(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144443
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】オブジェクト認識制御装置およびオブジェクト認識制御方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20241003BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20241003BHJP
【FI】
G08G1/16 F
G06T7/00 650Z
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024115640
(22)【出願日】2024-07-19
(62)【分割の表示】P 2020147571の分割
【原出願日】2020-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(72)【発明者】
【氏名】酒井 康利
(72)【発明者】
【氏名】林 啓太
(72)【発明者】
【氏名】谷山 紘史
(57)【要約】
【課題】オブジェクトの認識を適切に行うこと。
【解決手段】オブジェクト認識制御装置である制御部20は、車両の周辺を撮影するカメラ11が撮影した映像データを取得する映像データ取得部21と、車両の運転者の集中度を示す運転者情報を取得する運転者情報取得部22と、映像データ取得部21が取得した映像データに対して、特定オブジェクトらしさを示すスコアが閾値以上である場合、特定オブジェクトとして認識する認識処理部23と、認識処理部23による特定オブジェクトの認識結果に基づき、車両の運転動作を制御する自動運転制御部と、を備え、認識処理部23は、運転者情報取得部22が取得した運転者情報が、運転者の集中度が低くなっていることを示す場合、スコアの閾値を低くして、特定オブジェクトを認識する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周辺を撮影する撮影部が撮影した映像データを取得する映像データ取得部と、
前記車両の運転者の集中度を示す運転者情報を取得する運転者情報取得部と、
前記映像データ取得部が取得した前記映像データに対して、特定オブジェクトらしさを示すスコアが閾値以上である場合、前記特定オブジェクトとして認識する認識処理部と、
前記認識処理部による前記特定オブジェクトの認識結果に基づき、前記車両の運転動作を制御する自動運転制御部と、
を備え、
前記認識処理部は、前記運転者情報取得部が取得した前記運転者情報が、前記運転者の集中度が低くなっていることを示す場合、前記閾値を低くして、前記特定オブジェクトを認識する、
オブジェクト認識制御装置。
【請求項2】
前記自動運転制御部は、前記認識処理部により前記特定オブジェクトを認識した場合、前記車両を減速または停止する、
請求項1に記載のオブジェクト認識制御装置。
【請求項3】
車両の周辺を撮影する撮影部が撮影した映像データを取得する映像データ取得ステップと、
前記車両の運転者の集中度を示す運転者情報を取得する運転者情報取得ステップと、
前記映像データ取得ステップで取得した映像データに対して、特定オブジェクトらしさを示すスコアが閾値以上である場合、前記特定オブジェクトとして認識する認識処理ステップと、
前記認識処理ステップによる前記特定オブジェクトの認識結果に基づき、前記車両の運転動作を制御する自動運転制御ステップと、
を含み、
前記認識処理ステップにおいては、前記運転者情報取得ステップで取得した前記運転者情報が、前記運転者の集中度が低くなっていることを示す場合、前記閾値を低くして、前記特定オブジェクトを認識する、
オブジェクト認識制御装置が実行するオブジェクト認識制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オブジェクト認識制御装置およびオブジェクト認識制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
撮影画像における人物認識は、人物認識辞書を用いた認識処理において、人物らしさを
示すスコアが所定の閾値以上である場合、人物であると判断する。撮影画像に対して認識
辞書を用いて歩行者らしさを示すスコアが高いことで対象物が歩行者であることを判断す
る技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常は、車両の運転者の目視によって人物及び人物が乗車している自転車など注意を要
する対象となる特定オブジェクトを確認しながら運転する。運転者の集中力が低下した場
合、人物及び人物が乗車している自転車などの特定オブジェクトの存在に気が付くのが遅
れたり、見落としたりするおそれがある。このような状態で、人物及び人物が乗車してい
る自転車などの特定オブジェクトの認識処理において認識漏れが生じた場合、安全を損な
う可能性がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、オブジェクトの認識を適切に行うこと
を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るオブジェクト認識制御装置は、車両の周辺を撮影する撮影部が撮影した映像データを取得する映像データ取得部と、前記車両の運転者の集中度を示す運転者情報を取得する運転者情報取得部と、前記映像データ取得部が取得した前記映像データに対して、特定オブジェクトらしさを示すスコアが閾値以上である場合、前記特定オブジェクトとして認識する認識処理部と、前記認識処理部が認識した前記特定オブジェクトの認識結果に基づき、前記車両の運転動作を制御する自動運転制御部と、を備え、前記認識処理部は、前記運転者情報取得部が取得した前記運転者情報が、前記運転者の集中度が低くなっていることを示す場合、前記閾値を低くして、前記特定オブジェクトを認識する。
【0007】
本発明に係るオブジェクト認識制御装置が実行するオブジェクト認識制御方法は、車両の周辺を撮影する撮影部が撮影した映像データを取得する映像データ取得ステップと、前記車両の運転者の集中度を示す運転者情報を取得する運転者情報取得ステップと、前記映像データ取得ステップで取得した映像データに対して、特定オブジェクトらしさを示すスコアが閾値以上である場合、前記特定オブジェクトとして認識する認識処理ステップと、前記認識処理ステップで認識した前記特定オブジェクトの認識結果に基づき、前記車両の運転動作を制御する自動運転制御ステップと、を含み、前記認識処理ステップにおいては、前記運転者情報取得ステップで取得した前記運転者情報が、前記運転者の集中度が低くなっていることを示す場合、前記閾値を低くして、前記特定オブジェクトを認識する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、オブジェクトの認識を適切に行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第一実施形態に係るオブジェクト認識制御装置を有するオブジェクト認識装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第一実施形態に係るオブジェクト認識制御装置における処理の流れを示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、第二実施形態に係るオブジェクト認識制御装置を有するオブジェクト認識装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照して、本発明に係るオブジェクト認識制御装置およびオブジェク
ト認識制御方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態により本発明が限定
されるものではない。
【0011】
[第一実施形態]
<オブジェクト認識装置>
図1は、第一実施形態に係るオブジェクト認識制御装置である制御部20を有するオブ
ジェクト認識装置10の構成例を示すブロック図である。オブジェクト認識装置10は、
映像データに対してオブジェクト認識辞書を用いた認識処理を行って、特定オブジェクト
を認識する。オブジェクト認識装置10は、認識した特定オブジェクトに関する情報を運
転者に通知する。
【0012】
オブジェクト認識装置10は、カメラ(撮影部)11と、車内カメラ12と、認識辞書
記憶部13と、表示部14と、制御部(オブジェクト認識制御装置)20とを有する。オ
ブジェクト認識装置10は、例えば、車両にあらかじめ設置されている安全運転支援機能
を有する装置やナビゲーション装置、ドライブレコーダー等の機能として実装されていて
もよい。
【0013】
カメラ11は、車両の周辺を撮影するカメラである。カメラ11は、車両に搭載され、
車両の進行方向を撮影する。カメラ11は、遠赤外線カメラ、可視光カメラ、または遠赤
外線カメラおよび可視光カメラの組み合わせで構成される。カメラ11は、例えば、車両
の進行方向である前方を撮影可能な位置に配置されている。カメラ11は、エンジンが始
動してから停止するまでの間、つまり車両が動作している間は、映像を常時撮影する。カ
メラ11は、撮影した映像データを制御部20の映像データ取得部21へ出力する。映像
データは、例えば毎秒30フレームの画像から構成される動画像である。本実施形態では
、カメラ11は、車両の前方に配置されている。
【0014】
車内カメラ12は、車両の車室内を撮影するカメラである。車内カメラ12は、運転席
に着座している運転者の顔部を撮影可能な位置に配置されている。車内カメラ12は、例
えば、可視光カメラまたは遠赤外線カメラ、または近赤外線カメラで構成される。車内カ
メラ12は、例えば、可視光カメラと遠赤外線カメラまたは近赤外線カメラとの組み合わ
せで構成されてもよい。車内カメラ12は、エンジンが始動してから停止するまでの間、
つまり車両が動作している間は、映像を常時撮影する。車内カメラ12は、撮影した車内
映像データを制御部20の映像データ取得部21へ出力する。車内映像データは、例えば
毎秒30フレームの画像から構成される動画像である。
【0015】
認識辞書記憶部13は、映像データから各種のオブジェクトを認識するための辞書デー
タ記憶している。認識辞書記憶部13は、例えば、特定オブジェクトが撮影された様々な
映像を機械学習させ、映像データに含まれるオブジェクトが特定オブジェクトであること
を照合可能なオブジェクト認識辞書を記憶している。認識辞書記憶部13は、例えば、R
OM(Read Only Memory)、フラッシュメモリなどの半導体メモリ素子
、または、ネットワークを介した外部記憶装置などの記憶装置である。
【0016】
表示部14は、各種の情報を表示する装置であり、一例としては、オブジェクト認識装
置10に固有の表示装置、または、ドライブレコーダー及びナビゲーションシステムを含
む他のシステムと共用した表示装置などである。表示部14は、例えば、液晶ディスプレ
イ(LCD:Liquid Crystal Display)または有機EL(Ele
ctro-Luminescence)ディスプレイなどを含むディスプレイである。表
示部14は、制御部20の提示処理部24から出力された映像信号に基づいて、映像を表
示する。本実施形態では、表示部14は、車両の運転者が運転中に目視可能な位置に配置
されている。
【0017】
<オブジェクト認識制御装置>
制御部20は、例えば、CPU(Central Processing Unit)
などで構成された演算処理装置(制御装置)である。制御部20は、記憶されているプロ
グラムをメモリにロードして、プログラムに含まれる命令を実行する。制御部20には図
示しない内部メモリが含まれ、内部メモリは制御部20におけるデータの一時記憶などに
用いられる。このため、制御部20は、オブジェクト認識装置10によるオブジェクト認
識方法を実行させる。また、制御部20は、本発明にかかるプログラムを動作させるコン
ピュータである。制御部20は、バス20Xに接続された、映像データ取得部21と、運
転者情報取得部22と、認識処理部23と、提示処理部24とを有する。
【0018】
映像データ取得部21は、カメラ11が撮影した映像データを取得する。より詳しくは
、映像データ取得部21は、カメラ11が出力した、車両の進行方向である前方を撮影し
た映像データを取得する。
【0019】
映像データ取得部21は、車内カメラ12が撮影した映像データを取得する。より詳し
くは、映像データ取得部21は、車内カメラ12が出力した車内映像データであり、車両
の運転者の顔が撮影された映像データを取得する。
【0020】
運転者情報取得部22は、車両の運転者の集中度を示す運転者情報を取得する。本実施
形態では、運転者情報取得部22は、車内カメラ12が撮影した車内映像データに画像処
理を行って、運転者の顔部を認識した運転者認識結果から運転者情報を取得する。より詳
しくは、運転者情報取得部22は、例えば、車内映像データから運転者の眼を認識して、
眼の開度を示す情報を取得する。運転者情報取得部22は、例えば、車内映像データから
運転者の眼を認識して、視線の動きを示す情報を取得する。
【0021】
運転者情報とは、運転者の集中度が高いか、低いかを判定可能な情報である。集中度が
高いとは、例えば、運転者が眠気を感じていない通常の状態である。集中度が低いとは、
例えば、運転者が眠気を感じていて、運転者による車両の周辺の確認が疎かになるおそれ
がある状態である。
【0022】
認識処理部23は、映像データ取得部21が取得した映像データから、車両の周辺の特
定オブジェクトを認識する。認識処理部23は、映像データに対して、認識辞書記憶部1
3が記憶しているオブジェクト認識辞書を用いたパターンマッチングを行って、特定オブ
ジェクトを認識するオブジェクト認識処理を行う。オブジェクト認識処理においては、公
知の方法を使用可能である。認識処理部23は、オブジェクト認識装置10が起動してい
る間は、常時処理を行ってもよい。
【0023】
特定オブジェクトとは、人物、人物が乗車している自転車を含む二輪車、および、他車
両を含む。
【0024】
認識処理部23は、映像データ取得部21が取得した映像データに対して、特定オブジ
ェクトらしさを示すスコアが所定の閾値以上である場合、特定オブジェクトとして認識す
る。通常時のスコアの閾値をA(規定値)とする。スコアの閾値は、運転者情報取得部2
2によって取得された運転者情報に応じて変更される。変更されたスコアの閾値をB(B
<A)とする。
【0025】
認識処理部23は、運転者情報取得部22が取得した運転者情報に基づいて、スコアの
閾値を変化させて特定オブジェクトを認識する。認識処理部23は、運転者を撮影した映
像データに対する運転者認識結果、運転者の生体情報、および、運転者による連続運転時
間の少なくともいずれかに基づいて、運転者情報を取得する。本実施形態では、認識処理
部23は、運転者を撮影した映像データに対する運転者認識結果から運転者情報を取得す
る。認識処理部23は、運転者情報が、運転者の集中度が低くなっていることを示す場合
、通常時のスコアの閾値Aよりも低い閾値Bを用いて特定オブジェクトとして認識する。
これにより、運転者の集中度が低くなっていることを示す場合、特定オブジェクトとして
認識されやすくする。認識処理部23は、運転者情報が、運転者の集中度が高いことを示
す場合、通常時のスコアの閾値Aを用いて特定オブジェクトとして認識する。
【0026】
認識処理部23は、例えば、運転者情報が、運転者の眼の開度が小さくなった状態が所
定期間継続していることを示す場合、集中度が低くなっていると判定する。認識処理部2
3は、例えば、運転者情報が、運転者の視線の動きが小さくなった状態が所定期間継続し
ていることを示す場合、集中度が低くなっていると判定する。
【0027】
例えば、特定オブジェクトらしさを示すスコアは最大1.0である。一例として、閾値
Aを0.9、閾値Bを0.7とする。例えば、認識処理部23は、通常時は、スコアが0
.9以上である場合、検出したオブジェクトが特定オブジェクトであると判断する。例え
ば、認識処理部23は、運転者の集中度が低くなっているときは、スコアが0.7以上で
ある場合、検出したオブジェクトが特定オブジェクトであると判断する。例えば、認識処
理部23は、スコアが0.7以上であることを条件としてオブジェクト認識を行っている
ときは、運転者の集中度が高くなったときに、通常のスコアの閾値を用いる認識処理に戻
る。
【0028】
スコアの閾値は、特定オブジェクトごとに、言い換えると、オブジェクト認識辞書ごと
に設定されていてもよい。
【0029】
スコアの閾値は、段階的に変化させてもよいし、運転者の集中度に比例してリニアに変
化させてもよい。
【0030】
提示処理部24は、認識処理部23が認識した特定オブジェクトの情報を車両の運転者
に提示する。提示処理部24が認識した特定オブジェクトの情報を提示することによって
、車両の運転者に対して、特定オブジェクトへの注意を促す。提示処理部24は、表示部
14による表示または図示しない音声出力部から出力される音声を用いて、認識した特定
オブジェクトの情報を運転者に提示する。このため、提示処理部24は、表示部14によ
る表示で特定オブジェクトの情報を運転者に提示する場合は、表示制御部として機能する
。より詳しくは、提示処理部24は、車両の運転者に情報を提示する映像を生成する。提
示処理部24は、例えば、映像データに対して、認識された特定オブジェクトの範囲に枠
線を重ねて表示させる提示用映像データを生成する。提示処理部24は、例えば、特定オ
ブジェクトへの注意を促す文字またはアイコンを表示させる提示用映像データを生成して
もよい。提示処理部24は、映像とともに出力する警告音などの音声を生成してもよい。
提示処理部24は、生成した映像を表示させる映像信号を表示部14に出力して、映像を
表示させる。提示処理部24は、映像ともに生成した音声を出力させる音声信号を図示し
ないスピーカに出力してもよい。
【0031】
<制御部における処理>
次に、
図2を用いて、制御部20における処理の流れについて説明する。
図2は、第一
実施形態に係るオブジェクト認識制御装置である制御部20における処理の流れを示すフ
ローチャートである。オブジェクト認識装置10が起動されると、
図2に示すフローチャ
ートの処理が開示される。
図2の処理の開始は、任意の条件で開始される。例えば、オブ
ジェクト認識装置10を搭載している車両のエンジンが始動するなど車両が利用可能にな
った場合や、ユーザの操作によってオブジェクト認識装置10の動作が開始されたときな
どである。また、ステップS101の処理は、車両が走行していることを条件として実行
されてもよい。
【0032】
図2の処理の開始に伴い、制御部20は、撮影及びオブジェクト認識処理を開始する(
ステップS101)。より詳しくは、制御部20は、カメラ11によって撮影を開始させ
る。制御部20は、映像データ取得部21によって、カメラ11が出力した映像データを
取得する。制御部20は、認識処理部23によって、映像データ取得部21が取得した映
像データから、車両の周辺の特定オブジェクトを認識する。ステップS101におけるオ
ブジェクト認識処理のスコアの閾値は、通常時のスコアの閾値Aである。例えば、制御部
20は、認識処理部23によって、スコアが0.9以上である場合、検出したオブジェク
トが特定オブジェクトであると判断する。また、制御部20は、車内カメラ12によって
撮影を開始させる。制御部20は、映像データ取得部21によって、車内カメラ12が出
力した車内映像データを取得する。制御部20は、ステップS102に進む。
【0033】
ステップS101による処理が開始されるとともに、制御部20は、集中度が低下して
いるか否かを判定する(ステップS102)。より詳しくは、制御部20は、運転者情報
取得部22によって、映像データ取得部21が取得した映像データから、運転者の状態を
認識して運転者情報を取得する。制御部20は、取得した運転者情報が、運転者の集中度
が低くなっていることを示す場合(ステップS102でYes)、ステップS104へ進
む。制御部20は、取得した運転者情報が、運転者の集中度が低くなっていないことを示
す場合(ステップS102でNo)、ステップS103へ進む。
【0034】
運転者の集中度が低下していないことを示す場合(ステップS102でNo)、制御部
20は、認識処理部23によって、通常時のスコアの閾値Aを用いて特定オブジェクト認
識処理を実行する(ステップS104)。より詳しくは、認識処理部23は、映像データ
に対してパターンマッチングを行い、特定オブジェクトらしさを示すスコアが0.9以上
である場合、検出したオブジェクトが特定オブジェクトであると判断する。制御部20は
、ステップS105へ進む。
【0035】
運転者の集中度が低下していることを示す場合(ステップS102でYes)、制御部
20は、認識処理部23によって、通常時のスコアの閾値Aよりも低い閾値Bを用いて特
定オブジェクト認識処理を実行する(ステップS104)。より詳しくは、認識処理部2
3は、映像データに対してパターンマッチングを行い、特定オブジェクトらしさを示すス
コアが0.7以上である場合、検出したオブジェクトが特定オブジェクトであると判断す
る。これにより、集中度が低下している場合、通常時に比べて、検出したオブジェクトが
特定オブジェクトと認識されやすくなる。制御部20は、ステップS105へ進む。
【0036】
制御部20は、認識処理部23のオブジェクト認識結果に基づいて、特定オブジェクト
を認識したか否かを判定する(ステップS105)。制御部20は、特定オブジェクトを
認識したと判定する場合(ステップS105でYes)、ステップS106へ進む。制御
部20は、特定オブジェクトを認識したと判定しない場合(ステップS105でNo)、
ステップS107へ進む。
【0037】
制御部20は、提示処理部24によって、認識された特定オブジェクトの範囲に枠線を
表示する(ステップS106)。より詳しくは、制御部20は、提示処理部24によって
、映像データに、車両の周辺の特定オブジェクトを囲う枠線を重ねて表示部14に表示さ
せる。制御部20は、ステップS107へ進む。
【0038】
制御部20は、撮影及びオブジェクト認識処理を終了するか否かを判定する(ステップ
S107)。制御部20は、例えば、オブジェクト認識処理を終了する操作を検出した場
合、または、車両が停止してエンジンがOFFされた場合などは、撮影及びオブジェクト
認識処理を終了すると判定する。制御部20は、撮影及びオブジェクト認識処理を終了す
ると判定する場合(ステップS107でYes)、処理を終了する。制御部20は、撮影
及びオブジェクト認識処理を終了すると判定しない場合(ステップS107でNo)、ス
テップS102の処理を再度実行する。
【0039】
<効果>
上述したように、本実施形態では、車両の運転者の集中度に応じて、オブジェクト認識
処理におけるスコアの閾値を変化させる。本実施形態によれば、運転者の集中度に応じて
、特定オブジェクトの認識を適切に行うことができる。
【0040】
本実施形態では、運転者の集中度が低下していることを示す場合、オブジェクト認識処
理におけるスコアの閾値を低くする。本実施形態によれば、運転者の集中度が低下し、運
転者の人物などに対する注意が疎かになる可能性がある場合、特定オブジェクトを認識し
やすくすることができる。本実施形態によれば、より安全な運転を支援することができる
。
【0041】
本実施形態では、運転者を撮影した映像データに対する運転者認識結果に基づいて、運
転者情報を取得する。本実施形態によれば、運転者が撮影された車内映像データから、運
転者の集中度が低下している状態を検出することができる。
【0042】
本実施形態は、認識した特定オブジェクトに関する情報を運転者に提示する。本実施形
態は、運転者の特定オブジェクトに対する注意が疎かになる可能性がある場合、オブジェ
クト認識処理において特定オブジェクトを認識しやすくする。これらにより、本実施形態
によれば、運転者の特定オブジェクトに対する注意が疎かになる可能性がある場合、車両
の運転者に対して、特定オブジェクトへの注意を促す機会を増やすことができる。
【0043】
また、本実施形態では、運転者の集中度が低下していることを示す場合、オブジェクト
認識処理におけるスコアの閾値を低くするため、物体の陰に一部が隠れた人物などの特定
オブジェクトように通常のスコアでは特定オブジェクトとして認識されない場合であって
も、特定オブジェクトとして認識する。このため、車両の運転者は、より適切に特定オブ
ジェクトの存在を知ることができる。
【0044】
さらに、本実施形態では、運転者の集中度が低下していることを示す場合、オブジェク
ト認識処理におけるスコアの閾値を低くするため、特定オブジェクトではない物体を特定
オブジェクトとして判断する誤認識が増加する。しかし、誤認識であっても、特定オブジ
ェクトが存在することとして提示されるため、車両の運転者に、より安全性を重んじた運
転を行わせることができる。
【0045】
[第二実施形態]
図3を参照しながら、本実施形態に係るオブジェクト認識装置10Aについて説明する
。
図3は、第二実施形態に係るオブジェクト認識制御装置である制御部20Aを有するオ
ブジェクト認識装置10Aの構成例を示すブロック図である。オブジェクト認識装置10
Aは、基本的な構成は第一実施形態のオブジェクト認識装置10と同様である。以下の説
明においては、オブジェクト認識装置10と同様の構成要素には、同一の符号または対応
する符号を付し、その詳細な説明は省略する。オブジェクト認識装置10Aは、生体セン
サ15Aを有する点と、制御部20Aの運転者情報取得部22Aと認識処理部23Aとに
おける処理とが第一実施形態と異なる。
【0046】
生体センサ15Aは、運転者の生体情報を検出するセンサである。生体センサ15Aは
、例えば、運転者の心拍を示す心拍情報、運転者の脳波を示す脳波情報、または、呼吸数
を示す呼吸数情報を取得可能なデータを検出する。生体センサ15Aは、例えば、ステア
リングに配置されている。生体センサ15Aは、例えば、運転者が手首に装着している携
帯用電子機器に実装されている機能であってもよい。生体センサ15Aは、オブジェクト
認識装置10Aと無線または有線でデータを通信可能に接続されている。
【0047】
運転者情報取得部22Aは、生体センサ15Aが取得した生体情報に基づいて、運転者
情報を取得する。より詳しくは、運転者情報取得部22Aは、例えば、生体センサ15A
の検出結果から、運転者の心拍を示す心拍情報、運転者の血中酸素濃度を示す情報、また
は、呼吸数を示す呼吸数情報などを取得する。
【0048】
認識処理部23Aは、運転者の生体情報から運転者情報を取得する。認識処理部23A
は、運転者情報が、運転者の心拍の揺らぎ分析によって、運転者が眠気を感じていること
を示す場合、集中度が低くなっていると判定してもよい。認識処理部23Aは、運転者情
報が、運転者の血中酸素濃度を示す情報が低下傾向にある場合、運転者が眠気を感じてい
ることを示す場合、集中度が低くなっていると判定してもよい。認識処理部23Aは、運
転者情報が、運転者の呼吸数が少なくっていることを示す場合、集中度が低くなっている
と判定してもよい。
【0049】
上述したように、本実施形態では、生体情報が、運転者の集中度が低下していることを
示す場合、オブジェクト認識処理のスコアの閾値を低くする。本実施形態では、運転者の
生体情報に基づいて、運転者の集中度が低下している状態を検出することができる。本実
施形態によれば、特定オブジェクトの認識を適切に行うことができる。
【0050】
[第三実施形態]
本実施形態に係るオブジェクト認識装置10について説明する。オブジェクト認識装置
10は、制御部20の運転者情報取得部22と認識処理部23とにおける処理とが第一実
施形態と異なる。
【0051】
運転者情報取得部22は、運転者による連続運転時間を運転者情報として取得する。よ
り詳しくは、運転者情報取得部22は、車内映像データから運転者の顔を認識する。運転
者情報取得部22は、認識した顔について、顔の輪郭、顔を構成する各部の配置、形状お
よび大きさなどを含む特徴点から、運転者の同一性を認識する。運転者情報取得部22は
、同一の運転者が継続して検出されている間、連続運転時間を加算する。車両の一時停止
、または、数分間程度の短時間のエンジン停止が検出された場合、連続運転時間を継続し
て加算する。運転者情報取得部22は、運転者が変わったことが検出されると、連続運転
時間をリセットする。
【0052】
認識処理部23は、運転者による連続運転時間を運転者情報として取得する。認識処理
部23は、例えば、連続運転時間が2時間以上である場合、集中度が低くなっていると判
定してもよい。連続運転時間が2時間以上であるとは、同一運転者が、2時間以上休憩せ
ずに運転を継続した場合である。
【0053】
上述したように、本実施形態では、運転者による連続運転時間が長くなると、オブジェ
クト認識処理のスコアの閾値を低くする。本実施形態では、運転者による連続運転時間に
基づいて、運転者の集中度が低下している状態を検出することができる。本実施形態によ
れば、特定オブジェクトの認識を適切に行うことができる。
【0054】
これまで本発明に係るオブジェクト認識装置10について説明したが、上述した実施形
態以外にも種々の異なる形態にて実施されてよい。
【0055】
図示したオブジェクト認識装置10の各構成要素は、機能概念的なものであり、必ずし
も物理的に図示の如く構成されていなくてもよい。すなわち、各装置の具体的形態は、図
示のものに限られず、各装置の処理負担や使用状況などに応じて、その全部または一部を
任意の単位で機能的または物理的に分散または統合してもよい。
【0056】
オブジェクト認識装置10の構成は、例えば、ソフトウェアとして、メモリにロードさ
れたプログラムなどによって実現される。上記実施形態では、これらのハードウェアまた
はソフトウェアの連携によって実現される機能ブロックとして説明した。すなわち、これ
らの機能ブロックについては、ハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、または、それらの
組み合わせによって種々の形で実現できる。
【0057】
上記した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものを含む。
さらに、上記した構成は適宜組み合わせが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない
範囲において構成の種々の省略、置換または変更が可能である。
【0058】
<変形例>
上記で説明した運転者情報に加えて、車両の運転者の集中度を示す運転者情報の取得は
、他に様々な手法が適用可能である。例えば、車両の運転者の表情や言動などから検出さ
れる車両の運転者の感情を、車両の運転者の集中度を示す運転者情報としてもよい。例え
ば、車両の運転者の感情が、怒りや焦りなどを示している場合は、集中度が低くなってお
ると判断する。
【0059】
上記では、車両の運転者を支援するための装置として説明したが、自動運転車両におけ
るオブジェクト認識処理に使用してもよい。オブジェクト認識装置10は、認識処理部2
3によって特定オブジェクトが認識された場合、車両を減速したり停止させたりするよう
に制御する制御信号を出力する自動運転制御部を備える。オブジェクト認識装置10は、
表示部14および提示処理部24を備えていなくてもよい。
【符号の説明】
【0060】
10 オブジェクト認識装置
11 カメラ(撮影部)
12 車内カメラ
13 認識辞書記憶部
14 表示部
20 制御部(オブジェクト認識制御装置)
21 映像データ取得部
22 運転者情報取得部
23 認識処理部
24 提示処理部