(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144374
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】着色剤、着色組成物、及び着色剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09B 67/20 20060101AFI20241003BHJP
C09D 11/101 20140101ALI20241003BHJP
C09D 11/037 20140101ALI20241003BHJP
【FI】
C09B67/20 K
C09B67/20 L
C09B67/20 E
C09D11/101
C09D11/037
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024053781
(22)【出願日】2024-03-28
(31)【優先権主張番号】P 2023054361
(32)【優先日】2023-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】高畑 徳允
(72)【発明者】
【氏名】古林 龍作
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039AD10
4J039AE04
4J039BB01
4J039BE01
4J039BE12
4J039BE22
4J039EA04
4J039EA46
4J039GA09
4J039GA24
(57)【要約】 (修正有)
【課題】分散性に優れ、着色力、鮮明性及び透明性を向上できる、ナフトール系アゾ顔料をベースとした着色剤、その製造方法及び着色組成物を提供する。
【解決手段】式(1)で表される化合物(A)と、式(2)で表される化合物(B)とを含む着色剤。
[R
1~R
5、R
1’~R
5’及びR
6~R
11は、各々独立に、H、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基等;R
1~R
5は全て同時にHとなることはなく、R
1’~R
5’は全て同時にHとなることはなく、R
6~R
11は、全て同時にHとなることはない;Xは、H、水酸基、又はCl]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物(A)と、下記一般式(2)で表される化合物(B)とを含む、着色剤。
【化1】
【化2】
[一般式(1)及び一般式(2)において、R
1~R
5及びR
1’~R
5’は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、ベンズアミド基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、下記一般式(101)で表される基、下記一般式(102)で表される基、又は下記化学式(103)で表される基であり、R
1~R
5は全て同時に水素原子となることはなく、R
1’~R
5’は全て同時に水素原子となることはなく、
R
6~R
11は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、下記一般式(104)で表される基、又は下記一般式(105)で表される基であり、R
6~R
11は、全て同時に水素原子となることはなく、
Xは、水素原子、水酸基、又は塩素原子である。]
【化3】
[一般式(101)において、R
21~R
25は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、又は置換基を有してもよいアリール基であり、あるいはR
21~R
25のうち隣接する2つの基は一緒になって、飽和又は不飽和のアルキレン基を形成するか、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子からなる群から選択される1種以上のヘテロ原子を含む飽和又は不飽和のヘテロアルキレン基を形成するか、又は窒素原子及びカルボニル基とから構成される骨格を有する2価の基を形成し、前記隣接する2つの基がそれぞれ結合する炭素原子と一緒になって環を形成してもよい。]
【化4】
[一般式(102)において、R
26~R
30は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、又は置換基を有してもよいアリール基であり、あるいはR
26~R
30のうち隣接する2つの基は一緒になって、飽和又は不飽和のアルキレン基を形成するか、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子からなる群から選択される1種以上のヘテロ原子を含む飽和又は不飽和のヘテロアルキレン基を形成するか、又は窒素原子及びカルボニル基とから構成される骨格を有する2価の基を形成し、前記隣接する2つの基がそれぞれ結合する炭素原子と一緒になって環を形成してもよい。]
【化5】
【化6】
[一般式(104)において、R
31~R
35は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、又は置換基を有してもよいアリール基であり、あるいはR
31~R
35のうち隣接する2つの基は一緒になって、飽和又は不飽和のアルキレン基を形成するか、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子からなる群から選択される1種以上のヘテロ原子を含む飽和又は不飽和のヘテロアルキレン基を形成するか、又は窒素原子及びカルボニル基とから構成される骨格を有する2価の基を形成し、前記隣接する2つの基がそれぞれ結合する炭素原子と一緒になって環を形成してもよい。]
【化7】
[一般式(105)において、R
36~R
40は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、又は置換基を有してもよいアリール基であり、あるいはR
36~R
40のうち隣接する2つの基は一緒になって、飽和又は不飽和のアルキレン基を形成するか、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子からなる群から選択される1種以上のヘテロ原子を含む飽和又は不飽和のヘテロアルキレン基を形成するか、又は窒素原子及びカルボニル基とから構成される骨格を有する2価の基を形成し、前記隣接する2つの基がそれぞれ結合する炭素原子と一緒になって環を形成してもよい。]
【請求項2】
前記一般式(2)においてXが水素原子である、請求項1に記載の着色剤。
【請求項3】
前記一般式(1)及び前記一般式(2)において、
R1~R5及びR1’~R5’は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アルキル基、ニトロ基、カルボキシ基、カルバモイル基、ベンズアミド基、アルキルスルファモイル基、前記一般式(101)で表される基、又は前記化学式(103)で表される基であり、
R6~R11は、それぞれ独立して、水素原子、カルバモイル基、又は前記一般式(104)で表される基である、請求項1に記載の着色剤。
【請求項4】
前記化合物(A)が下記一般式(3)で表される化合物を含み、かつ前記化合物(B)が下記一般式(4)で表される化合物を含む、請求項1に記載の着色剤。
【化8】
[一般式(3)において、R
6~R
11は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、一般式(104)で表される基、又は一般式(105)で表される基であり、R
6~R
11は、全て同時に水素原子となることはない。]
【化9】
[一般式(4)において、Xは、水素原子、水酸基、又は塩素原子である。]
【請求項5】
前記化合物(A)が、C.I.Pigment Red 17、22、23、31、32、114、146、147、150、176、185、245、258、268及び269、並びにC.I.Pigment Violet 32及び50からなる群より選ばれる1種以上を含む、請求項1に記載の着色剤。
【請求項6】
前記化合物(A)の全質量に対する前記化合物(B)の含有率が、0.01質量%以上10質量%以下である、請求項1に記載の着色剤。
【請求項7】
さらに、下記一般式(5)で表される化合物(C)、下記一般式(6)で表される化合物(D)、及び下記一般式(7)で表される化合物(E)からなる群から選ばれる1種以上を含み、下記(i)~(iii)のうちのいずれか1つの要件を満たす、請求項1に記載の着色剤。
(i)前記化合物(A)の全質量に対する化合物(C)の含有率が0.001質量%以上0.5質量%以下である
(ii)前記化合物(A)の全質量に対する化合物(D)の含有率が0.12質量%以下である
(iii)前記化合物(A)の全質量に対する化合物(E)の含有率が6質量%以下である
【化10】
[一般式(5)において、R
1~R
5は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、前記一般式(101)で表される基、前記一般式(102)で表される基、又は前記化学式(103)で表される基であり、R
1~R
5は、全て同時に水素原子となることはない。]
【化11】
[一般式(6)において、R
1’~R
5’は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、前記一般式(101)で表される基、前記一般式(102)で表される基、又は前記化学式(103)で表される基であり、R
1’~R
5’は、全て同時に水素原子となることはない。]
【化12】
[一般式(7)において、R
6~R
11は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、前記一般式(104)で表される基、又は前記一般式(105)で表される基であり、R
6~R
11は、全て同時に水素原子となることはない。]
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の着色剤と、分散媒体とを含む着色組成物。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の着色剤と、樹脂と、溶剤とを含む、印刷インキ。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか1項に記載の着色剤と、重合性化合物とを含む、活性エネルギー線硬化型印刷インキ。
【請求項11】
下記一般式(1)で表される化合物(A)と、下記一般式(2)で表される化合物(B)とを含む、着色剤の製造方法であって、
下記一般式(7)で表されるカップラー成分を含む溶液と、芳香族アミンをジアゾ化した下記一般式(6A)で表されるジアゾニウム塩を含む溶液とのカップリング反応を、前記カップラー成分に対してモル比で過剰量のジアゾニウム塩を使用して行うことを含む、着色剤の製造方法。
【化13】
【化14】
[一般式(1)及び一般式(2)において、R
1~R
5及びR
1’~R
5’は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、ベンズアミド基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、下記一般式(101)で表される基、下記一般式(102)で表される基、又は下記化学式(103)で表される基であり、R
1~R
5は全て同時に水素原子となることはなく、及びR
1’~R
5’は全て同時に水素原子となることはなく、R
1~R
5と対応するR
1’~R
5’は、それぞれ互いに同じ基であり、
R
6~R
11は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、下記一般式(104)で表される基、又は下記一般式(105)で表される基であり、R
6~R
11は、全て同時に水素原子となることはなく、
Xは、水素原子、水酸基、又は塩素原子である。]
【化15】
[一般式(101)において、R
21~R
25は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、又は置換基を有してもよいアリール基であり、あるいはR
21~R
25のうち隣接する2つの基は一緒になって、飽和又は不飽和のアルキレン基を形成するか、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子からなる群から選択される1種以上のヘテロ原子を含む飽和又は不飽和のヘテロアルキレン基を形成するか、又は窒素原子及びカルボニル基とから構成される骨格を有する2価の基を形成し、前記隣接する2つの基がそれぞれ結合する炭素原子と一緒になって環を形成してもよい。]
【化16】
[一般式(102)において、R
26~R
30は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、又は置換基を有してもよいアリール基であり、あるいはR
26~R
30のうち隣接する2つの基は一緒になって、飽和又は不飽和のアルキレン基を形成するか、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子からなる群から選択される1種以上のヘテロ原子を含む飽和又は不飽和のヘテロアルキレン基を形成するか、又は窒素原子及びカルボニル基とから構成される骨格を有する2価の基を形成し、前記隣接する2つの基がそれぞれ結合する炭素原子と一緒になって環を形成してもよい。]
【化17】
【化18】
[一般式(104)において、R
31~R
35は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、又は置換基を有してもよいアリール基であり、あるいはR
31~R
35のうち隣接する2つの基は一緒になって、飽和又は不飽和のアルキレン基を形成するか、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子からなる群から選択される1種以上のヘテロ原子を含む飽和又は不飽和のヘテロアルキレン基を形成するか、又は窒素原子及びカルボニル基とから構成される骨格を有する2価の基を形成し、前記隣接する2つの基がそれぞれ結合する炭素原子と一緒になって環を形成してもよい。]
【化19】
[一般式(105)において、R
36~R
40は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、又は置換基を有してもよいアリール基であり、あるいはR
36~R
40のうち隣接する2つの基は一緒になって、飽和又は不飽和のアルキレン基を形成するか、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子からなる群から選択される1種以上のヘテロ原子を含む飽和又は不飽和のヘテロアルキレン基を形成するか、又は窒素原子及びカルボニル基とから構成される骨格を有する2価の基を形成し、前記隣接する2つの基がそれぞれ結合する炭素原子と一緒になって環を形成してもよい。]
【化20】
[一般式(7)において、R
6~R
11は、前記一般式(1)のR
6~R
11と同じである。]
【化21】
[一般式(6A)において、R
1~R
5は前記一般式(1)のR
1~R
5と同じである。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、着色剤、着色組成物、及び着色剤の製造方法に関する。より詳細には、本発明の実施形態は、赤色からマゼンタの色相を再現できる着色剤、当該着色剤を含む印刷インキなどの着色組成物、上記着色剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
赤色からマゼンタの色相を再現できる着色剤として、例えば、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、キナクリドン顔料等の有機顔料が挙げられる。これら有機顔料は、プラスチック製品、トナー、塗料、印刷インキ等の様々な用途で使用されている。
【0003】
上記有機顔料のなかでも、溶性アゾ顔料は、鮮明な色相と高い着色力を有し、かつ安価であるという利点がある。しかし、溶性アゾ顔料は、堅牢性の点で課題がある。さらに、一部の用途では、顔料のレーキ化に使用される金属イオンの存在が印刷諸特性に悪影響を及ぼすといった点でも課題がある。また、キナクリドン顔料は、堅牢性及び鮮明性の点で他の顔料よりも優れた特性を有する。しかし、キナクリドン顔料は、着色力又は分散安定性が他の顔料に比べて大きく劣り、さらに高価であるという点で課題がある。
【0004】
一方、不溶性アゾ顔料に分類されるナフトール系アゾ顔料は、製造コスト、着色力、及び堅牢性のバランスが良好であることから、各種用途での使用が検討されている。しかし、鮮明性及び分散性が不十分であり改善が望まれている。また、結晶安定性が低く、分散媒との組合せにおいて顔料の結晶が成長し粒径が大きくなる等の不具合が生じる場合がある。
【0005】
これに対し、例えば、デジタル印刷の分野では、ナフトール系アゾ顔料の改善に向けて様々な検討が行われている。例えば、特許文献1は、ナフトール系アゾ顔料と特定のアゾナフトエ酸成分とを含有する顔料組成物、及び上記顔料組成物を使用したマゼンタカラートナーを開示している。また、特許文献2は、ナフトール系アゾ顔料、結着樹脂、着色剤、及びワックス成分を含み、さらにβ-ナフトール誘導体と芳香族アミンとを特定比率で含有する、マゼンタトナーを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-248191号公報
【特許文献2】特開2003-149869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1及び2で開示されたナフトール系アゾ顔料は、いずれもトナーの用途に向けた着色剤であり、塗料又は印刷インキの用途に適用した場合、分散性の観点で改善の余地がある。顔料の分散性が不十分である場合、各種用途において所望とする特性を得ることが困難となる。
【0008】
例えば、水性インクジェットインクなどの水性分散体又はフレキソインキなどの非水性分散体において、顔料の分散性が乏しい場合、十分に満足できる着色力、鮮明性及び透明性を得ることが困難となる。また、水性分散体又は非水性分散体のいずれにおいても、長期保存時に粘度増加等の不具合が生じる傾向がある。そのため、顔料の分散性に優れ、様々な用途に適用でき、所望とする特性を提供できる、着色剤が望まれている。
【0009】
したがって、本発明の一実施形態は、分散性に優れ、着色力、鮮明性及び透明性を向上できる、ナフトール系アゾ顔料をベースとした着色剤を提供する。また、本発明の一実施形態は、上記着色剤を使用し、印刷インキなどの様々な用途に使用できる着色組成物を提供する。さらに、本発明の一実施形態は、上記着色剤の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の状況に鑑みて、本発明者らは、ナフトール系アゾ顔料をベースとした着色剤の分散性の改善について検討を行った。その結果、ナフトール系アゾ顔料と特定の化合物とを含む着色剤を構成することによって、各種特性を向上できること見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下の実施形態を含む。但し、本発明の実施形態は以下に限定されず、種々の実施形態を含む。
【0012】
一実施形態は、下記一般式(1)で表される化合物(A)と、下記一般式(2)で表される化合物(B)とを含む着色剤に関する。
【0013】
【0014】
【0015】
一般式(1)及び一般式(2)において、R1~R5及びR1’~R5’は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、ベンズアミド基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、下記一般式(101)で表される基、下記一般式(102)で表される基、又は下記化学式(103)で表される基であり、R1~R5は全て同時に水素原子となることはなく、R1’~R5’は全て同時に水素原子となることはない。
R6~R11は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、下記一般式(104)で表される基、又は下記一般式(105)で表される基であり、R6~R11は、全て同時に水素原子となることはない。
Xは、水素原子、水酸基、又は塩素原子である。
【0016】
【0017】
一般式(101)において、R21~R25は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、又は置換基を有してもよいアリール基であり、あるいはR21~R25のうち隣接する2つの基は一緒になって、飽和又は不飽和のアルキレン基を形成するか、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子からなる群から選択される1種以上のヘテロ原子を含む飽和又は不飽和のヘテロアルキレン基を形成するか、又は窒素原子及びカルボニル基とから構成される骨格を有する2価の基を形成し、上記隣接する2つの基がそれぞれ結合する炭素原子と一緒になって環を形成してもよい。
【0018】
【0019】
一般式(102)において、R26~R30は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、又は置換基を有してもよいアリール基であり、あるいはR26~R30のうち隣接する2つの基は一緒になって、飽和又は不飽和のアルキレン基を形成するか、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子からなる群から選択される1種以上のヘテロ原子を含む飽和又は不飽和のヘテロアルキレン基を形成するか、又は窒素原子及びカルボニル基とから構成される骨格を有する2価の基を形成し、上記隣接する2つの基がそれぞれ結合する炭素原子と一緒になって環を形成してもよい。
【0020】
【0021】
【0022】
一般式(104)において、R31~R35は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、又は置換基を有してもよいアリール基であり、あるいはR31~R35のうち隣接する2つの基は一緒になって、飽和又は不飽和のアルキレン基を形成するか、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子からなる群から選択される1種以上のヘテロ原子を含む飽和又は不飽和のヘテロアルキレン基を形成するか、又は窒素原子及びカルボニル基とから構成される骨格を有する2価の基を形成し、上記隣接する2つの基がそれぞれ結合する炭素原子と一緒になって環を形成してもよい。
【0023】
【0024】
一般式(105)において、R36~R40は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、又は置換基を有してもよいアリール基であり、あるいはR36~R40のうち隣接する2つの基は一緒になって、飽和又は不飽和のアルキレン基を形成するか、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子からなる群から選択される1種以上のヘテロ原子を含む飽和又は不飽和のヘテロアルキレン基を形成するか、又は窒素原子及びカルボニル基とから構成される骨格を有する2価の基を形成し、上記隣接する2つの基がそれぞれ結合する炭素原子と一緒になって環を形成してもよい。
【0025】
上記実施形態において、化合物(A)の全質量に対する化合物(B)の含有率は、0.01~10質量%の範囲が好ましい。上記含有率は、0.15~10質量%がより好ましい。
【0026】
一実施形態は、上記実施形態の着色剤と、分散媒体とを含む着色組成物に関する。一実施形態において、上記着色組成物は、着色剤と、樹脂と、溶剤を含む印刷インキであってよい。他の実施形態において、上記着色組成物は、着色剤と、重合性化合物とを含む活性エネルギー線硬化型インキであってよい。
【0027】
一実施形態は、上記一般式(1)で表される化合物(A)と、上記一般式(2)で表される化合物(B)とを含む、着色剤の製造方法であって、
下記一般式(7)で表されるカップラー成分を含む溶液と、芳香族アミンをジアゾ化した下記一般式(6A)で表されるジアゾニウム塩を含む溶液とのカップリング反応を、前記カップラー成分に対してモル比で過剰量のジアゾニウム塩を使用して行うことを含む、着色剤の製造方法に関する。
上記実施形態の製造方法において、上記一般式(2)におけるR1’~R5’は、それぞれ対応する位置の上記一般式(1)におけるR1~R5と互いに同じ基となる。
【0028】
【0029】
一般式(7)において、R6~R11は、上記一般式(1)のR6~R11と同様である。
【0030】
【0031】
一般式(6A)において、R1~R5は上記一般式(1)のR1~R5と同様である。
一実施形態において、上記カップラー成分を含む溶液、及び上記ジアゾニウム塩を含む溶液を用いたカップリング反応は、水溶性有機溶剤の存在下で実施されることが好ましい。
【発明の効果】
【0032】
本発明の実施形態によれば、分散性に優れ、着色力、鮮明性及び透明性を向上できる、着色剤を提供できる。また、当該着色剤を使用し、様々な用途に使用できる着色組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態について、より具体的に説明する。但し、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、要旨を変更しない範囲において種々変更してもよく、様々な実施形態が含まれる。
【0034】
<1>着色剤
本発明の一実施形態は、下記一般式(1)で表される化合物(A)と、下記一般式(2)で表される化合物(B)とを含む、着色剤に関する。
【0035】
<化合物(A)>
上記実施形態の着色剤において、化合物(A)は、下記一般式(1)で表される構造を有するナフトール系アゾ顔料である。着色剤において、化合物(A)として、上記ナフトール系アゾ顔料の1種を単独で使用しても、又は2種以上を組合せて使用できる。一実施形態において、色調の調整が容易となる観点から、着色剤を構成する化合物(A)は2種以上のナフトール系アゾ顔料を含むことが好ましい。
【0036】
【0037】
一般式(1)において、R1~R5は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、ベンズアミド基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、下記一般式(101)で表される基、下記一般式(102)で表される基、又は下記化学式(103)で表される基であり、R1~R5は、全て同時に水素原子となることはない。
【0038】
R6~R11は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、下記一般式(104)で表される基、又は下記一般式(105)で表される基であり、R6~R11は、全て同時に水素原子となることはない。
【0039】
ここで、上記「アルコキシ基」は、炭素数1~8であってよく、直鎖構造、分岐構造、及び環構造のいずれでもよい。一実施形態において、アルコキシ基は、直鎖構造が好ましい。アルコキシ基の炭素数は、1~4が好ましく、1又は2がより好ましく、1がさらに好ましい。
【0040】
上記「アルキル基」は、炭素数1~18であってよく、直鎖構造、分岐構造、及び環構造のいずれでもよい。一実施形態において、アルキル基は、直鎖構造が好ましい。アルキル基の炭素数は、1~12が好ましく、1~8がより好ましく、1~4がさらに好ましい。
【0041】
上記「ハロゲン基」は、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子であってよい。一実施形態において、塩素原子、又はフッ素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
【0042】
上記「アルキルスルファモイル基」における「アルキル」は、先に説明したアルキル基と同様であってよい。また、上記「アルキルカルバモイル基」における「アルキル」についても同様である。
特に限定するものではないが、一実施形態において、アルキルスルファモイル基、及びアルキルカルバモイル基におけるアルキルは、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルキル基が好ましい。
【0043】
【0044】
一般式(101)において、R21~R25は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、又は置換基を有してもよいアリール基であり、あるいはR21~R25のうち隣接する2つの基は一緒になって、飽和又は不飽和のアルキレン基を形成するか、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子からなる群から選択される1種以上のヘテロ原子を含む飽和又は不飽和のヘテロアルキレン基を形成するか、又は窒素原子及びカルボニル基とから構成される骨格を有する2価の基を形成し、上記隣接する2つの基がそれぞれ結合する炭素原子と一緒になって環を形成してもよい。
【0045】
一般式(101)において、アルコキシ基、アルキル基、及びハロゲン基の詳細は、それぞれ一般式(1)に関する説明で先に記載したとおりである。また、アルキルスルファモイル基、及びアルキルカルバモイル基におけるアルキルについても同様である。
【0046】
一般式(101)において「置換基を有してもよいアリール基」とは、芳香族化合物から水素原子を1つ除いた原子団を意味する。アリール基の炭素数は、6~30が好ましく、6~18がより好ましく、6~12がさらに好ましく、6~10が特に好ましい。
上記アリール基は、芳香環における1以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい。上記置換基は、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、又はアルキルカルバモイル基であってよい。これら置換基の詳細は、それぞれ一般式(1)に関する説明で先に記載したとおりである。
【0047】
一般式(101)で表される構造の一実施形態として、R21~R25のうち隣接する2つの基は一緒になって2価の基を形成し、上記隣接する2つの基がそれぞれ結合する炭素原子と一緒になって環を形成してもよい。ここで、「隣接する2つの基」とは、R21~R25がそれぞれ結合する炭素原子同士が互いに隣接する関係にある2つの基を意味する。隣接する2つの基は、具体的には、R21とR22、R22とR23、R23とR24、又はR24とR25であってよい。
【0048】
一般式(101)において上記隣接する2つの基がそれぞれ結合する炭素原子はベンゼン環を構成している。そのため、より詳細には、上記2つの基が一緒になって2価の基を形成する場合、ベンゼン環との縮合環が形成される。特に限定するものではないが、上記2価の基によって形成される環は、4、5又は6員環が好ましく、5又は6員環がより好ましい。
【0049】
上記のように環を形成する実施形態において、隣接する2つの基が一緒になって形成する2価の基は、例えば、飽和又は不飽和のアルキレン基、飽和又は不飽和のヘテロアルキレン基、あるいは窒素原子及びカルボニル基とから構成される骨格を有する飽和又は不飽和の基であってよい。2価の基が不飽和の基である場合、共役ジエン構造を有することが好ましい。
【0050】
上記飽和又は不飽和のアルキレン基の例として、-CH2-、-(CH2)2-、-CH=CH-CH=CH-などが挙げられる。
飽和又は不飽和のヘテロアルキレン基は、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子からなる群から選択される1種以上のヘテロ原子を含んでよい。飽和又は不飽和のヘテロアルキレン基は、1~3のヘテロ原子を含んでよい。例えば、-O-CH2-CH2-O-、-C=N-CH=C-などが挙げられる。
窒素原子及びカルボニル基とから構成される骨格を有する飽和又は不飽和の基の例として、尿素結合(-HN-C(=O)-NH-)、イミド結合(-C(=O)-NH-C(=O)-)が挙げられる。
【0051】
一実施形態において、上記2価の基は、尿素結合(-HN-C(=O)-NH-)、イミド結合(-C(=O)-NH-C(=O)-)、及び共役ジエン結合(-CH=CH-CH=CH-、-C=N-CH=C-等)からなる群から選択される基が好ましく、尿素結合がより好ましい。上記2価の基が尿素結合である場合、これらの基が結合する炭素原子が構成するベンゼン環と一緒になってベンゾイミダゾール環が形成される。
以下、ベンゼン環を構成する2つの隣接する炭素原子に結合する置換基が一緒になって2価の基を形成し、環を構成する場合についても、具体的には上記と同様である。
【0052】
【0053】
一般式(102)において、R26~R30は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、又は置換基を有してもよいアリール基であり、あるいはR26~R30のうち隣接する2つの基は一緒になって、飽和又は不飽和のアルキレン基を形成するか、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子からなる群から選択される1種以上のヘテロ原子を含む飽和又は不飽和のヘテロアルキレン基を形成するか、又は窒素原子及びカルボニル基とから構成される骨格を有する2価の基を形成し、上記隣接する2つの基がそれぞれ結合する炭素原子と一緒になって環を形成してもよい。上記R26~R30として記載した各基の詳細は、先に一般式(101)に関する説明での記載内容と同様である。
【0054】
【0055】
【0056】
一般式(104)において、R31~R35は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、又は置換基を有してもよいアリール基であり、あるいはR31~R35のうち隣接する2つの基は一緒になって、飽和又は不飽和のアルキレン基を形成するか、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子からなる群から選択される1種以上のヘテロ原子を含む飽和又は不飽和のヘテロアルキレン基を形成するか、又は窒素原子及びカルボニル基とから構成される骨格を有する2価の基を形成し、上記隣接する2つの基がそれぞれ結合する炭素原子と一緒になって環を形成してもよい。上記R31~R35として記載した各基の詳細は、先に一般式(101)に関する説明での記載内容と同様である。
【0057】
【0058】
一般式(105)において、R36~R40は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、又は置換基を有してもよいアリール基であり、あるいはR36~R40のうち隣接する2つの基は一緒になって、飽和又は不飽和のアルキレン基を形成するか、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子からなる群から選択される1種以上のヘテロ原子を含む飽和又は不飽和のヘテロアルキレン基を形成するか、又は窒素原子及びカルボニル基とから構成される骨格を有する2価の基を形成し、上記隣接する2つの基がそれぞれ結合する炭素原子と一緒になって環を形成してもよい。上記R36~R40として記載した各基の詳細は、先に一般式(101)に関する説明での記載内容と同様である。
【0059】
一実施形態において、化合物(A)の平均一次粒子径は、1000nm以下が好ましく、350nm以下がより好ましく、200nm以下がさらに好ましい。また、化合物(A)の平均一次粒子径は、10nm以上が好ましく、30nm以上がより好ましく、50nm以上がさらに好ましい。平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡にて倍率10,000倍で撮影した複数枚の写真より抽出した顔料粒子の一次粒子50個について、長い方の直径の平均を計算することにより求めることができる。化合物(A)の平均一次粒子径が最適な範囲であることで、着色力と分散性とを両立することが容易となる。
【0060】
一実施形態において、化合物(A)は、ナフトール系アゾ顔料として公知の化合物であってもよく、市販品として入手することもできる。市販品として入手可能な化合物(A)として、例えば、C.I.Pigment Red 5、8、10、17、22、23、31、32、114、146、147、150、170、176、185、208、245、258、268、及び269、並びにC.I.Pigment Violet 32、及び50等が挙げられる。これらの1種、又は2種以上を組合せて、化合物(A)として使用できる。一実施形態において、化合物(A)は、分子内にアゾ結合を1つ含む、モノアゾ顔料が好ましい。
【0061】
一実施形態において、化合物(A)は、C.I.Pigment Red 17、22、23、31、32、114、146、147、150、176、185、245、258、及び269からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。一実施形態において、化合物(A)は、C.I.Pigment Red 31、32、146、147、150、176、及び269からなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。一実施形態において、化合物(A)は、上記C.I.Pigment Red顔料の2種以上を含むことが好ましい。2種の顔料の組合せの具体例として、C.I.Pigment Red269/Red150、Red150/Red31、Red146/Red147が挙げられる。ここで、用語「C.I.」は、カラーインデックス番号である。
【0062】
一実施形態において、化合物(A)は、以下の構造を有することが好ましい。一般式(1)において、R1~R5が、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、カルボキシ基、カルバモイル基からなる群から選択される基であり、少なくともカルボキシ基又はカルバモイル基のいずれかを1つ以上含む。さらに、R6~R11のいずれか1つが一般式(104)で表される基であり、一般式(104)におけるR31~R35は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、ハロゲン基からなる群から選択される基であり、少なくともアルコキシ基又はハロゲン基のいずれかを1つ以上含む。
【0063】
<化合物(B)>
上記実施形態の着色剤において、化合物(B)は、下記一般式(2)で表される構造を有する化合物である。
【化16】
【0064】
一般式(2)において、R1’~R5’は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、ベンズアミド基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、上記一般式(101)で表される基、上記一般式(102)で表される基、又は上記化学式(103)で表される基であり、R1’~R5’は、全て同時に水素原子となることはない。
一実施形態において、R1’~R5’は、化合物(A)において対応する位置のR1~R5と互いに一致していることが好ましい。すなわち、例えば、R1とR1’、R2とR2’といった関係において、R1~R5とそれぞれ対応するR1’~R5’は、互いに同じ基が好ましい。
Xは、水素原子、水酸基、又は塩素原子である。一実施形態において、Xは水素原子が好ましい。
【0065】
一実施形態において、着色剤における化合物(A)及び化合物(B)は、上記一般式(1)及び上記一般式(2)において、以下のように規定される化合物が好ましい。
R1~R5及びR1’~R5’が、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アルキル基、ニトロ基、カルボキシ基、カルバモイル基、ベンズアミド基、アルキルスルファモイル基、上記一般式(101)で表される基、又は上記化学式(103)で表される基である。
また、R6~R11は、それぞれ独立して、水素原子、カルバモイル基、又は上記一般式(104)で表される基である。
【0066】
一実施形態において、化合物(A)及び化合物(B)は、上記一般式(1)及び上記一般式(2)において、以下のように規定される化合物が好ましい。
R1~R5のうち少なくとも2つは、アルコキシ基、アルキル基、ニトロ基、カルバモイル基、ベンズアミド基又はアルキルスルファモイル基、上記一般式(101)で表される基、及び上記化学式(103)で表される基からなる群から選択される互いに異なる2つの基の組合せである。
R1’~R5’のうち少なくとも2つは、アルコキシ基、アルキル基、ニトロ基、カルバモイル基、ベンズアミド基又はアルキルスルファモイル基、上記一般式(101)で表される基、及び上記化学式(103)で表される基からなる群から選択される互いに異なる2つの基の組合せである。ここで、R1’~R5’は、それぞれ対応する位置のR1~R5と互いに同じ基が好ましい。
R6~R11のうち少なくとも1つは、カルバモイル基、又は上記一般式(104)で表される基である。
【0067】
上記実施形態では、上記一般式(101)においてR21~R25が、それぞれ水素原子が好ましい。また、上記一般式(104)においてR31~R35が、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン基若しくはニトロ基であるか、又はR31~R35のうち隣接する2つの基が一緒になって尿素結合を形成することが好ましい。
【0068】
一実施形態では、上記一般式(1)のR1~R5において、互いに異なる2つの基の組合せは、それぞれ独立して、アルキル基/ニトロ基、アルコキシ基/ニトロ基、アルコキシ基/上記一般式(101)で表される基、アルコキシ基/アルキルスルファモイル基、アルコキシ基/カルバモイル基、又はアルコキシ基/アルキルスルファモイル基が好ましい。
【0069】
上記一般式(2)の上記R1’~R5’において、互いに異なる2つの基の組合せは、それぞれ独立して、アルキル基/ニトロ基、アルコキシ基/ニトロ基、アルコキシ基/上記一般式(101)で表される基、アルコキシ基/アルキルスルファモイル基、アルコキシ基/カルバモイル基、又はアルコキシ基/アルキルスルファモイル基が好ましい。ここで、R1’~R5’は、それぞれ対応する位置のR1~R5と互いに同じ基が好ましい。
【0070】
上記実施形態の着色剤において、化合物(A)は下記一般式(3)で表される化合物を含むことが好ましい。また、上記化合物(B)は下記一般式(4)で表される化合物を含むことが好ましい。このような観点から、着色剤は、下記一般式(3)で表される化合物と、下記一般式(4)で表される化合物とを含むことがより好ましい。
【0071】
【0072】
一般式(3)において、R6~R11は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、一般式(104)で表される基、又は一般式(105)で表される基であり、R6~R11は、全て同時に水素原子となることはない。ここで、R6~R11として記載した各基の詳細は、先に一般式(1)に関する説明で記載したものと同様である。
【0073】
【0074】
一般式(4)において、Xは、水素原子、水酸基、又は塩素原子である。一実施形態において、Xは水素原子が好ましい。
【0075】
一実施形態において、着色剤における化合物(A)及び化合物(B)は、上記一般式(1)及び上記一般式(2)において、以下のように規定される化合物が好ましい。
R1~R5及びR1’~R5’が、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、カルボキシ基又はカルバモイル基で表される基であり、少なくともカルボキシ基またはカルバモイル基のいずれかを1つ以上含む。ここで、R1’~R5’は、それぞれ対応する位置のR1~R5と互いに同じ基が好ましい。
また、R6は上記一般式(104)で表される基であり、R7~R11は水素原子である。上記一般式(104)において、R31~R35は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基またはハロゲン基で表される基であり、R31~R35は全て同時に水素原子となることはない。
【0076】
上記実施形態の着色剤における主成分はナフトール系アゾ顔料として知られる化合物(A)であり、着色剤はさらに化合物(B)を含む。着色剤における化合物(A)の含有率は、着色剤の全質量に対して、50質量%以上であってよい。化合物(A)による着色力が容易に得られる観点から、上記含有率は、好ましくは80質量%以上で、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上であってよい。一方、上記含有率は、99.99質量%以下であってよい。分散性、及び光学特性の向上が容易となる観点から、上記含有率は、好ましくは99.9質量%以下、より好ましくは99.7質量%以下、さらに好ましくは99.5質量%以下であってよい。
【0077】
一実施形態において、着色剤の着色力、及び光学特性の向上が容易となる観点から、着色剤の全質量を基準とする上記化合物(A)の含有率は、好ましくは80~99.9質量%、より好ましくは90~99.7質量%、さらに好ましくは95~99.5質量%であってよい。
ここで、着色剤における化合物(A)の含有率は、例えば、後述する実施例に記載するように、吸光光度法により算出できる。
【0078】
上記実施形態の着色剤は、主成分となる上記化合物(A)に加えて、さらに上記化合物(B)を含むことによって、分散性、鮮明性及び透明性が向上する。発明者らは、着色剤中の化合物(B)の存在により、化合物(B)の芳香環部分が化合物(A)の表面に吸着し、化合物(A)(顔料)の表面を疎水性にすると推測している。その結果、分散体における顔料の分散安定性を容易に向上できる。したがって、例えば、上記着色剤を使用して水性の分散体を作製する場合、良好な分散安定性、粘度安定性が容易に得られる。この理由は、着色剤中または化合物(A)の表面に化合物(B)が存在することによって、顔料の結晶粒子の成長が抑制されるためと推測している。
【0079】
着色剤において、化合物(A)の全質量に対する化合物(B)の含有率は、0.001質量%以上であってよい。一実施形態において、光学特性の向上が容易となる観点から、上記含有率は、好ましくは0.01質量%以上であってよい。上記含有率は、例えば、0.02質量%、0.03質量%、0.04質量%、0.05質量%、又は0.06質量%であってよい。一実施形態において、上記含有率は、より好ましくは0.1質量%以上であってよい。上記含有率は、例えば、0.15質量%、0.2質量%、0.25質量%、0.3質量%、0.35質量%、0.36質量%、0.4質量%、又は0.45質量%であってよい。上記含有率は、さらに好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは0.52質量%以上であってよい。
【0080】
一方、着色力の観点から、上記含有率は、好ましくは10.0質量%以下であってよい。上記含有率は、5.4質量%以下、5.3質量%以下、5.22質量%以下であってよい。一実施形態において、上記含有率は、より好ましくは1.6質量%以下であってよい。上記含有率は、例えば、1.5質量%以下、1.4重量%以下、1.3質量%以下、1.2質量%以下、又は1.1質量%以下であってよい。一実施形態において、上記含有率は、さらに好ましくは1.0質量%以下であってよく、さらにより好ましくは0.9質量%以下、特に好ましくは0.65質量%以下、特により好ましくは0.64質量%以下であってよい。
【0081】
化合物(A)の全質量に対する化合物(B)の含有率を上記範囲に調整した場合、塗膜の鮮明性、光沢、透明性などの光学特性を容易に向上できる。また、アルカリに対する着色剤の色相安定性を容易に保持できる。さらに、着色剤を用いた各種印刷インキなどの分散体の色相安定性、及び上記分散体の温度変動保管下における粘度安定性を保持することが容易となる。
【0082】
一実施形態において、上記着色剤は、所望とする特性を維持できる範囲で、化合物(A)及び化合物(B)に加えて、さらに他の成分を含んでもよい。例えば、着色剤は、化合物(A)及び化合物(B)に加えて、着色剤の製造時に使用した原料に由来する成分をさらに含んでいてもよい。
【0083】
一実施形態において、着色剤は、下記一般式(5)で表される化合物(C)をさらに含んでもよい。
【化19】
【0084】
一般式(5)において、R1~R5は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、上記一般式(101)で表される基、上記一般式(102)で表される基、又は上記化学式(103)で表される基であり、R1~R5は、全て同時に水素原子となることはない。ここで、R1~R5として記載した各基の詳細は、先に一般式(101)に関する説明で記載したものと同様である。
【0085】
着色剤において、上記化合物(A)の全質量に対する化合物(C)の含有率は、好ましくは0.001質量%以上であってよい。一実施形態において、上記含有量は、0.005質量%以上、又は0.007質量%以上であってよい。上記含有率は、より好ましくは0.01質量%以上であってよい。一実施形態において、上記含有量は、0.02質量%であってよい。上記含有量は、さらに好ましくは0.03質量%以上であってよい。
【0086】
一方、上記含有率は、好ましくは0.5質量%以下であってよく、より好ましくは0.46質量%以下、さらに好ましくは0.15質量%以下であってよい。上記含有量は、例えば、0.14質量%、0.13質量%、又は0.12質量%であってよい。一実施形態において、化合物(C)の含有率は0質量%であってもよい。
【0087】
着色剤が上記範囲で化合物(C)を含む場合、着色力、及び透明性の向上がより容易となる傾向がある。また、溶剤系分散体での分散安定性がさらに向上する傾向がある。したがって、一実施形態において、着色剤は、化合物(A)と、化合物(B)と、化合物(C)とを含み、化合物(C)の含有率は、化合物(A)の全質量に対して、0.001~0.5質量%が好ましい。上記含有率は、より好ましくは0.01~0.46質量%、さらに好ましくは0.03~0.12質量%であってよい。
【0088】
一実施形態において、着色剤は、下記一般式(6)で表される化合物(D)をさらに含んでもよい。
【化20】
【0089】
一般式(6)において、R1~R5は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、上記一般式(101)で表される基、上記一般式(102)で表される基、又は上記化学式(103)で表される基であり、R1~R5は、全て同時に水素原子となることはない。ここで、R1~R5として記載した各基の詳細は、先に一般式(101)に関する説明で記載したものと同様である。
【0090】
上記化合物(A)の全質量に対する化合物(D)の含有率は、0.001質量%以上であってよい。着色剤が化合物(D)を含む場合、透明性、着色力の向上がより容易となる傾向がある。一方、着色剤における化合物(D)の含有率は0.12質量%以下が好ましい。化合物(D)の含有率を0.12質量%以下に調整することによって、粒子の過剰な微細化による増粘を容易に抑制できる。したがって、上記化合物(A)の全質量に対する化合物(D)の含有率は、0.001質量%~0.12質量%の範囲が好ましい。
【0091】
一実施形態において、特に、繊維及び食品包装の用途に向けた着色又は印刷で着色剤を使用する場合、化合物(D)の含有率は低い方が好ましい。上記用途での使用を考慮した場合、着色剤における化合物(D)の含有率は、好ましくは0.12質量%以下であってよい。上記含有率は、より好ましくは0.005質量%以下であってよい。
【0092】
一実施形態において、着色剤は、下記一般式(7)で表される化合物(E)をさらに含んでもよい。
【化21】
【0093】
一般式(7)において、R6~R11は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、前記一般式(104)で表される基、又は前記一般式(105)で表される基であり、R6~R11は、全て同時に水素原子となることはない。ここで、R6~R11として記載した各基の詳細は、先に一般式(101)に関する説明で記載したものと同様である。
【0094】
上記化合物(A)の全質量に対する化合物(E)の含有率は、0.001質量%以上であってよい。着色剤が化合物(E)を含む場合、一次粒子の凝集が抑制され、分散性の向上がより容易となる傾向がある。一方、着色剤における化合物(E)の含有率は6質量%以下が好ましい。着色剤における化合物(E)の含有率を6質量%以下に調整することによって、各種インクの用途において着色力の低下、印刷適性及び塗膜物性の低下を容易に抑制できる。例えば、インクジェットインクの用途では、化合物(E)の析出による吐出性能の低下を容易に抑制できる。また、グラビアインキの用途では、ラミネート強度の低下を容易に抑制できる。さらに、活性エネルギー線硬化型インクの用途では、硬化性の阻害、及び保存安定性の低下といった不具合を容易に回避できる。
【0095】
したがって、一実施形態において、インク又はインキの用途に向けて着色剤を使用する場合、着色剤における化合物(E)の含有率は低いことが好ましい。上記用途での使用を考慮した場合、着色剤における化合物(E)の含有率は好ましくは5.9質量%以下であってよい。上記含有率は、より好ましくは1.3質量%以下、さらに好ましくは1.1質量%以下であってよい。上記含有率は、例えば、1.0質量%、0.9質量%、0.8質量%、0.7質量%、0.6質量%、0.5質量%、0.4質量%、0.3質量%、0.1質量%であってよい。一実施形態において、上記含有率は0質量%であってもよい。
【0096】
一実施形態において、着色剤における化合物(E)の含有率は、0.01質量%~5.88質量%であってよく、より好ましくは0.01~1.26質量%、さらに好ましくは0.01~0.88質量%であってよい。
【0097】
上述のように、一実施形態において、着色剤は、上記化合物(A)と上記化合物(B)とを含み、さらに上記化合物(C)、上記化合物(D)、及び上記化合物(E)からなる群から選ばれる1種以上を含んでよい。ここで、上記実施形態の着色剤は、下記(i)~(iii)のうち1以上の要件を満たすことが好ましい。
(i)上記化合物(A)の全質量に対する化合物(C)の含有率が0.001質量%以上、0.5質量%以下である。
(ii)上記化合物(A)の全質量に対する化合物(D)の含有率が0.12質量%以下である。
(iii)上記化合物(A)の全質量に対する化合物(E)の含有率が6質量%以下である。
【0098】
さらに他の実施形態において、上記着色剤は、所望とする特性を維持できる範囲で、化合物(A)及び化合物(B)と、任意に上記化合物(C)、(D)及び(E)からなる群から選択される少なくとも1種とに加えて、さらに他の成分を含んでもよい。例えば、不溶性アゾ顔料の製造時に、顔料の表面改質を目的として、樹脂及び/又は界面活性剤等の成分を使用する場合がある。上記実施形態の着色剤は、化合物(B)の存在によって、それ自体で優れた分散性を有するため、表面改質を必要とするものではない。しかし、後述するように着色剤の製造時に、必要に応じて樹脂又は界面活性剤等の成分を使用することもできる。この場合、着色剤は、必要に応じて使用した樹脂又は界面活性剤をさらに含んでいてもよい。
【0099】
一実施形態において、着色剤の製造時に樹脂を使用する場合、着色剤の全質量に対して(着色剤を100質量%として)樹脂の含有率は、好ましくは0.1~10質量%であってよい。上記樹脂の含有率は、より好ましくは0.5~5質量%、さらに好ましくは1~3質量%であってよい。また、着色剤の製造時に界面活性剤を使用した場合、着色剤の全質量に対して(着色剤を100質量%として)界面活性剤の含有率は、好ましくは0.1~10質量%であってよい。上記界面活性剤の含有率は、より好ましくは0.5~5質量%、さらに好ましくは1~3質量%であってよい。
【0100】
上記実施形態の着色剤が、化合物(A)及び化合物(B)以外の成分をさらに含む場合、その含有率は、着色剤の全質量に対して、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下であってよい。上記含有率を上記範囲に調整した場合、化合物(A)と化合物(B)との相互作用によって達成される良好な特性を容易に維持できる。
【0101】
<2>着色剤の製造方法
上記実施形態の着色剤の製造方法は特に限定されない。例えば、化合物(A)に化合物(B)を添加し混合することで着色剤を製造できる。化合物(B)の添加方法としては、化合物(A)の存在下で化合物(B)を製造する方法、化合物(A)と化合物(B)を別々に製造し混合する方法、化合物(B)の存在下で化合物(A)を製造する方法等が挙げられ、いずれの方法でも選択できる。化合物(B)の存在下で化合物(A)を製造する方法は透明性の高い着色剤を容易に得られるため好ましい。化合物(A)の存在下で化合物(B)を製造する方法もまた、分散安定性の高い着色剤を容易に得られるため好ましい。
【0102】
着色剤の製造において、化合物(A)は、公知の不溶性アゾ顔料の合成方法を適用して製造できる。例えば、ベース成分と、カップラー成分とのカップリング反応を適用できる。より具体的には、ベース成分として、下記一般式(6)で表される芳香族アミンをジアゾ化し、下記一般式(6A)で表されるジアゾニウム塩を含む溶液(1)を調製する。また、一般式(7)で表されるカップラー成分を含む溶液(2)を調製する。そして、これら溶液(1)及び(2)を混合することによってベース成分とジアゾニウム塩とのカップリング反応を実施する。このようなカップリング反応を実施することによって化合物(A)を製造できる。
【0103】
【0104】
上記一般式(6)及び(6A)におけるR1~R5は、先に説明したとおりである。
【0105】
【0106】
上記一般式(7)におけるR6~R11は、先に説明したとおりである。
【0107】
上記実施形態の着色剤において、化合物(A)が2種以上の化合物を含む場合は、例えば、2種以上のカップラー成分を含む溶液を調製し、この溶液とジアゾニウム塩を含む溶液とのカップリング反応を実施することで所望とする2種以上の化合物が得られる。
他の実施形態として、第1のカップラー成分のみを含む第1の溶液、及び第2のカップラー成分のみを含む第2の溶液をそれぞれ調製し、段階的にカップリング反応を実施してもよい。また同様に、2種以上のベース成分を用いたジアゾニウム塩を含む溶液を調製し、この溶液とカップラー成分を含む溶液とのカップリング反応を実施することで所望とする2種以上の化合物が得られる。
【0108】
上記ジアゾニウム塩を含む溶液、及び上記カップラー成分を含む溶液のいずれの溶液も、少なくとも水を含む。上記溶液は、透明な水溶液の形態、及び懸濁液の形態のいずれであってもよいが、水溶液の形態が好ましい。一実施形態において、カップリング反応は、水溶性有機溶剤の存在下で実施されることが好ましい。このような観点から、上記ジアゾニウム塩を含む溶液、及び/又は上記カップラー成分を含む溶液は、水に加えて、水溶性有機溶剤をさらに含むことが好ましい。一実施形態において、少なくともカップラー成分を含む溶液は、水と水溶性有機溶剤とを含むことが好ましい。水溶性有機溶剤を使用した場合、カップラー成分の溶解性が向上し、そのことによって反応性及び収率が上昇する傾向がある。
【0109】
上記カップラー成分を含む溶液は、カップラー成分と、塩基と、水とを含み、必要に応じてさらに水溶性有機溶剤を含んでもよい。
上記カップラー成分を含む溶液は、例えば、加熱した塩基性水溶液中に、カップラー成分を溶解させることで調製できる。また、他の例として、室温(10℃~30℃程度)で、水、水溶性有機溶剤、カップラー成分、及び塩基を混合し、カップラー成分及び塩基を溶解させて調製してもよい。溶解温度は、添加する水溶性有機溶剤の種類及び量、水の量、並びに塩基の種類及び量に応じて調整できる。例えば、溶液が水溶性有機溶剤を含む場合は15~50℃程度で混合することが好ましい。溶液が水溶性有機溶剤を含まない場合は50~95℃で混合することが好ましい。
【0110】
塩基は、例えば、水に溶解し、カップラー成分を溶解させることができればよい。また、後述の酸水溶液又はジアゾニウム塩を含む溶液中の酸と中和した際に、不溶の塩を形成しない塩基が好ましい。そのような塩基は、コスト、カップラー成分の溶解力、廃液処理等の面で利点がある。塩基は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。
【0111】
上記ジアゾニウム塩を含む溶液は、ジアゾニウム塩と水とを含む。上記ジアゾニウム塩を含む溶液は、ジアゾニウム塩の調製時に使用したベース成分と、酸成分と、亜硝酸ナトリウム水との反応混合物を含んでよい。
ジアゾニウム塩は、上記一般式(6)のベース成分をジアゾ化することで得られる。ジアゾ化の方法は、公知の方法を使用できる。例えば、氷水でベース成分をスラリー化した溶液に塩酸又は硫酸を加えて溶かし、さらに亜硝酸ナトリウムを加えることでジアゾ化を行うことができる。ジアゾ化のために使用した過剰な亜硝酸ナトリウムを消去するために、スルファミン酸を加えてもよい。ジアゾニウム塩を含む溶液に水溶性有機溶剤を添加できる。
【0112】
カップリング反応時に使用できる水溶性有機溶剤は、特に限定されない。水溶性有機溶剤は水と任意に混合できる有機溶剤であればよい。カップラー成分を含む溶液、及び/又はジアゾニウム塩を含む溶液を得るために水溶性有機溶剤を使用できる。
水溶性有機溶剤として、例えば、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン等の非プロトン性極性溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等の環状エーテル類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール等の2価アルコール類、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の1価アルコール類等が挙げられる。
【0113】
水溶性有機溶剤は、上記溶剤の1種を単独で使用しても、又は2種以上を組合せて使用できる。特に限定するものではないが、水溶性有機溶剤は、非プロトン性極性溶剤、ケトン類、1価アルコール、及び環状エーテルからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。また、水溶性有機溶剤の沸点は100℃以下が好ましい。このような沸点が100℃以下の水溶性有機溶剤は、廃液からの溶剤回収の面で利点がある。例えば、アセトニトリル、アセトン、メタノール、及びテトラヒドロフランからなる群から選択される少なくとも1種を好適に使用できる。
【0114】
水溶性有機溶剤の添加量は、水溶性有機溶剤の種類によって調整できる。一実施形態において、カップラー成分を含む溶液、及びジアゾニウム塩を含む溶液のいずれに水溶性有機溶剤を添加する場合であっても、その添加量はカップリング後のスラリー全体の質量に対して(100質量%中)、1~50質量%とすることが好ましい。水溶性有機溶剤の上記添加量は、7~30質量%がより好ましく、12~21質量%がさらに好ましい。
【0115】
カップリングの方法は、例えば、逆カップリング、正カップリング、酸析正カップリング等が挙げられる。なかでも、粒径制御及び反応収率の観点から、後述する逆カップリングが好ましい。
【0116】
逆カップリングの方法は、公知の方法を用いることができる。例えば、ジアゾニウム塩を含む溶液にカップラー成分を含む溶液を加える方法が挙げられる。カップリング時の温度は0~50℃が好ましい。ジアゾニウム塩の変質、分解の抑制と反応速度の観点から、特に10~30℃が好ましい。
【0117】
ジアゾニウム塩を含む溶液に予め緩衝液を加えてもよい。緩衝液の種類は、特に限定されず、緩衝能を持つものであれば何を用いても構わない。例えば、酢酸-酢酸ナトリウム水溶液を用いることが好ましい。緩衝液を加える場合は、ジアゾニウム塩を含む溶液のpHは3.0~6.5の範囲に調整することが好ましい。反応速度の向上及び分散性の向上の観点から、必要に応じてカップリング後のスラリーを加熱することが好ましい。
【0118】
着色剤における化合物(B)は、公知の方法によって製造できる。例えば、化合物(B)は、化合物(A)を製造するために使用した原料から誘導することもできる。この場合、上記一般式(2)におけるR1’~R5’は、それぞれ対応する位置の上記一般式(1)におけるR1~R5と互いに同じ基となる。
【0119】
上記観点から、一実施形態において、着色剤の製造方法は、上記一般式(7)で表されるカップラー成分を含む溶液と、芳香族アミンをジアゾ化した上記一般式(6A)で表されるジアゾニウム塩を含む溶液とのカップリング反応を、上記カップラー成分に対してモル比で過剰量のジアゾニウム塩を使用して行うことを含む。
上記のように、カップリング反応時に過剰量のジアゾニウム塩を使用した場合、ジアゾニウム塩の一部を加熱分解することで化合物(B)を生成できる。そのため、上記実施形態の製造方法によれば、化合物(A)と共に、化合物(B)を生成できる。
【0120】
ここで、過剰量のジアゾニウム塩とは、カップラー成分のモル量(x)に対するジアゾニウム塩のモル量(y)の比、(すなわち、モル比((y)/(x))が1よりも大きくなる場合を意味する。例えば、カップラー成分を含む溶液と、ジアゾニウム塩を含む溶液との混合液において、「溶液中のジアゾニウム塩のモル量(y)/溶液中のカップラー成分のモル量(x)」として算出されるモル比(y)/(x)が、1.01以上、1.1以下となるように調整することが好ましい。
一実施形態において上記モル比(y)/(x)は、1.015以上、1.06以下がより好ましい。上記モル比(y)/(x)を上記範囲に調整した場合、着色剤中の化合物(B)の含有量を好ましい範囲に調整することが容易となる。
【0121】
上記実施形態の製造方法において、カップリング反応は水溶性有機溶剤の存在下で実施されることが好ましい。したがって、カップラー成分を含む溶液、及びジアゾニウム塩を含む溶液は、それぞれ少なくとも水を含み、必要に応じてさらに水溶性有機溶剤を含んでよい。上記実施形態の製造方法において、少なくともカップラー成分を含む溶液は、水溶性有機溶剤を含むことが特に好ましい。
【0122】
上記実施形態の製造方法では、カップラー成分のモル量に対するジアゾニウム塩のモル量が過剰となる場合、カップリング反応のための溶液の混合時にカップラー成分の溶解性が低下する傾向がある。しかし、水溶性有機溶剤を使用することによってカップラー成分を容易に溶解でき、収率よく着色剤を製造することが容易となる傾向がある。また、理由は定かではないが、過剰量のジアゾニウム塩の加熱分解を水溶性有機溶剤の存在下で実施した場合、効率よく化合物(B)を生成できる傾向がある。
【0123】
過剰量のジアゾニウム塩の分解は、カップリング反応後の溶液を加熱する方法、又は光照射する方法によって行うことができる。いずれの方法であってもよいが、カップリング反応後の溶液を加熱する方法が好ましい。ジアゾニウム塩を分解できれば、加熱温度及び加熱時間は限定されず、適宜調整できる。
一実施形態において、処理に必要な時間の観点から、加熱温度は、45℃以上が好ましく、55℃以上がより好ましく、65℃以上がさらに好ましい。一方、エネルギーコストの観点から、加熱温度は、95℃以下が好ましく、85℃以下がより好ましく、75℃以下がさらに好ましい。一実施形態において、加熱時間は、30分~4時間程度が好ましく、30分~2時間がより好ましく、30分~1時間がさらに好ましい。
【0124】
また、加熱を行う際の混合溶液のpHは、特に限定されず、ジアゾニウム塩を分解できればよい。一実施形態において、混合溶液のpHは2以上が好ましく、3以上がより好ましく、4以上がさらに好ましい。また、混合溶液のpHは7以下が好ましく、6以下がより好ましく、5以下がさらに好ましい。ここで、上記混合溶液とは、カップリング成分を含む溶液と、ジアゾニウム塩を含む溶液を混合した溶液を意味し、反応溶液ともいう。
【0125】
混合溶液のpHを上記範囲に調整し加熱を行った場合、先ず、未反応のカップラー成分とジアゾニウム塩とが反応して化合物(A)が生成し、次いで、過剰量(反応混合物中に残存する)のジアゾニウム塩が分解して、化合物(B)が生成する。このように、上記条件下でカップリング反応を行った場合、化合物(B)が化合物(A)の表面に吸着することによって、その後の加熱撹拌、乾燥時の顔料粒子の結晶成長を抑制し、透明性が高く、分散安定性に優れた顔料が容易に得られる。
また上記加熱条件下で加熱を行った後、濾過を行う前に、精製効率を高める目的でpHを調整してもよい。pHの調整に使用する酸、及び塩基は、先に説明したカップラー成分を含む溶液、ジアゾニウム塩を含む溶液、及び緩衝液の調製時に使用する酸及び塩基と同様であってよく、これらを好適に使用できる。
【0126】
他の実施形態では、着色剤の製造方法として、化合物(B)の存在下で化合物(A)を製造する方法を採用してもよい。この場合、カップラー成分を含む溶液中に化合物(B)を添加することが好ましい。このような方法で着色剤を製造した場合、少量の化合物(B)であっても透明性の高い着色剤を容易に得られる。
【0127】
カップリング反応によって得られた着色剤のスラリーは、公知の吸引濾過器、フィルタープレス、限外濾過器などを用いて、水、溶剤、水溶性塩などを除去することが好ましい。このようにして着色剤のプレスケーキを容易に得られる。着色剤のプレスケーキは、必要に応じて、水、有機溶剤などの溶剤を用いて洗浄してもよい。着色剤のプレスケーキは、そのままの状態で着色組成物の製造に使用できる。公知の方法に従い、乾燥、及び粉砕することによって粉体の着色組成物を製造して使用できる。
【0128】
一実施形態において、着色剤を製造する際に、ナフトール系アゾ顔料の製造方法として周知の技術を適用できる。例えば、着色剤を製造する際に、必要に応じて、顔料の原料に加えて、当業者に周知の成分を使用できる。例えば、着色剤に共存させることを目的として、樹脂及び/又は界面活性剤といった周知の成分を使用できる。
【0129】
一実施形態において、カップラー成分を含む溶液、ジアゾニウム塩を含む溶液、又は酸析用の酸液に対して、上記周知の成分を加えてよい。カップラー成分を含む溶液に対して上記周知の成分を加える場合、カップラー成分を溶解する前又は溶解した後に加えてもよい。他の実施形態において、カップリング反応後のスラリー中に上記周知の成分を加えてもよい。また、カップリング反応後の顔料を濾別及び洗浄した顔料プレスケーキを再度スラリー状にした中に上記周知の成分を加えてもよい。
【0130】
着色剤の製造時に、樹脂及び/又は界面活性剤等の成分を使用する場合、これらは製造後も着色剤の表面に存在する。そのため、樹脂及び/界面活性剤は、親水性であるか、塩基性で溶解する性質を有することが好ましい。このような樹脂及び/界面活性剤の使用によって、着色剤の凝集緩和による分散性の向上、各種用途に応じて選択される分散樹脂及び溶剤に対する着色剤の親和性の付与が容易となる傾向がある。上記実施形態の着色剤は、化合物(B)の存在によって、それ自体が優れた分散性を有することから上記成分を必ずしも必要とするものではない。しかし、上記成分を使用した場合、カップラー成分の溶解促進による反応性の向上、着色剤中の顔料の結晶成長の抑制といった製造面での効果を得ることもできる。
【0131】
上記目的で使用できる樹脂は、例えば、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ビニルナフタレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-(無水)マレイン酸共重合体、マレイン酸-無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン-(無水)マレイン酸共重合体、αオレフィン-(無水)マレイン酸共重合体、αオレフィン-マレイン酸アルキルエステル共重合体、ポリエステル変性アクリル酸重合体などの酸基を有する樹脂、アクリル系共重合体、及びこれらの塩等であってよい。上記樹脂は、単独で使用しても、又は2種以上を組合せて使用できる。
【0132】
着色剤の製造時に上記樹脂を使用する場合、上記樹脂と塩を形成できる化合物をさらに使用できる。例えば、無機塩基、有機塩基等の塩基性化合物を使用できる。
無機塩基として、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、オルソ珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、セスキ珪酸ナトリウム等の珪酸のアルカリ金属塩、リン酸三ナトリウム等のリン酸のアルカリ金属塩、炭酸二ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸二カリウム等の炭酸のアルカリ金属塩、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸のアルカリ金属塩、およびアンモニア等が挙げられる。
【0133】
有機塩基として、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアルキルアミン、アミノエタノール、メチルアミノエタノール、ジメチルアミノエタノール、エチルアミノエタノール、ブチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、ジブチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン、メトキシポリ(オキシエチレン/オキシプロピレン)-2-プロピルアミン等のノニオン性基を有するアミン等が挙げられる。
塩基性化合物は、1種を単独で使用しても、又は2種以上を組合せて使用できる。
【0134】
さらに他の実施形態において、着色剤の製造時に界面活性剤を使用できる。界面活性剤は、例えば、アニオン性、ノニオン性、または両性の界面活性剤であってよい。
【0135】
アニオン性の界面活性剤として、例えば、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、ジアルキルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルジアリールエーテルジスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル塩、グリセロールボレイト脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセロール脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0136】
両性の界面活性剤として、例えば、ベタイン、スルホベタイン、アルキルベタイン、アルキルアミンオキサイド等が挙げられる。
【0137】
ノニオン性の界面活性剤として、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等が挙げられる。
【0138】
一実施形態において、上記界面活性剤のなかでも、両性の界面活性剤と、アニオン性の界面活性剤との組合せが好ましい。特に限定するものではないが、カップラー成分を含む溶液に界面活性剤を加える場合は、アニオン性又は両性の界面活性剤が好ましい。カップリング反応後に得られるスラリーに添加する場合は、ノニオン性の界面活性剤であってもよい。
界面活性剤は、1種を単独で使用しても、又は2種以上を組合せて使用できる。
【0139】
<3>着色組成物
本発明の一実施形態は、上記実施形態の着色剤を含む着色組成物に関する。着色組成物において、着色剤以外の成分は、用途に応じて適宜選択できる。一実施形態において、塗膜を形成する用途に向けて、着色組成物は、着色剤に加えて、分散媒体を含んでよく、上記分散媒体は、少なくとも、樹脂、及び重合性化合物からなる群から選択される1種以上を含んでよい。上記分散媒体は、さらに溶剤を含んでもよい。
【0140】
着色組成物において、上記分散媒体は、着色組成物の用途に応じて選択される。一実施形態において、着色組成物は、着色剤と、樹脂とを含み、さらに必要に応じて溶剤を含んでよい。他の実施形態において、着色組成物は、着色剤と、重合性化合物と含み、さらに必要に応じて、樹脂及び溶剤の少なくとも一方を含んでよい。上記実施形態の着色組成物は、それぞれ、さらに必要に応じて各種添加剤を含んでもよい。着色組成物として、例えば、顔料分散体、トナー、塗料、及び印刷インキなどが挙げられる。以下、着色組成物について、より具体的な実施形態に沿って説明する。
【0141】
<顔料分散体>
一実施形態において、着色組成物は、上記実施形態の着色剤を主成分とし、上記着色剤を分散させる分散媒体をさらに含む、着色剤分散体(以下、顔料分散体という)の形態であってよい。上記分散媒体は、少なくとも樹脂を含み、用途に応じて、さらに溶剤を含んでもよい。顔料分散体は、例えば、プラスチックを着色するマスターバッチとして好適に使用できる。マスターバッチは、少なくとも着色剤と樹脂とを含み、プラスチック成形体を着色するために好適に使用できる。
また、顔料分散体は、例えば、塗料及び印刷インキ等の中間体として好適に使用できる。上記中間体として使用する顔料分散体は、着色剤と、樹脂と、溶剤とを含んでよい。顔料分散体に含まれる樹脂は、樹脂型顔料分散剤を含んでよい。
【0142】
顔料分散体を各種用途で使用する場合、粘度上昇が起こり難く、顔料の分散安定性に優れることが好ましい。本実施形態の顔料分散体は、従来のナフトール系アゾ顔料を含む顔料分散体との対比において、分散性に優れ、初期粘度が低い点で優れている。また、本実施形態の顔料分散体は、アルカリに対する色相安定性、及び温度変動保管下における粘度安定性の点でも優れている。
【0143】
上記顔料分散体が溶剤を含む場合、溶剤は、水、水溶性溶剤、及び非水溶性溶剤のいずれであってもよい。溶剤が少なくとも水を含む場合、水性の顔料分散体を構成できる。水溶性溶剤、及び非水溶性溶剤は、特に限定されない。例えば、後述する塗料を構成する水溶性溶剤、非水溶性溶剤と同じであってよい。
【0144】
水性の顔料分散体を調製するために使用する分散機は、特に限定されない。分散機として、例えば、横型サンドミル、縦型サンドミル、アニュラー型ビーズミル、アトライター、マイクロフルイタイザー、ハイスピードミキサー、ホモミキサー、ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ボールミル、ペイントシェーカー、ロールミル、石臼式ミル、超音波分散機、高圧分散機、対向衝突型分散機、斜向衝突型分散機等が挙げられる。その他、当技術分野で各種分散体を調製するために通常使用される、分散機及び混合機を適宜選択して使用できる。
【0145】
また、分散を行う前に、ニーダー、3本ロールミル等の練肉混合機を使用した前分散、又は2本ロールミル等による固形分散等の処理を行ってもよい。また、各種分散機で分散した後に、30~80℃の加温状態にて数時間から1週間程度保存する後処理、及び超音波分散機又は衝突型ビーズレス分散機を用いた後処理の工程を行ってもよく、これらの工程は、顔料分散体に分散安定性を付与するために効果的である。
【0146】
<トナー>
一実施形態において、着色組成物は、トナーの用途で好適に使用できる。トナー用着色組成物は、上記実施形態の着色剤と、分散媒体(樹脂)とを含む。トナー用着色組成物は、電荷制御剤等のトナー成分として当業者に周知の成分をさらに含んでよい。
【0147】
トナーは、乾式トナー、又は湿式トナーのいずれでもよい。その他の当技術分野で公知の方法に従って、トナー用着色組成物を使用してトナーを製造することもできる。
【0148】
トナー用着色組成物を構成する樹脂は、特に限定されない。例えば、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、スチレン系共重合体、ポリエステル樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は結着樹脂とも呼ばれる。
【0149】
一実施形態において、トナー用の結着樹脂は、ポリエステル樹脂、又はスチレン系共重合体が好ましく、ポリエステル樹脂がより好ましい。本実施形態の着色剤は、上記結着樹脂のなかでも、ポリエステル樹脂に対する適性が特に優れている。そのため、一実施形態において、トナー用着色組成物は、着色剤と、ポリエステル樹脂を含む結着樹脂とを含有することが好ましい。このようなトナー用着色組成物において、上記実施形態の着色剤は、ポリエステル樹脂を含む結着樹脂中に、均一かつ微細に分散される。そのため、上記実施形態の着色組成物によって、高品質のトナーを提供できる。
【0150】
<塗料>
一実施形態において、着色組成物は、塗料の用途で好適に使用できる。塗料用着色組成物は、上記実施形態の着色剤、樹脂、及び溶剤を含有する。塗料用着色組成物は、着色剤、樹脂、及び溶剤を含有する顔料分散体を使用して調製されることが好ましい。例えば、塗料用着色組成物は、顔料分散体と、塗料用の樹脂と、溶剤とを混合して調製できる。ここで、顔料分散体中の樹脂と、塗料を調製するために使用する樹脂とは、同じであっても、異なってもよい。
【0151】
塗料用の樹脂として、熱硬化性樹脂、及び/又は熱可塑性樹脂を使用できる。熱硬化性樹脂は、ガラス転移温度が10℃以上の樹脂が好ましい。
熱硬化性樹脂として、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。また、熱硬化性樹脂は、硬化剤と反応可能な官能基を有することが好ましい。上記官能基として、例えば、カルボキシル基、水酸基等が挙げられる。硬化剤として、例えば、イソシアネート硬化剤、エポキシ硬化剤、アジリジン硬化剤、アミン硬化剤等が挙げられる。
熱可塑性樹脂は、ガラス転移温度が30℃以上の樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂として、例えば、ニトロセルロース樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを併用してもよい。
【0152】
上記溶剤は、水、非水溶性溶剤、水溶性溶剤のいずれであってもよい。溶剤が少なくとも水を含む場合、水性塗料を構成できる。
非水溶性溶剤の具体例として、トルエン、キシレン、ブチルアセテート、メチルアセテート、メチルイソブチルケトン、及び脂肪族炭化水素等が挙げられる。
水溶性溶剤は、例えば、1価アルコール、2価アルコール等であってよい。水溶性溶剤として、例えば、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール等の1価アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール等の2価アルコール、及びグリセリン等の3価以上の多価アルコールが挙げられる。水溶性溶剤は、多価アルコールから誘導された水希釈性モノエーテルであってもよく、例えば、メトキシプロパノール又はメトキシブタノールが挙げられる。その他、ブチルグリコール又はブチルジグリコールなどの水希釈性グリコールエーテルも挙げられる。
一実施形態において、水性塗料を構成する観点から、溶剤は、水と水溶性溶剤とを含むことが好ましい。
【0153】
一実施形態において、塗料は、さらに光輝材を含有してもよい。光輝材は、平均厚み0.5~10μm、及び平均粒子径5~50μmの粒子であってよい。光輝材として、例えば、金属フレーク、マイカ、被覆ガラスフレークが挙げられる。金属フレークは、例えば、アルミフレーク、金粉等が挙げられる。マイカとして、例えば、通常のマイカ、被覆マイカ等が挙げられる。被覆ガラスフレークとして、例えば、酸化チタン等の金属酸化物で被覆されたガラスフレーク等が挙げられる。光輝材の含有量は、塗料の全質量に対して(100質量%中)、0.1~10質量%が好ましい。
【0154】
塗料は、その他の成分をさらに含んでもよい。例えば、必要に応じて、当技術分野において通常使用される着色顔料、及び種々の添加剤を配合してもよい。塗料の製造方法、及びその塗装方法と乾燥方法は特に限定されず、当技術分野で周知の方法を適用できる。塗料の用途として、例えば、金属用塗料、プラスチック用塗料等が挙げられる。
【0155】
<印刷インキ>
一実施形態において、着色組成物は、印刷インキの用途で好適に使用できる。印刷インキ用着色組成物は、上記実施形態の着色剤と分散媒体とを含み、印刷インキの種類に応じて、分散媒体が適宜選択される。印刷インキは、溶剤の有無、及び分散媒体の種類によって、溶剤系印刷インキ、水性印刷インキ、及び活性エネルギー線硬化型印刷インキに大別できる。また、印刷インキは、印刷形式に応じて、例えば、オフセット印刷用インキ、フレキソ印刷用インキ、グラビア印刷用インキ、カラーフィルタ用インキ、インクジェット印刷用インキ等に細分化される。本実施形態の着色剤は、分散性に優れ、かつ着色力、鮮明性及び透明性に優れることから、様々な印刷インキの用途においても好適に使用できる。以下、代表的な印刷インキについて例示する。
【0156】
一実施形態において、印刷インキは、上記実施形態の着色剤、樹脂、及び溶剤を含む。これらの印刷インキは、後述する活性エネルギー線硬化型印刷インキと区別される。
上記のような印刷インキとして、例えば、オフセット印刷用インキ、フレキソ印刷用インキ、グラビア印刷用インキ、カラーフィルタ用インキ等が挙げられる。以下、これら各種印刷用インキを、フレキソインキ、グラビアインキ、カラーフィルタインキ、及びインクジェットインキのように略記する。なお、印刷インキを構成する溶剤が少なくとも水を含む場合は、水性印刷インキという。
【0157】
上記印刷インキ用着色組成物は、着色剤、樹脂、及び溶剤を含有する顔料分散体を使用して調製されることが好ましい。例えば、印刷インキ用着色組成物は、顔料分散体と、印刷インキ用の樹脂と、溶剤とを混合することによって調製できる。ここで、顔料分散体中の樹脂と、印刷インキを調製するために使用する樹脂とは、同じであっても、異なってもよい。
【0158】
上記実施形態の印刷インキにおいて、樹脂は、例えば、ロジン樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ポリウレタン、ニトロセルロース、アクリル樹脂、スチレン-アクリル樹脂、石油樹脂等であってよい。
【0159】
上記実施形態の印刷インキにおいて、溶剤は、水、非水溶性溶剤、水溶性溶剤のいずれであってもよい。
非水溶性溶剤として、例えば、トルエン、キシレン、ブチルアセテート、メチルアセテート、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ブチルアルコール、脂肪族炭化水素等が挙げられる。
【0160】
水溶性溶剤として、例えば、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンが挙げられる。また、多価アルコールから誘導された水希釈性モノエーテルも挙げられる。例えば、メトキシプロパノール又はメトキシブタノールが挙げられる。また、ブチルグリコール又はブチルジグリコールなどの水希釈性グリコールエーテルも挙げられる。
一実施形態において、水性印刷インキを構成する観点から、溶剤は、少なくとも水を含む。溶剤は、さらに非水溶性溶剤、又は水溶性溶剤のいずれかを含んでよい。一実施形態において、溶剤は、水と水溶性溶剤とを含むことが好ましい。
【0161】
印刷インキは、さらに光輝材を含有してもよい。光輝材の種類、及び添加量は、先に塗料の説明として例示したとおりであってよい。
【0162】
印刷インキは、その他の成分を含有できる。例えば、必要に応じて、当技術分野において通常使用される着色顔料、及び種々の添加剤を配合してもよい。印刷インキの製造方法、及びその塗布方法と乾燥方法は特に限定されず、当技術分野で周知の方法を使用できる。
【0163】
<インクジェットインク>
一実施形態において、着色組成物は、インクジェット(IJ)印刷用インクの用途で好適に使用できる。以下、インクジェット(IJ)印刷用インクをIJインクと略記する。一実施形態において、IJインク用着色組成物は、着色剤と、樹脂とを含有する。他の実施形態において、IJインク用着色組成物は、着色剤と樹脂と含み、さらに溶剤を含有することが好ましい。IJインク用着色組成物は、着色剤、樹脂、及び必要に応じて溶剤を含有する顔料分散体を使用して調製されることが好ましい。他の実施形態において、IJインク用着色組成物は、先に記載した実施形態のIJインク用着色組成物において、樹脂を重合性化合物に変更した組成、又は樹脂と重合性化合物とを併用した組成で構成されてもよい。
例えば、IJインク用着色組成物は、顔料分散体と、IJインク用の樹脂とを混合することによって調製できる。ここで、顔料分散体中の樹脂と、IJインクを調製するために使用する樹脂とは、同じであっても、異なってもよい。
【0164】
IJインクは、溶剤の有無及びその種類、並びに分散媒体となる樹脂又は重合性化合物の種類によって、(溶剤系)IJインク、水性IJインク、及び活性エネルギー線硬化型IJインクに大別できる。さらに活性エネルギー線硬化IJインクは、重合性化合物の硬化手段に応じて、光硬化IJインク及び電子線硬化IJインクに大別できる。特に限定するものではないが、上記実施形態の着色組成物は、水性IJインクとして好適に使用できる。以下、IJインクの一例として、水性IJインクについて説明する。
【0165】
水性IJインクの全質量を100質量%として、着色剤の含有量は、0.5~30質量%が好ましく、1~15質量%がより好ましい。
【0166】
水性IJインクで使用する樹脂は、被印刷物(基材)に対するインキの定着性を得るために重要である。
樹脂として、例えば、アクリル系樹脂、オレフィン-マレイン酸系樹脂、スチレン-アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂等が挙げられる。樹脂の形態は、例えば、水溶性樹脂、エマルション粒子等であってよい。なかでも、エマルション粒子の形態が好ましい。エマルション粒子は、例えば、単一組成の粒子、又はコアシェル型粒子等であってよく、任意に選択して使用できる。エマルション粒子を使用した場合、水性IJインクの低粘度化が容易であり、耐水性に優れた記録物が容易に得られる。
【0167】
水性IJインクにおける不揮発分100質量%において、樹脂の含有量は、2~30質量%が好ましく、3~20質量%がより好ましい。IJインクが上記範囲内で樹脂を含む場合、吐出安定性が向上し、定着性も向上する傾向がある。
【0168】
水性IJインクを構成する観点から、溶剤は、少なくとも水を含む。溶剤は、さらに非水溶性溶剤、又は水溶性溶剤のいずれかを含んでよい。一実施形態において、溶剤は、水と水溶性溶剤とを含むことが好ましい。
水溶性溶剤として、例えば、グリコールエーテル類、ジオール類等が挙げられる。これらの溶剤は、基材への浸透が非常に速く、低吸液性又は非吸液性の基材に対しても速く浸透する。
【0169】
低吸液性又は非吸液性の基材として、例えば、コート紙、アート紙、塩化ビニルシート、フィルム、布帛が挙げられる。上記のように基材への浸透性に優れた溶剤を使用した場合、印刷時の乾燥が速く、正確な印字を容易に実現できる。また水溶性溶剤のなかでも、沸点が高い溶剤を使用した場合、溶剤は湿潤剤としても作用する。
【0170】
水溶性溶剤は、水性IJインクのプリンターヘッドにおけるノズル部分での乾燥、固化を防止し、インキの吐出安定性を得るために重要である。
このよう観点から好適に使用できる水溶性溶剤として、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ケトンアルコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、1,2-ヘキサンジオール、N-メチル-2-ピロリドン、置換ピロリドン、2,4,6-ヘキサントリオール、テトラフルフリルアルコール、4-メトキシ-4メチルペンタノン等が挙げられる。
【0171】
一実施形態において、水と水溶性溶剤との合計含有量は、IJインク100質量%中、15~50質量%が好ましい。ここで水溶性溶剤の含有率は、水と水溶性溶剤との合計質量に対して、好ましくは10~90質量%、より好ましくは20~80質量%、さらに好ましくは30~70質量%であってよい。
【0172】
IJインクは、さらに添加剤を含有できる。添加剤として、例えば、乾燥促進剤、浸透剤、防腐剤、キレート剤、pH調整剤、消泡剤、湿潤剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0173】
一実施形態において、上記IJインクは、特にマゼンタ色のインクとして好適に用いることができる。上記IJインクを、マゼンタ以外の他色のインクと組合せて、インクセットを構成してもよい。例えば、上記IJインクと組合せて使用できる他色の例として、シアン色、イエロー色、ブラック色、ホワイト色、レッド色、グリーン色、ブルー色、オレンジ色、ピンク色、ゴールド色、シルバー色、ブロンズ色が挙げられる。
【0174】
インクセットは、例えば、上記実施形態のIJインクを用いたマゼンタ色に、シアン色、イエロー色、ブラック色を加えた4色インクセットであってよい。他の実施形態において、さらにオレンジ色、レッド色、グリーン色などの特色を加えた5色以上のインクセットとして好適に使用できる。各インクの顔料濃度、粘度、動的粘弾性、表面張力、塗工順番、揮発分の蒸発速度などは設計事項であり、所望とする特性に応じて適宜調整できる。
【0175】
上記実施形態のIJインクは、従来公知の種々の基材に対して塗工できる。基材は、例えば、普通紙、布帛、ニットなどの高吸水性基材、アート紙、コート紙、塩化ビニル、木材、コンクリート、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、天然皮革、人工皮革などの低吸水性基材、金属(アルミ、ステンレス等)などの非吸水性基材であってよい。
【0176】
<活性エネルギー線硬化型フレキソインキ>
一実施形態において、着色組成物は、活性エネルギー線硬化型のフレキソ印刷用インキとして構成できる。以下、活性エネルギー線硬化型のフレキソ印刷用インキを活性エネルギー線硬化型フレキソインキと略記する。このような印刷インキの用途に向けて、活性エネルギー線硬化型フレキソインキ用着色組成物は、上記実施形態の着色剤と、分散媒体として重合性化合物とを含む。光重合開始剤を含んでもよい。活性エネルギー線硬化型フレキソインキ中の着色剤の含有率は、特に限定されない。一実施形態において、上記インキの全質量に対して、上記着色剤の含有率は、5~30質量%が好ましく、10~25質量%がより好ましい。
【0177】
上記実施形態のインキにおいて、重合性化合物は、分子内にエチレン性不飽和結合を1つ以上有する化合物が好ましい。重合性化合物は、モノマー及び/又はオリゴマーを含有する(以下、「モノマー及び/又はオリゴマー」を単に「モノマー」と略記する)。
【0178】
上記モノマーは、分子内に(メタ)アクリロイル基、アリル基、ビニル基、ビニルエーテル基などの重合性基を有することが好ましい。モノマーは、硬化性の点で、(メタ)アクリロイル基及びビニル基の何れかを有するモノマーを含むことが好ましく、分子内に3つ以上6つ以下の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーを含むことがより好ましく、分子内に6つの(メタ)アクリロイル基を有するモノマーを含むことがさらにより好ましい。
【0179】
(メタ)アクリロイル基を有するモノマーとして、特に限定されないが、例えば、以下が挙げられる。
分子内に(メタ)アクリロイル基を3つ有する3官能(メタ)アクリレートモノマー:トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性(3)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性(6)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性(3)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等
分子内にアクリロイル基を4つ有する4官能(メタ)アクリレートモノマー:ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、EO変性(4)ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等
分子内に(メタ)アクリロイル基を5つ有する5官能(メタ)アクリレートモノマー:ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等
分子内に(メタ)アクリロイル基を6つ有する6官能(メタ)アクリレートモノマー:ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等
【0180】
ビニル基を有するモノマーとして、例えば、N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニルカプロラクタム等が挙げられる。
【0181】
上記オリゴマーとして、例えば、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、芳香族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー等のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、(メタ)アクリルエステルオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられる。オリゴマーは、エチレン性不飽和結合を2~16個程度を含むことが好ましい。なかでも、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましく、(メタ)アクリロイル基が6~12個であるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーがより好ましい。上記6~12官能のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、市販品としても入手できる。
【0182】
オリゴマーの重量平均分子量(Mw)は、400~10,000が好ましく、500~5,000がより好ましく、800~4,000がより好ましく、1,000~2,000がより好ましい。ここで、「重量平均分子量(Mw)」は、一般的なゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPC)によりポリスチレン換算分子量として求めることができる。
上記実施形態のインキにおいて、重合性化合物は、1種を単独で使用しても、又は2種類以上を組合せて使用できる。重合性化合物の含有率は、活性エネルギー線硬化型フレキソインキの全質量に対して、25~90質量%が好ましく、35~80質量%がより好ましい。
【0183】
一実施形態において、活性エネルギー線硬化型フレキソインキは、重合性化合物として分子内にエチレン性不飽和結合を1つ以上有する化合物を含み、活性エネルギー線として光を照射する場合、光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤としては、ラジカル重合性の光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤は、光の作用、又は増感色素を併用する場合には増感色素との光電子移動またはエネルギー移動によって、化学変化を生じ、ラジカルを生成する。
【0184】
上記光ラジカル重合開始剤は、特に制限はなく、公知のものを用いることができる。例えば、ベンゾフェノン系化合物、ジアルコキシアセトフェノン系化合物、α-ヒドロキシアルキルフェノン系化合物、α-アミノアルキルフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、チオキサントン系化合物等が挙げられる。
【0185】
上記重合開始剤は、1種を単独で使用しても、又は2種以上を組合せて使用できる。重合開始剤の含有率は、活性エネルギー線硬化型フレキソインキの全質量に対して、0.5~20質量%が好ましく、5~15質量%がより好ましい。
【0186】
一実施形態において、活性エネルギー線硬化型フレキソインキは、重合開始助剤を含有することもできる。重合開始助剤を含有することで、硬化性をさらに高めることができる。重合開始助剤としては、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、脂肪族アミン、2-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、ジブチルエタノールアミン等が挙げられる。
【0187】
上記重合開始助剤の含有率は、活性エネルギー線硬化型フレキソインキの全質量に対して、0.1~5質量%が好ましく、より好ましくは0.5~3質量%であってよい。
【0188】
一実施形態において、活性エネルギー線硬化型フレキソインキは、耐摩擦性、ブロッキング防止性、スベリ性、及びスリキズ防止性をより高めるために、ワックスを含むことが好ましい。ワックスとしては、特に制限はなく、公知のものを用いることができる。例えば、天然ワックス及び合成ワックスがある。天然ワックスとして、例えば、カルナバワックス、木ろう、ラノリン、モンタンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。合成ワックスとして、例えば、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、ポリアミドワックスシリコーン化合物等が挙げられる。
【0189】
上記ワックスの含有率は、耐摩擦性、光沢、パイリングのバランスの観点から、活性エネルギー線硬化型フレキソインキの全質量に対して、0.1~5質量%が好ましく、0.5~4質量%がより好ましい。
【0190】
一実施形態において、活性エネルギー線硬化型フレキソインキは、分散媒体として、重合性化合物に加えて、樹脂をさらに含んでもよい。樹脂を含むことで、硬化時に生じる塗膜の硬化収縮を緩和し、基材のカールを抑制し、さらに、基材への密着性を向上させることが容易となる。
【0191】
樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース誘導体(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロース)、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、アルキッド樹脂、ロジン変性アルキッド樹脂、ロジン変性アルキッド樹脂、石油樹脂、尿素樹脂、ブタジエン-アクリルニトリル共重合体のような合成ゴム等が挙げられる。なかでも、ジアリルフタレート樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。より好ましくは、ジアリルフタレート樹脂である。
【0192】
樹脂の重量平均分子量は、1,000~100,000が好ましい。より好ましくは、2,000~70,000であってよい。
【0193】
上記樹脂は、1種を単独で使用しても、又は2種類以上を組合せて使用できる。また、硬化性の観点から、樹脂の含有率は、活性エネルギー線硬化型フレキソインキの全質量に対して、1~15質量%が好ましい。より好ましくは、1~5質量%であってよい。
【0194】
一実施形態において、活性エネルギー線硬化型フレキソインキは、重合禁止剤を含んでもよい。重合禁止剤として、例えば、4-メトキシフェノール、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、t-ブチルハイドロキノン、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、フェノチアジン、N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンのアルミニウム塩等が挙げられる。
【0195】
重合禁止剤の含有率は、硬化性を維持する一方で、活性エネルギー線硬化型フレキソインキの保存安定性を高める観点から、活性エネルギー線硬化型フレキソインキの全質量に対して、0.01~2質量%が好ましい。
【0196】
活性エネルギー線硬化型フレキソインキは、本発明の効果が低下しない範囲で、必要に応じて、上記成分に加えて各種添加剤などのその他成分を含んでもよい。体質顔料、レベリング剤、界面活性剤、消泡剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、及び酸化防止剤などの各種添加剤を、必要に応じて、インキに添加できる。また、上記実施形態の着色剤は、化合物(A)に加えて化合物(B)が存在することによって、それ自体が優れた分散性を有することから、分散剤を必ずしも必要とするものではない。しかし、分散性をより高める観点から、活性エネルギー線硬化型フレキソインキは、必要に応じて、周知の分散剤を含んでもよい。
【0197】
なお、活性エネルギー線硬化型フレキソインキは、水を実質的に含有しないことが好ましい。実質的に含有しないとは、インキ組成物中の含有量が1質量%以下である。
【0198】
本発明の一実施形態は、上記実施形態の塗料又は印刷インキから構成される塗膜を有する印刷物等の物品に関する。印刷物の形成は、当技術分野で周知の方法にしたがって実施できる。例えば、活性エネルギー線硬化型フレキソインキの場合、フレキソ印刷方式によって被記録媒体上にインキを印刷し、次いで、活性エネルギー線を照射してインキを硬化させることにより、印刷物を形成できる。
【0199】
上記被記録媒体としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができる。具体的には、アート紙、コート紙、キャスト紙などの塗工紙や上質紙、中質紙、新聞用紙などの非塗工紙、ユポ紙などの合成紙、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)、OPP(2軸延伸ポリプロピレン)のようなプラスチックフィルムなどが挙げられる。
【0200】
活性エネルギー線硬化型フレキソインキを硬化させる方法には、特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。例えば、α線、γ線、電子線、X線、紫外線、可視光又は赤外光等を照射することで、インキを硬化させることができる。なかでも、紫外線、電子線が好ましく、より好ましくは紫外線である。活性エネルギー線のピーク波長は、200~600nmが好ましく、より好ましくは350~420nmである。
【0201】
活性エネルギー線源としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができる。具体的には、水銀ランプ、キセノンランプ、メタルハイドライドランプ、紫外線発光ダイオード(UV-LED)、紫外線レーザーダイオード(UV-LD)等のLED(発光ダイオード)やガス・固体レーザー等が挙げられる。なかでも、紫外線発光ダイオード(UV-LED)が、小型、長寿命、高効率、低コストである点で好ましい。
【0202】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は先に記載した実施形態に限定されるものではなく、様々な実施形態を含む。
【実施例0203】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。なお、特に断らない限り、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を表す。
【0204】
以下の実施例で記載する略号、及び製品名は、以下を意味する。
<カップラー>
ナフトールAS:3-ヒドロキシ-2-ナフトアニリド
ナフトールAS-BI:5-(3-ヒドロキシ-2-ナフトイルアミノ)ベンゾイミダゾロン
ナフトールAS-BS:3-ヒドロキシ-3’-ニトロ-2-ナフトアニリド
ナフトールAS-CA:N-(5-クロロ-2-メトキシフェニル)-3-ヒドロキシ-2-ナフトアミド
ナフトールAS-D:3-ヒドロキシ-2’-メチル-2-ナフトアニリド
ナフトールAS-KB:5’-クロロ-3-ヒドロキシ-2’-メチル-2-ナフトアニリド
ナフトールAS-LC:4’-クロロ-3-ヒドロキシ-2’,5’-ジメトキシ-2-ナフトアニリド
BONアミド:3-ヒドロキシ-2-ナフトアミド
BON酸:3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸
ナフトールAS-RL:3-ヒドロキシ-4’-メトキシ-2-ナフトアニリド
ナフトールAS-OL:3-ヒドロキシ-2’-メトキシ-2-ナフトアニリド
ナフトールAS-E:4’-クロロ-3-ヒドロキシ-2-ナフトアニリド
【0205】
<ベース>
M-20:3-アミノ-4-メトキシベンズアミド
M-40:3-アミノ-4-メトキシベンズアニリド
M-60:3-アミノ-4-メチルベンズアミド
R185ベース:4-アミノ-5-メトキシ-N,2-ジメチルベンゼンスルホンアミド
V32ベース:4-アミノ-2,5-ジメトキシ-N-メチルベンゼンスルホンアミド
アゾイックDC31:4-ベンジルスルホニル-2-アミノメトキシベンゼン
ファーストスカーレットG:2-メチル-5-ニトロアニリン
ファーストスカーレットRC:2-メトキシ-5-ニトロアニリン
ファーストバイオレットB:4-ベンゾイルアミノ-2-メトキシ-5-メチルアニリン
M-70:4-アミノベンズアミド
【0206】
<化合物(A)>
C.I.Pigment Red 269:N-(5-クロロ-2-メトキシフェニル)-3-ヒドロキシ-4-[2-メトキシ-5-(フェニルカルバモイル)フェニルアゾ]-2-ナフトアミド
C.I.Pigment Red 150:3-ヒドロキシ-4-((2-メトキシ-5-((フェニルアミノ)カルボニル)フェニル)アゾ)-2-ナフタレンカルボキシアミド
C.I.Pigment Red 31:4-((5-(アニリノ)カルボニル-2-メトキシフェニル)アゾ)-3-ヒドロキシ-N-(3-ニトロフェニル)ナフタレン-2-カルボキシアミド
C.I.Pigment Red 17:3-ヒドロキシ-4-((2-メチル-5-ニトロフェニル)アゾ)-N-(2-メチルフェニル)-2-ナフタレンカルボキシアミド
C.I.Pigment Red 22:3-ヒドロキシ-4-((2-メチル-5-ニトロフェニル)アゾ)-N-フェニル-2-ナフタレンカルボキシアミド
C.I.Pigment Red 23:1-(2-メトキシ-5-ニトロフェニルアゾ)-2-ヒドロキシ-3-(3-ニトロフェニルカルバモイル)ナフタレン
C.I.Pigment Red 32:4-((5-(アニリノ)カルボニル-2-メトキシフェニル)アゾ)-3-ヒドロキシ-N-フェニルナフタレン-2-カルボキシアミド
C.I.Pigment Red 266:4-((4-(アミノカルボニル)フェニル)アゾ)-3-ヒドロキシ-N-(2-メトキシフェニル)ナフタレン-2-カルボキシアミド
化合物(A)-1:4-((5-カルバモイル-2-メチルフェニル)アゾ)-3-ヒドロキシ-N-(4-メトキシフェニル)ナフタレン-2-カルボキシアミド
化合物(A)-2:4-((4-(アミノカルボニル)フェニル)アゾ)-3-ヒドロキシ-N-(4-メトキシフェニル)ナフタレン-2-カルボキシアミド
化合物(A)-3:4-((4-カルボキシフェニル)アゾ)-3-ヒドロキシ-N-(4-メトキシフェニル)ナフタレン-2-カルボキシアミド
化合物(A)-4:4-((5-カルバモイル-2-メチルフェニル)アゾ)-3-ヒドロキシ-N-(2-メトキシフェニル)ナフタレン-2-カルボキシアミド
化合物(A)-5:4-((4-カルボキシフェニル)アゾ)-3-ヒドロキシ-N-(2-メトキシフェニル)ナフタレン-2-カルボキシアミド
化合物(A)-6:4-((4-カルボキシフェニル)アゾ)-3-ヒドロキシ-N-(4-クロロフェニル)ナフタレン-2-カルボキシアミド
【0207】
C.I.Pigment Red 114:1-(2-メチル-5-ニトロフェニルアゾ)-2-ヒドロキシ-3-(3-ニトロフェニルカルバモイル)ナフタレン
C.I.Pigment Red 146:N-(4-クロロ-2,5-ジメトキシフェニル)-3-ヒドロキシ-4-((2-メトキシ-5-((フェニルアミノ)カルボニル)フェニル)アゾ)ナフタレン-2-カルボキシアミド
C.I.Pigment Red 147:3-ヒドロキシ-4-((2-メトキシ-5-((フェニルアミノ)カルボニル)フェニル)アゾ)-N-(5-クロロ-2-メチルフェニル)-2-ナフタレンカルボキシアミド
C.I.Pigment Red 176:N-(2,3-ジヒドロ-2-オキソ-1H-ベンズイミダゾール-5-イル)-3-ヒドロキシ-4-((2-メトキシ-5-((フェニルアミノ)カルボニル)フェニル)アゾ)ナフタレン-2-カルボキシアミド
C.I.Pigment Red 185:N-(2,3-ジヒドロ-2-オキソ-1H-ベンズイミダゾール-5-イル)-2-ヒドロキシ-4-((2-メトキシ-5-メチル-4-((メチルアミノ)スルフォニル)フェニル)アゾ)ナフタレン-2-カルボキシアミド
C.I.Pigment Red 245:4-((5-カルバモイル-2-メトキシフェニル)アゾ)-3-ヒドロキシ-N-フェニルナフタレン-2-カルボキシアミド
C.I.Pigment Red 258:4-((5-ベンジルスルホニル-2-メトキシフェニル)アゾ)-3-ヒドロキシ-N-フェニルナフタレン-2-カルボキシアミド
C.I.Pigment Red 268:4-((5-カルバモイル-2-メチルフェニル)アゾ)-3-ヒドロキシ-N-フェニルナフタレン-2-カルボキシアミド
C.I.Pigment Violet 32:N-(2,3-ジヒドロ-2-オキソ-1H-ベンズイミダゾール-5-イル)-2-ヒドロキシ-4-((2,5-ジメトキシ-4-((メチルアミノ)スルフォニル)フェニル)アゾ)ナフタレン-2-カルボキシアミド
C.I.Pigment Violet 50:4-((4-(アニリノ)カルボニル-2-メトキシフェニル-3-メチル)アゾ)-3-ヒドロキシ-N-フェニルナフタレン-2-カルボキシアミド
【0208】
<化合物(B)>
4MPB:4-メトキシ-N-フェニルベンズアミド(和光純薬社製)
4MB:4-メチルベンズアミド(和光純薬社製)
4MBA:4-メトキシベンズアミド(和光純薬社製)
p-ニトロトルエン(和光純薬社製)
4-ニトロアニソール(TCI社製)
DA-FVB:N-(5-メトキシ-2-メチルフェニル)ベンズアミド
DA-DC31:1-(ベンジルスルホニル)-4-メトキシベンゼン
DA-R185:5-メトキシ-N,2-ジメチルベンゼンスルホンアミド
DA-V32:2,5-ジメトキシ-N-メチルベンゼンスルホンアミド
ベンズアミド(東京化成工業社製)
安息香酸(東京化成工業社製)
【0209】
<1>着色剤の製造
(実施例1)着色剤1の製造
ベース成分として3-アミノ-4-メトキシベンズアニリド237.4部を水3518部に添加、撹拌して懸濁液を調製し、さらに氷1465部を加えて温度を5℃以下に調整した。その中に35%塩酸を389.0部添加し、30分撹拌した。その後、亜硝酸ナトリウム69.9部を水104.8部に加えて調製した水溶液を添加して1時間撹拌することによりジアゾ化を行った。
上記ジアゾ化によって得られた反応混合物にスルファミン酸を加え、余剰の亜硝酸を消失させた。スルファミン酸は、ヨウ化カリウム紙で遊離の亜硝酸が確認されなくなるまで追加した。これに酢酸ナトリウム203.0部、80%酢酸22.4部を加えて、ジアゾニウム塩を含む溶液とした。
【0210】
一方、メタノール1639部、40%水酸化ナトリウム水溶液199.0部、及び水62.0部の混合物を15~25℃に調整した。その中にカップラー成分としてナフトールAS-CA327.8部を加えて溶かした。さらに化合物(B)として4-メトキシ-N-フェニルベンズアミド(和光純薬社製)0.9部を加え、カップラー溶液とした。この溶液を、25℃に調整したジアゾニウム塩を含む溶液に20分掛けて加え、カップリング反応を行った。
【0211】
カップリング反応にて得られたスラリーを1時間撹拌後、70℃まで加熱し、68~72℃でさらに1時間撹拌した。この時のpHは4.5であった。40%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを10.5~11.5に調整し、さらに15分撹拌した。このスラリーを50℃以下に冷却した後、濾過、水洗することにより、着色剤のプレスケーキを得た。このプレスケーキを80℃、18時間の条件下で乾燥した後、粉砕して、561.2部の着色剤1を得た。
【0212】
(実施例2~実施例17)着色剤2~着色剤17の製造
ベース成分として3-アミノ-4-メトキシベンズアニリド237.4部を表1の対応するベース種類とベース質量部に、カップラー成分としてナフトールAS-CA327.8質量部を表1の対応する第1カップラー種類と第1カップラー質量部に、化合物(B)0.9質量部を表1の対応する質量部に変更し、これ以外は実施例1と同様にして、着色剤2~着色剤17を得た。
【0213】
(実施例18)着色剤18の製造
ベース成分として3-アミノ-4-メトキシベンズアニリド245.9部を水3643部に添加、撹拌して懸濁液を調製し、さらに氷1517部を加えて温度を5℃以下に調整した。その中に35%塩酸を402.9部添加し、30分撹拌した。その後、亜硝酸ナトリウム72.3部を水108.5部に加えて調製した水溶液を添加して1時間撹拌することによりジアゾ化を行った。反応混合物にスルファミン酸を加え、余剰の亜硝酸を消失させた。スルファミン酸はヨウ化カリウム紙で遊離の亜硝酸が確認されなくなるまで追加した。これに酢酸ナトリウム210.2部、80%酢酸23.2部を加えて、ジアゾニウム塩を含む溶液とした。
【0214】
一方、メタノール1639部、40%水酸化ナトリウム水溶液199.0部、水62.0部の混合物を15~25℃に調整した。その中にカップラー成分としてナフトールAS-CA327.8部を加えて溶かし、カップラー溶液とした。この溶液を、25℃に調整したジアゾニウム塩を含む溶液に20分掛けて加え、カップリング反応を行った。
【0215】
カップリング反応にて得られたスラリーを1時間撹拌後70℃まで加熱し、68~72℃でさらに1時間撹拌した。この時pHは4.5であった。40%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを10.5~11.5に調整し、さらに15分撹拌した。このスラリーを50℃以下に冷却した後、濾過、水洗することにより、着色剤のプレスケーキを得た。このプレスケーキを80℃、18時間の条件下で乾燥した後、粉砕して、573.2部の着色剤18を得た。
【0216】
(実施例19~実施例34)着色剤19~着色剤34の製造
ベース成分として3-アミノ-4-メトキシベンズアニリド245.9部を表1の対応するベース種類とベース質量部に、カップラー成分としてナフトールAS-CA327.8質量部を表1の対応する第1カップラー種類と第1カップラー質量部に変更した以外は実施例18と同様にして、着色剤19~着色剤34を得た。
【0217】
(実施例35)着色剤35の製造
実施例18と同様にしてジアゾニウム塩を含む溶液を作製した。
一方、メタノール1475部、40%水酸化ナトリウム水溶液179.1部、水55.8部の混合物を15~25℃に調整した。その中に第1のカップラー成分としてナフトールAS-CA295.0部を加えて溶かし、第1のカップラー溶液とした。さらに、メタノール164部、40%水酸化ナトリウム水溶液19.9部、水6.2部の混合物を15~25℃に調整した。その中に第2のカップラー成分としてBONアミド18.7部を加えて溶かし、第2のカップラー溶液とした。25℃に調整したジアゾニウム塩を含む溶液に第1のカップラー溶液を18分間にわたって加え、さらに第2のカップラー溶液を2分間にわたって加え、カップリング反応を行った。
【0218】
上記カップリング反応にて得られたスラリーを1時間撹拌後70℃まで加熱し、68~72℃でさらに1時間撹拌した。この時pHは4.5であった。40%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを10.5~11.5に調整し、さらに15分撹拌した。このスラリーを50℃以下に冷却した後、濾過、水洗することにより、着色剤のプレスケーキを得た。このプレスケーキを80℃、18時間の条件下で乾燥した後、粉砕して、559.2部の着色剤35を得た。
【0219】
(実施例36~実施例39)着色剤36~着色剤39の製造
第1のカップラー成分としてナフトールAS-CAを表の第1カップラー種類と第1カップラー質量部に、第2のカップラー成分としてBONアミドを表の第2カップラー種類と第2カップラー質量部に変更し、これ以外は実施例35と同様にして、着色剤36~39を得た。なお、カップラーの溶解に用いた溶液、塩基の量及びカップリングに掛けた時間は第1カップラーと第2カップラーの量に応じて適宜変更を行った。
【0220】
(実施例40)着色剤40の製造
カップラー成分としてナフトールAS-CA327.8部をナフトールAS-LC178.9部とナフトールAS-KB155.9部に変更し、メタノール1639部をN-メチル-2-ピロリドン1311部と水420部に変更した。これ以外は実施例18と同様にして、580.6部の着色剤40を得た。
【0221】
(実施例41~実施例44)着色剤41~着色剤44の製造
カップラー成分としてナフトールAS-CA327.8部を表1の対応する第1カップラー種類と第1カップラー質量部及び第2カップラー種類と第2カップラー質量部に変更した以外は実施例18と同様にして、着色剤40~着色剤44を得た。
【0222】
(実施例45)着色剤45の製造
ベース成分として3-アミノ-4-メトキシベンズアニリド245.9部を244.7部に変更し、水3643部をアセトニトリル1450部と水2200部の混合物に変更し、カップラー溶液に3-アミノ-4-メトキシベンズアニリド0.74部を添加し、カップラー溶解に用いるメタノールを同量のアセトニトリルに変更した。これ以外は実施例18と同様にして、578.3部の着色剤45を得た。
【0223】
(実施例46)着色剤46の製造
ベース成分として3-アミノ-4-メトキシベンズアニリド237.4部を218部に、カップラー成分に添加する化合物(B)を1.1部にそれぞれ変更し、これ以外は実施例1と同様にして、496.3部の着色剤46を得た。
【0224】
(実施例47~実施例55)着色剤47~着色剤55の製造
ベース成分として3-アミノ-4-メトキシベンズアニリド245.9部を表1の対応するベース種類とベース質量部に、カップラー成分としてナフトールAS-CA327.8質量部を表1の対応する第1カップラー種類と第1カップラー質量部に変更し、さらにカップラー溶解に用いるメタノールを同量のアセトンに変更した。これ以外は、実施例18と同様にして、着色剤47~着色剤55を得た。
【0225】
(実施例56)着色剤56の製造
ベース成分として3-アミノ-4-メトキシベンズアニリド245.9部を266.5部に変更し、カップラー溶解に用いるメタノールをテトラヒドロフラン820部と水820部の混合物に変更し、カップラー溶液に化合物(B)として4MPBを27.5部添加した。これ以外は、実施例18と同様にして、着色剤56を得た。
【0226】
(実施例57)着色剤57の製造
ベース成分として3-アミノ-4-メチルベンズアミド147.2部を水3518部に添加、撹拌して懸濁液を調製し、さらに氷1465部を加えて温度を5℃以下に調整した。その中に35%塩酸を389.0部添加し、30分撹拌した。その後、亜硝酸ナトリウム69.9部を水104.8部に加えて調製した水溶液を添加して1時間撹拌することによりジアゾ化を行った。
上記ジアゾ化によって得られた反応混合物にスルファミン酸を加え、余剰の亜硝酸を消失させた。スルファミン酸は、ヨウ化カリウム紙で遊離の亜硝酸が確認されなくなるまで追加した。これに酢酸ナトリウム203.0部、80%酢酸22.4部を加えて、ジアゾニウム塩を含む溶液とした。
【0227】
一方、水1700部及び40%水酸化ナトリウム水溶液199.0部の混合物を15~25℃に調整した。その中にカップラー成分としてナフトールAS-RL293.3部を加えて溶かした。さらに化合物(B)として4-メチルベンズアミド(和光純薬社製)0.2部を加え、カップラー溶液とした。この溶液を、25℃に調整したジアゾニウム塩を含む溶液に20分掛けて加え、カップリング反応を行った。
【0228】
カップリング反応にて得られたスラリーを1時間撹拌後、70℃まで加熱し、68~72℃でさらに1時間撹拌した。この時のpHは4.5であった。このスラリーを50℃以下に冷却した後、濾過、水洗することにより、着色剤のプレスケーキを得た。このプレスケーキを80℃、18時間の条件下で乾燥した後、粉砕して、436.7部の着色剤57を得た。
【0229】
(実施例58~実施例63)着色剤58~着色剤63の製造
ベース成分として3-アミノ-4-メチルベンズアミド147.2部を表1の対応するベース種類とベース質量部に、カップラー成分としてナフトールAS-RL293.3部を表1の対応する第1カップラー種類と第1カップラー質量部に、化合物(B)0.2質量部を表1-7の対応する化合物(B)の種類と質量部に変更し、これ以外は実施例1と同様にして、着色剤58~着色剤63を得た。
【0230】
(実施例64)着色剤64の製造
ベース成分として3-アミノ-4-メチルベンズアミド157.7部を水3643部に添加、撹拌して懸濁液を調製し、さらに氷1517部を加えて温度を5℃以下に調整した。その中に35%塩酸を402.9部添加し、30分撹拌した。その後、亜硝酸ナトリウム72.3部を水108.5部に加えて調製した水溶液を添加して1時間撹拌することによりジアゾ化を行った。反応混合物にスルファミン酸を加え、余剰の亜硝酸を消失させた。スルファミン酸はヨウ化カリウム紙で遊離の亜硝酸が確認されなくなるまで追加した。これに酢酸ナトリウム210.2部、80%酢酸23.2部を加えて、ジアゾニウム塩を含む溶液とした。
【0231】
一方、水1670部及び40%水酸化ナトリウム水溶液199.0部の混合物を15~25℃に調整した。その中にカップラー成分としてナフトールAS-RL293.3部を加えて溶かし、カップラー溶液とした。この溶液を、25℃に調整したジアゾニウム塩を含む溶液に20分掛けて加え、カップリング反応を行った。
【0232】
カップリング反応にて得られたスラリーを1時間撹拌後70℃まで加熱し、68~72℃でさらに1時間撹拌した。この時pHは4.5であった。このスラリーを50℃以下に冷却した後、濾過、水洗することにより、着色剤のプレスケーキを得た。このプレスケーキを80℃、18時間の条件下で乾燥した後、粉砕して、454.6部の着色剤64を得た。
【0233】
(実施例65~実施例70)着色剤65~着色剤70の製造
ベース成分として3-アミノ-4-メチルベンズアミド157.7部を表1の対応するベース種類とベース質量部に、カップラー成分としてナフトールAS-RL293.3部を表1の対応する第1カップラー種類と第1カップラー質量部に変更した以外は実施例64と同様にして、着色剤65~着色剤70を得た。
【0234】
(比較例1~比較例17)着色剤101~着色剤117の製造
化合物(B)を添加しないこと以外は実施例1~実施例17と同様にして、着色剤101~着色剤117を得た。
【0235】
(比較例18~比較例24)着色剤118~着色剤124の製造
化合物(B)を添加しないこと以外は実施例57~実施例63と同様にして、着色剤118~着色剤124を得た。
【0236】
実施例1~70及び比較例1~24において、着色剤の製造に使用した原料を表1-1、表1-2及び表1-2Aに纏めて示す。
【0237】
【0238】
【0239】
【0240】
また、実施例1~70及び比較例1~24で製造した各着色剤について、化合物(A)と化合物(B)との具体的な組合せを以下に表1-3~表1-7に纏めて示す。
【0241】
【0242】
【0243】
【0244】
【0245】
【0246】
<2>着色剤の定量方法
以下は、着色剤の各成分の同定、定量方法に関する。
<各成分の定量分析:化合物(A)>
実施例1~70及び比較例1~24で製造した着色剤に含まれる化合物(A)について、以下に記載する方法に従い吸光光度法を用いて定量分析を行った。
(標準試料の調製)
着色剤0.75g、ジメチルスルホキシド30ml、0.3mmジルコニアビーズ75gを50mlガラス瓶に仕込み、ペイントシェーカー(Fast&Fluid社製SK450)にて振動数172rpmで2時間分散し、得られた分散液を遠心分離機Centrifuge 5810(Eppendorf社製)にて回転数9500rpmで30分遠心分離した。遠心分離後の残渣にジメチルスルホキシド30ml、25%水酸化ナトリウム水溶液0.1gを加えてスターラーで15分撹拌し、濾過、水洗したものを80度で18時間乾燥し、粉砕して着色剤の標準試料を得た。(測定サンプルの調製)
25mlメスフラスコに着色剤40mgを精秤し、28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液0.1gとジメチルスルホキシド(残量)にて定容し、良く振り混ぜて溶解させた。この溶液をジメチルスルホキシドで100体積倍に希釈し測定サンプルとした。
(測定方法)
測定サンプルを光路長10mmの石英セルに入れて日立社製UH4150形分光光度計で吸光度を測定し、グラムあたり吸光係数(吸光度/質量濃度)を算出した。グラムあたり吸光係数は400-700nmの範囲にあるピーク(PigmentRed269の場合548nm)の吸光度より求めた。同様に標準試料についてもグラムあたり吸光係数を測定、算出し、着色剤のグラムあたり吸光係数÷着色剤の標準試料のグラムあたり吸光係数を化合物(A)の含有率とした。
【0247】
<各成分の定量分析:化合物(B)、(C)、(D)、(E)>
実施例1~70及び比較例1~24で製造した着色剤に含まれる成分について、以下に記載する方法に従い高速液体クロマトグラフィーを用いて定量分析を行った。
(抽出法)
着色剤0.75g、ジメチルスルホキシド30ml、0.3mmジルコニアビーズ75gを50mlガラス瓶に仕込み、ペイントシェーカー(Fast&Fluid社製SK450)にて振動数172rpmで2時間分散し、得られた分散液を遠心分離機Centrifuge 5810(Eppendorf社製)にて回転数9500rpmで30分遠心分離した。遠心分離後の上澄み液を0.2μmフィルターで濾過した。このようにして得た液体を測定試料とした。
【0248】
(分析法)
液体クロマトグラフィーを用いて、測定試料中の化合物(B)、化合物(C)、化合物(D)、及び化合物(E)の量を定量分析した。なお、着色剤における化合物(C)は下記化学式(9)に示す物質、化合物(B)、化合物(D)、化合物(E)は表2-1、表2-2及び表2-3に示したとおりである。
【0249】
【0250】
液体クロマトグラフィーの条件は以下のとおりであり、同様の定量分析を2回繰り返し、その平均値を算出した。さらに算出した値から、着色剤中の各化合物の含有量に換算した。
(条件)
装置:高速液体クロマトグラフィー Waters2695(Waters社製)
カラム:Symmetry C18 180mm×2.1mm 5μm(Waters社製)
試料:10μL
検出器:UV-vis(化合物(B):310nm、化合物(C):502nm、化合物(D):310nm、化合物(E):350nm)
溶離液:表2Aに示す組成とした。(A)は1g/L酢酸アンモニウム水溶液であり、(B)はアセトニトリルである。
温度:35℃
流速:0.3ml/min
検量線の作成:対象となる化合物を用い、同様に定量した結果から検量線を作成した。
【0251】
【0252】
着色剤について、上記のようにして実施した定量分析の結果を表2-1、表2-2及び表2-3に示す。化合物(A)の含有率は、着色剤全体に対する含有率であり、それ以外の各成分の含有率は同着色剤中の化合物(A)の全質量に対する含有率である。該当する成分が複数ある場合は、その合計値を記載した。なお、着色剤は、表2-1、表2-2及び表2-3に示した成分以外に、水分又はその他の微量成分などを含む場合もある。
【0253】
【0254】
【0255】
【0256】
なお、定量用の化合物(B)は、先に記載した市販品の他、以下の方法で合成した化合物を用いた。
(製造例1)DA-R185の製造
7.4部の粉末化した亜硝酸ナトリウムを、0℃にて、穏やかに撹拌しつつ、97%濃硫酸7.4部に少量ずつ添加した。R185ベース 6部を7.4部の97%濃硫酸に溶解した溶液を、撹拌中に滴下添加した。該反応の温度を5℃以下に維持し、また氷浴中で2時間攪拌を行った。次に、この反応混合物を、激しく撹拌しつつ、15部の次亜リン酸及び150部の氷を含む混合物中に流し込んだ。この混合物を4時間に渡り撹拌し、次いで20~25℃にて一夜放置した。この反応混合物のpHを、アンモニア溶液を添加することにより8に調整し、次いで50部のクロロホルムで3回抽出した。この抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥させ、アルミナ上でのクロマトグラフィー処理後、溶剤をロータリーエバポレーターで除去してDA-R185 4.2部を得た。
【0257】
(製造例2)DA-FVBの製造
製造例1のR185ベース 6部をファーストバイオレットB 6.7部に変更した以外は製造例1と同様にして、DA-FVBを得た。
【0258】
(製造例3)DA-DC31の製造
製造例1のR185ベース 6部をアゾイックDC31 7.3部に変更した以外は製造例1と同様にして、DA-DC31を得た。
【0259】
(製造例4)DA-V32の製造
製造例1のR185ベース 6部をV32ベース 6.5部に変更した以外は製造例1と同様にして、DA-V32を得た。
【0260】
<3>着色組成物
以下は、先に調製した着色剤を含む着色組成物の具体例に関する。
<A>顔料分散体(A1)顔料分散体の調製
(実施例A-1)顔料分散体a-1の調製
以下の原料と、直径1.25mmジルコニアビーズ70部とを70mlのガラス瓶に仕込み、レッドデビル社製ペイントシェーカーを用いて60分間にわたって分散させ、分散液を得た。
・着色剤1:3.15部
・ポリエステル変性アクリル酸重合体(Allnex社製、ADDITOLXW6528):5.25部
・湿潤剤(Allnex社製、ADDITOLVXW6374):0.95部
・消泡剤(Allnex社製、ADDITOLVXW6211):0.63部
・イオン交換水:21.52部
次いで、上記分散液からジルコニアビーズを除去して、顔料分散体a-1を得た。
【0261】
(実施例A-2~A-70、比較例A-1~A-24)顔料分散体a-2~a-70、a-101~a-124の調製
実施例A-1の着色剤1を表3-1、表3-2及び表3-3に示すとおりに変更した以外は、実施例A-1と同様に行い、顔料分散体a-2~a-70、a-101~a-124を得た。
【0262】
(A2)顔料分散体の評価
<初期粘度と粘度安定性>
得られた顔料分散体について、E型粘度計(東機産業社製「ELD型粘度計」)を用いて、25℃における初期粘度を測定した。同様にして、60℃で1週間経時促進後の粘度を測定した。得られた測定値に基づき初期粘度に対する粘度増加率を算出し、粘度安定性の一つの指標とし、以下の評価基準に沿って評価した。結果を表3-1、表3-2及び表3-3に示す。初期粘度が低いほど分散性に優れている。また、粘度増加率が小さいほど分散安定性に優れている。下記評価基準で「4」、「3」及び「2」であれば、実用可能なレベルである。なお、表3-1、表3-2及び表3-3では、着色剤の主成分となる化合物(A)のみを示しているが、各着色剤の詳細は先に表2-1、表2-2及び表2-3で示したとおりである。
【0263】
(初期粘度の評価基準)
4:初期粘度が、5.0mPa・s未満である。極めて良好
3:初期粘度が、5.0mPa・s以上、7.5mPa・s未満である。良好
2:初期粘度が、7.5mPa・s以上、10.0mPa・s未満である。実用可能
1:初期粘度が、10.0mPa・s以上である。不良
【0264】
(粘度安定性の評価基準)
4:粘度増加率が、20%未満である。極めて良好
3:粘度増加率が、20%以上、30%未満である。良好
2:粘度増加率が、30%以上、40%未満である。実用可能
1:粘度増加率が、40%以上である。不良
【0265】
【0266】
【0267】
【0268】
以下、着色組成物として、先に調製した着色剤又は顔料分散体を使用して構成される塗料、印刷インキについて例示する。着色剤の色相はその構造ごとに異なる。そのため、以下に記載する着色剤の着色力、鮮明性、及び透明性の評価は、同じC.I.No.の顔料を使用した場合を比較対照として行った。各表において、着色剤については主成分となる化合物(A)(顔料)のみを示しているが、各着色剤の詳細は先に表2-1、表2-2及び表2-3で示したとおりである。比較対照(基準)は「std」として表記した。また、複数のC.I.No.を含む顔料については、全てC.I.PigmentRed269を比較対照とした。
【0269】
<B>水性塗料(B1)水性塗料と塗装フィルムの調製
(実施例B-1)水性塗料b-1の調製及び塗装フィルムの作製
高速撹拌機を用いて、以下の原料を撹拌し、水性塗料b-1を得た。
・顔料分散体a-1:1.4部
・アクリル樹脂(DIC社製、バーノックWD-304):13.6部
・メラミン樹脂(Allnex社製、サイメル325):3.4部
【0270】
得られた水性塗料b-1を7milのアプリケーターを使用し、厚さ100μmの市販ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに塗装を行った。その塗装後、そのPETフィルムを室温で18時間乾燥させた。その後、60℃で5分、140℃で20分乾燥させ塗装フィルムを得た。
【0271】
(実施例B-2~B-70、比較例B-1~B-24)水性塗料b-2~b-70、b-101~b-124の調製及び塗装フィルムの作製
実施例B-1の顔料分散体1を表4-1、表4-2及び表4-3に示すとおりに変更した以外は、実施例B-1と同様に行い、水性塗料b-2~b-70、b-101~b-124及びそれらの塗装フィルムを得た。
【0272】
(B2)塗装フィルムの評価
<着色力>
塗料を塗装したフィルム(塗装物)を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。結果を表4-1、表4-2及び表4-3に示す。なお、基準の塗装物は、上述のように実施例で使用した着力剤中の化合物(A)と同じC.I.No.の顔料を使用した比較例の塗装物である。また、着色剤が複数の化合物(A)を含む場合は、全てC.I.PigmentRed269を使用した比較例の塗装物を比較対照(基準)とした。鮮明性の基準についても同様である。
(着色力の評価基準)
4:基準の塗装物よりも着色力が極めて高い
3:基準の塗装物よりも着色力が高い
2:基準の塗装物よりも着色力がやや高い
1:基準の塗装物と着色力が同等
【0273】
<鮮明性>
塗料を塗装したフィルム(塗装物)を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。結果を表4-1、表4-2及び表4-3に示す。なお、基準の塗装物は、先に説明したとおりである。
(鮮明性の評価基準)
4:基準の塗装物よりも鮮明性が極めて高い
3:基準の塗装物よりも鮮明性が高い
2:基準の塗装物よりも鮮明性がやや高い
1:基準の塗装物と鮮明性が同等
【0274】
【0275】
【0276】
【0277】
<C>水性インクジェットインク
(C1)水性インクジェットインク(水性IJインク)の調製
(実施例C-1)水性IJインクc-1の調製
以下の原料
・着色剤1:19.0部
・スチレン-アクリル酸共重合体(BASFジャパン社製、ジョンクリル61J):16.4部
・界面活性剤(花王社製、エマルゲン420):5.0部
・イオン交換水:59.6部
と、直径1.25mmジルコニアビーズ200部とを200mlのガラス瓶に仕込み、レッドデビル社製ペイントシェーカーにて6時間分散した。次いで、上記分散液からジルコニアビーズを除去して、顔料分散体を得た。
【0278】
次いで、上記顔料分散体と以下の原料を、ハイスピードミキサーを用いて30分にわたって撹拌混合し、混合物を得た。
・得られた顔料分散体:12.5部
・スチレン-アクリル酸共重合体(BASFジャパン社製、ジョンクリル60):3.3部
・界面活性剤(花王社製、エマルゲン420):2.0部
・イオン交換水:64.9部
次いで、上記混合物にジエチレングリコールモノブチルエーテルを適宜加えて、25℃における粘度を2.5mPa・s(25℃)、表面張力を40mN/mに調整し、次いで、1.0μmメンブランフィルターを用いて濾過し、さらに0.45μmメンブランフィルターを用いて濾過して、水性IJインクc-1を得た。
【0279】
(実施例c-2~c-70、比較例c-1~c-24)水性IJインクc-2~c-70、c-101~c-124の調製
実施例c-1の着色剤1を表5-1、表5-2及び表5-3に示すとおりに変更した以外は、実施例C-1と同様に行い、水性IJインクc-2~c-70、c-101~c-124を得た。
【0280】
(C2)水性IJインクの評価
<着色力>
調製した水性IJインクを、セイコーエプソン社製プリンターPX-105(ピエゾ型インクジェットプリンタ)のカートリッジに充填し、A4サイズ普通紙に印字を行った。印字物を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。基準の印字物は先に説明したとおりである。結果を表5-1、表5-2及び表5-3に示す。
(着色力の評価基準)
4:基準の印字物よりも着色力が極めて高い
3:基準の印字物よりも着色力が高い
2:基準の印字物よりも着色力がやや高い
1:基準の印字物と着色力が同等
【0281】
<鮮明性>
着色力の評価で使用した印字物を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。基準の印字物は先に説明したとおりである。結果を表5-1、表5-2及び表5-3に示す。
(鮮明性の評価基準)
4:基準の印字物よりも鮮明性が極めて高い
3:基準の印字物よりも鮮明性が高い
2:基準の印字物よりも鮮明性がやや高い
1:基準の印字物と鮮明性が同等
【0282】
<透明性>
調製した水性IJインクを、セイコーエプソン社製プリンターHG-5130のカートリッジに充填し、A4普通紙に張り付けたポリエチレンテレフタレートフィルムに印字を行った。印字物を黒画用紙の上に乗せて黒画用紙の透過具合を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。基準の印字物は先に説明したとおりである。結果を表5-1、表5-2及び表5-3に示す。
(透明性の評価基準)
4:基準の印字物よりも透明性が極めて高い
3:基準の印字物よりも透明性が高い
2:基準の印字物よりも透明性がやや高い
1:基準の印字物と透明性が同等
【0283】
また、基材をA4サイズ普通紙からコート紙、ポリプロピレンフィルム(OPPフィルム)、アルミ箔に変更し、着色力を評価したところ、同様の結果が得られた。なお、基材が紙でない場合は、A4普通紙に基材を張り付けて使用した。
また、キヤノン社製MAXIFYMB5430(サーマル型インクジェットプリンタ)を用い、作製した水性IJインクを充填したタンクをマゼンタインクとして搭載し、着色力を評価したところ、同様の結果が得られた。
【0284】
<粘度安定性>
各水性IJインクについて、E型粘度計(東機産業社製「ELD型粘度計」)を用いて、25℃における初期粘度を測定した。同様にして、70℃で2週間経時促進後の粘度を測定した。それぞれの測定値を用いて、初期粘度に対する粘度増加率を算出し、粘度安定性の一つの指標とし、以下の基準に従って評価した。結果を表5-1、表5-2及び表5-3に示す。粘度増加率が小さいほど粘度安定性に優れていると考えられ、下記評価基準で「3」及び「2」の評価であれば、実用可能なレベルである。
(粘度安定性の評価基準)
3:粘度増加率が、15%未満である
2:粘度増加率が、15%以上30%未満である
1:粘度増加率が、30%以上である
【0285】
【0286】
【0287】
【0288】
<D>グラビアインキ(D1)グラビアインキの調製
まず、樹脂の測定法について以下に説明する。
(水酸基価)
JISK0070に従って求めた。
(酸価)
JISK0070に従って求めた。
(アミン価)
アミン価は、樹脂1g中に含有するアミノ基を中和するのに必要とする塩酸の当量と同量の水酸化カリウムのmg数でJISK0070に準じて以下の方法に従って求めた。試料を0.5~2g精秤した(試料不揮発分:Sg)。精秤した試料にメタノール/メチルエチルケトン=60/40(質量比)の混合溶液50mLを加え溶解させた。
得られた溶液に指示薬としてブロモフェノールブルーを加え、得られた溶液を0.2mol/Lエタノール性塩酸溶液(力価:f)で滴定を行なった。溶液の色が緑から黄に変化した点を終点とし、この時の滴定量(AmL)を用い、下記式によりアミン価を求めた。
アミン価=(A×f×0.2×56.108)/S[mgKOH/g]
【0289】
(重量平均分子量)
重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)装置(東ソー社製HLC-8220)を用いて分子量分布を測定し、ポリスチレンを標準物質に用いた換算分子量として求めた。下記に測定条件を示す。
カラム:下記カラムを直列に連結して使用した。
東ソー社製のガードカラムHXL-H
東ソー社製のTSKgelG5000HXL
東ソー社製のTSKgelG4000HXL
東ソー社製のTSKgelG3000HXL
東ソー社製のTSKgelG2000HXL
検出器:RI(示差屈折計)
測定条件:カラム温度40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/分
【0290】
(ガラス転移温度)
ガラス転移温度(Tg)は、DSC(示差走査熱量測定)により求めた。なお、測定機はリガク社製DSC8231を使用し、測定温度範囲-70~250℃、昇温速度10℃/分、DSC曲線におけるガラス転移に基づく吸熱開始温度と終了温度との中点をガラス転移温度とした。
【0291】
(合成例1)
[ポリウレタン樹脂PU1]
数平均分子量(Mn)700のポリプロピレングリコール(以下「PPG700」)200部、イソホロンジイソシアネート(以下「IPDI」)127部、及び酢酸エチル81.8部を窒素気流下にて80℃で4時間反応させ、末端イソシアネートウレタンプレポリマーの樹脂溶液を得た。次いでイソホロンジアミン(以下「IPDA」)49.5部、2-エタノールアミン3部、酢酸エチル/イソプロパノール(以下「IPA」)=50/50(質量比)の混合溶剤803.9部を混合したものに、得られた末端イソシアネートウレタンプレポリマーの樹脂溶液を40℃で徐々に添加し、次に80℃で1時間反応させ、不揮発分30%、アミン価3.5mgKOH/g、水酸基価7.3mgKOH/g、重量平均分子量40000のポリウレタン樹脂溶液PU1を得た。ガラス転移温度は-32℃であった。
【0292】
(実施例D-1)グラビアインキd-1の調製
樹脂として、ポリウレタン樹脂溶液PU1(不揮発分30%)を30部、炭化水素系ワックスとしてポリエチレンワックス(ハネウェル社製A-C400A)を不揮発分換算で0.8部、塩素化ポリプロピレン樹脂(日本製紙社製370M塩素含有率30% 不揮発分50%)を不揮発分換算で0.5部、着色剤1を10部、メチルエチルケトン(以下「MEK」)/酢酸n-プロピル(以下「NPAC」)/IPA=40/40/20(質量比)の溶液58.7部を混合し、アイガーミルで15分間分散し、グラビアインキd-1を得た。
【0293】
(実施例D-2~D-70、比較例D-1~D-24)グラビアインキd-2~d-70、d-101~d-124の調製
実施例D-1の着色剤1を表6-1、表6-2及び表6-3に示すとおりに変更した以外は、実施例D-1と同様に行い、グラビアインキd-2~d-70、d-101~d-124を得た。
【0294】
(D2)グラビアインキ印刷物の作製
上記で得られたグラビアインキを、MEK/NPAC/IPA=40/40/20(質量比)からなる混合溶剤を使用して、粘度が16秒(25℃、ザーンカップNo.3)となるように希釈し、ヘリオ175線グラデーション版(版式コンプレストグラデーション100%~3%)を備えたグラビア印刷機により、以下の基材(OPPの場合はコロナ放電処理面)に、印刷を印刷速度80m/分で行い、OPP印刷物、CPP印刷物を得た。(基材)・OPP:片面コロナ放電処理の2軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(フタムラ化学社製FOR厚さ25μm)・CPP:コロナ処理無の未延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム(三井化学東セロ社製CP-S厚さ30μm)
【0295】
(D3)グラビアインキ及び印刷物の評価
<インキの経時安定性>
調製したグラビアインキについてそれぞれを密閉容器に入れ、40℃で10日間保存を行った。その後、粘度を測定して保存前との粘度変化を評価した。なお粘度の測定は25℃でザーンカップNo.4の流出秒数にて行った。結果を表6-1、表6-2及び表6-3に示す。なお、いずれのインキも保存前のB型粘度計における粘度は40~500cps(25℃)の範囲内であった。下記評価基準で「4」、「3」、「2」の評価結果であれば、実用可能なレベルである。
(評価基準)
4:粘度変化が2秒未満(極めて良好)
3:粘度変化が2秒以上5秒未満(良好)
2:粘度変化が5秒以上10秒未満(実用可能)
1:粘度変化が10秒以上(不良)
【0296】
<鮮明性>
得られたOPP印刷物を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。結果を表6-1、表6-2及び表6-3に示す。基準の印刷物(std)の詳細は、先に説明したとおりである。
(鮮明性の評価基準)
4:基準の印刷物よりも鮮明性が極めて高い
3:基準の印刷物よりも鮮明性が高い
2:基準の印刷物よりも鮮明性がやや高い
1:基準の印刷物と鮮明性が同等
【0297】
<透明性>
得られたOPP印刷物を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。結果を表6-1、表6-2及び表6-3に示す。基準の印刷物(std)の詳細は、先に説明したとおりである。
(透明性の評価基準)
4:基準の印刷物よりも透明性が極めて高い
3:基準の印刷物よりも透明性が高い
3:基準の印刷物よりも透明性がやや高い
1:基準の印刷物と透明性が同等
【0298】
<光沢性>
得られたOPP印刷物を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。結果を表6-1、表6-2及び表6-3に示す。基準の印刷物(std)の詳細は、先に説明したとおりである。
(光沢性の評価基準)
4:基準の印刷物よりも光沢性が極めて高い
3:基準の印刷物よりも光沢性が高い
2:基準の印刷物と光沢性が同等
1:基準の印刷物よりも光沢性が低い
【0299】
【0300】
【0301】
【0302】
<E>活性エネルギー線硬化型フレキソインキ
(E1)活性エネルギー線硬化型フレキソインキの調製
(実施例E-1)活性エネルギー線硬化型フレキソインキe-1の調製
下記の材料を、バタフライミキサーを用いて撹拌混合し、3本ロールにて最大粒径が15μm以下になるように分散して、活性エネルギー線硬化型フレキソインキe-1を得た。
・着色剤1:18.0部
・EBECRYL225:8.4部(有効成分で5.0部)
(10官能のウレタンアクリレートオリゴマー)
・4-アクリロイルモルフォリン:15.0部(単官能モノマー)
・EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート:20.0部
・ジペンタエリスリトールペンタアクリレート:5.0部
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート:16.6部
・イルガキュア369:3.0部(光重合開始剤)
・Chemrk DEABP:3.0部(光重合開始剤)
・SB-PI718:4.0部(光重合開始剤)
・アジスパーPB821:3.0部(分散剤)
・Tワックスコンパウンド:4.0部(ワックス)
【0303】
使用した材料の詳細は以下のとおりである。
[アクリレートオリゴマー]
・EBECRYL225:ダイセル・オルネクス株式会社製、10官能の脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー、Mw1,200、有効成分60質量%
[重合開始剤]
・イルガキュア369:BASF社製、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノン
・Chemrk DEABP:ソート社製、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン
・SB-PI718:ソート社製、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド
[分散剤]
・アジスパーPB821:味の素ファインテクノ株式会社製、塩基性官能基含有の櫛形分散剤
[ワックス]
・Tワックスコンパウンド:東新油脂株式会社製、ポリエチレンワックス
【0304】
(実施例e-2~e-70、比較例e-1~e-24)活性エネルギー線硬化型フレキソインキe-2~e-70、e-101~e-124の調製
実施例E-1の着色剤1を表7-1、表7-2及び表7-3に示すとおりに変更した以外は、実施例e-1と同様に行い、活性エネルギー線硬化型フレキソインキe-2~e-70、e-101~e-124を得た。
【0305】
(E2)印刷物の評価・印刷評価
コート紙に線数800lpi、セル容積3.72cm3/m2のアニロックスローラーとフレキシプルーフ機を用いて、インキを印刷後、コンベア速度 50m/min、空冷水銀ランプ(出力160W/cm2の条件)で硬化させ、評価用印刷物を得た。
【0306】
<着色力>
印刷物を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。結果を表7-1、表7-2及び表7-3に示す。基準の印刷物(std)の詳細は、先に説明したとおりである。
(着色力の評価基準)
4:基準の印刷物よりも着色力が極めて高い
3:基準の印刷物よりも着色力が高い
2:基準の印刷物よりも着色力がやや高い
1:基準の印刷物と着色力が同等
【0307】
<鮮明性>
印刷物を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。結果を表7-1、表7-2及び表7-3に示す。基準の印刷物(std)の詳細は、先に説明したとおりである。
(鮮明性の評価基準)
4:基準の印刷物よりも鮮明性が極めて高い
3:基準の印刷物よりも鮮明性が高い
2:基準の印刷物よりも鮮明性がやや高い
1:基準の印刷物と鮮明性が同等
【0308】
・フィルムへの印刷評価
同様に、コロナ処理延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(東洋紡株式会社製 パイレンP2161、厚さ40μm)へインキを印刷、硬化させ、評価用印刷フィルム(印刷物)を得た。
【0309】
<透明性>
得られたOPP印刷物を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。結果を表7-1、表7-2及び表7-3に示す。基準の印刷物(std)の詳細は、先に説明したとおりである。
(評価基準)
4:基準の印刷物よりも透明性が極めて高い
3:基準の印刷物よりも透明性が高い
2:基準の印刷物よりも透明性がやや高い
1:基準の印刷物と透明性が同等
【0310】
<保存安定性>
各インキ200gを金属缶容器中にて25℃条件下で保管試験を行い、6ヶ月経過後のインキの状態を評価した。結果を表7-1、表7-2及び表7-3に示す。
(評価基準)
3:インキの粘度増加は見られない
2:多少の粘度増加が見られる
1:ゲル化又は原材料析出がある
【0311】
【0312】
【0313】
【0314】
<F>活性エネルギー線硬化型オフセットインキ
(F1)インキの調製
<樹脂ワニスの作製>
活性エネルギー線硬化型インキを製造するに先立ち、樹脂ワニスを製造した。樹脂ワニスは、ジアリルフタレート樹脂(ダイソーダップA(ダイソー(株)製))/ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート/ハイドロキノンを30/69.9/0.1の比率で仕込み、空気気流下、100℃で熱溶解させて製造した。
<インキ組成物の作製>
(実施例F-1)活性エネルギー線硬化型フレキソインキf-1の調製
上記着色剤1を25.8部、上記樹脂ワニス97.4部、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート21.1部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート20部、炭酸マグネシウム6部、及び光重合開始剤22.4部を、バタフライミキサーを用いて撹拌混合し、3本ロールにて最大粒径が7.5μm以下になるように分散した。その後、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレートでタック7.5~8.0に調整し、活性エネルギー線硬化型オフセットインキf-1を作製した。
【0315】
(実施例F-2~F-70、比較例F-1~F-24)活性エネルギー線硬化型オフセットインキf-2~f-70、f-101~f-124の調製
実施例F-1の着色剤1を表8-1、表8-2及び表8-3に示すとおりに変更した以外は、実施例F-1と同様に行い、活性エネルギー線硬化型オフセットインキf-2~f-70、f-101~f-124を得た。
【0316】
(F2)各種評価・印刷評価
得られた各活性エネルギー線硬化型オフセットインキ0.4mlをRIテスターに付け、均一に広げた後、マリコート紙(北越紀州製紙(株)製コートボール紙)に展色し、メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)照射装置を使用し、照射出力96W/cm2、照射距離10mm、コンベア速度50m/分の条件にて紫外線照射を行うことで展色物を得た。
【0317】
<着色力>
印刷物を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。結果を表8-1、表8-2及び表8-3に示す。基準の印刷物(std)の詳細は、先に説明したとおりである。
(着色力の評価基準)
4:基準の印刷物よりも着色力が極めて高い
3:基準の印刷物よりも着色力が高い
2:基準の印刷物よりも着色力がやや高い
1:基準の印刷物と着色力が同等
【0318】
<鮮明性>
印刷物を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。結果を表8-1、表8-2及び表8-3に示す。基準の印刷物(std)の詳細は、先に説明したとおりである。
(鮮明性の評価基準)
4:基準の印刷物よりも鮮明性が極めて高い
3:基準の印刷物よりも鮮明性が高い
2:基準の印刷物よりも鮮明性がやや高い
1:基準の印刷物と鮮明性が同等
【0319】
・フィルムへの印刷評価
同様に、コロナ処理延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(東洋紡株式会社製 パイレンP2161、厚さ40μm)にインキを印刷し、硬化させ、評価用印刷フィルムを得た。
【0320】
<透明性>
得られたOPP印刷物を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。結果を表8-1、表8-2及び表8-3に示す。基準の印刷物(std)の詳細は、先に説明したとおりである。
(透明性の評価基準)
4:基準の印刷物よりも透明性が極めて高い
3:基準の印刷物よりも透明性が高い
2:基準の印刷物よりも透明性がやや高い
1:基準の印刷物と透明性が同等
【0321】
<保存安定性>
各インキ200gを金属缶容器中にて25℃条件下で保管試験を行い、6ヶ月経過後の
インキの状態を評価した。結果を表8-1、表8-2及び表8-3に示す。
(評価基準)
3:インキの粘度増加は見られない
2:多少の粘度増加が見られる
1:ゲル化又は原材料析出がある
【0322】
【0323】
【0324】
【0325】
<G>成形用樹脂組成物
(G1)成形用樹脂組成物の調製
(実施例G-1)成形用樹脂組成物g-1及び成形体g’-1の調製
着色剤1を2部、及びポリプロピレン樹脂(製品名:プライムポリプロJ105、プライムポリマー社製)1000部を、二軸押出機にて220℃で溶融混錬を行い、次いでペレタイザーでカットしてペレット状の成形用樹脂組成物g-1を得た。次に、当該成形用樹脂組成物について、射出成型機を用いて射出成形を行い、厚さ1mmの成形体g’-1(プレート)を得た。なお、射出条件は、成形温度220℃、金型温度40℃に設定した。
【0326】
(実施例g-2~g-70、比較例g-1~g-24)成形用樹脂組成物g-2~g-70、g-101~g-124及び成形体g’-2~g’-70、g’-101~g’-124の調製
実施例g-1の着色剤1を表9-1、表9-2及び表9-3に示すとおりに変更した以外は、実施例g-1と同様に行い、成形用樹脂組成物g-2~g-70、g-101~g-124及び成形体g’-2~g’-70、g’-101~g’-124を得た。
【0327】
(G2)成形体の評価
<分散性>
作製した各成形体を目視で観察し、粗粒の有無を確認した。結果を表9-1、表9-2及び表9-3に示す。
【0328】
<鮮明性>
作製した各成形体を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。結果を表9-1、表9-2及び表9-3に示す。基準の成形体(std)の詳細は、先に説明したとおりである。
(鮮明性の評価基準)
4:基準の成形体よりも鮮明性が非常に高い
3:基準の成形体よりも鮮明性が高い
2:基準の成形体よりも鮮明性がやや高い
1:基準の成形体と鮮明性が同等
【0329】
【0330】
【0331】
【0332】
<H>トナー
(H1)負帯電トナーの調製
(実施例H-1)負帯電トナーh-1の調製
得られた着色剤18を2500部、及びポリエステル樹脂(製品名:M-325、三洋化成社製)2500部を加圧ニーダー中で混合及び混練した。混合及び混練は、設定温度120℃で、15分間行った。次いで、得られた混練物を加圧ニーダーから取り出し、更に、ロール温度95℃の3本ロールを用いて混練を行った。得られた混練物を冷却後、10mm以下に粗粉砕することによって、着色組成物を得た。
得られた着色組成物500部、上記ポリエステル樹脂4375部、3,5-ジ-tert-ブチルサリチル酸のカルシウム塩化合物(荷電制御剤)50部、及びエチレンホモポリマー(離型剤、重量平均分子量850、Mw/Mn=1.08、融点107℃)75部を、20Lの容積を有するヘンシェルミキサーを用いて混合(3000rpm、3分)し、さらに二軸混練押出機を用いて、吐出温度120℃にて溶融混練を行った。次いで、混練物を冷却固化した後、ハンマーミルで粗粉砕した。次いで、得られた粗粉砕物について、I式ジェットミル(IDS-2型)を用いて微粉砕化した後、分級することによってトナー母粒子を得た。
次いで、上記で得られたトナー母粒子2500部と疎水性酸化チタン(チタン工業社製STT-30A)12.5部を10Lのヘンシェルミキサーで混合し、負帯電トナーh-1を得た。
【0333】
(比較例H-1)負帯電トナーh-101の調製
一方、比較対象として、着色剤18を着色剤101に変更した以外は実施例H-1と同様にして、負帯電トナーh-101を得た。
【0334】
(H2)負帯電トナーの評価得られた負帯電トナーh-1及び負帯電トナーh-101を、それぞれミクロトームを用いて厚さ0.9μmにスライスし、サンプルを形成した。次いで、各サンプルについて透過型電子顕微鏡を用いて着色剤の分散状態を観察した。その結果、着色剤101を使用した負帯電トナーh-101よりも、着色剤18を使用した負帯電トナーh-1の方が、着色剤が均一に分布しており、分散性が高いことが判明した。
【0335】
以上の結果から、本発明による化合物(A)と化合物(B)とを含む着色剤によれば、従来の顔料による着色力、透明性、及び鮮明性を改善できることが分かる。本発明による着色剤を含む樹脂組成物は、様々な用途に好適に使用でき、各種特性を改善できる。例えば、水系顔料分散体の形態では、初期粘度、及び保存安定性を容易に向上できる。特に、水性インクジェットインクの形態では、優れた着色力、透明性、及び鮮明性に加えて、優れた粘度安定性を容易に得られる。なかでも、着色剤が2種の化合物(A)を含む場合は、より優れた鮮明性を容易に得られる。