101ALI20241003BHJP
A23L 9/00 20160101ALI20241003BHJP
【FI】
A23C9/123
A23L5/00 L
A23L2/00 F
A23L2/38 P
A23L2/52
A23L9/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024051771
(22)【出願日】2024-03-27
(31)【優先権主張番号】P 2023055304
(32)【優先日】2023-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】315015162
【氏名又は名称】不二製油株式会社
(72)【発明者】
【氏名】林 佑美子
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一広
(72)【発明者】
【氏名】城谷 直紀
【テーマコード(参考)】
4B025
4B035
4B117
【Fターム(参考)】
4B025LB20
4B025LG14
4B025LG52
4B025LG53
4B025LK07
4B025LP10
4B025LP19
4B035LC05
4B035LE02
4B035LG12
4B035LG43
4B035LG44
4B035LG50
4B035LP01
4B035LP21
4B035LP42
4B117LC15
4B117LK18
4B117LK19
4B117LK21
4B117LP05
4B117LP13
(57)【要約】
【課題】
抗菌物質「ナイシン」を産生しないものとされている乳酸菌株を用い、天然成分による日持ち向上効果、望ましくは添加物表示を伴わずに同様の効果が得られる抗菌性発酵乳を得ることを課題とする。
【解決手段】
特定の乳酸菌より選択される菌種により発酵し、発酵後にその乳酸菌が死滅している場合において、抗菌性を有する発酵乳を得ることができる。また該発酵乳を用いることで、抗菌性を有する水中油型乳化物、フィリング類、及び該フィリング類を含有する飲食品を得ることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Lactobacillus rhamnosus菌株、Lactobacillus plantarum菌株、Lactobacillus sakei菌株、Propionibacterium freudenreichii subsp. shermanii菌株、及びLactobacillus paracasei菌株からなる群より選択される1種以上を用いて発酵され、発酵に用いた乳酸菌が死滅していることを特徴とする抗菌性を有する発酵乳。
【請求項2】
請求項1記載の発酵乳を10重量%以上含む、水中油型乳化物。
【請求項3】
請求項2記載の水中油型乳化物であって、pHが7以下である、フィリング類。
【請求項4】
請求項3記載のフィリング類を含有する、飲食品。
【請求項5】
Lactobacillus rhamnosus菌株、Lactobacillus plantarum菌株、Lactobacillus sakei菌株、Propionibacterium freudenreichii subsp. shermanii菌株、及びLactobacillus paracasei菌株からなる群より選択される1種以上を用い発酵し、その後殺菌する工程を含むことを特徴とする、抗菌性を有する発酵乳の製造方法。
【請求項6】
発酵後のpHが7以下である、請求項5記載の抗菌性を有する発酵乳の製造方法。
【請求項7】
該発酵が好気条件でされたものであり、かつ発酵後のpHが3.6~6.7である、請求項6記載の抗菌性を有する発酵乳の製造方法。
【請求項8】
該発酵が嫌気条件でされたものであり、かつ発酵後のpHが3.5~6.9である、請求項6記載の抗菌性を有する発酵乳の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
この出願は、令和5年3月30日に日本国特許庁に出願された出願番号2023-055304号の優先権の利益を主張する。優先権基礎出願はその全体について、出典明示により本明細書の一部とする。
【0002】
本発明は、発酵乳に関する。
【背景技術】
【0003】
SDGsとしても挙げられているフードロス削減の観点から、あらゆる食の分野で賞味期限の延長が求められている。発酵乳やそれを含む食品である乳化物において、賞味期限延長の目的で保存料を使用するケースが多いが、昨今のナチュラル志向から、添加物ではなく食品素材による解決、さらに望ましくは添加物表示を伴わない賞味期限延長の技術が望まれている。
【0004】
先行技術として、天然の抗菌物質である「ナイシン」を含み、保存料を削減可能なプロセスチーズに係る発明が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1における天然の抗菌物質「ナイシン」は、食品添加物としての使用に制限が掛かるものであり、汎用性に欠ける。従い、抗菌物質「ナイシン」を必須とする以外の方法により、天然成分による日持ち向上効果、望ましくは添加物表示を伴わずに同様の効果を得られる技術の開発が期待される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者らは、特許文献1を参考に、抗菌物質「ナイシン」を産生しないものとされている乳酸菌株を中心に、検討を行った。その結果、当初の予想に反し、乳酸菌株であるLactobacillus rhamnosus菌株、Lactobacillus plantarum菌株、Lactobacillus sakei菌株、Propionibacterium freudenreichii subsp. shermanii菌株、及びLactobacillus paracasei菌株からなる群より選択される1種以上を用いて発酵され、発酵に用いた乳酸菌が死滅している発酵乳に抗菌性を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、下記の発明を含有する。
(1) Lactobacillus rhamnosus菌株、Lactobacillus plantarum菌株、Lactobacillus sakei菌株、Propionibacterium freudenreichii subsp. shermanii菌株、及びLactobacillus paracasei菌株からなる群より選択される1種以上を用いて発酵され、発酵に用いた乳酸菌が死滅していることを特徴とする抗菌性を有する発酵乳。
(2) (1)の発酵乳を10重量%以上含む、水中油型乳化物。
(3) (2)の水中油型乳化物であって、pHが7以下である、フィリング類。
(4) (3)のフィリング類を含有する、飲食品。
(5) Lactobacillus rhamnosus菌株、Lactobacillus plantarum菌株、Lactobacillus sakei菌株、Propionibacterium freudenreichii subsp. shermanii菌株、及びLactobacillus paracasei菌株からなる群より選択される1種以上を用い発酵し、その後殺菌する工程を含むことを特徴とする、抗菌性を有する発酵乳の製造方法。
(6) 発酵後のpHが7以下である、(5)の抗菌性を有する発酵乳の製造方法 。
(7) 該発酵が好気条件でされたものであり、かつ発酵後のpHが3.6~6.7である、(6)の抗菌性を有する発酵乳の製造方法。
(8) 該発酵が嫌気条件でされたものであり、かつ発酵後のpHが3.5~6.9である、(6)の抗菌性を有する発酵乳の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、特定の乳酸菌より選択される菌種により発酵し、発酵後にその乳酸菌が死滅している場合において、抗菌性を有する発酵乳を得ることができる。また該発酵乳を用いることで、抗菌性を有する水中油型乳化物、フィリング類、及び該フィリング類を含有する飲食品を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をより詳細に説明する。
なお、数値範囲の上限値及び下限値を示した時は、上限値及び下限値を適宜組み合わせることができ、それにより得られた数値範囲も開示しているものとする。
【0011】
本発明の発酵乳は、Lactobacillus rhamnosus菌株、Lactobacillus plantarum菌株、Lactobacillus sakei菌株、Propionibacterium freudenreichii subsp. shermanii菌株、及びLactobacillus paracasei菌株からなる群より選択される1種以上を用いて発酵され、発酵に用いた乳酸菌が死滅していることを特徴とする。
発酵に用いる乳酸菌は、好ましくは、 Lactobacillus rhamnosus菌株、Lactobacillus plantarum菌株、及びLactobacillus sakei菌株からなる群より選択される1種以上を用いる。
本明細書において発酵に用いた乳酸菌が死滅しているとは、BCP寒天培地による混釈培養による確認の結果、発酵乳に含まれる生菌数が102CFU/g以下であることを意味する。好ましくは、生菌数が50CFU/g以下であり、より好ましくは20CFU/g以下であり、さらに好ましくは10CFU/g以下であり、最も好ましくは生菌数が検出されないことを意味する。
【0012】
本明細書における抗菌性とは、102~103CFU/g程度となるよう添加されたBacillus属を含む微生物の増殖速度を抑制できることを意味する。さらに具体的には、食品中102~103CFU/g程度存在するBacillus属が、105CFU/gを超える濃度まで増殖するまでの時間を延長できることを意味する。
【0013】
本発明の水中油型乳化物は、該発酵乳を10重量%以上含むことが好ましい。より好ましくは12~95重量%であり、さらに好ましくは14~90重量%であり、最も好ましくは16~85重量%である。
この範囲が適当であると、抗菌性と風味の点でより優れる。
【0014】
本発明の水中油型乳化物は、通常の水中油型乳化物に用いられる、水、油脂類、乳原料、糖質甘味料、安定剤、澱粉、乳化剤、食塩、着香料、着色料、酸味料、風味原料、各種栄養素等を、本発明の効果を奏する限度において、必要に応じて添加することができる。
【0015】
本発明の水中油型乳化物の一の態様であるフィリング類は、pHが7以下であることが好ましい。そのpHは、より好ましくは3.9~6.8であり、さらに好ましくは4.2~6.7であり、最も好ましくは4.4~6.6である。
この範囲が適当であると、抗菌性と風味の点でより優れる。
【0016】
該フィリング類の一の態様として、カスタード風味、チョコレート風味のような甘味系フィリング類を挙げることができる。該甘味系フィリング類は、該発酵乳を10~90重量%含むことが好ましく、より好ましくは11~80重量%であり、さらに好ましくは12~70重量%、13~60重量%、14~50重量%、15~40重量%、16~30重量%である。該甘味系フィリングのpHは、より好ましくは3.9~6.8であり、さらに好ましくは4.2~6.7、4.3~6.3、4.7~6.2、5~6.1、5.5~6である。
【0017】
該フィリング類の一の態様として、チーズ風味などの塩味系フィリングを挙げることができる。該塩味系フィリング類は、該発酵乳を10~90重量%含むことが好ましく、より好ましくは20~89重量%であり、さらに好ましくは40~88重量%、60~87重量%、70~86重量%、80~85重量%である。該塩味系フィリングのpHは、より好ましくは3.9~6.8であり、さらに好ましくは4.2~6.7、4.3~6.6、4.4~6.5、4.8~6.5、5.2~6.5である。
【0018】
本発明のフィリング類は、通常のフィリング類に用いられる、水、食塩、糖質、乳製品、発酵乳、食物繊維、pH調整剤、安定剤、乳化剤、香料、香辛料、甘味料、着色料、保存料などを、本発明の効果を奏する限度において、必要に応じて添加することができる。
【0019】
本発明の飲食品は、本発明のフィリング類を含有する限りにおいて、特に限定されるものではない。
【0020】
本発明の抗菌性を有する発酵乳の製造方法は、Lactobacillus rhamnosus菌株、Lactobacillus plantarum菌株、Lactobacillus sakei菌株、Propionibacterium freudenreichii subsp. shermanii菌株、及びLactobacillus paracasei菌株からなる群より選択される1種以上を用い発酵し、その後殺菌する工程を含むことを特徴とする。
また、本発明の抗菌性を有する発酵乳の製造方法は、好ましい態様において、発酵工程における溶存酸素濃度が1ppm以下の嫌気条件である。より好ましくは、発酵工程における溶存酸素濃度が0.5ppm以下の嫌気条件である。
【0021】
乳酸発酵に用いる基質として、例えば、乳原料、タンパク質、油脂および水を含有する水中油型乳化物を用いることができる。
この中で特に、乳原料を用いることが好ましい。乳原料には、牛乳、加工乳、生クリーム、脱脂乳、脱脂粉乳、脱脂濃縮乳、全脂粉乳などが含まれるが、その中でも脱脂粉乳がより好ましい。基質中の乳原料の配合率についても特に限定されるものではないが、3重量%以上であることが好ましく、より好ましくは6~18重量%であり、さらに好ましくは6~15重量%である。
また、基質に、酵母エキス及び/又はペプトンを含むことが好ましい。酵母エキス及び/又はペプトンを含むことで、乳酸菌の抗菌性がより強化される場合があるためである。基質中の酵母エキスの配合率については、特に限定されるものではないが、0.5~5重量%であることが好ましく、0.5~4重量%であることがより好ましく、0.5~3重量%であることがさらに好ましい。同様に、基質中のペプトンの配合率については、特に限定されるものではないが、0.5~5重量%であることが好ましく、0.5~4重量%であることがより好ましく、0.5~3重量%であることがさらに好ましい。
その他、基質にタンパク質を用いることができる。具体的には、酸カゼイン、レンネットカゼインあるいはカゼインナトリウム、カゼインカルシウム、カゼインカリウムなどのカゼイン類、あるいはトータルミルクプロテインや乳清タンパクなどの乳タンパク質、その他、各種動植物性由来のタンパク質、微生物発酵由来のタンパク質を使用することができる。
同様に、基質に油脂を用いることができる。具体的には、パーム油、菜種油、ハイエルシン菜種油、ヒマワリ油、ハイオレイックヒマワリ油、大豆油、こめ油、コーン油、綿実油、落花生油、サフラワー油、オリーブ油、ゴマ油、亜麻仁油、パーム核油、ヤシ油、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)、シア脂、サル脂等の植物性油脂、乳脂、牛脂、ラード、魚油、鯨油等の動物性油脂、藻類油、微生物発酵由来の油脂、並びに、それらの硬化油、分別油、硬化分別油、分別硬化油、エステル交換等を施した加工油脂、さらにこれらの混合油脂等を使用することができる。
【0022】
乳酸発酵は特定のスターター乳酸菌を用い、好ましくは15~50℃で、pH3.5~7において、より好ましくはpH3.6~7、4~6.9、4.5~6.8、4.8~6.7、5~6になるまで行うことができる。発酵後、有機酸やアルカリ性塩を用いpH調整することもできる。
基質に対するスターター乳酸菌の添加量は、基質中に1×105CFU/g~9×108CFU/gとなるよう添加することが好ましい。該添加量の上限は、より好ましくは、基質中に8×108CFU/g以下、7×108CFU/g以下、6×108CFU/g以下、5×108CFU/g以下、4×108CFU/g以下、3×108CFU/g以下、2×108CFU/g以下、1×108CFU/g以下、9×107CFU/g以下、となるよう添加することである。該添加量の下限は、より好ましくは、基質中に2×105CFU/g以上、3×105CFU/g以上、4×105CFU/g以上、5×105CFU/g以上、6×105CFU/g以上、7×105CFU/g以上、8×105CFU/g以上、9×105CFU/g以上、1×106CFU/g以上、となるよう添加することである。
また、乳酸発酵の時間は、特に限定されるものではないが、例えば2~120時間である。
乳酸発酵の条件として、酸素存在下で発酵を行う好気条件と、酸素を遮断して発酵する嫌気条件のいずれであっても行うことができる。但し、本発明の効果をより発揮させる観点から、発酵中に撹拌を伴う条件が好ましい。加えて、酸素を遮断して発酵する嫌気条件の方がより好ましい。嫌気条件の中でも、発酵中の溶存酸素濃度が1ppm以下、0.5ppm以下である条件がさらに好ましい。
【0023】
該乳酸発酵の一の態様である好気条件における発酵は、その温度を15~50℃、16~49℃、17~48℃、18~47℃、19~46℃、20~45℃とすることができる。また、pHを、3.6~6.7、3.9~6.6、4.2~6.6、4.5~6.5、4.6~6.5とすることができる。
同様に、該乳酸発酵の一の態様である嫌気条件における発酵は、その温度を、15~50℃、20~45℃、25~40℃、30~39℃、32~38℃、33~37℃とすることができる。また、pHを、3.5~6.9、3.6~6.8、4.5~6.7、5.5~6.6、6~6.6とすることができる。
【0024】
発酵に用いた乳酸菌を死滅させるため、殺菌を行う。殺菌方法に特段の制約はなく、例えばレトルト殺菌法、低温長時間殺菌法(LTLT製法)、高温短時間殺菌法(HTST製法)、超高温殺菌法(UHT)、超高温滅菌殺菌法(LL)などを挙げることができる。また加熱装置や加熱方式にも特に制限はなく、例えば直接水蒸気を吹き込むスチームインジェクション式や飲料を水蒸気中に噴射して加熱するスチームインフュージョン式などの直接加熱方式、プレートやチューブなど表面熱交換器を用いる間接加熱方式など公知の方法を採用することができる。
【0025】
本発明の発酵乳、水中油型乳化物、フィリング類、及び該フィリング類を含有する飲食品に係る諸条件は、本明細書及び本特許請求の範囲に記載のない場合であっても、当業者の公知技術に基づき適宜設定することができる。
【実施例0026】
以下に本発明の実施例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明の精神は以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中%及び部、比はいずれも重量基準を意味する。
【0027】
(検討1)乳酸菌のスクリーニング
無脂肪乳(雪印メグミルク社製無脂肪牛乳)に対し、市販の乳酸菌株をスターター乳酸菌として添加し好気・静置発酵(窒素封入を行わず、また撹拌を伴わずに発酵させる条件)又は嫌気・撹拌発酵(定期的に窒素ガスを供給し、また撹拌を伴い発酵させる条件)、pH調整、加熱殺菌を行うことにより発酵乳実施例1-1~6-2を得た。加熱殺菌条件から考えて、殺菌後にスターター乳酸菌は死滅しているものと推察する。
尚、後述する方法で発酵乳参考例1~2、発酵乳比較例1も調製した。
【0028】
(抗菌性評価方法とその基準)
得られた発酵乳に対しBacillus属を102~103CFU/g程度となるよう添加し、20℃1日保存し、生菌数により、下記3段階で抗菌性有無を評価した。
◎:20℃1日保存後の生菌が102CFU/g未満である。
〇:20℃1日保存後の生菌が102~105CFU/gである。
×:20℃1日保存後の生菌が105CFU/gを超えている。
【0029】
(発酵乳実施例1-1)
無脂肪乳に対して、Lactobacillus rhamnosusからなるスターター乳酸菌を3×106CFU/g添加し、37℃72時間好気・静置条件下にて発酵させた後、pH6.0に調整し、加熱殺菌(85℃30分)することにより、発酵乳実施例1-1を得た。
【0030】
(発酵乳実施例1-2)
発酵条件を嫌気・撹拌条件とする点以外は発酵乳実施例1-1と同様にして、発酵乳実施例1-2を得た。
【0031】
(発酵乳実施例2-1)
無脂肪乳に対するスターター乳酸菌を2×106CFU/g添加する点以外は発酵乳実施例1-1と同様にして、発酵乳実施例2-1を得た。
【0032】
(発酵乳実施例2-2)
発酵条件を嫌気・撹拌条件とする点以外は発酵乳実施例2-1と同様にして、発酵乳実施例2-2を得た。
【0033】
(発酵乳実施例3-1)
無脂肪乳に対して、Lactobacillus rhamnosus及びLactobacillus sakeiからなるスターター乳酸菌を2×106CFU/g添加する点以外は発酵乳実施例1-1と同様にして、発酵乳実施例3-1を得た。
【0034】
(発酵乳実施例3-2)
発酵条件を嫌気・撹拌条件とする点以外は発酵乳実施例3-1と同様にして、発酵乳実施例3-2を得た。
【0035】
(発酵乳実施例4-1)
無脂肪乳に対して、Lactobacillus rhamnosus及びLactobacillus plantarumからなるスターター乳酸菌を2×106CFU/g添加する点以外は発酵乳実施例1-1と同様にして、発酵乳実施例4-1を得た。
【0036】
(発酵乳実施例4-2)
発酵条件を嫌気・撹拌条件とする点以外は発酵乳実施例4-1と同様にして、発酵乳実施例4-2を得た。
【0037】
(発酵乳実施例4-3)
発酵時間を120時間とする点以外は発酵乳実施例4-1と同様にして、発酵乳実施例4-3を得た。
【0038】
(発酵乳実施例5-1)
無脂肪乳に対して、Lactobacillus rhamnosus及びPropionibacterium freudenreichii subsp. shermaniiからなるスターター乳酸菌を7.5×106CFU/g添加する点以外は発酵乳実施例1-1と同様にして、発酵乳実施例5-1を得た。
【0039】
(発酵乳実施例5-2)
発酵条件を嫌気・撹拌条件とする点以外は発酵乳実施例5-1と同様にして、発酵乳実施例5-2を得た。
【0040】
(発酵乳実施例6-1)
無脂肪乳に対して、Lactobacillus paracasei及びPropionibacterium freudenreichii subsp. shermaniiからなるスターター乳酸菌を1.5×107CFU/g添加する点以外は発酵乳実施例1-1と同様にして、発酵乳実施例6-1を得た。
【0041】
(発酵乳実施例6-2)
発酵条件を嫌気・撹拌条件とする点以外は発酵乳実施例6-1と同様にして、発酵乳実施例6-2を得た。
【0042】
(発酵乳参考例1)
無脂肪乳に対して、スターター乳酸菌の代わりに保存料としてグリシンを3重量%添加した後、pH6.0に調整し、加熱殺菌(85℃30分)することにより、発酵乳参考例1を得た。
【0043】
(発酵乳参考例2)
保存料としてソルビン酸Kを0.12重量%添加する以外は発酵乳参考例1と同様にして、発酵乳参考例2を得た。
【0044】
(発酵乳比較例1)
無脂肪乳に対して、スターター乳酸菌及び保存料いずれも添加せず、pH6.0に調整し、加熱殺菌(85℃30分)することにより、発酵乳比較例1を得た。
【0045】
得られた発酵乳実施例、同参考例、同比較例に対し実施したBacillus属による評価の結果を表1-1~表1-4に示す。
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
(考察)
上記表1-1~表1-4に示される通り、発酵乳実施例1―1~6―2はいずれも20℃1日保存後の生菌数が105CFU/g以下であり、抗菌性評価は優れていた。これらは、従来の保存料を配合する試験区(発酵乳参考例1~2)と同程度の抗菌効果を確認できた。発酵乳比較例1の結果より、スターター乳酸菌及び保存料を使用しない試験区において明らかな増菌が観察される事から、発酵乳実施例1-1~6-2で選択した乳酸菌においては、殺菌工程を経ることにより抗菌作用が発揮されることが示された。
なお、発酵乳実施例1~6の中では、発酵乳実施例3-1及び発酵乳実施例4-2が特に良好な抗菌性を有していることが示された。
【0051】
(検討2)発酵基質のスクリーニング
検討1にて効果の高かった発酵乳実施例3-1を参考に、下記の表2-1及び表2-2の基質(殺菌済)を用い、Lactobacillus rhamnosus及びLactobacillus sakeiからなるスターター乳酸菌を2×106CFU/g添加し、37℃72時間好気・静置条件下にて発酵させた後、pH6.0に調整し、加熱殺菌(85℃30分)することにより、発酵乳(発酵乳実施例7~15、同参考例3~5、同比較例2)を得た。加熱殺菌条件から考えて、殺菌後にスターター乳酸菌は死滅しているものと推察する。
発酵乳の抗菌性は前述の抗菌性評価方法とその基準に従い評価した。結果は表3-1及び表3-2に示す。
【0052】
(表2-1)
・酵母エキスは、富士食品工業株式会社輸入の「ハイマックスGL」を用いた。
・ペプトンは、天津不二蛋白有限公司社製の「大豆ペプトンP」を用いた。
【0053】
(表2-2)
・ミネラルは、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社販売の「乳清ミネラルP-20」を用いた。
・ビタミンは、理研ビタミン株式会社製の「ビタミンエースミックスMB-11」を用いた。
・グリシンは、有機合成薬品工業株式会社製の「グリシンC」を用いた。
・ソルビン酸Kは、株式会社タイショーテクノス製の「ソルビン酸K・台糖」を用いた。
・酢酸Naは、三菱ケミカル株式会社製の酢酸ナトリウム〔無水〕を用いた。
【0054】
【0055】
【0056】
(考察)
上記表3-1及び表3-2に示される通り、発酵乳実施例7~15はいずれも20℃1日保存後の生菌が105CFU/g以下であった。この中でも、培地に酵母エキス(発酵乳実施例9~10)又はペプトン(発酵乳実施例11~12)を含む試験区において高い抗菌性が示された。
【0057】
(検討3)発酵条件と風味との関係
【0058】
基質の発酵条件と、それにより得られる風味の関係を検討した。尚、発酵条件について以下の3通り設定した。
(1)好気・静置条件…窒素封入を行わず、また撹拌を伴わずに発酵させた。
(2)好気・撹拌条件…窒素封入を行わず、また撹拌を伴い発酵させた。
(3)嫌気・撹拌条件…定期的に窒素ガスを供給し、また撹拌を伴い発酵させた。
【0059】
(検討3-1)好気・静置条件1
好気・静置条件における発酵乳について、最終pHを4.7に固定し、発酵温度を変化させた場合の影響を検討した。尚、以下全ての検討において提示される時間は概数を示す。
【0060】
(発酵乳実施例16)
植物油脂、脱脂粉乳、生クリーム、卵、水などで構成される調合液を調製した後、8MPaで均質化処理し、95℃まで昇温した後、24℃まで冷却を行った。得られた調合液2kgを5L容器に仕込み、Lactococcus lactis ssp. lactis、Lactococcus lactis ssp. cremoris、L. lactis ssp. lactis biovar. diacetylactis、Leuconostoc spp.、Lactobacillus rhamnosus、及びLactobacillus sakeiをスターター乳酸菌として2×106CFU/g添加し、24℃で好気・静置条件により乳酸発酵を行った。得られた発酵液を87℃90秒殺菌することで、発酵乳実施例16を得た。得られた発酵乳はナチュラルな乳感はあるものの、ヨーグルト様の酸味を感じるものであった。
【0061】
(発酵乳実施例17)
発酵条件を20℃とすること以外は発酵乳実施例16と同様にして、発酵乳実施例17を得た。
【0062】
(発酵乳実施例18)
発酵条件を37℃とすること以外は発酵乳実施例16と同様にして、発酵乳実施例18を得た。
【0063】
(発酵乳実施例19)
発酵条件を40℃とすること以外は発酵乳実施例16と同様にして、発酵乳実施例19を得た。
【0064】
(発酵乳実施例20)
発酵条件を45℃とすること以外は発酵乳実施例16と同様にして、発酵乳実施例20を得た。
【0065】
(発酵乳比較例3)
発酵乳実施例16~20における発酵操作を行わず、発酵乳比較例3を得た。ナチュラルな乳風味が極めて強く感じられた。
【0066】
以上の発酵乳実施例16~20、及び同比較例3について、発酵条件、風味評価、抗菌性評価についてまとめたものを表4―1として示す。発酵乳の風味は以下「風味評価基準」に従い5段階評価し、3点以上を合格とした。併せて、発酵乳の抗菌性は「発酵乳の抗菌性評価基準」に従い評価し、抗菌性有を合格とした。
【0067】
(風味評価基準)
・5点 ナチュラルな乳風味が極めて強い。
・4点 ナチュラルな乳風味が強い。
・3点 ナチュラルな乳風味が感じられる。
・2点 ナチュラルな乳風味がわずかに感じられる。
・1点 ナチュラルな乳風味が殆ど感じられない。
【0068】
(発酵乳の抗菌性評価基準)
・抗菌性有 発酵乳に対しBacillus属を102~103CFU/g程度となるよう添加し、20℃1日保存し、保存後の生菌数が105CFU/g以下である。
・抗菌性無 発酵乳に対しBacillus属を102~103CFU/g程度となるよう添加し、20℃1日保存し、保存後の生菌数が105CFU/gを超えている。
【0069】
【0070】
(検討3-1の考察)
上記表4-1に示される通り、好気・静置条件においては、発酵後のpHを4.7とし、発酵温度を20~45℃と幅広く条件を設定した場合であっても、風味と抗菌性を両立できる発酵乳を調製することができた。
【0071】
(検討3-2)好気・静置条件2
検討3-1の結果を踏まえ、好気・静置条件における発酵乳について、発酵温度を24℃に固定し、発酵後のpHを変化させた場合の影響を検討した。
【0072】
(発酵乳実施例21)
発酵後のpHを5.8とすること以外は発酵乳実施例16と同様にして、発酵乳実施例21を得た。
【0073】
(発酵乳実施例22)
発酵後のpHを5.9とすること以外は発酵乳実施例16と同様にして、発酵乳実施例22を得た。
【0074】
(発酵乳実施例23)
発酵後のpHを6.1とすること以外は発酵乳実施例16と同様にして、発酵乳実施例23を得た。
【0075】
(発酵乳実施例24)
発酵後のpHを6.4とすること以外は発酵乳実施例16と同様にして、発酵乳実施例24を得た。
【0076】
(発酵乳比較例4)
Lactococcus lactis ssp. lactis、Lactococcus lactis ssp. cremoris、L. lactis ssp. lactis biovar. diacetylactis、及びLeuconostoc spp.をスターター乳酸菌として1×106CFU/g添加し、24℃で15時間乳酸発酵を行った以外は発酵乳実施例16と同様にして、発酵乳比較例4を得た。
【0077】
以上の発酵乳実施例16、21~24、及び同比較例3~4について、発酵条件、風味評価、抗菌性評価についてまとめたものを表4-2として示す。発酵乳の風味、発酵乳の抗菌性の評価は検討3-1と同様とした。
【0078】
【0079】
(検討3-2の考察)
上記表4-2に示される通り、好気・静置条件において、発酵温度を24℃とし、発酵後のpHを4.7~6.4と幅広く条件を設定した場合であっても、風味と抗菌性を両立できる発酵乳を調製することができた。
【0080】
(検討3-3)好気・撹拌条件
【0081】
(発酵乳実施例25)
発酵条件を37℃10時間、好気・撹拌条件とすること以外は発酵乳実施例16と同様にして、発酵乳実施例25を得た。得られた発酵乳はわずかに酸味を感じるものの、ナチュラルな乳風味であり、発酵乳実施例18で感じられたヨーグルト様の酸味は低減されていた。
【0082】
以上の発酵乳実施例18、同実施例25、及び同比較例3について、発酵条件、風味評価、抗菌性評価についてまとめたものを表4-3として示す。発酵乳の風味、発酵乳の抗菌性の評価は検討3-1と同様とした。
【0083】
【0084】
(検討3-3の考察)
上記表4-3に示される通り、好気・撹拌条件においても、好気・静置条件の場合と同様に、風味と抗菌性を両立できる発酵乳を調製することができた。
【0085】
(検討3-4)嫌気・撹拌条件
【0086】
(発酵乳実施例26)
スターター乳酸菌をLactococcus lactis ssp. lactis、Lactococcus lactis ssp. cremoris、L. lactis ssp. lactis biovar. diacetylactis、Leuconostoc spp.、Lactobacillus rhamnosus、及びLactobacillus plantarum(2×106CFU/g)とし、発酵条件を35℃、嫌気・撹拌条件(溶存酸素濃度0.5ppm以下)、発酵後のpHを6.4とすること以外は発酵乳実施例16と同様にして、発酵乳実施例26を得た。発酵乳実施例24と比較するとヨーグルト様の酸味はあまり感じられず、むしろナチュラルな乳風味が極めて強く感じられた。
【0087】
(発酵乳実施例27)
発酵後のpHを6.6とすること以外は発酵乳実施例26と同様にして、発酵乳実施例27を得た。
【0088】
以上の発酵乳実施例26~27について、発酵条件、風味評価、抗菌性評価についてまとめたものを表4-4として示す。発酵乳の風味、発酵乳の抗菌性の評価は検討3-1と同様とした。
【0089】
【0090】
(検討3-4の考察)
上記表4-4に示される通り、嫌気・撹拌条件においても、好気・静置条件の場合と同様に、風味と抗菌性を両立できる発酵乳を調製することができた。
【0091】
(検討4-1)低pHのチーズフィリング類
【0092】
(チーズフィリング類実施例1)
ナチュラルチーズ、植物油脂、脱脂粉乳、卵、水などで構成される調合液を調製した後、6MPaで均質化処理し、70℃まで昇温した後、24℃まで冷却を行った。得られた調合液にLactococcus lactis ssp. cremoris、Lactococcus lactis ssp. lactis、Leuconostoc spp.、Lactococcus lactis ssp. lactis biovar. diacetylactis、Streptococcus thermophilus、Lactobacillus rhamnosus、及びLactobacillus sakeiをスターター乳酸菌として1.2×107CFU/g添加し、24℃で9時間、好気・静置条件による乳酸発酵を行った。得られた発酵乳に、澱粉や香料を添加し、80℃にて2分殺菌した後、5MPaで均質化処理した。その後、冷却を行うことで、チーズフィリング類実施例1を得た。得られたチーズフィリング類実施例1中の発酵乳の割合は84重量%であり、pHは5.2となるように調整した。
【0093】
(チーズフィリング類比較例1)
ナチュラルチーズ、植物油脂、脱脂粉乳、卵、水などで構成される調合液を調製した後、6MPaで均質化処理し、70℃まで昇温した後、24℃まで冷却を行った。得られた調合液にLactococcus lactis ssp. cremoris、Lactococcus lactis ssp. lactis、Leuconostoc spp.、Lactococcus lactis ssp. lactis biovar. diacetylactis、及びStreptococcus thermophilusをスターター乳酸菌として1.1×107CFU/g添加し、24℃で9時間、好気・静置条件による乳酸発酵を行った。得られた発酵乳に、澱粉や香料のほか、保存料として酢酸ナトリウムを0.45重量%、ミカクファインS(日本新薬株式会社製)を0.80重量%添加し、80℃にて2分殺菌した後、5MPaで均質化処理した。その後、冷却を行うことで、チーズフィリング類比較例1を得た。得られたチーズフィリング類比較例1中の発酵乳の割合は84重量%であり、pHは5.2となるように調整した。
【0094】
(チーズフィリング類比較例2)
保存料としてミカクファインS(日本新薬株式会社製)を無添加とする点以外はチーズフィリング類比較例1と同様に、チーズフィリング類比較例2を得た。
【0095】
(チーズフィリング類比較例3)
保存料として酢酸ナトリウムを無添加とする点以外はチーズフィリング類比較例1と同様に、チーズフィリング類比較例3を得た。
【0096】
(チーズフィリング類比較例4)
保存料として酢酸ナトリウム及びミカクファインS(日本新薬株式会社製)をいずれも無添加とする点以外はチーズフィリング類比較例1と同様に、チーズフィリング類比較例4を得た。
【0097】
以上のチーズフィリング類実施例1、及び同比較例1~4について、風味評価、抗菌性評価について表5として示す。チーズフィリング類の風味は検討3-1に示す「風味評価基準」に従い5段階で評価し、3点以上を合格とした。併せて、チーズフィリング類の抗菌性は後述の「低pHのチーズフィリング類の抗菌性評価方法」に従い実施し、後述の「低pHのチーズフィリング類の抗菌性評価基準」に従い評価し、「抗菌性有」を合格とした。
【0098】
(低pHのチーズフィリング類の抗菌性評価方法)
市販のロールパン(約30重量g)に切れ込みを入れた後、切れ込みに上記記載のチーズフィリング類を約30重量g塗布した。その後、ラップで包装し、密封した状態で30℃にて保管し、所定日数が経過した後に一般生菌数を測定した。
【0099】
(低pHのチーズフィリング類の抗菌性評価基準)
・抗菌性有 30℃4日保管後の一般生菌数が105CFU/g以下である。
・抗菌性無 30℃4日保管後の一般生菌数が105CFU/gを超えている。
【0100】
【0101】
(表5の考察)
上記表5に示される通り、チーズフィリング類実施例1において、適切なスターター乳酸菌を選択し発酵操作を行うことにより、保存料を使用しなくても、風味及び抗菌性がいずれも合格となるチーズフィリング類を得ることができた。
【0102】
(検討5)カスタードフィリング類
【0103】
(カスタードフィリング類実施例1)
植物油脂、脱脂粉乳、生クリーム、卵、水などで構成される調合液を調製した後、8MPaで均質化処理し、95℃まで昇温した後、24℃まで冷却を行った。得られた調合液にLactococcus lactis ssp. lactis、Lactococcus lactis ssp. cremoris、L. lactis ssp. lactis biovar. diacetylactis、Leuconostoc spp.、Lactobacillus rhamnosus、及びLactobacillus sakeiをスターター乳酸菌として2×106CFU/g添加し、35℃で15時間好気・撹拌条件下で乳酸発酵を行った。得られた発酵乳を87℃90秒殺菌した。その後60℃まで冷却した殺菌発酵乳に対し、砂糖、脱脂粉乳、卵、植物油脂や香料などを添加し、5MPaで均質化処理した後、90℃にて3分殺菌した後、45℃で冷却を行うことで、カスタードフィリング類実施例1を得た。得られたカスタードフィリング類実施例1中の発酵乳の割合は26.5重量%であり、pHは6.0となるように調整した。
【0104】
(カスタードフィリング類実施例2)
発酵のスターター乳酸菌としてLactococcus lactis ssp. lactis、Lactococcus lactis ssp. cremoris、L. lactis ssp. lactis biovar. diacetylactis、Leuconostoc spp.、Lactobacillus rhamnosus、及びLactobacillus plantarumを2×106CFU/g添加し、嫌気・撹拌条件下で乳酸発酵を行う以外はカスタードフィリング類実施例1と同様にして、カスタードフィリング類実施例2を得た。得られたカスタードフィリング類実施例2中の発酵乳の割合は26.5重量%であり、pHは6.0となるように調整した。
【0105】
(カスタードフィリング類実施例3)
カスタードフィリング類に占める発酵乳の割合を17重量%とする点以外はカスタードフィリング類実施例1と同様にして、カスタードフィリング類実施例3を得た。
【0106】
(カスタードフィリング類実施例4)
カスタードフィリング類に占める発酵乳の割合を17重量%とする点以外はカスタードフィリング類実施例2と同様にして、カスタードフィリング類実施例4を得た。
【0107】
(カスタードフィリング類実施例5)
発酵乳実施例16を用いる以外はカスタードフィリング類実施例1と同様にして、カスタードフィリング類実施例5を得た。得られたカスタードフィリング類実施例5中の発酵乳の割合は26.5重量%であり、pHは6.0となるように調整した。
【0108】
(カスタードフィリング類比較例1)
発酵乳比較例3を用いる以外はカスタードフィリング類実施例1と同様にして、カスタードフィリング類比較例1を得た。得られたカスタードフィリング類比較例1中の発酵乳の割合は26.5重量%であり、pHは6.0となるように調整した。
【0109】
以上のカスタードフィリング類実施例1~5、及び同比較例1について、風味評価、抗菌性評価について表6として示す。カスタードフィリング類の風味は検討3-1に示す「風味評価基準」に従い5段階で評価し、3点以上を合格とした。併せて、カスタードフィリング類の抗菌性は後述の「カスタードフィリング類の抗菌性評価基準」に従い評価し、「抗菌性有」を合格とした。
【0110】
(カスタードフィリング類の抗菌性評価基準)
・抗菌性有 カスタードフィリング類に対しBacillus属を102~103CFU/g程度となるよう添加し、30℃10時間保存し、保存後の生菌数が105CFU/g以下である。
・抗菌性無 カスタードフィリング類に対しBacillus属を102~103CFU/g程度となるよう添加し、30℃10時間保存し、保存後の生菌数が105CFU/gを超えている。
【0111】
【0112】
(表6の考察)
上記表6に示される通り、カスタードフィリング類実施例1~5において、適切なスターター乳酸菌を選択し発酵操作を行うことにより、風味及び抗菌性がいずれも合格となるカスタードフィリング類を得ることができた。カスタードフィリング類比較例1においては、風味は良好であるものの、十分な抗菌性を有するものではなく、不適であった。
【0113】
(検討6)中性pHのチーズフィリング類
【0114】
(チーズフィリング類実施例2)
スターター乳酸菌の添加量を1.3×107CFU/gとし、かつチーズフィリング類のpHを6.5となるように調整する点以外はチーズフィリング類実施例1と同様に、チーズフィリング類実施例2を得た。
【0115】
(チーズフィリング類比較例5)
保存料としてさらに卵白リゾチーム(キユーピー株式会社製)を0.01重量%添加し、かつチーズフィリング類のpHを6.5となるように調整する点以外はチーズフィリング類比較例1と同様に、チーズフィリング類比較例5を得た。
【0116】
(チーズフィリング類比較例6)
保存料として、卵白リゾチーム、酢酸ナトリウム及びミカクファインS(日本新薬株式会社製)を無添加とし、かつチーズフィリング類のpHを6.5となるように調整する点以外は、チーズフィリング類比較例5と同様に、チーズフィリング類比較例6を得た。
【0117】
以上のチーズフィリング類実施例2、及び同比較例5~6について、風味評価、抗菌性評価について表7として示す。チーズフィリング類の風味は検討3-1に示す「風味評価基準」に従い5段階で評価し、3点以上を合格とした。併せて、チーズフィリング類の抗菌性は検討5の「カスタードフィリング類の抗菌性評価基準」に従い評価し、「抗菌性有」を合格とした。
【0118】
【0119】
(表7の考察)
上記表7に示される通り、チーズフィリング類実施例2において、中性pHであっても、適切なスターター乳酸菌を選択し発酵操作を行うことにより、保存料を使用しなくても、風味及び抗菌性がいずれも合格となるチーズフィリング類を得ることができた。
本発明により、特定の乳酸菌より選択される菌種により発酵し、発酵後にその乳酸菌が死滅している場合において、抗菌性を有する発酵乳を得ることができる。また該発酵乳を用いることで、抗菌性を有する水中油型乳化物、フィリング類、及び該フィリング類を含有する飲食品を得ることができる。