(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014440
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/22 20060101AFI20240125BHJP
B60H 1/00 20060101ALI20240125BHJP
B60H 1/03 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
B60H1/22 611D
B60H1/00 101A
B60H1/03 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117263
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河井 秀介
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA02
3L211DA42
3L211DA50
3L211EA32
3L211EA50
3L211GA42
3L211GA49
(57)【要約】
【課題】運転モードの切替直後においても乗員の快適性を向上させる。
【解決手段】熱源と熱交換することで加熱又は冷却された熱媒体が循環する熱媒体回路と、前記熱媒体回路を循環する熱媒体と空気とを熱交換させる熱交換器を空気流通路に配置し、前記熱交換器により温調された空気を車室内に吹出す空調ユニットと、前記熱源、前記熱媒体回路、及び、前記空調ユニットを制御して複数の運転モードを切替えて実行する制御部と、を備え、前記制御部は、前記運転モードの切替に際して、切替後の前記運転モードに設定される目標温度が閾値より高い場合に、前記運転モードの切替前に前記熱媒体回路の熱媒体を予熱するか否かの予熱制御を行う、車両用空調装置を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源と熱交換することで加熱又は冷却された熱媒体が循環する熱媒体回路と、
前記熱媒体回路を循環する熱媒体と空気とを熱交換させる熱交換器を空気流通路に配置し、前記熱交換器により温調された空気を車室内に吹出す空調ユニットと、
前記熱源、前記熱媒体回路、及び、前記空調ユニットを制御して複数の運転モードを切替えて実行する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記運転モードの切替に際して、切替後の前記運転モードに設定される目標温度が閾値より高い場合に、前記運転モードの切替前に前記熱媒体回路の熱媒体を予熱するか否かの予熱制御を行う、車両用空調装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記予熱制御において、
前記目標温度に対応する熱媒体の温度が、前記熱媒体回路を循環する熱媒体の温度より高い場合に、前記熱源により熱媒体を予熱する、請求項1記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記熱媒体回路に、熱媒体を加熱する加熱装置を設け、
前記制御部は、前記予熱制御において、
前記目標温度に対応する熱媒体の温度が、前記熱媒体回路を循環する熱媒体の温度より高い場合であって、かつ、車両に搭載されるバッテリの残量が所定値以上の場合に前記加熱装置により熱媒体を予熱する、請求項1記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記加熱装置を前記バッテリの温度調整に使用している場合には、前記熱源により熱媒体を予熱する、請求項3記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記熱源が冷媒回路を循環する冷媒又は車載機器である、請求項1から請求項3のいずれかに記載の車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用空調装置では、空気流通路上に、熱源となる冷媒回路を循環する冷媒と直接又は他の熱媒体を介して空気と熱交換する複数の熱交換器(ヒータコア、クーラコア)を配置した空調ユニットを備え、空調ユニットの吹出口から加熱又は冷却された空気を車室内に供給することで車室内の空調を行う。このような車両用空調装置では、ヒータコアにより加熱された空気を車室内に供給する暖房モード及びクーラコアにより冷却された空気を車室内に供給する冷房モードを含む複数の運転モードを実行可能であり、設定された目標温度に応じて運転モードを選択的に切替えて実行する(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両用空調装置において、例えば、運転モードの切替えに際し、切替前後の目標温度の差が大きい場合には、運転モードの切替直後にヒータコア又はクーラコアを通過する熱媒体の温度が、目標温度の空気を吹き出すための温度に達していない場合がある。この場合、運転モードを切替えた後しばらくは、空調ユニットから吹き出される空気が目標温度に達しておらず、車室内の快適性が損なわれることとなる。
【0005】
本発明は、このような問題に対処することを課題としている。すなわち、車両用空調装置において、運転モードの切替直後においても乗員の快適性を向上させること、などが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するために、本発明の一態様は、以下の構成を具備する。
すなわち、本発明の一態様に係る車両用空調装置は、熱源と熱交換することで加熱又は冷却された熱媒体が循環する熱媒体回路と、前記熱媒体回路を循環する熱媒体と空気とを熱交換させる熱交換器を空気流通路に配置し、前記熱交換器により温調された空気を車室内に吹出す空調ユニットと、前記熱源、前記熱媒体回路、及び、前記空調ユニットを制御して複数の運転モードを切替えて実行する制御部と、を備え、前記制御部は、前記運転モードの切替に際して、切替後の前記運転モードに設定される目標温度が閾値より高い場合に、前記運転モードの切替前に前記熱媒体回路の熱媒体を予熱するか否かの予熱制御を行う、車両用空調装置を備える。
【発明の効果】
【0007】
このような特徴を備えた本発明の車両用空調装置によると、運転モードの切替直後においても乗員の快適性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両用空調装置の概略構成を示す説明図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る車両用空調装置の制御部の概略構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る車両用空調装置における予熱制御を行うか否かの判定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】本発明の実施形態の車両用空調装置における実施例1に係る予熱制御処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】本発明の実施形態の車両用空調装置における実施例2に係る予熱制御処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】本発明の実施形態の車両用空調装置における実施例3に係る予熱制御処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両用空調装置1の冷媒回路R、熱媒体回路W及び空調ユニット10の概略構成を示し、
図2は、
図1に示す冷媒回路R、熱媒体回路W及び空調ユニット10を制御する制御部の概略構成を示している。
図1及び
図2に示すように、車両用空調装置1は、冷媒回路Rと、熱媒体回路Wと、空調ユニット10と、冷媒回路R、熱媒体回路W及び空調ユニット10を制御する制御部100とを備えて構成される。
【0011】
冷媒回路Rは、車両の走行用バッテリによって駆動され冷媒を圧縮する圧縮機2、凝縮器3、膨張弁4、蒸発器5、室外送風機6を備えている。
冷媒回路Rでは、圧縮機2から吐出された高圧のガス冷媒が、凝縮器3において放熱して液化凝縮し、凝縮器3から流出した高圧冷媒は、膨張弁4によって減圧されて膨張し、低圧冷媒となり、蒸発器5に流入する。蒸発器5に流入した低圧冷媒は、蒸発器5において後述する空調ユニット10の空気流通路13を通過する空気と熱交換することにより蒸発し、ガス冷媒となって蒸発器5を流出し、圧縮機2へ戻る。
なお、蒸発器5には、蒸発器5に流入又は流出する冷媒の温度を検出する蒸発器温度センサ7が設けられている。
【0012】
熱媒体回路Wは、走行用のバッテリ21に熱媒体を流通させるバッテリ熱媒体流路20と、走行用のモータ31に熱媒体を流通させるモータ熱媒体流路30と、後述する空調ユニット10の空気流通路13に配置されるヒータコア8及びヒータコア8を加熱する加熱装置としてのPTC41に熱媒体を流通させるヒータコア熱媒体流路40とを備えている。
【0013】
バッテリ熱媒体流路20とヒータコア熱媒体流路40とは、四方弁V1により接続されている。後述する制御部100によって四方弁V1を制御することにより、バッテリ熱媒体流路20とヒータコア熱媒体流路40とを接続した流路又は独立した流路とすることができる。同様に、モータ熱媒体流路30とヒータコア熱媒体流路40とは、四方弁V2により接続され、制御部100によって四方弁V2を制御することにより、モータ熱媒体流路30とヒータコア熱媒体流路40とを互いに接続した流路又は独立した流路とすることができる。
【0014】
バッテリ熱媒体流路20は、第1ポンプ22によってバッテリ21に熱媒体を循環させ、バッテリ21を暖機したり、バッテリ21の廃熱を回収したりすることができる。バッテリ21の上流側にバッテリ21に流入する熱媒体の温度を検出するバッテリ温度センサ23が設けられている。
【0015】
モータ熱媒体流路30は、第2ポンプ32によってモータ31に熱媒体を循環させ、モータ31を暖機したり、モータ31の廃熱を回収したりすることができる。モータ31の下流側にモータ31を流出した熱媒体の温度を検出するバッテリ温度センサ23が設けられている。
【0016】
ヒータコア熱媒体流路40は、第3ポンプ42によってPTC41及びヒータコア8に熱媒体を循環させ、PTC41によって加熱された熱媒体をヒータコア8に流通させることで、空調ユニット10の空気流通路13を通過する空気を加熱する。PTC41とヒータコア8との間にPTC41から流出してヒータコア8に流入する熱媒体の温度を検出するヒータコア温度センサ43が設けられている。
【0017】
空調ユニット10は、空調ユニット10に外気又は内気を取り込むための外気吸込口と内気吸込口の各吸込口が形成され、吸込み口に各吸込口の開閉を切換える吸込切換ダンパ11が設けられている。吸込切換ダンパ11の空気下流側には、導入した外気又は内気を空気流通路13に送給するための送風機12が設けられている。
【0018】
空気流通路13において蒸発器5とヒータコア8との間には、空気流通路13内に流入して蒸発器5を通過した空気のうちヒータコア8に流通させる割合を調整するエアミックスダンパ14が設けられている。空調ユニット10において温調された空気は、吹出口15を介して車室内に吹き出される。
【0019】
図2に、車両用空調装置1の制御部100の概略構成を示す。
制御部100は、車両用空調装置1が搭載される車両の車両用制御システムの一部として機能する。車両用制御システム(不図示)は、車両走行に必要な種々のセンサや車載機器類とこれらを制御する複数の車載ECU(Electronic Control Unit)を含み、各車載ECUが、CAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)等の車載ネットワークにより相互に通信可能に接続され、情報の送受信を行う。したがって、制御部100も各種車載ECUやセンサや車載機器類と車載ネットワークを介して接続され、各種車載ECU等と連携して冷媒回路R、熱媒体回路W及び空調ユニット10を制御する。
【0020】
制御部100及び各車載ECUは、例えば、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサや電気回路、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の記憶素子を備えて構成されている。また、車載ECUが実行する動作の一部又は全部を、ASIC(application specific integrated circuit)、FPGA(field-programmable gate array)やGPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェアにより実現することもできる。
【0021】
図2に示すように、制御部100の入力側には、蒸発器温度センサ7、バッテリ温度センサ23,モータ温度センサ33、ヒータコア温度センサ43、及び操作部90が接続され、これらの各センサや操作部90の出力が入力される。
【0022】
また、制御部100の出力側には、圧縮機2、室外送風機6、膨張弁4、吸込切換ダンパ11、送風機12、エアミックスダンパ14、四方弁V1,V2、第1ポンプ22、第2ポンプ32、第3ポンプ42、及びPTC41が接続されている。制御部100は各センサの出力と操作部90にて入力された設定と、その他の車載ECUからの情報とに基づいてこれらを制御する。
なお、
図2及び以下の説明では、本実施形態に直接関係しないセンサやその他検出器については図示及び説明を省略している。
【0023】
図2に示すように、本実施形態において、制御部100は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM103、RAM104、及び記憶部102を備えている。
CPU101は、ROM103に格納されたプログラムに基づいて種々の処理を実行する。本実施形態では、CPU101は、ROM103に格納されたプログラムを例えばRAM104等のメモリに読み込んで実行することにより、冷媒回路R、熱媒体回路W、及び、空調ユニット10を制御して複数の運転モードを切替えて実行すると共に、運転モードの切替前に熱媒体回路の熱媒体を予熱するか否かの予熱制御を行う。
【0024】
制御部100が実行する運転モードには、所謂、暖房モード、冷房モード等の他、予め実行時間が定められた特殊運転モードを含んでいる。特殊運転モードとして、例えば、強制冷房モードや強制換気モードがある。特殊運転モードは、例えば、通常の運転モードの実行中に、自動的に又は乗員によるスイッチの押下をトリガーとして予め定められた時間、予め定めた設定実行し、その後、元の運転モードを実行するように設定することができる。
【0025】
続いて、このように構成された車両用空調装置1において、運転モードの切替前に予熱制御を行うか否かの判定処理について、
図3のフローチャートを用いて説明する。
車両用空調装置1では、何れかの運転モードの実行中に、手動又は自動で他の運転モードに切替える場合において、運転モードの切替前に熱媒体回路の熱媒体を予熱するか否かの予熱制御を行う。以下の説明では、例えば、暖房モードの実行中に、特殊運転モードを実行し、その後、再び暖房モードを実行する場合について説明する。
【0026】
図3に示すように、車両用空調装置1において暖房モードの実行中に、特殊運転モードへの切替えが行われる場合(ステップS101のYES)、制御部100は、現在実行中の暖房モードについて設定された運転情報を記憶部102に記憶する(ステップS102)。ここで、特殊運転モードへの切替えが行われるか否かは、手動、すなわち、乗員による操作部90への操作の有無、又は、自動、すなわち、制御部100によって行われる切替に係る処理が開始されたか否かで判定する。
【0027】
また、制御部100は、記憶部102に記憶される運転情報として、少なくとも、吹出口15から吹き出される空気の吹出目標温度Tset又は吹出目標温度Tsetを実現するためのヒータコア熱媒体流路40の熱媒体の温度(以下、目標熱媒体温度TGTWOとする)を記憶しておく。
【0028】
暖房モードに設定された運転情報を記憶部102に記憶すると、制御部100は、特殊運転モードの実行を開始し(ステップS103)、復帰後の運転モードに設定された吹出目標温度、すなわち、記憶部102に記憶された吹出目標温度Tsetが、予め定めた閾値温度Thよりも大きいか否かを判定し(ステップS104)、吹出目標温度Tsetが閾値温度Thよりも大きい場合(ステップS104のYES)に、予熱制御を実行する(ステップS105)。
【0029】
ステップS104において、吹出目標温度Tsetと閾値温度Thとを比較するのは、復帰後の運転モードが暖房モードであるかを判定することにより予熱制御の要否を判定するためである。復帰度の運転モードが暖房モードである場合、特殊運転モードの実行中に車室内の温度や、吹出目標温度、熱媒体温度が低下し、そのまま暖房モードに切替えるとヒータコア熱媒体流路40を循環する熱媒体の温度が低く、吹出目標温度Tsetを実現できないために、乗員の快適性が低下する恐れがある。
【0030】
ステップS105の予熱制御処理が完了すると、運転モードを暖房モードに復帰させ(ステップS106)、予熱制御を行うか否かの判定処理を終了する。
【0031】
以下、制御部100が実行する予熱制御に係る実施例1から実施例3について
図4から
図6を用いて説明する。制御部100は、
図3のフローチャートにおける予熱制御(ステップS105)として、以下の実施例1から実施例3の何れかの処理を行うことができる。
【0032】
(実施例1)
以下、制御部100によって実行される、実施例1に係る予熱制御処理の流れについて、
図4のフローチャートを用いて説明する。
制御部100は、ヒータコア温度センサ43から、ヒータコア8に流入する熱媒体の温度(以下、ヒータコア水温という)を検出し(ステップS201)、記憶部102に記憶された目標熱媒体温度TGTWO、又は記憶部102に記憶された吹出目標温度Tsetから演算により得られる目標熱媒体温度TGTWOとヒータコア水温とを比較する(ステップS202)。
【0033】
目標熱媒体温度TGTWOがヒータコア水温よりも高い場合(ステップS202のYES)は、PTC41がバッテリ21の温度調整に使用されているか否かを判定する(ステップ203)。
【0034】
PTC41がバッテリ21の温度調整に使用されていない場合(ステップS203のNO)は、バッテリ21の残量が、例えば50%以上であれば(ステップS204のYES)、PTC41によりヒータコア熱媒体流路40を循環する熱媒体の予熱を開始する(ステップS205)。
【0035】
PTC41がバッテリ21の温度調整に使用されている場合(ステップS203のYES)、及び、PTC41がバッテリ21の温度調整に使用されていない(ステップS203のNO)ものの、バッテリ残量が例えば50%未満である場合には(ステップS204のNO)、モータ31の廃熱を利用できるか否か、すなわち、モータ熱媒体流路30を流れる熱媒体の温度(以下、廃熱水温という)がヒータコア水温よりも高温であるか否かを判定する(ステップS206)。廃熱水温がヒータコア水温よりも高い場合(ステップS206のYES)に、モータ熱媒体流路30を流れる熱媒体(廃熱水)を利用してヒータコア熱媒体流路40を循環する熱媒体を予熱又は温度維持を開始する(ステップS207)。
【0036】
つまり、制御部100は、例えば、PTC41がバッテリ21の温度調整に用いられている場合や、バッテリ21の残量が多くない場合など、バッテリ21によってPTC41を駆動させて熱媒体を予熱することが好ましくない場合に、PTC41以外の他の熱源を用いて熱媒体を予熱するように制御する。
【0037】
目標熱媒体温度TGTWOがヒータコア水温よりも低い場合(ステップS202のNO)、及び、廃熱水温がヒータコア水温よりも低い場合(ステップS206のNO)には、ヒータコア熱媒体流路40を循環する熱媒体の予熱をせずに(ステップS208)予熱制御処理を終了する。
【0038】
(実施例2)
以下、制御部100によって実行される、実施例2に係る予熱制御処理の流れについて、
図5のフローチャートを用いて説明する。
制御部100は、ヒータコア温度センサ43から、ヒータコア水温を検出し(ステップS301)、記憶部102に記憶された目標熱媒体温度TGTWO、又は記憶部102に記憶された吹出目標温度Tsetから演算により得られる目標熱媒体温度TGTWOとヒータコア水温とを比較する(ステップS302)。
【0039】
目標熱媒体温度TGTWOがヒータコア水温よりも高い場合(ステップS303のYES)は、ヒータコア水温と目標熱媒体温度TGTWOとの差であるΔTが予め定めた閾値Th1よりも大きいか否かを判定する(ステップS303)。ΔTが閾値Th1よりも大きい場合(ステップS303のYES)は、PTC41がバッテリ21の温度調整に使用されているか否かを判定する(ステップ304)。
【0040】
PTC41がバッテリ21の温度調整に使用されていない場合(ステップS304のNO)は、バッテリ21の残量が、例えば50%以上であれば(ステップS305のYES)、PTC41によりヒータコア熱媒体流路40を循環する熱媒体の予熱を開始する(ステップS306)。
【0041】
ΔTが閾値Th1よりも小さい場合(ステップS303のNO)、PTC41がバッテリ21の温度調整に使用されている場合(ステップS304のYES)、及び、PTC41がバッテリ21の温度調整に使用されていない(ステップS304のNO)ものの、バッテリ残量が例えば50%未満である場合(ステップS305のNO)には、モータ31の廃熱を利用できるか否か、すなわち、廃熱水温がヒータコア水温よりも高温であるか否かを判定する(ステップS307)。廃熱水温がヒータコア水温よりも高い場合に、モータ熱媒体流路30を流れる熱媒体(廃熱水)を利用してヒータコア熱媒体流路40を循環する熱媒体を予熱又は温度維持を開始する(ステップS308)。
【0042】
目標熱媒体温度TGTWOがヒータコア水温よりも低い場合(ステップS302のNO)、及び、廃熱水温がヒータコア水温よりも低い場合(ステップS307のNO)には、ヒータコア熱媒体流路40を循環する熱媒体の予熱をせずに(ステップS309)予熱制御処理を終了する。
【0043】
(実施例3)
以下、制御部100によって実行される、実施例2に係る予熱制御処理の流れについて、
図6のフローチャートを用いて説明する。
制御部100は、ヒータコア温度センサ43から、ヒータコア水温を検出し(ステップS401)、ヒータコア水温と目標熱媒体温度TGTWOとの差であるΔTが予め定めた閾値Th2からTh3の範囲内であるか否かを判定する(ステップS402)。
【0044】
ΔTが上記閾値Th2からTh3の範囲内になく(ステップS402のNO)、ΔTが予め定めた閾値Th3よりも大きい場合には(ステップS403のYES)、PTC41がバッテリ21の温度調整に使用されているか否かを判定する(ステップ404)。
【0045】
PTC41がバッテリ21の温度調整に使用されていない場合(ステップS404のNO)は、バッテリ21の残量が、例えば50%以上であれば(ステップS405のYES)、PTC41によりヒータコア熱媒体流路40を循環する熱媒体の予熱を開始する(ステップS406)。
【0046】
ΔTが上記閾値Th2からTh3の範囲内になく(ステップS402のNO)、ΔTが予め定めた閾値Th3よりも小さい場合(ステップS403のNO)、PTC41がバッテリ21の温度調整に使用されている場合(ステップS404のYES)、及び、PTC41がバッテリ21の温度調整に使用されていない(ステップS404のNO)ものの、バッテリ残量が例えば50%未満である場合(ステップS405のNO)には、モータ31の廃熱を利用できるか否か、すなわち、廃熱水温がヒータコア水温よりも高温であるか否かを判定する(ステップS407)。廃熱水温がヒータコア水温よりも高い場合に、モータ熱媒体流路30を流れる熱媒体(廃熱水)を利用してヒータコア熱媒体流路40を循環する熱媒体を予熱又は温度維持を開始する(ステップS408)。
【0047】
廃熱水温がヒータコア水温よりも低い場合(ステップS407のNO)には、ヒータコア熱媒体流路40を循環する熱媒体の予熱をせずに(ステップS309)予熱制御処理を終了する。
【0048】
このように、本実施形態に係る車両用空調装置1によれば、運転モードの切替に際して、切替後の運転モードに設定される目標温度が閾値より高い場合、特に、暖房モードの実行後に、一時的に、暖房モードと相反する運転モードを実行し再び暖房モードに復帰させる予定がある場合に、暖房モードへの復帰前にヒータコアを流れる熱媒体を予熱するか否かの予熱制御を行う。このようにすることで、例えば、熱媒体の温度の低下を抑制し、暖房モードへの復帰直後の速暖性を確保することができるので、運転モードの切替直後においても乗員の快適性を向上させることができる。
また、熱媒体の予熱に際して、バッテリ残量に応じて、PTC又はモータ廃熱の何れかを選択することで、廃熱を有効利用することができると共に、車両における消費電力を低減させることができる。
【0049】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0050】
1:車両用空調装置、
2:圧縮機、3:凝縮器、4:膨張弁、5:蒸発器、6:室外送風機、
7:蒸発器温度センサ、8:ヒータコア、
10:空調ユニット、11:吸込切換ダンパ、12:送風機、13:空気流通路、14:エアミックスダンパ、15:吹出口、
20:バッテリ熱媒体流路、21:バッテリ、23:バッテリ温度センサ、
30:モータ熱媒体流路、31:モータ、33:モータ温度センサ、
40:ヒータコア熱媒体流路、43:ヒータコア温度センサ、
90:操作部、
100:制御部、101:CPU、102:記憶部、103:ROM、104:RAM、
R:冷媒回路、V1,V2:四方弁、W:熱媒体回路
TGTWO:目標熱媒体温度、Tset:吹出目標温度、
Th:閾値温度、Th1:閾値、Th2:閾値、Th3:閾値