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特開2024-144393インクジェット記録方法、インク、及び記録メディアセット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144393
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】インクジェット記録方法、インク、及び記録メディアセット
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/322 20140101AFI20241003BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20241003BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241003BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C09D11/322
B41M5/00 120
B41M5/00 100
B41J2/01 501
B41J2/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024055955
(22)【出願日】2024-03-29
(31)【優先権主張番号】P 2023056055
(32)【優先日】2023-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 哲也
(72)【発明者】
【氏名】戸田 正悟
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056FC02
2C056KB16
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB22
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB48
2H186FB50
2H186FB54
4J039AD17
4J039BA32
4J039BC10
4J039EA17
4J039EA41
4J039EA44
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】 水不溶性着色剤の沈降が大幅に低減された保存安定性に優れたイエローインクを用いるインクジェット記録方法と、これに用いるイエローインク及び記録メディアセットを提供することを目的とする。
【解決手段】 イエローインクを用いてインクジェット記録装置により記録するインクジェット記録方法であって、 前記イエローインクを吐出ヘッドによって記録メディア上に吐出して記録する吐出工程を含み、前記イエローインクが水不溶性着色剤を含み、前記不溶性着色剤がアルミニウム化合物を400ppm未満含有するインクジェット記録方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イエローインクを用いてインクジェット記録装置により記録するインクジェット記録方法であって、
前記イエローインクを吐出ヘッドによって記録メディア上に吐出して記録する吐出工程を含み、前記イエローインクが水不溶性着色剤を含み、前記不溶性着色剤がアルミニウム化合物を400ppm未満含有するインクジェット記録方法。
【請求項2】
前記水不溶性着色剤がピグメントイエロー74である請求項1に記載のインクジェット記録方法。
【請求項3】
前記アルミニウム化合物の全量又は一部が、水酸化アルミニウムである請求項1に記載のインクジェット記録方法。
【請求項4】
前記インクジェット記録装置がイエローインクを収容する容器と前記吐出ヘッドとの間、又は前記吐出ヘッド内でイエローインクを循環させる循環機構を備え、前記吐出工程に供する前の前記イエローインクを前記循環機構によって循環させる循環工程をさらに含む請求項1に記載のインクジェット記録方法。
【請求項5】
前記記録メディアが、インク難吸収性、又はインク非吸収性の記録メディアである請求項1に記載のインクジェット記録方法。
【請求項6】
水不溶性着色剤を含有し、前記水不溶性着色剤がアルミニウム化合物を400ppm未満含有するインクジェット記録用のイエローインク。
【請求項7】
請求項6に記載のイエローインクと、記録メディアとを含む記録メディアセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット記録方法、インク、及び記録メディアセットに関する。
【背景技術】
【0002】
各種のカラー印刷方法の中でも代表的方法の1つであるインクジェットプリンタによる印刷方法は、インクの小滴を発生させ、これを紙等の印刷メディアに付着させ印刷を行うものである。近年では産業用途としての需要が高まり、様々な印刷メディアに対して印刷ができるインクが求められている。
【0003】
また、近年では、画像の高精細化や印刷の高速化に対応した技術の開発によって、インクジェットヘッドのノズルの高密度化、内部構造の微細化が進んでいる。このため、インクの沈降やノズルの乾燥による吐出不良を防ぐために、インクの循環機構を採用したインクジェット記録装置も開発されている(例えば、特許文献1等)。
【0004】
このような変化に対応したインクジェット用インクへの要求も高まっている。特に、水不溶性の着色剤はインクに不均一な状態で存在するため、長期間の保存により水不溶性の着色剤が沈降しうる。水不溶性の着色剤が沈降を生じると保存安定性を損ない、インクジェットヘッドを閉塞させるリスクが高まる。このようなリスクを低減するため、吐出安定性に優れた水不溶性着色剤を含むインクも開発されている(例えば、特許文献2等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-075751号公報
【特許文献2】再表2015/152291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、イエローインクでは、このような組成であっても、沈降が発生し、インクジェットヘッドノズルの閉塞を発生させる問題が生じ、上記のような要求を満たさない場合があることが分かった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、水不溶性着色剤の沈降が大幅に低減された保存安定性に優れたイエローインクを用いるインクジェット記録方法と、これに用いるイエローインク及び記録メディアセットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討したところ、水不溶性着色剤に含有されるアルミニウム化合物の量を制御したイエローインクを用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の[1]~[5]に関する。
[1] 水不溶性着色剤を含むイエローインクを用いて、インクジェット記録装置により記録するインクジェット記録方法であって、
前記イエローインクを吐出ヘッドによって記録メディア上に吐出して記録する吐出工程を含み、前記不溶性着色剤がアルミニウム化合物を400ppm未満含有するインクジェット記録方法。
[2] 前記水不溶性着色剤がピグメントイエロー74である[1]に記載のインクジェット記録方法。
[3] 前記アルミニウム化合物の全量又は一部が、水酸化アルミニウムである[1]に記載のインクジェット記録方法。
[4] 前記インクジェット記録装置がイエローインクを収容する容器と前記吐出ヘッドとの間、又は前記吐出ヘッド内でイエローインクを循環させる循環機構を備え、前記吐出工程に供する前の前記イエローインクを前記循環機構によって循環させる循環工程をさらに含む[1]に記載のインクジェット記録方法。
[5] 前記記録メディアが、インク難吸収性、又はインク非吸収性の記録メディアである[1]に記載のインクジェット記録方法。
[6] 水不溶性着色剤を含有し、前記水不溶性着色剤がアルミニウム化合物を400ppm未満含有するインクジェット記録用のイエローインク。
[7] [6]に記載のイエローインクと、記録メディアとを含む記録メディアセット。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、水不溶性着色剤の沈降が大幅に低減された保存安定性に優れたイエローインクを用いるインクジェット記録方法と、これに用いるイエローインク及び記録メディアセットを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明に係るインクジェット記録方法は、イエローインクを用いて、インクジェット記録装置により記録するインクジェット記録方法であって、前記イエローインクを吐出ヘッドによって記録メディア上に吐出して記録する吐出工程を含むものである。
【0012】
<イエローインク>
本発明のインクジェット記録方法に用いられるイエローインク(以下、単に「インク」とも称する)は、水不溶性着色剤を含有し、分散剤、界面活性剤、及びインク調製剤等のその他の成分を任意にさらに含有する。
【0013】
[水不溶性着色剤]
水不溶性着色剤は、イエロー系の着色剤を含み、アルミニウム化合物を400ppm未満含有することを特徴とする。アルミニウム化合物の含有量は、100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましい。アルミニウム化合物は、高温になるほど沈降が発生し易くなる。インクジェット記録装置の運転中は装置内部の温度も30℃を超える場合があり、常温保管時よりも、沈降しやすい環境になる。アルミニウム化合物の含有量が400ppm未満であることにより、沈降の発生が低減し、インクの安定性が向上し、インクジェット記録装置の部材内部の微細流路を閉塞させたり、析出物による安定した送液を阻害するという不具合の発生が大幅に低減する。水不溶性着色剤におけるアルミニウム化合物の含有量の下限値は、例えば2ppmである。2ppm未満とするには相当の洗浄が必要であり、通例実施できることではない。イエロー系着色剤に含有されるアルミニウム化合物は、水酸化アルミニウムであり得る。
【0014】
「水不溶性」は、本願の明細書及び特許請求の範囲において、25℃の水1リットルに対する溶解度が通常5g以下、好ましくは3g以下、より好ましくは1g以下、さらに好ましくは0.5g以下であることを意味する。溶解度の下限は0gを含む。以下、特に断りのない限り「水不溶性着色剤」を、単に「着色剤」とも称する。
【0015】
着色剤としては、例えば、公知の有機顔料、無機顔料、及び分散染料等を使用できる。着色剤は、顔料であることが好ましい。
【0016】
有機顔料として、例えばアゾ、ジアゾ、イソインドリノン、ペリレン、チオインジゴ、アンソラキノン、及びキノフタロン等の各種の顔料が挙げられる。有機顔料の具体例としては、例えばC.I.Pigment Yellow 1、2、3、12、13、14、16、17、24、55、73、74、75、83、93、94、95、97、98、108、114、128、129、138、139、150、151、154、180、185、193、199、202、213等の顔料が挙げられる。有機顔料は、好ましくは、C.I.Pigment Yellow 74である。
【0017】
無機顔料は、好ましくは体質顔料である。体質顔料としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、クレー、硫酸バリウム、及びホワイトカーボン等が挙げられる。体質顔料は、他の着色剤と併用されることが多い。
【0018】
分散染料としては、公知の分散染料が挙げられる。それらの中ではC.I.Dispersから選択される染料が好ましい。その具体例としては、例えば、C.I.Dispers Yellow9、23、33、42、49、54、58、60、64、66、71、76、79、83、86、90、93、99、114、116、119、122、126、149、160、163、165、180、183、186、198、200、211、224、226、227、231、及び237等のイエローの分散染料が挙げられる。
【0019】
イエローインクの総質量に対する着色剤の含有量は、通常1~30%、好ましくは1~10%、より好ましくは2~8%である。ここで、本願の明細書及び特許請求の範囲において、特に断りのない限り「%」及び「部」は質量基準で記載する。
【0020】
着色剤の平均粒径は通常50nm~250nm、好ましくは60nm~200nmである。着色剤の平均粒径をこの範囲にすることにより、経時的な着色剤の沈降を抑制できるという効果がある。本願の明細書及び特許請求の範囲において平均粒径は、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径をいう。
【0021】
[分散剤]
水不溶性の着色剤をインク中に分散するために、イエローインクに分散剤をさらに含有させることが好ましい。分散剤は特に制限されず、公知の分散剤を使用できる。分散剤としては、一般に樹脂等の高分子分散剤が用いられる。そのような樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、セルロース系誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、フマール酸、フマール酸モノエステル、ビニルスルホン酸、スルホエチルメタクリレート、スルホプロピルメタクリレート、スルホン化ビニルナフタレンのα,β-不飽和モノマー等のイオン性モノマー、スチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル、アクリルニトリル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリルアミド、メタクリルアミド、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、N-ブトキシメチルアクリルアミド等から誘導されたポリマー等が挙げられる。
【0022】
分散剤としての樹脂としては、例えば、スチレン及びその誘導体;ビニルナフタレン及びその誘導体;α,β-エチレン性不飽和性カルボン酸の脂肪族アルコールエステル;アクリル酸及びその誘導体;マイレン酸及びその誘導体;イタコン酸及びその誘導体;ファール酸及びその誘導体;酢酸ビニル、ビニルアルコール、ビニルピロリドン、アクリルアミド、及びそれらの誘導体等よりなる群の単量体から選択される、少なくとも2つの単量体(好ましくは、このうち少なくとも1つが親水性の単量体)から構成される共重合体が挙げられる。そのような共重合体としては、例えば、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル-(メタ)アクリル酸共重合体、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体等が挙げられる。
これらの中ではスチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル-(メタ)アクリル酸共重合体、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート-(メタ)アクリル酸共重合体が好ましく;スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル-(メタ)アクリル酸共重合体がより好ましく;(メタ)アクリル酸エステル-(メタ)アクリル酸共重合体がさらに好ましく;メタクリル酸エステル-メタクリル酸共重合体が特に好ましい。
なお、本願の明細書及び特許請求の範囲において「(メタ)アクリル酸」の用語は、「アクリル酸」と「メタクリル酸」の両方を含む意味で用いる。「(メタ)アクリレート」も同様に、メタクリレート及びアクリレートの両方を意味する。
共重合体の種類としては、例えば、ブロック共重合体、ランダム共重合体及びグラフト共重合体、及び/又はそれらの塩等が挙げられる。
【0023】
分散剤としての樹脂は合成することも、市販品として入手することもできる。市販品の具体例としては、例えば、ジョンクリル62、67、68、678、及び687(BASF社製)等のスチレン-アクリル系共重合体;モビニールS-100A(ジャパンコーティングレジン社製の変性酢酸ビニル共重合体);並びにジュリマーAT-210(東亜合成社製のポリアクリル酸エステル共重合体)等が挙げられる。合成により得られる共重合体としては、国際公開第2013/115071号に開示されたA-Bブロックポリマーが好ましく挙げられる。
【0024】
分散剤の酸価は通常90~200mgKOH/g、好ましくは100~150mgKOH/g、より好ましくは100~120mgKOH/gである。
分散剤の質量平均分子量は通常10000~60000、好ましくは10000~40000、より好ましくは15000~30000、さらに好ましくは20000~25000である。
分散剤のPDI(質量平均分子量/数平均分子量)は1.29~1.49程度である。上記のような範囲とすることにより、インクの分散性及び保存安定性を良好にできる。
【0025】
分散剤としての樹脂は、着色剤と混合した状態、又は、着色剤の表面の一部、若しくは全てを分散剤としての樹脂で被覆した状態のいずれでも使用することができる。また、これらの両方の状態を併用することもできる。
【0026】
[界面活性剤]
イエローインクは、表面張力調整等を目的に、界面活性剤をさらに含有することができる。界面活性剤の例としては、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等の公知の界面活性剤が挙げられる。
【0027】
アニオン界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホカルボン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、N-アシルアミノ酸又はその塩、N-アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型燐酸エステル、アルキル型燐酸エステル、アルキルアリールスルホン酸塩、ジエチルスルホ琥珀酸塩、ジエチルヘキシルスルホ琥珀酸塩、ジオクチルスルホ琥珀酸塩などが挙げられ、市販品として入手できるものの具体例としては、例えば、いずれも第一工業製薬社製のハイテノールTMLA-10、LA-12、LA-16、ネオハイテノールTMECL-30S、ECL-45等が挙げられる。
【0028】
カチオン界面活性剤としては、例えば、2-ビニルピリジン誘導体、ポリ4-ビニルピリジン誘導体などが挙げられる。
【0029】
ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のエーテル系;ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等のエステル系;2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール等のアセチレングリコール(アルコール)系;いずれも日信化学工業株式会社製のサーフィノールTM104、104PG50、105PG50、82、420、440、465、485;オルフィンTMSTG;ポリグリコールエーテル系(例えばSIGMA-ALDRICH社製のTergItolTM15-S-7等);等が挙げられる。
【0030】
両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシン、イミダゾリン誘導体などが挙げられる。
【0031】
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、ポリエーテル変性シロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられ、具体例としては、BYK-306、BYK-307、BYK-333、BYK-341、BYK-345、BYK-346、BYK-347、BYK-348、BYK-349、BYK-3455(ビックケミー社製)、KF-351A、KF-352A、KF-353、KF-354L、KF-355A、KF-615A、KF-945、KF-640、KF-642、KF-643、KF-6020、X-22-4515、KF-6011、KF-6012、KF-6015、KF-6017(信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0032】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルかるボン酸系化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付与物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシ歩き連エーテルポリマー化合物等が挙げられ、具体例としては、Zonyl TBS、FSP、FSA、FSN-100、FSN、FSO-100、FSO、FS-300、(DuPont社製);Capstone FS-30、FS-31、FS-3100(Chemours社製);PF-151N、PF-154N(オムノバ社製);F-114、F-410、F-444、EXP.TF-2066、EXP.TF-2148、EXP.TF-2149、F-430、F-477、F-552、F-553、F-554、F-555、F-556、F-557、F-558.F-559、F-561、F-562、R-40、R-41、RS-72-K、RS-75、RS-76-E、RS-76-NS、RS-77、EXP.TF-1540、EXP.TF-1760(DIC株式会社製);BYK-340、BYK-3440、BYK-3441等(ビックケミー・ジャパン社製)が挙げられる。
【0033】
上記の中では、アニオン、ノニオン、シリコーン系、及びフッ素系の各界面活性剤が好ましい。これらの界面活性剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記インクが界面活性剤を含有するとき、界面活性剤の総含有量は、インクの総質量に対して通常0.1質量%~5質量%、好ましくは0.1質量%~2質量%である。
【0034】
[インク調製剤]
イエローインクは、さらにインク調製剤を含んでいてもよい。インク調製剤としては、例えば、バインダー、浸透剤、粘度調整剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、キレート剤、防錆剤、水溶性紫外線吸収剤、酸化防止剤等が挙げられる。
インクの総質量に対して、バインダー、浸透剤、及び粘度調整剤を除くインク調製剤の総含有量は通常0~30%、好ましくは0.1~20%、より好ましくは0.5~10%程度である。
【0035】
(a)バインダー
バインダーは、ワックス及び(メタ)アクリル酸系ポリマーから選択される少なくとも1種類であることが好ましい。バインダーをインクに含有させることにより、印刷画像の耐擦過性を向上することができる。バインダーはエマルションの状態で含有されることが好ましく、中でも水系エマルションがより好ましい。
バインダーの平均粒径は、インクジェットヘッドの目詰まりを防止するために50nm~5μmが好ましく、100nm~1μmがより好ましい。
インクがバインダーを含有する場合、インクの総質量に対するバインダーの含有量は固形分換算値として通常0.1~14%、好ましくは0.5~12%、より好ましくは2~10%、さらに好ましくは3~8%である。このような含有量のとき、印刷画像の耐擦過性をより良好にすることができる。
【0036】
ワックスとしては、天然ワックス及び合成ワックスを用いることができる。
天然ワックスとしては、石油系ワックスであるパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等;褐炭系ワックスであるモンタンワックス等;植物系ワックスであるカルナバワックス、キャンデリアワックス等;動植物系ワックスである蜜蝋、ラノリン等のワックスを、水性媒体中に分散させたエマルジョン等が挙げられる。
合成ワックスとしてはポリアルキレンワックス(好ましくはポリC2-C4アルキレンワックス)、酸化ポリアルキレンワックス(好ましくは酸化ポリC2-C4アルキレンワックス)、及びパラフィンワックスが挙げられる。上記の中ではポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、酸化ポリプロピレンワックス及びパラフィンワックスから選択される1種類以上のワックスが好ましく、酸化ポリエチレンワックスがより好ましい。
ワックスエマルジョンの市販品としては、例えば、ビックケミー社製のCERAFLOUR 925、929、950、991;AQUACER 498、515、526、531、537、539、552、1547;AQUAMAT 208、263、272;MINERPOL 221等;三井化学株式会社製の三井ハイワックス NL100、NL200、NL500、4202E、1105A、2203A、NP550、NP055、NP505等;三洋化学株式会社製のKUE-100、11等が挙げられる。
これらの中ではAQUACER 515、531、537、539、1547が好ましく、AQUACER 515、531、537、1547がより好ましい。
【0037】
バインダーとして使用する(メタ)アクリル酸系ポリマーは、上記の分散剤とは異なるポリマーである。(メタ)アクリル酸系ポリマーは、C1-C4アルキルメタクリレート、C6-C10アルキルアクリレート、メタクリル酸、及びアリルメタクリレートの4種類のモノマーから構成される(メタ)アクリル酸系ポリマーであることが好ましい。
C1-C4アルキルメタクリレートとしてはアルキル部分が直鎖又は分岐鎖が好ましく、直鎖がより好ましい。C1-C4アルキルメタクリレートは、C1-C3アルキルメタクリレートであることが好ましく、C1-C2アルキルメタクリレートであることがより好ましく、メチルメタクリレートであることがさらに好ましい。
C6-C10アルキルアクリレートとしてはアルキル部分が直鎖又は分岐鎖が好ましく、分岐鎖がより好ましい。C6-C10アルキルアクリレートは、C7-C9アルキルアクリレートであることが好ましく、C8アルキルアクリレートであることがより好ましく、2-エチルヘキシルアクリレートであることがさらに好ましい。
(メタ)アクリル酸系ポリマーにおけるC1-C4アルキルメタクリレート、C6-C10アルキルアクリレート、メタクリル酸、及びアリルメタクリレートの4種類のモノマーの含有量は、それぞれ質量基準で通常40~60%、38~58%、1~10%、及び1~5%であり、好ましくは45~55%、52~42%、2~4%、及び1~3%である。これらのモノマー含有量の範囲で、合計100%とするのが好ましい。
(メタ)アクリル酸系ポリマーの酸価(単位はmgKOH/g)は、通常-10~35、好ましくは-5~30、より好ましくは0~25である。
(メタ)アクリル酸系ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、通常-20~30℃、好ましくは-15~25℃、より好ましくは-10~20℃である。
【0038】
(b)浸透剤
前記インクは、水-オクタノール分配係数が0.00以上2.00未満の、グリコールエーテル、及びC4-C9アルカンジオールから選択される少なくとも1種類の有機溶剤を、浸透剤としてさらに含有することができる。これにより、インク非・難吸収メディア上において、インクの濡れ広がり、及び、インクの乾燥が良好になる傾向がある。
上記数値範囲内のClog Pを有する浸透剤としては、例えば、1,2-ペンタンジオール(-0.00)、エチレングリコールモノアリルエーテル(0.03)、イソプロピルアルコール(0.07)、イソプロピルグリコール(0.09)、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル(0.13)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(0.36)、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(0.42)、ブチルトリグリコール(0.49)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(0.52)、1,2-ヘキサンジオール(0.53)、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル(0.54)、プロピルプロピレングリコール(0.62)、ブチルジグリコール(0.67)、ジプロピレングリコール n-プロピルエーテル(0.75)、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール(0.82)、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール(1.00)、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール(1.26)、1,2-オクタンジオール(1.58)、及びヘキシルジグリコール(1.72)、等が挙げられる。
上記インクが浸透剤を含有する場合、インクの総質量中における、これらの総含有量は通常0.1~30%、好ましくは0.2~20%、より好ましくは0.5~10%である。
【0039】
(c)粘度調整剤
前記インクは、粘度調整剤をさらに含有することができる。産業用インクジェットプリンタは、搭載するプリンタヘッド(インクを吐出するヘッド)の仕様に基づき、通常は、吐出できるインクの粘度範囲が決まっている。このため、インクに粘度調整剤を加え、その粘度を適正な範囲に調整することができる。
粘度調整剤としては、インクの粘度を調整できる物質であれば特に制限されず、公知の物質を使用することができる。その具体例としては、例えば、水溶性有機溶剤(この中に上記浸透剤として挙げた「有機溶剤」は含まれない。)、糖類等が挙げられる。これらの中では、ClogPの数値が通常0.00未満、好ましくは-0.05以下、より好ましくは-0.08以下の、水溶性有機溶剤が挙げられる。水溶性有機溶剤のClog Pの数値の下限は特に限定されないが、通常-4.00以上、好ましくは-3.00以上、より好ましくは-2.00以上、さらに好ましくは-1.50以上である。
そのような水溶性有機溶剤としては、例えば、2-メチル-2,4-ペンタンジオール(-0.02)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(-0.03)、イソプロピルジグリコール(-0.08)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(-0.16)、エタノール(-0.24)、3-メチル-1,5-ペンタンジオール(-0.24)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(-0.26)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(-0.30)、3-メチル-1,3-ブタンジオール(-0.33)、トリメチロールプロパン(-0.39)、N-メチル-2-ピロリドン(-0.40)、1,2-ブタンジオール(-0.53)、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン(-0.58)、1,5-ペンタンジオール(-0.64)、2-メチル-1,3-プロパンジオール(-0.64)、ジプロピレングリコール(-0.69)、1,3-ブタンジオール(-0.73)、メチルジグリコール(-0.78)、メチルトリグリコール(-0.96)、2-ピロリドン(-0.97)、プロピレングリコール(-1.06)、1,4-ブタンジオール(-1.16)、ジエチレングリコール(-1.30)、エチレングリコール(-1.37)、トリエチレングリコール(-1.48)、グリセリン(-1.54)、ジグリセリン(-2.96)、青木油脂工業製のグリセレス-3(-3.49)、及びグリセレス-20(-5.42)等が挙げられる。
上記インクが水溶性有機溶剤を含有する場合、水溶性有機溶剤の総含有量は通常0%~55%、好ましくは1%~40%、より好ましくは2%~30%程度である。
【0040】
(d)防腐剤
防腐剤としては、例えば有機硫黄系、有機窒素硫黄系、有機ハロゲン系、ハロアリールスルホン系、ヨードプロパギル系、ハロアルキルチオ系、ニトリル系、ピリジン系、8-オキシキノリン系、ベンゾチアゾール系、イソチアゾリン系、ジチオール系、ピリジンオキシド系、ニトロプロパン系、有機スズ系、フェノール系、第4アンモニウム塩系、トリアジン系、チアジン系、アニリド系、アダマンタン系、ジチオカーバメイト系、ブロム化インダノン系、ベンジルブロムアセテート系、及び無機塩系等の化合物が挙げられる。防腐剤の市販品の具体例としては、アーチケミカル社製のプロクセル GXL(S)、及びXL-2(S)等が挙げられる。
【0041】
(e)防黴剤
防黴剤としては、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン-1-オキシド、p-ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、及び1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン並びにこれらの塩等が挙げられる。
【0042】
(f)pH調整剤
pH調整剤としては、調製されるインクに悪影響を及ぼさずに、そのpHを5~11に調整できれば、任意の物質を使用することができる。その具体例としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、及びN-メチルジエタノールアミン等のアルカノールアミン;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化アンモニウム(アンモニア水);あるいは炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、及び炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;ケイ酸ナトリウム及び酢酸カリウム等の有機酸のアルカリ金属塩;並びにリン酸二ナトリウム等の無機塩基等が挙げられる。
【0043】
(g)キレート剤
キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、及びウラシル二酢酸ナトリウム等が挙げられる。
【0044】
(h)防錆剤
防錆剤としては、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオグリコール酸アンモニウム、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、及びジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト等が挙げられる。
【0045】
(i)水溶性紫外線吸収剤
水溶性紫外線吸収剤の例としては、スルホ化されたベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾ-ル系化合物、サリチル酸系化合物、桂皮酸系化合物、及びトリアジン系化合物が挙げられる。
【0046】
(j)酸化防止剤
酸化防止剤の例としては、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。上記有機系の褪色防止剤の例としては、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、及び複素環類等が挙げられる。
【0047】
イエローインクは、水不溶性着色剤以外に、アルミニウム化合物を含有する成分を含有しないことが好ましい。
【0048】
[水]
インクは上記の各成分を含有し、残部は水である。インクに使用する水は、イオン交換水及び蒸留水等の、例えば金属イオンのような不純物の含有量の少ないものが好ましい。インク総質量中における水の含有量は、好ましくは40%以上、より好ましくは50~95%、特に好ましくは60~90%である。
【0049】
前記インクは、水不溶性着色剤と分散剤を含有する分散液を調製した後、その他の成分と混合して調製することができる。分散液の調製には、公知の方法を使用することができる。その一例としては、転相乳化法が挙げられる。すなわち、2-ブタノン等の有機溶剤に分散剤としての樹脂を溶解し、中和剤の水溶液を加えて乳化液を調製する。得られた乳化液に水不溶性着色剤を加えて分散処理を行う。このようにして得られた液から有機溶剤と一部の水を減圧留去することにより、目的とする分散液を得ることができる。
分散処理は、例えば、サンドミル(ビーズミル)、ロールミル、ボールミル、ペイントシェーカー、超音波分散機、マイクロフルイダイザー等を用いて行うことができる。一例として、サンドミルを用いるときは、粒子径が0.01mm~1mm程度のビーズを使用し、ビーズの充填率を適宜設定して分散処理を行うことができる。分散液の調製中に泡立ちが生じるときは、公知のシリコン系、アセチレングリコール系等の消泡剤を極微量加えることができる。
【0050】
転相乳化法以外の分散液の調製方法としては、酸析法、界面重合法、in-situ重合法、液中硬化被膜法、コアセルベーション(相分離)法、液中乾燥法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、及びスプレードライング法等が挙げられる。これらの中では酸析法、及び界面重合法が好ましい。
【0051】
得られた分散液に対して、ろ過及び/又は遠心分離等の操作をすることができる。この操作により、分散液が含有する粒子の粒子径の大きさを揃えることができる。
【0052】
分散液中における着色剤分散体の平均粒径(D50)は通常300nm以下、好ましくは30~280nm、より好ましくは40~270nm、さらに好ましくは50~250nmである。また、D90は通常400nm以下、好ましくは350nm以下、より好ましくは300nm以下である。下限は100nm好ましい。D10は通常10nm以上、好ましくは20nm以上、より好ましくは30nm以上、上限は100nmである。分散液中における着色剤の粒径が以上のような範囲であることにより、インク保存安定性を担保しつつ、インクジェットヘッドノズルを詰まらせること無く安定してインクを吐出することができる。ここで、平均粒径(D50)は、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における小粒径側からの積算粒径の分布が50%となる粒径であり、D10は小粒径側からの積算粒径の分布が10%となる粒径であり、D90は小粒径側からの積算粒径の分布が90%となる粒径をいう。
【0053】
分散液と水、及びその他の成分との混合は、それぞれの成分を容器に加えた後に攪拌することにより行われる。
【0054】
分散液と水とを混合する際には中和剤を添加することが好ましい。分散剤としてブロック共重合体を用いて調製された着色剤の分散液を水に溶解させるために用いられる中和剤としては、例えば、アンモニア、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、脂肪族アミン化合物及びアルカノールアミン化合物等が挙げられる。アンモニア及びアルカリ金属の水酸化物が好ましく、アンモニアが特に好ましい。中和剤の使用量は特に制限されない。その目安としては、分散剤の酸価の理論等量で中和したときを100%中和度として、通常30~300%中和度、より好ましくは50~200%中和度である。
【0055】
インクのpHは通常7~11、好ましくは8~10である。インクの表面張力は通常10~50mN/m、好ましくは20~40mN/mである。インク組成物の粘度は通常2~30mPa・s、好ましくは3~20mPa・sである。
インクのpH及び表面張力は、pH調整剤、界面活性剤、及び水溶性有機溶剤等を使用することにより調整できる。
【0056】
インクは、各種の印刷において使用することができる。例えば、筆記具、各種の印刷、情報印刷、捺染等に好適であり、インクジェット印刷に用いることが特に好ましい。
【0057】
上記インクは、水不溶性着色剤の沈降が大幅に低減され、保存安定性に優れるという効果を有する。当該インクを用いてインクジェット記録装置によりインクジェット記録方法を行うことにより、インクジェットヘッドノズルの閉塞を発生させる問題や、循環機構を含むヘッドの内部構造に堆積して吐出不良を引き起こすという問題が生じるのを大幅に低減することができる。
【0058】
<インクジェット記録方法>
本発明に係るインクジェット記録方法は、上記イエローインクを用いてインクジェット記録装置により記録するインクジェット記録方法であって、前記イエローインクを吐出ヘッドによって記録メディア上に吐出して記録する吐出工程を有する。
【0059】
吐出工程は、イエローインクを吐出ヘッドによって記録メディア上に吐出して記録メディアに記録する工程である。イエローインクの吐出にはインクジェット方式の吐出ヘッドが用いられる。インクジェット方式としては、公知の方式を使用することができ、例えば、電荷制御方式、ドロップオンデマンド(圧力パルス)方式、音響インクジェット方式、及びサーマルインクジェット方式等が挙げられる。また、インクジェット方式には、インク中の着色剤の含有量が少ないインクを小さい体積で多数射出して画質を改良する方式、実質的に同じ色相で、インク中の着色剤の濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式、及び、無色透明のインクを用いることにより、着色剤の定着性を向上させる方式等も含まれる。
【0060】
インクジェット記録方法に用いるインクジェット記録装置としては、インクジェット方式の吐出ヘッドを有するものであれば一般的なインクジェット記録装置を用いることができる。インクジェット記録装置は、例えば、インクを収容する容器と、該容器から供給路を通してインクを供給され、インクを記録媒体に向けて吐出する吐出ヘッドとを少なくとも備える構成を有する。
【0061】
インクジェット記録装置は、インクを収容する容器と吐出ヘッドとの間、又は吐出ヘッド内でインクを循環させる循環機構をさらに備えることが好ましく、インクジェット記録方法は、吐出工程に供する前のインクを循環機構によって循環させる循環工程をさらに有することが好ましい。循環機構による循環工程によって、吐出ヘッドでのインクの詰まりやノズルでのインクの乾燥を防ぐことができる。循環機構は、インクを収容する容器と吐出ヘッドとを連結する循環流路と、循環流路に設けられた循環ポンプとを備えることが好ましい。
【0062】
インクジェット記録方法において上記イエローインクを用いることにより、沈降の発生が抑制又は大幅に低減され、インクジェット記録装置内部のインク流路や、吐出ヘッドを閉塞させる等の不具合が起こりにくくなる。インクジェット記録装置が循環機構を備える場合には、イエローインクから発生する沈降物が徐々に堆積することにより、閉塞や安定した送液を阻害するという不具合が発生するおそれがあるところ、本開示では、イエローインクが含有する水不溶性着色剤がアルミニウム化合物を400ppm未満しか含有しないため、イエローインクを循環させても沈降の発生が抑制又は大幅に低減され、循環路に閉塞や安定した送液を阻害するという不具合が起こりにくい。
【0063】
<記録メディアセット>
記録メディアセットは、上記イエローインクと、上記記録メディアとを含むセットである。記録メディアは、上記インクが付着できる物質を意味する。印刷メディアの一例としては、例えば、紙、フィルム等、繊維や布(セルロース、ナイロン、羊毛等)、皮革、カラーフィルター用基材等が挙げられる。
【0064】
記録メディアは、インク受容層を有するものと、有さないものとに大別することができる。上記インクは、いずれの印刷メディアにも適用することができるが、インク受容層を有さない印刷メディアに好適に用いることができる。
【0065】
インク受容層を有する記録メディアは、通常インクジェット専用紙、インクジェット専用フィルム、光沢紙等と呼ばれる。その代表的な市販品の例としては、キヤノン社製のプロフェッショナルフォトペーパー、スーパーフォトペーパー、光沢ゴールド及びマットフォトペーパー;セイコーエプソン株式会社製の写真用紙クリスピア(高光沢)、写真用紙(光沢)、及びフォトマット紙;日本ヒューレット・パッカード株式会社製のアドバンスフォト用紙(光沢);並びに富士フィルム株式会社製の画彩写真仕上げPro等が挙げられる。
【0066】
インク受容層を有さない印刷メディアとしては、グラビア印刷、及びオフセット印刷等の用途に用いられるコート紙、及びアート紙等の各種の用紙;並びにラベル印刷用途に用いられるキャストコート紙等が挙げられる。インク受容層を有さない記録メディアを用いるときは、着色剤の定着性等を向上させる目的で、記録メディアに対して表面改質処理を施すことも好ましく行われる。表面改質処理としては、コロナ放電処理、プラズマ処理及びフレーム処理等の、公知の方法が挙げられる。
【0067】
上記した全ての事項について、好ましいもの同士の組み合わせはより好ましく、より好ましいもの同士の組み合わせはさらに好ましい。好ましいものとより好ましいものとの組み合わせ、より好ましいものとさらに好ましいものとの組み合わせ等についても同様である。
また、特に断りのない限り上記した全ての成分等は、そのうちの1種類を単独で使用することができるし、2種類以上を併用することもできる。
【実施例0068】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって限定されるものではない。実施例において、各種の液が含有する着色剤の含有量(固形分)の測定が必要なときは、加熱乾燥式水分計(エイ・アンド・デイ社製、MS-70)を用いて、乾燥重量法により、着色剤のみの換算値として算出した。
【0069】
[調製例1:イエロー分散液1の調製]
国際公開第2013/115071号の合成例3に記載のブロック共重合体を調製し、得られたブロック共重合体(6部)をメチルエチルケトン20部に溶解させ、均一な溶液とした。この液に、水酸化ナトリウム(0.45部)を水(53.55部)に溶解させた混合液を加えた後、アルミニウム化合物の含有量が400ppm未満であるピグメントイエロー74(アルミニウム化合物13ppm含有)20部を加え、1500rpmの条件下で15時間、サンドグラインダー中で分散処理を行い、液を得た。得られた液に水(100部)を加えた後、この液をガラスろ紙GA-100を用いてろ過することにより、凝集物等を取り除き、ろ液を得た。得られたろ液を、エバポレーターを用いて、ろ液中のメチルエチルケトン、及び水の一部を減圧蒸留し、ろ液中の顔料含有量が12.0%となるようにすることで、イエロー分散液1を得た。イエロー分散液1の水分含有量は84.1%であった。
【0070】
[調製例2:イエロー分散液2の調製]
調製例1で使用したアルミニウム化合物の含有量が400ppm未満であるピグメントイエロー74の代わりにアルミニウム化合物の含有量が400ppm以上であるピグメントイエロー74(アルミニウム化合物400ppm含有)を用いる点以外は調製例1と同様の手順によって、顔料含有量が12.0%のイエロー分散液2を得た。イエロー分散液2の水分含有量は84.1%であった。
【0071】
[調製例3:樹脂1の調製]
国際公開2015/147192の調製例4を追試することにより、酸価6KOHmg/g、固形分が25%の樹脂エマルションを調製した。これを樹脂1とする。
【0072】
[実施例1及び比較例1:インク組成物の調製]
下記表1に示す各成分を混合した後、3μmのメンブランフィルターで濾過することにより、評価試験用の各インクを得た。
【0073】
[沈降の評価]
【0074】
実施例1及び比較例1の各インクを密封容器に入れて試験用のサンプルとし、70℃の恒温恒湿機で3日間静置した後、以下の2段階の基準で評価した。これは、インクジェット印刷装置内部のインク収容容器や、循環路等のインク流路、吐出ヘッド等の温度(およそ30~35℃)にインクを置いた場合を想定した加速試験に相当する。
[評価基準表]
〇 沈降が発生しない
× 沈降が発生する
【0075】
表1に示されるように、実施例1のインクは、沈降が発生せず、保存安定性に優れていることが示された。一方、比較例1のインクは、沈降が発生し、保存安定性に劣っていた。このことから、実施例1のインクを用いてインクジェット印刷装置によるインクジェット印刷を行った場合に、沈降の発生が抑制又は大幅に低減され、循環路に閉塞が起こりにくく、吐出不良等の問題が発生するリスクが低いことが示された。
【0076】
【表1】
【0077】
表1中の略号等は、以下を表す。
PG:プロピレングリコール。
1,2HD:1,2-ヘキサンジオール。
TEA:トリエタノールアミン。
樹脂1:調製例3で得た樹脂エマルション。
DW:イオン交換水。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明により、保管による水不溶性の着色剤の沈降を大幅に低減することを可能にするインクと、該インクを用いるインクジェット記録方法及び印刷メディアセットを提供することができる。上記インク、インクジェット記録方法及び印刷メディアセットは、各種の印刷、特にインクジェット印刷の用途に極めて有用である。