(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144399
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】センサシステムの距離シミュレーションのためのシミュレータ、当該シミュレータを動作させる方法および当該シミュレータ用の遅延区間
(51)【国際特許分類】
G01S 7/40 20060101AFI20241003BHJP
G01S 7/497 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G01S7/40 152
G01S7/497
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024056655
(22)【出願日】2024-03-29
(31)【優先権主張番号】10 2023 108 197.7
(32)【優先日】2023-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】506012213
【氏名又は名称】ディスペース ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】dSPACE GmbH
【住所又は居所原語表記】Rathenaustr.26,D-33102 Paderborn, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ヒムラー
【テーマコード(参考)】
5J070
5J084
【Fターム(参考)】
5J070AB24
5J070AC02
5J070AD02
5J084AA05
5J084BB31
5J084BB35
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本出願は、センサシステム(Radar,LIDAR)での距離シミュレーションのためのシミュレータ(Si)に関する。
【解決手段】前記シミュレータは、センサシステムから第1のセンサ信号(RS1,LS1)を受信して動作信号(A)へと変換するように構成された受信装置(RX)と、少なくとも1つの基板(Sub)上に形成された複数の遅延線路(VZ)と、第1の選択信号(AW1)に依存して、動作信号(A)のための信号路が遅延線路(VZ)の第1の選択を含むように前記第1の選択を切り替えるべく構成された第1の電気スイッチング装置(S1)とを備えた遅延区間(VS)と、信号路が通走された後、動作信号(A)を第2のセンサ信号(RS2,LS2)へと変換してセンサシステムへ送信するように構成された送信装置(TX)と、を含む。本出願はさらに、シミュレータの動作方法およびシミュレータ用の遅延区間に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサシステム(Radar,LIDAR)の距離シミュレーションのためのシミュレータ(Si)であって、前記シミュレータ(Si)は、
前記センサシステム(Radar,LIDAR)から第1のセンサ信号(RS1,LS1)を受信して動作信号(A)へと変換するように構成された受信装置(RX)と、
少なくとも1つの基板(Sub)上に形成された複数の遅延線路(VZ)と、第1の選択信号(AW1)に依存して、前記動作信号(A)のための信号路が前記遅延線路(VZ)の第1の選択を含むように前記第1の選択を切り替えるべく構成された第1の電気スイッチング装置(S1)と、を備えた遅延区間(VS)と、
前記信号路が通走された後、前記動作信号(A)を第2のセンサ信号(RS2,LS2)へと変換して前記センサシステム(Radar,LIDAR)へ送信するように構成された送信装置(TX)と、
を含むシミュレータ(Si)。
【請求項2】
前記遅延区間(VS)は、複数の電気ケーブル(EK)と第2の電気スイッチング装置(S2)とを有しており、前記第2の電気スイッチング装置(S2)は、第2の選択信号(AW2)に依存して、前記動作信号(A)のための信号路が前記電気ケーブル(EK)の第2の選択を含むように前記第2の選択を切り替えるべく構成されている、
請求項1記載のシミュレータ。
【請求項3】
前記遅延区間(VS)は、複数の光学ケーブル(OK)と1つの電気光学スイッチング装置(S3)とを有しており、前記電気光学スイッチング装置(S3)は、第3の選択信号(AW3)に依存して、前記動作信号(A)のための信号路が前記光学ケーブル(OK)の第3の選択を含むように前記第3の選択を切り替えるべく構成されている、
請求項1または2記載のシミュレータ。
【請求項4】
前記受信装置(RX)は、前記センサシステム(Radar,LIDAR)から放射されて前記第1のセンサ信号(RS1,LS1)を形成する電磁波を第1の周波数範囲で受信し、第2の周波数範囲の動作信号(A)へと変換するように構成された、第1の変換器を有する、
請求項1から3までのいずれか1項記載のシミュレータ。
【請求項5】
前記第1の周波数範囲は、77GHz付近にあり、
前記第2の周波数範囲は、1GHz~3GHzの間、例えば1.5GHz付近または2.5GHz付近にある、
請求項4記載のシミュレータ。
【請求項6】
前記基板(Sub)は、プリント回路板である、
請求項1から5までのいずれか1項記載のシミュレータ。
【請求項7】
前記遅延線路(VZ)の少なくとも一部は、導波路として形成されている、
請求項1から6までのいずれか1項記載のシミュレータ。
【請求項8】
前記シミュレータは、
第4の選択信号(AW4)に依存して、前記動作信号(A)をその振幅に関して減衰させるように構成された減衰装置(DE)、および/または
第5の選択信号(AW5)に依存して、前記動作信号(A)をその周波数に関して変化させるように構成された周波数変更ユニット(FE)
を含む、
請求項1から7までのいずれか1項記載のシミュレータ(Si)。
【請求項9】
遅延区間(VS)を用いてセンサシステム(Radar,LIDAR)のために距離をシミュレートする、請求項1から8までのいずれか1項記載のシミュレータ(Si)を動作させる方法であって、前記方法は、
前記シミュレータ(Si)の受信装置(RX)により、前記センサシステム(Radar,LIDAR)から送信された第1のセンサ信号(RS1,LS1)を受信するステップであって、前記第1のセンサ信号(RS1,LS1)は、動作信号(A)へと変換されるステップと、
第1の選択信号(AW1)に依存して、前記動作信号(A)により遅延線路(VZ)の第1の選択を通走させるステップであって、前記遅延線路(VZ)は、少なくとも1つの基板(Sub)上に構成されており、第1の電気スイッチング装置(S1)は、前記第1の選択信号(AW1)に依存して、前記動作信号(A)のための信号路が前記第1の選択を含むように前記第1の選択を切り替えるステップと、
前記動作信号(A)を第2のセンサ信号(RS2,LS2)へと変換し、前記センサシステム(Radar,LIDAR)へ送信するステップと、
を含む方法。
【請求項10】
複数の電気ケーブル(EK)が設けられており、
第2のスイッチング装置(S2)は、第2の選択信号(AW2)に依存して、前記動作信号(A)のための信号路が前記電気ケーブル(EK)の第2の選択を含むように前記第2の選択を切り替える、
請求項9記載の方法。
【請求項11】
複数の光学ケーブル(OK)が設けられており、
電気光学スイッチング装置(S3)は、第3の選択信号(AW3)に依存して、前記動作信号(A)のための信号路が前記光学ケーブル(OK)の第3の選択を含むように前記第3の選択を切り替える、
請求項9または10記載の方法。
【請求項12】
前記受信装置(RX)は、前記センサシステム(Radar,LIDAR)から放射されて前記第1のセンサ信号(RS1,LS1)を形成する電磁波を第1の周波数範囲で受信し、第2の周波数範囲の動作信号(A)へと変換する、第1の変換器を有する、
請求項9から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記第1の周波数範囲は、77GHz付近にあり、
前記第2の周波数範囲は、1GHz~3GHzの間、例えば1.5GHz付近または2.5GHz付近にある、
請求項12記載の方法。
【請求項14】
減衰装置(DE)は、第4の選択信号(AW4)に依存して、前記動作信号(A)をその振幅に関して減衰させる、かつ/または、周波数変更ユニットは、第5の選択信号(AW5)に依存して、前記動作信号(A)をその周波数に関して変化させる、
請求項9から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
請求項1から8までのいずれか1項記載のシミュレータ用の遅延区間(VS)であって、前記遅延区間(VS)は、
動作信号(A)を受信する受信インタフェースと、
少なくとも1つの基板(Sub)上に形成された複数の遅延線路(VZ)と、
第1の選択信号(AW1)に依存して、前記動作信号(A)のための信号路が前記遅延線路(VZ)の第1の選択を含むように前記第1の選択を切り替えるべく構成された第1の電気スイッチング装置(S1)と、
を有する遅延区間(VS)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、センサシステムの距離シミュレーションのためのシミュレータ、シミュレータを動作させる方法およびシミュレータ用の遅延区間に関する。
【背景技術】
【0002】
距離を測定するセンサシステムの距離シミュレーションのためのシミュレータは、当該距離をシミュレートし、例えばセンサシステムをテストするために用いられる。距離を測定するセンサシステムは、距離センサシステムとも称される。
【0003】
国際公開第2020/141151号から、電磁波で動作する距離センサシステムのテストのためにシミュレータ装置を動作させる方法が公知である。ここでは、距離センサシステムから受信された信号に応じて、周波数シフトを伴う所望の反射信号が生成される。当該距離センサシステムは、付加された周波数シフトから相対速度に関する情報を取得することができる。シミュレータ装置によって距離センサシステムをテストすることができる。
【0004】
国際公開第2020/136279号からは、電磁波に基づく距離センサシステムの空間距離シミュレーションのための信号遅延装置が公知である。ここでは、距離センサシステムから受信された信号に応じて、遅延を伴う所望の反射信号が生成される。当該距離センサシステムは、受信された信号に付加された遅延から距離情報を取得することができる。シミュレータ装置によって距離センサシステムをテストすることができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
センサシステムの距離シミュレーションのためのシミュレータは、センサシステムから第1のセンサ信号を受信して動作信号へと変換するように構成された受信装置を含む。シミュレータはさらに遅延区間を含む。当該遅延区間は、少なくとも1つの基板上に形成された複数の遅延線路と第1の電気スイッチング装置とを備えている。第1の電気スイッチング装置は、第1の選択信号に依存して、動作信号のための信号路が遅延線路の第1の選択を含むように当該第1の選択を切り替えるべく構成されている。シミュレータはさらに、信号路が通走された後、動作信号を第2のセンサ信号へと変換してセンサシステムへ送信するように構成された送信装置を含む。
【0006】
シミュレータは、第1の選択信号により、遅延区間を通る選択可能かつ設定可能な距離を正確に切り替え、これによりセンサシステムに対する適切なシミュレーションを実現することができる。特に、距離測定のためのセンサシステムが顕著な役割を果たす自律運転の機能に関して、センサシステムのテストおよび検査のために当該センサシステムの正確な距離シミュレーションが必要となる。
【0007】
シミュレータは、電気コンポーネント、電子コンポーネントおよび機械コンポーネントを備えた装置である。センサシステムのシミュレータへの例えば機械的な統合は、例えば収容によって実現することができる。シミュレータはさらに、人員によるシミュレーションの制御を可能にするために、制御機能と、さらに例えば入力端末とを有する。さらに、シミュレータは、ソフトウェア技術によって実現されており、トリガ後に自動的に実行可能な機能を有している。
【0008】
例えば対応する現実の距離にある対象物による実験において距離を調整することは煩雑でありかつコストのかかる作業となるため、距離シミュレーションは、距離測定のためのセンサシステムを検査する低コストの手段である。
【0009】
センサシステムは、例えばレーダー、ビデオまたはLIDARのような、電磁波ベースの環境センサシステムでありうる。しかし、他の距離を測定するセンサシステム、例えば超音波センサシステムも適する。
【0010】
受信装置は、センサシステムから到来した第1のセンサ信号を受信し、動作信号へと変換するように構成された電気装置または電子装置である。このために、受信装置は、例えばアンテナまたは同等の受信要素を有する。こうした受信装置により、受信された信号、例えばレーダー信号が動作信号へと変換され、この動作信号が受信装置から例えば有線接続によって遅延区間へ伝送される。
【0011】
遅延区間は、基板上に形成された複数の遅延線路を有する。これにより、例えば簡単なパターニング技術によって、多数のそれぞれ異なる遅延線路を簡単に実現することができる。個別であっても、または例えば相互に接続されていても、これらの遅延線路を通してそれぞれ異なる距離をシミュレートすることができる。この場合、第1のスイッチング装置を介して、第1の選択信号に依存して、動作信号のための信号路が遅延線路の第1の選択を含むように、すなわち、所望の距離をシミュレートする遅延線路が第1の選択によって決定されるように、当該選択が切り替えられる。次いで、動作信号が、選択された当該遅延線路を通走する。したがって、信号路とは、その時点で選択されている1つもしくは複数の遅延線路を意味する。さらに、シミュレータは、信号路が通走された後に、動作信号を第2のセンサ信号へと変換し、これをセンサシステムへ送信するように構成された送信装置を含む。したがって、当該第2のセンサ信号は、対象物で反射された信号をシミュレートするものであり、この場合、距離はまさに遅延線路によってシミュレートされている。よって、第2のセンサ信号は、センサシステムの受信器、例えばレーダー受信器またはLIDAR受信器から受信され、相応に評価可能となるように構成される。これにより、センサシステムの機能を検査することができる。
【0012】
一実施形態では、遅延区間が複数の電気ケーブルと第2のスイッチング装置とを有するように構成され、この場合、第2のスイッチング装置が電気スイッチング装置として構成される。第2のスイッチング装置は、第2の選択信号に依存して、動作信号のための信号路が上記の第1の選択に加えて遅延線路の第2の選択を含むように第2の選択を切り替えるべく構成される。この場合、第2の選択は、遅延線路としての電気ケーブルを有する。これにより、基板上に形成される遅延線路の他、付加的に電気ケーブルを含む遅延線路も使用することができる。基板上に形成された遅延線路により、きわめて正確かつ短い距離を選択可能である一方、電気ケーブルにより、より大きな距離を容易に実現可能である。
【0013】
別の一実施形態では、遅延区間が複数の光学ケーブルと電気光学スイッチング装置とを有しており、当該電気光学スイッチング装置は、第3の選択信号に依存して、動作信号のための信号路が少なくとも上記の第1の選択に加えて光学ケーブルの第3の選択を含むように当該第3の選択を切り替えるべく構成されている。これにより、基板上に形成された遅延線路および任意の電気光学ケーブルの他、選択された光学ケーブルによる遅延も可能となる。このために、動作信号を電気信号から光信号へと変換することができ、さらに、選択された光学ケーブルが通走された後に、送信装置のために再び電気信号へと変換することもできる。光学ケーブルを用いれば、基板上の遅延線路よりも大きな距離を容易にシミュレートすることができるので、3つの全ての手段でより大きな距離をきわめて正確にシミュレートすることができる。
【0014】
さらなる実施形態では、受信装置が、センサシステムから放射されて第1のセンサ信号を形成する電磁波を第1の周波数範囲で受信し、第2の周波数範囲の動作信号へと変換するように構成された、第1の変換器を有する。この場合、受信装置は、受信された電磁信号を動作信号のためのより低い周波数範囲へと変換することができ、これにより動作信号の電気的なもしくは電子的な伝送および処理を容易にすることができる。
【0015】
この場合、第1の周波数範囲が77GHz付近にあり、第2の周波数範囲が1~3GHzの間もしくは1.5GHz付近または2.5GHz付近にあるようにすることができる。
【0016】
一実施形態では、基板がプリント回路板であるように構成されている。プリント回路板では、パターニング技術により、遅延線路を効率的に形成することができる。
【0017】
複数の実施形態において、遅延線路の少なくとも一部、特に光学ケーブルが導波路として形成される。
【0018】
当該実施形態によれば、減衰装置が設けられており、この減衰装置は、第4の選択信号に依存して、動作信号をその振幅に関して減衰させるように構成されており、かつ/または周波数変更ユニットが設けられており、この周波数変更ユニットは、第5の選択信号に依存して、動作信号をその周波数に関して変化させるように構成されている。したがって、例えばレーダー信号またはLIDAR信号が反射される特定の対象物または環境の特性について現実に即した記述を得ることができる。
【0019】
遅延区間を用いてセンサシステムのために距離をシミュレートする、シミュレータを動作させる方法は、
シミュレータの受信装置により、センサシステムから送信された第1のセンサ信号を受信するステップであって、ここで、第1のセンサ信号は動作信号へと変換される、ステップと、
第1の選択信号に依存して、動作信号により遅延線路の第1の選択を通走させるステップであって、ここで、遅延線路は少なくとも1つの基板上に構成されており、第1の電気スイッチング装置が、第1の選択信号に依存して、動作信号のための信号路が第1の選択を含むように当該第1の選択を切り替える、ステップと、
動作信号を第2のセンサ信号へと変換し、センサシステムへ送信するステップと、
を含む。
【0020】
シミュレータ用の遅延区間は、
動作信号を受信する受信インタフェースと、
少なくとも1つの基板上に形成された複数の遅延線路と、
第1の選択信号に依存して、動作信号のための信号路が遅延線路の第1の選択を含むように当該第1の選択を切り替えるべく構成された第1の電気スイッチング装置と
を有する。
【0021】
シミュレータは、任意選択手段として、第2のセンサ信号においてそれぞれ異なる遅延を有する複数の対象物をシミュレートするように構成することができる。このために、シミュレータは、各遅延に対する各遅延区間が設けられた複数の信号路を有することができる。
【0022】
各実施例を図示し、以下の説明において詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】シミュレータによるレーダーの全体配置を示す概略図である。
【
図2】レーダーと通信するシミュレータを示すブロック図である。
【
図3】レーダーと通信するシミュレータを示す別のブロック図である。
【
図4】LIDARと通信するシミュレータを示す別のブロック図である。
【
図5】基板上に形成された遅延線路を示す概略図である。
【
図7】動作信号の振幅および周波数の付加的な制御を伴うシミュレータを示す別のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図中、同一のもしくは類似の要素には同じ参照符号を使用している。図における描写は縮尺通りでないところもある。
【0025】
図1には、レーダーセンサRadarと通信しているシミュレータSiがブロック図で示されている。ここで、通信とは、レーダーセンサRadarとシミュレータSiとの間の電磁信号がエアインタフェースを介して交換されることを意味する。
【0026】
レーダーセンサRadarは第1のレーダーセンサ信号RS1を送信し、シミュレータSiの受信装置RXで受信されて動作信号Aへと変換される。このために、受信装置RXは例えばヘテロダイン受信器を有する。動作信号Aは、第1のスイッチング装置S1を介して、対応する遅延線路VZへと進行する。このために、第1のスイッチング装置S1には、動作信号Aに対して対応する1つもしくは複数の遅延線路VZを切り換えるようスイッチング装置S1に指示する第1の選択信号AW1が印加され、これにより、動作信号Aは、第1の選択AW1に従って当該遅延線路VZを通走する。動作信号Aが通走する遅延線路VZが、信号路を形成する。各遅延線路VZの全体により遅延区間VSが形成される。この場合、このようにして遅延された信号Aが送信装置TXへと走行し、当該送信装置TXにより、遅延された動作信号Aが第2のセンサ信号RS2へと変換されて、レーダーセンサRadarへ送信される。
【0027】
遅延線路VZは、特に、基板Sub上に形成された電気線路であってよい。よって、第1のスイッチング装置S1は、好ましくは電気スイッチング装置として、特に半導体スイッチの形態で構成可能である。リレーまたはマイクロエレクトロメカニカル式のMEMSスイッチングデバイスも可能である。
【0028】
図2には、動作信号Aを遅延させる別の手段、すなわち電気ケーブルEKを用いて遅延させる別の手段がシミュレータSiに補足されている別のブロック図が示されている。電気ケーブルEKにおいて所望の遅延を選択するために、選択信号AW2が第2のスイッチング装置S2へと適用される。第2のスイッチング装置S2は、好ましくは電気スイッチング装置S2として形成されている。これにより、動作信号Aのための信号路は、基板Sub上に形成された遅延線路VZと対応する電気ケーブルEKとによって形成される。ここでも、このようにして遅延された動作信号Aが、次いで、送信装置TXによって第2のセンサ信号RS2としてレーダーセンサRadarへ送信される。
【0029】
図2に示されている例では、第1のスイッチング装置S1、少なくとも1つの遅延線路VZ、第2のスイッチング装置S2および少なくとも1つの電気ケーブルEKが、遅延区間VSを形成している。
【0030】
図3には、シミュレータSiの別の実施形態が示されており、すなわち動作信号Aのための信号路へと遅延を切り替える第3の手段が示されている。光学ケーブルOKによる所定の遅延を達成するために、第3の選択信号AW3を介して第3のスイッチング装置S3に、当該光学ケーブルOKを信号路へと切り替えるように指示する手段が得られる。このために、光学ケーブルOKが通走されるよう、動作信号Aを光信号へ変換する必要がある。このためには、電気的な動作信号Aから光学的な動作信号Aを生成する電気光学変換器が必要である。
【0031】
第3のスイッチング装置は好ましくは光学スイッチング装置として構成され、例えば光学MEMSモジュールとして構成可能である。
【0032】
光学ケーブルOKが通走された後、電気信号への変換が行われるが、このことは本明細書では説明しない。当該変換のために光学電気変換器を設けることができる。電気動作信号Aは、第2のセンサ信号RS2として送信装置TXを介してレーダーセンサRadarへ送信される。
【0033】
図3に示されている例では、第1のスイッチング装置S1、少なくとも1つの遅延線路VZ、第2のスイッチング装置S2、少なくとも1つの電気ケーブルEK、第3のスイッチング装置S3および少なくとも1つの光学ケーブルOKが、遅延区間VSを形成している。
【0034】
図4には、さらなるブロック回路図において、この時点でLIDARセンサLIDARと通信しているシミュレータSiが示されている。第1のセンサ信号LS1は、LIDARセンサLIDARから送信された光であり、これが受信装置RXによって動作信号Aへと変換される。動作信号Aは好ましくは電気信号である。
【0035】
ここでも、
図1~
図3に示されているように、遅延区間VSによって動作信号Aのための信号路を形成する対応する手段、すなわち、選択信号AW1、AW2およびAW3を使用して対応する遅延線路VZおよび別の任意の電気ケーブルEKおよび/または光学ケーブルOKを選択する対応する手段が提供される。次いで、当該遅延線路VZを信号路として通走した動作信号Aが、送信装置TXを介して第2のセンサ信号LS2へと変換され、LIDARセンサLIDARへ返送される。
【0036】
図5には、基板Sub上に形成されている遅延線路VZの簡単な実施形態が示されている。このために、動作信号Aは、基板Subにおいて、波状に形成されておりかつ遅延線路VZとして作用することによって相応の遅延を生じさせる導体を通走する。このような実施形態は、遅延線路VZの省スペースでの、ひいては低コストでの実現を可能にする。
【0037】
図6には、シミュレータSiの動作方法がフローチャートで示されている。方法ステップ600では、第1のセンサ信号RS1が受信装置RXによって受信され、動作信号Aへと変換される。方法ステップ601では、選択信号AW1、AW2および/またはAW3により、対応するもしくは所望の遅延線路VZの選択が行われる。次いで、動作信号Aがこのように形成された信号路を通走し、このことは方法ステップ602において行われる。この場合、このようにして遅延された動作信号Aが、第2のセンサ信号RS2として、検査すべきセンサシステムRadarへ返送される。
【0038】
図7には、別のブロック図でレーダーセンサRadarと通信するシミュレータSiの構造が示されており、この場合、動作信号Aに遅延区間VSによる遅延を印加することに加えて、シミュレータSiにおける動作信号Aの振幅および周波数の変更も可能となる。
【0039】
レーダーセンサRadarから送信された第1のセンサ信号RS1は、受信装置RXによって受信される。受信装置RXは、第1のセンサ信号RS1を動作信号Aへと変換する。動作信号Aは有線接続によって減衰装置DEへ供給され、この減衰装置DEは、第4の選択信号AW4によって、この第4の選択信号AW4が減衰装置DEによる減衰のレベルを決定するように制御することができる。ここでの減衰は動作信号Aの振幅に影響を与え、その結果、第2のセンサ信号RS2の振幅にも影響を与える。第2のセンサ信号RS2の振幅から、センサシステムRadarは、例えば本明細書での第1のセンサ信号RS1の反射によりシミュレートされる対象物の大きさに関する情報を取得することができる。
【0040】
減衰レベルの制御は、段階的にかつ/または連続的に行われうる。例えばこのために種々の抵抗を接続することができ、かつ/またはポテンショメータを使用することができる。このために、減衰装置は、第4の選択信号AW4に依存して操作される1つもしくは複数のスイッチング装置を有している。当該スイッチング装置に続いて遅延区間VSが存在し、この遅延区間VSを通して、第1の選択信号AW1および/または第2の選択信号AW2および/または第3の選択信号AW3に依存して、選択信号AW1~AW3によって決定される対応する遅延が動作信号Aに印加される。
【0041】
次いで、動作信号Aはさらに周波数変更ユニットFEに供給され、この周波数変更ユニットFEが、動作信号Aの周波数を第5の選択信号AW5に依存して変化させる。このために、例えば、例えば動作信号Aの周波数を増大するもしくは低減する周波数を送出する電圧制御発振器を使用することができる。このために、動作信号Aと発振器の信号との乗算を使用することができる。動作信号Aの周波数および第2のセンサ信号RS2の結果から、センサシステムRadarは、例えばドップラー効果を利用することにより、本明細書での第1のセンサ信号RS1の反射によりシミュレートされる対象物の相対速度に関する情報を取得することができる。
【0042】
図示のコンポーネントDE、FEおよびVSは、図示の順序で存在する必要はなく、他の順序で設けることもできる。減衰装置DEのみが設けられていてもよいし、または周波数変更ユニットFEのみが設けられていてもよい。
【0043】
このようにして変更された動作信号Aは、送信装置TXによって第2のセンサ信号RS2へと変換され、レーダー信号としてレーダーセンサRadarへ返送される。
【0044】
図7には、レーダーセンサシステムRadarの実施例におけるシミュレータが示されている。このシミュレータSiは相応に、例えばLIDARなどの他の環境センサシステムにも適用可能である。
【符号の説明】
【0045】
Radar,LIDAR センサシステム
RS1,LS1 第1のセンサ信号
RS2,LS2 第2のセンサ信号
RX 受信装置
TX 送信装置
A 動作信号
S1~S3 スイッチング装置
VZ 基板上の遅延線路
VS 遅延区間
Si シミュレータ
AW1~AW5 選択信号
EK 電気ケーブル
OK 光学ケーブル
600~602 方法ステップ
DE 減衰装置
FE 周波数変更ユニット
【外国語明細書】