(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144402
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】光学デバイス
(51)【国際特許分類】
G02B 6/125 20060101AFI20241003BHJP
G02B 6/12 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G02B6/125 301
G02B6/12 363
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024056776
(22)【出願日】2024-03-29
(31)【優先権主張番号】202310332220.3
(32)【優先日】2023-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】田家 裕
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 健司
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー・レイモンド・メラド・ビナラオ
(72)【発明者】
【氏名】王 進武
【テーマコード(参考)】
2H147
【Fターム(参考)】
2H147BA05
2H147BA11
2H147BE13
2H147BE14
2H147BE15
2H147BE22
2H147CD02
2H147EA05A
2H147EA09B
2H147EA13C
2H147EA14B
2H147EA15B
2H147EA15C
2H147FA03
2H147FA09
2H147FA18
2H147GA19
(57)【要約】
【課題】合波時の光の伝送損失を低減することができる光学デバイスを提供する。
【解決手段】本発明の光学デバイスは、基板と、基板に形成して、光の伝搬方向において基板上に位置する結合部に向かう少なくとも2つの光導波路と、を有し、光導波路は、層状部と層状部に隆起して形成された隆起部と、を備え、光の伝搬方向に垂直な断面において、少なくとも2つの光導波路の隆起部の間に位置する層状部の厚みは、光導波路の隆起部における、他の光導波路と向かい合わない側面側に位置する層状部の厚みよりも大きい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に形成して、光の伝搬方向において前記基板上に位置する結合部に向かう少なくとも2つの光導波路と、を備え、
前記光導波路は、層状部と、前記層状部に隆起して形成された隆起部と、を備え、
前記光の伝搬方向に垂直な断面において、前記少なくとも2つの光導波路の隆起部の間に位置する前記層状部の厚みは、前記光導波路の隆起部における他の光導波路と向かい合わない側面側に位置する前記層状部の厚みよりも大きいことを特徴とする光学デバイス。
【請求項2】
前記光の伝搬方向に垂直な断面において、前記少なくとも2つの光導波路の隆起部の間に位置する前記層状部の厚みは、前記隆起部の頂端の前記基板からの距離の1/2以下であることを特徴とする請求項1に記載の光学デバイス。
【請求項3】
前記光導波路に隣接して形成される保護層を更に備える請求項1又は2に記載の光学デバイス。
【請求項4】
前記光導波路は、リチウムを含む酸化物で形成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の光学デバイス。
【請求項5】
前記リチウムを含む酸化物は、エピキャシタル形成されたニオブ酸リチウムまたはタンタル酸リチウムであることを特徴とする請求項4に記載の光学デバイス。
【請求項6】
前記光の伝播方向に垂直な断面において、前記光導波路の隆起部における他の光導波路と向かい合わない側面と前記基板とのなす角度は、85°であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の光学デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
インターネットの普及に伴い通信量は飛躍的に増大しており、光ファイバ通信の重要性が非常に高まっている。光ファイバ通信は、電気信号を光信号に変換し、光信号を光ファイバにより伝送するものであり、広帯域、低損失、ノイズに強いという特徴を有する。
【0003】
特許文献1には、2本の入力側光ファイバから入射した光を複数の出力側光ファイバに分岐する、導波路型光分岐素子が開示されている。
【0004】
特許文献1の光分岐素子では、結合部の前段に位置する結合用導波路の側壁を斜めにすることにより、伝送損失を低減している。しかし、合波時の伝送損失をさらに低減できることが期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、合波時の伝送損失を低減することができる光学デバイスの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る光学デバイスは、基板と、前記基板に形成して、光の伝搬方向において前記基板上に位置する結合部に向かう少なくとも2つの光導波路と、を有し、前記光導波路は、層状部と前記層状部に隆起して形成された隆起部と、を備え、前記光の伝搬方向に垂直な断面において、前記少なくとも2つの光導波路の前記隆起部の間に位置する前記層状部の厚みは、前記光導波路の前記隆起部における、他の光導波路と向かい合わない側面側に位置する前記層状部の厚みよりも大きい。
【0008】
本発明の光学デバイスによれば、光の伝搬方向に垂直な断面において、少なくとも2つの光導波路の隆起部の間に位置する層状部の厚みが、光導波路の隆起部における、他の光導波路と向かい合わない側面側に位置する層状部の厚みよりも大きく、それにより、少なくとも2つの光導波路内を伝搬する光が結合部に近づく場合、光導波路間へ伝搬する傾向にあり、光導波路外側の光損失が減少し、合波時の光の伝送損失が低減される。
【0009】
また、本発明に係る光学デバイスにおいて、好ましくは、前記光の伝搬方向に垂直な断面において、前記少なくとも2つの光導波路の前記隆起部の間に位置する前記層状部の厚みは、前記隆起部の頂端の前記基板からの距離の1/2以下である。これにより、光の伝送損失をさらに低減することができる。
【0010】
また、本発明に係る光学デバイスにおいて、好ましくは、前記光導波路に隣接して形成される保護層を更に備えている。
【0011】
また、本発明に係る光学デバイスにおいて、好ましくは、前記光導波路は、リチウムを含む酸化物で形成されている。
【0012】
また、本発明に係る光学デバイスにおいて、好ましくは、前記リチウムを含む酸化物はエピキャシタル形成されたニオブ酸リチウムまたはタンタル酸リチウムである。
【0013】
また、本発明に係る光学デバイスにおいて、好ましくは、前記光の伝搬方向に垂直な断面において、前記光導波路の前記隆起部における、他の光導波路と向かい合わない側面と前記基板とのなす角度は、85°である。これにより、合波時の光の少なくとも2つの光導波路の外側での伝送損失をさらに抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の光学デバイスによれば、合波時の光の伝送損失を効果的に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る光学デバイスを模式的に示す平面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る光学デバイスにおける、A-A線に沿った断面を模式的に示す断面図である。
【
図3】本発明の別の実施形態に係る光学デバイスを模式的に示す平面図である。
【
図4】本発明の別の実施形態に係る光学デバイスにおける、A-A線に沿った断面を模式的に示す断面図である。
【
図5】本発明の別の実施形態に係る光学デバイスにおける、A-A線に沿った断面を模式的に示す断面図である。
【
図6】比較例に係る光学デバイスにおける、A-A線に沿った断面を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施形態に係る光学デバイスについて説明する。各図の説明において、同一又は相当の要素に同一符号を付し、重複する説明を省略することがある。
【0017】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の一実施形態に係る光学デバイスを模式的に示す平面図である。
図2は、本発明の一実施形態に係る光学デバイスにおける、A-A線に沿った断面を模式的に示す断面図である。その中、光の伝搬方向をY方向、Y方向に垂直な基板の厚さ方向をZ方向、Y、Z方向に垂直な方向をX方向とする。
【0018】
図1において、第1の実施形態に係る光学デバイス1は、基板10と、2つの光導波路21、22とを有する。光導波路21、22は基板10に形成され、光の伝搬方向(即ち、Y方向)において基板10上に位置する結合部40に向かい合っている。2つの光導波路21、22は結合部40を介して一つの出力光導波路29に結合されている。これにより、光導波路21、22からそれぞれに入射した光は結合部40で結合し、光導波路29から出力する。ここで、1つの出力光導波路29のみを示しているが、複数の出力光導波路を設けてもよいことを理解されたい。なお、図面において、光導波路21、22はY方向に延びているが、必要に応じて基板10の主面上においてX-Y平面に沿って斜めまたは湾曲して延びていてもよい。
【0019】
図2は、光導波路21、22の結合部40に近い部分の断面形状を示している。ここで、結合部40に近接する部分とは、光の伝搬方向に結合部から所定の距離以下の部分をいう。この所定の距離は、例えば0.5μm~100μmである。
図2に示すように、光導波路21、22は、光の伝搬方向に垂直なX-Z断面において、層状部202と、層状部202に隆起して形成された隆起部201とを備えている。層状部202は、2つの光導波路の間に位置する部分202bと、光導波路の隆起部201における、他の光導波路と向かい合わない側面側に位置する部分202aとを有する。ここで、202bの高さをH1、202aの高さをH3とする。本実施形態の光学デバイス1では、H1>H3となっている。
【0020】
光学デバイス1において、光導波路間の層状部H1が小さい場合、光導波路21、22からの入力光が結合部40で合波すると、光導波路間の層状部が薄いため光損失が発生しやすい。これに対して、本実施形態では、光導波路21、21の間に位置する部分202bの高さH1を202aの高さH3よりも大きくし、即ち、H1>H3とする。これにより、H1≦H3の場合に比べて、光導波路21、22内を伝搬する光は、結合部40に近づく場合、光導波路間(光導波路21と光導波路22との間の領域)へ伝搬する傾向にあり、光導波路21、22の外側の光損失が小さくなる。これにより、合波時の光の伝送損失を低減することができる。
【0021】
さらに、光の伝搬方向に垂直なX-Z断面において、隆起部201の頂端の基板10からの距離をH2とする。本実施形態の光学デバイス1では、H1≦1/2×H2となる。H1を1/2×H2以下にすることにより、H1>1/2×H2の場合に比べて、光が光導波路21、22のX-Z断面における延在方向に沿って伝搬する傾向になりやすく、これにより、光の伝送損失をさらに低減することができる。
【0022】
光学デバイス1は、
図2に示すように、光導波路21、22、29に隣接して形成された保護層30をさらに有している。保護層30は、光導波路21、22、29を伝搬する光が光学デバイスの他の部材(例えば、電極部)に吸収されることを防止する。よって、保護層30は、光導波路と信号電極との中間層として機能できればよく、また、保護層30の材料は非金属であれば幅広く選択することができる。例えば、保護層30としては、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物等の絶縁材料からなるセラミックス層を使用することができる。保護層30の材料は、結晶性の材料であってよく、非晶質の材料でもよい。さらに好ましい実施形態として、保護層30としては、屈折率が光導波路より低い材料を用いることができ、例えば、Al
2O
3、SiO
2、LaAlO
3、LaYO
3、ZnO、HfO
2、MgO、Y
2O
3などを使用してよい。
【0023】
光導波路21、22、29としては、電気光学材料であれば特に限定されないが、好ましくは、光導波路はリチウムを含む酸化物から形成され、より好ましくは、エピタキシャル成長したニオブ酸リチウム(LiNbO3)またはタンタル酸リチウム(LiTaO3)から構成される。これは、ニオブ酸リチウムまたはタンタル酸リチウムが大きな電気光学定数を有し、光変調器などの光学デバイスの構成材料として好適であるからである。以下、導波層21、22、29がニオブ酸リチウム膜である場合の本発明の構成について詳しく説明する。
【0024】
基板10としてはニオブ酸リチウム膜より屈折率が低いものであれば特に限定されないが、ニオブ酸リチウム膜をエピタキシャル膜として形成させることができる基板が好ましく、サファイア単結晶基板もしくはシリコン単結晶基板が好ましい。単結晶基板の結晶方位は特に限定されない。ニオブ酸リチウム膜はさまざまな結晶方位の単結晶基板に対して、c軸配向のエピタキシャル膜として形成されやすいという性質を持っている。c軸配向のニオブ酸リチウム膜は3回対称の対称性を有しているので、下地の単結晶基板も同じ対称性を有していることが望ましく、サファイア単結晶基板の場合はc面、シリコン単結晶基板の場合は(111)面の基板が好ましい。
【0025】
ここで、エピタキシャル膜とは、下地の基板もしくは下地膜の結晶方位に対して、そろって配向している膜のことである。膜面内をX-Y面とし、膜厚方向をZ軸としたとき、結晶がX軸、Y軸及びZ軸方向にともにそろって配向しているものである。例えば、まず2θ-θX線回折による配向位置でのピーク強度の確認と、次に極点の確認を行うことで、エピタキシャル膜であることを証明できる。
【0026】
具体的には、まず2θ-θX線回折による測定を行ったとき、目的とする面以外の全てのピーク強度が目的とする面の最大ピーク強度の10%以下、好ましくは5%以下である必要がある。例えば、ニオブ酸リチウムのc軸配向エピタキシャル膜では、(00L)面以外のピーク強度が、(00L)面の最大ピーク強度の10%以下、好ましくは5%以下である。(00L)は、(001)や(002)などの等価な面を総称する表示である。
【0027】
次に、極点測定において、極点が見えることが必要である。前述の第1の配向位置でのピーク強度の確認の条件においては、一方向における配向性を示しているのみであり、前述の第1の条件を得たとしても、面内において結晶配向がそろっていない場合には、特定角度位置でX線の強度が高まることはなく、極点は見られない。LiNbO3は三方晶系の結晶構造であるため、単結晶におけるLiNbO3(014)の極点は3つとなる。ニオブ酸リチウム膜の場合、c軸を中心に180°回転させた結晶が対称的に結合した、いわゆる双晶の状態にてエピタキシャル成長することが知られている。この場合、3つの極点が対称的に2つ結合した状態になるため、極点は6つとなる。また、(100)面のシリコン単結晶基板上にニオブ酸リチウム膜を形成した場合は、基板が4回対称となっているため、4×3=12個の極点が観測される。なお、本発明では、双晶の状態にてエピタキシャル成長したニオブ酸リチウム膜もエピタキシャル膜に含める。
【0028】
ニオブ酸リチウム膜の組成はLixNbAyOzである。AはLi、Nb、O以外の元素を表す。xは0.5~1.2、好ましくは0.9~1.05である。yは0~0.5である。zは1.5~4、好ましくは2.5~303.5である。Aの元素としては、K、Na、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zr、Hf、V、Cr、Mo、W、Fe、Co、Ni、Zn、Sc、Ceなどが挙げられ、2種類以上を組み合わせてもよい。
【0029】
ニオブ酸リチウム膜の形成方法としては、スパッタ法、CVD法、ゾルゲル法などの膜形成方法を利用するのが望ましい。ニオブ酸リチウムのc軸が基板の主面に垂直に配向されており、c軸に平行に電場を印加することで、電場に比例して光学屈折率が変化する。
【0030】
単結晶基板としてサファイアを用いる場合は、サファイア単結晶基板上に直接、ニオブ酸リチウム膜をエピタキシャル成長させることもできる。単結晶基板としてシリコンを用いる場合は、クラッド層(図示せず)を介して、ニオブ酸リチウム膜をエピタキシャル成長により形成する。クラッド層(図示せず)としては、ニオブ酸リチウム膜より屈折率が低く、エピタキシャル成長に適したものを用いる。なお、ニオブ酸リチウム膜の形成方法として、ニオブ酸リチウム単結晶基板を薄く研磨したりスライスしたりする方法も知られている。この方法は、単結晶と同じ特性が得られるという利点があり、本発明に適用することが可能である。
【0031】
<第2の実施形態>
第2の実施形態は、2つ以上(ここでは3つ)の光導波路23、24、25を有する点で第1の実施形態と異なる。以下、第1の実施形態と第2の実施形態との相違点について説明する。
図3は、本発明の第2の実施形態に係る光学デバイスを模式的に示す平面図である。
図4は、本発明の第2の実施形態に係る光学デバイスにおける、A-A線に沿った断面を模式的に示す断面図である。
【0032】
図3では、第2の実施形態に係る光学デバイス1Aは、基板10Aと、3つの光導波路23、24、25とを有している。光導波路23、24、25は基板10Aに形成され、光の伝搬方向であるY方向において基板10A上に位置する結合部40Aに向かい合っている。3つの光導波路23、24、25は結合部40Aを介して1つの出力光導波路29Aに結合される。これにより、光導波路23、24、25からそれぞれ入射した光は、結合部40Aで結合され、光導波路29Aから出力される。ここでは、1つの出力光導波路29Aのみを示しているが、複数の出力光導波路を設けてもよいことが理解される。
【0033】
図4は、光導波路23、24、25の結合部40Aに近い部分の断面形状を示している。ここで、結合部40Aに近接する部分とは、光の伝搬方向に結合部から所定の距離以下の部分をいう。この所定の距離は、例えば0.5μm~100μmである。
図4に示すように、光導波路23、24、25は、光の伝搬方向に垂直なX-Z断面において、層状部203と、層状部203に隆起して形成された隆起部201Aとを備えている。層状部203は、2つの光導波路の間に位置する部分203bと、光導波路の隆起部201Aにおける、他の光導波路と向かい合わない側面側に位置する部分203aとを有する。ここで、203bの高さをH1、203aの高さをH3とする。本実施形態の光学装置1Aでは、H1>H3となる。
【0034】
光学デバイス1Aにおいて、光導波路間の層状部H1が小さい場合、光導波路23、24、25からの入力光が結合部40Aで合波すると、光導波路間の層状部が薄いため光損失が発生しやすい。これに対して、本実施形態では、光導波路23~25の間に位置する部分203bの高さH1を203aの高さH3よりも大きくし、即ち、H1>H3とする。これにより、H1≦H3の場合に比べて、光導波路23~25内を伝搬する光は、結合部40Aに近づく場合、光導波路間(光導波路23と光導波路24との間の領域、および光導波路24と光導波路25との間の領域)へ伝搬する傾向にあり、光導波路23、25の外側の光損失が小さくなる。これにより、合波時の光の伝送損失を低減することができる。
【0035】
さらに、光の伝搬方向に垂直なX-Z断面において、隆起部201Aの頂端の基板10Aからの距離をH2とする。本実施形態の光学デバイス1Aでは、H1≦1/2×H2となる。H1を1/2×H2以下にすることにより、H1>1/2×H2の場合に比べて、光が光導波路23~25のX-Z断面における延在方向に沿って伝搬する傾向になりやすく、これにより、光の伝送損失をより低減することができる。また、
図4では、光導波路23、24の間に位置する層状部の高さと光導波路24、25の間に位置する層状部の高さが同じ場合を示しているが、これら2つの高さは、いずれもH3より大きく、1/2×H2以下であれば、異なっていてもよい。
【0036】
<第3の実施形態>
第3の実施形態は、第3の実施形態における光導波路26、27の側面と基板とのなす角度が異なる点で、第1の実施形態と異なっている。以下、第1の実施形態と第3の実施形態の相違点について説明する。
図5は、第3の実施形態に係る光学デバイスにおける、A-A線に沿った断面を模式的に示す断面図である。
【0037】
図5において、光導波路26の隆起部201Bは、前記光の伝搬方向に垂直な断面X-Zにおいて2つの側面261および262を有している。ここで、側面261は光導波路27と向かい合っておらず、側面262は光導波路27の隆起部201Bの側面271と向かい合っている。同様に、光導波路27の隆起部201Bは、2つの側面271および272を有している。ここで、側面272は光導波路26と向かい合っておらず、側面271は、光導波路26の隆起部201Bの側面262に向かい合っている。
【0038】
ここで、光導波路26、27の隆起部201Bにおける、他の光導波路と向かい合わない側面261、272と基板10Bとのなす角度αは、85°以上90°以下である。また、光導波路26、27の他の光導波路に向かい合っている側面262、271は、基板に対して傾斜していてもよい。これにより、光導波路26、27内を伝搬する光は、結合部40に近づく場合、さらに光導波路間(光導波路26と光導波路27との間の領域)へ伝搬する傾向になり、合波時の光の伝送損失をさらに低減することができる。ここで、理想的には、光導波路26、27の側面261、272と基板10Bとのなす角度αが90°である。製造誤差および製造容易性の観点から、この角度は85°以上であることが好ましい。
【0039】
図5には、光学デバイスが入力光導波路として2つの導波路26、27を有する場合が示されている。入力光導波路を、第2の実施形態に示すように、3個および3個以上としてもよいことを理解される。
【0040】
<実施例>
第1の実施形態の光学デバイス1の構成に基づいて実施例1、2を作製し、第3の実施形態の光学デバイス1Cの構成に基づいて実施例3を作製した。そして、
図6に示す光学デバイスの構成に基づいて比較例を作製した。実施例1、2、3と比較例の違いは、結合部に近い光導波路21、22の断面形状が異なる点のみにある。比較例では、2つの光導波路の間に位置する部分204bの高さH1と、光導波路の隆起部201Cにおける、他の光導波路と向かい合わない側面側に位置する部分204aの高さH3とは等しく、いずれも0.15μm(H1=H3=0.15μm)である。実施例1では、H1は0.27μm、H3は0.15μmであり、即ち、H1>H3である。実施例2では、H1の高さをさらに0.34μmまで増加し(すなわち、光導波路21、22間の層状波がより厚い)、H3は0.15μmのままである。実施例3では、実施例2に比べて、202bの高さH1が変わらず、光導波路21、22の隆起部における、他の光導波路と向かい合わない側面が基板に垂直するようにされた。
【0041】
実施例および比較例について、光が結合部を通過した後の伝送損失試験を行った。実験結果を表1に記載する。
【0042】
【0043】
表1から分かるように、実施例1、2と比較例の比較によれば、2つの光導波路の間に位置する部分の高さH1が、光導波路の隆起部における、他の光導波路と向かい合わない側面側に位置する部分の高さH3よりも大きいことにより、伝送損失を顕著に低減することができる。また、実施例2と実施例3の比較によれば、光導波路21、22の隆起部における、他の光導波路と向かい合わない側面を基板と略垂直にすることで、伝送損失をさらに低減することができる。
【0044】
以上、本発明について図面および実施形態を用いて詳しく説明したが、上記説明は本発明のいかなる制限にもならないことを理解されたい。本発明の光学デバイスは、例えば、方向性結合器(directional coupler)、マルチモード干渉カプラ(multimode interference coupler)、Y字結合器(Y-junction coupler)、および各種の干渉計などを含むことができる。
【0045】
本分野の技術者は、本発明の実質な精神および範囲にずれない場合に、必要に応じて本発明を変形および変化し、これらの変形および変化も本発明の範囲内にある。
【符号の説明】
【0046】
1、1A、1C 光学デバイス
10、10A、10B 基板
21~27、29、29A 光導波路
201、201A、201B、201C 隆起部
202、202a、202b、203、203a、203b、204、204a、204b 層状部
40、40A 結合部
30、30A 保護層