(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144506
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】照明装置
(51)【国際特許分類】
F21S 2/00 20160101AFI20241003BHJP
F21V 7/09 20060101ALI20241003BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20241003BHJP
【FI】
F21S2/00 310
F21V7/09 500
F21Y115:10
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024117652
(22)【出願日】2024-07-23
(62)【分割の表示】P 2021143923の分割
【原出願日】2021-09-03
(71)【出願人】
【識別番号】000140269
【氏名又は名称】株式会社遠藤照明
(72)【発明者】
【氏名】青木 亮介
(72)【発明者】
【氏名】春田 昌也
(57)【要約】
【課題】
比較的狭い放射角を維持しつつ、小型の照明装置を実現すること。
【解決手段】
光軸325方向に光を照射する光源320と、複数の反射板331を備える照明装置300であって、光源320は所定の発光領域LESを備え、複数の反射板331は、光軸325を取り囲み上端M1uを結んだ上部開口及び下端M1dを結んだ下部開口の間の反射面を備える第1反射板M1と、第1反射板M1の内側において光軸325を取り囲み上端M2uを結んだ上部開口及び下端M2dを結んだ下部開口の間の反射面を備える第2反射板M2を備え、発光領域LESの端部から第1反射板M1に向かう光線c1のうち、第1反射板M1に反射されたのち第2反射板M2の裏面に当たる光線d1がある。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸方向に光を照射する光源と、複数の反射板を備える照明装置であって、
前記光源は所定の発光領域を備え、
前記複数の反射板は、前記光軸を取り囲み上端を結んだ上部開口及び下端を結んだ下部開口の間の反射面を備える第1反射板と、前記第1反射板の内側において前記光軸を取り囲み上端を結んだ上部開口及び下端を結んだ下部開口の間の反射面を備える第2反射板を備え、
前記発光領域の端部から前記第1反射板に向かう光線のうち、前記第1反射板に反射されたのち前記第2反射板の裏面に当たる光線がある、
照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型化が可能な照明装置に関し、特に狭角や中角が可能で、発光色の異なるLEDを用いても色むらが少ない照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
主に対象物を照らす目的で用いられるスポットライトなどの照明装置において、放射角を狭めようとすると、照明装置が大型化するという問題があった。例えば特許文献1において、反射板だけを用いる比較例の照明装置と、大型化を避けるため反射板に加えて光源近傍にレンズを備えた実施例が記載されており、「本実施形態のLED照明器具では、比較例1のLED照明器具に比べて、反射板3の高さを低くしながらも、反射板3の内周面3aに到達する光を増やすことが可能となる」とされている。
【0003】
引用文献2に、複数の反射板を用いた照明装置が記載されている。LEDチップと、LEDチップの前に位置し、LEDチップからの光を受けて前方に向けて投射する小径反射鏡と、LEDチップおよび小径反射鏡を外側から囲んで、LEDチップからの光を前方へ向けて反射する反射鏡とを備えた構造が示されている。
【0004】
調色の方法として、高色温度と低色温度の2つの白色系光源、あるいは3色以上の光源を用い、その明るさの比率を変化させることが一般的であるが、複数の色のLEDを用いるため色ムラが生じる場合があった。引用文献3には、赤色LED、緑色LED、青色LED、白色LEDからなるLED群を用い、LED群で発光した光を絞る部分を有し、絞りの前で光の混合を促進し、色むらを抑制する照明装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-127896号公報
【特許文献2】特開2015-181100号公報
【特許文献3】特開2017-033724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、狭角あるいは中角といった比較的狭い放射角を維持しつつ、小型の照明装置を実現することである。
また、複数の色のLEDを発光領域に配置するスポットライト・ダウンライトなどの照明装置において、色ムラを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、光軸方向に光を照射する光源と、複数の反射板を備える照明装置であって、
前記光源は所定の発光領域を備え、
前記複数の反射板は、前記光軸を取り囲み上端を結んだ上部開口及び下端を結んだ下部開口の間の反射面を備える第1反射板と、前記第1反射板の内側において前記光軸を取り囲み上端を結んだ上部開口及び下端を結んだ下部開口の間の反射面を備える第2反射板を備え、
前記発光領域の端部から前記第1反射板に向かう光線のうち、前記第1反射板に反射されたのち前記第2反射板の裏面に当たる光線がある、照明装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数の発光色のLEDを用いた光源及びその光源を用いた照明装置において、比較的狭い放射角を維持しつつ、照明装置の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】実施形態1の制御装置、及び照明装置が壁面を照らす例
【
図4】実施形態1において、光源の中心を発し反射板M1、M2、M3、M4の上端で反射する光線の軌跡
【
図5】実施形態1において、光源の中心を発し反射板M1、M2、M3、M4の下端で反射する光線の軌跡
【
図6】実施形態1において、発光領域LES端部を発し反射板M1、M2、M3、M4の上端で反射する光線の軌跡
【
図7】実施形態1において、発光領域LES端部を発し反射板M1、M2、M3、M4の下端で反射する光線の軌跡
【
図8】反射板M1、M2、M3、M4を光軸を含む面で切断した説明図
【
図14】実施形態2(実測)及び実施形態1(シミュレーション)におけるLESと1/2照度角の関係
【発明を実施するための形態】
【0010】
<用語について>
配光の広がりである放射角を表す用語として、1/2照度角と1/2ビーム角がある。1/2照度角は、照明器具の光軸に直交する平面において、照度が中心の1/2となる位置と照明器具の光源を結ぶ線を引き、この線と光軸との角度を指す。1/2ビーム角は、中心軸方向の光度に対し、1/2の光度となる方向を指す。本明細書では、配光角を主に1/2照度角で表すこととする。
【0011】
狭角とは、本明細書では1/2照度角が15度以下、中角とは15度以上25度以下、両者を合わせて比較的狭い放射角とする。
【0012】
<実施形態1>
<基本構成>
本実施形態に係る照明装置300の斜視図を
図1に示す。照明装置300は主にアウトドア用途を想定した大型のスポットライトであって、光学系収容部330、4枚の反射板からなる反射板群331(及び後述するフード332)、3本の反射板支持板335、出射窓340、ヒートシンク350、電源収容部360、角度調整部365、固定部370を備える。説明のため光源320の中心から光の出射方向に向かう光軸325を示す。照明装置300は、例えば壁面に固定部370を取付け、下向きまたは上向きに光を照射する用途が想定されている。
【0013】
照明装置300の光軸325に沿って切断した要部断面図を
図2に示す。光源320は、円形の発光領域(Light Emitting Surface=LES)を備え、その直径をφ(ファイ)とする。光源320は光源ホルダー322によってヒートシンク350に固定されている。光源320から発する光は光軸325を中心に相対光度の角度依存性がほぼランバーシアン(光軸からの角度をθとしてcosθ)の光を発する。
【0014】
光学系収容部330に、光軸を取り囲む4枚の反射板からなる反射板群331とそれと接続している4枚のフード332が収容されている(断面図なので8枚が図示されている)。フード332は両面とも黒色に塗装され、不要な光を除去する。その前面に出射窓340が設けられている。出射窓340は内部への水の侵入を防止する役割を有する。出射窓340として透明板を用いてもよいが、後述する色むら対策のため光を拡散する拡散板を用いてもよい。
電源収容部360内に電源361が収容され、電源361にはワイヤレスモジュール367が接続されている。
【0015】
<反射板の構成>
反射板群331は、光軸から離れた側(外側)より光軸に近い側(内側)に向けて、第1反射板M1、第2反射板M2、第3反射板M3、第4反射板M4が設置されたものである。これらは、それぞれ光源320の発光領域LESの中心を焦点とする回転放物面に近い形状を有し、その上端を結んだ上部開口と下端を結んだ下部開口の間に反射面を備えている。ただし、色むらや輝度むらを減らすためなどの理由で、回転放物面にシボなどの凹凸形状や筋形状といった拡散形状を加えて、回転放物面からずらすことがある(後述)。また、全ての反射板の回転対称軸を光軸に一致させるのではなく、いくつかの反射板の回転対称軸を光軸からすこしずらすことにより、色むらを低減することもできる。
【0016】
<制御及び壁面照射>
図3に、照明装置300の制御装置380、及び壁面390に取り付けられた照明装置300の出射光326が、壁面390における照射領域391を照らす例を示す。
【0017】
照明装置300には、電源361が内蔵され、電源361は、3色のLEDをそれぞれ独立して駆動するための3chの駆動出力を備え、制御装置380から送信された電波385によって搬送される制御信号により制御される。制御装置380としては照明制御ソフトをインストールしたスマートホン、タブレット又はPCが用いられ、制御信号が、受信装置であるワイヤレスモジュール367に無線で伝送される。ワイヤレスモジュール367は電源361に設けられたスロットに接続されており、照明制御信号を電源361に伝送することによって、電源361の3chの駆動出力がそれぞれ制御される。
【0018】
なお、制御装置380と照明装置300が直接通信するのではなく、ゲートウェイと呼ばれる中継器や、サーバ、クラウドを介して照明制御を行う場合も多い。また、無線制御でなく有線制御を行う場合もある。
【0019】
<光線の軌跡>
図4に、4つの反射板M1、M2、M3、M4、発光領域LES(x=-20~20mmの範囲)、光源の中心から発する光線a1、a2、a3、a4の軌跡を示す。各反射板の上端に接続されるフード332の図示は省略している。xは光源の中心から径方向の距離(単位mm)、yは光源中心から光軸方向の距離(単位mm)であり、光軸はy軸に重なる。
【0020】
4つの反射板の光軸側の面を表面、光軸側の反対の面を裏面とする。
【0021】
4つの反射板の上端M1u、M2u、M3u、M4uは、いずれも光源中心を通るy=0の面からの距離Lが55mmである。
【0022】
第2反射板M2の下端M2dは、光源中心と第1反射板M1の上端M1uを結ぶ線上に設けられ、光線a1は、第1反射板M1の上端M1uで反射され、光線b1として出射する。そのため、光源中心よりy軸と光線a1方向の間の角度で放射される光は、すべて第1反射板M1でy軸方向に反射される。
【0023】
第3反射板M3の下端M3dは、光源中心と第2反射板M2の上端M2uを結ぶ線上に設けられ、光線a2は、第2反射板M2の上端M2uで反射され、光線b2として出射する。そのため、光線a1方向と光線a2方向の間の角度で放射される光は、すべて第2反射板M2でy軸方向に反射される。
【0024】
第4反射板M4の下端M4dは、光源中心と第3反射板M3の上端M3uを結ぶ線上に設けられ、光線a3は、第3反射板M3の上端M3uで反射され、光線b3として出射する。そのため、光線a2方向と光線a3方向の間の角度で放射される光は、すべて第2反射板M2でy軸方向に反射される。
【0025】
なお、「線上」とは幾何学的な一点ではなく、下端を意図的に線の少し下に来るようにして製造誤差があっても確実に線上になるようにしている場合や、製造誤差により下端が線上より少し上にくる場合も含み、本発明の効果が生じる場合であれば含まれる。
【0026】
光線a4は、第4反射板M4の上端M4uで反射され、光線b4として出射する。そのため、光線a3方向と光線a4方向の間の角度で放射される光は、すべて第2反射板M2でy軸方向に反射される。一方、光線a4方向と光軸方向の間の角度で放射される光は、そのまま外部に出射される。
【0027】
図5に、光源中心から各反射板の下端方向に発する光線c1、c1K、c2、c3、c4(光源出射光線)の軌跡を示す。
【0028】
点線で表された光線c1、c2、c3、c4は、それぞれ反射板の下端M1d、M2d、M3d、M4dで反射され、光線d1、d2、d3、d4(反射光線)となる。ただし太い点線で表された光線d1は第2反射板M2に遮られる。一般にはこのような設計はしないが、ここでは意図的に光線d1が第2反射板M2に遮られるようにしている(例えば特許文献2の
図3では、真横方向に出射し「反射鏡」で反射された光が「小径反射鏡」に遮られないようになっている)。
【0029】
点線で表された光線c1Kは、x軸方向に対し遮蔽角θ=7.5°の角度で出射し、第1反射板M1で反射されて光軸に平行な光線となり、第2反射板M2の上端M2dのぎりぎり外側で外部に出射する光線d1Kとなる。
【0030】
つまり、第2反射板M2の上端は、光源を出射した光線c1Kが、第1反射板M1で反射され光軸に平行に進む光線d1Kとなり、反射光線d1Kが第2反射板M2の上端の外側ぎりぎりを通過可能な位置となるように、光源を出射した光線c1Kのx軸とのなす角である遮蔽角θ=7.5°としている。なお、x軸は光軸に直交する面内にある。
【0031】
このように0°でない遮蔽角を設けているのは、遮蔽角を設けることにより、反射板M2、M3、M4が外側(第1反射板M1の近く)に配置されることになり、後述する「反射板裏面への光」の影響などが少なくなって、軸上光度の向上につながるためである。一方、水平に近い方向に向かう光の利用効率が低下するが、光源320が、ランバーシアン型(cosθ、ただしθは光軸からの角度)の配光特性を有しているため、90°に近い方向の光線c1は、7.5°の方向の光であっても光軸方向の光の約13%の光度にすぎず、遮蔽角を適当な値にすることにより遮蔽角以下の方向の光を使わないことによる光の損失を抑えることができる。遮蔽角を0°としないことによる、照明装置300の効率、軸光度への影響については後述する。
【0032】
第3反射板M3の上端は、光源の中心を出射した光線c2が、第2反射板M2の下端で反射され光軸に平行に進む光線d2となり、反射光線d2が第3反射板M3の上端の外側ぎりぎりを通過可能な位置となるように設けられている。
【0033】
第4反射板M4の上端は、光源の中心を出射した光線c3が、第3反射板M3の下端で反射され光軸に平行に進む光線d3となり、反射光線d3が第4反射板M4の上端の外側ぎりぎりを通過可能な位置となるように設けられている。
【0034】
このように設定することにより、光源の中心を発する光線は、いずれかの反射板に反射されることとなり、狭角あるいは中角といった比較的狭い放射角を維持することができる。
図6に、発光領域LESの端部(光源の中心から20mm)から各反射板の上端方向に発する光線a1、a2、a3、a4の軌跡を示す。
【0035】
反射板の上端M1u、M2uに向かう光線a1、a2(細い点線で示す)は、それぞれ反射板の上端M1u、M2uで反射され、光線b1、b2として出射する。
【0036】
一方、反射板の上端M3u、M4uに向かう光線a3、a4(太い点線で示す)は、それぞれ反射板M3、M4の裏面に当たり、反射した場合に光線b3、b4となる。このため、これらの光線の制御が難しくなるが、発光領域LESの端部から反射板M3、M4に当たる方向の角度が限られており、そのような成分の光が少ないと考えて、あえて光線a3、a4が反射板M3、M4の裏面に当たる構成にしている。なお、反射板M3、M4の裏面は反射率を抑える低反射率処理、例えば黒色塗装がされてもよい。低反射率処理とは、反射率が20%以下、好ましくは10%以下となる処理である。なお、反射板M3、M4の裏面に当たった光も有効に用いるため、裏面を鏡面にしてもよい。
【0037】
遮蔽角を設けたため、反射板M2、M3、M4を第1反射板M1に近い外側に配置することができ、そのため発光領域LESの端部から反射板M3、M4の裏面への立体角(つまり光の割合)が減少する。
【0038】
図7に、発光領域LESの端部(光源の中心から20mm)から各反射板の下端方向に発する光線c1、c2、c3、c4の軌跡を示す。
【0039】
第1反射板M1の下端M1dに向かう光線c1(細い点線で示す)は、第1反射板M1で反射され光線d1となるが、第2反射板M2に遮られる。
【0040】
第2反射板M2の下端M2dに向かう光線c2(細い点線で示す)は、第2反射板M2で反射され、光線d2として出射する。
【0041】
反射板M3、M4の下端M3d、M4dに向かう光線c3、c4(太い点線で示す)は、それぞれ反射板M3、M4の裏面で反射され、反射した場合には光線d3、d4となるが、反射板の裏面は黒色塗装されているため、この影響が抑えられている。
【0042】
<反射板の色むら対策>
反射板M1、M2、M3、M4を光軸を含む面で切断した説明図である
図8に示すように、各反射板の反射表面には、色むら対策のため、シボ形状(複数の凸部又は凹部)を配置している。各凸部又は凹部は、例えば四角形あるいは六角形で区切られ、連なって配置されているが、その他の多角形であってもよい。
【0043】
第1反射板M1においては、切断面の方向を示す矢印V1に平行な方向である矢印S1方向に、シボ形状である凸部(又は凹部)を連ねている。一方、第2反射板M2においては、切断面の方向を示す矢印V2に対して斜め右方向である矢印S2方向に、シボ形状である凸部(又は凹部)を連ねている。第3反射板M3においては、切断面の方向を示す矢印V3に対して斜め左方向である矢印S3方向に、シボ形状である凸部(又は凹部)を連ねている。第4反射板M4においては、切断面の方向を示す矢印V4に対して斜め右方向である矢印S4方向に、シボ形状である凸部(又は凹部)を連ねている。このように、各反射板について切断面の方向と凸部(又は凹部)が連なる方向を異ならせることにより、色むらを低減することができる。方向を異ならせる方法として、例えば隣接する反射板について右方向・左方向と交互に違う方向にしてもよい。
【0044】
なお、第1反射板M1におけるシボ形状の連なりの方向を、矢印V1に対して左向き(矢印S3に類似)としてもよい。
【0045】
<特性>
以上のように反射板を設計した照明装置300の光学系収容部330に相当する部分は、従来の反射板1枚構成の照明装置に比べて、高さが約40%程度(注:160→65)に小さくなり、直径も約70%(注:125→90)になるというメリットを有している。その光学特性を、光線追跡法によりシミュレーションした。その結果、1000(lm)の光源を用いた場合、1/2照度角19°、光取出効率87.2%、軸光度4020cdとなった。
なお、実測データについては実施形態2の説明の中で述べる。
【0046】
<遮蔽角依存性>
実施形態1のバリエーションとして、距離Lを55mmと80mm、遮蔽角を0°から20°とした場合について、光取り出し効率及び光軸強度について光線追跡によるシミュレーションを行った。ただし、パラメータを変えることにより放射角(1/2照度角)も少し変化している。
【0047】
効率の遮蔽角依存性を示すグラフを
図9に示す。黒丸(●)はL=55mm、白丸(○)はL=80mmの場合である。いずれも、3°以上20°以下の遮蔽角とすることにより、遮蔽角0°の場合に比べて効率が向上することがわかる。
【0048】
軸光度の遮蔽角依存性を示すグラフを
図10に示す。黒丸(●)はL=55mmの場合である。L=55mmの場合、3°以上10°以下の遮蔽角とすることにより、遮蔽角0°の場合に比べて軸光度が向上することがわかる。
【0049】
<実施形態2>
<基本構成>
本実施形態に係る照明装置400は、照明装置300における光源320を、それぞれ発光領域LESの直径=17、37.4、45.8、61.4mmの光源420、320B、320C、320Dに置き換え、特性を実測したものである。反射板群331などの光学系は実施形態1と同じものを用いている。ただし比較例として第1反射板だけを用いるものも、この実施形態の節で説明する。
【0050】
<光源>
光源320B、320C、320Dの共通する構造を説明するため、本実施形態に用いる光源320B(発光領域LESの直径=37.4mm)の平面図を
図11に示す。光源320は、配線パターンをプリントした基板321上の発光領域LESに、3色のSMD型(Surface Mount Device型、表面実装型)のLED323A、LED323B、LED323C各25個を
図5のように混合して配置し、基板内部の配線で直列に接続したものである(光源320C、320DではLEDの個数が異なる)。光源320Bは取付穴325を備え、取付穴325にネジを通してヒートシンク350に締結する。光源320Bは配線端子326A(LED323A用)、配線端子326B(LED323B用)、配線端子326C(LED323C用)、配線端子326E(共通端子)を備え、3つの出力を有する電源361に接続され、各LEDの発光が制御される。
【0051】
この場合のLEDの配列は、LED323A・B・Cの数を同数としつつ偏らないように混合した配置としている。また、基板321の内部における配線で同色のLEDを直列に配線する都合上、同色のLEDが斜め近傍に並ぶようにしている。
【0052】
なお、実施形態1におけるシミュレーションでは発光領域LES内部のすべてにわたって光源があるとしているが、
図11に示すように、実際の発光領域LESの外周付近においてはLED1個を配置するスペースがないため、LEDを配置していない部分がある。
【0053】
<LEDの色度>
本実施形態に用いるLED323A、LED323B、LED323Cとしては、赤色LED「R」、黄白色LED「Yw」、青白色LED「Bw」のいずれかを用いる。なお、Ywは色度図上では黄色に近い色だが、緑がかった白色にも見える。
図12は、これらのLEDの色度を説明するための色度図(CIE1931色度座標図)であり、参考のために各色温度における黒体輻射の色度を結ぶ線を点線で示している。
【0054】
赤色LEDであるRは、
図12の色度座標において、(0.66,0.23)、(0.423,0.355)、(0.5,0.5)と色度境界線Eで囲まれる範囲の色度で発光し、一例として(0.60.0.38)である。一般的な赤色の定義とは同じでないので注意されたい。
【0055】
黄白色LEDであるYwは、
図12の色度座標において、(0.5,0.5)、(0.423,0.355)、(0.342,0.312)、(0.352,0.44)、(0.37,0.63)及び色度境界線Eで囲まれる範囲の色度で発光し、一例として(0.44,0.47)である。
【0056】
青白色LEDであるBwは、
図12の色度座標において、(0.336,0.24)、(0.352,0.44)、(0.15,0.2)、(0.2,0.1)で囲まれる範囲の色度で発光し、一例として(0.23,0.26)である。
【0057】
Ywの色度範囲内のうち、各色温度における黒体輻射の色度を結ぶ線からduvがプラスの範囲内が好適であり、duvがプラス0.03から0が特に好適である。
Bw、Rの色度範囲内のうち、各色温度における黒体輻射の色度を結ぶ線からduvがプラス0.03からマイナス0.03の範囲内が特に好適である。
【0058】
なお、各LEDの色度を、CIE1931における色度座標(x,y)でなくCIE1976における色度座標(u‘,v’)で表示することもでき、両者はu’=4x/(-2x+12y+3),v’=9y/(-2x+12y+3)という変換式で相互に変換可能である。その他の色度座標系で表示してもよい。
【0059】
<LEDの構造>
実施形態に用いるLED323A、LED323B、LED323Cは、底面及び四側面を備え、底面又は側面の端子が基板の配線につながるようになっているパッケージと、InGaNからなる青色LEDチップと、蛍光体を含有する樹脂を備えるものである。青色LEDチップはパッケージの底面に固定され、青色LEDチップの電極はパッケージの電極にワイヤなどで接続され、青色LEDチップの上面及び側面は蛍光体含有樹脂で覆われている。LEDパッケージの幅は例えば約4mm角程度である。
【0060】
発光色がBwのLED323B(以下Bwと略記する。)は、InGaN系青色LEDチップの上面及び側面が緑色系蛍光体粒子又は黄色系蛍光体を含む樹脂で覆われたものである。また、さらに赤色系蛍光体粒子を含んでいてもよい。
【0061】
発光色がYwのLED323C(以下Ywと略記する。)は、Bwと同様に、パッケージ底部にInGaN系青色LEDチップを配置し、InGaN系青色LEDチップの上面及び側面が緑色系蛍光体粒子又は黄色系蛍光体を含む樹脂で覆われたものであるが、蛍光体の濃度がBwよりも濃い。また、さらに赤色系蛍光体粒子を含んでいてもよい。
【0062】
また、発光色がRのLED323A(以下Rと略記する。)は、InGaN系青色LEDチップの上面及び側面が赤色系蛍光体粒子を含む樹脂で覆われたものである。
【0063】
Rとしては、InGaN系青色LEDチップに代えてAlGaInP系LEDチップを用い、蛍光体を含まない樹脂で覆ったものでもよい。RとしてAlGaInP系LEDチップを用いたLEDパッケージとすると、発光スペクトルに青色を含まないという点で好ましいが、BwやYwとは駆動電圧が異なるため駆動回路が複雑になる。Rとして青色LEDチップと赤色蛍光体を組み合わせたLEDパッケージの場合は、発光スペクトルに含まれる青色を減らす処理が必要になる。例えば赤色蛍光体の濃度を高くして青色LEDチップからの光が外部に放射される割合を小さくすることが好ましいが、青色を吸収するフィルタを用いてもよい。
【0064】
以上の各LEDにおいて、黄色系蛍光体粒子としては、例えば(Y1-xGdx)3Al5O12:Ce2+(0≦x≦1)を、緑色系蛍光体粒子としては、例えばLu3Al5O12:Ce2+を、赤色系蛍光体としては例えばSrxCa1-xAlSiN3:Eu3+(0≦x≦1)蛍光体、Sr[LiAl3N4]:Eu2+やK2SiF6:Mn4+蛍光体を好適に用いることができる。量子ドットも好適に用いることができる。
【0065】
<光源420>
光源420は、COB(Chip On Board)型であって、その上の発光領域LESに、約1mm角のCSP(Chip Scale Package)型のLED423A、LED423B、LED423Cを混合して配置したものである。CSP型LEDは、InGaNからなる青色LEDチップと、青色LEDチップの側面及び上面を覆い、蛍光体を含有する樹脂を備えるものであり、サイズを小さくするため側面において樹脂の枠となるパッケージを備えないのが一般的である。青色LEDチップの底面より電極が露出されている。
【0066】
平面図である
図13に示す光源420は、アルミニウム板の上に絶縁膜・配線パターンを形成した基板421上の発光領域LESに、3色のLED423A、LED423B、LED423C各24個を
図13のように混合して配置し、各色のLEDを基板内部の配線で直列に接続したものである。基板421は取付穴425を備え、取付穴425にネジを通してヒートシンクに締結する。配線端子426A(LED423A用)、配線端子426B(LED423B用)、配線端子426C(LED423C用)、配線端子426P(共通端子)を備え、3つの出力を有する電源461(電源361とは定格出力が異なる)に接続され、各LEDの発光が調光調色制御される。
【0067】
LEDの配列は、LED423A・B・Cの数をほぼ同数としつつ偏らない配置としている。発光領域LESの直径は約17mmである。
【0068】
<1/2照度角>
本実施形態(実測)及び実施形態1(シミュレーション)における発光領域LESと1/2照度角の関係を
図14に示す。同じ反射板群331を用いる場合、発光領域LESが大きくなると、点光源から広がりのある光源に変わるので、光学系において光を絞りにくくなり、1/2照度角が増大する。シミュレーションの値がほぼ実測値を結ぶ線上に乗っていることがわかる。
【0069】
<軸上光度>
光源320D(発光領域LES=61.4mm)を用い、4枚の反射板M1、M2、M3、M4からなる反射板群331を第1反射板M1のみに変えた反射板431とした場合における軸上光度(ここでは光束1000(lm)当たりの光度cd)を比較した。
【0070】
第1反射板M1のみの場合、1/2照度角が28°、軸上光度が1316cd(光源の光束を1000(lm)とした場合)であったのに対し、反射板群331を用いた場合の1/2照度角が29°軸上光度は1544cd(光源の光束を1000(lm)とした場合)と、軸上光度が17%増加した。これにより、本反射板が軸上光度の向上に効果があることが実験で示された。
【0071】
<実施形態3>
<基本構成>
本実施形態に係る照明装置700は主に屋内で用いられるスポットライトである。要部である光学系収容部730のみ断面を図示し他の部分は側面図とした説明図である
図15において、照明装置700の電源ユニット760は天井に設置された配線ダクト780に固定されている。レバー775を動かすことにより、電源ユニット760を配線ダクト780に着脱することが可能である。アーム770はジョイント765を介して電源ユニット760に接続されており、下方に向かう軸に対して回転可能である。光学系収容部730及びヒートシンク750からなる灯体部は、ジョイント755によって向きが可変になっている。
【0072】
光学系収容部730において、光源720は、光源ホルダー722によってヒートシンク750に固定されている。光源720から発する光は光軸725を中心に相対光度の角度依存性がほぼランバーシアン(光軸からの角度をθとしてcosθ)の光を発する。
【0073】
光学系収容部730に3枚の反射板(第1反射板、第2反射板、第3反射板)からなる反射板群731とそれと接続している3枚のフード732が収容されている(断面図なので6枚が図示されている)。フード732は両面とも黒色に塗装され、不要な光を除去する。その前面に出射窓740が設けられている。出射窓740として透明板を用いてもよいが、色むら対策のため光を拡散する拡散板を用いてもよい。
【0074】
<反射板の構成>
反射板群731は、反射板群331から第4反射板M4を省略し第1反射板M1、第2反射板M2,第3反射板M3からなる3枚構成であり、大きさが反射板群731より小さいものの相似形状であり、遮蔽角θ=7.5°である。
【0075】
本実施形態は、従来の屋内用スポットライトに比べ、光学系収容部の長さを小さくすることができるので、室内において圧迫感のない小型のスポットライトとして好適に用いることができる。
【0076】
<但し書き及びバリエーション>
(1)本願においてLEDとは、半導体チップであるLEDチップを構成要素として備え、単色の発光色を有するLEDパッケージやCSP型LEDなどを指すが、半導体チップであるLEDチップだけであってもよい。なお、一般にはLEDを備えた光源や照明装置全体をLEDと称する場合があるが、本願においてはLEDをそのような意味では用いない。
【0077】
(2)3色の発光色のLEDを用いた光源についての実施形態を示したが、LEDは1色でも2色でもよい。
【0078】
(3)3色のLEDとしては、赤色(R)、黄白色(Yw)、青白色(Bw)の例で説明したが、その他の赤を含む3色のLEDであってもよい。例えば、R、Yw、青色(B)(色度座標がx≦0.2、y≦0.2のLED)を用いてもよい。R、緑色(G)(色度座標がx≦0.35、y≧0.4にあるLED)、青色(B)の3色のLEDを用いてもよい。R、G、Bはいずれも原色であるが、その中でもRが特に目立ちやすい色である。また、R、G、Bと白色(例えば昼白色LEDや昼光色LED)とを組み合わせてもよい。
【0079】
(4)照明装置としては、スポットライトの例を示したが、ダウンライトやユニバーサル(方向可変)ダウンライトなどであってもよい。
【0080】
(5)照明装置の制御方法としては、無線制御の例を示したが、有線制御であってもよい。
【0081】
(6)光束の単位ルーメンを括弧付で(lm)と表記しているのは、l(エル)と数字の1が紛らわしいので区別するためである。
【0082】
なお、今回開示した上記実施形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0083】
300、400、700 照明装置
320、420、720 光源
321、421 基板
322、722 光源ホルダー
323A、323B、323C、423A、423B、423C LED
325、725 光軸
325、425 取付穴
326 出射光
326A、326B、326C、326E、426A、426B、426C、426P 配線端子
330、730 光学系収容部
331、731 反射板群
332、732 フード
335 反射板支持板
340、740 出射窓
350、750 ヒートシンク
360 電源収容部
361、461 電源
365 角度調整部
367 ワイヤレスモジュール
370 固定部
380 制御装置
385 電波
390 壁面
391 照射領域
755 ジョイント
760 電源ユニット
765 ジョイント
770 アーム
775 レバー
780 配線ダクト