(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144431
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】蒸留酒(distilled spirit)を製造するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
C12H 6/02 20190101AFI20241003BHJP
C12G 3/07 20060101ALI20241003BHJP
C12G 3/06 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C12H6/02
C12G3/07
C12G3/06
【審査請求】有
【請求項の数】23
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024109079
(22)【出願日】2024-07-05
(62)【分割の表示】P 2021571502の分割
【原出願日】2020-05-29
(31)【優先権主張番号】62/855,159
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521521622
【氏名又は名称】ブラザー ジャスタス ウィスキー カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ ジョセフ ステガー
(57)【要約】
【課題】蒸留酒を製造するための組成物及び方法を提供することを目的とする。
【解決手段】蒸留酒(distilled spirit)を製造する方法は、アルコールを含む酒(liquor)を蒸留して蒸留酒(distilled liquor)を形成し、該蒸留酒をピートと接触させることを含む。ピートはピート乾物を含むことができる。ピートは乾燥ピートを含むことができる。ピートは部分的に炭化されたピートを含むことができる。ピートは乾燥重量基準で50重量%以下の無機炭素を含むことができる。ピートはフィルターカートリッジに配置することができる。蒸留酒(distilled liquor)をピートと少なくとも5秒間接触させることができる。組成物は、アルコール及び水を含む蒸留酒(distilled liquor);ならびにピートを含む。ピートはピート乾物を含むことができる。ピートは乾燥ピートを含むことができる。ピートは部分的に炭化されたピートを含むことができる。ピートは乾燥重量基準で50重量%以下の無機炭素を含むことができる。組成物は、組成物の液体成分を基準にして40vol%以上のアルコールを含むことができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸留酒(distilled spirit)を製造する方法であって、
アルコールを含む酒(liquor)を蒸留して蒸留酒(distilled liquor)を形成し;及び
前記蒸留酒(distilled liquor)をピートと接触させる
ことを含む方法。
【請求項2】
ピートがピート乾物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ピートが乾燥ピートを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ピートが部分的に炭化されたピートを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
ピートが、乾燥重量基準で5wt%以下、10wt%以下、25wt%以下、又は50wt%以下、好ましくは25wt%以下、最も好ましくは10wt%以下の無機炭素を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
ピート乾物が、蒸留酒(distilled liquor)と接触する前に、25wt%以下、20wt%以下、又は15wt%以下の水分含量を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
ピートが、フィルターカートリッジに配置される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
蒸留酒(distilled liquor)が、ピートと1秒以上、2秒以上、5秒以上、10秒以上、15秒以上、30秒以上、1分以上、10分以上、30分以上、1時間以上、6時間以上、12時間以上、24時間以上、48時間(2日)以上、3日以上、4日以上、1週間以上、48時間以下、24時間以下、12時間以下、6時間以下、2時間以下、1時間以下、30分以下、10分以下、5分以下、3分以下、2分以下、1分以下、1秒~1分以下、好ましくは1秒~1時間以下又は5秒~30分間、最も好ましくは10秒~10分間で接触される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
蒸留酒(distilled liquor)からピートの少なくとも大部分を分離することをさらに含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ピートがピート乾物を含み、蒸留酒(distilled liquor)からピート乾物を分離することをさらに含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
蒸留酒(distilled liquor)を熟成することをさらに含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
蒸留酒(distilled liquor)が熟成中に木材と接触される、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
蒸留酒(distilled liquor)をピートと接触させる前に熟成が起こる、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
蒸留酒(distilled liquor)が、50vol%以上、60vol%以上、70vol%以上、又は80vol%以上の濃度のアルコールを含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
蒸留酒(distilled liquor)をピートと接触させる前に水と混合して、40vol%以上、45vol%以上、50vol%以上、又は55vol%以上、又は40vol%~65vol%、55vol%~65vol%、又は58vol%~62vol%のアルコール濃度をもたらす、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
蒸留酒(distilled spirit)が、ヒト消費に適した飲料であり、好ましくは、蒸留酒(distilled spirit)は、樹脂、ステロール、脂肪酸、ヒドロキシ酸、アルカン、長鎖アルコール、フェノール酸、及びテルペノイドから選択される1種以上のピート香味化合物を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
アルコール及び水を含む蒸留酒(distilled liquor);ならびに
ピート
を含む組成物。
【請求項18】
ピートがピート乾物を含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
ピートが部分的に炭化されたピートを含む、請求項17又は18に記載の組成物。
【請求項20】
ピートが、乾燥重量基準で5wt%以下、10wt%以下、25wt%以下、又は50wt%以下、好ましくは25wt%以下、最も好ましくは10wt%以下の無機炭素のを含む、請求項17~19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
組成物が、40vol%以上、45vol%以上、50vol%以上、若しくは55vol%以上、又は40vol%~65vol%、55vol%~65vol%、若しくは58vol%~62vol%を含む、請求項17~20のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
請求項1~16のいずれか1項に記載の方法により作製された蒸留酒(distilled spirit)。
【請求項23】
蒸留酒(distilled liquor);及び
アルコール抽出されたピート化合物
を含む蒸留酒(distilled spirit)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蒸留酒(distilled spirit)を製造するための組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウイスキーを製造するための典型的なプロセスは、穀物を水で水和し、次に、穀物を部分的に発芽させて、穀物中に天然に存在する酵素を活性化させることにより、穀物(通常、オ大麦)を麦芽にすることを含む。大麦に加えて、小麦、ライ麦、又はトウモロコシなどの他の穀物を使用又は添加することもできる。穀物は、麦芽にされていても又は麦芽にされていなくてもよい。発芽の数日後、酵素を保存しながら発芽を止めるために、穀物を低温で乾燥させる。場合によっては、穀物は、乾燥中の火からのスモークを用いて香味付けされる。特に、伝統的なスコットランド・ハイランド及びイスラリー・ウイスキーは、麦芽にした穀物の乾燥中、火にピートを加えることによって生成されるピートスモークにより香味付けされ得る。したがって、「ピーティー」又は「ピートされた」という用語は、伝統的に、ピートを加えた火からのスモークによるスモーク香味プロファイルを指す。
【0003】
乾燥モルトは通常粉砕され、次に、熱湯と混合し、酵素がデンプンを糖に変換することによりすりつぶされる。残りの穀物は、麦汁として知られるプロセス液から除去することができる。麦汁を冷却し、酵母と混合して発酵を開始する。発酵は、所望のアルコールレベルに達するまで進行させ、低末端では、酵母及び発酵条件に依存して6~8vol%から18~20vol%程度の高さまでの範囲である。
【0004】
発酵酒(fermented liquor)を蒸留してアルコールを精製及び濃縮し、香味物を精製及び濃縮する。この酒(liquor)は、典型的には約65~70vol%の強度まで蒸留されるが、約85~90vol%の強度まで蒸留され得、その後、水を加えることによってカスクストレングス(典型的には58vol%~62vol%)まで調整される。次に、この酒をオーク(又は他の木材)と接触させ、数ヶ月から数年間、大樽(cask)のどこかで熟成させ、蒸留酒(distilled liquor)をウイスキーに変えることができる。伝統的に、オーク材の大樽又は樽(barrel)は、熟成のために使用される。大樽の内面が炭化している場合がある。
【発明の概要】
【0005】
蒸留酒(distilled spirit)を製造する方法は、アルコールを含む酒(liquor)を蒸留して蒸留酒(distilled liquor)を形成し、該蒸留酒をピートと接触させることを含む。ピートはピート乾物を含むことができる。ピートは乾燥ピートを含むことができる。ピートは部分的に炭化されたピートを含むことができる。ピートは乾燥重量基準で50重量%以下の無機炭素を含むことができる。ピートはフィルターカートリッジに配置することができる。蒸留酒(distilled liquor)をピートと少なくとも5秒間接触させることができる。
【0006】
組成物は、アルコール及び水を含む蒸留酒(distilled liquor);及びピートを含む。ピートはピート乾物を含むことができる。ピートは乾燥ピートを含むことができる。ピートは部分的に炭化されたピートを含むことができる。ピートは乾燥重量基準で50重量%以下の無機炭素を含むことができる。組成物は、組成物の液体成分を基準にして40vol%以上のアルコールを含むことができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示は、蒸留酒(distilled spirit)を製造するための組成物及び方法に関する。本開示はさらに、麦芽にされたか若しくは麦芽にされていない穀物又は他の作物から蒸留されたアルコール飲料を製造するための組成物及び方法に関する。特に、本開示は、ピート香味を有する蒸留アルコール飲料、より詳細にはピート香味を有するウイスキーを製造するための組成物及び方法に関する。
【0008】
「ピート」という用語は、本開示において、泥炭地、沼地、又は湿地から収穫された材料であって、リード及びセージなどの不完全に分解された有機植物材料(腐植)を含み材料を記述し、また、処理又は加工されたピートがピート香味を保持することを条件として、例えば加熱によって処理又は加工されたそのような収穫された材料を記述するために使用される。
【0009】
本明細書では、「ピート香味」という用語は、ピートの少なくとも一部の成分を含む香味プロファイルを記述するために使用される。例えば、香味プロファイルは、ピートに典型的に見られる特定の樹脂、ステロール、脂肪酸、ヒドロキシ酸、アルカン、長鎖アルコール、フェノール酸、及びテルペノイドを含み得る。本開示の方法によって製造されるピート香味は、ピートが添加されている火からのスモークの使用により明らかにスモーキーである伝統的な「ピーティー」又は「ピートされた」香味とは区別される。
【0010】
用語「無機炭素」は、本開示において、元素炭素(例えば、グラファイト及びカーボンブラック)及び種々の無機炭素種を記載するために使用される。無機炭素は、炭化の製造物であり得る。活性炭及び炭は、50重量%以上又は75重量%以上などの多量の無機炭素を含有すると理解されている。
【0011】
「硬度」という用語は、本開示において、取扱い及び操作中の摩滅に抵抗する材料の能力を指すために使用される。硬度は「硬度数」として表され、ボールパン硬度試験により決定され得る。ボールパン硬度試験では、一定量の材料をいくらかのスチールボールと一緒にパンに入れ、一定時間振とうする。振とうの前後に材料を計量して、摩滅量を決定する。振とう後に残存する元の材料のパーセントが「硬度数」である。活性炭に向けられる、活性炭のボールパン硬度用のASTM D3802-16標準試験法を修飾し、ピート顆粒の硬度を試験するために使用することができる。
【0012】
「アルコール」という用語は、本開示において、特に明記しない限り、エチルアルコール(エタノール)を指すために使用される。
【0013】
「アルコール抽出されたピート化合物」という用語は、本開示において、ピートから、ピートに接触する溶媒に移される化合物を指すために使用され、ここで、溶媒はアルコールを含む。好ましくは、アルコール抽出されたピート化合物は、ピートを蒸留酒(distilled liquor)と接触させることによってピートから抽出される。蒸留酒(distilled liquor)は、50vol%以上、60vol%以上、70vol%以上、80vol%以上のアルコール濃度を有し得る。好ましくは、ピートは乾燥粒状ピートなどの固体形態である。
【0014】
本明細書で使用される用語「実質的に」は、「有意に」と同じ意味を有し、以下に続く用語を少なくとも約75%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、又は少なくとも約98%修飾するものと理解することができる。本明細書で使用される「実質的に...でない」という用語は、「有意でない」と同じ意味を有し、「実質的に」という逆の意味を有すると理解することができ、すなわち、以下に続く用語を25%以下、10%以下、5%以下、又は2%以下で修飾することができる。
【0015】
用語「約」は、本明細書では、当業者によって予想されるように、測定における正常な変動を含めるために、数値とともに使用され、「ほぼ」と同じ意味を有し、かつ、記載値の±5%などの典型的な誤差マージンをカバーすると理解される。
【0016】
「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」などの用語は、単一の実体のみを指すことを意図するのではなく、特定の例を例示のために使用することができる一般的な部類を含む。
【0017】
用語「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、用語「少なくとも1つ」と互換的に使用される。語句「少なくとも1つの」及び「少なくとも1つの...を含む」の後に続くリストは、リスト中の項目のいずれか1つ及びリスト中の2つ以上の項目のいずれかの組み合わせを指す。
【0018】
本明細書で使用される場合、用語「又は」は、一般的に、その内容が明確に別段の指示をしない限り、「及び/又は」を含むその通常の意味で使用される。用語「及び/又は」とは、リストされた要素の1つ若しくはすべて、又はリストされた要素の2つ若しくはそれ以上の組み合わせを意味する。
【0019】
終点による数値範囲の記載は、その範囲内に含まれるすべての数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5など、又は10以下は、10、9.4、7.6、5、4.3、2.9、1.62、0.3などが含まれる)。値の範囲が特定の値に対して「最大」又は「少なくとも」である場合、その値は範囲内に含まれる。
【0020】
用語「好ましい」及び「好ましくは」は、特定の状況下で、特定の利益を与えることができる実施形態を指す。しかしながら、同じ又は他の状況下で、他の実施形態もまた好ましい場合がある。さらに、1つ以上の好ましい実施形態の記載は、他の実施形態が有用ではなく、特許請求の範囲を含む開示の範囲から他の実施形態を除外することを意図していないことを意味するものではない。
【0021】
本開示の実施形態は、ヒトの消費に適した蒸留酒(distilled spirit)又はアルコール飲料を製造する方法に関する。いくつかの実施態様によれば、蒸留酒(distilled spirit)は、穀物又は他の作物を発酵させて、アルコールを含有する発酵酒を製造し、発酵酒を蒸留することによって調製される。蒸留を用いて、アルコールを酒(liquor)に濃縮することができる。蒸留はまた、望ましくない画分を除去するため、及び/又は所望の香味化合物を濃縮するために使用され得る。
【0022】
発酵酒を調製するために使用される作物は、任意の適切な穀物又は穀物の混合物を含み得る。適切な穀物としては、大麦、小麦、ライ麦、オート麦、トウモロコシ、ソルガム、米など、及びそれらの組み合わせが挙げられる。ジャガイモ、ブドウ、サトウキビ、テンサイ、寒天などの他のデンプン又は糖を含有する植物材料を使用することもできる。いくつかの実施態様では、穀物は大麦を含む。穀物は麦芽されていても麦芽されていなくてもよく、又は麦芽された穀物と麦芽されていない穀物の混合物を含んでもよい。
【0023】
一実施形態によれば、蒸留酒(distilled liquor)又は蒸留酒(distilled spirit)は、アルコールを含む発酵酒を蒸留することによって調製される。蒸留酒(distilled liquor)をピートと接触させて、該蒸留酒にピート香味を付与することができる。いくつかの実施態様では、蒸留酒(distilled liquor)はウイスキーである。他の実施形態では、蒸留酒(distilled liquor)はジン、ウォッカ、ブランデーなどを含む。さらに、いくつかの実施態様では、蒸留酒(distilled liquor)は、ピート香味を有するウイスキー、ピート香味を有するジン、ピート香味を有するウォッカ、又はピート香味を有するブランデーである。
【0024】
この方法では、任意の適切なピート材料を使用することができる。地理的に異なる場所から供給されたピートは、植物学的、水文学的、及び鉱物学的特性が異なることがあり、異なる香味プロファイルを与える場合がある。本方法で使用されるピートは、所望の香味プロファイルをもたらすように選択することができる。例えば、米国中西部(例えば、ミネソタ州)に見られるような、温帯又は大陸の気候の泥炭地からのピートが使用され得る。
【0025】
ピートはピート乾物を含むことができる。例えば、ピートは、乾燥、圧縮、ペレット化、粒状化、粉砕、又は他の方法で適切に処理されたピートを含むことができる。ピートは、その全体が本明細書に組み込まれているGreenらの米国特許第8,232,225号に開示されている方法を用いて処理することができる。ピートは、約50%から約100%、又は約75%から約100%の硬度を有するピート顆粒を含むことができる。十分な硬度(例えば、50%以上、又は75%以上)を有するように処理されたピート顆粒を使用することは、蒸留酒(distilled liquor)の加工に有益である。いくつかの実施態様では、ピートは、蒸留酒(distilled liquor)中にピートが実質的に溶解しないように加工される。いくつかの実施態様では、ピートは、200°F(約93℃)から約1000°F(約540℃)の範囲の温度などの高熱で乾燥されたピートを含む。ピートは、より低温(例えば、180°F~300°F)とより高温(例えば、800°F~900°F)の組み合わせを含む温度プロファイルを用いて乾燥され得る。プロセスステップの1つ以上の間(例えば、500°Fから900°Fの範囲のより高温に曝される間)、ピートは低酸素環境に曝露される可能性がある。例えば、ピートは、二酸化炭素又は窒素などの不活性ガスの流れに曝露され得る。ピートは、部分的に炭化されたピートを含むことができる。しかしながら、少なくともいくつかの実施態様では、ピートは、乾燥重量基準で5重量%以下、10重量%以下、25重量%以下、又は50重量%以下の無機炭素(例えば、炭化による炭化炭素)を含む。いくつかの実施態様では、ピートは、生の(未処理の)ピートであるか、又は最小限に処理されたピートである。最小限の処理は、例えば、水を除去するための濾過、圧縮、低温(例えば、300°F以下)での乾燥、粒径減少、又はそれらの組み合わせを含み得る。ピート乾物は、蒸留酒(distilled liquor)と接触させる前に、水分含量が70wt%以下、50wt%以下、35wt%以下、25wt%以下、20wt%以下、又は15wt%以下であってもよい。いくつかの実施形態では、ピートは、蒸留酒(distilled liquor)と接触させる前に、水分含量が1wt%以上、2wt%以上、5wt%以上、10wt%以上、20wt%以上、又は30wt%以上であってもよい。ピートはまた、例えば、生ピートに見られる1種以上の香味化合物の量を選択的に除去又は減少させることによって、ピートの香味プロファイルを修飾するために処理することができる。修飾、除去、低減、又は増強され得るピート香味化合物の例としては、ある種の樹脂、ステロール、脂肪酸、ヒドロキシ酸、アルカン、長鎖アルコール、フェノール酸、及びピートに典型的に見られるテルペノイドが挙げられる。
【0026】
蒸留酒(distilled liquor)は、任意の適切な方法でピートと接触させることができる。例えば、ピートを蒸留酒(distilled liquor)中に分散させるか、又は蒸留酒(distilled liquor)をピートを通して流す(例えば、濾過する)ことができる。いくつかの実施形態では、ピートはフィルターカートリッジ内に配置され、蒸留酒(distilled liquor)はフィルターカートリッジ内のピートを通過する。
【0027】
蒸留酒(distilled liquor)をピートに1秒以上、2秒以上、5秒以上、10秒以上、15秒以上、30秒以上、1分以上、10分、30分以上、30分以上、1時間以上、6時間以上、12時間以上、24時間以上、48時間以上(2日間)、3日以上、4日以上、又は1週間以上接触させることができる。蒸留酒(distilled liquor)をピートに最大数週間、例えば4週間以下、3週間以下、又は2週間以下接触させることができる。蒸留酒(distilled liquor)をピートに48時間以下、24時間以下、12時間以下、6時間以下、2時間以下、1時間以下、30分以下、10分以下、5分以下、3分以下、2分以下、1分以下接触させることができる。蒸留酒(distilled liquor)をピートに1秒~1時間接触させることができる。蒸留酒(distilled liquor)をピートに10秒~30分間接触させることができる。蒸留酒(distilled liquor)をピートに30秒~10分間接触させることができる。蒸留酒(distilled liquor)をピートに1日~3週間接触させることができる。蒸留酒(distilled liquor)をピートに4日~20日間接触させることができる。蒸留酒(distilled liquor)をピートに1週間~2週間接触させることができる。いくつかの実施態様では、蒸留酒(distilled liquor)をピートに接触させた後、該蒸留酒からピートの大部分を除去する。特に、ピート乾物は、蒸留酒(distilled liquor)をピートに接触させた後、該蒸留酒から分離することができる。しかしながら、ある種のピート香味化合物などの一部のピート成分は、蒸留酒(distilled liquor)中に残留することがある。蒸留酒(distilled liquor)中に残留するピート成分は、アルコール抽出されたピート化合物と称することができる。ピート香味化合物の例としては、ピートに典型的に見られる特定の樹脂、ステロール、脂肪酸、ヒドロキシ酸、アルカン、長鎖アルコール、フェノール酸、及びテルペノイドが挙げられる。一実施形態では、蒸留酒(distilled liquor)をピートに3日以上(例えば、1~2週間)接触させ、接触させた該蒸留酒は、樹脂、ステロール、脂肪酸、ヒドロキシ酸、アルカン、長鎖アルコール、フェノール酸、及びテルペノイドから選択される1種以上のピート香味化合物を含む。一実施態様では、蒸留酒(distilled liquor)をピートに24時間以上(例えば、4週間まで)接触させ、接触させた該蒸留酒は、樹脂、ステロール、脂肪酸、ヒドロキシ酸、アルカン、長鎖アルコール、フェノール酸、及びテルペノイドから選択される1種以上のピート香味化合物を含む。一実施形態では、蒸留酒(distilled liquor)をピートに10秒~30分間接触させ、接触させた該蒸留酒は、樹脂、ステロール、脂肪酸、ヒドロキシ酸、アルカン、長鎖アルコール、フェノール酸、及びテルペノイドから選択される1種以上のピート香味化合物を含む。
【0028】
蒸留酒(distilled liquor)を任意の適切な量のピートと接触させて、所望の香味プロファイルを得ることができる。例えば、蒸留酒(distilled liquor)は、蒸留酒に対してピートを0.5w/v%以上、0.75 w/v%以上、1.0w/v%以上、1.5w/v%以上、又は2w/v%以上の比率で接触させることができる。蒸留酒(distilled liquor)は、蒸留酒に対してピートを5w/v%以下、4w/v%以下、3.5w/v%以下、又は3w/v%以下の比率で接触させることができる。いくつかの実施形態では、蒸留酒(distilled liquor)は、蒸留酒に対してピートを0.75w/v%~3.5w/v%、又は1w/v%~3w/v%の比率で接触させる。
【0029】
蒸留後、及びピートと接触させる前に、蒸留酒(distilled liquor)は、50vol%以上、60vol%以上、70vol%以上、又は80vol%以上のアルコール濃度を有することができる。場合によっては、発酵酒を約90vol%のアルコール濃度に蒸留する。蒸留酒(distilled liquor)をピートと接触させる前に水と混合して、アルコール濃度を75vol%以下、70vol%以下、65vol%以下、又は60vol%以下にすることができる。蒸留酒(distilled liquor)をピートと接触させる前に水と混合して、アルコール濃度を40vol%以上、45vol%以上、50vol%以上、又は55vol%以上にすることができる。一実施形態では、蒸留酒(distilled liquor)、ピートと接触させた場合、約55vol%~約65vol%、又は約58vol%~約62vol%のアルコール濃度を有する。
【0030】
この方法は、蒸留酒(distilled liquor)の熟成をさらに含むことができる。いくつかの実施態様では、蒸留酒(distilled liquor)は、熟成中に木材と接触することが望ましい。これは、木製の大樽又は樽中で蒸留酒(distilled liquor)を熟成することによって都合よく達成することができる。木製の大樽又は樽の内面の少なくとも一部は、炭化されてもよい。いくつかの実施態様では、熟成は、蒸留酒(distilled liquor)をピートと接触させる前に実施される。蒸留酒(distilled liquor)は、熟成前に水と混合され、75vol%以下、70vol%以下、65vol%以下、又は60vol%以下のアルコール濃度をもたらすことができる。蒸留酒(distilled liquor)は、熟成前に水と混合され、40vol%以上、45vol%以上、50vol%以上、又は55vol%以上のアルコール濃度をもたらすことができる。一実施態様では、蒸留酒(distilled liquor)は、熟成中、約55vol%~約65vol%、又は約58vol%~約62vol%のアルコール濃度を有する。熟成した蒸留酒(distilled liquor)(例えば、ウイスキー又は他の火酒(spirit)は、水でさらに希釈することなくピートと接触させることができる。しかしながら、ピートと接触させた後、熟成蒸留酒(distilled liquor)(例えば、ウイスキー又は他の火酒)を水で希釈して、約35vol%~約70vol%、35vol%~約60vol%、35vol%~約55vol%、又は約38vol%~約50vol%などの所望のアルコール含有量にすることができる。
【0031】
一実施形態によると、蒸留酒(distilled liquor)は、少なくともアルコール及び水を含むが、ピートと混合される。したがって、蒸留酒(distilled liquor)とピートの混合物である組成物が形成される。ピートにはピート乾物が含まれ得る。ピートは部分的に炭化されたピートを含むことができる。しかしながら、ピートは乾燥重量基準で5wt%以下、10wt%以下、25wt%以下、又は50wt%以下の無機炭素を含んでもよい。組成物は、組成物の液体成分(例えば、ピート乾物を除く)を基準にして40vol%以上のアルコールを含み得る。所望の接触時間の後(例えば、上述したように)、蒸留酒(distilled liquor)中に少なくともある種の香味成分を残しながら、ピートを除去することができる。ピートは、例えば、濾過、遠心分離、又は任意の他の適切な分離方法によって除去することができる。一実施形態によると、蒸留酒(distilled spirit)は、蒸留酒(distilled liquor)及びアルコール抽出されたピート化合物を含む。アルコール抽出されたピート化合物は、ピートの所望の香味成分を含むことができる。
【実施例0032】
実施例1
得られたウイスキーの香味プロファイルにおける、熟成前にピートを通して蒸留酒(distilled liquor)をろ過する効果を評価した。
【0033】
麦芽にされた大麦を粉砕し、熱湯と混合してすりつぶした。穀物をプロセス液から除去して麦汁を調製した。麦汁を冷却し、酵母で発酵させた。発酵酒を約90vol%のアルコールに蒸留した。蒸留物を水と混合して59.55vol%のアルコールを得た。希釈された蒸留物を、コーヒーフィルター中に置かれた粒状乾燥ピート(米国特許第8,232,225号に開示された方法に従って調製された)の床を通して濾過した。約30gの粒状乾燥ピートを用いて、約475mLの希釈蒸留物を濾過した。濾過速度は約475mL/10分、すなわち約48mL/分であった。蒸留物の温度は70°Fであった。
【0034】
濾過された蒸留物の感覚試験によれば、得られた火酒は、繊細な土状、油状、ハーブ状のアロマ及び香味を有していた。スモークさは認められなかった。
【0035】
次に、濾過された蒸留物を約6.2ガロン容積の新しく炭化したオーク樽に添加した。この濾過された蒸留物を4か月間放置した。バッチを水で45vol%に希釈し、瓶に入れ、再度感覚検査を行った。
【0036】
粒子状物質は各ボトルに沈降し、透明なウイスキーが雲状の乳白色層の上にあることが観察された。感覚検査では、オークから予想通りの正常な香味プロファイルが認められた。ピートからのフルーツ香味プロファイルは、熟成後はそれほど顕著ではなく、全体的な香味プロファイルはベースライン(ピートフィルター処理されていないウイスキー)に近いことが分かった。
【0037】
実施例2
蒸留物のアルコール含有量を濾過前に54.95vol%(試料1)及び55.55vol%(試料2)に調整した以外は、実施例1に記載のように蒸留物を濾過した。
【0038】
オーク樽中で熟成する前の試料1及び2の感覚的結果は実施例1と同様であった。試料1を「標準4」の炭化レベルのオーク樽中で熟成し、試料2をより重い炭化レベルの「標準5」の炭化レベルのオーク樽中で熟成した。
【0039】
感覚検査では、実施例1と比較して、各試料でより暗い色及びより明瞭なロースト香味が明らかになった。感覚試験は、ピーティー香味がもっと持ち越されるが、樽中で新しい香味プロファイルに変換されることを見出した。感覚パネルが使用する香味ディスクリプタには、湿毛、厚紙、及びフェノールの香味が含まれた。
【0040】
実施例3
ウイスキーの香味プロファイルにおける、ピートを介した熟成ウイスキーの濾過の効果を評価した。
【0041】
蒸留酒(distilled liquor)を実施例1に記載したように調製した。蒸留酒(distilled liquor)を水で60.05vol%のアルコールに調整し、オーク樽中で約170日間熟成した。粒状化乾燥ピート100gを3フィートの高さのステンレス鋼管に適用することにより、フィルター床を調製した。
【0042】
ウイスキーを10分あたり約1ガロン、すなわち約380mL/分の速度でフィルター床を通して2回濾過した。感覚分析を実施する前に、濾過されたウイスキーのアルコール含有量を43vol%に調整した。
【0043】
感覚試験は、ウイスキーがウイスキーと関連した正常な官能プロファイルを示すことを見出した。さらに、ピートの香味が目立って識別可能であった。結果として生じたウイスキーは、ピートの土状、ハーブ状、草状及び花状のプロファイルを有し、スモーク兆候はなかった。
【0044】
濾過されたウイスキーを750mLのガラスボトルに瓶詰めし、2~3週間放置させた。放置後、ウイスキーはその香味プロファイルを保持した。ボトルの底部に沈殿物と濁った層が蓄積していることが分かった。しかしながら、透明なウイスキーを頂部から別のボトルにデカントすることができる。デカントされたウイスキーは沈殿を生じなかった。
【0045】
実施例4
ウイスキーの香味プロファイルにおけるピートの異なる水分含量及び乾燥レベルの影響を評価した。下記の表1に示されるように、異なる水分含量をもたらす方法で調製した5種類のピートを得た。ピート試料はすべて、Aitkin County、MNから採取された。
【0046】
処理方法には、170°Fで6時間の低温オーブン乾燥(試料1、2、及び3)、スクリーニング、再水和、フィルタープレス(試料2、3、及び4)、350°Fでの回転ドラムヒーター中での乾燥(試料3及び4)、及び米国特許第8,232,225号に開示されている方法(試料5)が含まれた。
【0047】
【0048】
0.3gの各ピート試料を1.0oz(約30mL)の62.1vol%エタノールに2週間浸漬した。ピートによって付与された香味プロファイルを含む試料を2週間の終わりに評価した。
【0049】
生ピートは、エタノール中に多量のヘイズと浮遊粒子状物質を残すことが観察された。ヘイズ及び粒子状物質の量は、より多くの加工されたピート試料で徐々に少なくなり、試料番号5にはほとんど存在しなかった。さらに、試料1~4は、エタノールにある種の硫黄のような香味兆候を付与し、生ピート(試料番号1)は最も顕著な硫黄のような香味をもたらすことが観察された。試料番号5は、不快な硫黄のような香味を含まず、エタノールに有意な香味を与えなかった。
【0050】
実施例5
ピート量と浸漬期間の効果を得られた香味プロファイルにおいて評価した。
【0051】
粒状化乾燥ピートを熟成ウイスキー(43vol%アルコール)に浸漬した。ピート量は1g/dL(グラム/デシリットル)から3g/dLまで変化した。750mLのウイスキーをピートと混合し、三角フラスコに入れた。試料を最初の8時間撹拌し、次に16時間放置した。試料のアリコートを24時間で採取し、香味プロファイリングを行った。さらに、毎日、8時間の撹拌及び16時間の放置を含めて、試料をさらに4日間処置した。試料をピペットを用いてデカントし、試料の香味プロファイルを評価した。結果を以下の表2に示す。
【0052】
【0053】
ピート量が増加し、浸漬時間が長くなると、結果として生じるウイスキーにより多くの香味が付加されることが観察された。
【0054】
実施例6
浸漬期間の効果を得られた香味プロファイルにおいて評価した。
【0055】
粒状化乾燥ピート(1g/dL)を熟成ウイスキー(43vol%アルコール)に浸漬した。試料を約1日おきに撹拌又は振とうした。試料のアリコートを1週間、2週間、及び3週間で香味プロファイリングのために採取した。その結果を以下の表3に示す。
【0056】
【0057】
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