IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本ピストンリング株式会社の特許一覧

特開2024-144376アキシャルギャップ型回転電機、アキシャルギャップ型回転電機用の電機子用部品、アキシャルギャップ型回転電機用の電機子、インホイールモータ駆動装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144376
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】アキシャルギャップ型回転電機、アキシャルギャップ型回転電機用の電機子用部品、アキシャルギャップ型回転電機用の電機子、インホイールモータ駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/18 20060101AFI20241003BHJP
   H02K 7/102 20060101ALI20241003BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20241003BHJP
   B60L 15/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H02K1/18 E
H02K7/102
H02K7/116
B60L15/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024053934
(22)【出願日】2024-03-28
(31)【優先権主張番号】P 2023055193
(32)【優先日】2023-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390022806
【氏名又は名称】日本ピストンリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112689
【弁理士】
【氏名又は名称】佐原 雅史
(74)【代理人】
【識別番号】100128934
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128141
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 圭一
(72)【発明者】
【氏名】星野 正宏
(72)【発明者】
【氏名】藤井 功隆
(72)【発明者】
【氏名】堀江 直輝
(72)【発明者】
【氏名】阿崎 裕也
【テーマコード(参考)】
5H125
5H601
5H607
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125FF02
5H601AA08
5H601BB20
5H601CC05
5H601CC15
5H601DD09
5H601DD12
5H601DD18
5H601DD22
5H601GA02
5H601GB13
5H601GB48
5H601GD02
5H601GD22
5H601HH05
5H601JJ07
5H601KK26
5H607BB01
5H607BB02
5H607BB07
5H607BB13
5H607CC03
5H607EE06
5H607EE31
5H607JJ01
(57)【要約】
【課題】円盤体から突出体が離脱することを防止する電機子用部品を提供する。
【解決手段】本発明のアキシャルギャップ型の回転電機における電機子に用いられる電機子用部品は、円盤体と、前記円盤体の表面から電機子軸方向(電機子の回転軸方向)に突出するように配置される複数の突出体と、複数の前記突出体のそれぞれの前記電機子軸方向の周りの外周面を自身の内周面で取り囲みつつ、自身の外周面を取り囲むように巻線部が配置され得る複数の筒状体と、複数の前記筒状体を前記円盤体に固定する固定部を備え、前記突出体は、前記突出体の外周面に前記電機子軸方向の先端側を向く係合面を有し、前記筒状体及び前記固定部の少なくとも一方は、前記電機子軸方向の基端側を向き、且つ前記電機子軸方向において前記係合面に係合して、前記突出体の前記電機子軸方向の先端側への移動を規制する規制面を有する。
【選択図】図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アキシャルギャップ型の回転電機における電機子に用いられる電機子用部品であって、
電機子の回転軸方向(以下、電機子軸方向と呼ぶ。)に対して、該電機子の径方向及び該電機子の周方向に延在する円盤体と、
前記円盤体と組み合わされて、前記円盤体の表面から前記電機子軸方向に突出するように配置される複数の突出体と、
複数の前記突出体のそれぞれの外周面を自身の内周面で取り囲みつつ、自身の外周面を取り囲むように巻線部が配置され得る複数の筒状体と、
複数の前記筒状体を前記円盤体に固定する固定部と、
を備え、
前記突出体は、自身の外周面に前記電機子軸方向の先端側を向く係合面を有し、
前記筒状体及び前記固定部の少なくとも一方は、前記電機子軸方向の基端側、且つ前記係合面側を向き、前記電機子軸方向において前記係合面に係合して、又は前記突出体が前記電機子軸方向の先端側に移動すると前記係合面に係合して、前記突出体の前記電機子軸方向の先端側への移動を規制する規制面を有することを特徴とする、
アキシャルギャップ型回転電機用の電機子用部品。
【請求項2】
前記規制面は、前記筒状体の内周面に設けられ、
前記筒状体は、前記電機子軸方向の基端側を向き、且つ前記円盤体の前記表面に当接する環状の基端面(以下、筒状体側基端面と呼ぶ。)を有し、
前記筒状体側基端面が前記円盤体の前記表面に当接すると、前記規制面は、前記係合面に係合するか、又は、前記電機子軸方向の先端側に前記突出体が移動すると前記係合面に係合する位置に配置されることを特徴とする、
請求項1に記載のアキシャルギャップ型回転電機用の電機子用部品。
【請求項3】
前記突出体には、自身の外周面に自身の内部側に凹む凹部が少なくとも1箇所に形成され、
前記係合面は、前記電機子軸方向の先端側を向く前記突出体の先端面を基準として、前記凹部内における前記電機子軸方向において遠位側の段差により構成されることを特徴とする、
請求項1に記載のアキシャルギャップ型回転電機用の電機子用部品。
【請求項4】
前記筒状体には、自身の内周面に自身の中空領域側に凸となる凸部が少なくとも1箇所に形成され、
前記凸部は、前記規制面を有することを特徴とする、
請求項1に記載のアキシャルギャップ型回転電機用の電機子用部品。
【請求項5】
前記筒状体には、自身の内周面に自身の中空領域側に凸となる凸部が少なくとも1箇所に形成され、
前記凸部は、前記凹部内に配置可能に構成されつつ、前記規制面を有することを特徴とする、
請求項3に記載のアキシャルギャップ型回転電機用の電機子用部品。
【請求項6】
前記凹部は、前記突出体の先端面に連続することを特徴とする、
請求項5に記載のアキシャルギャップ型回転電機用の電機子用部品。
【請求項7】
前記突出体は、前記凹部を複数有し、
複数の前記凹部のそれぞれは、前記突出体の外周面のうち、相互に反対側に位置する対となる面に設けられ、
前記筒状体は、前記凸部を複数有し、
複数の前記凸部のそれぞれは、前記筒状体の内周面のうち、複数の前記凹部のそれぞれに取り囲まれる凹領域に配置可能な位置に設けられることを特徴とする、
請求項5に記載のアキシャルギャップ型回転電機用の電機子用部品。
【請求項8】
前記突出体の外周面には、前記電機子軸方向の途中において、前記電機子軸方向の先端側を向き、且つ前記突出体の周方向を全周する環状の段差(以下、突出体側段差と呼ぶ。)が形成され、
前記突出体側段差は、前記係合面となることを特徴とする、
請求項1に記載のアキシャルギャップ型回転電機用の電機子用部品。
【請求項9】
前記筒状体の内周面には、前記電機子軸方向の途中において、前記電機子軸方向の基端側を向き、且つ前記筒状体の周方向を全周する環状の段差(以下、筒状体側段差と呼ぶ。)が形成され、
前記筒状体側段差は、前記規制面となることを特徴とする、
請求項1に記載のアキシャルギャップ型回転電機用の電機子用部品。
【請求項10】
前記筒状体の内周面には、前記電機子軸方向の途中において、前記電機子軸方向の基端側を向き、且つ前記筒状体の周方向を全周する環状の段差(以下、筒状体側段差と呼ぶ。)が形成され、
前記筒状体側段差は、前記規制面となることを特徴とする、
請求項8に記載のアキシャルギャップ型回転電機用の電機子用部品。
【請求項11】
前記固定部は、前記円盤体と複数の前記筒状体の双方に接触する樹脂により構成される樹脂部を有することを特徴とする、
請求項1に記載のアキシャルギャップ型回転電機用の電機子用部品。
【請求項12】
前記樹脂部は、前記規制面を有することを特徴とする、
請求項11に記載のアキシャルギャップ型回転電機用の電機子用部品。
【請求項13】
前記突出体には、自身の外周面を起点として自身の内部側に凹む凹部が形成され、
前記係合面は、前記電機子軸方向の先端側を向く前記突出体の先端面を基準として、前記凹部内における前記電機子軸方向において遠位側の段差により構成され、
前記樹脂部は、前記凹部内にまで延び、
前記規制面は、前記凹部内において前記係合面側を向くことを特徴とする、
請求項11に記載のアキシャルギャップ型回転電機用の電機子用部品。
【請求項14】
請求項1~10のいずれか一項に記載の電機子用部品と、
前記筒状体を取り囲むように配置される前記巻線部と、
を備え、
前記電機子用部品の前記固定部は、前記円盤体、複数の前記筒状体、及び前記巻線部に接触する樹脂により構成される樹脂部を有することを特徴とする、
アキシャルギャップ型回転電機用の電機子。
【請求項15】
請求項14に記載の電機子と、
前記電機子に対して前記電機子軸方向に対向して配置される対向子と、
を備えることを特徴とするアキシャルギャップ型回転電機。
【請求項16】
請求項14に記載の複数の電機子を有するステータと、
前記電機子に対して前記電機子軸方向に対向して配置される複数の対向子を有するロータと、
前記ロータと共に回転可能に前記ロータに固定されるシャフトと、
前記シャフトの回転を減速して出力する減速機構と、
前記減速機構及び車輪に連結され、前記減速機構の出力を車輪に伝達する車輪連結部と、
を備えることを特徴とするインホイールモータ駆動装置。
【請求項17】
前記ステータは、前記電機子軸方向に延び、前記電機子軸方向の前記ステータの両端において外部に開放され、且つ複数の前記筒状体に取り囲まれる開放領域を有し、
前記開放領域に前記減速機構の少なくとも一部を配置させたことを特徴とする、
請求項16に記載のインホイールモータ駆動装置。
【請求項18】
前記シャフトの回転を停止させるブレーキ機構を備えることを特徴とする、
請求項16に記載のインホイールモータ駆動装置。
【請求項19】
前記ステータは、前記電機子軸方向に延び、前記電機子軸方向の前記ステータの両端において外部に開放され、且つ複数の前記筒状体に取り囲まれる開放領域を有し、
前記開放領域に前記ブレーキ機構の少なくとも一部を配置させたことを特徴とする、
請求項18に記載のインホイールモータ駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機や発電機となるアキシャルギャップ型回転電機における電機子に用いられる電機子用部品等、及びそれらを用いたインホイールモータ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発電機や電動機となるアキシャルギャップ型回転電機は、ロータとステータが、回転軸の軸方向に対向状態で配置される。ロータとステータの一方は、巻き線(コイル)を有する電機子となり、この電機子に電流を流すことで回転磁界を発生する。ロータとステータの他方は、電機子と対向する対向子(界磁子)となり、例えば永久磁石を有して構成されて、電機子の回転磁界との相互作用によって回転力(トルク)を生じさせる。なお、アキシャルギャップ型回転電機の場合、一般的に、ステータ側が電機子となる場合が多い。
【0003】
電機子は、インサート成形によって、電機子コアと巻き線が樹脂で一体化される。電機子コア(鉄心)は、円盤状(円盤状にはリング状の概念を含む)に構成される円盤体(ヨーク)と、この円盤体に対して突出するように配置される突出体(ティース)を備える。突出体は、円盤体に対して周方向に複数配置される。巻き線は、コアの各突出体の周囲に巻き付けられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-229191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電機子と対向する対向子(界磁子)を構成する永久磁石の磁力が強い場合、磁力に起因する引張力により円盤体(ヨーク)から突出体(ティース)が離脱する可能性がある。
【0006】
本発明は、斯かる実情に鑑み、円盤体(ヨーク)から突出体(ティース)が離脱することを防止する電機子に用いられる電機子用部品等、及びそれらを用いたインホイールモータ駆動装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電機子用部品は、アキシャルギャップ型の回転電機における電機子に用いられる電機子用部品であって、電機子の回転軸方向(以下、電機子軸方向と呼ぶ。)に対して、該電機子の径方向及び該電機子の周方向に延在する円盤体と、前記円盤体と組み合わされて、前記円盤体の表面から前記電機子軸方向に突出するように配置される複数の突出体と、複数の前記突出体のそれぞれの外周面を自身の内周面で取り囲みつつ、自身の外周面を取り囲むように巻線部が配置され得る複数の筒状体と、複数の前記筒状体を前記円盤体に固定する固定部と、を備え、前記突出体は、自身の外周面に前記電機子軸方向の先端側を向く係合面を有し、前記筒状体及び前記固定部の少なくとも一方は、前記電機子軸方向の基端側、且つ前記係合面側を向き、前記電機子軸方向において前記係合面に係合して、又は前記突出体が前記電機子軸方向の先端側に移動すると前記係合面に係合して、前記突出体の前記電機子軸方向の先端側への移動を規制する規制面を有することを特徴とする。
【0008】
本発明の電機子用部品において、前記規制面は、前記筒状体の内周面に設けられ、前記筒状体は、前記電機子軸方向の基端側を向き、且つ前記円盤体の前記表面に当接する環状の基端面(以下、筒状体側基端面と呼ぶ。)を有し、前記筒状体側基端面が前記円盤体の前記表面に当接すると、前記規制面は、前記係合面に係合するか、又は、前記電機子軸方向の先端側に前記突出体が移動すると前記係合面に係合する位置に配置されることを特徴とする。
【0009】
本発明の電機子用部品において、前記突出体には、自身の外周面に自身の内部側に凹む凹部が少なくとも1箇所に形成され、前記係合面は、前記電機子軸方向の先端側を向く前記突出体の先端面を基準として、前記凹部内における前記電機子軸方向において遠位側の段差により構成されることを特徴とする。
【0010】
本発明の電機子用部品において、前記筒状体には、自身の内周面に自身の中空領域側に凸となる凸部が少なくとも1箇所に形成され、前記凸部は、前記規制面を有することを特徴とする。更に、前記凸部は、前記凹部内に配置可能に構成されることを特徴とする。
【0011】
本発明の電機子用部品において、前記凹部は、前記突出体の先端面に連続することを特徴とする。
【0012】
本発明の電機子用部品において、前記突出体は、前記凹部を複数有し、複数の前記凹部のそれぞれは、前記突出体の外周面のうち、相互に反対側に位置する対となる面に設けられ、前記筒状体は、前記凸部を複数有し、複数の前記凸部のそれぞれは、前記筒状体の内周面のうち、複数の前記凹部のそれぞれに取り囲まれる凹領域に配置可能な位置に設けられることを特徴とする。
【0013】
本発明の電機子用部品において、前記突出体の外周面には、前記電機子軸方向の途中において、前記電機子軸方向の先端側を向き、且つ前記突出体の周方向を全周する環状の段差(以下、突出体側段差と呼ぶ。)が形成され、前記突出体側段差は、前記係合面となることを特徴とする。
【0014】
本発明の電機子用部品において、前記筒状体の内周面には、前記電機子軸方向の途中において、前記電機子軸方向の基端側を向き、且つ前記筒状体の周方向を全周する環状の段差(以下、筒状体側段差と呼ぶ。)が形成され、前記筒状体側段差は、前記規制面となることを特徴とする。
【0015】
本発明の電機子用部品において、前記固定部は、前記円盤体と、複数の前記筒状体の双方に接触する樹脂により構成される樹脂部を有することを特徴とする。
【0016】
本発明の電機子用部品において、前記樹脂部は、前記規制面を有することを特徴とする。
【0017】
本発明の電機子用部品において、前記突出体には、自身の外周面を起点として自身の内部側に凹む凹部が形成され、前記係合面は、前記電機子軸方向の先端側を向く前記突出体の先端面を基準として、前記凹部内における前記電機子軸方向において遠位側の段差により構成され、前記樹脂部は、前記凹部内にまで延び、前記規制面は、前記凹部内において前記係合面側を向くことを特徴とする。
【0018】
本発明のアキシャルギャップ型回転電機用の電機子は、上記のいずれかに記載の電機子用部品と、前記筒状体を取り囲むように配置される前記巻線部と、を備え、前記電機子用部品の前記固定部は、前記円盤体、複数の前記筒状体、及び前記巻線部に接触する樹脂により構成される樹脂部を有することを特徴とする。
【0019】
本発明のアキシャルギャップ型回転電機は、上記に記載の電機子と、前記電機子に対して電機子軸方向に対向して配置される対向子と、を備えることを特徴とする。
【0020】
本発明のインホイールモータ駆動装置は、上記のいずれかに記載の複数の電機子を有するステータと、前記電機子に対して前記電機子軸方向に対向して配置される対向子を有するロータと、前記ロータと共に回転可能に前記ロータに固定されるシャフトと、前記シャフトの回転を減速して出力する減速機構と、前記減速機構及び車輪に連結され、前記減速機構の出力を車輪に伝達する車輪連結部と、を備えることを特徴とする。
【0021】
本発明のインホイールモータ駆動装置において、前記ステータは、前記電機子軸方向に延び、前記電機子軸方向の前記ステータの両端において外部に開放され、且つ複数の前記筒状体に取り囲まれる開放領域を有し、前記開放領域に前記減速機構の少なくとも一部を配置させたことを特徴とする。
【0022】
本発明のインホイールモータ駆動装置において、前記シャフトの回転を停止させるブレーキ機構を備えることを特徴とする。
【0023】
本発明のインホイールモータ駆動装置において、前記ステータは、前記電機子軸方向に延び、前記電機子軸方向の前記ステータの両端において外部に開放され、且つ複数の前記筒状体に取り囲まれる開放領域を有し、前記開放領域に前記ブレーキ機構の少なくとも一部を配置させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明のアキシャルギャップ型回転電機、アキシャルギャップ型回転電機用の電機子用部品、電機子、及びインホイールモータ駆動装置によれば、永久磁石の磁力により円盤体(ヨーク)から突出体(ティース)が離脱することを防止することができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】(A)は、本発明の第一実施形態におけるアキシャルギャップ型の回転電機(発電機又は電動機)に用いられる電機子用部品と対向子の斜視図である。(B)は、本発明の第一実施形態におけるアキシャルギャップ型の回転電機(発電機又は電動機)に用いられる電機子用部品の斜視図である。
図2】(A)は、本発明の第一実施形態における円盤体の斜視図である。(B)は、(A)の平面図である。
図3】(A)は、本発明の第一実施形態における電機子コアの斜視図である。(B)は、(A)の平面図である。
図4】(A)は、本発明の第一実施形態において、突出体を内壁面側から視た斜視図である。(B)は、本発明の第一実施形態において、突出体を外壁面側から視た斜視図である。(C)は、本発明の第一実施形態における突出体の六面図と、突出体の上面図の凹部近傍を拡大した拡大図である。
図5】(A)は、本発明の第一実施形態の第一変形例において、突出体を内壁面側から視た斜視図である。(B)は、本発明の第一実施形態の第二変形例において、突出体を内壁面側から視た斜視図である。(C)は、本発明の第一実施形態の第三変形例において、突出体を外壁面側から視た斜視図である。
図6】(A)は、本発明の第一実施形態において、筒状体を内壁面側から視た斜視図である。(B)は、本発明の第一実施形態において、筒状体を外壁面側から視た斜視図である。(C)は、(A)のF-F矢視断面図である。(D)は、本発明の第一実施形態における筒状体の上面図である。
図7】(A)は、本発明の第一実施形態において、突出体に筒状体を取り付ける前の電機子用部品の斜視図である。(B)は、本発明の第一実施形態において、突出体に筒状体を取り付けた後の電機子用部品の斜視図である。
図8】(A)は、本発明の第一実施形態において、突出体に筒状体を取り付ける前の電機子用部品の断面概要図である。(B)は、本発明の第一実施形態において、突出体に筒状体を取り付けた後の電機子用部品の断面概要図である。
図9】(A)は、本発明の第一実施形態において、突出体に筒状体を取り付けた後の電機子用部品の凸部と凹部を拡大した拡大断面概要図である。(B)は、本発明の第一実施形態の第四変形例において、突出体に筒状体を取り付けた後の電機子用部品の凸部と凹部を拡大した拡大断面概要図である。(C)は、本発明の第一実施形態の第五変形例において、突出体に筒状体を取り付けた後の電機子用部品の凸部と凹部を拡大した拡大断面概要図である。
図10】(A)は、本発明の第一実施形態の第六変形例において、突出体に筒状体を取り付けた後の電機子用部品の凸部と凹部を拡大した拡大断面概要図である。(B)は、本発明の第一実施形態の第七変形例において、突出体に筒状体を取り付けた後の電機子用部品の凸部と凹部を拡大した拡大断面概要図である。(C)は、本発明の第一実施形態の第八変形例において、突出体に筒状体を取り付けた後の電機子用部品の凸部と凹部を拡大した拡大断面概要図である。
図11】(A)は、本発明の第一実施形態の第九変形例において、筒状体を内壁面側から視た斜視図である。(B)は、本発明の第一実施形態の第十変形例において、筒状体を外壁面側から視た斜視図である。(C)は、本発明の第一実施形態の第十一変形例において、筒状体を内壁面側から視た斜視図である。
図12】(A)は、本発明の第一実施形態の第十二変形例において、突出体に筒状体を取り付けた後の電機子用部品の断面概要図である。(B)は、本発明の第一実施形態の第十二変形例において、筒状体が突出体の移動を規制する様子を表す電機子用部品の断面概要図である。
図13】(A)は、本発明の第一実施形態の第十三変形例において、突出体に筒状体を取り付けた後の電機子用部品の断面概要図である。(B)は、本発明の第一実施形態の第十三変形例において、突出体、筒状体及び巻線部を組み上げて樹脂部によりそれぞれをひとまとめに固定した様子を示す電機子の断面概要図である。
図14】(A)は、本発明の第一実施形態における電機子の平面図である。(B)は、(A)の側面図である。(C)は、本発明の第一実施形態において、電機子をインサート成形する際の金型の内部の状態を示す断面概要図である。
図15】(A)は、本発明の第一実施形態の第六変形例で突出体に筒状体を取り付けた状態において樹脂をクリアランスに流し込んだ際の電機子用部品の凸部と凹部を拡大した拡大断面概要図である。(B)は、本発明の第一実施形態の第七変形例で突出体に筒状体を取り付けた状態において樹脂をクリアランスに流し込んだ際の電機子用部品の凸部と凹部を拡大した拡大断面概要図である。(C),(D)は、本発明の第一実施形態の第八変形例で突出体に筒状体を取り付けた状態において樹脂をクリアランスに流し込んだ際の電機子用部品の凸部と凹部を拡大した拡大断面概要図である。(C),(D)では、突出体の凹部において樹脂の広がる領域が異なる。
図16】(A)は、本発明の第一実施形態の第十四変形例における電機子の側面図であり、樹脂部が電機子の基端近傍を覆うものである。(B)は、本発明の第一実施形態における電機子の側面図であり、樹脂部が電機子の先端近傍まで延びて電機子を覆うものである。(C)は、本発明の第一実施形態における電機子の断面概要図であり、樹脂部の深さを説明するためのものである。
図17】(A)は、本発明の第二実施形態において、突出体に筒状体を取り付ける前の電機子用部品の斜視図である。(B)は、本発明の第二実施形態において、突出体に筒状体を取り付けた後の電機子用部品の斜視図である。
図18】(A)は、本発明の第二実施形態において、突出体に筒状体を取り付ける前の電機子用部品の断面概要図である。(B)は、本発明の第二実施形態において、突出体に筒状体を取り付けた後の電機子用部品の断面概要図である。
図19】(A)は、本発明の第三実施形態において、突出体に筒状体を取り付ける前の内壁面側から視た電機子用部品の斜視図である。(B)は、本発明の第三実施形態において、突出体に筒状体を取り付ける前の外壁面側から視た電機子用部品の斜視図である。
図20】(A)は、本発明の第三実施形態において、突出体に筒状体を取り付ける前の電機子用部品の断面概要図である。(B)は、本発明の第三実施形態において、突出体に筒状体を取り付けた後の電機子用部品の断面概要図である。
図21】(A)は、本発明の第四実施形態において、突出体に筒状体を取り付ける前の内壁面側から視た電機子用部品の斜視図である。(B)は、本発明の第四実施形態において、突出体に筒状体を取り付ける前の外壁面側から視た電機子用部品の斜視図である。
図22】(A)は、本発明の第四実施形態において、突出体に筒状体を取り付ける前の電機子用部品の断面概要図である。(B)は、本発明の第四実施形態において、突出体に筒状体を取り付けた後の電機子用部品の断面概要図である。
図23】(A),(B)は、本発明の第四実施形態における電機子の断面概要図である。(A),(B)では、突出体の凹部において樹脂の広がる領域が異なる。
図24】(A)は、本発明の第四実施形態の第一変形例において、突出体に筒状体を取り付ける前の電機子用部品の断面概要図である。(B)は、本発明の第四実施形態の第一変形例において、突出体に筒状体を取り付けた後の電機子用部品の断面概要図である。
図25】本発明の第四実施形態の第一変形例における電機子の断面概要図である。
図26】(A)は、本発明の第四実施形態の第二変形例において、突出体に筒状体を取り付ける前の電機子用部品の断面概要図である。(B)は、本発明の第四実施形態の第二変形例において、突出体に筒状体を取り付けた後の電機子用部品の断面概要図である。
図27】本発明の第四実施形態の第二変形例における電機子の断面概要図である。
図28】本発明の実施形態におけるインホイールモータ駆動装置の概要図である。
図29】本発明の実施形態におけるインホイールモータ駆動装置のアキシャルギャップ型回転電機の側面図である。
図30】本発明の実施形態におけるインホイールモータ駆動装置の減速機構と車輪連結部の断面図である。
図31】本発明の実施形態におけるインホイールモータ駆動装置のブレーキ機構において、(A)は、ブレーキが効いていない状態を示す断面図であり、(B)は、ブレーキが効いている状態を示す断面図である。
図32】本発明の実施形態におけるインホイールモータ駆動装置の第一変形例の断面概要図である。
図33】本発明の実施形態におけるインホイールモータ駆動装置の第二変形例の断面概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。添付図面は発明を実施する形態の一例であって、図中、同一の符号を付した部分は同一物を表わす。また、各図における各部の形状や寸法比は、必ずしも正確なものではない。
【0027】
<電機子用部品_第一実施形態>
本発明の第一実施形態における電機子用部品1について以下説明する。図1(A)に示す本実施形態における電機子用部品1を含む電機子と対向子(界磁子)2は、アキシャルギャップ型の回転電機(発電機又は電動機)に用いられるものであり、ここでは電機子用部品1を含む電機子はステータとなり、対向子2が複数(ここでは12個)の永久磁石で構成されるロータとなる場合を例示する。対向子2に用いられる永久磁石として、例えば、ネオジム磁石、サマコバ磁石等の希土類磁石やフェライト磁石が挙げられる。アキシャルギャップ型の回転電機のトルクを大きくする場合、磁力が高い永久磁石(例えば、ネオジム磁石)が対向子2の材料として選択されることが好ましい。
【0028】
電機子は、図1(B)に示す電機子用部品1と巻線部(図示省略)と、を有する。図1(B)に示す電機子用部品1は、電機子コア3と、複数の筒状体(ボビン)30と、を有する。また、図3(A)に示すように、電機子コア3は、円盤体(ヨーク)10と、複数の突出体(ティース)20と、を有する。複数の筒状体30は、固定部(図示省略)により円盤体10に固定される。固定部は、電機子用部品1に含まれると見做してもよいし、電機子用部品1とは別のものであると見做してもよい。なお、以下において、図1(B)に示すように、電機子の回転軸方向Zを電機子軸方向Z、電機子の径方向Kを電機子径方向K、電機子の周方向Sを電機子周方向Sと呼ぶこととする。
【0029】
<円盤体>
図2を参照して、円盤体10について説明する。円盤体10は、図2(A)に示すように、電機子軸方向Zに対して直交するプレート形状であって、図2(B)に示すように、電機子径方向K及び電機子周方向Sに延在する。なお、本実施形態の円盤体10は、リング形状となっており、軸心側に円形開口12が形成される。この円形開口12内に、回転電機の回転軸(図示省略)が収容される。
【0030】
円盤体10は、平面視(軸方向視)する場合に同一外形となる円盤状(円環状)の軟磁性鋼板を、電機子軸方向Zに積層した積層鋼板となる。円盤体10は、この積層鋼板によってスラスト力に対して高い剛性が確保される。
【0031】
図2(A),(B)に示すように、円盤体10は、突出体20を収容するための収容部14を、周方向に間隔を開けて(図2(B)では等間隔で、15度間隔)で複数備えている。本実施形態において、収容部14は軸方向に貫通する開口となっており、突出体20の外形と近似形状となる。円盤体10は、この収容部14を取り囲むようにして、内側リング部15と、外側リング部16と、径方向延在部17を有する。内側リング部15は、収容部14の径方向内側縁を形成する環状部分であり、外側リング部16は、収容部14の径方向外側縁を形成する環状部分である。径方向延在部17は、内側リング部15と外側リング部16を繋ぐように双方に連続しつつ電機子径方向Kに延び、円盤体10の周方向に間隔(図2(B)では等間隔で、15度間隔)を空けて設けられる帯状部分となり、収容部14の両側縁を形成する。
【0032】
<突出体>
図3図5を参照して、突出体20について説明する。複数(ここでは12個)の突出体20は、同一形状であり、円盤体10に組み合わされる。図3(A),(B)に示すように、突出体20は、円盤体10の収容部14に収容されると、円盤体10の表面10Aから電機子軸方向Zに突出するように配置される。複数の突出体20は、周方向に等間隔(ここでは15度間隔)で配置される。
【0033】
突出体20は、鉄粉を圧縮形成することで得られる圧粉鉄心により構成される。具体的に、磁性を有する金属粒子(粉末)の表面を絶縁被膜した原材料を用い、この粉末を金型圧縮工程(プレス工程)によって成形し、熱処理(焼鈍)を行うことで製作される。なお、原材料の一部に樹脂を含ませることもできる。また、突出体20は、上記以外の製造方法で製造されたものであってもよい。
【0034】
図4(A),(B)に突出体20の斜視図を示し、図4(C)に突出体20の六面図を示す。突出体20は、柱体であり、図4(C)の最上段の突出体20の上面図、及び図4(C)の最下段の突出体20の底面図に示すように、電機子軸方向Zから視た場合に、略台形形状となる。突出体20を断面形状が台形形状の柱体とすることによって、円盤体10の限られたスペース内に、できる限り緻密に、多くの突出体20を配置できる。なお、図3(A),(B)に示すように、本実施形態では12個の突出体20を配置する場合を例示するが、本発明はこれに限定されない。例えば、6個以上の突出体20を配置することが好ましく、好ましくは12個以上配置する。さらに望ましくは、18個以上配置する。
【0035】
図4(C)に示すように、突出体20は、電機子軸方向Zの先端側を向く先端面22と、電機子軸方向Zの基端側を向く基端面24と、先端面22と基端面24をつなぐ周壁部26を有する。なお、適宜、突出体20の先端面22を突出体側先端面22と呼び、突出体20の基端面24を突出体側基端面24と呼んでもよい。この周壁部26は、電機子径方向Kの内側に向く内壁面26Aと、電機子径方向Kの外側に向く外壁面26Bと、電機子周方向Sに向く一対の側壁面26Cを有する。この結果、突出体20は六面体構造となる。
【0036】
また、突出体20は、図4(A),(B)に示すように、凹部27を複数有するが、1つだけであってもよい。つまり、凹部27は、周壁部26の外周面(内壁面26A、外壁面26B、一対の側壁面26C)において少なくとも1箇所に形成されればよい。本実施形態において凹部27は、内壁面26Aにおいて突出体20の内部側(電機子径方向Kの外側:図3参照)に向かって凹むもの(第一凹部27A)、及び外壁面26Bにおいて突出体20の内部側(電機子径方向Kの内側:図3参照)に向かって凹むもの(第二凹部27B)の2つがある。つまり、本実施形態における突出体20には、凹部27が2箇所に形成される。そして、2つの凹部27(第一凹部27A、第二凹部27B)は、突出体20の先端面22に連続しており、突出体20の先端面22を起点として、突出体20の軸方向A1に沿って基端面24よりも手前まで延びる。図3(A)及び図4(A),(B)では、凹部27は、突出体20の高さの半分よりも上方側に寄った位置まで延びているが、これは一例であって、その他の位置まで延びていてもよい。なお、突出体20の軸方向A1は、突出体20が円盤体10に取り付けられた場合、電機子軸方向Zと平行となる。
【0037】
なお、図5(A)に示す本実施形態の第一変形例における突出体20のように、凹部27は、内壁面26A及び外壁面26Bのみならず、更に、一対の側壁面26Cのそれぞれに設けられてもよい。また、図5(B)に示す本実施形態の第二変形例における突出体20のように、凹部27は、内壁面26A及び外壁面26Bに代わって、一対の側壁面26Cのそれぞれに設けられてもよい。ただし、凹部27を複数設ける場合、凹部27は、周壁部26の外周面(内壁面26A、外壁面26B、一対の側壁面26C)のうち、相互に反対側に位置する対となる面のそれぞれに設けられることが好ましい。また、凹部27は、突出体20(周壁部26)の外周面(内壁面26A、外壁面26B、一対の側壁面26C)のいずれかの位置に少なくとも1つ設けられていればよく、3つ以上設けられてもよい。なお、突出体20(周壁部26)の外周面とは、先端面22及び基端面24を除く突出体20(周壁部26)の周方向を全周する面を指す。また、図5(C)に示す本実施形態の第三変形例における突出体20のように、凹部27は、同一面(図5(C)では、外壁面26B)に複数設けられてもよい。
【0038】
また、本実施形態において凹部27の深さP1は、突出体20の奥行き方向D1(突出体20が円盤体10に取り付けられた場合、電機子径方向K)における突出体20の全長Pmaxの1~5%程度の大きさが想定されるが(図4(C)の上面図参照)、これに限定されるものではなく、その他の大きさであってもよい。また、本実施形態において凹部27の最大幅Q1は、突出体20の幅方向W1(突出体20が円盤体10に取り付けられた場合、電機子周方向S)における突出体20の最大幅Qmax図4(C)の上面図参照)の1~10%程度の大きさが想定されるが、これに限定されるものではなく、その他の大きさであってもよい。
【0039】
<筒状体>
図1図6図8を参照して、筒状体30について説明する。複数の筒状体30のそれぞれは、図1(B)に示すように、同一の筒形状をしており、突出体20の数と同数(ここでは12個)ある。また、電機子軸方向Zから視た場合に、筒状体30の内形は略台形形状となり、突出体20の外形と近似形状となる。また、電機子軸方向Zから視た場合に、筒状体30の外形は略台形形状となる。
【0040】
また、図7(A),(B)に示すように、筒状体30は、筒状体30の内周面30Aで取り囲まれる中空領域30Cに突出体20が挿入され、筒状体30が円盤体10の表面10Aに載置されるように取り付けられる。結果、筒状体30の中空領域30Cに突出体20が位置し、突出体20の外周面(内壁面26Aと、外壁面26Bと、一対の側壁面26C)を筒状体30の内周面30Aが取り囲むようになる。この際、筒状体30は、突出体20と同様に円盤体10の表面10Aから電機子軸方向Zに突出する。
【0041】
筒状体30は、電機子軸方向Zの先端側を向く環状の先端面35と、電機子軸方向Zの基端側を向く環状の基端面36と、先端面35と基端面36に連続して双方を繋ぐ筒状壁部37と、を有する。なお、適宜、筒状体30の先端面35を筒状体側先端面35と呼び、筒状体30の基端面36を筒状体側基端面36と呼んでもよい。
【0042】
本実施形態において筒状体30は、図6(A),(B)に示すように、筒状の筒状部31と、先端側フランジ部32と、基端側フランジ部33と、を有する。先端側フランジ部32は、筒状部31の軸方向の一端(先端)を起点として自身の外側外縁が筒状部31の外側外縁よりも外側に位置するように拡径する。基端側フランジ部33は、筒状部31の軸方向の他端(基端)を起点として自身の外側外縁が筒状部31の外側外縁よりも外側に広がるように拡径する。従って、先端面35も基端面36も筒状部31の外側外縁よりも外側に広がるように拡径する。なお、筒状部31の軸方向は、筒状部31が突出体20に取り付けられた場合、電機子軸方向Zと平行となる。
【0043】
筒状部31の軸方向の周りの外周面に導線が巻回されて、巻線部(コイル:図14(B)の符号50参照)となる。先端側フランジ部32及び基端側フランジ部33は、筒状部31から巻線部が抜けないようにストッパとして機能する。また、筒状部31の外形を略台形形状とすることで、筒状部31に巻き付けられる巻線部の巻き付け角を緩くすることができる。基端側フランジ部33は、図7(B)に示すように、円盤体10の表面10Aに当接する。また、後述する固定部としての樹脂部60は、筒状体30が円盤体10から離反しないように、電機子軸方向Zにおいて基端側フランジ部33が引っ掛かるように構成されている。このため、筒状体30は、固定部としての樹脂部60に引っ掛かり、円盤体10から離反しないその他の構造を有していれば、先端側フランジ部32及び基端側フランジ部33を有しないその他の構造であってもよい。
【0044】
図6(A),(B)に示すように、筒状体30は、突出体20に取り付けられた際、電機子径方向Kの内側に向く内壁面310と、電機子径方向Kの外側に向く外壁面311と、電機子周方向Sに向く一対の側壁面312を有する。内壁面310は、電機子径方向Kの外側に凹む湾曲状の平面として構成されてもよく、外壁面311は、電機子径方向Kの外側に凸となる湾曲状の平面として構成されてもよい。また、図6(D)に示すように、筒状部31における内壁面310の最大幅Fは、筒状部31における外壁面311の最大幅Gよりも小さく設定される。内壁面310と一対の側壁面312の境界(角部)は、平面視部分円弧状の湾曲面となる。同様に、外壁面311と一対の側壁面312の境界(角部)も、平面視部分円弧状の湾曲面となっている。湾曲面とすることで、巻線部に傷が付くことを回避する。
【0045】
また、図6(A)~(C)に示すように、筒状体30は、筒状体30の内周面30Aに凸部34を複数有するが、1つだけであってもよい。つまり、凸部34は、筒状体30の内周面30Aにおいて少なくとも1箇所に形成されればよい。本実施形態において凸部34は、内周面30Aに、第一凹部27Aに対応し、中空領域30C側に向かって凸となるもの(第一凸部34A)と、第二凹部27Bに対応し、中空領域30C側に向かって凸となるもの(第二凸部34B)の2つがある。つまり、本実施形態における筒状体30には、凸部34が2箇所に形成される。凸部34は、筒状体30を突出体20に取り付けた際、対応する凹部27に係合(挿入)可能な位置に設けられ、対応する凹部27に係合(挿入)可能大きさ・形状(凹部27に取り囲まれる凹領域に配置な大きさ・形状)を有する。つまり、第一凸部34Aは、第一凹部27Aに係合(挿入)可能な大きさ・形状を有し、第二凸部34Bは、第二凹部27Bに係合(挿入)可能な大きさ・形状を有する。
【0046】
また、本実施形態において凸部34は、筒状体30の先端面35を起点として、筒状体30の軸方向A2(電機子軸方向Z)に沿って筒状体30の基端面36よりも手前まで延びる。つまり、凸部34は、筒状体30の先端面35に連続する。
【0047】
そして、図7(A)及び図8(A)に示すように、凹部27は、先端面22に連続するため、突出体20の先端面22と同一平面上に入口開口27Eが形成される。筒状体30が突出体20に取り付けられる際、凹部27の入口開口27Eを通じて、凸部34(第一凸部34A、第二凸部34B)は、対応する凹部27(第一凹部27A、第二凹部27B)に取り囲まれる凹領域に入り込む。筒状体30(基端側フランジ部33)が円盤体10の表面10Aに接近するに連れて、凸部34(第一凸部34A、第二凸部34B)は、対応する凹領域の奥側により入り込む。そして、図7(B)及び図8(B)に示すように、筒状体30の基端側フランジ部33が円盤体10の表面10Aに当接すると、筒状体30の突出体20への取り付けが完了する。この際、本実施形態において突出体20の先端面22に近位な一部領域は、先端側フランジ部32よりも上方側に突出した状態になる。
【0048】
また、筒状体30を突出体20に取り付ける際、凸部34(第一凸部34A、第二凸部34B)を凹部27(第一凹部27A、第二凹部27B)に取り囲まれる凹領域に挿入するため、凸部34と凹部27は、突出体20に対する筒状体30の周方向の相対姿勢を姿勢決めする役割を果たす。この意味で、凸部34と凹部27は、突出体20に対する筒状体30の周方向の相対姿勢を姿勢決めする相対姿勢決め機構を構成すると見做せる。
【0049】
ここで、凹部27において突出体20の軸方向A1(電機子軸方向Z)に平行な方向を凹部27の長さ方向L1と定義し、凸部34において筒状体30の軸方向A2(電機子軸方向Z)に平行な方向を凸部34の長さ方向L2と定義する(図8(A),(B)参照)。図8(B)及び図9(A)に示すように、筒状体30を突出体20に取り付けて、筒状体30の基端面36が円盤体10の表面10Aに当接した際、係合面270は、規制面340に係合(当接)することが好ましい。なお、本実施形態における係合面270とは、先端面22又は入口開口27Eを基準として、凹部27内における長さ方向L1(電機子軸方向Z)において遠位側の段差を指す。具体的にその段差を構成しつつ、長さ方向L1(電機子軸方向Z)の先端側を向く段差面が係合面270となる。また、本実施形態における規制面340とは、筒状体30の先端面35を基準として凸部34における長さ方向L2(電機子軸方向Z)において遠位側の段差を指す。具体的にその段差を構成しつつ、長さ方向L1(電機子軸方向Z)の基端側を向く段差面が規制面340となる。そして、筒状体30を突出体20に取り付けると、規制面340は、係合面270側を向く。
【0050】
永久磁石で構成される対向子2(図1(A)参照)の磁力が強い場合、磁力に起因した引張力により突出体20が収容部14(図8(B)参照)から離脱する可能性がある。固定部により筒状体30が円盤体10に固定されつつ、電機子軸方向Zにおいて凸部34の規制面340が突出体20の凹部27の係合面270に係合(当接)していれば、対向子2の磁力に起因した引張力が突出体20に作用しても、突出体20は電機子軸方向Zへ位置ずれをしないので、突出体20が収容部14から離脱することを防止することができる。この場合、凸部34は、凹部27及び固定部と協働して、突出体20の収容部14からの離脱を規制する離脱規制機構を成すと見做せる。
【0051】
上記のようなことを実現するには、図9(B)に示すように、凸部34は、先端面35及び基端面36を含まない途中区間S1において筒状体30の軸方向A2(電機子軸方向Z)に延びるように設けられてもよい。また、図9(C)に示すように、凸部34は、先端面35よりも上方側の上方側区間S2を含めて筒状体30の軸方向A2(電機子軸方向Z)に延びるように設けられてもよい。ただし、凸部34は、突出体20の先端面22よりも上方側に突出しないように構成されることが好ましい。
【0052】
また、図10(A),(B)に示すように、筒状体30の凸部34の突出方向の先端面341と、突出体20の凹部27の深さ方向における凹部27の基底面27Fの間に、クリアランス(隙間)40を設けてもよい。この際、図10(B)に示すように、突出体20の凹部27は、突出体20の先端面22及び基端面24を含まない凹部27の長さ方向L1の一部区間T2が、隣接する他の区間T1,T3よりも深い深さを有するように構成されてもよい。一部区間T2は、クリアランス40が設けられる区間の一部区間である。一部区間T2には、他の区間の凹部27の基底面27Fを基準として更に凹む凹部273が設けられると見做せる。凹部273は、図5に示す突出体20に対して後加工を施すことにより設けられる。また、図10(C)に示すように、筒状体30の凸部34には、筒状体30の先端面35及び基端面36を含まない凸部34の長さ方向L2の一部区間T4に凹部342が設けられてもよい。一部区間T4は、クリアランス40が設けられる区間の一部区間である。なお、図9(A),(B)に示す凹部27と凸部34の間には、クリアランス(隙間)40はほとんどない。
【0053】
また、図5(A)に示す本実施形態の第一変形例における突出体20に対応する凸部34は、図11(A)に示すように、突出体20に筒状体30を取り付けた際、内周面30Aのうち、内壁面26Aを向く面37A、外壁面26Bを向く面37Bのみならず、一対の側壁面26Cのそれぞれを向く面37C,37Dにも設けられる。また、図5(B)に示す本実施形態の第二変形例における突出体20に対応する凸部34は、図11(B)に示すように、一対の側壁面26Cのそれぞれを向く面37C,37Dにのみ設けられる。また、図5(C)に示す本実施形態の第三変形例における突出体20に対応する凸部34は、図11(C)に示すように、突出体20に筒状体30を取り付けた際、内周面30Aのうち、内壁面26Aを向く面37Aに一つ、外壁面26Bを向く面37Bに2つ設けられる。つまり、筒状体30を突出体20に取り付けた際、凸部34は、凹部27に向かい合う位置で、且つ凹部27に係合可能な大きさ・形状を有するように設けられる。
【0054】
また、以上の構成と異なり、図12(A)に示すように、筒状体30を突出体20に取り付けて、筒状体30の基端面36が円盤体10の表面10Aに当接した際、係合面270は、規制面340に係合(当接)せずに離れていてもよい。つまり、係合面270と規制面340の間に隙間41が形成されてもよい。この状態では、係合面270は、規制面340よりも電機子軸方向Zの先端側に位置し、電機子軸方向Zにおいて距離を空けて規制面340に対向する。
【0055】
図12(B)に示すように、もし、対向子2の磁力に起因した引張力により突出体20が電機子軸方向Zの先端側に移動しても、係合面270が規制面340に接近して、係合面270は規制面340に係合(当接)する。この際、突出体20の移動前における電機子軸方向Zにおける係合面270と規制面340の間の離間距離V1が、円盤体10の収容部14の深さV2よりも小さければ(V1<V2)、規制面340による規制により突出体20が収容部14から離脱することを防止することができる。また、突出体20が電機子軸方向Zの先端側に移動しても対向子2に衝突しないように、離間距離V1は、対向子2と突出体20の離間距離V3よりも小さい(V1<V3)。
【0056】
なお、筒状体30を突出体20に取り付けた際、そもそも隙間41が形成されない方が好ましい。隙間41が形成されることを防止するため、図13(A)に示すように、筒状体30を突出体20に取り付けた際、係合面270と規制面340は係合するが、筒状体30の基端面36が円盤体10の表面10Aから離れるように筒状体30を構成してもよい。この場合、筒状体30の基端面36と円盤体10の表面10Aの間に隙間42が形成される。隙間42が形成されても、後述する固定部としての樹脂部60を設けるに当たって樹脂を流し込んだ際、隙間42に樹脂が入り込むようにすれば、図13(B)に示すように、隙間42を埋めつつ、筒状体30を円盤体10に固定することができる。
【0057】
<固定部>
図14及び図16を参照して、固定部について説明する。固定部は、筒状体30を円盤体10に固定する。本実施形態において固定部は、図14(B)及び図16(C)に示すように、例えば、筒状体30の筒状部31の外周面に巻線部50を配置した電機子100において、円盤体10と共に、巻線部50や筒状体30や突出体20を樹脂で包み込んだ状態で硬化してそれらを一体化する樹脂部60により構成される。結果、樹脂部60は、筒状体30と円盤体10の双方の少なくとも一部領域をまとめて覆い、樹脂部60により筒状体30は円盤体10に固定される。この状態では、樹脂部60は、筒状体30及び円盤体10の双方に接触しつつ、筒状体30と円盤体10の間に広がる連続する樹脂の領域として構成される。図14(A),(B)では、樹脂部60の外形を点線で示しており、樹脂部60は、円盤体10、巻線部50、筒状体30及び、先端面22を除く突出体20全体を包み込んでいるが、これに限定されるものではなく、先端面22も樹脂部60に包み込まれてもよい。なお、固定部は、樹脂部60のみで構成されてもよいし、樹脂部60に加えてその他の構成要素を含むように構成されてもよい。その他の構成要素として、例えば、筒状体30を円盤体10に固定するネジ等の固定部材が一例として挙げられる。
【0058】
図14(C)に、電機子100のインサート成形用の金型200を示す。金型200のキャビティーの鉛直方向の底面には、複数の突出体20の先端面22を同一位置に保持する基準面210が形成される。この基準面210によって、複数の突出体20の先端面22の電機子軸方向Zにおける位置を、互いに高精度に一致させることができる。また、キャビティー内には、基準面210によりも鉛直方向の上方側において、円盤体10を鉛直下側から保持する円盤体保持部220が形成される。この円盤体保持部220によって、基準面210を基準とした円盤体10の電機子軸方向Zの位置及び電機子軸方向Zに対する直交度を高精度に決定する。なお、キャビティーの天井面230と突出体20の基端面24の間、及び、キャビティーの天井面230と円盤体10の裏面10Bの間には隙間が形成される。更に、キャビティー内には、筒状体30の落下防止のためのピン240が設けられる。ピン240は、キャビティーの基準面210を起点としてキャビティーの天井面230に向かって延びるように設けられる。筒状体30の先端面35においてピン240は筒状体30を支持する。金型200の内部に樹脂を注入すると、この隙間や電機子100の周囲に樹脂が流れ込むので、インサート成形後の突出体20の基端面24及び円盤体10の裏面10Bの全部または一部、電機子100の周囲は、樹脂によって覆われる。樹脂が硬化すると、電機子100の周囲を覆う樹脂部60が完成する。なお、筒状体30の先端面35にはピン240が接触するため、図14(A)に示すように、筒状体30の先端面35には樹脂で覆われないピンホール320が形成される。結果、円盤体10、突出体20、及び筒状体30に、電機子軸方向Zにおける基端側に向かうスラスト力が作用しても、樹脂部60がそのスラスト力を受け止めることができる。
【0059】
なお、図10(A)に示すように、凸部34の突出方向の先端面341と、突出体20の凹部27の深さ方向における凹部27の基底面27Fの間にクリアランス40が設定された場合、樹脂部60の形成のために金型200の内部に樹脂を注入すると、図15(A)に示すように、クリアランス40にも樹脂が流れ込み、樹脂はクリアランス40で上記先端面341と上記基底面27Fに接着して硬化する。つまり、樹脂部60がクリアランス40まで広がる。結果、樹脂部60を介して突出体20と筒状体30の結合力がより高まるので、樹脂部60は、上記離脱規制機構と共に突出体20が収容部14から離脱することを妨げることができる。
【0060】
更に、図10(B)に示すように、突出体20の凹部27は、突出体20の先端面22及び基端面24を含まない凹部27の長さ方向L1の一部区間T2が、隣接する他の区間T1,T3よりも深い深さを有するように構成された場合、樹脂部60の形成のために金型200の内部に樹脂を注入すると、図15(B)に示すように、一部区間T2の深さがより深い部分にも樹脂が流れ込んで硬化する。つまり、樹脂部60がクリアランス40の一部区間T2の深さがより深い部分まで広がる。結果、アンカー効果により突出体20に対する樹脂部60の接着力がより向上し、突出体20と筒状体30の結合力もより増大する。
【0061】
更に、図10(C)に示すように、筒状体30の凸部34の長さ方向L2の一部区間T4に凹部342が設けられた場合、樹脂部60の形成のために金型200の内部に樹脂を注入すると、図15(C)に示すように、筒状体30側の一部区間T4の深さがより深い部分にも樹脂が流れ込んで硬化する。つまり、樹脂部60が凹部342まで広がる。結果、アンカー効果により突出体20及び筒状体30に対する樹脂部60の接着力がより向上し、突出体20と筒状体30の結合力もより増大する。
【0062】
ここで、図15(B),(C)に示すように、突出体20の一部区間T2において深さが他より深い部分を、隣接する他の区間T1,T3における凹部27の基底面27Fを基準として更に深さ方向に凹む凹部271と定義する。樹脂部60の形成のために金型200の内部に樹脂を注入すると、凹部271には樹脂が入り込んで、凹部271の内部は樹脂で充填される。この際、係合面272には、樹脂部60(固定部)が当接する。係合面272とは、凹部27の長さ方向L1において入口開口27E又は先端面22を基準として、凹部271内における長さ方向L1(電機子軸方向Z)において遠位側の段差を指す。具体的にその段差を構成し、電機子軸方向Zの先端側を向く段差面が係合面272となる。一方、樹脂部60(固定部)において係合面272に係合(当接)する面が規制面61となる。突出体20は、樹脂部60(固定部)の規制面61により電機子軸方向Zへの移動を規制されて位置ずれをしない。この場合も、突出体20が収容部14から離脱することを防止することができる。この場合、凹部271は、樹脂部60(固定部)と協働して、突出体20の収容部14からの離脱を規制する離脱規制機構を成すと見做せる。
【0063】
また、図15(C)に示すように、樹脂部60の形成のために金型200の内部に樹脂を注入すると、筒状体30の凹部342にも樹脂が入り込んで、凹部342の内部は樹脂で充填される。この際、樹脂部60は、自身の係合面62で凹部342の規制面343に当接して電機子軸方向Zへの移動を規制されて位置ずれをし難くなる。規制面343とは、筒状体30の先端面35を基準として、凹部342内における長さ方向L1(電機子軸方向Z)において近位側の段差を指す。具体的にその段差を構成しつつ、電機子軸方向Zの基端側を向く段差面が規制面343となる。樹脂部60の係合面62とは、電機子軸方向Zにおいて規制面343(電機子軸方向Zの先端側)を向く樹脂部60の面を指す。以上のように、樹脂部60は、強固に筒状体30に結合している。結果、突出体20は、樹脂部60(固定部)の規制面61により電機子軸方向Zへの移動をよりし難くなる。つまり、凹部342は、離脱規制機構の離脱防止を補強する役割を果たす。
【0064】
以上において凹部271、凹部342は、それぞれ1つである設けられているが、これに限定されるものではなく、クリアランス40が形成される区間においてそれぞれ複数設けられてもよい。
【0065】
なお、図15(D)に示すように、電機子軸方向Zにおいて筒状体30の規制面340と突出体20の係合面270が離れた状態にある場合において(図12(A)と同様)、金型200の内部に樹脂を注入して、突出体20の凹部27に樹脂が入り込んだとしても、樹脂が突出体20の係合面270に当接するまで入り込むとは限らない。この場合、係合面270は、樹脂部60に当接せずに離れた状態となる。ただし、樹脂部60は、係合面270よりも電機子軸方向Zの先端側に位置し、電機子軸方向Zにおいて係合面270に対向する規制面63を有する。この場合、筒状体30の規制面340の場合と同様に、対向子2の磁力に起因した引張力により突出体20が電機子軸方向Zの先端側に移動しても、係合面270が規制面63に接近して、係合面270は規制面63に係合(当接)する。この場合も、規制面63による規制により突出体20の移動が規制され、突出体20が収容部14から離脱することを防止することができる。以上のことは、図15(D)に示す突出体20の凹部271の係合面272及び樹脂部60の規制面61の組、樹脂部60の係合面62及び凹部342の規制面343の組についても同様に適用することができる。
【0066】
突出体20を圧粉鉄心とする場合、成形工程や熱処理工程で寸法変化が生じやすい。すなわち、突出体20の軸方向A1(突出体20が円盤体10に設置された場合、電機子軸方向Z)の寸法に誤差が生じやすい。そこで本実施形態の金型200のように(図14(C)参照)、複数の突出体20の先端面22を保持する基準面210を設けることで、突出体20の寸法誤差を、基端面24側に集約させる。また、円盤体10の位置決めも、突出体20を利用することなく、円盤体保持部220によって行うことで、高精度化できる。なお、この金型200によってインサート成形した場合、突出体20の先端面22は樹脂部60から露出した状態となる。
【0067】
なお、固定部としての樹脂部60は、筒状体30を円盤体10に固定すれば足りる。このため、電機子軸方向Zを基準とした場合、図16(A),(C)に示すように、樹脂部60は、少なくとも円盤体10の裏面10Bと同位置となる位置Z1から、電機子軸方向Zにおいて筒状体30の基端面(第一フランジ面)36とは反対側に位置する基端側フランジ部33の第二フランジ面36Bをわずかに超える位置Z2まで広がればよい。この際、樹脂部60は、円盤体10の表面10A及び側面10Cと、基端側フランジ部33の第二フランジ面36Bの双方に接触しつつ、円盤体10及び筒状体30の一部領域を覆う。つまり、電機子軸方向Zを基準とした場合、樹脂部60の下端は、円盤体10の裏面10Bと同位置となる位置Z1となり、樹脂部60の上端は、第二フランジ面36Bをわずかに超える位置Z2となる。樹脂部60が以上のように構成されれば、筒状体30が電機子軸方向Zの先端側に移動しようとしても、電機子軸方向Zにおいて筒状体30の基端側フランジ部33は樹脂部60に引っ掛かるので、筒状体30は円盤体10に固定される。結果、円盤体10及び筒状体30のそれぞれの少なくとも一部領域は、連続する樹脂の領域を成す樹脂部60により覆われ、筒状体30が円盤体10に固定された状態になる。なお、樹脂部60の下端は、位置Z1に限定されるものではなく、電機子軸方向Zを基準として、円盤体10の表面10Aと同位置となる位置Z4以下であればよい。つまり、樹脂部60の下端は、位置Z4(円盤体10の表面10A)であってもよいし、位置Z4と位置Z1の間のいずれかの位置であってもよいし、位置Z1以下の位置であってもよい。
【0068】
そして、筒状体30を円盤体10に強固に固定するために、図16(B),(C)に示すように、電機子軸方向Zを基準とした場合、樹脂部60の上端は、筒状体30の先端側フランジ部32を超える位置Z3となってもよい。また、樹脂部60の上端は、上記位置Z2から上記位置Z3までの間の範囲のいずれかの位置に位置するように構成されてもよい。この範囲であれば、円盤体10、筒状体30及び巻線部50のそれぞれの少なくとも一部領域は、連続する樹脂の領域を成す樹脂部60により覆われ、筒状体30が円盤体10に固定されつつ、巻線部50が筒状体30に固定された状態になる。
【0069】
また、筒状体30(巻線部50)の周方向を基準とした場合、樹脂部60は、筒状体30及び巻線部50の外側から筒状体30及び巻線部50の周方向の一部領域を覆うように構成されてもよいし、筒状体30及び巻線部50の周方向の全領域を覆うように構成されてもよい。
【0070】
以上の通り、本実施形態の電機子用部品1は、円盤体10、突出体20及び筒状体30が別部材となっており、円盤体10を積層鋼板で構成しつつ、突出体20を圧粉鉄心としている。円盤体10によって電機子用部品1の全体的な剛性を高めつつも、突出体20を所望形状に自在に成形可能となる。
【0071】
圧粉鉄心となる突出体20、及び筒状体30は、磁路の形成が無方向(自在)となるので、電機子軸方向Zに延びる磁路を、基端側において円盤体10側(ここでは電機子周方向S)に屈曲させることができる。一方、電磁鋼板で形成される円盤体10は、平面方向(ここでは電機子周方向S)に沿った磁路を形成しやすい。従って、収容部14に突出体20を収容させることで、突出体20の基端側の内部に形成される磁路と、円盤体10に形成される磁路の方向を連続(一致)させることが可能となり、ロスの少ない磁界を生成できる。
【0072】
更に本実施形態の突出体20及び筒状体30は、電機子軸方向Zから視た場合に略台形形状としている。このようにすると、図1(B)に示すように、リング状の電機子用部品1において、電機子周方向Sに多数の突出体20及び筒状体30を緻密に配置できる。結果、トルクに影響を与え得る突出体20の先端面22及び筒状体30の先端面35の総面積を増やすことが可能となる。また、軸心側が鋭角となる扇型と比較して、内周側(軸心側)に筒状体30の内壁面310を確保できる結果、巻線部50の巻き付け角度を緩やかにできるので、巻線部50の損傷を抑制できる。
【0073】
<電機子用部品_第二実施形態>
図17及び図18を参照して、本発明の第二実施形態における電機子用部品1について以下説明する。本実施形態における突出体20は、図17(A)及び図18(A)に示すように、周壁部26(突出体20)の外周面260に段差29を有する。段差29は、突出体20の外周面260の軸方向A1(電機子軸方向Z)における途中位置において突出体20(周壁部26)の外周面260の一部を成し、突出体20の軸方向A1(電機子軸方向Z)の先端側を向き、且つ突出体20の周方向を全周する環状の段差面290を有する。以下において、適宜、突出体20の段差29を突出体側段差29と呼んでもよく、突出体20の段差面290を突出体側段差面290と呼んでもよい。
【0074】
ここで、段差面290を基準として段差面290より上方側(電機子軸方向Zの先端側)において突出体20の先端面22の外縁22Aで先端面22に連続する外周面260の一部を上方側外周面261と定義し、段差面290より下方側(電機子軸方向Zの基端側)で突出体20の基端面24の外縁24Aで基端面24に連続する外周面260の一部を下方側外周面262と定義する。上方側外周面261及び下方側外周面262は、突出体20の中心軸20Aに直交する軸直交方向の中心軸20Aから離れる側を向き、突出体20の周方向において突出体20を全周して環状に構成される。段差面290は、段差面290の内側外縁292で上方側外周面261に連続しつつ、上方側外周面261から離れる方向に拡径し、且つ段差面290の外側外縁291で下方側外周面262に連続する。結果、段差面290を基準とした突出体20の軸方向A1における突出体20の下段部は、段差29(段差面290)により、段差面290を基準とした突出体20の軸方向A1における突出体20の上段部よりも外周面が外側に位置するように拡径する。
【0075】
また、本実施形態の突出体20に対応する筒状体30は、図17(A)及び図18(A)に示すように、内周面30Aに段差38を有する。段差38は、筒状壁部37(筒状体30)の内周面371(内周面30A)の軸方向A2(電機子軸方向Z)における途中位置において筒状壁部37(筒状体30)の内周面371(内周面30A)の一部を成しつつ、筒状壁部37(筒状体30)の軸方向A2(電機子軸方向Z)の基端側を向き、且つ筒状壁部37(筒状体30)の周方向を全周する環状の段差面380を有する。以下において、適宜、筒状体30の段差38を筒状体側段差38と呼んでもよく、筒状体30の段差面380を筒状体側段差面380と呼んでもよい。
【0076】
ここで、図18(A)において段差面380を基準として段差面380より上方側(電機子軸方向Zの先端側)において筒状体30の先端面35の内側外縁350で先端面35に連続する内周面371(内周面30A)の一部を上方側内周面301と定義し、段差面380より下方側(電機子軸方向Zの基端側)において筒状体30の基端面36の内側外縁360で基端面36に連続する内周面371(内周面30A)の一部を下方側内周面302と定義する。上方側内周面301及び下方側内周面302は、筒状体30の中心軸30Dに直交する軸直交方向の中心軸30Dに向かう側を向き、筒状体30の周方向において筒状体30を全周して環状に構成される。段差面380は、段差面380の内側外縁382で上方側内周面301に連続しつつ、筒状体30の外周面30Bに接近する方向に拡径し、且つ段差面380の外側外縁381で下方側内周面302に連続する。結果、段差面380を基準とした筒状体30の軸方向A2(電機子軸方向Z)における筒状体30の上段部は、段差38(段差面380)により、段差面380を基準とした筒状体30の軸方向A2における筒状体30の下段部よりも筒状体30の中空領域30Cの中央側に縮径する。
【0077】
以上のように構成される筒状体30を突出体20に取り付けると、図18(B)に示すように、筒状体30の基端面36は、円盤体10の表面10Aに当接しつつ、筒状体30の段差面380は、電機子軸方向Zにおいて突出体20の段差面290に係合(当接)する。突出体20の段差面290は、第一実施形態における係合面に相当し、筒状体30の段差面380は、第一実施形態における規制面に相当する。筒状体30が固定部により円盤体10に固定されつつ、電機子軸方向Zにおいて筒状体30の段差面(規制面)380が突出体20の段差面(係合面)290に係合(当接)していれば、対向子2の磁力に起因した引張力が突出体20に作用しても、突出体20は筒状体30の段差面380により移動を制限されるので、突出体20が収容部14から離脱することを妨げることができる。この場合、筒状体30の段差面380(段差38)は、突出体20の段差面290(段差29)及び固定部と協働して、突出体20の収容部14からの離脱を規制する離脱規制機構を成すと見做せる。
【0078】
また、図18(B)では、突出体20の上方側外周面261と筒状体30の上方側内周面301の間、及び、突出体20の下方側外周面262と筒状体30の下方側内周面302の間の双方にクリアランスはほとんどないが、これに限定されるものではない。突出体20の上方側外周面261と筒状体30の上方側内周面301の間に、第一実施形態の複数の変形例と同様にクリアランスを設けてもよい。第一実施形態の場合と同様に、固定部に含まれる樹脂をクリアランスに流し込めば、本実施形態の場合も突出体20と筒状体30の結合力をより増大させることができる。一方で、突出体20に対する筒状体30の径方向における相対位置の位置決めを容易に行うのに、突出体20の下方側外周面262と筒状体30の下方側内周面302の間には、クリアランスがほとんど無い方が好ましいが、これに限定されるものではなく、クリアランスがあってもよい。
【0079】
また、第一実施形態の第十二変形例(図12参照)の場合と同様に、筒状体30を突出体20に取り付けて、筒状体30の基端面36が円盤体10の表面10Aに当接した際、突出体20の段差面(係合面)290は、段差面(規制面)380に係合(当接)せずに離れていてもよい。つまり、段差面(係合面)290と段差面(規制面)380の間に隙間があってもよい。この状態では、段差面(係合面)290は、段差面(規制面)380よりも電機子軸方向Zの先端側に位置し、段差面(規制面)380に対向する。
【0080】
もし、対向子2の磁力に起因した引張力により突出体20が電機子軸方向Zの先端側に移動しても、段差面(係合面)290が段差面(規制面)380に接近して、結果として、段差面(係合面)290は段差面(規制面)380に係合(当接)する。この際、電機子軸方向Zにおける段差面(係合面)290と段差面(規制面)380の間の離間距離が、円盤体10の収容部14の深さよりも小さければ、段差面(規制面)380による規制により突出体20が収容部14から離脱することを防止することができる。
【0081】
なお、本実施形態においても、可能な限り、第一実施形態における説明や各変形例を適用可能であり、そのようなものも本発明の範囲に含まれる。
【0082】
<電機子用部品_第三実施形態>
本発明の第三実施形態における電機子用部品1について以下説明する。図19及び図20に示す本実施形態における電機子用部品1と第一実施形態における電機子用部品1と異なる点は、突出体20の凹部27と筒状体30の凸部34の態様である。本実施形態における突出体20の凹部27は、図20(A)に示すように、突出体20の先端面22と基端面24を含まない、突出体20の軸方向A1(電機子軸方向Z)の途中区間T5に設けられる。図19(A),(B)に示すように、本実施形態における凹部27は、内壁面26Aに設けられるもの(第三凹部27C)と外壁面26Bに設けられるもの(第四凹部27D)があり、それぞれ突出体20の軸方向A1の途中区間T5において突出体20の幅方向W1に延びる。
【0083】
一方で、本実施形態の筒状体30の凸部34は、図20(A)に示すように、筒状体30の先端面35と基端面36を含まない、筒状体30の軸方向A2(電機子軸方向Z)の途中区間S3に設けられる。図19(A),(B)に示すように、本実施形態における凸部34は、第三凹部27Cに対応するもの(第三凸部34C)と第四凹部27Dに対応するもの(第四凸部34D)があり、それぞれ筒状体30の軸方向A2の途中区間S3において筒状体30の幅方向W2に延びる。
【0084】
なお、凹部27は、以上に限定されるものではなく、突出体20の途中区間T5において突出体20の軸方向A1(電機子軸方向Z)に延びるように構成されてもよい。この場合、凸部34は、凹部27に合わせて、途中区間S3において筒状体30の軸方向A2(電機子軸方向Z)に延びるように構成される。
【0085】
以上のように構成される筒状体30を突出体20に取り付けるには、筒状体30は、自身の中心軸30Dの軸直交方向の外側に拡開するように弾性変形する必要がある。また、図20(A),(B)に示すように、基端面36に近位側で、電機子軸方向Zの基端側を向く凸部34の面(以下、傾斜面と呼ぶ。)344は、筒状体30の内周面30Aを起点として、筒状体30の先端面35に対して近位側で電機子軸方向Zの先端側を向く凸部34の先端面345の内側外縁346に向かって傾斜することが好ましい。つまり、傾斜面344は、電機子軸方向Zの先端側と、筒状体30の中心軸30Dに直交する軸直交方向の内側(中空領域30C側)の合成方向に向かって傾斜する。この場合、筒状体30の奥行き方向D2に沿って切った凸部34の断面は、筒状体30の先端面35に近位側が遠位側よりも中空領域30Cに向かってより突出する三角形(図20(A),(B)参照)となる。なお、上記傾斜面は、図20(A),(B)では平面となっているが、これに限定されるものではなく、曲面であってもよい。そして、凸部34の同断面の形状は、三角形に限定されるものではなく、その他の形状であってもよい。凸部34の同断面のその他の形状として、例えば、上記傾斜面が中空領域30C側に凸となる曲面で構成される形状(例えば、半円形)が挙げられる。
【0086】
筒状体30の基端面36に取り囲まれる筒状体30の開口303を通じて筒状体30の中空領域30Cに突出体20に挿入させると、突出体20の先端面22に凸部34の傾斜面344が接触するまでは、スムーズに筒状体30に突出体20を挿入させることができる。突出体20の先端面22に凸部34の傾斜面344が接触した状態で筒状体30に対する突出体20の挿入を継続すると、突出体20の先端面22は、凸部34の傾斜面344上を摺動しつつ、筒状体30を筒状体30の軸直交方向の外側に押し広げる。結果、筒状体30が弾性変形して自身の軸直交方向に外側に拡開変形する。そして、図20(B)に示すように、凸部34(第三凸部34C、第四凸部34D)は、対応する凹部(第三凹部27C、第四凹部27D)で取り囲まれる凹領域に入り込み、凹部27(第三凹部27C、第四凹部27D)に係合する。この際、突出体20の先端面22を基準として、凹部27内における突出体20の軸方向A1(電機子軸方向Z)において遠位側の段差は、段差面を有し、その段差面が係合面270となる。また、筒状体30の先端面35を基準として、筒状体30の軸方向A2(電機子軸方向Z)において凸部34の遠位側の段差は、段差面を有し、その段差面が規制面340となる。なお、本実施形態において規制面340は、傾斜面344に相当する。筒状体30の基端面36は円盤体10の表面10Aに当接しつつ、係合面270は規制面340に係合(当接)する。
【0087】
なお、図20(A),(B)に示すように、傾斜面344に合わせて、凹部27(図20(A),(B)では、第四凹部27D)の係合面270も傾斜面を有するように構成されてもよい。この場合、係合面270が有する傾斜面は、突出体20の外周面260を起点として、電機子軸方向Zの先端側と、突出体20の中心軸20Aに直交する軸直交方向の内側(突出体20の内部側)の合成方向に傾斜する。凹部27の傾斜面を以上のように構成すると、係合面270と規制面340の当接面積が増大するので、好ましい。
【0088】
第三凹部27Cと第四凹部27Dの双方の係合面270が傾斜面を有しないもの、第三凹部27Cと第四凹部27Dの双方の係合面270が傾斜面を有するものも本発明の範囲に含まれる。
【0089】
筒状体30が固定部により円盤体10に固定されつつ、筒状体30の規制面340が突出体20の係合面270に係合(当接)していれば、対向子2の磁力に起因した引張力が突出体20に作用しても、突出体20は筒状体30の規制面340により移動を制限されるので、突出体20が収容部14から離脱することを妨げることができる。この場合、筒状体30の規制面340は、突出体20の係合面270及び固定部と協働して、突出体20の収容部14からの離脱を規制する離脱規制機構を成すと見做せる。
【0090】
また、筒状体30を突出体20に取り付ける際、凸部34(第三凸部34C、第四凸部34D)を凹部27(第三凹部27C、第四凹部27D)に取り囲まれる凹領域に挿入するため、凸部34と凹部27は、突出体20に対する筒状体30の周方向の相対姿勢を姿勢決めする役割を果たす。この意味で、凸部34と凹部27は、突出体20に対する筒状体30の周方向の相対姿勢を姿勢決めする相対姿勢決め機構を構成すると見做せる。
【0091】
なお、突出体20の凹部27は、突出体20の周方向を全周するように構成されてもよい。それに合わせて、筒状体30の凸部34は、筒状体30の周方向を全周するように構成されてもよい。
【0092】
<電機子用部品_第四実施形態>
本発明の第四実施形態における電機子用部品1について以下説明する。図21図23に示す本実施形態における突出体20の凹部27は、第三実施形態における凹部27と同様である。
【0093】
一方で、本実施形態における筒状体30は、図21(A),(B)、及び図22(A)に示すように、筒状体30の内周面30Aに段差39を有する。段差39は、筒状壁部37(筒状体30)の内周面371(内周面30A)の軸方向A2(電機子軸方向Z)の途中位置において内周面371(内周面30A)の一部を成し、筒状壁部37(筒状体30)の軸方向A2(電機子軸方向Z)の先端側を向き、且つ筒状壁部37(筒状体30)の周方向を全周する環状の段差面390を有する。以下において、適宜、筒状体30の段差39を筒状体側段差39と呼んでもよく、筒状体30の段差面390を筒状体側段差面390と呼んでもよい。
【0094】
ここで、段差面390を基準として第二実施形態に場合と同様に、上方側内周面301及び下方側内周面302を定義する。上方側内周面301及び下方側内周面302は、筒状体30の中心軸30Dに直交する方向の中心軸30Dに向かう側を向き、筒状体30の周方向において筒状体30を全周して環状に構成される。段差面390は、段差面390の外側外縁391で上方側内周面301に連続しつつ、筒状体30の中空領域30Cの中央側に接近する方向に縮径し、且つ段差面380の内側外縁392で下方側内周面302に連続する。結果、段差面390を基準とした筒状体30の軸方向A2における筒状体30の下段部は、段差39(段差面390)により、段差面390を基準とした筒状体30の軸方向A2(電機子軸方向Z)における筒状体30の上段部よりも筒状体30の中空領域30Cの中央側に縮径する。
【0095】
以上のように構成される筒状体30を突出体20に取り付けると、図22(B)に示すように、筒状体30の下方側内周面302の内径は、突出体20の凹部27より下方側部分264の外径と略同一か、わずかに大きい程度であるので、筒状体30の下方側内周面302と突出体20の凹部27より下方側部分264の間にはクリアランスはほとんど形成されない。ただし、突出体20の凹部27より下方側部分264の外周面は、筒状体30の下方側内周面302と協働して突出体20と筒状体30の径方向における相対位置の位置決めを行うように作用する。
【0096】
一方、図22(B)に示すように、筒状体30の上方側内周面301の内径は、突出体20の凹部27より上方側部分263の外径よりも大きいので、筒状体30の上方側内周面301と突出体20の凹部27より上方側部分263の外周面の間にはクリアランス40が形成される。
【0097】
図23(A)に示すように、本実施形態における電機子用部品1と巻線部50を、樹脂によってひとまとめにすると、樹脂は、クリアランス40に流れ込み、凹部27にも入り込む。樹脂が硬化すると、凹部27におけるアンカー効果により突出体20に対する樹脂の接着力がより向上し、突出体20と筒状体30の結合力もより増大する。この際、樹脂が占める領域である樹脂部60は、凹部27の係合面270に係合(当接)する。係合面270に係合(当接)する樹脂部60の面が規制面63となる。
【0098】
本実施形態のように、樹脂部60が円盤体10に結合しつつ、樹脂部60の規制面63が突出体20の係合面270に係合(当接)しているので、対向子2の磁力に起因した引張力が突出体20に作用しても、突出体20は樹脂部60の規制面63により移動を制限される。結果、突出体20が収容部14から離脱することを妨げることができる。この場合、樹脂部60の規制面63は、突出体20の係合面270と協働して、突出体20の収容部14からの離脱を規制する離脱規制機構を成すと見做せる。なお、固定部が突出体20の係合面270に係合(当接)する規制面を有していれば、固定部は、樹脂部60以外のもので構成されていてもよい。
【0099】
また、図23(B)に示すように、凹部27の係合面270と樹脂部60の規制面63が電機子軸方向Zにおいて離れていても、図15(D)を参照して説明した第一実施形態の場合と同様に、規制面63による規制により突出体20が収容部14から離脱することを防止することができる。
【0100】
なお、図24(A),(B)の本実施形態の第一変形例に示すように、突出体20の外周面260と筒状体30の内周面30Aが対向する全領域にクリアランス40を設けるように構成されてもよい。この場合でも、図25に示す本第一変形例に示すように、本第一変形例における電機子用部品1と巻線部50を、樹脂によってひとまとめにすると、クリアランス40を通じて凹部27に樹脂が入り込む。結果、樹脂部60は、凹部27の係合面270に係合(当接)する。そして、係合面270に係合(当接)する樹脂部60の面が規制面63となる。本第一変形例の場合も、樹脂部60の規制面63は、突出体20の係合面270と協働して、突出体20の収容部14からの離脱を規制する離脱規制機構を成すと見做せる。
【0101】
また、図26(A),(B)の本実施形態の第二変形例に示すように、突出体20は、突出体20の軸方向A1の先端面22側から基端面24に接近するに従って断面積が増大するような軸方向区間を有してもよい。この場合、軸方向区間を断面積増大区間と定義した場合、断面積増大区間において突出体20の外周面260は、テーパー面となる。テーパー面は、突出体20の軸方向A1(電機子軸方向Z)の基端側(以下、基端側軸方向と呼ぶ。)に進むに従って突出体20の軸方向A1に直交する軸直交方向の外側に向かう方向(以下、軸直交外側方向と呼ぶ。)に延びるように傾斜する。つまり、テーパー面は、基端側軸方向と軸直交外側方向の合成方向に向かうように傾斜する。なお、テーパー面が設けられる断面積増大区間は、突出体20の軸方向区間の全区間であってもよいし、一部区間であってもよい。
【0102】
また、テーパー面は、断面積増大区間の軸方向位置J(図26(A)参照)よりも先端面22側では、突出体20の外径は筒状体30の内径よりも小さく、その軸方向位置J以降の区間では、突出体20の外径が筒状体30の内径よりも大きくなるように構成される。このように構成されれば、突出体20に筒状体30を取り付ける際、軸方向位置Jまでは、筒状体30はスムーズに移動でき、軸方向位置J以降では、筒状体30は、突出体20から外側に押し広げられるように弾性変形しつつ、基端側軸方向に移動していく。結果、突出体20の外周面260と筒状体30の内周面30Aの間には、クリアランス40が形成されつつ、突出体20の押圧力と筒状体30の弾性力に起因する復帰力により突出体20と筒状体30は強固に結合する。
【0103】
図27に示す本第二変形例に示すように、本第二変形例における電機子用部品1と巻線部50を、樹脂によってひとまとめにすると、クリアランス40を通じて凹部27に樹脂が入り込む。結果、樹脂部60は、凹部27の係合面270に係合(当接)する。そして、係合面270に係合(当接)する樹脂部60の面が規制面63となる。本第二変形例の場合、突出体20の押圧力と筒状体30の弾性力に起因する復帰力に起因して突出体20と筒状体30の結合力が高くなっており、且つ筒状体30は、樹脂部60で円盤体10に強固に固定されているので、それだけでも、突出体20は、容易に収容部14から離脱しない。更に、これに加えて、本第二変形例では、突出体20の凹部27の係合面270と樹脂部60(固定部)の規制面63を有する離脱規制機構を有するので、突出体20が収容部14から離脱することをより確実に防止することができる。
【0104】
本第二変形例における外周面をテーパー面にした突出体20と筒状体30の結合機構は、その他の実施形態でも適用可能である。
【0105】
また、以上の各実施形態における突出体20において樹脂部60が入り込む各凹部(凹部27、凹部271)は、クリアランス40が形成される区間に設けられたが、これに限定されるものではなく、突出体20が筒状体30によりも電機子軸方向Zの先端側に突出する、先端面35よりも上方側の上方側区間S2(図9(C)参照)に設けられてもよい。この場合でも、上方側区間S2の凹部に樹脂が入り込めば、アンカー効果により突出体20に対する樹脂部60の接着力がより向上し、突出体20が収容部14から離脱することを防止することができる。
【0106】
<インホイールモータ駆動装置>
図28図31を参照して、本発明の第一~四実施形態における電機子用部品1のいずれかを含むアキシャルギャップ型回転電機70を用いたインホイールモータ駆動装置7について以下説明する。
【0107】
本実施形態におけるインホイールモータ駆動装置7は、図28に示すように、車輪90に連結されて車輪90を回転させるものである。インホイールモータ駆動装置7は、例えば、車輪90の近傍に配置される。インホイールモータ駆動装置7は、アキシャルギャップ型回転電機70、減速機構71、車輪連結部72、ブレーキ機構73、及びケーシング74を有する。
【0108】
ケーシング74は、アキシャルギャップ型回転電機70を収容する回転電機収容領域740、減速機構71を収容する減速機構収容領域741、ブレーキ機構73を収容するブレーキ機構収容領域742を有する。各収容領域は、車輪90に近位な側を起点として減速機構収容領域741、回転電機収容領域740、ブレーキ機構収容領域742の順に、車輪90の車輪軸方向に沿って並ぶ。本実施形態において減速機構収容領域741と回転電機収容領域740は、双方の境界に設けられる第一区画壁部743により区画される。回転電機収容領域740とブレーキ機構収容領域742は、双方の境界に設けられる第二区画壁部744により区画される。なお、上記各収容領域は、第一区画壁部743及び第二区画壁部744により区画されず、連続していてもよい。
【0109】
<アキシャルギャップ型回転電機>
図28及び図29を参照してアキシャルギャップ型回転電機70について以下説明する。アキシャルギャップ型回転電機70は、図29に示すように、電機子用部品1を含む電機子を有するステータ110、対向子(界磁子)2を有するロータ120、及びシャフト130を有する。
【0110】
ロータ120は、複数の対向子2を保持するロータ円盤体(ロータヨーク)121を有する。ロータ円盤体121は、中央にシャフト130を通すシャフト孔123を有する。複数の対向子2のそれぞれは、例えば、永久磁石で構成される。複数の対向子2は、ロータ円盤体121のステータ110に対向する側においてロータ円盤体121の周方向に間隔(例えば、等間隔)を空けて配置される。そして、対向子2は、N極とS極が電機子軸方向Zに並ぶように配置される。更に、対向子2のステータ110に対向する側の極性を対向極性と定義した場合、図29に示すように、周方向において隣接する対向子2の対向極性が異なる極性となるように、ロータ円盤体121の周方向に対向子2を交互に配置させる。
【0111】
ステータ110は、電機子軸方向Zにおいて突出体20と対向子2が対向しつつ、両者の間に隙間140が形成されるように回転電機収容領域740においてケーシング74に固定される。一方、ロータ120は、ステータ110及びケーシング74に対して回転自在にシャフト130で支持される。
【0112】
ステータ110には、電機子軸方向Zに延び、電機子軸方向Zのステータ110の両端において外部に開放される開放領域112(図1(A),(B)参照)が形成される。開放領域112は、電機子軸方向Zにおいてステータ110を貫通する。この意味で、開放領域112は、適宜、貫通領域112と読み替えられてもよい。結果、ステータ110は、リング状に形成される。なお、図1(A),(B)及び図29に示すように、開放領域112は、円盤体10の円形開口12により取り囲まれる第一領域片112Aと、電機子軸方向Zにおいて第一領域片112Aに連続し、円盤体10上において円盤体10の周方向に並ぶ複数の筒状体(ボビン)30又は複数の突出体(ティース)20により取り囲まれる第二領域片112Bにより構成される。また、開放領域112は、ステータ110の中央においてステータ110を貫通することが好ましい。
【0113】
図29に示すように、ステータ110の複数の筒状体(ボビン)30のそれぞれには、巻線部(コイル)50が設けられる。巻線部50には、電流が流されると、電機子軸方向Zにおいてロータ120に対向する側がN極で逆側がS極の電磁石となる第一巻線部50Aと、電機子軸方向Zにおいてロータ120に対向する側がS極で逆側がN極の電磁石となる第二巻線部50Bの2種類がある。第一巻線部50Aと第二巻線部50Bは、円盤体(ヨーク)10の周方向に交互に並ぶように各筒状体(ボビン)30に設けられる。また、第一巻線部50Aと第二巻線部50Bは、第一巻線部50Aと第二巻線部50Bに流す電流を制御する電流制御回路(図示省略)に接続される。
【0114】
シャフト130は、ステータ110の開放領域112、及びロータ120のシャフト孔123を通されてステータ110及びロータ120を貫通するように配置される。そして、シャフト130は、図29に示すように、一対の軸受701A,701Bによって、ケーシング74に回転自在に支持される。なお、軸受701Aは、電機子軸方向Zにおいてロータ120を基準としてステータ110とは反対側に位置する。軸受701Bは、電機子軸方向Zにおいてステータ110を基準としてロータ120とは反対側に位置する。
【0115】
シャフト130の入力側は、ロータ120に接続され、ロータ120と共に回転する。シャフト130の出力側は、減速機構71に接続される。シャフト130の中心軸とロータ円盤体121の中心軸は、同軸となることが好ましい。また、シャフト130の中心軸方向(以下、シャフト中心軸方向と呼ぶ。)Bは、電機子軸方向Zと平行となる。
【0116】
図28及び図29に示すように、第一区画壁部743及び第二区画壁部744のそれぞれは、シャフト130を通す孔743A,744Aを有する。シャフト130は、孔743A,744Aを通じて減速機構収容領域741、ブレーキ機構収容領域742のそれぞれまで延在する。
【0117】
<アキシャルギャップ型回転電機の動作>
電流制御回路(図示省略)により各第一巻線部50Aのそれぞれと各第二巻線部50Bのそれぞれに流す電流を制御して、各第一巻線部50Aのそれぞれと各第二巻線部50Bのそれぞれを、所定のタイミングで電磁石にすることにより、電磁石と対向子(永久磁石)2の間に反発力又は引力を発生させ、ロータ120と共にシャフト130を回転させる。以上のようにして、アキシャルギャップ型回転電機70は駆動される。
【0118】
以上において、アキシャルギャップ型回転電機70が、1つのステータ110と1つのロータ120を電機子軸方向Zにおいて離間させて配置させた構造(シングルギャップ構造)であるものとして説明したが、これに限定されるものではない。図示と説明は省略するが、電機子軸方向Zに離間させた2つのロータ120の間に1のステータ110を配置させた構造(ダブルギャップ構造)や、電機子軸方向Zに離間させた2つのステータ110の間に1つのロータ120を配置させた構造(ダブルギャップ構造)のアキシャルギャップ型回転電機を、アキシャルギャップ型回転電機70として採用したものも本発明の範囲に当然含まれる。
【0119】
<減速機構>
図30を参照して、減速機構71について以下説明する。減速機構71は、アキシャルギャップ型回転電機70の回転を減速して車輪連結部72に伝達する。本実施形態において減速機構71は、遊星歯車機構710により構成されるが、これに限定されるものではなく、その他の方式の減速機構により構成されてもよい。図30に示すように、遊星歯車機構710は、太陽歯車711、複数の遊星歯車712、内歯車713、及びキャリア714を有する。
【0120】
太陽歯車711は、中央において自身の中心軸方向に自身を貫通するシャフト取付孔711Aと、外周面に設けられる複数の外歯を有する。太陽歯車711は、シャフト130をシャフト取付孔711Aに通して、シャフト130の出力側に連結される。本実施形態において太陽歯車711の中心軸と、シャフト130の中心軸と、太陽歯車711の中心軸は互いに同軸になる。
【0121】
シャフト130は、減速機構71において軸受715A,715Bにより回転自在に支持される。一方の軸受715Aは、太陽歯車711、複数の遊星歯車712、及び内歯車713よりも車輪連結部72に近位側に配置される。他方の軸受715Bは、太陽歯車711、複数の遊星歯車712、及び内歯車713よりもアキシャルギャップ型回転電機70に近位側に配置される。そして、太陽歯車711は、シャフト130と共に回転する。
【0122】
複数の遊星歯車712は、後述するキャリア714に回転自在に支持される。遊星歯車712は、外周面に複数の外歯を有する。遊星歯車712の中心軸は、太陽歯車711(シャフト130)の中心軸と平行となる。複数の遊星歯車712は、太陽歯車711の周方向に間隔(好ましくは等間隔)を空けて太陽歯車711の周りに配置される。遊星歯車712の外歯は、太陽歯車711の外歯と噛み合う。
【0123】
内歯車713は、内周面に内歯を有する円環状の部材である。内歯車713は、ケーシング74に固定される。具体的に内歯車713は、図30に示すように、ケーシング74の円環凸部743Bの内周面に固定される。円環凸部743Bは、ケーシング74の第一区画壁部743の径方向の外側端においてシャフト中心軸方向Bに突出する円筒状の部分である。
【0124】
内歯車713の中心軸は、太陽歯車711(シャフト130)及び複数の遊星歯車712のそれぞれの中心軸方向と平行となる。内歯車713の内歯は、複数の遊星歯車712の外歯と噛み合う。内歯車713は、内歯を含む面において太陽歯車711及び複数の遊星歯車712を取り囲む。結果、太陽歯車711は、内歯車713の中央に位置し、複数の遊星歯車712は、太陽歯車711と内歯車713の間に位置する。シャフト130と共に太陽歯車711が回転(自転)すると、複数の遊星歯車712のそれぞれは、自転しつつ、太陽歯車711の周りを公転するが、内歯車713は、ケーシング74に対して固定されているので回転しない。
【0125】
図30に示すように、キャリア714は、一対のキャリア片714A,714Bを有する。キャリア片714A,714Bの間には、太陽歯車711、複数の遊星歯車712及び内歯車713が介在する。キャリア714は、軸受716A,716Bでケーシング74に回転自在に支持される。一方の軸受716Aは、キャリア片714Aを回転自在に支持する。他方の軸受716Bは、キャリア片714Bを回転自在に支持する。
【0126】
一対のキャリア片714A,714Bは、複数の遊星歯車712を軸方向から挟み込む。具体的に、一対のキャリア片714A,714Bは、互いに間隔を開けた状態で複数の軸部714Cによって連結されており、この軸部714Cに、遊星歯車712が回転自在に支持される。複数の遊星歯車712のそれぞれが、自転しつつ、太陽歯車711の周りを公転すると、その公転運動が軸部714Cを介してキャリア714に伝達されて、キャリア714が回転(自転)する。
【0127】
<車輪連結部>
図28及び図30を参照して、車輪連結部72について以下説明する。車輪連結部72は、図28及び図30に示すように、減速機構71(本実施形態では、キャリア片714A)に連結されると共に、車輪90に連結される。本実施形態において車輪連結部72は、図30に示すように、車輪90に連結される車輪側連結フランジ720と、減速機構71に連結される減速機構側連結部721を有する。車輪側連結フランジ720は、例えば、大径の円盤状に形成される。減速機構側連結部721は、例えば、車輪側連結フランジ720よりも小径の円盤状に形成される。そして、車輪側連結フランジ720と減速機構側連結部721は、車輪軸方向(シャフト中心軸方向B)に並ぶ。そして、車輪側連結フランジ720と減速機構側連結部721は、一体形成されてもよいし、別部材として連結されてもよい。なお、車輪側連結フランジ720と減速機構側連結部721の径の大小関係は上記と逆であってもよいし、双方の径は同じであってもよい。
【0128】
車輪連結部72は、減速機構71の出力部分(本実施形態では、キャリア714)の回転(自転)により回転(自転)して、車輪90を回転(自転)させる。
【0129】
<ブレーキ機構>
図31を参照して、ブレーキ機構73について以下説明する。ブレーキ機構73は、アキシャルギャップ型回転電機70の回転を停止させるものである。本実施形態においてブレーキ機構73は、電磁ブレーキ730により構成されるが、これに限定されるものではなく、その他の方式のブレーキ機構を有する構成であってもよい。図31(A),(B)に示すように、電磁ブレーキ730は、例えば、ハブ731、アーマチュア732、付勢部733、ブレーキステータ734及びガイド機構735を有する。
【0130】
ハブ731は、シャフト130を固定する固定部731Aと、固定部731Aの外周面を起点として固定部731Aの径方向(固定部731Aの中心軸に直交する方向)の外側に広がる円環状の円環プレート部731Bと、を有する。固定部731Aは、シャフト130を挿入する挿入通路731Cを有する。本実施形態では、固定部731Aは、円筒形状となっている。シャフト130は、挿入通路731Cに挿入することによりハブ731に連結される。ハブ731の中心軸は、シャフト130の中心軸と同軸になる。ハブ731は、シャフト130と共に回転する。
【0131】
アーマチュア732は、例えば、円環状の板で構成されるが、これに限定されるものではない。アーマチュア732は、電磁石により引き寄せられる金属材料(強磁性体)で構成される。そして、アーマチュア732は、付勢部733を介してハブ731(円環プレート部731B)に接続される。図31に示すように、アーマチュア732は、ガイド機構735を通じてハブ731に対してシャフト中心軸方向Bに相対移動可能となる。なお、ガイド機構735は、アーマチュア732に接続されるガイドピン735Aと、ガイドピン735Aを挿入可能な円環プレート部731Bの貫通孔735Bとにより構成される。
【0132】
付勢部733は、アーマチュア732をハブ731に接近する側に付勢する。付勢部733は、例えば、コイルバネ、板バネ等のバネで構成されることが想定される。アーマチュア732に、ブレーキステータ734からシャフト中心軸方向Bの引力が加えられていない第一の状態では、付勢部733は縮むことで、アーマチュア732がハブ731(円環プレート部731B)に接近する。結果、ブレーキステータ734とアーマチュア732は非接触となる。これにより、ハブ731(円環プレート部731B)を通じてシャフト130にブレーキが効いていない状態となる。アーマチュア732に、ブレーキステータ734からシャフト中心軸方向Bの引力が加えられた第二の状態では、付勢部733が伸びることで、アーマチュア732がブレーキステータ734に接触する。これにより、ハブ731(円環プレート部731B)を通じてシャフト130にブレーキが効いた状態になる。
【0133】
ブレーキステータ734は、中央にシャフト130を通すための貫通孔734Aを有し、ケーシング74に固定される。本実施形態においてブレーキステータ734は、円筒状に形成されるが、これに限定されるものではない。そして、ブレーキステータ734は、通電可能なコイル736を有する。コイル736に電流が流れた状態では、ブレーキステータ734は電磁石として機能し、ブレーキステータ734はアーマチュア732をブレーキステータ734に引き寄せる。コイル736への電流の供給が停止された状態では、ブレーキステータ734は電磁石として機能せず、アーマチュア732は、付勢部733によってハブ731(円環プレート部731B)の近傍に位置する。
【0134】
なお、上記電磁ブレーキ730の構成は、一例であって、上記とは異なる構成であってもよい。また、ブレーキ機構73は、車輪90をブレーキパッドで挟み込んで車輪90の回転を停止させるディスクブレーキにより構成してもよい。
【0135】
<インホイールモータの動作>
アキシャルギャップ型回転電機70のステータ110のコイルに電流が流されると、ロータ120と共にシャフト130が回転する。シャフト130の回転は、減速機構71を通じて減速され、車輪連結部72により車輪90が回転する。
【0136】
<インホイールモータの第一変形例>
図32を参照して、本実施形態におけるインホイールモータ駆動装置7の第一変形例について説明する。ステータ110には、上記説明したように、内側に開放領域112が形成される。本変形例では、ステータ110の開放領域112に、減速機構71の少なくとも一部が配置される。この配置により、インホイールモータ駆動装置7の軸方向サイズを低減できる。結果、車両の車輪90の近傍のスペースを有効活用することが可能となる。
【0137】
<インホイールモータの第二変形例>
図33を参照して、本実施形態におけるインホイールモータ駆動装置7の第二変形例について説明する。図33に示すように、本変形例では、ステータ110の開放領域112に、ブレーキ機構73の少なくとも一部が配置される。この配置により、インホイールモータ駆動装置7の軸方向サイズを低減できる。結果、車両の車輪90の近傍のスペースを有効活用することが可能となる。
【0138】
尚、本発明のアキシャルギャップ型回転電機、アキシャルギャップ型回転電機用の電機子用部品、アキシャルギャップ型回転電機用の電機子、及びインホイールモータ駆動装置は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。そして、当然ながら、以上の各実施形態の各要素を適宜組み合わせた全てものも本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0139】
1 電機子用部品
2 対向子(界磁子)
3 電機子コア
7 インホイールモータ駆動装置
10 円盤体(ヨーク)
14 収容部
20 突出体(ティース)
22 突出体の先端面(突出体側先端面)
24 突出体の基端面(突出体側基端面)
26 周壁部
27,271,342 凹部
27E 凹部の入口開口
29,38,39 段差
30 筒状体(ボビン)
30A 筒状体の内周面
30B 筒状体の外周面
30C 筒状体の中空領域
31 筒状部
32 先端側フランジ部
33 基端側フランジ部
34 凸部
35 筒状体の先端面(筒状体側先端面)
36 筒状体の基端面(筒状体側基端面)
37 筒状壁部
40 クリアランス(隙間)
50 巻線部
60 樹脂部
61,62,63 樹脂部の規制面
70 アキシャルギャップ型回転電機
71 減速機構
72 車輪連結部
73 ブレーキ機構
74 ケーシング
100 電機子
110 ステータ
112 開放領域(貫通領域)
120 ロータ
130 シャフト
260 周壁部の外周面(突出体の外周面)
261 突出体の上方側外周面
262 突出体の下方側外周面
263 突出体の上方側部分
264 突出体の下方側部分
270,272 係合面
290.380,390 段差面
301 筒状体の上方側内周面
302 筒状体の下方側内周面
340 筒状体の規制面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33